(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】液体吐出装置、流量制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/18 20060101AFI20220712BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20220712BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
B41J2/18
B41J2/175 501
B41J2/01 401
B41J2/175 503
(21)【出願番号】P 2018143916
(22)【出願日】2018-07-31
【審査請求日】2021-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】桑名 孝治
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-166308(JP,A)
【文献】特開2010-228099(JP,A)
【文献】特開2018-083413(JP,A)
【文献】特開2016-043529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留するタンクと、液体を吐出するヘッドと、前記ヘッドに液体を送液するマニホールドと、前記マニホールド内の液体の圧力を検知する圧力検知部と、前記マニホールドの上流側に液体を送液するための加圧タンクと、前記マニホールドの下流側から液体を回収するための減圧タンクと、前記タンク、前記ヘッド、前記マニホールド、前記加圧タンクおよび前記減圧タンク内の液体を循環させる循環機構と、を有する液体吐出装置であって、
前記圧力検知部により検知された圧力である制御圧力を取得する第1取得部と、
外部装置からゲイン情報を受信する受信部と、
前記循環機構近傍の温湿度を検知する温湿度検知部により検知された温湿度を取得する第2取得部と、
前記ヘッドからの液体の吐出動作により前記制御圧力の変動が発生したか否かを判定する第1判定部と、
前記第1判定部により前記制御圧力の変動が発生したと判定された場合、第1制御モードに切り替える第1切替部と、
前記第1制御モードに切り替えられた後、前記制御圧力の変動を打ち消して目標圧力となるための液体流量を選択する選択部と、
前記選択部により液体流量が選択された後、単位時間ごとに前記目標圧力を段階的に切り替え、切り替えた該目標圧力となるような液体流量に切り替える第2切替部と、
前記受信部により受信された前記ゲイン情報、前記第2取得部により取得された温湿度、または前記循環機構により循環される液体の情報のうち少なくともいずれかに基づいて、前記選択部により選択された液体流量、または前記第2切替部により切り替えられた液体流量のうち少なくともいずれかに対してゲインを設定する設定部と、
前記選択部により選択された液体流量で液体が流れるように前記循環機構を制御する循環制御部と、
を備え
、
前記循環制御部は、前記第2切替部により切り替えられた液体流量で液体が流れるように前記循環機構を制御する液体吐出装置。
【請求項2】
前記第1判定部は、前記制御圧力の変動が発生した場合の最大変動量を判定し、
前記選択部は、前記制御圧力の最大変動量と、該最大変動量を打ち消すための液体流量とを対応付ける対応情報を参照して、前記第1判定部により判定された最大変動量に対応する液体流量を選択する請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記第1判定部は、前記制御圧力の変動により、該制御圧力が所定の上限値を超えたか、または該制御圧力が所定の下限値を下回ったかを判定し、
前記第1切替部は、前記第1判定部により前記制御圧力が前記上限値を超えたと判定された場合、または、該制御圧力が前記下限値を下回ったと判定された場合、前記第1制御モードに切り替える請求項1または2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記第1制御モードにおいて、前記循環制御部による前記循環機構の液体流量の制御により、少なくとも前記制御圧力が目標圧力を含む所定範囲内となったか否かを判定する第2判定部を、さらに備え、
前記第1切替部は、前記第2判定部により少なくとも前記制御圧力が前記所定範囲内となったと判定された場合、前記第1制御モードから、前記循環機構に対するPID制御を行うための第2制御モードに切り替え、
前記循環制御部は、前記第2制御モードでは、前記循環機構に対してPID制御を行う請求項1~
3のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記第2判定部は、前記第1制御モードにおいて、前記循環制御部による前記循環機構の液体流量の制御により、前記制御圧力が前記所定範囲内に継続して所定時間だけ維持したか否かを判定し、
前記第1切替部は、前記第2判定部により前記制御圧力が前記所定範囲内に継続して所定時間だけ維持したと判定された場合、前記第1制御モードから前記第2制御モードに切り替える請求項
4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
液体を貯留するタンクと、液体を吐出するヘッドと、前記ヘッドに液体を送液するマニホールドと、前記マニホールド内の液体の圧力を検知する圧力検知部と、前記マニホールドの上流側に液体を送液するための加圧タンクと、前記マニホールドの下流側から液体を回収するための減圧タンクと、前記タンク、前記ヘッド、前記マニホールド、前記加圧タンクおよび前記減圧タンク内の液体を循環させる循環機構と、を有する液体吐出装置の流量制御方法であって、
前記圧力検知部により検知された圧力である制御圧力を取得する
第1取得ステップと、
外部装置からゲイン情報を受信する受信ステップと、
前記循環機構近傍の温湿度を検知する温湿度検知部により検知された温湿度を取得する第2取得ステップと、
前記ヘッドからの液体の吐出動作により前記制御圧力の変動が発生したか否かを判定する判定ステップと、
前記制御圧力の変動が発生したと判定した場合、圧力安定化制御に切り替える
第1切替
ステップと、
前記圧力安定化制御に切り替えた後、前記制御圧力の変動を打ち消して目標圧力となるための液体流量を選択する選択ステップと、
