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特許7102418蒸発した材料を基板の上に堆積するための蒸発源、堆積装置、蒸発した材料の蒸気圧を測定するための方法、及び蒸発した材料の蒸発速度を決定するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】蒸発した材料を基板の上に堆積するための蒸発源、堆積装置、蒸発した材料の蒸気圧を測定するための方法、及び蒸発した材料の蒸発速度を決定するための方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/24 20060101AFI20220711BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220711BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
C23C14/24 A
C23C14/24 U
H05B33/14 A
H05B33/10
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019538161
(86)(22)【出願日】2018-04-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2018059893
(87)【国際公開番号】W WO2019201434
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2019-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ゲーベレ, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ブッシュベック, ヴォルフガング
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/038631(WO,A1)
【文献】特開2015-063724(JP,A)
【文献】特表2017-535677(JP,A)
【文献】特開2013-139620(JP,A)
【文献】特開2012-046780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/24
H01L 51/50
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に蒸発した材料を堆積するための蒸発源(100)であって、
-材料蒸発のためのるつぼ(110)と、
-前記蒸発した材料を前記基板に供給するための1つ又は複数の横方向に向いた出口(125)を備えた分配アセンブリ(120)であって、前記るつぼと流体連結している分配アセンブリ(120)と、
-前記分配アセンブリ(120)の内部空間(121)を圧力センサ(145)に結合するチューブ(140)を含む測定アセンブリ(130)と
を備え、
以下:
前記チューブ(140)が、前記分配アセンブリ(120)の前記内部空間(121)に配置された第1の部分(140A)、及び前記分配アセンブリ(120)の外側に配置された第2の部分(140B)を有する;又は
前記チューブ(140)が、前記分配アセンブリ(120)と前記分配アセンブリ(120)のヒータ(126)との間の空間(122)に部分的に配置される;又は
前記測定アセンブリ(130)が、前記チューブ(140)の周りに少なくとも部分的に配置された加熱装置(134)を更に含む、
のいずれかの特徴を有し、
前記測定アセンブリ(130)が、前記チューブ(140)に結合されたパージガス導入デバイス(131)を更に備える、蒸発源(100)。
【請求項2】
前記圧力センサ(145)が、機械圧力センサ、容量性圧力センサ、及び熱伝導率/対流真空ゲージ(ピラニタイプ)から成るグループから選択された圧力センサである、請求項1に記載の蒸発源(100)。
【請求項3】
前記パージガス導入デバイス(131)が、不活性ガス源(136)に結合された質量流量コントローラ(135)を含む、請求項1又は2に記載の蒸発源(100)。
【請求項4】
前記パージガス導入デバイス(131)が、0.1sccm≦Q’≦1.0sccmのパージガス流Q’を供給するように構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の蒸発源(100)。
【請求項5】
基板の上に複数の蒸発した材料を堆積するための蒸発源(100)であって、
-第1の材料の蒸発のための第1のるつぼ(110A)と、
-第1の蒸発した材料を前記基板に供給するための1つ又は複数の横方向に向いた出口を備えた第1の分配アセンブリ(120A)であって、前記第1のるつぼと流体連結している第1の分配アセンブリ(120A)と、
-第2の材料の蒸発のための第2のるつぼ(110B)と、
-第2の蒸発した材料を前記基板に供給するための1つ又は複数の横方向に向いた出口を備えた第2の分配アセンブリ(120B)であって、前記第2のるつぼと流体連結している第2の分配アセンブリ(120B)と、
-チューブ装置(144)及びパージガス導入装置を含む測定アセンブリ(130)と
を備え、
前記チューブ装置(144)が、第1のチューブ(141)及び第2のチューブ(142)を有し、前記第1のチューブ(141)が、前記第1の分配アセンブリ(120A)の第1の内部空間(121A)を圧力センサ(145)に結合し、前記第2のチューブ(142)が、前記第2の分配アセンブリ(120B)の第2の内部空間(121B)を前記圧力センサ(145)に結合し、
前記パージガス導入装置が、前記第1のチューブ(141)に結合された第1パージガス導入デバイス(131A)、及び前記第2のチューブ(142)に結合された第2パージガス導入デバイス(131B)を有し、
以下、
前記第1のチューブ(141)が、前記第1の分配アセンブリ(120A)の前記第1の内部空間(121A)に配置された第1の部分(140A)、及び前記第1の分配アセンブリ(120A)の外側に配置された第2の部分(140B)を有し、前記第2のチューブ(142)が、前記第2の分配アセンブリ(120B)の前記第2の内部空間(121B)に配置された第1の部分(140A)を有し、及び前記第2の分配アセンブリ(120B)の外側に配置された第2の部分(140B)を有する;又は
前記第1のチューブ(141)が、前記第1の分配アセンブリ(120A)と前記第1の分配アセンブリ(120A)のヒータとの間の空間に部分的に配置され、前記第2のチューブ(142)が、前記第2の分配アセンブリ(120B)と前記第2の分配アセンブリ(120B)のヒータとの間の空間に部分的に配置される;又は
前記測定アセンブリ(130)が、前記第1のチューブ(141)及び前記第2のチューブ(142)の周りに少なくとも部分的に配置された加熱装置を更に含む、
のいずれかの特徴を有する、
蒸発源(100)。
【請求項6】
基板の上に蒸発した材料を堆積するための蒸発源(100)であって、
-材料蒸発のためのるつぼ(110)と、
-前記蒸発した材料を前記基板に供給するための1つ又は複数の横方向に向いた出口(125)を備えた分配アセンブリ(120)であって、前記るつぼと流体連結している分配アセンブリ(120)と、
-前記るつぼ(110)の内部空間(111)を圧力センサ(145)に結合するチューブ(140)を含む測定アセンブリ(130)と
を備え、
前記チューブ(140)が、前記るつぼ(110)の内部空間(111)に配置された第1の部分(140A)、及び前記るつぼ(110)の外側に配置された第2の部分(140B)を有する、蒸発源(100)。
【請求項7】
材料を基板に塗布するための堆積装置(200)であって、
-真空チャンバ(210)と、
-前記真空チャンバ(210)に設けられた蒸発源(100)であって、るつぼ(110)及び分配アセンブリ(120)を有する蒸発源(100)と、
前記分配アセンブリ内の蒸気圧を測定するための測定アセンブリ(130)であって、前記測定アセンブリが第1の端と第2の端を有するチューブ(140)を備え、前記第1の端が前記分配アセンブリの内部空間に配置され、前記第2の端が圧力センサに結合される、測定アセンブリ(130)と
を備え、
前記分配アセンブリ(120)が1つ又は複数の横方向に向いた出口(125)を備え、さらに、
前記チューブ(140)が、前記分配アセンブリ(120)の前記内部空間に配置された第1の部分(140A)、及び前記分配アセンブリ(120)の外側に配置された第2の部分(140B)を有する;又は、
前記チューブ(140)が、前記分配アセンブリ(120)と前記分配アセンブリ(120)のヒータ(126)との間の空間(122)に部分的に配置される、又は
前記測定アセンブリ(130)が、前記チューブ(140)の周りに少なくとも部分的に配置された加熱装置(134)を更に含む、
のいずれかの特徴を有し、
