(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】三次元造形物製造装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/393 20170101AFI20220712BHJP
B29C 64/20 20170101ALI20220712BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20220712BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20220712BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C64/20
B33Y30/00
B33Y50/02
(21)【出願番号】P 2020051603
(22)【出願日】2020-03-23
(62)【分割の表示】P 2017504539の分割
【原出願日】2015-03-12
【審査請求日】2020-04-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【氏名又は名称】江上 達夫
(72)【発明者】
【氏名】圓谷 寛夫
(72)【発明者】
【氏名】中島 正夫
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-060063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/10,64/20,64/393
B33Y 10/00,30/00,50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給した金属粉末材料へエネルギー線を照射して固化処理することにより三次元造形物を造形する三次元造形物製造装置に備えられる検査装置であって、
固化処理された三次元造形物の内部の空孔の有無を示す内部データを造形途中に取得する検査部を備え
、
前記検査部は、前記造形途中の三次元造形物に向けて前記造形途中の三次元造形物の少なくとも一部を透過する光を照射する照射部と、前記造形途中の三次元造形物の少なくとも一部を透過した光を検出する検出部とを含む、検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検査装置において、
前記照射部が照射する前記透過する光はX線である、検査装置。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の検査装置において、
前記内部データは、前記空孔の形状と、前記空孔の大きさと、前記空孔の個数と、前記空孔の位置との少なくとも一つを示すデータである、検査装置。
【請求項4】
請求項1から
3までのいずれか一項に記載の検査装置において、
前記三次元造形物製造装置は、前記検査部で取得した前記内部データに基づいて、前記固化処理する際の固化処理条件を変更する、検査装置。
【請求項5】
請求項
4に記載の検査装置において、
前記固化処理条件は、前記三次元造形物製造装置によって照射される前記エネルギー線の走査経路と、前記エネルギー線の走査速度と、前記エネルギー線の強度との少なくともいずれかを含む、検査装置。
【請求項6】
請求項1から
5までのいずれか一項に記載の検査装置において、
前記三次元造形物製造装置は、前記検査部で取得した前記内部データに基づいて、前記金属粉末材料を供給する条件を変更する、検査装置。
【請求項7】
請求項
6に記載の検査装置において、
前記供給する条件は、前記金属粉末材料の供給量と、供給する前記金属粉末材料の種類との少なくともいずれかを含む、検査装置。
【請求項8】
請求項1から
7までのいずれか一項に記載の検査装置において、
前記三次元造形物製造装置は、前記検査部で取得した前記内部データに基づいて、前記金属粉末材料を供給するか否かを判定する、検査装置。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか一項に記載の検査装置において、
前記三次元造形物製造装置は、前記金属粉末材料から成る層状の材料層に対して前記固化処理することにより層状の固化層を形成し、前記固化層の上部に前記金属粉末材料を供給して形成した次の材料層に対して前記固化処理することで新たな固化層を形成することを繰り返し、複数の固化層が積層された前記三次元造形物を造形する、検査装置。
【請求項10】
請求項
9に記載の検査装置において、
前記検査部は、前記三次元造形物製造装置が前記固化層の上部に次の材料層を形成する前に、固化層からなる造形途中の三次元造形物の内部データを取得する、検査装置。
【請求項11】
請求項
4又は
5に従属する請求項
9に記載の検査装置において、
前記固化処理条件は、前記エネルギー線の照射時の前記材料層の温度を含む、検査装置。
【請求項12】
請求項
6又は
7に従属する請求項
9に記載の検査装置において、
前記供給する条件は、前記材料層の厚さと、前記材料層の温度との少なくとも一つを含む、検査装置。
【請求項13】
請求項
9から
12のいずれか一項に記載の検査装置において、
前記三次元造形物製造装置は、前記検査部によって取得した前記内部データに基づいて、新たな材料層を形成するか、前記三次元造形物の造形を停止するかを判定する、検査装置。
【請求項14】
請求項
9から
13のいずれか一項に記載の検査装置において、
前記三次元造形物製造装置は、前記検査部で取得した前記内部データに基づいて修正加工を行う、検査装置。
【請求項15】
請求項1から
14のいずれか一項に記載の検査装置において、
前記検査部で取得した前記内部データに基づいて、前記空孔を検出する解析部を備える、検査装置。
【請求項16】
請求項
15に記載の検査装置において、
前記解析部は、前記検査部で取得した前記内部データに基づいて、前記空孔の形状と、前記空孔の大きさと、前記空孔の個数と、前記空孔の位置の少なくとも一つを検出する、検査装置。
【請求項17】
請求項
15又は
16に記載の検査装置において、
前記解析部は、前記固化層の内部の前記空孔を検出する、検査装置。
【請求項18】
請求項
15から
17のいずれか一項に記載の検査装置において、
前記解析部は、固化処理済みの前記固化層間の前記空孔を検出する、検査装置。
【請求項19】
供給した金属粉末材料へエネルギー線を照射して固化処理することにより三次元造形物を造形する三次元造形物製造装置であって、
請求項1から
18のいずれか一項に記載の検査装置を備える三次元造形物製造装置。
【請求項20】
請求項
19に記載の三次元造形物製造装置において、
前記三次元造形物製造装置は、前記前記検査部で取得した前記内部データに基づいて、前記固化処理する際の固化処理条件を変更する、三次元造形物製造装置。
【請求項21】
請求項
19又は
20に記載の三次元造形物製造装置において、
前記固化処理条件は、前記三次元造形物製造装置によって照射される前記エネルギー線の走査経路と、前記エネルギー線の走査速度と、前記エネルギー線の強度との少なくともいずれかを含む、三次元造形物製造装置。
【請求項22】
請求項
19から
21のいずれか一項に記載の三次元造形物製造装置において、
前記三次元造形物製造装置は、前記検査部で取得した前記内部データに基づいて、前記金属粉末材料を供給する条件を変更する、三次元造形物製造装置。
【請求項23】
請求項
22に記載の三次元造形物製造装置において、
前記供給する条件は、前記金属粉末材料の供給量と、供給する前記金属粉末材料の種類との少なくともいずれかを含む、三次元造形物製造装置。
【請求項24】
請求項
19から
23のいずれか一項に記載の三次元造形物製造装置において、
前記三次元造形物製造装置は、前記検査部で取得した前記内部データに基づいて、前記金属粉末材料を供給するか否かを判定する、三次元造形物製造装置。
【請求項25】
請求項
19から
24のいずれか一項に記載の三次元造形物製造装置において、
前記三次元造形物製造装置は、前記金属粉末材料から成る層状の材料層に対して前記固化処理することにより層状の固化層を形成し、前記固化層の上部に前記金属粉末材料を供給して形成した次の材料層に対して前記固化処理することで新たな固化層を形成することを繰り返し、複数の固化層が積層された前記三次元造形物を造形する、三次元造形物製造装置。
【請求項26】
請求項
25に記載の三次元造形物製造装置において、
