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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】熱安定性を有するポリウレタン材料
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/08 20060101AFI20220711BHJP
   C08G 18/40 20060101ALI20220711BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20220711BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20220711BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20220711BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
C08G18/08
C08G18/40
C08L75/04
C08K7/02
C08G18/76 057
C09J175/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019511367
(86)(22)【出願日】2017-08-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-19
(86)【国際出願番号】 EP2017070986
(87)【国際公開番号】W WO2018036943
(87)【国際公開日】2018-03-01
【審査請求日】2020-08-21
(31)【優先権主張番号】16185702.4
(32)【優先日】2016-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】マイアー,アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】エムゲ,アンドレアス
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-030797(JP,A)
【文献】特開昭62-257920(JP,A)
【文献】米国特許第04243768(US,A)
【文献】特開2015-004040(JP,A)
【文献】特開2012-052103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G18/00-18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン材料を製造する方法であって、
a)ジ-イソシアネートであって、2.1~2.8の範囲の官能価を有するモノメリックジフェニルメタンジイソシアネートとジフェニルメタンジイソシアネートの高級核同族体の混合物、
b)イソシアネート反応性水素原子を有する化合物、
c)少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む化合物、
d)必要に応じて、ウレタン反応を促進する触媒、
e)必要に応じて、フリーラジカル開始剤、
f)必要に応じて、更なる補助物質及び添加物質材料
を混合して反応混合物とし硬化させることを含み、
該イソシアネート反応性水素原子を有する化合物が、1分子当たり平均1.5個以上のイソシアネート反応性水素基を含有すること、
該化合物(c)の二重結合密度が21%以上であり、化合物(c)の二重結合官能価が1より大きく、該化合物(c)はイソシアネート反応性基を有さないこと、及び、化合物c)は、ビニルアクリレート、ビニルメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート又はトリメチロールプロパントリアクリレートであり、
成分(b)の化合物は別にして、イソシアネート反応性水素原子を有する更なる化合物を使用しないこと、
ジ-イソシアネート(a)のイソシアネート基とイソシアネート反応性水素原子との間の当量比が0.8~2の範囲内であり、
前記反応混合物に含まれる水が0.2質量%未満であり、
前記ポリウレタン材料がコンパクトポリウレタンである
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記イソシアネート反応性水素原子を有する化合物が、イソシアネート反応性水素原子を有する高分子化合物、及び、必要に応じて、鎖延長剤及び/又は架橋剤を含み、イソシアネート反応性水素原子を有する高分子化合物が300g/mol以上の分子量を有し、鎖延長剤及び架橋剤が300g/mol未満の分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
