(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】ポリアミドフィルム積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/34 20060101AFI20220712BHJP
【FI】
B32B27/34
(21)【出願番号】P 2020543779
(86)(22)【出願日】2019-05-03
(86)【国際出願番号】 KR2019005995
(87)【国際公開番号】W WO2019212326
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2020-09-02
(31)【優先権主張番号】10-2018-0051930
(32)【優先日】2018-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リュ、ビ オ
(72)【発明者】
【氏名】パク、スーンヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヨンソク
(72)【発明者】
【氏名】テ、ヨン ジ
(72)【発明者】
【氏名】ペク、クァンヨル
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、イル ファン
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-055713(JP,A)
【文献】国際公開第2005/061227(WO,A1)
【文献】特開2010-269557(JP,A)
【文献】特開平05-310916(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0148480(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B29C 63/00-65/82
C08G 69/00-69/50
C08J 5/00-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)
芳香族ジアミノグループ(diamino group)およびベンゼン-ジカルボニルグループによるアミド結合を含み、
ベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)およびベンゼン-1,4-ジカルボニルグループ(benzene-1,4-dicarbonyl group)の総合中のベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)の比率が
2モル%以上20モル%以下である、
第1ポリアミド樹脂層;および
B)
前記第1ポリアミド樹脂層の少なくとも一面に形成され、
芳香族ジアミノグループ(diamino group)およびベンゼン-ジカルボニルグループによるアミド結合を含み、
ベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)およびベンゼン-1,4-ジカルボニルグループ(benzene-1,4-dicarbonyl group)の総合中のベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)の比率が20モル%を超過する、
第2ポリアミド樹脂層;
を含む、
ポリアミドフィルム積層体。
【請求項2】
ポリアミドフィルム積層体
全体で、
ベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)およびベンゼン-1,4-ジカルボニルグループ(benzene-1,4-dicarbonyl group)の総合中の前記ベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)の比率が5~25モル%である、
請求項1に記載のポリアミドフィルム積層体。
【請求項3】
A)
芳香族ジアミノグループ(diamino group)およびベンゼン-ジカルボニルグループによるアミド結合を含み、
ベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)およびベンゼン-1,4-ジカルボニルグループ(benzene-1,4-dicarbonyl group)の総合中のベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)の比率が20モル%以下である、
第1ポリアミド樹脂層;および
B)
前記第1ポリアミド樹脂層の少なくとも一面に形成され、
芳香族ジアミノグループ(diamino group)およびベンゼン-ジカルボニルグループによるアミド結合を含み、
ベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)およびベンゼン-1,4-ジカルボニルグループ(benzene-1,4-dicarbonyl group)の総合中のベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)の比率が20モル%超過40モル%以下である、
第2ポリアミド樹脂層;
を含む、
ポリアミドフィルム積層体。
【請求項4】
A)
芳香族ジアミノグループ(diamino group)およびベンゼン-ジカルボニルグループによるアミド結合を含み、
ベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)およびベンゼン-1,4-ジカルボニルグループ(benzene-1,4-dicarbonyl group)の総合中のベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)の比率が20モル%以下である、
第1ポリアミド樹脂層;および
B)
前記第1ポリアミド樹脂層の少なくとも一面に形成され、
芳香族ジアミノグループ(diamino group)およびベンゼン-ジカルボニルグループによるアミド結合を含み、
ベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)およびベンゼン-1,4-ジカルボニルグループ(benzene-1,4-dicarbonyl group)の総合中のベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)の比率が20モル%を超過する、
第2ポリアミド樹脂層;
を含み、
前記第1ポリアミド樹脂層および第2ポリアミド樹脂層の厚さは、30:70~1:99の比率で形成される、
ポリアミドフィルム積層体。
【請求項5】
