(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-08
(45)【発行日】2022-07-19
(54)【発明の名称】穿刺針、超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20220711BHJP
A61B 10/02 20060101ALI20220711BHJP
【FI】
A61B8/14
A61B10/02
(21)【出願番号】P 2020566101
(86)(22)【出願日】2019-09-09
(86)【国際出願番号】 JP2019035306
(87)【国際公開番号】W WO2020148938
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2021-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2019006254
(32)【優先日】2019-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】松本 剛
(72)【発明者】
【氏名】井上 知己
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-027513(JP,A)
【文献】特表2016-516469(JP,A)
【文献】特開2013-116288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
A61B 10/00 - 10/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト部と、
前記シャフト部の先端に配置された針先端部と、
前記シャフト部の長さ方向に沿って前記シャフト部の外周部に配列され且つ配置間隔が前記針先端部に向かって漸減する等差数列を形成する複数の加工部と
を備え、
前記複数の加工部のうち前記針先端部から定められた距離だけ離れ且つ前記針先端部に最も近い第1加工部と前記針先端部から2番目に近い第2加工部との配置間隔が、前記等差数列の公差以下である、または、前記針先端部から前記針先端部に最も近い第1加工部までの距離が、前記等差数列の公差以下で且つ前記第1加工部と前記針先端部から2番目に近い第2加工部との配置間隔と前記公差の差に等しい穿刺針。
【請求項2】
前記複数の加工部は、前記シャフト部の周を囲むように形成された溝である請求項1に記載の穿刺針。
【請求項3】
請求項1または2に記載の前記穿刺針が撮像されている超音波画像を表示する表示部と、
前記超音波画像を画像解析することにより前記穿刺針の前記複数の加工部を認識し且つ前記複数の加工部の配置間隔を検出する配置間隔検出部と、
前記配置間隔検出部により検出された前記複数の加工部の配置間隔が等差数列を形成しているか否かを判定する等差数列判定部と、
前記等差数列判定部により前記等差数列が形成されていると判定された場合に、前記等差数列の公差を算出し且つ前記公差に基づいて前記複数の加工部のうち前記針先端部に最も近い第1加工部を検出する第1加工部検出部と、
前記第1加工部検出部により検出された前記第1加工部の位置に基づいて前記針先端部の位置を推定する針先端部位置推定部と
を備えた超音波診断装置。
【請求項4】
前記針先端部位置推定部は、
前記穿刺針の前記第1加工部と前記第2加工部との配置間隔が、前記等差数列の公差以下である場合に、前記第1加工部から前記定められた距離だけ前記シャフト部の先端側に延ばした点を前記針先端部の位置と推定し、
前記穿刺針の前記針先端部から前記第1加工部までの距離が、前記等差数列の公差以下で且つ前記第1加工部と前記第2加工部との配置間隔と前記公差の差に等しい場合に、前記第1加工部から、前記第1加工部と前記第2加工部との配置間隔と前記公差の差だけ前記シャフト部の先端側に延ばした点を前記針先端部の位置と推定する請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記針先端部位置推定部は、推定された前記針先端部の位置を前記表示部に表示する請求項3または4に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
超音波プローブと、
前記超音波プローブから被検体に向けて超音波ビームの送受信を行って前記超音波画像を取得する画像取得部とをさらに有し、
前記表示部は、前記画像取得部により取得された前記超音波画像を表示し、
前記配置間隔検出部は、前記画像取得部により取得された前記超音波画像を画像解析することにより前記穿刺針の前記複数の加工部を認識し且つ前記複数の加工部の配置間隔を検出する請求項3~5のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
請求項1または2に記載の前記穿刺針が撮像されている超音波画像を表示し、
前記超音波画像を画像解析することにより前記穿刺針の前記複数の加工部を認識し且つ前記複数の加工部の配置間隔を検出し、
検出された前記複数の加工部の配置間隔が等差数列を形成しているか否かを判定し、
前記等差数列が形成されていると判定された場合に、前記等差数列の公差を算出し且つ前記公差に基づいて前記複数の加工部のうち前記針先端部に最も近い第1加工部を検出し、
検出された前記第1加工部の位置に基づいて前記針先端部の位置を推定する超音波診断装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穿刺針、被検体内に挿入された穿刺針を検出する超音波診断装置およびその超音波診断装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体内にカテーテルを留置する等のために、被検体内にいわゆる穿刺針を挿入する手技が存在する。近年では、超音波診断装置を用いて被検体内に挿入された穿刺針を観察しながら、被検体内に穿刺針を挿入する方法が用いられることが多い。
【0003】
超音波診断装置は、一般的に、複数の素子が配列された振動子アレイが備えられた超音波プローブを備えており、超音波プローブを被検体の体表に接触させた状態において、振動子アレイから被検体内に向けて超音波ビームが送信され、被検体からの超音波エコーを振動子アレイにおいて受信して素子データが取得される。さらに、超音波診断装置は、得られた素子データを電気的に処理して、被検体の当該部位に対する超音波画像を生成する。
【0004】
