(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】液晶配向剤組成物、これを用いた液晶配向膜の製造方法、これを用いた液晶配向膜および液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1337 20060101AFI20220711BHJP
C08L 79/08 20060101ALI20220711BHJP
C08K 5/5455 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
G02F1/1337 525
G02F1/1337 530
C08L79/08 A
C08K5/5455
(21)【出願番号】P 2020545803
(86)(22)【出願日】2020-01-09
(86)【国際出願番号】 KR2020000407
(87)【国際公開番号】W WO2020149574
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】10-2019-0006421
(32)【優先日】2019-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソンク
(72)【発明者】
【氏名】ク、キチュル
(72)【発明者】
【氏名】パク、フンソ
(72)【発明者】
【氏名】ジョ、ジュン ホ
(72)【発明者】
【氏名】クォン、スーンホ
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/047774(WO,A1)
【文献】特開2015-212807(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0095801(KR,A)
【文献】国際公開第2011/149071(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0119286(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
C08L 79/08
C08G 73/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される繰り返し単位、下記化学式2で表される繰り返し単位および下記化学式3で表される繰り返し単位からなる群から選択される1種以上を含む第1繰り返し単位および下記化学式4で表される繰り返し単位、下記化学式5で表される繰り返し単位および下記化学式6で表される繰り返し単位からなる群から選択される1種以上を含む第2繰り返し単位を含む液晶配向剤用共重合体;および
下記化学式11で表される架橋剤化合物を含む、液晶配向剤組成物:
[化学式1]
【化1】
[化学式2]
【化2】
[化学式3]
【化3】
[化学式4]
【化4】
[化学式5]
【化5】
[化学式6]
【化6】
上記化学式1~6中、
R
1およびR
2のうちの少なくとも一つは炭素数1~10のアルキル基であり、残りは水素であり、
R
3およびR
4のうちの少なくとも一つは炭素数1~10のアルキル基であり、残りは水素であり、
X
1~X
6はそれぞれ独立して、下記化学式7で表される4価の有機基であり、
[化学式7]
【化7】
上記化学式7中、
R
7~R
12は、それぞれ独立して、水素または炭素数1~6のアルキル基であり、
L
1は単結合、-O-、-CO-、-COO-、-S-、-SO-、-SO
2-、-CR
13R
14-、-(CH
2)
Z-、-O(CH
2)
ZO-、-COO(CH
2)
ZOCO-、-CONH-、またはフェニレンの中から選択されるいずれか一つであり、
前記L
1中のR
13およびR
14は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基または炭素数1~10のハロアルキル基であり、
前記L
1中のzは1~10の整数であり、
前記Y
1~Y
3はそれぞれ独立して、下記化学式8で表される2価の有機基であり、
[化学式8]
【化8】
上記化学式8中、
Q
1~Q
8のうちの少なくとも1以上が窒素であり、残りは炭素であり、
L
2およびL
4のうちの少なくとも一つが-CON(R
15)-、-N(R
16)CO-のうちの一つであり、残りは直接結合であり、
L
3は直接結合または2価の官能基であり、
R
15~R
16はそれぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基または水素であり、nは1以上の整数であり、
前記Y
4~Y
6はそれぞれ独立して、上記化学式8で表される2価の有機基とは異なる2価の有機基であり、
[化学式11]
【化9】
上記化学式11中、
A
1は1価~4価の官能基であり、
jは1~4の整数であり、
L
5およびL
6は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン基または炭素数6~20のアリーレン基であり、
R
17およびR
18はそれぞれ独立して、ケイ素含有1価の官能基であ
り、
前記ケイ素含有1価の官能基は、下記化学式12で表される:
[化学式12]
【化16】
上記化学式12中、R
25
、R
26
およびR
27
はそれぞれ独立して、水素、または炭素数1~10のアルキルである。
【請求項2】
前記Y
4~Y
6は、炭素数6~30のアリーレン基を含む芳香族2価の有機基;または炭素数6~30のアリーレン基およびイミド基を含むイミド系芳香族2価の有機基を含む、請求項1に記載の液晶配向剤組成物。
【請求項3】
前記イミド系芳香族2価の有機基は、下記化学式9で表される2価の有機基である、請求項2に記載の液晶配向剤組成物:
[化学式9]
【化10】
上記化学式9中、
Tは上記化学式7で表される4価の有機基であり、
D
1およびD
2はそれぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基、炭素数1~10のヘテロアルキレン基、炭素数3~20のシクロアルキレン基、炭素数6~20のアリーレン基または炭素数2~20のヘテロアリーレン基の中から選択されるいずれか一つである。
【請求項4】
前記芳香族2価の有機基は、下記化学式10で表される2価の有機基である、請求項2に記載の液晶配向剤組成物:
[化学式10]
【化11】
上記化学式10中、
R
19およびR
20は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ、ニトリル、炭素数1~10のアルキル、炭素数1~10のアルケニル、炭素数1~10のアルコキシ、炭素数1~10のフルオロアルキル、または炭素数1~10のフルオロアルコキシであり、
pおよびqはそれぞれ独立して、0~4の整数であり、
Aは単結合、-O-、-CO-、-S-、-SO
2-、-C(CH
3)
2-、-C(CF
3)
2-、-CONH-、-COO-、-(CH
2)
y-、-O(CH
2)
yO-、-O(CH
2)
y-、-NH-、-NH(CH
2)
y-NH-、-NH(CH
2)
yO-、-OCH
2-C(CH
3)
2-CH
2O-、-COO-(CH
2)
y-OCO-、または-OCO-(CH
2)
y-COO-であり、
yは1~10の整数であり、
kおよびmはそれぞれ独立して、0~3の整数であり、
rは0~3の整数であり、kかrの少なくともいずれか一方は1以上である。
【請求項5】
上記化学式8中、
L
3は直接結合、-O-、-S-、-N(R
21)-、-COO-、-CO(R
22)-、-R
23O-、-C(CF
3)
2-、-O(R
24)O-、炭素数1~20のアルキレン基、炭素数1~20のハロアルキレン基、炭素数1~20のシクロアルキレン基、炭素数1~30のアリーレン基のうちの一つであり、
R
21は、炭素数1~20のアルキル基または水素であり、
R
22~R
24は、それぞれ独立して、直接結合、炭素数1~20のアルキレン基、炭素数1~20のハロアルキレン基のうちの一つである、請求項1から4のいずれか一項に記載の液晶配向剤組成物。
【請求項6】
上記化学式8中、
Q
2およびQ
4のうちの少なくとも一つが窒素であり、残りは炭素であり、
Q
1およびQ
3は炭素である、請求項1から5のいずれか一項に記載の液晶配向剤組成物。
【請求項7】
上記化学式8中、
Q
5およびQ
7のうちの少なくとも一つが窒素であり、残りは炭素であり、
Q
6およびQ
8は炭素である、請求項1から6のいずれか一項に記載の液晶配向剤組成物。
【請求項8】
上記化学式8で表される2価の有機基は、下記化学式8-1~化学式8-2で表される官能基のうちの一つを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の液晶配向剤組成物:
[化学式8-1]
【化12】
[化学式8-2]
【化13】
上記化学式8-1~化学式8-2中、
L
2~L
4は請求項1で定義した通りである。
【請求項9】
上記化学式9中、Tは下記化学式7-1で表される官能基または下記7-2で表される官能基である、請求項3に記載の液晶配向剤組成物:
[化学式7-1]
【化14】
[化学式7-2]
【化15】
。
【請求項10】
前記液晶配向剤用共重合体に含まれている第1繰り返し単位と第2繰り返し単位とのモル比は1:99~99:1である、請求項1から9のいずれか一項に記載の液晶配向剤組成物。
【請求項11】
前記第1繰り返し単位は、ヘテロ芳香族環を含むジアミンとテトラカルボン酸二無水物の結合物を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の液晶配向剤組成物。
【請求項12】
前記第2繰り返し単位は、芳香族環を含むジアミンとテトラカルボン酸二無水物の結合物を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の液晶配向剤組成物。
【請求項13】
上記化学式11中、
A
1は炭素数1~10のアルキレン基であり、
jは2であり、
L
5およびL
6はそれぞれ独立して、炭素数1~5のアルキレン基であり、
R
17およびR
18はそれぞれ独立して、ケイ素含有1価の官能基である、請求項1から12のいずれか一項に記載の液晶配向剤組成物。
【請求項14】
請求項1から
13のいずれか一項に記載の液晶配向剤組成物を基板に塗布して塗膜を形成する段階と;
前記塗膜を乾燥する段階と;
前記塗膜に光を照射またはラビング処理して配向処理する段階と;
前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階と;を含む、液晶配向膜の製造方法。
【請求項15】
前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階で、前記配向処理された塗膜に下記化学式13で表される架橋剤化合物が含まれる、請求項
14に記載の液晶配向膜の製造方法:
[化学式13]
【化17】
上記化学式13中、
A
1、j、L
5およびL
6は請求項1で定義した通りである。
【請求項16】
請求項1から
13のいずれか一項に記載の液晶配向剤組成物の配向硬化物を含む、液晶配向膜。
【請求項17】
請求項
16に記載の液晶配向膜を含む、液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2019年1月17日付の韓国特許出願第10-2019-0006421号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、優れた膜強度を有しながらも、液晶配向性、耐久性および電気的特性に優れ、高い膜密度を通じて優れた遮蔽力を有する液晶配向剤組成物、これを用いた液晶配向膜の製造方法、これを用いた液晶配向膜および液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0003】
