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特許7103350コアレス基板用プリプレグ、コアレス基板、コアレス基板の製造方法及び半導体パッケージ
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  • 特許-コアレス基板用プリプレグ、コアレス基板、コアレス基板の製造方法及び半導体パッケージ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】コアレス基板用プリプレグ、コアレス基板、コアレス基板の製造方法及び半導体パッケージ
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/03 20060101AFI20220712BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20220712BHJP
   C08G 59/50 20060101ALI20220712BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
H05K1/03 610N
C08J5/24 CFG
C08G59/50
H05K3/46 B
H05K3/46 T
H05K3/46 N
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019510001
(86)(22)【出願日】2018-03-28
(86)【国際出願番号】 JP2018012846
(87)【国際公開番号】W WO2018181516
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】P 2017066371
(32)【優先日】2017-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 徳彦
(72)【発明者】
【氏名】横田 弘
(72)【発明者】
【氏名】橋本 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】縄手 克彦
(72)【発明者】
【氏名】土川 信次
(72)【発明者】
【氏名】高根沢 伸
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-190966(JP,A)
【文献】特開2016-196549(JP,A)
【文献】国際公開第2014/132947(WO,A1)
【文献】特開2014-146761(JP,A)
【文献】高木 清,最近のプリント配線板技術の動向,ビジコムポスト テクニカルレポート [ONLINE],日本,GICHOビジネスコミュニケーションズ社,2015年05月11日,URL: http://www.busicompost.com/report.html?sno=3&rno=20150511110 155&rcd=0,[令和3年12月8日検索],インターネット
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16;15/08-15/14
C08J 5/04-5/10;5/24
B32B 1/00-43/00
C08G 59/00-59/72
C08G 73/00-73/26
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
H05K 1/03,3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリルエラストマー(a)、少なくとも2個の第1級アミノ基を有するアミン化合物(b)、及び少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(c)を含有し、
前記(メタ)アクリルエラストマー(a)の重量平均分子量(Mw)が、300,000~2,000,000である熱硬化性樹脂組成物を含んでなる、コアレス基板用プリプレグ。
【請求項2】
(メタ)アクリルエラストマー(a)、及び
少なくとも2個の第1級アミノ基を有するアミン化合物(b)と少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(c)との反応物であるアミノ変性ポリイミド樹脂(X)、
を含有し、
前記(メタ)アクリルエラストマー(a)の重量平均分子量(Mw)が、300,000~2,000,000である熱硬化性樹脂組成物を含んでなる、コアレス基板用プリプレグ。
【請求項3】
(メタ)アクリルエラストマー(a)の含有量が、熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分の固形分100質量部に対して、1~60質量部である、請求項1又は2に記載のコアレス基板用プリプレグ。
【請求項4】
(メタ)アクリルエラストマー(a)が、エポキシ基、水酸基、カルボキシ基、アミノ基及びアミド基からなる群から選ばれる1種以上の反応性官能基を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のコアレス基板用プリプレグ。
【請求項5】
前記熱硬化性樹脂組成物が、さらに、熱硬化性樹脂(d)を含有する、請求項1~のいずれか1項に記載のコアレス基板用プリプレグ。
【請求項6】
前記熱硬化性樹脂組成物が、さらに、硬化促進剤(e)を含有する、請求項1~のいずれか1項に記載のコアレス基板用プリプレグ。
【請求項7】
前記熱硬化性樹脂組成物が、さらに、無機充填材(f)を含有する、請求項1~のいずれか1項に記載のコアレス基板用プリプレグ。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載のコアレス基板用プリプレグを用いて形成された絶縁層を含有する、コアレス基板。
【請求項9】
請求項に記載のコアレス基板に半導体素子を搭載してなる半導体パッケージ。
【請求項10】
支持体の上にビルドアップ層を形成した後、該ビルドアップ層を前記支持体から分離するコアレス基板の製造方法であって、
前記ビルドアップが、絶縁層と導体層とが交互に積層されてなり、
前記絶縁層の少なくとも1層を、請求項1~のいずれか1項に記載のコアレス基板用プリプレグを用いて形成する、コアレス基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアレス基板用プリプレグ、並びにこれを用いたコアレス基板、コアレス基板の製造方法及び半導体パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化及び高性能化により、プリント配線板には従来にも増して配線密度の高度化及び高集積化と共に、基板の薄型化が求められている。
これらの要求を踏まえたパッケージ構造として、例えば、特許文献1及び特許文献2には、コア基板を有さず、高密度配線化が可能なビルドアップ層を主体としたコアレス基板が提案されている。このコアレス基板は、金属板等の支持体(コア基板)上にビルドアップ層を形成した後、該支持体(コア基板)を除去することにより得られるものであり、つまりこの場合はビルドアップ層のみとなる。コアレス基板の形成に使用されるビルドアップ層としては、ガラスクロスに樹脂組成物を含浸して得られるプリプレグ、ガラスクロスを含まない絶縁樹脂等が用いられる。
【0003】
コアレス基板は、支持体(コア基板)を除去することによる薄型化によって剛性が低下するため、半導体素子を搭載してパッケージ化した際に半導体パッケージが反るという問題がより顕著になる。反りは、半導体素子とプリント配線板との接続不良を引き起こす要因の1つとされており、コアレス基板においては、より一層効果的な反りの低減が切望されている。
【0004】
半導体パッケージが反る要因の1つとしては、半導体素子とプリント配線板の熱膨張率の差が挙げられる。一般的には、半導体素子の熱膨張率よりもプリント配線板の熱膨張率の方が大きいため、半導体素子実装時にかかる熱履歴等によって応力が発生して反りが生ずるものである。したがって、半導体パッケージの反りを抑制するためには、プリント配線板の熱膨張率を小さくして半導体素子の熱膨張率との差を小さくする必要があり、このことはコアレス基板であっても同様である。そのため、コアレス基板に使用されるビルドアップ層には、低熱膨張率化が求められる。
特許文献3には、ガラスクロスを含まない絶縁樹脂を絶縁層としてプリプレグの両面に積層する方法が開示されているが、この方法では、熱膨張率が大きくなるため、反りが大きくなる傾向にある。
【0005】
ここで、ガラスクロスに樹脂組成物を含浸して得られるプリプレグの熱膨張率は、下記式で示される、Scapery式に従うことが一般的に知られている。
A≒(ArErFr+AgEgFg)/(ErFr+EgFg)
(上記式中、Aはプリプレグの熱膨張率、Arは樹脂組成物の熱膨張率、Erは樹脂組成物の弾性率、Frは樹脂組成物の体積分率、Agはガラスクロスの熱膨張率、Egはガラスクロスの弾性率、Fgはガラスクロスの体積分率を表す。)
上記Scapery式から、任意の体積分率において同一の物性のガラスクロスを使用した場合、樹脂組成物の弾性率及び熱膨張率を低減することによってプリプレグの低熱膨張化が可能となることが分かる。
【0006】
例えば、特許文献4には、半導体パッケージの反りを低減することができるプリプレグとして、特定の低弾性成分を含有する樹脂組成物及び織布基材で形成されたプリプレグが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-72085号公報
【文献】特開2002-26171号公報
【文献】特開2009-231222号公報
【文献】特開2015-189834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献4に示されるような、樹脂組成物の弾性率を低減したプリプレグは、剛性低下によってビルドアップ層にかかる負荷の影響が大きく、例えば、ビルドアップ層形成後のレーザー等によるビアホール形成工程において、金属回路が剥離することがある。そのため、金属回路との接着強度の向上が求められている。
【0009】