ここで、穿刺針は、通常、被検体の体表に対して傾斜した状態で挿入されるため、被検体内の穿刺針から反射された超音波エコーが超音波プローブに向かって伝搬し難く、穿刺針が超音波画像に明確に描出されないことがあった。そこで、超音波画像に穿刺針を明確に描出するために、例えば、特許文献1に開示されるように、超音波プローブからの超音波ビームを反射するための加工が施された穿刺針が開発されている。特許文献1の穿刺針の外周部には、超音波ビームを反射するための複数の溝が形成されている。特許文献1の穿刺針が被検体内に挿入され、挿入された穿刺針に対して超音波ビームが照射されると、照射された超音波ビームは、穿刺針に形成された複数の溝で反射されて、超音波プローブに向かって伝搬する。これにより、超音波画像において、穿刺針に形成された複数の溝が描出される。また特許文献2に開示されるように、穿刺針の表面の一部に光吸収部分を設けることにより、穿刺針の位置を確認することもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-125632号公報
【文献】特許5635462号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、鋭く尖る穿刺針の先端部には、溝を形成することができないため、医師等のユーザは、穿刺針の複数の溝を描出した超音波画像を観察しても、穿刺針の先端部を明確に把握することができず、所望の箇所に穿刺針の先端部を導くことが困難な場合があった。
また、被検体内の組織に由来する高強度の反射信号、音響陰影等により、超音波画像上の穿刺針の溝が隠蔽される、または、消失することがあった。これにより、穿刺針における溝の位置が特定されず、ユーザが穿刺針の先端部の位置を推定することも困難なことがあった。また特許文献2のように穿刺針の表面の一部に光吸収部分を設けると、穿刺針のコストが高くなってしまう。
【0007】
本発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたものであり、ユーザが穿刺針の先端部を精確に把握することができる穿刺針、超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の穿刺針は、シャフト部と、シャフト部の先端に配置された針先端部と、シャフト部の長さ方向に沿ってシャフト部の外周部に配列され且つ配置間隔が針先端部に向かって漸減する等差数列を形成する複数の加工部とを備え、複数の加工部のうち針先端部から定められた距離だけ離れ且つ針先端部に最も近い第1加工部と針先端部から2番目に近い第2加工部との配置間隔が、等差数列の公差以下である、または、針先端部から針先端部に最も近い第1加工部までの距離が、等差数列の公差以下で且つ第1加工部と針先端部から2番目に近い第2加工部との配置間隔と公差の差に等しいことを特徴とする。
複数の加工部は、シャフト部の周を囲むように形成された溝であることが好ましい。
【0009】
本発明の超音波診断装置は、上記の穿刺針が撮像されている超音波画像を表示する表示部と、超音波画像を画像解析することにより穿刺針の複数の加工部を認識し且つ複数の加工部の配置間隔を検出する配置間隔検出部と、配置間隔検出部により検出された複数の加工部の配置間隔が等差数列を形成しているか否かを判定する等差数列判定部と、等差数列判定部により等差数列が形成されていると判定された場合に、等差数列の公差を算出し且つ公差に基づいて複数の加工部のうち針先端部に最も近い第1加工部を検出する第1加工部検出部と、第1加工部検出部により検出された第1加工部の位置に基づいて針先端部の位置を推定する針先端部位置推定部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
ここで、針先端部位置推定部は、穿刺針の第1加工部と第2加工部との配置間隔が、等差数列の公差以下である場合に、第1加工部から定められた距離だけシャフト部の先端側に延ばした点を針先端部の位置と推定し、穿刺針の針先端部から第1加工部までの距離が、等差数列の公差以下で且つ第1加工部と第2加工部との配置間隔と公差の差に等しい場合に、第1加工部から、第1加工部と第2加工部との配置間隔と公差の差だけシャフト部の先端側に延ばした点を針先端部の位置と推定することができる。
【0011】
また、針先端部位置推定部は、推定された針先端部の位置を表示部に表示することが好ましい。
また、超音波診断装置は、超音波プローブと、超音波プローブから被検体に向けて超音波ビームの送受信を行って超音波画像を取得する画像取得部とをさらに有し、この際に、表示部は、画像取得部により取得された超音波画像を表示し、配置間隔検出部は、画像取得部により取得された超音波画像を画像解析することにより穿刺針の複数の加工部を認識し且つ複数の加工部の配置間隔を検出することができる。
【0012】
本発明の超音波診断装置の制御方法は、上記の穿刺針が撮像されている超音波画像を表示し、超音波画像を画像解析することにより穿刺針の複数の加工部を認識し且つ複数の加工部の配置間隔を検出し、検出された複数の加工部の配置間隔が等差数列を形成しているか否かを判定し、等差数列が形成されていると判定された場合に、等差数列の公差を算出し且つ公差に基づいて複数の加工部のうち針先端部に最も近い第1加工部を検出し、検出された第1加工部の位置に基づいて針先端部の位置を推定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、穿刺針は、シャフト部と、シャフト部の先端に配置された針先端部と、シャフト部の長さ方向に沿ってシャフト部の外周部に配列され且つ配置間隔が針先端部に向かって漸減する等差数列を形成する複数の加工部とを備え、複数の加工部のうち針先端部から定められた距離だけ離れ且つ針先端部に最も近い第1加工部と針先端部から2番目に近い第2加工部との配置間隔が、等差数列の公差以下である、または、針先端部から針先端部に最も近い第1加工部までの距離が、等差数列の公差以下で且つ第1加工部と針先端部から2番目に近い第2加工部との配置間隔と公差の差に等しいため、ユーザが穿刺針の先端部を精確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る穿刺針を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態1に係る穿刺針が被検体内に挿入されると共に、穿刺針に対して超音波ビームが照射されている様子を模式的に示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態1に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の実施の形態1における受信部の構成を示すブロック図である。
