(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】液晶配向剤組成物、それを用いた液晶配向膜の製造方法、それを用いた液晶配向膜および液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1337 20060101AFI20220711BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20220711BHJP
C08L 79/08 20060101ALI20220711BHJP
C08K 5/5455 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
G02F1/1337 525
G02F1/1337 530
C08G73/10
C08L79/08 A
C08K5/5455
(21)【出願番号】P 2020550110
(86)(22)【出願日】2019-11-12
(86)【国際出願番号】 KR2019015359
(87)【国際公開番号】W WO2020105934
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2020-09-25
(31)【優先権主張番号】10-2018-0143869
(32)【優先日】2018-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ユーン、ジュン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ク、キチュル
(72)【発明者】
【氏名】ジョ、ジュン ホ
(72)【発明者】
【氏名】クォン、スンホ
(72)【発明者】
【氏名】ユン、ヒョンソク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソンク
(72)【発明者】
【氏名】パク、フンソ
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0095801(KR,A)
【文献】特開2012-150251(JP,A)
【文献】国際公開第2015/072554(WO,A1)
【文献】特開2015-222387(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0143365(KR,A)
【文献】特開2017-009655(JP,A)
【文献】特開2015-215591(JP,A)
【文献】特開2016-081057(JP,A)
【文献】国際公開第2017/196001(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
C08G 73/10
C08L 79/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される繰り返し単位、下記化学式2で表される繰り返し単位および下記化学式3で表される繰り返し単位からなる群より選ばれた1種以上の繰り返し単位を含む第1液晶配向剤用重合体;
下記化学式4で表される繰り返し単位、下記化学式5で表される繰り返し単位および下記化学式6で表される繰り返し単位からなる群より選ばれた1種以上の繰り返し単位を含む第2液晶配向剤用重合体;
下記化学式7で表される繰り返し単位、下記化学式8で表される繰り返し単位および下記化学式9で表される繰り返し単位からなる群より選ばれた1種以上の繰り返し単位を含む第3液晶配向剤用重合体;および
下記化学式16で表される架橋剤化合物を含む、液晶配向剤組成物:
[化学式1]
【化1】
[化学式2]
【化2】
[化学式3]
【化3】
[化学式4]
【化4】
[化学式5]
【化5】
[化学式6]
【化6】
[化学式7]
【化7】
[化学式8]
【化8】
[化学式9]
【化9】
前記化学式1~9において、
R
1およびR
2のうち少なくとも一つは炭素数1~10のアルキル基であり、残りは水素であり、
R
3およびR
4のうち少なくとも一つは炭素数1~10のアルキル基であり、残りは水素であり、
R
5およびR
6のうち少なくとも一つは炭素数1~10のアルキル基であり、残りは水素であり、
X
1~X
9はそれぞれ独立して下記化学式10で表される4価からなる群より選ばれたいずれか一つの有機基であり、
[化学式10]
【化10】
前記化学式10において、
R
7~R
12はそれぞれ独立して水素または炭素数1~6のアルキル基であり、
L
1は単結合、-O-、-CO-、-COO-、-S-、-SO-、-SO
2-、-CR
13R
14-、-(CH
2)
Z-、-O(CH
2)
ZO-、-COO(CH
2)
ZOCO-、-CONH-、フェニレンまたはこれらの組み合わせからなる群より選ばれたいずれか一つであり、
前記R
13およびR
14はそれぞれ独立して水素、炭素数1~10のアルキル基またはフルオロアルキル基であり、
zは1~10の整数であり、
Y
1~Y
3はそれぞれ独立して下記化学式11で表される2価の有機基であり、
[化学式11]
【化11】
前記化学式11において、
Tは前記化学式10で表される4価からなる群より選ばれたいずれか一つの有機基であり、
D
1およびD
2はそれぞれ独立して炭素数1~20のアルキレン基、炭素数1~10のヘテロアルキレン基、炭素数3~20のシクロアルキレン基、炭素数6~20のアリーレン基または炭素数2~20のヘテロアリーレン基であり、
Y
4~Y
6はそれぞれ独立して下記化学式12で表される2価の有機基であり、
[化学式12]
【化12】
前記化学式12において、
Aは
窒素(N)であり、
R'は水素、または炭素数1~10のアルキルであり、
aは1~3の整数であり、
Z
1~Z
4のうち少なくとも一つは窒素であり、残りは炭素であり、
Y
7~Y
9はそれぞれ独立して下記化学式13で表される2価の有機基であり、
[化学式13]
【化13】
前記化学式13において、
R
15およびR
16はそれぞれ独立して
、ハロゲン、シアノ、ニトリル、炭素数1~10のアルキル、炭素数1~10のアルケニル、炭素数1~10のアルコキシ、炭素数1~10のフルオロアルキル、または炭素数1~10のフルオロアルコキシであり、
pおよびqはそれぞれ独立して0~4の整数であり、
L
2は単結合-O-、-CO-、-S-、-SO
2-、-C(CH
3)
2-、-C(CF
3)
2-、-COO-、-(CH
2)
y-、-O(CH
2)
yO-、-O(CH
2)
y-、-NH-、-NH(CH
2)
y-NH-、-NH(CH
2)
yO-、-OCH
2-C(CH
3)
2-CH
2O-、-COO-(CH
2)
y-OCO-、または-OCO-(CH
2)
y-COO-であり、
yは1~10の整数であり、
kおよびmはそれぞれ独立して0~1の整数であり、
nは0~3の整数であり、
[化学式16]
【化14】
前記化学式16において、
A
1は1価~4価の官能基であり、
jは1~4の整数であり、
L
4およびL
5は互いに同一または相異し、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキレン基または炭素数6~20のアリーレン基のうち一つであり、
R
19およびR
20はそれぞれ独立してケイ素含有1価官能基であ
り、
前記ケイ素含有1価官能基は、下記化学式17で表される:
[化学式17]
【化20】
前記化学式17において、R
21
、R
22
およびR
23
はそれぞれ独立して水素、または炭素数1~10のアルキルのうち一つである。
【請求項2】
前記化学式12において、Z
1~Z
4の一つが窒素であり、残りは炭素である、請求項1に記載の液晶配向剤組成物。
【請求項3】
前記化学式12において、Z
1またはZ
3の一つが窒素であり、残りは炭素であり、Z
2およびZ
4は炭素である、請求項1に記載の液晶配向剤組成物。
【請求項4】
前記化学式12において、Aは窒素であり、R'は水素であり、aは1である、請求項1から3のいずれか一項に記載の液晶配向剤組成物。
【請求項5】
前記化学式12は、下記化学式12-1、化学式12-2および化学式12-3からなる群より選ばれた1種以上の官能基を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の液晶配向剤組成物:
[化学式12-1]
【化15】
[化学式12-2]
【化16】
[化学式12-3]
【化17】
前記化学式12-1から12-3において、
A、Z
1~Z
4、R'、aは請求項1で定義したとおりである。
【請求項6】
前記化学式11において、Tは下記化学式10-1で表される官能基または下記化学式10-2で表される官能基である、請求項1から5のいずれか一項に記載の液晶配向剤組成物:
[化学式10-1]
【化18】
[化学式10-2]
【化19】
。
【請求項7】
前記第1液晶配向剤用重合体100重量部に対し、第2液晶配向剤用重合体の含有量が10重量部~1000重量部である、請求項1から6のいずれか一項に記載の液晶配向剤組成物。
【請求項8】
前記第1液晶配向剤用重合体100重量部に対し、第3液晶配向剤用重合体の含有量が10重量部~1000重量部である、請求項1から7のいずれか一項に記載の液晶配向剤組成物。
【請求項9】
前記化学式16において、
A
1は炭素数1~10のアルキレン基であり、
jは2であり、
L
4およびL
5はそれぞれ独立して炭素数1~5のアルキレン基であ
る、請求項1から8のいずれか一項に記載の液晶配向剤組成物。
【請求項10】
請求項1から
9のいずれか一項に記載の液晶配向剤組成物を基板に塗布して塗膜を形成する段階;
前記塗膜を乾燥する段階;
前記塗膜に光を照射したりラビング処理して配向処理する段階;および
前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階;を含む、液晶配向膜の製造方法。
【請求項11】
前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階で、前記配向処理された塗膜に下記化学式18で表される架橋剤化合物が含まれる、請求項
10に記載の液晶配向膜の製造方法:
[化学式18]
【化21】
前記化学式18において、
A
1、j、L
4およびL
5は請求項1で定義したとおりである。
【請求項12】
請求項1から
