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特許7103211半導体ウェーハの評価方法および製造方法ならびに半導体ウェーハの製造工程管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】半導体ウェーハの評価方法および製造方法ならびに半導体ウェーハの製造工程管理方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/956 20060101AFI20220712BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
G01N21/956 A
H01L21/66 J
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018245448
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2020106399
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】長澤 崇裕
(72)【発明者】
【氏名】村上 雅大
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-163284(JP,A)
【文献】特開2000-114333(JP,A)
【文献】特開2010-129748(JP,A)
【文献】特開2018-082004(JP,A)
【文献】特開2005-063984(JP,A)
【文献】特開2005-166846(JP,A)
【文献】特開2007-123543(JP,A)
【文献】特開平05-291225(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108376655(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェーハの評価方法であって、
評価対象の半導体ウェーハは、研磨面を有する半導体ウェーハであり、
前記半導体ウェーハを一種以上の洗浄液により洗浄する洗浄工程を含み、
前記洗浄工程の前と後にそれぞれレーザー表面検査装置を用いて前記研磨面のLPDを測定し、
前記測定により得られた測定結果に基づき、下記判別基準:
【表1】
により、LPDとして測定された欠陥または異物の種類を判別することを含み、前記PIDは凸状の欠陥である、半導体ウェーハの評価方法。
【請求項2】
前記洗浄工程は、一種以上の無機酸含有洗浄液による洗浄工程である、請求項1に記載の半導体ウェーハの評価方法。
【請求項3】
前記洗浄工程は、HF洗浄とSC-1洗浄とを含む、請求項1または2に記載の半導体ウェーハの評価方法。
【請求項4】
半導体ウェーハに鏡面研磨を施し研磨面を形成すること、
前記研磨面が形成された半導体ウェーハを一種以上の洗浄液により洗浄する洗浄工程を行うこと、
前記洗浄工程の前と後にそれぞれレーザー表面検査装置を用いて前記研磨面のLPDを測定すること、および
前記測定により得られた測定結果に基づき、下記判別基準:
【表2】
により、LPDとして測定された欠陥または異物の種類を判別すること、
を含み、
前記判別の結果に基づき良品と判定された半導体ウェーハを製品として出荷するための準備工程に付すこと
を更に含み、前記PIDは凸状の欠陥である、研磨面を有する半導体ウェーハの製造方法。
【請求項5】
前記判別の結果、不良品と判定された半導体ウェーハを再加工工程に付すこと、および
前記再加工工程後の半導体ウェーハを製品として出荷するための準備工程に付すこと、
を更に含む、請求項4に記載の半導体ウェーハの製造方法。
【請求項6】
前記再加工工程は、研磨工程および洗浄工程からなる群から選択される少なくとも1つの工程である、請求項5に記載の半導体ウェーハの製造方法。
【請求項7】
前記不良品と判別された半導体ウェーハは、PIDと判別されたLPDの数が良品に許容されるレベルを超えているため不良品と判定された半導体ウェーハであり、かつ
前記再加工工程は研磨工程である、請求項6に記載の半導体ウェーハの製造方法。
【請求項8】
前記不良品と判別された半導体ウェーハは、固着パーティクルと判別されたLPDの数が良品に許容されるレベルを超えているため不良品と判定された半導体ウェーハであり、かつ
