(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】ペリクルフレーム、ペリクル、マスク粘着剤付ペリクルフレーム、ペリクル付露光原版、露光方法及び半導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/64 20120101AFI20220712BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
G03F1/64
G03F7/20 503
(21)【出願番号】P 2019016992
(22)【出願日】2019-02-01
【審査請求日】2021-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】簗瀬 優
【審査官】菅原 拓路
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-042105(JP,A)
【文献】特開2002-182373(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0275508(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0089814(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0349610(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/62
7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトマスクに面する
端面である下端面と、
前記下端面とは反対側の端面である上端面とを有する枠状のペリクルフレームであって、
前記上端面の外側面から内側面に向かって
設けられた切り欠き部を有する通気部を少なくとも1個
備え、
前記通気部はペリクル内外を通気する通気路となり、
材質がSi、SiO
2
、石英、インバー、チタン又はチタン合金であることを特徴とするペリクルフレーム。
【請求項2】
前記切り欠き部は、外側面から内側面まで形成されている請求項1記載のペリクルフレーム。
【請求項3】
厚みが2.5mm未満
である請求項1又は2記載のペリクルフレーム。
【請求項4】
前記切り欠き部にフィルタを備える請求項1~3のいずれか1項記載のペリクルフレーム。
【請求項5】
ペリクルフレームの内側面又は外側面に切り欠き部を覆うようにフィルタを備える請求項2又は3記載のペリクルフレーム。
【請求項6】
ペリクルフレームは四角形枠状であり、対向する二辺に切り欠き部が設けられた請求項1~5のいずれか1項記載のペリクルフレーム。
【請求項7】
ペリクルフレームは四角形枠状であり、四辺全てに切り欠き部が設けられた請求項1~5のいずれか1項記載のペリクルフレーム。
【請求項8】
EUV露光用ペリクルに使用される請求項1~7のいずれか1項記載のペリクルフレーム。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項記載のペリクルフレームを構成要素として含むことを特徴とするペリクル。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項記載のペリクルフレームの前記下端面にマスク粘着剤を形成したマスク粘着剤付ペリクルフレーム。
【請求項11】
請求項9記載のペリクルを露光原版に装着してなることを特徴とするペリクル付露光原版。
【請求項12】
請求項11記載のペリクル付露光原版を用いて露光することを特徴とする露光方法。
【請求項13】
請求項11記載のペリクル付露光原版を用いて露光することを特徴とする半導体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リソグラフィ用フォトマスクにゴミ除けとして装着されるペリクルフレーム及びペリクルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIのデザインルールはサブクオーターミクロンへと微細化が進んでおり、それに伴って、露光光源の短波長化が進んでいる。すなわち、露光光源は水銀ランプによるg線(436nm)、i線(365nm)から、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)などに移行しており、さらには主波長13.5nmのEUV(Extreme Ultra Violet)光を使用するEUV露光が検討されている。
【0003】