液晶表示素子において、液晶配向膜は液晶を一定方向に配向させる役割を担当している。具体的には、液晶配向膜は液晶分子の配列に配向子(director)の役割を果たして電場(electric field)により液晶が動いて画像を形成する時、適当な方向を取るようにする。液晶表示素子において均一な輝度(brightness)と高いコントラスト比(contrast ratio)を得るためには液晶を均一に配向することが必須である。
【0004】
従来には液晶を配向させる方法の一つとして、ガラスなどの基板にポリイミドなどの高分子膜を塗布し、この表面をナイロンやポリエステルなどの繊維を用いて一定方向に擦るラビング(rubbing)方法が用いられた。しかし、ラビング方法は、繊維質と高分子膜が摩擦する時に微細なホコリや静電気(electrical discharge:ESD)が発生し得、液晶パネルの製造時に深刻な問題を引き起こすことがある。
【0005】
前記ラビング方法の問題を解決するために、最近では摩擦でなく光照射によって高分子膜に異方性(非等方性、anisotropy)を誘導し、これを用いて液晶を配列する光配向法が研究されている。
【0006】
前記光配向法に使用できる材料としては多様な材料が紹介されており、その中でも液晶配向膜の良好な諸般性能のためにポリイミドが主に使用されている。そのため、ポリアミック酸またはポリアミック酸エステルなどの前駆体形態でコーティングした後、200℃から230℃の温度で熱処理工程を経てポリイミドを形成させ、ここに光照射を行って配向処理を行うことになる。
【0007】
しかし、このようなポリイミド状態の膜に光照射して十分な液晶配向性を得るためには多くのエネルギーを必要とし、実際の生産性確保に困難が生じるだけでなく、光照射した後、配向安定性を確保するために追加的な熱処理工程も必要であり、パネルの大型化により製造工程上のカラムスペーサ(Column space、CS)の偏り現象が発生しながら液晶配向膜の表面にヘイズが発生し、これによってピンホール不良が生じてパネルの性能が十分に具現できない限界があった。
【0008】
また、液晶表示素子の高品位駆動のためには高い電圧保持率(voltage holding ratio;VHR)を示さなければならないが、ポリイミドだけではこれを示すのに限界があった。特に、最近では低電力ディスプレイに対する要求が増加することに伴い、液晶配向剤は液晶の配向性という基本特性だけでなく、直流/交流電圧によって発生する残像、電圧保持率などの電気的な特性にも影響を及ぼしうることを発見した。
【0009】
そこで、ディスプレイ分野で要求される高い膜強度の液晶配向膜を製造するために多様な架橋剤を液晶配向剤組成物に添加する方案が提案されたが、架橋剤化合物の単なる添加によって高温、低周波数での電気的特性が減少して高性能/低電力ディスプレイへの適用が可能な液晶配向膜を製造するには困難があった。
【0010】
そこで、高い膜強度を有する配向膜を製造しながらも、配向膜の配向特性と電気的特性を高めることができる組成物の開発が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、優れた膜強度を有しながらも、液晶配向性、耐久性および電気的特性に優れ、高い膜密度を通じて優れた遮蔽力を有する液晶配向剤組成物を提供する。
【0012】
また、本発明は、前記液晶配向剤組成物を用いた液晶配向膜の製造方法を提供する。
【0013】
本明細書ではまた、前記液晶配向剤組成物を用いた液晶配向膜とそれを含む液晶表示素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本明細書においては、下記化学式1で表される繰り返し単位、下記化学式2で表される繰り返し単位および下記化学式3で表される繰り返し単位からなる群から選択される1種以上を含む第1繰り返し単位および下記化学式4で表される繰り返し単位、下記化学式5で表される繰り返し単位および下記化学式6で表される繰り返し単位からなる群から選択される1種以上を含む第2繰り返し単位を含む液晶配向剤用共重合体;および下記化学式11で表される架橋剤化合物を含む、液晶配向剤組成物が提供される。
【0015】
[化学式1]
【化1】
[化学式2]
【化2】
[化学式3]
【化3】
[化学式4]
【化4】
[化学式5]
【化5】
[化学式6]
【化6】
【0016】
上記化学式1~6中、R
1およびR
2のうちの少なくとも一つは炭素数1~10のアルキル基であり、残りは水素であり、R
3およびR
4のうちの少なくとも一つは炭素数1~10のアルキル基であり、残りは水素であり、X
1~X
6はそれぞれ独立して、下記化学式7で表される4価の有機基であり、
[化学式7]
【化7】
上記化学式7中、R
7~R
12は、それぞれ独立して、水素または炭素数1~6のアルキル基であり、L
1は単結合、-O-、-CO-、-COO-、-S-、-SO-、-SO
2-、-CR
13R
14-、-(CH
2)
Z-、-O(CH
2)
ZO-、-COO(CH
2)
ZOCO-、-CONH-、またはフェニレンの中から選択されるいずれか一つであり、前記L
1中のR
13およびR
14は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基または炭素数1~10のハロアルキル基であり、前記L
1中のzは1~10の整数であり、前記Y
1~Y
3はそれぞれ独立して、下記化学式8で表される2価の有機基であり、
[化学式8]
【化8】
上記化学式8中、Q
1~Q
8のうちの少なくとも1以上が窒素であり、残りは炭素であり、L
2およびL
4のうちの少なくとも一つが-CON(R
15)-、-N(R
16)CO-のうちの一つであり、残りは直接結合であり、L
3は直接結合または2価の官能基であり、R
15~R
16はそれぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基または水素であり、nは1以上の整数であり、
前記Y
4~Y
6はそれぞれ独立して、上記化学式8で表される2価の有機基とは異なる2価の有機基であり、
[化学式11]
【化9】
上記化学式11中、A
1は1価~4価の官能基であり、jは1~4の整数であり、L
5およびL
6は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン基または炭素数6~20のアリーレン基であり、R
17およびR
18はそれぞれ独立して、ケイ素含有1価の官能基である。
【0017】
本明細書ではまた、前記液晶配向剤組成物を基板に塗布して塗膜を形成する段階と;前記塗膜を乾燥する段階と;前記乾燥段階直後の塗膜に光を照射して配向処理する段階と;前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階と;を含む、液晶配向膜の製造方法が提供される。
【0018】
本明細書ではまた、前記液晶配向剤組成物の配向硬化物を含む、液晶配向膜とそれを含む液晶表示素子が提供される。
【0019】
以下、発明の具体的な実施形態による液晶配向剤組成物、これを用いた液晶配向膜の製造方法、これを用いた液晶配向膜および液晶表示素子についてより詳細に説明する。
【0020】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」という時、これは特に反対の意味を示す記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0021】
本明細書において、「置換」という用語は、化合物中の水素原子の代わりに他の官能基が結合することを意味し、置換される位置は水素原子が置換される位置、すなわち、置換基が置換可能な位置であれば限定されず、2以上置換される場合、2以上の置換基は互いに同一または異なってもよい。
【0022】
本明細書において「置換または非置換の」という用語は、重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトロ基;ヒドロキシ基;カルボニル基;エステル基;イミド基;アミド基;アミノ基;カルボキシ基;スルホン酸基;スルホンアミド基;ホスフィンオキシド基;アルコキシ基;アリールオキシ基;アルキルチオキシ基;アリールチオキシ基;アルキルスルホキシ基;アリールスルホキシ基;シリル基;ホウ素基;アルキル基;シクロアルキル基;アルケニル基;アリール基;アラルキル基;アラルケニル基;アルキルアリール基;アリールホスフィン基;またはN、O、およびS原子のうち1個以上を含むヘテロ環基からなる群から選択される1個以上の置換基で置換または非置換されるか、前記例示した置換基のうち2以上の置換基が連結された置換または非置換のものを意味する。例えば、「2以上の置換基が連結された置換基」は、ビフェニル基であり得る。すなわち、ビフェニル基はアリール基であり得、2個のフェニル基が連結された置換基と解釈されることもできる。
【0023】
本明細書において、
【化10】
または
【化11】
は、他の置換基に連結される結合を意味する。
【0024】
本明細書において、アルキル基は直鎖または分枝鎖であり得、炭素数は特に限定されないが、1~10であることが好ましい。他の一実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~6である。アルキル基の具体的な例としては、メチル、エチル、プロピル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチル-ブチル、ペンチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、オクチル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、1-エチル-プロピル、1,1-ジメチル-プロピル、イソヘキシル、2-メチルペンチル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシルなどがあるが、これらに限定されない。前記アルキル基は置換または非置換され得る。
【0025】
本明細書において、ハロアルキル基は上述したアルキル基にハロゲン基が置換された官能基を意味し、ハロゲン基の例としてはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素がある。前記ハロアルキル基は置換または非置換され得る。
【0026】
本明細書において、アリール基はアレーン(arene)に由来する1価の官能基であって、例えば、単環式または多環式であり得る。具体的には、単環式アリール基としてはフェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基、スチルベニル基などであり得るが、これらに限定されるものではない。多環式アリール基としてはナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、クリセニル基、フルオレニル基などであり得るが、これらに限定されるものではない。前記アリール基は置換または非置換され得る。
【0027】
ハロゲン(halogen)はフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)またはヨウ素(I)であり得る。
【0028】