前記測定アセンブリ(130)は更に、前記チューブ(140)に結合されたパージガス導入デバイス(131)を含む、
堆積装置(200)。
【請求項8】
るつぼ及び分配アセンブリを有する蒸発源内の蒸気圧を測定する方法であって、
-第1の端(148)及び第2の端(149)を有するチューブ(140)を備える測定アセンブリ(130)を提供すること(310)と、
-前記分配アセンブリの内部空間に前記第1の端を配置すること(320)と、
-前記第2の端を圧力センサに結合すること(330)と、
-蒸発した材料を供給するために材料を蒸発させること(340)と、
-前記蒸発した材料を前記るつぼから前記分配アセンブリ内に案内すること(350)と、
-前記圧力センサを使用して、前記チューブの前記第2の端に供給される圧力を測定すること(360)と
を含み、
前記分配アセンブリが、1つ又は複数の横方向に向いた出口(125)を備え、
前記チューブ(140)が、前記分配アセンブリの前記内部空間に配置された第1の部分(140A)、及び前記分配アセンブリの外側に配置された第2の部分(140B)を有する;又は
前記チューブ(140)が、前記分配アセンブリと前記分配アセンブリのヒータ(126)との間の空間(122)に部分的に配置される;又は
前記測定アセンブリ(130)が、前記チューブ(140)の周りに少なくとも部分的に配置された加熱装置(134)を更に含む、
のいずれかであり、前記方法はパージガスを前記チューブ(140)に導入することを更に含む、方法(300)。
【請求項9】
前記チューブ(140)の少なくとも一部を加熱することを更に含む、請求項8に記載の方法(300)。
【請求項10】
請求項1から6の何れか一項に記載された蒸発源における蒸発した材料の蒸発速度を決定するための方法(400)であって、
-前記蒸発源における前記蒸発した材料の蒸気圧を測定すること(410)と、
-測定された前記蒸気圧から前記蒸発速度を計算すること(420)と
を含む方法(400)。
【請求項11】
るつぼ(110)及び分配アセンブリ(120)を有する蒸発源(100)における蒸気圧差を測定する方法(500)であって、
-前記分配アセンブリ(120)の内部空間(121)を第1の圧力センサ(145A)に結合するチューブ(140)を含む第1の測定アセンブリ(130A)を設けること(510)であって、前記チューブ(140)が前記分配アセンブリの前記内部空間(121)の第1の位置(P1)に設けられたチューブ開口部を有する、第1の測定アセンブリ(130A)を設けること(510)と、
-前記蒸発源の内部空間を第2の圧力センサ(145B)に結合する更なるチューブ(140D)を備える第2の測定アセンブリ(130B)を設けること(520)であって、前記更なるチューブ(140D)が、前記分配アセンブリの前記内部空間(121)又は前記るつぼ(110)の内部空間(111)の第2の位置(P2)に設けられた更なるチューブ開口部(146B)を有する、第2の測定アセンブリ(130B)を設けること(520)と、
-前記第1の圧力センサ(145A)及び前記第2の圧力センサ(145B)を使用して、前記蒸発源の前記蒸気圧差を測定すること(530)と
を含み、
前記分配アセンブリ(120)が1つ又は複数の横方向に向いた出口(125)を備え、
以下:
前記チューブ(140)が、前記分配アセンブリ(120)の前記内部空間(121)に配置された第1の部分(140A)、及び前記分配アセンブリ(120)の外側に配置された第2の部分(140B)を有する;又は
前記チューブ(140)が、前記分配アセンブリ(120)と前記分配アセンブリ(120)のヒータ(126)との間の空間(122)に部分的に配置される、又は
前記第1及び第2の測定アセンブリ(130A、130B)が、前記チューブ(140)の周りに少なくとも部分的に配置された加熱装置(134)を更に含む、
のうちいずれかであり、前記方法はパージガスを前記チューブ(140)及び前記更なるチューブ(140D)に導入することを更に含む、方法(500)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、基板の上に蒸発した材料を堆積するための蒸発源に関する。特に、本開示の実施形態は、蒸発した材料、特に蒸発した有機材料の蒸発速度を決定するための測定デバイスを有する蒸発源に関する。更に、本開示の実施形態は、蒸発源内の蒸発した材料の蒸気圧を測定する方法、並びに蒸発した材料の蒸発速度を決定する方法に関する。更に、本開示の実施形態は、堆積装置、特に有機発光ダイオード(OLED)製造のための真空堆積装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機蒸発器は、有機発光ダイオード(OLED)製造のためのツールである。OLEDは、特殊な発光ダイオードであり、その中で発光層がある有機化合物の薄膜を含んでいる。有機発光ダイオード(OLED)は、情報を表示するためのテレビ画面、コンピュータモニタ、携帯電話、その他の携帯型デバイスなどの製造時に使用される。OLEDは、一般的な空間照明にも使用することができる。OLEDディスプレイで可能な色、輝度、及び視野角の範囲は、OLEDピクセルが直接発光し、バックライトを含んでいないので、従来のLCDディスプレイの範囲よりも大きい。したがって、OLEDディスプレイのエネルギー消費は、従来のLCDディスプレイのエネルギー消費よりもかなり少ない。更に、実際、OLEDは、フレキシブル基板上に製造することができ、更なる用途がもたらされる。
【0003】
OLEDの機能性は、有機材料のコーティング厚さ次第である。この厚さは、所定範囲内でなければならない。OLEDの製造において、有機材料によるコーティングが影響を受ける堆積速度は、所定の許容範囲内にあるように制御される。換言すれば、有機蒸発器の堆積速度は、製造プロセスにおいて完全に制御されなければならない。
【0004】
したがって、OLED用途だけでなく、他の蒸発プロセスについても、比較的長い時間にわたって高精度の蒸発速度が必要とされる。蒸発器の蒸発速度を測定するために利用可能な複数の測定システムがある。ただし、これらの測定システムには、取り扱い、信頼性、メンテナンス、精度、動作時間にわたる十分な安定性、及びコスト効率に関していくつかの欠陥がある。
【0005】
したがって、蒸発速度を測定するための改善された測定システムを有する蒸発源及び堆積装置、並びに最新技術の少なくともいくつかの問題を克服する蒸発速度を測定するための改善された方法に対する継続的な要求がある。
【発明の概要】
【0006】
上記に照らして、独立請求項による、基板の上に蒸発した材料を堆積するための蒸発源と、材料を基板に塗布するための堆積装置と、蒸発源内の蒸気圧を測定する方法と、蒸発源内の蒸発した材料の蒸発速度を決定するための方法が提供される。更なる態様、利点及び特徴は、従属請求項、明細書、及び添付図面から明らかである。
【0007】
本開示の一態様によれば、基板の上に蒸発した材料を堆積するための蒸発源が提供される。蒸発源は、材料蒸発のためのるつぼと、蒸発した材料を基板に供給するための1つ又は複数の出口を備えた分配アセンブリとを含む。分配アセンブリは、るつぼと流体連結している。更に、蒸発源は、分配アセンブリの内部空間を圧力センサに結合するチューブを含む測定アセンブリを含む。
【0008】
本開示の更なる態様によれば、基板の上に複数の蒸発した材料を堆積させるための蒸発源が提供される。蒸発源は、第1の材料を蒸発させるための第1のるつぼと、第1の蒸発した材料を基板に供給するための1つ又は複数の出口を備えた第1の分配アセンブリとを含む。第1の分配アセンブリは、第1のるつぼと流体連結している。加えて、蒸発源は、第2の材料を蒸発させるための第2のるつぼと、第2の蒸発した材料を基板に供給するための1つ又は複数の出口を備えた第2の分配アセンブリとを含む。第2の分配アセンブリは、第2のるつぼと流体連結している。更に、蒸発源は、チューブ装置及びパージガス導入装置を含む測定アセンブリを含む。チューブ装置は、第1のチューブと第2のチューブとを有する。第1のチューブは、第1の分配アセンブリの第1の内部空間を圧力センサに結合する。第2のチューブは、第2の分配アセンブリの第2の内部空間を圧力センサに結合する。更に、パージガス導入装置は、第1のチューブに結合された第1パージガス導入デバイス、及び第2のチューブに結合された第2パージガス導入デバイスを有する。
【0009】
本開示の更なる態様によれば、基板の上に蒸発した材料を堆積するための蒸発源が提供される。蒸発源は、材料蒸発のためのるつぼと、蒸発した材料を基板に供給するための1つ又は複数の出口を備えた分配アセンブリとを含む。分配アセンブリは、るつぼと流体連結している。更に、蒸発源は、るつぼの内部空間を圧力センサに結合するチューブを備える測定アセンブリを含む。
【0010】
