(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】オルガノポリシロキサン組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20220712BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20220712BHJP
C08K 5/5475 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08K5/5475
(21)【出願番号】P 2019554176
(86)(22)【出願日】2018-11-06
(86)【国際出願番号】 JP2018041117
(87)【国際公開番号】W WO2019098084
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-05-14
(31)【優先権主張番号】P 2017219910
(32)【優先日】2017-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】作田 晃司
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-328042(JP,A)
【文献】特許第3528969(JP,B2)
【文献】国際公開第2018/159599(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/126562(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00-83/16
C08K 3/00-13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)白金ヒドロシリル化触媒、及び
(D)下記式(1-1)若しくは(1-2)
R
1-Si(R
1)
a{〔X-Si(R
1)
2〕
b-R
1}
c (1-1)
R
1-Si(R
1)
a{(Z
i)}
c (1-2)
[式中、R
1は、互いに独立して、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~30のアルキニル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアラルキル基、炭素数1~30のアルコキシ基、及び下記式(2)
-Y-NC (2)
(式中、Yは、直鎖、分岐状又は環状のいずれでもよい炭素数1~30のアルキレン基、炭素数6~30のアリーレン基、又は炭素数7~30のアラルキレン基である。)
で表される有機基から選ばれる1価有機基であり、かつ全R
1基の中の1~3個が式(2)で示される有機基であり、
Xは、互いに独立して、酸素原子、又は炭素数1~30のアルキレン基、炭素数6~30のアリーレン基、又は炭素数7~30のアラルキレン基である。)。
aは0~3の整数、cは0~3の整数、かつa+cは3、bは1~300の整数であり、Z
iは-X-Si(R
1)
j(Z
i+1)
(3-j)で表される基である。
(式中、iは階層を示し、i=1~10、jは0~3の整数であり、全階層のうち少なくとも1つのjは0又は1であり、
Z
i+1
は、最下階層
においてR
1
である。)]
で表される化合物、又は
-OSi(R
1)
2-単位(ただし、R
1は上記と同じである。)で繰り返し数3~10の環構造が形成されてなる環状ポリシロキサン化合物
を含有するオルガノポリシロキサン組成物。
【請求項2】
(A)成分が、下記平均組成式(3)
R
2
dR
3
eSiO
(4-d-e)/2 (3)
(式中、R
2は同一又は異種のアルケニル基であり、R
3は同一又は異種のアルケニル基以外のケイ素原子に結合する有機基である。dは0<d≦3、eは0≦e<3であり、0<d+e≦3である。ただし、1分子あたりR
2のアルケニル基を少なくとも2つを有するように選択される。)
で表されるオルガノポリシロキサンであり、(B)成分が、下記平均組成式(4)
R
4
gH
hSiO
(4-g-h)/2 (4)
(式中、R
4は、同一又は異種のケイ素原子に結合する水素原子以外の有機基であり、0<g<3、0<h<3、0<g+h≦3である。但し、1分子あたりケイ素原子に結合する水素原子を少なくとも2つを有する。)
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンである請求項1記載のオルガノポリシロキサン組成物。
【請求項3】
上記式(1-1)において、aが0、1又は2である請求項1又は2記載のオルガノポリシロキサン組成物。
【請求項4】
上記式(1-1)若しくは(1-2)で表される化合物、又は上記環状ポリシロキサン化合物において、全R
1基の中の1個が式(2)で示される有機基である請求項1~3のいずれか1項記載のオルガノポリシロキサン組成物。
【請求項5】
上記式(1-1)又は(1-2)において、Xが酸素原子である請求項1~4のいずれか1項記載のオルガノポリシロキサン組成物。
【請求項6】
(D)成分の配合量が、(C)成分における白金1原子に対して、(D)成分の式(2)で表される基が2~20当量となる量である請求項1~5のいずれか1項記載のオルガノポリシロキサン組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルガノポリシロキサン組成物に関するもので、さらに詳しくは、イソシアニド化合物を添加したオルガノポリシロキサン組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
不飽和基を有する化合物とSi-H結合を有する化合物の付加反応であるヒドロシリル化反応は、工業的には白金触媒を用いることで、多種多様なシリコーン材料が製造されている。特に、アルケニル基をもつオルガノポリシロキサン及びSi-H結合をもつオルガノポリシロキサンを用いた場合において、上記付加反応により架橋することで硬化し、これによりシリコーン特有の物性をもつ材料が得られることが知られている。
【0003】
上記シリコーン材料ではその用途により一液型や二液型があるが、特に上記付加反応により硬化物を得る場合、白金触媒が高活性なために触媒添加直後から反応が開始してしまうため、しばしば白金触媒の反応制御剤(もしくは反応抑制剤)が添加され、その用途に応じて硬化性と可使時間の調整が行われる。その反応制御剤としては、例えば、アセチレン系化合物(特許文献1)、アセチレンアルコール系化合物(特許文献2~5)、ジアミンや環状アゾエーテル、イミノ化合物等の有機窒素系化合物、チオフェンやチオエーテル化合物等の有機硫黄系化合物(特許文献6~8)、その他の化合物(特許文献9)等が挙げられる。
【0004】
この中でも、イソシアニド化合物(もしくはイソニトリル化合物)は、他の反応制御剤と比較して、少量で制御性を発現することができることが知られている(特許文献8、非特許文献1,2)。しかしながら、これらに記載されている化合物を含め、イソシアニド基をもつ化合物は、一般的には揮発性が高く悪臭物質であり、硬化時や硬化後に異臭がするといった問題が考えられ、上記の用途のようなシリコーン材料への添加剤としては不向きであった。
【0005】
また、様々なオルガノポリシロキサン組成物に対して目的に応じて反応を制御する場合に、白金に対してイソシアニド化合物の添加量が少量では反応を制御することが困難であるため、過剰の添加が必要となるが、イソシアニド化合物は微量成分であっても異臭がするため、実用的ではなかった。
