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特許7103467電気脱イオンシステム及び電気脱イオンシステムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】電気脱イオンシステム及び電気脱イオンシステムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/469 20060101AFI20220712BHJP
   B01D 61/54 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
C02F1/469
B01D61/54 500
B01D61/54
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021065340
(22)【出願日】2021-04-07
【審査請求日】2022-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】港 康晴
(72)【発明者】
【氏名】田部井 麗奈
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106927608(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106380032(CN,A)
【文献】特表2005-515877(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112079495(CN,A)
【文献】特開2014-104401(JP,A)
【文献】特開2010-58013(JP,A)
【文献】特開昭63-36893(JP,A)
【文献】特開2018-34103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/44-1/469
B01D 53/22、61/00-71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列に設置された複数の電気脱イオン装置を備える電気脱イオンシステムであって、
前記複数の電気脱イオン装置への給水流量を変動させる給水流量変動手段と、
前記複数の電気脱イオン装置の各々から排出される濃縮水の流量を前記電気脱イオン装置毎に調整する濃縮水流量調整手段と、
前記複数の電気脱イオン装置の各々から排出される濃縮水の流量を一定以上に保つ濃縮水流量保持手段と、を備え、
前記濃縮水流量保持手段が、前記複数の電気脱イオン装置の各々にて製造された脱塩水が流れる複数の副流路が統合された主流路と、前記複数の電気脱イオン装置の各々から排出された濃縮水が流れる複数の副経路が統合された主経路と、にのみ設置されている、電気脱イオンシステム。
【請求項2】
前記給水流量変動手段は、給水流量を30~100%の範囲で増減させる、請求項1に記載の電気脱イオンシステム。
【請求項3】
前記濃縮水流量保持手段は、前記主流路に備えられた第1コントロール弁及び前記主経路に備えられた第2コントロール弁である、請求項1又は2に記載の電気脱イオンシステム。
【請求項4】
前記濃縮水流量調整手段は、前記副経路に備えられた手動弁である、請求項1~3のいずれか1項に記載の電気脱イオンシステム。
【請求項5】
並列に設置された複数の電気脱イオン装置を備える電気脱イオンシステムの制御方法であって、
前記複数の電気脱イオン装置への給水流量を変動させる給水流量変動工程と、
前記複数の電気脱イオン装置の各々から排出される濃縮水の流量を、前記電気脱イオン装置毎に調整する濃縮水流量調整工程と、
前記複数の電気脱イオン装置の各々にて製造された脱塩水が流れる複数の副流路が統合された主流路にのみ設けられた第1コントロール弁及び前記複数の電気脱イオン装置の各々から排出された濃縮水が流れる複数の副経路が統合された主経路にのみ設けられた第2コントロール弁を用いて、前記複数の電気脱イオン装置の各々から排出される濃縮水の流量を一定以上に保つ濃縮水流量保持工程と、を備える、電気脱イオンシステムの制御方法。
【請求項6】
前記給水流量変動工程は、給水流量を30~100%の範囲で増減させる、請求項5に記載の電気脱イオンシステムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気脱イオン装置を複数設けた電気脱イオンシステムと、その制御方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体等の電子産業分野で用いられている超純水は、前処理システム、一次純水システム及び一次純水を処理するサブシステムで構成される超純水製造装置で原水を処理することにより製造されている。
