(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】ウェハ洗浄水供給システム及びウェハ洗浄水の供給方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20220712BHJP
B08B 3/04 20060101ALI20220712BHJP
C02F 1/00 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
H01L21/304 648F
H01L21/304 648K
H01L21/304 648G
H01L21/304 647Z
B08B3/04 Z
C02F1/00 X
(21)【出願番号】P 2020180004
(22)【出願日】2020-10-27
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】杉田 航
【審査官】川原 光司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/039764(WO,A1)
【文献】特開2019-192863(JP,A)
【文献】特開2015-073009(JP,A)
【文献】特開2018-157149(JP,A)
【文献】特開2011-238666(JP,A)
【文献】特開2015-220318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B08B 3/04
C02F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超純水に対して薬剤を溶解することで所定の薬剤濃度のウェハ洗浄水を製造するウェハ洗浄水製造部と、
前記ウェハ洗浄水製造部で製造されたウェハ洗浄水をユースポイントに供給する循環式の洗浄水供給管と、
前記ウェハ洗浄水製造部と循環式の洗浄水供給管とを接続する補給管と、
この循環式の洗浄水供給管を流通するウェハ洗浄水のユースポイントでの洗浄水の使用量を算出するための計測手段と、
前記計測手段の測定結果に基づき前記ウェハ洗浄水製造部からの前記循環式の洗浄水供給管へのウェハ洗浄水の補給量を制御する制御手段と
を備
え、
前記循環式の洗浄水供給管に貯留槽が設けられていない、ウェハ洗浄水供給システム。
【請求項2】
前記計測手段が流量計であり、該流量計の計測値に基づいてウェハ洗浄水のユースポイントでの使用量を算出し、前記制御手段により前記ウェハ洗浄水の補給量を制御する、請求項1に記載のウェハ洗浄水供給システム。
【請求項3】
前記計測手段が圧力計であり、該圧力計の計測値に基づいてウェハ洗浄水のユースポイントからの使用量を算出し、前記制御手段により前記ウェハ洗浄水の補給量を制御する、請求項1に記載のウェハ洗浄水供給システム。
【請求項4】
前記ユースポイントが複数台の洗浄機を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のウェハ洗浄水供給システム。
【請求項5】
前記循環式の洗浄水供給管にリリーフ弁を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のウェハ洗浄水供給システム。
【請求項6】
前記ウェハ洗浄水製造部が、液体の薬剤成分をポンプにより供給される、または、液体の薬剤成分を貯留したタンクから不活性ガスによる加圧手段により供給される、請求項1~
5のいずれか1項に記載のウェハ洗浄水供給システム。
【請求項7】
超純水に対して薬剤を溶解することで所定の薬剤濃度のウェハ洗浄水を製造し、この製造されたウェハ洗浄水を
貯留槽が設けられていない循環式の洗浄水供給管に送液することで、ユースポイントにウェハ洗浄水を供給し、前記ユースポイントで未使用のウェハ洗浄水を循環式の洗浄水供給管により循環再利用するウェハ洗浄水の供給方法であって、
前記循環式の洗浄水供給管を流通するウェハ洗浄水のユースポイントでの洗浄水の使用量を算出するための指標を計測し、
