(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】Fe-Pt-BN系スパッタリングターゲット及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20220712BHJP
【FI】
C23C14/34 A
(21)【出願番号】P 2019121702
(22)【出願日】2019-06-28
【審査請求日】2022-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】509352945
【氏名又は名称】田中貴金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【氏名又は名称】松山 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】山本 孝充
(72)【発明者】
【氏名】西浦 正紘
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 健太
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘典
(72)【発明者】
【氏名】宮下 敬史
(72)【発明者】
【氏名】松田 朋子
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特許第5913620(JP,B2)
【文献】国際公開第2016/047578(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/047236(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/065201(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/045744(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Fe、Pt及びBNを含むFe-Pt-BN系スパッタリングターゲットであって、当該スパッタリングターゲットを下記の手順:
(1)当該スパッタリングターゲットから4mm角の試料片を切断し、当該試料片を粉砕して、粉砕物を調製し、
(2)当該粉砕物を目開き106μm及び300μmの篩を用いて分級し、300μmの篩を通過し106μmの篩上に残った粉末を採取し、
(3)当該粉末を、200℃に加熱した王水中に浸漬し、粉末を溶解させた残渣含有溶液を調製し、
(4)当該残渣含有溶液をJIS P 3801に規定される5種Aのろ紙でろ過し、ろ紙上の残渣を80℃で乾燥させて、残渣粉末を調製し、
(5)当該残渣粉末を、界面活性剤を含む水に分散させて、試料溶液を調製し、
(6)当該試料溶液を粒度分析計にかけ、粒度分布を測定する
で測定した場合に、王水溶解後の残渣は、体積基準の90%径(D90)が5.5μm以下であり、かつ1μm未満の微細粒子が35%以下である粒度分布を有することを特徴とするFe-Pt-BN系スパッタリングターゲット。
【請求項2】
Ptを10mol%以上55mol%以下含む、請求項1に記載のFe-Pt-BN系スパッタリングターゲット。
【請求項3】
Ag、Au、B、Co、Cr、Cu、Ge、Ir、Ni、Pd、Rh、Ruから選択される1種以上の元素、及び/又は
Si、Ti、Ta又はZrの酸化物又はCから選択される1種以上の非金属成分をさらに含む、請求項1又は2に記載のFe-Pt-BN系スパッタリングターゲット。
【請求項4】
BN及び非金属成分を10mol%以上55mol%以下含む、請求項1~3のいずれか1に記載のFe-Pt-BN系スパッタリングターゲット。
【請求項5】
Fe粉末、Pt粉末及びBN粉末を媒体撹拌ミルに投入して、100rpm以上200rpm以下の回転数で2時間以上6時間以下、混合して原料粉末混合物を調製し、
当該原料粉末混合物のうち目開き300μm篩を通過した粉末を採取して、焼結することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1に記載のFe-Pt-BN系スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項6】
焼結は、600℃以上1200℃以下の焼結温度、及び30MPa以上200MPa以下の焼結圧力で行われることを特徴とする、請求項5に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性薄膜の製造に用いられるBN含有スパッタリングターゲット及びその製造方法に関し、特にFeとPtとBN(窒化ホウ素)とを含むFe-Pt-BN系スパッタリングターゲット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブなどの磁気記録媒体のグラニュラー構造磁性薄膜を製造するためのスパッタリングターゲットとして、強磁性金属であるFe又はCoを主成分として、SiO2などの酸化物、B(ホウ素)、C(炭素)、BN(窒化ホウ素)などの非磁性材を含む焼結体が用いられている。BNは潤滑剤として優れた性能を発揮するが、焼結性が劣るために高密度の焼結体を製造することが難しく、スパッタリング中にパーティクルが発生し、製品歩留まりが低下し、機械加工性が悪いなどの問題があった。
