(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】フッ素系樹脂多孔性膜およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/00 20060101AFI20220712BHJP
B01D 71/32 20060101ALI20220712BHJP
B01D 69/00 20060101ALI20220712BHJP
B01D 71/36 20060101ALI20220712BHJP
B01D 69/06 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
C08J9/00 A CEW
B01D71/32
B01D69/00
B01D71/36
B01D69/06
(21)【出願番号】P 2020537698
(86)(22)【出願日】2019-10-18
(86)【国際出願番号】 KR2019013769
(87)【国際公開番号】W WO2020080896
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2020-07-16
(31)【優先権主張番号】10-2018-0124560
(32)【優先日】2018-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0129384
(32)【優先日】2019-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ハン、スンジェ
(72)【発明者】
【氏名】セオ、ジョー イオン
(72)【発明者】
【氏名】アン、ビョン イン
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-067076(JP,A)
【文献】国際公開第2013/005431(WO,A1)
【文献】特開平07-278331(JP,A)
【文献】特開2017-101231(JP,A)
【文献】特開昭52-132078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00
B01D 71/32
B01D 69/00
B01D 71/36
B01D 69/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個のフッ素系樹脂フィブリルを含むフッ素系樹脂多孔性膜であって、
前記フッ素系樹脂多孔性膜は厚さが20から50μmであり、
前記フッ素系樹脂多孔性膜の内部領域でのフィブリルの平均太さに対する、表面領域に存在するフィブリルの平均太さの比が1.8から3であり、
前記表面領域は、前記フッ素系樹脂多孔性膜の表面から膜全体厚さの10%以内の領域であり、前記内部領域は、前記表面領域を除いた領域であ
り、
前記フッ素系樹脂多孔性膜は、120℃で30分間熱処理した後に変化した横方向長さ値と、前記熱処理前の横方向長さ値とを利用して下記数式2により計算した熱収縮率が10%以下であり、
ASTM D 882により測定した縦方向の引張強度が60から100MPaであり、横方向の引張強度が70から120MPaである、フッ素系樹脂多孔性膜。
[数式2]
【数1】
【請求項2】
前記表面領域でのフィブリルの平均太さが50から140nmであり、前記内部領域でのフィブリルの平均太さが40から70nmである、請求項1に記載のフッ素系樹脂多孔性膜。
【請求項3】
前記内部領域は、フッ素系樹脂多孔性膜のある一面から膜全体厚さの10%超過90%未満の領域に該当する、請求項1または2に記載のフッ素系樹脂多孔性膜。
【請求項4】
前記フッ素系樹脂多孔性膜内に含まれる気孔の平均気孔直径が0.1から0.25μmであり、最大気孔直径が0.3から0.45μmである、請求項1から3のいずれか一項に記載のフッ素系樹脂多孔性膜。
【請求項5】
前記フッ素系樹脂多孔性膜の気孔度が70から90%である、請求項1から4のいずれか一項に記載のフッ素系樹脂多孔性膜。
【請求項6】
前記フッ素系樹脂多孔性膜は厚さが30から50μmである、請求項1から5のいずれか一項に記載のフッ素系樹脂多孔性膜。
【請求項7】
前記フッ素系樹脂多孔性膜は、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー樹脂、テトラフルオロエチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体、またはエチレン-クロロトリフルオロエチレン樹脂を含む、請求項1から
6のいずれか一項に記載のフッ素系樹脂多孔性膜。
【請求項8】
前記フッ素系樹脂多孔性膜は、JIS K6892を利用して測定した標準比重が2.14から2.22であるポリテトラフルオロエチレンを含む、請求項1から
7のいずれか一項に記載のフッ素系樹脂多孔性膜。
【請求項9】
フッ素系樹脂と潤滑剤を混合して製造したフッ素系樹脂組成物をシート状に押出してフッ素系樹脂シートを製造する段階;
前記フッ素系樹脂シートを200から340℃の温度で1から12倍縦方向延伸する段階;および
前記縦方向延伸されたシートを200から320℃で5から25倍横方向延伸した後、370から390℃の温度で5秒から20秒間熱固定する段階を含む、請求項1から