前記計測結果に基づ
き制御手段が前記ウェハ洗浄水の補給量を制御する、
ウェハ洗浄水の供給方法。
【請求項8】
前記ウェハ洗浄水の薬剤成分が所定の濃度となるまでウェハ洗浄水を前記循環式の洗浄水供給管に供給しない、請求項
7に記載のウェハ洗浄水の供給方法。
【請求項9】
前記ユースポイントでウェハ洗浄水を使用しない時にも少量の洗浄水を循環式の洗浄水供給管に供給する、
請求項
7又は
8に記載のウェハ洗浄水の供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体用ウェハの洗浄・リンス工程において有効な、アルカリ、酸、酸化剤、還元剤、各種ガス成分等の溶質をごく低濃度含む洗浄水を安定供給できるウェハ洗浄水供給システム及びウェハ洗浄水の供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体用シリコンウェハなどの洗浄工程では、pHや酸化還元電位の制御に有効な溶質を超純水にごく低濃度溶解した水(以下、ウェハ洗浄水と呼ぶ)が使われることがある。このウェハ洗浄水は、超純水を基本材料として、洗浄やリンス工程などそれぞれの工程の目的に合致したpHや酸化還元電位などの液性を持たせるために、必要最小限の酸・アルカリ、酸化剤・還元剤が添加される。この際、還元性を持たせるためにはH2ガス溶解水が活用されているが、pH調整と酸化性付与には、一般的に薬液をポンプ注入や不活性ガスによる加圧方式で、液体の薬剤を微量添加(薬注)する方法が活用されている。
【0003】
この場合、超純水の流量が一定であれば、所望の溶質濃度となるように薬注することは容易であるが、実際にウェハ洗浄水が用いられる洗浄機においては、ウェハに注がれる洗浄水の供給・停止が複数のバルブの開閉で制御されており、流量が不規則に変動する。この変動に対して、ウェハ洗浄水の溶質濃度が所望範囲に収まるように超純水流量に対する比例制御、濃度モニタの信号を受けてのPID制御など、様々な手法による溶解コントロールが行われている。しかし、特に複数の洗浄チャンバを有する枚葉式洗浄機における不規則な流量変動に十分追随できる薬注コントロールは実現できていない。この対策として、最大使用量を想定したウェハ洗浄水を製造して洗浄機に供給することが考えられるが、これでは大幅に過剰量のウェハ洗浄水を供給することになるので、高価なウェハ洗浄水が無駄になってしまう。
【0004】
そこで、ウェハ洗浄水の節水を目的として貯留槽を設け、洗浄機で使用しないウェハ洗浄水を貯留槽に戻し循環する方式のウェハ洗浄水供給システムが特許文献1で提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたウェハ洗浄水供給システムは、貯留槽を用いるので、装置が大型化せざるを得ないだけでなく、製造したウェハ洗浄水の気体との接触時間やウェハ洗浄水を製造してからの滞留時間が長くなるため、ウェハ洗浄水の溶存ガス濃度が高くなる蓋然性が高い、という問題点がある。この対策として貯留槽にN2ガスをパージすることが行われているが、装置の大型化の問題がより顕在化してしまうだけでなく、N2ガスが溶解する、という問題が生じる。
【0007】
このようにウェハ洗浄水の溶質濃度のコントロールが可能で、余剰水が少なく、溶存ガスの混入の恐れが低く、省スペース化の可能なウェハ洗浄水供給システムは従来なかった。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、余剰水が少なく、溶存ガスの混入の恐れが低く、省スペース化の可能なウェハ洗浄水供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的に鑑み、本発明は第一に、超純水に対して薬剤を溶解することで所定の薬剤濃度のウェハ洗浄水を製造するウェハ洗浄水製造部と、前記ウェハ洗浄水製造部で製造されたウェハ洗浄水をユースポイントに供給する循環式の洗浄水供給管と、前記ウェハ洗浄水製造部と循環式の洗浄水供給管とを接続する補給管と、この循環式の洗浄水供給管を流通するウェハ洗浄水のユースポイントでの洗浄水の使用量を算出するための計測手段と、前記計測手段の測定結果に基づき前記ウェハ洗浄水製造部からの前記循環式の洗浄水供給管へのウェハ洗浄水の補給量を制御する制御手段と、を備える、ウェハ洗浄水供給システムを提供する(発明1)。
