(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】撮像素子および撮像装置
(51)【国際特許分類】
H04N 5/369 20110101AFI20220712BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20220712BHJP
H04N 5/365 20110101ALI20220712BHJP
H04N 5/363 20110101ALI20220712BHJP
【FI】
H04N5/369
H01L27/146 A
H04N5/365 800
H04N5/363
(21)【出願番号】P 2020120952
(22)【出願日】2020-07-14
(62)【分割の表示】P 2018508831の分割
【原出願日】2017-02-28
【審査請求日】2020-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2016065490
(32)【優先日】2016-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】壽圓 正博
(72)【発明者】
【氏名】駒井 敦
【審査官】松永 隆志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/157407(WO,A1)
【文献】特開2008-295078(JP,A)
【文献】特開2013-126174(JP,A)
【文献】特開2012-134987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/225-5/378
H04N 9/00-9/11
H01L 27/146
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を電荷に変換する光電変換部と読み出し部とを有する複数の画素と、
前記複数の画素が接続され
、前記光電変換部で変換された電荷に基づく第1信号が出力される第1信号線と、
前記複数の画素が接続され、前記読み出し部をリセットした後の第2信号が出力される第2信号線と、を備え、
前記読み出し部は、前記光電変換部で変換された電荷を転送する転送部と、前記転送部により前記光電変換部の電荷が転送されるフローティングディフュージョンと、前記フローティングディフュージョンに接続され、前記第1信号と前記第2信号とをそれぞれ出力する増幅部と、前記増幅部と前記第1信号線との間の接続を制御する第1選択スイッチ部と、前記増幅部と前記第2信号線との間の接続を制御する第2選択スイッチ部とを有し、
前記第1選択スイッチ部は、1つのトランジスタのみを用いて前記増幅部と前記第1信号線との間を電気的に接続し、
前記第2選択スイッチ部は、1つのトランジスタのみを用いて前記増幅部と前記第2信号線との間を電気的に接続
し、
前記光電変換部と前記読み出し部とは、光が入射する第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを有する半導体基板に配置され、
前記第1信号線と前記第2信号線とは、前記第2面側において前記半導体基板を積層するように設けられる配線層に配置され、
前記第1信号線は、前記半導体基板と前記配線層とが積層される積層方向において前記光電変換部と重なるように配置され、
前記第2信号線は、前記半導体基板と前記配線層とが積層される積層方向において前記読み出し部と重なるように配置される撮像素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一つの画素列に複数の容量を設けることにより、ある行の画素から信号を読み出している間に、他の行の画素からの信号を水平転送することができる撮像素子が知られている(特許文献1)。しかし、従来技術では、多数の容量を設ける必要があり撮像素子のチップ面積が増大するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の態様によると、撮像素子は、入射光を電荷に変換する光電変換部と読み出し部とを有する複数の画素と、前記複数の画素が接続され、前記光電変換部で変換された電荷に基づく第1信号が出力される第1信号線と、前記複数の画素が接続され、前記読み出し部をリセットした後の第2信号が出力される第2信号線と、を備え、前記読み出し部は、前記光電変換部で変換された電荷を転送する転送部と、前記転送部により前記光電変換部の電荷が転送されるフローティングディフュージョンと、前記フローティングディフュージョンに接続され、前記第1信号と前記第2信号とをそれぞれ出力する増幅部と、前記増幅部と前記第1信号線との間の接続を制御する第1選択スイッチ部と、前記増幅部と前記第2信号線との間の接続を制御する第2選択スイッチ部とを有し、前記第1選択スイッチ部は、1つのトランジスタのみを用いて前記増幅部と前記第1信号線との間を電気的に接続し、前記第2選択スイッチ部は、1つのトランジスタのみを用いて前記増幅部と前記第2信号線との間を電気的に接続し、前記光電変換部と前記読み出し部とは、光が入射する第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを有する半導体基板に配置され、前記第1信号線と前記第2信号線とは、前記第2面側において前記半導体基板を積層するように設けられる配線層に配置され、前記第1信号線は、前記半導体基板と前記配線層とが積層される積層方向において前記光電変換部と重なるように配置され、前記第2信号線は、前記半導体基板と前記配線層とが積層される積層方向において前記読み出し部と重なるように配置される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】第1の実施の形態に係る撮像装置の構成を示すブロック図。
【
図2】第1の実施の形態に係る画素の構成を示す回路図。
【
図3】第1の実施の形態に係る撮像素子の一部の構成を示す回路図。
【
図4】第1の実施の形態に係る撮像素子の断面構造の一例を示す図。
【
図5】第1の実施の形態に係る撮像素子の動作例を示すタイミングチャート。
【
図6】第2の実施の形態に係る画素の構成を示す回路図。
【
図7】第2の実施の形態に係る撮像素子の一部の構成を示す回路図。
【
図8】第2の実施の形態に係る撮像素子の動作例を示すタイミングチャート。
【
図9】第2の実施の形態に係る撮像素子の垂直スキャナ回路の構成例を示す図。
【
図10】(a)は第2の実施の形態に係る撮像素子の合成回路の構成例を示す図。(b)は第2の実施の形態に係る撮像素子の合成回路の動作例を示すタイミングチャート。
【
図11】第3の実施の形態に係る画素の構成を示す回路図。
【