8のいずれか一項に記載のフッ素系樹脂多孔性膜の製造方法。
【請求項10】
前記フッ素系樹脂シートの製造は、JIS K6892を利用して測定した標準比重が2.14から2.22であるフッ素系樹脂および潤滑剤を混合して製造したフッ素系樹脂組成物を加圧して予備成形体を形成し、前記予備成形体をダイを利用してシート状に押出した後に圧延し、120から200℃で熱処理することによって行われる、請求項
9に記載のフッ素系樹脂多孔性膜の製造方法。
【請求項11】
請求項1から
8のいずれか一項に記載のフッ素系樹脂多孔性膜を含むフィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2018年10月18日付韓国特許出願第10-2018-0124560号および2019年10月17日付韓国特許出願第10-2019-0129384号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み含まれる。
【0002】
本発明は、微細な気孔サイズを有しながらも、高い機械的強度および低い熱収縮率を示すフッ素系樹脂多孔性膜およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
多様な分野に使用される多孔性膜は、高い濾過効率および気体および液体透過性を共に有することが要求されている。そのために、多孔性膜内部の気孔直径分布を均一に調節して特定の圧力下で流体が気孔を通過する量を増やす方法が知られている。
【0004】
フッ素系樹脂の多孔質膜は、フッ素系樹脂自体に起因する、高い耐熱性、化学的安定性、耐候性(weatherability)、不燃性、強度、非粘着性、低摩擦係数などの特性を有することができ、これに加えて、多孔質体で製造する場合、可撓性(flexibility)、液体透過性、粒子捕集性(particle collection efficiency)、低誘電率などの特性を有することができる。
【0005】
特に、このようなフッ素系樹脂中のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を使用する多孔質膜は、多様な化合物に対する高い安定性を有しており、特に半導体関連分野、液晶関連分野および、食品、医療関連分野で、気体および液体形態の混合物に対する精密濾過フィルター(メンブレンフィルター)として多く使用されている。
【0006】
このようなPTFE膜は、PTFE粉末と潤滑剤の混合物から構成されたペーストを利用して予備成形体を作り、前記予備成形体を圧延あるいは押出工程によりシート形態に成形した後、熱処理して潤滑剤を除去し、その後、横(TD)方向または縦(MD)方向に一軸延伸したり、またはMD方向に延伸後、TD方向に延伸する二軸延伸により製造される。
【0007】
しかし、このような方法によりPTFE膜を製造する場合、押出、乾燥、および延伸などの工程で、高温および高圧環境により気孔形状や特性が維持されない現像が発生することがあり、特に、表面に不良気泡が発生することがあり、そのために、製造されるPTFE多孔性膜が十分な強度と濾過性能を備えることができなくなる。また、前記PTFE膜は、延伸と焼結工程で膜内の気孔度を調節するようになり、延伸時に分離膜の気孔度確保は容易であるが、横方向の強度および耐圧性が低下することがあり、また縦方向に収縮が簡単に起こるという問題点がある。
【0008】
MD/TD延伸で製造されたPTFE多孔性膜の収縮率を減少させるために、PTFEのTm以上の高い温度で熱固定を行う方法が提案されている。この場合、高温により残留応力が減少する過程で膜の強度は増加する。しかし、Tm以上の高い温度によりフィブリルが溶けて切れ、またフィブリル間の融着でフィブリルの厚さが増加することによって単位面積当たりのフィブリルの個数が減るようになるため、PTFE多孔性膜の気孔サイズが大きくなる。
【0009】
したがって、熱固定を行う場合、PTFE多孔性膜の強度を向上させ、収縮率を減少させることが可能であるが、同時に多孔性膜の気孔サイズも大きくなり、小気孔(small sized pore)を有しながらも、強度が高く、収縮率が小さいPTFE多孔性膜を製造することが難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、微細な気孔サイズを有しながらも、高い機械的強度および低い熱収縮率を示すフッ素系樹脂多孔性膜およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明の一実施形態によれば、複数個のフッ素系樹脂フィブリルを含むフッ素系樹脂多孔性膜であって、前記フッ素系樹脂多孔性膜の内部領域でのフィブリルの平均太さに対する、表面領域に存在するフィブリルの平均太さの比(表面領域に存在するフィブリルの平均太さ/膜内部領域に存在するフィブリルの平均太さ)が1.8から3であり、前記表面領域は、前記フッ素系樹脂多孔性膜の表面から膜全体厚さの10%以内の領域であり、前記内部領域は、前記表面領域を除いた領域である、フッ素系樹脂多孔性膜を提供する。
【0012】
