(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】無溶剤型シリコーン剥離剤組成物、剥離シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20220712BHJP
C09D 183/05 20060101ALI20220712BHJP
C09D 183/07 20060101ALI20220712BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20220712BHJP
C08L 83/07 20060101ALI20220712BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20220712BHJP
C08L 83/14 20060101ALI20220712BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
C09K3/00 R
C09D183/05
C09D183/07
C09D7/63
C08L83/07
C08L83/05
C08L83/14
C08L83/04
(21)【出願番号】P 2019567040
(86)(22)【出願日】2019-01-18
(86)【国際出願番号】 JP2019001428
(87)【国際公開番号】W WO2019146518
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2018010138
(32)【優先日】2018-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井原 俊明
(72)【発明者】
【氏名】小林 中
【審査官】山本 悦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-002195(JP,A)
【文献】国際公開第2015/198828(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/198827(WO,A1)
【文献】特開2006-290919(JP,A)
【文献】特開2005-343974(JP,A)
【文献】特表2010-502778(JP,A)
【文献】特表2010-535862(JP,A)
【文献】特開2012-224780(JP,A)
【文献】特開2009-292883(JP,A)
【文献】特開2003-128925(JP,A)
【文献】特開2002-356667(JP,A)
【文献】国際公開第2016/006252(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/070947(WO,A1)
【文献】特開平08-217980(JP,A)
【文献】特開2011-132524(JP,A)
【文献】特開2010-150537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
C09D 7/63、183/05、183/07
C08L 83/05、83/07、83/14
B32B 27/00
C08J 5/18
C08K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)、(B)、(C)及び(E)成分を含有する無溶剤型シリコーン剥離剤組成物。
(A)下記一般式(1)で示されるビニル価が0.016mol/100g以上0.7mol/100g以下であり、25℃における動粘度が80mm
2/s以上500mm
2/s以下であり、1分子中にアルケニル基を2個以上有するアルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
M
αM
vi
βD
γD
vi
δT
εT
vi
ζQ
η (1)
(式中、MはR
3SiO
1/2、M
viはR
2PSiO
1/2、DはR
2SiO
2/2、D
viはRPSiO
2/2、TはRSiO
3/2、T
viはPSiO
3/2、QはSiO
4/2であり、Rはそれぞれ独立に脂肪族不飽和結合を有さない炭素原子数1~12の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、Pは-(CH
2)
a-CH=CH
2(aは0~6の整数)で表されるアルケニル基である。α、β、δ、ζはそれぞれ独立に0以上の整数で、β、δ、ζが同時に0になることはなく、2≦β+δ+ζ≦50であり、γは10~300の整数であり、εは0~20の整数であり、ηは0~10の整数である。)
(B)25℃における動粘度が2mm
2/s以上500mm
2/s以下であり、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分のアルケニル基1モルに対するケイ素原子に結合した水素原子のモル数が1~5の範囲となる量、
(C)有効量の白金族金属系触媒、
(E)水酸基含有オルガノポリシロキサンと、アルコキシ基を含有する分岐状のオルガノポリシロキサンとの縮合反応物からなり、RSiO
3/2単位(Rは脂肪族不飽和結合を有さない炭素原子数1~12の非置換又は置換の一価炭化水素基である。)を含有し、架橋構造を有しかつ流動性を有するオルガノポリシロキサン:(A)成分100質量部に対して0.1~10質量部
【請求項2】
さらに、(D)付加反応制御剤を(A)成分100質量部に対して0.01~5質量部配合する請求項1記載の無溶剤型シリコーン剥離剤組成物。
【請求項3】
(E)成分の25℃における絶対粘度が、1,000~100,000mPa・sである請求項1又は2記載の無溶剤型シリコーン剥離剤組成物。
【請求項4】
(B)成分が、下記一般式(4)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンである請求項1~3のいずれか1項に記載の無溶剤型シリコーン剥離剤組成物。
M
ο’M
H
π’D
ρ’D
H
σ’T
τ’T
H
φ’Q
χ’ (4)
(式中、MはR
3SiO
1/2、M
HはR
2HSiO
1/2、DはR
2SiO
2/2、D
HはRHSiO
2/2、TはRSiO
3/2、T
HはHSiO
3/2、QはSiO
4/2であり、Rはそれぞれ独立に脂肪族不飽和結合を有さない炭素原子数1~12の非置換又は置換の一価炭化水素基である。ο’、π’、ρ’、τ’はそれぞれ独立に0以上の整数であり、σ’は0~100の整数であり、φ’は0~10の整数であり、χ’は0~10の整数であり、π’、σ’、φ’が同時に0になることはなく、2≦π’+σ’+φ’≦100である。)
【請求項5】
さらに、(F)下記一般式(5)で表される高分子量直鎖型オルガノポリシロキサンを(A)成分100質量部に対して0.1~10質量部配合する請求項1~4のいずれか1項に記載の無溶剤型シリコーン剥離剤組成物。
M
1
2D
Ψ (5)
(式中、M
1はR
1
3SiO
1/2、DはR
2SiO
2/2であり、Rはそれぞれ独立に脂肪族不飽和結合を有さない炭素原子数1~12の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、R
1は脂肪族不飽和結合を有さない炭素原子数1~12の非置換又は置換の一価炭化水素基又は水酸基である。Ψは300以上3,000以下の正数である。)
【請求項6】
25℃における動粘度が500mm
2/s以下である請求項1~5のいずれか1項に記載の無溶剤型シリコーン剥離剤組成物。
【請求項7】
紙又はフィルム基材に、請求項1~6のいずれか1項に記載の無溶剤型シリコーン剥離剤組成物を周速250m/min以上の速度の塗工ロールで塗工し、加熱硬化させてシリコーン硬化皮膜を作製する剥離シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙やプラスチックなどのシート状基材上に、無溶剤型シリコーン剥離剤組成物をロール塗工し、高温下で硬化させて生産される剥離紙又は剥離フィルム等の剥離シートの高速塗工生産において、ミストの発生量が少ないこと及び塗工されたシリコーン硬化物表面の荒れ(表面の凹凸)が少なくなり、その後の工程でシリコーン硬化物の上に粘着剤を塗布し、熱硬化させる際、シリコーン硬化物表面の凹凸に粘着剤が食い込まないため剥離力が重くならず、シリコーン硬化物本来の低い剥離力が得られることを特徴とする無溶剤型シリコーン剥離剤組成物、並びに該組成物の硬化皮膜を有する剥離シート及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紙やプラスチックなどのシート状基材と粘着材料との接着、固着を防止するために、基材表面にオルガノポリシロキサン組成物の硬化皮膜を形成して剥離特性を付与している。上述の基材面にオルガノポリシロキサン硬化皮膜を形成する方法として、次の方法が知られている。
【0003】
(1)白金系化合物を触媒として、アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを付加反応させて剥離性皮膜を形成する方法(特許文献1:特開昭47-32072号公報)。
(2)有機金属塩を触媒として、水酸基やアルコキシ基といった官能基を有するオルガノポリシロキサンを縮合反応させて剥離性皮膜を形成する方法(特許文献2:特公昭35-13709号公報)。