【0010】
かかる発明(発明1)によれば、循環式の洗浄水供給管を流通するウェハ洗浄水の回収量を計測することにより、ウェハ洗浄水の使用量を算出し、循環式の洗浄水供給管を流通するウェハ洗浄水の量が所定量を下回ったら、これに対応した量のウェハ洗浄水をウェハ洗浄水製造部で製造して補給してやることで、必要量のウェハ洗浄水のみを製造すればよいので、余剰水を最小限とすることができる。また、ウェハ洗浄水の薬剤成分を精度よくコントロールすることができる。なお、本発明において、所定量とは基準量に対してある程度の量的範囲を含むものとし、所定の薬剤濃度とは、基準とする濃度に対してある程度の濃度範囲を含むものとする。
【0011】
上記発明(発明1)においては、前記計測手段が流量計であり、該流量計の計測値に基づいてウェハ洗浄水のユースポイントでの使用量を算出し、前記制御手段により前記ウェハ洗浄水の補給量を制御してもよい(発明2)。
【0012】
かかる発明(発明2)によれば、循環式の洗浄水供給管に回収量を計測する計測手段として流量計を設けることにより、ウェハ洗浄水の使用量を算出し、この使用量に対応した量のウェハ洗浄水をウェハ洗浄水製造部で製造して補給してやることで、必要量のウェハ洗浄水のみを製造すればよいので、余剰水を最小限とすることができる。また、ウェハ洗浄水の薬剤成分を精度よくコントロールすることができる。
【0013】
上記発明(発明1)においては、前記計測手段が圧力計であり、該圧力計の計測値に基づいてウェハ洗浄水のユースポイントからの使用量を算出し、前記制御手段により前記ウェハ洗浄水の補給量を制御してもよい(発明3)。
【0014】
かかる発明(発明3)によれば、循環式の洗浄水供給管に回収量を計測する計測手段として圧力計を設けることにより、循環式の洗浄水供給管を戻る回収水の圧力を計測して、この圧力に対応したウェハ洗浄水の回収量を算出し、この回収量が所定量を下回ったらウェハ洗浄水が不足したと判断して、ウェハ洗浄水の使用量(供給量-回収量)に対応した量のウェハ洗浄水をウェハ洗浄水製造部で製造して補給してやることで、必要量のウェハ洗浄水のみを製造すればよいので、余剰水を最小限とすることができる。また、ウェハ洗浄水の薬剤成分を精度よくコントロールすることができる。
【0015】
上記発明(発明1~3)においては、前記ユースポイントが複数台の洗浄機を有することが好ましい(発明4)。
【0016】
かかる発明(発明4)によれば、ユースポイントが複数台の洗浄機を有する場合には、それぞれの洗浄機の稼働状況によって、ユースポイント全体でのウェハ洗浄水の使用量が大きく変動するが、この変動に応じて使用した量のウェハ洗浄水をウェハ洗浄水製造部で製造して補給してやることとすれば、必要量のウェハ洗浄水のみを製造すればよくなるので、余剰水を最小限とすることができる。また、ウェハ洗浄水の薬剤成分を精度よくコントロールすることができる。
【0017】
上記発明(発明1~4)においては、前記循環式の洗浄水供給管にリリーフ弁を有することが好ましい(発明5)。
【0018】
かかる発明(発明5)によれば、循環式の洗浄水供給管に過剰量のウェハ洗浄水が流通した場合には、リリーフ弁からウェハ洗浄水を排出することで、循環式の洗浄水供給管を流通するウェハ洗浄水の水量を適正に維持することができる。
【0019】
上記発明(発明1~5)においては、前記ウェハ洗浄水製造部と循環式の洗浄水供給管との間に貯留槽を有しないことが好ましい(発明6)。
【0020】
かかる発明(発明6)によれば、ウェハ洗浄水製造部から補給管を介して直接ウェハ洗浄水を循環式の洗浄水供給管に供給することで、貯留槽を設ける必要がなくなるため、ウェハ洗浄水供給のコンパクト化が図れるとともに、ウェハ洗浄水が貯留槽に滞留することがないので、ウェハ洗浄水の製造から使用までの滞留時間を短くできるため、清浄度を確保することができる。
