(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】封止用フィルム及びその硬化物、並びに、電子装置
(51)【国際特許分類】
C08G 59/40 20060101AFI20220712BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20220712BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20220712BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20220712BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
C08G59/40
C08L63/00 C
H01L23/30 R
C08J5/18
(21)【出願番号】P 2018551572
(86)(22)【出願日】2017-11-02
(86)【国際出願番号】 JP2017039793
(87)【国際公開番号】W WO2018092606
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-10-09
(31)【優先権主張番号】P 2016225075
(32)【優先日】2016-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100223424
【氏名又は名称】和田 雄二
(74)【代理人】
【識別番号】100189452
【氏名又は名称】吉住 和之
(72)【発明者】
【氏名】金子 知世
(72)【発明者】
【氏名】藤本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】野村 豊
(72)【発明者】
【氏名】荻原 弘邦
(72)【発明者】
【氏名】渡瀬 裕介
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/072463(WO,A1)
【文献】特開2016-216708(JP,A)
【文献】国際公開第2016/117237(WO,A1)
【文献】特開2003-002951(JP,A)
【文献】特開2014-080455(JP,A)
【文献】特開2000-007891(JP,A)
【文献】特開2016-141757(JP,A)
【文献】特開2015-134928(JP,A)
【文献】特開2007-182562(JP,A)
【文献】特開2003-034747(JP,A)
【文献】特開2001-270976(JP,A)
【文献】特開平11-106474(JP,A)
【文献】国際公開第2010/061980(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08G59/00- 59/72
H01L23/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤、及び、(D)無機充填材を含有する封止用フィルムであって、
前記(A)~(C)成分のうち25℃で液状である液状成分の含有量が、前記(A)~(D)成分の総質量を基準として20~30質量%であり、
前記(D)成分の含有量が、前記(A)~(D)成分の総質量を基準として70~80質量%であり、
溶剤の含有量が、封止用フィルムの全質量を基準として0.05質量%以下である、封止用フィルム。
【請求項2】
前記(D)成分の含有量が、前記(A)~(D)成分の総質量を基準として70~78質量%である、請求項1に記載の封止用フィルム。
【請求項3】
前記(D)成分の平均粒径が0.01~50μmである、請求項1又は2に記載の封止用フィルム。
【請求項4】
厚みが300μm以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の封止用フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、封止用フィルム及びその硬化物、並びに、電子装置に関する。より詳しくは、本開示は、半導体デバイスの封止、プリント配線基板に配置された電子部品の埋め込み等を可能とする封止用フィルム及びその硬化物、並びに、電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、実装基板上の半導体素子、コンデンサ、抵抗素子等の電子部品の封止に、取扱性に優れた封止用フィルムが広く用いられている。
【0003】
このような封止用フィルムとしては、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、及び、充填材等を配合して調製したワニス(組成物)を、フィルム上に塗布することにより成膜された、シート状エポキシ樹脂組成物材料が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のシート状エポキシ樹脂組成物材料は、上記のように、各種成分を配合してワニス(組成物)を調製した後、そのワニスを支持体上に塗布することにより成膜され、作製される。