【0003】
かかる問題を解決するために、BNとSiO2を合金化して焼結性を改善する方法(特許文献1)、Fe-Pt合金粉末を使用することで酸化鉄の形成を抑制してスパッタリングターゲットの酸素含有量を低下させる方法(特許文献2)、粉砕して板状あるいは薄片にした金属原料粉末を六方晶系BNと混合して六方晶系BNの結晶の向きを揃える方法(特許文献3)などが提案されている。
【0004】
特許文献1には、非磁性材料である六方晶系BN粒子をSiO2粒子とともにFe-Pt系の母材金属に分散させることによって、スパッタリング時に発生するパーティクル量を低減した高密度のスパッタリングターゲットを提供すること、及びBNとSiO2とを相互に拡散させた状態で含有させることにより、六方晶系BNの焼結性を著しく向上できることが開示されている。具体的な製造方法として、Fe、Pt、SiO2及びBNの各原料粉末を、媒体撹拌ミルを用いて300rpmで2時間混合して得られる混合粉末をホットプレスした後、熱間等方加圧加工を行うことが記載されている。また、得られるFe-Pt系磁性材焼結体は、加圧面に対する断面において、バックグラウンド強度に対する六方晶系BN(002)面のX線回折ピーク強度比が1.50以上であり、結晶化したSiO2であるクリストバライト(101)面のX線回折ピーク強度比が1.40以下であることが記載されている。さらに、SiO2を含まない点を除いて同じ製造条件で製造した比較例(Fe-Pt-BN系、Fe-Pt-BN-酸化物系、及びFe-Pt-BN-非磁性材系)においては、パーティクル数が645個以上と著しく多くなっていることが記載されている。
【0005】
特許文献2には、Fe-Pt合金粉末を使用することによって、酸素量を4000wtppm以下まで低減したFe-Pt-BN系の磁性材焼結体を作製できること、作製された焼結体は、機械加工性が良好となり、割れやチッピングの発生を抑制できるために異常放電やパーティクルの発生が少ないことが開示されている。具体的な製造方法として、粒径が0.5μm以上10μm以下のFe-Pt合金粉末、及びBN粉末を乳鉢に投入して均一に混合した混合粉末をホットプレスした後、熱間等方加圧加工を行うことが記載されている。粒径が0.5μm以上10μm以下のFe-Pt合金粉末を用いることは、Feの形態を酸化しにくい形態とするための必須要件である。また、Fe粉末、Pt粉末及びBN粉末を、媒体撹拌ミルを用いて300rpmで2時間混合する点を除いて同じ製造条件で製造した比較例(Fe-Pt-BN系、Fe-Pt-BN-非磁性材系)においては、酸素含有量が11500wtppm以上と高く、チッピングが発生したことが記載されている。
【0006】
特許文献3には、六方晶系BNは二次元の結晶構造を有しているため、焼結体中において、この六方晶系BNの結晶の向きがランダムになっていると、電気伝導に影響を及ぼし、異常放電を発生させることから、六方晶系BNの結晶の向きを一方向に揃えることにより安定的なスパッタリングを可能にすることが開示されている。具体的には、Fe-Pt系焼結体スパッタリングターゲットにおいて、スパッタ面に対して垂直断面における六方晶系BN(002)面のX線回折ピーク強度に対する、スパッタ面に対して水平面における六方晶系BN(002)面のX線回折ピーク強度の強度比を2以上とすること、及びスパッタ面に対して垂直断面における六方晶BN相の平均厚みを30μm以下とした薄片状又は板状とすることが記載されている。また、具体的製造方法として、Fe-Pt合金粉末を、媒体撹拌ミルを用いて300rpmで2時間処理して平均粒子径10μmとした後、平均粒子径8μmの薄片状六方晶BNとV型混合機で混ぜ合わせ、さらに乳鉢で混合するか又は150μm目の篩で混合して得られる混合粉末をホットプレスした後、熱間等方加圧加工を行うことが記載されている。さらに、Fe-Pt合金粉末を前処理せずに直接BN粉末と混合する点を除いて同じ製造条件で製造した比較例(Fe-Pt-BN系、Fe-Pt-BN―非磁性材系、Fe-Pt-BN-酸化物系)においては、パーティクル数が616個以上と著しく多くなっていることが記載されている。
【0007】
以上、特許文献1~3の比較例は、Fe粉末、Pt粉末及びBN粉末を媒体撹拌ミル、V型撹拌機、乳鉢などで混合して得た混合粉末をホットプレス及び熱間等方加圧加工するものであるが、いずれもパーティクル数を低減できていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5567227号公報