また、本発明の他の一実施形態によれば、フッ素系樹脂と潤滑剤を混合して製造したフッ素系樹脂組成物をシート状に押出して多孔性のフッ素系樹脂シートを製造する段階;前記多孔性のフッ素系樹脂シートを200から340℃の温度で1から12倍縦方向(MD)延伸する段階;および前記縦方向(MD)延伸されたシートを200から320℃で5から25倍横方向(TD)延伸した後、370から390℃の温度で5秒から60分間熱固定する段階を含む、前述のフッ素系樹脂多孔性膜の製造方法を提供する。
【0013】
以下、発明の具体的な実施形態に係るフッ素系樹脂多孔性膜とその製造方法、そしてこれを利用したフィルターについてより詳細に説明する。
【0014】
本発明で使用する用語「フッ素系樹脂多孔性膜」は、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene;PTFE)のようなフッ素系樹脂を利用して製造され、気孔を含む膜を意味するものであり、特に本発明では異物などを除去することに使用される濾過膜の意味を含む。
【0015】
本発明では、フッ素系樹脂多孔性膜の機械的強度および収縮率などの物性が多孔性膜表面と内部のフィブリルの太さの変化により変わり得ることを確認し、このような結果からフッ素系樹脂多孔性膜の製造時、フッ素系樹脂組成物の押出物の形状を制御し、また延伸後に熱固定条件を制御することによって、多孔性膜の表面側と内部のフィブリルの太さを位置により最適化した。そのために、製造されたフッ素系樹脂多孔性膜は、膜内気孔サイズを小さくて均一に維持しながらも、高い機械的強度および低い収縮率を示すことができる。
【0016】
具体的に、本発明の一実施形態に係るフッ素系樹脂多孔性膜は、
複数個のフッ素系樹脂フィブリルを含み、
前記フッ素系樹脂多孔性膜表面から膜全体厚さの10%以内の表面領域を除いたフッ素系樹脂多孔性膜の内部領域に存在するフィブリルの平均太さに対する、前記フッ素系樹脂多孔性膜の表面領域に存在するフィブリルの平均太さの比(表面領域に存在するフィブリルの平均太さ/膜内部領域に存在するフィブリルの平均太さ)が1.8から3である。
【0017】
一方、本発明においてフィブリルの「太さ」は、別途に定義しない限り、平均太さを意味し、走査電子顕微鏡(SEM)を利用して観察したフィブリル断面の平均直径を太さとする。
【0018】
前記フッ素系樹脂多孔性膜は、後述するように、シート形態の押出物を利用し、延伸後の熱固定工程時に条件を最適化することによって、多孔性膜での位置によりフィブリルの太さを変化させることができる。具体的には、前記フッ素系樹脂多孔性膜は、膜の表面から膜全体厚さの10%以内の表面領域に存在するフィブリルの平均太さが、膜内部領域でのフィブリルの平均太さよりも太く、より具体的には前記表面領域に存在するフィブリルの平均太さと、膜内部領域に存在するフィブリルの平均太さとの比(表面領域に存在するフィブリルの平均太さ/膜内部領域に存在するフィブリルの平均太さ)が1.8から3である。このように表面領域でのフィブリルの平均太さと内部領域でのフィブリルの太さ比が前記範囲を満たすことによって小気孔(small sized pore)を有しながらも、強度が高く、収縮率が小さい効果を示すことができる。
【0019】
表面領域と内部領域でのフィブリルの平均太さ比が3超過である場合、気孔度が減少し、多孔性膜の湾曲性(tortuosity)が増加して流量が低下する虞があり、また太さ比が3超過になるためには400℃以上の高温で熱固定工程が行われなければならないが、この場合、破断が発生したり厚さの不均一が激しいため、正常な膜製造が難しい。また、フィブリルの平均太さ比が1.8未満である場合、位置によるフィブリルの太さ比の制御による改善効果が微々である。より具体的に、前記表面領域に存在するフィブリルの平均太さと、膜内部領域に存在するフィブリルの平均太さとの比が1.8以上、または1.9以上、または2.0以上であり、3以下、または2.8以下であってもよい。
【0020】
また、発明の一実施形態に係るフッ素系樹脂多孔性膜は、前記のようなフィブリルの太さ比の範囲を満たす条件下で、前記膜表面領域でのフィブリルの平均太さは、50から140nmであってもよく、より具体的には50nm以上、または70nm以上、または100nm以上、または120nm以上、または130nm以上であり、140nm以下、または135nm以下であってもよい。また、前記膜内部領域でのフィブリルの平均太さは、40から70nmであってもよく、より具体的には40nm以上、または45nm以上であり、70nm以下、または68nm以下であってもよい。前記のような範囲の平均太さを有することによって、優れた強度特性を示すことができ、またより小さい気孔サイズを有する気孔を含みながらも、高い気孔度を示すことができる。
【0021】
本発明において、フッ素系樹脂多孔性膜の表面および内部でのフィブリルの平均太さは、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)装備を利用してフッ素系樹脂多孔性膜の表面および内部イメージをそれぞれ撮影し、撮影装備に連結されたソフトウェアを利用して撮影されたイメージから表面および内部でのフィブリルの太さを測定することができる。その具体的な方法は以下の試験例で詳細に説明する。
【0022】
