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特許7103974付加硬化型シリコーン組成物、光反射材用シリコーン硬化物、光反射材及び光半導体装置
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  • 特許-付加硬化型シリコーン組成物、光反射材用シリコーン硬化物、光反射材及び光半導体装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】付加硬化型シリコーン組成物、光反射材用シリコーン硬化物、光反射材及び光半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20220712BHJP
   C08K 3/20 20060101ALI20220712BHJP
   C08K 5/5435 20060101ALI20220712BHJP
   C08K 9/06 20060101ALI20220712BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20220712BHJP
   H01L 33/60 20100101ALI20220712BHJP
【FI】
C08L83/07
C08K3/20
C08K5/5435
C08K9/06
C08L83/05
H01L33/60
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019032102
(22)【出願日】2019-02-25
(65)【公開番号】P2020132824
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】木村 真司
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-207162(JP,A)
【文献】特開2018-184580(JP,A)
【文献】国際公開第2016/038836(WO,A1)
【文献】特開2011-225871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
H01L 33/00
H01L 33/48- 33/64
C09D 1/00- 10/00
C09D101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有し、25℃における粘度が0.05~100Pa・sである直鎖状のオルガノポリシロキサン:50~97質量部、
(B)下記平均単位式(1)で表され、23℃において蝋状又は固体である三次元網状オルガノポリシロキサン樹脂:3~50質量部(但し、(A)成分と(B)成分との合計は100質量部である。)、
(R SiO1/2(R SiO1/2(RSiO)(R SiO)(RSiO3/2(RSiO3/2(SiO(1)
(式中、Rは独立にアルケニル基を表し、Rは独立に付加反応性炭素-炭素二重結合を含まない一価炭化水素基を表し、全Rの少なくとも80モル%はメチル基であり、1>a≧0、1>b≧0、1>c≧0、1>d≧0、1>e≧0、1>f≧0及び1>g≧0、並びにb+c+e>0、e+f+g>0であり、かつa+b+c+d+e+f+g=1を満たす数である。)
(C)1分子あたり少なくとも2つのケイ素原子に結合した水素原子を有し、かつ付加反応性炭素-炭素二重結合を有しないオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分及び(B)成分中のアルケニル基1モルに対し、ケイ素原子に結合した水素原子が0.4~4.0モルとなる量
(D)白金族金属を含むヒドロシリル化触媒:(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計質量に対して白金族金属の質量換算で0.1~1000ppmとなる量、
(E)シロキサン処理が表面に施された酸化チタン粉末:20~200質量部、及び
(F)下記式(2)で示される化合物:0.1~10質量部
【化1】
(式中、Rは独立にアルコキシ基であり、Rはアルコキシ基またはアルキル基であり、nは0または1であり、mは1~10の整数である。)
を含有することを特徴とする付加硬化型シリコーン組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の付加硬化型シリコーン組成物の硬化物であることを特徴とする光反射材用シリコーン硬化物。
【請求項3】
厚み0.3mm以下における波長430~800nmの光の反射率が90%以上のものであることを特徴とする請求項2に記載の光反射材用シリコーン硬化物。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の光反射材用シリコーン硬化物からなるものであることを特徴とする光反射材。
【請求項5】
請求項4に記載の光反射材を有するものであることを特徴とする光半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加硬化型シリコーン組成物、光反射材用シリコーン硬化物、光反射材及び光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオード(以下、「LED」という)等の光半導体素子は、高効率で発光するとともに駆動特性や点灯繰り返し特性に優れるため、インジケーターや光源として幅広く利用されている。特に、白色LEDは、表示装置のバックライトやカメラのフラッシュとして広く応用されており、更には照明用途にも採用されている。こうした発光装置には、照射方向の光の取り出し効率を高めるため、発せられた光を反射する材料が搭載されている。