【0006】
しかし、このような作製方法では、支持体上に塗布したワニス状エポキシ樹脂組成物を乾燥させたときに、露出した側と支持体側とで溶剤量に大きな差が生じるため、1枚で300μm以上の厚みを有する封止用フィルムの作製が難しい。
【0007】
また、特許文献1に記載のように、ワニス状エポキシ樹脂組成物を塗工して作製した封止用フィルムを複数枚貼り合わせることで300μm以上の膜厚を得た封止用フィルムでは、電子部品を封止成形する際に、封止用フィルムに含まれる溶剤により、ふくれ等の不具合が生じる場合がある。
【0008】
そこで、本開示の目的は、厚みを300μm以上とした場合であっても、封止成形時のふくれを抑制することができると共に、良好な可とう性及び良好な流動性を有する封止用フィルム、及びその硬化物、並びに、その封止用フィルムにより封止された電子部品又は電子デバイスを備える電子装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本開示の一側面は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤、及び、(D)無機充填材を含有する封止用フィルムであって、上記(A)~(C)成分((A)成分、(B)成分及び(C)成分)のうち25℃で液状である液状成分の含有量が、上記(A)~(D)成分((A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分)の総質量を基準として20~30質量%であり、上記(D)成分の含有量が、上記(A)~(D)成分の総質量を基準として70~80質量%であり、溶剤の含有量が、封止用フィルムの全質量を基準として0.05質量%以下である、封止用フィルムを提供する。
【0010】
本開示の一側面に係る封止用フィルムによれば、良好な可とう性及び良好な流動性を有すると共に、厚みを300μm以上とした場合であっても、封止成形時のふくれを抑制することができる。そのため、上記開示によれば、TSV(Through-Silicon Via)等を有する厚いパッケージの一括封止が可能な厚み300μm以上の封止用フィルムを提供することができる。
【0011】
また、上記条件を満たす本開示の封止用フィルムは、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤、及び、(D)無機充填材を混練して得られる混練物を、塑性加工することにより得ることができる。つまり、エポキシ樹脂及び無機充填材を含有するワニスをフィルム上に塗布することなく、封止用フィルムを形成することができるので、封止用フィルムに含まれる溶剤起因の硬化成形時のふくれを抑制することができる。その結果、封止用フィルムの性能の向上を図ることができる。
【0012】
上記封止用フィルムにおいて、上記(D)成分の含有量は、上記(A)~(D)成分の総質量を基準として70~78質量%であってもよい。
【0013】
上記封止用フィルムにおいて、上記(D)成分の平均粒径は、0.01~50μmであってもよい。
【0014】
本開示の別の側面は、上記本開示の一側面に係る封止用フィルムの硬化物を提供する。
【0015】
本開示の別の側面は、電子部品又は電子デバイスと、上記電子部品又は上記電子デバイスを封止する、上記本開示の一側面に係る封止用フィルムの硬化物を含む封止部と、を備える電子装置を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、厚みを300μm以上とした場合であっても、封止成形時のふくれを抑制することができると共に、良好な可とう性及び良好な流動性を有する封止用フィルム、及びその硬化物、並びに、その封止用フィルムにより封止された電子部品又は電子デバイスを備える電子装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0018】
本実施形態の封止用フィルムは、(A)エポキシ樹脂(以下(A)成分という場合もある。)、(B)硬化剤(以下(B)成分という場合もある。)、(C)硬化促進剤(以下(C)成分という場合もある。)、及び、(D)無機充填材(以下(D)成分という場合もある。)を含有する封止用フィルムであって、上記(A)~(C)成分のうち25℃で液状である液状成分の含有量が、上記(A)~(D)成分の総質量を基準として20~30質量%であり、上記(D)成分の含有量が、上記(A)~(D)成分の総質量を基準として70~80質量%であり、溶剤の含有量が、封止用フィルムの全質量を基準として0.05質量%以下である。
【0019】
<(A)エポキシ樹脂>