イソシアネート反応性水素原子を有する高分子化合物が、2~4の平均水素官能価及び50%以上の第二級OH基含有量を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記イソシアネート反応性水素原子を有する高分子化合物が、疎水性基を有する少なくとも1種のヒドロキシル官能性化合物を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリウレタン材料が一段階で得られる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む化合物(c)の割合が、成分(a)~(f)の合計質量に基づいて10~70質量%の範囲である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む前記化合物(c)が、成分(a)及び(b)のポリウレタン反応の間又はポリウレタン反応に続く工程で、フリーラジカル重合される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む化合物(c)のフリーラジカル重合が、フリーラジカル開始剤、高エネルギー放射線の照射、又は150℃を超える温度での熱によって開始される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリウレタン材料がポリウレタン系繊維複合材料であり、繊維材料を前記反応混合物で湿潤させ、次いで硬化させてポリウレタン系繊維複合材料を形成する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法によって得られるポリウレタン材料。
【請求項11】
請求項10に記載のポリウレタン材料を構造用構成部品として使用する方法。
【請求項12】
請求項10に記載のポリウレタン材料を接着剤として使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン材料を製造する方法であって、(a)ジ-及び/又はポリイソシアネート、(b)イソシアネート反応性水素原子を有する化合物、(c)少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む化合物、(d)必要に応じて、ウレタン反応を促進する触媒、(e)必要に応じて、フリーラジカル開始剤、(f)必要に応じて、更なる補助物質及び添加物質材料を混合して反応混合物とし硬化させることを含み、該イソシアネート反応性水素原子を有する化合物が、1分子当たり平均1.5個以上のイソシアネート反応性水素基を含有し、該化合物(c)の二重結合密度が21%以上であり、化合物(c)の二重結合官能価が1より大きく、該化合物(c)はイソシアネート反応性基を有しないものであり、ジ-及び/又はポリイソシアネート(a)のイソシアネート基とイソシアネート反応性水素原子との間の当量比が0.8~2の範囲内である方法に関する。本発明は、さらに、本発明の方法によって得られるポリウレタン材料に、及びポリウレタン材料、特にポリウレタン系繊維複合材料を構造部品として使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン材料は広く使用可能であるが、高温でのポリウレタン材料の使用中特性(in-service properties)については、しばしばさらに改善するに値する。また、ポリウレタン系繊維複合材料が知られており、この複合材料は典型的には引抜成形(pultrusion)、フィラメントワインディング(filament winding)プロセス、又は真空注入(vacuum infusion)のような含浸(impregnat-ion)プロセスによって得られている。このようにして得られる繊維複合材料は、比較的軽量の材料であって硬度、剛性、耐食性及び加工容易性を兼ね備えている。ポリウレタン系繊維複合材料は、例えば、車両構造体の車体外装部品として、船舶の船体(ハル)、マスト、ポール、パイロンとして、例えば、電柱又は電信柱、又は風力発電システム用ローターブレード(回転翼)として使用される。
【0003】
改善することが可能であるのは、比較的高い温度で良好な材料関連特性を維持することである。この方向の一つの試みはポリウレタン系繊維複合材料のガラス転移温度を上昇させることを包含する。また、高温耐性を示す材料が陰極電着塗装として知られる自動車産業の塗装工程に必要とされる。
【0004】