(3)紫外線や電子線を用いて、アクリル基を含有するオルガノポリシロキサンと光反応開始剤とをラジカル重合させて剥離性皮膜を形成する方法(特許文献3:特開昭54-162787号公報)が知られている。
【0004】
上記の(1)、(2)、(3)の中で硬化性に優れ、低速剥離から高速剥離でのさまざまな剥離特性の要求に対して対応可能な(1)の付加反応による剥離性皮膜形成方法が広く用いられている。
【0005】
この(1)の付加反応による剥離性皮膜形成方法には、オルガノポリシロキサン組成物を有機溶剤に溶解させたタイプ、乳化剤を用いて水に分散させてエマルジョンにしたタイプ、オルガノポリシロキサンのみからなる無溶剤タイプがあるが、溶剤タイプは人体や環境に対して有害であるため、安全性の面から溶剤タイプから無溶剤タイプへの切り替えが進んでいる。また、エマルジョンタイプは水を除去するのに高いエネルギーを必要とする上、多量の乳化剤が残存するため剥離力を小さくすることが難しい。
【0006】
このため無溶剤タイプが最も多く使用されている。無溶剤タイプは基本配合としてベースオイル(ビニル基含有シロキサン)、架橋剤(SiH基含有シロキサン)、制御剤(アセチレン系化合物)、白金触媒からなっている。
【0007】
無溶剤型剥離紙用オルガノポリシロキサン組成物の塗工硬化製品(剥離紙や剥離フィルム)は、表面のオルガノポリシロキサン組成物の硬化物層の平滑性が剥離力に大きく影響する。表面に凹凸や塗工量のムラが形成されると粘着剤が食い込み、アンカーとして作用するため剥離力は高くなる。微細な表面の凹凸は、高速塗工時にロール表面のオルガノポリシロキサン組成物が波打ったり、またロール表面からミストが発生することにより生成される。ミストの原因ははっきり分かっていないが、使用されるオルガノポリシロキサン組成物の飛散物であり、塗工速度が250m/min以上になると肉眼でもミストの発生が分かるようになり、塗工速度が速くなるのに伴い、発生量は増大する。そしてロール表面に存在するオルガノポリシロキサン組成物がミストになって飛んでゆくため、ミスト発生量が多いほど表面の凹凸が増え、剥離力は高くなる。
【0008】
近年、剥離紙や剥離フィルムの生産性を上げ、製造コストを下げるために、オルガノポリシロキサン組成物の塗工速度のスピードアップ化が進んでいる。具体的には、塗工ロールの周速が従来100~200m/minだったところを250m/min以上に上げてオルガノポリシロキサン組成物の塗工作業を高速で行う事例が増えてきている。しかし、塗工速度が250m/minを超えると低速塗工速度では見られなかったオルガノポリシロキサン組成物のミストが大量に発生する。このミストの発生量に伴い、オルガノポリシロキサン組成物塗工表面は荒れ、該組成物の硬化物層表面の凹凸に粘着剤が食い込む(侵入する)ことにより低速及び高速剥離力は高くなる。
このため表面の凹凸を減らすためには、ミスト発生量を低く抑える必要がある。
また、これまでミストの発生量と出来上がった剥離紙や剥離フィルム等の剥離シートの表面特性や剥離力との関係に関する報告はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開昭47-32072号公報
【文献】特公昭35-13709号公報
【文献】特開昭54-162787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、無溶剤型シリコーン剥離剤組成物を使用する剥離紙や剥離フィルム等の剥離シートを、250m/min以上の高速塗工で生産する場合、ロールの高速回転により生じる表面の荒れやミストの発生による表面の凹凸形成を無くすことができ、これにより、粘着剤を貼り付けた際にシリコーン硬化物本来の低い剥離力が得られる剥離シートを与える無溶剤型シリコーン剥離剤組成物、並びに該組成物の硬化皮膜を有する剥離シート及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、
(A)下記一般式(1)で示されるビニル価が0.016mol/100g以上0.7mol/100g以下であり、25℃における動粘度が80mm2/s以上500mm2/s以下であり、1分子中にアルケニル基を2個以上有するアルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
MαMvi
βDγDvi
δTεTvi
ζQη (1)
(式中、MはR3SiO1/2、MviはR2PSiO1/2、DはR2SiO2/2、DviはRPSiO2/2、TはRSiO3/2、TviはPSiO3/2、QはSiO4/2であり、Rはそれぞれ独立に脂肪族不飽和結合を有さない炭素原子数1~12の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、Pは-(CH2)a-CH=CH2(aは0~6の整数)で表されるアルケニル基である。α、β、δ、ζはそれぞれ独立に0以上の整数で、β、δ、ζが同時に0になることはなく、2≦β+δ+ζ≦50であり、γは10~300の整数であり、εは0~20の整数であり、ηは0~10の整数である。)
(B)25℃における動粘度が2mm2/s以上500mm2/s以下であり、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)白金族金属系触媒、
(E)架橋構造を有しかつ流動性を有するオルガノポリシロキサン
の特定量を含有する無溶剤型シリコーン剥離剤組成物が、シート状基材への高速塗工時に、ロールの高速回転により生じる表面の荒れやミストの発生による表面の凹凸形成を無くすことができ、シリコーン硬化皮膜表面の平滑性に優れ、粘着剤塗布基材の高速剥離力が低い剥離シートを得ることができることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
なお、ここで言う高速剥離力とは、250m/min以上、好ましくは300m/min以上の速度で剥離紙や剥離フィルム等の剥離シートから粘着テープを剥いだ際の剥離力を意味する。
【0012】
従って、本発明は、下記の無溶剤型シリコーン剥離剤組成物、剥離シート及びその製造方法を提供する。
〔1〕
下記(A)、(B)、(C)及び(E)成分を含有する無溶剤型シリコーン剥離剤組成物。
(A)下記一般式(1)で示されるビニル価が0.016mol/100g以上0.7mol/100g以下であり、25℃における動粘度が80mm2/s以上500mm2/s以下であり、1分子中にアルケニル基を2個以上有するアルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
MαMvi
βDγDvi
δTεTvi
ζQη (1)
(式中、MはR3SiO1/2、MviはR2PSiO1/2、DはR2SiO2/2、DviはRPSiO2/2、TはRSiO3/2、TviはPSiO3/2、QはSiO4/2であり、Rはそれぞれ独立に脂肪族不飽和結合を有さない炭素原子数1~12の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、Pは-(CH2)a-CH=CH2(aは0~6の整数)で表されるアルケニル基である。α、β、δ、ζはそれぞれ独立に0以上の整数で、β、δ、ζが同時に0になることはなく、2≦β+δ+ζ≦50であり、γは10~300の整数であり、εは0~20の整数であり、ηは0~10の整数である。)
(B)25℃における動粘度が2mm2/s以上500mm2/s以下であり、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分のアルケニル基1モルに対するケイ素原子に結合した水素原子のモル数が1~5の範囲となる量、
(C)有効量の白金族金属系触媒、
(E)架橋構造を有しかつ流動性を有するオルガノポリシロキサン:(A)成分100質量部に対して0.1~10質量部
〔2〕
さらに、(D)付加反応制御剤を(A)成分100質量部に対して0.01~5質量部配合する〔1〕記載の無溶剤型シリコーン剥離剤組成物。
〔3〕
(E)成分が、下記平均組成式(2)で表される構造を有するオルガノポリシロキサンと下記平均組成式(3)で表される構造を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの付加反応物からなるオルガノポリシロキサンである〔1〕又は〔2〕記載の無溶剤型シリコーン剥離剤組成物。
MθMvi
ιDκDvi
λTμTvi
νQξ (2)
MοMH
πDρDH
σTτTH
φQχ (3)
(式中、MはR3SiO1/2、MviはR2PSiO1/2、MHはR2HSiO1/2、DはR2SiO2/2、DviはRPSiO2/2、DHはRHSiO2/2、TはRSiO3/2、TviはPSiO3/2、THはHSiO3/2、QはSiO4/2であり、Rはそれぞれ独立に脂肪族不飽和結合を有さない炭素原子数1~12の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、Pは-(CH2)a-CH=CH2(aは0~6の整数)で表されるアルケニル基である。θ、ι、κ、λ、μ、ο、π、ρ、σ、τはそれぞれ独立に0又は正数であり、また、νは0又は20以下の正数、φは0又は20以下の正数、ξは0又は5以下の正数、χは0又は5以下の正数であり、ι、λ、ν及びπ、σ、φが同時に0になることはなく、2≦ι+λ+ν≦100、2≦π+σ+φ≦100であり、またι+λ+νとπ+σ+φが同時に2になることはない。)