前記選択ステップで液体流量を選択した後、単位時間ごとに前記目標圧力を段階的に切り替え、切り替えた該目標圧力となるような液体流量に切り替える第2切替ステップと、
前記受信ステップで受信した前記ゲイン情報、前記第2取得ステップで取得した温湿度、または前記循環機構により循環される液体の情報のうち少なくともいずれかに基づいて、前記選択ステップで選択した液体流量、または前記第2切替ステップで切り替えた液体流量のうち少なくともいずれかに対してゲインを設定する設定ステップと、
前記選択ステップで選択した液体流量で液体が流れるように前記循環機構を制御する循環制御ステップと、
前記第2切替ステップで切り替えた液体流量で液体が流れるように前記循環機構を制御するステップと、
を有する流量制御方法。
【請求項7】
コンピュータに
液体を貯留するタンクと、液体を吐出するヘッドと、前記ヘッドに液体を送液するマニホールドと、前記マニホールド内の液体の圧力を検知する圧力検知部と、前記マニホールドの上流側に液体を送液するための加圧タンクと、前記マニホールドの下流側から液体を回収するための減圧タンクと、前記タンク、前記ヘッド、前記マニホールド、前記加圧タンクおよび前記減圧タンク内の液体を循環させる循環機構と、を有する液体吐出装置に対して、
前記圧力検知部により検知された圧力である制御圧力を取得する
第1取得ステップと、
外部装置からゲイン情報を受信する受信ステップと、
前記循環機構近傍の温湿度を検知する温湿度検知部により検知された温湿度を取得する第2取得ステップと、
前記ヘッドからの液体の吐出動作により前記制御圧力の変動が発生したか否かを判定する判定ステップと、
前記制御圧力の変動が発生したと判定した場合、圧力安定化制御に切り替える
第1切替
ステップと、
前記圧力安定化制御に切り替えた後、前記制御圧力の変動を打ち消して目標圧力となるための液体流量を選択する選択ステップと、
前記選択ステップで液体流量を選択した後、単位時間ごとに前記目標圧力を段階的に切り替え、切り替えた該目標圧力となるような液体流量に切り替える第2切替ステップと、
前記受信ステップで受信した前記ゲイン情報、前記第2取得ステップで取得した温湿度、または前記循環機構により循環される液体の情報のうち少なくともいずれかに基づいて、前記選択ステップで選択した液体流量、または前記第2切替ステップで切り替えた液体流量のうち少なくともいずれかに対してゲインを設定する設定ステップと、
前記選択ステップで選択した液体流量で液体が流れるように前記循環機構を制御する循環制御ステップと、
前記第2切替ステップで切り替えた液体流量で液体が流れるように前記循環機構を制御するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、流量制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の画像形成装置では、ノズル先端のインクが空気と触れることでインクが増粘または乾燥し、ノズル詰まり等の問題の発生を抑制することを目的として、非印字領域にインクを吐出する空吐出制御がある。この空吐出制御で吐出されたインクは、再利用することができずに廃棄されるため、印刷コストの低減のために空吐出量の低減が求められている。そのため、空吐出によるインク吐出を実施することなく、ノズルも含めインクヘッド内のインクを循環させて、局所的な増粘および乾燥を抑制する技術としてフロースルー制御が既に知られている。
【0003】
このようなフロースルー制御に関連して、液体室の圧力の制御精度、応答性を向上させることを目的にとして、インク吐出時のインクタンク内の圧力変動の結果や画像データから吐出量を算出し、制御対象物であるインクタンク内に配備されたダイヤフラム等の可撓膜の弾性率やタンク内の空気圧を補正する制御方法が開示されている(特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フロースルー制御では、インクヘッド内のインク循環を一定圧力で安定送液する必要があるためPID制御を用いて制御されるが、PID制御は応答性が悪く、吐出開始または停止時のインク吐出に伴って急激な圧力変動が発生した場合に、補正制御が間に合わず、その影響が吐出ムラとして現れたり、安定状態に戻るまでに時間がかかるという問題がある。
【0005】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであって、液体の急激な圧力変動が発生した場合でも安定した圧力制御を行って吐出ムラを抑制することができる液体吐出装置、流量制御方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、液体を貯留するタンクと、液体を吐出するヘッドと、前記ヘッドに液体を送液するマニホールドと、前記マニホールド内の液体の圧力を検知する圧力検知部と、前記マニホールドの上流側に液体を送液するための加圧タンクと、前記マニホールドの下流側から液体を回収するための減圧タンクと、前記タンク、前記ヘッド、前記マニホールド、前記加圧タンクおよび前記減圧タンク内の液体を循環させる循環機構と、を有する液体吐出装置であって、前記圧力検知部により検知された圧力である制御圧力を取得する第1取得部と、外部装置からゲイン情報を受信する受信部と、前記循環機構近傍の温湿度を検知する温湿度検知部により検知された温湿度を取得する第2取得部と、前記ヘッドからの液体の吐出動作により前記制御圧力の変動が発生したか否かを判定する第1判定部と、前記第1判定部により前記制御圧力の変動が発生したと判定された場合、第1制御モードに切り替える第1切替部と、前記第1制御モードに切り替えられた後、前記制御圧力の変動を打ち消して目標圧力となるための液体流量を選択する選択部と、前記選択部により液体流量が選択された後、単位時間ごとに前記目標圧力を段階的に切り替え、切り替えた該目標圧力となるような液体流量に切り替える第2切替部と、前記受信部により受信された前記ゲイン情報、前記第2取得部により取得された温湿度、または前記循環機構により循環される液体の情報のうち少なくともいずれかに基づいて、前記選択部により選択された液体流量、または前記第2切替部により切り替えられた液体流量のうち少なくともいずれかに対してゲインを設定する設定部と、前記選択部により選択された