IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 昭和産業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】ベーカリー製品用ミックス粉
(51)【国際特許分類】
   A21D 2/18 20060101AFI20220711BHJP
   A21D 2/16 20060101ALI20220711BHJP
   A21D 10/00 20060101ALI20220711BHJP
   A21D 13/00 20170101ALI20220711BHJP
【FI】
A21D2/18
A21D2/16
A21D10/00
A21D13/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018044965
(22)【出願日】2018-03-13
(65)【公開番号】P2019154308
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000187079
【氏名又は名称】昭和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(74)【代理人】
【識別番号】100206689
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 恵理子
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 良太
(72)【発明者】
【氏名】森 彰子
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-230351(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0077991(KR,A)
【文献】特開平01-320962(JP,A)
【文献】特開2008-237054(JP,A)
【文献】特開2004-073140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D 2/00-17/00
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッター生地を加熱して得られるベーカリー製品(ただし、シューを除く。)用のミックス粉において、油脂加工澱粉(ただし、食用蛋白含有素材を含むものを除く。)が配合されていることを特徴とする、ミックス粉。
【請求項2】
上記油脂加工澱粉が、ミックス粉に含まれる澱粉100質量部のうち2質量部以上配合されている、請求項1に記載のミックス粉。
【請求項3】
請求項1または2に記載のミックス粉を含む材料を原材料とする、型または焼き板で加熱したベーカリー製品(ただし、シューを除く。)
【請求項4】
上記ベーカリー製品が、たい焼き、どら焼き、今川焼き、人形焼き、鈴カステラ、たこ焼き、お好み焼き、ホットケーキ、パンケーキ、ワッフル、クレープ、最中皮、ウエハース、スポンジケーキ、蒸しパン、または蒸しケーキである、請求項3に記載のベーカリー製品。
【請求項5】
請求項1または2に記載のミックス粉を含むバッター生地を調製し、該バッター生地を型または焼き板で加熱することを特徴とする、ベーカリー製品(ただし、シューを除く。)の製造方法。
【請求項6】
油脂加工澱粉を有効成分とする、バッター生地を加熱して得られるベーカリー製品の剥離性向上剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッター生地を加熱して得られるベーカリー製品用のミックス粉、および、そのベーカリー製品用のミックス粉を用いて製造するベーカリー製品、および、そのベーカリー製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ベーカリー製品には食感をかえることを目的として、澱粉や加工澱粉が使用されてきた。特に、もちもちした食感を付与したい場合には、膨潤しやすい澱粉を配合することが多く、このような澱粉は、加熱時にアルファ化され膨潤することで、生地が型の細部まで入りこみ、型からの剥離性が不良となることが多い。