(A)エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のグリシジル基を有するものであれば特に制限なく用いることができる。(A)成分としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAP型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ビスフェノールBP型エポキシ樹脂、ビスフェノールC型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールG型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールPH型エポキシ樹脂、ビスフェノールTMC型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂、ヘキサンジオールビスフェノールSジグリシジルエーテル等のビスフェノールS型エポキシ樹脂、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビキシレノールジグリシジルエーテル等のビキシレノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールAグリシジルエーテル等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及びそれらの二塩基酸変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、並びに、脂肪族エポキシ樹脂などが挙げられる。(A)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
(A)成分には、市販のエポキシ樹脂を使用することもできる。市販のエポキシ樹脂としては、例えば、DIC株式会社製の商品名:EXA4700(4官能ナフタレン型エポキシ樹脂)、日本化薬株式会社製の商品名:NC-7000(ナフタレン骨格含有多官能固形エポキシ樹脂)等のナフタレン型エポキシ樹脂;日本化薬株式会社製の商品名:EPPN-502H(トリスフェノールエポキシ樹脂)等のフェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物(トリスフェノール型エポキシ樹脂);DIC株式会社製の商品名:エピクロンHP-7200H(ジシクロペンタジエン骨格含有多官能固形エポキシ樹脂)等のジシクロペンタジエンアラルキル型エポキシ樹脂;日本化薬株式会社製の商品名:NC-3000H(ビフェニル骨格含有多官能固形エポキシ樹脂)等のビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂;DIC株式会社製の商品名:エピクロンN660、エピクロンN690、日本化薬株式会社製の商品名:EOCN-104S等のノボラック型エポキシ樹脂;日産化学工業株式会社製の商品名:TEPIC等のトリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、DIC株式会社製の商品名:エピクロン860、エピクロン900-IM、エピクロンEXA―4816、エピクロンEXA-4822、旭チバ株式会社製の商品名:アラルダイトAER280、東都化成株式会社製の商品名:エポトートYD-134、三菱化学株式会社製の商品名:JER834、JER872、住友化学株式会社製の商品名:ELA-134、三菱化学株式会社製の商品名:エピコート807、815、825、827、828、834、1001、1004、1007、1009、ダウケミカル社製の商品名:DER-330、301、361、東都化成株式会社製の商品名:YD8125、YDF8170等のビスフェノールA型エポキシ樹脂;三菱化学株式会社製の商品名:806等のビスフェノールF型エポキシ樹脂;三菱化学株式会社製の商品名:828等のビスフェノールA型エポキシ樹脂;DIC株式会社製の商品名:エピクロンHP-4032等のナフタレン型エポキシ樹脂;DIC株式会社製の商品名:エピクロンHP-4032等のナフタレン型エポキシ樹脂;DIC株式会社製の商品名:エピクロンN-740等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナガセケムテックス株式会社製の商品名:ナデコールDLC301等の脂肪族エポキシ樹脂などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
(A)成分としては、25℃において液状のエポキシ樹脂を用いてもよい。液状のエポキシ樹脂としては、25℃において液状を示すものであれば特に限定はされない。液状のエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA系、ビスフェノールF系、ビフェニル系、ノボラック系、ジシクロペンタジエン系、多官能フェノール系、ナフタレン系、アラルキル変性系、脂環式系及びアルコール系等のグリシジルエーテル、グリシジルアミン系、並びにグリシジルエステル系樹脂が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。液状のエポキシ樹脂としては、上記の中でも、取り扱い性付与の観点から、ビスフェノールF型エポキシ樹脂であってもよい。
【0022】
