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  • 特許-光モジュール 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】光モジュール
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/32 20060101AFI20220712BHJP
   G02F 1/01 20060101ALN20220712BHJP
【FI】
G02B6/32
G02F1/01 F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018066564
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019179067
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】原 徳隆
(72)【発明者】
【氏名】加藤 圭
【審査官】坂上 大貴
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-318647(JP,A)
【文献】特開2001-339118(JP,A)
【文献】特開2014-197055(JP,A)
【文献】特開2001-074981(JP,A)
【文献】特開2018-037472(JP,A)
【文献】米国特許第05500768(US,A)
【文献】特開2001-068691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
1/21-7/00
G02B 6/26-6/27
6/30-6/34
6/42-6/43
H01S 5/00-5/50
H01L 31/00-31/02
31/08-31/10
31/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子を筐体内に収容し、該光学素子への入力光又は出力光を通過させると共に、該筐体内の気密封止を行なう光学窓部材を備えた光モジュールにおいて、
該光学窓部材を保持する保持部材と、
該筐体の外部に配置され、前記入力光又は出力光を集光するレンズを収容する鏡筒とを備え、
該鏡筒は台座を介して該筐体に固定されており、かつ、該保持部材は該台座に固定されており、
該保持部材と該光学窓部材との線膨張係数の差は、該筐体と該光学窓部材との線膨張係数の差よりも小さく、
該台座が該筐体に固定される位置は、該保持部材が該台座に固定される位置より、該光学素子側に近く、
さらに、該保持部材上で該光学窓部材を取り付ける位置は、該保持部材が該台座に固定される位置よりも、光学素子側に突出して設けられ
該台座が該筐体に固定される位置に対する該台座の熱膨張方向と、該保持部材が該台座に固定される位置に対する該保持部材の熱膨張方向は、互いに逆方向となっていることを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の光モジュールにおいて、該台座の線膨張係数は、該保持部材の線膨張係数よりも大きいことを特徴とする光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光モジュールに関し、特に、光学素子を筐体内に収容し、該光学素子への入力光又は出力光を通過させると共に、該筐体内の気密封止を行なう光学窓部材を備えた光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信分野や光計測分野において、光変調素子などの光学素子を筐体内に収容する光モジュールが利用されている。
筐体内に収容される光学素子に対し、入力光を導入する際や、出力光を導出する際には、筐体の一部に貫通孔を形成し、当該貫通孔を気密封止すると共に、入力光や出力光が通過できるよう構成した光学窓部材が配置されている。
【0003】
特許文献1に示す従来の光モジュールでは、図1のように、筐体1内に収容される光変調素子2を収容する筐体から信号光を取り出す光学窓部材3を筐体に取り付け、その近傍に光コリメータ用のレンズ4を実装するための金属製台座5を設けていた。符号6は、レンズ4からの信号光を伝送する光ファイバである。
【0004】
しかしながら、環境温度が変化すると、SUS303等の金属で構成される筐体1と、サファイア基板で構成される光学窓部材3とでは、線膨張差が発生し、強度が低い光学窓部材が破損するなどの不具合を生じていた。
【0005】
これを解決するために、特許文献1の段落0021に開示されているように、筐体と光学窓部材との間に、光学窓部材を保持するホルダーなどの介挿部材を設けることが提案されている。さらに介挿部材の線膨張係数を、筐体の構成材料と光学窓部材の構成材料との間の線膨張係数に設定することが提案されている。
【0006】
