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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】光電式エンコーダ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/347 20060101AFI20220711BHJP
【FI】
G01D5/347 110X
G01D5/347 110A
G01D5/347 110S
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018080050
(22)【出願日】2018-04-18
(65)【公開番号】P2018197743
(43)【公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】P 2017101186
(32)【優先日】2017-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】水谷 都
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-114717(JP,A)
【文献】特開2017-058239(JP,A)
【文献】国際公開第2005/050141(WO,A1)
【文献】特開2002-022496(JP,A)
【文献】国際公開第2017/051559(WO,A1)
【文献】特開2005-257539(JP,A)
【文献】特開2013-170852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/26-5/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を照射する光源装置と、測定方向に沿って配設された目盛と前記目盛が配設された板状の透光素材とを有するスケールと、前記光源装置から照射され前記スケールを透過した光を受光する受光手段と、を備える光電式エンコーダであって、
前記スケールにて反射することにより生じた迷光が前記受光手段に入射することを防ぐ反射防止部材を備え、
前記スケールの前記透光素材は、
一面に前記反射防止部材を備え
記目盛は、
透過部および非透過部により形成され、
前記非透過部は、前記反射防止部材を備え、
前記透光素材が備える前記反射防止部材は、
前記透光素材の一面にて反射する反射光を抑制する透明な薄膜であるARコート(Anti - Reflective coating)であり、
前記透光素材の前記一面は、前記スケールにおける前記光源装置側の一面であり、
前記透光素材は、
前記光源装置側の一面とは反対側である前記受光手段側の一面に前記反射防止部材をさらに備え、
前記受光手段側の一面における前記反射防止部材は、
前記透光素材を透過した光の出射を妨げず、前記ARコートに入射するとともに前記受光手段側の前記透光素材の一面にて反射する反射光を抑制する透明な薄膜であるARコートであり、
前記非透過部は、
前記透光素材における前記光源装置側の一面、および前記透光素材における前記受光手段側の一面の少なくとも一方の一面における前記ARコートの上に設けられてい ることを特徴とする光電式エンコーダ。
【請求項2】
請求項1に記載された光電式エンコーダにおいて、
前記光源装置は、
電源を供給するリードフレームを備え、
前記リードフレームは、
前記反射防止部材を備えることを特徴とする光電式エンコーダ。
【請求項3】
請求項1または請求項に記載された光電式エンコーダにおいて、
前記受光手段は、
基礎となる基部と、
前記基部に配置されるとともに受光した前記光を電気信号にする受光部と、を備え、
前記基部は、
前記受光部以外の位置に前記反射防止部材を備えることを特徴とする光電式エンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電式エンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、目盛を有するスケールと、光源装置および受光手段を有するとともにスケールに沿って相対移動するヘッドと、を備え、スケールとヘッドとの相対移動量を検出する光電式エンコーダが知られている。例えば、特許文献1に記載の光学式変位検出装置(光電式エンコーダ)は、平行光を照射する光照射手段(光源装置)と、光照射手段の平行光が照射されるメインスケール(スケール)と、メインスケールを介した光を受光する受光手段と、を備えている。
【0003】
図13は、従来の光照射手段を示す断面図である。