前記検査部は、前記三次元造形物製造装置が前記固化層の上部に次の材料層を形成する前に、固化層からなる造形途中の三次元造形物の内部データを取得する、三次元造形物製造装置。
【請求項27】
請求項
20又は
21に従属する請求項
25に記載の三次元造形物製造装置において、
前記固化処理条件は、前記エネルギー線の照射時の前記材料層の温度を含む、三次元造形物製造装置。
【請求項28】
請求項
22又は
23に従属する請求項
25に記載の三次元造形物製造装置において、
前記供給する条件は、前記材料層の厚さと、前記材料層の温度との少なくとも一つを含む、三次元造形物製造装置。
【請求項29】
請求項
25から
28のいずれか一項に記載の三次元造形物製造装置において、
前記三次元造形物製造装置は、前記検査部によって取得した前記内部データに基づいて、新たな材料層を形成するか、前記三次元造形物の造形を停止するかを判定する、三次元造形物製造装置。
【請求項30】
請求項
25から
29のいずれか一項に記載の三次元造形物製造装置において、
前記三次元造形物製造装置は、前記検査部で取得した前記内部データに基づいて修正加工を行う、三次元造形物製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元造形物製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の形成層を順次積層させて三次元状の造形物を製造する三次元造形装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、造形物の製造が完了した後に製造状態の検査を行うため、製造中の形成層に発生した重大な欠陥等を製造過程で検出することができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によると、三次元造形物製造装置は、造形される三次元造形物の形状に応じて設定された領域に位置する材料に対して固化処理を施すことにより層状の固化層を形成し、前記形成した固化層の上部に新たに材料を供給して、当該新たな材料に対して前記固化処理を施すことで新たな固化層を形成することを繰り返し、複数の固化層が積層された三次元造形物を造形する造形部と、前記三次元造形物の造形途中に、固化層からなる三次元造形物の内部を検査する検査部と、を備え、前記三次元造形物の内部は、前記固化処理された材料で覆われた部分である三次元造形物製造装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、製造過程の段階において欠陥等を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施の形態による三次元形状造形物製造装置の斜視図である。
【
図2】第1の実施の形態による三次元形状造形物製造装置の構造を模式的に示すブロック図である。
【
図3】照射部が材料層にレーザを照射する際の走査経路を説明する図である。
【
図4】欠陥孔と粉末材料との関係を説明する模式図である。
【
図5】第1の実施の形態の三次元形状造形物製造装置の動作を説明するフローチャートである。
【
図6】変形例による三次元形状造形物製造装置の斜視図である。
【
図7】第2の実施の形態による構造物製造システムの構成を示すブロック図である。
【
図8】第2の実施の形態による構造物製造システムの動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
-第1の実施の形態-
図面を参照しながら、実施の形態による三次元形状造形物製造装置について説明する。以下の説明では、公知の粉末焼結積層法を用いて三次元形状の造形物を製造する三次元形状造形物製造装置を例に挙げるが、これに限定されるものではなく、熱融解積層法(FDM:Fused Deposition Modeling)や、光造形法や、インクジェット法や、石膏パウダー積層法等を用いても良い。
図1は、三次元形状造形物製造装置(以下、製造装置)1の斜視図、
図2は製造装置1の構造を模式的に示すブロック図である。なお、理解を容易にすることを目的として、
図1、
図2に示すように、X軸、Y軸、Z軸からなる直交座標系を用いて以下の説明を行う。製造装置1は、造形部10と、検査部16と、制御装置17とを備える。造形部10は、材料供給槽11と、リコーター12と、昇降ステージ13と、照射部14と、切削部15とにより構成される。
【0009】
材料供給槽11は、三次元造形物の造形材料である粉末材料を収容するための収容容器であり、その底面111は駆動機構(不図示)によって上下方向(Z軸方向)に沿って移動する。粉末材料は、例えば、金属粉末や樹脂粉末や金属粒子に樹脂バインダをコートした粉末等を用いることができる。金属粉末としては、鉄系粉末を主成分とした粉末や、鉄系粉末に、ニッケル粉末、ニッケル系合金粉末、銅粉末、銅系合金粉末および黒鉛粉末等の少なくとも1種類以上を更に含む粉末でも良い。例えば、平均粒径20μm程度の鉄系粉末の配合量が60~90重量%、ニッケル粉末およびニッケル系合金粉末の両方又は一方の配合量が5~35重量%、銅粉末および銅系合金粉末の両方又は一方の配合量が5~15重量%、ならびに、黒鉛粉末の配合量が0.2~0.8重量%とした粉末が挙げられる。樹脂粉末としては、例えば、平均粒径30μm~100μm程度のナイロン、ポリプロピレン、ABS等の粉末を用いることができる。金属粒子に樹脂バインダをコートした粉末として、例えば金属粒子の表面をフェノール樹脂でコーティングしたものや、ナイロンでコーティングしたものを用いることができる。
なお、造形材料として粉末材料を用いるものに限定されず、例えば、UV硬化樹脂や熱硬化樹脂等を用いても良い。
【0010】
リコーター12は、材料供給槽11に収容された粉末材料を造形槽131に、表面を平らにしながら、所定の厚さΔdの層(以後、材料層と呼ぶ)が形成されるように供給する。造形槽131は、材料層の形成と、形成された材料層を固化させた固化層の形成とを繰り返し、複数の固化層を積層することによって三次元状の造形物を造形するための造形処理用の作業容器である。造形槽131の底面は昇降ステージ13により構成される。昇降ステージ13は、後述する制御装置17の制御に従って、駆動機構(不図示)により上下方向(Z軸方向)に移動する。詳細を後述するように、昇降ステージ13上に供給された粉末材料から固化層が形成されると、昇降ステージ13は下方向(Z軸+方向)に移動し、次いで、固化層の上部表面(Z軸-側)に新たに材料層が形成される。この新たな材料層が固化されて固化層が形成される。この工程を繰り返すことによって複数の固化層が積層されて、三次元状の造形物が造形される。
【0011】
照射部14は、レーザ発振器141から出射したレーザビームを、ガルバノミラー142にて材料層の表面上をスキャンしながら照射して、粉末材料を溶融させ固化させる。粉末材料が固化することによって、材料層から固化層が形成される。即ち、照射部14は材料層に対して固化処理を行う。レーザ発振器141としては、例えば炭酸ガスレーザや、Nd:YAGレーザや、ファイバレーザ等が使用可能であり、このレーザ発振器141から、赤外線、可視光線、紫外線等を出射する。
なお、照射部14は、電子線を材料層の表面上にスキャンしながら照射しても良い。
【0012】
切削部15は、ミーリングヘッド等により構成され、制御装置17の制御に従って、駆動機構151、152により、固化層の表面に沿った面上を二次元的に移動する。また、切削部15は垂直移動機構153の駆動機構によりZ軸方向に沿って移動する。即ち、切削部15は、三次元的に移動可能に構成される。駆動機構151は、Y軸方向に沿って延在するガイドレールと、モータ等とにより構成される。切削部15はこのガイドレールに対して移動可能に配置され、モータの駆動力によってガイドレールに沿ってY軸方向に移動する。駆動機構152は、駆動機構151のガイドレールのY軸+側に設けられ、X軸方向に沿って延在するガイドレールと、駆動機構151のガイドレールのY軸-側に設けられ、X軸方向に沿って延在するガイドレールと、モータ等とにより構成される。駆動機構151のガイドレールは、駆動機構152の2つのガイドレールに沿ってX軸方向に沿ってモータの駆動力によって移動する。従って、駆動機構151のガイドレールに配置された切削部15は、X軸方向に沿って移動する。
なお、切削部15をXY方向に移動させるために、駆動機構151、152を例に挙げたが、この例に限定されるものではなく、製造装置1は切削部15をXY方向に移動可能なあらゆる機構を備えることができる。