本開示の別の態様によれば、基板に材料を塗布するための堆積装置が提供される。堆積装置は、真空チャンバと、真空チャンバ内に設けられた蒸発源とを含む。蒸発源は、るつぼと分配アセンブリとを含む。更に、堆積装置は、分配アセンブリ内の蒸気圧を測定するための測定アセンブリを含む。測定アセンブリは、第1の端と第2の端とを有するチューブを含む。チューブの第1の端は、分配アセンブリの内部空間に配置される。チューブの第2の端は、圧力センサに結合される。
【0011】
本開示の更なる態様によれば、蒸発源内の蒸気圧を測定する方法が提供される。蒸発源は、るつぼと分配アセンブリとを有する。蒸発源内の蒸気圧を測定する方法は、測定アセンブリを提供することを含む。測定アセンブリは、第1の端と第2の端とを有するチューブを含む。加えて、方法は、分配アセンブリの内部空間に第1の端を配置することと、第2の端を圧力センサに結合することとを含む。更に、方法は、蒸発した材料を供給するための材料を蒸発させることと、蒸発した材料をるつぼから分配アセンブリに案内することと、圧力センサを使用して、チューブの第2の端に供給される圧力を測定することとを含む。
【0012】
本開示の更に別の態様によれば、発源における蒸発した材料の蒸発速度を決定するための方法が提供される。蒸発速度を決定するための方法は、蒸発源内の蒸発した材料の蒸気圧を測定することを含む。更に、方法は、測定された蒸気圧から蒸発速度を計算することを含む。
【0013】
本開示の更なる態様によれば、蒸発源内の蒸気圧差を測定する方法が提供される。蒸発源は、るつぼと分配アセンブリとを有する。方法は、分配アセンブリの内部空間を第1の圧力センサに結合するチューブを含む第1の測定アセンブリを提供することを含む。チューブは、分配アセンブリの内部空間の第1の位置に設けられたチューブ開口部を有する。加えて、方法は、蒸発源の内部空間を第2の圧力センサに結合する更なるチューブを含む第2の測定アセンブリを設けることを含む。更なるチューブは、分配アセンブリの内部空間の第2の位置に設けられた更なるチューブ開口部を有する。代替的には、更なるチューブ開口部は、るつぼの内部空間内の第2の位置に設けられる。更に、方法は、第1の圧力センサ及び第2の圧力センサを使用して、蒸発源の蒸気圧差を測定することを含む。
【0014】
実施形態は、開示された方法を実行する装置も対象としており、記載された各方法の態様を実行する装置部品を含む。これらの方法の態様は、ハードウェア構成要素を用いて、適切なソフトウェアによってプログラミングされたコンピュータを用いて、これらの2つの任意の組合せによって、又はそれ以外の任意の態様で、実行されてもよい。更に、本開示による実施形態は、記載される装置を操作する方法も対象とする。記載された装置を操作する方法は、装置のあらゆる機能を実行するための方法の態様を含む。
【0015】
本開示の上記の特徴を詳細に理解することができるように、実施形態を参照することによって、上で簡単に概説した本開示のより具体的な説明を得ることができる。添付図面は、本開示の実施形態に関するものであり、以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本明細書に記載の実施形態による、蒸発源の概略図を示す。
図2】本明細書に記載の更なる実施形態による、蒸発源の概略図を示す。
図3】本明細書に記載の更なる実施形態による、蒸発源の概略図を示す。
図4】本明細書に記載の更なる実施形態による、蒸発源の概略図を示す。
図5】本明細書に記載の更なる実施形態による、蒸発源の概略図を示す。
図6】本明細書に記載の更なる実施形態による、蒸発源の概略図を示す。
図7】本明細書に記載の更なる実施形態による、蒸発源の断面上面図を示す。
図8】本明細書に記載の実施形態による、堆積装置の概略図を示す。
図9】本明細書に記載の更なる実施形態による、堆積装置の概略図を示す。
図10】A及びBは、本明細書に記載の実施形態による、蒸発源内の蒸気圧を測定する方法を説明するためのフローチャートを示す。
図11】本明細書に記載の実施形態による、蒸発源における蒸発した材料の蒸発速度を決定するための方法を説明するためのフローチャートを示す。
図12】本明細書に記載の実施形態による、蒸発源内の蒸気圧差を測定する方法を説明するためのフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ここから、本開示の種々の実施形態が詳細に参照されることになり、そのうちの1つ又は複数の例が図示される。図面に関する以下の説明の中で、同じ参照番号は同じ構成要素を指す。個々の実施形態に関しては、相違点についてのみ説明する。本開示の説明として各例が提供されるが、例は本開示を限定することを意図するものではない。更に、1つの実施形態の一部として図示又は説明されている特徴は、更なる実施形態をもたらすために、他の実施形態で使用されることも、他の実施形態と併用されることも可能である。本記載がこのような修正例及び変形例を含むことが意図される。
【0018】
図1を例示的に参照すると、本開示による基板上に蒸発した材料を堆積するための蒸発源100が記載される。本明細書に記載の任意の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、蒸発源100は、材料蒸発のためのるつぼ110及び分配アセンブリ120を含む。例えば、分配アセンブリ120は、分配チューブ又は分配パイプでありうる。分配アセンブリ120は、図1に例示的に示されるように、蒸発した材料を基板10に供給するための1つ又は複数の出口125を含む。例えば、1つ又は複数の出口は、ノズルであってもよい。更に、分配アセンブリ120は、るつぼと流体連結している。例えば、分配アセンブリは、図1に例示的に示されるように、結合ダクト113を介してるつぼに結合されてもよい。加えて、蒸発源100は、分配アセンブリ120の内部空間121を圧力センサ145に結合するチューブ140を含む測定アセンブリ130を含む。したがって、有益には、圧力センサは、測定アセンブリの内部空間の蒸発した材料の蒸気圧を測定するために使用することができる。蒸発速度は分配アセンブリ内の蒸気圧の直接関数であるため、測定アセンブリ130は、蒸発速度を決定するために使用することができる。したがって、本明細書に記載の実施形態は、有利には、インシトゥ(その場)の蒸気圧測定を実施し、インシトゥで蒸発速度を決定することを提供する。
【0019】
したがって、本明細書に記載の蒸発源の実施形態は、特に蒸発速度を決定するための測定システムに関して、従来の蒸発源と比較して改善されている。より具体的には、測定された蒸気圧から蒸発速度を決定するように構成された測定アセンブリを提供することにより、従来の蒸発速度測定システム、特に水晶振動子マイクロバランス(QCM)の1つ又は複数の欠陥を克服することができる。例えば、蒸発速度の測定に使用される水晶振動子マイクロバランスには、取り扱い、信頼性、メンテナンス、精度、動作時間にわたる十分な安定性、及びコスト効率に関していくつかの欠陥がある。堆積速度を測定するために、QCMは、水晶振動子の周波数の変化を測定することにより、単位面積あたりの発振水晶上の堆積材料の質量変化を測定するための発振水晶を含む。測定精度を最適化するには、窒素を使用したガス冷却などによって、QCMを冷却する必要がある。したがって、QCMを使用する堆積速度測定システムは通常、かなりの量の窒素を必要とする。更に、例えば、加熱することなどにより、定期的に発振水晶上の堆積材料を除去する必要がある。更に、QCMを統合することは困難であり、継続的な動作/測定に制限される可能性があり、その結果コストが増加する。QCMを使用した蒸発速度の決定に関連する問題は、本明細書に記載の蒸発源の測定アセンブリによって少なくとも部分的又更には完全に克服される。
【0020】
本開示の様々な更なる実施形態をより詳細に説明する前に、本明細書で使用されるいくつかの用語に関するいくつかの態様を説明する。
【0021】
本開示において、「蒸発した材料を基板の上に堆積するための蒸発源」は、基板の上に堆積される蒸発した材料を提供するように構成されたデバイス又はアセンブリとして理解することができる。したがって、典型的には、「蒸発源」は、蒸発した材料を基板上に堆積するように構成される。特に、蒸発源は、有機材料堆積のために、例えば、大面積基板上へのOLEDディスプレイ製造のために、構成することができる。
【0022】
例えば、「大面積基板(large area substrate)」は、0.5m2以上、具体的には1m2以上の面積を有する主要面を有することができる。いくつかの実施形態では、大面積基板は、約0.67m2の基板(0.73×0.92m)に相当するGEN4.5、約1.4m2の基板(1.1m×1.3m)に相当するGEN5、約4.29m2の基板(1.95m×2.2m)に相当するGEN7.5、約5.7m2の基板(2.2m×2.5m)に相当するGEN8.5、或いは約8.7m2の基板(2.85m×3.05m)に相当するGEN10とすることができる。GEN11及びGEN12のような更に次の世代、並びにそれに相当する基板面積を同様に実装することができる。
【0023】