図13に示すように、この光学式変位検出装置で利用される光照射手段100は、LED(Light Emitting Diode)101と、LED101の光軸Lと直交する平面102を有する透明樹脂103と、平面102に対して垂直な垂直面104を有するレンズ体105と、レンズ体105の表面にコーティングされた反射膜106と、垂直面104に貼りつけられた反射板107と、反射膜106によって反射された平行光(実線矢印)を光照射手段100の外部へ出射する出射面108と、を備えて構成されている。また、光照射手段100は、平面102と垂直面104とにより角部200が形成される。光照射手段100は、例えば透明樹脂を金型等に入れて一体に成型されている。
【0004】
レンズ体105は、略半球状体をさらに半分にした形状の曲面を有している。この曲面は反射膜106がコーティングされて凹面鏡の役割をしている。光照射手段100は、垂直面104の延長上にLED101を配置して、レンズ体105の反射膜106に向かって照射されるLED101からの光を利用して実線矢印に示すような平行光を得ている。
光照射手段100は、レンズ体105について略半球状体をさらに半分にした形にすることで、略半球状体を用いた場合に比べて小型化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-132612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような光照射手段100は、角部200に光が照射されると、角部200が光の散乱点となり、受光手段の受光面に対して傾斜した光(破線矢印)を出射面108から光照射手段100の外部へ出射する。また、光照射手段100は、小型化により、アライメントのズレによる角度変化の影響を受けやすく、光照射手段100の角度が少しでも変化すると受光手段の受光面に対して垂直に平行光を照射することが困難となる。すなわち、光照射手段100は、アライメントのズレにより、受光手段の受光面に対して傾斜した平行光を照射することになる。この平行光は、スケールにて反射することにより迷光となる。
スケールにて反射することにより生じた迷光は、光電式エンコーダにおける相対移動量の検出において、狭範囲精度を悪化させ、検出効率が低下する原因となる。したがって、光電式エンコーダは、迷光により検出精度および信頼性を十分に保てないという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、迷光を削減して信頼性を保つとともに高精度化を図ることができる光電式エンコーダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光電式エンコーダは、光(平行光)を照射する光源装置と、測定方向に沿って配設された目盛を有するスケールと、光源装置から照射されスケールを透過した光(平行光)を受光する受光手段と、を備える光電式エンコーダであって、スケールにて反射することにより生じた迷光が受光手段に入射することを防ぐ反射防止部材を備えることを特徴とする。
【0009】
ここで、反射防止部材は、光を吸収したり物理的に遮蔽したりすることができる部材をいう。すなわち、反射防止部材は、光(迷光)が反射することを防ぐことができる。
このような本発明によれば、光電式エンコーダは、スケールにて反射することによって生じた迷光が受光手段に入射することを防ぐ反射防止部材を備えるため、光電式エンコーダ内部で生じた迷光が受光手段に入射することを防ぐことができる。また、光電式エンコーダは、迷光が抑制された平行光を用いて測定を実行することができる。
したがって、光電式エンコーダは、迷光を削減して信頼性を保つとともに高精度化を図ることができる。
【0010】
この際、目盛は、反射防止部材を備えることが好ましい。
【0011】
ここで、スケールに配設される目盛は、Cu(銅)やCr(クロム)等の金属で形成されることがある。目盛が金属で形成されると、目盛が配設されたスケールの一面にて平行光が反射することになり、迷光を生じてしまうという問題がある。
【0012】
しかしながら、本発明によれば、目盛は、反射防止部材を備えているため、目盛が配設されたスケールの一面に反射することによって迷光が生じることを防ぐことができる。
【0013】
この際、光源装置は、電源を供給するリードフレームを備え、リードフレームは、反射防止部材を備えることが好ましい。
【0014】
ここで、光源装置が備えるリードフレームは、Cu(銅)やCr(クロム)等の金属で形成されている。また、光源装置は、前述の通り透明樹脂で形成されている。このため、スケールにて反射することによって生じた迷光は、リードフレームに向かって反射することがある。この反射した迷光をリードフレームは、スケールに向かってさらに反射し、反射した光は、スケールにて反射することで、さらなる迷光となってしまうという問題がある。