前記再加工工程は洗浄工程である、請求項6に記載の半導体ウェーハの製造方法。
【請求項9】
半導体ウェーハの製造工程管理方法であって、
管理対象の製造工程は、
半導体ウェーハに鏡面研磨を施し研磨面を形成する研磨工程を行うこと、および
前記研磨面が形成された半導体ウェーハを一種以上の洗浄液により洗浄する洗浄工程を行うこと、
を含み、
前記洗浄工程の前と後にそれぞれレーザー表面検査装置を用いて前記研磨面のLPDを測定すること、および
前記測定により得られた測定結果に基づき、下記判別基準:
【表3】
により、LPDとして測定された欠陥または異物の種類を判別すること、
を含み、
前記判別の結果に基づき、前記研磨工程の管理および前記洗浄工程の管理の一方または両方の必要性を判定すること、
を更に含み、前記PIDは凸状の欠陥である、半導体ウェーハの製造工程管理方法。
【請求項10】
固着パーティクルと判別されたLPDの数が良品に許容されるレベルを超えていたならば、前記洗浄工程の管理が必要と判定する、請求項9に記載の半導体ウェーハの製造工程管理方法。
【請求項11】
前記洗浄工程の管理は、前記洗浄工程で使用される洗浄液の一種以上を交換することを含む、請求項9または10に記載の半導体ウェーハの製造工程管理方法。
【請求項12】
PIDと判別されたLPDの数が良品に許容されるレベルを超えていたならば、前記研磨工程の管理が必要と判定する、請求項9に記載の半導体ウェーハの製造工程管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハの評価方法および製造方法ならびに半導体ウェーハの製造工程管理方法に関し、詳しくは、研磨面を有する半導体ウェーハの評価方法および製造方法ならびに研磨面を有する半導体ウェーハの製造工程管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハを評価するための装置として、レーザー表面検査装置が広く用いられている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-212009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザー表面検査装置による評価は、評価対象の半導体ウェーハの表面に光を入射させ、この表面からの放射光(散乱光および反射光)を検出することにより、半導体ウェーハの欠陥・異物の有無やサイズを評価するものである。
【0005】
半導体ウェーハの中で、ポリッシュドウェーハ(polished wafer)は、研磨工程を含む各種工程を経て製造される半導体ウェーハであり、その表面(最表面)は研磨面である。ここで研磨面とは、鏡面研磨(鏡面仕上げとも呼ばれる。)が施された面をいうものとする。研磨面には、各種の欠陥・異物が存在し得る。それら欠陥・異物は発生原因が異なるため、低減するための対策(再加工、工程管理等)も異なる。そのため、研磨面に存在する欠陥・異物の種類を判別することができれば、種類に応じた対策を施すことにより、欠陥や異物が少ないポリッシュドウェーハを提供することが可能となる。
【0006】
本発明の一態様は、ポリッシュドウェーハの研磨面に存在する欠陥・異物の種類を判別可能な新たな評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ポリッシュドウェーハの研磨面に存在する欠陥・異物は、一般に、パーティクル(Particle)とPID(Polished Induced Defect)とに大別される。パーティクルは研磨面に付着している異物であり、PIDは研磨工程において導入された凸状の欠陥である。パーティクルは研磨面の表面に付着した異物であるため、従来、半導体ウェーハに通常施される洗浄処理によって容易に除去可能と考えられていた。これに対し、PIDは欠陥であるため、そのような洗浄処理によっては除去されない。そこで、パーティクルとPIDとを判別するために、ある洗浄工程の前にはLPD(Light Point Defect)として測定されるがその洗浄工程の後には測定されないものをパーティクル、その洗浄工程の前も後もLPDとして測定されるものをPIDと判別することが考えられる。しかし本発明者らは検討を重ねる中で、例えば同じ洗浄液を繰り返し使用して洗浄液が劣化することによって、ある洗浄工程の洗浄力が低下すると、その洗浄工程後に残留するパーティクルの数が増加する現象が発生することを新たに見出した。