前記芳香族ジアミノグループは、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ビフェニルジアミン(2,2'-bis(trifluoromethyl)-4,4'-biphenyldiamine)、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノベンジジン(2,2'-dimethyl-4,4'-diaminobenzidine)、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン(4,4'-diaminodiphenyl sulfone)、4,4'-(9-フルオレニリデン)ジアニリン(4,4'-9-fluorenylidene)dianiline)、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン(bis(4-(4-aminophenoxy)phenyl)sulfone)、2,2',5,5'-テトラクロロベンジジン(2,2',5,5'-tetrachlorobenzidine)、2,7-ジアミノフルオレン(2,7-diaminofluorene)、4,4-ジアミノオクタフルオロビフェニル(4,4-diaminooctafluorobiphenyl)、m-フェニレンジアミン(m-phenylenediamine)、p-フェニレンジアミン(p-phenylenediamine)、4,4'-オキシジアニリン(4,4'-oxydianiline)、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル(2,2'-dimethyl-4,4'-diaminobiphenyl)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(2,2-bis[4-(4-aminophenoxy)phenyl]propane)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(1,3-bis(4-aminophenoxy)benzene)、および4,4'-ジアミノベンズアニリド(4,4'-diaminobenzanilide)からなる群より選択された1種以上に由来したジアミノグループを含む、
請求項1から
4のいずれか1項に記載のポリアミドフィルム積層体。
【請求項6】
A)
芳香族ジアミノグループ(diamino group)およびベンゼン-ジカルボニルグループによるアミド結合を含み、
ベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)およびベンゼン-1,4-ジカルボニルグループ(benzene-1,4-dicarbonyl group)の総合中のベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)の比率が20モル%以下である、
第1ポリアミド樹脂層;および
B)
前記第1ポリアミド樹脂層の少なくとも一面に形成され、
芳香族ジアミノグループ(diamino group)およびベンゼン-ジカルボニルグループによるアミド結合を含み、
ベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)およびベンゼン-1,4-ジカルボニルグループ(benzene-1,4-dicarbonyl group)の総合中のベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)の比率が20モル%を超過する、
第2ポリアミド樹脂層;
を含み、
下記数式1を満足する、
ポリアミドフィルム積層体:
[数式1]
YI
1-YI
0<3.0
上記数式1で、
YI
1およびYI
0は、それぞれASTM E313の基準によって測定されたポリアミドフィルム積層体の黄色度指数(Yellowness Index)であって、
YI
0は、前記ポリアミドフィルム積層体の初期黄色度指数であり、
YI
1は、前記ポリアミドフィルム積層体をASTM G53-96の基準によって96時間紫外線および水分に露出させた後に測定した黄色度指数である。
【請求項7】
A)
芳香族ジアミノグループ(diamino group)およびベンゼン-ジカルボニルグループによるアミド結合を含み、
ベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)およびベンゼン-1,4-ジカルボニルグループ(benzene-1,4-dicarbonyl group)の総合中のベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)の比率が20モル%以下である、
第1ポリアミド樹脂層;および
B)
前記第1ポリアミド樹脂層の少なくとも一面に形成され、
芳香族ジアミノグループ(diamino group)およびベンゼン-ジカルボニルグループによるアミド結合を含み、
ベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)およびベンゼン-1,4-ジカルボニルグループ(benzene-1,4-dicarbonyl group)の総合中のベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)の比率が20モル%を超過する、
第2ポリアミド樹脂層;
を含み、
ASTM D 1003基準によって測定されたヘイズ(haze)値が1.0以下である、
ポリアミドフィルム積層体。
【請求項8】
ISO 527-3基準によって測定されたモジュラス(Modulus)値が6
GPa以上である、
請求項1から
7のいずれか1項に記載のポリアミドフィルム積層体。
【請求項9】
ISO 527-3基準によって測定された伸び(Elongation)値が10%以上である、
請求項1から
8のいずれか1項に記載のポリアミドフィルム積層体。
【請求項10】
A)
芳香族ジアミノグループ(diamino group)およびベンゼン-ジカルボニルグループによるアミド結合を含み、
ベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)およびベンゼン-1,4-ジカルボニルグループ(benzene-1,4-dicarbonyl group)の総合中のベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)の比率が20モル%以下である、
第1ポリアミド樹脂層;および
B)
前記第1ポリアミド樹脂層の少なくとも一面に形成され、
芳香族ジアミノグループ(diamino group)およびベンゼン-ジカルボニルグループによるアミド結合を含み、
ベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)およびベンゼン-1,4-ジカルボニルグループ(benzene-1,4-dicarbonyl group)の総合中のベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)の比率が20モル%を超過する、
第2ポリアミド樹脂層;
を含み、
ASTM D3363基準によって測定された鉛筆硬度値が3H以上である、
ポリアミドフィルム積層体。
【請求項11】
基材;
前記第1ポリアミド樹脂層;および
前記第2ポリアミド樹脂層を含む、
請求項1から
10のいずれか1項に記載のポリアミドフィルム積層体。
【請求項12】
前記基材は;
ポリイミド系、ポリカーボネート系、ポリエステル系、ポリアルキル(メタ)アクリレート系、ポリオレフィン系およびポリサイクリックオレフィン系高分子からなる群より選択された1種以上の高分子基材である、
請求項
11に記載のポリアミドフィルム積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
【0002】
本出願は2018年5月4日付韓国特許出願第10-2018-0051930号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0003】
本発明は、ポリアミドフィルム積層体に関するものである。
【背景技術】
【0004】
芳香族ポリイミド樹脂は大部分非結晶性構造を有する高分子であって、堅固な鎖構造によって優れた耐熱性、耐化学性、電気的特性、および寸法安定性を示す。このようなポリイミド樹脂は、電気/電子材料として広く使用されている。
【0005】
しかし、ポリイミド樹脂はイミド鎖内に存在するPi-電子のCTC(charge transfer complex)形成によって焦げ茶色を帯びる限界があるため使用上多くの制限が伴う。
【0006】
前記制限を解消し無色透明なポリイミド樹脂を得るために、トリフルオロメチル(-CF3)グループのような強い電子吸引グループを導入してPi-電子の移動を制限する方法;主鎖にスルホン(-SO2)グループ、エーテル(-O-)グループなどを導入して曲がった構造を作って前記CTCの形成を減らす方法;または脂肪族環化合物を導入してPi-電子の共鳴構造形成を阻害する方法などが提案された。
【0007】
しかし、前記提案によるポリイミド樹脂は曲がった構造または脂肪族環化合物によって十分な耐熱性を示しにくく、これを使用して製造されたフィルムは劣悪な機械的物性を示す限界が依然として存在する。
【0008】
一方、最近はポリイミドの耐スクラッチ性を向上させるためにポリアミド単位構造を導入したポリアミド共重合体が開発されている。
【0009】
しかし、ポリアミド共重合体は高い結晶性によって、これをコーティングしてフィルムを形成した時、ヘイズ値が高まり、黄色度指数が高まり、特に、このような現象はフィルムの厚さが厚いほどひどく発現される問題点があるため、これを改善するための方案が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本明細書は、光学的特性に優れながらも、優れた機械的物性を示すことができるポリアミドフィルム積層体を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
A)
芳香族ジアミノグループ(diamino group)およびベンゼン-ジカルボニルグループによるアミド結合を含み、
ベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)およびベンゼン-1,4-ジカルボニルグループ(benzene-1,4-dicarbonyl group)の総合中のベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)の比率が20モル%以下である、
第1ポリアミド樹脂層;および
B)
前記第1ポリアミド樹脂層の少なくとも一面に形成され、
芳香族ジアミノグループ(diamino group)およびベンゼン-ジカルボニルグループによるアミド結合を含み、
ベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)およびベンゼン-1,4-ジカルボニルグループ(benzene-1,4-dicarbonyl group)の総合中のベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)の比率が20モル%を超過する、
第2ポリアミド樹脂層;
を含む、ポリアミドフィルム積層体が提供される。
【0012】
以下、発明の実施形態によるポリアミドフィルム積層体について詳しく説明する。
【0013】
本明細書で明示的な言及がない限り、専門用語は単に特定実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。
【0014】
本明細書で使用される単数形態は、文句がこれと明確に反対の意味を示さない限り複数形態も含む。
【0015】
本明細書で使用される"含む"の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるのではない。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、
A)
芳香族ジアミノグループ(diamino group)およびベンゼン-ジカルボニルグループによるアミド結合を含み、
ベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)およびベンゼン-1,4-ジカルボニルグループ(benzene-1,4-dicarbonyl group)の総合中のベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)の比率が20モル%以下である、
第1ポリアミド樹脂層;および
B)
前記第1ポリアミド樹脂層の少なくとも一面に形成され、
芳香族ジアミノグループ(diamino group)およびベンゼン-ジカルボニルグループによるアミド結合を含み、
ベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)およびベンゼン-1,4-ジカルボニルグループ(benzene-1,4-dicarbonyl group)の総合中のベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)の比率が20モル%を超過する、
第2ポリアミド樹脂層;
を含む、ポリアミドフィルム積層体が提供される。
【0017】
