(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】アンテナ付き窓ガラス
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/32 20060101AFI20220712BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20220712BHJP
H01Q 9/42 20060101ALI20220712BHJP
【FI】
H01Q1/32 A
B60J1/00 B
H01Q9/42
(21)【出願番号】P 2021081928
(22)【出願日】2021-05-13
(62)【分割の表示】P 2017107057の分割
【原出願日】2017-05-30
【審査請求日】2021-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】児玉 賢一郎
(72)【発明者】
【氏名】三鴨 公樹
(72)【発明者】
【氏名】岸本 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 文範
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-072419(JP,A)
【文献】国際公開第2005/048404(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0056535(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/32
B60J 1/00
H01Q 9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の窓用のガラス板と、
前記ガラス板に設けられたアンテナとを備え、
前記ガラス板は、一対の側縁を有し、
前記アンテナは、
前記一対の側縁のうち一方の側縁に最近接の第1の給電部と、前記第1の給電部に対して前記一方の側縁とは反対側に配置された第2の給電部と、前記第1の給電部に一端が接続され前記第2の給電部に他端が接続された
エレメントとを備え、前記第1の給電部と前記第2の給電部との間に間隙が存在するように、前記第1の給電部、前記第2の給電部および前記
エレメントにより形成された導体
パターンと、
前記導体
パターンに接続された第1のエレメントと、
前記第1のエレメントまたは前記導体
パターンに接続された第2のエレメントと、
前記第2のエレメントに対して前記一方の側縁とは反対側で前記導体
パターンに接続された第3のエレメントとを有し、
前記第1のエレメントは、前記一方の側縁に沿って延在する第1の垂直エレメントを含み、
前記第2のエレメントは、前記第1のエレメントまたは前記導体
パターンに接続された第2の垂直エレメントを含み、
前記第3のエレメントは、前記導体
パターンに接続された第3の垂直エレメントを含み、
前記第2のエレメントは、前記一方の側縁との間に前記第1の垂直エレメントを挟むように配置され
、
前記第1の垂直エレメントの最下端及び前記第2の垂直エレメントの最下端は、前記第3の垂直エレメントの最下端よりも下方に位置する、アンテナ付き窓ガラス。
【請求項2】
前記第2のエレメントは、前記第2の垂直エレメントを有する第1のL字状エレメントを含む、請求項1に記載のアンテナ付き窓ガラス。
【請求項3】
前記第2のエレメントは、前記第1のL字状エレメントに接続された第1の補助エレメントを含む、請求項2に記載のアンテナ付き窓ガラス。
【請求項4】
前記第3のエレメントは、前記第3の垂直エレメントを有する第2のL字状エレメントを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のアンテナ付き窓ガラス。
【請求項5】
前記第3のエレメントは、前記第2のL字状エレメントに接続された第2の補助エレメントを含む、請求項4に記載のアンテナ付き窓ガラス。
【請求項6】
前記ガラス板は、金属を含有するステッカーが前記第1の垂直エレメントと前記第2の垂直エレメントとの間に貼付されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のアンテナ付き窓ガラス。
【請求項7】
前記第1の垂直エレメントの最下端は、開放端である、請求項1から6のいずれか一項に記載のアンテナ付き窓ガラス。
【請求項8】
前記ガラス板は、前記車両の前部に取り付けられるフロントガラスである、請求項1から7のいずれか一項に記載のアンテナ付き窓ガラス。
【請求項9】
前記第1の給電部は、通信用回路の信号ラインに所定の第1の導電性部材を介して電気的に接続され、