この点に関して、本発明者らは、ある洗浄工程(検討対象の洗浄工程)により除去されるパーティクルを「通常パーティクル(Normal Particle)」、ある洗浄工程の後に残留しているパーティクルを「固着パーティクル(Firmly-adherent particle)」と分類することした。通常パーティクルと固着パーティクルとを判別することができれば、例えば固着パーティクルの数を指標とすること等により、ある洗浄工程の洗浄力の低下を検知することができ、例えば、その洗浄工程で使用されている洗浄液を交換すべき時期を把握することが可能となる。ただし、ある洗浄工程の後にLPDとして測定される欠陥・異物は、固着パーティクルに限られず、PIDである可能性もある。したがって、上記のようにして洗浄工程の洗浄力の低下を検知するためには、固着パーティクルとPIDとを判別できることも求められる。
以上に鑑み本発明者らは、PIDと通常パーティクルと固着パーティクルとを判別するために更に鋭意検討を重ねた結果、以下の評価方法を完成させた。
【0008】
即ち、本発明の一態様は、
研磨面を有する半導体ウェーハの評価方法であって、
上記半導体ウェーハを一種以上の洗浄液により洗浄する洗浄工程を含み、
上記洗浄工程の前と後にそれぞれレーザー表面検査装置を用いて上記研磨面のLPDを測定し、
上記測定により得られた測定結果に基づき、下記判別基準:
【表1】
により、LPDとして測定された欠陥または異物の種類を判別することを含む、半導体ウェーハの評価方法(以下、単に「評価方法」とも記載する。)、
に関する。
【0009】
「通常パーティクル」は、上記の通り、ある洗浄工程(検討対象の洗浄工程)による洗浄によって除去することができる異物である。上記評価方法では、上記の洗浄工程の前には検出されるが上記洗浄工程後には検出されないLPDを、「通常パーティクル」と判別する。
これに対し、上記の洗浄工程によっては除去されない欠陥・異物は、「固着パーティクル」および「PID」である。上記の洗浄工程では除去されないため、いずれもLPDとして測定される。
ただし、本発明者らの検討により、「固着パーティクル」は、洗浄工程の前後で検出サイズが変わらないか、または洗浄工程後に検出サイズが小さくなることが判明した。固着パーティクルは、洗浄工程により、その一部が溶解し小さく場合があることが理由と推察される。
一方、本発明者らの検討により、「PID」は、固着パーティクルと異なり、洗浄工程後の検出サイズが洗浄工程前の検出サイズより大きくなることも判明した。これは、洗浄工程により研磨面がエッチングされる際にPIDがマスクのような役割を果たして選択的に残されることが理由と推察される。
以上の本発明者らの検討により新たに判明した現象に基づき決定された上記の表Aに示す判別基準によれば、「PID」と「通常パーティクル」と「固着パーティクル」とを判別することが可能になる。その結果、例えば、洗浄工程の洗浄力の低下を検知することができる。これにより、洗浄液の交換の必要性を判断することや、洗浄工程後の半導体ウェーハを再洗浄すべきか否かを判定することが可能となる。更に、例えばLPDとして測定されたPIDの数を指標とすること等により、再研磨の必要性や研磨工程の工程管理の要否を判定することも可能となる。
【0010】
一態様では、上記洗浄工程は、一種以上の無機酸含有洗浄液による洗浄工程であることができる。
【0011】
一態様では、上記洗浄工程は、HF洗浄とSC-1洗浄とを含むことができる。
【0012】
本発明の一態様は、
半導体ウェーハに鏡面研磨を施し研磨面を形成すること、
上記研磨面が形成された半導体ウェーハを一種以上の洗浄液により洗浄する洗浄工程を行うこと、
上記洗浄工程の前と後にそれぞれレーザー表面検査装置を用いて上記研磨面のLPDを測定すること、および
上記測定により得られた測定結果に基づき、上記表Aに示す判別基準により、LPDとして測定された欠陥または異物の種類を判別すること、
を含み、
上記判別の結果に基づき良品と判定された半導体ウェーハを製品として出荷するための準備工程に付すこと
を更に含む、研磨面を有する半導体ウェーハの製造方法(以下、単に「製造方法」とも記載する。)、
に関する。
【0013】
一態様では、上記製造方法は、上記判別の結果、不良品と判定された半導体ウェーハを再加工工程に付すこと、および上記再加工工程後の半導体ウェーハを製品として出荷するための準備工程に付すことを更に含むことができる。