図12】第3の実施の形態に係る撮像素子の一部の構成を示す回路図。
【
図13】第3の実施の形態に係る撮像素子の垂直スキャナ回路の構成例を示す図。
【
図14】変形例1に係る撮像素子の断面構造の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0006】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る撮像装置1の構成を示すブロック図である。撮像装置1は、撮影光学系2、撮像素子3、および制御部4を備える。撮像装置1は、例えばカメラである。撮影光学系2は、撮像素子3に被写体像を結像する。撮像素子3は、撮影光学系2により形成された被写体像を撮像して画像信号を生成する。撮像素子3は、例えばCMOSイメージセンサである。制御部4は、撮像素子3の動作を制御するための制御信号を撮像素子3に出力する。また、制御部4は、撮像素子3から出力された画像信号に対して各種の画像処理を施し、画像データを生成する画像生成部として機能する。なお、撮影光学系2は、撮像装置1から着脱可能にしてもよい。
【0007】
図2は、第1の実施の形態に係る画素10の構成を示す回路図である。撮像素子3は、2次元状に配置された複数の画素10を有する。画素10は、例えばフォトダイオード(PD)等の光電変換部12および読み出し部20を有する。光電変換部12は、入射した光を電荷に変換し、光電変換された電荷を蓄積する機能を有する。読み出し部20は、転送部13と、排出部14と、フローティングディフュージョン(FD)15と、増幅部16と、第1選択スイッチ部17と、第2選択スイッチ部18とを有する。
【0008】
転送部13は、信号TXにより制御され、光電変換部12で光電変換された電荷をフローティングディフュージョン15に転送する。すなわち、転送部13は、光電変換部12およびフローティングディフュージョン15の間に電荷転送路を形成する。フローティングディフュージョン15は電荷を保持(蓄積)する。増幅部16は、フローティングディフュージョン15に保持された電荷による信号を増幅して出力する。増幅部16は、第1選択スイッチ部17を介して第1垂直信号線30に接続され、第2選択スイッチ部18を介して第2垂直信号線31に接続される。増幅部16は、後述する電流源60(
図3)を負荷電流源としてソースフォロワ回路の一部として機能する。
【0009】
排出部(リセット部)14は、信号RSTにより制御され、フローティングディフュージョン15の電荷を排出し、フローティングディフュージョン15の電位をリセット電位(基準電位)にリセットする。第1選択スイッチ部17は、信号SEL_Sにより制御され、増幅部16からの信号を第1垂直信号線30に出力する。第2選択スイッチ部18は、信号SEL_Dにより制御され、増幅部16からの信号を第2垂直信号線31に出力する。転送部13、排出部14、増幅部16、第1選択スイッチ部17および第2選択スイッチ部18は、例えば、それぞれトランジスタM1、トランジスタM2、トランジスタM3、トランジスタM4、トランジスタM5により構成される。
【0010】
読み出し部20は、転送部13により光電変換部12からフローティングディフュージョン15に転送された電荷に応じた信号(光電変換信号)を、第1選択スイッチ部17を介して第1垂直信号線30に読み出す。また、読み出し部20は、排出部14によってフローティングディフュージョン15の電位をリセット電位にリセットしたときの信号(ノイズ信号)を、第2選択スイッチ部18を介して第2垂直信号線31に読み出す。
【0011】
図3は、第1の実施の形態に係る撮像素子3の一部の構成を示す回路図である。撮像素子3は、行列状に配置される複数の画素10と、垂直スキャナ回路40と、電流源60と、第1スイッチ部70と、第2スイッチ部80と、カラム回路90と、水平信号出力回路100とを有する。列方向、すなわち縦方向に並んだ複数の画素10からなる画素列毎に、第1垂直信号線30、第2垂直信号線31、電流源60、第1スイッチ部70、および第2スイッチ部80が設けられる。すなわち、
図3において左端の第1列目の画素列に対応して、第1垂直信号線30、第2垂直信号線31、電流源60、第1スイッチ部70、および第2スイッチ部80が設けられ、同様に、その右隣の第2列目の画素列に対応して、その右隣の第3列目の画素列に対応して、それぞれ、第1垂直信号線30、第2垂直信号線31、電流源60、第1スイッチ部70、および第2スイッチ部80が設けられている。なお、
図3に示す例では、説明を簡略化するために、画素10は水平方向3画素×垂直方向3画素のみ図示している。
【0012】
本実施の形態では、上述のように、画素列毎に、第1垂直信号線30および第2垂直信号線31を備える。各画素10からの光電変換信号は第1垂直信号線30に読み出され、各画素10からのノイズ信号は第2垂直信号線31に読み出される。第1垂直信号線30および第2垂直信号線31は、それぞれ垂直方向に配置される複数の画素10に接続され、画素10から読み出された信号を、画素10が行列状に稠密に配置された画素領域の周辺に配置される周辺回路(カラム回路90等)に伝送する。第1垂直信号線30および第2垂直信号線31は、信号線の長さ等に応じて大きな容量を有する。このため、第1垂直信号線30を、光電変換信号を記憶(蓄積)する容量として用いることができ、第2垂直信号線31を、ノイズ信号を記憶(蓄積)する容量として用いることができる。この結果、チップ面積を増大させることなく大きな容量値を得ることができる。
【0013】
図3に示すように、第1垂直信号線30は、各画素10の列に対応して設けられ、各画素10から出力される光電変換信号を蓄積する。第2垂直信号線31は、各画素10の列に対応して設けられ、各画素10から出力されるノイズ信号を蓄積する。第1垂直信号線30および第2垂直信号線31は、それぞれ光電変換信号およびノイズ信号を蓄積する容量(配線容量)を有する。容量は、例えば導体による容量であり、隣り合う金属により形成される容量などである。なお、第1垂直信号線30および第2垂直信号線31の具体的な構成例は、後に
図4を用いて詳細に説明する。
【0014】
撮像素子3では、第1垂直信号線30および第2垂直信号線31に入力される信号にノイズが混入することを抑制するため、シールド用の配線が設けられる。例えば、シールド用の配線として、
図3に示す第1、第2、第3のシールド線120a、120b、120cが設けられる。なお、
図3においては、第1、第2、第3のシールド線120a、120b、120cは、第1垂直信号線30および第2垂直信号線31と区別するために、点線で示されている。第1、第2、第3のシールド線120a、120b、120cには、例えば一定電位(例えば電源電位または接地電位)が与えられる。すなわち、第1、第2、第3のシールド線120a、120b、120cは、一定電位が印加される配線である。第1、第2、第3のシールド線120a、120b、120cは、一定電位が印加される電極ともいえる。