【0003】
LEDに用いられるリードフレームは、電流を通すとともに光を反射させる機能も備えていることが多い。具体的には、光の反射率が良好である銀めっきが好んで使用される。
しかしながら、銀めっきは外部からのガスに触れることによって酸化や硫化を起こし、反射率が低下しやすいという問題点がある。外部からのガスによる腐食を防止するために、金めっきやアルミニウムを使用することがあるが、両者とも可視光の反射率が低いという問題点がある。
【0004】
また、絶縁部材として光反射樹脂やセラミック等が用いられ、その部分も光を反射する機能が求められるが、必ずしも光反射率が高いものだけではない。
こうした問題点を解決するため、リードフレームや絶縁部材上に光反射率の高い樹脂を薄くコーティングする方法が考えられる(以下、「白色コーティング材料」という)。
【0005】
特許文献1、2ではエポキシ樹脂と金属酸化物等を構成成分とする光反射材料が提案されている。しかしながら、これらの材料は、シリコーン樹脂と金属酸化物からなる硬化物と比較すると、高温耐久性や光耐久性に劣る。
特許文献3、4ではシリコーン樹脂と金属酸化物等を構成成分とする光反射材料が提案されている。しかしながら、これらの材料は、優れた耐久性を有する一方、その組成物自体が濡れ広がるような流動性を有していないため、白色コーティング材料としては不向きである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-106226号公報
【文献】特許4694371号公報
【文献】特開2012-233035号公報
【文献】特開2013-221075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、高い流動性を有する付加硬化型シリコーン組成物であって、薄膜においても光反射性能の優れる硬化物を与える付加硬化型シリコーン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、本発明では、
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有し、25℃における粘度が0.05~100Pa・sである直鎖状のオルガノポリシロキサン:50~97質量部、
(B)下記平均単位式(1)で表され、23℃において蝋状又は固体である三次元網状オルガノポリシロキサン樹脂:3~50質量部(但し、(A)成分と(B)成分との合計は100質量部である。)、
(R SiO1/2(R SiO1/2(RSiO)(R SiO)(RSiO3/2(RSiO3/2(SiO (1)
(式中、Rは独立にアルケニル基を表し、Rは独立に付加反応性炭素-炭素二重結合を含まない一価炭化水素基を表し、全Rの少なくとも80モル%はメチル基であり、1>a≧0、1>b≧0、1>c≧0、1>d≧0、1>e≧0、1>f≧0及び1>g≧0、並びにb+c+e>0、e+f+g>0であり、かつa+b+c+d+e+f+g=1を満たす数である。)
(C)1分子あたり少なくとも2つのケイ素原子に結合した水素原子を有し、かつ付加反応性炭素-炭素二重結合を有しないオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分及び(B)成分中のアルケニル基1モルに対し、ケイ素原子に結合した水素原子が0.4~4.0モルとなる量
(D)白金族金属を含むヒドロシリル化触媒:(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計質量に対して白金族金属の質量換算で0.1~1000ppmとなる量、
(E)シロキサン処理が表面に施された酸化チタン粉末:20~200質量部、及び
(F)下記式(2)で示される化合物:0.1~10質量部
【化1】
(式中、Rは独立にアルコキシ基であり、Rはアルコキシ基またはアルキル基であり、nは0または1であり、mは1~10の整数である。)
を含有する付加硬化型シリコーン組成物を提供する。
【0009】
この付加硬化型シリコーン組成物は室温において高い流動性を有し、更に薄膜において光反射性能に優れる硬化物を与えるものである。
【0010】
また、本発明は、上記付加硬化型シリコーン組成物の硬化物である光反射材用シリコーン硬化物を提供する。
この硬化物は、薄膜において光反射性能に優れるものである。
【0011】
この硬化物は、好ましくは、厚み0.3mm以下における波長430~800nmの光の反射率が90%以上のものである。
反射率が所定以上の上記硬化物は、薄膜において光反射性能により優れるものである。
【0012】
本発明は、上記光反射材用シリコーン硬化物からなる光反射材を提供する。
この光反射材は、薄いものであっても光反射性能に優れるものである。
【0013】
さらに、本発明は、上記光反射材を有する光半導体装置を提供する。
この光半導体装置は、長期間にわたって高い光取り出し効率を維持できるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の付加硬化型シリコーン組成物は、室温において高い流動性を有するため、作業性・取扱い性に優れ、例えば、水平板上の一部に塗布することにより、濡れ広がり、膜状にコーティングすることができる。また、該組成物を熱硬化させて得られるシリコーン硬化物は、薄膜においても光反射性能に優れる。従って、該硬化物は光半導体用光反射材、特に光反射コーティング材として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の光反射材用シリコーン硬化物が用いられる光半導体装置の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上述のように、高い流動性を有する付加硬化型シリコーン組成物であって、薄膜においても光反射性能の優れる硬化物を与える付加硬化型シリコーン組成物の開発が求められていた。