本開示において、「基板(substrate)」という用語は、実質的にフレキシブルでない基板、例えば、ウエハ、サファイアなどの透明な結晶のスライス、又はガラスプレートを特に包含しうる。しかしながら、本開示はこれらに限定されず、「基板」という用語はまた、例えばウェブ又はホイルなどのフレキシブル基板も包含しうる。「実質的にフレキシブルでない(substantially inflexible)」という用語は、「フレキシブル」とは相違すると理解される。具体的には、0.5mm以下の厚さを有するガラスプレートなどの実質的にフレキシブルでない基板でも、ある程度の可撓性を有することがあり、実質的にフレキシブルでない基板の可撓性は、フレキシブル基板と比較して低い。本明細書に記載される実施形態によれば、基板は、材料を堆積させるのに適した任意の材料から作られることがある。例えば、基板は、ガラス(例えば、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラスなど)、金属、ポリマー、セラミック、複合材料、炭素繊維材料、又は堆積プロセスによってコーティングできる任意の他の材料若しくは材料の組合せからなるグループから選択された材料から作られることがある。
【0024】
本開示において、「材料蒸発のためのるつぼ(crucible for material evaporation)」は、るつぼに供給された材料を蒸発させるように構成されたるつぼとして理解することができる。「るつぼ(crucible)」は、るつぼを加熱することによって蒸発させる材料のリザーバを有するデバイスとして理解することができる。したがって、「るつぼ」とは、原材料の蒸発及び昇華のうちの少なくとも1つによって、原料を蒸発させて気体にするために加熱することができる原材料リザーバとして理解することができる。典型的には、るつぼは、るつぼにおいて原材料を蒸発させて気体の原材料にするヒータを含む。例えば、蒸発させる材料は最初、粉末形態とすることができる。リザーバは、蒸発させる原材料、例えば有機材料を受け入れるための内容積を有することができる。例えば、るつぼの容積は、100cmから3000cmの間、具体的には700cmから1700cmの間、より具体的には1200cmとすることができる。具体的には、るつぼは、るつぼの内容積に供給される原材料を、原材料が蒸発する温度に至るまで加熱するように構成された加熱装置を含みうる。例えば、るつぼは、約100℃から約600℃までの蒸発温度を有する有機材料などの有機材料を蒸発させるためのるつぼであってよい。したがって、本開示では、「蒸発した材料(evaporated material)」という用語は、特にOLED製造に適した、蒸発した有機材料を指すことがある。
【0025】
本開示において、「分配アセンブリ(distribution assembly)」は、分配アセンブリから基板へ蒸発した材料、特に蒸発した材料のプルームを供給するように構成されたアセンブリとして理解することができる。例えば、分配アセンブリは、細長い立方体でありうる分配管を含みうる。例えば、本明細書に記載される分配管は、分配管の長さに沿って少なくとも1つの線上に配置される複数の開口部及び/又はノズルを有する、線源を提供しうる。例えば、分配アセンブリ、特に分配パイプは、チタンで作ることができる。
【0026】
したがって、分配アセンブリは、例えば複数の開口部(又は細長いスリット)が内部に配置された、直線的な分配シャワーヘッドとすることができる。更に、典型的には、分配アセンブリは、例えば蒸発るつぼから基板まで、蒸発した材料を供給又は案内できる筐体、空洞、又はパイプを有することができる。本明細書に記載の他のいずれの実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、分配管の長さは、少なくとも堆積される基板の高さに相当しうる。具体的には、分配管の長さは、堆積される基板の高さよりも、少なくとも10%又は20%も長くてもよい。例えば、分配管の長さは、1.3m以上、例えば2.5m以上とすることができる。したがって、基板の上端及び/又は基板の下端における均一な堆積を提供することができる。代替構成によれば、分配アセンブリは、垂直軸に沿って配置することができる1つ又は複数の点源を含みうる。
【0027】
したがって、本明細書に記載される「分配アセンブリ(distribution assembly)」は、本質的に垂直に延びる線源を提供するように構成されうる。本開示において、「本質的に垂直に(essentially vertically)」という用語は、特に基板の配向を指すときに、垂直方向からの10°以下の偏差を許容すると理解される。この偏差が提供されうるのは、垂直配向からある程度の偏差を有する基板支持体がより安定した基板位置をもたらしうるためである。しかし、有機材料の堆積中の基板配向は、本質的に垂直とみなされ、水平の基板配向とは異なるとみなされる。したがって、基板の表面は、1つの基板上の次元の方向に延び、かつ基板上の他の次元に対応する他の方向に沿った並進運動を行う線源によってコーティングされうる。
【0028】
本開示において、「測定アセンブリ(measurement assembly)」は、測定、特に圧力測定を実施するための測定デバイスを有するアセンブリとして理解することができる。より具体的には、通常、測定アセンブリは、例えば、図1に示すようなチューブ140を介して、分配アセンブリの内部空間に結合される圧力センサを含む。例えば、チューブ140は、1.0mm≦D≦7.5mm、特にD=5mm±1mmの直径Dを有することができる。通常、測定アセンブリのチューブの直径Dは、チューブの長さにわたって一定である。チューブの長さLは、0.5m≦L≦2.0m、例えばL=1.0m±0.1mにすることができる。測定アセンブリ130のチューブ140の直径Dは、図3に例示的に示される。
【0029】
「圧力センサ」は、圧力を測定するために構成されたデバイスとして理解できる。例えば、圧力センサは、機械圧力センサ、容量性圧力センサ、特に容量性ダイアフラムゲージ(CDG)、及び熱伝導率/対流真空ゲージ(ピラニタイプ)から成るグループから選択された圧力センサとすることができる。一例によれば、圧力センサは、高精度のダイアフラムゲージとすることができる。高精度のダイアフラムゲージは、有利には、特にフルスケールで、高精度、高分解能、高安定性及び再現性のある測定を提供する。
【0030】
図2に例示的に示すように、本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、チューブ140は、分配アセンブリ120の内部空間121に配置された第1の部分140Aを含む。更に、チューブ140は、分配アセンブリ120の外側に配置された第2の部分140Bを含む。したがって、分配アセンブリ120の内部空間121を圧力センサ145に結合するチューブ140は、分配アセンブリの側面で加熱でき、圧力センサ145の側面で室温に維持することができる。
【0031】
典型的には、チューブの第1の部分140Aは、図2に例示的に示されるように、チューブ開口部146を含む。より具体的には、チューブ開口部146は、チューブ140の第1の端148に設けることができる。更に、図2を例示的に参照すると、チューブ140は、分配アセンブリ120の上壁123を通って分配アセンブリ120に進入するように配置することができる。代替的には、図3に例示的に示すように、チューブ140は、分配アセンブリ120の側壁124を通って分配アセンブリ120に進入するように配置することができる。
【0032】
図2を例示的に参照すると、本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、測定アセンブリ130は、チューブ140に結合されたパージガス導入デバイス131を更に含む。特に、パージガス導入デバイス131は、分配アセンブリ120の外側のチューブ140に結合させることができる。例えば、パージガス導入デバイス131は、図3に例示的に示されるように、チューブの第2の部分140Bに結合させることができる。より具体的には、パージガス導入デバイス131は、チューブ140の第2の端149に近いチューブに結合することができる。言い換えれば、パージガス導入デバイス131は、圧力センサ145の前のチューブに結合させることができる。
【0033】
本開示において、「パージガス導入デバイス」は、パージガスを供給するように構成されたデバイスとして理解することができる。特に、パージガス導入デバイスは、0.1sccm≦Q’≦1.0sccm、例えば、Q’=0.5sccm±0.05sccmのパージガス流Q’を供給するように構成することができる。特に、本明細書に記載の任意の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、パージガス導入デバイス131は、図3に例示的に示すように、質量流量コントローラ135を含むことができる。通常、質量流量コントローラ135は、パージガス源、特に不活性ガス源136に結合される。例えば、不活性ガス源136は、アルゴンガス源とすることができる。したがって、質量流量コントローラは、パージガス流Q’を制御するように構成することができる。換言すれば、質量流量コントローラは、選択されたパージガス流の一定のパージガス流Q’を提供するために使用することができる。