前記第2の給電部は、前記通信用回路のアース又は車体に所定の第2の導電性部材を介して電気的に接続される、請求項1から8のいずれか一項に記載のアンテナ付き窓ガラス。
【請求項10】
前記第2の給電部は、通信用回路の信号ラインに所定の第1の導電性部材を介して電気的に接続され、
前記第1の給電部は、前記通信用回路のアース又は車体に所定の第2の導電性部材を介して電気的に接続される、請求項1から8のいずれか一項に記載のアンテナ付き窓ガラス。
【請求項11】
前記アンテナは、UHF帯の電波を送受する、請求項1から10のいずれか一項に記載のアンテナ付き窓ガラス。
【請求項12】
前記アンテナは、周波数が760MHzの電波を送受する、請求項11に記載のアンテナ付き窓ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ付き窓ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されるアンテナとして、地上デジタルテレビ放送波に対応するガラスアンテナが知られている(例えば、特許文献1を参照)。また、DAB(Digital Audio Broadcast)規格に対応するガラスアンテナが知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-273310号公報
【文献】特開2012-023707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両に搭載された通信機器と車両外部との間の情報を送受するテレマティクスサービスでは、垂直偏波の電波が利用されている。また、ITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)で使用される無線通信として、例えば、DSRC(Dedicated Short Range Communication:狭域通信)がある。路車間通信や車車間通信などに使用されるDSRCでも、垂直偏波の電波が利用されている。したがって、このようなサービスやシステムに対応する車両用アンテナには、無線通信を効率よく行うため、垂直偏波のアンテナ利得を高くすることが望まれる。
【0005】
しかしながら、従来のアンテナでは、水平偏波のアンテナ利得に比べて、垂直偏波のアンテナ利得があまり高くない。
【0006】
そこで、本開示では、垂直偏波のアンテナ利得を向上させたアンテナを備えたアンテナ付き窓ガラスが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様では、
車両の窓用のガラス板と、
前記ガラス板に設けられたアンテナとを備え、
前記ガラス板は、一対の側縁を有し、
前記アンテナは、
前記一対の側縁のうち一方の側縁に最近接の第1の給電部と、前記第1の給電部に対して前記一方の側縁とは反対側に配置された第2の給電部と、前記第1の給電部に一端が接続され前記第2の給電部に他端が接続されたエレメントとを備え、前記第1の給電部と前記第2の給電部との間に間隙が存在するように、前記第1の給電部、前記第2の給電部および前記エレメントにより形成された導体パターンと、
前記導体パターンに接続された第1のエレメントと、
前記第1のエレメントまたは前記導体パターンに接続された第2のエレメントと、
前記第2のエレメントに対して前記一方の側縁とは反対側で前記導体パターンに接続された第3のエレメントとを有し、
前記第1のエレメントは、前記一方の側縁に沿って延在する第1の垂直エレメントを含み、
前記第2のエレメントは、前記第1のエレメントまたは前記導体パターンに接続された第2の垂直エレメントを含み、
前記第3のエレメントは、前記導体パターンに接続された第3の垂直エレメントを含み、
前記第2のエレメントは、前記一方の側縁との間に前記第1の垂直エレメントを挟むように配置され、
前記第1の垂直エレメントの最下端及び前記第2の垂直エレメントの最下端は、前記第3の垂直エレメントの最下端よりも下方に位置する、アンテナ付き窓ガラスが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、垂直偏波のアンテナ利得を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係るアンテナ付き窓ガラスの構成の一例を示す平面図である。
【
図2】第2の実施形態に係るアンテナ付き窓ガラスの構成の一例を示す平面図である。
【
図3】第3の実施形態に係るアンテナ付き窓ガラスの構成の一例を示す平面図である。
【
図4】第4の実施形態に係るアンテナ付き窓ガラスの構成の一例を示す平面図である。