【0021】
上記発明(発明1~6)においては、前記ウェハ洗浄水製造部が、液体の薬剤成分をポンプにより供給される、または、液体の薬剤成分を貯留したタンクから不活性ガスによる加圧手段により供給されることが好ましい(発明7)。
【0022】
かかる発明(発明7)によれば、ウェハ洗浄水製造部から循環式の洗浄水供給管に供給するウェハ洗浄水の水量を安定的に調整することができる。
【0023】
また、本発明は第二に、超純水に対して薬剤を溶解することで所定の薬剤濃度のウェハ洗浄水を製造し、この製造されたウェハ洗浄水を循環式の洗浄水供給管に送液することで、ユースポイントにウェハ洗浄水を供給し、前記ユースポイントで未使用のウェハ洗浄水を循環式の洗浄水供給管により循環再利用するウェハ洗浄水の供給方法であって、前記循環式の洗浄水供給管を流通するウェハ洗浄水のユースポイントでの洗浄水の使用量を算出するための指標を計測し、前記計測結果に基づき前記制御手段が前記ウェハ洗浄水の補給量を制御する、ウェハ洗浄水の供給方法を提供する(発明8)。
【0024】
かかる発明(発明8)によれば、前記循環式の洗浄水供給管を流通するウェハ洗浄水のユースポイントでの洗浄水の使用量に対応した量のウェハ洗浄水の補給量を制御することにより、必要量のウェハ洗浄水のみを補給すればよいので、余剰水を最小限とすることができる。また、ウェハ洗浄水の薬剤成分を精度よくコントロールすることができる。
【0025】
上記発明(発明8)においては、前記ウェハ洗浄水の薬剤成分が所定の濃度となるまでウェハ洗浄水を前記循環式の洗浄水供給管に供給しないことが好ましい(発明9)。
【0026】
かかる発明(発明9)によれば、ユースポイントへ所定の薬剤成分濃度を充足しないウェハ洗浄水が供給されるのを防止することができる。
【0027】
上記発明(発明8,9)においては、前記ユースポイントでウェハ洗浄水を使用しない時にも少量の洗浄水を循環式の洗浄水供給管に供給することが好ましい(発明10)。
【0028】
かかる発明(発明10)によれば、所定の薬剤濃度のウェハ洗浄水の製造を停止しないので、ウェハ洗浄水の薬剤濃度を安定させることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明のウェハ洗浄水供給システムによれば、循環式の洗浄水供給管を流通するウェハ洗浄水のユースポイントでの使用量を算出し、これに対応した量のウェハ洗浄水をウェハ洗浄水製造部で製造して補給してやることで、必要量のウェハ洗浄水のみを製造すればよいので、余剰水を最小限とすることができる。また、ウェハ洗浄水の薬剤成分を精度よくコントロールすることができる。さらに、貯留槽を設ける必要がないのでシステム全体のコンパクト化が図れるばかりか、ウェハ洗浄水が貯留槽に滞留することがないので、ウェハ洗浄水の製造から使用までの滞留時間を短くできるため、清浄度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の第一の実施形態によるウェハ洗浄水供給システムを示す概略図である。
【
図2】本発明の第二の実施形態によるウェハ洗浄水供給システムを示す概略図である。
【
図3】本発明の第三の実施形態によるウェハ洗浄水供給システムを示す概略図である。
【
図4】本発明の第四の実施形態によるウェハ洗浄水供給システムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<第一の実施形態>
以下、本発明のウェハ洗浄水供給システム及びウェハ洗浄水の供給方法の第一の実施形態について添付図面を参照にして詳細に説明する。
【0032】
〔ウェハ洗浄水供給システム〕
図1は、本発明の第一の実施形態によるウェハ洗浄水供給システムを示している。