本明細書において、アルキレン基は、アルカン(alkane)に由来する2価の官能基で、炭素数は1~20、または1~10、または1~5である。例えば、直鎖型、分岐型または環状で、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基などであり得る。前記アルキレン基に含まれている一つ以上の水素原子は、それぞれ前記アルキル基の場合と同様の置換基に置換可能である。
【0029】
本明細書において、ヘテロアルキレン基は、異種原子として酸素(O)、窒素(N)または硫黄(S)を含むアルキレン基で、炭素数は1~10、または1~5である。例えば、オキシアルキレンなどであり得る。前記ヘテロアルキレン基に含まれている一つ以上の水素原子は、それぞれ前記アルキル基の場合と同様の置換基に置換可能である。
【0030】
本明細書において、シクロアルキレン基は、シクロアルカン(cycloalkane)に由来する2価の官能基で、炭素数は3~20、または3~10である。例えば、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、3-メチルシクロペンチレン、2,3-ジメチルシクロペンチレン、シクロへキシレン、3-メチルシクロへキシレン、4-メチルシクロへキシレン、2,3-ジメチルシクロへキシレン、3,4,5-トリメチルシクロへキシレン、4-tert-ブチルシクロへキシレン、シクロヘプチレン、シクロオクチレンなどがあるが、これらに限定されない。前記シクロアルキレン基は置換または非置換され得る。
【0031】
本明細書において、アリーレン基はアレーン(arene)に由来する2価の官能基で、単環式または多環式であり得、炭素数6~20、または6~10である。例えば、フェニレン基、ビフェニレン基、テルフェニレン基、スチルベニレン基、ナフチレニル基などであり得るが、これらに限定されるものではない。前記アリーレン基に含まれている一つ以上の水素原子は、それぞれ前記アルキル基の場合と同様の置換基に置換可能である。
【0032】
本明細書において、ヘテロアリーレン基は、炭素数は2~20、または2~10、または6~20である。異種原子としてO、NまたはSを含むアリーレン基であって、前記ヘテロアリーレン基に含まれている一つ以上の水素原子は、それぞれ前記アルキル基の場合と同様の置換基に置換可能である。
【0033】
本明細書において、共重合体は、2種以上の繰り返し単位を含む複合重合体を意味する。
【0034】
本明細書において、共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などを全て含む意味で使用される。
【0035】
本明細書において、重量平均分子量は、GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。前記GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を測定する過程では、通常知られている分析装置と示差屈折率検出器(Refractive Index Detector)などの検出器および分析用カラムを用いることができ、通常適用される温度条件、溶媒、flow rateを適用することができる。前記測定条件の具体的な例としては、Polymer Laboratories PLgel MIX-B 300mm長さのカラムを用いてWaters PL-GPC220機器を用いて、評価温度は40℃であり、ジメチルホルムアミド(DMF)およびテトラヒドロフラン(THF)を50wt%:50wt%の重量比で混合して溶媒として使用し、流速は1mL/minの速度で、サンプルは10mg/10mLの濃度に調製した後、200μLの量で供給し、ポリスチレン標準を用いて形成された検定曲線によりMwの値を求めることができる。ポリスチレン標準品の分子量は、1,000/5,000/10,000/30,000/100,000の5種を使用した。
【0036】
本明細書において、多価官能基(multivalent functional group)は、任意の化合物に結合した複数の水素原子が除去された形態の残基であって、例えば2価の官能基、3価の官能基、4価の官能基が挙げられる。一例として、シクロブタンに由来する4価の官能基は、シクロブタンに結合した任意の水素原子4個が除去された形態の残基を意味する。
【0037】
本明細書において、直接結合または単結合は、当該位置にいかなる原子または原子団も存在せず、結合線で連結されることを意味する。具体的には、化学式中のL1、L2で表される部分に別途の原子が存在しない場合を意味する。
【0038】
本発明による液晶配向剤組成物は、アミド結合などを含有する特定構造のジアミンに由来する繰り返し単位を含む液晶配向剤用共重合体を含むことを主要な特徴とする。
【0039】
本発明ではアミド結合などを含有する特定構造のジアミンに由来する繰り返し単位を含む液晶配向剤用共重合体を含み、液晶配向性に優れ、高温、低周波数でも高い電圧保持率を有することができ、コントラスト比の低下や残像現象を改善することができ、交流駆動時に電圧の非対称化による電荷蓄積を抑制し、蓄積した電荷を速く放電させて電気的性能が向上し、膜密度が高くなることによって遮蔽力が向上することを実験により確認して発明を完成した。
【0040】
具体的には、アミド結合などを含有する特定構造のジアミンに由来する繰り返し単位を含む液晶配向剤用共重合体は、2個の芳香族環化合物がアミド結合を含む官能基を媒介として結合する化学構造的特徴を有することによって、繰り返し単位間水素結合を形成する理由から、膜密度が向上することによって優れた遮蔽力を実現することができる。
【0041】
また、前記一実施形態の液晶配向剤組成物は、液晶配向剤用共重合体と一緒に添加される架橋剤化合物が上記化学式11で表されるように、架橋性官能基であるヒドロキシ基(-OH)の末端をR17およびR18の特定官能基で置換させる場合、液晶配向剤組成物から製造される液晶配向膜の配向安定性および配向特性が改善されるだけでなく、優れた分散性が具現されることを実験により確認して発明を完成した。
【0042】
また、本発明者らは、前記一架橋性官能基であるヒドロキシ基(-OH)の末端をR17およびR18のケイ素含有官能基で置換させる場合、ケイ素含有官能基を含むことにより従来のヒドロキシ基(-OH)末端の架橋剤より初期乾燥工程での架橋剤の反応性が減り、配向のための露光工程後の架橋反応が始まって架橋剤による初期配向の低下を減らすことを確認した。また、配向のための露光後のイミド化が進行される過程でイミド化転換率が高くなりながら再配列率が増加して配向性が増加する技術的効果が得られることを実験により確認して発明を完成した。
【0043】
前記架橋剤化合物の架橋性官能基末端に導入されたR17およびR18の官能基は、液晶配向剤組成物内では架橋性官能基による架橋反応を抑制させて不要な架橋構造の形成を最小化して、組成物の安定性および信頼性を向上させることができ、液晶配向膜の乾燥または焼成過程時、熱処理によってほぼ80℃以上の温度で脱着除去されながら架橋性官能基末端のヒドロキシ基が回復して円滑な架橋反応を行い、配向膜の機械的物性を向上させることができる。
【0044】
すなわち、液晶配向剤組成物内では上記化学式11で表される架橋剤化合物の構造が維持されて、ポリイミドまたはその前駆体重合体と上記化学式11で表される架橋剤化合物間の架橋反応が抑制されることができる。そして、液晶配向剤組成物から液晶配向膜を製造する乾燥工程、露光工程、硬化工程などを経て、熱処理によって温度が上昇した時、上記化学式11で表される架橋剤化合物でR17およびR18の官能基が水素原子に置換され、これによりポリイミドまたはその前駆体重合体と後述する化学式13で表される架橋剤化合物間の架橋反応が行われる。
【0045】
したがって、前記一実施形態の液晶配向剤組成物は、組成物中に添加される架橋剤化合物の架橋反応性を抑制して架橋剤化合物とポリイミドまたはその前駆体重合体の分散性を十分に向上させることができ、後述する他の実施形態の液晶配向膜の製造過程中に組成物内で架橋剤化合物とポリイミドまたはその前駆体重合体間の架橋反応により配向膜の強度が向上し、最終的に製造された液晶配向セルにおける優れた配向特性および電気的特性を実現することができる。
【0046】
1.液晶配向剤組成物
発明の一実施形態によれば、上記化学式1で表される繰り返し単位、上記化学式2で表される繰り返し単位および上記化学式3で表される繰り返し単位からなる群から選択される1種以上を含む第1繰り返し単位および上記化学式4で表される繰り返し単位、上記化学式5で表される繰り返し単位および上記化学式6で表される繰り返し単位からなる群から選択される1種以上を含む第2繰り返し単位を含む液晶配向剤用共重合体;および上記化学式11で表される架橋剤化合物を含む液晶配向剤組成物を提供することができる。
【0047】
具体的には、前記第1繰り返し単位は、上記化学式1で表される繰り返し単位、上記化学式2で表される繰り返し単位、上記化学式3で表される繰り返し単位のうちの1種、またはこれらのうちの2種の混合、またはこれら3種全ての混合を含み得る。
【0048】
また、前記第2繰り返し単位は、上記化学式4で表される繰り返し単位、上記化学式5で表される繰り返し単位、上記化学式6で表される繰り返し単位のうちの1種、またはこれらのうちの2種の混合、またはこれら3種全ての混合を含み得る。
【0049】
具体的には、前記一実施形態による液晶配向剤組成物に含まれる第1繰り返し単位および第2繰り返し単位において、X1~X6はそれぞれ独立して、上記化学式7で表される4価の有機基であり得る。すなわち、前記X1~X3は、ヘテロ芳香族環を含むジアミンとテトラカルボン酸無水物の結合物を含む第1繰り返し単位でテトラカルボン酸無水物に由来する官能基であり得、前記X4~X6は、2個以上の芳香族環を含むジアミンとテトラカルボン酸無水物の結合物を含む第2繰り返し単位でテトラカルボン酸無水物に由来する官能基であり得る。より具体的には、前記X1~X6は、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、またはポリイミド合成時に使用されるテトラカルボン酸二無水物化合物に由来する官能基であり得る。
【0050】
上記化学式7中、R7~R12は、それぞれ独立して、水素または炭素数1~6のアルキル基であり、L1は単結合、-O-、-CO-、-COO-、-S-、-SO-、-SO2-、-CR13R14-、-(CH2)Z-、-O(CH2)ZO-、-COO(CH2)ZOCO-、-CONH-、またはフェニレンの中から選択されるいずれか一つであり、前記L1でR13およびR14はそれぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基または炭素数1~10のハロアルキル基であり、前記L1でzは1~10の整数である。
【0051】
より好ましくは、前記X1~X6は、それぞれ独立して、シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物に由来する下記化学式7-1の有機基、1,3-ジメチルシクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物に由来する下記化学式7-2の有機基、テトラヒドロ-[3,3'-ビフラン]-2,2',5,5'-テトラオンに由来する下記化学式7-3の有機基、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物に由来する下記化学式7-4の有機基、ピロメリット酸二無水物に由来する下記化学式7-5の有機基、または3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物に由来する下記化学式7-6の有機基であり得る。