米国特許第4162357号には、ポリイソシアネート、トリメチル化触媒、少なくとも1種の重合性不飽和モノマー、有機エポキシ、イソシアネート基を基準として0.05~0.5当量のイソシアネート反応性水素原子を有する化合物を用いる、耐熱性合成樹脂の製造方法が開示されている。
【0005】
WO2008/119973、WO2015155195及びWO2016087366には、比較的高官能性ポリイソシアネートと、ヒドロキシル基と共にイソシアネート反応性基及び少なくとも1つの末端二重結合を有する化合物との反応が記載されている。イソシアネートとこの化合物との反応により粘稠液体を得て、続いて、その二重結合により、場合によりスチレンのような更なる二重結合含有化合物の存在下で、重合させて固体樹脂を形成している。
【0006】
先行技術プロセスの不利な点は、煩わしい二段階の製造プロセスが必要であることであり、特に、二重結合及びイソシアネート反応性基の両方を有する化合物は、大工業規模的には、あまり一般的でなく、比較的高価なことである。さらに、このモノオールの特性は、イソシアネート-モノオール反応では高分子量にもならず、架橋ポリウレタンも得られず、その結果、得られる生成物の機械的特性が劣ることを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第4162357号
【文献】WO2008/119973
【文献】WO2015155195
【文献】WO2016087366
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ポリウレタンの高温での機械的性質を改良するための簡単な方法を提供し、それにより、例えば陰極電着塗装方法に使用できるポリウレタンを利用可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ポリウレタン材料を製造する方法であって、(a)ジ-及び/又はポリイソシアネート、(b)イソシアネート反応性水素原子を有する化合物、(c)少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む化合物、(d)必要に応じて、ウレタン反応を促進する触媒、(e)必要に応じて、フリーラジカル開始剤、(f)必要に応じて、更なる補助物質及び添加物質材料を混合して反応混合物とし硬化させることを含み、該イソシアネート反応性水素原子を有する化合物が、1分子当たり平均1.5個以上のイソシアネート反応性水素基を含有し、該化合物(c)の二重結合密度が21%以上であり、化合物(c)の二重結合官能価(functionality)が1より大きく、該化合物(c)はイソシアネート反応性基を有さないものであり、ジ-及び/又はポリイソシアネート(a)のイソシアネート基と化合物(c)のイソシアネート反応性水素原子との間の当量比が0.8~2の範囲内である方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の目的のためのポリウレタンは、任意の公知のポリイソシアネート重付加生成物を包含する。これら重付加生成物には、イソシアネートとアルコールとから形成される付加生成物、ならびにイソシアヌレート、アロファネート、尿素、カルボジイミド、ウレトンイミン又はビウレット構造を含み得る変性ポリウレタン、及び更なるイソシアネート付加生成物が含まれる。本発明のこれらのポリウレタンは、特に熱硬化性樹脂のようなコンパクト(compact)ポリイソシアネート重付加生成物、及びポリイソシアネート重付加生成物をベースとする発泡材料、特に硬質ポリウレタンフォーム、並びにポリウレタンコーティングを含む。
【0011】
更なる好適な実施形態では、ポリウレタンは、好ましくは850g/Lを超える、好ましくは900~1400g/L、より好ましくは1000~1300g/Lの密度を有するコンパクトポリウレタンである。コンパクトポリウレタンは発泡剤を混合することなく得られる。少量の発泡剤、例えば製造方法の結果としてポリオール中に含まれる水は、本発明の目的のための発泡剤混合物として理解すべきではない。コンパクトポリウレタンを調製するための反応混合物は、好ましくは0.2質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満、特には0.05質量%未満の水を含む。コンパクトポリウレタンは、充填剤、特に繊維状充填剤を含むことが好ましい。適切な充填剤については(e)を付けて説明する。
【0012】