9のいずれか一項に記載の液晶配向剤組成物の配向硬化物を含む、液晶配向膜。
【請求項13】
請求項
12に記載の液晶配向膜を含む、液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は、2018年11月20日付韓国特許出願第10-2018-0143869号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、液晶配向膜の合成時高いイミド化転換率を示し、優れた膜強度を有しながらも、向上した配向性および電気的特性を実現できる液晶配向剤組成物、それを用いた液晶配向膜の製造方法、それを用いた液晶配向膜および液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0003】
液晶表示素子において、液晶配向膜は液晶を一定の方向に配向させる役割を担当している。具体的には、液晶配向膜は液晶分子の配列に配向子(director)の役割をして電場(electric field)により液晶が動いて画像を形成する時、適当な方向を定めるようにする。液晶表示素子において均一な輝度(brightness)と高いコントラスト比(contrast ratio)を得るためには液晶を均一に配向することが必須である。
【0004】
従来には液晶を配向させる方法の一つとして、ガラスなどの基板にポリイミドのような高分子膜を塗布し、この表面をナイロンやポリエステルのような繊維を用いて一定の方向にこするラビング(rubbing)方法が用いられた。しかし、ラビング方法は繊維質と高分子膜が摩擦する時微細なホコリや静電気(electrical discharge:ESD)が発生し得、液晶パネル製造時の深刻な問題を引き起こしうる。
【0005】
前記ラビング方法の問題を解決するために、最近では摩擦でない光照射によって高分子膜に異方性(非等方性、anisotropy)を誘導し、それを用いて液晶を配列する光配向法が研究されている。
【0006】
前記光配向法に使用できる材料としては多様な材料が紹介されており、その中でも液晶配向膜の良好な諸性能のためにポリイミドが主に使用されている。そこで、ポリアミック酸またはポリアミック酸エステルのような前駆体形態でコートした後200℃~230℃の温度で熱処理工程を経てポリイミドを形成させ、そこに光照射を実行して配向処理をすることになる。
【0007】
しかし、このようなポリイミド状態の膜に光照射をして十分な液晶配向性を得るためには多くのエネルギを必要とし、実際の生産性確保に困難が生じるだけでなく、光照射後の配向安定性を確保するために追加的な熱処理工程も必要であり、パネルの大型化によって製造工程上コラムスペース(Column space,CS)の偏り現像が発生し、液晶配向膜の表面にヘイズが発生し、これによって天の川不良が引き起こされてパネルの性能が十分に具現できない限界があった。
【0008】
また、液晶表示素子の高品位駆動のためには高い電圧保持率(voltage holding ratio;VHR)を示さなければならないが、ポリイミドだけではこれを示すことに限界がある。特に、最近では低電力ディスプレイに対する要求増加に伴い、液晶配向剤は液晶の配向性という基本特性だけでなく、直流/交流電圧によって発生する残像、電圧保持率のような電気的な特性にも影響を及ぼしうることを発見した。そのため優れた液晶配向性と電気的特性を同時に実現できる液晶配向材料に対する開発の必要性が大きくなっている。
【0009】
そこで、ディスプレイ分野で求められる高い膜強度の液晶配向膜を製造するために多様な架橋剤を液晶配向剤組成物に添加する方案が提案されたが、架橋剤化合物の単なる添加によって高温、低周波数での電気的特性が減少し、高性能/低電力ディスプレイへの適用が可能な液晶配向膜の製造には困難があった。
【0010】
そこで、高い膜強度を有する配向膜を製造しながらも、配向膜の配向特性と電気的特性を高めることができ、一般的な液晶配向膜の製造工程に適用する際にも高いイミド化転換率を有することができる液晶配向剤組成物の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、液晶配向膜の合成時高いイミド化転換率を示し、優れた膜強度を有しながらも、向上した配向性および電気的特性を実現できる液晶配向剤組成物に関するものである。
【0012】
また、本発明は、前記液晶配向剤組成物を用いた液晶配向膜の製造方法を提供する。
【0013】
本明細書ではまた、前記液晶配向剤組成物の配向硬化物を含む、液晶配向膜とそれを含む液晶表示素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本明細書においては、下記化学式1で表される繰り返し単位、下記化学式2で表される繰り返し単位および下記化学式3で表される繰り返し単位からなる群より選ばれた1種以上の繰り返し単位を含む第1液晶配向剤用重合体;下記化学式4で表される繰り返し単位、下記化学式5で表される繰り返し単位および下記化学式6で表される繰り返し単位からなる群より選ばれた1種以上の繰り返し単位を含む第2液晶配向剤用重合体;下記化学式7で表される繰り返し単位、下記化学式8で表される繰り返し単位および下記化学式9で表される繰り返し単位からなる群より選ばれた1種以上の繰り返し単位を含む第3液晶配向剤用重合体;および下記化学式16で表される架橋剤化合物を含む、液晶配向剤組成物が提供される。
[化学式1]
【化1】
[化学式2]
【化2】
[化学式3]
【化3】
[化学式4]
【化4】
[化学式5]
【化5】
[化学式6]
【化6】
[化学式7]
【化7】
[化学式8]
【化8】
[化学式9]
【化9】
【0015】
前記化学式1~9においてR
1およびR
2のうち少なくとも一つは炭素数1~10のアルキル基であり、残りは水素であり、R
3およびR
4のうち少なくとも一つは炭素数1~10のアルキル基であり、残りは水素であり、R
5およびR
6のうち少なくとも一つは炭素数1~10のアルキル基であり、残りは水素であり、
X
1~X
9はそれぞれ独立して下記化学式10で表される4価の有機基からなる群より選ばれたいずれか一つであり、
[化学式10]
【化10】
前記化学式10において、R
7~R
12はそれぞれ独立して水素または炭素数1~6のアルキル基であり、L
1は単結合、-O-、-CO-、-COO-、-S-、-SO-、-SO
2-、-CR
13R
14-、-(CH
2)
Z-、-O(CH
2)
ZO-、-COO(CH
2)
ZOCO-、-CONH-、フェニレンまたはこれらの組み合わせからなる群より選ばれたいずれか一つであり、前記R
13およびR
14はそれぞれ独立して水素、炭素数1~10のアルキル基またはフルオロアルキル基であり、zは1~10の整数であり、
Y
1~Y
3はそれぞれ独立して下記化学式11で表される2価の有機基であり、
[化学式11]
【化11】
前記化学式11において、Tは前記化学式10で表される4価の有機基からなる群より選ばれたいずれか一つであり、D
1およびD
2はそれぞれ独立して炭素数1~20のアルキレン基、炭素数1~10のヘテロアルキレン基、炭素数3~20のシクロアルキレン基、炭素数6~20のアリーレン基または炭素数2~20のヘテロアリーレン基であり、
Y
4~Y
6はそれぞれ独立して下記化学式12で表される2価の有機基であり、
[化学式12]
【化12】
前記化学式12において、Aは15族元素であり、R'は水素、または炭素数1~10のアルキルであり、aは1~3の整数であり、Z
1~Z
4のうち少なくとも一つは窒素であり、残りは炭素であり、
Y
7~Y
9はそれぞれ独立して下記化学式13で表される2価の有機基であり、
[化学式13]
【化13】
前記化学式13において、R
15およびR
16はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、シアノ、ニトリル、炭素数1~10のアルキル、炭素数1~10のアルケニル、炭素数1~10のアルコキシ、炭素数1~10のフルオロアルキル、または炭素数1~10のフルオロアルコキシであり、pおよびqはそれぞれ独立して0~4の整数であり、L
2は単結合、-O-、-CO-、-S-、-SO
2-、-C(CH
3)
2-、-C(CF
3)
2-、-COO-、-(CH
2)
y-、-O(CH
2)
yO-、-O(CH
2)
y-、-NH-、-NH(CH
2)
y-NH-、-NH(CH
2)
yO-、-OCH
2-C(CH
3)
2-CH
2O-、-COO-(CH
2)
y-OCO-、または-OCO-(CH
2)
y-COO-であり、yは1~10の整数であり、kおよびmはそれぞれ独立して0~1の整数であり、nは0~3の整数であり、
[化学式16]
【化14】
前記化学式16において、A
1は1価~4価の官能基であり、jは1~4の整数であり、L
4およびL
5は互いに同一または相異し、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキレン基または炭素数6~20のアリーレン基のうち一つであり、R
19およびR
20はそれぞれ独立してケイ素含有1価官能基である。
【0016】
本明細書ではまた、前記液晶配向剤組成物を基板に塗布して塗膜を形成する段階;前記塗膜を乾燥する段階;前記乾燥段階直後の塗膜に光を照射して配向処理する段階;および前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階;を含む、液晶配向膜の製造方法が提供される。
【0017】
本明細書ではまた、前記液晶配向剤組成物の配向硬化物を含む、液晶配向膜とそれを含む液晶表示素子が提供される。
【0018】
以下、発明の具体的な実施形態による液晶配向剤組成物、それを用いた液晶配向膜の製造方法、それを用いた液晶配向膜および液晶表示素子についてより詳細に説明する。
【0019】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」という時、これは特に反対の意味を示す記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0020】
本明細書において、「置換」という用語は、化合物内の水素原子の代わりに他の官能基が結合することを意味し、置換される位置は水素原子が置換される位置、すなわち、置換基が置換可能な位置であれば限定されず、2以上置換される場合、2以上の置換基は互いに同一または異なってもよい。