【文献】特許第5689543号公報
【文献】特許第5913620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、特許文献1~3に開示されている発明とは異なるアプローチにより、高い相対密度を有するFe-Pt-BN系スパッタリングターゲットのパーティクル発生の問題を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、Fe-Pt-BN系スパッタリングターゲットにおけるパーティクル発生の原因がBN粒子の凝集にあると考え、BN粒子の凝集を回避して、BN粒子を均一微細に分散させることにより、パーティクル発生を低減させることができるFe-Pt-BN系スパッタリングターゲットを提供できることを見出した。
【0011】
本発明によれば、以下の態様のFe-Pt-BN系スパッタリングターゲットが提供される。
[1]Fe、Pt及びBNを含むFe-Pt-BN系スパッタリングターゲットであって、当該スパッタリングターゲットを下記の手順:
(1)当該スパッタリングターゲットから4mm角の試料片を切断し、当該試料片を粉砕して、粉砕物を調製し、
(2)当該粉砕物を目開き106μm及び300μmの篩を用いて分級し、300μmの篩を通過し106μmの篩上に残った粉末を採取し、
(3)当該粉末を、200℃に加熱した王水中に浸漬し、粉末を溶解させた残渣含有溶液を調製し、
(4)当該残渣含有溶液をJIS P 3801に規定される5種Aのろ紙でろ過し、ろ紙上の残渣を80℃で乾燥させて、残渣粉末を調製し、
(5)当該残渣粉末を、界面活性剤を含む水に分散させて、試料溶液を調製し、
(6)当該試料溶液を粒度分析計にかけ、粒度分布を測定する
で測定した場合に、王水溶解後の残渣は、体積基準の90%径(D90)が5.5μm以下であり、かつ1μm未満の微細粒子が35%以下である粒度分布を有することを特徴とするFe-Pt-BN系スパッタリングターゲット。
[2]Ptを10mol%以上55mol%以下含む、上記[1]に記載のFe-Pt-BN系スパッタリングターゲット。
[3]Ag、Au、B、Co、Cr、Cu、Ge、Ir、Ni、Pd、Rh、Ruから選択される1種以上の元素、及び/又は
Si、Ti、Ta又はZrの酸化物又はCから選択される1種以上の非金属成分をさらに含む、上記[1]又は[2]に記載のFe-Pt-BN系スパッタリングターゲット。
[4]BN及び非金属成分を10mol%以上55mol%以下含む、上記[1]~[3]のいずれか1に記載のFe-Pt-BN系スパッタリングターゲット。
[5]Fe粉末、Pt粉末及びBN粉末を媒体撹拌ミルに投入して、100rpm以上200rpm以下の回転数で2時間以上6時間以下、混合して原料粉末混合物を調製し、
当該原料粉末混合物のうち目開き300μm篩を通過した粉末を採取して、焼結することを特徴とする、上記[1]~[4]のいずれか1に記載のFe-Pt-BN系スパッタリングターゲットの製造方法。
[6]焼結は、600℃以上1200℃以下の焼結温度、及び30MPa以上200MPa以下の焼結圧力で行われることを特徴とする、上記[5]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のFe-Pt-BN系スパッタリングターゲットは、90%以上の相対密度を有し、マグネトロンスパッタリング時のパーティクル発生数を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例2のFe-Pt-BN系焼結体の金属顕微鏡観察写真(1000倍)である。
【
図2】比較例3のFe-Pt-BN系焼結体の金属顕微鏡観察写真(1000倍)である。
【好ましい実施形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0015】
本発明のFe-Pt-BN系スパッタリングターゲットは、下記の手順:
(1)当該スパッタリングターゲットから約4mm角の試料片を切断し、当該試料片を粉砕し、粉砕物を調製し、
(2)当該粉砕物を目開き106μm及び300μmの篩を用いて分級し、300μmの篩を通過し106μmの篩上に残った粉末を採取し、
(3)当該粉末を、200℃に加熱した王水(塩酸:硝酸=3:1)中に浸漬し、粉末を溶解させた残渣含有溶液を調製し、
(4)当該残渣含有溶液をJIS P 3801に規定される5種Aのろ紙(東洋濾紙株式会社製分析用濾紙No.5A)でろ過し、ろ紙上の残渣を80℃で乾燥させて、残渣粉末を調製し、
(5)当該残渣粉末を、界面活性剤を含む水に分散させて、試料溶液を調製し、
(6)当該試料溶液を粒度分析計にかけ、粒度分布を測定する