【0015】
しかしながら、本発明によれば、リードフレームは、反射防止部材を備えているため、スケールにて反射することによって生じる迷光がリードフレームに反射して受光手段に入射することを防ぐことができる。
【0016】
この際、スケールは、一面に反射防止部材を備え、反射防止部材は、反射防止部材に入射するとともにスケールの一面にて反射する反射光を抑制することが好ましい。
【0017】
ここで、スケールに入射した光は、屈折してスケール内を進行する透過光と、スケールの一面にて反射する反射光と、に分割される。スケールの一面にて反射した反射光は、リードフレーム等に向かって反射することがある。リードフレーム等は、この反射した迷光をスケールに向かってさらに反射し、反射した光は、スケールにて反射することで、さらなる迷光となってしまうという問題がある。
【0018】
しかしながら、本発明によれば、スケールは、一面に反射防止部材を備え、反射防止部材は、反射防止部材に入射するとともにスケールの一面にて反射する反射光を抑制するため、スケールにて反射することによって生じる迷光が受光手段に入射することを防ぐことができる。
【0019】
この際、受光手段は、基礎となる基部と、基部に配置されるとともに受光した光を電気信号にする受光部と、を備え、基部は、受光部以外の位置に反射防止部材を備えることが好ましい。
【0020】
ここで、受光手段の基部は、受光部の他に複数の配線等の金属部分を有している。このため、受光手段に向かって入射する平行光は、受光手段が有する金属部分に向かって入射することがあり、基部が有する金属部分は、この入射した平行光をスケールに向かって反射することがある。したがって、スケールに向かって反射した平行光は、スケールにて反射することで迷光となってしまうという問題がある。
【0021】
しかしながら、本発明によれば、受光手段の基部は、受光部以外の位置に反射防止部材を備えるため、基部が有する金属部分に反射し、さらにスケールにて反射することによって迷光が生じることを防ぐことができる。
【0022】
この際、前述のスケールの一面は、スケールにおける光源装置側の一面であり、スケールは、光源装置側の一面とは反対側である受光手段側の一面に反射防止部材をさらに備え、受光手段側の一面における反射防止部材は、スケールを透過した光の出射を妨げず、反射防止部材に入射するとともに受光手段側のスケールの一面にて反射する反射光を抑制することが好ましい。
【0023】
ここで、光源装置側のスケールの一面から入射した光は、前述のように、屈折してスケール内を進行する透過光と、スケールの光源装置側の一面にて反射する反射光と、に分割される。そして、透過光は、スケールの受光手段側の一面から受光手段に向かって出射される。受光手段側の一面から出射され受光手段に向かって入射する透過光(平行光)は、受光手段が備える受光部に入射する。しかし、受光部は、入射した平行光のすべてを吸収するわけではなく、入射した平行光をスケールに向かって反射することがある。したがって、スケールに向かって反射した平行光は、スケールにて反射することで迷光となってしまうという問題がある。
【0024】
しかしながら、本発明によれば、スケールは、光源装置側の一面と受光手段側の一面との両面に反射防止部材を備え、受光手段側の一面における反射防止部材は、スケールを透過した光の出射を妨げず、反射防止部材に入射するとともに受光手段側のスケールの一面にて反射する反射光を抑制するため、スケールにて反射することによって生じる迷光が受光手段に入射することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1実施形態に係るエンコーダを示す斜視図
図2】本発明の第1実施形態に係る光源装置を示す側面図、上面図および底面図
図3】従来のエンコーダの迷光の光路を示す図
図4】本発明の第1実施形態に係るエンコーダの平行光の光路を示す図
図5】従来のエンコーダの迷光の光路を示す図
図6】本発明の第2実施形態に係る光源装置を示す側面図、上面図および底面図
図7】本発明の第2実施形態に係るエンコーダの平行光の光路を示す図
図8】従来のエンコーダの迷光の光路を示す図
図9】本発明の第3実施形態に係るエンコーダを示す斜視図
図10】本発明の第3実施形態に係るエンコーダの平行光の光路を示す図
図11】従来のエンコーダの迷光の光路を示す図
図12】本発明の第4実施形態に係るエンコーダの平行光の光路を示す図
図13】従来の光照射手段を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るエンコーダを示す斜視図である。