【0006】
特許文献10においてヒドロシリル化反応用触媒の配位子として、シリコーンで変性された新規イソシアニド化合物が報告されているが、白金以外の金属において使用され、また触媒の活性向上を目的としており、白金触媒の制御剤としての検討はされていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平6-248084号公報
【文献】特開2010-18754号公報
【文献】特開2000-178210号公報
【文献】特開平6-329917号公報
【文献】特開平5-247348号公報
【文献】特開平7-292255号公報
【文献】特開平8-143777号公報
【文献】特許第3528969号公報
【文献】特開2008-255343号公報
【文献】国際公開第2017/126562号
【文献】T.Endo,et al.,Macromolecules, 1998,31,p9392
【文献】T.Endo,et al.,Int.J.Adhesion and Adhesives,2000,20,p253
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、白金触媒の反応制御が少量で可能なイソシアニド化合物が配合されたオルガノポリシロキサン組成物であって、イソシアニド化合物が、異臭等が少なく、組成物に対して溶解性に優れるオルガノポリシロキサン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、所定のイソシアニド化合物を使用することにより、上記の目的を達成できることを知見し、本発明をなすに至った。
【0010】
従って、本発明は下記オルガノポリシロキサン組成物を提供する。
1.(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン、
(B)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)白金ヒドロシリル化触媒、及び
(D)下記式(1-1)若しくは(1-2)
R1-Si(R1)a{〔X-Si(R1)2〕b-R1}c (1-1)
R1-Si(R1)a{(Zi)}c (1-2)
[式中、R1は、互いに独立して、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~30のアルキニル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアラルキル基、炭素数1~30のアルコキシ基、及び下記式(2)
-Y-NC (2)
(式中、Yは、直鎖、分岐状又は環状のいずれでもよい炭素数1~30のアルキレン基、炭素数6~30のアリーレン基、又は炭素数7~30のアラルキレン基である。)
で表される有機基から選ばれる1価有機基であり、かつ全R1基の中の1~3個が式(2)で示される有機基であり、
Xは、互いに独立して、酸素原子、又は炭素数1~30のアルキレン基、炭素数6~30のアリーレン基、又は炭素数7~30のアラルキレン基である。)。
aは0~3の整数、cは0~3の整数、かつa+cは3、bは1~300の整数であり、Ziは-X-Si(R1)j(Zi+1)(3-j)で表される基である。
(式中、iは階層を示し、i=1~10、jは0~3の整数であり、全階層のうち少なくとも1つのjは0又は1であり、Z
i+1
は、最下階層においてR
1
である。)]
で表される化合物、又は
-OSi(R1)2-単位(ただし、R1は上記と同じである。)で繰り返し数3~10の環構造が形成されてなる環状ポリシロキサン化合物
を含有するオルガノポリシロキサン組成物。
2.(A)成分が、下記平均組成式(3)
R2
dR3
eSiO(4-d-e)/2 (3)
(式中、R2は同一又は異種のアルケニル基であり、R3は同一又は異種のアルケニル基以外のケイ素原子に結合する有機基である。dは0<d≦3、eは0≦e<3であり、0<d+e≦3である。ただし、1分子あたりR2のアルケニル基を少なくとも2つを有するように選択される。)
で表されるオルガノポリシロキサンであり、(B)成分が、下記平均組成式(4)
R4
gHhSiO(4-g-h)/2 (4)
(式中、R4は、同一又は異種のケイ素原子に結合する水素原子以外の有機基であり、0<g<3、0<h<3、0<g+h≦3である。但し、1分子あたりケイ素原子に結合する水素原子を少なくとも2つを有する。)
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンである請求項1記載のオルガノポリシロキサン組成物。
3.上記式(1-1)において、aが0、1又は2である1又は2記載のオルガノポリシロキサン組成物。
4.上記式(1-1)若しくは(1-2)で表される化合物、又は上記環状ポリシロキサン化合物において、全R1基の中の1個が式(2)で示される有機基である請求項1~3のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン組成物。
5.上記式(1-1)又は(1-2)において、Xが酸素原子である1~4のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン組成物。
6.(D)成分の配合量が、(C)成分における白金1原子に対して、(D)成分の式(2)で表される基が2~20当量となる量である1~5のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明のオルガノポリシロキサン組成物は、特定のイソシアニド化合物を配合するもので、この特定のイソシアニド化合物は、特許文献8や非特許文献1,2で例示されているようなイソシアニド化合物と比較して、有機ケイ素骨格を含むために高沸点となり、イソシアニド基特有の異臭等が少ない。さらには、有機ケイ素骨格を含むために液状で取り扱いやすい化合物となり、組成物に対して溶解性に優れる。これにより、オルガノポリシロキサン組成物の用途に応じて添加量を調整することで、硬化性と可使時間の調整が可能であり、また、多用されるアセチレンアルコール系の制御剤等と比較して、少量添加することにより白金触媒の反応制御が可能であるため、極めて有用性が高い。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
[(A)成分]
(A)成分は、ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンであり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。(A)成分としては、下記平均組成式(3)で表されるオルガノポリシロキサンが挙げられる。
R2
dR3
eSiO(4-d-e)/2 (3)
(式中、R2は同一又は異種のアルケニル基であり、R3はアルケニル基以外のケイ素原子に結合する有機基である。dは0<d≦3、eは0≦e<3であり、0<d+e≦3である。ただし、1分子あたりR2のアルケニル基を少なくとも2つを有する。)
【0013】
R2としては、ビニル、アリル、n-1-ブテニル、n-1-ペンテニル、n-1-ヘキセニル基等が挙げられ、特にビニル基が好ましい。(A)におけるアルケニル基の結合位置としては、分子鎖末端、分子鎖側鎖、分子鎖末端及び分子鎖側鎖のいずれでもよい。