【0021】
本明細書において「置換または非置換された」という用語は、重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトロ基;ヒドロキシ基;カルボニル基;エステル基;イミド基;アミド基;アミノ基;カルボキシ基;スルホン酸基;スルホンアミド基;ホスフィンオキシド基;アルコキシ基;アリールオキシ基;アルキルチオキシ基;アリールチオキシ基;アルキルスルホキシ基;アリールスルホキシ基;シリル基;ホウ素基;アルキル基;シクロアルキル基;アルケニル基;アリール基;アラルキル基;アラルケニル基;アルキルアリール基;アリールホスフィン基;またはN、OおよびS原子のうち1個以上を含むヘテロ環基からなる群より選ばれた1個以上の置換基で置換または非置換されたり、前記例示した置換基のうち2以上の置換基が連結された置換または非置換されたものを意味する。例えば、「2以上の置換基が連結された置換基」は、ビフェニル基でありうる。すなわち、ビフェニル基はアリール基であり得、2個のフェニル基が連結された置換基と解釈されることもできる。
【0022】
本明細書において、
【化15】
または
【化16】
は、他の置換基に連結される結合を意味し、直接結合はLで表される部分に別途の原子が存在しない場合を意味する。
【0023】
本明細書において、アルキル基は直鎖または分枝鎖であり得、炭素数は特に限定されないが1~10であることが好ましい。他の一つの実施状態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~6である。アルキル基の具体的な例としては、メチル、エチル、プロピル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチル-ブチル、ペンチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、オクチル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、1-エチル-プロピル、1,1-ジメチル-プロピル、イソヘキシル、2-メチルペンチル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシルなどがあるが、これらに限定されない。
【0024】
炭素数1~10のフルオロアルキル基は、前記炭素数1~10のアルキル基の一つ以上の水素がフッ素で置換されたものであり得、炭素数1~10のフルオロアルコキシ基は、前記炭素数1~10のアルコキシ基の一つ以上の水素がフッ素で置換されたものであり得る。
【0025】
本明細書において、アリール基は、アレーン(arene)に由来した1価の官能基であり、例えば、単環式または多環式であり得る。具体的には、単環式アリール基としてはフェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基、スチルベニル基などであり得るが、これに限定されるものではない。多環式アリール基としてはナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、クリセニル基、フルオレニル基などであり得るが、これに限定されるものではない。このようなアリール基の一つ以上の水素原子はそれぞれ前記アルキル基の場合と同様の置換基で置換可能である。
【0026】
ハロゲン(halogen)は、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)またはヨウ素(I)でありうる。
【0027】
15族元素は、窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、スズ(Sn)またはビスマス(Bi)でありうる。
【0028】
窒素酸化物は、窒素原子と酸素原子が結合した化合物として、窒素酸化物官能基は作用基内に窒素酸化物を含む官能基を意味する。前記窒素酸化物官能基の例としては、ニトロ基(-NO2)などを使用することができる。
【0029】
本明細書において、アルキレン基は、アルカン(alkane)に由来した2価の官能基であり、炭素数は1~20、または1~10、または1~5である。例えば、直鎖状、分枝状または環状として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基などであり得る。前記アルキレン基に含まれている一つ以上の水素原子はそれぞれ前記アルキル基の場合と同様の置換基で置換可能である。
【0030】
本明細書において、ヘテロアルキレン基は、異種原子として酸素(O)、窒素(N)または硫黄(S)を含有したアルキレン基であり、炭素数は1~10、または1~5である。例えばオキシアルキレンなどでありうる。前記ヘテロアルキレン基に含まれている一つ以上の水素原子はそれぞれ前記アルキル基の場合と同様の置換基で置換可能である。
【0031】
本明細書において、シクロアルキレン基は、シクロアルカン(cycloalkane)に由来した2価の官能基であり、炭素数は3~20、または3~10である。例えば、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、3-メチルシクロペンチレン、2,3-ジメチルシクロペンチレン、シクロヘキシレン、3-メチルシクロヘキシレン、4-メチルシクロヘキシレン、2,3-ジメチルシクロヘキシレン、3,4,5-トリメチルシクロヘキシレン、4-tert-ブチルシクロヘキシレン、シクロヘプチレン、シクロオクチレンなどがあるが、これに限定されない。
【0032】
本明細書において、アリーレン基は、アレーン(arene)に由来した2価の官能基であり、単環式または多環式であり得、炭素数は6~20、または6~10である。例えば、フェニレン基、ビフェニレン基、テルフェニレン基、スチルベニレン基、ナフチレニル基などでありうるが、これに限定されるものではない。前記アリーレン基に含まれている一つ以上の水素原子は、それぞれ前記アルキル基の場合と同様の置換基で置換可能である。
【0033】
本明細書において、ヘテロアリーレン基は、炭素数は2~20、または2~10、または6~20である。異種原子としてO、NまたはSを含有したアリーレン基であり、前記ヘテロアリーレン基に含まれている一つ以上の水素原子は、それぞれ前記アルキル基の場合と同様の置換基で置換可能である。
【0034】
本明細書において、重量平均分子量はGPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。前記GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を測定する過程では、通常知られている分析装置と示差屈折率検出器(Refractive Index Detector)などの検出器および分析用カラムを用いることができ、通常適用される温度条件、溶媒、flow rateを適用することができる。前記測定条件の具体的な例としては、Polymer Laboratories PLgel MIX-B 300mm長さのカラムを用いてWaters PL-GPC220機器を用いて、評価温度は40℃であり、ジメチルホルムアミド(DMF)およびテトラヒドロフラン(THF)を50wt%:50wt%の重量比で混合して溶媒として使用し、流速は1mL/minの速度で、サンプルは10mg/10mLの濃度に調製した後、200μLの量で供給し、ポリスチレン標準を用いて形成された検定曲線によりMwの値を求めることができる。ポリスチレン標準品の分子量は、1,000/5,000/10,000/30,000/100,000の5種を使用した。
【0035】
本発明による液晶配向剤組成物は、部分イミド化されたポリイミド前駆体である第1液晶配向剤用重合体、非対称ピリジン構造のジアミンに由来したポリイミド前駆体である第2液晶配向剤用重合体とともに一般的なポリイミド前駆体である第3液晶配向剤用重合体をさらに含むことを主な特徴とする。
【0036】
従来のポリイミドを液晶配向膜として使用する場合、ポリイミド前駆体、ポリアミック酸またはポリアミック酸エステルを塗布して乾燥して塗膜を形成した後、高温の熱処理工程を経てポリイミドに転換させてそこに光照射を実行して配向処理を行った。しかし、このようなポリイミド状態の膜に光照射をして十分な液晶配向性を得るためには多くの光照射エネルギが必要であるだけでなく、光照射後の配向安定性を確保するために追加的な熱処理工程も経る。このような多くの光照射エネルギと追加的な高温熱処理工程は工程コストと、工程時間の側面から非常に不利であるので、実際の大量生産工程に適用するには限界があった。
【0037】
これを解決するために前記第1液晶配向剤用重合体と前記第3液晶配向剤用重合体を混合した液晶配向剤組成物が開発され、前記第1重合体によって光照射エネルギを大きく減らすことができるだけでなく、1回の熱処理工程を含むシンプルな工程でも配向性と安定性に優れるだけでなく、電圧保持率と電気的特性にも優れた液晶配向膜を製造してきた。
【0038】
しかし、本発明者らは、前記第1液晶配向剤用重合体および第3液晶配向剤用重合体を混合した組成物に、窒素原子などを含有した特定構造のジアミン化合物を含む反応物から製造された前記化学式4~6の繰り返し単位を含む第2液晶配向剤用重合体をさらに含ませると、それから製造される液晶配向膜が高温でも高い電圧保持率を有して電気的特性および安定性が大きく向上することができ、コントラスト比の低下や残像現象を改善できるだけでなく、熱ストレスによる配向安定性および配向膜の機械的強度も改善することを確認して発明を完成した。
【0039】
本発明者らは、前記一実施形態の液晶配向剤組成物のようにポリイミドまたはその前駆体重合体とともに添加される架橋剤化合物が前記化学式16に示すように、架橋性官能基であるヒドロキシ基(-OH)の末端をR19およびR20の特定官能基で置換させる場合、R19およびR20官能基が保護基として作用して液晶配向剤組成物内の分散性が向上し、最終的に得られる配向膜の配向特性と配向安定性が改善することを実験により確認して発明を完成した。
【0040】