【0017】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、下記の(A)~(F)成分を含む付加硬化型シリコーン組成物であれば、上記課題を達成でき、光反射材として好適なものとなることを見出し、本発明を完成させた。
【0018】
即ち、本発明は、
(A)ケイ素原子に結合したアルケニル基を1分子中に少なくとも2個有し、25℃における粘度が0.05~100Pa・sである直鎖状のオルガノポリシロキサン:50~97質量部、
(B)下記平均単位式(1)で表され、23℃において蝋状又は固体である三次元網状オルガノポリシロキサン樹脂:3~50質量部(但し、(A)成分と(B)成分との合計は100質量部である。)、
(R SiO1/2(R SiO1/2(RSiO)(R SiO)(RSiO3/2(RSiO3/2(SiO (1)
(式中、Rは独立にアルケニル基を表し、Rは独立に付加反応性炭素-炭素二重結合を含まない一価炭化水素基を表し、全Rの少なくとも80モル%はメチル基であり、1>a≧0、1>b≧0、1>c≧0、1>d≧0、1>e≧0、1>f≧0及び1>g≧0、並びにb+c+e>0、e+f+g>0であり、かつa+b+c+d+e+f+g=1を満たす数である。)
(C)1分子あたり少なくとも2つのケイ素原子に結合した水素原子を有し、かつ付加反応性炭素-炭素二重結合を有しないオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分及び(B)成分中のアルケニル基1モルに対し、ケイ素原子に結合した水素原子が0.4~4.0モルとなる量
(D)白金族金属を含むヒドロシリル化触媒:(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計質量に対して白金族金属の質量換算で0.1~1000ppmとなる量、
(E)シロキサン処理が表面に施された酸化チタン粉末:20~200質量部、及び
(F)下記式(2)で示される化合物:0.1~10質量部
【化2】
(式中、Rは独立にアルコキシ基であり、Rはアルコキシ基またはアルキル基であり、nは0または1であり、mは1~10の整数である。)
を含有する付加硬化型シリコーン組成物である。
【0019】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書において、「Me」はメチル基を表し、「Vi」はビニル基を表す。粘度は回転粘度計を用いた25℃における値である。
【0020】
<付加硬化型シリコーン組成物>
以下、各成分について詳細に説明する。
[(A)成分]
(A)成分は、本発明の組成物の主骨格となる成分であり、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有する直鎖状のオルガノポリシロキサンである。
(A)成分の粘度は0.05~100Pa・sであり、好ましくは0.1~50Pa・sであり、より好ましくは0.5~10Pa・sである。粘度が0.05Pa・s未満では、硬化物の強度が弱くなってしまい、100Pa・s以上では流動性が低下してしまう。
【0021】
(A)成分中のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基が例示され、特に、ビニル基であることが好ましい。1分子中に含まれるアルケニル基は少なくとも2個であり、好ましくは2~20個であり、さらに好ましくは2~5個である。2個未満では硬化物の硬さが不十分になり、20個以下であると硬化物が脆くなることもない。
【0022】
(A)成分中の前記アルケニル基以外のケイ素原子に結合した炭化水素基は特に限定されず、例えば、非置換又は置換の、炭素原子数が、通常1~12、好ましくは1~10の一価アルキル基である。この非置換又は置換の一価アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部又は全部が塩素原子、フッ素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換された、クロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等が挙げられ、好ましくはメチル基である。
【0023】
このような(A)成分として、具体的には、下記式で表されるオルガノポリシロキサン等が例示される。
ViMeSiO(SiMeO)SiMeVi
ViMeSiO(SiMeViO)(SiMeO)SiMeVi
ViMeSiO(SiMeO)SiMeVi
ViSiO(SiMeO)SiVi
ViMeSiO(SiMeViO)(SiMeO)SiMeVi
ViSiO(SiMeViO)(SiMeO)SiVi
MeSiO(SiMeViO)(SiMeO)SiMe
(式中、p、q、rはp≧0、q≧0、r≧2の整数であり、(A)成分の粘度範囲を満たす整数である。)
【0024】
(A)成分の直鎖状オルガノポリシロキサンの具体例としては、下記式で表されるもの等が挙げられる。
ViMeSiO(SiMeO)200SiMeVi
ViMeSiO(SiMeO)450SiMeVi
(A)成分は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0025】
[(B)成分]
(B)成分は本組成物を硬化して得られる硬化物に強度を付与するための成分であり、下記平均単位式(1)で表される三次元網状のオルガノポリシロキサン樹脂である。