【0014】
R3は同一又は異種の、R2のアルケニル基以外のケイ素原子に結合する有機基である。R3としては、例えば、置換されてもよい脂肪族不飽和結合を有しない炭素数1~30の1価炭化水素基もしくは水酸基が挙げられ、炭素数1~10の1価炭化水素基が好ましい。1価炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、n-ノニル、n-デシル基等の直鎖又は分岐鎖アルキル基;シクロヘキシル等のシクロアルキル基;フェニル、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基等が挙げられ、メチル基又はフェニル基が好ましい。
【0015】
dは0<d≦3、eは0≦e<3であり、0<d+e≦3である。ただし、1分子あたりR2のアルケニル基を少なくとも2つを有するように選択される。(A)成分の分子構造は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。
【0016】
平均組成式(3)で表されるオルガノポリシロキサンの具体例としては、直鎖状であれば、ジメチルビニルシロキシ基末端封鎖ジメチルポリシロキサン、ジメチルビニルシロキシ基末端封鎖メチルビニルポリシロキサン、ジメチルビニルシロキシ基末端封鎖(ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン)共重合体、ジメチルビニルシロキシ基末端封鎖(ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン)共重合体、ジメチルビニルシロキシ基末端封鎖(ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン)共重合体、トリメチルシロキシ基末端封鎖メチルビニルポリシロキサン、トリメチルシロキシ基末端封鎖(ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン)共重合体、トリメチルシロキシ基末端封鎖(ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン・メチルビニルシロキサン)共重合体、末端ヒドロキシ基封鎖(ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン)共重合体等が挙げられる。なお、上記末端封鎖は片末端及び両末端を含む。
【0017】
分岐状であれば上記直鎖状の一部に式:R2
fR3
(1-f)SiO3/2(fは、0又は1である。)、SiO4/2、又はその両方のシロキサン繰り返し単位が少なくとも1つ含まれたものが挙げられる。環状であれば2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリビニルシクロトリシロキサン、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリアリルシクロトリシロキサン、2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。また、例示したオルガノポリシロキサンのメチル基の一部もしくはすべてが、エチル基やプロピル基等のアルキル基や、フェニル基等のアリール基に置換したものが挙げられる。
【0018】
(A)成分はオルガノポリシロキサン組成物を加熱等により硬化した硬化物の用途や、物性に応じて適宜選択されるが、その25℃における粘度は、組成物の取扱作業性等の観点から、10~500,000mm2/sが好ましく、300~100,000mm2/sがより好ましい。なお、本発明において、動粘度はオストワルド計により測定できる(以下、同じ)。
【0019】
[(B)成分]
(B)成分は、ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。(B)成分としては、下記平均組成式(4)で表されるものが挙げられる。
R4
gHhSiO(4-g-h)/2 (4)
(式中、R4は、同一又は異種のケイ素原子に結合する水素原子以外の有機基であり、0<g<3、0<h<3、0<g+h≦3である。但し、1分子あたりケイ素原子に結合する水素原子を少なくとも2つを有する。)
【0020】
ケイ素原子に結合した水素原子の結合位置としては、分子鎖末端、分子鎖側鎖、分子鎖末端及び分子鎖側鎖のいずれでもよい。
【0021】
R4は、同一又は異種のケイ素原子に結合する水素原子以外の有機基であり、例えば、置換されてもよい脂肪族不飽和結合を有しない炭素数1~30の1価の炭化水素基が挙げられる。中でも、脂肪族不飽和結合を有しない炭素数1~10の1価の炭化水素基が好ましい。R4の具体例としては、R3と同様のものが挙げられる。
【0022】
0<g<3、0<h<3、0<g+h≦3である。但し、1分子あたりケイ素原子に結合する水素原子を少なくとも2つを有するように選択される。
【0023】
平均組成式(4)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの具体例としては、直鎖状であれば、ジメチルハイドロジェンシロキシ基末端封鎖ジメチルポリシロキサン、ジメチルハイドロジェンシロキシ基末端封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルハイドロジェンシロキシ基末端封鎖(ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン)共重合体、ジメチルハイドロジェンシロキシ基末端封鎖(ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン)共重合体、ジメチルハイドロジェンシロキシ基末端封鎖(ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン)共重合体、トリメチルシロキシ基末端封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、トリメチルシロキシ基末端封鎖(ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン)共重合体、トリメチルシロキシ基末端封鎖(ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン)共重合体、末端ヒドロキシ基封鎖(ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン)共重合体等が挙げられる。分岐状であれば、上記直鎖状の一部に式:R4SiO1.5、式:HSiO1.5又はSiO2又はこれらを2種以上含むシロキサン繰り返し単位が少なくとも1つ含まれたものが挙げられる。環状であれば、2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。また、例示したオルガノハイドロジェンポリシロキサンのメチル基の一部もしくは全てが、エチル基やプロピル基等のアルキル基や、フェニル基等のアリール基に置換したものが挙げられる。また、例示したオルガノハイドロジェンポリシロキサンを2種以上含有する混合物が挙げられる。なお、上記末端封鎖は片末端及び両末端を含む。
【0024】
(B)成分は、オルガノポリシロキサン組成物を加熱等により硬化した硬化物の用途や物性に応じて調整されるが、その25℃における粘度は、組成物の取扱作業性等の観点から、0.1~10,000mm2/sが好ましく、5~500mm2/sがより好ましい。