本発明者らの研究の結果、芳香族ジアミンモノマー(aromatic diamine monomer)のアミン部分と、フタロイルクロリドなど、ベンゼン-ジカルボニル系モノマーのカルボニルグループを反応させてポリアミド共重合体を形成し、これを用いたフィルム、フィルム積層体などを製造する時;各樹脂層に使用するポリアミドでベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)(またはイソフタロイル由来単位;Isophthaloyl unit、Isophthaloyl chloride originated unit:IPC)とベンゼン-1,4-ジカルボニルグループ(benzene-1,4-dicarbonyl group)(または、テレフタロイル由来単位;Terephthaloyl unit;Terephthaloyl chloride originated unit:TPC)の比率を特定範囲に調節して使用する場合、柔軟な構造を有しながらも、強度および硬度に大きな損失がなく、フレキシブルディスプレイ装置などに使用できるのを確認した。
【0018】
発明の実施形態によれば、前記ポリアミド樹脂積層体は、
I)第1ポリアミド樹脂層、および第2ポリアミド樹脂層を含む積層体の形態であって、
II)第1ポリアミド樹脂層は、第1ポリアミド共重合体を含み、第2ポリアミド樹脂層は第2ポリアミド共重合体を含み、
III)前記第1および第2ポリアミド共重合体は、それぞれ独立して、
A.前記芳香族ジアミンモノマーのアミン基と前記イソフタロイル系モノマーのカルボニル基がアミド結合を形成したアミド繰り返し単位(以下、第1アミド繰り返し単位)、および
B.前記芳香族ジアミンモノマーのアミン基と前記テレフタロイル系モノマーのカルボニル基がアミド結合を形成したアミド繰り返し単位(以下、第2アミド繰り返し単位)を全て含む、ポリアミド共重合体であって;
C.但し、第1および第2ポリアミドは、第1アミド繰り返し単位と第2アミド繰り返し単位を、互いに異なる比率で含む。
【0019】
この時、前記ポリアミド樹脂積層体で、イソフタロイル系モノマーに由来するベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)と、テレフタロイル系モノマーに由来するベンゼン-1,4-ジカルボニルグループ(benzene-1,4-dicarbonyl group)の総合に対する、ベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)の比率が20モル%以下であるポリアミド共重合体を、第1ポリアミド共重合体と称し、これから構成された樹脂層を第1ポリアミド樹脂層と称する。
【0020】
また、前記ポリアミド樹脂積層体で、イソフタロイル系モノマーに由来するベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)と、テレフタロイル系モノマーに由来するベンゼン-1,4-ジカルボニルグループ(benzene-1,4-dicarbonyl group)の総合に対する、ベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)の比率が20モル%を超過するポリアミド共重合体を、第2ポリアミド共重合体と称し、これから構成された樹脂層を第2ポリアミド樹脂層と称する。
【0021】
これを前述のアミド繰り返し単位を基準にして再び説明すれば、前記第1ポリアミド樹脂層に含まれている第1ポリアミド共重合体内では、第1アミド繰り返し単位および第2アミド繰り返し単位の総合中、第1アミド繰り返し単位の比率が20モル%以下であり、前記第2ポリアミド樹脂層に含まれている第2ポリアミド共重合体内では、第1アミド繰り返し単位および第2アミド繰り返し単位の総合中、第1アミド繰り返し単位の比率が20モル%を超過すると見ることができる。
【0022】
発明の一実施形態によれば、前記第1ポリアミド樹脂層内では、ベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)およびベンゼン-1,4-ジカルボニルグループ(benzene-1,4-dicarbonyl group)の総合中のベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)の比率が約2モル%以上約20モル%以下であってもよく、さらに好ましくは、約2モル%以上、約5モル%以下であってもよい。
【0023】
そして、前記第2ポリアミド樹脂層内では、ベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)およびベンゼン-1,4-ジカルボニルグループ(benzene-1,4-dicarbonyl group)の総合中のベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)の比率が約20モル%超過約40モル%以下であるのがさらに好ましいことがある。
【0024】
ベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)、即ち、イソフタロイル系モノマー(IPC)に由来する繰り返し単位は、曲がった分子構造によって、高分子内で分子鎖パッキングと配列(Align)を妨害する性格を有しており、ポリアミド共重合体に無定形領域を増加させて、ポリアミドフィルムの光学的物性および耐折強度を向上させることができる。
【0025】
そして、ベンゼン-1,4-ジカルボニルグループ(benzene-1,4-dicarbonyl group)、即ち、テレフタロイル系モノマー(TPC)に由来する繰り返し単位は、線形分子構造によって、高分子内で分子鎖パッキングと配列(Align)が一定に維持され、ポリアミド共重合体に結晶性領域を増加させて、ポリアミドフィルムの表面硬度および機械的物性を向上させることができる。
【0026】
これにより、ベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)およびベンゼン-1,4-ジカルボニルグループ(benzene-1,4-dicarbonyl group)の総合中のベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)の比率が約20モル%以下で添加される、第1ポリアミド共重合体、およびこれから構成された第1ポリアミド樹脂層は、ポリアミドフィルム積層体に相対的に優れた表面硬度および機械的物性を付与することができる。
【0027】
そして、ベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)およびベンゼン-1,4-ジカルボニルグループ(benzene-1,4-dicarbonyl group)の総合中のベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)の比率が約20モル%を超過して添加される、第2ポリアミド共重合体およびこれから構成された第2ポリアミド樹脂層は、ポリアミドフィルム積層体に相対的に優れた光学的物性および耐折特性を付与することができる。