【0003】
このような超純水製造装置に含まれる一次純水製造装置は、超純水製造装置の分野以外にも、医薬用や食品用などの様々な分野に利用されている汎用性の高いシステムである。一次純水システムの構成としては、2段構成の逆浸透膜(RO膜)装置及び電気脱イオン装置からなるものが一般的であり、逆浸透膜(RO膜)装置はシリカや塩類を除去すると共に、イオン性、コロイド性のTOCを除去する。
【0004】
ここで、電気脱イオン装置は、一般に陰極及び陽極間にカチオン交換膜とアニオン交換膜とを交互に配列して脱塩室と濃縮室とを交互に形成し、脱塩室にイオン交換樹脂を充填した構成を有し、各種無機あるいは有機性のアニオン及びカチオンの除去を行う。
【0005】
この電気脱イオン装置の脱塩室に水が供給されると、水中のイオンはもっている荷電によって、脱塩室内の陽・陰極のいずれかのイオン交換樹脂の方向に移動する。移動したイオンはイオン交換樹脂を通過し濃縮室へ入るため、脱塩室内においては高度に脱塩された純水が製造される。一方で、濃縮室に移動したイオンは、濃縮室内にとどまり、やがて濃縮水として排出される。
【0006】
この電気脱イオン装置は、処理すべき水量が多い場合などは、複数の電気脱イオン装置が並列に設置された電気脱イオンシステムとして用いられることが多い。このような電気脱イオンシステムは、その前後に組み合わせられるシステムの条件に追随して、電気脱イオンシステムへの給水条件を変更されることが多く、例えば、超純水製造装置の一次純水システムに用いられる電気脱イオンシステムでは、組み合わされるサブシステムにおける純水の使用量に応じて、電気脱イオンシステムへの給水流量を増減させ、それにより一次純水の製造量を制御している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、電気脱イオンシステムの運転中に供給する給水流量を減少させた場合、複数設置された電気脱イオン装置の各装置内で濃縮水が過剰に濃縮されることによりスケールが発生するという問題があった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、各電気脱イオン装置への給水流量の減少によるスケールの発生を抑制しながらも、生産コストを低減した電気脱イオンシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的に鑑み、第一に本発明は、並列に設置された複数の電気脱イオン装置を備える電気脱イオンシステムであって、前記複数の電気脱イオン装置への給水流量を変動させる給水流量変動手段と、前記複数の電気脱イオン装置の各々から排出される濃縮水の流量を前記電気脱イオン装置毎に調整する濃縮水流量調整手段と、前記複数の電気脱イオン装置の各々から排出される濃縮水の流量を一定以上に保つ濃縮水流量保持手段と、を備え、前記濃縮水流量保持手段が、前記複数の電気脱イオン装置の各々にて製造された脱塩水が流れる複数の副流路が統合された主流路と、前記複数の電気脱イオン装置の各々から排出された濃縮水が流れる複数の副経路が統合された主経路と、にのみ設置されている、電気脱イオンシステムを提供する(発明1)。
【0010】
かかる発明(発明1)によれば、複数の電気脱イオン装置への給水の流量(単に、給水流量ともいう)を変動させた場合であっても、各電気脱イオン装置から排出される濃縮水の流量(単に濃縮水流量ともいう)を一定に保つことができ、それによりスケールの発生を抑制することができる。また、各副流路や各副経路のそれぞれに濃縮水流量保持手段を設けなくとも、濃縮水流量保持手段が脱塩水の主流路と濃縮水の主経路とにのみ備えられていれば、濃縮水の流量を一定に保つことができるため、電気脱イオンシステムの生産コストを低減することができる。
【0011】
上記発明(発明1)においては、前記給水流量変動手段は、給水流量を30~100%の範囲で増減させてもよい(発明2)。
【0012】
上記発明(発明1又は2)においては、前記濃縮水流量保持手段は、前記主流路に備えられた第1コントロール弁及び前記主経路に備えられた第2コントロール弁であってもよい(発明3)。
【0013】
上記発明(発明1~3)においては、前記濃縮水流量調整手段は、前記副経路に備えられた手動弁であってもよい(発明4)。