【
図5】本発明の実施の形態1における画像生成部の構成を示すブロック図である。
【
図6】本発明の実施の形態1における超音波診断装置の動作を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の実施の形態1において1つの加工部が超音波画像に描出されていない様子を模式的に示す図である。
【
図8】本発明の実施の形態1において2つの加工部が超音波画像に描出されていない様子を模式的に示す図である。
【
図9】本発明の実施の形態1において超音波画像上に針先端部の位置が表示されている様子を模式的に示す図である。
【
図10】本発明の実施の形態2に係る穿刺針を示す図である。
【
図11】本発明の実施の形態2における超音波診断装置の動作を示すフローチャートである。
【
図12】本発明の実施の形態3に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
【0016】
実施の形態1
図1に、本発明の実施の形態1に係る穿刺針N1を示す。穿刺針N1は、被検体内にカテーテル、薬剤を留置する等のために被検体内に挿入されるものであり、シャフト部Sと、シャフト部Sの先端部を斜めに切り欠くことで形成されてシャフト部Sの先端に配置された鋭い針先端部Tとを備えている。シャフト部Sには、シャフト部Sの周を囲むように形成された溝からなる複数の加工部P1~P7が、シャフト部Sの長さ方向に沿って配列形成されている。また、第1加工部P1~第2加工部P2間の配置間隔L1、第2加工部P2~第3加工部P3間の配置間隔L2、第3加工部P3~第4加工部P4間の配置間隔L3、第4加工部P4~第5加工部P5間の配置間隔L4、第5加工部P5~第6加工部P6間の配置間隔L5、第6加工部P6~第7加工部P7間の配置間隔L6は、針先端部Tに向かって漸減する等差数列を形成している。ここにおいて、配置間隔が等差数列を形成とは、配置間隔の値が等差数列を形成していることをいい、配置間隔L1~L6の値が整数であって、例えばmmといった特定の単位に揃えた場合、それらの値が等差数列を形成していることをいう。そのため、複数の加工部P1~P7の配置間隔L1~L6において、互いに隣接する配置間隔の差は、いわゆる等差数列の公差であり、それぞれ、同一の値を有している。
【0017】
また、複数の加工部P1~P7のうち、針先端部Tから定められた距離Kだけ離れ且つ針先端部Tに最も近い第1加工部P1と針先端部Tから2番目に近い第2加工部P2との配置間隔L1は、複数の加工部P1~P7の配置間隔により形成される等差数列の公差以下となるように設計されている。例えば、第1加工部P1~第2加工部P2間の配置間隔L1を5mm、第2加工部P2~第3加工部P3間の配置間隔L2を10mm、第3加工部P3~第4加工部P4間の配置間隔L3を15mm、第4加工部P4~第5加工部P5間の配置間隔L4を20mm、第5加工部P5~第6加工部P6間の配置間隔L5を25mm、第6加工部P6~第7加工部P7間の配置間隔L6を30mmとして、第1加工部P1~第7加工部P7により、公差5mmの等差数列が形成され且つ第1加工部P1~第2加工部P2間の配置間隔L1が公差5mmに等しくなるように、第1加工部P1~第7加工部P7が形成されることができる。
【0018】
また、
図1に示すように、針先端部Tは、シャフト部Sの先端部が斜めに切り欠かかれることにより形成されるため、シャフト部Sの先端部分には、シャフト部Sの伸長方向に対して所定の傾斜角度だけ傾斜した傾斜面Eが形成されており、第1加工部P1は、傾斜面Eよりもシャフト部Sの基端側に形成されている。そのため、第1加工部P1の形成位置は、シャフト部Sの外径、シャフト部Sの伸長方向に対する傾斜面Eの傾斜角度等、穿刺針N1の仕様に従って、適宜、設定されることができる。
【0019】
以上のような本発明の実施の形態1に係る穿刺針N1は、
図2に示すように、被検体内に挿入された状態で、被検体の体表Bに接触する超音波プローブ2から超音波ビームを照射される。照射された超音波ビームは複数の加工部P1~P7で反射され、反射された超音波ビームが超音波プローブ2に向かって伝搬する。これにより、超音波プローブ2により穿刺針N1が撮影された場合に、穿刺針N1の複数の加工部P1~P7が、超音波画像に描出される。
【0020】
ここで、本発明の実施の形態1に係る穿刺針N1においては、傾斜面Eよりもシャフト部Sの基端側に第1加工部P1が形成されているため、穿刺針N1の中心軸まわりの回転角度に関わらず、第1加工部P1が超音波画像に描出されることができる。
【0021】
次に、本発明の実施の形態1に係る超音波診断装置1について説明する。超音波診断装置1は、被検体内に挿入された穿刺針N1を撮像するものである。
図3に示すように、超音波診断装置1は、振動子アレイ2Aを内蔵する超音波プローブ2を備えており、振動子アレイ2Aに送信部3および受信部4が接続されている。受信部4には、画像生成部5、表示制御部6および表示部7が順次接続されている。ここで、送信部3、受信部4、画像生成部5により画像取得部8が構成されている。また、画像生成部5に配置間隔検出部9が接続されており、配置間隔検出部9に、等差数列判定部10および第1加工部検出部11が接続されている。また、等差数列判定部10に、表示制御部6と第1加工部検出部11が接続されている。また、第1加工部検出部11に、針先端部位置推定部12が接続され、針先端部位置推定部12に、表示制御部6が接続されている。
【0022】
さらに、表示制御部6、画像取得部8、配置間隔検出部9、等差数列判定部10、第1加工部検出部11、針先端部位置推定部12に、装置制御部13が接続されており、装置制御部13に、入力部14および格納部15が接続されている。ここで、装置制御部13と格納部15とは、双方向に情報の受け渡しが可能に接続されている。
また、表示制御部6、画像取得部8、配置間隔検出部9、等差数列判定部10、第1加工部検出部11、針先端部位置推定部12および装置制御部13により、プロセッサ16が構成されている。
【0023】
図3に示す超音波プローブ2の振動子アレイ2Aは、1次元または2次元に配列された複数の振動子を有している。これらの振動子は、それぞれ送信部3から供給される駆動信号に従って超音波を送信すると共に、被検体からの超音波エコーを受信して受信信号を出力する。各振動子は、例えば、PZT(Lead Zirconate Titanate:チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミック、PVDF(Poly Vinylidene Di Fluoride:ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子圧電素子およびPMN-PT(Lead Magnesium Niobate-Lead Titanate:マグネシウムニオブ酸鉛-チタン酸鉛固溶体)に代表される圧電単結晶等からなる圧電体の両端に電極を形成することにより構成される。