エンコーダ1は、図1に示すように、平行光を照射する光源装置2と、測定方向に沿って配設された目盛Cを有するスケール3と、光源装置2から照射されスケール3を透過した平行光を受光する受光手段4と、光源装置2および受光手段4を有するとともにスケール3に沿って相対移動する図示しないヘッドと、を備える光電式エンコーダである。
エンコーダ1は、スケール3とヘッドとの相対移動量を検出する。
なお、以下の説明において、スケール3の長手方向であり光源装置2およびヘッド(光源装置2および受光手段4)の移動方向をX方向と記し、X方向に直交するスケール3の幅方向をY方向と記し、X,Y方向に直交する上下方向をZ方向と記す場合がある。
【0027】
スケール3は、ガラス等の透光素材で長尺状に形成され、スケール3の測定方向である長手方向(X方向)に沿って透過部および非透過部(目盛C)を交互に有するスケールパターンと、光源装置2と対向する+Z方向側の一面に設けられたARコート30(Anti - Reflective coating)と、を備えている。
目盛Cは、主にCr(クロム)等の金属にて形成されている。
ARコート30は、ARコート30に入射するとともに光源装置2と対向するスケール3の一面にて反射する反射光を抑制する反射防止部材である。ARコート30の詳細については後述する。
スケール3を透過した平行光は、受光手段4上にスケールパターンと同じ周期の干渉縞を生成する。
【0028】
受光手段4は、基礎となる基部40と、基部40に配置されるとともに受光した光を電気信号にする受光部41と、を備えている。
基部40は、略矩形状に形成され、スケール3と対向する面に受光部41を配置している。基部40は、受光部41以外に配線等の金属部分を有している。
受光部41は、スケール3を透過して生成された干渉縞を検出し電気信号にする。エンコーダ1は、受光部41による電気信号を演算してスケール3とヘッドとの相対移動量を検出する。
【0029】
図2は、本発明の第1実施形態に係る光源装置を示す側面図、上面図および底面図である。具体的には、図2(A)は光源装置2の側面図であり、図2(B)は光源装置2の上面図であり、図2(C)は光源装置2の底面図である。
光源装置2は、図2に示すように、光を照射する発光手段5と、発光手段5を内部に収容するとともに発光手段5から照射された光を平行光にする透光部材10と、を備えている。
【0030】
発光手段5は、例えばLEDが用いられる。
透光部材10は、発光手段5の光路上に位置し、発光手段5の光軸Lと平行な光軸平面11と、光軸平面11の発光手段5側(-Z方向側)の端部に接続して形成されるとともに、発光手段5の光路上に位置し、発光手段5の光軸Lと直交する直交平面12と、光軸平面11の発光手段5と反対側(+Z方向側)の端部に接続して直交平面12の反対側(+Y方向側)に向かって形成されるとともに、発光手段5からの光を平行光にする放物面13と、光軸平面11と直交平面12と直交して接続することにより形成される角部14と、光源装置2と図示しない電源とをつなぐ電源用のリードフレーム15と、を備えている。
【0031】
透光部材10は、例えば透明樹脂を金型等に入れて一体に成型されている。また、透光部材10の内部に収容された発光手段5は、光軸平面11の延長上に配置されている。
リードフレーム15は、透光部材10内部で発光手段5等を支持固定し、Cu(銅)等の金属素材の薄板をエッチング等により加工することで形成されている。リードフレーム15は、発光手段5に電源を供給している。
【0032】
図3は、従来のエンコーダの迷光の光路を示す図である。
ここで、スケール3にて反射することにより生じた迷光の光路を説明する。
実線矢印は、光源装置2のアライメントがズレたことにより生じた傾斜した平行光である。破線矢印は、スケール3にて反射することにより生じた迷光である。また、破線矢印Aは、光源装置2が備える平行光の出射面にて反射する迷光の光路であり、破線矢印Bは、リードフレーム15にて反射する迷光の光路である。
【0033】
図3に示すように、迷光(破線矢印A,B)は、光源装置2と対向するスケール3の一面にて反射することにより生じることがある。この迷光は、光源装置2に向かって反射する。光源装置2に向かって反射した迷光は、さらに光源装置2が備える平行光の出射面(破線矢印A)やリードフレーム15(破線矢印B)等で反射し、スケール3へ入射する。スケール3へ入射した迷光は、受光手段4に入射し、受光部41が検出する干渉縞の狭範囲精度を悪化させ、検出効率を低下させる。
【0034】
図4は、本発明の第1実施形態に係るエンコーダの平行光の光路を示す図である。