【0034】
したがって、本明細書に記載のパージガス導入デバイスを提供することは、小さな既知のパージガス質量流量、例えばアルゴンなどの不活性ガスを測定アセンブリのチューブ140に導入して、圧力センサを蒸発した材料の凝縮及び/又は汚染から保護することができるという利点を有する。更に、パージガスが、分配アセンブリに設けられた蒸発した材料と圧力センサとの間の移送媒体として作用しうると理解すべきである。
【0035】
測定アセンブリのチューブに導入されたパージガスは、圧力センサによって測定されたより高い圧力レベルに同期する蒸発源の分配アセンブリ内の圧力をシフトさせることがあると理解すべきである。この点に関して、パージガス導入デバイス131によって供給される一定のパージガス流Q’は、比較的低い、例えば、0.1sccm≦Q’≦1.0sccmであり、これにより、特に蒸発源の分配アセンブリ内部の圧力が約1Pa(0.01mbar)である典型的な場合、パージガスから生じる追加圧力の影響は無視できることに留意されたい。
【0036】
更に、本明細書に記載の任意の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、パージガス導入デバイス131、特に質量流量コントローラ135は、定期的にパージガス流を減少又は停止するように構成される。したがって、測定アセンブリ130のチューブ140内のパージガス流を最小限に抑えることができ、これは最適な測定分解能を達成するのに有益でありうる。つまり、高圧センサ保護及び中程度の測定分解能に関連する高パージガス流と、低センサ保護及び高測定分解能に関連する低パージガス流との間で定期的に切り替えを行うことができるパージガス導入デバイスを設けることは、精度、信頼性、動作時間にわたる安定性、及びコスト効率に関して測定アセンブリの動作を最適化するのに有益でありうる。
【0037】
更に、パージガス流を停止するか、パージガス流を高レベルから低レベルに下げると、通常、分配内の実際の蒸気圧の分析及び外挿にも使用できるであろうポンプダウン曲線が得られると理解すべきである。特に、測定アセンブリのチューブの内容積が比較的小さく(例えば、直径D=5mm、長さL=1000mmのチューブの場合、約20cm)、有益には、例えば10秒(<20秒)のポンプダウン時間が生じることに留意されたい。したがって、第1の圧力Aから第2の圧力Bに移行する時間もまた、圧力インジケータとして使用することができるだろう。小さな容積を伴う、図1から図5を参照して例示的に説明される際のチューブ140、又は図6Aを参照して例示的に説明される際のチューブ装置144により、有利には、例えば、図6Aに例示的に示すように、第1の分配アセンブリ120A、第2の分配アセンブリ120B及び第3の分配アセンブリ120Cにおける圧力測定の間などの、高速圧力センサのサイクリングが可能になる。
【0038】
本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態による、図3を例示的に参照すると、チューブ140は、分配アセンブリ120と分配アセンブリ120のヒータ126との間の空間122に部分的に配置することができる。より具体的には、図3に例示的に示すように、チューブ140の第3の部分140Cは、分配アセンブリ120と分配アセンブリ120のヒータ126との間の空間122に配置されうる。通常、チューブ140の第3の部分140Cは、第1の部分140Aと第2の部分140Bとの間に提供される。典型的には、ヒータ126は、分配アセンブリ、特に分配アセンブリの壁を加熱するために提供される。例えば、図3に例示的に示されるように、ヒータは、分配アセンブリの壁の外側表面に対して距離を置いて設けることができる。したがって、分配アセンブリは、蒸発るつぼによって供給される蒸発した材料が分配アセンブリの壁の内側部分で凝縮しない温度まで加熱することができる。
【0039】
図4に例示的に示すように、本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、測定アセンブリ130は、加熱装置134を更に含むことができる。特に、加熱装置134は、チューブ140の周りに少なくとも部分的に配置することができる。通常、加熱装置134は、使用される原材料の蒸発温度までチューブを加熱するように構成される。したがって、測定アセンブリのチューブ140内の蒸発した材料の有利な凝縮を回避することができる。
【0040】
図5を例示的に参照すると、本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、加熱装置134が、圧力センサ145の周りに設けられてもよい。特に、加熱装置134は、圧力センサ145と同様に分配アセンブリの外側に配置されたチューブ140全体を加熱するように配置することができる。オプションとして、図5に示すようなパージガス導入デバイス131を設けることができる。
【0041】
図6Aを例示的に参照すると、本開示による基板上に複数の蒸発した材料を堆積するための蒸発源100が記載される。基板上に複数の蒸発した材料を堆積するための蒸発源は、基板上に2つ以上の異なる蒸発した材料を堆積するように構成された蒸発源として理解することができる。図6Aに例示的に示すように、本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、基板上に複数の蒸発した材料を堆積する蒸発源100は、第1の材料を蒸発させる第1のるつぼ110Aと第1分配アセンブリ120Aを含む。第1の分配アセンブリ120Aは、第1の蒸発した材料を基板に供給するための1つ又は複数の出口を含む。第1の分配アセンブリ120Aは、第1のるつぼ110Aと流体連結している。加えて、蒸発源100は、第2の材料を蒸発させるための第2のるつぼ110Bと、第2の分配アセンブリ120Bとを含む。第2の分配アセンブリ120Bは、第2の蒸発した材料を基板に供給するための1つ又は複数の出口を含む。第2の分配アセンブリ120Bは、第2のるつぼ110Bと流体連結している。
【0042】
更に、図6Aに例示的に示すように、基板上に複数の蒸発した材料を堆積するための蒸発源100は、第3材料を蒸発させるための第3るつぼ110Cと、第3分配アセンブリ120CAとを含むことができる。第3の分配アセンブリ120Cは、第3の蒸発した材料を基板に供給するための1つ又は複数の出口を含む。第3の分配アセンブリ120Cは、第3のるつぼ110Cと流体連結している。3つの分配アセンブリを有する蒸発源は、三重蒸発源(triple evaporation source)とも称され、図7を参照して更に詳細に説明されうる。
【0043】
図1から図5を参照して説明した実施形態の特徴は、必要な変更を加えて、図6Aに例示的に示すように複数の蒸発した材料堆積のための蒸発源に適用できると理解すべきである。
【0044】
加えて、図6Aに例示的に示されるように、基板上に複数の蒸発した材料を堆積するための蒸発源100は、チューブ装置144及びパージガス導入装置を含む測定アセンブリ130を含む。チューブ装置144は、第1のチューブ141及び第2のチューブ142を含む。加えて、チューブ装置144は、第3のチューブ143を含んでもよい。第1のチューブ141は、第1の分配アセンブリ120Aの第1の内部空間121Aを圧力センサ145に結合する。第2のチューブ142は、第2の分配アセンブリ120Bの第2の内部空間121Bを圧力センサ145に結合する。加えて、第3のチューブ143は、通常、第3の分配アセンブリ120Cの第3の内部空間121Cを圧力センサ145に結合する。図6Aに例示的に示されるように、結合チューブ147は、第1のチューブ141、第2のチューブ142、及び第3のチューブ143を圧力センサ145に結合しうる。したがって、有益には、圧力センサ145は、複数の分配アセンブリ、例えば、図6Aに例示的に示される分配アセンブリに結合されてもよい。
【0045】
更に、図6Aに例示的に示すように、パージガス導入デバイスは、第1のチューブ141に結合された第1のパージガス導入デバイス131Aを含みうる。加えて、パージガス導入装置は、第2のチューブ142に結合された第2のパージガス導入デバイス131Bを含みうる。更に、パージガス導入装置は、第3のチューブ143に結合された第3のパージガス導入デバイス131Cを含みうる。
【0046】