で測定した場合に、王水溶解後の残渣は、体積基準の90%径(D90)が5.5μm以下であり、かつ1μm未満の微細粒子が35%以下である粒度分布を有することを特徴とする。
【0016】
試料溶液を調製する際に用いる界面活性剤は、残渣粉末が水中で凝集することを防止して、個々の粒子に分離した状態で分散させることができればよく、特に限定されない。後述する実施例では、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む15%濃度の界面活性剤0.15gを水30mlに希釈して用いた。
【0017】
本発明において「溶解残渣」とは、スパッタリングターゲットの成分のうち金属類を除く固形成分であり、王水(濃塩酸(特級)と濃硝酸(特級)の3:1(体積比)混合液)に溶解させて得られる残渣を意味する。
スパッタリングターゲットが金属成分としてAg(銀)を含む場合には、Agは王水に溶解しないため、最初に粉末を硝酸に浸漬させてAgを溶解させて得られる残渣を王水に浸漬させ溶解させて得られる残渣である。同様に、スパッタリングターゲットが金属成分としてCr(クロム)を含む場合には、Crは王水に溶解しないため、最初に粉末を塩酸に浸漬させてCrを溶解させて得られる残渣を王水に浸漬させ溶解させて得られる残渣である。
【0018】
Fe-Pt-BN系スパッタリングターゲットの成分のうち、Fe及びPt並びに他の金属成分は、王水に溶解するため、残渣はBN、C、酸化物及び窒化物などの非金属成分である。これらの溶解残渣は、スパッタリングの際のパーティクル発生原因となる非磁性材の粒子である。
【0019】
本発明のFe-Pt-BN系スパッタリングターゲットは、王水溶解後の残渣が体積基準の90%径(D90)が5.5μm以下であり、かつ、1μm未満の微細粒子が35%以下である粒度分布を有することを特徴とする。すなわち、本発明のFe-Pt-BN系スパッタリングターゲットの非金属成分の55%以上は、粒子径1μm以上5.5μm以下の範囲内に分布しており、大きすぎる粒子や小さすぎる粒子の含有率は低い。
図1に示す組織観察図からも、濃い灰色乃至黒色で示される非金属粒子は、大きすぎる粒子や小さすぎる粒子がなく、一定範囲内に収まることがわかる。
【0020】
本発明のFe-Pt-BN系スパッタリングターゲットにおいて、王水溶解後の残渣は、体積基準の90%径(D90)が5.5μm以下であり、5.3μm以下であることが好ましく、5.2μm以下であることがより好ましい。また、1μm未満の微細粒子は35%以下であり、34%以下であることがより好ましい。王水溶解後の残渣は非金属成分であり、体積基準の90%径(D90)が5.5μmを超えて大きくなるとスパッタリング時のパーティクル数が著しく増加し、1μm未満の微細粒子が35%を超えて増加すると相対密度が低くなり、スパッタリングターゲットとして実用化できない。また、1μm未満の微細粒子が増えると、微細粒子が凝集して、スパッタリングターゲットの組織中に大きな非金属成分の領域を形成することになり、パーティクル発生の原因となる。
【0021】
本発明のFe-Pt-BN系スパッタリングターゲットは、Ag、Au、B、Co、Cr、Cu、Ge、Ir、Ni、Pd、Rh、Ruから選択される1種以上の元素、Si、Ti、Ta又はZrの酸化物又はCをさらに含み得る。酸化物としては、SiO、SiO2、Si3O2、TiO、TiO2、Ti2O3、Ta2O5、ZrO2が好ましく、SiO2、TiO2、Ta2O5、ZrO2がより好ましく、1種または2種以上の酸化物を含んでいてもよい。
【0022】
Ptの総量は、Fe-Pt-BN系スパッタリングターゲット全体の10mol%以上55mol%以下、好ましくは15mol%以上50mol%以下とすることができ、上記範囲内であればFe-Pt系合金の磁気特性を良好に維持することができる。
【0023】
Ag、Au、B、Co、Cr、Cu、Ge、Ir、Ni、Pd、Rh、Ruの総量は、Fe-Pt-BN系スパッタリングターゲット全体の0mol%以上20mol%以下、好ましくは0mol%以上15mol%以下とすることができ、上記範囲内であればFe-Pt系合金の磁気特性を良好に維持することができる。
【0024】
非金属成分であるBN、酸化物及びCは、磁気記録媒体のグラニュラー構造磁性薄膜の粒界材として機能する。BN、酸化物及びCの総量は、Fe-Pt-BN系スパッタリングターゲット全体の10mol%以上55mol%以下であることが好ましく、15mol%以上50mol%以下であることがより好ましく、20mol%以上45mol%以下であることが特に好ましい。
【0025】
BNの含有量は、Fe-Pt-BN系スパッタリングターゲット全体の10mol%以上55mol%以下であることが好ましく、15mol%以上50mol%以下であることが好ましく、20mol%以上45mol%以下であることが特に好ましい。上記範囲内であれば、BNが磁気記録媒体のグラニュラー構造磁性薄膜の粒界材として機能する。
【0026】