図4に示すように、反射防止部材であるARコート30は、透明な薄膜である。スケール3に入射した光は、屈折してスケール3内を進行する透過光と、光源装置2と対向するスケール3の一面にて反射する反射光と、に分割される。ARコート30は、光源装置2と対向するスケール3の一面に薄膜を作ることで、ARコート30に入射するとともにスケール3の一面にて反射した反射光を光の干渉により打ち消すことができる。したがって、ARコート30は、スケール3の一面にて反射した反射光(迷光)を光源装置2に向かって出射させないため、迷光を抑制することができる。
【0035】
このような本実施形態によれば、以下の作用・効果を奏することができる。
(1)エンコーダ1は、スケール3にて反射することによって生じた迷光が受光手段4に入射することを防ぐ反射防止部材であるARコート30を備えるため、エンコーダ1内部で生じた迷光が受光手段4に入射することを防ぐことができる。また、エンコーダ1は、迷光が抑制された平行光を用いて測定を実行することができる。
したがって、エンコーダ1は、迷光を削減して信頼性を保つとともに高精度化を図ることができる。
【0036】
(2)スケール3は、光源装置2と対向する一面に反射防止部材であるARコート30を備え、ARコート30は、ARコート30に入射するとともにスケール3の一面にて反射する反射光を抑制するため、スケール3にて反射することによって生じる迷光が受光手段4に入射することを防ぐことができる。
【0037】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明では、既に説明した部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0038】
図5は、従来のエンコーダの迷光の光路を示す図である。
ここで、スケール3にて反射することにより生じた図3とは異なる迷光の光路を説明する。実線矢印は、光源装置2のアライメントがズレたことにより生じた傾斜した平行光である。破線矢印は、スケール3へ入射し目盛Cが設けられたスケール3の一面にて反射することにより生じた迷光である。また、破線矢印Aは、光源装置2が備える平行光の出射面にて反射する迷光の光路であり、破線矢印Bは、リードフレーム15にて反射する迷光の光路である。
【0039】
図5に示すように、傾斜した平行光(実線矢印)は、スケール3に入射し、目盛Cが設けられた一面にて反射することにより迷光(破線矢印A,B)を生じることがある。この迷光は、光源装置2と対向するスケール3の一面から光源装置2に向かって出射する。出射した迷光は、さらに光源装置2が備える平行光の出射面(破線矢印A)やリードフレーム15(破線矢印B)にて反射し、スケール3へ入射する。スケール3へ入射した迷光は、受光手段4に入射し、受光部41が検出する干渉縞の狭範囲精度を悪化させ、検出効率を低下させる。
【0040】
図6は、本発明の第2実施形態に係る光源装置を示す側面図、上面図および底面図である。具体的には、図6(A)は光源装置2Aの側面図であり、図6(B)は光源装置2Aの上面図であり、図6(C)は光源装置2Aの底面図である。
前記第1実施形態の光源装置2が有するリードフレーム15は、Cu等の金属素材で形成されていた。これに対して、本実施形態では、図6に示すように、光源装置2Aが有するリードフレーム15Aは、反射防止部材6を備えている点で前記第1実施形態と異なる。
具体的には、リードフレーム15Aの備える反射防止部材6は、黒色等の絶縁被覆や、光を吸収する黒色等の塗料等である。
【0041】
図7は、本発明の第2実施形態に係るエンコーダの平行光の光路を示す図である。
前記第1実施形態のスケール3が有する目盛Cは、Cu等の金属素材で形成されていた。これに対して、本実施形態では、図7に示すように、スケール3Aが有する目盛C2は、光源装置2Aと対向する一面および受光手段4と対向する一面に反射防止部材7を備えている点で前記第1実施形態と異なる。具体的には、目盛C2が備える反射防止部材7は、CrO(酸化クロム)や、黒色等の塗料等である。なお、反射防止部材7は、目盛C2の光源装置2Aと対向する一面にのみ備えられていてもよい。
【0042】
図7に示すように、スケール3Aへ入射し、目盛C2が設けられた一面にて反射することにより生じた迷光(図5参照)は、目盛C2が備える反射防止部材7により吸収されるとともに遮蔽される。また、目盛C2が設けられたスケール3Aの一面にて反射することにより生じた迷光(破線矢印)は、スケール3Aからリードフレーム15Aに向かって出射し、リードフレーム15Aが備える反射防止部材6によって吸収される。したがって、迷光は、受光手段4に入射することがないので、平行光のみが受光手段4へ入射することができる。
【0043】