【0025】
(B)成分の配合量としては、(B)成分由来のSi-H基が(A)成分由来のアルケニル基1モルに対して0.1~10モルとなる量が好ましく、より好ましくは0.4~5モルとなる量、さらに好ましくは0.5~4モルとなる量である。
【0026】
[(C)成分]
本発明における(C)は、ヒドロシリル化反応に活性を持つ白金ヒドロシリル化触媒である。このような白金ヒドロシリル化触媒は公知のものが使用でき、例えば、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコールによる変性物、白金の各種オレフィンとの錯体等が挙げられる。特に、触媒活性の点から、アルケニル基を複数有するシロキサン類と白金との錯体が好ましい。(C)成分の配合量としては、特に制限はないが、硬化性と経済的な観点から、(A)成分及び(B)成分の合計量に対して1~1,000ppmの範囲が好ましい。
【0027】
[(D)成分]
本発明の(D)成分は、(1-1)又は(1-2)
R1-Si(R1)a{〔X-Si(R1)2〕b-R1}c (1-1)
R1-Si(R1)a{(Zi)}c (1-2)
[式中、R1は、互いに独立して、置換されていてもよく、酸素、窒素、硫黄及びリンから選ばれる原子が1個又はそれ以上介在していてもよい炭素数1~30の1価有機基、及び下記式(2)
-Y-NC (2)
(式中、Yは、酸素、窒素、硫黄及びリンから選ばれる原子が1個又はそれ以上介在していてもよい、非置換又は置換の炭素数1~30の2価有機基である。)
で表される有機基から選択される1価有機基であり、かつ全R1基の中の1~3個が式(2)で示される有機基であり、
Xは、互いに独立して、酸素原子、又は酸素、窒素、硫黄及びリンから選ばれる原子が1個又はそれ以上介在していてもよい、非置換又は置換の炭素数1~30の2価有機基であり、R1の2つが結合して架橋基Zとなって環構造を形成してもよく(但し、ZはXと同じ意味である。)、
aは0~3の整数、cは0~3の整数、かつa+cは3、bは1~300の整数であり、Ziは-X-Si(R1)j(Zi+1)(3-j)で表される基である。
(式中、iは階層を示し、i=1~10、jは0~3の整数であり、全階層のうち少なくとも1つのjは0又は1であり、最下階層はj=3である。)]
で表される化合物であり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0028】
以下、式(1-1)及び(1-2)の場合は、式(1)と表記する。
式(1)において、R1は、互いに独立して、置換されていてもよく、酸素、窒素、硫黄及びリンから選ばれる原子が1個又はそれ以上介在していてもよい炭素数1~30の1価有機基、及び下記式(2)の有機基から選ばれる1価有機基である。
【0029】
炭素数1~30の1価の有機基としては、特に限定されるものではないが、炭素数1~30の1価炭化水素基又はオルガノオキシ基が好ましい。1価炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。
【0030】
アルキル基としては、直鎖、分岐鎖、環状のいずれでもよく、炭素数1~20のアルキル基が好ましく、1~10のアルキル基がより好ましい。具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル、n-ノナデシル、n-エイコサニル基等の直鎖又は分岐鎖アルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、ノルボルニル、アダマンチル基等のシクロアルキル基等が挙げられる。
【0031】
アルケニル基としては、炭素数2~20のアルケニル基が好ましく、具体例としては、エテニル(ビニル)、n-1-プロペニル(アリル)、n-2-プロペニル、1-メチルエテニル、n-1-ブテニル、n-2-ブテニル、n-3-ブテニル、2-メチル-1-プロペニル、2-メチル-2-プロペニル、1-エチルエテニル、1-メチル-1-プロペニル、1-メチル-2-プロペニル、n-1-ペンテニル、n-1-ヘキセニル、n-1-デセニル、n-1-エイコセニル基等が挙げられる。
【0032】
アルキニル基としては、炭素数2~20のアルキニル基が好ましく、具体例としては、エチニル、n-1-プロピニル、n-2-プロピニル、n-1-ブチニル、n-2-ブチニル、n-3-ブチニル、1-メチル-2-プロピニル、n-1-ペンチニル、n-2-ペンチニル、n-3-ペンチニル、n-4-ペンチニル、1-メチル-n-ブチニル、2-メチル-n-ブチニル、3-メチル-n-ブチニル、1,1-ジメチル-n-プロピニル、n-1-ヘキシニル、n-1-デシニル、n-1-ペンタデシニル、n-1-エイコシニル基等が挙げられる。
【0033】
アリール基としては、炭素数6~30のアリール基が好ましく、炭素数6~20のアリール基が好ましい。具体例としては、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、アントリル、フェナントリル、o-ビフェニリル、m-ビフェニリル、p-ビフェニリル、トリル、2,6-ジメチルフェニル、2,6-ジイソプロピルフェニル、メシチル基等が挙げられる。
【0034】
アラルキル基としては、炭素数7~30のアラルキル基が好ましく、炭素数7~20のアラルキル基がより好ましい。具体例としては、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、ナフチルメチル、ナフチルエチル、ナフチルプロピル基等が挙げられる。
【0035】
オルガノオキシ基としては、炭素数1~10のオルガノオキシ基が好ましく、具体例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ、n-ペンチルオキシ、n-ヘキシルオキシ、2-エチルヘキシルオキシ、n-ヘプチルオキシ、n-オクチルオキシ等の直鎖又は分岐鎖アルコキシ基;シクロプロポキシ、シクロブトキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ノルボルニルオキシ、アダマンチルオキシ基等のシクロアルコキシ基;フェノキシ等のアリールオキシ基;ベンゾオキシ等のアラルキルオキシ基等が挙げられる。
【0036】
これらの中でも、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチルのアルキル基;メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、フェノキシ、ベンゾオキシ等のオルガノオキシ基、フェニル等のアリール基等が特に好ましい。
【0037】
上記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、オルガノオキシ基は、置換されていてもよく、かつ、酸素、窒素、硫黄及びリンから選ばれる原子が1個又はそれ以上介在していてもよい。上記R1における置換基の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、ジアルキルアミノ基等のアミノ基等が挙げられる。
【0038】
Xは、互いに独立して、酸素原子、又は置換されていてもよく、酸素、窒素、硫黄及びリンから選ばれる原子が1個又はそれ以上介在していてもよい炭素数1~30の2価有機基である。中でも、酸素原子が好ましい。