(R2 3SiO1/2a(R12 2SiO1/2b(R12SiO)c(R2 2SiO)d(R1SiO3/2e(R2SiO3/2f(SiO2g (1)
(式中、R1は独立にアルケニル基を表し、R2は独立に付加反応性炭素-炭素二重結合を含まない一価炭化水素基を表し、全R2の少なくとも80モル%はメチル基であり、1>a≧0、1>b≧0、1>c≧0、1>d≧0、1>e≧0、1>f≧0及び1>g≧0、並びにb+c+e>0、e+f+g>0であり、かつa+b+c+d+e+f+g=1を満たす数である。)
【0026】
また、(B)成分は、23℃において蝋状もしくは固体であり、「蝋状」とは、23℃において、10,000Pa・s以上、特に100,000Pa・s以上の、ほとんど自己流動性を示さないガム状(生ゴム状)であることを意味する。
【0027】
上記平均組成式(1)中、Rで表されるアルケニル基は、(A)成分中のアルケニル基として例示したものと同種のものであるが、入手のし易さ及び価格面からビニル基が好ましい。
【0028】
で表される付加反応性炭素-炭素二重結合を含まない一価炭化水素基は、(A)成分においてアルケニル基以外のケイ素原子に結合した炭化水素基として例示したものと同種のものが挙げられるが、全Rの少なくとも80モル%がメチル基であり、95~100モル%がメチル基であることが好ましい。
【0029】
aは0~0.65、bは0~0.65、cは0~0.5、dは0~0.5、eは0~0.8、fは0~0.8、gは0~0.6の数であることが好ましい。また、b+c+eは0.01~0.30、特に0.05~0.20の数であることが好ましく、e+f+gは0.1~0.8、特に0.2~0.6の数であることが好ましい。
【0030】
(B)成分のオルガノポリシロキサン樹脂は、例えば、下記式で表されるものが好ましい。
(R2 3SiO1/2(R12 2SiO1/2(SiO2
(R12 2SiO1/2(SiO2
(R12SiO)(R2 2SiO)(R2SiO3/2
(R12 2SiO1/2(R2 2SiO)(R1SiO3/2
(R12 2SiO1/2(R2 2SiO)(R2SiO3/2
(R2 3SiO1/2(R12 2SiO1/2(R2 2SiO)(R2SiO3/2
(R2 3SiO1/2(R12 2SiO1/2(R12SiO)(R2 2SiO)(R2SiO3/2
(式中、R1、R2、a、b、c、d、e、f及びgは、前記平均単位式(1)で定義した通りである。)
【0031】
(B)成分の具体例としては、下記平均単位式で表されるもの等が挙げられる。
(Me3SiO1/20.4(ViMe2SiO1/20.1(SiO20.5
(ViMeSiO)0.2(Me2SiO)0.35(MeSiO3/20.45
(ViMe2SiO1/20.2(Me2SiO)0.25(MeSiO3/20.55
(B)成分は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0032】
(B)成分の配合量は、(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して3~50質量部であり、好ましくは3~30質量部、より好ましくは5~20質量部である。(B)成分の配合量が(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して3質量部未満であると、流動性が得られにくくなる。また、前記配合量が50質量部を超える場合は、組成物の粘度が高くなることにより流動性が低下する。
【0033】
[(C)成分]
(C)成分は、1分子当たり少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)を有し、かつ付加反応性炭素-炭素二重結合を有しないオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、(A)成分及び(B)成分とヒドロシリル化反応し、架橋剤として作用する。
【0034】
(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、平均で1分子中に少なくとも2個、好ましくは3~300個、更に好ましくは4~150個のSiH基を有するものである。
(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサン分子中におけるケイ素原子結合水素原子の結合位置は、分子鎖末端であっても、分子鎖非末端であっても、あるいはこれらの両方であってもよい。
【0035】
(C)成分中、前記ケイ素原子結合水素原子の含有量は、(C)成分100g中、好ましくは0.001~5モル、特に好ましくは0.01~2モルである。
【0036】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサン分子中において、前記ケイ素原子結合水素原子以外のケイ素原子結合炭化水素基は特に限定されないが、例えば、非置換又は置換の、炭素原子数が、通常1~10、好ましくは1~6の一価アルキル基等が挙げられる。その具体例としては、(A)成分において、ケイ素原子結合アルケニル基以外のケイ素原子結合炭化水素基として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0037】
(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は特に限定されず、例えば、直鎖状、環状、分岐鎖状、三次元網状構造(樹脂状)等が挙げられ、直鎖状又は環状が好ましい。
【0038】