酸化物の含有量は、Fe-Pt-BN系スパッタリングターゲット全体の0mol%以上20mol%以下であることが好ましく、0mol%以上15mol%以下であることが特に好ましい。上記範囲内であれば、酸化物がBNやCと共に磁気記録媒体のグラニュラー構造磁性薄膜の粒界材として機能する。
【0027】
Cの含有量は、Fe-Pt-BN系スパッタリングターゲット全体の0mol%以上20mol%以下であることが好ましく、0mol%以上15mol%以下であることが特に好ましい。上記範囲内であれば、CがBNや酸化物と共に磁気記録媒体のグラニュラー構造磁性薄膜の粒界材として機能する。
【0028】
本発明のFe-Pt-BN系スパッタリングターゲットは、Fe粉末、Pt粉末及びBN粉末を媒体撹拌ミルに投入して、100rpm以上200rpm以下の回転数で2時間以上6時間以下、混合して原料粉末混合物を調製し、当該原料粉末混合物のうち目開き300μmの篩を通過した粉末を採取して、焼結することにより製造することができる。媒体撹拌ミルの回転数が低すぎるとBNを均一に分散することができず、回転数が高すぎると微細な粒子が形成されてしまい、所望の分散状態を達成することができないので好ましくない。
【0029】
Fe粉末としては、平均粒径1μm以上10μm以下のものを用いることが好ましい。平均粒径が小さすぎると発火の危険性や不可避不純物濃度が高くなる可能性が生じ、平均粒径が大きすぎるとBNを均一に分散することができないので好ましくない。
【0030】
Pt粉末としては、平均粒径0.1μm以上10μm以下のものを用いることが好ましい。平均粒径が小さすぎると不可避不純物濃度が高くなる可能性が生じ、平均粒径が大きすぎるとBNを均一に分散することができないので好ましくない。
【0031】
BN粉末としては、平均粒径2μm以上10μm以下のものを用いることが好ましい。上記範囲外だと所望の分散状態を達成することができないので好ましくない。
【0032】
C粉末としては、平均粒径2μm以上10μm以下のものを用いることが好ましい。上記範囲外だと所望の分散状態を達成することができないので好ましくない。
【0033】
その他追加成分として用いる金属粉末としては、平均粒径0.1μm以上20μm以下のものを用いることが好ましい。平均粒径が小さすぎると不可避不純物濃度が高くなる可能性が生じ、平均粒径が大きすぎると均一に分散することができないので好ましくない。
【0034】
その他追加成分として用いる酸化物粉末としては、平均粒径1μm以上5μm以下のものを用いることが好ましい。上記範囲外だと所望の分散状態を達成することができないので好ましくない。
【0035】
焼結は、600℃以上1200℃以下、好ましくは700℃以上1100℃以下の焼結温度、及び30MPa以上200MPa以下、好ましくは50MPa以上100MPa以下の焼結圧力で行われることが望ましい。焼結温度が低すぎると相対密度が低くなり、焼結温度が高すぎるとBNが分解する恐れがあるので好ましくない。
【0036】
本発明のFe-Pt-BN系スパッタリングターゲットを製造する際に、熱間等方加圧加工を行わないことが好ましい。熱間等方加圧加工により金属成分が硬くなり、BN粒子を破砕し過ぎてしまうと考えられる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例及び比較例により、本発明を具体的に説明する。以下の実施例及び比較例におけるスパッタリングターゲットの相対密度、パーティクル数及び粒度分布の測定方法は以下のとおりである。
【0038】
[相対密度]
置換液として純水を用いて、アルキメデス法で密度を測定する。焼結体の質量を測定し、焼結体を置換液中に浮遊させた状態で浮力(=焼結体の体積)を測定する。焼結体の質量(g)を焼結体の体積(cm3)で除して実測密度(g/cm3)を求める。焼結体の組成に基づいて計算した理論密度との比率(実測密度/理論密度×100)が相対密度である。
【0039】
[パーティクル数]
焼結体を直径153mm、厚さ2mmに加工し、直径161mm、厚さ4mmのCu製パッキングプレートにインジウムでボンディングして、スパッタリングターゲットを調製する。このスパッタリングターゲットをマグネトロンスパッタリング装置に取り付け、出力500W、ガス圧1PaのArガス雰囲気下で、4時間放電した後、40秒間のスパッタリングで基板上に付着したパーティクル数をパーティクルカウンターで測定する。
【0040】
[粒度分布]