このような本実施形態においても、前記第1実施形態における(1)~(2)と同様の作用、効果を奏することができる他、以下の作用、効果を奏することができる。
(3)エンコーダ1Aは、スケール3Aにて反射することによって生じた迷光が受光手段4に入射することを防ぐ反射防止部材6,7を備えるため、エンコーダ1A内部で生じた迷光が受光手段4に入射することを防ぐことができる。また、エンコーダ1Aは、迷光が抑制された平行光を用いて測定を実行することができる。
したがって、エンコーダ1Aは、迷光を削減して信頼性を保つとともに高精度化を図ることができる。
(4)リードフレーム15Aは、反射防止部材6を備えているため、スケール3Aにて反射することによって生じる迷光がリードフレーム15Aに反射して受光手段4に入射することを防ぐことができる。
(5)目盛C2は、反射防止部材7を備えているため、目盛C2が配設されたスケール3Aの一面に反射することによって迷光が生じることを防ぐことができる。
【0044】
〔第3実施形態〕
以下、本発明の第3実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明では、既に説明した部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0045】
図8は、従来のエンコーダの迷光の光路を示す図である。
ここで、スケール3にて反射することにより生じた図3および図5とは異なる迷光の光路を説明する。実線矢印は、光源装置2のアライメントがズレたことにより生じた傾斜した平行光である。また、破線矢印は、受光手段4の基部40の金属部分にて反射した光を、さらにスケール3にて反射することによって生じた迷光である。
図8に示すように、傾斜した平行光(実線矢印)は、スケール3を透過し、受光手段4の基部40が有する図示しない金属部分にて反射することがある。この迷光は、受光手段4と対向するスケール3の一面に向かって反射し、さらにスケール3にて反射することにより迷光(破線矢印)となって受光手段4に向かって入射する。受光手段4に入射した迷光は、受光部41が検出する干渉縞の狭範囲精度を悪化させ、検出効率を低下させる。
【0046】
図9は、本発明の第3実施形態に係るエンコーダを示す斜視図である。
前記第2実施形態のエンコーダ1Aの受光手段4は、反射防止部材を備えていなかった。これに対して、本実施形態のエンコーダ1Bの受光手段4Bの基部40Bは、図9に示すように、受光部41以外の位置に反射防止部材8を備えている点で前記第1実施形態および前記第2実施形態と異なる。
具体的には、反射防止部材8は、黒色等の塗料や、黒色等のゴムや樹脂等の絶縁素材である。なお、反射防止部材8は、ARコートであってもよい。
【0047】
図10は、本発明の第3実施形態に係るエンコーダの平行光の光路を示す図である。
図10に示すように、スケール3Aを透過した迷光は、受光手段4Bの基部40Bが備える反射防止部材8により吸収される。したがって、反射防止部材8は、受光手段4Bと対向するスケール3Aの一面に向かって反射し、さらにスケール3Aにて反射することにより迷光が生じることを防ぐことができる。
【0048】
このような本実施形態においても、前記第1実施形態および前記第2実施形態と同様の作用、効果を奏することができる他、以下の作用、効果を奏することができる。
(6)エンコーダ1Bは、スケール3Aにて反射することによって生じた迷光が受光手段4Bに入射することを防ぐ反射防止部材8を備えるため、エンコーダ1B内部で生じた迷光が受光手段4Bに入射することを防ぐことができる。また、エンコーダ1Bは、迷光が抑制された平行光を用いて測定を実行することができる。
したがって、エンコーダ1Bは、迷光を削減して信頼性を保つとともに高精度化を図ることができる。
【0049】
(7)受光手段4Bの基部40Bは、受光部41以外の位置に反射防止部材8を備えるため、基部40が有する金属部分に反射し、さらにスケール3Aにて反射することによって迷光が生じることを防ぐことができる。
【0050】
〔第4実施形態〕
以下、本発明の第4実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明では、既に説明した部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0051】
図11は、従来のエンコーダの迷光の光路を示す図である。
ここで、スケール3にて反射することにより生じた図3図5、及び図8とは異なる迷光の光路を説明する。実線矢印は、光源装置2のアライメントがズレたことにより生じた傾斜した平行光である。また、破線矢印は、受光手段4の受光部41にて反射した光を、さらにスケール3にて反射することによって生じた迷光である。