【0013】
検査部16は、3次元形状測定機161と、X線検査装置162とによって構成される。3次元形状測定機161は、切削部15の上部に設けられ、照射部14によるレーザの照射によって形成された固化層の表面形状に関するデータ(輪郭形状データ、表面形状データ)を取得して制御装置17へ出力する。なお、3次元形状測定機161として、レーザスキャナ等の非接触式の測定機や、タッチプローブ等の接触式の測定機を用いることができる。また、3次元形状測定機161に代えて、撮像装置を用いて固化層の輪郭形状データや表面形状データを取得する2次元形状測定装置を採用しても良い。画像測定機としては、テレセントリックな結像光学系を有した撮像装置を備え、固化層の表面形状に高さの高い凹凸構造が現れていても、固化層の輪郭形状が正確に求まるものが好ましい。また、暗視野照明または明視野照明の切り替えが可能なものが好ましく、固化層の表面の凹凸状態について切り替えるようにしても良い。また、偏斜照明も可能な照明装置を合わせて具備するようにしても良い。また、表面形状データについては、撮像装置によって、焦点位置を移動させながら取得された異なる複数の画像の合焦測度に基づいて合焦位置を検出して3次元形状を測定するSFF(Shape Form Focus)法、共焦点顕微鏡を用いたもの、固化層の反射光と基準ミラーからの反射光を干渉させた干渉像により3次元形状を測定するようなものでも良い。さらには、レーザスキャナや格子状などのパターンを投影して形状を測定するパターン投影式の形状測定装置などの三角測量法を基に、3次元形状測定をするようなものでも良い。なお、3次元形状測定機161の非接触式のセンサーやタッチプローブ等は、Y軸ガイド161aやX軸ガイド161bに沿って移動可能であり、Y軸ガイド161aとセンサーまたはタッチプローブ等との間に設けられた不図示のZ軸方向変位機構により任意のZ位置にセンサーやタッチプローブ等を移動することができる。また、Z軸方向変位機構とセンサーまたはタッチプローブ等との間にチルト回転機構を設けて、任意の方向から固化層の形状データを取得するようにしても良い。
【0014】
X線検査装置162は、X線源201と、検出器202とを有する。X線源201は、制御装置17による制御に応じて、出射点を頂点として円錐状に広がるX線(コーンビーム)や扇形状のX線(ファンビーム)を出射する。X線の光軸は、X線源201のX線の出射点と、後述する検出器の202の撮像領域の中心とを結ぶ。X線源201は、たとえば約0.1~20keVの加速電圧で生ずるX線および約20KeV~数MeVのX線の少なくとも1つを出射することができる。
【0015】
検出器202は、XY平面に直交する入射面を有し、X線源201から出射され、昇降ステージ13上に形成された固化層を透過した透過X線が入射面に入射するように配置される。検出器2020は、公知のシンチレーション物質を含むシンチレータ部と、光電子増倍管と、受光部等とによって構成される。検出器202は、シンチレータ部の入射面に入射したX線のエネルギーを可視光や紫外光等の光エネルギーに変換して光電子増倍管で増幅し、当該増幅された光エネルギーを上記の受光部で電気エネルギーに変換し、電気信号として制御装置17へ出力する。検出器202は、シンチレータ部と光電子増倍管と受光部とがそれぞれ複数の画素として分割された構造を有しており、それらの画素は2次元的に配列されている。これにより、X線源201から出射され、固化層を通過したX線の強度分布を一括で取得できる。
【0016】
なお、検出器202は、入射するX線のエネルギーを光エネルギーに変換することなく電気エネルギーに変換し、電気信号として出力してもよい。検出器202は、画素が2次元的に配列されるものに限られない。検出器202は、ラインセンサによって構成されても良い。また、検出器202として、光電子増倍管を設けずに、シンチレータ部が受光部(光電変換部)の上に直接形成された構造であってもよい。
【0017】
X線源201と検出器202とは相対的な位置関係を保持した状態で、造形槽131の外周を、回転機構203によって回転可能に設けられる。この回転機構203の回転中心が昇降ステージ13の載置面の中心位置近傍になるように、回転機構が配置されている。回転機構203は、例えば、回転軸Axを中心とした円環状のガイドレールやモータ等によって構成され、X線源201のX線の出射点と検出器202の入射面とが、互いに回転軸Axを介して対向する位置を保持した状態で、ガイドレールに沿って移動する。即ち、X線源201は、固化層に対して回転しながら固化層に対して全方向からX線を照射し、検出器202は、透過X線を検出して検出データを制御装置17へ出力する。X線検査装置162は、固化層間の境界面における固化の状態、各固化層の内部の組成、結晶構造、応力分布等の固化層の内部データを取得する。即ち、検出器202によって検出された検出データ(投影データ)には上記の内部データが含まれ、制御装置17に出力される。
【0018】
なお、X線検査装置162は、昇降ステージ13上に積層された複数の固化層のうち、最上層(Z軸-側)あるいは最上層の近傍の固化層に対してX線を照射して、製造途中の三次元造形物の内部の投影データが検出可能となるようにZ方向の配置位置が決定される。
また、X線検査装置162は、製造途中の三次元造形物の固化層について、全方向における投影データを取得するものに代えて、例えば、異なる2方向(例えば90°異なる方向)からX線を出射して取得された製造途中の三次元造形物の投影データを制御装置17に出力しても良い。即ち、X線検査装置162によりX線の出射が行われた後、昇降ステージ13に対して90°回転した状態にて、次のX線の出射が行われても良い。
また、X線検査装置162が固化層に対して回転するものに代えて、X線検査装置162に対して固化層が回転しても良い。この場合、例えば昇降ステージ13を回転機構(不図示)によって回転軸Axの回りに回転させることにより、固化層をX線検査装置162に対して相対的に回転させれば良い。
【0019】
制御装置17は、図示しないCPU、ROM、RAMなどを有し、制御プログラムに基づいて、製造装置1の各構成要素を制御したり、各種のデータ処理を実行したりする演算回路である。また、制御装置17で得られた欠陥情報や制御装置17で決定された造形条件情報は、インターフェース181を介してネットワーク182に接続できるようになっている。このネットワーク182を介して、本製造装置1で作成された三次元造形物に対して、後処理を行う処理装置183に、欠陥情報等を送信することができる。さらには、製造物の品質管理として用いられる製造物管理データベース184等にも欠陥情報を送信することができる。このようにすることで、本製造装置1で製造された造形物について、顧客からの要望に対して迅速な対応策を講じることができる。制御プログラムは、制御装置17内の不図示の不揮発性メモリに格納されている。制御装置17は、解析部171と、判定部172と、変更部173とを機能として備える。解析部171は、検査部16による検査結果に基づいて、形成された固化層の形状や表面の凹凸状態、または内部構造等を解析する。判定部172は、解析部171による解析結果に基づいて、次の材料層の形成を続行するか、固化層の修正を行うか、造形のための種々の条件(以下、造形条件と呼ぶ)を変更するか、造形を停止するかを判定する。変更部173は、解析部171による解析結果に基づいて、判定物172により造形条件を変更すると判定された場合に、造形条件を変更し、変更内容に応じて各部に信号を出力する。検査部16による検査結果や、解析部171による解析結果は、制御装置17に設けられた記憶部180に一時的に記憶される。なお、解析部171と、判定部172と、変更部173とについては、詳細を後述する。
【0020】
上記の構成を有する製造装置1の動作について説明する。
まず、材料供給槽11内の粉末材料が造形槽131に供給され、昇降ステージ13上で材料層が形成される(材料層形成工程)。材料層形成工程では、制御装置17による制御に従って、造形槽131の昇降ステージ13が材料層の厚さΔdだけ下方(Z軸+方向)に移動し、材料供給槽11の底面111が所定量だけ上方(Z軸-方向)に移動する。リコーター12は、材料供給槽11の上部を、X軸-側の端部からX軸+方向へ向かって造形槽131の上面をX軸+側の端部近傍まで移動することにより、粉末材料を昇降ステージ13上へと移送させつつ、所定の厚さΔdに均して材料層を形成する。
【0021】