(C)成分の25℃における粘度は、組成物の作業性や硬化物の光学特性、力学特性がより優れたものとなるため、好ましくは0.1~5,000mPa・s、より好ましくは0.5~1,000mPa・s、特に好ましくは2~500mPa・sの範囲を満たす、23℃で液状である範囲が望ましい。かかる粘度を満たす場合には、オルガノハイドロジェンポリシロキサン1分子中のケイ素原子数(又は重合度)は、通常、2~1,000個、好ましくは3~300個、より好ましくは4~150個である。
【0039】
(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの具体例としては、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン環状共重合体、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、式:(CH32HSiO1/2で表されるシロキサン単位と式:(CH33SiO1/2で表されるシロキサン単位と式:SiO4/2で表されるシロキサン単位とからなる共重合体、式:(CH32HSiO1/2で表されるシロキサン単位と式:SiO4/2で表されるシロキサン単位とからなる共重合体、これらのオルガノポリシロキサンの二種以上からなる混合物等が挙げられる。
【0040】
(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、例えば、下記式で表されるものが好ましい。
MeSiO(MeHSiO)SiMe
MeSiO(MeHSiO)(MeSiO)SiMe
(式中、i、jは2~100、好ましくは2~50の整数である。)
【0041】
(C)成分の具体例としては、下記式で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。
MeSiO(MeHSiO)38SiMe
(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0042】
(C)成分の配合量は、硬化物の強度、光学特性、及び力学特性の点から、前記(A)成分及び(B)成分中のアルケニル基1モルに対し、ケイ素原子に結合した水素原子が0.4~4.0モルとなる量であり、好ましくは0.6~3.0モルとなる量である。
【0043】
[(D)成分]
(D)成分の白金族金属系ヒドロシリル化触媒としては、(A)成分及び(B)成分中のアルケニル基と(C)成分中のSiH基とのヒドロシリル化反応を促進するものであれば特に限定されず、その具体例としては、白金、パラジウム、ロジウム等の白金族金属;塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィン類、ビニルシロキサン又はアセチレン化合物との配位化合物等の白金系化合物;テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の白金族金属化合物が挙げられるが、好ましくは白金系化合物であり、特に好ましくは塩化白金酸とビニルシロキサンとの配位化合物である。
(D)成分は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0044】
(D)成分の配合量は、ヒドロシリル化触媒としての有効量であればよく、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計質量に対して白金族金属の質量換算で0.1~1000ppmの範囲であり、好ましくは1~500ppmの範囲である。かかる範囲を満たすと、付加反応の反応速度が適切なものとなり、高い強度を有する硬化物を得ることができる。
【0045】
[(E)成分]
(E)成分は、表面にシロキサン処理が施された酸化チタン粉末であり、本組成物に光反射性能を付与する成分である。
【0046】
酸化チタン粉末の表面にシロキサン処理が施されていない場合、粉末中に含まれる水分によって付加硬化型シリコーン組成物を硬化させる際に泡を生じてしまい、光反射材料として十分な性能を発揮できなくなる。発泡を防ぐために、シリコーン中で加熱減圧混合をする方法があるが、この工程を経ると流動性が低下してしまうため好ましくない。
酸化チタンの結晶形態はアナターゼ、ルチル、ブルカイトに分類されるが、最も熱転移が安定なルチル型を用いることが好ましい。
【0047】
(E)成分の粒径は特に限定されないが、一般に平均粒径が0.1~200μmの範囲のものが多く市販されており扱いやすく、0.1~100μmの範囲のものがより好ましい。(E)成分の平均粒径が0.1~200μmの範囲であると、本発明の付加硬化型シリコーン組成物は流動性が良好となりやすく、また、得られる硬化物の表面が粗くなりにくく、光反射性能が効果的に向上する。
このような(E)成分としては、市販品を用いてもよく、具体例としては石原産業(株)製のタイペークPF-691、タイペークCR-63等が挙げられる。
(E)成分は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0048】
(E)成分の配合量は、上記(A)成分及び(B)成分との合計100質量部に対し、20~200質量部である。好ましくは30~150質量部であり、より好ましくは40~100質量部である。(A)成分及び(B)成分との合計100質量部に対し、(E)成分の配合量が20質量部未満であると、硬化物は光反射性能が劣り、200質量部を超えると流動性が得られにくくなる。
【0049】
[(F)成分]
(F)成分は(B)成分と共存させることによって、本発明の付加硬化型シリコーン組成物に流動性を付与するための成分であり、下記式(2)で表される化合物である。
【0050】
【化3】
(式中、Rは独立にアルコキシ基であり、Rはアルコキシ基またはアルキル基であり、nは0又は1であり、好ましくは1である。mは1~10の整数であり、好ましくは2~9であり、さらに好ましくは3~8である。)