図1においてウェハ洗浄水供給システム1は、超純水の流量に対して所定量の薬剤を溶解することで、所定の薬剤濃度のウェハ洗浄水を製造するウェハ洗浄水製造部2と、ウェハ洗浄水製造部2から延在した補給管3と、この補給管3に接続した循環式の洗浄水供給管4とを有する。
【0033】
循環式の洗浄水供給管4は、送液ポンプ11を介してユースポイント5に洗浄液Wを送液可能となっている。本実施形態においては、洗浄水供給管4の補給管3の接続部とユースポイント5との間を、それぞれ供給側4Aと回収側4Bと呼ぶこととする。供給側4Aには、計測手段としての供給側流量計12が設けられているとともに排出管13と分析用分取管15とが接続されていて、排出管13にはリリーフ弁(圧力調整弁)14が設けられている。また、分析用分取管15には、各種水質センサ(図示せず)と連動した第一の監視モニタ16が設けられている。また、回収側4Bには、計測手段としての回収側流量計21が設けられているとともに監視用分取管22が接続されていて、監視用分取管22には各種水質センサ(図示せず)と連動した第二の監視モニタ23が設けられている。そして、供給側流量計12と回収側流量計21との測定結果と、第一の監視モニタ16及び第二の監視モニタ23で得られた各種水質センサによる水質データとは図示しない制御装置に送信され、この制御装置によりウェハ洗浄水製造部2を制御可能となっている。
【0034】
〔ウェハ洗浄水の供給方法〕
次に前述したような構成を有する本実施形態のウェハ洗浄水供給システム1を用いたウェハ洗浄水の供給方法について説明する。
【0035】
(ウェハ洗浄水製造工程)
まず、ウェハ洗浄水製造部2に超純水を供給するとともにこの超純水の供給量に対して所定の濃度となるように薬液を供給してウェハ洗浄水Wを調製する。
【0036】
なお、本明細書中において、原水となる超純水とは、例えば、抵抗率:18.1MΩ・cm以上、微粒子:粒径50nm以上で1000個/L以下、生菌:1個/L以下、TOC(Total Organic Carbon):1μg/L以下、全シリコン:0.1μg/L以下、金属類:1ng/L以下、イオン類:10ng/L以下、過酸化水素;30μg/L以下、水温:25±2℃のものが好適である。
【0037】
超純水に溶解する薬剤としては、例えば、pH調整剤を用いることができる。このpH調整剤としては特に制限はないが、pH7未満に調整する場合には、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸などの酸性溶液を用いることができる。また、pH7以上に調整する場合には、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又はTMAH等のアルカリ性溶液を用いることができる。さらにガス溶解膜を用いて、炭酸ガス(CO2)を超純水に対して所定の濃度に溶解してもよい。
【0038】
また、薬剤として酸化還元電位調整剤を用いることもできる。この酸化還元電位調整剤としては、酸化還元電位を高く(プラス側)調整する場合には、過酸化水素水などを用いることができる。また、酸化還元電位を低く(マイナス側)調整する場合にはシュウ酸、硫化水素、ヨウ化カリウムなどの溶液を用いることができる。さらにガス溶解膜を用いて、水素(H2)、オゾン(O3)などを溶解してもよい。
【0039】
これらpH調整剤又は酸化還元電位調整剤は、いずれか一方を添加してもよいし、両方を添加してもよい。
【0040】
なお、ウェハ洗浄水Wの製造を開始した直後(初期)は、ウェハ洗浄水Wにおける薬剤の濃度が所望の濃度範囲に収まらないことがある。そこで、所望の濃度で安定するまでに要する時間や処理量を予め調べておいて、そこに至るまでドレン水として排出することで、補給管3から供給するウェハ洗浄水Wの溶質濃度を精度よく制御することができる。
【0041】
(ウェハ洗浄水供給工程)