【0039】
炭素数1~30の2価有機基としては、特に限定されるものではないが、炭素数1~30の2価炭化水素基が好ましく、直鎖、分岐状又は環状のいずれでもよい。2価炭化水素基としては、アルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基等が挙げられる。
【0040】
アルキレン基としては、直鎖、分岐鎖、環状のいずれでもよく、炭素数1~20のアルキレン基が好ましく、炭素数1~10のアルキレン基がより好ましい。具体例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、n-ブチレン、イソブチレン、s-ブチレン、n-オクチレン、2-エチルヘキシレン、n-デシレン、n-ウンデシレン、n-ドデシレン、n-トリデシレン、n-テトラデシレン、n-ペンタデシレン、n-ヘキサデシレン、n-ヘプタデシレン、n-オクタデシレン、n-ノナデシレン、n-エイコサニレン基等の直鎖又は分岐鎖アルキレン基;1,4-シクロへキシレン基等のシクロアルキレン基等が挙げられる。
【0041】
アリーレン基としては、炭素数6~30のアリーレン基が好ましく、炭素数6~20のアリーレン基がより好ましい。具体例としては、o-フェニレン、m-フェニレン、p-フェニレン、1,2-ナフチレン、1,8-ナフチレン、2,3-ナフチレン、4,4′-ビフェニレン基等が挙げられる。
【0042】
アラルキレン基としては、炭素数7~30のアラルキレン基が好ましく、炭素数7~20のアラルキレン基がより好ましい。具体例としては、-(CH2)k-Ar-(Arは、炭素数6~20のアリーレン基であり、kは1~10の整数である。)、-Ar-(CH2)k-(Ar及びkは上記と同じ意味である。)、-(CH2)k-Ar-(CH2)k-(Arは上記と同じ意味を表し、kは互いに独立して上記と同じ意味を表す。)等が挙げられる。
【0043】
Xの置換基の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、ジアルキルアミノ基等のアミノ基等が挙げられる。
【0044】
式(1)において、全R1基の中の1~3個が式(2)で示される有機基であるが、このイソシアニド化合物は単一であってもよいし、種類の異なる複数のものであってもよい。全R1基中の1~2個が式(2)で示されるイソシアニドを含む有機基であることが好ましく、全R1基中の1個が式(2)で示されるイソシアニドを含む有機基であることがより好ましい。
【0045】
式(2)におけるYは、置換されていてもよく、酸素、窒素、硫黄及びリンから選ばれる原子が1個又はそれ以上介在していてもよい炭素数1~30の2価有機基である。炭素数1~30の2価有機基としては、特に限定されるものではないが、Xで挙げられたものが同様に例示される。また、置換基についても前述のものが同様に例示される。Yとしては、炭素数1~30の2価炭化水素基が好ましく、Yが炭素数1~10の2価炭化水素基がより好ましく、直鎖、分岐状又は環状のいずれでもよい。
【0046】
また、R1の2つが結合して架橋基Zとなって環構造を形成し、環構造を形成してもよい。ZはXと同じ意味であり、酸素原子、又は置換されていてもよく、酸素、窒素、硫黄及びリンから選ばれる原子が1個又はそれ以上介在していてもよい炭素数1~30の2価有機基であり、中でも酸素原子が好ましい。
【0047】
aは0~3の整数、cは0~3の整数、かつa+cは3である。aが3のときはテトラオルガノシランを、aが0、1又は2のときは分子内にシロキサン基を有するオルガノ(ポリ)シロキサン化合物を示している。また、aが0、1又は2であるとき、式(2)で示される1価有機基は、オルガノ(ポリ)シロキサン骨格の末端、側鎖のいずれに結合していてもよい。なお、本発明において、(ポリ)シロキサンとは、シロキシ基1個の場合をシロキサンとして表し、シロキシ基が2個以上の場合をポリシロキサンとして表す。bは1~300の整数であり、1~10が好ましい。
【0048】
式(1-1)において、式(2)で示される1価有機基を除いた残基は、シリル基、又は(ポリ)オルガノシロキサン基を示し、その具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、フェニルジメチルシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、ペンタメチルジシロキシ基、ビストリメチルシロキシメチルシリル基、トリストリメチルシロキシシリル基、-Si(Me)2{OSi(Me)2}(b-1)OSiMe3(bは上記と同じ。)で表されるポリジメチルシロキシ基、-Si(Me)2{OSi(Me)2}(b-1)OSiMe2nBu(bは上記と同じ。)で表される(ポリ)ジメチルシロキシ基、-Si(Me)2{OSi(Me)2}(b-1)OSiMe2-で表される(ポリ)ジメチルシロキシ基等が挙げられる。R1の2つが結合して架橋基Zとなって環構造を形成している場合は、1,3,5,7-テトラメチル-3,5,7-トリプロピル-シクロテトラシロキシ基等が挙げられる。
【0049】
式(1-2)は、ポリオルガノシロキシ基を有するものであり、また、シルエチレン基を介して高度に分岐したシロキサン基を含むポリオルガノシロキシ基であってもよい。
R
1-Si(R
1)
a{(Z
i)}
c (1-2)
(式中、Z
iは-X-Si(R
1)
j(Z
i+1)
(3-j)で表される基であり、iは階層を示し、i=1~10、好ましくはi=1~3であり、jは0~3の整数であり、全階層のうち少なくとも1つのjは0又は1であり、最下階層はj=3である。)
例えば、Z
i=1~4のものとしては、下記のもの挙げられる。
【化1】
(式中、R
1、X、a、c、jは上記と同じである。)
【0050】
本発明のイソシアニド化合物としては上記のものが例示されるが、トリメチルシリルメチルイソシアニド、ビス(トリメチルシリル)メチルイソシアニド及びトリス(トリメチルシリル)メチルイソシアニドを除いてもよい。
【0051】
(D)成分のイソシアニド化合物は公知の方法によって合成することができる。例えば、アミン化合物とギ酸からホルミル化物を得、次いで有機アミンの存在下、塩化ホスホリルと反応させてイソシアニド化する方法(合成方法1。Organometallics,2004,23,p3976-3981参照);温和な条件下でホルミル化物を得る方法として、無水酢酸とギ酸から酢酸ギ酸無水物を形成し、これをアミン化合物と反応させてホルミル化物を得ることができる(合成方法2。Org.Synth.,2013,90,358-366参照)。得られたホルミル化物は上記と同じ合成方法1に記載されている方法によってイソシアニド化することができる。又は、ホルムアミドをナトリウムハイドライドでアニオン化し、ハロゲン化合物と反応させてホルミル化物を得ることもできる(合成方法3。Synthetic Communications,1986,16,p865-869参照)。得られたホルミル化物は上記と同じ合成方法1に記載されている方法によってイソシアニド化することができる。
【0052】
さらに、ホルミル化を経由しない方法として、アミン化合物とジクロルカルベンを反応させてイソシアニド化する方法によっても合成することができる(合成方法4。Tetrahedron Letters,1972,17,1637-1640参照)。