【0014】
一態様では、上記再加工工程は、研磨工程および洗浄工程からなる群から選択される少なくとも1つの工程であることができる。
【0015】
本発明の一態様は、
半導体ウェーハの製造工程管理方法であって、
管理対象の製造工程は、
半導体ウェーハに鏡面研磨を施し研磨面を形成する研磨工程を行うこと、および
上記研磨面が形成された半導体ウェーハを一種以上の洗浄液により洗浄する洗浄工程を行うこと、
を含み、
上記洗浄工程の前と後にそれぞれレーザー表面検査装置を用いて上記研磨面のLPDを測定すること、および
上記測定により得られた測定結果に基づき、上記表Aに示す判別基準により、LPDとして測定された欠陥または異物の種類を判別すること、
を含み、
上記判別の結果に基づき、上記研磨工程の管理および上記洗浄工程の管理の一方または両方の必要性を判定すること、
を更に含む、半導体ウェーハの製造工程管理方法(以下、単に「管理方法」とも記載する。)、
に関する。
【0016】
一態様では、上記洗浄工程の管理は、上記洗浄工程で使用される洗浄液の一種以上を交換することを含むことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様によれば、ポリッシュドウェーハの研磨面に存在する各種欠陥・異物の種類を判別することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[半導体ウェーハの評価方法]
本発明の一態様は、研磨面を有する半導体ウェーハの評価方法であって、上記半導体ウェーハを一種以上の洗浄液により洗浄する洗浄工程を含み、上記洗浄工程の前と後にそれぞれレーザー表面検査装置を用いて上記研磨面のLPDを測定し、上記測定により得られた測定結果に基づき、上記表Aに示す判別基準により、LPDとして測定された欠陥または異物の種類を判別することを含む半導体ウェーハの評価方法に関する。
以下、上記評価方法について、更に詳細に説明する。
【0019】
<評価対象の半導体ウェーハ>
上記評価方法により評価される半導体ウェーハは、研磨面(鏡面研磨が施された面)を有する半導体ウェーハ、即ちポリッシュドウェーハである。上記半導体ウェーハは、シリコンウェーハ等の各種半導体ウェーハであることができる。その直径は、例えば200mm、300mmまたは450mmであることができるが、特に限定されない。
【0020】
<洗浄工程>
上記評価方法では、評価対象の半導体ウェーハについて、洗浄工程が施される前と後に、それぞれレーザー表面検査装置によるLPD測定が実施される。これら2回のLPD測定の間に行われる洗浄工程は、上記半導体ウェーハを一種以上の洗浄液により洗浄する洗浄工程である。かかる洗浄工程では、洗浄液として、一種以上の無機酸を含有する洗浄液等の半導体ウェーハの洗浄に通常用いられる洗浄液の一種または二種以上を使用することができる。無機酸含有洗浄液としては、フッ化水素(HF)、H、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸の一種以上を含む水溶液を挙げることができる。洗浄液の無機酸濃度は、半導体ウェーハの洗浄に通常用いられる濃度であることができ、特に限定されない。一態様では、2回のLPD測定の間に行われる洗浄工程は、HF洗浄とSC-1洗浄とを含むことができる。「HF洗浄」とは、フッ化水素酸(フッ化水素の水溶液)による洗浄処理であり、フッ化水素酸のフッ化水素の濃度は、例えば0.05~5質量%であることができる。「SC-1洗浄(Standard Cleaning-1)」とは、アンモニア水、過酸化水素水およびHOが混合されたSC1液による洗浄処理である。アンモニア水のアンモニア濃度は、例えば25~35質量%であることができ、過酸化水素水のH濃度は、例えば25~35質量%であることができる。SC1液のアンモニア水、過酸化水素水およびHOの混合比については、例えば、過酸化水素水の体積を基準として(1として)、アンモニア水の体積は0.1~1、水の体積は5~15であることができる。また、洗浄は、各洗浄液にウェーハを浸漬することにより行うことができる。各洗浄液へのウェーハ浸漬時間は、例えば0.5~10分間とすることができるが、求められる洗浄レベルに応じて決定すればよく特に限定されない。
【0021】
<LPD測定>