ウェハ洗浄水製造部2で製造されたウェハ洗浄水Wは、補給管3を介して循環式の洗浄水供給管4に流入し、送液ポンプ11によりユースポイント5に供給される。このとき、ウェハ洗浄水Wのユースポイント5への供給水量は、供給側流量計12により計測されるが、例えば、ユースポイント5が複数台の洗浄機により構成されている場合には、ウェハ洗浄水Wの初期供給量は、ユースポイント5でウェハ洗浄水Wが不足することがないように最大水量を基準に設定すればよい。また、ウェハ洗浄水Wの水質は、分析用分取管15に設けられた各種水質センサ(図示せず)と連動した第一の監視モニタ16により監視し、設定された水質であることを監視する。
【0042】
ここで、ユースポイント5でのウェハ洗浄水Wの使用量は、洗浄機の稼働台数などにより、大きく変動する。このため、未使用のウェハ洗浄水Wは、循環式の洗浄水供給管4の回収側4Bから補給管3に向けて還流する。このとき、ウェハ洗浄水Wの回収水量は、回収側流量計21により計測される。また、回収側のウェハ洗浄水Wの水質は、ウェハ洗浄水Wの水質は、監視用分取管22に設けられた各種水質センサ(図示せず)と連動した第二の監視モニタ23により監視し、設定された水質との差異を監視する。
【0043】
そして、これら供給側流量計12の計測値と回収側流量計21の計測値をそれぞれ制御装置に送信し、制御装置は両者の差を使用水量として算出し、フィードバック制御によりウェハ洗浄水製造部2を制御して、算出された水量のウェハ洗浄水Wを洗浄水供給管4に補給する。なお、本実施形態においては、補給されるウェハ洗浄水Wの水量が過剰となり、浄水供給管4内のウェハ洗浄水Wの圧力が所定の値を越えた場合には、リリーフ弁(圧力調整弁)14が作動することで余剰なウェハ洗浄水Wを排出管13から排出することで、浄水供給管4内のウェハ洗浄水Wの圧力を一定値以下に保持することが可能となっている。さらに、ユースポイント5でウェハ洗浄水Wを使用しない時にも、ウェハ洗浄水製造部2から少量のウェハ洗浄水を循環式の洗浄水供給管に供給することにより、ウェハ洗浄水Wの製造を停止しないことで、ウェハ洗浄水Wの薬剤濃度を安定させることが好ましい。
【0044】
また、各種水質センサにより計測された第一の監視モニタ16及び第二の監視モニタ23の計測値も制御装置に送信し、制御装置は回収されたウェハ洗浄水Wの水質の計測値に基づいて、必要に応じウェハ洗浄水製造部2で製造するウェハ洗浄水Wの水質を制御することが好ましい。
【0045】
このように本実施形態においては、循環式の洗浄水供給管4を流通するウェハ洗浄水Wの回収量を計測することにより、循環式の洗浄水供給管4を流通するウェハ洗浄水Wの回収流量を計測して、このウェハ洗浄水Wの回収水量からユースポイント5での使用水量(供給水量-回収水量)を算出する。そして、この使用水量分のウェハ洗浄水Wをウェハ洗浄水製造部2で製造して補給することにより、余剰のウェハ洗浄水Wを最小限とすることができ、ウェハ洗浄水Wの薬剤成分を精度よくコントロールすることができる。また、貯留槽を設ける必要がないのでシステム1全体のコンパクト化が図れるばかりか、ウェハ洗浄水Wを貯留槽に滞留することがないので、ウェハ洗浄水Wの製造から使用までの滞留時間を短くできるため、清浄度を確保することができる、という効果も奏する。
【0046】
<第二の実施形態>
次に本発明の第二の実施形態について説明する。
【0047】
〔ウェハ洗浄水供給システム〕
図2は、本発明の第二の実施形態によるウェハ洗浄水供給システムを示している。第二実施形態のウェハ洗浄水供給システム1は、前述した第一の実施形態において、供給側流量計12の前段にガス溶解膜17を備える以外、同じ構成を有するので、同一の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0048】
ウェハ洗浄水Wに水素、二酸化炭素などのガス成分を溶解する場合には、本実施形態のように循環式の洗浄水供給管4の供給側4Aにガス溶解膜17を設けて、洗浄水供給管4において所望とするガス成分を溶解するように構成してもよい。
【0049】
<第三の実施形態>
本発明の第三の実施形態について説明する。
【0050】
〔ウェハ洗浄水供給システム〕