一方、本発明において、フッ素系樹脂多孔性膜において「表面領域」は、多孔性膜で外部と接する部分または面を意味し、「内部領域」は、外部と接しない、つまり、多孔性膜で前記表面領域を除いた部分または領域を意味する。具体的には「表面領域」は、フッ素系樹脂多孔性膜の表面から膜全体厚さの10%以内の領域を意味し、「内部領域」は、フッ素系樹脂多孔性膜のある一面から膜全体厚さの10%超過の領域、より具体的には10%超過90%未満の領域を意味する。
【0023】
一方、発明の一実施形態に係る前記フッ素系樹脂多孔性膜は、複数個のフィブリル、および前記フィブリルにより互いに連結された複数個のノジュールからなる微細構造が連続気孔性の多孔質構造を形成している。
【0024】
具体的に、前記フッ素系樹脂多孔性膜内に含まれる気孔の平均直径(Mean Pore Size)は0.1から0.25μmであり、気孔の最大直径(Max Pore Size)は0.3から0.45μmであってもよい。前記範囲を満たす気孔を含むことによって、透過度の低下なしに優れた濾過効率を示すことができる。気孔サイズの制御による改善効果の顕著さを考慮すると、より具体的には前記フッ素系樹脂多孔性膜内に含まれる気孔の平均直径は、0.1μm以上、または0.15μm以上、または0.2μm以上であり、0.25μm以下、または0.23μm以下であってもよく、気孔の最大直径は、0.3μm以上、または0.35μm以上、または0.4μm以上であり、0.45μm以下、または0.42μm以下であってもよい。
【0025】
本発明において、前記フッ素系樹脂多孔性膜内に含まれる気孔の平均気孔直径および最大気孔直径は、キャピラリー・フロー・ポロメーター(Capillary Flow Porometer)装備を用いて測定した圧力による流量(濡れ曲線)(Flow Rate(Wet Curve))の変化曲線から、気孔の平均直径および最大直径をそれぞれ計算することができ、具体的な方法は以下の試験例で詳細に説明する。
【0026】
また、前記フッ素系樹脂多孔性膜は、前述の気孔条件を満たしながら、70から90%の気孔度を有する。より具体的には70%以上、または73%以上、または75%以上であり、90%以下、または85%以下、または80%以下の気孔度を有する。このように平均気孔のサイズは、小さいながらも気孔度が増加されることによって透過度が顕著に改善され得る。気孔度が90%を超過する場合、物性保持が難しいこともある。
【0027】
一方、本発明において、多孔性膜の気孔度は、多孔性膜の体積および重量から密度を求めた後、下記数式1により決定した。
[数式1]
気孔度(%)={1-(重量[g]/(厚さ[cm]×面積[cm2]×真密度[g/cm3]))}×100
【0028】
この時、数式1で、前記真密度はフッ素系樹脂の真密度2.2g/cm3とした。
【0029】
また、前記フッ素系樹脂多孔性膜は、20から100μmの厚さを有し、より具体的には20μm以上、または30μm以上であり、100μm以下、または50μm以下の厚さを有する。前述の気孔条件と共に厚さ範囲を満たすことによって、濾過効率と透過度、そして寸法安定性をバランス良く示すことができる。
【0030】
一方、前記フッ素系樹脂多孔性膜において、前記フッ素系樹脂としては、通常、フッ素系樹脂膜に使用されるものであれば制限なしに用いることができ、具体的な例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー樹脂(ETFE)、テトラフルオロエチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(TFE/CTFE)またはエチレン-クロロトリフルオロエチレン樹脂(ECTFE)などが挙げられ、これらの中のある一または二以上の混合物を用いることができる。この中でも多孔性膜の耐薬品性、耐熱性、耐候性および不燃性を改善させることができるという点を考慮すると、PTFEを用いることができる。
【0031】
また、前記PTFE樹脂を用いる場合、標準比重(standard specific gravity;SSG)が2.14以上であり、2.22以下、より具体的には2.14以上、または2.15以上、または2.16以上であり、2.22以下、または2.2以下、または2.18以下であってもよい。PTFEの分子量が高いほどSSGは低くなるが、前述の範囲内の標準比重を有するPTFE樹脂を用いる場合、フィブリルの太さ制御により容易である。
【0032】
一方、前記PTFEの標準比重は、日本工業規格(JIS) K6892による測定法により規定される比重であり、平均分子量とは負の相関を示す。
【0033】
また、本発明において前記高分子樹脂の分子量、具体的に数平均分子量および重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を利用して測定することができ、ポリスチレン換算重量である。
【0034】