【0024】
画像取得部8の送信部3は、例えば、複数のパルス発生器を含んでおり、装置制御部13からの制御信号に応じて選択された送信遅延パターンに基づいて、振動子アレイ2Aの複数の振動子から送信される超音波が超音波ビームを形成するように、それぞれの駆動信号を、遅延量を調節して複数の振動子に供給する。このように、振動子アレイ2Aの複数の振動子の電極にパルス状または連続波状の電圧が印加されると、圧電体が伸縮し、それぞれの振動子からパルス状または連続波状の超音波が発生して、それらの超音波の合成波から、超音波ビームが形成される。
【0025】
送信された超音波ビームは、例えば、被検体の部位等の対象において反射され、超音波プローブ2の振動子アレイ2Aに向かって伝搬する。このように振動子アレイ2Aに向かって伝搬する超音波エコーは、振動子アレイ2Aを構成するそれぞれの振動子により受信される。この際に、振動子アレイ2Aを構成するそれぞれの振動子は、伝搬する超音波エコーを受信することにより伸縮して電気信号を発生させ、これらの電気信号を受信部4に出力する。
【0026】
画像取得部8の受信部4は、装置制御部13からの制御信号に従って、振動子アレイ2Aから出力される信号の処理を行う。
図4に示すように、受信部4は、増幅部17およびAD(Analog Digital)変換部18が直列接続された構成を有している。増幅部17は、振動子アレイ2Aを構成するそれぞれの振動子から入力された信号を増幅し、増幅した信号をAD変換部18に送信する。AD変換部18は、増幅部17から送信された信号をデジタル化された受信信号に変換し、これらのデータを画像取得部8の画像生成部5に送出する。
【0027】
画像取得部8の画像生成部5は、
図5に示すように、信号処理部19、DSC(Digital Scan Converter:デジタルスキャンコンバータ)20および画像処理部21が、順次、直列に接続された構成を有している。信号処理部19は、装置制御部13からの制御信号に応じて選択された受信遅延パターンに基づき、受信信号の各データにそれぞれの遅延を与えて加算(整相加算)を施す、受信フォーカス処理を行う。この受信フォーカス処理により、超音波エコーの焦点が1つの走査ラインに絞り込まれた音線信号が生成される。また、信号処理部19は、生成された音線信号に対して、超音波が反射した位置の深度に応じて伝搬距離に起因する減衰の補正を施した後、包絡線検波処理を施して、被検体内の組織を表すBモード画像信号を生成する。このように生成されたBモード画像信号は、DSC20に出力される。
【0028】
画像生成部5のDSC20は、Bモード画像信号を通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号にラスター変換して超音波画像を生成する。画像生成部5の画像処理部21は、DSC20において得られた超音波画像に対して、明るさ補正、諧調補正、シャープネス補正および色補正等の各種の必要な画像処理を施した後、超音波画像を表示制御部6および配置間隔検出部9に出力する。
【0029】
プロセッサ16の配置間隔検出部9は、穿刺針N1が撮像されている超音波画像を画像解析することにより、穿刺針N1の複数の加工部P1~P7を認識し、複数の加工部P1~P7のそれぞれの配置間隔を検出する。
プロセッサ16の等差数列判定部10は、配置間隔検出部9により検出された複数の加工部P1~P7の配置間隔が等差数列を形成しているか否かを判定する。等差数列判定部10は、例えば、配置間隔検出部9により検出された複数の配置間隔が、複数の加工部P1~P7の配列方向に沿った一方向に向かって、一定の長さだけ漸減しているか否かを判定することにより、複数の加工部P1~P7の配置間隔が等差数列を形成しているか否かを判定することができる。なお、実際に検出された値が例えば、配置間隔L1が4.9mm、配置間隔L2が10.1mm、配置間隔L3が14.9mmといった場合でも、値を整数値に近似して等差数列を形成しているか否かを判定してよい。
【0030】
プロセッサ16の第1加工部検出部11は、等差数列判定部10による判定結果に基づいて、配置間隔検出部9により検出された複数の配置間隔を用いて、穿刺針N1の複数の加工部P1~P7のうち針先端部Tに最も近い第1加工部P1を検出する。この際に、第1加工部検出部11は、等差数列判定部10により等差数列が形成されていると判定された場合に、その等差数列の公差を算出し、算出された公差に基づいて第1加工部P1を検出する。
【0031】
ここで、例えば、被検体内の組織に由来する高強度の反射信号、および、いわゆる音響陰影等により、超音波画像において穿刺針N1の複数の加工部P1~P7のいずれかが隠蔽される、または、消失することがある。この場合には、等差数列判定部10により、等差数列が形成されていないと判定されるが、この際に、第1加工部検出部11は、配置間隔検出部9により検出された複数の配置間隔に基づいて、高強度の反射信号および音響陰影等により隠蔽された、または、消失した加工部を推定して、複数の加工部P1~P7の配置間隔により形成される等差数列の公差を算出し、算出された公差に基づいて第1加工部P1を検出する。
【0032】
プロセッサ16の針先端部位置推定部12は、第1加工部検出部11により検出された第1加工部P1の位置に基づいて針先端部Tの位置を推定し、推定された針先端部Tの位置を表示部7に表示する。例えば、針先端部位置推定部12は、配置間隔検出部9により検出された穿刺針N1の第1加工部P1と第2加工部P2との配置間隔L1が、第1加工部検出部11により算出された公差以下である場合に、シャフト部Sの長さ方向に沿って、第1加工部P1から定められた距離Kだけシャフト部Sの先端側に延ばした点を針先端部の位置と推定する。
ここで、針先端部位置推定部12は、定められた距離Kとして、例えば、予め記憶している値を用いることができ、入力部14を介してユーザにより入力された値を用いることもできる。
【0033】
プロセッサ16の装置制御部13は、格納部15等に予め記録されているプログラムおよび入力部14を介したユーザの入力操作に基づいて、超音波診断装置1の各部の制御を行う。