図3は、本発明の第三の実施形態によるウェハ洗浄水供給システムを示している。第三実施形態のウェハ洗浄水供給システムは、前述した第一の実施形態において、回収側流量計21の代わりに圧力計測手段としての圧力計31を備える以外、同じ構成を有するので、同一の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0051】
図3において、ウェハ洗浄水供給システム1は、超純水の流量に対して所定量の薬剤を溶解することで、所定の薬剤濃度のウェハ洗浄水を製造するウェハ洗浄水製造部2と、ウェハ洗浄水製造部2から延在した補給管3と、この補給管3に接続した循環式の洗浄水供給管4とを有する。
【0052】
循環式の洗浄水供給管4は、送液ポンプ11を介してユースポイント5に洗浄液Wを送液可能となっており、補給管3とユースポイント5との間でそれぞれ供給側4Aと回収側4Bとなっており、供給側4Aには、供給側流量計12が設けられているとともに排出管13と分析用分取管15とが接続されていて、排出管13にはリリーフ弁(圧力調整弁)14が設けられている。また、分析用分取管15には、各種水質センサ(図示せず)と連動した第一の監視モニタ16が設けられている。また、回収側4Bには、計測手段としての圧力計31が設けられているとともに監視用分取管22が接続されていて、監視用分取管22には各種水質センサ(図示せず)と連動した第二の監視モニタ23が設けられている。そして、供給側流量計12の測定結果と、圧力計31の測定結果と、第一の監視モニタ16及び第二の監視モニタ23で得られた各種水質センサによる水質データとは図示しない制御装置に送信され、この制御装置によりウェハ洗浄水製造部2を制御可能となっている。
【0053】
〔ウェハ洗浄水の供給方法〕
次に前述したような構成を有する本実施形態のウェハ洗浄水供給システム1を用いたウェハ洗浄水の供給方法について説明する。
【0054】
(ウェハ洗浄水供給工程)
ウェハ洗浄水製造部2で製造されたウェハ洗浄水Wは、補給管3を介して循環式の洗浄水供給管4に流入し、送液ポンプ11によりユースポイント5に供給される。このとき、ウェハ洗浄水Wのユースポイント5への供給水量は、供給側流量計12により計測されるが、例えば、ユースポイント5が複数台の洗浄機により構成されている場合には、ウェハ洗浄水Wの初期供給量は、ユースポイント5でウェハ洗浄水Wが不足することがないように最大水量を基準に設定すればよい。そして、この際の送液ポンプ11によるウェハ洗浄水Wの供給水量と洗浄水供給管4の内径とにより供給側4Aの管内圧力を算出することができる。
【0055】
そして、ユースポイント5でのウェハ洗浄水Wの使用量は、洗浄機の稼働台数などにより、大きく変動する。このため、未使用のウェハ洗浄水Wは、循環式の洗浄水供給管4の回収側4Bから補給管3に向けて還流する。このとき、ウェハ洗浄水Wの回収水の洗浄水供給管4の管内圧力を圧力計31により計測する。また、回収側のウェハ洗浄水Wの水質は、ウェハ洗浄水Wの水質は、監視用分取管22に設けられた各種水質センサ(図示せず)と連動した第二の監視モニタ23により監視し、設定された水質との差異を監視する。
【0056】
そして、これら供給側流量計12の計測値と、圧力計31により計測された回収側4Bの管内圧力とをそれぞれ制御装置に送信する。この制御装置は、この際の送液ポンプ11によるウェハ洗浄水Wの供給水量と洗浄水供給管4の内径とにより供給側4A側の管内圧力を算出して、圧力計31により計測された回収側4Bの管内圧力との差から、使用水量を算出し、フィードバック制御によりウェハ洗浄水製造部2を制御して、算出された使用水量のウェハ洗浄水Wを洗浄水供給管4に補給する。なお、補給されるウェハ洗浄水Wの水量が過剰となり、浄水供給管4内のウェハ洗浄水Wの圧力が所定の値を越えた場合には、リリーフ弁(圧力調整弁)14が作動することで余剰なウェハ洗浄水Wを排出することで、浄水供給管4内のウェハ洗浄水Wの圧力を一定値以下の保持することが可能となっている。さらに、ユースポイント5でウェハ洗浄水Wを使用しない時にも、ウェハ洗浄水製造部2から少量のウェハ洗浄水を循環式の洗浄水供給管に供給することにより、ウェハ洗浄水Wの製造を停止しないことで、ウェハ洗浄水Wの薬剤濃度を安定させることが好ましい。