スパッタリングターゲットから約4mm角の試料片を切断し、粉砕機(大阪ケミカル(株)製ワンダーブレンダー)で破砕する。受皿の上に目開き106μmと300μmの篩をセットして、破砕した粉末を最大振幅で1分間、電磁振動式篩分器(株式会社伊藤製作所製 MS-200)で分級し、300μmの篩を通過し106μmの篩の上に残った粉末を採取する。採取した粉末を200℃のホットプレート上で加熱した王水(100ml:関東化学(株)製の特級塩酸:製品番号18078-00と特級硝酸(比重1.38):製品番号28163-00とを体積比率3:1で混合した)に、反応が停止するまで1時間浸漬する(1回目)。抽出した残渣を200℃のホットプレート上で加熱した新たな王水100ml中に1時間浸漬する(2回目)。反応が停止していることを確認し、王水中の残渣を抽出する。抽出した残渣を200℃のホットプレート上で加熱した新たな王水100ml中に1時間浸漬する(3回目)。3回目の残渣含有王水をNo.5A(JIS P 3801 5種A)のろ紙(孔径7μm)でろ過し、ろ紙上の残渣を純水でビーカー中に洗い流し、再度No.5Aのろ紙でろ過する。ろ紙を80℃のホットプレート上に広げて15分間乾燥して、残渣粉末を回収する。残渣粉末10mgと、水30mlと、15%界面活性剤(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル)0.15gを100mlのビーカーに入れ、超音波ホモジナイザー(US-150T(定格出力150W)、株式会社日本精機製作所)でV-LEVELが200~300μAになるように調整し、5分間分散処理を行い、試料溶液を得る。この試料溶液を、粒度分析計(MT-3300EX II(レーザー回折・散乱法、測定範囲0.02~2000μm)、マイクロトラック・ベル株式会社)を用いて表1に示す条件で2回測定する。2回の測定値について、10パーセント径(D10)、50パーセント径(D50)及び90パーセント径(D90)が、それぞれ0μm以上10μm未満の場合の許容誤差範囲は±0.1μm、10μm以上40μm未満の場合の許容誤差範囲は±0.2μm、40μm以上の場合の許容誤差範囲は±1μmとして、許容誤差範囲を外れる場合には再測定する。粒度分析計のデータ解析画面に表示される「Size%」で「1μmpass」(1μmの篩を通過する粒子の累積%値)を「<1μm(%)」とする。
【0041】
【0042】
[実施例1]
Fe-31.5Pt-30BN(比率はmol%、Feは残部。以下の実施例及び比較例にて同じ。)の組成となるように、平均粒子径7μmのFe粉末190.28g、平均粒子径1μmのPt粉末543.83g、平均粒子径4μmのBN粉末65.90gを媒体撹拌ミル(媒体:ジルコニアボール)に投入し、150rpmで4時間混合して、混合粉末を得た。この混合粉末を目開き300μmの篩で分級し、通過した粉末を焼結圧力66MPa、焼結温度900℃、保持時間1時間の条件で焼結して、焼結体を得た。
この焼結体の相対密度を測定後、焼結体をスパッタリングターゲットに加工してパーティクル数を測定した。次に、スパッタリングターゲットから約4mm角の試料片を切り出して、王水溶解後の残渣の粒度分布を測定した。相対密度は93.8%、パーティクル数は53個、王水溶解後の残渣のD90は3.71μm、1μm未満の微細粒子は26.12%であった。
【0043】
[実施例2]
Fe-30Pt-30BN-10Cの組成となるように、平均粒子径7μmのFe粉末143.73g、平均粒子径1μmのPt粉末502.08g、平均粒子径4μmのBN粉末63.88g、平均粒子径3μmのC粉末10.30gを媒体撹拌ミル(媒体:ジルコニアボール)に投入し、150rpmで4時間混合して、混合粉末を得た以外は、実施例1と同様にして焼結体を製造し、相対密度を測定した後、焼結体をスパッタリングターゲットに加工してパーティクル数を測定し、スパッタリングターゲットから切り出した試料片を用いて王水溶解後の残渣の粒度分布を測定した。相対密度は92.9%、パーティクル数は38個、王水溶解後の残渣のD90は3.41μm、1μm未満の微細粒子は28.26%であった。また、焼結体の組織の金属顕微鏡観察写真(1000倍)を
図1に示す。
【0044】
[実施例3]
Fe-30Pt-30BN-10Cの組成となるように、平均粒子径7μmのFe粉末143.73g、平均粒子径1μmのPt粉末502.08g、平均粒子径4μmのBN粉末63.88g、平均粒子径3μmのC粉末10.30gを媒体撹拌ミル(媒体:ジルコニアボール)に投入し、150rpmで2時間混合して、混合粉末を得た以外は、実施例1と同様にして焼結体を製造し、相対密度を測定した後、焼結体をスパッタリングターゲットに加工してパーティクル数を測定し、スパッタリングターゲットから切り出した試料片を用いて王水溶解後の残渣の粒度分布を測定した。相対密度は95.6%、パーティクル数は83個、王水溶解後の残渣のD90は5.18μm、1μm未満の微細粒子は12.76%であった。
【0045】
[実施例4]