〔4〕
(E)成分が、水酸基含有オルガノポリシロキサンと、アルコキシ基含有オルガノポリシロキサンとの縮合反応物からなり、RSiO3/2単位(Rは脂肪族不飽和結合を有さない炭素原子数1~12の非置換又は置換の一価炭化水素基である。)を含有するオルガノポリシロキサンである〔1〕又は〔2〕記載の無溶剤型シリコーン剥離剤組成物。
〔5〕
(B)成分が、下記一般式(4)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンである〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の無溶剤型シリコーン剥離剤組成物。
Mο’MH
π’Dρ’DH
σ’Tτ’TH
φ’Qχ’ (4)
(式中、MはR3SiO1/2、MHはR2HSiO1/2、DはR2SiO2/2、DHはRHSiO2/2、TはRSiO3/2、THはHSiO3/2、QはSiO4/2であり、Rはそれぞれ独立に脂肪族不飽和結合を有さない炭素原子数1~12の非置換又は置換の一価炭化水素基である。ο’、π’、ρ’、τ’はそれぞれ独立に0以上の整数であり、σ’は0~100の整数であり、φ’は0~10の整数であり、χ’は0~10の整数であり、π’、σ’、φ’が同時に0になることはなく、2≦π’+σ’+φ’≦100である。)
〔6〕
さらに、(F)下記一般式(5)で表される高分子量直鎖型オルガノポリシロキサンを(A)成分100質量部に対して0.1~10質量部配合する〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の無溶剤型シリコーン剥離剤組成物。
M1
2DΨ (5)
(式中、M1はR1
3SiO1/2、DはR2SiO2/2であり、Rはそれぞれ独立に脂肪族不飽和結合を有さない炭素原子数1~12の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、R1は脂肪族不飽和結合を有さない炭素原子数1~12の非置換又は置換の一価炭化水素基又は水酸基である。Ψは300以上3,000以下の正数である。)
〔7〕
25℃における動粘度が500mm2/s以下である〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の無溶剤型シリコーン剥離剤組成物。
〔8〕
紙又はフィルム基材に、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の無溶剤型シリコーン剥離剤組成物を周速250m/min以上の速度の塗工ロールで塗工し、加熱硬化させてシリコーン硬化皮膜を作製する剥離シートの製造方法。
〔9〕
〔8〕記載の製造方法で作製した紙基材からなる剥離シートであって、染色液ブリリアントグリーン5質量%水溶液の水面に該剥離シートを浮かせるようにして無溶剤型シリコーン剥離剤組成物の硬化皮膜面を1分間浸け、シリコーン硬化皮膜面を水洗いした後、染色液に浸けたシリコーン硬化皮膜面の反対面への染料の抜けがないことを特徴とする剥離シート。
〔10〕
〔8〕記載の製造方法で作製した紙基材からなる剥離シートであって、無溶剤型シリコーン剥離剤組成物を紙基材に塗工、硬化した時の、蛍光X線により測定される塗工量の最大値と最小値の差が0.1g/m2以下であることを特徴とする剥離シート。
【発明の効果】
【0013】
本発明の無溶剤型シリコーン剥離剤組成物は、高速でシート状基材に塗工し硬化した場合、低粘度であるためロールの高速回転による表面の荒れがなく、(E)成分によりミストの発生が抑えられるため表面の微細な凹凸形成が少ないことから、シリコーン硬化皮膜表面の平滑性に優れ、粘着剤塗布基材の高速剥離力が低い剥離紙や剥離フィルム等の剥離シートを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
<(A)成分>
(A)成分は、下記一般式(1)で示されるビニル価が0.016mol/100g以上0.7mol/100g以下であり、25℃における動粘度が80mm2/s以上500mm2/s以下であり、1分子中にアルケニル基を2個以上、好ましくは2~50個有するアルケニル基含有オルガノポリシロキサンである。
MαMvi
βDγDvi
δTεTvi
ζQη (1)
(式中、MはR3SiO1/2、MviはR2PSiO1/2、DはR2SiO2/2、DviはRPSiO2/2、TはRSiO3/2、TviはPSiO3/2、QはSiO4/2であり、Rはそれぞれ独立に脂肪族不飽和結合を有さない炭素原子数1~12の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、Pは-(CH2)a-CH=CH2(aは0~6の整数)で表されるアルケニル基である。α、β、δ、ζはそれぞれ独立に0以上の整数で、β、δ、ζが同時に0になることはなく、2≦β+δ+ζ≦50であり、γは10~300の整数であり、εは0~20の整数であり、ηは0~10の整数である。)
【0015】
上記式(1)において、Rはそれぞれ独立に脂肪族不飽和結合を有さない炭素原子数1~12の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、炭素原子数1~10のものが好ましく、特に炭素原子数1~8のものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基などが挙げられ、またこれらの水素原子の一部又は全部をハロゲン原子などで置換したクロロプロピル基、トリフルオロプロピル基等のハロゲン原子置換アルキル基が挙げられるが、これらの中でも、組成物の硬化性、得られる硬化物の剥離力が低い点から80モル%以上がメチル基であることが好ましい。
【0016】
また、Pの-(CH2)a-CH=CH2(aは0~6の整数)で表されるアルケニル基として、具体的には、ビニル基、アリル基、ブテニル基、プロペニル基、5-ヘキセニル基、オクテニル基、デセニル基等が挙げられ、中でもビニル基が好ましい。
【0017】
式(1)におけるα、β、δ、ζはそれぞれ独立に0以上の整数で、β、δ、ζが同時に0になることはなく、β+δ+ζは2以上50以下の整数であり、好ましくは2以上20以下の整数である。αは0~10の整数であることが好ましく、βは0~10の整数であることが好ましく、δは0~50の整数であることが好ましく、ζは0~10の整数であることが好ましい。
【0018】
式(1)におけるD(R2SiO構造)単位の数γは10以上300以下の整数であり、好ましくは10以上200以下の整数であり、より好ましくは10以上180以下の整数であり、さらに好ましくは50以上150以下の整数である。γが10より少ない場合、ミスト発生量が増大し、シリコーン剥離剤組成物の塗工表面が荒れる。γが300より多くなると、該オルガノポリシロキサンの、ひいては本無溶剤型シリコーン剥離剤組成物の動粘度が高くなりすぎて塗工性が低下するため平滑性が悪くなり、場所により塗工量の差が大きくなる。
式(1)におけるεは0~20の整数、好ましくは0~10の整数であり、ηは0~10の整数、好ましくは0~5の整数である。
【0019】
(A)成分のビニル価としては、0.016mol/100g以上0.7mol/100g以下であり、0.016mol/100g以上0.6mol/100g以下が好ましく、より好ましくは0.016mol/100g以上0.5mol/100g以下である。ビニル価が0.016mol/100g未満は、式(1)において、ビニル基を有する単位の重合度に対しビニル基を有さないD、T、Q単位の重合度が多くなることを意味する。式(1)において、T単位の重合度εは0~20、Q単位の重合度ηは0~10であるため、ビニル価の少ない構造はビニル基が少なくD単位が多い構造になる。ビニル価が0.016mol/100g未満となる構造は、極端にいうと、式(1)において、ビニル基の数が2で、α、δ、ε、ζ、ηがいずれも0の場合、即ちMVi
2Dγにおいて、γの値が166.4以上の構造であり、経験的にこの動粘度は500mm2/s以上となる。よって、ビニル価が0.016mol/100g未満であると、後述する(A)成分の25℃における動粘度が500mm2/sを超える場合と同様に、塗工基材上に濡れ広がりにくくなり、基材への塗工量がばらついてしまう。またビニル価が0.7mol/100gを超える量であると架橋密度が高くなりすぎ、低速剥離力(0.3m/minで剥がした際の剥離力)が高くなってしまう。
【0020】
また、(A)成分の25℃における動粘度は、80mm2/s以上500mm2/s以下であり、好ましくは100mm2/s以上450mm2/s以下である。(A)成分の動粘度が80mm2/sより低いと濡れ性が上がり広がりやすくなりすぎて、基材への塗工量が不十分になる。また500mm2/sより高い場合は上記とは逆に濡れ広がりにくくなり、基材への塗工量がばらついてしまう。なお、本発明において、動粘度はオストワルド型粘度計により測定できる(以下、同じ。)。
【0021】
このような(A)成分のオルガノポリシロキサンとして、具体的には、両末端アルケニル基含有シロキサン、側鎖アルケニル基含有シロキサン、片末端及び側鎖アルケニル基含有シロキサン、両末端及び側鎖アルケニル基含有シロキサン、分岐型末端アルケニル基含有シロキサンを挙げることができる。
【0022】
構造式で表すと、MVi