有用なジ-又はポリイソシアネート(a)としては、ポリウレタン製造用に知られている任意の脂肪族、脂環式又は芳香族イソシアネート、及び前記イソシアネートの任意の所望の混合物が挙げられる。具体例としては、2,2’-、2,4’-及び4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、モノメリックジフェニルメタンジイソシアネートとジフェニルメタンジイソシアネートの高級核同族体(higher-nuclear homologs)の混合物(ポリメリックMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)又はそのオリゴマー、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)又はそれらの混合物、テトラメチレンジイソシアネート又はそのオリゴマー、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)又はそのオリゴマー、ナフチレンジイソシアネート(NDI)、又はそれらの混合物がある。
【0013】
ジ-又はポリイソシアネート(a)として使用するのに好ましいのは、ジフェニルメタンジイソシアネートをベースとするイソシアネート、例えば、2,4’-MDI、4,4’-MDI、MDIの高級核同族体又はこれらの2種以上の混合物、特にポリメリックMDIである。ジ-及びポリイソシアネート(a)の官能価は、好ましくは2.0~2.9の範囲、さらに好ましくは2.1~2.8の範囲である。25℃におけるジ-又はポリイソシアネート(a)のDIN 53019-1~3の粘度は、好ましくは5~600mPas、より好ましくは10~300mPasである。
【0014】
ジ-及びポリイソシアネート(a)は、ポリイソシアネートプレポリマーの形態でも使用可能である。これらのポリイソシアネートプレポリマーは、上記のポリイソシアネート(成分(a-1))を過剰分で、例えば30~100℃、好ましくは約80℃の温度で、2つ以上のイソシアネート反応性基を有する化合物(成分(a-2))と反応させてプレポリマーを形成することによって得られる。本発明に係るポリイソシアネートプレポリマーのNCO含有量は、好ましくはNCO20~33質量%の範囲内、より好ましくはNCO25~32質量%の範囲内である。
【0015】
2つ以上のイソシアネート反応性基を有する化合物(a-2)は、想定される当業者に知られており、例えば、“Kunststoffhandbuch、7、Polyurethane”[プラスチックハンドブック、第7巻、ポリウレタン]、Carl Hanser-Verlag、第3版1993年、第3.1章に記載されている。2つ以上のイソシアネート反応性基を有する有用な化合物には、例えば、以下に(b)を付して記載するポリエーテルオール又はポリエステルオールが含まれる。2つ以上のイソシアネート反応性基を有するものとして使用される化合物(a-2)は、好ましくは第二級OH基を含むポリエーテルオール又はポリエステルオール、例えばポリプロピレンオキシドである。これらのポリエーテルオール又はポリエステルオールは、好ましくは2~4、より好ましくは2~3の官能価を有し、かつ、第二級OH基の割合が50%以上、好ましくは75%以上、特に85%以上であることが好ましい。
【0016】
1分子当たり平均して1.5個以上のイソシアネート反応性水素原子を有する有用な化合物(b)は、ポリウレタン化学で知られている化合物であって、イソシアネート反応性水素原子を有する任意の化合物を含む。これらの化合物は1.5以上、好ましくは1.7~8、より好ましくは1.9~6、特には2~4の平均官能価を有する。これらの化合物には、2~6のOH官能価及び300g/mol未満の分子量を有し、好ましくは2~4、より好ましくは2~3の官能価を有する鎖延長剤及び架橋剤、並びにイソシアネート反応性水素原子及び300g/mol以上の分子量を有する高分子化合物が含まれる。
【0017】
鎖延長剤とは2個のイソシアネート反応性水素原子を有する分子についての呼称であるのに対し、2個より多いイソシアネート反応性水素を有する分子は架橋剤と呼ばれる。これら剤は個々に又は好ましくは混合物の形態で使用可能である。300g/mol未満、より好ましくは62g/mol~300g/mol未満の範囲、特には62g/mol~250g/molの範囲の分子量を有するジアミン、ジオール及び/又はトリオールを使用することが好ましい。