LSI、超LSIなどの半導体製造又は液晶表示板の製造においては、半導体ウエハまたは液晶用原板に光を照射してパターンを作製するが、この場合に用いるリソグラフィ用フォトマスク及びレチクル(以下、総称して「露光原版」と記述する)にゴミが付着していると、このゴミが光を吸収したり、光を曲げてしまうために、転写したパターンが変形したり、エッジが粗雑なものとなるほか、下地が黒く汚れたりして、寸法、品質、外観などが損なわれるという問題があった。
【0004】
これらの作業は、通常クリーンルームで行われているが、それでも露光原版を常に清浄に保つことは難しい。そこで、露光原版表面にゴミよけとしてペリクルを貼り付けた後に露光をする方法が一般に採用されている。この場合、異物は露光原版の表面には直接付着せず、ペリクル上に付着するため、リソグラフィ時に焦点を露光原版のパターン上に合わせておけば、ペリクル上の異物は転写に無関係となる。
【0005】
このペリクルの基本的な構成は、ペリクルフレームの上端面に露光に使われる光に対し透過率が高いペリクル膜が張設されるとともに、下端面に気密用ガスケットが形成されているものである。気密用ガスケットは一般的に粘着剤層が用いられる。ペリクル膜は、露光に用いる光〔水銀ランプによるg線(436nm)、i線(365nm)、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)等〕を良く透過させるニトロセルロース、酢酸セルロース、フッ素系ポリマーなどからなるが、EUV露光用では、ペリクル膜として極薄シリコン膜や炭素膜が検討されている。
【0006】
EUV露光用のペリクルフレームには、露光装置の都合上、いくつかの制限がある。EUV露光装置内のペリクル配置スペースが小さいために、ペリクルの高さを2.5mm以下にする必要がある。
【0007】
また、EUV露光は高真空下で行われるため、EUV用ペリクルは大気圧から真空への圧力変化に耐える必要があり、EUVペリクルの通気部は大面積であることが要求される。そこで、特許文献2や特許文献3では、広い通気面積が得られるフィルタ付ペリクルフレームが提案されている。ペリクル高さが低いので、フィルタを貼るためには膜と平行になるようフィルタを設けることが好ましいとされているが、フィルタをペリクルフレームの上端面あるいは下端面に設ける場合、通気路に曲部が発生する。通気路に曲部が存在すると、特に高真空から大気圧へ圧力を戻す際に、通気路内で大きな抵抗が発生し、ペリクル内外に圧力差が生じてペリクル膜の破損に繋がる懸念が出てきた。緩やかに圧力を戻す場合は問題ないのだが、作業性の観点から、より早く高真空から大気圧へ戻すことを求められる場合があることが分かってきた。また、ペリクルフレームを洗浄した時に曲部を持つ通気路を十分に洗浄することが難しく、異物が残る懸念もあった。
【0008】
特許文献4ではマスクとペリクルを、ペリクルに備えされた押さえバネとマスク上にあるスタッドと呼ばれる留め具を介して機械的に固定したペリクルを提案している。そのペリクルでは、マスクとペリクルとの間に200~300μmのギャップを作り、通気を行っているため、通気能力は十分であるが、機械的にペリクルを固定すると、必ず接続部で金属間の接触が発生する。金属間で接触が起こると、発塵に繋がる懸念がある。
【0009】
本願出願人が先に出願した特願2017-197004号の明細書には、側面に多数の貫通孔をもつペリクルフレームが提案されている。しかし、貫通孔のみで大面積の通気部を設けるためには非常に多数の貫通孔を開ける必要があり、特に破損しやすい材料でペリクルフレームを作製する際には加工が難しく、コストがかかる。また、洗浄が不十分で貫通孔に異物が残ってしまった場合、貫通孔内部であると目視検査を実施できないので、異物を発見し難いことが分かった。
【0010】
また、本願出願人が先に出願した特願2017-196982号の明細書には、下端面に剥離冶具の把持部且つ通気部として切り欠き部を設けたペリクルフレームが提案されている。通気能力や加工性は十分であるが、ペリクルフレームとマスクとの接着部が少なくなる欠点がある。接着部が少ないため、ペリクルを長期間に亘り使用すると落下してしまうことが懸念される。ペリクルの落下を防ぐために、接着力の強い粘着剤を使用することも考えられるが、ペリクルは使用後、あるいはペリクルに不具合が生じた際にマスクから剥がす必要がある。粘着力が強すぎると剥離する際、ペリクルに強い力が加わり、ペリクル膜が破損する可能性が非常に高い。ペリクル膜が破損してしまうとマスクを汚染してしまうため、接着力の強い粘着剤を使用することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2016-200616号公報
【文献】特開2017-83791号公報