Fe-31.5Pt-7Ag-30BNの組成となるように、平均粒子径7μmのFe粉末145.91g、平均粒子径1μmのPt粉末509.70g、平均粒子径10μmのAg粉末62.63g、平均粒子径4μmのBN粉末61.76gを媒体撹拌ミル(媒体:ジルコニアボール)に投入し、150rpmで4時間混合して、混合粉末を得た以外は、実施例1と同様にして焼結体を製造し、相対密度を測定した後、焼結体をスパッタリングターゲットに加工してパーティクル数を測定し、スパッタリングターゲットから切り出した試料片を用いて王水溶解後の残渣の粒度分布を測定した。相対密度は95.2%、パーティクル数は49個、王水溶解後の残渣のD90は3.60μm、1μm未満の微細粒子は27.50%であった。
【0046】
[実施例5]
Fe-31.5Pt-7Co-30BNの組成となるように、平均粒子径7μmのFe粉末151.43g、平均粒子径1μmのPt粉末528.97g、平均粒子径3μmのCo粉末35.51g、平均粒子径4μmのBN粉末64.10gを媒体撹拌ミル(媒体:ジルコニアボール)に投入し、150rpmで4時間混合して、混合粉末を得た以外は、実施例1と同様にして焼結体を製造し、相対密度を測定した後、焼結体をスパッタリングターゲットに加工してパーティクル数を測定し、スパッタリングターゲットから切り出した試料片を用いて、王水溶解後の残渣の粒度分布を測定した。相対密度は93.7%、パーティクル数は41個、王水溶解後の残渣のD90は3.19μm、1μm未満の微細粒子は31.25%であった。
【0047】
[実施例6]
Fe-31.5Pt-7Rh-30BNの組成となるように、平均粒子径7μmのFe粉末148.33g、平均粒子径1μmのPt粉末518.15g、平均粒子径10μmのRh粉末60.74g、平均粒子径4μmのBN粉末62.79gを媒体撹拌ミル(媒体:ジルコニアボール)に投入し、150rpmで4時間混合して、混合粉末を得た以外は、実施例1と同様にして焼結体を製造し、相対密度を測定した後、焼結体をスパッタリングターゲットに加工してパーティクル数を測定し、スパッタリングターゲットから切り出した試料片を用いて、王水溶解後の残渣の粒度分布を測定した。相対密度は92.5%、パーティクル数は43個、王水溶解後の残渣のD90は3.75μm、1μm未満の微細粒子は27.24%であった。
【0048】
[実施例7]
Fe-39Pt-20BN-5SiO2の組成となるように、平均粒子径7μmのFe粉末153.66g、平均粒子径1μmのPt粉末581.50g、平均粒子径4μmのBN粉末37.94g、平均粒子径2μmのSiO2粉末22.96gを媒体撹拌ミル(媒体:ジルコニアボール)に投入し、150rpmで4時間混合して、混合粉末を得て、焼結温度を1100℃に変えた以外は、実施例1と同様にして焼結体を製造し、相対密度を測定した後、焼結体をスパッタリングターゲットに加工してパーティクル数を測定し、スパッタリングターゲットから切り出した試料片を用いて、王水溶解後の残渣の粒度分布を測定した。相対密度は97.1%、パーティクル数は28個、王水溶解後の残渣のD90は2.73μm、1μm未満の微細粒子は33.53%であった。
【0049】
[実施例8]
Fe-35Pt-30BNの組成となるように、平均粒子径7μmのFe粉末172.79g、平均粒子径1μmのPt粉末603.60g、平均粒子径4μmのBN粉末65.83gを媒体撹拌ミル(媒体:ジルコニアボール)に投入し、150rpmで3時間混合して、混合粉末を得た以外は、実施例1と同様にして焼結体を製造し、相対密度を測定した後、焼結体をスパッタリングターゲットに加工してパーティクル数を測定し、スパッタリングターゲットから切り出した試料片を用いて、王水溶解後の残渣の粒度分布を測定した。相対密度は95.0%、パーティクル数は67個、王水溶解後の残渣のD90は4.38μm、1μm未満の微細粒子は18.12%であった。
【0050】
[実施例9]
Fe-32.5Pt-35BNの組成となるように、平均粒子径7μmのFe粉末157.91g、平均粒子径1μmのPt粉末551.60g、平均粒子径4μmのBN粉末75.58gを媒体撹拌ミル(媒体:ジルコニアボール)に投入し、150rpmで3時間混合して、混合粉末を得た以外は、実施例1と同様にして焼結体を製造し、相対密度を測定した後、焼結体をターゲットに加工してスパッタリングパーティクル数を測定し、スパッタリングターゲットから切り出した試料片を用いて、王水溶解後の残渣の粒度分布を測定した。相対密度は94.1%、パーティクル数は77個、王水溶解後の残渣のD90は4.54μm、1μm未満の微細粒子は19.57%であった。
【0051】
[実施例10]
Fe-27.5Pt-45BNの組成となるように、平均粒子径7μmのFe粉末129.51g、平均粒子径1μmのPt粉末452.40g、平均粒子径4μmのBN粉末94.19gを媒体撹拌ミル(媒体:ジルコニアボール)に投入し、150rpmで3時間混合して、混合粉末を得た以外は、実施例1と同様にして焼結体を製造し、相対密度を測定した後、焼結体をスパッタリングターゲットに加工してパーティクル数を測定し、スパッタリングターゲットから切り出した試料片を用いて、王水溶解後の残渣の粒度分布を測定した。相対密度は91.4%、パーティクル数は94個、王水溶解後の残渣のD90は4.09μm、1μm未満の微細粒子は23.55%であった。