図2は、光学窓部材3をホルダーなどの保持部材7で保持し、さらに、保持部材7を筐体1に固定した様子を示している。ここで、保持部材7には、コバール等の低い線膨張係数を有する金属が使用される。
【0007】
図2の構成に、さらに、光コリメータ用レンズ4を組み合わせると、図3のような構成となる。レンズ4を収容するレンズ鏡筒40と台座5とは、YAG溶接で接合されるため、所定の肉厚が必要となる。このため、台座5とレンズ鏡筒4との接触する部分の厚みを薄くすることができず、また、台座5の内側に保持部材7が配置されるスペースを確保するため、台座5が筐体の外側により一層突出する構造となる。
【0008】
図3のように保持部材7を配置すると、保持部材の影響で台座5のサイズも大きくなり、結果として光モジュール全体の寸法が増大するという不具合を生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第6107319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、上述したような問題を解決し、光モジュールの寸法の増加を抑制しながら、環境温度の変化に対しても光学窓部材が破損することを抑制した光モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の光モジュールは、以下の技術的特徴を有する。
(1) 光学素子を筐体内に収容し、該光学素子への入力光又は出力光を通過させると共に、該筐体内の気密封止を行なう光学窓部材を備えた光モジュールにおいて、該光学窓部材を保持する保持部材と、該筐体の外部に配置され、前記入力光又は出力光を集光するレンズを収容する鏡筒とを備え、該鏡筒は台座を介して該筐体に固定されており、かつ、該保持部材は該台座に固定されており、該保持部材と該光学窓部材との線膨張係数の差は、該筐体と該光学窓部材との線膨張係数の差よりも小さく、該台座が該筐体に固定される位置は、該保持部材が該台座に固定される位置より、該光学素子側に近く、さらに、該保持部材上で該光学窓部材を取り付ける位置は、該保持部材が該台座に固定される位置よりも、光学素子側に突出して設けられ、該台座が該筐体に固定される位置に対する該台座の熱膨張方向と、該保持部材が該台座に固定される位置に対する該保持部材の熱膨張方向は、互いに逆方向となっていることを特徴とする。
【0012】
(2) 上記(1)に記載の光モジュールにおいて、該台座の線膨張係数は、該保持部材の線膨張係数よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、光学素子を筐体内に収容し、該光学素子への入力光又は出力光を通過させると共に、該筐体内の気密封止を行なう光学窓部材を備えた光モジュールにおいて、該光学窓部材を保持する保持部材と、該筐体の外部に配置され、前記入力光又は出力光を集光するレンズを収容する鏡筒とを備え、該鏡筒は台座を介して該筐体に固定されており、かつ、該保持部材は該台座に固定されており、該保持部材と該光学窓部材との線膨張係数の差は、該筐体と該光学窓部材との線膨張係数の差よりも小さく、該台座が該筐体に固定される位置は、該保持部材が該台座に固定される位置より、該光学素子側に近く、さらに、該保持部材上で該光学窓部材を取り付ける位置は、該保持部材が該台座に固定される位置よりも、光学素子側に突出して設けられ、該台座が該筐体に固定される位置に対する該台座の熱膨張方向と、該保持部材が該台座に固定される位置に対する該保持部材の熱膨張方向は、互いに逆方向となっているため、筐体の外側に保持部材が張り出すことが抑制され、光モジュール全体の寸法の増加を抑制することが可能となる。しかも、保持部材の線膨張係数により、光学窓部材が筐体の線膨張により破損することも抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】従来の光モジュールの概要を示す平面図である。
図2】光学窓部材を保持する保持部材を備えた光モジュールの概要を示す平面図である。
図3図2の光モジュールに、光コリメータ用のレンズ鏡筒を配置したものをの概要を示す平面図である。
図4】本発明の光モジュールに係る第1の実施例を示す平面図である。
図5】本発明の光モジュールに係る第2の実施例を示す平面図である。
図6】本発明の光モジュールに係る第3の実施例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の光モジュールについて、好適例を用いて詳細に説明する。
本発明の光モジュールは、図4乃至6に示すように、光学素子(不図示)を筐体1内に収容し、該光学素子への入力光又は出力光を通過させると共に、該筐体内の気密封止を行なう光学窓部材3を備えた光モジュールにおいて、該光学窓部材3を保持する保持部材7を備え、該光学窓部材は、該保持部材を介して該筐体に固定されており、該保持部材と該光学窓部材との線膨張係数の差は、該筐体と該光学窓部材との線膨張係数の差よりも小さく、該保持部材上で該光学窓部材を取り付ける位置は、該保持部材自体を固定する位置よりも、光学素子側に突出して設けられていることを特徴とする。