形成された材料層に照射部14からレーザの照射が行われ、材料層の未固化の粉末材料が固化することにより固化層が形成される(レーザ照射工程)。レーザ照射工程においては、上述したように照射部14からのレーザは、材料層の表面上で走査される。レーザが走査される経路(走査経路)は、製造装置1で製造する三次元造形物の設計情報、例えばCADデータやSTL(Stereolithography)データ等の造形物の三次元形状データに基づいて生成された断層モデル情報から設定される。したがって、昇降ステージ13のZ方向の位置に応じて、対応する断層モデルの形状情報を基に、制御装置17は、照射部14によるレーザ照射領域を設定し、レーザ照射領域にある材料層にレーザが照射されるように、レーザの走査経路が設定される。なお、造形過程にある造形物の転倒や破損等を防ぐために造形物に支持するサポート部を形成しながら造形を行う場合には、サポート部の情報も設計情報、即ち断層モデル情報に含まれる。また、断層モデル情報を生成する際には、三次元造形物の設計情報をそのまま用いるのではなく、熱膨張による形状変化も考慮して断層モデル情報を生成することが好ましい。特に、固化層が生成される時点では、レーザ照射により常温時に比べ、固化層が高い温度を帯びている。しかしながら、造形物が使用される環境下の温度と固化層が形成されるときの温度とで大きな違いがある場合には、その温度差による線膨張係数を考慮して、断層モデル情報を生成することが好ましい。
さらに、個々の断層モデル情報に対して、CADデータを基に算出された許容公差情報も設定することが好ましい。この許容公差情報は、例えば、日本国特開2006-59014号公報に記載された要領で、各断層モデル情報に許容公差情報を設定することができる。
【0022】
図3に走査経路の一例を模式的に示す。
図3(a)は、現在の昇降ステージ13のZ位置に対応する三次元造形物の断層モデル情報である。そして、その輪郭を輪郭線L1として模式的に示した。
図3(b)は
図3(a)に示す輪郭線L1に基づいて作成された走査経路Rを示す。制御装置17は、断層モデル情報における輪郭線L1の座標を、材料層におけるXY座標に変換し、材料層の表面上における輪郭線L2を算出する。走査経路Rは、例えば、輪郭線L2に沿ってレーザが走査された後、輪郭線L2の内部の領域を走査するように作成する。
図3(b)では、輪郭線L2のある一点P1から、輪郭線L2上、または輪郭線L2から所定距離だけ外部の位置を輪郭線L2に沿って進み再び点P1に到達する経路R1(
図3(b)では破線で示す)と、点P1から輪郭線L2に囲まれる領域内を進み点P2に到達する経路R2(
図3(b)では破線で示す)とが走査経路Rとして作成された例を示す。このような走査経路Rを用いることにより、材料層のうち三次元造形物の輪郭、すなわち三次元造形物の外表面となる部分が最初にレーザの照射によって固化し、その後、三次元造形物の内部となる部分がレーザの照射によって固化する。この結果、複数の固化層が積層されて構成される三次元造形部のうちの1つの固化層が形成され、既に形成された固化層と接合される。
【0023】
レーザ照射工程により形成された固化層に対して、検査部16により固化の状態が検査される(検査工程)。検査工程においては、上述したように、3次元形状測定機161により固化層の表面形状に関する輪郭形状データや表面形状データが検出され、X線検査装置162により固化層の内部の状態に関する内部データが検出される。制御装置17の解析171は、検査工程により得られた検査結果を用いて固化層の状態を解析し、判定部172は、次の材料層および固化層形成の可否を判定する(判定工程)。即ち、判定部172は、固化層の形状や表面状態、内部構造等の解析の結果に応じて、次の材料層および固化層の形成(次層形成)を行うか、固化層に修正工程を施した後次層形成を行うか、造形条件を変更するか、次層形成を行わない(造形停止)ようにするかを判定する。上記の造形条件とは、材料層に照射するレーザの照射条件、粉末材料の予熱温度、粉末材料の供給等がある。なお、固化層の状態の解析と判定工程については、詳細を後述する。
【0024】
解析の結果、固化層に重大な誤差や欠陥が含まれていない場合には、判定部172は、次層形成を判定し、製造装置1は、上述した材料層形成工程を行い、固化層の上部に新たな材料層を形成する。製造装置1は、この新たな材料層に対して再びレーザ照射工程、検査工程および判定工程を行う。解析の結果、固化層が修正可能な程度の誤差や欠陥を有している場合には、判定部172によって固化層に修正工程を施した後次層形成を行うと判定される。この場合、製造装置1は、後述する修正工程を行った後、修正工程が行われた固化層に対して再度検査工程および判定工程を行う。この判定工程における判定結果に応じて、製造装置1は、次層形成または再度の修正工程を行う。なお、上記の各場合において、解析された誤差や欠陥の程度によっては、判定部172は、次層形成を行う段階で造形条件の変更を行うと判定する。解析部171による解析工程の結果、固化層に修正不能な誤差や欠陥が存在する場合には、判定部172は、三次元造形物の造形停止を判定する。この場合、製造装置1は以後の工程を行わない。製造装置1は、上述した各工程を繰り返し行うことにより、重大な誤差や欠陥を含まない固化層を複数積層して三次元造形物を製造する。
【0025】
即ち、製造装置1は、造形用の材料を既に固化処理した固化層の上に層状に供給し、層状に材料が供給されることによって形成された材料層に対して固化処理を施して層状の固化層を形成する。製造装置1は、この層状の固化層の上部に形成した新たな材料層に対して固化処理により固化層を形成することを繰り返し、複数の固化層が積層された三次元造形物を製造する。製造装置1は、固化層の上部に新たな材料層を形成する前に検査部16により固化層の固化の状態を検査させる。
【0026】
次に、検査結果を用いた固化層の状態の解析と、判定工程とについて説明する。なお、以下の説明は、固化層の輪郭についての解析および判定工程と、固化層の表面についての解析および判定工程と、固化層間の境界面についての解析および判定工程と、固化層の内部状態についての解析および判定工程とに分けて行う。
(1)固化層の輪郭についての解析および判定工程
解析部171は、検査部16から出力された輪郭形状データと、設計情報または設計情報から固化時の温度のときに想定される形状情報とを比較する。解析部171は、輪郭形状データによって示される固化層の輪郭が、設計情報によって示される断層データ情報の輪郭線L1に対して有する誤差を算出する。解析部171によって算出された誤差が許容される公差の範囲内の場合には、判定部172は、造形条件を変更せず次層形成が可能と判定する。
【0027】
固化層の輪郭のうち、算出された誤差が公差の範囲を超えているが、固化層の輪郭が設計情報の輪郭線L1よりも大きい領域を誤差領域と呼ぶ。この誤差領域が切削部15によって切削されることにより、固化層の輪郭を設計情報に示される輪郭線L1に合わせるように修正することが可能である。従って、この場合には、判定部172は、修正工程が必要であるが造形条件を変更せず次層形成が可能と判定する。修正工程が必要と判定された場合には、解析部171によって算出された誤差の量と、固化層の誤差領域の位置とが修正加工データとして、記憶部180に記憶される。解析部171によって、固化層の輪郭が設計情報の輪郭線L1と比べて、公差範囲を超えて小さいことが解析されると、判定部172は、固化層の誤差は修正が不可能であるとみなし、造形停止を判定する。なお、誤差が公差範囲を超えて小さいが誤差の値が所定値未満の場合には、材料層のうち誤差の生じている位置に再度材料層を形成した後ビームを照射して固化させるように修正を行っても良い。
【0028】
修正工程が必要と判定された場合には、制御装置17は、切削部15に対して固化層に対する修正工程を行わせる。切削部15は、記憶部180に記憶された修正加工データを読み出して、固化層の誤差領域の位置において、固化層から誤差量分を切削する。修正工程が済んだ固化層に対しては、再度、上述した検査工程と、検査結果に基づく解析と判定工程とが行われる。即ち、固化層の誤差が公差範囲に収まるまで修正加工と検査工程と判定工程とが繰り返される。
【0029】
なお、修正工程は固化層が形成されるごとに行わなくても良く、所定数の固化層が積層された後や、三次元造形物の全体形状が形成された後、修正工程が必要な固化層に対して修正工程が行われても良い。この場合、記憶部180に記憶される修正加工データには、誤差の位置と誤差量とが何層目の固化層に存在するかについての情報が含まれ、切削部15は、これらの情報に基づいて修正工程を行う。