2Dγ、M2DγDVi
δ、MVi
3DγT1、MVi
4DγT2、MVi
2DγDVi
δ、MVi
2DγQ1、MαDγDVi
δTVi
ζ(M、Mvi、D、Dvi、T、Tvi、Q、γ、δ、ζは上記と同じ。以下同様。)等を挙げることができる。さらに具体的な構造例としては、MVi
2D100、M2D97DVi
3、M2D26DVi
4、M2D96DVi
4、M2D95DVi
5、MVi
3D100T1、MVi
4D100T2、MVi
2D97DVi
1、MVi
2D95DVi
3、M3D93DVi
3TVi
1等を挙げることができる。
【0023】
<(B)成分>
(B)成分は、25℃における動粘度が2mm2/s以上500mm2/s以下であり、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
【0024】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中に2個以上、好ましくは3~100個、より好ましくは10~100個のケイ素原子結合水素原子(SiH基)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンのSiH基と式(1)のオルガノポリシロキサンのビニル基とが付加反応することによりオルガノポリシロキサン架橋物が形成される。
【0025】
(B)成分のSiH基含有量としては、0.016~3.5mol/100gが好ましく、より好ましくは0.024~2.5mol/100gであり、さらに好ましくは0.024~2.0mol/100gである。SiH基含有量が少なすぎるとキュアー性や密着性が悪くなる場合があり、多すぎると剥離力が重くなる場合がある。
【0026】
(B)成分の25℃における動粘度は、2mm2/s以上500mm2/s以下であり、好ましくは2mm2/s以上300mm2/s以下であり、より好ましくは5mm2/s以上200mm2/s以下である。動粘度が2mm2/s未満であると分子量が小さいため反応性は良いが、基材との密着性が大幅に悪化する。また500mm2/sより高いと反応性が悪くなり、キュアー性が低下し、残留接着率の低下やキュアー不足による剥離力の上昇が見られる。
【0027】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記一般式(4)で表される構造を有するものが好ましい。
Mο’MH
π’Dρ’DH
σ’Tτ’TH
φ’Qχ’ (4)
(式中、MはR3SiO1/2、MHはR2HSiO1/2、DはR2SiO2/2、DHはRHSiO2/2、TはRSiO3/2、THはHSiO3/2、QはSiO4/2であり、Rはそれぞれ独立に脂肪族不飽和結合を有さない炭素原子数1~12の非置換又は置換の一価炭化水素基である。ο’、π’、ρ’、τ’はそれぞれ独立に0以上の整数であり、σ’は0~100の整数であり、φ’は0~10の整数であり、χ’は0~10の整数であり、π’、σ’、φ’が同時に0になることはなく、2≦π’+σ’+φ’≦100である。)
【0028】
上記式(4)において、Rは上記式(1)のRと同様のものが例示でき、これらの中でも炭素原子数1~8のアルキル基が好ましい。
式(4)におけるο’、π’、ρ’、τ’はそれぞれ独立に0以上の整数であり、ο’は0~10の整数であることが好ましく、π’は0~10の整数であることが好ましく、ρ’は0~100の整数であることが好ましく、τ’は0~10の整数であることが好ましい。また、σ’は0~100の整数、好ましくは2~100の整数、より好ましくは10~80の整数であり、φ’は0~10の整数、好ましくは0~5の整数であり、χ’は0~10の整数、好ましくは0~5の整数である。また、π’、σ’、φ’は同時に0になることはなく、π’+σ’+φ’は2~100の整数、好ましくは10~80の整数である。また、σ’:ρ’は100:0~30:70であることが好ましい。
【0029】
該オルガノハイドロジェンポリシロキサンの重量平均分子量は、194~10,000であることが好ましく、より好ましくは874~5,000である。重量平均分子量が小さすぎると密着性が大幅に悪化する場合があり、大きすぎると反応性が悪くなりキュアー性が低下し、残留接着率の低下やキュアー不足による剥離力の上昇が見られる場合がある。なお、本発明において、重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めたポリスチレン換算値である(以下、同じ。)。
【0030】
このような(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして、具体的には、両末端ハイドロジェンシリル基含有シロキサン、側鎖ハイドロジェンシリル基含有シロキサン、片末端及び側鎖ハイドロジェンシリル基含有シロキサン、両末端及び側鎖ハイドロジェンシリル基含有シロキサン等を挙げることができる。
【0031】
構造式で表すと、MH
2Dρ’、M2DH
σ’、M2Dρ’DH
σ’、MH
2Dρ’DH
σ’、MH
3Dρ’T1、MH
4Dρ’T2、Mο’Dρ’DH
σ’TH
φ’(M、MH、D、DH、T、TH、ο’、ρ’、σ’、φ’は上記と同じ。以下同様。)等を挙げることができる。さらに具体的な構造例としては、MH
2D10、MH
2D100、MH
3D100T1、MH
4D100T2、M2D3DH
27、M2D5DH
45、M2D3DH
97、M2D50DH
50、M2D70DH
30、M3D10DH
70T1等を挙げることができる。
【0032】
(B)成分は1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)成分の配合量は、(A)成分のアルケニル基1モルに対してケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)が1~5モルの範囲となる量であり、好ましくは1.2~3モルの範囲となる量である。これはSiH官能基量として考えると0.016~3.5mol/100gに相当する。(B)成分が少なすぎるとキュアー性と密着性が不十分であり、多すぎると残存するSiH量が増えるため剥離力が高くなり、経時でSiH量が減少するため経時で剥離力が低下する。
【0033】
<(C)白金族金属系触媒>
(C)成分の白金族金属系触媒としては、付加反応触媒として用いられる公知のものが使用できる。このような白金族金属系触媒としては、例えば、白金系、パラジウム系、ロジウム系、ルテニウム系等の触媒が挙げられ、これらの中で特に白金系触媒が好ましく用いられる。この白金系触媒としては、例えば、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液又はアルデヒド溶液、塩化白金酸の各種オレフィン又はビニルシロキサンとの錯体等が挙げられる。
【0034】
白金族金属系触媒の添加量は触媒有効量であるが、(A)、(B)、(D)、(E)成分の合計質量に対し、含有する白金族金属質量として10~1,000ppm、特に10~200ppmとなる量が好ましい。
【0035】
<(D)付加反応制御剤>
(D)成分の付加反応制御剤は、必要に応じ配合される成分で、白金族金属系触媒の触媒活性を制御するものであり、各種有機窒素化合物、有機リン化合物、アセチレン系化合物、オキシム化合物、有機クロロ化合物等が挙げられる。具体的には、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、3-メチル-1-ペンテン-3-オール、フェニルブチノール等のアセチレン系アルコール、3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-イン等のアセチレン系化合物、1,1-ジメチルプロピニルオキシトリメチルシラン等のアセチレン系化合物とアルコキシシランもしくはシロキサン又はハイドロジェンシランとの反応物、テトラメチルビニルシロキサン環状体等のビニルシロキサン、ベンゾトリアゾール等の有機窒素化合物及びその他の有機リン化合物、オキシム化合物、マレイン酸化合物、有機クロロ化合物等が挙げられる。
【0036】
付加反応制御剤(D)を配合する場合の配合量は、良好な処理浴安定性が得られればよく、一般に(A)成分100質量部に対して0.01~5質量部、好ましくは0.1~3質量部である。
【0037】
<(E)架橋構造を有しかつ流動性を有するオルガノポリシロキサン>
(E)成分は、架橋構造を有しかつ流動性を有するオルガノポリシロキサンであり、添加によりミスト防止剤として効果を発揮する。
架橋構造というのは、ビニル基を有するオルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの付加反応物や、水酸基含有オルガノポリシロキサンとアルコキシ基含有オルガノポリシロキサンとの縮合反応物を意味するが、R3SiO1/2(M単位)とR2SiO2/2(D単位)の他に、RSiO3/2(T単位)と場合によりSiO4/2(Q単位)を分子内に含有するオルガノポリシロキサンも該当する(Rは上記と同じである。)。ただし、T単位やD単位が多すぎるとゲルやレジン状になってしまうため、剥離紙や剥離フィルム用途に使うことから、オイル状であることが好ましい。
【0038】