図3に示す例では、第1、第2、第3のシールド線120a、120b、120cには接地電位が与えられる。また、第1、第2のシールド線120a、120bと第1垂直信号線30との間、第2、第3のシールド線120b、120cと第2垂直信号線31との間には、それぞれ容量が形成される。
図3に示す容量を示す符号Cは、第1、第2のシールド線120a、120bと第1垂直信号線30との間、第2、第3のシールド線120b、120cと第2垂直信号線31との間にそれぞれ容量が形成されることを模式的に示したものである。
【0015】
また、
図3は回路図であり、理解を容易にするため画素10に並置して第1垂直信号線30、第2垂直信号線31、および第1、第2、第3のシールド線120a、120b、120cを描いている。しかし、実際は、第1垂直信号線30、第2垂直信号線31、および第1、第2、第3のシールド線120a、120b、120cは、画素領域において半導体基板に積層して設けられる。すなわち、第1列目の画素列が配置される画素領域と、第2列目の画素列が配置される画素領域と、第3列目の画素列が配置される画素領域とに、それぞれ第1垂直信号線30、第2垂直信号線31、および第1、第2、第3のシールド線120a、120b、120cが配置される。本実施の形態では、詳細は
図4を用いて後述するが、裏面照射型の撮像素子を用いて、第1垂直信号線30、第2垂直信号線31、および第1、第2、第3のシールド線120a、120b、120cを、画素領域において半導体基板に積層して配置する。上述したように垂直信号線を容量として兼用することでチップ面積を増大させることなく大きな容量値を得ることができ、さらに、裏面照射型の撮像素子を用いることでチップ面積を小さくすることが可能となる。
【0016】
図3に示す電流源60は、第1垂直信号線30および第2垂直信号線31に対応して設けられ、第1スイッチ部70を介して第1垂直信号線30に接続され、第2スイッチ部80を介して第2垂直信号線31に接続される。また、電流源60は、第1垂直信号線30および第2垂直信号線31を介して各画素10に接続される。電流源60は、各画素10から光電変換信号及びノイズ信号を読み出すための電流を生成し、生成した電流を第1垂直信号線30、第2垂直信号線31、および各画素10に供給する。
【0017】
垂直スキャナ回路40は、信号TXn、信号RSTn、信号SEL_Sn、信号SEL_Dnなどの制御信号を各画素10に供給する。垂直スキャナ回路40は、信号TXn等を各画素10に出力して、各画素10の動作を制御する。なお、TXn、RSTn、SEL_Sn、SEL_Dnの末尾のnは、画素の行番号を示している。例えば、信号TXnは、n行目の画素10の転送部13を制御する信号である。
【0018】
第1スイッチ部70は、第1垂直信号線30に対応して設けられ、第1垂直信号線30に接続される。第1スイッチ部70は、垂直スキャナ回路40から出力される制御信号(信号Vsws)により制御され、第1垂直信号線30と電流源60との間の電気的な接続状態を切り替える。第1スイッチ部70は、例えばトランジスタにより構成される。第2スイッチ部80は、第2垂直信号線31に対応して設けられ、第2垂直信号線31に接続される。第2スイッチ部80は、垂直スキャナ回路40から出力される制御信号(信号Vswd)により制御され、第2垂直信号線31と電流源60との間の電気的な接続状態を切り替える。第2スイッチ部80は、例えばトランジスタにより構成される。
【0019】
カラム回路90は、アナログ/デジタル変換部(AD変換部)を含んで構成され、光電変換信号およびノイズ信号をデジタル信号に変換する。カラム回路90は、第1垂直信号線30を介して入力される光電変換信号をデジタル信号に変換し、水平信号出力回路100に出力する。また、カラム回路90は、第2垂直信号線31を介して入力されるノイズ信号をデジタル信号に変換し、水平信号出力回路100に出力する。水平信号出力回路100は、カラム回路90から入力されるノイズ信号に応じたデジタル信号と光電変換信号に応じたデジタル信号とを、後段の信号処理部(不図示)に順次出力する。信号処理部では、AD変換結果を用いて、相関二重サンプリングや信号量を補正する処理等の信号処理が行われる。
【0020】
図4は、第1の実施の形態に係る撮像素子3の断面構造を説明するための図である。
図4(a)は、撮像素子3の断面構造の一例を示す図である。
図4(b)は、配線層210の一部の配線のレイアウト例を示す図である。なお、
図4(a)は
図4(b)中のA-A’の断面図であり、
図4(b)は配線層210の一部の配線を半導体基板200側から見た図である。撮像素子3は、例えば、裏面照射型の撮像素子である。
図4に示すように、入射光は、主にZ軸プラス方向へ向かって入射する。また、座標軸に示すように、Z軸に直交する紙面左方向をX軸プラス方向、Z軸およびX軸に直交する紙面奥方向をY軸プラス方向とする。
【0021】
撮像素子3は、シリコン等の半導体材料により構成される半導体基板200と半導体基板200に積層される配線層210とを含んで構成される。撮像素子3は、さらに、不図示のマイクロレンズ層、カラーフィルタ層、およびパッシベーション層を有する。撮像素子3は、例えば、Z軸プラス方向に向かってマイクロレンズ層、カラーフィルタ層、パッシベーション層、半導体基板200、および配線層210の順に配置される。
【0022】
半導体基板200は、光が入射する入射面となる第1面201a、および第1面201aとは異なる第2面201bを有する。第2面201bは第1面201aとは反対に位置する。本実施の形態では、撮像素子3の裏面は配線層210とは反対側に位置する第1面201aを示し、裏面照射型は裏面となる第1面201aから光を入射させる構成となる。半導体基板200は、第1面201aと第2面201bとの間に、光電変換部12および読み出し部20を有する。光電変換部12および読み出し部20を有する画素10は、X軸方向およびY軸方向に複数配置されている。
【0023】
配線層210には、第1垂直信号線30、第2垂直信号線31、第1、第2、第3のシールド線120a、120b、120c、接続シールド線121、およびメッシュシールド線122が配置され、それぞれ導体膜により構成される。第1垂直信号線30は、隣り合う第1、第2シールド線120a、120bの間に設けられ、第2垂直信号線31は、隣り合う第2、第3シールド線120b、120cの間に設けられる。また、第1、第2、第3のシールド線120a、120b、120cは、第1垂直信号線30および第2垂直信号線31と平行に配置される平行シールド線となっている。メッシュシールド線122は、メッシュ状に形成されるシールド線である。また、メッシュシールド線122は、