本発明の目的は、こうした現状に鑑み、コアレス基板に要求される水準の、低熱膨張性、金属回路との接着強度、耐熱性及び耐デスミア性を満足し得るコアレス基板用プリプレグ、並びにこれを用いたコアレス基板、コアレス基板の製造方法及び半導体パッケージを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、(メタ)アクリルエラストマーと特定の熱硬化性樹脂とを含有する熱硬化性樹脂組成物を含んでなるプリプレグが、上記目的に沿うものであることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[9]を提供するものである。
[1](メタ)アクリルエラストマー(a)、少なくとも2個の第1級アミノ基を有するアミン化合物(b)、及び少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(c)を含有する熱硬化性樹脂組成物を含んでなる、コアレス基板用プリプレグ。
[2](メタ)アクリルエラストマー(a)の含有量が、熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分の固形分100質量部に対して、1~60質量部である、上記[1]に記載のコアレス基板用プリプレグ。
[3](メタ)アクリルエラストマー(a)が、エポキシ基、水酸基、カルボキシ基、アミノ基及びアミド基からなる群から選ばれる1種以上の反応性官能基を有する、上記[1]又は[2]に記載のコアレス基板用プリプレグ。
[4]前記熱硬化性樹脂組成物が、さらに、熱硬化性樹脂(d)を含有する、上記[1]~[3]のいずれかに記載のコアレス基板用プリプレグ。
[5]前記熱硬化性樹脂組成物が、さらに、硬化促進剤(e)を含有する、上記[1]~[4]のいずれかに記載のコアレス基板用プリプレグ。
[6]前記熱硬化性樹脂組成物が、さらに、無機充填材(f)を含有する、上記[1]~[5]のいずれかに記載のコアレス基板用プリプレグ。
[7]上記[1]~[6]のいずれかに記載のコアレス基板用プリプレグを用いて形成された絶縁層を含有する、コアレス基板。
[8]上記[7]に記載のコアレス基板に半導体素子を搭載してなる半導体パッケージ。
[9]支持体の上に、ビルドアップ層を形成した後、該ビルドアップ層を前記支持体から分離するコアレス基板の製造方法であって、
前記ビルドアップが、絶縁層と導体層とが交互に積層されてなり、
前記絶縁層の少なくとも1層を、上記[1]~[6]のいずれかに記載のコアレス基板用プリプレグを用いて形成する、コアレス基板の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コアレス基板に要求される水準の、低熱膨張性、金属回路との接着強度、耐熱性及び耐デスミア性を満足し得るコアレス基板用プリプレグ、並びにこれを用いたコアレス基板、コアレス基板の製造方法及び半導体パッケージを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のコアレス基板の製造方法の一態様を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、数値範囲の下限値及び上限値は、それぞれ他の数値範囲の下限値及び上限値と任意に組み合わせられる。
また、本明細書に例示する各成分及び材料は、特に断らない限り、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本明細書において、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書における記載事項を任意に組み合わせた態様も本発明に含まれる。
【0015】
[コアレス基板用プリプレグ]
本発明のコアレス基板用プリプレグ(以下、単に「プリプレグ」ともいう)は、(メタ)アクリルエラストマー(a)(以下、「(a)成分」ともいう)、少なくとも2個の第1級アミノ基を有するアミン化合物(b)(以下、単に「アミン化合物(b)」又は「(b)成分」ともいう)、及び少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(c)(以下、単に「マレイミド化合物(c)」又は「(c)成分」ともいう)を含有する熱硬化性樹脂組成物を含んでなる、コアレス基板用プリプレグである。
本発明のプリプレグは、優れた耐熱性及び耐デスミア性を維持しつつ、低熱膨張性に優れ、さらに金属回路との接着強度に優れるため、コアレス基板の絶縁層のように、優れた耐熱性、金属回路との接着強度を有し、さらに、薄型化に伴う反りの改善が求められる用途において特に好適である。
以下、本発明のプリプレグの作製に用いられる熱硬化性樹脂組成物が含有する各成分について順に説明する。
【0016】
<(メタ)アクリルエラストマー(a)>
本発明のプリプレグは、(メタ)アクリルエラストマー(a)を含有する熱硬化性樹脂組成物を含んでなることにより、金属回路との接着強度を良好に保ちながら弾性率を低減することができる。その理由は定かではないが、(a)成分が有する柔軟なアクリル骨格と、(c)成分が有する接着力の強いマレイミド骨格が適切な形で海島構造を形成し、偏りなくそれぞれの特性を発揮できるためと考えられる。
【0017】
(メタ)アクリルエラストマー(a)は、少なくとも(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を含む重合体である。(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位とは、(メタ)アクリル酸エステルのビニル結合を付加重合させたときに形成される構成単位を意味する。なお、本明細書中「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群から選ばれる1種以上を意味する。
(メタ)アクリルエラストマー(a)は、単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。
【0018】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(メタ)アクリルエラストマー(a)は、2種以上の(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を含有していてもよく、2種以上の(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位からなるものであってもよい。
【0019】
(メタ)アクリルエラストマー(a)は、(メタ)アクリル酸エステル以外の単量体に由来する構成単位を含有していてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル以外の単量体としては、例えば、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、スチレン、エチレン、プロピレン、ブタジエン等のビニル系単量体が挙げられる。(メタ)アクリルエラストマー(a)は、2種以上の(メタ)アクリル酸エステル以外の単量体に由来する構成単位を含有していてもよい。
【0020】
(メタ)アクリルエラストマー(a)は、さらに、分子末端及び分子鎖中のうち少なくとも一方に反応性官能基を有していてもよい。反応性官能基としては、例えば、エポキシ基、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基、イソシアナト基、(メタ)アクリル基、ビニル基等が挙げられる。これらの反応性官能基を有することにより、他の樹脂成分との相溶性が向上し、熱硬化性樹脂組成物の硬化時に発生する内部応力をより効果的に低減することができ、結果として、基板の反りを顕著に低減することが可能となる。特に、低熱膨張性及び金属回路との接着強度の観点からは、エポキシ基、水酸基、カルボキシ基、アミノ基及びアミド基からなる群から選ばれる1種以上を有することが好ましく、耐熱性及び絶縁信頼性の観点から、エポキシ基、水酸基及びアミド基からなる群から選ばれる1種以上を有することがより好ましい。
反応性官能基としてエポキシ基を有する場合、その官能基当量は、0.01~0.5eq/kgが好ましく、0.03~0.4eq/kgがより好ましく、0.05~0.3eq/kgがさらに好ましい。
反応性官能基として水酸基を有する場合、その水酸基価は、5~100mgKOH/gが好ましく、10~50mgKOH/gがより好ましく、15~30mgKOH/gがさらに好ましい。
【0021】
(メタ)アクリルエラストマー(a)の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、1,000~2,000,000が好ましく、10,000~1,500,000がより好ましく、100,000~1,400,000がさらに好ましく、300,000~1,300,000が特に好ましい。重量平均分子量(Mw)が前記下限値以上であると、より低弾性率性に優れる傾向にあり、前記上限値以下であると、より相溶性及び流動性に優れる傾向にある。なお、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定を行い、標準ポリスチレンを用いて作製した検量線により換算したものである。
【0022】
(メタ)アクリルエラストマー(a)の含有量は、他の樹脂成分との相溶性に優れ、硬化物の弾性率を効果的に低減する観点から、熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分の固形分100質量部に対して、1~60質量部が好ましく、5~50質量部がより好ましく、10~30質量部がさらに好ましい。(メタ)アクリルエラストマー(a)の含有量が前記範囲内であると、硬化物中に適切な形で海島構造を形成することができ、柔軟な(メタ)アクリルエラストマー(a)に起因する弾性率の低減と、マレイミド化合物(c)の優れた金属回路との接着強度とを高度に両立させることができる。
ここで、本実施形態における固形分とは、水分、後述する溶剤等の揮発する物質以外の組成物中の成分のことをいう。すなわち、固形分は、25℃付近の室温で液状、水飴状又はワックス状のものも含み、必ずしも固体であることを意味するものではない。
【0023】
<少なくとも2個の第1級アミノ基を有するアミン化合物(b)>
アミン化合物(b)は、少なくとも2個の第1級アミノ基を有するアミン化合物であれば特に限定されない。
アミン化合物(b)は、2個の第1級アミノ基を有するアミン化合物が好ましく、下記一般式(b-1)で表されるジアミン化合物がより好ましい。
【0024】
【化1】