【文献】特開2016-191902号公報
【文献】国際公開第2016/124536号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、EUV露光を高真空下で行う際、大気圧から真空への圧力変化に耐えてペリクル膜の破損が生じることがなく、多数の貫通孔を設置する必要もなく異物を発見し難いこともなく、強い接着力のある接着剤あるいは粘着剤を用いてもペリクル膜の破損がなく、長期間使用しても剥がれる可能性が非常に少ないペリクルフレーム及び該ペリクルフレームを用いたペリクルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、ペリクル膜を設ける上端面とフォトマスクに面する下端面とを有する枠状のペリクルフレームであって、該ペリクルフレームの上端面の外側面から内側面に向かって切り欠き部を設けることにより、ペリクルフレームとペリクル膜との間の接着部は減少するが、ペリクルフレームからペリクル膜を剥がす必要がないので、強い接着力のある接着剤あるいは粘着剤を用いることができ、また、接着部にかかる荷重もペリクル膜だけなので、長期間使用しても剥がれる可能性は非常に少ないことを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0014】
従って、本発明は、下記のペリクルフレーム及びペリクルを提供する。
1.ペリクル膜を設ける上端面とフォトマスクに面する下端面とを有する枠状のペリクルフレームであって、上端面の外側面から内側面に向かって少なくとも1個の切り欠き部が設けられていることを特徴とするペリクルフレーム。
2.上記切り欠き部は、外側面から内側面まで形成されている上記1記載のペリクルフレーム。
3.厚みが2.5mm未満で、チタンからなる上記1又は2記載のペリクルフレーム。
4.厚みが2.5mm未満で、シリコン結晶からなる上記1又は2記載のペリクルフレーム。
5.上記1~4のいずれかに記載のペリクルフレームを構成要素として含むことを特徴とするペリクル。
6.上記ペリクルフレームの上端面のうち、切り欠き部以外の上端面上には接着剤が設けられている上記5記載のペリクル。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、十分な通気能力をもち、ペリクルフレーム加工性がよく、且つ、マスクへの貼付性が良好なペリクルフレーム及びペリクルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明のペリクルフレームの一例を示す斜視図である。
【
図2】本発明のペリクルフレームの他の例を示すものであり、(A)は上端面側から平面図であり、(B)は短辺外側面側から見た正面図である。
【
図3】本発明のペリクルをフォトマスクに装着した様子を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のペリクルフレームは、ペリクル膜を設ける上端面とフォトマスクに面する下端面とを有する枠状のペリクルフレームである。
【0018】
ペリクルフレームは枠状であれば、その形状はペリクルを装着するフォトマスクの形状に対応する。一般的には、四角形(長方形又は正方形)枠状である。
【0019】
また、ペリクルフレームには、ペリクル膜を設けるための面(ここでは上端面とする)と、フォトマスク装着時にフォトマスクに面する面(ここでは下端面が)がある。
【0020】
通常、ペリクルフレームの上端面には、接着剤等を介してペリクル膜が設けられ、下端面には、ペリクルをフォトマスクに装着するための粘着剤等が設けられるが、この限りではない。
【0021】
ペリクルフレームの材質に制限はなく、公知のものを使用することができる。EUV用のペリクルフレームでは、高温にさらされる可能性があるため、熱膨張係数の小さな材料が好ましい。例えば、Si、SiO2、SiN、石英、インバー、チタン、チタン合金等が挙げられる。中でも、加工容易性や軽量なことからチタンやチタン合金が好ましい。
【0022】
ペリクルフレームの寸法は特に限定されないが、EUV用ペリクルの高さが2.5mm以下に制限されることから、EUV用のペリクルフレームの厚みはそれよりも小さくなり2.5mm未満である。
【0023】
また、EUV用のペリクルフレームの厚みは、ペリクル膜やマスク粘着剤等の厚みを勘案すると、1.5mm以下であることが好ましい。
【0024】
本発明のペリクルフレームは、該ペリクルフレームの上端面の外側面から内側面に向かって切り欠き部が設けられる。切り欠き部の配置場所や個数に制限はないが、開口部の面積を合計で20mm2以上とすることが好ましく、30mm2以上とすることがより好ましい。