【0052】
[化学式7-1]
【化12】
[化学式7-2]
【化13】
[化学式7-3]
【化14】
[化学式7-4]
【化15】
[化学式7-5]
【化16】
[化学式7-6]
【化17】
【0053】
一方、前記一実施形態による液晶配向剤組成物中の液晶配向剤用重合体に含まれる第1繰り返し単位は、上記化学式1~3の繰り返し単位でY1~Y3がそれぞれ独立して、上記化学式8で表される2価の有機基であり得る。
【0054】
すなわち、前記第1繰り返し単位は、ヘテロ芳香族環を含むジアミンとテトラカルボン酸二無水物の結合物を含むことができ、前記Y1~Y3は、ヘテロ芳香族環を含むジアミンとテトラカルボン酸無水物の結合物を含む第1繰り返し単位でヘテロ芳香族環を含むジアミンに由来する官能基であり得る。
【0055】
前記ヘテロ芳香族環を含むジアミンとは、ヘテロアリーレン基を含むジアミンを意味する。前記ヘテロアリーレン基とは、異種原子としてO、NまたはSを含むアリーレン基を意味する。
【0056】
具体的には、前記ヘテロ芳香族環を含むジアミンは異種原子としてNを含むアリーレン基を含むジアミンであり得る。より具体的には、前記ヘテロ芳香族環を含むジアミンはピリジンに由来するアリーレン基を含み得る。
【0057】
前記ヘテロ芳香族環を含むジアミンは特に限定されるものではないが、例えば、下記化学式8'で表されるジアミンであり得る。
【0058】
【0059】
上記化学式8'中、Q1~Q8のうちの少なくとも1以上が窒素であり、残りは炭素であり、L2およびL4のうちの少なくとも一つが-CON(R15)-、-N(R16)CO-のうちの一つであり、残りは直接結合であり、L3は直接結合または2価の官能基であり、R15~R16はそれぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基または水素であり、nは1以上の整数である。
【0060】
具体的には、上記化学式8'で表されるジアミンは、下記化学式8'-1~化学式8'-2で表されるジアミンであり得る。
【0061】
[化学式8'-1]
【化19】
[化学式8'-2]
【化20】
【0062】
上記化学式8'-1~化学式8'-2中、L2およびL4のうちの少なくとも一つが-CON(R15)-、-N(R16)CO-のうちの一つであり、残りは直接結合であり、L3は直接結合または2価の官能基であり、R15~R16はそれぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基または水素であり、nは1以上の整数である。
【0063】
より具体的には、上記化学式8'で表されるジアミンは、下記化学式8'-a~化学式8'-cで表されるジアミンであり得る。
【0064】
[化学式8'-a]
【化21】
[化学式8'-b]
【化22】
[化学式8'-c]
【化23】
【0065】
前記テトラカルボン酸二無水物は下記化学式7'で表される。
【0066】
【0067】
上記化学式7'中、Xは上記化学式7で表される4価の官能基であり得る。
【0068】
前記テトラカルボン酸二無水物の種類が特に限定されるものではないが、例えば、下記化学式7'-1で表される1,3-ジメチルシクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物または下記化学式7'-2で表されるピロメリット酸二無水物であり得る。
【0069】
[化学式7'-1]
【化25】
[化学式7'-2]
【化26】
【0070】
前記ヘテロ芳香族環を含むジアミンとテトラカルボン酸二無水物の結合物とは、前記ヘテロ芳香族環を含むジアミンに含まれるアミノ基の窒素原子と前記テトラカルボン酸二無水物に含まれるカルボニル基の炭素原子が結合した化合物を意味する。
【0071】
上記化学式8で表される有機基を含む第1繰り返し単位を含むことによって、液晶配向剤としての配向性や残像特性は同等水準以上を満足しながらも、電圧保有率が高く向上し、DC charging速度が速くて残留するDCの含有量が低くなるなどの優れた電気的特性を実現することができる。
【0072】
上記化学式8において、2個の芳香族環化合物間結合を媒介する官能基がアミド官能基を含む場合、一実施形態による液晶配向剤組成物が第1繰り返し単位を含む液晶配向剤用共重合体を含有して、液晶配向剤組成物の塗布、乾燥、配向、焼成工程を経る間の高温の熱処理によっても前記アミド官能基が分解または変形せずに維持されて、上述した電気的特性の関連効果が配向膜と配向セルにおいても安定的に具現され得る。
【0073】
また、上記化学式8で表される官能基は、2個の芳香族環化合物がアミド結合を含む官能基を媒介として結合する化学構造的特徴を有することによって、繰り返し単位間水素結合を形成する理由から、膜密度が向上することによって優れた遮蔽力を実現することができる。
【0074】
具体的には、上記化学式8中、L3は直接結合、-O-、-S-、-N(R21)-、-COO-、-CO(R22)-、-R23O-、-C(CF3)2-、-O(R24)O-、炭素数1~20のアルキレン基、炭素数1~20のハロアルキレン基、炭素数1~20のシクロアルキレン基、炭素数1~30のアリーレン基のうちの一つであり、R21は炭素数1~20のアルキル基または水素であり、R22~R24はそれぞれ独立して、直接結合、炭素数1~20のアルキレン基、炭素数1~20のハロアルキレン基のうちの一つであり得る。
【0075】
より具体的には、上記化学式8で表される有機基で、Q1~Q4のうちの少なくとも一つは窒素であり、残りは炭素であり得る。より好ましくは、上記化学式8中のQ2およびQ4のうちの少なくとも一つが窒素であり、残りは炭素であり、Q1およびQ3は炭素であり得る。
【0076】
また、上記化学式8で表される有機基で、Q5~Q8のうちの少なくとも一つは窒素であり、残りは炭素であり得る。より好ましくは、上記化学式8中のQ5およびQ7のうちの少なくとも一つが窒素であり、残りは炭素であり、Q6およびQ8は炭素であり得る。
【0077】
このように、上記化学式8で表される官能基で、アミド結合を含む官能基を媒介として結合する2個の芳香族環化合物のうちの少なくとも1個、または2個すべてがヘテロ芳香族環化合物の場合、液晶配向性または電気的特性向上効果が極大化されると同時に、アミンと酸無水物の反応で形成されるポリアミック酸またはポリアミック酸エステルに対してイミド化反応の進行時(例えば、230℃熱処理により)、十分な水準の高いイミド化率を確保することができる。
【0078】
一方、上記化学式8中、L2は-N(R16)CO-であり、L4は-CON(R15)-または直接結合であり、L3は直接結合、炭素数1~20のアルキレン基、炭素数1~20のハロアルキレン基、炭素数1~20のシクロアルキレン基、炭素数1~30のアリーレン基のうちの一つであり、R15~R16はそれぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基または水素であり、nは1である。
【0079】
具体的には、上記化学式8は、下記化学式8-1~化学式8-2で表される官能基のうちの一つを含み得る。
【0080】
[化学式8-1]
【化27】
[化学式8-2]
【化28】
【0081】
上記化学式8-1~化学式8-2中、L2およびL4のうちの少なくとも一つが-CON(R15)-、-N(R16)CO-のうちの一つであり、残りは直接結合であり、L3は直接結合または2価の官能基であり、R15~R16はそれぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基または水素であり、nは1以上の整数である。
【0082】
より具体的には、上記化学式8は、下記化学式8-a~化学式8-cで表される官能基が挙げられる。
【0083】
[化学式8-a]
【化29】
[化学式8-b]
【化30】
[化学式8-c]
【化31】
【0084】
一方、前記一実施形態による液晶配向剤組成物中の液晶配向剤用重合体に含まれる第2繰り返し単位は、上記化学式4~6の繰り返し単位でY4~Y6がそれぞれ独立して、炭素数6~30のアリーレン基を含む芳香族2価の有機基;または炭素数6~30のアリーレン基およびイミド基を含むイミド系芳香族2価の有機基を含み得る。
【0085】
すなわち、前記第2繰り返し単位は、炭素数6~30のアリーレン基を含むジアミンとテトラカルボン酸二無水物の結合物またはイミド基を含むイミド系芳香族2価の有機基を含むジアミンとテトラカルボン酸二無水物の結合物を含み得る。
【0086】
前記炭素数6~30のアリーレン基を含むジアミンとは、アリーレン基を含むジアミンを意味し、具体的には、前記アリーレン基はO、S、Nなどの異種原子を含まない芳香族2価の官能基を意味する。
【0087】
前記炭素数6~30のアリーレン基を含むジアミンは特に限定されるものではないが、例えば、下記化学式10'で表されるジアミンであり得る。
【0088】
【0089】
上記化学式10'中、R19およびR20は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ、ニトリル、炭素数1~10のアルキル、炭素数1~10のアルケニル、炭素数1~10のアルコキシ、炭素数1~10のフルオロアルキル、または炭素数1~10のフルオロアルコキシであり、pおよびqはそれぞれ独立して、0~4の整数であり、Aは単結合、-O-、-CO-、-S-、-SO2-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、-CONH-、-COO-、-(CH2)y-、-O(CH2)yO-、-O(CH2)y-、-NH-、-NH(CH2)y-NH-、-NH(CH2)yO-、-OCH2-C(CH3)2-CH2O-、-COO-(CH2)y-OCO-、または-OCO-(CH2)y-COO-であり、yは1~10の整数であり、kおよびmはそれぞれ独立して、0~3の整数であり、rは0~3の整数である。
【0090】
上記化学式10'で表されるジアミンの例が特に限定されるものではないが、例えば、下記化学式10'-1または化学式10'-2で表されるジアミンであり得る。
【0091】
[化学式10'-1]
【化33】
[化学式10'-2]
【化34】
【0092】
上記化学式10'-2中、DはCH2である。
【0093】
前記テトラカルボン酸二無水物は下記化学式7'で表される。
【0094】
【0095】
上記化学式7'中、Xは上記化学式7で表される4価の官能基であり得る。
【0096】
前記テトラカルボン酸二無水物の種類が特に限定されるものではないが、例えば、下記化学式7'-1で表される1,3-ジメチルシクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物または下記化学式7'-2で表されるピロメリット酸二無水物であり得る。
【0097】
[化学式7'-1]
【化36】
[化学式7'-2]
【化37】
【0098】
前記芳香族環を含むジアミンとテトラカルボン酸二無水物の結合物とは、前記ヘテロ芳香族環を含むジアミンに含まれるアミノ基の窒素原子と前記テトラカルボン酸二無水物に含まれるカルボニル基の炭素原子が結合した化合物を意味する。
【0099】
すなわち、前記Y4~Y6は、炭素数6~30のアリーレン基を含む芳香族2価の有機基であり得る。
【0100】
より具体的には、前記Y4~Y6は下記化学式10で表される2価の有機基であり得る。
【0101】
【0102】