【0030】
(2)固化層の表面についての解析および判定工程
解析部171は、検査部16から出力された表面形状データと、成形良否可否データや設計情報とを比較する。解析部171は、表面形状データに基づいて、固化層の表面に設計情報には存在しない凸部、または凹部や閉塞空孔や開孔等(以後、総称して欠陥孔と呼ぶ)の有無を検出する。固化層の表面に欠陥孔や凸部が検出された場合には、解析部171は、検出された欠陥孔の位置が、設計情報で示される輪郭線L1の外部か否かを判定する。欠陥孔の位置が輪郭線L1の内部の場合には、解析部171は、検出された欠陥孔の形状の解析や欠陥孔の発生位置の解析を行う。解析される欠陥孔の特徴は、例えば、欠陥孔の大きさ、欠陥孔の断面形状、欠陥孔の深さ等がある。また、他にも表面の凹凸情報(例えば、凹凸に関する最大高低差の情報や表面の凹凸の空間周波数情報等)に基づき、固化層の表面の凹凸状態についての解析も行う。
【0031】
図4(a)の固化層の断面図に示すように、固化層の表面における欠陥孔Hの大きさ(開孔径D1)が粉末材料Qの粒径D2よりも大きい場合には、次層形成時に供給される粉末材料Qが欠陥孔Hに入り込むことができる。従って、次層形成された材料層にレーザ照射工程を行うことにより、欠陥孔Hを塞いで修正することができる。しかし、固化層の表面において欠陥孔Hの開孔径が粉末材料Qの粒径より大きい場合であっても、欠陥孔Hの大きさが断面方向の距離が増すほど小さくなる場合、次層形成時に供給される粉末材料Qは欠陥孔Hの底部に到達しない。例えば、
図4(b)に示すように、欠陥孔Hの断面がV字形状を有している場合、即ち、欠陥孔Hの底部の大きさが粉末材料Qの粒径よりも小さい場合には粉末材料Qと欠陥孔Hの底部との間に空洞hが生じる。この状態で新たに粉末材料Qを、欠陥孔Hを有する固化層上に供給した上でレーザ照射工程を行ったとしても、空洞hを修正することができない。また、
図4(c)に示すように、欠陥孔Hが深い場合には、次層形成時に供給される粉末材料Qの量が十分ではないと欠陥孔Hを完全に塞ぐことができない虞がある。また、固化層の凹凸情報等によっても固化層の上に供給された粉末が既に形成された固化層と十分な焼結が可能かどうかの判断材料になる。
【0032】
上記の点を考慮して、解析部171は、欠陥孔Hの表面における大きさと底部における大きさとが所定値より大きいか否か、欠陥孔Hの深さは所定値より大きいか否かまたは凹凸状態について解析を行う。なお、所定値は、粉末材料Qの粒径に基づいて決定される値であることが好ましい。解析部171によって、欠陥孔Hの大きさが所定値より大きく、かつ、欠陥孔Hの深さが所定値以下と解析された場合には、判定部172は、次層形成時に供給される粉末材料Qにより欠陥孔Hを塞ぐことが可能であり、次層形成が可能であると判定する。解析部171によって、欠陥孔Hの大きさが所定値以下、または欠陥H孔の深さが所定値を超える、若しくは凹凸状態が許容される状態から大きく逸脱されると解析された場合には、判定部172は、造形条件を変更して次層形成を行うと判定する。
【0033】
造形条件の変更としては、以下の例が挙げられる。
例えば、欠陥孔Hが大きい場合や、欠陥孔Hが深い場合には、欠陥孔Hを塞ぐために、大量の粉末材料Qが欠陥孔Hに入り込む必要がある。この場合、変更部173は、造形条件として、次層形成時の形成条件である粉末材料Qの供給量を増加させる。粉末材料Qの供給量を増加させるためには、例えば、リコーター12の移動速度を遅くしたり、リコーター12による粉末材料Qの供給回数を増加させれば良い。
【0034】
上記のように欠陥孔Hに入り込んだ粉末材料Qを確実に固化させるためには、少なくとも欠陥孔Hの上部に形成された次層の材料層へのレーザの照射量を増加させる必要がある。この場合、変更部173は、造形条件であるレーザの照射条件、即ち固化処理条件として、例えば、照射部14からのレーザの走査経路Rを変更したり、レーザの走査速度を遅くしたり、レーザの強度を増加させれば良い。従って、欠陥孔Hの近傍へのレーザの照射量を増加させることができるので、欠陥孔Hに入り込んだ粉末材料Qに対してもレーザを作用させて固化させることができる。この結果、欠陥孔Hを、次層における材料層形成工程とレーザ照射工程とを行う際に修正することができる。
なお、照射部14が電子線を照射する場合には、変更部173は、固化処理条件として、例えば、電子線が照射される雰囲気の真空度を変更しても良い。
【0035】
次層の材料層に対してレーザ照射工程を行った際に、次層の固化層に同様な欠陥孔Hが発生することを防ぐために、造形条件として粉末材料Qの供給量を変更しても良い。この場合、次層形成時に形成される材料層の厚さΔdをより小さな値となるように粉末材料Qの供給量を減少させる。材料層の厚さΔdを小さくする(即ち、材料層の厚みを薄くする)ことにより、照射部14から照射されるレーザによる熱が材料層を伝わる際の効率を高め、固化にムラが生じることを抑制できる。この結果、次層以降の工程で形成される固化層に欠陥孔Hが発生することを抑制できる。
【0036】
なお、上記の例では、1つの欠陥孔Hの特徴に応じて造形条件を変更する場合について説明したが、欠陥孔Hの固化層における位置(即ち輪郭との位置関係)や、近傍に存在する他の欠陥孔との位置関係や、近傍に存在する他の欠陥孔の個数や大きさ、欠陥孔Hの発生分布等に応じて造形条件を変更しても良い。例えば、欠陥孔Hの近傍に多数の欠陥孔が存在する場合に、上記のようにリコーター12の移動速度を遅くして、固化処理を行う領域に粉末材料Qの供給速度を遅くしたり、1回の固化に対してリコーター12による粉末材料Qの供給回数を増加させて、次層形成時の粉末材料Qの供給量を増加させれば良い。
【0037】
解析された欠陥孔Hの大きさが所定値よりも大きいものの、粉末材料Qの粒径との差が小さい場合には、造形条件を変更しても良い。例えば、
図4(d)に示すように、欠陥孔Hの大きさと粉末材料Qの粒径とが実質的に等しいような場合に造形条件を変更しても良い。このような場合には、次層形成時に供給される粉末材料Qが欠陥孔Hに入り込みにくいため、リコーター12の移動速度を遅くしたり、リコーター12による粉末材料Qの供給回数を増加させたりすることによって、粉末材料Qが確実に欠陥孔Hに入り込むようにさせる。さらに、欠陥孔Hに粉末材料Qが入り込んだ位置においては、レーザ照射時のレーザ光強度を大きくしたり、レーザ光の走査速度を遅くして、欠陥孔Hに入り込んだ粉末材料Qも十分に固化できるように、ガルバノミラー142の偏向角速度を変えたり、レーザ光源141の出力を制御するようにしても良い。
【0038】
造形条件の変更として、粒径の異なる粉末材料Qを次層形成時に供給するようにしても良い。例えば、
図4(b)に示すような場合、粒径がより小さな粉末材料Qを供給することにより、次層形成時に粉末材料Qが欠陥孔Hのより底部に入り込むことができる。欠陥孔Hの大きさと粉末材料Qの粒径とが実質的に等しいような場合にも、粒径がより小さな粉末材料Qを供給することにより、より確実に粉末材料Qを欠陥孔Hに入り込ませることが可能になる。なお、粒径が異なる粉末材料Qを用いて次層形成を行う場合には、照射部14により照射するレーザの強度やレーザ光の走査速度等についても、変更後の粉末材料Qの粒径に応じて変更することが好ましい。
【0039】
造形条件の変更として粒径の異なる粉末材料Qに変更する場合には、例えば、粒径の異なる粉末材料Qに交換する旨を音声等によって報知して、ユーザに、材料供給槽11を粒径の異なる粉末材料Qが収容された材料供給槽に交換させる。または、製造装置1が、互いに粒径の異なる粉末材料Qが収容された複数の材料供給槽11をそれぞれ備え、駆動部(不図示)によって、それぞれの材料供給槽11がリコーター12の下部(Z軸-側)に移動可能に構成されても良い。この場合、判定部172によって粒径の異なる粉末材料Qに変更すると判定された場合に、解析部171による解析結果に基づいて、次層形成に適した粒径を有する粉末材料Qが収容された材料供給槽がリコーター12の下部に位置するように移動されるようにすると良い。
【0040】
上述の説明においては、欠陥孔Hの大きさと比較する所定値を粉末材料Qの粒径に基づいて決定するものとしたが、これに限定されない。例えば、完成した造形物に対してHIP処理により修正不可能となる欠陥孔Hの大きさを所定値として決定しても良い。
【0041】
(3)固化層間の境界面についての解析および判定工程