目的とするイソシアニド化合物がシロキサン骨格を有する場合、市販のアミノ基含有シロキサン化合物又は特開2017-71581号公報記載の方法により得られたアミノ基含有シロキサン化合物を、上記合成方法2による温和な条件下でホルミル化した後、合成方法1にある方法でイソシアニド化すること、又は合成方法4による方法で得ることが好ましい。
【0053】
この場合、アミン化合物又はハロゲン化合物としては、下記式(1’-1)又は(1’-2)
R0-Si(R0)a{〔(XSi(R0)2)〕b-R0}c (1’-1)
R0-Si(R0)a{(Z0
i)}c (1’-2)
(式中、Z0
iは-X-Si(R0)j(Z0
i+1)(3-j)であり、iは階層を示し、i=1~10、好ましくはi=1~3であり、jは0~3、全階層のうち少なくとも1つのjは0又は1であり、最下階層はj=3である。)
で示されるものを用いることができる。
【0054】
式(1’-1)及び式(1’-2)において、R0は互いに独立して、置換されていてもよく、かつ、酸素、窒素、硫黄及びリンから選ばれる原子が1個又はそれ以上介在していてもよい炭素数1~30の1価有機基、及び式(2’)の有機基
-Y-G (2’)
から選択される1価有機基であり、かつ全R0基の中の1~3個が式(2’)で示される有機基であり、
Xは、互いに独立して、酸素原子、又は置換されていてもよく、酸素、窒素、硫黄及びリンから選ばれる原子が1個又はそれ以上介在していてもよい炭素数1~30の2価有機基であり、R1の2つが結合して架橋基Zとなって環構造を形成してもよい(但し、ZはXと同じ意味である。)。
Yは、置換されていてもよく、酸素、窒素、硫黄及びリンから選ばれる原子が1個又はそれ以上介在していてもよい炭素数1~30の2価有機基である。
Gはアミン化合物の場合NH2、ハロゲン化合物の場合ハロゲン原子である。a、b、cは上記の通りである。
【0055】
以下に、アミン化合物からの合成条件の概略を示す。
(i)合成方法1によるホルミル化:アミン化合物に過剰量のギ酸を加え、還流下に脱水してホルミル化する。
(ii)合成方法1によるホルミル体のイソシアニド化:ホルミル体とジイソプロピルアミンを塩化メチレンに溶解し、0℃に冷却し、塩化ホスホリルを滴下し、さらに2時間撹拌する。炭酸ナトリウム水溶液を加え、室温で1晩放置し、後処理を行って目的物を得る。必要に応じて蒸留又は昇華精製する。
(iii)合成方法2によるホルミル化:無水酢酸にギ酸(無水酢酸に対して2当量)を加え、ホルミル化剤(酢酸ギ酸無水物)を得る。一方、アミン化合物をTHF(テトラヒドロフラン)に溶解し、-15℃に冷却する。ホルミル化剤を内温が-5℃を超えないように滴下し、さらに2時間撹拌する。後処理を行って目的物を得た後、イソシアニド化する。
(iv)合成方法4によるイソシアニド化:アミン化合物、クロロホルム、相関移動触媒(ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド)、塩化メチレンを混合する。50質量%水酸化ナトリウム水溶液を加え、塩化メチレンの還流下に2時間撹拌する。後処理してイソシアニド化合物を得る。
ハロゲン化合物から合成する場合、以下のように合成方法3によるホルミル化を行うことができる。即ち、ナトリウムハイドライド(60質量%パラフィンディスパージョン)をDMF(ジメチルホルムアミド)に分散し、ホルムアミドを加えて120℃で45分撹拌する。60℃に冷却後、ハロゲン化合物を加え、120℃で24時間撹拌する。塩をろ過した後、溶媒(DMF)を溜去してホルミル化物を得る。なお、イソシアニド化は合成方法1と同じである。
【0056】
(D)成分としては、式(1)で表される化合物を1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。また、(D)成分は、式(1)で示される化合物を含む化合物であってもよく、例えば、トルエン、キシレン、n-ヘキサン等の有機溶剤等に混合した溶液を調製して使用してもよく、目的や用途に応じて反応制御剤を少量添加してもよい。反応制御剤としては、前述したもの、例えば、アセチレン系化合物;アセチレンアルコール系化合物;ジアミン、環状アゾエーテル、イミノ化合物等の有機窒素系化合物;チオフェン、チオエーテル化合物等の有機硫黄系化合物等が挙げられる。
【0057】
本発明における(D)成分の配合量は、オルガノポリシロキサン組成物の用途に応じて、硬化させる温度や条件を添加量により調整できるが、(C)成分における白金1原子に対して、(D)成分の式(2)で表される有機基(イソシアニド基)が2~20当量となる量が好ましい。
【0058】
[任意成分]
本発明において、目的や用途に応じて、本発明の効果を妨げない範囲で、(A)~(D)以外のその他の成分を任意に添加してもよい。
【0059】
[製造方法]
本発明におけるオルガノポリシロキサン組成物は、(A)~(D)成分、さらに目的に応じてその他の成分を配合することにより得られる。例えば、(C)成分と(D)成分を予め混合して触媒混合物を得て、他の成分と混合する方法、(A)成分と(B)成分及びその他の成分を混合したものに、上記触媒混合物を添加する方法、(C)成分を除く成分を予め混合したものに、(C)成分を添加して混合してもよい。また、2液型のように、例えば(B)成分を除く成分を混合したものと、(B)成分とを硬化させる直前に混合して使用してもよい。なお、混合は均一にすることが好ましい。中でも、(C)成分と(D)成分を予め混合した触媒混合物を用いることが好ましい。触媒混合物の調製方法は特に限定されないが、(C)成分の溶液と(D)成分とを混合すればよい。混合温度は特に限定されず、室温でもよい。混合時間も特に限定されず、両者が均一混合状態となればよい。
【0060】
[硬化方法及び硬化物]
本発明におけるオルガノポリシロキサン組成物は、加熱することによりイソシアニド化合物の効果が消失し、白金触媒が活性化することで付加反応が進行し、硬化物を得ることができる。その条件としては(D)の添加量に依存するが、例えば、加熱温度としては40~250℃の間で、1分~1時間加熱することで硬化物が得られる。
【0061】
また、本発明におけるオルガノポリシロキサン組成物は、光を照射することにより硬化することもできる。例えば、水銀ランプ、LED又はハロゲンランプを使用することができ、照射する光としては、波長が好ましくは200~400nmの間にあるUV照射がよく、照射時間としては、好ましくは1時間以内である。さらには、加熱による硬化と併用することも可能である。
【実施例】
【0062】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、Meはメチル基を示す。
【0063】
[合成例1]
300mLのフラスコに、無水酢酸57.1g(0.56mol)を仕込み、内温を5℃まで冷却した。これにギ酸51.5g(1.12mol)を滴下した。冷却したままさらに30分撹拌し、次いで内温を40℃まで上げて2時間撹拌した後、室温まで冷却し、反応液を得た。
500mLのフラスコに3-アミノプロピル-トリストリメチルシロキシシラン106.0g(0.30mol)とテトラヒドロフラン120.0gを仕込み、内温を-15℃に冷却した。これに上記の反応液を内温が-5℃を超えない速度で滴下した。滴下終了後、-15℃でさらに2時間撹拌した。次いでエバポレーターで揮発分を除去し、N-ホルミル化された粗生成物118.2gを得た。