また、本発明者らは、前記一架橋性官能基であるヒドロキシ基(-OH)の末端をR19およびR20のケイ素含有官能基で置換させる場合、ケイ素含有官能基を含むことにより従来のヒドロキシ基(-OH)末端の架橋剤より初期乾燥工程での架橋剤の反応性が減り、配向のための露光工程後の架橋反応が始まって架橋剤による初期配向の低下を減らすことを確認した。また、配向のための露光後のイミド化が進行される過程でイミド化転換率が高くなり再配列率が増加して配向性が増加する技術的効果が得られることを実験により確認して発明を完成した。
【0041】
前記架橋剤化合物の架橋性官能基末端に導入されたR19およびR20の官能基は、液晶配向剤組成物内では架橋性官能基による架橋反応を抑制させ、不要の架橋構造の形成を最小化して組成物の安定性および信頼性を向上させることができ、液晶配向膜の乾燥または焼成過程時の熱処理によって概ね80℃以上の温度で脱着されて除去されながら架橋性官能基末端のヒドロキシ基が回復して円滑な架橋反応を行って配向膜の機械的物性を向上させることができる。
【0042】
すなわち、液晶配向剤組成物内では前記化学式16で表される架橋剤化合物の構造が維持され、ポリイミドまたはその前駆体重合体と前記化学式16で表される架橋剤化合物との間の架橋反応が抑制されることができる。そして、液晶配向剤組成物から液晶配向膜を製造する乾燥工程、露光工程、硬化工程などを経て、熱処理によって温度が上昇時、前記化学式16で表される架橋剤化合物でR19およびR20の官能基が水素原子に置換され、ポリイミドまたはその前駆体重合体と後述する化学式18で表される架橋剤化合物間の架橋反応が進行されうる。
【0043】
したがって、前記一実施形態の液晶配向剤組成物は、組成物内に添加される架橋剤化合物の架橋反応性を抑制して架橋剤化合物とポリイミドまたはその前駆体重合体の分散性を十分に向上させることができ、後述する他の実施形態の液晶配向膜の製造過程中の組成物内で架橋剤化合物とポリイミドまたはその前駆体重合体との間の架橋反応により配向膜の強度が向上し、最終的に製造された液晶配向セルにおける優れた配向特性および電気的特性を実現することができる。
【0044】
1.液晶配向剤組成物
発明の一実施形態によれば、前記化学式1で表される繰り返し単位、前記化学式2で表される繰り返し単位および前記化学式3で表される繰り返し単位からなる群より選ばれた1種以上の繰り返し単位を含む第1液晶配向剤用重合体;前記化学式4で表される繰り返し単位、前記化学式5で表される繰り返し単位および前記化学式6で表される繰り返し単位からなる群より選ばれた1種以上の繰り返し単位を含む第2液晶配向剤用重合体;前記化学式7で表される繰り返し単位、前記化学式8で表される繰り返し単位および前記化学式9で表される繰り返し単位からなる群より選ばれた1種以上の繰り返し単位を含む第3液晶配向剤用重合体;および前記化学式16で表される架橋剤化合物を含む液晶配向剤組成物を提供することができる。
【0045】
具体的には、前記第1液晶配向剤用重合体は、前記化学式1で表される繰り返し単位、前記化学式2で表される繰り返し単位、前記化学式3で表される繰り返し単位それぞれ1種またはこれらのうち2種の混合、またはこれら3種すべての混合を含み得る。
【0046】
また、前記第2液晶配向剤用重合体は、前記化学式4で表される繰り返し単位、前記化学式5で表される繰り返し単位、前記化学式6で表される繰り返し単位それぞれ1種またはこれらのうち2種の混合、またはこれら3種すべての混合を含み得る。
【0047】
また、前記第3液晶配向剤用重合体は、前記化学式7で表される繰り返し単位、前記化学式8で表される繰り返し単位、前記化学式9で表される繰り返し単位それぞれ1種またはこれらのうち2種の混合、またはこれら3種すべての混合を含み得る。
【0048】
具体的には、一実施形態による液晶配向剤組成物のうち、第1液晶配向剤用重合体、第2液晶配向剤用重合体および第3液晶配向剤用重合体において、X
1~X
9はそれぞれ独立して下記化学式10で表される4価の有機基からなる群より選ばれたいずれか一つでありうる。前記X
1~X
9はポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、またはポリイミド合成時に使われるテトラカルボン酸二無水物化合物に由来した官能基でありうる。
[化学式10]
【化17】
【0049】
前記化学式10において、R7~R12はそれぞれ独立して水素または炭素数1~6のアルキル基であり、L1は単結合、-O-、-CO-、-COO-、-S-、-SO-、-SO2-、-CR13R14-、-(CH2)Z-、-O(CH2)ZO-、-COO(CH2)ZOCO-、-CONH-、フェニレンまたはこれらの組み合わせからなる群より選ばれたいずれか一つであり、前記R13およびR14はそれぞれ独立して水素、炭素数1~10のアルキル基またはフルオロアルキル基であり、zは1~10の整数である。
【0050】
より好ましくは前記X
1~X
9はそれぞれ独立してシクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物に由来した下記化学式10-1の有機基、1,3-ジメチルシクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物に由来した下記化学式10-2の有機基、テトラヒドロ-[3,3'-ビフラン]-2,2',5,5'-テトラオンに由来した下記化学式10-3の有機基、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物に由来した下記化学式10-4の有機基、ピロメリット酸二無水物に由来した下記化学式10-5の有機基、または3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物に由来した下記化学式10-6の有機基でありうる。
[化学式10-1]
【化18】
[化学式10-2]
【化19】
[化学式10-3]
【化20】
[化学式10-4]
【化21】
[化学式10-5]
【化22】
[化学式10-6]
【化23】
【0051】
一方、前記一実施形態による液晶配向剤組成物のうち、第1液晶配向剤用重合体は前記化学式1~3の繰り返し単位でY1~Y3がそれぞれ独立して前記化学式11で表される2価の有機基でありうる。前記第1液晶配向剤用重合体がすでにイミド化されたイミド繰り返し単位を含有したジアミンから合成されるので、塗膜形成後の高温の熱処理工程なしですぐに光を照射して異方性を生成させ、その後に熱処理を行って配向膜を完成できるので、光照射エネルギを大きく減らすことができるだけでなく、1回の熱処理工程を含むシンプルな工程でも配向性と安定性に優れるだけでなく、電圧保持率と電気的特性にも優れた液晶配向膜を製造することができる。
【0052】
具体的には、前記化学式11において、Tは下記化学式10-1で表される官能基または下記化学式10-2で表される官能基でありうる。
[化学式10-1]
【化24】
[化学式10-2]
【化25】
【0053】
より具体的には、前記化学式11で表される有機基の例が大きく限定されるものではないが、例えば、下記化学式11-1または化学式11-2で表される官能基でありうる。
[化学式11-1]
【化26】
[化学式11-2]
【化27】
【0054】
前記第1液晶配向剤用重合体において、前記化学式1、化学式2および化学式3で表される繰り返し単位のうち、化学式1で表される繰り返し単位を全体繰り返し単位に対して5モル%~74モル%、または10モル%~60モル%含み得る。
【0055】
前述したように、前記化学式1で表されるイミド繰り返し単位を特定含有量含む重合体を用いると、前記第1液晶配向剤用重合体がすでにイミド化されたイミド繰り返し単位を一定含有量含むので、高温の熱処理工程を省略し、すぐに光を照射しても配向性と安定性に優れた液晶配向膜を製造することができる。
【0056】
万一、化学式1で表される繰り返し単位が前記含有量の範囲より少なく含まれると、十分な配向特性を示すことができず、配向安定性が低下し得、前記化学式1で表される繰り返し単位の含有量が前記範囲を超えると、コーティング可能な安定した配向液を製造しにくい問題があり得る。そのため、前記化学式1で表される繰り返し単位を上述した含有量の範囲で含むことが保管安定性、電気的特性、配向特性および配向安定性においていずれも優れた液晶配向剤用重合体を提供できるため好ましい。
【0057】
また、前記化学式2で表される繰り返し単位または化学式3で表される繰り返し単位は目的とする特性に応じて適宜の含有量で含まれ得る。
【0058】
具体的には、前記化学式2で表される繰り返し単位は、前記化学式1~3で表される全体繰り返し単位に対して1モル%~60モル%、好ましくは5モル%~50モル%含まれ得る。前記化学式2で表される繰り返し単位は、光照射後の高温熱処理工程中にイミドに転換される比率が低いので、前記範囲を超える場合、液晶との相互作用する領域が低くなり、相対的に配向性が低下しうる。したがって、前記化学式2で表される繰り返し単位は、上述した範囲内で工程特性に優れながらも高いイミド化率を実現できる液晶配向剤用重合体を提供することができる。
【0059】
そして、前記化学式3で表される繰り返し単位は、前記化学式1~3で表される全体繰り返し単位に対して0モル%~95モル%、好ましくは10モル%~80モル%含まれ得る。このような範囲内で優れたコーティング性を示し、工程特性に優れながらも高いイミド化率を実現できる液晶配向剤用重合体を提供することができる。
【0060】
一方、一実施形態による液晶配向剤組成物のうち、第2液晶配向剤用重合体は、前記化学式4~6の繰り返し単位でY4~Y6はそれぞれ独立して前記化学式12で表される2価の有機基でありうる。前記Y4、Y5、Y6は、前記化学式12で表される2価の有機基で定義されて上述した効果を発現できる多様な構造の液晶配向剤用重合体を提供することができる。
【0061】
このように前記第2重合体が前記化学式12で表される特定の有機官能基を含有したジアミンから合成されることにより、高温環境でも高い電圧保持率を有することができ、コントラスト比の低下や残像現象を改善させて電気的特性を向上させる特徴がある。
【0062】
前記化学式12において、Aは15族元素であり、前記15族元素は窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、スズ(Sn)またはビスマス(Bi)でありうる。前記R'は、前記Aに結合する官能基として、aで表される数字の個数だけA元素に結合することができる。好ましくは前記化学式12において、Aは窒素であり、R'は水素であり、aは1でありうる。