適切なものとして、例えば、2~14個、好ましくは2~10個の炭素原子を有する、脂肪族、脂環式及び/又は芳香脂肪族又は芳香族ジアミン及びジオール類、例えばジエチルトルエンジアミン(DEDTA)、m-フェニレンジアミン、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール及びビス(2-ヒドロキシエチル)ヒドロキノン(HQEE)、1,2-、1,3-、1,4-ジヒドロキシシクロヘキサン、ビスフェノールAビスヒドロキシエチル(エーテル)、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、トリオール類、例えば、1,2,4-、1,3,5-トリヒドロキシシクロヘキサン、グリセロール及びトリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、並びに、出発分子としてエチレンオキシド及び/又は1,2-プロピレンオキシドを、及び上記ジオール類及び/又はトリオール類を、ベースとする低分子量ヒドロキシル含有ポリアルキレンオキシドが挙げられる。架橋剤として使用するのに特に好ましいのは、エチレンオキシド及び/又は1,2-プロピレンオキシドを、より好ましくは1,2-プロピレンを、及び三官能性出発物質を、特にグリセロール及びトリメチロールプロパンを、ベースとする低分子量ヒドロキシル含有ポリアルキレンオキシドである。特に好適な鎖延長剤は、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、ビス(2-ヒドロキシエチル)ヒドロキノン及びジプロピレングリコールである。
【0018】
架橋剤及び/又は鎖延長剤を使用する場合、架橋剤及び/又は鎖延長剤(e)の割合は、成分(a)~(e)の合計質量に基づいて、典型的には1~50質量%、好ましくは2~20質量%の範囲である。
【0019】
ただし、架橋剤又は鎖延長剤は省略することもできる。しかし、機械的性質、例えば硬さを改質するのに、鎖延長剤、架橋剤、又は場合によりそれらの混合物を添加することが有利であることが分かっている。
【0020】
イソシアネート反応性水素原子を有する高分子化合物は、400~15000g/molの範囲の数平均分子量を有することが好ましい。したがって、このカテゴリーで有用な化合物は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール又はそれらの混合物の群から選択することができる。
【0021】
ポリエーテルオールは、例えば、プロピレンオキシド及び/又はエチレンオキシドなどのエポキシドから、又は、テトラヒドロフランと活性水素出発化合物、例えば、脂肪族アルコール、フェノール、アミン、カルボン酸、水又は天然系化合物、例えば、スクロース、ソルビトール又はマンニトールとから、触媒を用いて製造することができる。ここで適切な触媒としては、例えばPCT/EP2005/010124、EP90444又はWO05/090440に記載されている塩基性触媒又は複合金属シアン化物触媒を挙げることができる。
【0022】
ポリエステルロールは、例えば、好ましくはエステル化触媒の存在下で、脂肪族又は芳香族ジカルボン酸と多価アルコール、ポリチオエーテルポリオール、ポリエステルアミド、ヒドロキシル含有ポリアセタール及び/又はヒドロキシル含有脂肪族ポリカーボネートから製造することができる。使用可能な更なるポリオールは、例えば、“Kunststoffhandbuch、Band 7、Polyurethane”[プラスチックハンドブック、第7巻、ポリウレタン]、Carl Hanser Verlag、第3版1993年、第3.1章に記載されている。
【0023】
イソシアネート反応性水素原子を有する高分子化合物は疎水性基を有する化合物を含むことが好ましい。これら化合物は疎水性基を有するヒドロキシル官能化化合物であることがより好ましい。このような疎水性基は、炭素原子が、好ましくは6個を超える、より好ましくは8個を超え、かつ、100個未満の、特には10個を超え、かつ、50個未満の炭化水素基を有する。
【0024】
使用されるヒドロキシル官能化疎水性化合物はヒドロキシル官能化油脂化学化合物、油脂化学ポリオールであることが好ましい。使用することができる一連の非常に多くのヒドロキシル官能性油脂化学化合物が知られている。具体例には、ヒマシ油、ヒドロキシル変性油、例えば、グレープシード油、ブラッククミン油、カボチャ核油(pumpkin kernel oil)、ルリヂサ種油、大豆油、小麦胚芽油、菜種油、ヒマワリ油、ピーナッツ油、杏仁油、ピスタチオ核油、アーモンド油、オリーブ油、マカデミアナッツ油、アボカド油、シーバックソーン油、ゴマ油、ヘーゼルナッツ油、プリムラ(primula)油、ワイルドローズ油、サフラワー油、大麻油、アザミ油、クルミ油、及び、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、ペトロセリック酸(petroselic acid)、ガドレイン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、チムノドン酸、クルパノドン酸、セルボン酸をベースとするヒドロキシル変性脂肪酸エステルがある。ここでは、ヒマシ油及びそのアルキレンオキシド又はケトン-ホルムアルデヒド樹脂との反応生成物を使用するのが好ましい。最後に挙げた化合物は、例えば、Desmophen(登録商標)1150の名称で、バイエル社から入手可能である。