液体流量で液体が流れるように前記循環機構を制御する循環制御部と、を備え、前記循環制御部は、前記第2切替部により切り替えられた液体流量で液体が流れるように前記循環機構を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、液体の圧力変動が発生した場合でも安定した圧力制御を行って吐出ムラを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る画像形成装置の全体構成の概要の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る画像形成装置の液体供給装置の液体の流路構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る画像形成装置の機能ブロック構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、従来のPID制御による圧力変動を説明する図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る画像形成装置の圧力安定化制御による圧力変動を説明する図である。
【
図6】
図6は、吐出量ごとの圧力変動の測定について説明する図である。
【
図7】
図7は、インク流量テーブルの一例を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る画像形成装置の圧力制御においてPID制御に切り替える動作を説明する図である。
【
図9】
図9は、実施形態に画像形成装置の圧力制御の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、
図1~
図9を参照しながら、本発明に係る液体吐出装置、流量制御方法およびプログラムの実施形態を詳細に説明する。また、以下の実施形態によって本発明が限定されるものではなく、以下の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想到できるもの、実質的に同一のもの、およびいわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下の実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換、変更および組み合わせを行うことができる。
【0010】
(画像形成装置の全体構成)
図1は、実施形態に係る画像形成装置の全体構成の概要の一例を示す図である。
図1を参照しながら、本実施形態に係る画像形成装置1の全体構成について説明する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る画像形成装置1(液体吐出装置の一例)は、コントロールユニット3と、ヘッド100と、加圧送液ポンプ202と、減圧送液ポンプ203と、供給送液ポンプ204と、加圧側電磁弁285と、減圧側電磁弁287と、加圧側圧力センサ242(圧力検知部の一例)と、減圧側圧力センサ252(圧力検知部の一例)と、温湿度センサ295(温湿度検知部)と、を備えている。
【0012】
コントロールユニット3は、画像形成装置1の各ユニットの動作を制御する装置である。コントロールユニット3は、
図1に示すように、CPU(Central Processing Unit)31と、ROM(Read Only Memory)32と、メモリ33と、I/F34と、ヘッド制御回路35と、ポンプ制御回路36と、弁制御回路37と、を備えている。
【0013】
CPU31は、メモリ33をワークエリア(作業領域)としてROM32に格納されたプログラムを実行することにより、画像形成装置1全体の動作を制御する。具体的には、CPU31は、ヘッド制御回路35、ポンプ制御回路36および弁制御回路37それぞれを介して、ヘッド100、加圧送液ポンプ202、減圧送液ポンプ203、供給送液ポンプ204、加圧側電磁弁285および減圧側電磁弁287等を制御する。
【0014】
メモリ33は、例えば、CPU31のワールドエリア(作業領域)として機能する記憶装置である。また、メモリ33は、各種のデータを記憶する不揮発性の記憶装置を含むものとしてもよい。
【0015】
I/F34は、画像形成装置1が外部のPC(Personal Computer)2とデータ通信を行うために接続するためのインターフェースである。なお、
図1では、画像形成装置1のI/F34がPC2に直接接続されているが、これに限定されるものではなく、例えば、ネットワークを介してPC2に接続されてもよく、あるいは、無線通信によりPC2とデータ通信を行うものとしてもよい。
【0016】
PC2は、画像形成装置1に対して印刷データ等を送信する情報処理装置である。また、PC2は、後述するようにインク流量に対するゲイン情報を送信する。
【0017】
ヘッド制御回路35は、CPU31からの指令に従って、ヘッド100の吐出動作を制御する回路である。ポンプ制御回路36は、CPU31からの指令に従って、加圧送液ポンプ202、減圧送液ポンプ203および供給送液ポンプ204の送液動作を制御する回路である。弁制御回路37は、CPU31からの指令に従って、加圧側電磁弁285および減圧側電磁弁287の開閉動作を制御する回路である。
【0018】
ヘッド100は、ピエゾ素子(圧電素子)を備えており、ヘッド制御回路35からピエゾ素子に駆動振動が印加されることにより、収縮運動を起こし、当該収縮運動による圧力変化によってインク(以下、単に液体と称する場合がある)を印刷媒体等に吐出する。
【0019】
加圧送液ポンプ202は、後述する
図2に示す加圧サブタンク211に対して液体を送液するポンプである。減圧送液ポンプ203は、後述する
図2に示す減圧サブタンク221から液体を回収する方向に液体を送液するポンプである。供給送液ポンプ204は、後述する
図2に示すメインタンク201から供給サブタンク231へ送液するポンプである。
【0020】
加圧側電磁弁285は、後述する
図2に示す加圧側逆流経路284の経路を開閉するための電磁弁である。減圧側電磁弁287は、後述する
図2に示す減圧側逆流経路286の経路を開閉するための電磁弁である。
【0021】
加圧側圧力センサ242は、後述する
図2に示す加圧マニホールド241の加圧側の液体の圧力を検知する圧力センサである。減圧側圧力センサ252は、後述する