本明細書において、25℃において液状のエポキシ樹脂とは、E型粘度計又はB型粘度計で測定した25℃における粘度が400Pa・s以下であるものを指す。
【0023】
(A)成分の含有量は、封止用フィルムに良好な取り扱い性を付与する観点から、(A)~(D)成分の総質量を基準として、5~30質量%であってもよく、5~20質量%であってもよく、10~20質量%であってもよい。
【0024】
<(B)硬化剤>
(B)硬化剤としては、1分子中に2個以上のグリシジル基と反応する官能基を有するものであれば特に制限なく用いることができる。グリシジル基と反応する官能基としては、例えば、フェノール性水酸基、アミン、酸無水物(無水フタル酸等)が挙げられる。(B)成分としては、例えば、フェノール樹脂、酸無水物、イミダゾール化合物、脂肪族アミン、脂環族アミンが挙げられる。(B)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
フェノール樹脂としては、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するものであれば、特に制限無く公知のフェノール樹脂を用いることができる。フェノール樹脂としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール類又はα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド類とを酸性触媒下で縮合あるいは共縮合させて得られる樹脂、ビフェニル骨格型フェノール樹脂、パラキシリレン変性フェノール樹脂、メタキシリレン・パラキシリレン変性フェノール樹脂、メラミン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、シクロペンタジエン変性フェノール樹脂、多環芳香環変性フェノール樹脂、キシリレン変性ナフトール樹脂が挙げられる。フェノール樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
フェノール樹脂には、市販のフェノール樹脂を使用することもできる。市販のフェノール樹脂としては、例えば、DIC株式会社製の商品名:フェノライトLF2882、フェノライトLF2822、フェノライトTD-2090、フェノライトTD-2149、フェノライトVH-4150、フェノライトVH4170、明和化成株式会社製の商品名:MEH7000、MEH8000H、三井化学株式会社製の商品名:XLC-LL、XLC-4L、新日鉄住金化学株式会社製の商品名:SN-100、SN-300、SN-400、エア・ウォーター株式会社製の商品名:SKレジンHE910が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
(B)成分としては、25℃において液状の硬化剤を用いてもよい。液状の硬化剤としては、25℃において液状を示すものであれば特に限定はされない。液状の硬化剤としては、例えば、グリシジル基と反応する官能基を1分子中に2個以上有するものが好ましく、例えば、フェノール樹脂、酸無水物、イミダゾール化合物、脂肪族アミン、及び脂環族アミン等が挙げられる。これらの硬化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。25℃にて液状を示すフェノール樹脂としては、ビスフェノール骨格を含むものが好ましく、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、及びビスフェノールS等のビスフェノール類;4,4’-ジヒドロキシビフェニル等のジヒドロキシビフェニル類;ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル等のジヒドロキシフェニルエーテル類;並びにこれらのフェノール骨格の芳香環に直鎖アルキル基、分岐アルキル基、アリール基、ヒドロキシアルキル基、アリル基、環状脂肪族基等を導入したもの、及びこれらのビスフェノール骨格の中央にある炭素原子に直鎖アルキル基、分岐アルキル基、アリル基、置換基のついたアリル基、環状脂肪族基、又はアルコキシカルボニル基等を導入した多環二官能フェノール類が挙げられる。
【0028】
本明細書において、25℃において液状の硬化剤とは、E型粘度計又はB型粘度計で測定した25℃における粘度が400Pa・s以下であるものを指す。
【0029】
(B)成分の含有量は、未反応の(A)成分及び未反応の(B)成分を少なくするという観点から、(A)成分100質量部に対して、50~100質量部であってもよく、55~90質量部であってもよく、60~75質量部であってもよい。
【0030】
(A)成分及び(B)成分の比率は、(A)成分のグリシジル基の当量と、(B)成分のグリシジル基と反応する官能基の当量との比率(エポキシ樹脂のグリシジル基の当量/硬化剤のグリシジル基と反応する官能基の当量)として、0.7~2.0であってもよく、0.8~1.8であってもよく、0.9~1.7であってもよい。この比率が上記範囲の場合、未反応の(A)成分又は未反応の(B)成分が少なくなり、封止用フィルムを硬化させたときに所望の硬化膜物性が得られやすい傾向にある。