【0025】
油脂化学ポリオールの更に好適に用いられる群は、エポキシ化脂肪酸エステルの開環を同時にアルコールと反応させながら行い、場合によっては、その後さらにエステル交換反応を行って誘導することができる。油脂へのヒドロキシル基の導入は、主に、これらの生成物に含まれるオレフィン二重結合をエポキシ化し、次いで得られるエポキシ基を一価又は多価アルコールと反応させることによって達成できる。これにより、エポキシ環はヒドロキシル基に変換され、又は多価アルコールの場合にはより多数のOH基を有する構造に変換される。油脂は通常グリセロールエステルであるので、上記の反応は同時にエステル交換反応を伴う。このようにして得られる化合物は500~1500g/molの範囲の分子量を有するのが好ましい。この種の製品は、例えば、Cognis社及びAltropol社から提供されている。
【0026】
少なくとも1つの炭素-炭素二重結合、好ましくは、少なくとも1つの末端炭素-炭素二重結合を含む有用な化合物(c)としては、例えば、1つ以上のビニル基を含む化合物が挙げられる。従って、成分(c)の化合物の二重結合(すなわち、ビニル基R-CH=CH)が、各場合において、21%以上の、好ましくは23%以上、さらに好ましくは25%以上の二重結合密度を有することは本発明の本質的に肝要なことである。化合物の二重結合密度を計算するに際し、本発明の方法では、末端二重結合の質量分率を全分子量で割ることによる。この計算の目的のために、末端二重結合は27g/molの質量を有すると仮定される(-CH=CH;炭素の2倍+水素の3倍)。
【0027】
化合物(c)は、イソシアネート反応性水素原子を含まない。典型的な化合物(c)としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン、ビニルアクリレート、ビニルメタクリレート、メトキシブタジエン、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリブタジエンが挙げられる。ここで、化合物(c)の二重結合官能価は1より大きく、例えば2又は3である。複数の化合物(c)を使用する場合には、その二重結合密度は、使用する成分の数平均二重結合密度である。トリメチロールプロパントリアクリレートは好適なエチレン性不飽和モノマーである。
【0028】
少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む化合物(c)の割合は、好ましくは10~70質量%の範囲、より好ましくは25~60質量%の範囲、特に30~50質量%の範囲である。この割合は、全て、成分(a)~(f)の合計質量に基づく。
【0029】
有用な触媒(d)として慣用のタイプのポリウレタン用触媒が挙げられる。触媒は、イソシアネート反応性水素原子を有する化合物(b)とジ-及びポリイソシアネート(a)との反応を相当な程度まで促進する。ポリウレタンを製造するのに有用な慣用触媒としては、例えば、2,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジンのようなアミジン類、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N-シクロヘキシルモルホリン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルブタンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルジアミノエチルエーテル、ビス(ジメチルアミノプロピル)尿素、ジメチルピペラジン、1,2-ジメチルイミダゾール、1-アザビシクロ(3,3,0)オクタン、好ましくは1,4-ジアザビシクロ(2,2,2)オクタンのような第三級アミン類、及びトリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン及びジメチルエタノールアミンのようなアルカノールアミン化合物類が挙げられる。同様に、有機金属化合物も有用であり、好ましくは、有機カルボン酸のスズ(II)塩、例えば、スズ(II)アセテート、スズ(II)オクトエート、スズ(II)エチルヘキソエート及びスズ(II)ラウレート、及び、有機カルボン酸のジアルキルスズ(IV)塩、例えば、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート及びジオクチルスズジアセテートのような有機スズ化合物、並びに、ビスマス(III)ネオデカノエート、ビスマス2-エチルヘキサノエート及びビスマスオクタノエートのようなビスマスカルボン酸塩、又はそれらの混合物が挙げられる。有機金属化合物は、単独で、又は好ましくは強塩基性アミンと組み合わせて使用可能である。成分(b)がエステルであるとき、アミン触媒を専ら使用することが好ましい。