図2に示す減圧マニホールド251の減圧側の液体の圧力を検知する圧力センサである。温湿度センサ295は、液体循環装置200近傍の温湿度(温度および湿度)を検知するセンサである。
【0022】
なお、
図1に示した画像形成装置1の構成は一例を示すものであり、
図1に示した構成要素とは異なるの構成要素を含むものとしてもよい。
【0023】
(液体供給装置の流路構成)
図2は、実施形態に係る画像形成装置の液体供給装置の液体の流路構成の一例を示す図である。
図2を参照しながら、本実施形態に係る画像形成装置1の液体循環装置200の流路構成について説明する。
【0024】
画像形成装置1は、
図2に示すような液体循環装置200を備えている。液体循環装置200は、ヘッド100から吐出する液体300を貯留するメインタンク201と、循環経路301に接続された供給サブタンク231(タンクの一例)と、メインタンク201から供給サブタンク231に液体経路283を介して送液する供給送液ポンプ204と、を備えている。循環経路301は、加圧サブタンク211(加圧タンク)と、減圧サブタンク221(減圧タンク)と、加圧送液ポンプ202(循環機構の一例)と、減圧送液ポンプ203(循環機構の一例)と、加圧マニホールド241(マニホールドの一例)と、減圧マニホールド251(マニホールドの一例)と、加圧側電磁弁285と、減圧側電磁弁287と、フィルタ271と、脱気装置272と、を備えている。
【0025】
加圧マニホールド241は、複数のヘッド100の供給口へ加圧ダンパ261を介して送液するためのマニホールドである。加圧マニホールド241は、液体経路291を介して加圧サブタンク211に接続している。加圧マニホールド241には、加圧側の液体の圧力を検知する加圧側圧力センサ242が設けられている。
【0026】
減圧マニホールド251は、複数のヘッド100の排出口から減圧ダンパ262を介して液体を受けるためのマニホールドである。減圧マニホールド251は、液体経路292を介して減圧サブタンク221に接続されている。減圧マニホールド251には、減圧側の液体の圧力を検知する減圧側圧力センサ252が設けられている。
【0027】
加圧送液ポンプ202は、供給サブタンク231につながる共通液体経路288と、加圧サブタンク211とを通じる液体経路281に配置され、ヘッド100側である加圧サブタンク211に向けて液体を送液するポンプである。これによって、加圧サブタンク211から液体が加圧されて加圧マニホールド241に送られる。
【0028】
減圧送液ポンプ203は、供給サブタンク231につながる共通液体経路288と、減圧サブタンク221とを通じる液体経路282に配置され、減圧サブタンク221から液体を回収する方向に液体を送液するポンプである。これによって、減圧された減圧サブタンク221に減圧マニホールド251から液体が回収(排出)される。
【0029】
液体経路281には、異物を除去するフィルタ271と、溶存気体を除去する脱気装置272と、が設けられている。以下、「上流側」、「下流側」という表現は、循環経路301における通常の循環での液体の流れの方向(
図2の液体経路281、282近傍に付した実線矢印の方向)における上流側、下流側の意味を示すものとする。
【0030】
ここで、供給サブタンク231に通じる共通液体経路288と、液体経路281と、液体経路282との接続部を接続点aとすると、液体経路282と、液体経路281の減圧送液ポンプ203の下流側とが接続されている接続点aは、フィルタ271および脱気装置272よりも上流側である。したがって、減圧送液ポンプ203によって減圧サブタンク221に回収された液体は、再度、フィルタ271で異物が除去され、脱気装置272で脱気された後、加圧送液ポンプ202によって加圧サブタンク211に送液されて、循環されることになる。
【0031】
また、液体経路281には、加圧送液ポンプ202を迂回する加圧側逆流経路284が設けられている。加圧側逆流経路284には、経路を開閉する加圧側電磁弁285を設けられている。すなわち、加圧側逆流経路284の一端は、加圧送液ポンプ202と加圧サブタンク211との間に接続され、加圧側逆流経路284の他端は、接続点aに接続されている。
【0032】
また、液体経路282には、減圧送液ポンプ203を迂回する減圧側逆流経路286が設けられている。減圧側逆流経路286には、経路を開閉する減圧側電磁弁287が設けられている。すなわち、減圧側逆流経路286の一端は、減圧送液ポンプ203と減圧サブタンク221との間に接続され、減圧側逆流経路286の他端は、液体経路281の脱気装置272と加圧送液ポンプ202との間の接続点bに接続されている。
【0033】
なお、加圧側逆流経路284および減圧側逆流経路286における逆流の方向は、
図2に示す破線矢印の方向である。
【0034】
次に、液体循環装置200における液体の循環動作について説明する。メインタンク201に貯留された液体300は、供給サブタンク231内の液面を検知する液面検知センサ(図示せず)の検知結果に基づいて、供給送液ポンプ204によって供給サブタンク231に送液される。また、加圧送液ポンプ202による送液によって加圧サブタンク211が加圧され、減圧送液ポンプ203による送液によって減圧サブタンク221が減圧されることによって、減圧サブタンク221と加圧サブタンク211との間には圧力差が与えられている。この圧力差によって、加圧サブタンク211から加圧マニホールド241、加圧ダンパ261、ヘッド100、減圧ダンパ262、減圧マニホールド251、減圧サブタンク221を経て、加圧サブタンク211に戻る循環経路301で液体が流れる。
【0035】
加圧サブタンク211は、加圧側圧力センサ242により検知された圧力を基に加圧送液ポンプ202によって目標圧力に加圧されている。加圧送液ポンプ202は、加圧側圧力センサ242により検知された圧力が設定閾値より低くなったときに、供給サブタンク231から加圧サブタンク211へ送液する。
【0036】
減圧サブタンク221は、減圧側圧力センサ252により検知された圧力を基に減圧送液ポンプ203によって目標圧力に減圧されている。減圧送液ポンプ203は、減圧側圧力センサ252により検知された圧力が設定閾値より高くなったときに、減圧サブタンク221から供給サブタンク231に送液する。