上記化学式10中、R19およびR20は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、シアノ、ニトリル、炭素数1~10のアルキル、炭素数1~10のアルケニル、炭素数1~10のアルコキシ、炭素数1~10のフルオロアルキル、または炭素数1~10のフルオロアルコキシであり、pおよびqはそれぞれ独立して、0~4の整数であり、Aは単結合、-O-、-CO-、-S-、-SO2-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、-CONH-、-COO-、-(CH2)y-、-O(CH2)yO-、-O(CH2)y-、-NH-、-NH(CH2)y-NH-、-NH(CH2)yO-、-OCH2-C(CH3)2-CH2O-、-COO-(CH2)y-OCO-、または-OCO-(CH2)y-COO-であり、yは1~10の整数であり、kおよびmはそれぞれ独立して、0~3の整数であり、rは0~3の整数である。
【0103】
上記化学式10中、R19またはR20で置換されない炭素には水素が結合し、pおよびqはそれぞれ独立して0~4、または1~4、または2~4の整数であり、pまたはqが2~4の整数であるとき、複数のR19またはR20は同一または互いに異なる置換基であり得る。
【0104】
そして、上記化学式10中、kおよびmはそれぞれ独立して0~3、好ましくは0~1であり、rは0~3、または1~3の整数である。
【0105】
好ましくは、上記化学式10は、下記化学式10-1または化学式10-2で表される官能基であり得る。
【0106】
[化学式10-1]
【化39】
[化学式10-2]
【化40】
【0107】
上記化学式10-2中、DはCH2である。
【0108】
または、前記第2繰り返し単位は、イミド基を含むイミド系芳香族2価の有機基を含むジアミンとテトラカルボン酸二無水物の結合物を含み得る。
【0109】
前記イミド系芳香族2価の有機基を含むジアミンは特に限定されるものではないが、例えば下記化学式9'で表されるジアミンであり得る。
【0110】
【0111】
上記化学式9'中、Tは上記化学式7で表される4価の有機基であり、D1およびD2はそれぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基、炭素数1~10のヘテロアルキレン基、炭素数3~20のシクロアルキレン基、炭素数6~20のアリーレン基または炭素数2~20のヘテロアリーレン基の中から選択されるいずれか一つである。
【0112】
具体的には、上記化学式9'中、Tは下記化学式7-1で表される官能基または下記7-2で表される官能基であり得る。
【0113】
[化学式7-1]
【化42】
[化学式7-2]
【化43】
【0114】
より具体的には、上記化学式9'で表されるジアミンの例が特に限定されるものではないが、例えば、下記化学式9'-1または化学式9'-2で表されるジアミンであり得る。
【0115】
[化学式9'-1]
【化44】
[化学式9'-2]
【化45】
【0116】
すなわち、前記Y4~Y6はイミド系芳香族2価の有機基であり得る。
【0117】
より具体的には、前記Y4~Y6は下記化学式9で表される2価の有機基であり得る。
【0118】
【0119】
上記化学式9中、Tは上記化学式8で表される4価の有機基であり、D1およびD2はそれぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基、炭素数1~10のヘテロアルキレン基、炭素数3~20のシクロアルキレン基、炭素数6~20のアリーレン基または炭素数2~20のヘテロアリーレン基の中から選択されるいずれか一つである。
【0120】
前記一実施形態による液晶配向剤組成物に含まれる液晶配向剤用重合体がすでにイミド化されたイミド繰り返し単位を含むジアミンから合成される場合、塗膜を形成した後、高温の熱処理工程なしに直ちに光を照射して異方性を生成させ、その後に熱処理を行って配向膜を完成できるので、光照射エネルギーを大きく減らすことができるだけでなく、1回の熱処理工程を含む簡単な工程によっても配向性と安定性に優れるだけでなく、電圧保持率と電気的特性にも優れた液晶配向膜を製造することができる。
【0121】
具体的には、上記化学式9中、Tは下記化学式7-1で表される官能基または下記7-2で表される官能基であり得る。
【0122】
[化学式7-1]
【化47】
[化学式7-2]
【化48】
【0123】
より具体的には、上記化学式9で表される有機基の例が特に限定されるものではないが、例えば、下記化学式9-1または化学式9-2で表される官能基であり得る。
【0124】
[化学式9-1]
【化49】
[化学式9-2]
【化50】
【0125】
前記第2繰り返し単位である上記化学式4、化学式5および化学式6で表される繰り返し単位のうち、化学式4で表される繰り返し単位を繰り返し単位全体に対して5モル%~74モル%、または10モル%~60モル%含み得る。
【0126】
上述したように、上記化学式4で表されるイミド繰り返し単位を特定の含有量を含む重合体を用いると、前記液晶配向剤組成物に含まれる液晶配向剤用重合体がすでにイミド化されたイミド繰り返し単位を一定の含有量含むので、高温の熱処理工程を省略し、直ちに光を照射しても配向性と安定性に優れた液晶配向膜を製造することができる。
【0127】
万一、化学式4で表される繰り返し単位が上記の含有量の範囲より少なく含まれると、十分な配向特性を示すことができず、配向安定性が低下し得、上記化学式4で表される繰り返し単位の含有量が上記の範囲を超えると、コーティング可能な安定した配向液を製造しにくい問題があり得る。これにより、上記化学式4で表される繰り返し単位を上述した含有量の範囲で含むことが保管安定性、電気的特性、配向特性および配向安定性においていずれも優れた液晶配向剤用重合体を提供することができるので好ましい。
【0128】
また、上記化学式5で表される繰り返し単位または化学式6で表される繰り返し単位は、目的とする特性に応じて適宜の含有量で含まれ得る。
【0129】
具体的には、上記化学式5で表される繰り返し単位は、上記化学式4~6で表される繰り返し単位に対して1モル%~60モル%、好ましくは5モル%~50モル%含まれ得る。上記化学式5で表される繰り返し単位は、光を照射した後、高温の熱処理工程中にイミドに転換される比率が低いので上記の範囲を超える場合、液晶と相互作用する領域が低くなり、相対的に配向性が低下することがある。したがって、上記化学式5で表される繰り返し単位は、上述した範囲内で工程特性に優れながらも高いイミド化率を実現できる液晶配向剤用重合体を提供することができる。
【0130】
そして、上記化学式6で表される繰り返し単位は、上記化学式4~6で表される繰り返し単位に対して0モル%~95モル%、好ましくは10モル%~80モル%含まれ得る。上記の範囲内で優れたコーティング性を示すので、工程特性に優れながらも高いイミド化率を実現できる液晶配向剤用重合体を提供することができる。
【0131】
この時、上記化学式1で表される繰り返し単位、上記化学式2で表される繰り返し単位および上記化学式3で表される繰り返し単位からなる群から選択される1種以上を含む第1繰り返し単位と、上記化学式4で表される繰り返し単位、上記化学式5で表される繰り返し単位および上記化学式6で表される繰り返し単位からなる群から選択される1種以上を含む第2繰り返し単位間のモル比率は1:99~99:1、1:99~75:25、1:99~50:50であり得る。すなわち、前記一実施形態による液晶配向剤組成物は、前記第2繰り返し単位を第1繰り返し単位と比較して過剰または同量で含む液晶配向剤用重合体を含み得る。
【0132】
このような特徴を有する前記第1繰り返し単位と第2繰り返し単位を前記モル比を満足するように使用する場合、第1繰り返し単位が有する優れた液晶配向性および電気的特性に第2繰り返し単位が有する優れた保管安定性および配向安定性を相互補完することができるので、優れたコーティング性を示して工程特性に優れ、かつ高いイミド化率を実現できるだけでなく、直流/交流電圧によって発生する残像、電圧保持率などの電気的な特性に優れた液晶配向膜を製造することができ、より優れた配向性と電気的特性を同時に有する液晶配向膜を製造することができる。
【0133】
前記液晶配向剤用重合体それぞれの重量平均分子量(GPC測定)が特に限定されるものではないが、例えば、10,000g/mol~200,000g/molであり得る。
【0134】
前記一実施形態の液晶配向剤組成物は、上述した液晶配向剤用共重合体以外に、架橋剤化合物を含むことができ、前記架橋剤化合物は上記化学式11で表される特定の化学構造を有することができる。前記架橋剤化合物の物理/化学的特性は上述した化学式11の特定構造に起因すると考えられる。
【0135】
上記化学式11中、A1は1~4価の官能基であり、jは1~4の整数である。前記A1は架橋剤化合物の中心に位置する官能基であり、A1に含まれた末端官能基に化学式11中の中括弧「[]」で表した官能基がj個程度結合することができる。
【0136】
すなわち、上記化学式11中、jが1であれば、A1は1価の官能基である。また、jが2であれば、A1は2価の官能基である。また、jが3であれば、A1は3価の官能基である。また、jが4であれば、A1は4価の官能基である。好ましくは、上記化学式11中、jは2であり、A1は炭素数1~10のアルキレン基、具体的にはブチレン基であり得る。
【0137】
上記化学式11中、L5およびL6は互いに同一または異なり、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン基または炭素数6~20のアリーレン基のうちの一つであり、好ましくはL5およびL6はそれぞれ独立して、炭素数1~5のアルキレン基、例えばエチレン基であり得る。
【0138】
上記化学式11中、R17およびR18は、前記架橋剤化合物の架橋性官能基であるヒドロキシ基(-OH)の末端で水素原子の代わりに置換された官能基で、前記液晶配向剤用共重合体と上記化学式11で表される架橋剤化合物間の架橋反応を抑制させることができる。
【0139】
後述するように、前記R17およびR18は、液晶配向剤組成物から液晶配向膜を製造する乾燥工程、露光工程、硬化工程などを経て、80℃以上の温度に上昇する時に水素原子で置換することで脱着され得る。
【0140】
前記R17およびR18は、それぞれ独立して、ケイ素含有1価の官能基であり得る。
【0141】
具体的には、前記ケイ素含有1価の官能基は、下記化学式12で表される官能基であり得る。
【0142】
【0143】
上記化学式12中、R25、R26およびR27は、それぞれ独立して、水素、または炭素数1~10のアルキルである。より具体的には、上記化学式12中、R25、R26およびR27はメチル基またはエチル基であり得る。
【0144】
上記化学式11中、A1は炭素数1~10のアルキレン基であり、jは2である。すなわち、上記化学式11で表される架橋剤化合物は、下記化学式11-1で表される化合物を含み得る。
【0145】
【0146】
上記化学式11-1中、A'は炭素数1~10のアルキレン基であり、L7~L10はそれぞれ独立して、炭素数1~5のアルキレン基であり、R28~R31はそれぞれ独立して、ケイ素含有1価の官能基であり得る。
【0147】
より具体的には、上記化学式11-1で表される架橋剤化合物の例としては、A'は炭素数4のブチレン基であり、L7~L10はいずれも炭素数2のエチレン基であり、R22~R25はいずれも上記化学式12で表される官能基(R19、R20およびR21がメチル基)である下記化学式12-2で表される化合物が挙げられる。
【0148】
【0149】