LPD測定は、レーザー表面検査装置を用いて行われる。レーザー表面検査装置としては、光散乱式表面検査装置、面検機等とも呼ばれる半導体ウェーハの表面を検査するための装置として公知の構成のレーザー表面検査装置を、何ら制限なく用いることができる。レーザー表面検査装置は、通常、評価対象の半導体ウェーハの表面をレーザー光によって走査し、放射光(散乱光または反射光)によってウェーハ表面の欠陥・異常をLPDとして検出する。また、LPDからの放射光を測定することにより、欠陥・異常のサイズや位置を認識することができる。レーザー光としては、紫外光、可視光等を用いることができ、その波長は特に限定されるものではない。紫外光とは、400nm未満の波長域の光をいい、可視光とは、400~600nmの波長域の光をいうものとする。レーザー表面検査装置の解析部は、通常、標準粒子のサイズと標準粒子によりもたらされるLPDのサイズとの相関式に基づき、レーザー表面検査装置により検出されたLPDのサイズを欠陥・異常のサイズに変換する。このような変換を行う解析部は、通常、変換ソフトを搭載したPC(Personal Computer)を含み、解析部の構成は公知である。表Aに記載の検出サイズとは、LPDのサイズでもよく、上記のように変換された欠陥・異常のサイズでもよい。市販されているレーザー表面検査装置の具体例としては、KLA TENCOR社製SurfscanシリーズSP1、SP2、SP3、SP5等を挙げることができる。ただしこれら装置は例示であって、その他のレーザー表面検査装置も使用可能である。
【0022】
<欠陥・異常の判別>
上記評価方法では、上記洗浄工程の前と後にそれぞれ実施されるLPD測定の結果に基づき、下記表Aに示す判別基準により、LPDとして測定された欠陥・異物の種類を判別する。この点に関する本発明者らの検討の詳細については、先に記載した通りである。
【0023】
【表2】
【0024】
以上説明した上記評価方法によれば、「PID」と「通常パーティクル」と「固着パーティクル」とを判別することができる。
【0025】
[半導体ウェーハの製造方法]
本発明の一態様は、半導体ウェーハに鏡面研磨を施し研磨面を形成すること、上記研磨面が形成された半導体ウェーハを一種以上の洗浄液により洗浄する洗浄工程を行うこと、上記洗浄工程の前と後にそれぞれレーザー表面検査装置を用いて上記研磨面のLPDを測定すること、および上記測定により得られた測定結果に基づき、上記表Aに示す判別基準により、LPDとして測定された欠陥または異物の種類を判別することを含み、上記判別の結果に基づき良品と判定された半導体ウェーハを製品として出荷するための準備工程に付すことを更に含む、研磨面を有する半導体ウェーハ、即ちポリッシュドウェーハの製造方法に関する。
【0026】
ポリッシュドウェーハは、シリコン単結晶インゴット等の半導体インゴットからのウェーハの切断(スライシング)、面取り加工、粗研磨(例えばラッピング)、エッチング、鏡面研磨(仕上げ研磨)、上記加工工程間または加工工程後に行われる洗浄工程を含む製造工程により製造することができる。上記製造方法では、ポリッシュドウェーハの研磨面(鏡面研磨が施された面)において、洗浄工程の前と後にそれぞれLPD測定を実施する。かかる洗浄工程については、上記評価方法における洗浄工程に関する先の記載を参照できる。また、一態様では、LPD測定の前に行われる洗浄工程の前に、更に洗浄工程が含まれていてもよい。更に含まれ得る洗浄工程についても、上記評価方法における洗浄工程に関する先の記載を参照できる。
【0027】
上記製造方法では、洗浄工程の前と後にそれぞれ実施されるLPD測定の測定結果に基づき、上記表Aに示す判別基準により、LPDとして測定された欠陥または異物の種類を判別する。そして、こうして得られた判別結果に基づき良品と判定された半導体ウェーハは、製品として出荷するための準備工程に付される。良品判定の判定基準は、特に限定されるものではなく、上記の2回のLPD測定の間に行われる洗浄工程に求められる洗浄レベルおよび製品半導体ウェーハに求められるPID低減レベルに応じて任意に設定することができる。このように良品判定を行うことによって、パーティクルやPIDが少ない半導体ウェーハを安定的に市場に供給することができる。また、上記製造方法では、ポリッシュドウェーハの出荷までに行われる一連の製造工程の中で、非破壊検査として実施可能なLPD測定を行うことにより良品判定を行うことができる。製品半導体ウェーハとして出荷するための準備としては、例えば、更なる洗浄工程等の後工程、梱包等を挙げることができる。