プロセッサ16の表示制御部6は、装置制御部13の制御の下、画像取得部8の画像生成部5により生成された超音波画像、針先端部位置推定部12により推定された針先端部Tの位置等を表示部7に表示させる。
【0034】
超音波診断装置1の表示部7は、画像取得部8により生成された超音波画像、針先端部位置推定部12により推定された針先端部Tの位置等を表示するものであり、例えば、LCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)、有機ELディスプレイ(Organic Electroluminescence Display)等のディスプレイ装置を含む。
超音波診断装置1の入力部14は、ユーザが入力操作を行うためのものであり、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパッドおよびタッチパネル等を備えて構成することができる。
【0035】
格納部15は、超音波診断装置1の動作プログラム等を格納するもので、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disc Drive:ハードディスクドライブ)、SSD(Solid State Drive:ソリッドステートドライブ)、FD(Flexible Disc:フレキシブルディスク)、MOディスク(Magneto-Optical disc:光磁気ディスク)、MT(Magnetic Tape:磁気テープ)、RAM(Random Access Memory:ランダムアクセスメモリ)、CD(Compact Disc:コンパクトディスク)、DVD(Digital Versatile Disc:デジタルバーサタイルディスク)、SDカード(Secure Digital card:セキュアデジタルカード)、USBメモリ(Universal Serial Bus memory:ユニバーサルシリアルバスメモリ)等の記録メディア、またはサーバ等を用いることができる。
【0036】
なお、表示制御部6、画像取得部8、配置間隔検出部9、等差数列判定部10、第1加工部検出部11、針先端部位置推定部12および装置制御部13を有するプロセッサ16は、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)、および、CPUに各種の処理を行わせるための制御プログラムから構成されるが、FPGA(Field Programmable Gate Array:フィードプログラマブルゲートアレイ)、DSP(Digital Signal Processor:デジタルシグナルプロセッサ)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit:アプリケーションスペシフィックインテグレイテッドサーキット)、GPU(Graphics Processing Unit:グラフィックスプロセッシングユニット)、その他のIC(Integrated Circuit:集積回路)を用いて構成されてもよく、もしくはそれらを組み合わせて構成されてもよい。
【0037】
また、プロセッサ16の表示制御部6、画像取得部8、配置間隔検出部9、等差数列判定部10、第1加工部検出部11、針先端部位置推定部12および装置制御部13を部分的にあるいは全体的に1つのCPU等に統合させて構成することもできる。
【0038】
次に、
図6に示すフローチャートを用いて、実施の形態1における超音波診断装置1の動作を詳細に説明する。
まず、ステップS1において、入力部14を介してユーザにより、穿刺針N1の情報である針情報が入力される。ここで入力される針情報には、針先端部Tから第1加工部P1までの定められた距離Kが含まれる。
【0039】
続くステップS2において、
図2に示すように、被検体の体表Bに接触する超音波プローブ2から被検体内の穿刺針N1に向けて超音波ビームが照射され、超音波画像が撮像される。この際に、被検体および穿刺針N1からの超音波エコーが超音波プローブ2の振動子アレイ2Aにより受信されて受信信号が生成され、生成された受信信号が受信部4の増幅部17において増幅され、また、A/D変換部18においてA/D変換がなされる。さらに、A/D変換がなされた受信信号は、画像生成部5に出力され、画像生成部5により、受信信号に基づいて超音波画像が生成される。
【0040】
ステップS3において、配置間隔検出部9は、ステップS2で生成された超音波画像を画像解析することにより穿刺針N1の複数の加工部P1~P7を認識し、複数の加工部P1~P7の配置間隔を検出する。
ステップS4において、等差数列判定部10は、ステップS3で検出された複数の配置間隔が等差数列を形成しているか否かを判定する。複数の配置間隔が等差数列を形成しているとステップS4で判定された場合には、ステップS5に進む。
【0041】
ステップS5において、第1加工部検出部11は、ステップS3で検出された複数の配置間隔から等差数列の公差を算出し、算出された公差以下の配置間隔を第1加工部P1と第2加工部P2との間の配置間隔L1として特定することにより、第1加工部P1を検出する。
ここで、ステップS3で検出された複数の配置間隔は、超音波画像に描出された複数の加工部P1~P7の配列方向に沿って、等差数列を形成するように並んでいるため、穿刺針N1の基端側の配置間隔から公差を引いた長さは、穿刺針N1の針先端部T側に隣接する配置間隔の長さに等しい。したがって、公差以下の長さを有する配置間隔が検出された場合には、その配置間隔よりも穿刺針N1の針先端部T側に隣接する配置間隔は存在しないことになり、公差以下の長さを有する配置間隔は、針先端部Tに最も近い第1加工部P1と針先端部Tから2番目に近い第2加工部P2との配置間隔L1であることがわかる。すなわち、第1加工部検出部11は、公差以下の配置間隔を配置間隔L1として特定することにより、第1加工部P1を検出することができる。
【0042】
また、ステップS4において、等差数列判定部10により、等差数列が形成されていないと判定された場合には、ステップS6に進む。
ここで、例えば、被検体内の組織に由来する高強度の反射信号、および、いわゆる音響陰影等により、超音波画像において穿刺針N1の複数の加工部P1~P7のいずれかが隠蔽される、または、消失する等、一部が描出されないことがある。本発明の実施の形態1に係る穿刺針N1が被検体内に挿入されている場合には、超音波画像において穿刺針N1の複数の加工部P1~P7の一部が描出されていなくても、描出されていない加工部が推定可能なことがある。
【0043】
例えば、