【
図5】本実施形態と比較されるアンテナ付き窓ガラスの構成の一例を示す平面図である。
【
図6】フロントガラスに取り付けられたアンテナの指向性の測定結果の一例を示す図である。
【
図7】フロントガラスに取り付けられたアンテナの指向性の測定結果の一例を示す図である。
【
図8】第4の実施形態に係るアンテナ付き窓ガラスの構成の第1の具体例を示す平面図である。
【
図9】第2の実施形態に係るアンテナ付き窓ガラスの構成の一具体例を示す平面図である。
【
図10】第4の実施形態に係るアンテナ付き窓ガラスの構成の第2の具体例を示す平面図である。
【
図11】フロントガラスに取り付けられたアンテナの指向性の測定結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。なお、各形態において、平行、直角、水平、垂直、上下、左右などの方向には、本発明の効果を損なわない程度のずれが許容される。また、アンテナエレメントの角部の形状は、直角に限られず、弓状に丸みを帯びてもよい。また、各平面図は、車両の窓用のガラス板(以下、「窓ガラス」とも称する)のガラス面を対向して見たときの図であり、車両に取り付けられた窓ガラスを車内側からの視点(車内視)で示す。また、窓ガラスが車両の前部に取り付けられるフロントガラス又は車両の後部に取り付けられるリヤガラスである場合、各平面図の上下方向は、車両の上下方向に対応し、各平面図の左右方向は、車両の車幅方向に相当する。また、窓ガラスは、フロントガラス又はリヤガラスに限定されず、例えば、車両の側部に取り付けられるサイドガラスなどでもよい。
【0011】
図1は、第1の実施形態に係るアンテナ付き窓ガラスの構成の一例を示す平面図である。
図1に示されるアンテナ付き窓ガラス100は、車両の窓用のガラス板60と、ガラス板60に設けられたアンテナ101とを備える。
【0012】
図1は、アンテナ101がガラス板60の左上領域に配置された形態を示す。ガラス板60の形状は、略四角形であり、上縁61aは、ガラス板60の上側のガラス縁を表し、左縁61bは、上縁61aに隣接するガラス板60の左側のガラス縁を表す。ガラス板60は、一対の側縁を有する。左縁61bは、当該一対の側縁のうちの一方の側縁の一例であり、右縁61c(
図10参照)は、当該一対の側縁のうちの他方の側縁の一例である。
【0013】
図1において、上縁61a及び左縁61bの接続部は、曲率を有して接続されているが、曲率を有さずに接続されてもよい。その他の縁同士の接続部の形状も同様である。
【0014】
アンテナ101は、一対の給電部及び複数のアンテナエレメントを有するガラスアンテナの一例であり、ガラス板60に平面的に設けられた導体パターンである。
【0015】
アンテナ101の形状は、周波数が300MHz~3GHzのUHF(Ultra High Frequency)帯の電波の送受に適している。これにより、例えば、アンテナ101をテレマティクスサービスの無線通信や、路車間通信や車車間通信などのITSの無線通信に対応させることができる。
【0016】
アンテナ101は、一対の給電部の導体パターンとして、上縁61aの近傍に配置され、左右方向(車幅方向)に間隔を空けて並べられた第1の給電部及び第2の給電部を備える。給電部50aは、第1の給電部の一例であり、給電部50bは、第2の給電部の一例である。給電部50aは、ガラス板60の一対の側縁のうち左縁61bに最も近接している。
【0017】
給電部50aは、不図示の通信用回路の信号ラインに所定の第1の導電性部材を介して電気的に接続され、給電部50bは、外部のアース部(例えば、該通信用回路のアースや車体)に所定の第2の導電性部材を介して電気的に接続されている。または、給電部50bが、不図示の通信用回路の信号ラインに所定の第1の導電性部材を介して電気的に接続され、給電部50aが、外部のアース部(例えば、該通信用回路のアースや車体)に所定の第2の導電性部材を介して電気的に接続されてもよい。つまり、アンテナ101は、給電部50a及び給電部50bを一対の給電点として備える双極タイプのアンテナである。
【0018】
上記の導電性部材として、例えば、AV線や同軸ケーブルなどの給電線が用いられる。AV線のAは、車両用低圧電線を表し、AV線のVは、ビニルを表す。同軸ケーブルを用いる場合には、同軸ケーブルの内部導体が給電部50aに電気的に接続され、同軸ケーブルの外部導体が給電部50bに電気的に接続される。または、同軸ケーブルの内部導体が給電部50bに電気的に接続され、同軸ケーブルの外部導体が給電部50aに電気的に接続される。
【0019】