具体的に、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)装置としては、Waters PL-GPC220機器を利用し、Polymer Laboratories PLgel MIX-B 300mmの長さのカラムを用いて測定することができる。この時、測定温度は160℃であり、1,2,4-トリクロロベンゼンを溶媒として用い、流速は1mL/minとする。また高分子樹脂のサンプルは、それぞれ10mg/10mLの濃度に調製した後、200μLの量で供給する。ポリスチレン標準試片を利用して形成された検定曲線を利用してMnの値を誘導することができる。この時、ポリスチレン標準試片としては、重量平均分子量が2,000g/mol、10,000g/mol、30,000g/mol、70,000g/mol、200,000g/mol、700,000g/mol、2,000,000g/mol、4,000,000g/mol、10,000,000g/molである9種を用いた。
【0035】
前記構造を有するフッ素系樹脂多孔性膜は、フッ素系樹脂と潤滑剤を混合して製造したフッ素系樹脂組成物をシート状に押出してフッ素系樹脂シートを製造する段階(段階1);前記フッ素系樹脂シートを200から340℃の温度で1から12倍縦方向(MD)延伸する段階(段階2);および前記縦方向(MD)延伸されたシートを200から320℃で5から25倍横方向(TD)延伸した後、370から390℃の温度で5秒から60分間熱固定する段階(段階3)を含む製造方法により製造され得る。そのために、発明の他の一実施形態によれば、前述のフッ素系多孔性膜を製造する方法が提供される。
【0036】
以下、本発明を各段階別に詳細に説明する。
【0037】
段階1は、フッ素系樹脂シートを製造する段階である。
【0038】
具体的に、前記フッ素系樹脂シートは、フッ素系樹脂と潤滑剤を混合してフッ素系樹脂組成物を製造し、これをシート状に押出することによって製造され得る。
【0039】
この時、前記フッ素系樹脂としては、前述したような樹脂を用いることができる。また、前記フッ素系樹脂としてPTFE樹脂を用いる場合、前記PTFE樹脂は、エマルジョン重合など通常の方法により製造されてもよく、粉末形態で用いられてもよい。
【0040】
また、前記潤滑剤は、フッ素系樹脂粉末の表面を浸しながら押出を容易にする役割を果たすものであり、シート形態への成形後、熱による蒸発抽出などの方法により除去が可能なものであれば特別な制限なしに用いることができる。具体的な例としては、流動パラフィン、ナフタ、ホワイトオイル、トルエン、キシレンなどの炭化水素オイル、各種アルコール類、ケトン類、エステル類などを用いることができる。
【0041】
フッ素系樹脂シートに対する延伸を通じて多孔性膜を製造する場合、高温高圧の条件でフッ素系樹脂粒子から微細フィブリルが形成され、前記フィブリルにより互いに連結されたノジュール構造により微細気孔を形成することができるが、フィブリルの連結およびフッ素系樹脂粒子間結合を固く形成し、サイズが小さい気孔を有する多孔性膜を製造するためには、潤滑剤の使用を最小化しなければならない。しかし、樹脂に対する潤滑剤の含有量が過度に少ない場合、予備成形体を製造し、圧延、押出を進行する工程などで、予備成形体表面に負荷が激しくなるため、表面気孔が塞がり、滑らかな表面が形成される、表面フィルム化現像が発生することがあり得る。表面フィルム化現像が発生する場合、表面に気孔が無くなるため、乾燥工程などで潤滑剤が外部に排出されることができないが、外部に排出されなかった潤滑剤は、その後の延伸などの工程で高い熱により気化し、膜内部で剥離を起こしたり、サンプル内部を浮き立つようにする、不良発生の原因になる。そのために、本発明において前記潤滑剤は、フッ素系樹脂100重量部に対して10から30重量部の量で用いることができ、より具体的には10重量部以上、または15重量部以上であり、30重量部以下の量で用いることができる。
【0042】
前記フッ素系樹脂と潤滑剤の混合は、通常の方法により行われてもよく、混合後には混合物内の各成分の均一混合のために一定時間熟成する工程が選択的にさらに行われてもよい。前記熟成は、具体的に30から50℃の温度で12から24時間維持することによって行われてもよい。
【0043】
また、前記混合および選択的に熟成工程後、押出工程の遂行に先立ち、前記混合物、つまり、フッ素系樹脂組成物に対して圧力を印加して予備成形体(preform)を形成する工程が選択的にさらに行われることもできる。前記予備成形体形成工程は具体的に、前記混合物または熟成された混合物に対して1から5MPaの圧力を印加することによって行われてもよい。
【0044】
次に、前記工程を通じて得た組成物、または予備成形体をシート状に押出する。
【0045】
従来、フッ素系樹脂フィルムの製造時には、フッ素系樹脂を含む組成物をロッド(rod)形態に押出した後、カレンダリング工程を通じてシート形態に変形させたが、本発明ではダイを利用してシートまたはフィルムの形態に直接押出する。本発明において前記押出工程は、フッ素系樹脂多孔性フィルムの特性を決定する段階で、高い圧力を印加しながらシートまたはフィルム状に押出工程を行うことによって、樹脂粒子間アンカリング(anchoring)が形成されてフィブリル製造が可能なシード(seed)が形成され、またダイ表面とシート間に強い摩擦力が作用してシートまたはフィルム表面では非常に高い密度に樹脂が結合されるようになる。その結果、表面層と内部での太さが異なるフィブリルが製造されるようになり、この時、押出条件制御を通じて表面および内部でのフィブリルの太さ比をより最適化することができる。
【0046】