【0057】
また、各種水質センサにより計測された第一の監視モニタ16及び第二の監視モニタ23の計測値も制御装置に送信し、制御装置は、回収ウェハ洗浄水Wの水質の計測値に基づいて、必要に応じウェハ洗浄水製造部2で製造するウェハ洗浄水Wの水質を制御する。
【0058】
このように実施形態においては、循環式の洗浄水供給管4を流通するウェハ洗浄水Wの回収側4Bの管内圧力を計測することにより、ウェハ洗浄水Wの使用水量を算出する。そして、この使用水量分のウェハ洗浄水Wをウェハ洗浄水製造部2で製造して、補給するので、余剰のウェハ洗浄水Wを最小限とすることができ、ウェハ洗浄水Wの薬剤成分を精度よくコントロールすることができる。また、貯留槽を設ける必要がないのでシステム1全体のコンパクト化が図れるばかりか、ウェハ洗浄水Wを貯留槽に滞留することがないので、ウェハ洗浄水Wの製造から使用までの滞留時間を短くできるため、清浄度を確保することができる、という効果も奏する。
【0059】
<第四の実施形態>
次に本発明の第四の実施形態について説明する。
【0060】
〔ウェハ洗浄水供給システム〕
図4は、本発明の第四の実施形態によるウェハ洗浄水供給システムを示している。第四実施形態のウェハ洗浄水供給システム1は、前述した第三の実施形態において、供給側流量計12の前段にガス溶解膜17を備える以外、同じ構成を有するので、同一の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0061】
ウェハ洗浄水Wに水素、二酸化炭素などのガス成分を溶解する場合には、本実施形態のように循環式の洗浄水供給管4の供給側4Aにガス溶解膜17を設けて、洗浄水供給管4において所望とするガス成分を溶解するように構成してもよい。
【0062】
上述したような本発明の第一から第四の実施形態により、例えば、1台当たり52L/分の洗浄機10台により構成されるユースポイント5の場合、かけ流しでは520L/分の洗浄しWが必要となるが、実際にはウェハ洗浄水Wの必要量は5~20容積%であることから100~250L/分程度循環させればよい。しかも、ウェハ洗浄水Wの使用量は5~10%で50~100L/分程度変動するが、本実施形態においては、この変動する使用量に応じてウェハ洗浄水Wを補充しているので、この循環量に対してさらにウェハ洗浄水Wを節水することができる。しかも、ウェハ洗浄水製造部から補給管3を介して直接ウェハ洗浄水Wを循環式の洗浄水供給管4に供給することで、貯留槽を設ける必要がなくなるため、ウェハ洗浄水供給システム1のコンパクト化が図れるとともに、洗浄水が貯留槽に滞留することがないので、ウェハ洗浄水Wの製造から使用までの滞留時間を短くできるため、清浄度を確保することができる。
【0063】
以上、本発明について添付図面を参照にして前記実施形態に基づき説明してきたが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の変更実施が可能である。例えば、ユースポイント5やユースポイント5を構成する洗浄機での洗浄水Wの使用量を直接計測してもよい。また、前記実施形態においては、補給菅の回収量を計測する計測手段として、流量計21及び圧力計31を用いたが、使用水量を算出できれば他の項目を計測可能な計測手段を適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 ウェハ洗浄水供給システム
2 ウェハ洗浄水製造部
3 補給管
4 循環式の洗浄水供給管
4A 供給側
4B 回収側
5 ユースポイント
11 送液ポンプ
12 供給側流量計(計測手段)
13 排出管
14 リリーフ弁
15 分析用分取管
16 第一の監視モニタ
17 ガス溶解膜
21 回収側流量計(計測手段)
22 監視用分取管
23 第二の監視モニタ
31 圧力計(計測手段)
W ウェハ洗浄水