2Lのフラスコに上記のN-ホルミル化粗生成物118.2g、塩化メチレン120.0g、ジイソプロピルアミン109.5g(1.08mol)を仕込み、内温を5℃まで冷却した。これに塩化ホスホリル52.3g(0.34mol)を滴下した。その後、冷却したまま2時間撹拌した。炭酸ナトリウム20質量%水溶液750.0gを、内温が20℃を超えないように滴下し、滴下終了後室温で15時間撹拌した。生成した塩をろ過除去し、水層を分離した。有機層を3回水洗し、硫酸マグネシウムを加えて脱水、ろ過後に蒸留して目的物(Me3SiO)3SiCH2CH2CH2NCを得た。収量62.7g、収率57.6%、沸点95.5~96.0℃/0.3kPa、ガスクロマトグラフィーによる純度は99.6%で、無臭であった。
【0064】
[合成例2]
300mLのフラスコに、無水酢酸26.5g(0.26mol)を仕込み、内温を5℃まで冷却した。これにギ酸23.9g(0.52mol)を滴下した。冷却したままさらに30分撹拌し、次いで内温を40℃まで上げて2時間撹拌した後、室温まで冷却し、反応液を得た。
500mLのフラスコにnBu(Me2)SiO(Me2SiO)3Si(Me2)CH2CH2CH2NH265.4g(0.14mol)とテトラヒドロフラン100.0gを仕込み、内温を-15℃に冷却した。これに上記の反応液を内温が-5℃を超えない速度で滴下した。滴下終了後、-15℃でさらに2時間撹拌した。次いでエバポレーターで揮発分を除去し、N-ホルミル化された粗生成物69.1gを得た。
1Lのフラスコに上記のN-ホルミル化粗生成物69.1g、塩化メチレン120.0g、ジイソプロピルアミン49.3g(0.49mol)を仕込み、内温を5℃まで冷却した。これに塩化ホスホリル23.6g(0.15mol)を滴下した。その後、冷却したまま2時間撹拌した。炭酸ナトリウム20質量%水溶液350.0gを、内温が20℃を超えないように滴下し、滴下終了後室温で15時間撹拌した。生成した塩をろ過除去し、水層を分離した。有機層を3回水洗し、硫酸マグネシウムを加えて脱水、ろ過後に蒸留して目的物nBu(Me2)SiO(Me2SiO)3Si(Me2)CH2CH2CH2NCを得た。収量52.2g、収率77.8%、沸点145~147℃/0.3kPa、ガスクロマトグラフィーによる純度は97.2%で、無臭であった。
【0065】
[合成例3]
300mLのフラスコに、無水酢酸60.9g(0.60mol)を仕込み、内温を5℃まで冷却した。これにギ酸55.0g(1.20mol)を滴下した。冷却したままさらに30分撹拌し、次いで内温を40℃まで上げて2時間撹拌した後、室温まで冷却し、反応液を得た。
500mLのフラスコに1,3,5,7-テトラメチル-3,5,7-トリプロピル-3-アミノプロピルシクロテトラシロキサン135.6g(0.32mol)とテトラヒドロフラン200mLを仕込み、内温を-20℃に冷却した。これに上記の反応液を内温が-5℃を超えない速度で滴下した。滴下終了後、-15℃でさらに2時間撹拌した。次いでエバポレーターで揮発分を除去し、N-ホルミル化された粗生成物145.7gを得た。
2Lのフラスコに上記のN-ホルミル化粗生成物145.7g、塩化メチレン200mL、ジイソプロピルアミン113.1g(1.12mol)を仕込み、内温を5℃まで冷却した。これに塩化ホスホリル54.0g(0.35mol)を滴下した。その後、冷却したまま2時間撹拌した。炭酸ナトリウム20質量%水溶液802.0gを滴下し、滴下終了後室温で15時間撹拌した。生成した塩をろ過除去し、水層を分離した。有機層を3回水洗し、硫酸ナトリウムを加えて脱水、ろ過後に蒸留して1,3,5,7-テトラメチル-3,5,7-トリプロピル-3-イソシアノプロピルシクロテトラシロキサンを得た。収量92.8g、収率67.0%、沸点132.0~133.5℃/0.3kPa、ガスクロマトグラフィーによる純度は99.4%で、無臭であった。
【0066】
[合成例4]
100mLのフラスコに、無水酢酸13.54g(0.133mol)を仕込み、内温を-10℃まで冷却した。これにギ酸12.26g(0.266mol)を滴下した。冷却したままさらに30分撹拌し、次いで内温を40℃まで上げて3時間撹拌した後、室温まで冷却し、反応液を得た。
200mLのフラスコに[(Me3SiO)2Si(Me)O]2Si(Me)CH2CH2CH2NH263.29g(0.110mol)とテトラヒドロフラン100.0gを仕込み、内温を-20℃に冷却した。これに上記の反応液を内温が-5℃を超えない速度で滴下した。滴下終了後、-15℃でさらに2時間撹拌した。次いでエバポレーターで揮発分を除去し、N-ホルミル化された粗生成物56.36gを得た。
100mLのフラスコに上記のN-ホルミル化粗生成物55.46g、塩化メチレン151.6g、ジイソプロピルアミン34.25g(0.339mol)を仕込み、内温を5℃まで冷却した。これに塩化ホスホリル19.84g(0.130mol)を滴下した。その後、冷却したまま2時間撹拌した。炭酸ナトリウム20質量%水溶液175.0gを滴下し、滴下終了後5℃で1時間撹拌した。生成した塩をろ過除去し、水層を分離した。有機層を3回水洗し、硫酸ナトリウムを加えて脱水、ろ過後に蒸留して目的物[(Me3SiO)2Si(Me)O]2Si(Me)CH2CH2CH2NCを得た。収量36.75g、収率57.8%、沸点115℃/0.3kPa、無臭であった。
【0067】
[合成例5]
300mLのフラスコに、無水酢酸57.1g(0.56mol)を仕込み、内温を5℃まで冷却した。これにギ酸51.5g(1.12mol)を滴下した。冷却したままさらに30分撹拌し、次いで内温を40℃まで上げて2時間撹拌した後、室温まで冷却し、反応液を得た。
500mLのフラスコにH2NCH2CH2CH2(Me2)SiOSi(Me2)CH2CH2CH2NH237.2g(0.15mol)とテトラヒドロフラン100.0gを仕込み、内温を-15℃に冷却した。これに上記の反応液を内温が-5℃を超えない速度で滴下した。滴下終了後、-15℃でさらに2時間撹拌した。次いでエバポレーターで揮発分を除去し、N-ホルミル化された粗生成物46.7gを得た。
2Lのフラスコに上記のN-ホルミル化粗生成物46.7g、塩化メチレン120.0g、ジイソプロピルアミン106.1g(1.05mol)を仕込み、内温を5℃まで冷却した。これに塩化ホスホリル50.7g(0.33mol)を滴下した。その後、冷却したまま2時間撹拌した。炭酸ナトリウム20質量%水溶液750.0gを、内温が20℃を超えないように滴下し、滴下終了後室温で15時間撹拌した。生成した塩をろ過除去し、水層を分離した。有機層を3回水洗し、硫酸マグネシウムを加えて脱水、ろ過後に蒸留して目的物CNCH2CH2CH2(Me2)SiOSi(Me2)CH2CH2CH2NCを得た。収量17.4g、収率43.3%、沸点133~134℃/0.3kPa、ガスクロマトグラフィーによる純度は97.8%で、僅かに不快臭があった。
【0068】
[実施例1]
塩化白金酸とテトラメチルジビニルシロキサンとの反応生成物である白金ヒドロシリル化触媒の0.5質量%トルエン溶液(100mg)に、合成例1で得られたイソシアニド化合物を1.9mg加え、室温で1時間撹拌して触媒混合物を得た。
次に、100mLセパラブルフラスコに、(B)トリメチルシロキシ基両末端封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン(粘度20mm2/s)(2.15g)と、(A)ジメチルビニルシロキシ基両末端封鎖ジメチルポリシロキサン(粘度381mm2/s)(97.56g)を加え、室温で3時間撹拌した。この混合物10.00gと上記で調製した触媒混合物0.02gを加え、室温で30分撹拌した。この混合物は淡黄色透明溶液であった。これを用いて、DSC(示差走差熱量)測定を行った。この結果を表1に記載した。