(E)成分のオルガノポリシロキサンは、流動性を有するものであり、この溶剤を除いたオルガノポリシロキサンの25℃における絶対粘度は、1,000~500,000,000mPa・s、特に1,000~100,000mPa・sであることが好ましい。絶対粘度が低すぎると剥離力が高くなる場合があり、高すぎるとシリコーン剥離剤組成物中に分散させることが難しい場合がある。なお、本発明において、絶対粘度は回転粘度計により測定できる。
【0039】
(E)成分の架橋構造を有しかつ流動性を有するオルガノポリシロキサンとしては、下記平均組成式(2)で表される構造を有するオルガノポリシロキサンと、下記平均組成式(3)で表される構造を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを、白金系触媒を用いて付加反応させて得られるものが例として挙げられる。これらの例は、架橋構造を有し、かつ流動性を有するものである。
MθMvi
ιDκDvi
λTμTvi
νQξ (2)
MοMH
πDρDH
σTτTH
φQχ (3)
(式中、MはR3SiO1/2、MviはR2PSiO1/2、MHはR2HSiO1/2、DはR2SiO2/2、DviはRPSiO2/2、DHはRHSiO2/2、TはRSiO3/2、TviはPSiO3/2、THはHSiO3/2、QはSiO4/2であり、Rはそれぞれ独立に脂肪族不飽和結合を有さない炭素原子数1~12の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、Pは-(CH2)a-CH=CH2(aは0~6の整数)で表されるアルケニル基である。θ、ι、κ、λ、μ、ο、π、ρ、σ、τはそれぞれ独立に0又は正数であり、また、νは0又は20以下の正数、φは0又は20以下の正数、ξは0又は5以下の正数、χは0又は5以下の正数であり、ι、λ、ν及びπ、σ、φが同時に0になることはなく、2≦ι+λ+ν≦100、2≦π+σ+φ≦100であり、またι+λ+νとπ+σ+φが同時に2になることはない。)
また式(2)、式(3)の構造式は平均組成式を意味している。
【0040】
上記式(2)、(3)において、R、Pはそれぞれ上記式(1)のR、Pと同様のものが例示でき、これらの中でもRとしては炭素原子数1~10、特に炭素原子数1~8のもの、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基が好ましく、Pとしてはビニル基、アリル基、ブテニル基、プロペニル基が好ましい。
【0041】
式(2)、(3)におけるθ、ι、κ、λ、μ、ο、π、ρ、σ、τはそれぞれ独立に0又は正数であり、θは0又は1~10の正数であることが好ましく、ιは0又は1~10の正数であることが好ましく、κは10~500の正数であることが好ましく、λは0又は1~100の正数であることが好ましく、μは0又は1~10の正数であることが好ましく、οは0又は1~10の正数であることが好ましく、πは0又は1~10の正数であることが好ましく、ρは0又は1~100の正数であることが好ましく、σは0又は1~100の正数であることが好ましく、τは0又は1~10の正数であることが好ましい。また、νは0又は1~20の正数、好ましくは0又は1~10の正数であり、φは0又は1~20の正数、好ましくは0又は1~10の正数であり、ξは0又は1~5の正数、好ましくは0又は1~2の正数であり、χは0又は1~5の正数、好ましくは0又は1~2の正数であり、ι、λ、ν及びπ、σ、φが同時に0になることはなく、ι+λ+νは2~100の正数、好ましくは2~80の正数であり、π+σ+φは2~100の正数、好ましくは2~80の正数であり、またι+λ+νとπ+σ+φが同時に2になることはない。
【0042】
式(2)のオルガノポリシロキサンのビニル基含有量としては、0.005~0.23mol/100g、さらに好ましい範囲は0.006~0.05mol/100gである。
また、式(2)のオルガノポリシロキサンの重量平均分子量としては、900~37,000の範囲が好ましく、さらに好ましい範囲は3,800~29,500である。
【0043】
このような式(2)のオルガノポリシロキサンとして、具体的には、両末端アルケニル基含有シロキサン、側鎖アルケニル基含有シロキサン、片末端及び側鎖アルケニル基含有シロキサン、両末端及び側鎖アルケニル基含有シロキサン、分岐型末端アルケニル基含有シロキサンを挙げることができる。
【0044】
構造式で表すと、MVi
2Dκ、M2DκDVi
λ、MVi
3DκT1、MVi
4DκT2、MVi
2DκDVi
λ、MVi
2DκQ1、MθDκDVi
λTVi
ν(M、Mvi、D、Dvi、T、Tvi、Q、θ、κ、λ、νは上記と同じ。以下同様。)等を挙げることができる。さらに具体的な構造例としては、MVi
2D100、M2D97DVi
3、M2D26DVi
4、M2D96DVi
4、M2D95DVi
5、MVi
3D100T1、MVi
4D100T2、MVi
2D97DVi
1、MVi
2D95DVi
3、M3D93DVi
3TVi
1等を挙げることができる。
【0045】
式(3)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの好ましいSiH基含有量としては0.005~0.700mol/100g、さらに好ましい範囲は0.008~0.500mol/100gである。
また、式(3)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの重量平均分子量としては、142~20,000の範囲が好ましい。
【0046】
このような式(3)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして、具体的には、両末端ハイドロジェンシリル基含有シロキサン、側鎖ハイドロジェンシリル基含有シロキサン、片末端及び側鎖ハイドロジェンシリル基含有シロキサン、両末端及び側鎖ハイドロジェンシリル基含有シロキサン等を挙げることができる。
【0047】
構造式で表すと、MH
2Dρ、M2DH
σ、M2DρDH
σ、MH
2DρDH
σ、MH
3DρT1、MH
4DρT2、MοDρDH
σTH
φ(M、MH、D、DH、T、TH、ο、ρ、σ、φは上記と同じ。以下同様。)等を挙げることができる。さらに具体的な構造例としては、MH
2D10、MH
2D100、M2D27DH
3、M2D97DH
3、M2D26DH
4、M2D25DH
5、M2D24DH
6、M2D96DH
4、M2D95DH
5、MH
3D100T1、MH
4D100T2、MH
2D97DH
1、MH
2D95DH
3、M3D93DH
3TH
1等を挙げることができる。
【0048】
上記式(2)のオルガノポリシロキサンと上記式(3)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの反応割合は、式(3)のオルガノハイドロジェンポリシロキサン中のSiH基1モルに対して式(2)のオルガノポリシロキサン中のアルケニル基が0.8~2.0モル、特に0.9~1.2モルとなる量であることが好ましい。
【0049】
上記式(2)のオルガノポリシロキサンと上記式(3)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを付加反応させる際に用いられる白金系触媒としては、例えば、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液又はアルデヒド溶液、塩化白金酸の各種オレフィン又はビニルシロキサンとの錯体等が挙げられる。
白金系触媒の添加量は触媒有効量であるが、式(2)のオルガノポリシロキサンと上記式(3)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの合計質量に対し、含有する白金族金属質量として10~1,000ppm、特に10~200ppmとなる量が好ましい。
【0050】
また、上記付加反応には溶剤を用いることができ、溶剤としては、トルエン、ヘキサン、キシレン、メチルエチルケトン等のオルガノポリシロキサンに可溶な有機溶剤(シロキサン溶剤を含まない)や、オクタメチルテトラシロキサン、デカメチルペンタシロキサン等の低粘度の環状シロキサン、M2Dn(M、Dは上記と同じ。nは0~200、好ましくは1~50の整数である。)等の直鎖シロキサン、M2+mDnTm(M、D、Tは上記と同じ。nは0~200、好ましくは1~50の整数、mは1~10、好ましくは1~3の整数である。)等の分岐鎖シロキサンなどのオルガノポリシロキサン(シロキサン溶剤)を用いるのが好ましい。
溶剤の使用量は、式(2)のオルガノポリシロキサンと上記式(3)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの合計質量の8~50倍であることが好ましく、特に8~20倍であることが好ましい。
【0051】
上記式(2)のオルガノポリシロキサンと上記式(3)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを付加反応させる反応条件としては、40~150℃、特に50~140℃の温度で0.5~6時間、特に1~5時間とすることが好ましい。
【0052】
また、上記で得られた架橋構造を有するオルガノポリシロキサンは、1H-NMRより計算されるシロキサン単位1,000molあたり架橋構造(シルエチレン結合等のシルアルキレン結合)を0.1~100mol、特に0.1~50mol含有するものであることが好ましい。