しかし、たい焼きなど型を使用するベーカリー製品を安定して製造するためには、型からの剥離性が良好であることが必須の条件である。
【0003】
そのために、型または焼き板で加熱して製造するベーカリー製品の型または焼き板からの剥離を容易にするために、通常は油脂組成物からなる離型剤が用いられている。離型剤としては、型または焼き板の表面に塗布するタイプのものと、ベーカリー製品の生地に配合するタイプのものがあり、その作業性の簡便さから、配合するタイプのものが望まれている。
【0004】
たとえば、ジグリセリドを3重量%以上含有する食用油脂に、酒石酸又はその塩を配合して焼成食品の離型性を改善した生地練り込み型の油脂組成物が提案されている(特許文献1)。この油脂組成物は、食用油脂を主体とするものであり、従来の離型油の延長に位置するものである。また、油脂組成物でないものとしては、焼き菓子の生地において、アラビアガム等の糊料を含有させ、澱粉粒の膨潤を抑制するよう調整することにより、食感を良好に保ちながら生地の剥離性を向上させること(特許文献2)が提案されている。
【0005】
一方、油脂加工澱粉は、澱粉に微量の食用油脂を付着させて処理することで製造される食品用澱粉であり、加熱調理時にタンパク質成分と結着する機能を有していることから、一般にはフライ食品のバッター用途として利用されている。
また、特定の溶解度および乳化能を有する油脂加工澱粉が、食肉加工品等の食品に配合した際の食感改良効果および歩留まり向上効果に優れることが報告されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-116324号公報
【文献】特開2002-281889号公報
【文献】国際公開2012/164801号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、もちもちとした食感はそのままで、型または焼き板からの剥離性を改良することのできる、バッター生地を加熱して得られるベーカリー製品用のミックス粉を提供することである。また、該ベーカリー製品用のミックス粉を用いて製造した、従来のような離型油を用いなくとも型または焼き板からの剥離性が改良されるベーカリー製品、およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく、もちもちした食感はそのままで、型または焼き板からの剥離性が良好な、バッター生地を加熱して得られるベーカリー製品用のミックス粉について鋭意研究した結果、澱粉に微量の食用油脂を付着させて処理した油脂加工澱粉をミックス粉に少量配合することで、型または焼き板でバッター生地を加熱して得られるベーカリー製品の剥離性を改良でき、食感はそのままで離型油を使用することなしに剥離性に優れたベーカリー製品を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明において、型または焼き板でバッター生地を加熱して得られるベーカリー製品としては、穀粉や澱粉を食品原材料として調製される、たい焼き、どら焼き、今川焼き、人形焼き、鈴カステラ、たこ焼き、お好み焼き、ホットケーキ、パンケーキ、ワッフル、クレープ、最中皮、ウエハース、スポンジケーキ、蒸しパン、蒸しケーキ等を挙げることができる。このような食品において、澱粉を比較的多く配合する場合に剥離性に問題が生じやすいので、澱粉を多く含む製品でより効果を発揮する。ミックス粉100質量部中に澱粉を5質量部以上含む製品、好ましくは10質量部以上含む製品で、顕著な効果がある。
【0010】
すなわち、本発明は、以下(1)、(2)のベーカリー製品用のミックス粉からなる。
(1)バッター生地を加熱して得られるベーカリー製品(ただし、シューを除く。)用のミックス粉において、油脂加工澱粉(ただし、食用蛋白含有素材を含むものを除く。)が配合されていることを特徴とする、ミックス粉。
(2)上記油脂加工澱粉が、ミックス粉に含まれる澱粉100質量部のうち2質量部以上配合されている、前記(1)に記載のミックス粉。
【0011】
また、本発明は、(3)、(4)のベーカリー製品、(5)のベーカリー製品の製造方法、または(6)のベーカリー製品の剥離性向上剤からなる。