【0017】
図4は、本発明の光モジュールに係る第1の実施例を説明する図である。第1の実施例では、光学窓部材3を保持する保持部材7を、筐体1の内壁に接着固定している。本発明の光モジュールでは、光コリメータ用のレンズ4を収納するレンズ筐体40を台座5を介して、筐体1に固定配置し、保持部材7の一部が、筐体1と台座5との接合面の一から台座側に突出しないよう構成している。これにより、台座5の光軸方向の厚さは、レンズ筐体40を安定して固定できる最小限の厚さとすることができるため、光モジュールの寸法が増大することを抑制することができる。
【0018】
本発明の光モジュールでは、光学窓部材3にサファイア等の透明基板が利用される。光学窓部材3を保持する保持部材7には、筐体1を構成する材料(通常、SUS303、SUS304等の金属材料が使用される。)よりも線膨張係数が、光学窓部材に近い材料であるコバール(鉄、ニッケル、コバルトの合金)等が使用される。これにより、保持部材と光学窓部材との線膨張係数の差は、従来の筐体と光学窓部材との線膨張係数の差よりも小さくすることができるため、環境温度が変化しても、保持部材と光学窓部材との間で発生する応力歪による光学窓部材の破損等を防止することが可能となる。
【0019】
また、保持部材の厚みは、材料にもよるが、光学窓部材への衝撃や機械的応力を緩和する効果を備えるため、コバールの場合は1mm以上の厚みを持たせることが、好ましい。このような保持部材の厚みも、光モジュールの寸法の増大に影響を及ぼすため、後述の第2又は第3の実施例で説明するような保持部材の固定構造に関する工夫も必要となる。
【0020】
図4の第1の実施例では、保持部材7が筐体内に大きく突出している。このため、その突出した分だけ筐体自体の寸法を大きくする必要がある。これを解消する方法として、図5の第2の実施例のように、筐体1の外側から保持部材7を筐体1に固定するよう構成することも可能である。
【0021】
図5の第2の実施例においては、保持部材7は貫通孔が形成されており、その貫通孔の一端には光学窓部材3が固定される。保持部材7は光学窓部材3が筐体の内側となるように筐体外部に形成された窪みに半田等で固定される。またレンズ筐体40を固定するための台座5は保持部材7の固定部から離間して筐体1にYAG溶接等で固定される。このような構成とすることで筐体1の外側に保持部材7が張り出すことが抑制され、光モジュール全体の寸法の増加を抑制することが可能となる。
【0022】
次に、図6に第3の実施例の構成を示す。図5に示した第2の実施例の構成では、保持部材7は光学窓部材3が筐体の内側となるように筐体外部に形成された窪みに固定されていたが、図6に示す第3の実施例の構成においては、保持部材7に固定された光学窓部材3が筐体の内側となるように保持部材7を配置される点では図5と共通しているが、保持部材7がレンズ鏡筒40を保持する台座5の筐体側の面に、固定されている点で異なっている。
【0023】
このような光モジュールの組み立て方法としては、例えば、最初に光学窓部材3を保持部材7に取り付け、次に、保持部材7を台座5に接合する。最後に、台座5を筐体1に接合することで、光学窓部材3を筐体1の所定位置に配置することができる。作業手順はこのような順序に拘らないのは、言うまでもない。
【0024】
第3の実施例の利点は、保持部材7の接合部分を、台座5の裏面に配置することができるため、図5のような台座5と保持部材7の固定部とを離間させる必要がなくなり、これにより保持部材7が筐体1の内部に向けて突出する量を極力抑制することが可能となることである。しかも、台座部分の線膨張方向が図6の左方向であるのに対し、保持部材7の線膨張方向は図6の右方向となるため、筐体1に対する光学窓部材3の変位量を、第1及び第2の実施例と比較して、少なくすることが可能となり、温度変化に対する光モジュールの光学特性の変化を抑制することができる。
【0025】
また、このような構成において台座5の線膨張係数は、保持部材7の線膨張係数よりも大きい方が、保持部材7が筐体1の内部に温度変化により突出することが抑制されるため、
筐体1内部のスペースを有効に利用することができ、光モジュールの小型化に寄与する。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上説明したように、本発明によれば、光モジュールの寸法の増加を抑制しながら、環境温度の変化に対しても光学窓部材が破損することを抑制した光モジュールを提供することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 筐体
2 光学素子
3 光学窓部材
4 レンズ
5 台座
6 光ファイバ
40 レンズ鏡筒
図1
図2
図3
図4
図5
図6