(一般式(b-1)中、Xb1は、下記一般式(b1-1)、(b1-2)又は(b1-3)で表される基である。)
【0025】
【化2】

(一般式(b1-1)中、Rb1は各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。pは0~4の整数である。)
【0026】
【化3】

(一般式(b1-2)中、Rb2及びRb3は各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。Xb2は炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボニルオキシ基、ケト基、単結合又は下記一般式(b1-2-1)で表される基である。q及びrは各々独立に0~4の整数である。)
【化4】

(一般式(b1-2-1)中、Rb4及びRb5は各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。Xb3は炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボニルオキシ基、ケト基又は単結合である。s及びtは各々独立に0~4の整数である。)
【0027】
【化5】

(一般式(b1-3)中、Rb6、Rb7、Rb8及びRb9は各々独立に、炭素数1~5のアルキル基、フェニル基又は置換フェニル基を表す。Xb4及びXb5は各々独立に、2価の有機基を表し、uは2~100の整数である。)
【0028】
前記一般式(b1-1)中、Rb1が表す脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。該脂肪族炭化水素基としては、好ましくは炭素数1~3の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくはメチル基である。また、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
以上の中でも、Rb1としては炭素数1~5の脂肪族炭化水素基が好ましい。
pは0~4の整数であり、入手容易性の観点から、好ましくは0~2の整数、より好ましくは2である。pが2以上の整数である場合、複数のRb1同士は同一であっても異なっていてもよい。
【0029】
前記一般式(b1-2)中、Rb2及びRb3が表す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子としては、前記Rb1の場合と同じものが挙げられる。該脂肪族炭化水素基としては、好ましくは炭素数1~3の脂肪族炭化水素基、より好ましくはメチル基及びエチル基、さらに好ましくはエチル基である。
b2が表す炭素数1~5のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、1,2-ジメチレン基、1,3-トリメチレン基、1,4-テトラメチレン基、1,5-ペンタメチレン基等が挙げられる。該アルキレン基としては、耐熱性及び低熱膨張性の観点から、好ましくは炭素数1~3のアルキレン基であり、より好ましくはメチレン基である。
b2が表す炭素数2~5のアルキリデン基としては、例えば、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、ペンチリデン基、イソペンチリデン基等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性及び低熱膨張性の観点から、イソプロピリデン基が好ましい。
b2としては、上記選択肢の中でも、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基が好ましい。より好ましいものは前述のとおりである。
q及びrは各々独立に0~4の整数であり、入手容易性の観点から、いずれも、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は2である。q又はrが2以上の整数である場合、複数のRb2同士又はRb3同士は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0030】
前記一般式(b1-2-1)中、Rb4及びRb5が表す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子としては、前記Rb2及びRb3の場合と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
b3が表す炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基としては、前記Xb2が表す炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
b3としては、上記選択肢の中でも、好ましくは炭素数2~5のアルキリデン基であり、より好ましいものは前述のとおりである。
s及びtは0~4の整数であり、入手容易性の観点から、いずれも、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0である。s又はtが2以上の整数である場合、複数のRb4同士又はRb5同士は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
前記一般式(b1-2-1)は、下記一般式(b1-2-1’)で表されることが好ましい。
【化6】