【0037】
圧力差によって加圧サブタンク211から、加圧マニホールド241、ヘッド100および減圧マニホールド251を介して、減圧サブタンク221に液体が流れると、加圧サブタンク211の圧力が低下する。加圧送液ポンプ202は、加圧側圧力センサ242により検知された加圧サブタンク211の圧力が低下すると、供給サブタンク231から液体を加圧サブタンク211に補充して加圧する。
【0038】
また、同様に、圧力差によって加圧サブタンク211から、加圧マニホールド241、ヘッド100および減圧マニホールド251を介して、減圧サブタンク221に液体が流れると、減圧サブタンク221の圧力が上昇する(負圧が弱まる)。減圧送液ポンプ203は、減圧側圧力センサ252により検知された減圧サブタンク221の圧力が上昇すると、液体を供給サブタンク231に排出して減圧する。
【0039】
ここで、ヘッド100からの液体の吐出等で消費されていない場合には、供給サブタンク231の液体量は大きく変化しない。これに対して、ヘッド100によって液体が吐出される等して消費されている場合には、供給サブタンク231の液体量が減少するので、供給送液ポンプ204は、液面センサ等で検知された液体量の減少に基づいて、メインタンク201から供給サブタンク231に液体を補充供給する。
【0040】
(画像形成装置の機能構成)
図3は、実施形態に係る画像形成装置の機能ブロック構成の一例を示す図である。
図3を参照しながら、本実施形態に係る画像形成装置1(コントロールユニット3)の機能ブロックの構成について説明する。
【0041】
図3に示すように、本実施形態に係る画像形成装置1は、加圧側圧力取得部401(第1取得部の一例)と、減圧側圧力取得部402(第1取得部の一例)と、温湿度取得部403(第2取得部)と、圧力変動判定部404(第1判定部)と、制御切替部405(第1切替部)と、流量選択部406(選択部)と、流量切替部407(第2切替部)と、目標圧力判定部408(第2判定部)と、ヘッド制御部409と、ポンプ制御部410(循環制御部)と、設定部411と、通信部412(受信部)と、記憶部413と、を有する。
【0042】
加圧側圧力取得部401は、加圧側圧力センサ242により検知された加圧マニホールド241内の液体の圧力を取得する機能部である。加圧側圧力取得部401は、例えば、
図1に示すCPU31により実行されるプログラムにより実現される。
【0043】
減圧側圧力取得部402は、減圧側圧力センサ252により検知された減圧マニホールド251内の液体の圧力を取得する機能部である。減圧側圧力取得部402は、例えば、
図1に示すCPU31により実行されるプログラムにより実現される。
【0044】
なお、加圧側圧力取得部401または減圧側圧力取得部402のうち少なくともいずれかにより取得された圧力を、以下、制御圧力と称する場合があるまた、制御圧力は、加圧側圧力取得部401および減圧側圧力取得部402により取得されたそれぞれの圧力を加味した圧力(例えば、平均値等)であってもよい。
【0045】
温湿度取得部403は、温湿度センサ295により検知された液体循環装置200近傍の温湿度(温度および湿度)を取得する機能部である。温湿度取得部403は、例えば、
図1に示すCPU31により実行されるプログラムにより実現される。
【0046】
圧力変動判定部404は、制御圧力の変動を検知して、当該制御圧力の最大変動量を判定する機能部である。圧力変動判定部404は、例えば、
図1に示すCPU31により実行されるプログラムにより実現される。
【0047】
制御切替部405は、圧力変動判定部404により制御圧力の変動量が所定の閾値を超えたことが検知された場合、本実施形態の特徴である圧力安定化制御に切り替える機能部である。この圧力安定化制御の動作内容については、後述する。また、制御切替部405は、圧力安定化制御による制御圧力の制御の結果、制御圧力が目標圧力を含む有効範囲内に落ち着いた場合、PID制御に切り替える。制御切替部405は、例えば、
図1に示すCPU31により実行されるプログラムにより実現される。
【0048】
流量選択部406は、圧力変動判定部404により判定された最大変動量だけ変動した制御圧力に対応するインク流量(液体流量)を選択する機能部である。この場合、流量選択部406は、選択したインク流量に対応する目標圧力に設定する。流量選択部406は、例えば、
図1に示すCPU31により実行されるプログラムにより実現される。
【0049】
流量切替部407は、循環経路301を流れる液体の流量が流量選択部406により選択されたインク流量となるように制御された後、単位時間ごとに目標圧力を段階的に切り替えると共に、切り替えた目標圧力となるようなインク流量に切り替える機能部である。流量切替部407は、例えば、
図1に示すCPU31により実行されるプログラムにより実現される。
【0050】
目標圧力判定部408は、ポンプ制御部410により循環経路301を流れる液体の流量が、流量選択部406により選択されたインク流量、または、流量切替部407により切り替えられたインク流量となるように制御された結果、制御圧力が目標圧力を含む有効範囲内にあるか否かを判定する機能部である。目標圧力判定部408は、例えば、
図1に示すCPU31により実行されるプログラムにより実現される。
【0051】
ヘッド制御部409は、ヘッド100の吐出動作を、ヘッド制御回路35を介して制御する機能部である。ヘッド制御部409は、例えば、
図1に示すCPU31により実行されるプログラムにより実現される。
【0052】
ポンプ制御部410は、加圧送液ポンプ202、減圧送液ポンプ203および供給送液ポンプ204の送液動作を、ポンプ制御回路36を介して制御する機能部である。ポンプ制御部410は、例えば、
図1に示すCPU31により実行されるプログラムにより実現される。
【0053】
設定部411は、流量選択部406により選択されたインク流量、または、流量切替部407により切り替えられたインク流量に対するゲインを設定する機能部である。具体的には、設定部411は、通信部412を介して受信したゲイン情報、循環経路301を循環する液体(インク)のインク情報、または温湿度取得部403により取得された温湿度情報のうち少なくともいずれかに基づいて、ゲインを設定する。設定部411は、例えば、