【0030】
触媒(d)は、成分(b)の質量に基づいて、例えば触媒又は触媒の組合せとして0.001~5質量%、特に0.05~2質量%の濃度で使用可能である。
【0031】
成分(c)の二重結合は、成分(a)及び(b)のポリウレタン反応の間に、又はそのポリウレタン反応の次の工程でフリーラジカル重合させることができる。本発明に係るポリウレタン材料の二重結合の架橋は、過酸化物又はAIBNのような慣用のフリーラジカル開始剤(e)を用いて行うことができる。この架橋は、さらに、高エネルギー放射線、例えば紫外線、電子ビーム放射線又はβ-又はγ-放射線の照射によっても達成することができる。架橋を達成するさらに可能な方法は、酸素の存在下で150℃を超える、好ましくは180℃を超える温度での熱架橋である。二重結合を架橋するための好適な方法としては、慣用のフリーラジカル開始剤によるか、又は高エネルギー放射線の照射によるものであり、より好ましくは慣用のフリーラジカル開始剤によるものである。
【0032】
補助物質及び/又は添加物質材料(g)を使用することもできる。ポリウレタンを製造するために既知の補助物質及び添加物質材料は、いずれもここで使用可能である。適切な具体例としては、界面活性物質、発泡剤、泡安定剤、気泡調整剤、剥離剤、充填剤、染料、顔料、難燃剤、加水分解制御剤、静真菌性物質及び静菌性物質が挙げられる。この種の物質は公知であり、例えば、“Kunststoffhandbuch、Band 7、Polyurethane”[プラスチックスマニュアル、第7巻、ポリウレタン]、Carl Hanser Verlag、第3版、1993、第3.4.4章及び第3.4.6章~第3.4.11章に記載されている。
【0033】
これとは対照的には、エポキシ含有化合物は本発明のポリウレタン材料を製造するのに必要とされない。本発明のポリウレタン材料はエポキシ含有化合物を実質的に含まないことが好ましい。その結果、エポキシ含有化合物の割合は、成分(a)~(f)の合計質量に基づいて1質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満である。
【0034】
一般的に、本発明のポリウレタン材料を製造するとき、ジ-及び/又はポリイソシアネート(a)、イソシアネート反応性水素原子を有する化合物(b)、及び、使用する場合には、例えば発泡剤のようなイソシアネート反応性水素を有する更なる化合物を、ポリイソシアネート(a)のNCO基と更なる成分上のイソシアネート反応性水素原子の総合計との間の当量比が0.8~2の範囲内、好ましくは0.9~1.2の範囲内、より好ましくは0.95~1.1の範囲内となるような量で反応させる。ここで、1:1の比が100のイソシアネート指数に対応する。
【0035】
好適な一実施形態では、本発明の硬化ポリウレタン材料は一段階で得られる。ここで「一段階で」とは、成形品を製造するための成分(a)~(c)、及び、存在する場合には成分(d)~(f)を、全て、反応の開始前に一緒に混合することを意味すると理解されるべきである。その後、更なる化合物を混合することなく、特にイソシアネート反応性基を含む更なる化合物を混合することなく、反応を実施し硬化ポリウレタン材料を得る。
【0036】
本発明の硬化ポリウレタン材料は固体である。本発明の文脈において、DIN EN ISO 868のショア硬度が10ショアAより大きい、好ましくは30ショアAより大きい、特に50ショアAより大きい場合、個体が関係する。さらに好適な一実施形態では、本発明の硬化ポリウレタン材料は、好ましくは10kJ/mより大きい、より好ましくは20kJ/mを超える、特には30kJ/mより大きい、高いDIN EN ISO 179-1シャルピーノッチ付き衝撃強度(高衝撃強度)を有する。本発明に合致する硬化ポリウレタン材料の存在は、成分(c)の二重結合の架橋反応とは無関係である。すなわち、硬化ポリウレタン材料の定義は、二重結合が互いに全てが、又は幾つかが反応したか、又は全く反応していなくても、ショア硬度が達成されると直ちに満たされる。通常、硬度は、二重結合の架橋反応が起こると、上昇し続ける。