解析部171は、検査部16のX線検査装置162から出力された内部データと、設計情報とを比較する。解析部171は、固化層のうち、3次元形状測定機161で計測できないZ軸+側に生じた欠陥孔Hの有無を検出する。固化層のZ軸+側にこのような欠陥孔Hが検出された場合には、判定部172は、次層形成時における造形条件の変更が必要と判定する。この場合の造形条件の変更としては、変更部173は、次層形成時に形成される材料層の厚さΔdをより小さな値となるように粉末材料Qの供給量を減少させる。この場合、変更部173は、検出された欠陥孔Hの形状や、大きさや、欠陥孔Hの個数等に応じて、粉末材料Qの供給量を減少させる。さらに、材料層の厚さΔdを小さくすることに伴って、変更部173は、照射部14からのレーザの走査経路Rを変更したり、レーザの走査速度を遅くしたり、レーザの強度を増加させたりする。この結果、材料層に対して、照射部14から照射されるレーザによる熱が材料層を伝わる際の効率を高め、固化時にムラが生じることを抑制し、次層以降を固化する際における欠陥孔Hの発生を抑えることができる。
なお、レーザ照射時に粉末材料Qを伝わる熱の効率をより高めるために、材料供給槽11に収容された粉末材料Qに対する予熱温度を上げても良い。
【0042】
(4)固化層の内部状態についての解析および判定工程
解析部171は、検査部16のX線検査装置162から出力された内部データを用いて、固化層の組成、結晶分布、応力分布等の解析を行う。この場合、解析部171は、X線計測装置162の検出器202から出力された検出データ(投影データ)を用いて、固化層を透過した透過X線の強度から、固化層の吸収係数を算出する。解析部171は、算出した吸収係数と、正常に固化した場合の吸収係数とを比較して、差が所定範囲内であるか否かを検出する。差が所定範囲内であることが解析された場合には、判定部172は、固化層の内部が適正に固化されているものと判定し、次層形成が可能と判定する。
【0043】
算出された差が所定範囲を超えると解析された場合には、判定部172は、固化層の内部が適正に固化されていないと判定し、修正工程を行うと判定する。例えば、固化層の密度が低い場合、即ち固化層の固化が不十分な場合には、固化層に照射部14からレーザを再度照射させることによって熱を加え、固化を促進させることにより固化層の密度を増加させる。さらに、判定部172は、次層形成時における造形条件の変更を判定する。算出された差の大きさに応じて、変更部173は、例えば、次層形成時に形成される材料層の厚さの変更、照射部14からのレーザの走査経路Rの変更、レーザの走査速度の変更、レーザの強度の変更等の造形条件の変更を行う。この結果、積層された各固化層ごとに応力が実質的に揃った状態を保つことができるので、最終的に製造される三次元造形物の強度低下を抑制することができる。
なお、解析部171で算出された差が所定範囲から大きくずれている場合には、判定部172は、固化層の修正加工は不可能と見なし、造形の停止を判定しても良い。
【0044】
図5のフローチャートを参照しながら、本実施の形態による製造装置1の動作について説明する。
図5に示す処理は制御装置17でプログラムを実行して行われる。このプログラムは、制御装置17内のメモリ(不図示)に格納されており、制御装置17により起動され、実行される。
ステップS1では、リコーター12により材料供給槽11に収容された粉末材料Qを昇降ステージ13上に供給させる材料層形成工程を行ってステップS2へ進む。ステップS2では、照射部14により材料層にレーザを照射させて材料層の粉末材料Qを固化させて固化層を形成させるレーザ照射工程を行ってステップS3へ進む。
【0045】
ステップS3では、検査部16により固化層に関する輪郭形状データ、表面形状データ、内部データの検出を行わせる検査工程を行ってステップS4へ進む。ステップS4では、解析部171は、検査部16により検出された輪郭形状データ、表面形状データおよび内部データと、設計情報との比較により、固化層の状態を解析し、判定部172は、解析部171の解析結果に基づく判定工程を行ってステップS5へ進む。
【0046】
ステップS5においては、判定部172により、次層形成が可能と判定されたか否かを判断する。次層形成が可能と判定された場合には、ステップS5が肯定されてステップS6へ進む。次層形成が可能と判定されなかった場合には、ステップS5が否定されて後述するステップS9へ進む。ステップS8では、判定部172により、造形条件の変更が必要と判定されたか否かを判断する。造形条件の変更が必要と判定された場合には、ステップS6が肯定されてステップS7へ進む。ステップS7では、ステップS4における解析部171による固化層の解析結果に応じて、変更部173が造形条件を変更してステップS8へ進む。造形条件の変更が必要ではないと判定された場合には、ステップS6が否定されてステップS8へ進む。ステップS8では、全ての固化層について処理が終了したか否かを判定する。全ての固化層について処理が終了した場合には、ステップS8が肯定されて処理を終了する。次層以降の固化層を形成する必要がある場合には、ステップS8が否定されてステップS1へ戻る。
【0047】
ステップS5が否定されると、処理はステップS9へ進み、判定部172により修正工程により修正可能と判定されたか否かを判断する。修正可能と判定された場合には、ステップS9が肯定されてステップS10へ進む。ステップS10においては、解析部171の解析結果に応じて、固化層に対して照射部14や切削部15により修正工程を行わせてステップS3へ戻る。修正可能と判定されなかった場合には、ステップS9が否定されステップS11へ進む。ステップS11では、三次元造形物の造形を停止して処理を終了する。
【0048】
なお、造形物を製造中に各固化層に対して行われた検査部16による検査結果を全て記憶部180に記憶し、解析部171は、製造が終了した三次元造形物に対して解析を行っても良い。この場合、解析部171は、製造過程で固化層内部に生じた巣等の欠陥の大きさ等がどのように変化するかを解析しても良い。または、解析部171は、製造装置1にて同一形状の複数の三次元造形物を製造する場合に、第n個目に製造された三次元造形物の内部の巣等の欠陥と、第(n+1)個目に製造された三次元造形物の巣等の欠陥とを比較して、欠陥の大きさ、形状、個数、発生位置やその分布等がどのように変化するかを解析しても良い。すなわち、解析部171は、欠陥の発生傾向の経時変化を解析しても良い。解析部171による解析結果に基づいて、例えば欠陥の大きさが増加する傾向にある場合や、欠陥の個数が増加する傾向にある場合や、欠陥の発生位置が三次元造形物を製造後に行う処理装置(例えば、HIP処理や、熔浸処理、含浸処理等)で補完が困難な位置に発生する傾向がある場合には、判定部172は、次に製造する三次元造形物に対する造形条件の変更を判定しても良い。
【0049】
上述した第1の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)検査部16は、三次元造形物の製造途中に、既に形成された層状の固化層の状態を検査する。この場合、検査部16は、層状の固化層の上部に新たな層状の材料層を形成する前に、層状の固化層の状態を検査する。従って、製造途中の三次元造形物に対して固化層の状態を検査することができるので、製作中の造形物が製品としての強度等を十分に有しているか、即ち製品として重大な欠陥を有する可能性が少ないことを確認しながら三次元造形物を製造することができるので、完成した三次元造形物の品質を確保することができる。また、三次元造形物の製造が完了した時点でのみ検査を行い、その時に三次元造形物が不良品となるような重大な欠陥が発見される場合とは異なり、不良品の製造に費やした時間が無駄になることを防ぎ、製造効率を向上させることができる。特に、1層または複数層ごとに固化層を形成するたびに検査を行い、次の固化層を形成する前に修正加工を行えるようにしている。そのため、花瓶のような中空形状でかつ開口が狭く、中間部位の空間が広い形状を造形している途中のように、寸法が異なる固化層を形成しているような場合でも、正確な形状を造形することができる。なお、検査工程は、固化層を1層毎に実施しても、複数層ごとに実施しても良い。また、造形途中で検査工程の間隔を変えても良い。特に、材料層の形成条件や固化層の固化条件を変えたタイミングで検査工程の間隔を変えても良い。特に、使用する粉末材料が変更された場合に、検査工程の間隔を変えても良い。さらには、三次元造形物の形状修正作業が完成後に困難となる部分、例えば、谷部の部分などを形成する場合は、1層毎に検査工程を行い、完成後の形状修正作業が容易な部分は複数層毎に検査工程を実施しても良い。