図1に示すCPU31により実行されるプログラムにより実現される。
【0054】
通信部412は、外部装置(例えば、PC2)とデータ通信をする機能部である。通信部412は、
図1に示すI/F34、およびCPU31により実行されるプログラムにより実現される。
【0055】
記憶部413は、循環経路301での目標圧力、当該目標圧力を含む有効範囲、および、後述するインク流量テーブル等の各種情報を記憶する機能部である。記憶部413は、
図1に示すROM32またはメモリ33により実現される。
【0056】
なお、
図3に示す画像形成装置1の各機能部は、機能を概念的に示したものであって、このような構成に限定されるものではない。例えば、
図3に示す画像形成装置1で独立した機能部として図示した複数の機能部を、1つの機能部として構成してもよい。一方、
図3に示す画像形成装置1で1つの機能部が有する機能を複数に分割し、複数の機能部として構成するものとしてもよい。
【0057】
また、加圧側圧力取得部401、減圧側圧力取得部402、温湿度取得部403、圧力変動判定部404、制御切替部405、流量選択部406、流量切替部407、目標圧力判定部408、ヘッド制御部409、ポンプ制御部410および設定部411の一部または全部は、ソフトウェアであるプログラムではなく、FPGA(Field-Programmable Gate Array)またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0058】
(従来のPID制御による圧力制御)
図4は、従来のPID制御による圧力変動を説明する図である。
図4を参照しながら、従来のPID制御について説明する。
【0059】
従来において、加圧マニホールド、および減圧マニホールドへの液体の送液は、各マニホールドに設置された圧力センサで検知された圧力情報に基づいて、加圧送液ポンプ、および減圧送液ポンプを制御している。その際、各マニホールドへの送液量を急激に変化させると、各マニホールド内の圧力が変化し、ヘッドから吐出される液体(インク)量が一時的に増減し、吐出ムラが発生するため、加圧送液ポンプ、および減圧送液ポンプに対して、急激な圧力変動を発生させないように、検知される圧力情報をフィードバックするPID制御を用いて安定的に送液する制御を行うものとしている。加圧送液ポンプおよび減圧送液ポンプに対してPID制御を行うことで、印刷待機中、印刷中は各マニホールドの圧力を規定圧力で安定させることができる。
【0060】
ただし、印刷での吐出開始および吐出停止時は急激な圧力変動が発生し、PID制御では応答性が悪く、制御圧力が目標圧力に追従するまで時間がかかるため、各マニホールド内の制御圧力が目標圧力に対して下回る下ブレや、目標圧力に対して上回る上ブレが発生することにより吐出ムラが発生する問題がある。
【0061】
(本実施形態の圧力制御)
図5は、実施形態に係る画像形成装置の圧力安定化制御による圧力変動を説明する図である。
図5を参照しながら、本実施形態に係る画像形成装置の圧力安定化制御について説明する。なお、圧力安定化制御による動作モードは、「第1制御モード」に対応する。
【0062】
本実施形態では、印刷での吐出開始および吐出停止時等において、圧力変動判定部404により制御圧力の変動を検知された場合(例えば、変動量が所定の閾値を超えた場合)、制御切替部405によって、圧力制御として圧力安定化制御に切り替えられる。圧力安定化制御に切り替えられると、流量選択部406は、圧力変動判定部404により判定された最大変動量だけ変動した制御圧力に対応するインク流量を選択し、選択したインク流量に対応する目標圧力に設定する。具体的には、制御切替部405は、後述の
図7に示すインク流量テーブルを参照して、最大変動量だけ変動した制御圧力に対応するインク流量を選択する。この場合、
図5に示すように、吐出開始の場合は制御圧力が低下するので、流量選択部406は、通常の目標圧力よりも高い目標圧力に設定する。そして、ポンプ制御部410は、循環経路301を流れる液体の流量が、流量選択部406により選択されたインク流量となるように、ポンプ制御回路36を介して、加圧送液ポンプ202、減圧送液ポンプ203および供給送液ポンプ204の送液動作を制御する。
【0063】
そして、流量切替部407は、その後、単位時間ごとに目標圧力を段階的に低くなるように切り替え、切り替えた目標圧力となるようなインク流量に切り替える。そして、ポンプ制御部410は、循環経路301を流れる液体の流量が、流量切替部407により切り替えられたインク流量となるように、ポンプ制御回路36を介して、加圧送液ポンプ202、減圧送液ポンプ203および供給送液ポンプ204の送液動作を制御する。なお、
図5に示すように、吐出停止の場合には制御圧力が上昇するが、その場合のインク流量および制御圧力の制御についても、上述の吐出開始の制御に準じる方法で行う。
【0064】
そして、上述のような圧力安定化制御の結果、制御圧力が目標圧力を含む有効範囲内に安定した場合、制御切替部405は、圧力安定化制御からPID制御に切り替える。圧力安定化制御からPID制御に切り替える動作の詳細については、
図8で後述する。このように、本実施形態では、圧力制御として圧力安定化制御およびPID制御の2種類の制御を切り替えて制御圧力の制御が行われることにより、印刷での吐出開始および吐出停止時等に圧力変動が発生した場合でも、短時間で制御圧力を目標圧力へ制御することができる。
【0065】
図6は、吐出量ごとの圧力変動の測定について説明する図である。
図7は、インク流量テーブルの一例を示す図である。次に、
図6および
図7を参照しながら、印刷でのインク吐出時の制御圧力の変動量から目標圧力へ制御するための必要なインク流量の決定方法について説明する。
【0066】
まず、
図6に示すように、循環経路301を循環するインク流量の安定状態から、いくつかの種類の吐出量によりヘッド100に液体の吐出動作をさせ、各吐出量に対する圧力変動パターンを記録する。例えば、液体の吐出制御において最大の吐出量から最少の吐出量までの範囲内での何段階かに分けたうちの各段階の吐出量で吐出させた場合の圧力変動パターンを記録する。
図6に示す例では、3種類の吐出量でヘッド100に液体の吐出動作をさせた場合の、圧力変動パターンを示している。