パージガス導入デバイス131に関して説明したような特徴は、例えば、図1から図5を参照すると、必要な変更を加えて、第1のパージガス導入デバイス131A、第2のパージガス導入デバイス131B、及び第3のパージガス導入デバイス131Cに適用することができると理解すべきである。したがって、第1のパージガス導入デバイス131Aは、第1の質量流量コントローラ135Aを含むことができ、第2のパージガス導入デバイス131Bは、第2の質量流量コントローラ135Bを含むことができ、第3のパージガス導入デバイス131Cは、第3の質量流量コントローラ135Cを含むことができる。第1の質量流量コントローラ135Aは、第1のパージガス源、特に第1の不活性ガス源136Aに結合することができる。第2の質量流量コントローラ135Bは、第2のパージガス源、特に第2の不活性ガス源136Bに結合することができる。第3の質量流量コントローラ135Cは、第3のパージガス源、特に第3の不活性ガス源136Cに結合することができる。明示的に示されていないが、代替的には、第1の質量流量コントローラ135A、第2の質量流量コントローラ135B、及び第3の質量流量コントローラ135Cは、共通のパージガス源に結合されうると理解すべきである。
【0047】
図6Aを例示的に参照すると、いくつかの実施形態によれば、第1のバルブ151は、第1チューブ141内に、特に第1のパージガス導入デバイス131Aと結合チューブ147との間に、設けられうる。追加的又は代替的には、第2のバルブ152は、第2のチューブ142内に、特に第2のパージガス導入デバイス131Bと結合チューブ147との間に、設けられうる。更に、追加的又は代替的には、第3のバルブ153は、第3のバルブ143内に、特に第3のパージガス導入デバイス131Cと結合チューブ147との間に、設けられうる。
【0048】
バルブ(例えば、第1のバルブ151、第2のバルブ152、及び第3のバルブ153)を設けることには、個々の分配アセンブリ内の圧力を別々に測定できるという利点がある。例えば、個々の分配アセンブリ内の圧力は、続いて、すなわちサイクリング測定シーケンスで測定できる。
【0049】
更に、別個のパージガス導入デバイス(例えば、第1のパージガス導入デバイス131A、第2のパージガス導入デバイス131B、及び第3のパージガス導入デバイス131C)を設けることは、それぞれのチューブ(すなわち、第1のチューブ141、第2のチューブ142、及び第3のチューブ143)のパージガス流を最適な測定条件を提供するために個別に設定できるという利点を有する。例えば、複数の分配アセンブリの選択された分配アセンブリ内の圧力を測定するために、選択された分配アセンブリを圧力センサに結合するチューブ内のパージガス流は、他のチューブ内のパージガス流よりも低く設定できる。したがって、有利には、他のチューブの汚染及び/又は凝縮を回避することができる。その結果、有利には、単一の圧力センサは、例えば、測定される結合された分配アセンブリでの低パージ流を使用して、周期的又は定期的な方法で個々の分配アセンブリに結合することができる一方で、他の結合されていない分配アセンブリでは、より高く、より保護されたパージガス流を使用することができる。
【0050】
図7は、本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる更なる実施形態による蒸発源の断面上面図を示す。具体的には、図7は、三重蒸発源とも称される、3つの分配アセンブリ、例えば3つの分配パイプを有する蒸発源の例を示す。したがって、三重蒸発源は、第1の分配アセンブリ120A、第2の分配アセンブリ120B、及び第3の分配アセンブリ120Cを有する蒸発源として理解することができる。特に、3つの分配アセンブリ及び三重蒸発源の対応するるつぼは、互いに隣接して設けることができる。従って、有利には、三重蒸発源は、蒸発源アレイ、例えば、複数の種類の材料、例えば3つの異なる材料を同時に蒸発させることができる蒸発源アレイを提供することができる。
【0051】
図7を例示的に参照すると、本明細書に記載の任意の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、分配アセンブリ120は、分配パイプの長さに垂直な非円形断面を有する分配パイプとして構成することができる。例えば、分配チューブの長さに垂直な断面は、角が丸い三角形及び/又は角が切り取られた三角形とすることができる。特に、図7は、第1の分配パイプとして構成される第1の分配アセンブリ120A、第2の分配パイプとして構成される第2の分配アセンブリ120B、及び第3の分配パイプとして構成される第3の分配アセンブリ120Cを示す。第1の分配パイプ、第2の分配パイプ、及び第3の分配パイプは、分配パイプの長さに垂直な実質的に三角形の断面を有する。本明細書に記載の任意の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、図6Aを参照して例示的に説明するように、各分配アセンブリは、それぞれのるつぼと流体連結している。
【0052】
図7に例示的に示すように、本明細書に記載の任意の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、蒸発器制御ハウジング180は、本明細書に記載の分配アセンブリ120に隣接して設けられうる。通常、蒸発器制御ハウジングは、蒸発器制御ハウジング内に大気圧を供給及び維持するように構成される。したがって、図7に例示的に示されるように、蒸発器制御ハウジングは、本明細書に記載されるように圧力センサ145を収容するように構成することができる。更に、蒸発器制御ハウジングは、スイッチ、バルブ、コントローラ、冷却ユニット、冷却制御ユニット、加熱制御ユニット、電源、及び測定デバイスからなるグループから選択された1つ又は複数の他の構成要素又はデバイスを収容するように構成されうる。
【0053】
図7には明示的に示されていないが、図7に示されている例示的な実施形態では、パージガス導入デバイス及びバルブ、例えば図6Aを参照して説明したように、第1のパージガス導入デバイス131A、第2のパージガス導入デバイス131B、第3のパージガス導入デバイス131C、第1のバルブ151、第2のバルブ152及び第3のバルブ153などを設けることができると理解すべきである。
【0054】
本明細書に記載の任意の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、分配アセンブリ、特に分配パイプは、分配アセンブリの内部に設けられる加熱素子によって加熱されうる。加熱素子は、内側チューブに留められた又は別な方法で固定された、例えば、コーティングされた加熱ワイヤなどの、加熱ワイヤによって提供することができる電気ヒータとすることができる。更に、図7を例示的に参照すると、冷却シールド138を設けることができる。冷却シールド138は、堆積領域、即ち、基板及び/又はマスクに向かう熱放射を低減するために、U字型の冷却シールドを提供するように配置された側壁を含みうる。例えば、冷却シールドは、水などの冷却流体用の導管が取り付けられた又は内部に設けられた金属板として提供することができる。加えて、又は代替的には、冷却シールドを冷却するために、熱電性冷却デバイス又は他の冷却デバイスを設けることができる。典型的には、外側シールド、即ち、分配チューブの内部空洞を取り囲む最も外側のシールドを冷却することができる。
【0055】
図7では、例示の目的で、分配アセンブリの出口から出る蒸発した原材料が矢印により示される。分配アセンブリの本質的に三角形の形状により、3つの分配アセンブリから生じる蒸発コーンは、互いにごく近接している。したがって、有利には、異なる分配アセンブリからの原材料の混合を改善することができる。特に、分配パイプの断面の形状により、隣接する分配パイプの出口又はノズルを互いに近接して配置することができる。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる幾つかの実施形態によれば、第1の分配アセンブリの第1の出口又はノズルと、第2の分配アセンブリの第2の出口又はノズルとは、50mm以下の距離、例えば、30mm以下、又は25mm以下、例えば5mmから25mmまでの距離を有することができる。更に具体的には、第1の出口又はノズルの第2の出口又はノズルまでの距離は、10mm以下とすることができる。
【0056】
図7に更に示されるように、シールドデバイス、特にシェーパシールドデバイス137は、例えば、冷却シールド138に取り付けられるか、又は冷却シールドの一部として提供することができる。シェーパシールドを設けることによって、出口を通って1つ又は複数の分配管を出る蒸気の方向を制御することができる、即ち、蒸気放出の角度を低減することができる。いくつかの実施形態によれば、出口又はノズルを通って供給される蒸発した材料の少なくとも一部は、シェーパシールドによって遮断される。したがって、有利には、放射角の幅を制御することができる。
【0057】