一方、従来のようにロッド形態に押出した後、カレンダーを通じてシート形態に変形させる場合、表面および内部でのフィブリルの太さ差が殆どなく、また製造された多孔性膜の両側サイド(side)部分と中心(center)部分で気孔のサイズが不均一であり、フッ素系樹脂膜の物性が低下するようになる。その結果、製造された多孔性のフッ素系樹脂膜は、気孔サイズなど物性均一度が重要な工程用フィルターとしては適しなくなる。
【0047】
具体的に前記押出工程は、25から50℃の温度および1から40MPaの圧力下で行われてもよく、より具体的には押出後に製造されるフッ素系樹脂フィルムの厚さが1から3mmになるようにする条件で行われてもよい。
【0048】
また前記押出工程後、押出シートに対する圧延工程がさらに行われることもできる。前記圧延工程は、カレンダリングなど通常の方法により行われてもよく、具体的には30から100℃の温度および10から30MPaの圧力下で行われてもよく、より具体的には圧延後に製造されるフッ素系樹脂フィルムの厚さが100から300μmになるようにする条件で行われてもよい。
【0049】
また前記圧延工程は、前記フッ素系樹脂フィルムの厚さを考慮して1回行われてもよく、または2回以上の多段階で行われてもよい。
【0050】
次に、製造したフッ素系樹脂フィルムを熱処理して潤滑剤を除去する工程が行われてもよい。前記熱処理時の温度は、前記潤滑剤を除去できる温度であれば特に制限されず、具体的には120から200℃、より具体的には120℃以上、または150℃以上であり、200℃以下、または180℃下で潤滑剤が完全に除去され得る時間の間に行われてもよい。
【0051】
段階2は、前記段階1で製造した多孔性のフッ素系樹脂シートを縦方向(MD)延伸する段階である。
【0052】
前記延伸工程は、異なる速度で回転するロールの間で行われたりまたはオーブンでテンター(tenter)を用いて行われてもよい。
【0053】
具体的に前記延伸工程は、1から12倍の延伸比率、より具体的には1倍以上、または1.5倍以上であり、12倍以下、または5倍以下、または3倍以下の延伸比率で前記フッ素系樹脂フィルムを縦方向延伸することによって行われてもよい。前述の条件で縦方向延伸工程の遂行時、ノード-フィブリル構造(Node-fibril structure)および空隙を形成することができる。もし縦方向延伸時に延伸比率が1倍未満であれば、フィブリル化が十分に行われない虞があり、また延伸比率が12倍を超えれば、フィブリルの長さが過度に長くなり、気孔度が大幅に増加して収縮率が増加する虞がある。
【0054】
また、前記延伸工程は、200から340℃の温度で行われてもよく、より具体的には200℃以上、または250℃以上であり、340℃以下、または330℃以下の温度で行われてもよい。延伸工程時に温度が200℃未満であれば気孔形成が十分でなく、また340℃を超えれば気孔のサイズが過度に増加してしまう虞がある。前記温度範囲で延伸工程が行われる時、多孔性構造の形成が有利である。
【0055】
次に、発明の一実施形態に係るフッ素系樹脂多孔性膜製造のための段階2は、前記段階1で縦方向延伸されたフッ素系樹脂フィルムの延伸方向と直交する方向、つまり、横方向に延伸して熱固定する段階である。
【0056】
具体的に前記段階2において延伸工程は、5から25倍の延伸比率で行われてもよく、より具体的には5倍以上、または8倍以上であり、25倍以下、または15倍以下の延伸比率で前記フッ素系樹脂フィルムを横方向延伸することによって行われてもよい。横方向延伸工程は、製造されるフッ素系樹脂の多孔性膜においてノード-フィブリル構造形成に影響を与えるが、横方向延伸工程時の延伸比率が5倍未満であれば空隙率が低く製造される虞があり、また延伸比率が25倍を超えれば収縮率が高くなるという問題がある。
【0057】
また、前記延伸工程は、200から320℃の温度で行われてもよい。前記条件で横方向延伸工程の遂行時、平均気孔サイズを小さくしながらも、気孔度を増加させることによって多孔性膜の収縮抵抗性、特に横方向の収縮抵抗性を向上させることができる。
【0058】
次に、横方向延伸されたフッ素系樹脂フィルムに対する熱固定工程が行われる。
【0059】
前記熱固定工程は、最終製造されるフッ素系フィルム多孔性膜の熱収縮を防止するためものであり、370から390℃の温度で、5秒から60分間行われてもよい。前記条件での熱固定処理により最終製造されるフッ素系樹脂多孔性膜内の気孔サイズを均一にすることができる。しかし、もし熱固定時に温度が370℃未満であるか、または5秒以内に行う場合、太さ比の条件を満たさないか、または熱収縮防止効果が十分でなく、また390℃を超えたり60分を超えて行う場合、フィブリルが溶けるなどの問題により気孔が大きくなり得る。より具体的には熱固定時の温度は、370℃以上、または375℃以上であり、390℃以下、または380℃以下であってもよく、熱固定時間、つまり、滞留時間は、5秒以上であり、60分以下、または10分以下、または1分以下、または20秒以下であってもよい。
【0060】
前記のような製造工程を通じて多孔性膜の表面および内部でのフィブリルの太さ比が最適化したフッ素系樹脂多孔性膜が製造され得る。その結果、製造されるフッ素系樹脂多孔性膜は、優れた機械的強度特性と共に低い収縮率を示すことができる。