図3に示した画素列の画素領域の全体を覆うように形成される。メッシュシールド線122と第1、第2、第3のシールド線120a、120b、120cとは複数のビアを介して接続され、第1、第2、第3のシールド線120a、120b、120cと接続シールド線121とは複数のビアを介して接続される。
【0024】
メッシュシールド線122、第1、第2、第3のシールド線120a、120b、120c、および接続シールド線121は、一定の電位(例えば接地電位)が与えられる。メッシュシールド線122、第1、第2、第3のシールド線120a、120b、120c、および接続シールド線121は、第1垂直信号線30および第2垂直信号線31それぞれを囲むように設けられることで、第1垂直信号線30および第2垂直信号線31の各々の間でのシールドとして機能する。第1垂直信号線30および第2垂直信号線31の各々の間で大きな寄生容量が生じることを回避でき、第1垂直信号線30および第2垂直信号線31の各々の間でのクロストークを抑制できる。
【0025】
図4(b)に示す接続線123は、第1垂直信号線30と画素10の読み出し部20とをビア(VIA)を介して接続する接続線である。接続線124は、第2垂直信号線31と画素10の読み出し部20とをビア(VIA)を介して接続する接続線である。接続シールド線121は、接続線123および接続線124それぞれを挟むように設けられ、接続線123と接続線124との間でのシールドとして機能する。
【0026】
第1垂直信号線30および第2垂直信号線31の各々と、メッシュシールド線122、第1、第2、第3のシールド線120a、120b、120cおよび接続シールド線121との間は、絶縁膜が設けられる。絶縁膜は、酸化膜や窒化膜などである。具体的には、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜、又はこれらの膜の多層膜などである。第1垂直信号線30および第2垂直信号線31の各々と、メッシュシールド線122、第1、第2、第3のシールド線120a、120b、120cおよび接続シールド線121との間には容量が形成される。なお、第1垂直信号線30および第2垂直信号線31には、第1、第2、第3のシールド線120a、120b、120c等とは異なる配線等との間に形成される容量も付加される。
【0027】
図5は、第1の実施の形態に係る撮像素子3の動作例を示すタイミングチャートである。
図5において、横軸は時刻を示している。
図5に示すタイミングチャートでは、制御信号がハイレベル(例えば電源電位)の場合に制御信号が入力されるトランジスタがオン状態となり、制御信号がローレベル(例えば接地電位)の場合に制御信号が入力されるトランジスタがオフ状態となる。なお、
図5に示す信号Vswdは第2スイッチ部80に入力される制御信号であり、信号Vswsは第1スイッチ部70に入力される制御信号である。
【0028】
時刻t1では、信号RSTnがハイレベルになることで、n行目の各画素10において、排出部14のトランジスタM2がオンになる。これにより、フローティングディフュージョン15の電位がリセット電位になる。また、時刻t1では、信号Vswdおよび信号SEL_Dnがハイレベルになることで、第2スイッチ部80および第2選択スイッチ部18がオンになり、電流源60による電流が第2垂直信号線31および増幅部16に供給される。また、n行目の各画素10のノイズ信号が、増幅部16および第2選択スイッチ部18により第2垂直信号線31に出力される。第2垂直信号線31に付加される容量は、ノイズ信号を蓄積(記憶)する。
【0029】
時刻t2では、信号TXnがハイレベルになることで、n行目の各画素10において、転送部13のトランジスタM1がオンになる。これにより、光電変換部12で光電変換された電荷が、フローティングディフュージョン15に転送される。また、時刻t2では、信号Vswsおよび信号SEL_Snがハイレベルになり、信号Vswdおよび信号SEL_Dnがローレベルになることで、第1スイッチ部70および第1選択スイッチ部17がオンになり、第2スイッチ部80および第2選択スイッチ部18はオフになる。これにより、電流源60による電流は、第1垂直信号線30および増幅部16に供給される。また、n行目の各画素10の光電変換信号が、増幅部16および第1選択スイッチ部17により第1垂直信号線30に出力される。第1垂直信号線30に付加される容量は、光電変換信号を蓄積(記憶)する。さらに、時刻t2から時刻t3までの間では、第2垂直信号線31に記憶されたn行目の各画素10からのノイズ信号が、カラム回路90に出力される。カラム回路90は、n行目の各画素10のノイズ信号をデジタル信号に変換する処理を行う。
【0030】
時刻t3では、信号RSTn+1がハイレベルになることで、n+1行目の各画素10において、フローティングディフュージョン15の電位がリセット電位になる。また、時刻t3では、信号Vswdおよび信号SEL_Dn+1がハイレベルになることで、n+1行目の各画素10のノイズ信号が第2垂直信号線31に出力される。第2垂直信号線31に付加される容量は、ノイズ信号を蓄積(記憶)する。また、時刻t3から時刻t4までの間では、第1垂直信号線30に記憶されたn行目の各画素10からの光電変換信号がカラム回路90に出力され、カラム回路によりデジタル信号に変換される。
【0031】
時刻t4では、信号TXn+1がハイレベルになることで、n+1行目の各画素10において、光電変換部12で光電変換された電荷が、フローティングディフュージョン15に転送される。また、時刻t4では、信号Vswsおよび信号SEL_Sn+1がハイレベルになることで、n+1行目の各画素10の光電変換信号が、第1垂直信号線30に出力される。第1垂直信号線30に付加される容量は、光電変換信号を蓄積(記憶)する。時刻t4から時刻t5までの間では、第2垂直信号線31に記憶されたn+1行目の各画素10からのノイズ信号がカラム回路90に出力され、カラム回路によりデジタル信号に変換される。
【0032】
時刻t5~時刻t8では、時刻t1から時刻3までの期間や時刻t3から時刻t5までの期間の場合と同様にして、n+2行目の各画素10からの信号の読み出し、およびカラム回路90によりアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換処理が並列に行われる。
【0033】