同軸ケーブルの先端に取り付けられたオス型コネクタが、給電部50a,50bに実装されたメス型コネクタに接続される構成が採用されてもよい。このようなコネクタによって、同軸ケーブルの内部導体を一方の給電部に取り付けることが容易になるとともに、同軸ケーブルの外部導体を他方の給電部に取り付けることが容易になる。メス側コネクタに、信号を増幅するアンプが内蔵されていてもよい。
【0020】
さらに、給電部50a,50bのそれぞれに設置された突起状の導電性部材が、アンテナ付き窓ガラス100が取り付けられる車体の窓枠フランジに設けられた接続部に接触又は嵌合する構成が採用されてもよい。
【0021】
給電部50bは、給電部50aに対して左縁61bとは反対側に配置されている。給電部50aと給電部50bは、図示の位置関係に対して、上下方向の位置を相互にずらして配置されていてもよい。換言すると、給電部50a,50bのうち、一方を他方より上縁61aに近づけて配置されていてもよい。
【0022】
アンテナ101は、アンテナエレメントの導体パターンとして、ループエレメント40、エレメント10、エレメント20及びエレメント30を備える。
【0023】
ループエレメント40は、第1の給電部に一端が接続され第2の給電部に他端が接続された第1のループ状エレメントの一例である。ループエレメント40は、給電部50aに接続された一端と、給電部50bに接続された他端とを有し、給電部50aと給電部50bとの間に間隙が存在するように開ループ状に形成されている。
【0024】
ループエレメント40は、開ループを形成する線条エレメント41,42,43を含む。線条エレメント41は、一端が給電部50aに接続され、他端が線条エレメント43の一端と接続点40aで接続されている。線条エレメント42は、一端が給電部50bに接続され、他端が線条エレメント43の他端と接続点40bで接続されている。線条エレメント41は、上下方向に延在する。線条エレメント42は、上下方向に延在する。線条エレメント43は、左右方向に延在する。
【0025】
ループエレメント40の開ループの形状は、左右方向に横長な長方形に限られず、上下方向に縦長な長方形でもよい。また、ループエレメント40の開ループは、方形状、多角形状、円状等に形成されてもよい。また、ループエレメント40は、開ループの形状が崩れなければ、別のエレメントが接続されてもよい。
【0026】
エレメント10は、第1のループ状エレメント又は第1の給電部に接続された第1のエレメントの一例である。
図1の場合、エレメント10は、ループエレメント40に接続されている。エレメント10は、接続点40aを起点に直線的に左方(左縁61bに近づく方向)に延伸し、左縁61b近傍で下方(上縁61aから離れる方向)に折れ曲がり、下方への延伸の終端部である端部10aまで延伸する。エレメント10の一部は、上縁61aに沿っているが、沿っていなくてもよい。
【0027】
エレメント10は、左縁61bに沿って上下方向に延在する垂直エレメント11を含む。垂直エレメント11は、ガラス板の一方の側縁に沿って延在する第1の垂直エレメントの一例である。垂直エレメント11が左縁61bに沿って上下方向に延在するため、アンテナ付き窓ガラス100が車両の金属の窓枠(例えば、Aピラー)に取り付けられた状態では、垂直エレメント11は、その窓枠の左縁に沿うように位置する。垂直エレメント11が金属の窓枠の左縁に沿うように延在することによって、垂直偏波のアンテナ利得が向上する。
【0028】
エレメント20は、第1のエレメントに対してガラス板の一方の側縁とは反対側で第1のループ状エレメントに接続された第2のエレメントの一例である。エレメント20は、エレメント10に対して左縁61bとは反対側でループエレメント40に接続されている。換言すると、エレメント20が、左縁61bとの間にエレメント10の一部(例えば、垂直エレメント11)を挟むように配置されている。
【0029】
エレメント20は、ループエレメント40に一端が接続された垂直エレメント21を含む。垂直エレメント21は、第1のループ状エレメントに接続された第2の垂直エレメントの一例である。垂直エレメント21は、接続点40aを起点に直線的に下方(上縁61aから離れる方向)に延伸し、下方への延伸の終端部である端部20aまで延伸する。垂直エレメント21の一部は、垂直エレメント11に沿っているが、沿っていなくてもよい。垂直エレメント21が上下方向に延在することで、垂直偏波のアンテナ利得(特に、アンテナ付き窓ガラス100がフロントガラスとして使用される場合、車両の後方へのアンテナ利得)が向上する。
【0030】