図6Bを例示的に参照すると、別の実施形態による、基板上に蒸発した材料を堆積するための蒸発源100が記載される。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、蒸発源100は、材料蒸発のためのるつぼ110と、蒸発した材料を基板に供給するための1つ又は複数の出口125を有する分配アセンブリ120とを含む。分配アセンブリは、るつぼと流体連結している。更に、蒸発源100は、るつぼ110の内部空間111を圧力センサ145に結合するチューブ140を含む測定アセンブリ130を含む。特に、チューブ140は、典型的には、るつぼ110の内部空間111に設けられたチューブ開口部146を有する。より具体的には、チューブ開口部146は、るつぼ110の内部空間111の上部に配置されてもよい。
【0058】
必要な変更を加えて、図1から図6Aに示された例示的な実施形態で説明された特徴は、図6Bに示された実施形態に適用してもよいことを理解すべきである。
【0059】
したがって、図6Bに示す例示的な実施形態は、インシトゥ(その場)蒸気圧測定を実施し、蒸発速度を決定するための測定システムを有する蒸発源の代替的構成を表す。
【0060】
図6Cを例示的に参照すると、更なる実施形態による、基板上に蒸発した材料を堆積するための蒸発源100が記載される。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、蒸発源100は、材料蒸発のためのるつぼ110と、蒸発した材料を基板に供給するための1つ又は複数の出口125を有する分配アセンブリ120とを含む。分配アセンブリは、るつぼと流体連結している。更に、蒸発源100は、第1測定アセンブリ130A及び第2測定アセンブリ130Bを含む。第1の測定アセンブリ130Aは、分配アセンブリ120の内部空間121を第1の圧力センサ145Aと結合するチューブ140を含む。チューブ140は、分配アセンブリ120の内部空間121内の第1の位置P1に設けられたチューブ開口部146を有する。特に、チューブ開口部146の第1の位置P1は、図6Cに例示的に示されるように、分配アセンブリの上部にありうる。第2の測定アセンブリ130Bは、蒸発源の内部空間を第2の圧力センサ145Bと結合する更なるチューブ140Dを含む。更なるチューブ140Dは、分配アセンブリの内部空間121内の第2の位置P2に設けられた更なるチューブ開口部146Bを有する。例えば、更なるチューブ開口部146Bの第2の位置P2は、図6Cに例示的に示されるように、分配アセンブリの下部にありうる。代替的には、図6Bを参照して例示的に説明されるように、更なるチューブ開口部146Bは、るつぼ110の内部空間111の第2の位置P2に設けることができる。
【0061】
したがって、図6Cに示す例示的な実施形態は、有利には、特に蒸発源の内部空間における第1の位置P1と第2の位置P2との間の、蒸発源の蒸気圧差の測定能力を提供する。通常、第1の位置P1は、蒸発源の上部、特に分配アセンブリの内部空間の上部の位置である。第2の位置P2は、典型的には、蒸発源の下部の位置、例えば、分配アセンブリ120の内部空間121の下部の位置、又はるつぼ110の内部空間111の上部の位置である。
【0062】
したがって、図6Cに例示的に示される実施形態は、有利には、蒸発源内の蒸気圧差を測定する方法を実施するために構成される。例えば、ノズル直径(総ノズルコンダクタンス)などに関して、分配アセンブリ内の蒸気圧差を測定することは、特に蒸発/コーティング速度が非常に低い場合に、蒸発条件を最適化するのに特に有益でありうる。
【0063】
必要な変更を加えて、図1から図6Bに示された例示的な実施形態で説明された特徴は、図6Cに示された実施形態に適用されてもよいと理解すべきである。特に、第2の圧力センサを使用する代わりに、更なるチューブ140Dを第1の圧力センサ145Aに結合することができ、本明細書に記載のパージガス導入デバイスをチューブ140及び更なるチューブ140Dに結合することができると理解すべきである。例えば、図6Dに例示的に示すように、第1のパージガス導入デバイス131A及び/又は第2のパージガス導入デバイス131Bを設けることができる。更に、チューブに第1のバルブ151を設けることができ、及び/又は更なるチューブ140Dに第2のバルブ152を設けることができる。
【0064】
図12に示されるフローチャートを例示的に参照して、るつぼ110及び分配アセンブリ120を有する蒸発源100内の蒸気圧差を測定する方法500が説明される。この方法は、分配アセンブリ120の内部空間121を第1の圧力センサ145Aと結合するチューブ140を含む第1の測定アセンブリ130Aを提供すること(図12のブロック510によって表される)を含む。チューブ140は、図6Cに例示的に示されるように、分配アセンブリ120の内部空間121内の第1の位置P1に設けられたチューブ開口部146を有する。更に、方法は、蒸発源の内部空間を第2の圧力センサ145Bと結合する更なるチューブ140Dを含む第2の測定アセンブリ130Bを提供すること(図12のブロック520によって表される)を含む。更なるチューブ140Dは、図6Cに例示的に示されるように、分配アセンブリ120の内部空間121内の第2の位置P2に設けられた更なるチューブ開口部146Bを有する。代替的には、図6Bを参照して例示的に説明されるように、更なるチューブ開口部146Bは、るつぼ110の内部空間111の第2の位置P2に設けることができる。更に、この方法は、第1の圧力センサ145A及び第2の圧力センサ145Bを使用して蒸発源内の蒸気圧差を測定すること(図12のブロック530によって表される)を含む。代替的には、第1圧力センサ145A及び第2圧力センサ145Bを使用する代わりに、単一の圧力センサ(例えば、第1圧力センサ145A)が、特に図6Dに例示的に示されるような測定アセンブリを有する蒸発源を使用する場合に、蒸発源における蒸気圧差を測定するために使用されてもよい。
【0065】
図8A及び図8Bを例示的に参照して、本開示の実施形態による堆積装置が説明される。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、堆積装置は、真空チャンバ210と、真空チャンバ210に設けられた蒸発源100とを含む。蒸発源100は、るつぼ110及び分配アセンブリ120を含む。特に、真空チャンバ210に設けられた蒸発源100は、本明細書に記載の任意の実施形態による蒸発源100、例えば、図1から図7を参照して例示的に説明した蒸発源とすることができる。更に、図8A及び8Bに例示的に示されるように、分配アセンブリ内の蒸気圧を測定するための測定アセンブリ130が提供される。測定アセンブリは、第1の端148及び第2の端149を有するチューブ140を含む。チューブ140の第1の端148は、分配アセンブリ120の内部空間121に配置される。チューブ140の第2の端149は、圧力センサ145に結合される。特に、圧力センサは、大気空間に設けることができる。
【0066】
例えば、圧力センサ145を設けることができる大気空間は、図8Aに例示的に示すように、真空チャンバ210の外側に設けられた空間でありうる。真空チャンバ210の外側に設けられた圧力センサ145を備えた構成は、蒸発源の位置が真空チャンバに対して固定されている場合、すなわち、堆積プロセス中に、基板が蒸発源に対して移動される構成において、特に有益でありうる。代替的には、大気空間は、図8Bに例示的に示されるように、真空チャンバ210の内部に設けられた大気ボックス190又は大気容器によって提供することができる。例えば、大気ボックス190は、図7に例示的に示すように、分配アセンブリ120に結合することができ、これは、堆積プロセス中に蒸発源が基板に対して移動される構成に有益でありうる。「大気空間(atmospheric space)」とは、大気圧を有する空間として理解することができる。したがって、大気ボックス又は大気容器は、大気ボックス又は大気容器内の気圧を維持するように構成されたボックス又は容器、すなわち閉じた空間として理解することができる。例えば、大気空間は、図7に例示的に示されるように、蒸発器制御ハウジング180によって提供されてもよい。したがって、蒸発器制御ハウジング180は、大気ボックス190又は大気容器として使用することができる。
【0067】
本開示において、「真空(vacuum)」という用語は、例えば10mbar未満の真空圧力を有する技術的な真空の意味で理解することができる。本明細書に記載される真空チャンバの圧力は、典型的には、約10-5mbarから約10-8mbarの間、より典型的には、約10-5mbarから約10-7mbarの間、更により典型的には、約10-6mbarから約10-7mbarの間とすることができる。いくつかの実施形態によれば、真空チャンバ内の圧力は、真空チャンバ内の蒸発した材料の分圧又は全圧のいずれかであると見なされうる(それらは、蒸発した材料のみが真空チャンバに堆積する成分として存在する場合、ほぼ同一でありうる)。いくつかの実施形態では、真空チャンバ内の全圧は、特に真空チャンバ内に蒸発した材料以外の第2の成分(例えばガスなど)が存在する場合、約10-4mbarから約10-7mbarまでの範囲でありうる。したがって、真空チャンバは、「真空堆積チャンバ(vacuum deposition chamber)」、すなわち、真空堆積のために構成された真空チャンバとすることができる。