(一般式(b1-2-1’)中のXb3、Rb4、Rb5、s及びtは、一般式(b1-2-1)中のものと同じであり、好ましいものも同じである。)
【0031】
前記一般式(b1-2)で表される基は、下記一般式(b1-2’)で表される基であることが好ましく、下記式(b1-i)~(b1-iii)のいずれかで表される基であることがより好ましく、下記式(b1-ii)又は(b1-iii)で表される基であることがさらに好ましい。
【化7】

(一般式(b1-2’)中のXb2、Rb2、Rb3、q及びrは、一般式(b1-2)中のものと同じであり、好ましいものも同じである。)
【0032】
【化8】
【0033】
前記一般式(b1-3)中のRb6、Rb7、Rb8及びRb9が表す炭素数1~5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。該アルキル基としては、炭素数1~3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
置換フェニル基におけるフェニル基が有する置換基としては、例えば、炭素数1~5のアルキル基、炭素数2~5のアルケニル基、炭素数2~5のアルキニル基等が挙げられる。該炭素数1~5のアルキル基としては、前記したものと同じものが挙げられる。該炭素数2~5のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基等が挙げられる。炭素数2~5のアルキニル基としては、エチニル基、プロパルギル基等が挙げられる。
b6、Rb7、Rb8及びRb9は、いずれも炭素数1~5のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
b4及びXb5が表す2価の有機基としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-O-又はこれらが組み合わされた2価の連結基等が挙げられる。該アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等の炭素数1~10のアルキレン基が挙げられる。該アルケニレン基としては、炭素数2~10のアルケニレン基が挙げられる。該アルキニレン基としては、炭素数2~10のアルキニレン基が挙げられる。該アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基等の炭素数6~20のアリーレン基が挙げられる。
【0034】
前記一般式(b-1)中、Xb1としては、前記一般式(b1-1)、(b1-2)又は(b1-3)で表される基のいずれであってもよく、これらの中でも、低熱膨張性及び金属回路との接着強度の観点から、一般式(b1-3)で表される基であることが好ましい。
【0035】
(b)成分の具体例としては、ジアミノベンジジン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル-6,6’-ジスルホン酸、2,2’,5,5’-テトラクロロ-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-メチレン-ビス(2-クロロアニリン)、1,3’-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ビフェニルジオール、9,9’-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、o-トリジンスルホン、分子末端に第1級アミノ基を有する変性シロキサン化合物等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性、耐デスミア性、低熱膨張性及び金属回路との接着強度の観点からは、分子末端に第1級アミノ基を有する変性シロキサン化合物が好ましい。
【0036】
分子末端に第1級アミノ基を有する変性シロキサン化合物としては、分子両末端に第1級アミノ基を有する変性シロキサン化合物(以下、「両末端ジアミン変性シロキサン」ともいう)が好ましく、前記一般式(b-1)におけるXb1として、前記一般式(b1-3)で表される基を有する化合物がより好ましい。
両末端ジアミン変性シロキサンとしては、市販品を用いることができ、例えば、両末端に第1級アミノ基を有する変性シロキサン化合物「PAM-E」(アミノ基の官能基当量130g/mol)、「KF-8010」(アミノ基の官能基当量430g/mol)、「X-22-161A」(アミノ基の官能基当量800g/mol)、「X-22-161B」(アミノ基の官能基当量1,500g/mol)、「KF-8012」(アミノ基の官能基当量2,200g/mol)、「KF-8008」(アミノ基の官能基当量5,700g/mol)〔以上、信越化学工業株式会社製〕、「BY16-871」(アミノ基の官能基当量130g/mol)、「BY16-853U」(アミノ基の官能基当量460g/mol)〔以上、東レ・ダウコーニング株式会社製〕等が挙げられる。これらの中でも、反応性が高く、より低熱膨張化できるという観点から、「X-22-161A」、「X-22-161B」が好ましい。
【0037】
分子末端に第1級アミノ基を有する変性シロキサン化合物のアミノ基の官能基当量に特に制限はないが、300~3,000g/molが好ましく、400~2,500g/molがより好ましく、600~2,000g/molがさらに好ましい。
【0038】
(b)成分の含有量は、低熱膨張性及び金属回路との接着強度の観点から、熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分の固形分100質量部に対して、3~50質量部が好ましく、5~30質量部がより好ましく、7~20質量部がさらに好ましい。
【0039】
<少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(c)>
マレイミド化合物(c)は、少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物であれば特に限定されない。
マレイミド化合物(c)としては、2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物が好ましく、下記一般式(c-1)で表される化合物がより好ましい。
【0040】
【化9】

(一般式(c-1)中、Xc1は、下記一般式(c1-1)、(c1-2)、(c1-3)又は(c1-4)で表される基である。)
【0041】
【化10】

(一般式(c1-1)中、Rc1は各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。p1は0~4の整数である。)
【0042】
【化11】

(一般式(c1-2)中、Rc2及びRc3は各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。Xc2は炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボニルオキシ基、ケト基、単結合又は下記一般式(c1-2-1)で表される基である。q1及びr1は各々独立に0~4の整数である。)
【0043】
【化12】

(一般式(c1-2-1)中、Rc4及びRc5は各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。Xc3は炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボニルオキシ基、ケト基又は単結合である。s1及びt1は各々独立に0~4の整数である。)
【0044】
【化13】