【0063】
一方、前記化学式12において、Z1~Z4のうち少なくとも一つは窒素であり、残りは炭素であることにより、前記窒素原子によって前記化学式12は中心点または中心線を基準に対称を成さない非対称構造をなす。前記化学式12は、液晶配向剤用重合体の形成に使われる前駆体である窒素原子などを含有した特定構造のジアミンに由来した繰り返し単位であって、後述するように非対称ジアミンを使用することによるものと見られる。
【0064】
前記化学式12で表される官能基は、2次アミン基または3次アミン基を媒介として2個の芳香族環化合物、好ましくはヘテロ芳香族環化合物および芳香族環化合物が結合する構造的特徴がある。そのため、液晶配向剤としての配向性や残像特性は等しい水準以上を満足しながらも、電圧保持率が向上して優れた電気的特性を実現することができる。
【0065】
反面、2個の芳香族環化合物が2次アミン基または3次アミン基なしで単結合で結合する場合、液晶配向剤の配向特性が不良であり、電圧保持率が顕著に減少する技術的問題が発生しうる。
【0066】
また、2次アミン基または3次アミン基を介して結合する2個の芳香族環化合物それぞれが窒素原子を含まない場合、アミンと酸無水物の反応により形成されるポリアミック酸またはポリアミック酸エステルに対してイミド化反応を行っても(例えば、230℃の熱処理により)十分なイミド化反応を行えないことによって、最終液晶配向膜内でイミド化率が減少する限界がある。
【0067】
また、前記化学式12で表される官能基は、2個の芳香族環化合物、好ましくはヘテロ芳香族環化合物および芳香族環化合物それぞれにアミン基および水素だけが結合しているだけであり、そのほかの他の置換基が導入されないことを特徴とし、ヘテロ芳香族環化合物または芳香族環化合物に置換基、例えばフルオロアルキル基が導入される場合、液晶配向剤の配向特性が不良であり、電圧保持率が顕著に減少する技術的問題が発生し得る。
【0068】
より具体的には、前記化学式12において、Z1~Z4の一つが窒素であり、残りは炭素であり得、または前記化学式12において、Z1またはZ3の一つが窒素であり、残りは炭素であり、Z2およびZ4は炭素でありうる。すなわち、前記化学式12においてZ1~Z4が含まれた芳香族環はピリジン(pyridine)構造を有することができる。そのため、前記一実施形態の液晶配向剤用重合体が適用された液晶ディスプレイ素子が高い電圧保持率および液晶配向性を実現することができる。
【0069】
また、前記化学式12は、下記化学式12-1、化学式12-2および化学式12-3からなる群より選ばれた1種以上の繰り返し単位を含み得る。
[化学式12-1]
【化28】
[化学式12-2]
【化29】
[化学式12-3]
【化30】
【0070】
前記化学式12-1から12-3において、A、Z1~Z4、R'、aに係る内容は、前記化学式12で上述した内容を含む。
【0071】
このように、前記化学式12で表される有機基が化学式12-1、化学式12-2および化学式12-3からなる群より選ばれた1種以上の官能基を含むことにより、より優れた液晶配向性を実現することができる。
【0072】
より具体的には、前記化学式12で表される有機基の例が大きく限定されるものではないが、例えば、下記化学式12-4、化学式12-5および化学式12-6からなる群より選ばれた1種以上の官能基でありうる。
[化学式12-4]
【化31】
[化学式12-5]
【化32】
[化学式12-6]
【化33】
【0073】
一方、前記一実施形態による液晶配向剤組成物のうち、第3液晶配向剤用重合体は前記化学式7~9で、Y7~Y9はそれぞれ独立して前記化学式13で表される2価の有機基である。前記化学式13の有機基を含有した第3液晶配向剤用重合体を含むことにより、電圧保持率(Voltage Holding Ratio)のような配向膜の電気的特性を大きく改善することができ、液晶配向膜の配向性を増幅させ、機械的物性を増進して配向膜の耐久性を確保することができる。
【0074】
前記化学式13において、R15またはR16で置換されていない炭素には水素が結合されており、pまたはqが2~4の整数であるとき、複数のR15またはR16は同一または互いに相異する置換基でありうる。そして、前記化学式13において、kおよびmはそれぞれ独立して0~1の整数であり、nは0~3の整数あるいは0または1の整数でありうる。
【0075】
より具体的には、前記化学式13の例は大きく限定されるものではないが、例えば、下記化学式14または化学式15で表される官能基でありうる。
[化学式14]
【化34】
[化学式15]
【化35】
【0076】
前記化学式15において、
L3は単結合、-O-、-SO2-、-O(CH2)yO-または-CR17R18-であり、ここで、yは1~10の整数であり、R17およびR18はそれぞれ独立して水素、または炭素数1~10のアルキルである。
【0077】
好ましくは、前記化学式14は、下記化学式14-1でありうる。
[化学式14-1]
【化36】
【0078】
また、前記化学式15は、下記化学式15-1でありうる。
[化学式15-1]
【化37】
【0079】
前記化学式15-1において、L3は-O-、-O(CH2)2O-または-CH2-である。
【0080】
一方、一実施形態による液晶配向剤組成物は、前記第1液晶配向剤用重合体100重量部に対し、第2液晶配向剤用重合体の含有量が10重量部~1000重量部、または15重量部~800重量部でありうる。
【0081】
このような特徴を有する前記第1液晶配向剤用重合体と第2液晶配向剤用重合体を前記重量比範囲で混合して使用する場合、第1液晶配向剤用重合体が有する優れた光反応特性および液晶配向特性に第2液晶配向剤用重合体が有する優れた電気的特性を相互補完できるので、優れたコーティング性を示し、工程特性に優れながらも高いイミド化率を実現することができるだけでなく、直流/交流電圧によって発生する残像、電圧保持率のような電気的な特性に優れた液晶配向膜を、より優れた配向性と電気的特性を同時に有する液晶配向膜を製造することができる。
【0082】
また、一実施形態による液晶配向剤組成物は、前記第1液晶配向剤用重合体100重量部に対し、第3液晶配向剤用重合体の含有量が10重量部~1000重量部、または15重量部~800重量部でありうる。
【0083】
したがって、前記第1液晶配向剤用重合体、第2液晶配向剤用重合体とともに、上述した第3液晶配向剤用重合体を前記重量比範囲で混合して使用する場合、第1液晶配向剤用重合体が有する優れた光反応特性および液晶配向特性に第2液晶配向剤用重合体が有する優れた電気的特性、そこに第3液晶配向剤用重合体が有する配向性と機械的物性まで相互補完できるので、優れたコーティング性を示し、工程特性に優れながらも高いイミド化率を実現できるだけでなく、直流/交流電圧によって発生する残像、電圧保持率のような電気的な特性に優れ、配向特性と向上した機械的耐久性を同時に有する液晶配向膜を製造することができる。
【0084】
前記第1液晶配向剤用重合体、第2液晶配向剤用重合体、第3液晶配向剤用重合体それぞれの重量平均分子量(GPC測定)が大きく限定されるものではないが、例えば、10000g/mol~200000g/molでありうる。
【0085】
2.架橋剤化合物
前記一実施形態の液晶配向剤組成物は、上述した重合体以外に、架橋剤化合物を含み得、前記架橋剤化合物は、前記化学式16で表される特定の化学構造を有することができる。前記架橋剤化合物の物理/化学的性質は上述した化学式16の特定構造に起因したと見られる。
【0086】
前記化学式16において、A1は1価~4価の官能基であり、jは1~4の整数でありうる。前記A1は架橋剤化合物の中心に位置する官能基であり、A1に含まれた末端官能基に化学式10において中括弧「[]」で表した官能基がj個だけ結合することができる。
【0087】
すなわち、前記化学式16において、jが1の場合、A1は1価官能基である。また、jが2の場合、A1は2価官能基である。また、jが3の場合、A1は3が官能基である。また、jが4の場合、A1は4価官能基である。好ましくは、前記化学式16において、jは2であり、A1は炭素数1~10のアルキレン基、具体的にブチレン基でありうる。
【0088】
前記化学式16において、L4およびL5は、互いに同一または相異し、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキレン基または炭素数6~20のアリーレン基のうち一つであり、好ましくはL4およびL5それぞれ独立して炭素数1~5のアルキレン基、例えばエチレン基でありうる。
【0089】
前記化学式16において、R19およびR20は、前記架橋剤化合物の架橋性官能基であるヒドロキシ基(-OH)の末端で水素原子の代わりに置換された官能基として、ポリイミドまたはその前駆体重合体と前記化学式16で表される架橋剤化合物との間の架橋反応を抑制させることができる。
【0090】
後述するように、前記R19およびR20は、液晶配向剤組成物から液晶配向膜を製造する乾燥工程、露光工程、硬化工程などを経て、概ね80℃以上の温度で上昇時に水素原子に置換されて脱着されうる。
【0091】
前記R19およびR20は、それぞれ独立してケイ素含有1価官能基でありうる。
【0092】
具体的には、前記ケイ素含有1価官能基は、下記化学式17で表される官能基でありうる。
[化学式17]
【化38】
【0093】
前記化学式17において、R21、R22およびR23は、それぞれ独立して水素、または炭素数1~10のアルキルのうち一つでありうる。
【0094】
より具体的には、前記化学式17において、R21、R22およびR23は、炭素数1~10のアルキル、好ましくはメチル基でありうる。
【0095】
前記化学式16において、A
1は炭素数1~10のアルキレン基であり、jは2でありうる。すなわち、前記化学式16で表される架橋剤化合物は、下記化学式16-1で表される化合物を含み得る。
[化学式16-1]
【化39】
【0096】
前記化学式16-1において、A'は炭素数1~10のアルキレン基であり、L6~L9はそれぞれ独立して炭素数1~5のアルキレン基であり、R24~R27はそれぞれ独立してケイ素含有1価官能基でありうる
【0097】