図6に示すように、各圧力変動パターンではそれぞれ安定状態から制御圧力の変動量が最大となったときの制御圧力がそれぞれPa、Pb、Pcであることを示している。
【0067】
その後、各吐出量に対応する制御圧力の変動量(最大変動量)を打ち消すためのインク流量を実験結果から求め、
図7に示すような制御圧力の最大変動量と、インク流量とを対応付けるインク流量テーブルとして作成しておく。作成されたインク流量テーブルは、記憶部413に記憶される。
図7に示すインク流量テーブルでは、例えば、圧力変動判定部404により判定された最大変動量だけ変動した場合の制御圧力が、Pc以上、かつPb未満である場合、インク流量としてy[ml/s]を選択する。
【0068】
なお、
図7に示すインク流量テーブルは、テーブル形式の情報としているが、これに限定されるものではなく、テーブルの各カラムの値が互いに関連付けて管理することができれば、どのような形式の情報であってもよい。
【0069】
そして、画像形成装置1において制御圧力に対する圧力制御が行われている場合、流量選択部406は、記憶部413に予め記憶されているインク流量テーブルを参照し、圧力変動判定部404により判定された最大変動量だけ変動した制御圧力に対応するインク流量を選択し、選択したインク流量に対応する目標圧力に設定する。そして、ポンプ制御部410は、循環経路301を流れる液体の流量が、流量選択部406により選択されたインク流量となるように、ポンプ制御回路36を介して、加圧送液ポンプ202、減圧送液ポンプ203および供給送液ポンプ204の送液動作を制御する。
【0070】
その後、流量切替部407は、単位時間ごとに目標圧力を段階的に低くなるように切り替え、切り替えた目標圧力となるようなインク流量に切り替える。そして、ポンプ制御部410は、循環経路301を流れる液体の流量が、流量切替部407により切り替えられたインク流量となるように、ポンプ制御回路36を介して、加圧送液ポンプ202、減圧送液ポンプ203および供給送液ポンプ204の送液動作を制御する。
【0071】
なお、
図6に示す例では、圧力変動パターンとして3種類の吐出量に対応するパターンを用いて、インク流量テーブルを作成するものとしたが、これに限定されるものではな
く、異なる種類の吐出量に対応するパターンを記録し、インク流量テーブルを作成しておくものとしてもよい。
【0072】
図8は、実施形態に係る画像形成装置の圧力制御においてPID制御に切り替える動作を説明する図である。
図8を参照しながら、本実施形態に係る画像形成装置の圧力制御においてPID制御に切り替える動作について説明する。なお、PID制御による動作モードは、「第2制御モード」に対応する。
【0073】
画像形成装置1は、印刷での吐出開始時に、
図5で上述したような圧力安定化制御に切り替えて、制御圧力が目標圧力を含む有効範囲内となるように安定化させる。その後、目標圧力判定部408は、ポンプ制御部410により循環経路301を流れる液体の流量が、流量選択部406により選択されたインク流量、または、流量切替部407により切り替えられたインク流量となるように制御された結果、制御圧力が目標圧力を含む有効範囲内に継続して時間t(所定時間)だけ維持したか否かを判定する。ここで、時間tについては、予め実験等によって定めておくようにすればよい。そして、目標圧力判定部408により制御圧力が目標圧力を含む有効範囲内に継続して時間t(所定時間)だけ維持したことが判定された場合、制御切替部405は、制御圧力に対してPID制御に切り替える。
【0074】
(画像形成装置の圧力制御の流れ)
図9は、実施形態に画像形成装置の圧力制御の流れの一例を示すフローチャートである。
図9を参照しながら、本実施形態に係る画像形成装置1の圧力制御の流れについて説明する。なお、
図9に示すフローチャートの開始時においては、PID制御により制御圧力は安定状態(目標圧力を含む有効範囲内)で制御されているものとする。
【0075】
<ステップS11>
圧力変動判定部404は、印刷の吐出開始または吐出停止等により、制御圧力の変動が起きたか否かを検知する。具体的には、圧力変動判定部404は、制御圧力が所定の閾値(上限値)を超えたか否か、または、所定の閾値(下限値)を下回ったか否かを検知する。制御圧力が変動して所定の閾値を超えた場合(ステップS11:Yes)、ステップS12へ移行し、超えていない場合(ステップS11:No)、圧力変動判定部404は、継続して制御圧力の変動を監視する。
【0076】
<ステップS12>
制御切替部405は、圧力変動判定部404により制御圧力の変動量が所定の閾値を超えたことが検知された場合、圧力安定化制御に切り替える。そして、ステップS13へ移行する。
【0077】
<ステップS13>
流量選択部406は、記憶部413に予め記憶されているインク流量テーブルを参照し、圧力変動判定部404により判定された最大変動量だけ変動した制御圧力に対応するインク流量を選択し、選択したインク流量に対応する目標圧力に設定する。そして、ポンプ制御部410は、循環経路301を流れる液体の流量が、流量選択部406により選択されたインク流量となるように、ポンプ制御回路36を介して、加圧送液ポンプ202、減圧送液ポンプ203および供給送液ポンプ204の送液動作を制御する。そして、ステップS14へ移行する。
【0078】
<ステップS14>
流量切替部407は、単位時間ごとに目標圧力を段階的に切り替え、切り替えた目標圧力となるようなインク流量に切り替える。そして、ポンプ制御部410は、循環経路301を流れる液体の流量が、流量切替部407により切り替えられたインク流量となるように、ポンプ制御回路36を介して、加圧送液ポンプ202、減圧送液ポンプ203および供給送液ポンプ204の送液動作を制御する。そして、ステップS15へ移行する。
【0079】
<ステップS15>
目標圧力判定部408は、ポンプ制御部410により循環経路301を流れる液体の流量が、流量切替部407により切り替えられたインク流量となるように制御された結果、制御圧力が目標圧力を含む有効範囲内となったか否かを判定する。制御圧力が目標圧力を含む有効範囲内となった場合(ステップS15:Yes)、ステップS16へ移行し、制御圧力が目標圧力を含む有効範囲外である場合(ステップS15:No)、ステップS14へ戻る。
【0080】
<ステップS16>