また、上記化学式11-1で表される架橋剤化合物の他の例としては、A'は炭素数4のブチレン基であり、L7~L10はいずれも炭素数2のエチレン基であり、R22~R25はいずれも上記化学式12で表される官能基(R19、R20およびR21がエチル基)である下記化学式12-3で表される化合物が挙げられる。
【0150】
【0151】
上記化学式11で表される架橋剤化合物は、前記液晶配向剤組成物全体重量を基準にして1重量%~30重量%、または2重量%~25重量%、または3重量%~15重量%、または4重量%~10重量%で含まれ得る。前記架橋剤化合物の含有量が多すぎると、前記液晶配向剤用共重合体の架橋度が過度に増加することにより、前記重合体の柔軟性が減少することがある。
【0152】
反面、前記架橋剤化合物の含有量が少なすぎると、前記液晶配向剤用重合体の架橋度の増加による機械的強度および電気的特性の向上効果が十分に具現できない。
【0153】
また、上記化学式11で表される架橋剤化合物を有機溶媒に添加して混合した混合溶液を石英セルを用いて常温(25℃)、400nmの波長条件で、JASCO Asia Portal V-770 UV-VIS-NIR Spectrophotometer装置を用いて、下記数式1により計算した混合溶液の添加前/後の透過度の変化率が10%以下であり得る。
【0154】
[数式1]
透過度の変化率(%)=溶媒の透過度-混合溶液の透過度
【0155】
前記有機溶媒の具体的な例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、2-ピロリドン、N-エチルピロリドン、N-ビニルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジグライム、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどが挙げられる。これらは単独で用いることもでき、混合して用いることもできる。
【0156】
2.液晶配向膜の製造方法
発明のさらに他の実施形態によれば、前記液晶配向剤組成物を基板に塗布して塗膜を形成する段階(段階1)と;前記塗膜を乾燥する段階(段階2)と;前記塗膜に光を照射またはラビング処理して配向処理する段階(段階3)と;前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階(段階4)と、を含む、液晶配向膜の製造方法を提供する。
【0157】
前記段階1は、上述した液晶配向剤組成物を基板に塗布して塗膜を形成する段階である。前記液晶配向剤組成物に関する内容は、前記一実施形態で上述した内容を全て含む。
【0158】
前記液晶配向剤組成物を基板に塗布する方法は特に限定されず、例えばスクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェットなどの方法が用いられる。
【0159】
そして、前記液晶配向剤組成物は、有機溶媒に溶解または分散させたものであり得る。前記有機溶媒の具体的な例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、2-ピロリドン、N-エチルピロリドン、N-ビニルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジグライム、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどが挙げられる。これらは単独で用いることもでき、混合して用いることもできる。
【0160】
また、前記液晶配向剤組成物は、有機溶媒のほかに他の成分をさらに含み得る。非制限的な例として、前記液晶配向剤組成物が塗布されたとき、膜厚さの均一性や表面平滑性を向上させるか、あるいは液晶配向膜と基板の密着性を向上させるか、あるいは液晶配向膜の誘電率や導電性を変化させるか、あるいは液晶配向膜の緻密性を増加させる添加剤をさらに含み得る。このような添加剤としては、各種溶媒、界面活性剤、シラン系化合物、誘電体または架橋性化合物などが挙げられる。
【0161】
前記段階2は、前記液晶配向剤組成物を基板に塗布して形成された塗膜を乾燥する段階である。
【0162】
前記塗膜を乾燥する段階は、塗膜の加熱、真空蒸着などの方法を用いることができ、50℃~150℃、または60℃~140℃で行われることが好ましい。
【0163】
前記段階3は、前記塗膜に光を照射して配向処理する段階である。
【0164】
前記配向処理段階での塗膜は、乾燥段階直後の塗膜を意味し、前記乾燥段階以後の熱処理を経た後の塗膜でもある。前記「乾燥段階直後の塗膜」は、乾燥段階以後に乾燥段階以上の温度で熱処理する段階を行わず、直ちに光を照射することを意味し、熱処理以外の他の段階は付加することができる
【0165】
より具体的には、従来のポリアミック酸またはポリアミック酸エステルを含む液晶配向剤を使用して液晶配向膜を製造する場合は、ポリアミック酸のイミド化のために必須的に高温の熱処理を行った後、光を照射する段階を含むが、上述した一実施形態の液晶配向剤を用いて液晶配向膜を製造する場合は、前記熱処理段階を含まず、直ちに光を照射して配向処理した後、配向処理された塗膜を熱処理して硬化することによって配向膜を製造することができる。
【0166】
そして、前記配向処理する段階における光照射は、150nm~450nm波長の偏光した紫外線を照射することである。この時、露光の強度は、液晶配向剤用重合体の種類によって異なり、10mJ/cm2~10J/cm2のエネルギー、好ましくは30mJ/cm2~2J/cm2のエネルギーを照射することができる。
【0167】
前記紫外線としては、石英ガラス、ソーダライムガラス、ソーダライムフリーガラスなどの透明基板の表面に誘電異方性の物質がコーティングされた基板を用いた偏光装置、微細にアルミニウムまたは金属ワイヤが蒸着された偏光板、または石英ガラスの反射によるブルースター偏光装置などを通過または反射する方法で偏光処理された紫外線から選ばれた偏光紫外線を照射して配向処理する。この時、偏光された紫外線は、基板面に垂直に照射することもでき、特定の角で入射角を傾斜して照射することもできる。このような方法によって液晶分子の配向能力が塗膜に付与される。
【0168】
また、前記配向処理する段階におけるラビング処理は、ラビング布を用いる方法を使用することができる。より具体的には、前記ラビング処理は、金属ローラにラビング布の生地を貼り付けたラビングローラを回転させながら熱処理段階以後の塗膜の表面を一方向にラビングすることができる。
【0169】
前記段階4は、前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階である。
【0170】
前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階において、前記配向処理された塗膜で上記化学式11で表される架橋剤化合物のR17およびR18の官能基が水素原子で置換することで脱着され得、液晶配向剤用共重合体間の架橋反応が行われ得る。
【0171】
具体的には、前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階において、前記配向処理された塗膜に下記化学式13で表される架橋剤化合物を含み得る。
【0172】
【0173】
上記化学式13中、A1、j、L5およびL6は前記一実施形態の化学式14で定義した通りである。
【0174】
前記一実施形態の液晶配向剤組成物に上記化学式13で表される架橋剤化合物が含まれる場合、組成物内から一部の架橋反応を行うことにより架橋剤化合物が組成物内に均一に分散しにくい。
【0175】
反面、本発明は、液晶配向剤組成物内では上記化学式11で表される架橋剤化合物を添加して組成物内での架橋反応を抑制し、前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階で上記化学式11で表される架橋剤化合物が化学式13で表される架橋剤化合物に転換されるように誘導することができる。これにより、組成物では架橋剤化合物の分散性および安定性を高めることができ、配向膜では架橋構造の形成により膜強度の向上効果を実現することができる。
【0176】
前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階は、従来のポリアミック酸またはポリアミック酸エステルを含む液晶配向剤用重合体を用いて液晶配向膜を製造する方法においても光照射した後に行う段階で、液晶配向剤を基板に塗布し、光を照射する前または光を照射しながら液晶配向剤をイミド化させるために行う熱処理段階とは区分される。
【0177】
この時、前記熱処理はホットプレート、熱風循環炉、赤外線炉などの加熱手段によって行うことができ、150~300℃、または200~250℃で行うことが好ましい。
【0178】
一方、前記塗膜を乾燥する段階(段階2)以後に必要に応じて、前記乾燥段階直後の塗膜に乾燥段階以上の温度で熱処理する段階をさらに含み得る。前記熱処理は、ホットプレート、熱風循環炉、赤外線炉などの加熱手段によって行うことができ、150℃~250℃で行うことが好ましい。この過程で液晶配向剤をイミド化させることができる。
【0179】
すなわち、前記液晶配向膜の製造方法は、上述した液晶配向剤を基板に塗布して塗膜を形成する段階(段階1)と、前記塗膜を乾燥する段階(段階2)と、前記乾燥段階直後の塗膜に乾燥段階以上の温度で熱処理する段階(段階3)と、前記熱処理された塗膜に光を照射またはラビング処理して配向処理する段階(段階4)と、前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階(段階5)と、を含み得る。
【0180】
3.液晶配向膜
また、本発明は、上述した液晶配向膜の製造方法により製造された液晶配向膜を提供する。具体的には、前記液晶配向膜は、前記一実施形態の液晶配向剤組成物の配向硬化物を含み得る。前記配向硬化物とは、前記一実施形態の液晶配向剤組成物の配向工程および硬化工程を経て得られる物質を意味する。
【0181】
上述したように、前記液晶配向剤用共重合体;および化学式11で表される架橋剤化合物を含む液晶配向剤組成物を用いると、安定性が強化され、優れた電気的特性を示す液晶配向膜を製造することができる。
【0182】
前記液晶配向膜の厚さは特に限定されるものではないが、0.01μm~1,000μmの範囲内で自由に調整可能であり、例えば0.01μm~0.3μmであり得る。前記液晶配向膜の厚さが特定数値ほど増加または減少する場合、液晶配向膜で測定される物性も一定数値ほど変化することができる。
【0183】
前記液晶配向膜は、下記数式2から計算される膜強度が0.10%以下、または0.01%以上0.10%以下、0.01%以上0.05%以下、または0.01%以上0.04%以下、または0.02%以上0.04%以下であり得る。
【0184】
[数式2]
膜強度=ラビング処理後の液晶配向膜のヘイズ-ラビング処理前の液晶配向膜のヘイズ
【0185】
前記液晶配向膜に対するラビング処理は、配向膜表面をsindo engineering社製のrubbing machineを用いて1000rpmで回転させながらラビング処理する方法を使用することができ、ヘイズ値は、ヘイズメータ(hazemeter)を用いて測定することができる。
【0186】
また、前記液晶配向膜は45kV、40 mA Cu Kα radiation(波長:1.54Å)条件で、PANalytical X'Pert PRO MRD XRDによって測定した膜密度が1.25g/cm3以上、または1.25g/cm3以上1.50g/cm3以下、または1.26g/cm3以上1.50g/cm3以下、または1.26g/cm3以上1.40g/cm3以下、または1.26g/cm3以上1.35g/cm3以下、または1.26g/cm3以上1.34g/cm3以下であり得る。