(一般式(c1-3)中、n1は1~10の整数である。)
【0045】
【化14】

(一般式(c1-4)中、Rc6及びRc7は各々独立に、水素原子又は炭素数1~5の脂肪族炭化水素基である。u1は1~8の整数である。)
【0046】
前記一般式(c1-1)中、Rc1が表す脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。該脂肪族炭化水素基としては、好ましくは炭素数1~3の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくはメチル基である。また、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
以上の中でも、Rc1としては炭素数1~5の脂肪族炭化水素基が好ましい。
p1は0~4の整数であり、入手容易性の観点から、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0である。p1が2以上の整数である場合、複数のRc1同士は同一であっても異なっていてもよい。
【0047】
前記一般式(c1-2)中、Rc2及びRc3が表す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子としては、前記Rc1の場合と同じものが挙げられる。該脂肪族炭化水素基としては、好ましくは炭素数1~3の脂肪族炭化水素基、より好ましくはメチル基及びエチル基、さらに好ましくはエチル基である。
c2が表す炭素数1~5のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、1,2-ジメチレン基、1,3-トリメチレン基、1,4-テトラメチレン基、1,5-ペンタメチレン基等が挙げられる。該アルキレン基としては、耐熱性及び低熱膨張性の観点から、好ましくは炭素数1~3のアルキレン基であり、より好ましくはメチレン基である。
c2が表す炭素数2~5のアルキリデン基としては、例えば、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、ペンチリデン基、イソペンチリデン基等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性及び低熱膨張性の観点から、イソプロピリデン基が好ましい。
c2としては、上記選択肢の中でも、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基が好ましい。より好ましいものは前述のとおりである。
q1及びr1は各々独立に0~4の整数であり、入手容易性の観点から、いずれも、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は2である。q1又はr1が2以上の整数である場合、複数のRc2同士又はRc3同士は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0048】
前記一般式(c1-2-1)中、Rc4及びRc5が表す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子としては、前記Rc2及びRc3の場合と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
c3が表す炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基としては、前記Xc2が表す炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
c3としては、上記選択肢の中でも、好ましくは炭素数2~5のアルキリデン基であり、より好ましいものは前述のとおりである。
s1及びt1は0~4の整数であり、入手容易性の観点から、いずれも、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0である。s1又はt1が2以上の整数である場合、複数のRc4同士又はRc5同士は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
また、前記一般式(c1-2-1)は、下記一般式(c1-2-1’)で表されることが好ましい。
【0049】
【化15】

(一般式(c1-2-1’)中のXc3、Rc4、Rc5、s1及びt1は、一般式(c1-2-1)中のものと同じであり、好ましいものも同じである。)
【0050】
前記一般式(c1-2)で表される基は、下記一般式(c1-2’)で表される基であることが好ましく、下記(c1-i)~(c1-iii)のいずれかで表される基であることがより好ましく、下記(c1-i)又は(c1-ii)で表される基であることがさらに好ましい。
【0051】
【化16】