【0014】
また、第二に本発明は、並列に設置された複数の電気脱イオン装置を備える電気脱イオンシステムの制御方法であって、前記複数の電気脱イオン装置への給水流量を変動させる給水流量変動工程と、前記複数の電気脱イオン装置の各々から排出される濃縮水の流量を、前記電気脱イオン装置毎に調整する濃縮水流量調整工程と、前記複数の電気脱イオン装置の各々にて製造された脱塩水が流れる複数の副流路が統合された主流路にのみ設けられた第1コントロール弁及び前記複数の電気脱イオン装置の各々から排出された濃縮水が流れる複数の副経路が統合された主経路にのみ設けられた第2コントロール弁を用いて、前記複数の電気脱イオン装置の各々から排出される濃縮水の流量を一定以上に保つ濃縮水流量保持工程と、を備える、電気脱イオンシステムの制御方法を提供する(発明5)。
【0015】
かかる発明(発明5)によれば、複数の電気脱イオン装置を備える電気脱イオンシステムにおいて、各電気脱イオン装置への給水流量を変動させた場合であっても、各電気脱イオン装置から排出される濃縮水の流量を一定に保つことができ、それによりスケールの発生を抑制することができる。また、各副経路や各副経路にコントロール弁を備えずとも、脱塩水が流れる主流路と、濃縮水が流れる主経路と、にのみ設けられたコントロール弁を用いて濃縮水の流量を一定に保つことができるため、電気脱イオンシステムの運用コストを低減することができる。
【0016】
上記発明(発明5)においては、前記給水流量変動工程は、給水流量を30~100%の範囲で増減させてもよい(発明6)。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電気脱イオンシステムによれば、各電気脱イオン装置への給水流量の減少によるスケールの発生を抑制しながらも、生産コストを低減した電気脱イオンシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る電気脱イオンシステムを適用可能な超純水製造装置を示すフロー図である。
図2】本発明に係る電気脱イオンシステムを示す概略図である。
図3】検証実験に用いた試験装置の制御構造を示す概略図である。
図4】検証実験における給水流量変化に対する脱塩水及び濃縮水の流量(水量)変化を示すグラフである。
図5】検証実験における給水流量変化に対する脱塩水及び濃縮水の圧力損失の変化を示すグラフである。
【0019】
以下、本発明の電気脱イオンシステムについて添付図面を参照して説明する。なお、説明のために電気脱イオンシステムが超純水製造装置に備えられた図を一部用いて説明するが、本発明における電気脱イオンシステム及び電気脱イオンシステムの制御方法は、この超純水製造装置に限られず、医薬や食品などの様々な分野に用いることができる。
【0020】
(電気脱イオンシステム)
図1は本発明の一実施形態による電気脱イオンシステム1を実装可能な超純水製造装置Aを示す図である。図1に示すように、超純水製造装置Aは、前処理装置2、電気脱イオンシステム1(図1中はCDI systemと表記)を含む一次純水製造装置3、及び二次純水製造装置(サブシステム)4といった3段の装置で構成されている。このような超純水製造装置Aの前処理装置2では、原水Wの濾過、凝集沈殿、精密濾過膜などによる前処理が施され、主に懸濁物質が除去される。
【0021】
一次純水製造装置3は、前処理水(給水ともいう)W1を処理する逆浸透膜装置5と、脱気膜装置6と、紫外線酸化装置7と、電気脱イオンシステム1とを有する。この一次純水製造装置3で前処理水W1中の大半の電解質、微粒子、生菌等の除去を行うと共に有機物を分解する。
【0022】
サブシステム4は、一次純水製造装置3で製造された一次純水(脱塩水)W2を貯留する、上記電気脱イオンシステム1の後段に配置された貯水タンクとしてのサブタンク11とこのサブタンク11から図示しないポンプを介して送給される一次純水W2を処理する紫外線酸化装置12と非再生型混床式イオン交換装置13と膜濾過装置としての限外濾過(UF)膜14とで構成され、更に必要に応じRO膜分離装置等が設けられている場合もある。このサブシステム4では、紫外線酸化装置12により一次純水W2中に含まれる微量の有機物(TOC成分)を酸化分解し、続いて非再生型混床式イオン交換装置13で処理することで残留した炭酸イオン、有機酸類、アニオン性物質、更には金属イオンやカチオン性物質をイオン交換によって除去する。そして、限外濾過(UF)膜14で微粒子を除去して超純水W3とし、これをユースポイント15に供給して、未使用の超純水はサブタンク11に還流する。