図7に示すように、複数の加工部P1~P7のうち第4加工部P4が超音波画像に描出されていない場合には、第1加工部P1~第2加工部P2間の配置間隔L1、第2加工部P2~第3加工部P3間の配置間隔L2、第3加工部P3~第5加工部P5間の配置間隔L35、第5加工部P5~第6加工部P6間の配置間隔L5、第6加工部P6~第7加工部P7間の配置間隔L6がステップS3で検出される。この場合には、連続する3つの加工部P1、P2、P3間における配置間隔L1と配置間隔L2との差、連続する3つの加工部P5、P6、P7間における配置間隔L5と配置間隔L6との差により公差が算出できる。さらに、算出された公差により、第3加工部P3~第5加工部P5間の配置間隔L35が、第3加工部P3~第4加工部P4間の配置間隔L3と、第4加工部P4~第5加工部P5間の配置間隔L4との和であることが推定される。最後に、推定された配置間隔L3、L4と、ステップS3で推定された配置間隔L1、L2、L5、L6が等差数列を形成していることが確認されることにより、超音波画像に描出されていない加工部P4を精度良く推定することが可能である。
【0044】
また、例えば、
図8に示すように、複数の加工部P1~P7のうち第3加工部P3、第4加工部P4が超音波画像に描出されていない場合には、第1加工部P1~第2加工部P2間の配置間隔L1、第2加工部P2~第5加工部P5間の配置間隔L25、第5加工部P5~第6加工部P6間の配置間隔L5、第6加工部P6~第7加工部P7間の配置間隔L6がステップS3で検出される。この場合には、連続する3つの加工部P5、P6、P7における配置間隔L5と配置間隔L6がステップS3で検出されるため、配置間隔L5と配置間隔L6との差により公差が算出できる。さらに、算出された公差により、第2加工部P2~第5加工部P5間の配置間隔L25が、第2加工部P2~第3加工部P3間の配置間隔L2と、第3加工部P3~第4加工部P4間の配置間隔L3と、第4加工部P4~第5加工部P5間の配置間隔L4との和であることが推定される。最後に、推定された配置間隔L2、L3、L4と、ステップS3で推定された配置間隔L1、L5、L6が等差数列を形成していることが確認されることにより、超音波画像に描出されていない第3加工部P3、第4加工部P4を精度良く推定することが可能である。
【0045】
そこで、ステップS6において等差数列判定部10は、超音波画像に描出されていない加工部が推定可能であるか否かを判定する。超音波画像に描出されていない加工部が推定可能であるとステップS6で判定された場合には、ステップS7に進む。
【0046】
ステップS7において第1加工部検出部11は、ステップS3で検出された複数の配置間隔から等差数列の公差を算出し、算出された公差を用いて、超音波画像に描出されていない加工部を推定する。このようにして、超音波画像に描出されていない加工部が推定されると、ステップS5に進む。
ステップS5において、第1加工部検出部11は、ステップS7で推定された加工部の位置を加味して、複数の加工部P1~P7のそれぞれの配置間隔のうち、ステップS7で算出された公差以下の配置間隔を第1加工部P1と第2加工部P2との間の配置間隔L1として特定することにより、第1加工部P1を検出する。このようにして、第1加工部P1が検出されると、ステップS8に進む。
【0047】
ステップS8において、針先端部位置推定部12は、ステップS5で検出された第1加工部P1から、複数の加工部P1~P7の配列方向、すなわち、穿刺針N1のシャフト部Sの長さ方向に沿って、定められた距離Kだけシャフト部Sの先端側に延ばした点を、針先端部Tの位置と推定する。さらに、針先端部位置推定部12は、推定された針先端部Tの位置を、ステップS2で生成された超音波画像に重畳して表示部7に表示させる。例えば、針先端部位置推定部12は、
図9に示すように、穿刺針N1の針先端部Tの位置を表す先端マークMを超音波画像Uに重畳して表示部7に表示する。
図9に示す例では、先端マークMは、説明のために、黒塗りの丸印で示されている。
このようにしてステップS8の処理が完了すると、超音波診断装置1の動作が終了する。
【0048】
また、ステップS6において、等差数列判定部10により、ステップS3で検出された複数の配置間隔が等差数列を形成することが認められず、超音波画像Uに描出されていない加工部が推定不可能であると判定された場合には、ステップS9に進む。ここで、例えば、複数の加工部P1~P7のうち連続する3つの加工部が超音波画像Uに描出されず、公差が算出できない場合、本発明の実施の形態1の穿刺針N1ではなく、等差数列に従って配列された加工部が形成されていない穿刺針が被検体に挿入されている場合等には、ステップS3で検出された複数の配置間隔が等差数列を形成することが認められない。
【0049】
ステップS9において、等差数列判定部10は、図示しないが、エラーが発生した旨を表示部7に表示する。このようにして、ステップS9の処理が完了すると、超音波診断装置1の動作が終了する。
【0050】
以上から、本発明の実施の形態1に係る穿刺針N1は、針先端部Tに向かって漸減する等差数列を形成する複数の加工部P1~P7を備え、針先端部Tと第1加工部P1との距離が定められた距離Kであり且つ第1加工部P1と第2加工部P2との間の配置間隔が等差数列の公差以下であるため、例えば超音波診断装置1により、針先端部Tの位置が容易に推定され、推定された針先端部Tの位置が表示部7に表示される。これにより、ユーザは、表示部7を確認することで、穿刺針N1の針先端部Tの位置を精確に把握することができる。
【0051】
また、本発明の実施の形態1に係る超音波診断装置1によれば、超音波画像Uを画像解析することにより複数の加工部P1~P7を認識して複数の加工部P1~P7の配置間隔を検出し、検出された複数の配置間隔が等差数列を形成しているか否かを判定し、等差数列の公差を算出し、算出された公差に基づいて第1加工部P1を検出し、検出された第1加工部P1の位置に基づいて針先端部Tの位置を推定するため、精度良く針先端部Tの位置を推定することができる。
【0052】
さらに、本発明の実施の形態1に係る超音波診断装置1によれば、被検体内の組織に由来する高強度の反射信号および音響陰影等により、超音波画像Uにおいて穿刺針N1の複数の加工部P1~P7のいずれかが隠蔽された場合、または、消失した場合でも、第1加工部検出部11により、隠蔽された、または、消失した加工部の位置が推定されるため、精度良く針先端部Tの位置を推定することができる。
【0053】
なお、