【0028】
そして、発明の一実施形態によれば、前記第1ポリアミド樹脂層および第2ポリアミド樹脂層の厚さは、約30:70~約1:99の比率で形成されるのが好ましいことがあり、第1ポリアミド樹脂層がフィルム積層体の上部、即ち、ディスプレイ機器などに使用時、視聴者に対面する外殻層に積層される形態であるのが好ましいことがある。
【0029】
本発明のポリアミドフィルム積層体は、前述の第1ポリアミド樹脂層および第2ポリアミド樹脂層を全て含み、特に、全体ポリアミドフィルム積層体内で、前記第1ポリアミド樹脂層と第2ポリアミド樹脂層の厚さ比率が前述の範囲で維持されることによって、前述の第1および第2ポリアミド共重合体それぞれの長所を非常に効果的に実現することができる。
【0030】
発明の一実施形態によれば、前記ポリアミドフィルム積層体は、全体フィルム積層体内でベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)およびベンゼン-1,4-ジカルボニルグループ(benzene-1,4-dicarbonyl group)の総合中の前記ベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)の比率が約5~約25モル%であるのが好ましいことがある。
【0031】
即ち、第1および第2ポリアミド共重合体内でベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)およびベンゼン-1,4-ジカルボニルグループ(benzene-1,4-dicarbonyl group)の比率だけでなく、各共重合体、およびこれから構成された樹脂層を全て含む、全体フィルム積層体内でベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)の比率が前記範囲で限定されることによって、前述のポリアミドフィルム積層体のヘイズや黄色度指数値などの優れた光学的物性を有することができ、これと同時に、耐折強度、表面硬度などの優れた機械的物性を有することができる。
【0032】
そして、前述の芳香族ジアミノグループは、芳香族環を中心にして末端に2個のアミノグループを備える芳香族ジアミンモノマー、具体的に例えば;
【0033】
2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ビフェニルジアミン(2,2'-bis(trifluoromethyl)-4,4'-biphenyldiamine)、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノベンジジン(2,2'-dimethyl-4,4'-diaminobenzidine)、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン(4,4'-diaminodiphenyl sulfone)、4,4'-(9-フルオレニリデン)ジアニリン(4,4'-(9-fluorenylidene)dianiline)、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン(bis(4-(4-aminophenoxy)phenyl)sulfone)、2,2',5,5'-テトラクロロベンジジン(2,2',5,5'-tetrachlorobenzidine)、2,7-ジアミノフルオレン(2,7-diaminofluorene)、4,4-ジアミノオクタフルオロビフェニル(4,4-diaminooctafluorobiphenyl)、m-フェニレンジアミン(m-phenylenediamine)、p-フェニレンジアミン(p-phenylenediamine)、4,4'-オキシジアニリン(4,4'-oxydianiline)、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル(2,2'-dimethyl-4,4'-diaminobiphenyl)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(2,2-bis[4-(4-aminophenoxy)phenyl]propane)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(1,3-bis(4-aminophenoxy)benzene)、および4,4'-ジアミノベンズアニリド(4,4'-diaminobenzanilide)からなる群より選択された1種以上に由来したものであってもよい。
【0034】
より好ましくは、前記芳香族ジアミンモノマーは、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ビフェニルジアミン(2,2'-bis(trifluoromethyl)-4,4'-biphenyldiamine、TFDB)または2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノベンジジン(2,2'-dimethyl-4,4'-diaminobenzidine)であってもよい。
【0035】
そして、発明の他の一実施形態によれば、前述の第1および第2ポリアミド共重合体は、前述の芳香族ジアミノグループとのアミド結合を形成するカルボニルグループとして、ベンゼン-1,3-ジカルボニルグループ(benzene-1,3-dicarbonyl group)およびベンゼン-1,4-ジカルボニルグループ(benzene-1,4-dicarbonyl group)以外にも、芳香族ジカルボニルモノマーまたはトリカルボニルモノマーに由来するカルボニルグループをさらに含んでもよい。
【0036】
ここで、前記芳香族ジカルボニルモノマーとしては4,4'-ビフェニルジカルボニルクロリド(4,4'-biphenyldicarbonyl chloride)などが挙げられ、前記芳香族トリカルボニルモノマーは、トリメソイルクロリド(trimesoyl chloride)などが挙げられる。
【0037】
特に、前記芳香族トリカルボニルモノマーは、前記共重合過程で架橋剤として作用して、ポリアミドブロック共重合体の機械的物性をさらに向上させることができる。
【0038】
このような効果の達成のために、前記芳香族トリカルボニルモノマーは、全体カルボニル由来モノマー中、約0.01モル%以上、あるいは約0.025モル%以上、あるいは約0.05モル%以上で含まれるのが好ましく、約5.0モル%以下、あるいは約2.5モル%以下、あるいは約1.5モル%以下、あるいは約1.25モル%以下で含まれるのが好ましい。芳香族トリカルボニルモノマーが過量で適用される場合、製造されるポリアミド共重合体の光学的物性が低下し、柔軟性が低下することがある。