【0053】
なお、トルエン等の有機溶剤を用いて合成した場合は、溶剤として低粘度のオルガノポリシロキサンを加えた後、該有機溶剤を減圧下加熱することにより留去し、有機溶剤を含有しないオルガノポリシロキサン混合物とすることが好ましい。
この場合、減圧条件としては、0.01~50mmHg、特に0.1~30mmHgが好ましく、また、加熱条件としては、50~160℃で30分~5時間、特に60~150℃で30分~3時間とすることが好ましい。
なお、溶剤として用いる低粘度のオルガノポリシロキサンは、上記オルガノポリシロキサン混合物中10~99質量%、特に20~95質量%の範囲であることが好ましい。
【0054】
(E)成分の具体的な構造例としては、下記のものを挙げることができるが、本発明はこれらの構造に限定されるものではない。
MVi
2D100とM2D97DH
3をVi/Hが1.05となる割合で混合後、白金系触媒などの付加反応触媒にて加熱反応させた架橋物。
MVi
3D100T1とMH
2D100をVi/Hが1.05となる割合で混合後、白金系触媒などの付加反応触媒にて加熱反応させた架橋物。
MVi
2D97DVi
1とMH
2M4D100Q2をVi/Hが1.05となる割合で混合後、白金系触媒などの付加反応触媒にて加熱反応させた架橋物。
MVi
3M3D300Q3とMH
2D100をVi/Hが1.05となる割合で混合後、白金系触媒などの付加反応触媒にて加熱反応させた架橋物。
【0055】
また、架橋構造を有しかつ流動性を有するオルガノポリシロキサンとしては、水酸基含有オルガノポリシロキサンと、アルコキシシラン、アルコキシ基含有オルガノポリシロキサンやメチルハイドロジェンオルガノポリシロキサンとの縮合反応物も使用可能であり、この場合、縮合反応物は、T単位(RSiO3/2単位(Rは上記と同じである。))を含むことが好ましい。
具体的な構造例としては、下記のもの等を挙げることができる。なお、ここで挙げるMOHは(HO)RSiO1/2、MOCH3は(CH3O)R2SiO1/2であり、Rは上記と同じである。
MOH
2D100とCH3Si(OCH3)3又はその部分加水分解縮合物がOH/OCH3=1.05となる割合で混合後、有機スズ触媒などの縮合反応触媒にて加熱縮合させた架橋物。
MOH
2D100とMOCH3
3D100T1をOH/OCH3が1.05となる割合で混合後、有機スズ触媒にて加熱反応させた架橋物。
【0056】
(E)成分の架橋構造を有しかつ流動性を有するオルガノポリシロキサンの添加量は、(A)成分100質量部に対して0.1~10質量部であり、0.1~5質量部であることが好ましく、0.1~3質量部であることがより好ましい。配合量が少なすぎると剥離力が高くなる場合があり、多すぎるとシリコーン剥離剤組成物の硬化性が低下する場合がある。
【0057】
[任意成分]
本発明の無溶剤型シリコーン剥離剤組成物は、上記(A)~(E)成分の所定量を配合することによって得られるが、その他の成分を必要に応じて本発明の目的、効果を損なわない範囲で添加することができる。シリコーン剥離剤組成物に通常使用されるものとして公知のものを通常の配合量で添加することができる。しかし、本発明の無溶剤型シリコーン剥離剤組成物は環境に対する安全性を考え無溶剤で使われるものであるが、有機溶剤に希釈した場合もその特性は低下するものではない。
【0058】
任意的添加成分としては、例えば、滑り性を与える目的で下記(F)高分子量直鎖型オルガノポリシロキサン、剥離力を調節する目的でアリール基を有するシリコーン樹脂、シリコーンレジン、シリカ、ケイ素原子に結合した水素原子もアルケニル基も有さない低分子量のオルガノポリシロキサンなどを、必要に応じて添加することができる。なお、任意成分の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【0059】
<(F)高分子量直鎖型オルガノポリシロキサン>
(F)高分子量直鎖型オルガノポリシロキサンは、下記一般式(5)で表されるものであることが好ましい。この(F)成分を配合することにより、程よい架橋密度の皮膜中に(F)成分が絡み合うことで、移行成分は少ないが低い摩擦係数を示す表面を形成することができる。
M1
2DΨ (5)
(式中、M1はR1
3SiO1/2、DはR2SiO2/2であり、Rは上記と同じであり、R1は脂肪族不飽和結合を有さない炭素原子数1~12の非置換又は置換の一価炭化水素基又は水酸基である。Ψは300以上3,000以下の正数である。)
【0060】
上記式(5)において、Rは上記式(1)のRと同様のものが例示でき、これらの中でも炭素原子数1~8のアルキル基が好ましい。また、R1は脂肪族不飽和結合を有さない炭素原子数1~12の非置換又は置換の一価炭化水素基又は水酸基であり、脂肪族不飽和結合を含有しない炭素原子数1~12の非置換又は置換の一価炭化水素基としては上記式(1)のRと同様のものが例示でき、R1としては炭素原子数1~8のアルキル基又は水酸基が好ましい。
【0061】
Ψは300以上3,000以下の正数、好ましくは500以上2,500以下の正数である。Ψが300未満であると分子量が小さいため移行成分になりやすく、残留接着率が悪く(低く)なり、剥離紙や剥離フィルム等の剥離シートから剥がしたシールの粘着力が低下してしまう場合がある。逆にΨが3,000を超えると高粘度のため、上述した(A)、(B)、(D)、(E)成分との溶解に時間がかかる上、混合した最終組成物の粘度が高くなりすぎ、塗工量が場所によりばらつき、また高速で塗工した際に大量のミストが発生する場合がある。
【0062】
(F)成分の具体的な構造としては、M1
2D300、M1
2D500、M1
2D1000、M1
2D2000、M1
2D3000等を挙げることができる。
【0063】
(F)成分を配合する場合の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.1~10質量部が好ましく、0.5~5質量部がより好ましい。
【0064】
[調製]
本発明の無溶剤型シリコーン剥離剤組成物の調製は、上述した(A)、(B)、(D)、(E)成分及び任意成分を予め均一に混合した後、(C)成分を添加することが好ましい。各成分は、単一種類で使用しても二種以上を併用してもよい。
【0065】
得られた無溶剤型シリコーン剥離剤組成物の25℃における動粘度は、500mm2/s以下であることが好ましく、80~450mm2/sであることがより好ましく、100~450mm2/sであることがさらに好ましい。動粘度が低すぎると塗工量が少なくなる場合があり、高すぎると塗工量にばらつきが生じたり、大量のミストが発生する場合がある。
【0066】
[用途・使用方法]
このようにして調製された本発明の無溶剤型シリコーン剥離剤組成物は、例えば、紙、プラスチックフィルムなどのシート状基材に塗工ロール等により塗布した後、常法によって加熱硬化される。こうしてシート状基材の片面に本発明の無溶剤型シリコーン剥離剤組成物のシリコーン硬化皮膜が形成されたものは、剥離シートなどとして好適に使用される。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチックのフィルムが挙げられる。
なお、無溶剤型シリコーン剥離剤組成物を、塗工ロールを用いて塗布する場合、周速250m/min以上、特には300~700m/minの速度においても、ミストの発生量を少なく抑えることができる。
【0067】
本発明の無溶剤型シリコーン剥離剤組成物は、上述したシート状基材表面に均一に塗工後、加熱硬化する。ここで、無溶剤型シリコーン剥離剤組成物の塗布量は、シート状基材表面にシリコーン硬化皮膜を形成するのに十分な量であればよく、例えば0.1~5.0g/m2程度である。多すぎる量の塗布は逆に剥離性能の低下を招く場合がある。加熱硬化時の温度は、基材の種類や塗工量によって異なるが、100℃で60秒から200℃で2秒程度の範囲で適宜使用すればよい。
【0068】
上記のようにして作製した剥離紙は、染色液ブリリアントグリーン5質量%水溶液の水面に該剥離紙を浮かせるようにしてシリコーン硬化皮膜面を1分間浸け、シリコーン硬化皮膜面を水洗いした後、染色液に浸けたシリコーン硬化皮膜面の反対面への染料の抜けがないものであることが好ましい。
また、上記のようにして作製した剥離紙は、蛍光X線により測定される塗工量(シリコーン硬化皮膜量)の最大値と最小値の差が0.1g/m2以下、特には0.01~0.09g/m2であることが好ましい。
【実施例】
【0069】
以下、合成例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記に挙げる動粘度はいずれも25℃においてオストワルド型粘度計を用いて測定した値であり、絶対粘度はいずれも回転粘度計により測定した値である。
また、シリコーン剥離剤組成物の剥離力、残留接着率、ミスト発生量、塗工性、塗工量のばらつきは下記の方法により測定した。いずれのシリコーン剥離剤組成物も硬化性は問題ない状態であった。
【0070】
〔剥離力〕