より具体的に前記化学式16-1で表される架橋剤化合物の例としては、A'は炭素数4のブチレン基であり、L
6~L
9はいずれも炭素数2のエチレン基であり、R
24~R
27はいずれも前記化学式17で表される官能基(R
21、R
22およびR
23がメチル基)の下記化学式16-2で表される化合物が挙げられる。
[化学式16-2]
【化40】
【0098】
また、前記化学式16-1で表される架橋剤化合物の他の例としては、A'は炭素数4のブチレン基であり、L
6~L
9はいずれも炭素数2のエチレン基であり、R
24~R
27はいずれも前記化学式17で表される官能基(R
21、R
22およびR
23がエチル基)の下記化学式16-3で表される化合物が挙げられる。
[化学式16-3]
【化41】
【0099】
前記化学式16で表される架橋剤化合物は、前記液晶配向剤組成物全体重量を基準に1重量%~30重量%、または2重量%~25重量%、または3重量%~25重量%、または5重量%~10重量%で含まれうる。前記架橋剤化合物の含有量が過度に多くなると、前記液晶配向剤用重合体の架橋度が過度に増加することにより、前記重合体の柔軟性が減少し得、組成物の粘度増加による貯蔵安定性減少および組成物内でのゲル化反応により基板への塗布性が減少しうる。
【0100】
反面、前記架橋剤化合物の含有量が過度に小さくなると、前記液晶配向剤用重合体の架橋度増加による機械的強度および電気的特性向上効果が十分に具現されにくいこともある。
【0101】
3.液晶配向膜の製造方法
発明の他の実施形態によれば、前記液晶配向剤組成物を基板に塗布して塗膜を形成する段階(段階1);前記塗膜を乾燥する段階(段階2);前記塗膜に光を照射したりラビング処理して配向処理する段階(段階3);および前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階(段階4)を含む、液晶配向膜の製造方法を提供する。
【0102】
前記段階1は、上述した液晶配向剤組成物を基板に塗布して塗膜を形成する段階である。前記液晶配向剤組成物に関する内容は、前記一実施形態で上述した内容をすべて含む。
【0103】
前記液晶配向剤組成物を基板に塗布する方法は、特に制限されず、例えばスクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェットなどの方法が用いられる。
【0104】
そして、前記液晶配向剤組成物は、有機溶媒に溶解または分散させたものでありうる。前記有機溶媒の具体的な例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、2-ピロリドン、N-エチルピロリドン、N-ビニルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチルウレア、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジグライム、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどが挙げられる。これらは単独で用いることもでき、混合して用いることもできる。
【0105】
また、前記液晶配向剤組成物は、有機溶媒のほかに他の成分をさらに含み得る。非制限的な例として、前記液晶配向剤組成物が塗布された時、膜厚さの均一性や表面平滑性を向上させるか、あるいは液晶配向膜と基板の密着性を向上させるか、あるいは液晶配向膜の誘電率や導電性を変化させるか、あるいは液晶配向膜の緻密性を増加させる添加剤がさらに含まれ得る。このような添加剤としては各種溶媒、界面活性剤、シラン系化合物、誘電体または架橋性化合物などが例示される。
【0106】
前記段階2は、前記液晶配向剤組成物を基板に塗布して形成された塗膜を乾燥する段階である。
【0107】
前記塗膜を乾燥する段階は、塗膜の加熱、真空蒸着などの方法を用いることができ、50℃~150℃、または60℃~140℃で行われることが好ましい。
【0108】
前記段階3は、前記塗膜に光を照射して配向処理する段階である。
【0109】
前記配向処理段階での塗膜は、乾燥段階直後の塗膜を意味し得、前記乾燥段階以後の熱処理を経た後の塗膜でもあり得る。前記「乾燥段階直後の塗膜」は、乾燥段階以後に乾燥段階以上の温度で熱処理する段階を行わず、すぐに光照射することを意味し、熱処理以外の他の段階は付加が可能である。
【0110】
より具体的には、従来のポリアミック酸またはポリアミック酸エステルを含む液晶配向剤を使用して液晶配向膜を製造する場合は、ポリアミック酸のイミド化のために必須的に高温の熱処理を行った後に光を照射する段階を含むが、上述した一実施形態の液晶配向剤を用いて液晶配向膜を製造する場合は、前記熱処理段階を含まず、すぐに光を照射して配向処理した後、配向処理された塗膜を熱処理して硬化することによって配向膜を製造することができる。
【0111】
そして、前記配向処理する段階における光照射は、150nm~450nm波長の偏光した紫外線を照射することである。この時、露光の強度は、液晶配向剤用重合体の種類によって異なり、10mJ/cm2~10J/cm2のエネルギ、好ましくは30mJ/cm2~2J/cm2のエネルギを照射しうる。
【0112】
前記紫外線としては、石英ガラス、ソーダライムガラス、ソーダライムフリーガラスなどの透明基板の表面に誘電異方性の物質がコートされた基板を用いた偏光装置、微細にアルミニウムまたは金属ワイヤが蒸着された偏光板、または石英ガラスの反射によるブルースター偏光装置などを通過または反射する方法で偏光処理された紫外線から選ばれた偏光紫外線を照射して配向処理をする。この時、偏光した紫外線は基板面に垂直に照射することもでき、特定の角度に入射角を傾斜して照射することもできる。このような方法によって液晶分子の配向能力が塗膜に付与される。
【0113】
また、前記配向処理する段階におけるラビング処理は、ラビング布を用いる方法が用いられる。より具体的には、前記ラビング処理は金属ローラにラビング布の生地を貼り付けたラビングローラを回転させながら熱処理段階以後の塗膜の表面を一方向にラビングすることができる。
【0114】
前記段階4は、前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階である。
【0115】
前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階において、前記配向処理された塗膜における前記化学式16で表される架橋剤化合物でR19およびR20官能基が水素原子に置換されて脱着されることができ、また、前記架橋剤化合物、そしてポリアミック酸繰り返し単位、ポリアミック酸エステル繰り返し単位、ポリイミド繰り返し単位またはこれらの2種以上の混合物を含む重合体間の架橋反応が進行されうる。
【0116】
具体的には、前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階において、前記配向処理された塗膜に下記化学式18で表される架橋剤化合物が含まれ得る。
[化学式18]
【化42】
【0117】
前記化学式18において、A1、j、L4およびL5は、前記一実施形態の化学式16で定義したとおりである。
【0118】
前記一実施形態の液晶配向剤組成物に前記化学式18で表される架橋剤化合物が含まれる場合、組成物内から一部架橋反応を行うことにより架橋剤化合物が組成物内に等しく分散し難い。
【0119】
反面、本発明は液晶配向剤組成物内では前記化学式16で表される架橋剤化合物を添加して組成物内での架橋反応を抑制し、液晶配向膜を製造する前記塗膜を乾燥する段階で自発的に化学式16で表される架橋剤化合物が化学式18で表される架橋剤化合物に転換されるように誘導することができる。そのため、組成物では架橋剤化合物の分散性を高めることができ、配向膜では架橋構造形成により膜強度向上効果を実現することができる。
【0120】
前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階は、従来のポリアミック酸またはポリアミック酸エステルを含む液晶配向剤用重合体を用いて液晶配向膜を製造する方法においても光照射以後に実施する段階で、液晶配向剤を基板に塗布し、光を照射する前に、または光を照射しながら液晶配向剤をイミド化させるために実施する熱処理段階とは区分される。
【0121】
この時、前記熱処理はホットプレート、熱風循環炉、赤外線炉などの加熱手段によって実施され得、150~300℃、または200~250℃で行われることが好ましい。
【0122】
一方、前記塗膜を乾燥する段階(段階2)以後に必要に応じて、前記乾燥段階直後の塗膜に乾燥段階以上の温度で熱処理する段階をさらに含み得る。前記熱処理は、ホットプレート、熱風循環炉、赤外線炉などの加熱手段によって実施され得、150℃~250℃で行われることが好ましい。この過程で液晶配向剤をイミド化させることができる。
【0123】
すなわち、前記液晶配向膜の製造方法は、上述した液晶配向剤を基板に塗布して塗膜を形成する段階(段階1);前記塗膜を乾燥する段階(段階2);前記乾燥段階直後の塗膜に乾燥段階以上の温度で熱処理する段階(段階3);前記熱処理された塗膜に光を照射したりラビング処理して配向処理する段階(段階4)および前記配向処理された塗膜を熱処理して硬化する段階(段階5)を含み得る。
【0124】
4.液晶配向膜
また、本発明は上述した液晶配向膜の製造方法により製造された液晶配向膜を提供する。具体的には、前記液晶配向膜は前記一実施形態の液晶配向剤組成物の配向硬化物を含み得る。前記配向硬化物とは、前記一実施形態の液晶配向剤組成物の配向工程および硬化工程を経て得られる物質を意味する。
【0125】
前述したように、前記第1液晶配向剤用重合体、前記第2液晶配向剤用重合体;前記第3液晶配向剤用重合体;および化学式16で表される架橋剤化合物を含む液晶配向剤組成物を用いると、安定性が強化され、優れた電気的特性を示す液晶配向膜を製造することができる。
【0126】
具体的には、前記液晶配向膜は下記数式1で計算される膜強度が5%以下、または0.1%~5%、または0.1%~2%、または1%~2%でありうる。
[数式1]
膜強度=ラビング処理後の液晶配向膜のヘイズ-ラビング処理前の液晶配向膜のヘイズ。
【0127】