【0051】
式(2)中のRは独立に例えば炭素数1~6のアルコキシ基である。このアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などが挙げられ、好ましくはメトキシ基、エトキシ基であり、より好ましくはメトキシ基である。
【0052】
式(2)中のRはアルコキシ基またはアルキル基であり、アルコキシ基としては、Rで例示したアルコキシ基と同様のものが例示される。アルキル基としては、(A)成分において例示したものと同様のものが例示される。
【0053】
このような(F)成分の具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
【化4】
(F)成分は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0055】
(F)成分の配合量は、前記(A)成分および(B)成分の合計100質量部に対して、0.1~10質量部となる量であり、好ましくは、0.5~5.0質量部である。(F)成分の配合量が少な過ぎると流動性が低下し、(F)成分の配合量が多過ぎると、得られる硬化物の耐久性が低下する。
【0056】
<その他の成分>
本発明の付加硬化型シリコーン組成物には、目的に応じて、有機過酸化物、酸化防止剤、接着性向上剤や反応抑制剤などの成分を添加してもよい。
有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーベンゾエート、o-メチルベンゾイルパーオキサイド、p-メチルベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、1,1―ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,3-トリメチルシクロヘキサン、ジ(4-メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサメチレンビスカーボネート等が挙げられる。
【0057】
有機過酸化物の添加量は、上記(A)~(F)成分の合計100質量部に対して0.01~5質量部が好ましく、特に0.05~3質量部を配合することが好ましい。このような範囲であれば、さらなる樹脂強度の向上を達成することができる。これらは一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
酸化防止剤としては、例えばヒンダードアミンやヒンダードフェノール系化合物が挙げられ、その添加量は、上記(A)~(F)成分の合計質量に対して500~3,000ppmが好ましい。
【0059】
接着性向上剤としては、付加反応硬化型である本発明の組成物に自己接着性を付与する観点から、接着性を付与する官能基を含有するシラン、シロキサン等の有機ケイ素化合物、非シリコーン系有機化合物等が用いられる。
【0060】
接着性を付与する官能基の具体例としては、ケイ素原子に結合したビニル基、アリル基等のアルケニル基又は水素原子;炭素原子を介してケイ素原子に結合したエポキシ基(例えば、γ-グリシドキシプロピル基、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基等)、アクリロキシ基(例えば、γ-アクリロキシプロピル基等)、又はメタクリロキシ基(例えば、γ-メタクリロキシプロピル基等);アルコキシシリル基(例えば、エステル構造、ウレタン構造、エーテル構造を1~2個含有してもよいアルキレン基を介してケイ素原子に結合したトリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基等のアルコキシシリル基等)が挙げられる。
接着性を付与する官能基を含有する有機ケイ素化合物としては、シランカップリング剤、アルコキシシリル基と有機官能性基を有するシロキサン、反応性有機基を有する有機化合物にアルコキシシリル基を導入した化合物等が例示される。
【0061】
また、非シリコーン系有機化合物としては、例えば、有機酸アリルエステル、エポキシ基開環触媒、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物等が挙げられる。
【0062】
反応抑制剤としては、トリフェニルホスフィン等のリン含有化合物;トリブチルアミンやテトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾール等の窒素含有化合物;硫黄含有化合物;アセチレン系化合物;ハイドロパーオキシ化合物;マレイン酸誘導体;1-エチニルシクロヘキサノール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、エチニルメチルデシルカルビノール、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン等の、上記(D)成分のヒドロシリル化触媒に対して硬化抑制効果を持つ公知の化合物が例示される。
【0063】
反応抑制剤による硬化抑制効果の度合いは、反応抑制剤の化学構造によって異なるため、反応抑制剤の配合量は、使用する反応抑制剤ごとに最適な量に調整することが望ましい。好ましくは、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の合計30質量部に対して0.001~5質量部である。前記配合量が0.001質量部以上であれば、室温での組成物の長期貯蔵安定性を十分に得ることができる。前記配合量が5質量部以下であれば、組成物の硬化が阻害されるおそれがない。
【0064】