(3)前記(1)または(2)に記載のミックス粉を含む材料を原材料とする、型または焼き板で加熱したベーカリー製品(ただし、シューを除く。)
(4)上記ベーカリー製品が、たい焼き、どら焼き、今川焼き、人形焼き、鈴カステラ、たこ焼き、お好み焼き、ホットケーキ、パンケーキ、ワッフル、クレープ、最中皮、ウエハース、スポンジケーキ、蒸しパン、または蒸しケーキである、上記(3)に記載のベーカリー製品。
(5)前記(1)または(2)に記載のミックス粉を含むバッター生地を調製し、該バッター生地を型または焼き板で加熱することを特徴とする、ベーカリー製品(ただし、シューを除く。)の製造方法。
(6)油脂加工澱粉を有効成分とする、バッター生地を加熱して得られるベーカリー製品の剥離性向上剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、従来のように離型油を型や焼き板の表面に塗布したり、生地に練り込むことなしに、剥離性に優れた、型または焼き板で加熱して製造するベーカリー製品を提供することができ、離型油によるベーカリー製品の風味への影響をなくし、食感はそのままに剥離性が改善されたベーカリー製品を提供することができる。
【0013】
油脂加工澱粉は、澱粉に微量の食用油脂を付着させて処理することで製造される食品用澱粉であり、加熱調理時にタンパク質成分と結着する機能を有していることからフライ食品のバッター用途として主に用いられている。油脂加工澱粉における油脂分は0.3%程度の極少量であり、油脂加工澱粉をベーカリー製品用ミックス粉に少量配合するだけで、バッター生地を加熱して得られるベーカリー製品の剥離性が改善されるとは、予測できないことであった。本発明により油脂加工澱粉の用途として、バッター生地を加熱して得られるベーカリー製品の型または焼き板からの剥離性向上剤という新たな用途を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において、バッター生地を加熱して得られるベーカリー製品とは、穀粉および/または澱粉を主原料とするバッター生地を、焼いたり、蒸したり、マイクロ波加熱することで得られるもので、具体的には、たい焼き、どら焼き、今川焼き、人形焼き、鈴カステラ、たこ焼き、お好み焼き、ホットケーキ、パンケーキ、ワッフル、クレープ、最中皮、ウエハース、スポンジケーキ、蒸しパン、蒸しケーキ等が挙げられる。
【0015】
バッター生地は、主として粉(穀粉および/または澱粉)及び水を含み、場合により他の成分が添加されたものである。ベーカリー製品の種類にもよるが、バッター生地の一般的な配合は、粉100質量部に対し水分を100質量部以上含み、パイプを流れることのできる懸濁液の状態であり、これに対して、ドウ生地は、やや堅く巻いたり平らにしたりすることができ、一般的な含水量は粉100質量部に対し70質量部未満である。
【0016】
本発明において、ベーカリー製品用のミックス粉とは、バッター生地の作製に必要な穀粉、澱粉、食塩、ベーキングパウダー、イースト、糖類、香料等の原料の混合物をいう。このミックス粉に水やその他の液体を添加して混合撹拌するだけで、基本的なバッター生地を作製することができるものである。
【0017】
穀粉としては、小麦粉、米粉(上新粉、餅粉など)、コーンフラワー、ソバ粉、ライ麦粉、大麦粉、大豆粉等が挙げられる。澱粉としては、本発明で使用する油脂加工澱粉のほかに、未加工の澱粉、加工澱粉等が挙げられる。ベーキングパウダー、活性グルテン、乳化剤、糖類、食塩、酵素、酵母、卵、乳製品、油脂類、香辛料、食物繊維などを、ベーカリー製品の種類に応じて種々組み合わせて使用することができる。
【0018】
本発明において、油脂加工澱粉とは、原料澱粉に食用油脂および/または食用油脂類縁物質を0.005質量%~5質量%、好ましくは0.01質量%~2質量%、より好ましくは、0.02質量%~1質量%添加した後、均一になるように混合して、加熱や熟成等の操作を備えた工程を経ることにより生産される澱粉質素材をいう。
【0019】