【0050】
(2)検査部16による層状の固化層に対する検査の結果に基づいて、変更部173は、新たな材料層を形成する際の形成条件と、新たな材料層に対して固化処理を施す際の固化処理条件との少なくとも一方を変更する。従って、製造中の固化層に生じた欠陥等の状況に応じて、次層形成の際の各種条件を変更できるので、固化層に生じた欠陥の修正や次層以降に欠陥が発生することを予防して、高品質の三次元造形物を製造できる。
【0051】
(3)変更部173は、新たな材料層を形成する際の形成条件として、新たな材料層を形成するための粉末材料の供給量、即ち、次層形成時に供給する粉末材料の供給速度と、次層の材料層の厚さと、次層の材料層として粉末材料を供給する回数とのうち少なくとも何れかを変更する。従って、固化層に生じた欠陥孔に応じて、固化層の欠陥孔の修正および/または次層形成時に欠陥孔の発生の予防に適した粉末材料を供給し、品質の高い三次元造形物の製造を可能にする。
【0052】
(4)変更部173は、検査部16によって層状の固化層の表面に検出された欠陥孔の形状と大きさとの少なくとも何れかに応じて、粉末材料の量を変更する。従って、次層形成時に供給された粉末材料によって、固化層に生じた欠陥孔を塞ぐことにより欠陥を修正することができる。即ち、次層形成と欠陥孔の修正とを同一のタイミングにて行うことができるので、製造時間の短縮に寄与する。
【0053】
(5)変更部173は、検査部16によって層状の固化層の表面に複数の欠陥孔が検出された場合、複数の欠陥孔のそれぞれの形状および大きさと、複数の欠陥孔の位置関係とに応じて、粉末材料の量を変更する。従って、欠陥孔の発生状態に応じて、欠陥孔の修正に適した量の粉末材料を供給することができるので、欠陥孔を確実に修正し、三次元造形物の品質を確保することができる。
【0054】
(6)変更部173は、検査部16によって層状の固化層の内部に検出された欠陥孔に応じて、粉末材料の量を変更する。即ち、変更部173は、層状の固化層の内部に検出された欠陥孔の形状と、大きさと、個数との何れかに応じて、新たな材料層の厚さが薄くなるように粉末材料の量を変更する。従って、固化処理の際の固化が不十分であるために発生した固化層内部の欠陥孔に応じて、次層形成時における固化処理条件を変更するので、次層以降における固化処理の結果、固化不良に起因する欠陥孔の発生を予防することができる。
【0055】
(7)変更部173は、変更された粉末材料の供給量に応じて、固化処理条件を変更する。変更部173は、変更された粉末材料の供給量の増加に応じて、照射部14によって照射されるレーザや電子電等のエネルギー線の走査経路Rと、走査速度と、エネルギー線の強度との少なくとも何れかを変更する。従って、固化層の表面の欠陥孔を塞ぐために増加した粉末材料に対して、固化に必要なエネルギーを供給し、次層形成時に欠陥孔の発生を抑制することが可能となる。
【0056】
(8)変更部173は、検査部16によって検出された層状の固化層の組成の状態に応じて、固化処理条件を変更する。即ち、変更部173は、次層形成時におけるエネルギー線の走査経路Rの変更、エネルギー線の走査速度の変更、エネルギー線の強度の変更を行う。この結果、積層された各固化層ごとに応力が実質的に揃った状態を保つことができるので、最終的に製造される三次元造形物の強度低下を抑制することができる。
【0057】
(9)三次元造形物の設計情報と、検査部16によって検査された層状の固化層とを比較して、検査された層状の固化層に欠陥孔が含まれる場合に、変更部173は、造形条件を変更する。従って、設計情報に基づいた三次元造形物を精度よく製造することができる。
【0058】
(10)判定部172は、検査部16による層状の固化層に対する検査の結果に基づいて、新たな材料層を形成するか否かを判定する。即ち、三次元造形物の設計情報と、検査部16によって検査された層状の固化層とを比較して、層状の固化層に欠陥孔が含まれる場合に、判定部172は、欠陥孔の状態に応じて、新たな材料層を形成するか、三次元造形物の製造を停止するかを判定する。従って、製品として重大な欠陥を含むことになる三次元造形物の製造を停止することにより、不良品の製造のための時間や材料を浪費することを防ぎ、三次元造形物を製造するためのコスト低減に寄与する。
【0059】
(11)判定部172は、欠陥孔が修正可能か否かを判定し、修正可能と判定した場合に、次層形成可能と判定する。従って、欠陥孔の発生状況に応じて、次層形成の可否を適切に判定できる。
【0060】
(12)造形部10は、判定部172により修正可能と判定された場合に、切削部15による修正加工を行った後、新たな材料層を形成する。この場合、切削部15は、層状の固化層の輪郭形状L2が三次元造形物の設計情報における輪郭形状L1と比較して誤差が所定値よりも大きい誤差部分を有する場合に、この誤差部分を切削する。従って、設計情報に即した外形を有する三次元造形物を製造することができる。
【0061】
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
(1)材料層は、リコーターなどにより既に形成された固化層上に形成されるものに代えて、粉末材料を造形する三次元造形物の形状に応じて設定された領域に吹き付けながら、同時にレーザ光や電子線を照射して固化処理を行う処理方法に変更しても良い。この場合、「材料で構成された材料層」の形成工程は、粉末材料を吹き付ける工程に該当する。
(2)固化層が形成されるごとに検査部16による検査を行うものに代えて、複数の固化層が形成されるごとに検査部16による検査を行っても良い。また、検査部16により固化層が形成されるごとの検査を複数回行った結果に基づいて、既に形成された固化層に重大な欠陥が発生していない場合に、検査部16による検査を複数の固化層が形成されるごとに行うように変更しても良い。
【0062】
(3)X線検査装置162のX線源201が昇降ステージ13に対して固定して配置され、検出器202が昇降ステージ13に対して回転可能に配置されても良い。この場合の製造装置1の構造を
図6に示す。X線源201は、昇降ステージ13の下方(Z軸+側)において、X線の出射点が回転軸Ax上に位置するように配置される。検出器202は、照射部14の上部(Z軸-側)において、回転軸Axから円弧状に延びるガイドレール204に沿って移動可能に設けられる。このガイドレールは、モータ等の駆動部(不図示)によって、回転軸Axを中心に回転する。即ち、回転軸Axを中心に回転するガイドレールに沿って移動することにより、検出器202は、X線源201から出射し、昇降ステージ13および固化層を透過した透過X線を種々の方向から検出することができる。また、検出器202を回転させながら、様々な方向からの投影像を取得し、これらの投影像からラミノグラフィー技術を用いて再構成することで、任意の固化層の断層形状を取得することも可能である。特に、レーザ光などを照射して固化処理を実施している層とその下層との接合状態をリアルタイムで検査するときに有効である。
【0063】
(4)X線検査装置162に代えて、固化層を透過した透過ガンマ線を用いて固化層の内部データを検出するガンマ線検査装置を用いても良い。また、固化層に超音波パルスを出力し反射するエコーとの時間遅れTOF(Time Of Light)から内部の欠陥等を検出する超音波エコー探傷装置を用いても良い。また、固化層に照射したX線やガンマ線や赤外線が固化層を通過する際に内部の欠陥等で回折する際の回折角を検出して固化層の内部の欠陥等を検出する回折光検査装置を用いても良い。
【0064】
(5)製造装置1を外部と遮断可能な所定の作業室内に設け、作業室内で三次元造形物の製造を行っても良い。この場合、作業室は、作業室内を排気する排気装置を備え、排気装置によって固化層形成時のレーザ照射の際に飛散するスパッタを作業室外に設けたデブリ回収装置に回収しても良い。この結果、製造中の三次元造形物や製造装置1を飛散したデブリから保護して、高品質の造形物の製造が可能となるとともに、製造装置1の性能を長期に渡って維持することができる。
【0065】