【0023】
本発明の一実施形態に係る電気脱イオンシステム1について、図2を用いて説明する。図2に示すように、本発明の一実施形態に係る電気脱イオンシステム1は並列に設置された複数の電気脱イオン装置1Aを備えている。
【0024】
電気脱イオンシステム1では、まず電気脱イオン装置1Aへの給水流量を変動させることが可能な給水用のポンプ1Bにより、任意の流量の給水W1が流路21を通り各電気脱イオン装置1Aへ供給される。各電気脱イオン装置1Aに供給された給水W1は、各電気脱イオン装置1Aで処理され、脱塩水(一次純水)W2と濃縮水W4となる。
【0025】
各電気脱イオン装置1Aで製造された脱塩水W2は副流路22を通り、主流路23で合流する。副流路22には手動弁1Cと流量計1Dが備えられ、主流路23には第1コントロール弁1Eと流動計1Fが備えられている。一方、各電気脱イオン装置1Aから排出された濃縮水W4は、副経路24を通り、その後主経路25で合流する。各副経路24には手動弁1Gと流量計1Hが備えられており、主経路25には第2コントロール弁1Iと流量計1Jとが備えられている。
【0026】
また、電気脱イオンシステム1には、ポンプ1Bからの給水W1の流量の変化に応じて、主流路23に備えられた第1コントロール弁1E及び主経路25に備えられた第2コントロール弁1Iを制御可能な制御装置(図示なし)が備えられていてもよい。
【0027】
図2におけるポンプ1Bに相当する給水流量変動手段は、複数の電気脱イオン装置1Aへの給水W1の流量を変動させる手段である。給水流量変動手段は変動前の給水W1の流量を100%とした場合に、給水W1の流量を30%から100%の範囲で変動させるものを採用することができる。ここで、変動前の給水W1の流量とは、各電気脱イオン装置1Aのカタログに記載される最大の通水流量の総和を最大値とする流量である。給水W1の流量の変動が上記の範囲にあることで、後述の検証実験で示すように、給水W1の流量の変化にほぼ比例して、各電気脱イオン装置1Aで製造される脱塩水W2と各電気脱イオン装置1Aから排出される濃縮水W4の流量とが変化するため、濃縮水W4の流量を一定により保ちやすくなる。
【0028】
また、給水流量変動手段は、図2ではポンプ1Bを例に示したが、電気脱イオン装置1Aへの給水W1の流量を変動させることができればポンプ1Bに限られず、例えば、図1におけるRO(逆浸透膜装置)5への送水ポンプや高圧ポンプ(ともに図示せず)を用いることもできる。
【0029】
図2における手動弁1Gに相当する濃縮水流量調整手段は、電気脱イオン装置1A毎に排出される濃縮水W4の流量を調整するための手段である。濃縮水流量調整手段は、各電気脱イオン装置1Aから排出される濃縮水W4が流れる各副経路24に設置されている。電気脱イオンシステム1の立ち上げ時や運転開始の初期段階で、濃縮水流量調整手段を用いて各電気脱イオン装置1A毎に排出される濃縮水W4の流量を所定の値になるように調整し、さらに後述する濃縮水流量保持手段を用いて脱塩水W2及び濃縮水W4の流量を調整することで、給水W1の流量を変化させても、濃縮水W4の流量を一定の値に保つことが可能となる。
【0030】
また、濃縮水流量調整手段は、図2では手動弁1Gを例に示したが、各電気脱イオン装置1Aから排出される濃縮水W4の流量を調節可能であれば、特に制限されず、例えば、定流量弁を用いることもできる。
【0031】
図2における主流路23に備えられた第1コントロール弁1E及び主経路25に備えられた第2コントロール弁1Iに相当する濃縮水流量保持手段は、各々の電気脱イオン装置1Aから排出される濃縮水W4の流量を一定以上に保つ手段である。また、当該濃縮水流量保持手段は、図2に示した通り、複数の電気脱イオン装置1Aの各々にて製造された脱塩水W2が流れる複数の副流路22が統合された主流路23と、複数の電気脱イオン装置1Aの各々から排出された濃縮水W4が流れる複数の副経路24が統合された主経路25と、にのみ設置されている。
【0032】
当該濃縮水流量保持手段では、例えば、ポンプ1Bからの給水W1の流量の変化に応じて、主流路23に備えられた第1コントロール弁1E及び主経路25に備えられた第2コントロール弁1Iを制御することにより、電気脱イオン装置1Aの脱塩水W2と濃縮水W4の流量を制御することが可能となる。すなわち、給水W1の流量が減少した場合は、脱塩水W2の流量を減少させることにより、濃縮水W4の流量を一定以上にすることが可能になる。