油脂加工澱粉の原料澱粉としては特に限定されず、公知のものを1種又は2種以上選択することができる。例えば、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、タピオカ澱粉、米澱粉、甘藷澱粉、またはこれらの加工澱粉等が挙げられる。加工澱粉には、アセチル化、ヒドロキシプロピル化、エーテル化、リン酸化、オクテニルコハク酸化、架橋化等を単独または組み合わせたものが挙げられる。
【0020】
油脂加工澱粉に使用される食用油脂は特に限定されず、公知のものを1種又は2種以上選択することができる。例えば、植物油脂(大豆油、コーン油、サフラワー油、ナタネ油、ゴマ油、エゴマ油、アマニ油、綿実油、ヒマワリ油、落花生油、オリーブ油、コメ油、パーム油等)、動物油脂、中鎖脂肪酸トリグリセリド、またこれらに分別、水素添加、エステル交換等の加工を行った加工油脂等が挙げられる。油脂加工澱粉に使用される食用油脂類縁物質としては特に限定されず、乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等)、リン脂質、脂肪酸モノグリセリド、ジグリセリド等が挙げられる。原料澱粉と食用油脂および/または食用油脂類縁物質のほかに、pH調整剤等の副資材を使用することもできる。
【0021】
本発明においては油脂加工澱粉を、ミックス粉に含まれる澱粉100質量部中2質量部以上、好ましくは、3.5質量部以上配合することにより、食感はそのままに剥離性が改善されたベーカリー製品を製造することができる。油脂加工澱粉を澱粉100質量部に対して2質量部未満で使用した場合には、加熱されたベーカリー製品の型または焼き板からの剥離性が十分でなくなる。
【0022】
本発明のベーカリー製品用のミックス粉を用いてベーカリー製品を製造するには、ベーカリー製品用のミックス粉として、本発明のベーカリー製品用のミックス粉を使用する点を除いて、通常のベーカリー製品の製造原料、製造処理条件及び製造方法と特に変わるところなく行うことができる。例えば、本発明のベーカリー製品用のミックス粉と水を混合して、該混合により調製されたバッター生地を用いて、所定の方法で調製された食品材料を、型または焼き板で加熱することにより、食感と剥離性が改良されたベーカリー製品を製造することができる。
【0023】
上記バッター生地には、ベーカリー製品の種類によって、各種具材を添加することができる。例えば、たこ焼きであれば、タコのぶつ切り、青ネギ、紅ショウガ等が添加され、お好み焼きであれば、お好み焼きの各種具材を添加することができる。
【0024】
このように調製したバッター生地を加熱することにより、所望のベーカリー製品を得ることができる。ベーカリー製品に応じて、「焼く」、「蒸す」、「マイクロ波加熱する」ことができるが、焼く場合により効果を発揮する。例えば、たい焼きの場合は、バッター生地をたい焼き型に充填して餡等のフィリングを加え、上下の型で挟み焼きする。たこ焼きの場合は、バッター生地をたこ焼き用焼き型に流し込んでひっくり返しながら焼き、お好み焼きの場合は、バッター生地を鉄板上で焼く。また、蒸しパンの場合は、バッター生地を蒸し型に入れて蒸す。型にバッター生地を入れて、電子レンジ等でマイクロ波加熱することで、蒸しパン様のベーカリー製品を調製することもできる。
【0025】
使用する型や焼き板の材質や形状は特に限定されない。型や焼き板の材質としては、例えば、アルミ、銅、鉄、ステンレス等の金属、紙、シリコン等が挙げられる。また、型の形状としては、丸型、多角形型、半球型、釣鐘型、円盤型等のほかに、たい焼きや人形焼きのような複雑な形状の型も使用することができる。
【0026】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。また、以下の実施例において、「部」とは「質量部」であり、「%」とは「質量%」である。
[試験例1]
【0027】
以下に示すとおり、たい焼きを作製し、評価した。
【0028】
≪調製方法≫
表1に示す配合で、ミックス粉を調製した。小麦粉、澱粉は、以下に示すものを使用した。
小麦粉:キングスター(昭和産業株式会社)
加工澱粉A:SF-4000(昭和産業株式会社)
加工澱粉B:SF-1450(昭和産業株式会社)
油脂加工澱粉A:加工澱粉A100質量部に対し、サフラワー油(昭和産業株式会社)0.2質量部を添加して、カッターミキサーにて撹拌混合して混合物を得、該混合物をアルミバットに薄く広げ、140℃で1時間加熱熟成した後、室温にて冷却して、得られた油脂加工澱粉