【0061】
また、製造されるフッ素系樹脂の多孔性膜内気孔は、微細な気孔サイズを有しながらも、高い気孔度を維持することができるため、所定の圧力下で単位時間当たり前記多孔性膜を通過する流体の量も相対的に増加することができ、その結果、濾過効率および透過性がバランス良く改善され得る。
【0062】
また、従来の微細厚さの多孔性膜は、濾過時に適用圧力によりその形状や内部に分布する気孔の直径などが変化することがあり、膜自体が破裂するなどの理由で濾過特性が大幅に低下することがあるが、前記製造方法により製造されるフッ素系樹脂多孔性膜は、機械的物性に優れるだけでなく、製造過程および濾過運転過程でもその形態や内部気孔などの形状などが大きく変わらない特性を有する。
【0063】
そのために、本発明の他の一実施形態によれば、前述の製造方法により製造されて優れた強度特性と共に熱収縮率を有するフッ素系樹脂多孔性膜が提供される。
【0064】
具体的に前記製造方法により製造されるフッ素系樹脂の多孔性膜は、ASTM D 882による測定時、MD方向の引張強度が60から100MPaであり、TD方向の引張強度が70から120MPa、より具体的にはMD方向の引張強度が60から90MPaであり、TD方向の引張強度が70から100MPaであってもよい。
【0065】
また、前記フッ素系樹脂の多孔性膜は、120℃で30分間熱処理した後に変化した横方向長さ値と、前記熱処理前の横方向長さ値を利用して下記数式2により計算した熱収縮率が10%以下、あるいは8%以下、あるいは3から7%であり、高温での形態安定性に優れている。そのために、フッ素系樹脂多孔性膜の製品適用時、高温硫酸などと接触する条件でも形態安定性を維持することができる。
[数式2]
【数1】
【0066】
そのために、前記フッ素系樹脂多孔性膜は、腐食性気体および液体用フィルター媒体、プロセッサー用フィルター、電気分解用透過性膜および電池用セパレーターとして広範囲に利用することができ、また半導体産業分野で使用される多様な気体および液体を精密濾過することに用いることができる。
【0067】
発明のまた他の一実施形態によれば、前記フッ素系樹脂多孔性膜を含むフィルター、およびフィルター装置が提供される。
【0068】
前記フィルターは、前記フッ素系樹脂多孔性膜以外に、不織布、織物、メッシュまたはスクリーンのようなフィルター要素などをさらに含むことができ、平板形、しわ形、螺旋形または中空シリンダー形などの多様な形態を有することができる。
【発明の効果】
【0069】
本発明によるフッ素系樹脂多孔性膜は、微細な気孔サイズを有しながらも、高い機械的強度および低い熱収縮率を示す。そのために、高い機械的強度と低い収縮率により優れた寸法安定性が要求されるフィルター、特にプロセス用フィルターとして特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図1a】実施例1で製造したフッ素系樹脂の多孔性膜の表面でのフィブリルを走査電子顕微鏡で観察した写真である。
【
図1b】実施例1で製造したフッ素系樹脂の多孔性膜内部のフィブリルを走査電子顕微鏡で観察した写真である。
【
図2a】実施例2で製造したフッ素系樹脂の多孔性膜の表面でのフィブリルを走査電子顕微鏡で観察した写真である。
【
図2b】実施例2で製造したフッ素系樹脂の多孔性膜内部のフィブリルを走査電子顕微鏡で観察した写真である。
【
図3】試験例2でフッ素系樹脂多孔性膜の表面と内部でのフィブリルの厚さ比変化による熱収縮率変化を評価した結果である。
【
図4】試験例2でフッ素系樹脂多孔性膜の表面と内部でのフィブリルの厚さ比変化による横方向(TD)引張強度の変化を評価した結果である。
【
図5】試験例2でフッ素系樹脂多孔性膜の表面と内部でのフィブリルの厚さ比変化による縦方向(MD)引張強度の変化を評価した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は本発明をより簡単に理解するために提供させるものに過ぎず、これによって本発明の内容が限定されるのではない。
【0072】
実施例1
PTFE樹脂(登録商標650J、MCF社製、SSG(JIS K6892で測定):2.163)100重量部に対して潤滑剤(登録商標Isopar H、Exxon社製)22重量部を混合してフッ素系樹脂包含組成物を製造した後、50℃で24時間熟成した。次に、2MPaの圧力を加えて予備成形体ブロック(preform block)を製造し、ダイが備えられたペースト(paste)押出装備を利用して1mm厚さのシート形態に押出した後、カレンダリング(Calendering)を通じて300μm厚さに圧延してPTFEフィルムを製造した。製造したPTFEフィルムを200℃の加熱オーブンでロールツーロール(Roll to Roll)工程で熱処理して前記潤滑剤を完全に除去した。
【0073】
熱処理されたPTFEフィルムを300℃でロール(roll)速度差を利用して縦方向(MD)に3倍延伸を実施し、TDテンター(TD tenter)を利用して横方向(TD)に10倍延伸した後、延伸されたフィルムを加熱ロール(roll)を利用して380℃で9秒間熱固定してPTFE多孔性膜を製造した。
【0074】
実施例2、および比較例1から3