【0068】
図9を例示的に参照すると、本開示による堆積装置のいくつかの更なる任意の態様が記載される。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、真空堆積装置は、真空チャンバ210、真空チャンバ210に設けられた本明細書に記載の任意の実施形態による蒸発源100、及び材料堆積中に基板10を支持するように構成された基板支持体220を含む。特に、蒸発源100は、図9に例示的に示されるように、トラック又は線形ガイド222上に設けることができる。通常、線形ガイド222は、蒸発源100の並進運動のために構成される。更に、蒸発源の並進運動を提供するためのドライバを設けることができる。特に、蒸発源を非接触搬送するための搬送装置を真空堆積チャンバに設けてもよい。
【0069】
更に、図9に例示的に示されるように、線形ガイド222に沿った蒸発源100の並進運動のために構成された源支持体231が提供されてもよい。典型的には、源支持体231は、図9に概略的に示されるように、蒸発るつぼの上に設けられたるつぼ110及び分配アセンブリ120を支持する。これにより、蒸発るつぼで生成された蒸気は、上に向かって、分配アセンブリの1つ又は複数の出口から移動することができる。従って、本明細書に記載するように、分配アセンブリは、蒸発した材料、特に蒸発した有機材料のプルームを分配アセンブリ120から基板10へ供給するように構成される。
【0070】
図9に例示的に示されるように、真空チャンバ210は、ゲートバルブ215を有してもよく、それを介して、真空堆積チャンバを隣接するルーティングモジュール又は隣接するサービスモジュールに結合することができる。典型的には、ルーティングモジュールは、例えば更なる処理のために、基板を更なる真空チャンバに搬送するように構成される。サービスモジュールは、蒸発源のメンテナンスのために構成される。特に、ゲートバルブは、例えば、隣接するルーティングモジュール又は隣接するサービスモジュールなどの、隣接する真空チャンバへの真空シールを可能にし、図9に例示的に示されるように、基板及び/又はマスクを堆積装置200の真空チャンバ210に出し入れするために開閉することができる。
【0071】
図9を例示的に参照すると、本明細書に記載の任意の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態にしたがって、2つの基板、例えば第1の基板10A及び第2の基板10Bを、真空堆積チャンバ210内でそれぞれの搬送トラック上で支持することができる。更に、その上にマスク33を供給する2つのトラックを設けることができる。具体的には、キャリアを非接触搬送するための更なる搬送装置に、基板キャリア及び/又はマスクキャリア搬送のためのトラックが設けられうる。
【0072】
通常、基板のコーティングには、それぞれのマスクによって、例えば、エッジ除外マスクによって、又はシャドウマスクによって、基板を遮蔽することが含まれうる。典型的な実施形態によれば、図9に例示的に示されるように、マスク、例えば、第1の基板10Aに対応する第1のマスク33A、及び第2の基板10Bに対応する第2のマスク33Bが、マスクフレーム31に設けられ、所定の位置でそれぞれのマスクを保持する。
【0073】
図9に示すように、線形ガイド222は、蒸発源100の並進運動の方向を提供する。蒸発源100の両側には、マスク33、例えば、第1の基板10Aを遮蔽するための第1のマスク33Aと、第2の基板10Bを遮蔽するための第2のマスク33Bとを設けることができる。マスクは、蒸発源100の並進運動の方向と本質的に平行に延びることができる。更に、蒸発源の両側の基板は、並進運動の方向と本質的に平行に延びることもできる。
【0074】
図9は、蒸発源100の概略図を単に示しており、堆積装置200の真空チャンバ210に設けられた蒸発源100は、図1から図7図8A及び図8Bを参照して例示的に説明されるように、本明細書に記載の実施形態の任意の構成を有することができると理解すべきである。
【0075】
図10A及び図10Bに示すフローチャートを例示的に参照して、本開示による蒸発源内の蒸気圧を測定する方法300の実施形態が説明される。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、方法300は、第1の端及び第2の端を有するチューブを含む測定アセンブリを提供すること(図10Aのブロック310によって表される)を含む。特に、測定アセンブリは、図1から図8を参照して例示的に説明される実施形態による測定アセンブリ130とすることができる。更に、方法300は、図2に例示的に示すように、分配アセンブリ120の内部空間121にチューブ140の第1の端148を配置すること(図10Aのブロック320によって表される)を含む。更に、方法300は、第2の端149を圧力センサ145に結合すること(図10Aのブロック330によって表される)を含む。例えば、圧力センサ145は、大気空間に設けることができる。例えば、大気空間は、図8Aに例示的に示されるように、真空チャンバ210の外側に提供される空間とすることができる。代替的に、大気空間は、図8Bに例示的に示されるように、真空チャンバ210の内部に設けられた大気ボックス190又は大気容器によって提供することができる。加えて、方法300は、蒸発した材料を供給するための材料を蒸発させること(図10Aのブロック340によって表される)を含む。更に、方法300は、蒸発した材料をるつぼから分配アセンブリに案内すること(図10Aのブロック350で表される)を含む。加えて、方法300は、圧力センサを使用して、チューブの第2の端に供給される圧力を測定すること(図10Aのブロック360によって表される)を含む。特に、分配アセンブリ内の圧力p2は、式p2[mbar]=p1[mbar]-(Q[mbar・l・s-1]/L[l・s-1])から計算することができ、ここで、p1は圧力センサによって測定された圧力、Qは質量流量、Lは流体コンダクタンスである。質量流量Qは、本明細書に記載の質量流量コントローラにより制御することができる。本明細書に記載のチューブの流体コンダクタンスLは一定である。
【0076】
図10Bに示されるフローチャートを例示的に参照すると、本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態にしたがって、蒸発源内の蒸気圧を測定する方法300は、チューブの少なくとも一部を加熱すること(図10Bのブロック341によって表される)を更に含む。特に、チューブの少なくとも一部を加熱することは、典型的には、図3を参照して例示的に説明されるように、分配アセンブリ120のヒータ126を使用することを含む。更に、チューブの少なくとも一部を加熱することは、図4及び図5を参照して例示的に説明されるように、加熱装置134を使用することを含むことができる。
【0077】
更に、図10Bに示されるフローチャートを例示的に参照すると、本明細書で説明される他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態にしたがって、蒸発源内の蒸気圧を測定する方法300は、パージガスをチューブ140に導入すること(図10Bのブロック342によって表される)を更に含む。特に、パージガスをチューブ140に導入することは、通常、圧力センサ145に結合されているチューブ140の端部にパージガスを導入することを含む。
【0078】
図11に示されるフローチャートを例示的に参照して、本開示による蒸発源内の蒸発した材料の蒸発速度を決定するための方法400の実施形態が説明される。本明細書で説明する他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、方法400は、蒸発源内の蒸発した材料の蒸気圧を測定すること(図11のブロック410によって表される)を含む。更に、方法400は、測定された蒸気圧から蒸発速度を計算すること(図11のブロック420によって表される)を含む。蒸発速度は、分配アセンブリ内の蒸気圧の直接関数であるため、測定された蒸気圧から計算することができる。したがって、蒸気圧の計算では、通常、測定アセンブリの較正が事前に実行される。
【0079】
上記を考慮し、最新技術と比較して、蒸発源、堆積装置、蒸発源内の蒸気圧を測定する方法、及び蒸発源内の蒸発材料の蒸発速度を決定する方法の実施形態が、取り扱い及び/又は信頼性及び/又は保守及び/又は動作時間にわたる精度及び/又は安定性及び/又はコスト効率に関して改善されると理解すべきである。
【0080】
上記は実施形態を対象としているが、基本的範囲から逸脱することなく他のさらなる実施形態が考案されてもよく、その範囲は、添付の特許請求の範囲によって決定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11
図12