図1に示す例では、穿刺針N1の針先端部Tからシャフト部Sの基端部に向かって7つの加工部P1~P7がシャフト部Sに形成されているが、加工部の数は7つに限定されない。シャフト部Sに形成される加工部の数は、7つよりも多くてもよく、例えば、加工部P7より基端部側に、加工部P1~P7と共に等差数列を形成する複数の図示しない加工部を設けることができる。また、加工部の数は、7つよりも少なくてもよく、例えば、6つ、または、5つであってもよい。
【0054】
また、実施の形態1において、第1加工部P1は、穿刺針N1の針先端部T1から定められた距離Kだけ離れた位置に形成されているが、定められた距離Kの長さは、特に限定されない。しかしながら、定められた距離Kが短いほど、すなわち、第1加工部P1が針先端部Tの近くに形成されるほど、第1加工部P1の位置に基づいて針先端部Tの位置が推定される際に穿刺針N1のたわみ等の影響を受けにくいため、針先端部Tの推定精度を向上させることができる。そのため、針先端部Tの推定精度を向上させる観点から、定められた距離Kの長さは、短いほど好ましく、例えば、第1加工部P1~第2加工部P2間の配置間隔L1以下であることが好ましい。
【0055】
また、図示しないが、穿刺針N1のスキャン、穿刺針N1の包装袋に添付されたバーコード等の読み取り等により、穿刺針N1の針情報を取得する針情報取得部を超音波診断装置1に備えることもできる。これにより、例えば、ユーザが、入力部14を介して手動で針情報を入力する手間を省くことができる。
【0056】
実施の形態2
実施の形態1の穿刺針N1では、複数の加工部P1~P7の配置間隔により等差数列が形成されているが、針先端部から第1加工部P1までの距離と、複数の加工部P1~P7のそれぞれの配置間隔とにより等差数列が形成されていてもよい。
【0057】
図10に示すように、本発明の実施の形態2に係る穿刺針N2は、
図1に示す実施の形態1の穿刺針N1と同様に、シャフト部Sと、シャフト部Sの先端に配置された針先端部Tとを備え、シャフト部Sに複数の加工部P1~P5が配列形成されているが、針先端部Tから第1加工部P1までの距離L0と、複数の加工部P1~P5の配置間隔L1~L4とにより、針先端部Tに向かって漸減する等差数列が形成されている。そのため、針先端部Tから第1加工部P1までの距離L0と第1加工部P1~第2加工部P2間の配置間隔L1との差、配置間隔L1~L4において互いに隣接する配置間隔の差は、等差数列の公差であり、それぞれ、同一の値を有している。
【0058】
ここで、針先端部Tから第1加工部P1までの距離L0は、等差数列の公差以下であり、且つ、第1加工部P1と第2加工部P2との間の配置間隔L1と等差数列の公差との差に等しくなるように設定されているものとする。このように、針先端部Tから第1加工部P1までの距離L0と、複数の加工部P1~P5の配置間隔L1~L4が針先端部Tに向かって漸減する等差数列を形成しており、針先端部Tから第1加工部P1までの距離L0が等差数列の公差以下であるため、等差数列の公差と、第1加工部P1と第2加工部P2との間の配置間隔L1と、第1加工部P1の位置を取得することにより、針先端部Tの位置が推定可能である。
【0059】
次に、
図11に示すフローチャートを用いて、穿刺針N2の針先端部Tの位置を推定する超音波診断装置1の動作を説明する。
まず、ステップS2において、
図2に示す態様と同様に、被検体の体表Bに接触する超音波プローブ2から被検体内の穿刺針N2に向けて超音波ビームが照射され、超音波画像Uが撮像される。
【0060】
ステップS3において、配置間隔検出部9は、ステップS2で生成された超音波画像Uを画像解析することにより穿刺針N2の複数の加工部P1~P5を認識し、複数の加工部P1~P5の配置間隔を検出する。
ステップS4において、等差数列判定部10は、ステップS3で検出された複数の配置間隔が等差数列を形成しているか否かを判定する。複数の配置間隔が等差数列を形成しているとステップS4で判定された場合には、ステップS5に進む。
【0061】
ステップS5において、第1加工部検出部11は、ステップS3で検出された複数の配置間隔から等差数列の公差を算出し、算出された公差よりも大きく且つ算出された公差の2倍以下となる配置間隔を、第1加工部P1と第2加工部P2との間の配置間隔L1として特定することにより、第1加工部P1を検出する。
【0062】
ここで、公差よりも大きく且つ公差の2倍以下の配置間隔が検出された場合には、その配置間隔よりも穿刺針N2の針先端部T側に隣接する配置間隔は、公差以下であるため、穿刺針N2の針先端部Tから第1加工部P1までの距離L0に等しいことになる。そのため、公差よりも大きく且つ公差の2倍以下の配置間隔が、針先端部Tに最も近い第1加工部P1と針先端部Tから2番目に近い第2加工部P2との配置間隔L1であることがわかる。すなわち、第1加工部検出部11は、公差よりも大きく且つ公差の2倍以下の配置間隔を配置間隔L1として特定することができ、これにより、第1加工部P1を検出することができる。
このようにして第1加工部P1が検出されると、ステップS8に進む。
【0063】
また、ステップS4において、ステップS3で検出された複数の配置間隔により等差数列が形成されていないと判定された場合には、ステップS6に進む。
ステップS6において、等差数列判定部10は、超音波画像Uに描出されていない加工部が推定可能であるか否かを判定する。超音波画像U上で描出されていない加工部が推定可能であるとステップS6で判定された場合には、ステップS7に進む。
ステップS7において、第1加工部検出部11は、ステップS3で検出された複数の配置間隔から等差数列の公差を算出し、算出された公差を用いて、超音波画像Uに描出されていない加工部を推定する。このようにして超音波画像Uに描出されていない加工部が推定されると、ステップS5に進む。
【0064】
ステップS5において、第1加工部検出部11は、ステップS7で推定された加工部を加味して、複数の加工部P1~P5のそれぞれの配置間隔のうち、配置間隔からステップS7で算出された公差を引いた値が、公差以下となる配置間隔を、第1加工部P1と第2加工部P2との間の配置間隔として特定することにより、第1加工部P1を検出する。
【0065】
ステップS8において、針先端部位置推定部12は、ステップS5で検出された第1加工部P1から、複数の加工部P1~P5の配列方向、すなわち、穿刺針N2のシャフト部Sの長さ方向に沿って、第1加工部P1と第2加工部との配置間隔L1とステップS6で算出された公差との差だけシャフト部Sの先端側に延ばした点を、針先端部Tの位置と推定する。さらに、針先端部位置推定部12は、例えば、
図9に示す態様と同様にして、推定された針先端部Tの位置を表す先端マークMを、ステップS2で生成された超音波画像Uに重畳して表示部7に表示させる。