以上説明したように、本実施の形態では、画素10から信号を一方の垂直信号線に読み出している間に、他方の垂直信号線に蓄積した画素10による信号についてAD変換処理が行われる。画素10からの読み出し期間中にAD変換処理を並行して行うことで、全画素10からの読み出し時間を短縮することができる。読み出し時間を短縮することで、高フレームレートの読み出しを実現できる。
【0034】
上述した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)撮像素子3は、入射した光を電荷に変換する光電変換部12を有し、第1方向に配置された複数の画素10と、複数の画素10が接続され、画素10から第1信号が出力される第1信号線と、複数の画素10が接続され、画素10から第2信号が出力される第2信号線と、を備える。本実施の形態では、画素列ごとに第1垂直信号線30および第2垂直信号線31を備える。このため、画素10からの光電変換信号およびノイズ信号を、異なる垂直信号線に読み出すことができ、垂直信号線を、信号を蓄積するための容量として用いることができる。この結果、チップ面積を増大させることなく大きな容量値を得ることができる。
(2)第1信号は、光電変換部12で変換された電荷により生成された信号であり、第2信号は、ノイズ信号である。第1信号線は、電荷により生成された信号を蓄積し、第2信号線は、ノイズ信号を蓄積する。このようにしたので、第1垂直信号線30を、光電変換信号を蓄積する容量として用いることができ、第2垂直信号線31を、ノイズ信号を蓄積する容量として用いることができる。
【0035】
(3)画素10は、電荷により生成された信号を第1信号線に読み出し、ノイズ信号を第2信号線に読み出す読み出し部20を備える。このようにしたので、各画素10から光電変換信号およびノイズ信号を読み出すことができる。
(4)読み出し部20は、第1信号を第1信号線に出力する第1選択スイッチ部17と、第2信号を第2信号線に読み出す第2選択スイッチ部18と、を有する。このようにしたので、光電変換信号を第1垂直信号線30に選択的に読み出し、ノイズ信号を第2垂直信号線31に選択的に読み出すことができる。
【0036】
(5)読み出し部20に電流を供給する電流源60が複数の画素毎10に共通に設けられる。このようにしたので、画素毎に電流源を設ける場合と比較して、消費電流を低減させることができる。
(6)第1信号線と電流源60との間に接続される複数の第2スイッチ部(第1スイッチ部70)と、第2信号線と電流源60との間に接続される複数の第3スイッチ部(第2スイッチ部80)と、を更に備える。このようにしたので、第1垂直信号線30および第2垂直信号線31への電流の供給を制御することができる。
(7)電流源60は、読み出し部20により画素10から電荷により生成された信号を読み出す間は第1信号線に電流を供給し、読み出し部20により画素10からノイズ信号を読み出す間は第2信号線に電流を供給する。このようにしたので、光電変換信号およびノイズ信号を、それぞれ第1垂直信号線30および第2垂直信号線31に読み出し、第1垂直信号線30および第2垂直信号線31に蓄積させることができる。
【0037】
(8)読み出し部20は、電荷を蓄積する蓄積部(フローティングディフュージョン15)と、光電変換部12により変換された電荷を蓄積部15に転送する転送部13と、蓄積部15により蓄積された電荷を排出する排出部14と、蓄積部15により蓄積された電荷による信号を増幅する増幅部16と、を有する。このようにしたので、各画素10から光電変換部12により光電変換された電荷に基づく光電変換信号を読み出すことができる。
(9)読み出し部20は、排出部14によって電荷を排出した際に、ノイズ信号を第2信号線に読み出す。このようにしたので、各画素10からフローティングディフュージョン15の電位をリセット電位にリセットしたときのノイズ信号を読み出すことができる。
【0038】
(10)光電変換部12は、半導体基板200の第1面201aに入射した光を電荷に変換し、読み出し部20は、第1面201aとは異なる半導体基板200の第2面201bに電荷により生成された信号及びノイズ信号を読み出し、第1信号線及び第2信号線は、第2面201bの画素領域に第2面201bに積層して設けられる。本実施の形態では、第1垂直信号線30及び第2垂直信号線31は、画素領域において半導体基板200の第2面201bに積層して設けられる。本実施の形態では、垂直信号線を容量として兼用するため、チップ面積を増大させることなく大きな容量値を得ることができる。また、裏面照射型の撮像素子を用いることで、チップ面積をさらに小さくすることができる。
(11)第1信号線と第2信号線とは、第1方向に延びている。本実施の形態では、第1垂直信号線30および第2垂直信号線31は、画素列に対応して列方向に延びて形成される。このため、信号線の長さ等に応じて大きな容量を得ることができる。
【0039】
(12)第1信号線と第2信号線との間に設けられ、一定電位が印加される配線(シールド線120a~120c)を更に備える。このようにしたので、第1垂直信号線30および第2垂直信号線31の各々の間でのクロストークを抑制することができる。
(13)撮像素子3は、入射した光を電荷に変換する光電変換部12を有し、第1方向に配置された複数の画素10と、複数の画素10が接続され、画素10から光電変換部12で変換された電荷により生成された信号が出力される信号線と、信号線に出力された信号を記憶する、信号線を構成する導体と他の導体とによる容量と、を備える。このようにしたので、垂直信号線に信号を蓄積させることができる。このため、チップ面積を増大させることなく大きな容量値を得ることができる。
【0040】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係る撮像素子では、主に、第1の実施の形態の電流源60に代えて画素10ごとに電流源19を設ける点で、第1の実施の形態と異なる。なお、図中、第1の実施の形態と同一もしくは相当部分には、同一の参照番号を付し、相違点を主に説明する。
【0041】
図6は、第2の実施の形態に係る画素10の構成を示す回路図である。第2の実施の形態では、画素10の読み出し部20は、電流源19を含んで構成される。電流源19は、画素10毎に設けられ、信号VBの電圧に基づいて電流を生成し、生成した電流を増幅部16に供給する。電流源19は、例えばトランジスタM6により構成される。
【0042】
図7は、第2の実施の形態に係る撮像素子3の一部の構成を示す回路図である。垂直スキャナ回路40は、信号VBnを生成して各画素10に供給する。各画素10の電流源19は、垂直スキャナ回路40から出力された信号VBの電圧レベルに応じた電流を生成する。なお、VBnの末尾のnは、画素の行番号を示している。
【0043】
図8は、第2の実施の形態に係る撮像素子3の動作例を示すタイミングチャートである。
図8において、横軸は時刻を示している。