【0033】
当該濃縮水流量保持手段と前述の濃縮水流量調整手段とにより、複数の電気脱イオン装置1Aのそれぞれから排出される濃縮水W4の流量を電気脱イオン装置1Aごとに一定の値に保つことが可能となるため、スケールの発生を抑制することができる。また、主流路23と主経路25とにのみ当該濃縮水流量保持手段を設けることにより、複数の副流路22や複数の副経路24に当該濃縮水流量保持手段を設けた場合と比して、濃縮水流量保持手段の設置数を減らすことができるため、電気脱イオンシステム1の製造コストを抑えることができる。
【0034】
また、濃縮水流量保持手段は、図2では第1コントロール弁1E及び第2コントロール弁1Iを例に示したが、濃縮水W4の流量を一定以上に保つことが可能であれば、特に制限されず、例えば、主経路25に備えられた定流量弁を用いることもできる。
【0035】
(電気脱イオンシステムの制御方法)
次に、本実施形態の電気脱イオンシステム1の制御方法について以下説明する。
【0036】
本発明の一実施形態に係る電気脱イオンシステム1の制御方法は、並列に設置された複数の電気脱イオン装置1Aを備える電気脱イオンシステム1の制御方法であり、給水流量変動工程と、濃縮水流量調整工程と、濃縮水流量保持工程と、を備える。以下各工程について図2を用いて説明する。
【0037】
電気脱イオンシステム1の制御方法の一実施形態における給水流量変動工程は、各電気脱イオン装置1Aへの給水流量を給水用のポンプ1Bにより任意の量に変動させる工程である。また、濃縮水流量調整工程は、各電気脱イオン装置1Aから排出される濃縮水W4の流量を、各副経路24に備えられた手動弁1Gを用いて前記電気脱イオン装置1A毎に所定の値となるように調整する工程である。
【0038】
また、濃縮水流量保持工程は、複数の電気脱イオン装置1Aの各々にて製造された脱塩水W2が流れる複数の副流路22が統合された主流路23にのみ設けられた第1コントロール弁1E及び複数の電気脱イオン装置1Aの各々から排出された濃縮水W4が流れる複数の副経路24が統合された主経路25にのみ設けられた第2コントロール弁1Iを用いて、複数の電気脱イオン装置1Aの各々から排出される濃縮水W4の流量を一定以上に保つ濃縮水流量保持工程である。濃縮水流量保持工程の一例としては、給水W1の流量が減少した場合に、第1コントロール弁1Eを用いて脱塩水W2の流量を減少させることで、濃縮水W4の流量を一定以上にすることが可能になる。
【0039】
電気脱イオンシステム1の制御方法が濃縮水流量調整工程と、濃縮水流量保持工程と、を有することにより、給水流量変動工程で給水流量を変動させても、濃縮水W4の流量を一定に保つことができ、スケールの発生を抑制することができる。また、各副流路22や各副経路24ではなく、主流路23と主経路25とにのみ備えられたコントロール弁を用いて濃縮水流量保持工程を行うことにより、電気脱イオンシステム1の運用コストを抑えることができる。
【0040】
給水流量変動工程は、変動前の給水流量を100%とした場合に、給水流量を30%から100%の範囲で変動させてもよい。給水流量が上記の範囲にあることで、後述する検証実験にあるように、給水流量の変化にほぼ比例して、各電気脱イオン装置1Aから排出される濃縮水W4が変化するため、濃縮水W4を一定に保ちやすくなる。また、上述の給水流量変動工程では、供給水流量を変動させるためにポンプ1Bを用いたが、これに限られず、高圧ポンプ等の各種ポンプを用いることもできる。
【0041】
また、給水流量変動工程において、給水流量の変動を開始してから終了するまで(例えば、給水流量が100%から30%に到達するまで)の時間は、1分~30分であることが好ましい。変動させる時間が上記の範囲にあることで、給水流量の変化に対する各電気脱イオン装置1Aから排出される濃縮水W4の量がより十分な比例関係となり、濃縮水W4の流量をより一定に保ちやすくなる。
【0042】
上述の濃縮水流量調整工程では、各電気脱イオン装置1Aから排出される濃縮水W4の流量が電気脱イオン装置1A毎に所定の値となるように、副経路24に備えられた手動弁1Gを用いる方法を示したが、これに限られず、定流量弁を用いた方法であってもよい。
【0043】
また、上述の濃縮水流量保持工程では、脱塩水W2が流れる副流路22が統合された主流路23に設けられた第1コントロール弁1Eと、複数の電気脱イオン装置1Aの各々から排出された濃縮水W4が流れる副経路24が統合された主経路25とに設けられた第2コントロール弁1Iを用いて濃縮水W4の流量を一定以上する方法を用いたが、これに限られず、主経路25に備えられた定流量弁を用いた方法であってもよい。