【0039】
一方、前記芳香族ジアミンモノマーおよび芳香族ジカルボニルモノマーを重合して、芳香族ジアミノグループとベンゼン-ジカルボニルグループによるアミド結合を含む、ポリアミドを製造するための重合条件は特に制限されず、但し、前述の第1および第2ポリアミド共重合体内で各繰り返し単位の比率を異にするために、単量体の量を異にして添加することができる。
【0040】
具体的に、前記第1ポリアミド共重合体の重合時には、
i)ベンゼン-1,3-ジカルボニルモノマー、ベンゼン-1,4-ジカルボニルモノマー、および芳香族ジアミンモノマーを混合し、
ii)この時、ベンゼン-1,3-ジカルボニルモノマーは、ベンゼン-1,3-ジカルボニルモノマーおよびベンゼン-1,4-ジカルボニルモノマーの総合に対して20モル%以下で含まれ、
iii)アミングループとカルボニルグループの間にアミド結合を形成して、第1ポリアミド共重合体を製造することができる。
【0041】
そして、前記第2ポリアミド共重合体の重合時には、
i)ベンゼン-1,3-ジカルボニルモノマー、ベンゼン-1,4-ジカルボニルモノマー、および芳香族ジアミンモノマーを混合し、
ii)この時、ベンゼン-1,3-ジカルボニルモノマーは、ベンゼン-1,3-ジカルボニルモノマーおよびベンゼン-1,4-ジカルボニルモノマーの総合に対して20モル%を超過して含まれ、
iii)アミングループとカルボニルグループの間にアミド結合を形成して、第2ポリアミド共重合体を製造することができる。
【0042】
前記ポリアミド形成のための重合反応は、約零下25℃~約25℃の温度条件、さらに好ましくは約零下25℃~0℃の温度条件で、不活性気体雰囲気下の溶液重合で行うことができ、前述のモノマーの具体的な例示などは、前記ポリアミド共重合体部分で前述した通りである。
【0043】
そして、前記この時反応溶媒として、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、N-メチル-2-ピロリドン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ガンマ-ブチロラクトンなどが使用できる。
【0044】
発明の実施形態によれば、前記ポリアミド共重合体は、約10,000~約700,000g/mol、あるいは約10,000~約500,000g/mol、あるいは約100,000~約500,000g/mol、あるいは約300,000~約450,000g/molの重量平均分子量値を有することができる。
【0045】
この時、前記重量平均分子量値は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定されたものであってもよい。
【0046】
前述のポリアミドブロック共重合体を用いてフィルム積層体を製造する場合、優れた光学的物性および機械的物性を実現することができると同時に、柔軟性まで備えるようになり、多様な成形品の材料として使用できる。例えば、前記ポリアミドフィルム積層体は、ディスプレイ用基板、ディスプレイ用保護フィルム、タッチパネル、フォルダブル機器のウィンドウカバーなどに適用できる。
【0047】
前記ポリアミドフィルム積層体は、前記ポリアミド共重合体を使用して乾式法、湿式法のような通常の方法によって製造できる。
【0048】
例えば、前記ポリアミドフィルム積層体は、任意の基材上に前記第2ポリアミド共重合体を溶液をコーティングして膜を形成する段階;前記膜から溶媒を蒸発させて乾燥して、基材上に第2ポリアミド樹脂層を形成する段階;および
【0049】
前記第2ポリアミド樹脂層上に、前記第1ポリアミド共重合体を溶液をコーティングして膜を形成する段階;前記膜から溶媒を蒸発させて乾燥して、基材上に第1ポリアミド樹脂層を形成する段階によって製造できる。
【0050】
また他の一例によれば、前記ポリアミドフィルム積層体は、任意の基材上に前記第2ポリアミド共重合体を溶液をコーティングして第2膜を形成する段階;前記第2膜上に、前記第1ポリアミド共重合体を溶液をコーティングして第1膜を形成する段階;溶媒を蒸発させて乾燥する段階によっても製造できる。
【0051】
これにより、本発明の他の一実施形態によれば、基材;第1ポリアミド樹脂層;および第2ポリアミド樹脂層を含む、ポリアミドフィルム積層体を提供することができる。
【0052】
そして、前述のように、前記ポリアミド樹脂積層体は、基材上に第2ポリアミド樹脂層が形成され、前記第2ポリアミド樹脂層上に第1ポリアミド樹脂層が形成されるのが好ましい。
【0053】
前記第1および第2ポリアミド樹脂層は、前記基材の一面または両面上に形成することができ、前記第1ポリアミド上部、あるいは前記基材と前記第2ポリアミド樹脂層の間に、別途の機能性層をさらに備えることもできる。
【0054】
そして、前記基材は、ポリイミド系、ポリカーボネート系、ポリエステル系、ポリアルキル(メタ)アクリレート系、ポリオレフィン系およびポリサイクリックオレフィン系高分子からなる群より選択された1種以上の高分子を含むものであってもよい。
【0055】
そしてこれに加えて、必要によって、前記ポリアミドフィルム積層体に対する延伸および熱処理をさらに行うこともできる。
【0056】
前記ポリアミドフィルム積層体は、前述のように、互いに異なる性質を有するポリアミド共重合体を使用して製造されることによって無色透明でありながらも優れた機械的物性を示すことができる。
【0057】
具体的に、前記ポリアミドフィルム積層体は、50±2μmの厚さを有する試片に対してASTM E313に基づいて測定された黄色度指数値(yellow index、YI)が、約3.0以下あるいは約2.5以下であってもよい。
【0058】
そして、前記ポリアミドフィルム積層体は、下記数式1を満足するものであってもよい。
【0059】
[数式1]
YI1-YI0<3.0
【0060】
上記数式1で、
YI1およびYI0は、それぞれASTM E313の基準によって測定されたポリアミドフィルム積層体の黄色度指数(Yellowness Index)であって、
YI0は、前記ポリアミドフィルム積層体の初期黄色度指数であり、
YI1は、前記ポリアミドフィルム積層体をASTM G53-96の基準によって96時間紫外線および水分に露出させた後に測定した黄色度指数である。
【0061】
即ち、本発明の一実施形態によるポリアミドフィルム積層体は、製作初期だけでなく、紫外線や水分などの環境に長時間露出されても、黄変現象が発生しないなど、優れた光学的物性が維持できる。
【0062】