【0069】
[実施例2]
実施例1において、合成例1で得られたイソシアニド化合物の量1.9mgを、3.8mgに増やした以外は、実施例1と同様の操作及び測定を行った。この結果を表1に記載した。
【0070】
[実施例3]
実施例1において、合成例1で得られたイソシアニド化合物の量1.9mgを、7.4mgに増やした以外は、実施例1と同様の操作及び測定を行った。この結果を表1に記載した。
【0071】
[実施例4]
実施例1において、合成例1で得られたイソシアニド化合物の量1.9mgを、18.6mgに増やした以外は、実施例1と同様の操作及び測定を行った。この結果を表1に記載した。
【0072】
【0073】
[実施例5]
塩化白金酸とテトラメチルジビニルシロキサンとの反応生成物である白金ヒドロシリル化触媒の0.5質量%トルエン溶液(5.00g)に、合成例1で得られたイソシアニド化合物を0.187g加え、室温で1時間撹拌して触媒混合物を得た。
次に、500mLセパラブルフラスコに、実施例1記載の(B)トリメチルシロキシ基両末端封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン(8.61g)と、(A)ジメチルビニルシロキシ基両末端封鎖ジメチルポリシロキサン(390.24g)を加え、室温で12時間撹拌した。この混合物10.00gと上記で調製した触媒混合物0.2gを100mLセパラブルフラスコに加え、室温で30分撹拌した。この混合物は淡黄色透明溶液であった。これを用いて、DSC測定、50℃安定性試験(得られた淡黄色透明溶液(サンプル)5gを25gビンにいれ、蓋をして50℃に保存し、保存開始から流動性が消失するまでの時間を測定した。以下同様)を行った。この結果を表2に記載する。また、これをアルミ皿に少量加え、150℃で1時間加熱すると硬化物が得られた。
【0074】
[実施例6]
合成例1で得られたイソシアニド化合物量0.187gを0.372gに増やした以外は、実施例5と同様の操作及び測定を行った。この結果を表2に記載した。
【0075】
[実施例7]
実施例1記載の白金触媒0.5質量%トルエン溶液(2.00g)に、合成例2で得られたイソシアニド化合物を0.099g加え、室温で1時間撹拌して触媒混合物を得た。。
次に、実施例1記載の両末端トリメチルシロキシ基封鎖ポリメチルハイドロジェンシロキサン(8.61g)と両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン(390.24g)の混合物10.00gと、上記実施例5で調製した触媒混合物0.2gを100mLセパラブルフラスコに加え、室温で30分撹拌した。この混合物は淡黄色透明溶液であった。これを用いて、DSC測定、50℃安定性試験を行った。この結果を表2に記載した。また、これをアルミ皿に少量加え、150℃で1時間加熱すると硬化物が得られた。
【0076】
[実施例8]
合成例2で得られたイソシアニド化合物の代わりに、合成例3で得られたイソシアニド化合物0.089gを用いた以外は、実施例7と同様の操作及び測定を行った。この結果を表2に記載した。
【0077】
[実施例9]
合成例2で得られたイソシアニド化合物の代わりに、合成例4で得られたイソシアニド化合物0.122gを用いた以外は、実施例7と同様の操作及び測定を行った。この結果を表2に記載した。
【0078】
[実施例10]
合成例2で得られたイソシアニド化合物の代わりに、合成例5で得られたイソシアニド化合物0.027gを用いた以外は、実施例7と同様の操作及び測定を行った。この結果を表2に記載した。
【0079】
[比較例1]
100mLセパラブルフラスコに、実施例1に記載の(B)トリメチルシロキシ基両末端封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン(8.61g)と、(A)ジメチルビニルシロキシ基両末端封鎖ジメチルポリシロキサン(390.24g)の混合物99.71gに、1-エチニル-1-シクロヘキサノール(0.29g)を加え、室温で3時間撹拌した。この後、実施例1記載の白金触媒0.5質量%トルエン溶液を0.20g加え、さらに1時間撹拌した。この混合物は無色透明溶液であった。これを用いて、DSC測定、50℃安定性試験を行った。この結果を表2に記載した。
【0080】
【0081】
[実施例11]
実施例5で得られた組成物を用いて、TA Instrument社のDiscovery DHRとLumen Dynamics社のOmnicure R2000を用いて、光照射下でのレオメーター測定を行った。光量42mW/cm2の条件で行った結果、480秒後に組成物は硬化した。
【0082】
[比較例2]
比較例1で得られた組成物を用いて、実施例11の条件と同様の条件で測定を行った結果、1,200秒照射しても組成物は硬化しなかった。
【0083】
[比較例3]
塩化白金酸とテトラメチルジビニルシロキサンとの反応生成物である白金触媒の0.5質量%トルエン溶液(2.00g)に、市販のt-ブチルイソシアニド(東京化成工業社製)を0.012g加え、室温で1時間撹拌して触媒を得た。この触媒は、不快臭がした。
次に、100mLセパラブルフラスコに、実施例1記載の両末端トリメチルシロキシ基封鎖ポリメチルハイドロジェンシロキサン(8.61g)と両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ポリジメチルシロキサン(390.24g)の混合物5.00gに、上記で調製した触媒0.10gを100mLセパラブルフラスコに加え、室温で30分撹拌した。この混合物は淡黄色透明溶液であった。この混合物は、上記イソシアニドが高揮発性のため、室温で30分以内に硬化してしまった。
【0084】
[比較例4]
塩化白金酸とテトラメチルジビニルシロキサンとの反応生成物である白金触媒の0.5質量%トルエン溶液(2.00g)に、市販のステアリルアミン(東京化成工業社製)から公知の方法で合成したステアリルイソシアニドを0.036g加え、室温で1時間撹拌して触媒混合物を得た。調整した触媒混合物は、2日後に沈殿物が生成した。
次に、100mLセパラブルフラスコに、実施例1記載の(B)トリメチルシロキシ基両末端封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン(8.61g)と、(A)ジメチルビニルシロキシ基両末端封鎖ジメチルポリシロキサン(390.24g)の混合物5.00gに、上記で調製した触媒0.10gを100mLセパラブルフラスコに加え、室温で30分撹拌したところ、この混合物は微濁してしまった。
【0085】
実施例と比較例1,2のDSCの結果から明らかであるように、本発明の(D)成分は白金の制御剤となり、制御剤としての量はアセチレンアルコール系のものよりも少なくてよい。さらに、本発明の(D)成分は、イソシアニド化合物特有の臭いが無いか、又は僅かに不快臭であり、低揮発性のものであり、シリコーン組成物に対しての溶解性に優れ、これを配合したシリコーン組成物は、50℃での安定性に優れるものであった。
一方、比較例3では、(D)成分の揮発性が高く、反応制御が不十分であり、比較例4では(D)成分の溶解性が悪く、触媒の析出が見られた。