【0028】
他方、上記判別結果に基づき不良品と判定された半導体ウェーハは、再加工工程に付すことができる。例えば、PIDと判別されたLPDの数が良品に許容されるレベルを超えているため不良品と判定された半導体ウェーハについては、再加工工程として研磨工程を実施してPIDを低減することができる。また、固着パーティクルと判別されたLPDの数が良品に許容されるレベルを超えているため不良品と判定された半導体ウェーハについては、再加工工程として洗浄工程を実施して固着パーティクルを低減することができる。こうして、不良品と判定された半導体ウェーハは、再加工工程を経た後に製品として出荷するための準備工程に付すことにより、パーティクルやPIDが少ない半導体ウェーハを安定的に市場に供給することができる。再加工工程として実施される研磨工程および洗浄工程については、半導体ウェーハの研磨、洗浄に関する公知技術を適用できる。
【0029】
[半導体ウェーハの製造工程管理方法]
本発明の一態様は、半導体ウェーハの製造工程管理方法であって、管理対象の製造工程は、半導体ウェーハに研磨処理を施し研磨面を形成する研磨工程を行うこと、および上記研磨面が形成された半導体ウェーハを一種以上の洗浄液により洗浄する洗浄工程を行うことを含み、上記洗浄工程の前と後にそれぞれレーザー表面検査装置を用いて上記研磨面のLPDを測定すること、および上記測定により得られた測定結果に基づき、上記表Aに示す判別基準によりLPDとして測定された欠陥または異物の種類を判別することを含み、上記判別の結果に基づき、上記研磨工程の管理および上記洗浄工程の管理の一方または両方の必要性を判定することを更に含む、半導体ウェーハの製造工程管理方法に関する。
【0030】
上記管理対象の製造工程は、ポリッシュドウェーハの製造工程として通常行われる製造工程であることができる。そして上記管理方法では、管理対象の製造工程で製造されたポリッシュドウェーハを、上記洗浄工程の前と後にそれぞれLPD測定に付す。かかる洗浄工程については、上記評価方法における洗浄工程に関する先の記載を参照できる。また、一態様では、LPD測定の前に行われる洗浄工程の前に、更に洗浄工程が含まれていてもよい。更に含まれ得る洗浄工程についても、上記評価方法における洗浄工程に関する先の記載を参照できる。
洗浄工程については、洗浄工程に関する先の記載を参照できる。また、一態様では、LPD測定の前に行われる洗浄工程の前に、更に洗浄工程が含まれていてもよい。更に含まれ得る洗浄工程についても、洗浄工程に関する先の記載を参照できる。
【0031】
上記の研磨工程の管理には、研磨スラリーの交換、研磨スラリーの組成変更、研磨パッドの交換、研磨パッドの種類の変更、研磨装置の運転条件の変更等の各種の研磨条件の変更が含まれる。上記の洗浄工程の管理には、洗浄液の交換、洗浄液の組成変更、洗浄時間の変更、洗浄回数の変更、洗浄装置の運転条件の変更等の各種の洗浄条件の変更が含まれる。
上記管理方法では、洗浄工程の前と後にそれぞれ実施されるLPD測定の測定結果に基づき、上記表Aに示す判別基準により、LPDとして測定された欠陥または異物の種類を判別する。そして、こうして得られた判別結果に基づき、上記研磨工程の管理および上記洗浄工程の管理の一方または両方の必要性を判定する。例えば、PIDと判別されたLPDの数が良品に許容されるレベルを超えていたならば、研磨工程の管理が必要と判定して研磨工程の管理を実施することにより、研磨工程の管理後には、PIDが少ないポリッシュドウェーハを製造することが可能となる。一方、固着パーティクルと判別されたLPDの数が良品に許容されるレベルを超えていたならば、洗浄工程の管理が必要と判定し、洗浄液の交換等の洗浄工程の管理を実施することにより、洗浄工程の管理後には、パーティクルが少ないポリッシュドウェーハを製造することが可能となる。
【実施例
【0032】
以下に、実施例に基づき本発明を更に説明する。ただし、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。
【0033】