【0037】
本発明に従うポリウレタンを調製するための特定の出発物質(a)~(g)は、それぞれ、本発明に従うものとして製造されるべきポリウレタンが熱可塑性ポリウレタン、硬質フォーム又は熱硬化性であるかどうかにかかわらず、定量的及び定性的に最小限にしか異ならない。例えば、発泡剤はコンパクトポリウレタンを製造するためには使用されず、また、熱可塑性ポリウレタン用に主に使用されるのは厳密に二官能性の出発物質である。さらに、例えば、2つ以上の反応性水素原子を有する、比較的高分子量の化合物の官能価および鎖長によって、本発明によるポリウレタンの弾性及び硬度を変えることが可能である。この種の変更は当業者には既知である。
【0038】
反応物質としては、コンパクトポリウレタンの製造にあっては、例えばEP0989146又はEP1460094に、硬質フォームの製造にあっては、例えばPCT/EP2005/010955に記載されている。いずれの場合も、かかる文献に記載の反応物質に、化合物(c)をさらに混合する。
【0039】
本発明は、また、本発明の方法、及び本発明の方法によって得られるポリウレタンを提供する。
【0040】
本発明の好適な一実施形態では、本発明のポリウレタン材料はポリウレタン系繊維複合材料である。ポリウレタン系繊維複合材料の製造は、反応混合物で繊維を湿潤させ(濡らし)、次いで硬化させてポリウレタン系繊維複合材料を形成することを包含する。使用する繊維は、好ましくはガラス繊維、炭素繊維、ポリエステル繊維、天然繊維、例えば、セルロース繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、玄武岩繊維、ホウ素繊維、ザイロン(Zylon)繊維(ポリ(p-フェニレン-2,6-ベンゾビスオキサゾール)、炭化ケイ素繊維、アスベスト繊維、金属繊維、及びそれらの組合せである。繊維を湿潤させるための技術は、限定されず、通例/一般に知られている。この技術には、例えば、フィラメントワインディング法、引抜成形法、ハンドラミネーション(hand lamination)法、及び真空注入法のような注入法(infusion process)が含まれる。
【0041】
本発明のポリウレタン材料、特に本発明のポリウレタン系繊維複合材料は、改善されたレベルの耐熱性、上昇したガラス転移温度、水及び疎水性液体に対する非常に良好な耐性、及び非常に良好な持続荷重特性(loading properties)を示す。
【0042】
例えば、本発明のポリウレタン系繊維複合材料は、例えば、接着剤として、特に著しく熱応力を受けた領域用の接着剤として、構造用構成部品として、例えば、フェンダーなどの車両構成例の本体外装部品として、船舶の船体(ハル)、例えば家庭用の熱水容器として、電動機の部品、マスト、ポール、パイロンとして、例えば電柱又は電信柱、碍子、及びその他の高電圧技術の構成部品、風力発電システム用ローターブレードとして、又はパイプとして、例えば、石油及びガス産業用の繊維強化パイプラインとして有用である。本発明のポリウレタン材料は、特に自動車産業において使用されるような陰極電着塗装における使用にさらに適している。
【実施例
【0043】
以下の実施例で本発明について説明する。
【0044】
使用材料:
ポリオール1:ヒマシ油
ポリオール2:グリセロール出発のポリプロピレンオキシド、官能価3.0及びOH価805mgKOH/g
ポリオール3:スクロース及びジエチレングリコール共出発の、プロピレンオキシドキャップを有するポリプロピレンオキシド/ポリエチレンオキシド、官能価4.5及びOH価400mgKOH/g
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート、二重結合密度26.35
ポリオール5:ジプロピレングリコール
DPGDA:ジプロピレングリコールジアクリレート、二重結合密度21.5
iso 1:ポリメリックMDI
厚さ2mmの試験板を表1に従ってイソシアネート指数120でキャストした。特に記載のない限り、同表の記載事項はすべて質量部である。続いて、DSCを用いて試料のガラス転移温度を測定した。この目的で、試料を20K/分の速度で室温から300℃になるように2回加熱した。ガラス転移温度は2回目の加熱データから決定した。
【0045】
【表1】
【0046】
本発明のポリウレタンは、炭素-炭素二重結合化合物を含まない比較材料と対比して、本発明のポリウレタン材料についてのガラス転移温度が顕著に上昇し、耐熱性も改善したことを示している。同表は、さらに、DPGDAと対比して高い二重結合密度により、顕著に上昇したガラス転移温度が実現することを示している。