【0025】
また、通常、ペリクルフレーム側面には、ハンドリングやペリクルをフォトマスクから剥離する際に用いられる冶具穴が設けられる。冶具穴の大きさはペリクルフレームの厚み方向の長さ(円形の場合は直径)が0.5~1.0mmである。穴の形状に制限はなく、円形や矩形であっても構わない。また、通常、冶具穴は外側面から内側面に貫通しない穴であるが、冶具孔とは別に、外側面から内側面に貫通させた通気孔を設けてもよい。通気孔の場合、配置場所や個数に制限はない。
【0026】
また、ペリクルフレームの外側面から内側面まで形成されている切り欠き部には、フィルタを設けてもよい。その場合は、ペリクルフレームの内側面または外側面のどちらか一方に切り欠き部を覆うように設けてもよい。
【0027】
本発明のペリクルは、上記のようなペリクルフレームの上端面に、粘着剤あるいは接着剤を介して、ペリクル膜が設けられる。粘着剤や接着剤の材料に制限はなく、公知のものを使用することができる。粘着剤や接着剤は、ペリクルフレームの切り欠き部以外の上端面に設けられる。ペリクル膜を強く保持するために、接着力の強い粘着剤あるいは接着剤が好ましい。
【0028】
上記ペリクル膜の材質については、特に制限はないが、露光光源の波長における透過率が高く耐光性の高いものが好ましい。例えば、EUV露光に対しては極薄シリコン膜や炭素膜等が用いられる。
【0029】
さらに、ペリクルフレームの下端面には、フォトマスクに装着するためのマスク粘着剤が形成される。一般的に、マスク粘着剤は、ペリクルフレームの全周に亘って設けられることが好ましい。
【0030】
上記マスク粘着剤としては、公知のものを使用することができ、アクリル系粘着剤やシリコーン系粘着剤が好適に使用できる。粘着剤は必要に応じて、任意の形状に加工されてもよい。
【0031】
上記マスク粘着剤の下端面には、粘着剤を保護するための離型層(セパレータ)が貼り付けられていてもよい。離型層の材質は、特に制限されないが、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)等を使用することができる。また、必要に応じて、シリコーン系離型剤やフッ素系離型剤等の離型剤を離型層の表面に塗布してもよい。
【0032】
ここで、
図1は、本発明のペリクルフレーム1の一例を示し、それぞれの図面において、符号11はペリクルフレームの内側面、符号12はペリクルフレームの外側面、符号13はペリクルフレームの上端面、符号14はペリクルフレームの下端面を示す。
図1の上記ペリクルフレーム1の上端面において、短辺側の上端面にそれぞれ1個の切り欠き部10,10が設けられており、長辺側には設けられていない。なお、通常、ペリクルフレームの長辺側にはペリクルをフォトマスクから剥離するために用いられる治具穴が設けられるが、
図1では特に図示していない。
【0033】
図2は、ペリクルフレーム1の上端面において、短辺側の上端面にそれぞれ1個の切り欠き部10,10が設けられていると共に、長辺側の上端面にもそれずれ1個の切り欠き部10,10が設けられ合計4個の切り欠き部が設けられた例である。
図2では、上記切り欠き部は、外側面から内側面まで連通して形成されている。
図2中、符号Wは切り欠き部の幅、符号Dは切り欠き部の奥行、符号Tは切り欠き部の高さを示す。
【0034】
図3はペリクル20を示すものであり、ペリクルフレーム1の上端面には接着剤4によりペリクル膜2が接着,張設されている。また、上記ペリクル2は、粘着剤5によりフォトマスク3に剥離可能に接着されており、フォトマスク3上のパターン面を保護している。
【実施例】
【0035】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0036】
[実施例1]
チタン(線膨張係数:8.4×10-6(1/K)、密度:4.5g/cm3)製のペリクルフレーム(外寸150mm×118mm×1.5mm、フレーム幅4.0mm)を作製した。
【0037】
ペリクルフレーム長辺の外側面に、辺中央からコーナー方向へ52mm離れた2箇所に、直径1mm×奥行1.2mmの冶具穴を設けた。ペリクルフレーム各辺中央の上端面には、幅90mm×高さ0.1mm×奥行4mmの切り欠き部を設けた。この切り欠き部は、外側面から内側面まで形成されている。
【0038】
ペリクルフレームを洗浄し、該ペリクルフレームの上端面にはシリコーン粘着剤(信越化学工業(株)製X-40-3264)100質量部に硬化剤(信越化学工業(株)製PT-56)1質量部加え撹拌したものを切り欠き部以外に幅1mm、厚み0.1mmになるよう塗布した。また、ペリクルフレームの下端面にはマスク粘着剤として、アクリル粘着剤(綜研化学(株)製SKダイン1495)100質量部に硬化剤(綜研化学(株)製L-45)を0.1質量部加え撹拌したものを全周に亘り、幅1mm、厚み0.1mmになるよう塗布した。