以下では、レーザー表面検査装置として、KLA TENCOR社製SurfscanシリーズSP5を使用した。KLA TENCOR社製SurfscanシリーズSP5は、入射系が1つであり、一入射系として評価対象ウェーハの表面に入射光を斜め入射させる紫外光源を有する。受光系としては、DNO(Dark-Field Narrow Oblique)チャンネル、DW1O(Dark-Field Wide1 Oblique)チャンネル、およびDW2O(Dark-Field Wide2 Oblique)チャンネルという3つの受光系を有する。DW1OチャンネルおよびDW2Oチャンネルは、DNOチャンネルに対して低角度側の受光系である。以下のLPD測定は、受光系としてDW1Oチャンネルを使用して行ったが、DNOチャンネルおよびDW2Oチャンネルも使用可能である。
以下では、評価対象のポリッシュドウェーハの研磨面の全域に入射光を走査してLPDとして欠陥・異常を検出し、かつLPDのサイズに基づき、上記レーザー表面検査装置に備えられた解析部においてサイズ変換を行い、欠陥・異常のサイズ(検出サイズ)を算出した。
【0034】
以下に記載のHF洗浄は、フッ化水素濃度0.05~5質量%のフッ化水素酸による洗浄であり、以下に記載のSC-1洗浄は、アンモニア濃度25~35質量%のアンモニア水:H22濃度25~35質量%の過酸化水素水:H2O=0.5:1:10(体積比)のSC1液による洗浄である。各洗浄は、洗浄対象のウェーハ全体を各洗浄液にそれぞれ0.5~10分間浸漬することにより実施した。
【0035】
鏡面研磨を施し形成された研磨面を有するシリコン単結晶ウェーハ(直径300mmのポリッシュドウェーハ)を準備し、このポリッシュドウェーハを第一の洗浄工程(HF洗浄とSC-1洗浄を順次実施)に付した。
第一の洗浄工程後のポリッシュドウェーハの研磨面について、レーザー表面検査装置を用いて1回目のLPD測定を行った。
1回目のLPD測定後のポリッシュドウェーハを、第二の洗浄工程(HF洗浄とSC-1洗浄を順次実施)に付した。
第二の洗浄工程後のポリッシュドウェーハの研磨面について、レーザー表面検査装置を用いて2回目のLPD測定を行った。
2回目のLPD測定後のポリッシュドウェーハの研磨面をSEM(Scanning Electron Microscope)により観察し、研磨面上の欠陥・異常をPIDとパーティクルとに分類した。SEMによる形態観察によってPIDとパーティクルとは判別可能である。
【0036】
LPD座標データに基づき、1回目のLPD測定で検出されたが2回目のLPD測定では検出されなかったLPDと1回目のLPD測定および2回目のLPD測定の両測定で検出されたLPDをそれぞれ特定し、各種LPDを表Aに示す判別基準にしたがい、PID、固着パーティクルおよび通常パーティクルのいずれかに判別した。
また、SEM観察に基づく欠陥・異物の判別として、LPD座標データとSEM観察による欠陥・異物の位置特定および種類の判別結果とに基づき、以下の判別基準にしたがい、PID、固着パーティクルおよび通常パーティクルの判別を行った。1回目のLPD測定でLPDとして検出されたが上記のSEM観察では検出されなかったものを「通常パーティクル」に分類した。1回目のLPD測定および2回目のLPD測定の両測定でLPDとして検出された欠陥・異物のうち、上記のSEM観察によりパーティクルと判別されたものを「固着パーティクル」に分類した。1回目のLPD測定および2回目のLPD測定の両測定でLPDとして検出された欠陥・異物のうち、上記のSEM観察によりPIDと判別されたものを「PID」に分類した。
LPD測定により得られた結果とSEM観察により得られた結果を対比したところ、SEM観察によりPIDと分類された欠陥・異常の86.5%がLPD測定でもPIDと分類され、SEM観察により固着パーティクルと分類された欠陥・異常の96.4%がLPD測定でも固着パーティクルと分類され、SEM観察により通常パーティクルと分類された欠陥・異常の99.3%がLPD測定でも通常パーティクルと分類されたことが確認された。
以上の結果から、表Aに示す判別基準を用いる上記評価方法により、PID、固着パーティクルおよび通常パーティクルを精度よく判別できることが確認できる。研磨面に存在する欠陥・異常をそれぞれSEMにより形態観察し、その種類を判別するには長い時間を要する。これに対し、レーザー表面検査装置によるLPD測定に基づく判別は、そのような長い時間を要することなく行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、ポリッシュドウェーハの製造分野において、有用である。