前記液晶配向膜に対するラビング処理は、配向膜表面をsindo engineering社のrubbing machineを用いて1000rpmで回転させながらラビング処理する方法用いてもよく、ヘイズ値はヘイズメータ(hazemeter)を用いて測定することができる。
【0128】
前記液晶配向膜の厚さが大きく限定されるものではないが、0.01μm~1000μmの範囲内で自由に調整可能であり、例えば0.01μm~0.3μmでありうる。前記液晶配向膜の厚さが特定数値だけ増加したり減少する場合、液晶配向膜で測定される物性も一定数値だけ変化することができる。
【0129】
5.液晶表示素子
また、本発明は上述した液晶配向膜を含む液晶表示素子を提供する。
【0130】
前記液晶配向膜は、公知の方法によって液晶セルに導入され得、前記液晶セルは同様に公知の方法によって液晶表示素子に導入されうる。前記液晶配向膜は、前記他の実施形態の液晶配向剤組成物から製造されて優れた諸物性と共に優れた安定性を実現することができる。具体的には、高温、低周波数で高い電圧保全率を有することができ、電気的特性に優れ、コントラスト比(contrast ratio)の性能低下やイメージスティッキング現像が減少し、膜強度にも優れる液晶表示素子を提供することができる。
【0131】
具体的には、前記液晶表示素子は、1V、1Hz、60℃温度でTOYO corporationの6254C装備を用いて測定した電圧保持率が70%以上、または70%~99%、または75%~99%、または76%~96%でありうる。前記液晶配向表示素子の1V、1Hz、60℃温度でTOYO corporationの6254C装備を用いて測定した電圧保持率が70%未満に減少する場合、低電力で高品位の駆動特性を有する液晶表示素子の実現が難しくなる。
【0132】
また、前記液晶表示素子は、上板および下板に偏光板を互いに垂直になるように付着した後、7,000cd/m2のバックライトの上に付着してPR-788装備を用いて測定したブラック状態の輝度である初期輝度(L0)と常温で交流電圧7Vで120時間駆動した後測定したブラック状態の輝度である後の輝度(L1)との間の差を初期輝度(L0)値で除して100を乗した値である輝度変動率が前記液晶表示素子の輝度変動率が5%未満でありうる。
【発明の効果】
【0133】
本発明によれば、配向性と安定性が強化され、優れた電気的特性を示す液晶配向膜を製造するための液晶配向剤組成物、それを用いた液晶配向膜の製造方法、およびそれを用いた液晶配向膜および液晶表示素子が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0134】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するだけであり、本発明の内容は下記の実施例によって限定されない。
【0135】
<製造例>
製造例1:ジアミンDA1-1の製造
下記反応式のように製造した。
【化43】
【0136】
具体的には、CBDA(シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、化合物1)と4-ニトロアニリン(4-nitroaniline)をDMF(Dimethylformamide)に溶解させて混合物を製造した。次いで、前記混合物を約80℃で約12時間反応させて化合物2のアミック酸を製造した。その後、前記アミック酸をDMFに溶解させ、酢酸無水物および酢酸ナトリウムを添加して混合物を製造した。次いで、前記混合物に含まれたアミック酸を約90℃で約4時間イミド化させて化合物3を得た。このように得られた化合物3のイミドをDMAc(Dimethylacetamide)に溶解させた後、Pd/Cを添加して混合物を製造した。これを約45℃および約6barの水素圧力下で約20時間還元させてジアミンDA1-1を製造した。
【0137】
製造例2:ジアミンDA1-2の製造
【化44】
CBDA(シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物)の代わりにDMCBDA(1,3-ジメチルシクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物)を使用したことを除いては前記製造例1と同様の方法で前記構造を有するDA1-2を製造した。
【0138】
製造例3:ジアミンDA2の合成
【化45】
18.3g(100mmol)の2-クロロ-5-ニトロピリジン(2-chloro-5-nitropyridine、化合物7)、12.5g(98.6mmol)のパラフェニレンジアミン(p-PDA、化合物8)を約200mLのジメチルスルホキシド(Dimethylsulfoxide,DMSO)に完全に溶かした後、23.4g(200mmol)のトリエチルアミン(trimethylamine,TEA)を添加して常温で約12時間攪拌した。反応が終結すると反応物を約500mLの水が入れられた容器に投入して約1時間攪拌した。これを濾過して得た固体を約200mLの水と約200mLのエタノールで洗浄して16g(61.3mmol)の化合物9を合成した(収率:60%)。
【0139】
【化46】
前記化合物9を酢酸エチル(ethyl acetate,EA)とTHFを1:1で混合した約200mL溶液に溶かした後、0.8gのパラジウム(Pd)/炭素(C)を投入して水素環境下で約12時間攪拌した。反応終了後セライトパッドに濾過したろ液を濃縮して11gのジアミン化合物DA2(pIDA)を製造した(収率:89%)。
【0140】
製造例4:架橋剤の製造
【化47】
N,N,N',N'-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)アジパミド(N、N,N',N'-Tetrakis (2-hydroxyethyl)adipamide) 5g(15.6mmol)とクロロトリメチルシラン(Chlorotrimethylsilane) 10.2g(94mmol)をクロロホルム(Chloroform) 150mlに投入した後、炭酸カリウム(K
2CO
3) 17.3g(125mmol)を添加して0℃窒素環境下で10時間攪拌した。反応終了後にセライトパッドに濾過したろ液を濃縮してN1,N1,N6,N6-テトラキス(2-(トリメチルシリルオキシ)エチル)アジパミド(N1,N1,N6,N6-tetrakis(2-(trimethylsilyloxy)ethyl)adipamide) 7.3g(収率77%)を製造した。
【0141】
比較製造例1:架橋剤の製造
前記製造例4の反応物であるN,N,N',N'-テトラキス(2-ヒドロキシエチル)アジパミド(N、N,N',N'-Tetrakis(2-hydroxyethyl)adipamide)を比較製造例1の架橋剤として使用した。
【0142】
<合成例>
下記表1に記載された反応水を用いて第1重合体、第2重合体および第3重合体を合成した。それぞれの合成例1~8の具体的な合成条件は、表1以下に記載した。
【表1】
【0143】
<合成例1~2:第1重合体の合成>
合成例1:液晶配向剤用重合体P-1の製造
前記製造例1で製造したDA1-1 5.0g(13.3mmol)を無水N-メチルピロリドン(NMP) 71.27gに完全に溶かした。そして、ice bath下で1,3-ジメチル-シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物(DMCBDA) 2.92g(13.03mmol)を前記溶液に添加して約16時間常温で攪拌して液晶配向剤用重合体P-1を製造した。
【0144】
GPCにより前記重合体P-1の分子量を確認した結果、数平均分子量(Mn)が15,500g/molであり、重量平均分子量(Mw)が31,000/molであった。そして、重合体P-1のモノマー構造は使用したモノマーの当量比によって定まるものであり、分子内のイミド構造の比率が50.5%、アミック酸構造の比率が49.5%であった。
【0145】
合成例2:液晶配向剤用重合体P-2の製造
前記製造例2で製造したDA1-2 5.376gをNMP 74.66gに先に溶かした後、1,3-ジメチル-シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物(DMCBDA) 2.92gを添加して約16時間常温で攪拌した。その後、前記合成例1と同様の方法で重合体P-2を製造した。
【0146】
GPCにより前記重合体P-2の分子量を確認した結果、数平均分子量(Mn)が17,300g/molであり、重量平均分子量(Mw)が34,000g/molであった。そして、重合体P-2は分子内のイミド構造の比率が50.5%、アミック酸構造の比率が49.5%であった。
【0147】
<合成例3から5:第2重合体の合成>
合成例3:液晶配向剤用重合体Q-1
前記製造例3で製造されたジアミンDA2 21.735g(0.109mmol)を無水N-メチルピロリドン(anhydrous N-methyl pyrrolidone:NMP) 236.501gに完全に溶かした。
【0148】
そして、ice bath下でテトラヒドロ-[3,3'-ビフラン]-2,2',5,5'-テトラオン(tetrahydro-[3,3'-bifuran]-2,2',5,5'-tetraone,BT100) 20.0g(0.101mmol)を前記溶液に添加して常温で約16時間攪拌して液晶配向剤用重合体Q-1を製造した。GPCにより前記重合体Q-1の分子量を確認した結果、重量平均分子量(Mw)が26,400g/molであった。
【0149】
合成例4:液晶配向剤用重合体Q-2の製造
前記製造例3で製造されたジアミンDA2 19.211g(0.096mmol)を無水N-メチルピロリドン(anhydrous N-methyl pyrrolidone:NMP) 222.194gに完全に溶かした。
【0150】
そして、ice bath下で1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(1,2,4,5-Cyclohexanetetracarboxylic Dianhydride,CHDA) 20.0g(0.089mmol)を前記溶液に添加して常温で約16時間攪拌して液晶配向剤用重合体Q-2を製造した。GPCにより前記重合体Q-2の分子量を確認した結果、重量平均分子量(Mw)が24,000g/molであった。
【0151】