【0031】
<(C)硬化促進剤>
(C)硬化促進剤としては、特に制限無く用いることができるが、アミン系又はリン系の硬化促進剤であってもよい。アミン系の硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール化合物、脂肪族アミン、芳香族アミン、変性アミン、ポリアミド樹脂等が挙げられる。リン系の硬化促進剤としては、例えば、ホスフィンオキサイド、ホスホニウム塩、ダイホスフィン等の有機リン化合物が挙げられる。これらの硬化促進剤の中でも、誘導体が豊富であり、所望の活性温度を得やすい点から、(C)成分はイミダゾール化合物であってもよい。
【0032】
(C)成分としては、25℃において液状の硬化促進剤を用いてもよい。液状の硬化促進剤としては、25℃において液状を示すものであれば特に限定はされない。液状の硬化促進剤としては、例えば、ホスフィン、ホスホニウム塩等の有機リン化合物、DBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7)、DBN(1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5)等のアミン化合物が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
本明細書において、25℃において液状の硬化促進剤とは、E型粘度計又はB型粘度計で測定した25℃における粘度が400Pa・s以下であるものを指す。
【0034】
(C)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総質量100質量部に対して、0.01~5質量部であってもよく、0.1~3質量部であってもよく、0.3~1.5質量部であってもよい。(C)成分の含有量が、0.01質量部以上の場合には、充分な硬化促進効果が得られやすい。一方、(C)成分の含有量が、5質量部以下の場合、封止用フィルムの作製時又は保管中の硬化の進行が抑制され、封止用フィルムの割れ又は溶融粘度の上昇に伴う成型不良が少なくなる傾向にある。
【0035】
<液状成分>
本実施形態の封止用フィルムは、(A)~(C)成分のうちの25℃で液状である液状成分を、(A)~(D)成分の総質量を基準として20~30質量%含有する。液状成分の含有量が20質量%以上であると、(A)~(D)成分の混練物の塑性加工により封止用フィルムを得ることができ、封止用フィルムに含まれる溶剤起因の硬化成形時のふくれを抑制することができる。また、液状成分の含有量が20質量%以上であると、良好な可とう性及び良好な流動性を有する封止用フィルムを得ることができる。一方、液状成分の含有量が30質量%以下であると、厚み300μm以上の封止用フィルムを得ることができる。また、液状成分の含有量が上記範囲内であることで、封止用フィルムに良好な取り扱い性を付与することができる。上記効果をより高水準で得る観点から、液状成分の含有量は、20~28質量%であってもよく、20~25質量%であってもよい。
【0036】
液状成分は、(A)~(C)成分のうちの一成分のみであってもよく、二成分以上であってもよい。本実施形態の封止用フィルムにおいては、少なくとも(A)成分が液状成分を含むことが好ましく、少なくとも(A)成分及び(B)成分が液状成分を含むことがより好ましい。なお、(A)成分は、25℃において液状のエポキシ樹脂と、25℃において固形のエポキシ樹脂とを含んでいてもよい。(B)成分は、25℃において液状の硬化剤と、25℃において固形の硬化剤とを含んでいてもよい。(C)成分は、25℃において液状の硬化促進剤と、25℃において固形の硬化促進剤とを含んでいてもよい。
【0037】
本実施形態の封止用フィルムが25℃において液状のエポキシ樹脂を含有する場合、その含有量は、封止用フィルムに良好な取り扱い性を付与する観点から、(A)~(D)成分の総質量を基準として、5質量%以上であってもよく、6質量%以上であってもよく、10質量%以上であってもよい。一方、フィルム表面の過度なタックを抑制するという観点から、25℃において液状のエポキシ樹脂の含有量は、(A)~(D)成分の総質量を基準として、20質量%以下であってもよく、18質量%以下であってもよく、17質量%以下であってもよい。
【0038】
本実施形態の封止用フィルムが25℃において液状の硬化剤を含有する場合、その含有量は、封止用フィルムに良好な取り扱い性を付与する観点から、(A)~(D)成分の総質量を基準として、1質量%以上であってもよく、2質量%以上であってもよく、3質量%以上であってもよい。一方、フィルム表面の過度なタックを抑制するという観点から、25℃において液状の硬化剤の含有量は、(A)~(D)成分の総質量を基準として、20質量%以下であってもよく、15質量%以下であってもよく、13質量%以下であってもよい。
【0039】
<(D)無機充填材>