(6)材料供給槽11に収容された造形材料に対して検査を行う検査装置を備えることができる。検査装置として、例えばX線検査装置を用いることにより、材料供給槽11に収容されている造形材料の内部の投影データを取得し、解析部171が投影データを解析して、造形材料の内部の空孔等の欠陥を検出しても良い。検出結果に基づいて、造形材料に大きな欠陥が含まれるような場合には、製造装置1は、この検出結果を例えばモニタ(不図示)等に表示させてユーザに報知することができる。従って、ユーザは、材料供給槽11に収容されている造形材料が三次元造形物の製造に使用するものとして適していないことを予め知ることができるので、三次元造形物の製造に適した造形材料と交換する等の処置をとることが可能となる。
【0066】
(7)検査部16により検査された固化層の欠陥孔Hに基づいて造形条件を変更するものに限定されない。例えば、3次元形状測定機161により、昇降ステージ13から形成された固化層の上面まで厚さを測定して、解析部171は測定された厚さを設計情報にて示される高さと比較して誤差量を算出する。解析部171により、測定された厚さが設計情報で示される高さよりも誤差量分低いことが解析された場合には、判定部172は、次層形成時に誤差量に応じて粉末材料の供給量が増加するように造形条件を変更する。解析部171により、測定された厚さが設計情報で示される高さよりも誤差量分高いことが解析された場合には、判定部172は、次層形成時に誤差量に応じて粉末材料の供給量が減少するように造形条件を変更する、または誤差量分を切削部15により切削することにより修正可能と判定する。
(8)材料層の形成方法について、上述の説明では粉末材料Qを固化層の上に供給して形成する方法を説明したが、使用する材料によって、適宜変更しても良い。例えば、液体状の材料を固化して三次元造形物を製造する場合には、固化層を液体状の材料で満たした造形槽131の液面よりも所定の深さ方向に沈めることで、固化層の上に材料層を形成するようにしても良い。また、固化層上に直接材料を吹き付けたり、押し出したりするようにしても良い。
【0067】
-第2の実施の形態-
図面を参照して、本発明の実施の形態による構造物製造システムを説明する。本実施の形態の構造物製造システムは、たとえば自動車のドア部分、エンジン部分、ギア部分および回路基板を備える電子部品等の成型品を作成する。
【0068】
図7は、本実施の形態による構造物製造システム600の構成の一例を示すブロック図である。構造物製造システム600は、第1の実施の形態または変形例にて説明した三次元形状造形物製造装置(製造装置)1と、設計装置610と、制御システム630とを備える。
【0069】
設計装置610は、構造物の形状に関する設計情報を作成する際にユーザが用いる装置であって、設計情報を作成して記憶する設計処理を行う。設計情報は、構造物の各位置の座標を示す情報である。設計情報は製造装置1および後述する制御システム630に出力される。製造装置1は設計装置610により作成された設計情報を用いて構造物を作成、成形する成形処理を行う。
【0070】
製造装置1の検査部16は、第1の実施の形態または変形例にて説明したように、造形部10により成形された構造物の形状を測定する測定処理を行う。製造装置1の検査部16は、構造物を測定した測定結果である構造物の座標を示す情報(以後、形状情報と呼ぶ)を制御システム630に出力する。制御システム630は、座標記憶部631と、検査処理部632とを備える。座標記憶部631は、上述した設計装置610により作成された設計情報を記憶する。
【0071】
検査処理部632は、製造装置1の造形部10により成形された構造物が設計装置610により作成された設計情報に従って成形されたか否かを判定する。換言すると、検査処理部632は、成形された構造物が良品か否かを判定する。この場合、検査処理部632は、座標記憶部631に記憶された設計情報を読み出して、設計情報と製造装置1の検査部16から入力した形状情報とを比較する検査処理を行う。検査処理部632は、検査処理としてたとえば設計情報が示す座標と対応する形状情報が示す座標とを比較し、検査処理の結果、設計情報の座標と形状情報の座標とが一致している場合には設計情報に従って成形された良品であると判定する。設計情報の座標と対応する形状情報の座標とが一致していない場合には、検査処理部632は、座標の差分が所定範囲内であるか否かを判定し、所定範囲内であれば修復可能な不良品と判定する。
【0072】
修復可能な不良品と判定した場合には、検査処理部632は、不良部位と修復量とを示すリペア情報を製造装置1の造形部10へ出力する。不良部位は設計情報の座標と一致していない形状情報の座標であり、修復量は不良部位における設計情報の座標と形状情報の座標との差分である。造形部10は、入力したリペア情報に基づいて、構造物の不良部位を再加工するリペア処理を行う。造形部10は、例えば、切削部15により、不良部位の切削等の処理を行わせる。
【0073】
図8に示すフローチャートを参照しながら、構造物製造システム600が行う処理について説明する。
ステップS111では、設計装置610はユーザによって構造物の設計を行う際に用いられ、設計処理により構造物の形状に関する設計情報を作成し記憶してステップS112へ進む。なお、設計装置610で作成された設計情報のみに限定されず、既に設計情報がある場合には、その設計情報を入力することで、設計情報を取得するものについても本発明の一態様に含まれる。ステップS112では、製造装置1の造形部10は成形処理により、設計情報に基づいて構造物を作成、成形してステップS113へ進む。ステップS113においては、製造装置1の検査部16は計測処理を行って、構造物の形状を計測し、形状情報を出力してステップS114へ進む。
【0074】
ステップS114では、検査処理部632は、設計装置610により作成された設計情報と検査部16により測定され、出力された形状情報とを比較する検査処理を行って、ステップS115へ進む。ステップS115では、検査処理の結果に基づいて、検査処理部632は製造装置1の造形部10により成形された構造物が良品か否かを判定する。構造物が良品である場合、すなわち設計情報の座標と形状情報の座標とが一致する場合には、ステップS115が肯定判定されて処理を終了する。構造物が良品ではない場合、すなわち設計情報の座標と形状情報の座標とが一致しない場合や設計情報には無い座標が検出された場合には、ステップS115が否定判定されてステップS116へ進む。
【0075】
ステップS116では、検査処理部632は構造物の不良部位が修復可能か否かを判定する。不良部位が修復可能ではない場合、すなわち不良部位における設計情報の座標と形状情報の座標との差分が所定範囲を超えている場合には、ステップ116が否定判定されて処理を終了する。不良部位が修復可能な場合、すなわち不良部位における設計情報の座標と形状情報の座標との差分が所定範囲内の場合には、ステップS116が肯定判定されてステップS117へ進む。この場合、検査処理部632は製造装置1の造形部10にリペア情報を出力する。ステップS117においては、造形部10は、入力したリペア情報に基づいて、構造物に対してリペア処理を行ってステップS113へ戻る。なお、上述したように、造形部10は、例えば、切削部15により、不良部位の切削等の処理を行わせる。
【0076】
上述した第2の実施の形態による構造物製造システムによれば、以下の作用効果が得られる。
(1)構造物製造システム600の製造装置1の検査部16は、設計装置610の設計処理に基づいて成形装置620により作成された構造物の形状情報を取得する測定処理を行い、制御システム630の検査処理部632は、測定処理にて取得された形状情報と設計処理にて作成された設計情報とを比較する検査処理を行う。従って、構造物の欠陥の検査や構造物の内部の情報を非破壊検査によって取得し、構造物が設計情報の通りに作成された良品であるか否かを判定できるので、構造物の品質管理に寄与する。
【0077】
(2)製造装置1の造形部10は、検査処理の比較結果に基づいて、構造物に対して成形処理を再度行うリペア処理を行うようにした。従って、構造物の不良部分が修復可能な場合には、再度成形処理と同様の処理を構造物に対して施すことができるので、設計情報に近い高品質の構造物の製造に寄与する。
【0078】
本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0079】
1…三次元形状造形物製造装置(製造装置)、10…造形部、11…材料供給槽、
12…リコーター、13…昇降ステージ、
14…照射部、15…切削部、
16…検査部、17…制御装置、
161…3次元形状測定機、162…X線検査装置、
171…解析部、172…判定部、173…変更部
600…構造物製造システム、610…設計装置、
630…制御システム、632…検査処理部