合成例5:液晶配向剤用重合体Q-3の製造
前記製造例3で製造されたジアミンDA2 19.743g(0.099mmol)を無水N-メチルピロリドン(anhydrous N-methyl pyrrolidone:NMP) 225.213gに完全に溶かした。
そして、ice bath下でピロメリット酸二無水物(pyromellitic dianhydride,PMDA) 20.0g(0.092mmol)を前記溶液に添加して常温で約16時間攪拌して液晶配向剤用重合体Q-3を製造した。GPCにより前記重合体Q-3の分子量を確認した結果、重量平均分子量(Mw)が27,000g/molであった。
【0152】
<合成例6から8:第3重合体の合成>
合成例6:液晶配向剤用重合体R-1
4,4'-オキシジアニリン(4,4'-oxydianiline,ODA) 14.636g(0.073mol)を無水N-メチルピロリドン(anhydrous N-methyl pyrrolidone:NMP) 196.271gに完全に溶かした。
【0153】
そして、ice bath下で3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3',4,4'-Biphenyl Tetracarboxylic Acid Dianhydride,BPDA) 20.0g(0.068mol)を前記溶液に添加して常温で約16時間攪拌して液晶配向剤用重合体R-1を製造した。GPCにより前記重合体R-1の分子量を確認した結果、重量平均分子量(Mw)が27,000g/molであった。
【0154】
合成例7:液晶配向剤用重合体R-2
4,4'-(エタン-1,2-ジイルビス(オキシ))ジアニリン(4,4'-(ethane-1,2-diylbis(oxy))dianiline,EODA) 17.856g(0.073mol)を無水N-メチルピロリドン(anhydrous N-methyl pyrrolidone:NMP) 214.516 gに完全に溶かした。
【0155】
そして、ice bath下で3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3',4,4'-Biphenyl Tetracarboxylic Acid Dianhydride,BPDA) 20.0g(0.068mol)を前記溶液に添加して常温で約16時間攪拌して液晶配向剤用重合体R-2を製造した。GPCにより前記重合体R-2の分子量を確認した結果、重量平均分子量(Mw)が28,300g/molであった。
【0156】
合成例8:液晶配向剤用重合体R-3
4,4'-メチレンジアニリン(4,4'-Methylenedianiline,MDA) 14.492g(0.073mol)を無水N-メチルピロリドン(anhydrous N-methyl pyrrolidone:NMP) 195.455gに完全に溶かした。
【0157】
そして、ice bath下で3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3',4,4'-Biphenyl Tetracarboxylic Acid Dianhydride,BPDA) 20.0g(0.068mol)を前記溶液に添加して常温で約16時間攪拌して液晶配向剤用重合体R-3を製造した。GPCにより前記重合体R-3の分子量を確認した結果、重量平均分子量(Mw)が23,700g/molであった。
【0158】
<実施例および比較例:液晶配向剤組成物の製造>
実施例1:液晶配向剤組成物の製造
NMP、GBL、2-ブトキシエタノールの混合溶媒に下記表2に示すような組成で第1重合体、第2重合体および第3重合体を溶かして得られた溶液を得た。そして、前記溶液に架橋剤として前記製造例4で得られたN1,N1,N6,N6-tetrakis(2-(trimethylsilyloxy)ethyl)adipamideを全体溶液を基準5重量%で添加した後25℃で16時間攪拌した。ポリ(テトラフルオレンエチレン)材質の気孔サイズが0.1μmであるフィルタで加圧濾過して液晶配向剤組成物を製造した。
【0159】
実施例2:液晶配向剤組成物の製造
下記表2に示すような組成で、架橋剤を全体溶液を基準10重量%で添加したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で液晶配向剤組成物を製造した。
【0160】
比較例1:液晶配向剤組成物の製造
前記製造例4の架橋剤を添加しなかったことを除いては、前記実施例1と同様の方法で液晶配向剤組成物を製造した。
【0161】
比較例2:液晶配向剤組成物の製造
前記製造例4の架橋剤の代わりに、比較製造例1のN,N,N',N'-Tetrakis(2-hydroxyethyl)adipamideを添加したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で液晶配向剤組成物を製造した。
【表2】
【0162】
<実験例>
液晶配向セルの製造
前記実施例および比較例で製造した液晶配向剤組成物を用いて液晶配向セルを製造した。
【0163】
具体的には、2.5cmX2.7cmの大きさを有する四角形ガラス基板上に厚さ60nm、面積1cmX1cmのITO電極がパターンされた電圧保有率(VHR)用上・下基板それぞれにスピンコート方式で液晶配向剤組成物を塗布した。次いで、液晶配向剤が塗布された基板を約80℃のホットプレートの上に置いて3分間乾燥して溶媒を蒸発させた。
【0164】
このように得られた塗膜を配向処理するために、上/下板それぞれの塗膜に線偏光子が付着した露光機を用いて254nmの紫外線を約0.1~1J/cm2の露光量で照射した。その後、配向処理された上/下板を約230℃のオーブンで30分間焼成(硬化)して膜厚さ0.1μmの塗膜を得た。その後、4.5μm大きさのボールスペーサが含浸されたシール剤(sealing agent)を液晶注入口を除いた上板の縁に塗布した。そして、上板および下板に形成された配向膜が互いに対向して配向方向が互いに並ぶように整列させた後、上下板を合着してシール剤をUVおよび熱硬化することによって空のセルを製造した。そして、前記空のセルに液晶を注入して注入口をシール剤で密封し、液晶配向セルを製造した。
【0165】
1)液晶配向性の評価
前記製造した液晶配向セルの上板および下板に偏光板を互いに垂直になるように付着した。そして、偏光板が付着した液晶配向セルを明るさ7,000cd/m2のバックライトの上に置いて肉眼で光漏れを観察した。この時、液晶配向膜の配向特性に優れ、液晶をよく配列させれば互いに垂直に付着した上、下の評光板によって光が通過せず不良なしで暗く観察される。このような場合の配向特性を「良好」と、液晶の流れ跡や輝点のような光漏れが観察される場合「不良」と評価し、その結果を下記表3に示した。
【0166】
2)電圧保持率(voltage holding ratio,VHR)の測定
前記製造した液晶配向セルの電気的特性である電圧保持率(voltage holding ratio,VHR)をTOYO corporationの6254C装備を用いて測定した。電圧保持率(VHR)は、1Hz、60℃温度で測定した(VHR 60度1Hz p-LC条件)。前記液晶配向セルの電圧保持率(VHR)に対する測定結果は下記表3に示した。
【0167】
3)配向安定性の評価(AC残像)
前記製造した液晶配向セルの上板および下板に偏光板を互いに垂直になるように付着した。前記偏光板が付着された液晶セルを7,000cd/m2のバックライトの上に付着してブラック状態の輝度を輝度明るさの測定装備であるPR-788装備を用いて測定した。そして、前記液晶セルを常温で交流電圧7Vで120時間駆動した。その後、液晶セルの電圧をオフ状態で上述した内容と同様にブラック状態の輝度を測定した。液晶セルの駆動前に測定された初期輝度(L0)と駆動後に測定された後の輝度(L1)との間の差を初期輝度(L0)値で除して100を乗じた輝度変動率を計算した。このように計算した輝度変動率は0%に近いほど配向安定性に優れることを意味する。このような輝度変化率の測定結果により次の基準下で残像水準を評価した。AC残像は最小化することが好ましく、測定結果において輝度変動率が5%未満の場合「優秀」、輝度変動率が5%~10%の場合「普通」、輝度変動率が10%を超える場合「不良」と評価し、その結果を下記表3に示した。
【0168】
4)膜強度
前記実施例および比較例で得られた液晶配向膜に対し、前記液晶配向膜の表面をsindo engineering社のrubbing machineを用いて1000rpmで回転させながらラビング処理した後ヘイズメータ(hazemeter)を用いてヘイズ値を測定し、下記数式1のようにラビング処理前のヘイズ値との差を計算して膜強度を評価した。前記ヘイズ変化値が小さいほど膜強度に優れるものである。
[数式1]
膜強度=ラビング処理後の液晶配向膜のヘイズ-ラビング処理前の液晶配向膜のヘイズ。
【0169】
5)イミド化転換率(%)
前記実施例および比較例の液晶配向剤組成物から得られた液晶配向膜に対し、ATR法でFT-IRスペクトルを測定し、前記配向膜に含まれた重合体分子内のイミド構造比率を測定した。
【表3】
【0170】
前記表3に示すように、組成物内にポリイミド系重合体とともに製造例4の架橋剤が含有された実施例の液晶配向剤組成物は、ラビング処理前後のヘイズ変化値が1%~2%で非常に低いため優れた膜強度を示すと同時にイミド化転換率が98%以上であることを確認することができた。
【0171】
反面、製造例4の架橋剤が含まれなかった比較例1の液晶配向剤組成物から得られた配向膜は、ラビング処理前後のヘイズ変化値が50%に急増して膜強度が非常に不良であることを確認することができた。また、輝度変動率が5%~10%であり、本願の実施例と比較して劣ることを確認することができた。
【0172】
一方、比較例2の液晶配向剤組成物で使用された比較製造例1の架橋剤の場合、イミド化転換率が95%であり、前記実施例に比べて減少したことが分かった。また、比較例2の液晶配向剤組成物から得られた配向膜はラビング処理前後のヘイズ変化値が3%であり、前記実施例に比べて膜強度が不良であることを確認することができた。それだけでなく、輝度変動率が5%~10%であり、本願の実施例と比較して配向安定性が劣り、液晶配向性も不良であることを確認することができた。