(一般式(c1-2’)中のXc2、Rc2、Rc3、q1及びr1は、一般式(c1-2)中のものと同じであり、好ましいものも同じである。)
【0052】
【化17】
【0053】
前記一般式(c1-3)中、n1は、1~10の整数であり、入手容易性の観点から、好ましくは1~5の整数、より好ましくは1~3の整数である。
前記一般式(c1-4)中、Rc6及びRc7が表す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基は、前記一般式(c1-1)中のRc1の場合と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。u1は1~8の整数であり、好ましくは1~3の整数、より好ましくは1である。
【0054】
前記一般式(c-1)中、Xc1は、前記一般式(c1-1)、(c1-2)、(c1-3)又は(c1-4)で表される基のいずれであってもよく、これらの中でも、低熱膨張性及び曲げ弾性率の観点から、(c1-2)で表される基であることが好ましい。
【0055】
(c)成分の具体例としては、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン等が挙げられる。
これらの中でも、反応性が高く、より高耐熱性化できるという観点から、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンが好ましく、溶剤への溶解性の観点から、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)メタンがより好ましく、製造コストの観点から、ビス(4-マレイミドフェニル)メタンがさらに好ましい。
【0056】
(c)成分の含有量は、弾性率及び低熱膨張性の観点から、熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分の固形分100質量部に対して、20~90質量部が好ましく、30~70質量部がより好ましく、40~60質量部がさらに好ましい。
【0057】
(b)成分と(c)成分は、それぞれをそのまま(a)成分等と混合してもよいし、(a)成分と混合する前に、必要に応じて、予め(b)成分と(c)成分とを加熱して反応させてアミノ変性ポリイミド樹脂[以下、アミノ変性ポリイミド樹脂(X)と称する。]を形成しておいてもよい。つまり、本発明は、(メタ)アクリレートエラストマー(a)、少なくとも2個の第1級アミノ基を有するアミン化合物(b)と少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(c)との反応物であるアミノ変性ポリイミド樹脂(X)を含有する熱硬化性樹脂組成物を含んでなる、コアレス基板用プリプレグも提供する。予め(b)成分と(c)成分とを反応させてアミノ変性ポリイミド樹脂(X)としておくことにより、分子量を制御することができ、さらに低硬化収縮性及び低熱膨張性を向上させることができる。該アミノ変性ポリイミド樹脂(X)について、以下に説明する。
【0058】
<アミノ変性ポリイミド樹脂(X)>
(b)成分と(c)成分との反応方法に特に制限はない。反応温度は、生産性及び十分に反応を進行させる観点から、70~200℃が好ましく、80~150℃がより好ましく、100~130℃がさらに好ましい。また、反応時間に特に制限はないが、0.5~10時間が好ましく、1~6時間がより好ましい。
【0059】
(b)成分と(c)成分との反応は、有機溶媒中で行うことが好ましい。有機溶媒としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチルエステル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の窒素原子含有溶媒;ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶媒などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、溶解性の観点から、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルセロソルブ、γ-ブチロラクトンが好ましく、低毒性であるという観点及び揮発性が高く残溶媒として残り難いという観点から、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルアセトアミドが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。
有機溶媒の使用量に特に制限はないが、溶解性及び反応速度の観点から、(b)成分と(c)成分との合計100質量部に対し、25~1,000質量部が好ましく、50~500質量部がより好ましく、50~200質量部がさらに好ましい。
【0060】
上記反応終了後、特に反応物を精製することなく、得られた反応混合液をそのままその他の成分と混合して、アミノ変性ポリイミド樹脂(X)を含有する熱硬化性樹脂組成物を調製することができる。
【0061】
前記反応において、前記(b)成分と前記(c)成分の使用割合は、ゲル化の防止及び耐熱性の観点から、(c)成分のマレイミド基の当量が、(b)成分の第1級アミノ基の当量を超えることが好ましく、つまり、(c)成分のマレイミド基の当量と、(b)成分の第1級アミノ基の当量との比[(c)/(b)]が、1を超えることが好ましく、2~35がより好ましく、10~35がさらに好ましい。
【0062】
熱硬化性樹脂組成物がアミノ変性ポリイミド樹脂(X)を含有する場合、その含有量は、熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分の固形分100質量部に対して、40~95質量部が好ましく、50~80質量部がより好ましく、60~70質量部がさらに好ましい。
【0063】
<熱硬化性樹脂(d)>
熱硬化性樹脂組成物は、さらに、熱硬化性樹脂(d)を含有してもよく、また、含有していることが好ましい。但し、該熱硬化性樹脂(d)は、前記(b)成分及び前記(c)成分を含まない。熱硬化性樹脂(d)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
熱硬化性樹脂(d)としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和イミド樹脂(但し、前記(c)成分を含まない)、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂(但し、前記(b)成分を含まない)、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコーン樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂(但し、前記(b)成分を含まない)等が挙げられる。これらの中でも、成形性及び電気絶縁性の観点、並びに金属回路との接着強度の観点から、エポキシ樹脂及びシアネート樹脂からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、エポキシ樹脂がより好ましい。
【0064】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、α-ナフトール/クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリアジン骨格含有エポキシ樹脂、フルオレン骨格含有エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、多官能フェノール類及びアントラセン等の多環芳香族類のジグリシジルエーテル化合物、これらにリン化合物を導入したリン含有エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、耐熱性及び難燃性の観点から、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、α-ナフトール/クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
【0065】
熱硬化性樹脂組成物が熱硬化性樹脂(d)を含有する場合、その含有量は、熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分の固形分100質量部に対して、1~30質量部が好ましく、5~25質量部がより好ましく、10~20質量部がさらに好ましい。
【0066】
<硬化促進剤(e)>
熱硬化性樹脂組成物は、さらに、硬化促進剤(e)を含有していてもよい。
硬化促進剤(e)としては、例えば、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)、トリスアセチルアセトナートコバルト(III)等の有機金属塩;イミダゾール類及びその誘導体;有機リン系化合物;第二級アミン類;第三級アミン類;第四級アンモニウム塩などが挙げられる。これらは単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、耐熱性、難燃性及び金属回路との接着強度の観点からは、イミダゾール類及びその誘導体が好ましく、低熱膨張性の観点からは、有機リン系化合物が好ましい。
硬化促進剤(e)としては市販品を用いてもよい。市販品としては、イソシアネートマスクイミダゾール(第一工業製薬株式会社製、商品名:G-8009L)、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン(北興化学工業株式会社製、商品名:TPP-S)等が挙げられる。
熱硬化性樹脂組成物が硬化促進剤(e)を含有する場合、その含有量は、熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分の固形分100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましく、0.3~5質量部がより好ましく、0.5~2質量部がさらに好ましい。硬化促進剤(e)の含有量が0.1質量部以上であると、耐熱性、難燃性及び銅箔接着性に優れる傾向にあり、10質量部以下であると、耐熱性、経日安定性及びプレス成形性に優れる傾向にある。