図8に示すタイミングチャートでは、信号VBがハイレベル、すなわち信号VBが所定の電圧レベルに設定された場合に、電流源19は電流の供給を行う。また、信号VBがローレベル(例えば接地電位)の場合は、電流源19は電流の供給を行わない。時刻t1~時刻t5、時刻t5~時刻t9、時刻t9~時刻t13は、それぞれ1水平期間となる。
【0044】
時刻t1では、信号RSTnがハイレベルになることで、n行目の各画素10において、フローティングディフュージョン15の電位がリセット電位になる。また、時刻t1から時刻t3の期間では、信号VBn-1および信号VBnはハイレベルであるため、n-1行目の各画素10(不図示)およびn行目の各画素10において、電流源19は信号VBの信号レベル(電圧)に応じた電流を生成し、生成した電流を増幅部16に供給する。また、時刻t2では、信号SEL_Dnがハイレベルになることで、n行目の各画素10のノイズ信号が、増幅部16および第2選択スイッチ部18により第2垂直信号線31に出力される。第2垂直信号線31に付加される容量は、ノイズ信号を蓄積(記憶)する。
【0045】
時刻t3では、信号TXnがハイレベルになることで、n行目の各画素10において、光電変換部12で光電変換された電荷が、フローティングディフュージョン15に転送される。また、時刻t3では、信号VBn-1がローレベルになり、信号VBn+1がハイレベルとなることで、n-1行目の各画素10では、電流源19による増幅部16への電流の供給が停止される。また、n+1行目の各画素10では、電流源19による増幅部16への電流の供給が開始される。n+1行目の各画素10からの信号の読み出しを行う前に、n+1行目の各画素10において、電流源19による電流の供給が開始される。時刻t4では、信号SEL_Snがハイレベルになることで、n行目の各画素10の光電変換信号が、増幅部16および第1選択スイッチ部17により第1垂直信号線30に出力される。第1垂直信号線30に付加される容量は、光電変換信号を蓄積(記憶)する。また、時刻t3から時刻t5までの間では、第2垂直信号線31に記憶されたn行目の各画素10からのノイズ信号が、カラム回路90に出力されてデジタル信号に変換される。
【0046】
時刻t5では、信号RSTn+1がハイレベルになることで、n+1行目の各画素10において、フローティングディフュージョン15の電位がリセット電位になる。また、時刻t6では、信号SEL_Dn+1がハイレベルになることで、n+1行目の各画素10のノイズ信号が、増幅部16および第2選択スイッチ部18により第2垂直信号線31に出力される。第2垂直信号線31に付加される容量は、ノイズ信号を蓄積(記憶)する。また、時刻t5から時刻t7までの間では、第1垂直信号線30に記憶されたn行目の各画素10からの光電変換信号が、カラム回路90に出力されてデジタル信号に変換される。
【0047】
時刻t7では、信号TXn+1がハイレベルになることで、n+1行目の各画素10において、光電変換部12で光電変換された電荷が、フローティングディフュージョン15に転送される。また、時刻t7では、信号VBnがローレベルになることで、n行目の各画素10では、電流源19による増幅部16への電流の供給が終了する。すなわち、時刻t5で信号SEL_Snがローレベルとなりn行目の各画素10からの信号の読み出しが終了してから所定時間後(例えば、1水平期間の半分の時間後)に、n行目の各画素10の電流源19による電流の供給が終了する。また、時刻t7では、信号VBn+2がハイレベルとなることで、n+2行目の各画素10では、電流源19による増幅部16への電流の供給が開始される。n+2行目の各画素10からの信号の読み出しを行う前に、n+2行目の各画素10において、電流源19による電流の供給が開始される。
【0048】
時刻t8では、信号SEL_Sn+1がハイレベルになることで、n+1行目の各画素10の光電変換信号が、増幅部16および第1選択スイッチ部17により第1垂直信号線30に出力される。第1垂直信号線30に付加される容量は、光電変換信号を蓄積(記憶)する。また、時刻t7から時刻t9までの間では、第2垂直信号線31に記憶されたn+1行目の各画素10からのノイズ信号が、カラム回路90に出力されてデジタル信号に変換される。
【0049】
時刻t9では、信号RSTn+2がハイレベルになることで、n+2行目の各画素10において、フローティングディフュージョン15の電位がリセット電位になる。また、時刻t10では、信号SEL_Dn+2がハイレベルになることで、n+2行目の各画素10のノイズ信号が、増幅部16および第2選択スイッチ部18により第2垂直信号線31に出力される。第2垂直信号線31に付加される容量は、ノイズ信号を蓄積(記憶)する。また、時刻t9から時刻t11までの間では、第1垂直信号線30に記憶されたn+1行目の各画素10からの光電変換信号が、カラム回路90に出力されてデジタル信号に変換される。
【0050】
時刻t11では、信号TXn+2がハイレベルになることで、n+2行目の各画素10において、光電変換部12で光電変換された電荷が、フローティングディフュージョン15に転送される。また、時刻t11では、信号VBn+1がローレベルになることで、n+1行目の各画素10では、電流源19による増幅部16への電流の供給が停止される。すなわち、n+1行目の各画素10からの信号の読み出しが終了してから所定時間後に、電流源19による電流の供給が停止される。また、時刻t11では、信号VBn+3がハイレベルとなることで、n+3行目の各画素10(不図示)では、電流源19による増幅部16への電流の供給が開始される。
【0051】
時刻t12では、信号SEL_Sn+2がハイレベルになることで、n+2行目の各画素10の光電変換信号が、増幅部16および第1選択スイッチ部17により第1垂直信号線30に出力される。第1垂直信号線30に付加される容量は、光電変換信号を蓄積(記憶)する。また、時刻t11から時刻t13までの間では、第2垂直信号線31に記憶されたn+2行目の各画素10からのノイズ信号が、カラム回路90に出力されてデジタル信号に変換される。時刻t13から時刻t14までの間では、第1垂直信号線30に記憶されたn+2行目の各画素10からの光電変換信号が、カラム回路90に出力されてデジタル信号に変換される。
【0052】