エレメント30は、第2のエレメントに対してガラス板の一方の側縁とは反対側で第1のループ状エレメントに接続された第3のエレメントの一例である。エレメント30は、エレメント20に対して左縁61bとは反対側でループエレメント40に接続されている。換言すると、エレメント30が、左縁61bとの間にエレメント20の一部(例えば、垂直エレメント21)を挟むように配置されている。
【0031】
エレメント30は、ループエレメント40に一端が接続された垂直エレメント31を含む。垂直エレメント31は、第1のループ状エレメントに接続された第3の垂直エレメントの一例である。垂直エレメント31は、接続点40bを起点に直線的に下方(上縁61aから離れる方向)に延伸し、下方への延伸の終端部である端部30aまで延伸する。垂直エレメント31は、垂直エレメント21に沿っているが、沿っていなくてもよい。垂直エレメント31が上下方向に延在することで、垂直偏波のアンテナ利得(特に、アンテナ付き窓ガラス100がフロントガラスとして使用される場合、車両の後方へのアンテナ利得)が向上する。
【0032】
ガラス板60は、金属(例えば、アルミニウム)を含有するステッカー62が垂直エレメント11と垂直エレメント21との間の領域に、エレメント10,20と接しないように貼付されている。アンテナ101の構成によれば、金属を包含するステッカー62が存在していても、垂直偏波のアンテナ利得が向上する。ステッカー62は、例えば、定期点検時期を知らせる定期点検シールであり、助手席が左側にある車両の場合、窓ガラスの左上領域に貼付される。
【0033】
垂直エレメント11の端部10a及び垂直エレメント21の端部20aは、垂直エレメント31の端部30aよりも下方に位置することが好ましい。これにより、垂直偏波のアンテナ利得が向上する。端部10aは、第1の垂直エレメントの最下端の一例である。端部20aは、第2の垂直エレメントの最下端の一例である。端部30aは、第3の垂直エレメントの最下端の一例である。
【0034】
なお、エレメントの「端部」は、エレメントの延伸の始点又は終点であってもよいし、その始点又は終点手前の導体部分である始点近傍又は終点近傍であってもよい。また、エレメント同士の接続部は、曲率を有して接続されていてもよい。
【0035】
また、アンテナエレメント及び給電部は、例えば、導電性金属を含有するペースト(例えば、銀ペースト等)を窓ガラスの車内側表面にプリントして焼付けることによって形成される。しかし、アンテナエレメント及び給電部の形成方法は、この方法に限定されない。例えば、アンテナエレメント又は給電部は、銅等の導電性物質を含有する線状体又は箔状体を窓ガラスの車内側表面又は車外側表面に設けることによって形成されてもよい。あるいは、アンテナエレメント又は給電部は、窓ガラスに接着剤等により貼付されてもよく、窓ガラス自体の内部に設けられてもよい。
【0036】
給電部の形状は、上記の導電性部材又はコネクタの実装面の形状に応じて決められるとよい。例えば、正方形、略正方形、長方形、略長方形などの方形状や多角形状が実装上好ましい。なお、円、略円、楕円、略楕円などの円状でもよい。
【0037】
また、アンテナエレメント及び給電部を形成する導体層を合成樹脂製フィルムの内部又はその表面に設け、導体層付き合成樹脂製フィルムを窓ガラスの車内側表面又は車外側表面に設置する構成が採用されてもよい。さらに、アンテナエレメントが形成されたフレキシブル回路基板を窓ガラスの車内側表面又は車外側表面に設置する構成が採用されてもよい。
【0038】
また、窓ガラスの周縁のガラス面上に形成された隠蔽膜の上に、給電部及びアンテナ導体の一部分又は全体が配置されてもよい。隠蔽膜の具体例として、黒色セラミックス膜等のセラミックスが挙げられる。この場合、窓ガラスの車外側から見ると、隠蔽膜により隠蔽膜上に設けられているアンテナエレメントの部分が車外から見えなくなり、デザインの優れた窓ガラスとなる。
【0039】
図2は、第2の実施形態に係るアンテナ付き窓ガラスの構成の一例を示す平面図である。第2の実施形態のうち上述の実施形態と同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。後述する実施形態の説明も同様に、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。
図2に示されるアンテナ付き窓ガラス200は、車両の窓用のガラス板60と、ガラス板60に設けられたアンテナ201とを備える。
【0040】
図2のアンテナ201は、エレメント20がL字状エレメントを含む点で、
図1のアンテナ101と異なる。エレメント20は、垂直エレメント21を有するL字状エレメントを含むように形成されているので、アンテナ201の低背化(上下方向のアンテナ外形寸法の低減)が可能となり、乗員の視界やデザイン性が向上する。
【0041】