シリコーン剥離剤組成物をミスチングテスター(株式会社東洋精機製作所製、Misting Tester)の3本ロールの1番上のゴムロールに塗布し、ロールの周速330m/minで10秒間回転させて高速塗工した後停止させ、直に1番上のゴムロールと真ん中の金属ロールの間にグラシン紙を挟み、低速で回転させてゴムロールからグラシン紙へシリコーン剥離剤組成物を転写した。グラシン紙上のシリコーン剥離剤組成物塗工量は1.2g/m2であった。シリコーン剥離剤組成物を転写したグラシン紙は140℃の熱風式乾燥機中で30秒間加熱して塗工量1.2g/m2のシリコーン硬化皮膜を形成した剥離紙を得た。この状態で、25℃で1日間エージング後、この剥離紙のシリコーン硬化皮膜表面(ゴムロールからの転写面側)に、粘着剤としてBPW-6111A(東洋インキ株式会社製、エマルジョン型アクリル系粘着剤)を塗布し、100℃×180秒で乾燥した後、該粘着剤表面に上質紙を貼り合わせ、5cm×18cmの大きさに切断し、2kgのローラーを往復させて圧着して試験片を作製した。これを25℃で20~24時間エージング後、該試験片の一端を剥がし、該粘着剤付き上質紙端部を基材であるグラシン紙に対して180度の角度の方向に剥離速度0.3m/minで引張り、その際に剥離するのに要する力(即ち、「剥離力」)(N/50mm)を、引張試験機(株式会社島津製作所製、AGS-50G型)を用いて測定した。
【0071】
〔残留接着率〕
剥離力の試験と同じ方法でグラシン紙の表面に塗工量1.2g/m2のシリコーン硬化皮膜を形成した離型紙(剥離紙)を作り、25℃条件下1日エージング後に、この剥離紙のシリコーン硬化皮膜表面に、日東電工株式会社製No.31Bポリエステル粘着テープ(以下31Bテープと表記する)を貼り、70℃乾燥機中20g/cm2圧で20時間圧着した。その後、31Bテープを剥がし、この31BテープをSUS304板に貼り付け、2kgのローラーを往復させて荷重を加えた。30分放置後、31Bテープの一端を剥がし、その端部をSUS304板に対して180度の角度の方向に引張り、剥離速度0.3m/minで剥がした。その際に剥離するのに要する力:剥離力A(N/25mm)を測定した。
またブランクとして、テフロン(登録商標)板に31Bテープを貼り、上記と同様に70℃乾燥機中20g/cm2圧で20時間圧着した後、31Bテープを剥がし、この31BテープをSUS304板に貼り付け、2kgのローラーを往復させて荷重を加えた。30分放置後、31Bテープの一端を剥がし、その端部をSUS304板に対して180度の角度の方向に引張り、剥離速度0.3m/minで剥がした。その際に剥離するのに要する力:剥離力B(N/25mm)を測定した。
そして、残留接着率(%)を、(A/B)×100で求めた。
【0072】
〔ミスト発生量〕
シリコーン剥離剤組成物1.6gをミスチングテスター(株式会社東洋精機製作所製)の最上部のローラー上に塗布し、1,400rpm(330m/min)で3つのローラーを回転させ、発生するミスト量をTSI Incorporated製Dust Trak Aerosol Monitor Model 8520にて測定した。最上部のローラーから真上15cmのところに内径7mmのビニールチューブ口を設置し、ビニールチューブのもう一方の口はDust Trakの吸気部位に連結させた。ミスト量の測定は60秒間行い、最高値を記録した。
【0073】
〔塗工性〕
表面の凹凸の有無を確認するために、剥離力の試験と同じ方法でグラシン紙の表面に塗工量1.2g/m2のシリコーン硬化皮膜を形成した剥離紙を作製した。ゴムロールからグラシン紙へシリコーン転写した面(シリコーン硬化皮膜面)を染料であるブリリアントグリーン(C27H34O4S)の5質量%水溶液の水面に浮かせるように置き、1分間片方の面(シリコーン硬化皮膜面)だけを浸けた後、染色液に浸けた面の水洗いを行い、裏面への染料の抜けの程度により下記の基準で塗工性を評価した。シリコーン硬化皮膜が薄い箇所があると欠損ができやすく、欠損があれば染料の抜けが確認できる。
○;染料の抜けなし
×;染料の抜けあり
【0074】
〔塗工量のばらつき〕
蛍光X線分析装置ZSX PrimusII(株式会社リガク製)を用いて、シリコーン剥離剤組成物を塗工したサンプルのSi元素含有量を定量した。塗工面の10箇所を測定し、最大値と最小値の差を求めた。
【0075】
[実施例1]
(A)成分としてメチルビニルポリシロキサン(1)100質量部、(B)成分としてメチルハイドロジェンポリシロキサン(6)1.77質量部、(D)付加反応制御剤成分として1-エチニル-1-シクロヘキサノール0.27質量部及び1,1-ジメチルプロピニルオキシトリメチルシラン0.19質量部、(E)下記合成例1の架橋構造を有しかつ流動性を有するオルガノポリシロキサン(ミスト防止剤1)2質量部を加え、均一となるまで攪拌した後、(C)付加反応触媒として白金とビニルシロキサンとの錯体を(A)、(B)、(D)及び(E)成分の合計質量に対して白金原子質量換算で100ppmになるように加え、均一となるまで攪拌し、動粘度403mm2/s、H/Vi(組成物中のアルケニル基に対する組成物中のSiH基の割合)=1.67のシリコーン剥離剤組成物を調製した。
【0076】
[実施例2]
(A)成分としてメチルビニルポリシロキサン(2)100質量部、(B)成分としてメチルハイドロジェンポリシロキサン(6)3.09質量部、(D)付加反応制御剤成分として1-エチニル-1-シクロヘキサノール0.30質量部、(E)下記合成例1の架橋構造を有しかつ流動性を有するオルガノポリシロキサン(ミスト防止剤1)2質量部、(F)成分として高分子量直鎖状オルガノポリシロキサン(8)1.5質量部を加え、均一となるまで攪拌した後、(C)付加反応触媒として白金とビニルシロキサンとの錯体を(A)、(B)、(D)、(E)及び(F)成分の合計質量に対して白金原子質量換算で100ppmになるように加え、均一となるまで攪拌し、動粘度117mm2/s、H/Vi=1.70のシリコーン剥離剤組成物を調製した。
【0077】
[実施例3]
(A)成分としてメチルビニルポリシロキサン(3)100質量部、(B)成分としてメチルハイドロジェンポリシロキサン(6)4.48質量部及びメチルハイドロジェンポリシロキサン(7)1.24質量部、(D)付加反応制御剤成分として1-エチニル-1-シクロヘキサノール0.25質量部及び1,1-ジメチルプロピニルオキシトリメチルシラン0.25質量部、(E)下記合成例1の架橋構造を有しかつ流動性を有するオルガノポリシロキサン(ミスト防止剤1)2質量部、(F)成分として高分子量直鎖状オルガノポリシロキサン(9)3.0質量部を加え、均一となるまで攪拌した後、(C)付加反応触媒として白金とビニルシロキサンとの錯体を上記(A)、(B)、(D)、(E)及び(F)成分の合計質量に対して白金原子質量換算で100ppmになるように加え、均一となるまで攪拌し、動粘度364mm2/s、H/Vi=1.70のシリコーン剥離剤組成物を調製した。
【0078】
[実施例4]
(A)成分としてメチルビニルポリシロキサン(4)100質量部、(B)成分としてメチルハイドロジェンポリシロキサン(6)2.23質量部、(D)付加反応制御剤成分として1-エチニル-1-シクロヘキサノール0.27質量部及び1,1-ジメチルプロピニルオキシトリメチルシラン0.19質量部、(E)下記合成例1の架橋構造を有しかつ流動性を有するオルガノポリシロキサン(ミスト防止剤1)2質量部を加え、均一となるまで攪拌した後、(C)付加反応触媒として白金とビニルシロキサンとの錯体を上記(A)、(B)、(D)及び(E)成分の合計質量に対して白金原子質量換算で100ppmになるように加え、均一となるまで攪拌し、動粘度267mm2/s、H/Vi=1.80のシリコーン剥離剤組成物を調製した。
【0079】
[実施例5]
(A)成分としてメチルビニルポリシロキサン(1)100質量部、(B)成分としてメチルハイドロジェンポリシロキサン(6)1.77質量部、(D)付加反応制御剤成分として1-エチニル-1-シクロヘキサノール0.27質量部及び1,1-ジメチルプロピニルオキシトリメチルシラン0.19質量部、(E)下記合成例2の架橋構造を有しかつ流動性を有するオルガノポリシロキサン(ミスト防止剤2)2質量部を加え、均一となるまで攪拌した後、(C)付加反応触媒として白金とビニルシロキサンとの錯体を上記(A)、(B)、(D)及び(E)成分の合計質量に対して白金原子質量換算で100ppmになるように加え、均一となるまで攪拌し、動粘度406mm2/s、H/Vi=1.67のシリコーン剥離剤組成物を調製した。
【0080】
[比較例1]
(A)成分としてメチルビニルポリシロキサン(1)100質量部、(B)成分としてメチルハイドロジェンポリシロキサン(6)1.77質量部、(D)付加反応制御剤成分として1-エチニル-1-シクロヘキサノール0.27質量部及び1,1-ジメチルプロピニルオキシトリメチルシラン0.19質量部を加え、均一となるまで攪拌した後、(C)付加反応触媒として白金とビニルシロキサンとの錯体を(A)、(B)及び(D)成分の合計質量に対して白金原子質量換算で100ppmになるように加え、均一となるまで攪拌し、動粘度405mm2/s、H/Vi=1.67のシリコーン剥離剤組成物を調製した。
【0081】
[比較例2]
(A)成分としてメチルビニルポリシロキサン(2)100質量部、(B)成分としてメチルハイドロジェンポリシロキサン(6)3.09質量部、(D)付加反応制御剤成分として1-エチニル-1-シクロヘキサノール0.3質量部、(F)成分として高分子量直鎖状オルガノポリシロキサン(8)1.5質量部を加え、均一となるまで攪拌した後、(C)付加反応触媒として白金とビニルシロキサンとの錯体を(A)、(B)、(D)及び(F)成分の合計質量に対して白金原子質量換算で100ppmになるように加え、均一となるまで攪拌し、動粘度120mm2/s、H/Vi=1.70のシリコーン剥離剤組成物を調製した。