第1の実施の形態では、画素10から読み出された光電変換信号と第1垂直信号線30に蓄積される光電変換信号との誤差を抑制するためには、第1選択スイッチ部17および第1スイッチ部70を同時にオフさせる。また、画素10から読み出されたノイズ信号と第2垂直信号線31に蓄積されるノイズ信号との誤差を抑制するためには、第2選択スイッチ部18および第2スイッチ部80を同時にオフさせる。これに対し、第2の実施の形態では、画素10内に電流源19を設けることで、第1垂直信号線30および第2垂直信号線31への信号の読み出しおよび蓄積のタイミングは、それぞれ第1選択スイッチ部17、第2選択スイッチ部18のオンオフのみにより制御される。このため、第1の実施の形態と比較して、画素10からの信号の読み出しおよび蓄積の際のタイミング制御を容易に行うことができる。これにより、第1垂直信号線30および第2垂直信号線31に記憶される信号に誤差が生じることを抑制することができる。
【0053】
また、本実施の形態では、ある行の画素10から信号を読み出している間に、他の行の画素10の電流源19による電流の供給を開始させる。また、画素10からの信号の読み出しが終了してから所定時間後に、その画素10の電流源19による電流の供給を終了させる。これにより、例えば時刻t3~時刻t7の期間ではn行目およびn+1行目の各画素10の電流源19が電流の供給を行い、時刻t7~時刻t11の期間ではn+1行目およびn+2行目の各画素10の電流源19が電流の供給を行う。このため、電流源19の静定時間を確保することができる。また、各期間において、それぞれ2行分の各画素10の電流源19のみが電流の供給を行うため、消費電流を低減させることができる。さらに、各画素10からの読み出し期間において、それぞれ2行分の各画素10の電流源19のみを駆動させることにより、グランド配線に流れる電流を一定の電流とすることができる。このため、グランド配線の電位の変動を抑制することができ、画素10の信号にノイズが混入することを抑制することができる。
【0054】
図9は、第2の実施の形態に係る撮像素子の垂直スキャナ回路40の構成例を示す図である。垂直スキャナ回路40は、アドレスデコーダ41と、パルス生成部42と、合成回路43と、インバータ回路44と、トランジスタM11、12、13とを有し、各々が画素10の行毎に設けられている。
【0055】
アドレスデコーダ41は、アドレスバス51からの信号をデコードしてアドレス信号を生成し、パルス生成部42および合成回路43に出力する。パルス生成部42は、アドレスデコーダ41からの信号および制御パルスバス52からの信号を用いて、画素10の動作を制御するための信号(例えば信号TXn等)を生成し、画素10に出力する。合成回路43は、アドレスデコーダ41からの信号および電流源制御バス53からの信号を用いて、トランジスタM11のオンオフを制御する信号Vswを生成して、トランジスタM11およびインバータ回路44に出力する。
【0056】
インバータ回路44は、信号Vswが入力され、信号Vswの反転信号となる信号Vswbを出力する。トランジスタM11は、電流線1または電流線2(以下、総称して電流線と記す)とトランジスタM13との間の電気的な接続状態を切り替えるスイッチとして機能する。信号Vswがハイレベル、信号Vswbがローレベルになることで、トランジスタM11がオン、トランジスタM12がオフとなり、トランジスタM13は、電流線からの基準電流に基づく電圧レベルの信号VBを生成して各画素10に供給する。トランジスタM13は、各画素10の電流源19に基準電流に基づく電圧を供給する電圧供給部として機能する。トランジスタM13のゲート幅は、例えば電流源19を構成するトランジスタM6のゲート幅のN倍となっており、電流源19は、トランジスタM6のゲート幅に対するトランジスタM13のゲート幅の比に応じた電流を生成する。
【0057】
図10(a)は、第2の実施の形態に係る撮像素子の合成回路43の構成例を示す図である。合成回路43は、AND回路401~404およびOR回路405を含む論理回路により構成される。AND回路401~404には、アドレスデコーダ41からのアドレス信号、および電流源制御バス53からの信号が入力される。
図10中の信号n-1、n、n+1は、アドレスデコーダ41からのアドレス信号であり、信号a、bは、電流源制御バス53からの信号である。
【0058】
図10(b)は、第2の実施の形態に係る撮像素子の合成回路43の動作例を示すタイミングチャートである。時刻t40~時刻t42では、アドレス信号n-1がハイレベルとなり、n-1行目の各画素10からの信号の読み出しが行われる。時刻t42~時刻t44では、アドレス信号nがハイレベルとなり、n行目の各画素10からの信号の読み出しが行われる。時刻t44~時刻t46では、アドレス信号n+1がハイレベルとなり、n+1行目の各画素10からの信号の読み出しが行われる。時刻t40~時刻t42、時刻t42~時刻t44、時刻t44~時刻t46は、それぞれ1水平期間となる。
【0059】
時刻t40から時刻t41の期間では、アドレス信号n-1がハイレベル、信号aがハイレベル、信号bがローレベルになり、合成回路43は、論理回路による信号の合成を行って、ローレベルの信号Vswを出力する。時刻t41から時刻t42の期間では、アドレス信号n-1がハイレベル、信号aがローレベル、信号bがハイレベルになり、合成回路43は、ハイレベルの信号Vswを出力する。時刻t42から時刻t43の期間では、アドレス信号nがハイレベル、信号aがハイレベル、信号bがローレベルになり、合成回路43は、ハイレベルの信号Vswを出力する。
【0060】
時刻t43から時刻t44の期間では、アドレス信号nがハイレベル、信号aがローレベル、信号bがハイレベルになり、合成回路43は、ハイレベルの信号Vswを出力する。時刻t44から時刻t45の期間では、アドレス信号n+1がハイレベル、信号aがハイレベル、信号bがローレベルになり、合成回路43は、ハイレベルの信号Vswを出力する。時刻t45から時刻t46の期間では、アドレス信号n+1がハイレベル、信号aがローレベル、信号bがハイレベルになると、合成回路43は、ローレベルの信号Vswを出力する。
【0061】
合成回路43は、生成した信号Vswを、
図9に示すトランジスタM11およびインバータ回路44に出力する。トランジスタM11は信号Vswがハイレベルになるとオンして、トランジスタM13は電流線からの基準電流に基づく電圧レベルの信号VBを生成して各画素10の電流源19に出力する。電流源19は、信号VBの電圧レベルに応じて電流の供給を開始する。また、信号Vswがローレベルになると、トランジスタM11はオフとなる。信号Vswがローレベルになると、信号Vswbがハイレベルになり、トランジスタM12がオンとなる。この場合、信号VBの信号レベルは、接地電位となる。
【0062】
このように、アドレス信号nがハイレベルとなる前、n-1行目の画素10から信号を読み出している間に、信号Vswはハイレベルとなる。このため、n行目の画素10からの信号の読み出しを開始する前に、電流源19による電流の供給を開始させることができる。また、アドレス信号nがローレベルとなってから所定時間後、すなわちn行目の画素10からの信号の読み出しが終了してから所定時間後に、信号Vswはローレベルとなる。このため、n行目の画素10からの信号の読み出しが終了してから所定時間後に、電流源19による電流の供給を終了させることができる。