また、前記ポリアミドフィルム積層体は、50±2μmの厚さを有する試片に対してASTM D1003に基づいて測定されたヘイズ(haze)値が約1.0%以下、または約0.7%以下であってもよい。
【0063】
そして、前記ポリアミドフィルム積層体は、ISO527-3基準によって測定されたModulus値が約6GPa以上、好ましくは、約6.5GPa以上であってもよい。
【0064】
そして、前記ポリアミドフィルム積層体は、ISO527-3基準によって測定された伸び(Elongation)値が約10%以上、好ましくは約15%以上であってもよい。
【0065】
そして、前記ポリアミドフィルム積層体は、50±2μmの厚さを有する試片に対してASTM D3363に基づいて測定された鉛筆硬度(Pencil Hardness)値が3H以上であってもよい。
【発明の効果】
【0066】
本発明によるポリアミドフィルム積層体は、無色透明でありながらも優れた機械的物性を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下、発明の理解のために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は発明を例示するためのものに過ぎず、発明をこれらのみで限定するのではない。
【実施例】
【0068】
第1ポリアミド共重合体製造
【0069】
準備例1-1
【0070】
攪拌機、窒素注入器、滴下漏斗、および温度調節器が備えられた500mLの4-neck丸底フラスコ(反応器)に窒素を徐々に吹きながら、N,N-ジメチルアセトアミド(N,N-dimethylacetamide、DMAc)184gを満たし、反応器の温度を約-10℃に合わせた後、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ビフェニルジアミン(2,2'-bis(trifluoromethyl)-4,4'-biphenyldiamine、TFDB)0.030343molを溶解させた。
【0071】
ここに、イソフタロイルクロリド(isophthaloyl chloride、IPC)0.002731mol、およびテレフタロイルクロリド(terephthaloyl chloride、TPC)0.028219molを、約5分間隔をおいて、順次に添加しながら攪拌し、約-10℃条件で約60分間アミド形成反応を行った。
【0072】
反応を完了した後、DMAcを投入して固形分含量を5%以下になるように希釈し、これを1Lのメタノールで沈殿させ、沈殿した固形分をろ過した後、100℃の真空状態で約6時間以上乾燥して固形分形態のポリアミド共重合体を得た。(重量平均分子量約431,122g/mol;IPC比率:8.82mol%)
【0073】
準備例1-2
【0074】
攪拌機、窒素注入器、滴下漏斗、および温度調節器が備えられた500mLの4-neck丸底フラスコ(反応器)に窒素を徐々に吹きながら、N,N-ジメチルアセトアミド(N,N-dimethylacetamide、DMAc)184gを満たし、反応器の温度を約-10℃に合わせた後、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ビフェニルジアミン(2,2'-bis(trifluoromethyl)-4,4'-biphenyldiamine、TFDB)0.030343molを溶解させた。
【0075】
ここに、イソフタロイルクロリド(isophthaloyl chloride、IPC)0.005765mol、およびテレフタロイルクロリド(terephthaloyl chloride、TPC)0.025184molを、約5分間隔をおいて、順次に添加しながら攪拌し、約-10℃条件で約60分間アミド形成反応を行った。
【0076】
反応を完了した後、DMAcを投入して固形分含量を5%以下になるように希釈し、これを1Lのメタノールで沈殿させ、沈殿した固形分をろ過した後、100℃の真空状態で約6時間以上乾燥して固形分形態のポリアミド共重合体を得た。(重量平均分子量約392,845g/mol;IPC比率:18.63mol%)
【0077】
第2ポリアミド共重合体製造
【0078】
準備例2-1
【0079】
攪拌機、窒素注入器、滴下漏斗、および温度調節器が備えられた500mLの4-neck丸底フラスコ(反応器)に窒素を徐々に吹きながら、N,N-ジメチルアセトアミド(N,N-dimethylacetamide、DMAc)184gを満たし、反応器の温度を約-10℃に合わせた後、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ビフェニルジアミン(2,2'-bis(trifluoromethyl)-4,4'-biphenyldiamine、TFDB)0.030343molを溶解させた。
【0080】
ここに、イソフタロイルクロリド(isophthaloyl chloride、IPC)0.010013mol、およびテレフタロイルクロリド(terephthaloyl chloride、TPC)0.020936molを、約5分間隔をおいて、順次に添加しながら攪拌し、約-10℃条件で約60分間アミド形成反応を行った。
【0081】
反応を完了した後、DMAcを投入して固形分含量を5%以下になるように希釈し、これを1Lのメタノールで沈殿させ、沈殿した固形分をろ過した後、100℃の真空状態で約6時間以上乾燥して固形分形態のポリアミド共重合体を得た。(重量平均分子量約399,721g/mol;IPC比率:32.35mol%)
【0082】
ポリアミドフィルム積層体製造
【0083】
実施例1
【0084】
前記準備例2-1で得られた第2ポリアミド共重合体100重量部およびUV安定剤(Tinuvin329、BASF)5重量部をN,N-ジメチルアセトアミド(N,N-dimethylacetamide)に溶かして約15wt%の第2ポリアミド共重合体溶液を製造した。
【0085】
前記第2ポリアミド共重合体溶液をポリイミド系基材(UPILEX-75s、UBE社)上に塗布し、フィルムアプリケーターを用いて高分子溶液の厚さを均一に調節した。
(第2ポリアミド樹脂層形成)
【0086】
これと別途に、前記準備例1-1で得られた第1ポリアミド共重合体100重量部およびUV安定剤(Tinuvin329、BASF)5重量部をN,N-ジメチルアセトアミド(N,N-dimethylacetamide)に溶かして約15wt%の第1ポリアミド共重合体溶液を製造した。
【0087】
前記第1ポリアミド共重合体溶液を第2ポリアミド樹脂層上に塗布し、フィルムアプリケーターを用いて高分子溶液の厚さを均一に調節した。(第1ポリアミド樹脂層形成)
【0088】
これを、約120℃で約15分間マティスオーブンで乾燥した後、窒素を流しながら約250℃で約30分間硬化させた後、前記基材から剥離して、厚さ約50.0μmのポリアミドフィルム積層体を得た。