【0067】
<無機充填材(f)>
熱硬化性樹脂組成物は、さらに、無機充填材(f)を含有していてもよい。
無機充填材(f)としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、マイカ、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、焼成クレー等のクレー、タルク、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素、石英粉末、ガラス短繊維、ガラス微粉末、中空ガラス等が挙げられる。ガラスとしては、Eガラス、Tガラス、Dガラス等が好ましく挙げられる。これらは単独で用いても2種類以上を混合して用いてもよい。
これらの中でも、誘電特性、耐熱性及び低熱膨張性の観点から、シリカが好ましい。シリカとしては、例えば、湿式法で製造され含水率の高い沈降シリカと、乾式法で製造され結合水等をほとんど含まない乾式法シリカが挙げられ、乾式法シリカとしてはさらに、製造法の違いにより、破砕シリカ、フュームドシリカ、溶融球状シリカ等に分類される。これらの中でも、低熱膨張性及び樹脂に充填した際の流動性の観点から、溶融球状シリカが好ましい。
【0068】
無機充填材(f)の平均粒子径は、0.1~10μmが好ましく、0.3~8μmがより好ましく、0.3~3μmがさらに好ましい。平均粒子径が0.1μm以上であると、樹脂に高充填した際の流動性を良好に保てる傾向にあり、10μm以下であると、粗大粒子の混入確率を低減し、粗大粒子起因の不良の発生を抑えることができる傾向にある。ここで、平均粒子径とは、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めたとき、体積50%に相当する点の粒子径のことであり、レーザ回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。
無機充填材(f)は、カップリング剤で表面処理されたものであってもよい。カップリング剤による表面処理の方式は、配合前の無機充填材(f)に対して乾式又は湿式で表面処理する方式であってもよく、表面未処理の無機充填材(f)を、他の成分に配合して組成物とした後、該組成物にシランカップリング剤を添加する、いわゆるインテグラルブレンド処理方式であってもよい。
カップリング剤としては、例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーンオリゴマー等が挙げられる。
【0069】
熱硬化性樹脂組成物が無機充填材(f)を含有する場合、その含有量は、熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分の固形分100質量部に対して、10~300質量部が好ましく、50~250質量部がより好ましく、70~180質量部がさらに好ましい。無機充填材(f)の含有量が前記範囲内であると、成形性及び低熱膨張性が良好となる。
【0070】
熱硬化性樹脂組成物が無機充填材(f)を含有する場合、必要に応じて、三本ロール、ビーズミル、ナノマイザー等の分散機で処理を行って、無機充填材(f)の分散性を改善することが好ましい。
【0071】
<その他の成分>
本発明のプリプレグが含有する熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性の性質を損なわない程度に、その他の成分、例えば、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、接着性向上剤等を含有していてもよい。
難燃剤としては、例えば、芳香族リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸エステル、ホスフィン酸化合物の金属塩、赤リン、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド及びその誘導体等のリン系難燃剤;スルファミン酸グアニジン、硫酸メラミン、ポリリン酸メラミン、メラミンシアヌレート等の窒素系難燃剤;臭素、塩素等を含有する含ハロゲン系難燃剤;三酸化アンチモン等の無機系難燃剤などが挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤等が挙げられる。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン類、ベンジルケタール類、チオキサントン系等の光重合開始剤が挙げられる。
蛍光増白剤としては、例えば、スチルベン誘導体の蛍光増白剤等が挙げられる。
接着性向上剤としては、例えば、尿素シラン等の尿素化合物、前記カップリング剤などが挙げられる。
【0072】
熱硬化性樹脂組成物は、プリプレグ等の製造に用い易いように、各成分が有機溶媒中に溶解又は分散されたワニスの状態であってもよい。
該有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の窒素原子含有溶媒;ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、各成分の溶解性の観点からは、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましく、メチルエチルケトンがより好ましく、また、低毒性という観点からは、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。
ワニスの固形分濃度は、40~90質量%が好ましく、50~80質量%がより好ましい。ワニスの固形分濃度が前記範囲内であると、塗工性を良好に保ち、熱硬化性樹脂組成物の付着量が適切なプリプレグを得ることができる。
【0073】
本発明のプリプレグの曲げ弾性率は、反り低減の観点から、25GPa以下が好ましく、20GPa以下がより好ましく、18GPa以下がさらに好ましい。曲げ弾性率の下限値としては、例えば、5GPa以上であり、10GPa以上であってもよい。
曲げ弾性率は、実施例に示す方法で測定することができる。
【0074】
本発明のプリプレグは、例えば、前記熱硬化性樹脂組成物を、繊維基材に含浸し、加熱等により半硬化(Bステージ化)して製造することができる。
繊維基材としては、各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている周知のものが使用できる。その材質の例としては、Eガラス、Sガラス、低誘電ガラス、Qガラス等の無機物繊維;低誘電ガラスポリイミド、ポリエステル、テトラフルオロエチレン等の有機繊維;並びにそれらの混合物などが挙げられる。特に、誘電特性が優れる基材を得る観点から、無機物繊維が好ましく、低誘電ガラス、Qガラスがより好ましい。
これらの繊維基材は、例えば、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット、サーフェシングマット等の形状を有する。
繊維基材の材質及び形状は、目的とする成形物の用途及び性能等により適宜選択され、必要により、1種の材質及び1種の形状からなる繊維基材であってもよいし、2種以上の材質からなる繊維基材であってもよいし、2種以上の形状を有する繊維基材であってもよい。繊維基材は、例えば、約0.03~0.5mmの厚さのものを使用することができる。これらの繊維基材は、耐熱性、耐湿性、加工性等の観点から、シランカップリング剤等で表面処理したもの、機械的に開繊処理を施したものであることが好ましい。
【0075】
本発明のプリプレグは、例えば、繊維基材に対する熱硬化性樹脂組成物の固形分付着量が、乾燥後のプリプレグに対する熱硬化性樹脂組成物の含有率で、20~90質量%であることが好ましい。
本発明のプリプレグは、例えば、プリプレグ中の熱硬化性樹脂組成物の固形分付着量が前記範囲内となるように熱硬化性樹脂組成物を繊維基材に含浸した後、100~200℃の温度で1~30分加熱乾燥し、半硬化(Bステージ化)させて、製造することができる。
【0076】
本発明のプリプレグを用いることで、絶縁層を含有する積層体を得ることができる。該積層板は、本発明のプリプレグを積層成形して製造することができる。具体的には、本発明のプリプレグを1枚又は2~20枚重ねたものを準備し、必要に応じて、その片面又は両面に、銅、アルミニウム等の金属箔を配置した構成で積層成形することにより製造することができる。金属箔は、電気絶縁材料用途で用いるものであれば特に制限されない。
積層板を製造する際の成形条件は、例えば、電気絶縁材料用積層板及び多層板の手法が適用でき、多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等を使用し、温度100~250℃、圧力0.2~10MPa、加熱時間0.1~5時間で成形することができる。また、本発明のプリプレグと内層用配線板とを組合せ、積層成形して、積層板を製造することもできる。
さらに、前記金属箔を回路加工することにより、プリント配線板を製造することができる。
【0077】
[コアレス基板及びコアレス基板の製造方法]
本発明のコアレス基板は、本発明のコアレス基板用プリプレグを用いて形成された絶縁層を含有するものである。
本発明のコアレス基板は、例えば、支持体(コア基板)上に本発明のプリプレグを用いてビルドアップ層を形成した後、前記支持体を分離する方法により製造することができる。ビルドアップ層の形成方法に特に制限はなく、公知の方法を採用できる。例えば、ビルドアップ層は次の方法によって形成できる(図1参照)。