(D)無機充填材としては、従来公知の無機充填材が使用でき、特定のものに限定されない。(D)成分としては、例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウムが挙げられる。(D)成分としては、表面改質等により、樹脂中への分散性の向上がしやすいこと、また比較的小さい熱膨張率を有することから所望の硬化膜特性が得られやすいことから、シリカ類であってもよい。
【0040】
(D)成分は、表面改質を行ってもよい。表面改質の手法は特に限定されないが、表面改質が簡便であり、官能基の種類が豊富なため所望の特性を付与しやすいことからシランカップリング剤を用いた手法であってもよい。シランカップリング剤としては、例えば、アルキルシラン、アルコキシシラン、ビニルシラン、エポキシシラン、アミノシラン、アクリルシラン、メタクリルシラン、メルカプトシラン、スルフィドシラン、イソシアネートシラン、サルファーシラン、スチリルシラン、アルキルクロロシラン等が挙げられる。
【0041】
シランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-ドデシルメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、トリフェニルシラノール、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、n-オクチルジメチルクロロシラン、テトラエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジアリルジメチルシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノシラン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0042】
(D)成分の含有量は、フィルムとしての良好な取扱性(可とう性等)を得る観点から、(A)~(D)成分の総質量を基準として、70~80質量%であり、70~78質量%であってもよい。
【0043】
(D)成分の平均粒径は、0.01~50μmであってもよく、0.1~25μmであってもよく、0.3~10μmであってもよい。平均粒径が0.01μm以上の場合、無機充填材の凝集が抑制され、無機充填材の分散が容易となる傾向にある。平均粒径が50μm以下の場合、半導体パッケージ成形後のパッケージ表面のレーザーマーキングによる印字において良好な外観を得られる傾向にある。平均粒径とは、粒子の全体積を100%として粒径による累積度数分布曲線を求めたとき、体積50%に相当する点の粒径であり、レーザー回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。
【0044】
本実施形態の封止用フィルムには、本開示の効果を損なわない範囲で、更に他の添加剤を用いることができる。このような添加剤の具体例としては、エラストマー、顔料、染料、離型剤、酸化防止剤、表面張力調整剤等を挙げることができる。
【0045】
本開示の封止用フィルムは、例えば、次のようにして製造することができる。上述した(A)~(D)成分を溶融混練する。溶融混練の方法としては、特に限定されないが、例えば、ミキシングロール、加圧式ニーダー、押出機等の公知の混練機により、溶融混練する方法などが挙げられる。
【0046】
混練条件としては、温度が、上記した各成分の軟化点以上であれば特に制限されず、例えば、30~130℃、エポキシ樹脂の熱硬化性を考慮すると、好ましくは、40~120℃、更に好ましくは、60~110℃であり、時間が、例えば、1~30分間、好ましくは、5~15分間である。
【0047】
上述した混練方法により調製された混練物は、例えば、次のようにして封止用フィルムに加工することができる。二軸ロール又はカレンダーロール等のロール機、押出し機、あるいはプレス機などで、厚みが所望の厚みとなるように圧延、押出し、プレスさせて加工することができる。これによって調製された封止用フィルムは、そのハンドリング性、成形性の観点から、常温では形状を保持するものであることが好ましい。
【0048】
封止用フィルムの加工温度としては、上記した各成分の軟化点以上であれば、特に制限されないが、エポキシ樹脂の熱硬化性及び加工性を考慮すると、例えば、30~150℃、好ましくは、50~140℃、更に好ましくは、60~120℃である。
【0049】
封止用フィルムの厚みは、例えば、100~1500μm、好ましくは、300~1200μmである。本実施形態によれば、300μm以上の厚みを有する封止用フィルムを容易に得ることができる。
【0050】
封止用フィルムは、支持体上に形成してもよい。支持体としては、例えば、高分子フィルムを用いることができる。
【0051】
高分子フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム等のポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、アセチルセルロースフィルム、テトラフルオロエチレンフィルムなどが挙げられる。