また、本発明の付加硬化型シリコーン組成物には、補強性を向上させるために、例えば、微粉末シリカ、結晶性シリカ、中空フィラー、シルセスキオキサン等の無機質充填剤、及びこれらの充填剤をオルガノアルコキシシラン化合物、オルガノクロロシラン化合物、オルガノシラザン化合物、低分子量シロキサン化合物等の有機ケイ素化合物により表面疎水化処理した充填剤等;シリコーンゴムパウダー、シリコーンレジンパウダー等を配合してもよい。
【0065】
微粉末シリカとしては、比表面積(BET法)が50m/g以上のものが好ましく、より好ましくは50~400m/gのもの、特に好ましくは100~300m/gのものである。比表面積が50m/g以上であれば、硬化物に十分な補強性を付与できる。
このような微粉末シリカとしては、従来からシリコーンゴムの補強性充填剤として使用されている公知のものを用いることができ、例えば、煙霧質シリカ(乾式シリカ)、沈降シリカ(湿式シリカ)等が挙げられる。微粉末シリカはそのまま使用してもよいが、組成物に良好な流動性を付与するため、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン等のメチルクロロシラン類、ジメチルポリシロキサン、ヘキサメチルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン、ジメチルテトラビニルジシラザン等のヘキサオルガノジシラザン等の有機ケイ素化合物で処理したものを使用することが好ましい。このような補強性シリカは一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0066】
本発明の付加硬化型シリコーン組成物は、(A)~(F)成分および必要に応じてその他の成分を混合して調製することができるが、例えば、(A)成分、(B)成分および(D)成分を含むパートと、(C)成分を含むパートとを個別に調製した後、それら2パートを混合して使用することもできる。また、(A)成分、(B)成分および(C)成分を含むパートと(D)成分を含むパートを混合してもよい。
なお、(B)成分は23℃で蝋状又は固体であることから、他の成分に溶解させるため、(B)成分を溶剤に溶解した溶液を(A)成分と混合し、減圧留去等により溶剤を除去して、(A)成分と(B)成分との混合物を調製した後に他の成分と混合してもよい。
【0067】
本発明の付加硬化型シリコーン組成物は硬化前には液状であり、高い流動性を有する。ここでの流動性は、斜めにした平滑な板上をどの程度流れるかを意味し、回転粘度とは必ずしも相関関係にないため、区別する。
【0068】
本発明の付加硬化型シリコーン組成物0.05gを水平に対する傾斜角45°のアルミ板に乗せ、25℃で1時間静置させた際の長さ(流れ性)は30mm以上が好ましく、40mm以上がより好ましい。流れ性が30mm以上であると、組成物が塗工面を拡がりやすく作業性が良好である。なお、ここでの長さとは、組成物の端から端までの直線最大距離である。
【0069】
[光反射材用シリコーン硬化物]
本発明の付加硬化型シリコーン組成物を硬化させることにより、白色の光反射材用シリコーン硬化物を得ることができる。本発明の付加硬化型シリコーン組成物は流動性が良好であるため、ディスペンスにより塗布し、セルフレベリングさせた後に硬化させることで、光反射材を薄膜コーティングすることができる。なお、本発明の付加硬化型シリコーン組成物の硬化条件は、特に制限されないが、通常、80~200℃、好ましくは100~180℃で1分~24時間とすることが好ましく、5分~5時間の条件がさらに好ましい。
【0070】
本発明の付加硬化型シリコーン組成物は、薄膜コーティングして使用されることを想定しているため、薄膜の可視光(波長:430~800nm)の反射率が良好である必要がある。具体的には硬化物の厚さ0.3mm以下における可視光反射率が90%以上(即ち、90~100%)となることが好ましい。より好ましくは可視光反射率95%以上(即ち、95~100%)である。該反射率が90%以上であると、金めっきやアルミといった光反射率が高くないリードフレームにコーティングした時に、光の取り出し効率がより高くなり、光半導体素子に充分な明るさを容易に確保できる。なお、本明細書において光の反射率は、積分球を搭載したスペクトロフォトメーター装置により測定された数値を意味する。
【0071】
[光反射材]
本発明の光反射材用シリコーン硬化物からなる光反射材は、例えば、LED等の光半導体装置用、特に白色LED用のリードフレーム等の光反射コーティング材として好適に用いることができる。
【0072】
[光半導体装置]
さらに、本発明は、上記光反射材を有する光半導体装置を提供する。
上述のように、本発明の付加硬化型シリコーン組成物は、薄膜においても光反射性能の優れる光反射材用シリコーン硬化物を与える。従って、本発明の光反射材を用いた白色LED等の光半導体装置は長期間にわたって高い光取り出し効率を維持できる。
【0073】
本発明の光半導体装置の一実施形態を図1を用いて説明する。図1に示したように、光半導体装置7が備えるリード電極2上に白色コーティング材料6を滴下することによって、リード電極2等を覆うように濡れ広がり、硬化後にはリード電極2の代わりに発光素子1から発せられた光を反射し、光の取り出し効率を向上させることが出来る。なお、リード電極2上にダイボンド材3でボンディングされた発光素子1は金線4でリード電極2と接続されている。また、光半導体装置7の周縁には光反射樹脂5によりリフレクターが形成されている。
【実施例
【0074】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下において、粘度は回転粘度計を用いて測定した25℃での値であり、重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)における標準ポリスチレン換算値である。また、各シロキサン単位の略号の意味は下記のとおりである。