【0052】
図11に示すように、傾斜した平行光(実線矢印)は、スケール3を透過し、スケール3の受光手段4側の一面から出射され受光部41に入射する。この際、受光部41は、入射した平行光のすべてを吸収するわけではなく、入射した平行光の一部をスケール3の受光手段4側の一面に向かって反射する。そして、受光部41にて反射した光は、スケール3の受光手段4側の一面にて反射することにより迷光(破線矢印)となって再び受光手段4に向かって入射し、受光部41が検出する干渉縞の狭範囲精度を悪化させ、検出効率を低下させる。
【0053】
図12は、本発明の第4実施形態に係るエンコーダの平行光の光路を示す図である。
前記第1実施形態から前記第3実施形態までの前記各実施形態におけるエンコーダ1,1A~1Bのスケール3,3Aは、光源装置2,2Aと対向する+Z方向側(光源装置2,2A側)の一面に反射防止部材であるARコート30を備えていた。
本実施形態のエンコーダ1Cのスケール3Cは、図12に示すように、受光手段4Bと対向する-Z方向側(受光手段4B側)の一面に反射防止部材であるARコート31をさらに備えている点で前記各実施形態と異なる。
【0054】
反射防止部材であるARコート31は、ARコート30と同様の透明な薄膜である。そのため、ARコート31は、スケール3Cの受光手段4B側の一面に薄膜を作ることで、ARコート31に入射するとともに受光手段4B側の一面にて反射した反射光を光の干渉により打ち消すことができる。したがって、ARコート31は、受光部41にて反射した光が、スケール3Cの受光手段4B側の一面でさらに反射し迷光となることを抑制することができる。また、受光手段4Bの基部40Bが備える反射防止部材8が受光部41以外に照射された平行光を吸収しきれずに、スケール3Cの受光手段4B側の一面に向かって反射したとしても、スケール3CはARコート31を備えるため、スケール3Cの受光手段側4Bの一面にて反射することにより迷光が生じることをさらに防ぐことができる。
【0055】
このような本実施形態においても、前記各実施形態と同様の作用、効果を奏することができる他、以下の作用、効果を奏することができる。
(8)スケール3Cの受光手段4B側の一面におけるARコート31は、スケール3Cを透過した光の出射を妨げず、ARコート31に入射するとともに受光手段4B側のスケール3Cの一面にて反射する反射光を抑制するため、スケール3Cにて反射することによって生じる迷光が受光手段4Bに入射することを防ぐことができる。
【0056】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記第1実施形態では、スケール3は反射防止部材であるARコート30を備え、前記第2実施形態では、目盛C2およびリードフレーム15Aは反射防止部材6,7を備え、前記第3実施形態では、受光手段4Bの基部40Bは、反射防止部材8を備えていたが、エンコーダ内の別の部位に反射防止部材が設けられていてもよい。
【0057】
また、前記第1実施形態から前記第3実施形態では、スケール3,3Aは、ARコート30を光源装置2,2Aと対向する一面(光源装置2,2A側の一面)に備えていたが、スケールは、ARコートをスケールの受光手段側の一面に備えていてもよい。
すなわち、エンコーダは、スケールにて反射することにより生じた迷光が受光手段に入射することを防ぐ反射防止部材を備えていればよい。
【0058】
前記各実施形態では、光源装置2,2Aは、略半球状体をさらに半分にした形状の透光部材13を備えていたが、光源装置は、LED等を備えていれば、どのような構成であってもよい。
前記各実施形態では、スケール3,3A,3Cは、受光手段4,4Bと対向する面に目盛C,C2を備えていたが、受光手段4,4Bと対向する面に目盛C,C2を備えていなくてもよい。すなわち、スケールは目盛を備えていればよく、光源装置と対向する面や、スケールの内部等に目盛を備えていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上のように、本発明は、迷光を削減して信頼性を保つとともに高精度化を図ることができる光電式エンコーダに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0060】
1,1A~1C エンコーダ
2,2A 光源装置
3,3A,3C スケール
4,4B 受光手段
5 発光手段
6,7,8 反射防止部材
15,15A リードフレーム
30,31 ARコート(反射防止部材)
40,40B 基部
41 受光部
C,C2 目盛
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13