エレメント20は、第1のL字状エレメントを含む第2のエレメントの一例である。エレメント20は、垂直エレメント21と水平エレメント22とを有し、垂直エレメント21と水平エレメント22とによってL字状に形成されたL字状エレメントである。
【0042】
垂直エレメント21は、接続点40aを起点に直線的に下方に延伸し、下方への延伸の終端部である端部20aまで延伸する。水平エレメント22は、端部20aを起点に直線的に右方(左縁61bから離れる方向)に延伸し、右方への延伸の終端部である端部20bまで延伸する。
【0043】
エレメント20は、補助エレメント23を含んでもよい。補助エレメント23は、第1のL字状エレメントに接続された第1の補助エレメントの一例である。補助エレメント23は、水平エレメント22の端部20bに一端が接続され、上下方向に延在する線条エレメントである。補助エレメント23は、端部20bを起点に直線的に上方(上縁61aに近づく方向)に延伸し、上方への延伸の終端部である端部20cまで延伸する。補助エレメント23が上下方向に延在することで、垂直偏波のアンテナ利得(特に、アンテナ付き窓ガラス100がフロントガラスとして使用される場合、車両の後方へのアンテナ利得)が向上する。
【0044】
なお、補助エレメント23は破線で描かれているが、補助エレメント23が存在する実施形態及び存在しない実施形態を合わせて示しているためである。補助エレメント23が存在する実施形態においては、後述する
図8の実施形態の如く、その形状は連続的な直線である。
【0045】
図3は、第3の実施形態に係るアンテナ付き窓ガラスの構成の一例を示す平面図である。第3の実施形態のうち上述の実施形態と同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。
図3に示されるアンテナ付き窓ガラス300は、車両の窓用のガラス板60と、ガラス板60に設けられたアンテナ301とを備える。
【0046】
図3のアンテナ301は、エレメント30がL字状エレメントを含む点で、
図1のアンテナ101と異なる。エレメント30は、垂直エレメント31を有するL字状エレメントを含むように形成されているので、アンテナ201の低背化(上下方向のアンテナ外形寸法の低減)が可能となり、乗員の視界やデザイン性が向上する。
【0047】
エレメント30は、第2のL字状エレメントを含む第3のエレメントの一例である。エレメント30は、垂直エレメント31と水平エレメント32とを有し、垂直エレメント31と水平エレメント32とによってL字状に形成されたL字状エレメントである。
【0048】
垂直エレメント31は、接続点40bを起点に直線的に下方に延伸し、下方への延伸の終端部である端部30aまで延伸する。水平エレメント32は、端部30aを起点に直線的に右方(左縁61bから離れる方向)に延伸し、右方への延伸の終端部である端部30bまで延伸する。
【0049】
エレメント30は、補助エレメント33を含んでもよい。補助エレメント33は、第2のL字状エレメントに接続された第2の補助エレメントの一例である。補助エレメント33は、水平エレメント32の端部30bに一端が接続され、上下方向に延在する線条エレメントである。補助エレメント33は、端部30bを起点に直線的に上方(上縁61aに近づく方向)に延伸し、上方への延伸の終端部である端部30cまで延伸する。補助エレメント33が上下方向に延在することで、垂直偏波のアンテナ利得(特に、アンテナ付き窓ガラス100がフロントガラスとして使用される場合、車両の後方へのアンテナ利得)が向上する。
【0050】
なお、補助エレメント33は破線で描かれているが、補助エレメント33が存在する実施形態及び存在しない実施形態を合わせて示しているためである。補助エレメント33が存在する実施形態においては、後述する
図8の実施形態の如く、その形状は連続的な直線である。
【0051】
図4は、第4の実施形態に係るアンテナ付き窓ガラスの構成の一例を示す平面図である。第4の実施形態のうち上述の実施形態と同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。
図4に示されるアンテナ付き窓ガラス400は、車両の窓用のガラス板60と、ガラス板60に設けられたアンテナ401とを備える。
【0052】
図4のアンテナ401は、ループエレメント40の一部をループエレメント40と共有するループエレメント70を含む点で、
図2のアンテナ201と異なる。アンテナ401は、ループエレメント70を含むことにより、水平面内の360°範囲における各方向のアンテナ利得を平均した値(平均アンテナ利得)が向上する。
【0053】