【0187】
前記一実施形態の液晶配向膜が、前記45kV、40 mA Cu Kα radiation(波長:1.54Å)条件で、PANalytical X'Pert PRO MRD XRDによって測定した膜密度が1.25g/cm3以上に上述した範囲を満たすようになると、膜強度が上昇し下部膜の溶出ガスによる遮蔽力が向上して、配向信頼性が長時間維持される効果を実現することができる。
【0188】
4.液晶表示素子
また、本発明は、上述した液晶配向膜を含む液晶表示素子を提供する。
【0189】
前記液晶配向膜は、公知の方法によって液晶セルに導入され得、前記液晶セルは同様に、公知の方法によって液晶表示素子に導入され得る。前記液晶配向膜は、前記一実施形態の液晶配向剤組成物から製造されて優れた諸般物性と共に優れた安定性を実現することができる。具体的には高温、低周波数で高い電圧保全率を有することができるので、電気的特性に優れ、コントラスト比(contrast ratio)の性能低下やイメージスティッキング(残像)現象が減少し、膜強度も優れた液晶表示素子を提供することができる。
【0190】
具体的には、前記液晶表示素子は、1V、1Hz、60℃の温度でTOYO corporation製の6254C装置を用いて測定した電圧保持率が90%以上、または93%以上99%以下、または94%以上99%以下、または94%以上98%以下であり得る。前記液晶配向表示素子の1V、1Hz、60℃の温度でTOYO corporation製の6254C装置を用いて測定した電圧保持率が90%未満に減少する場合、低電力で高品位の駆動特性を有する液晶表示素子の実現が難しくなる。
【0191】
また、前記液晶表示素子は、上板および下板に偏光板を互いに垂直になるように付着した後、7,000cd/m2のバックライトの上に付着しPR-880装置を用いて測定したブラック状態の輝度である初期輝度(L0)と、常温で交流電圧5Vで24時間駆動した後、測定したブラック状態の輝度である後の輝度(L1)との差を初期輝度(L0)値で割って、100をかけた値である輝度変動率が、前記液晶表示素子の輝度変動率の10%未満であり得る。
【発明の効果】
【0192】
本発明によれば、優れた膜強度を有し、かつ液晶配向性、耐久性および電気的特性に優れ、高い膜密度により優れた遮蔽力を有する液晶配向剤組成物、これを用いた液晶配向膜の製造方法、およびこれを用いた液晶配向膜および液晶表示素子が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0193】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例により限定されるものではない。
【0194】
<製造例>
製造例1:ジアミンDA1-1の製造
下記反応式のように製造した。
【0195】
【0196】
具体的には、CBDA(シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、化合物1)と4-ニトロアニリン(4-nitroaniline)をDMF(Dimethylformamide)に溶解させて混合物を製造した。次に、前記混合物を約80℃で約12時間反応させて化合物2のアミック酸を製造した。その後、前記アミック酸をDMFに溶解させ、酢酸無水物および酢酸ナトリウムを添加して混合物を製造した。次に、前記混合物に含まれているアミック酸を約90℃で約4時間イミド化させて化合物3を得た。このように得られた化合物3のイミドをDMAc(Dimethylacetamide)に溶解させた後、Pd/Cを添加して混合物を製造した。これを約45℃および約6barの水素圧力下で約20時間還元させて、ジアミンDA1-1を製造した。
【0197】
【0198】
CBDA(シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物)の代わりにDMCBDA(1,3-ジメチルシクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物)を使用したことを除いては、前記製造例1と同様の方法で、前記構造を有するDA1-2を製造した。
【0199】
【0200】
4-ニトロベンゾイルクロリド(4-Nitrobenzoyl chloride、化合物4)18.5g(0.1mol)とトリエチルアミン11.13g(0.11mol)をジオキサン(450mL)に溶かした後、5-ニトロピリジン-2-アミン(5-Nitropyridin-2-amine、化合物5)13.91g(0.1mol)を添加し、60℃で1時間攪拌した。反応が終了すると、反応物を水(1000mL)が入った容器にゆっくり投入して、1時間攪拌した。これをろ過して得られた固体を超純水(200mL)で洗浄して、4-ニトロ-N-(5-ニトロピリジン-2-イル)ベンズアミド(4-Nitro-N-(5-nitropyridin-2-yl)benzamide、化合物6)24.54gを製造した(収率:85%)。
【0201】
【0202】
前記4-ニトロ-N-(5-ニトロピリジン-2-イル)ベンズアミド(4-Nitro-N-(5-nitropyridin-2-yl)benzamide、化合物6)をTHF(100mL)に溶かした後、Pd/C(2.5g)を投入し、水素環境下で12時間攪拌した。反応終了後、セルライトパットに通してろ過した濾液を濃縮して、ジアミンDA2-1を製造した(収率:84%)。
【0203】
【0204】
5-ニトロピコリノイルクロリド(5-Nitropicolinoyl chloride、化合物7)18.65g(0.1mol)とトリエチルアミン11.13g(0.11mol)をジオキサン(450mL)に溶かした後、5-ニトロピリジン-2-アミン(5-Nitropyridin-2-amine、化合物5)13.91g(0.1mol)を添加し、60℃で1時間攪拌した。反応が終了すると、反応物を水(1000mL)が入った容器にゆっくり投入して、1時間攪拌した。これをろ過して得られた固体を超純水(200mL)で洗浄して、5-ニトロ-N-(5-ニトロピリジン-2-イル)ピコリンアミド(5-Nitro-N-(5-nitropyridin-2-yl)picolinamide、化合物8)25.68gを製造した(収率:88.79%)。
【0205】
【0206】
前記5-ニトロ-N-(5-ニトロピリジン-2-イル)ピコリンアミド(5-Nitro-N-(5-nitropyridin-2-yl)picolinamide、化合物8)をTHF(100mL)に溶かした後、Pd/C(1.5g)を投入し、水素環境下で12時間攪拌した。反応終了後、セルライトパットに通してろ過した濾液を濃縮して、ジアミンDA2-2を製造した(収率:90.7%)。
【0207】
【0208】
5-ニトロピコリノイルクロリド(5-Nitropicolinoyl chloride、化合物9)18.65g(0.1mol)とトリエチルアミン11.13g(0.11mol)をジオキサン(450mL)に溶かした後、4-ニトロアニリン(4-Nitroaniline、化合物10)13.81g(0.1mol)を添加し、60℃で1時間攪拌した。反応が終了すると、反応物を水(1000mL)が入った容器にゆっくり投入して、1時間攪拌した。これをろ過して得られた固体を超純水(200mL)で洗浄して、5-ニトロ-N-(4-ニトロフェニル)ピコリンアミド(5-Nitro-N-(4-nitrophenyl)picolinamide、化合物11)24.41gを製造した(収率:84.69%)。
【0209】
【化63】
前記5-ニトロ-N-(4-ニトロフェニル)ピコリンアミド(5-Nitro-N-(4-nitrophenyl)picolinamide、化合物11)をTHF(100mL)に溶かした後、Pd/C(1.5g)を投入し、水素環境下で12時間攪拌した。反応終了後、セルライトパットに通してろ過した濾液を濃縮して、ジアミンDA2-3を製造した(収率:89.48%)。
【0210】
【0211】
N,N,N',N'-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)アジポアミド(N,N,N',N'-Tetrakis(2-hydroxyethyl)adipamide)5g(15.6mmol)とクロロトリメチルシラン(Chlorotrimethylsilane)10.2g(94mmol)をChloroform(150ml)に投入した後、炭酸カリウム(K2CO3、17.3g、125mmol)を添加し、0℃窒素環境下で10時間攪拌した。反応終了後、セルライトパットに通してろ過した濾液を濃縮して、N1,N1,N6,N6-テトラキス(2-(トリメチルシリルオキシ)エチル)アジポアミド(N1,N1,N6,N6-tetrakis(2-(trimethylsilyloxy)ethyl)adipamide)7.3g(収率77%)を製造した。
【0212】
比較製造例1:架橋剤の製造
前記製造例6の反応物であるN,N,N',N'-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)アジポアミド(N,N,N',N'-Tetrakis(2-hydroxyethyl)adipamide)を比較製造例1の架橋剤として使用した。
【0213】
<合成例>
下記表1に記載された反応物を用いて液晶配向剤用重合体を合成した。それぞれの合成例1~7の具体的な合成条件を以下の表1に記載する。
【0214】
【0215】
<合成例1~8:液晶配向剤用重合体の合成>
合成例1:液晶配向剤用重合体P-1の製造
前記製造例3で製造したDA2-1 2.28g(0.01mol)とp-フェニレンジアミン(p-phenylenediamine、p-PDA)9.337g(0.0086mol)を無水N-メチルピロリドン(anhydrous N-methyl pyrrolidone、NMP)177.128gに完全に溶かした。
【0216】
そして、アイスバス(ice bath)下で1,3-ジメチル-シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物(DMCBDA)20.0g(0.089mol)を前記溶液に添加して常温で16時間攪拌して、液晶配向剤用重合体P-1を製造した。
【0217】
合成例2:液晶配向剤用重合体P-2の製造
前記製造例3で製造したDA2-1 2.28g(0.01mol)と4,4'-メチレンジアニリン(4,4'-Methylenedianiline、MDA)17.119g(0.086mol)を無水N-メチルピロリドン(anhydrous N-methyl pyrrolidone:NMP)221.225gに完全に溶かした。
【0218】
そして、アイスバス(ice bath)下で1,3-ジメチル-シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物(DMCBDA)20.0g(0.089mol)を前記溶液に添加して常温で16時間攪拌して、液晶配向剤用重合体P-2を製造した。
【0219】
合成例3:液晶配向剤用重合体P-3の製造
前記製造例3で製造したDA2-1 2.28g(0.01mol)と4,4'-メチレンジアニリン(4,4'-Methylenedianiline、MDA)17.119g(0.086mol)を無水N-メチルピロリドン(anhydrous N-methyl pyrrolidone:NMP)221.225gに完全に溶かした。