【0039】
その後、ペリクルフレームを90℃で12時間加熱して、該ペリクルフレームの上端面及び下端面の粘着剤を硬化させた。続いて、ペリクル膜として極薄シリコン膜を用い、この極薄シリコン膜をペリクルフレームの上端面に形成した粘着剤に圧着させて、ペリクルを完成させた。
【0040】
このペリクルを、フォトマスクの代用として150mm×150mmの石英マスクに貼り付けた。
【0041】
[実施例2]
チタン製のペリクルフレーム(外寸150mm×118mm×1.5mm、フレーム幅4mm)を作製した。
【0042】
ペリクルフレーム長辺の外側面に、辺中央からコーナー方向へ52mm離れた2箇所に、直径1mm×奥行1.2mmの冶具穴を設けた。ペリクルフレーム長辺の上端面には、幅50mm×高さ0.1mm×奥行4mmの切り欠き部を15mmの間隔を開けて2箇所に設けた。ペリクルフレーム短辺の上端面には、幅40mm×高さ0.1mm×奥行4mmの切り欠き部を15mmの間隔を開けて2箇所に設けた。この切り欠き部は、外側面から内側面まで形成されている。
【0043】
ペリクルフレームを洗浄し、該ペリクルフレーム上端面にはシリコーン粘着剤(信越化学工業(株)製X-40-3264)100質量部に硬化剤(信越化学工業(株)製PT-56)1質量部加え撹拌したものを切り欠き部以外に幅1mm、厚み1mmになるよう塗布した。また、ペリクルフレームの下端面にも同様のシリコーン粘着剤を全周に渡り幅1mm、厚み1mmになるよう塗布した。
【0044】
その後、ペリクルフレームを90℃で12時間加熱して、該ペリクルフレームの上端面及び下端面の粘着剤を硬化させた。続いて、ペリクル膜として極薄シリコン膜を用い、該極薄シリコン膜をペリクルフレームの上端面に形成した粘着剤に圧着させて、ペリクルを完成させた。
【0045】
このペリクルをフォトマスクの代用として150mm×150mmの石英マスクに貼り付けた。
【0046】
[比較例1]
チタン製のペリクルフレーム(外寸150mm×118mm×1.5mm、フレーム幅4mm)を作製した。ペリクルフレーム各辺には切り欠き部を設けず、その代わりに、通気部として各辺20箇所に直径0.8mmの貫通孔を設けた。それ以外は実施例1と同じ構成である。
【0047】
[比較例2]
チタン製のペリクルフレーム(外寸150mm×118mm×1.5mm、フレーム幅4mm)を作製した。ペリクルフレーム各辺中央の下端面に切り欠き部を設けたこと以外は実施例1と同じ構成である。
【0048】
実施例1,2及び比較例1,2の各例のペリクルについて、下記の貼付安定性試験、通気試験及び洗浄後異物検査を行った。その評価結果を表1に示す。
【0049】
[貼付安定性試験]
石英基板に貼り付けたペリクルを、該ペリクルが下側に位置するように設置し、オーブンで80℃に加熱して1週間放置し、ペリクル落下の有無を確認した。その結果、比較例2のみが、ペリクルが落下していた。
【0050】
[通気試験]
石英基板に貼り付けたペリクルを真空装置に入れ、1分で1E-4(1.0×10-4)Paまで減圧した。その後、2分かけて大気圧へ戻し、ペリクル膜の状態を確認した。実施例1,2及び比較例1,2ともにペリクル膜には異常は確認されなかった。
【0051】
[洗浄後異物検査]
ペリクルフレームを洗浄した後、該ペリクルフレーム表面の付着異物を蛍光灯下及び暗室で集光を用いて検査したところ、実施例1,2及び比較例1,2ともに付着異物は確認されなかった。
比較例1については、目視検査では貫通孔内部の異物の有無を確認できないので、ペリクルフレームを洗浄した後、顕微鏡を使用して貫通孔内部の異物の有無を確認した。80ヶ所ある貫通孔のうち、2ヶ所に約100μmの異物が確認された。更に、顕微鏡を使用して目視観察を行ったため、該顕微鏡の使用により、ペリクルフレームの表面に異物が多数付着してしまった。
【0052】
【0053】
上記表1より、実施例1,2のペリクルでは、上端部に切り欠き部をもつペリクルフレームを使用することで、比較例1,2のペリクルに比べると、異物検査を容易に行うことができ、貼付安定性がよく、十分な通気能力があることが分かる。
【符号の説明】
【0054】
1 ペリクルフレーム
11 ペリクルフレーム内側面
12 ペリクルフレーム外側面
13 ペリクルフレーム上端面
14 ペリクルフレーム下端面
10 切り欠き部
W 切り欠き部の幅
D 切り欠き部の奥行
T 切り欠き部の高さ
20 ペリクル
2 ペリクル膜
3 フォトマスク
4 ペリクル膜接着剤
5 フォトマスク粘着剤