まず、支持体(コア基板)1上に本発明のプリプレグ2を配置する。なお、前記支持体(コア基板)1上には接着層を配置した上で、プリプレグ2を配置してもよい。その後、プリプレグ2を加熱硬化して絶縁層とする。次いで、ドリル切削方法、又は、YAGレーザーもしくはCOレーザー等を用いるレーザー加工方法などによってビアホール3を形成した後、必要に応じて表面粗化処理及びデスミア処理を行なう。続いて、サブトラクティブ法、フルアディティブ法、セミアディティブ法(SAP:Semi Additive Process)又はモディファイドセミアディティブ法(m-SAP:modified Semi Additive Process)等によって回路パターン4を形成する。以上の過程を繰り返すことによって、ビルドアップ層5が形成される。形成したビルドアップ層5を、支持体(コア基板)1から分離することによって、コアレス基板が得られる。なお、ビスドアップ層5は、支持体(コア基板)1の片面に形成してもよいし、両面に形成してもよい。
本発明のコアレス基板は、本発明のプリプレグを硬化してなる絶縁層を1層以上含むものであり、本発明のプリプレグ以外のプリプレグ、樹脂フィルム等を硬化してなる絶縁層を含んでいてもよい。
本発明のコアレス基板は、コア基板を有していないために厚みが小さく、具体的には、通常、好ましくは15~200mm、より好ましくは30~150mm、さらに好ましくは35~100mmの厚みを有する。
【0078】
[半導体パッケージ]
本発明の半導体パッケージは、本発明のコアレス基板に半導体素子を搭載してなるものであり、前記コアレス基板の所定の位置に半導体チップ、メモリ等の半導体素子を搭載し製造される。
【実施例
【0079】
次に、下記の実施例により本発明を更に詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。
なお、以下の実施例で得られた銅張積層板は、以下の方法で性能を測定及び評価した。
【0080】
(1)熱膨張率
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除くことで、縦(X方向)5mm×横(Y方向)5mm×厚み(Z方向)0.4mmの評価基板を作製し、TMA試験装置(デュポン社製、商品名:TMA2940)を用いて圧縮法で熱機械分析を行った。評価基板を前記装置にX方向に装着後、荷重5g、昇温速度10℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。2回目の測定における30℃から100℃までの平均熱膨張率を算出し、これを熱膨張率の値とした。
【0081】
(2)銅箔接着強度(銅箔ピール強度)
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより、外層銅層を3mm幅に形成し、この一端を外層銅層と絶縁層との界面で剥がしてつかみ具でつかみ、引張り試験機を用いて垂直方向に引張り速度約50mm/分、室温中で引き剥がしたときの銅箔の接着性(ピール強度)を測定した。
【0082】
(3)ガラス転移温度(Tg)
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除くことで、縦(X方向)5mm×横(Y方向)5mm×厚み(Z方向)0.4mmの評価基板を作製し、TMA試験装置(デュポン社製、商品名:TMA2940)を用いて圧縮法で熱機械分析を行った。評価基板を前記装置にX方向に装着後、荷重5g、昇温速度10℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。2回目の測定における熱膨張曲線の異なる接線の交点で示されるTgを求め、耐熱性の指標とした。Tgが高いほど、耐熱性に優れる。
【0083】
(4)曲げ弾性率
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた50mm×25mmの評価基板を作製し、万能試験機「テンシロンUCT-5T」(株式会社オリエンテック製)を用い、クロスヘッド速度1mm/min、スパン間距離20mmの条件で曲げ弾性率を測定した。値が大きいほど、剛性が高い。
【0084】
(5)デスミア重量減少量(耐デスミア性)
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた40mm×40mmの評価基板を、表Aに示す工程によりデスミア処理した。薬液はアトテック社製のものを用いた。デスミア処理前の乾燥重量に対するデスミア処理後の重量減少量を算出し、これを耐デスミア性の指標とした。デスミア重量減少量が小さい程、耐デスミア性に優れる。
【0085】
【表1】
【0086】
製造例1:アミノ変性ポリイミド樹脂(X-1)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、両末端ジアミン変性シロキサン(信越化学工業株式会社製、商品名:X-22-161A、アミノ基の官能基当量:800g/mol、(b)成分)72gと、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン(ケイ・アイ化成株式会社製、商品名:BMI、(c)成分)252gと、プロピレングリコールモノメチルエーテル270gと、を入れ、110℃で3時間反応させて、アミノ変性ポリイミド樹脂(X-1)含有溶液を得た。
【0087】
製造例2:アミノ変性ポリイミド樹脂(X-2)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、両末端ジアミン変性シロキサン(信越化学工業株式会社製、商品名:X-22-161B、アミノ基の官能基当量:1,500g/mol、(b)成分)72gと、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン(ケイ・アイ化成株式会社製、商品名:BMI、(c)成分)252gと、プロピレングリコールモノメチルエーテル270gと、を入れ、110℃で3時間反応させて、アミノ変性ポリイミド樹脂(X-2)含有溶液を得た。
【0088】
実施例1~12、比較例1~6
以下に示す各成分を第1表~第3表に示す配合割合(表中の数値の単位は質量部であり、溶液の場合は固形分換算量である。)で混合し、溶媒にメチルエチルケトンを用いて固形分濃度65質量%の均一なワニスを作製した。次に、このワニスを厚さ0.1mmのEガラスクロスに含浸塗工し、160℃で10分間、加熱乾燥して熱硬化性樹脂組成物の含有量が48質量%のコアレス基板用プリプレグを得た。
このコアレス基板用プリプレグを4枚重ね、12μmの電解銅箔を上下に配置し、圧力2.5MPa、温度240℃で60分間プレスを行って、銅張積層板を得た。得られた銅張積層板について、前記測定方法に従って得られた評価結果を第1表~第3表に示す。
【0089】
〔(メタ)アクリルエラストマー(a)〕
・SG-P3:重量平均分子量85万のエポキシ基含有アクリルポリマー〔ナガセケムテックス株式会社製、商品名、エポキシ価:0.21eq/kg(カタログ値)〕
・SG-80H:重量平均分子量35万のエポキシ基及びアミド基含有アクリルポリマー〔ナガセケムテックス株式会社製、商品名、エポキシ価:0.07eq/kg(カタログ値)〕
・SG-600TEA:重量平均分子量120万の水酸基含有アクリルポリマー〔ナガセケムテックス株式会社製、商品名、水酸基価:20mgKOH/g(カタログ値)〕
【0090】
〔少なくとも2個の第1級アミノ基を有するアミン化合物(b)〕
・X-22-161A:両末端ジアミン変性シロキサン〔信越化学工業株式会社製、商品名、アミノ基の官能基当量:800g/mol〕
・X-22-161B:両末端ジアミン変性シロキサン〔信越化学工業株式会社製、商品名、アミノ基の官能基当量:1,500g/mol〕
【0091】
〔少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(c)〕
・BMI:ビス(4-マレイミドフェニル)メタン〔ケイ・アイ化成株式会社製、商品名〕
【0092】
〔アミノ変性ポリイミド樹脂(X)〕
・X-1:製造例1で調製したアミノ変性ポリイミド樹脂(X-1)含有溶液
・X-2:製造例2で調製したアミノ変性ポリイミド樹脂(X-2)含有溶液
【0093】
〔熱硬化性樹脂(d)〕
・NC-7000-L:α-ナフトール/クレゾールノボラック型エポキシ樹脂〔日本化薬株式会社製、商品名〕
・NC-3000-H:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂〔日本化薬株式会社製、商品名〕
【0094】
〔硬化促進剤(e)〕
・G-8009L:イソシアネートマスクイミダゾール〔第一工業製薬株式会社製、商品名〕
・TPP-S:トリフェニルホスフィントリフェニルボラン〔北興化学株式会社製、商品名〕
【0095】
〔無機充填材(f)〕
・球状溶融シリカ〔平均粒径:0.5μm〕
【0096】
【表2】
【0097】
【表3】
【0098】
【表4】
【0099】
第1表及び第2表から明らかなように、本発明のプリプレグから得られた実施例1~12の銅張積層板は、熱膨張率、銅箔接着性、ガラス転移温度、曲げ弾性率及びデスミア重量減少量に優れ、特に銅箔接着性が優れている。一方、第3表から明らかなように、(メタ)アクリルエラストマー(a)を使用していない比較例1~5の銅張積層板及びアミン化合物(b)を使用していない比較例6の銅張積層板は、熱膨張率、銅箔接着性、ガラス転移温度、曲げ弾性率及びデスミア重量減少量の全ての特性を同時に満たすものはなく、特に熱膨張率に劣っている。したがって、本発明のプリプレグにより、優れた耐熱性及び耐デスミア性を維持しつつ、低熱膨張性に優れ、さらに金属回路との接着強度に優れる積層板が得られていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明のプリプレグは、優れた耐熱性及び耐デスミア性を維持しつつ、低熱膨張性に優れ、さらに金属回路との接着強度に優れるプリプレグであることから、高密度化、高多層化されたプリント配線板の製造に好適であり、大量のデータを高速で処理するコンピュータ、情報機器端末等に用いられる電子機器の配線板に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0101】
1 支持体(コア基板)
2 プリプレグ(絶縁層)
3 ビアホール
4 回路パターン
5 ビルドアップ層
6 コアレス基板
図1