【0082】
[比較例3]
(A)成分としてメチルビニルポリシロキサン(3)100質量部、(B)成分としてメチルハイドロジェンポリシロキサン(6)4.48質量部及びメチルハイドロジェンポリシロキサン(7)1.24質量部、(D)付加反応制御剤成分として1-エチニル-1-シクロヘキサノール0.25質量部及び1,1-ジメチルプロピニルオキシトリメチルシラン0.25質量部、(F)成分として高分子量直鎖状オルガノポリシロキサン(9)3.0質量部を加え、均一となるまで攪拌した後、(C)付加反応触媒として白金とビニルシロキサンとの錯体を上記(A)、(B)、(D)及び(F)成分の合計質量に対して白金原子質量換算で100ppmになるように加え、均一となるまで攪拌し、動粘度368mm2/s、H/Vi=1.70のシリコーン剥離剤組成物を調製した。
【0083】
[比較例4]
(A)成分としてメチルビニルポリシロキサン(5)100質量部、(B)成分としてメチルハイドロジェンポリシロキサン(6)1.70質量部、(D)付加反応制御剤成分として1-エチニル-1-シクロヘキサノール0.3質量部、(E)下記合成例1の架橋構造を有しかつ流動性を有するオルガノポリシロキサン(ミスト防止剤1)2質量部、(F)成分として高分子量直鎖状オルガノポリシロキサン(8)1.5質量部を加え、均一となるまで攪拌した後、(C)付加反応触媒として白金とビニルシロキサンとの錯体を上記(A)、(B)、(D)、(E)及び(F)成分の合計質量に対して白金原子質量換算で100ppmになるように加え、均一となるまで攪拌し、動粘度685mm2/s、H/Vi=1.88のシリコーン剥離剤組成物を調製した。
【0084】
-使用原料の説明-
メチルビニルポリシロキサン(1)
分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖され両末端以外は全て(CH3)2SiO単位からなるビニル価が0.017mol/100g、動粘度440mm2/sのポリシロキサン
{(CH2=CH)(CH3)2SiO1/2}2{(CH3)2SiO}155
【0085】
メチルビニルポリシロキサン(2)
分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖され両末端以外は全て(CH3)2SiO単位からなるビニル価が0.029mol/100g、動粘度120mm2/sのポリシロキサン
{(CH2=CH)(CH3)2SiO1/2}2{(CH3)2SiO}90
【0086】
メチルビニルポリシロキサン(3)
分子鎖末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、シロキサン鎖が(CH3)(CH2=CH)SiO単位と(CH3)2SiO単位から構成されビニル価が0.05mol/100g、動粘度260mm2/sのポリシロキサン
{(CH3)3SiO1/2}2{(CH3)2SiO}100{(CH2=CH)(CH3)SiO}4
【0087】
メチルビニルポリシロキサン(4)
3つの分子鎖末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されビニル価が0.0198mol/100g、動粘度290mm2/sの分岐型ポリシロキサン
{(CH2=CH)(CH3)2SiO1/2}3{(CH3)2SiO}200{(CH3)SiO3/2}1
【0088】
メチルビニルポリシロキサン(5)
分子鎖末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されビニル価が0.0145mol/100g、動粘度600mm2/sのポリシロキサン
{(CH2=CH)(CH3)2SiO1/2}2{(CH3)2SiO}184
【0089】
メチルハイドロジェンポリシロキサン(6)
分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、両末端以外は全て(CH3)HSiO単位からなるSiH基含有量が1.60mol/100gで動粘度が35mm2/sであるメチルハイドロジェンポリシロキサン
{(CH3)3SiO1/2}2{(CH3)(H)SiO}70
【0090】
メチルハイドロジェンポリシロキサン(7)
分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、シロキサン鎖は(CH3)HSiO単位と(CH3)2SiO単位から構成され、(CH3)HSiO単位が(CH3)2SiO単位の2.5倍であり、SiH基含有量が1.08mol/100gで動粘度が35mm2/sであるメチルハイドロジェンポリシロキサン
{(CH3)3SiO1/2}2{(CH3)2SiO}20{(CH3)(H)SiO}50
【0091】
[合成例1]
架橋構造を有しかつ流動性を有するオルガノポリシロキサン(ミスト防止剤1)の合成
{(CH3)3SiO1/2}2{(CH3)2SiO}24.6{(CH3)HSiO}2で表される側鎖型メチルハイドロジェンポリシロキサン10gと、{(CH2=CH)(CH3)2SiO1/2}2.4{(CH3)2SiO}147.7{(CH3)SiO3/2}0.4で表される分岐状ビニルメチルポリシロキサン48g(SiH基:ビニル基=1モル:1.083モル)をトルエン812g(側鎖型メチルハイドロジェンポリシロキサンと分岐状ビニルメチルポリシロキサン総質量の14倍に相当)中で混合した後、ビニルメチルポリシロキサンを配位した白金系触媒を白金質量として反応系総質量に対して2ppm添加し昇温した。温度80℃で5時間反応させ、該反応物は、絶対粘度が4.0mPa・sのトルエン溶解物であり、トルエンを除いた反応物の絶対粘度は15,900mPa・sであった。また1H-NMRより計算されるシロキサン単位1,000molあたりのシルエチレン結合は11.1molであった。反応物に{(CH3)3SiO1/2}2{(CH3)2SiO}27で表されるジメチルポリシロキサンを696g加え、150℃で3時間、窒素バブリング下、10mmHg以下の条件で減圧留去を行いシロキサン100質量%中、ジメチルポリシロキサン92.3質量%、反応物(架橋構造を有しかつ流動性を有するオルガノポリシロキサン)7.7質量%、動粘度43mm2/sのシロキサン混合物とした。
【0092】
[合成例2]
架橋構造を有しかつ流動性を有するオルガノポリシロキサン(ミスト防止剤2)の合成
{(HO)(CH3)2SiO1/2}2{(CH3)2SiO}40で表される両末端にヒドロキシ基を含有するジメチルポリシロキサン16gと、{(CH3O)(CH3)2SiO1/2}2.4{(CH3)2SiO}147.7{(CH3)SiO3/2}0.4で表される分岐状メトキシメチルポリシロキサン44g(SiOH基:SiOCH3=1.08モル:1モル)をトルエン840g(両末端ヒドロキシ基含有ポリシロキサンと分岐状メトキシメチルポリシロキサン総質量の14倍に相当)中で混合した後、ジオクチル錫ジカルボン酸塩(ジオクチル錫ジネオデカノエート)を錫換算量で3質量%をシロキサン総質量に対して添加し昇温した。温度80℃で3時間反応させ、該反応物は、絶対粘度が6.0mPa・sのトルエン溶解物であり、トルエンを除去した反応物の絶対粘度は45,000mPa・sであった。反応物に{(CH3)3SiO1/2}2{(CH3)2SiO}27で表されるジメチルポリシロキサンを720g加え、150℃で3時間、窒素バブリング下、10mmHg以下の条件で減圧留去を行いシロキサン100質量%中、ジメチルポリシロキサン92.3質量%、反応物(架橋構造を有しかつ流動性を有するオルガノポリシロキサン)7.7質量%、動粘度75mm2/sのシロキサン混合物とした。
【0093】
高分子量直鎖状オルガノポリシロキサン(8)
{HO(CH3)2SiO1/2}2{(CH3)2SiO2/2)}1600
【0094】
高分子量直鎖状オルガノポリシロキサン(9)
{HO(CH3)2SiO1/2}2{(CH3)2SiO2/2)}2000
【0095】
上記の実施例及び比較例のシリコーン剥離剤組成物について前述の特性評価を行った結果を表1及び表2に示す。
【0096】
【0097】
【0098】
シリコーン剥離剤組成物中に、(E)架橋構造を有しかつ流動性を有するオルガノポリシロキサン(ミスト防止剤)を添加したシリコーン剥離剤組成物(実施例1~5)は、動粘度が406mm2/s以下であり、最大ミスト発生量が40~67mg/m3と低い。このため、実施例1~5において、塗工性は染色液の裏抜けが見られず、また塗工量のばらつきも0.09g/m2以下と小さなレベルである。
これに対し、ミスト防止剤を添加しないシリコーン剥離剤組成物(比較例1~3)は、最大ミスト発生量が103~152mg/m3と多い。これら比較例1~3のシリコーン剥離剤組成物を用いた剥離紙の表面は染色液の裏抜けが見られ、塗工量のばらつきも0.15g/m2以上になっており、表面が荒れていることが分かる。
また、ベースオイルの動粘度が600mm2/sと高いシリコーン剥離剤組成物(比較例4)は、ミスト防止剤を配合しても最大ミスト発生量は83mg/m3と多く、染色液の裏抜けは見られないが、塗工量のばらつきは0.13g/m2と大きくなっている。