【0044】
(検証実験)
次に、図3に示す電気脱イオン装置1Aの制御用の試験装置31を用いて、本発明の効果を確認するための検証実験を行った。この試験装置31は、電気脱イオン装置1Aに加え、給水タンク32と、給水流路33と、ポンプ1Bと、脱塩水(一次純水)流路34と、濃縮水流路35と、を有する。電気脱イオン装置1Aで製造された脱塩水W2と、電気脱イオン装置1Aから排出された濃縮水W4はそれぞれ脱塩水流路34と濃縮水流路35を通り、再び給水タンク32へ流入する。なお、電気脱イオン装置1Aとしては、カウンターフロー方式を採用したものを用い、脱塩水流路34と濃縮水流路35とにはそれぞれ流量計と圧力計(ともに図示せず)を備えている。
【0045】
試験装置31において、ポンプ1Bを用いて、電気脱イオン装置1Aへの給水流量を、減少前の給水W1の流量を100%とした場合に、20分間で100%から30%まで減少させ、その際の給水流量変化に対する、一次純水W2および濃縮水W4の流量の変化及び圧力損失の変化を測定した。次に、電気脱イオン装置1Aへの給水流量を20分間で30%から100%に戻し、その際の給水流量変化に対する、一次純水W2および濃縮水W4の流量の変化及び圧力損失の変化を測定した。この作業を2回繰り返した結果を図4と5に示す。なお、測定には脱塩水流路34と濃縮水流路35とにそれぞれ設けられた流量計と圧力計を用いた。
【0046】
図4及び5に示すように、給水W1の流量を100%から30%の間で変化させても、一次純水W2及び濃縮水W4の流量及び圧力は、給水W1の流量の変化に対してほぼ比例関係にあることが確認できた。これらの結果から、本発明のように複数の電気脱イオン装置1Aを備える電気脱イオンシステム1であっても、排出される濃縮水W4の量を電気脱イオン装置1A毎に所定の値になるように調整できていれば、主流路23に備えられた第1コントロール弁1E及び主経路25に備えられた第2コントロール弁1Iのみによって、各電気脱イオン装置1Aから排出される濃縮水W4の流量を一定の値でコントロールすることが可能であると考えられる。
【0047】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。従って、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0048】
A 超純水製造装置
1 電気脱イオンシステム
1A 電気脱イオン装置
1B ポンプ
1C、1G 手動弁
1D、1F、1H,1J 流量計
1E 第1コントロール弁
1I 第2コントロール弁
2 前処理装置
3 一次純水製造装置
4 二次純水製造装置(サブシステム)
5 逆浸透膜装置
6 脱気膜装置
7 紫外線酸化装置
11 サブタンク
12 紫外線酸化装置
13 非再生型混床式イオン交換装置
14 限外濾過(UF)膜
15 ユースポイント
21 給水の流路
22 脱塩水の副流路
23 脱塩水の主流路
24 濃縮水の副経路
25 濃縮水の主経路
31 試験装置
32 給水タンク
33 給水流路
34 脱塩水(一次純水)流路
35 濃縮水流路
W 原水
W1 前処理水(給水)
W2 一次純水(脱塩水)
W3 超純水(二次純水)
W4 濃縮水
【要約】
【課題】電気脱イオン装置を複数備え、各電気脱イオン装置への給水流量の減少によるスケールの発生を抑制しながらも、生産コストを低減した電気脱イオンシステム、及びその制御方法を提供する。
【解決手段】並列に設置された複数の電気脱イオン装置1Aを備える電気脱イオンシステム1であって、複数の電気脱イオン装置1Aへの給水流量を変動させる給水流量変動手段と、複数の電気脱イオン装置1Aの各々から排出される濃縮水W4の流量を電気脱イオン装置1A毎に調整する濃縮水流量調整手段と、複数の電気脱イオン装置1Aの各々から排出される濃縮水W4の流量を一定以上に保つ濃縮水流量保持手段と、を備え、濃縮水流量保持手段が、複数の電気脱イオン装置1Aの各々にて製造された脱塩水W2が流れる複数の副流路22が統合された主流路23と、複数の電気脱イオン装置1Aの各々から排出された濃縮水W4が流れる複数の副経路24が統合された主経路25と、にのみ設置されている、電気脱イオンシステム1、及びその制御方法を提供する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5