ループエレメント70は、第1のループ状エレメントの一部を第1のループ状エレメントと共有する第2のループ状エレメントの一例である。ループエレメント70は、ループエレメント40の辺と角を共有し、具体的には、線条エレメント41、接続点40a及び線条エレメント43の左側部分を共有する。
【0054】
ループエレメント70は、給電部50aに接続された一端と、給電部50aに接続された他端とを有し、閉ループ状に形成されている。ループエレメント70は、閉ループを形成する線条エレメント41,43,71を含む。線条エレメント71は、一端が給電部50aに接続され、他端が線条エレメント43と接続点40cで接続されている。線条エレメント71は、上下方向に延在する。
【0055】
ループエレメント70の閉ループの形状は、上下方向に縦長な長方形に限られず、左右方向に横長な長方形でもよい。また、ループエレメント70の閉ループは、方形状、多角形状、円状等に形成されてもよい。また、ループエレメント70は、閉ループの形状が崩れなければ、別のエレメントが接続されてもよい。
【0056】
図5は、本実施形態と比較されるアンテナ付き窓ガラスの構成の一例を示す平面図である。
図5に示されるアンテナ付き窓ガラスは、ガラス板160と、ガラス板160に設けられたアンテナ1101とを備える。
図5に示されるアンテナの形状は、上掲の特許文献2に開示されている。
【0057】
図5は、アンテナ1101がガラス板160の左上領域に配置された形態を示す。上縁161aは、ガラス板160の上側のガラス縁を表し、左縁161bは、ガラス板160の左側のガラス縁を表す。上縁161aの近傍に、芯線側の給電点106と、接地側の給電点107とが、その間に間隙が存在するように併設されている。アンテナ1101は、給電点106から上縁161aから離れる方向に延伸するエレメント110と、給電点107から上縁161aから離れる方向に延伸するエレメント120とを備える。
【0058】
図6,7は、フロントガラスに取り付けられたアンテナの指向性の測定結果の一例を示す図である。フロントガラスは、地平面(水平面)に対して傾斜している。
図6,7は、水平偏波のときと垂直偏波のときとの水平面内において、アンテナの基本モードの共振周波数760MHzで測定されたアンテナ利得を表す。
図6,7に示される同心円について、上側、下側、右側、左側は、それぞれ、同心円の中心に位置する車両を天頂から見たときの車両前方、車両後方、車両右方、車両左方を表す。単位はdBiである。同心円の下に記した数値は、水平面内の360°の範囲を所定の角度毎に測定されたアンテナ利得の平均値を表す。また、アンテナ利得は、金属を包含するステッカー62の一例である定期点検シールが貼付されている状態で測定されている。
【0059】
アンテナ101Aは、
図1のアンテナ101の一例である。アンテナ201A,201B,201Cは、それぞれ、
図2のアンテナ201の一例であり、垂直エレメント21と水平エレメント22とによって形成されたL字状アンテナの寸法が相違する。アンテナ401Aは、
図4のアンテナ401の一例である。
図6,7に示されるように、アンテナ101A,201A,201B,201C,401Aの垂直偏波のアンテナ利得は、アンテナ1101のそれに比べて高い。
【0060】
なお、
図6に示されるアンテナ利得を測定した時において、アンテナ1101の各部の寸法は、単位をmmとすると、
図5に示される通りである。
【0061】
また、
図6に示されるアンテナ101Aのアンテナ利得を測定した時において、
図1に示された各部の寸法は、単位をmmとすると、
L10:175
L21:150
L31:70
L41:10
L44:110
L50:10
L51:20
L52:14
である。
【0062】
また、
図6に示されるアンテナ201Aのアンテナ利得を測定した時において、
図2に示された各部の寸法は、単位をmmとすると、
L10:175
L21:120
L22:40
L31:70
L41:10
L44:110
L50:10
L51:20
L52:14
である。
【0063】
また、
図7に示されるアンテナ201Bのアンテナ利得を測定した時において、
図2に示された各部の寸法は、単位をmmとすると、
L21:100
L22:60
である。他の部位の寸法は、アンテナ201Aの場合と同じである。
【0064】
また、
図7に示されるアンテナ201Cのアンテナ利得を測定した時において、
図2に示された各部の寸法は、単位をmmとすると、
L21:80
L22:80
である。他の部位の寸法は、アンテナ201Aの場合と同じである。
【0065】
また、
図7に示されるアンテナ401Aのアンテナ利得を測定した時において、
図4に示された各部の寸法は、単位をmmとすると、