油脂加工澱粉B:加工澱粉B100質量部に対し、サフラワー油(昭和産業株式会社)0.2質量部を添加して、カッターミキサーにて撹拌混合して混合物を得、該混合物をアルミバットに薄く広げ、100℃で3時間加熱熟成した後、室温にて冷却して、得られた油脂加工澱粉
油脂加工澱粉C:サナスバインドA(株式会社サナス)
油脂加工澱粉D:BT-800(三和澱粉工業株式会社)
【0029】
表1の配合によりそれぞれ調製したミックス粉(実施例1~10、比較例1)に、表1に示す加水率で水を加え、ダマがなくなるまでホイッパーで混合した。たい焼き焼成機で、生地50g/個とあんこ40g/個を、180℃で4分20秒間焼成した。
【0030】
≪評価方法≫
焼成後のたい焼きをたい焼き焼成機から取り出す際、焼成面への生地の付着状況を目視で評価した。各ミックス粉について、10個ずつたい焼きを焼成して評価し、平均点を算出した。
≪評価基準≫
5:焼成機への付着がまったくなく、剥離性が非常によい
4:焼成機への付着がほとんどなく、剥離性がよい
3:焼成機への付着がややあるが、許容範囲
2:焼成機への付着があり、剥離性が悪い
1:焼成機にはげしく付着しており、剥離性が非常に悪い
【0031】
≪配合≫
【表1】
【0032】
≪結果≫
ミックス粉100部のうち、油脂加工澱粉を3~40部配合したたい焼き用ミックス粉を用いてたい焼きを焼成して、その焼き型からの剥離性を表1に示した。焼き型の形状が最も複雑なたい焼きにおいて、澱粉100部のうち4部を油脂加工澱粉に置き換えただけで焼き型から顕著に剥がれ易くなった(実施例1)。7部を油脂加工澱粉に置き換えれば、ほぼ焼成機への付着がなく、剥離性が非常によいという結果が得られた(実施例2、6)。しかも、もちもちとした食感はそのままであった。
[試験例2]
【0033】
以下のとおり、蒸しパンを作製し、評価した。
【0034】
≪調製方法≫
表2に示す配合で、蒸しパン用ミックス粉を調製した。小麦粉、澱粉は、試験例1と同じものを使用した。
【0035】
表2の配合によりそれぞれ調製したミックス粉(実施例11~16、比較例2)に、表2に示す割合で水と全卵を加え、ダマがなくなるまでホイッパーで混合した。丸型セルクル(直径8.5cm×高さ3cm)に紙型(グラシンケース)をはめ、生地を85g流し入れた。95℃の蒸し器で17分間蒸した後、室温で30分間放冷した。
【0036】
≪評価方法≫
放冷後の蒸しパンから紙型をはがし取る際の、紙型への生地の付着状況を目視で評価した。各ミックス粉について、10個ずつ蒸しパンを作製して評価し、平均点を算出した。
≪評価基準≫
5:紙型への付着がまったくなく、剥離性が非常によい
4:紙型への付着がほとんどなく、剥離性がよい
3:紙型への付着がややあるが、許容範囲
2:紙型への付着があり、剥離性が悪い
1:紙型にはげしく付着しており、剥離性が非常に悪い
【0037】
≪配合≫
【表2】
【0038】
≪結果≫
ミックス粉100部のうち、油脂加工澱粉を4部または12部配合した蒸しパン用ミックス粉を用いて製造した蒸しパンの、その紙型からの剥離性を表2に示した。澱粉100部のうち33部を油脂加工澱粉に置き換えると、紙型からの剥離性が顕著に向上し剥がれ易くなった(実施例11、13)。澱粉100部をすべて油脂加工澱粉に置き換えれば、ほぼ紙型への付着がなく、剥離性が非常によいという結果が得られ、しかも、もちもちとした食感はそのままであった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
型または焼き板で焼いて製造するベーカリー製品においては、型または焼き板に生地が付着してしまうことによるベーカリー製品の見た目の悪さと歩留まりの悪さの解消が望まれていた。
離型油を型または焼き板の表面に塗布するやり方では、作業性が悪いため、ベーカリー製品に配合するタイプのものが望まれていた。本発明により、離型油を生地に練り込むことなく、離型油によるベーカリー製品の風味への影響をなくしつつ、食感はそのままで剥離性に優れた、バッター生地を加熱して得られるベーカリー製品用のミックス粉を提供することができる。