【0052】
本実施形態に係る電子部品装置は、電子部品と、上記電子部品を封止する封止部と、を備え、上記封止部が、本実施形態に係る封止用フィルム又はその硬化物を含む。本実施形態に係る電子部品装置は、封止用フィルム又はその硬化物を用いて電子部品が封止されてなる。電子部品を備える電子部品装置としては、例えば、半導体素子を備える半導体装置が挙げられる。電子部品は、電子デバイス中の電子部品であってもよい。
【0053】
また、本実施形態に係る電子装置は、電子部品又は電子デバイスと、上記電子部品又は上記電子デバイスを封止する、本実施形態に係る封止用フィルムの硬化物を含む封止部と、を備える。
【0054】
本実施形態に係る電子装置の製造方法は、本実施形態に係る封止用フィルムにより電子部品又は電子デバイスを封止する封止工程と、上記封止用フィルムを硬化させて封止部を得る工程と、を備える。封止工程は、例えば、封止用フィルムを加熱下で押圧することにより、基板上に設けられた電子部品又は電子デバイスを封止する工程である。本実施形態に係る電子装置の製造方法は、例えば、加熱下で封止用フィルムを電子部品又は電子デバイスに押圧することにより、封止用フィルムで電子部品又は電子デバイスを封止する工程と、電子部品又は電子デバイスを封止した封止用フィルムを硬化させて封止部を得る工程と、を備える。
【0055】
封止用フィルムによる電子部品又は電子デバイスの封止は、ラミネート法により行うことができる。ラミネート法に使用するラミネータとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ロール式、バルーン式等のラミネータが挙げられる。これらの中でも、埋め込み性に優れる観点から、真空加圧が可能なバルーン式を用いることができる。
【0056】
ラミネート温度は、通常、支持体(フィルム状の支持体等)を用いる場合にはその軟化点以下である。ラミネート温度は、例えば、封止用フィルムの最低溶融粘度付近である。ラミネート時の圧力は、埋め込む電子デバイス(半導体素子等)のサイズ又は密集度によって変わるが、0.1~1.5MPaであってもよく、0.3~1.0MPaであってもよい。ラミネート時間は、特に限定されるものではないが、20~600秒であってもよく、30~300秒であってもよく、40~120秒であってもよい。
【0057】
封止用フィルムの硬化は、例えば、大気下又は不活性ガス下で行うことができる。硬化温度は、特に限定されるものではないが、80~280℃であってもよく、100~240℃であってもよく、120~200℃であってもよい。硬化温度が80℃以上であれば、封止用フィルムの硬化が充分に進み、不具合の発生を容易に抑制することができる。硬化温度が280℃以下であれば、他の材料への熱害の発生を抑制することができる。硬化時間は、特に限定されるものではないが、30~600分であってもよく、45~300分であってもよく、60~240分であってもよい。硬化時間がこれらの範囲であれば、封止用フィルムの硬化が充分に進み、良好な生産効率が得られる。複数の硬化条件を組み合わせてもよい。
【0058】
以上、本開示に係る封止用フィルム及び電子装置の好適な実施形態について説明した。本開示は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を行ってもよい。半導体素子以外の電子部品としては、例えば、配線板材料用途にも、本開示に係る封止用フィルムを適用することができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により本開示を更に詳しく説明するが、本開示はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0060】
封止用フィルムを作製するために下記の成分を用意した。
((A)成分:エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂a:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製の商品名:グレード806、エポキシ当量:160、25℃において液状)
エポキシ樹脂b:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製の商品名:グレード828、エポキシ当量:185、25℃において液状)
エポキシ樹脂c:ナフタレン骨格含有多官能固形エポキシ樹脂(DIC株式会社製の商品名:EXA-4750、エポキシ当量:182、25℃において固形)
((B)成分:硬化剤)
硬化剤a:フェノールノボラック(旭有機材工業株式会社製の商品名:PAPS-PN2、フェノール性水酸基当量:104、25℃において固形)
硬化剤b:フェノールノボラック(明和化成株式会社製の商品名:MEH8000H、フェノール性水酸基当量:140、25℃において液状)
((C)成分:硬化促進剤)
硬化促進剤:イミダゾール(四国化成工業株式会社製の商品名:2PHZ-PW、25℃において固形)
((D)成分:無機充填材)