【0220】
そして、アイスバス(ice bath)下で1,3-ジメチル-シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物(DMCBDA)10.0g(0.045mol)とピロメリット酸二無水物(pyromellitic dianhydride、PMDA)9.73g(0.045mol)を前記溶液に添加して常温で16時間攪拌して、液晶配向剤用重合体P-3を製造した。
【0221】
合成例4:液晶配向剤用重合体P-4の製造
前記製造例3で製造したDA2-1 2.28g(0.01mol)と前記製造例2で製造したDA1-2 34.918g(0.089mol)を無水N-メチルピロリドン(anhydrous N-methyl pyrrolidone:NMP)322.091gに完全に溶かした。
【0222】
そして、アイスバス(ice bath)下で1,3-ジメチル-シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物(DMCBDA)20.0g(0.089mol)を前記溶液に添加して常温で16時間攪拌して、液晶配向剤用重合体P-4を製造した。
【0223】
合成例5:液晶配向剤用重合体P-5
前記製造例3で製造したDA2-1 8.211g(0.036mol)と前記製造例2で製造したDA1-2 14.549g(0.036mol)を無水N-メチルピロリドン(anhydrous N-methyl pyrrolidone:NMP)208.269gに完全に溶かした。
【0224】
そして、アイスバス(ice bath)下で1,3-ジメチル-シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物(DMCBDA)15.0g(0.067mol)を前記溶液に添加して常温で16時間攪拌して、液晶配向剤用重合体P-5を製造した
【0225】
合成例6:液晶配向剤用重合体P-6
前記製造例3で製造したDA2-1 10.948g(0.048mol)と前記製造例2で製造したDA1-2 19.399g(0.048mol)を無水N-メチルピロリドン(anhydrous N-methyl pyrrolidone:NMP)276.163gに完全に溶かした。
【0226】
そして、アイスバス(ice bath)下で1,3-ジメチル-シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物(DMCBDA)10.0g(0.045mol)を前記溶液に添加して常温で16時間攪拌して、液晶配向剤用重合体P-6を製造した
【0227】
合成例7:液晶配向剤用重合体R-1
p-フェニレンジアミン(p-phenylenediamine、p-PDA)19.211g(0.0096mol)を無水N-メチルピロリドン(anhydrous N-methyl pyrrolidone、NMP)222.194gに完全に溶かした。
【0228】
そして、アイスバス(ice bath)下で1,3-ジメチル-シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物(DMCBDA)20.0g(0.089mol)を前記溶液に添加して常温で16時間攪拌して、液晶配向剤用重合体R-1を製造した。
【0229】
合成例8:液晶配向剤用重合体R-2
前記製造例2で製造したDA1-2 29.099g(0.072mol)を無水N-メチルピロリドン(anhydrous N-methyl pyrrolidone:NMP)249.893gに完全に溶かした。
【0230】
そして、アイスバス(ice bath)下で1,3-ジメチル-シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物(DMCBDA)15.0g(0.067mol)を前記溶液に添加して常温で16時間攪拌して、液晶配向剤用重合体R-2を製造した。
【0231】
<実施例および比較例:液晶配向剤組成物、液晶配向膜、液晶配向セルの製造>
実施例1~6
(1)液晶配向剤組成物の製造
NMP、GBL、2-ブトキシエタノールの混合溶媒に下記表2に示すような組成で液晶配向剤用重合体を溶かして得られた溶液を得た。そして、前記溶液に、架橋剤として前記製造例6で得られたN1,N1,N6,N6-tetrakis(2-(trimethylsilyloxy)ethyl)adipamideを全体溶液を基準にして5重量%で添加した後、25℃で16時間攪拌した。ポリ(テトラフルオレンエチレン)材質の気孔サイズが0.1μmのフィルターで加圧ろ過して、液晶配向剤組成物を製造した。
【0232】
(2)液晶配向膜の製造
2.5cmx2.7cmの大きさを有する四角形のガラス基板上に厚さ60nm、面積1cmx1cmのITO電極がパターン化された電圧保持率(VHR)用の上下基板それぞれに、スピンコーティング方式で液晶配向剤組成物を塗布した。次に、液晶配向剤が塗布された基板を約80℃のホットプレート上に置き、3分間乾燥して溶媒を蒸発させた。
【0233】
このようにして得られた塗膜を配向処理するために、上/下板それぞれの塗膜に、線偏光子付き露光器を用いて254nmの紫外線を約0.1~1J/cm2の露光量で照射した。その後、配向処理された上/下板を約230℃のオーブンで30分間焼成(硬化)して、膜厚さ0.1μmの液晶配向膜を得た。
【0234】
(3)液晶配向セルの製造
4.5μm大きさのボールスペーサが含浸されたシーリング剤(sealing agent)を液晶注入口を除いた上板の周縁に塗布した。そして、上板および下板に形成された液晶配向膜が互いに対向して配向方向が互いに並ぶように整列させた後、上下板を貼り合わせ、シーリング剤をUVおよび熱硬化することによって、空セルを製造した。そして、前記空セルに液晶を注入し、注入口をシーリング剤で密封して、液晶配向セルを製造した。
【0235】
比較例1
前記製造例6の架橋剤を添加しないことを除いて前記実施例1と同様の方法で、液晶配向剤組成物、液晶配向膜、液晶配向セルを製造した。
【0236】
比較例2
前記製造例6の架橋剤の代わりに、比較製造例1のN,N,N',N'-Tetrakis(2-hydroxyethyl)adipamideを添加したことを除いて前記実施例1と同様の方法で、液晶配向剤組成物、液晶配向膜、液晶配向セルを製造した。
【0237】
【0238】
<実験例>
1)液晶配向性の評価
上記で製造した液晶配向セルの上板および下板に、偏光板を互いに垂直となるように取り付けた。そして、偏光板付き液晶配向セルを明るさ7,000cd/m2のバックライト上に置き、肉眼で光漏れを観察した。この時、液晶配向膜の配向特性に優れて液晶をよく配列させれば、互いに垂直に取り付けられた上下の偏光板によって光が通過せず、不良なしに暗く観察される。この場合の配向特性を「良好」、液晶の流れ跡や輝点のような光漏れが観察されると「不良」と評価し、その結果を下記表3に示す。
【0239】
2)電圧保持率(voltage holding ratio、VHR)の測定
上記で製造した液晶配向セルの電気的特性である電圧保持率(voltage holding ratio、VHR)をTOYO corporation製の6254C装置を用いて測定した。電圧保持率(VHR)は1Hz、60℃の温度で測定した(VHR 60度、1 Hz p-LC条件)。前記液晶配向セルの電圧保持率(VHR)に対する測定結果は下記表3に示す。
【0240】
3)配向安定性の評価(AC残像)
上記で製造した液晶配向セルの上板および下板に、偏光板を互いに垂直となるように取り付けた。前記偏光板付き液晶セルを7,000cd/m2のバックライト上に取り付け、ブラック状態の輝度を輝度明るさ測定装置であるPR-788を用いて測定した。そして、前記液晶セルを常温で交流電圧7Vで120時間駆動した。その後、液晶セルの電圧を切った状態で、上述と同様にブラック状態の輝度を測定した。液晶セルの駆動前に測定された初期輝度(L0)と駆動後に測定された後の輝度(L1)との差を初期輝度(L0)値で割り、100をかけて輝度変動率を計算した。このように計算された輝度変動率は、0%に近いほど配向安定性に優れていることを意味する。このような輝度変化率の測定結果により、以下の基準下で残像水準を評価した。AC残像は最少化することが好ましく、測定の結果、輝度変動率が10%未満であれば「優秀」、輝度変動率が10%以上20%以下であれば「普通」、輝度変動率が20%を超過すると「不良」と評価し、その結果を下記表3に示す。
【0241】
4)溶解性
前記実施例および比較例の液晶配向剤組成物でそれぞれ使用された架橋剤に対して、前記表2の架橋剤添加量を満足するように溶媒(γ-ブチロラクトン)に添加した後、10秒間混合した混合溶液を製造し、石英セルを用いて常温(25℃)、400nmの波長条件で、JASCO Asia Portal V-770 UV-VIS-NIR Spectrophotometer装置を用いて、混合溶液の添加前/後の透過度の変化率を下記数式1により計算した。
【0242】
[数式1]
透過度の変化率(%)=溶媒の透過度-混合溶液の透過度
優秀:透過度の変化率が10%以下
普通:透過度の変化率が10%超過20%以下
不良:透過度の変化率が20%超過
【0243】
5)膜密度
前記液晶配向膜に対して、45kV、電流40 mA Cu Kα radiation(波長:1.54Å)の条件で、PANalytical X'Pert PRO MRD XRD装置を用いて、測定のために試料をsample holderに磁石を利用して固定させた後、sample stageにmountingした。Alignのためにz->omega->z alignした後、XRR測定のために0.1°≦2θ≦1°の範囲でstep size 0.002°、time per step 1秒で測定した。精密な測定のためにサンプルを測定した後、90度回転してさらに1回測定した。
【0244】
6)膜強度
上記で製造した液晶配向膜に対して、前記液晶配向膜表面をsindo engineering社製のrubbing machineを用いて1,000rpmで回転させながらラビング処理した後、ヘイズメータ(hazemeter)を用いてヘイズ値を測定し、下記数式2のようにラビング処理前のヘイズ値との差を計算して膜強度を評価した。前記ヘイズ変化値が少ないほど膜強度は優れたものである。
【0245】
[数式2]
膜強度=ラビング処理後の液晶配向膜のヘイズ-ラビング処理前の液晶配向膜のヘイズ
【0246】
【0247】
上記表3に示すように、2種のジアミンに由来する2種の繰り返し単位を含むポリイミド系共重合体と一緒に製造例6の架橋剤が含まれている実施例1~6の場合、優れた液晶配向性、配向安定性と共に94%~98%の高い電圧保持率を示すことを確認することができた。また、1.26g/cm3~1.34g/cm3の高い膜密度と共に、ラビング処理前後のヘイズ変化値が0.02%~0.04%に非常に低くて優れた膜強度を示すことを確認することができた。
【0248】
一方、製造例6の架橋剤が含まれていない比較例1の液晶配向剤組成物から得られた配向膜は、ラビング処理前後のヘイズ変化値が0.12%に急増して膜強度が非常に不良であるだけでなく、電圧保持率が74%に急減して電気的特性が不良であることを確認することができた。
【0249】
また、製造例6の架橋剤の代わりに比較製造例1の架橋剤を含有する比較例2の液晶配向剤組成物から得られた配向膜は、膜密度が1.21g/cm3に示されて、前記実施例に比べて不良であるだけでなく、製造例6の架橋剤に比べて顕著に良好でない溶解性を有することを確認することができた。