【0089】
積層体内部で、第2ポリアミド樹脂層の厚さは43μm、第1ポリアミド樹脂層の厚さは7μmであった。
【0090】
実施例2
【0091】
前記準備例2-1で得られた第2ポリアミド共重合体100重量部およびUV安定剤(Tinuvin329、BASF)5重量部をN,N-ジメチルアセトアミド(N,N-dimethylacetamide)に溶かして約15wt%の第2ポリアミド共重合体溶液を製造した。
【0092】
前記第2ポリアミド共重合体溶液をポリイミド系基材(UPILEX-75s、UBE社)上に塗布し、フィルムアプリケーターを用いて高分子溶液の厚さを均一に調節した。(第2ポリアミド樹脂層形成)
【0093】
これと別途に、前記準備例1-2で得られた第1ポリアミド共重合体100重量部およびUV安定剤(Tinuvin329、BASF)5重量部をN,N-ジメチルアセトアミド(N,N-dimethylacetamide)に溶かして約15wt%の第1ポリアミド共重合体溶液を製造した。
【0094】
前記第1ポリアミド共重合体溶液を第2ポリアミド樹脂層上に塗布し、フィルムアプリケーターを用いて高分子溶液の厚さを均一に調節した。(第1ポリアミド樹脂層形成)
【0095】
これを、約120℃で約15分間マティスオーブンで乾燥した後、窒素を流しながら約250℃で約30分間硬化させた後、前記基材から剥離して、厚さ約50.0μmのポリアミドフィルム積層体を得た。
【0096】
積層体内部で、第2ポリアミド樹脂層の厚さは35μm、第1ポリアミド樹脂層の厚さは15μmであった。
【0097】
比較例1(単一層)
【0098】
前記準備例1-1で得られた第1ポリアミド共重合体100重量部およびUV安定剤(Tinuvin329、BASF)5重量部をN,N-ジメチルアセトアミド(N,N-dimethylacetamide)に溶かして約15wt%の第1ポリアミド共重合体溶液を製造した。
【0099】
前記第1ポリアミド共重合体溶液をポリイミド系基材(UPILEX-75s、UBE社)上に塗布し、フィルムアプリケーターを用いて高分子溶液の厚さを均一に調節した。
【0100】
これを、約120℃で約15分間マティスオーブンで乾燥した後、窒素を流しながら約250℃で約30分間硬化させた後、前記基材から剥離して、厚さ約50.0μmのポリアミドフィルムを得た。
【0101】
比較例2(単一層)
【0102】
前記準備例1-2で得られた第1ポリアミド共重合体100重量部およびUV安定剤(Tinuvin329、BASF)5重量部をN,N-ジメチルアセトアミド(N,N-dimethylacetamide)に溶かして約15wt%の第1ポリアミド共重合体溶液を製造した。
【0103】
前記第1ポリアミド共重合体溶液をポリイミド系基材(UPILEX-75s、UBE社)上に塗布し、フィルムアプリケーターを用いて高分子溶液の厚さを均一に調節した。
【0104】
これを、約120℃で約15分間マティスオーブンで乾燥した後、窒素を流しながら約250℃で約30分間硬化させた後、前記基材から剥離して、厚さ約50.0μmのポリアミドフィルムを得た。
【0105】
比較例3(単一層)
【0106】
前記準備例2-1で得られた第2ポリアミド共重合体100重量部およびUV安定剤(Tinuvin329、BASF)5重量部をN,N-ジメチルアセトアミド(N,N-dimethylacetamide)に溶かして約15wt%の第2ポリアミド共重合体溶液を製造した。
【0107】
前記第2ポリアミド共重合体溶液をポリイミド系基材(UPILEX-75s、UBE社)上に塗布し、フィルムアプリケーターを用いて高分子溶液の厚さを均一に調節した。
【0108】
これを、約120℃で約15分間マティスオーブンで乾燥した後、窒素を流しながら約250℃で約30分間硬化させた後、前記基材から剥離して、厚さ約50.0μmのポリアミドフィルムを得た。
【0109】
試験例
【0110】
前記実施例および比較例によるポリアミドフィルム積層体、またはポリアミドフィルムに対して下記の特性を測定または評価し、その結果を下記表1に整理した。
【0111】
黄色度指数(Y.I.):COH-400 Spectrophotometer(NIPPON DENSHOKU INDUSTRIES)を用いてASTM E313の測定法によってフィルムの黄色度指数を測定した(YI0)。
【0112】
測定完了された試片を、ASTM G53-96の基準によって96時間紫外線および水分に露出させた後、ASTM E313の測定法によってフィルムの黄色度指数を再び測定した(YI1)。
【0113】
ヘイズ(Haziness):COH-400 Spectrophotometer(NIPPON DENSHOKU INDUSTRIES)を用いてASTM D1003の測定法によってフィルムのヘイズ値を測定した。
【0114】
鉛筆硬度:Pencil Hardness Testerを用いてASTM D3363の測定法によってフィルムの鉛筆硬度を測定した。具体的に、前記テスターに多様な硬度の鉛筆を固定して前記フィルムにかいた後、前記フィルムに傷が発生した程度を肉眼や顕微鏡で観察して、総かいた回数の70%以上かかれなかった時、その鉛筆の硬度に該当する値を前記フィルムの鉛筆硬度と評価した。下記表1には前記テストで該当硬度の鉛筆で前記フィルムをかいた回数(総5回)とそのうちのスクラッチが発生した個数を表した。
【0115】
モジュラスおよび伸び:Universal Testing Systems(Instron(登録商標)3360)を用いてISO527-3に基づいてフィルムのモジュラス(GPB)および伸び(%)を測定した。
【0116】
耐折強度(Folding endurance):MITタイプの耐折強度試験器(folding endurance tester)を用いてISO5626に基づいたフィルムの耐折強度を評価した。
【0117】
具体的に、25℃下でフィルムの試片(1cm*7cm)を耐折強度試験器にローディングし、試片の左側と右側で175rpmの速度で135°の角度、0.8mmの曲率半径および250gの荷重で折り曲げて、試片が破断するまで往復折り曲げ回数(cycle)を測定した。
【0118】
【0119】
上記表を参照すれば、本願実施例によるポリアミドフィルム積層体は、低いヘイズ値および低い黄色度指数など、優れた光学的物性を備えていながらも、高い鉛筆硬度値、モジュラスおよび伸び値など、優れた機械的物性を備えているのを確認することができ、これに加えて、非常に高い耐折強度値を有していることが分かる。
【0120】
これにより、本発明の一実施形態によるポリアミドフィルム積層体は、フォルダブル(folderble)ディスプレイなどに適用可能であると考えられる。