無機充填材:シリカ(株式会社アドマテックス製の商品名:SX-E2、フェニルアミノシラン処理、平均粒径5.8μm)
【0061】
(実施例1~2)
表1に示す処方(単位:質量%)で、各成分を配合し、ロール混練機により60~100℃、10分間溶融混練し、混練物を調製した。
【0062】
次いで、得られた混練物を、熱押出し成形法によりフィルム状に成形し、厚み500μmの実施例1の封止用フィルム、及び、厚み1000μmの実施例2の封止用フィルムをそれぞれ作製した。
【0063】
(実施例3~6及び比較例2~3)
表1及び表2に示す処方(単位:質量%)で、各成分を配合し、ロール混練機により60~100℃、10分間溶融混練し、混練物を調製した。
【0064】
次いで、得られた混練物を、平板プレス法により、シート状に成形して、厚み500μmの封止用フィルムを作製した。但し、比較例2については、成形後の材料が流動してフィルム形状の保持ができず、封止用フィルムを作製できなかった。
【0065】
(比較例1)
表2に示す処方(単位:質量%)で、各成分を配合した。得られた配合物に溶剤としてメチルエチルケトンを、溶剤添加後の組成物全質量の15質量%となる量で添加して、塗工用ワニス状エポキシ樹脂組成物を調製した。このワニス状エポキシ樹脂組成物を、塗工機を使用して支持体(38μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム)上に、以下の条件で塗布し、フィルムの厚みが250μm(支持体の厚みは含まない)の封止用フィルムを作製した。
・塗布ヘッド方式:コンマ
・塗布及び乾燥速度:1m/分
・乾燥条件(温度/炉長):110℃/3.3m、130℃/3.3m、140℃/3.3m
【0066】
その後、フィルムの厚みが250μmの封止用フィルム2枚を積層し、真空加圧ラミネーターにより以下の条件で貼り合わせ、フィルムの厚みが500μmである封止用フィルムを作製した。
・ラミネーター装置:真空加圧ラミネーター(株式会社名機製作所製の商品名MVLP-500)
・ラミネート温度:90℃
・ラミネート圧力:0.5MPa
・真空引き時間:30秒
・ラミネート時間:40秒
【0067】
<評価>
(可とう性評価)
封止用フィルムの可とう性は、屈曲試験機を用いて次の手順で評価した。試験機として、ヨシミツ精機株式会社製の屈曲試験機(JIS型タイプ1、円筒形マンドレル法)を準備した。各実施例及び各比較例の封止用フィルムを縦50mm、横50mmに切り出して試験片を準備した。直径2mmの円筒形マンドレルに試験片の一方の面(比較例1においては支持体の面)を接触させ、試験片を135°曲げ、下記の基準で可とう性を評価した。評価結果を表1及び表2に示す。
A:135°折り曲げても割れず、ヒビも入らなかった。
B:135°折り曲げても割れなかったが、ヒビが入った。
C:135°折り曲げると割れた。
【0068】
(流動性評価)
封止用フィルムの流動性は、次の手順で評価した。試験機として、TA Instruments社製のレオメータ(ARES G2)を準備した。各実施例及び各比較例の封止用フィルム0.6gを直径20mmの円形に成形し、2枚のAl平行板ではさみ、溶融粘度を測定(測定温度40~220℃、昇温速度5℃/分)した。比較例1の封止用フィルムについては、支持体を剥離してから測定した。流動性は下記の基準で評価した。評価結果を表1及び表2に示す。
A:最低溶融粘度が100Pa・s以下。
B:最低溶融粘度が100Pa・sより大きく、300Pa・s以下。
C:最低溶融粘度が300Pa・sより大きい。
【0069】
(ふくれ評価)
封止用フィルムのふくれは次の手順で評価した。各実施例及び各比較例の封止用フィルムを縦70mm、横100mmに切り出して試験片を準備した。比較例1の封止用フィルムについては、支持体を剥離した状態とした。試験片をガラス板に貼り付け、140℃のオーブンで10分間加熱した。封止用フィルム上部及びガラス面からふくれの有無を目視で確認した。評価結果を表1及び表2に示す。
【0070】
(溶剤量測定)
封止用フィルムにおける溶剤含有量は次の手順で算出した。各実施例及び各比較例の封止用フィルムを5cm角の試料に切り出した。比較例1の封止用フィルムについては、支持体を剥離した状態とした。この試料を予め質量を測定したアルミカップに入れて、試料が入ったアルミカップの質量を測定した。次いで、試料をアルミカップに入れたまま、180℃のオーブンで10分間加熱し、室温にて10分間放置した後、試料が入ったアルミカップの質量を再度測定した。次いで、加熱前及び加熱後の試料が入ったアルミカップの質量の測定値から、アルミカップの質量を差し引いて、加熱前及び加熱後の封止用フィルムの質量をそれぞれ求めた。そして、加熱前の封止用フィルムの質量から加熱後の封止用フィルムの質量を差し引いた重量減少の値を、溶剤の配合の有無にかかわらず、封止用フィルムに含まれる溶剤の質量とした。そして、加熱前の封止用フィルムの質量に対する溶剤の質量の割合を溶剤の含有量(溶剤量)とした。結果を表1及び表2に示す。
【0071】
【0072】