下記表1に開示された条件を行うことを除き、前記実施例1と同様な方法で行ってPTFE多孔性膜を製造した。
【0075】
比較例4および5
前記実施例1で押出時、ロッド(rod)形態に押出し、下記表1に開示された条件で熱固定工程を行うことを除き、前記実施例1と同様な方法で行ってPTFE多孔性膜を製造した。
【0076】
比較例6
フッ素系樹脂多孔性膜表面でのフィブリルの太さと膜内部領域に存在するフィブリルの太さ比が3を超える場合、効果比較のために、熱固定工程を400℃の高温で行い、フッ素系樹脂多孔性膜を製造しようとした。
【0077】
詳細には、下記表1に開示されたとおり、熱固定工程を400℃で9秒間行うことを除き、前記実施例1と同様な方法で行ってPTFE多孔性膜を製造しようとしたが、厚さ不均一が激しくて破断が発生して膜製造が不可能であった。
【0078】
【0079】
試験例1
前記実施例1および2で製造したPTFE多孔性膜の表面および内部をそれぞれ走査電子顕微鏡(SEM)で観察し、その結果を
図1a~
図2bに示した。
【0080】
観察結果から確認されるように、本発明による製造方法により製造された実施例1および2のPTFE多孔性膜は、表面でのフィブリルの太さが内部のフィブリルに比べて太いことを確認できる。
【0081】
試験例2
前記実施例および比較例で製造したPTFE多孔性膜を下記の方法で評価し、その結果を下記表2および
図3~5に示した。
【0082】
1)厚さ(μm):Mitsutoyo 7327厚さ測定器を利用して前記実施例および比較例で製造したPTFE多孔性膜の厚さを測定した。
【0083】
2)気孔度:PTFE多孔性膜の重量、厚さ、面積をそれぞれ測定し、下記数式1により気孔度を測定した。この時、PTFE多孔性膜の厚さは、mitsutoyo社のダイヤル厚さゲージを用いて測定した。
[数式1]
気孔度(%)={1-(重量[g]/(厚さ[cm]×面積[cm2]×真密度[g/cm3]))}×100
【0084】
この時、数式1で、前記真密度はフッ素系樹脂の真密度2.2g/cm3とした。
【0085】
3)平均気孔直径(μm)および最大気孔直径(μm):PMI社のキャピラリー・フロー・ポロメーター(Capillary Flow Porometer)装備を用いて平均気孔サイズおよび最大気孔サイズを測定した。
【0086】
詳細には、PTFE多孔性膜を前記測定装備に装着した後、表面張力の試験溶液(GALWICK)に完全に浸し、空気または窒素を多孔性膜に垂直方向に注入した。圧力が一定に増加して特定圧力に到達すれば気孔中の最も大きい孔を満たしていた試験溶液のバブルが炸裂して出るようになるが、この時の圧力をバブルポイントとした。次に、継続して圧力が増加すれば炸裂していなかった残りの小さい気孔を満たしていた溶液も全てバブルで炸裂して出るようになるが、この時、圧力による 流量(濡れ曲線)(Flow Rate(Wet Curve))を記録して気孔のサイズを計算した。試験溶液に浸されていない乾き(Dry)状態の多孔性膜は、圧力が増加することによって流量(Flow Rate)が一定に増加するが(乾き曲線(Dry Curve))、この時、乾き曲線(Dry Curve)が1/2になるグラフと濡れ曲線(Wet Curve)が交差する地点の圧力に該当する気孔を平均気孔サイズと定義する。
【0087】
4)フィブリルの太さ(nm):電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)装備を利用して、PTFE多孔性膜の表面イメージを撮影した。また、内部領域のフィブリルの太さの場合、テープを利用してメンブレンの表面層を約5μm程度剥がした後、内部層をFE-SEMで観察した。
【0088】
次に、装備に連結されたソフトウェアを利用して撮影したイメージから多孔性膜表面のフィブリルと膜内部のフィブリルの太さ(または直径)を測定し、それぞれの平均値および太さ比(表面領域/内部領域フィブリルの平均太さ比)を計算した。
【0089】
この時、前記表面領域は、多孔性膜の表面から膜全体厚さの10%以内の領域であり、内部領域は、多孔性膜のある一面から膜全体厚さの10%超過90%未満の領域とした。
【0090】
5)熱収縮率(120℃、30min)(%):PTFE多孔性膜を縦方向(MD)に5cm、および横方向(TD)に5cmになるように裁断した後、120℃の条件で30分間フリースタンディング(Free Standing)状態に置いた時に変化した寸法を測定し、下記数式2により熱収縮率を計算した。
[数式2]
【数2】
【0091】
前記数式2で熱処理前の横方向長さは5cmであり、熱処理後の横方向長さは120℃の条件で30分間維持した後の変化された横方向長さである。
【0092】
6)引張強度:ASTM D 882の方法によりTDおよびMD方向の引張強度を測定した。
【0093】
【0094】
本発明による製造方法により製造された実施例1および2のフッ素系樹脂多孔性膜は、膜表面と内部領域でのフィブリルの太さ比が1.8から3の範囲内であり、太さ比が1.8未満である比較例の多孔性膜と比較して優れた機械的強度特性を示しながらも、顕著に減少した熱収縮率を示した。一方、膜表面と内部領域でのフィブリルの太さ比が3を超える場合には、膜製造過程で破断が発生して膜製造が不可能であった(比較例6参照)。