【0063】
上述した実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
(14)読み出し部20に電流を供給する電流源19が画素10毎に設けられる。このようにしたので、画素10からの信号の読み出しおよび蓄積の際のタイミング制御を容易に行うことができる。また、第1垂直信号線30および第2垂直信号線31に記憶される信号に誤差が生じることを抑制することができる。
(15)複数の画素10は、第1画素と第1画素の次に読み出し対象となる第2画素とを含み、第2画素に設けられた電流源19は、第1画素から電荷により生成された信号を読み出している間に、第2画素の読み出し部20への電流の供給を開始する。このようにしたので、電流源19の静定時間を確保することができる。また、消費電流を低減させることができる。
(16)基準電流に基づく電圧を生成し、生成した電圧を電流源19に供給する電圧供給部(トランジスタM13)が複数の画素毎に設けられる。このようにしたので、電流源19による読み出し部20への電流の供給を画素10の行毎に制御することができる。
【0064】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態に係る撮像素子では、主に、第2の実施の形態の電流源19に加えて画素10ごとに第3スイッチ部21を設ける点で、第2の実施の形態と異なる。なお、図中、第1および第2の実施の形態と同一もしくは相当部分には、同一の参照番号を付し、相違点を主に説明する。
【0065】
図11は、第3の実施の形態に係る画素10の構成を示す回路図である。第3の実施の形態では、画素10の読み出し部20は、第3スイッチ部21を含んで構成される。第3スイッチ部21は、信号SHにより制御され、電流源19と増幅部16との間の電気的な接続状態を切り替える。本実施の形態では、全画素10の読み出し期間に渡って常に所定の電圧レベルの信号VBが電流源19に供給され、電流源19は、電流の供給が可能な状態とされる。このため、第3スイッチ部21のオンオフ制御により電流源19による増幅部16への電流の供給を開始及び停止させる。このため、電流源19の静定時間を短縮して、電流源19による電流の供給を開始させることができる。第3スイッチ部21は、例えばトランジスタM7により構成される。
【0066】
図12は、第3の実施の形態に係る撮像素子3の一部の構成を示す回路図である。垂直スキャナ回路40は、信号SHnを生成して各画素10に供給する。各画素10の第3スイッチ部21は、垂直スキャナ回路40から出力された信号SHnにより制御される。なお、SHnの末尾のnは、画素の行番号を示している。
【0067】
図13は、第3の実施の形態に係る撮像素子の垂直スキャナ回路40の構成例を示す図である。第3の実施の形態に係る垂直スキャナ回路40は、全画素10の読み出し期間に渡って、常に所定のバイアス電圧となる信号VBを、全画素10の各電流源19に供給する。また、合成回路43は、アドレスデコーダ41からの信号および電流源制御バス53からの信号に基づき、信号SHnを生成して各画素10の第3スイッチ部21に出力する。なお、信号SHnによって第3スイッチ部21をオンさせるタイミングは、
図8に示した信号VBnによって電流源19による電流の生成を開始させるタイミングと同様である。また、信号SHnによって第3スイッチ部21をオフさせるタイミングは、
図8に示した信号VBnによって電流源19による電流の生成を終了させるタイミングと同様である。
【0068】
上述した実施の形態によれば、第1および第2の実施の形態と同様の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
(17)撮像素子3は、電流源19による電流の供給を開始及び停止する複数の第1スイッチ部(第3スイッチ部21)を更に備える。第1スイッチ部は、画素10毎に設けられる。このようにしたので、第3スイッチ部21のオンオフ制御により、電流源19による電流の供給を開始及び停止させることができる。また、本実施の形態では、電流源19には、例えば全画素10からの読み出し期間の間、常に所定のバイアス電圧となる信号VBが供給される。このため、電流源19の静定時間を短縮して、電流源19による電流の供給を開始させることができる。
【0069】
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
【0070】
(変形例1)
図14は、変形例1に係る撮像素子の断面構造の一例を示す図である。
図14に示すように、第1垂直信号線30および第2垂直信号線31を複数層に分けて配置するようにしてもよい。この場合、シールド線120a、120b、120cについても、複数層に分けて配置するようにする。また、
図14に示すように、配線層210の配線レイアウトの対称性を確保するためのダミーの配線130を配置するようにしてもよい。
【0071】
(変形例2)
上述した実施の形態では、光電変換部12としてフォトダイオードを用いる例について説明した。しかし、光電変換部12として光電変換膜を用いるようにしてもよい。
【0072】
(変形例3)
上述した実施の形態では、撮像素子3は、裏面照射型の構成とする例について説明した。しかし、撮像素子3を、光が入射する入射面側に配線層210を設ける表面照射型の構成としてもよい。
【0073】
(変形例4)
上述した実施の形態では、第1選択スイッチ部17、第2選択スイッチ部18、第1スイッチ部70、および第2スイッチ部80は、それぞれトランジスタで構成する例について説明したが、それぞれ光スイッチで構成するようにしてもよい。このように構成することで、第1選択スイッチ部17、第2選択スイッチ部18、第1スイッチ部70、および第2スイッチ部80を高速にオンオフ制御することができる。これにより、画素10から読み出された光電変換信号と第1垂直信号線30に蓄積される光電変換信号との誤差、および画素10から読み出されたノイズ信号と第2垂直信号線31に蓄積されるノイズ信号との誤差をそれぞれ抑制することができる。
【0074】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【0075】
次の優先権基礎出願の開示内容は引用文としてここに組み込まれる。
日本国特許出願2016年第65490号(2016年3月29日出願)
【符号の説明】
【0076】
3 撮像素子、12 光電変換部、20 読み出し部、30 第1垂直信号線、31 第2垂直信号線