L10:175
L21:80
L22:80
L31:70
L41:10
L44:110
L50:10
L51:20
L52:14
L70:10
である。
【0066】
図8は、第4の実施形態に係るアンテナ付き窓ガラスの構成の第1の具体例を示す平面図である。
図8に示されるアンテナ付き窓ガラス400Bは、車両の窓用のガラス板60と、ガラス板60に設けられたアンテナ401Bとを備える。アンテナ401Bは、
図4のアンテナ401の一例である。
図8は、アンテナ401Bがガラス板60の左上領域に配置された形態を示す。線条エレメント43は、給電部50aに接続された線条エレメント41と給電部50bに接続された線条エレメント42とを、部分エレメント43a,43b,43cによって繋ぐ。
図9は、第2の実施形態に係るアンテナ付き窓ガラスの構成の一具体例を示す平面図である。
図9に示されるアンテナ付き窓ガラス200Dは、車両の窓用のガラス板60と、ガラス板60に設けられたアンテナ201Dとを備える。アンテナ201Dは、
図2のアンテナ201の一例である。
図9は、第1のエレメントが第1の給電部に直接接続された形態の一例を示す。具体的には、エレメント10の一端は、給電部50aに直接接続されている。
図10は、第4の実施形態に係るアンテナ付き窓ガラスの構成の第2の具体例を示す平面図である。
図10に示されるアンテナ付き窓ガラス400Cは、車両の窓用のガラス板60と、ガラス板60に設けられたアンテナ401Cとを備える。アンテナ401Cは、
図4のアンテナ401の一例である。
図10は、アンテナ401Cがガラス板60の右上領域に配置された形態を示す。したがって、
図10のアンテナ401Cは、
図8のガラス板60の車幅方向の中心線(一対の側縁を結ぶ線分の垂直二等分線)を基準にした、アンテナ401Bの線対称の形状に類似している。そのため、垂直エレメント11は右縁61cに沿って上下方向に延在する。
【0067】
図11は、
図8,9,10に示された各形態に関して、フロントガラスに取り付けられたアンテナの指向性の測定結果の一例を示す図である。
図11の測定条件は、
図6,7で示した上述の内容と同じである。また、アンテナ401Cのアンテナ利得は、金属を含有するステッカー62の一例である定期点検シールが貼付されていない状態で測定されている。
【0068】
図11に示されるように、アンテナ201D,401B,401Cの垂直偏波のアンテナ利得は、アンテナ1101のそれ(
図6参照)に比べて高い。
【0069】
なお、
図11に示されるアンテナ401Bのアンテナ利得を測定した時において、
図8に示された各部の寸法は、単位をmmとすると、
L10:175
L21:65
L22:60
L23:10
L31:70
L32:30
L41:15
L42:5
L43a:25
L43c:25
L50(
図1参照):10
L51(
図1参照):20
L52(
図1参照):14
L71:5
である。
【0070】
また、
図11に示されるアンテナ201Dのアンテナ利得を測定した時において、
図9に示された各部の寸法は、単位をmmとすると、
L10:160
L21:60
L22:80
L31:55
L42:20
L43:15
L53:10
である。その他の形状の寸法は、上述と同じである。
【0071】
また、
図11に示されるアンテナ401Cのアンテナ利得を測定した時において、
図10に示された各部の寸法は、単位をmmとすると、
L10a:15
L10b:150
L21:35
L22:50
L23:30
L31:30
L32:20
L33:40
L41:15
L42:5
L43a:25
L43c:25
L71:5
である。その他の形状の寸法は、上述と同じである。
【0072】
以上、アンテナ付き窓ガラスを実施形態により説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が、本発明の範囲内で可能である。
【符号の説明】
【0073】
10 エレメント(第1のエレメントの一例)
11 垂直エレメント(第1の垂直エレメントの一例)
20 エレメント(第2のエレメントの一例)
21 垂直エレメント(第2の垂直エレメントの一例)
30 エレメント(第3のエレメントの一例)
31 垂直エレメント(第3の垂直エレメントの一例)
40 ループエレメント(第1のループ状エレメントの一例)
50a 給電部(第1の給電部の一例)
50b 給電部(第2の給電部の一例)
60 ガラス板
62 ステッカー
70 ループエレメント(第2のループ状エレメントの一例)
100,200,300,400 アンテナ付き窓ガラス
101,201,301,401 アンテナ