:(CHHSiO1/2
M:(CH iO1/2
Vi:(CH=CH)(CHSiO1/2
:(CH)HSiO2/2
D:(CHSiO2/2
Q:SiO4/2
【0075】
[実施例1~3、比較例1~6]
表1に示す配合量で下記の各成分を混合し、付加硬化型シリコーン組成物を調製した。なお、表1における各成分の数値は質量部を表す。なお、実施例1~3、比較例1、3~6においては、(B)成分をキシレンに溶解させた溶液を(A)成分と混合し、減圧留去によりキシレンを除去して(A)成分と(B)成分との混合物を調製した後、他の成分と混合した。
【0076】
即ち、まず、5リットルゲートミキサー(井上製作所(株)製、商品名:5リットルプラネタリミキサー)を用いて、(A)成分と(B)成分との混合物(比較例2においては(A)成分のみ)、及び(E)成分を25℃にて1時間混合し、次に(D)成分及び(F)成分を加え25℃にて30分間混合し、続いて(G)成分を加え25℃にて30分間混合し、最後に(C)成分を加え25℃、減圧(30mmHg)環境にて30分間混合して付加硬化型シリコーン組成物を得た。
【0077】
比較例6に関しては、比較例5と同様の配合組成で、酸化チタンの脱水工程を追加した。即ち、まず、5リットルゲートミキサーを用いて、(A)成分と(B)成分との混合物、及び(E)成分を150℃、減圧(30mmHg)環境にて1時間混合して酸化チタンの脱水を行い、25℃に戻した後、(D)成分及び(F)成分を加え30分間混合し、続いて(G)成分を加え25℃にて30分間混合し、最後に(C)成分を加え25℃、減圧(30mmHg)環境にて30分間混合して付加硬化型シリコーン組成物を得た。
【0078】
(A)成分:
(A-1)平均分子式:MVi 200(0.013モル/100g)で表される、粘度1.0Pa・sのオルガノポリシロキサン
【0079】
(B)成分:
(B-1)平均単位式M0.40Vi 0.070.53で表される、重量平均分子量5,300、ビニル基の含有量が1.0ミリモル/gの23℃で固体であるオルガノポリシロキサン樹脂
【0080】
(C)成分:
(C-1)平均分子式:M 38(1.55モル/100g)で表される、粘度20mPa・sのオルガノハイドロジェンポリシロキサン
【0081】
(D)成分:
(D-1)塩化白金酸から誘導した1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサンを配位子として有する白金錯体のトルエン溶液(白金原子を1質量%含有)、
【0082】
(E)成分:
(E-1)酸化チタン粉末、石原産業(株)製タイペークPF-691(シロキサン処理、平均粒子径0.21μm)
(E-2)酸化チタン粉末、石原産業(株)製タイペークCR-63(シロキサン処理、平均粒子径0.21μm)
比較成分:
(E-3)酸化チタン粉末、石原産業(株)製タイペークR-820(Al、Si、Zr処理、平均粒子径0.26μm)
(E-4)酸化チタン粉末、石原産業(株)製タイペークCR-60(Al処理、平均粒子径0.21μm)
【0083】
(F)成分:
(F-1)下記式(3)で表される化合物
【化5】
【0084】
(F-2)下記式(4)で表される化合物
【化6】
【0085】
比較成分:
(F-3)下記式(5)で表される化合物
【化7】
【0086】
(G)成分:付加反応制御剤
(G-1)1-エチニルシクロヘキサノール
【0087】
【表1】
【0088】
実施例1~3、比較例1~6で得られた付加硬化型シリコーン組成物について下記の評価を行い、結果を表2に示した。
[組成物の流れ性]
アルミ板の上に各組成物を0.05g量りとり、25℃の環境下、水平に対して45°の角度で1時間置いた後の組成物の長さを測定した。なお、ここでの長さとは、組成物の端から端までの直線最大距離である。30mm以上の長さとなるまで流れた場合、組成物が良好な流動性を有していることを表す。
【0089】
さらに、各組成物を型に流し込み、150℃のオーブンにて2時間硬化させて、厚み0.3mmの硬化物を得た。得られた硬化物について下記の評価を行い、結果を表2に示した。
【0090】
[外観]
顕微鏡を用いて硬化物の表面を観察し、下記の基準に従い評価した。
外観均一(GOOD)、発泡(NG)
【0091】
[光反射率]
積分球を搭載した日立(株)製スペクトロフォトメーター装置U-3310を用いて、430nm、600nm、800nmの波長における硬化物の光反射率を25℃にてそれぞれ測定した。
【0092】
【表2】
【0093】
表2に示すように、実施例1~3の付加硬化型シリコーン組成物は、25℃において高い流動性を有し、硬化の際に発泡が無く、硬化物の光反射率が優れることを示している。従って、本発明の付加硬化型シリコーン組成物の硬化物は、光反射材、特に光半導体装置のリフレクター材料向け等のコーティング材として有用である。
【0094】
一方、本発明の(F)成分を用いていない比較例1及び3、並びに、本発明の(B)成分を用いていない比較例2では組成物の流れ性が不足し、本発明の(E)成分に代えてシロキサン処理が表面に施されていない酸化チタン粉末を用いた比較例4及び5では、硬化物に気泡が発生した。また、比較例5と同様の配合組成に対して酸化チタンの脱水工程を追加した比較例6では、組成物の流れ性を著しく損なう結果となった。
【0095】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0096】
1・・・発光素子、2・・・リード電極、3・・・ダイボンド材、
4・・・金線、5・・・光反射樹脂、6・・・白色コーティング材料、
7・・・光半導体装置。
図1