目標圧力判定部408は、制御圧力が目標圧力を含む有効範囲内に継続して所定時間だけ維持したか否かを判定する。制御圧力が有効範囲内に入ってから所定時間経過した場合(ステップS16:Yes)、ステップS17へ移行し、経過していない場合(ステップS16:No)、ステップS18へ移行する。
【0081】
<ステップS17>
目標圧力判定部408により制御圧力が目標圧力を含む有効範囲内に継続して所定時間だけ維持したことが判定された場合、制御切替部405は、制御圧力に対してPID制御に切り替える。
【0082】
<ステップS18>
目標圧力判定部408は、制御圧力が有効範囲内に入ってから所定時間経過する前に、有効範囲から離脱したか否かを判定する。有効範囲から離脱した場合(ステップS18:Yes)、ステップS13へ戻り、有効範囲内に維持している場合(ステップS18:No)、ステップS14へ戻る。
【0083】
以上のような、ステップS11~S18の流れによって、画像形成装置1による圧力制御が行われる。
【0084】
以上のように、本実施形態に係る画像形成装置1では、印刷での吐出開始および吐出停止等において、圧力変動判定部404により制御圧力の変動を検知された場合、制御切替部405によって、圧力制御として圧力安定化制御に切り替えられる動作が行われる。圧力安定化制御では、流量選択部406は、圧力変動判定部404により判定された最大変動量だけ変動した制御圧力に対応するインク流量を選択し、選択したインク流量に対応する目標圧力に設定する。そして、ポンプ制御部410は、循環経路301を流れる液体の流量が、流量選択部406により選択されたインク流量となるように、ポンプ制御回路36を介して、加圧送液ポンプ202、減圧送液ポンプ203および供給送液ポンプ204の送液動作を制御する。これによって、液体の圧力変動が発生した場合でも、制御圧力を短時間で目標圧力を含む有効範囲(目標圧力範囲)内となるように制御することができ、安定した圧力制御を行って吐出ムラを抑制することができる。
【0085】
また、流量選択部406により最大変動量だけ変動した制御圧力に対応するインク流量が選択された後、流量切替部407は、単位時間ごとに目標圧力を段階的に低くなるように切り替え、切り替えた目標圧力となるようなインク流量に切り替えるものとしている。これによって、液体の圧力変動が発生した場合でも、制御圧力を短時間で目標圧力を含む有効範囲(目標圧力範囲)内となるように制御することができると共に、精度の高い圧力制御が可能となる。
【0086】
また、圧力安定化制御により、制御圧力が目標圧力を含む有効範囲内となるように安定化させた後、目標圧力判定部408により制御圧力が目標圧力を含む有効範囲(目標圧力範囲)内に継続して所定時間だけ維持したことが判定された場合、制御切替部405は、制御圧力に対してPID制御に切り替えるものとしている。これによって、加圧側圧力取得部401および減圧側圧力取得部402により取得された制御圧力がフィードバックされる制御がなされ、目標圧力範囲内となるように制御されるので、制御圧力を精度よく目標圧力範囲内に維持させることができる。
【0087】
なお、流量選択部406による選択されるインク流量、または流量切替部407により切り替えらえるインク流量のうち少なくいずれかは、上述のように設定部411によりゲイン設定させるものとしてもよい。設定部411は、例えば、通信部412を介して受信したゲイン情報、循環経路301を循環する液体(インク)のインク情報、または温湿度取得部403により取得された温湿度情報のうち少なくともいずれかに基づいて、ゲインを設定するとものとすればよい。
【0088】
また、上述の実施形態において、画像形成装置1の各機能部の少なくともいずれかがプログラムの実行によって実現される場合、そのプログラムは、ROM等に予め組み込まれて提供される。また、上述の実施形態に係る画像形成装置1で実行されるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、フレキシブルディスク(FD)、CD-R(Compact Disk-Recordable)、またはDVD(Digital Versatile Disc)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。また、上述の実施形態に係る画像形成装置1で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、上述の実施形態に係る画像形成装置1で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。また、上述の実施形態の画像形成装置1で実行されるプログラムは、上述した各機能部のうち少なくともいずれかを含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU31が上述の記憶装置(例えば、ROM32)からプログラムを読み出して実行することにより、上述の各機能部が主記憶装置(例えば、メモリ33)上にロードされて生成されるようになっている。
【符号の説明】
【0089】
1 画像形成装置
2 PC
3 コントローラユニット
31 CPU
32 ROM
33 メモリ
34 I/F
35 ヘッド制御回路
36 ポンプ制御回路
37 弁制御回路
100 ヘッド
200 液体循環装置
201 メインタンク
202 加圧送液ポンプ
203 減圧送液ポンプ
204 供給送液ポンプ
211 加圧サブタンク
221 減圧サブタンク
231 供給サブタンク
241 加圧マニホールド
242 加圧側圧力センサ
251 減圧マニホールド
252 減圧側圧力センサ
261 加圧ダンパ
262 減圧ダンパ
271 フィルタ
272 脱気装置
281~283 液体経路
284 加圧側逆流経路
285 加圧側電磁弁
286 減圧側逆流経路
287 減圧側電磁弁
288 共通液体経路
291、292 液体経路
295 温湿度センサ
300 液体
301 循環経路
401 加圧側圧力取得部
402 減圧側圧力取得部
403 温湿度取得部
404 圧力変動判定部
405 制御切替部
406 流量選択部
407 流量切替部
408 目標圧力判定部
409 ヘッド制御部
410 ポンプ制御部
411 設定部
412 通信部
413 記憶部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0090】