このようにしてステップS8の処理が完了すると、超音波診断装置1の動作が終了する。
【0066】
また、ステップS6において、等差数列判定部10により、ステップS3で検出された複数の配置間隔が等差数列を形成することが認められず、超音波画像Uに描出されていない加工部が推定不可能であると判定された場合には、ステップS9に進む。
ステップS9において、等差数列判定部10は、図示しないが、エラーが発生した旨を表示部7に表示する。このようにして、ステップS9の処理が完了すると、超音波診断装置1の動作が終了する。
【0067】
以上から、本発明の実施の形態2に係る穿刺針N2は、針先端部Tに向かって漸減する等差数列を形成する複数の加工部P1~P5を備え、針先端部Tと第1加工部P1との間の距離Kが、等差数列の公差以下であり、且つ、第1加工部P1と第2加工部P2との配置間隔と公差との差に等しいため、例えば超音波診断装置1により、針先端部Tの位置が容易に推定され、表示部7に表示される。これにより、ユーザは、実施の形態1の穿刺針N1を用いる場合と同様に、穿刺針N2の針先端部Tの位置を精確に把握することができる。
【0068】
実施の形態3
実施の形態1に係る超音波診断装置1は、超音波プローブ2および表示部7がプロセッサ16に直接的に接続される構成を有しているが、例えば、超音波プローブ2、表示部7、プロセッサ16がネットワークを介して互いに間接的に接続されることもできる。
図12に示すように、実施の形態3に係る超音波診断装置1Aは、超音波プローブ2、表示部7、入力部14がネットワークNWを介して診断装置本体Aに接続されたものである。診断装置本体Aは、
図3に示す超音波診断装置1において、超音波プローブ2と、表示部7と、入力部14とを除いたものである。
【0069】
ここで、ユーザにより超音波プローブ2が被検体の体表Bに押し付けられた状態で、超音波プローブ2から被検体の内部に向けて超音波ビームが送信されると、超音波プローブ2の振動子アレイ2Aにより、被検体の内部で反射された超音波エコーが受信されて受信信号が生成される。超音波プローブ2は、生成された受信信号を、ネットワークNWを介して診断装置本体Aに送信する。このようにして超音波プローブ2から送信された受信信号は、ネットワークNWを介して診断装置本体Aのプロセッサ16の画像取得部8に受信され、画像取得部8により、受信信号に基づいて超音波画像Uが生成される。
【0070】
画像取得部8により生成された超音波画像Uは、表示制御部6および配置間隔検出部9に送出される。表示制御部6は、画像取得部8から受け取った超音波画像Uに対して所定の処理を施し、さらに、所定の処理が施された超音波画像Uを、ネットワークNWを介して表示部7に送信する。このようにして、診断装置本体Aのプロセッサ16の表示制御部6から送信された超音波画像Uは、ネットワークNWを介して表示部7により受信され、表示部7に表示される。
【0071】
また、配置間隔検出部9は、画像取得部8から受け取った超音波画像Uを画像解析することにより、穿刺針N1の複数の加工部P1~P7を認識し、認識された複数の加工部P1~P7の配置間隔を検出する。
等差数列判定部10は、配置間隔検出部9により検出された複数の配置間隔が等差数列を形成しているか否かを判定し、第1加工部検出部11は、等差数列判定部10による判定結果に基づいて、穿刺針N1の第1加工部P1を検出する。
【0072】
また、針先端部位置推定部12は、第1加工部検出部11により検出された第1加工部P1の位置と、入力部14を介してユーザにより入力され、ネットワークNWを介して診断装置本体Aのプロセッサ16に送信された針情報とに基づいて、穿刺針N1の針先端部Tの位置を推定する。さらに、針先端部位置推定部12は、推定された針先端部T1の位置の情報を、超音波画像Uに重畳して、ネットワークNWを介して表示部7に送信する。これにより、表示部7に、推定された針先端部T1の位置が表示される。
【0073】
以上のように、本発明の実施の形態3に係る超音波診断装置1Aによれば、超音波プローブ2、表示部7、入力部14、診断装置本体AがネットワークNWを介して接続されている場合でも、実施の形態1の超音波診断装置1と同様に、超音波画像Uを画像解析することにより複数の加工部P1~P7を認識して複数の加工部P1~P7の配置間隔を検出し、検出された複数の配置間隔が等差数列を形成しているか否かを判定し、等差数列の公差を算出し、算出された公差に基づいて第1加工部P1を検出し、検出された第1加工部P1の位置に基づいて針先端部Tの位置を推定するため、精度良く針先端部Tの位置を推定することができる。
【0074】
また、超音波プローブ2、表示部7、入力部14がネットワークNWを介して診断装置本体Aに接続されているため、診断装置本体Aを、いわゆる遠隔サーバとして使用することができる。これにより、例えば、ユーザは、超音波プローブ2と表示部7と入力部14のみをユーザの手元に用意することにより、被検体の超音波診断を行うことができるため、超音波診断の際の利便性を向上することができる。
また、例えば、いわゆるタブレットと呼ばれる携帯型の薄型コンピュータが表示部7および入力部14として使用される場合には、ユーザは、より容易に被検体の超音波診断を行うことができ、超音波診断の際の利便性をさらに向上させることができる。
【0075】
なお、超音波プローブ2、表示部7、入力部14がネットワークNWを介して診断装置本体Aに接続されているが、超音波プローブ2、表示部7、入力部14、診断装置本体Aは、ネットワークNWに有線接続されていてもよく、無線接続されていてもよい。
【0076】
また、実施の形態3の態様は、実施の形態1に適用されることが説明されているが、実施の形態2についても、同様に適用されることができる。
【符号の説明】
【0077】
1,1A 超音波診断装置、2 超音波プローブ、2A 振動子アレイ、3 送信部、4
受信部、5 画像生成部、6 表示制御部、7 表示部、8 画像取得部、9 配置間隔検出部、10 等差数列判定部、11 第1加工部検出部、12 針先端部位置推定部、13 装置制御部、14 入力部、15 格納部、16 プロセッサ、17 増幅部、18 AD変換部、19 信号処理部、20 DSC、21 画像処理部、A 診断装置本体、B 体表、L0 距離、L1,L2,L25,L3,L35,L4,L5,L6
配置間隔、M 先端マーク、N1,N2 穿刺針、NW ネットワーク、P1 第1加工部、P2 第2加工部、P3 第3加工部、P4 第4加工部、P5 第5加工部、P6
第6加工部、P7 第7加工部、S シャフト部、T 針先端部、U 超音波画像。