【0052】
[実施例11]
Fe-35Pt-20BN-10Cの組成となるように、平均粒子径7μmのFe粉末173.45g、平均粒子径1μmのPt粉末605.89g、平均粒子径4μmのBN粉末44.05g、平均粒子径3μmのC粉末10.66gを媒体撹拌ミル(媒体:ジルコニアボール)に投入し、150rpmで3時間混合して、混合粉末を得た以外は、実施例1と同様にして焼結体を製造し、相対密度を測定した後、焼結体をスパッタリングターゲットに加工してパーティクル数を測定し、スパッタリングターゲットから切り出した試料片を用いて、王水溶解後の残渣の粒度分布を測定した。相対密度は96.2%、パーティクル数は61個、王水溶解後の残渣のD90は4.38μm、1μm未満の微細粒子は19.94%であった。
【0053】
[実施例12]
Fe-30Pt-30BN-10Cの組成となるように、平均粒子径7μmのFe粉末143.73g、平均粒子径1μmのPt粉末502.08g、平均粒子径4μmのBN粉末63.88g、平均粒子径3μmのC粉末10.30gを媒体撹拌ミル(媒体:ジルコニアボール)に投入し、150rpmで3時間混合して、混合粉末を得た以外は、実施例1と同様にして焼結体を製造し、相対密度を測定した後、焼結体をスパッタリングターゲットに加工してパーティクル数を測定し、スパッタリングターゲットから切り出した試料片を用いて、王水溶解後の残渣の粒度分布を測定した。相対密度は95.1%、パーティクル数は62個、王水溶解後の残渣のD90は4.49μm、1μm未満の微細粒子は21.73%であった。
【0054】
[実施例13]
Fe-30Pt-30BN-10Cの組成となるように、平均粒子径7μmのFe粉末143.73g、平均粒子径1μmのPt粉末502.08g、平均粒子径4μmのBN粉末63.88g、平均粒子径3μmのC粉末10.30gを媒体撹拌ミル(媒体:ジルコニアボール)に投入し、150rpmで3時間混合して、混合粉末を得て、焼結温度を700℃に変えた以外は、実施例1と同様にして焼結体を製造し、相対密度を測定した後、焼結体をスパッタリングターゲットに加工してパーティクル数を測定し、スパッタリングターゲットから切り出した試料片を用いて、王水溶解後の残渣の粒度分布を測定した。相対密度は93.3%、パーティクル数は82個、王水溶解後の残渣のD90は4.67μm、1μm未満の微細粒子は19.84%であった。
【0055】
[実施例14]
Fe-30Pt-30BN-10Cの組成となるように、平均粒子径7μmのFe粉末143.73g、平均粒子径1μmのPt粉末502.08g、平均粒子径4μmのBN粉末63.88g、平均粒子径3μmのC粉末10.30gを媒体撹拌ミル(媒体:ジルコニアボール)に投入し、150rpmで6時間混合して、混合粉末を得た以外は、実施例1と同様にして焼結体を製造し、相対密度を測定した後、焼結体をスパッタリングターゲットに加工してパーティクル数を測定し、スパッタリングターゲットから切り出した試料片を用いて、王水溶解後の残渣の粒度分布を測定した。相対密度は90.7%、パーティクル数は33個、王水溶解後の残渣のD90は2.70μm、1μm未満の微細粒子は33.88%であった。
【0056】
[実施例15]
Fe-25Pt-10Au-30BN-10Cの組成となるように、平均粒子径7μmのFe粉末116.99g、平均粒子径1μmのPt粉末408.33g、平均粒子径1μmのAu粉末165.05g、平均粒子径4μmのBN粉末62.40g、平均粒子径3μmのC粉末10.06gを媒体撹拌ミル(媒体:ジルコニアボール)に投入し、150rpmで3時間混合して、混合粉末を得た以外は、実施例1と同様にして焼結体を製造し、相対密度を測定した後、焼結体をスパッタリングターゲットに加工してパーティクル数を測定し、スパッタリングターゲットから切り出した試料片を用いて、王水溶解後の残渣の粒度分布を測定した。相対密度は96.1%、パーティクル数は55個、王水溶解後の残渣のD90は4.58μm、1μm未満の微細粒子は19.28%であった。
【0057】
[実施例16]
Fe-25Pt-10Ag-30BN-10Cの組成となるように、平均粒子径7μmのFe粉末116.89g、平均粒子径1μmのPt粉末408.33g、平均粒子径10μmのAg粉末90.31g、平均粒子径4μmのBN粉末62.34g、平均粒子径3μmのC粉末10.06gを媒体撹拌ミル(媒体:ジルコニアボール)に投入し、150rpmで3時間混合して、混合粉末を得た以外は、実施例1と同様にして焼結体を製造し、相対密度を測定した後、焼結体をスパッタリングターゲットに加工してパーティクル数を測定し、スパッタリングターゲットから切り出した試料片を用いて、王水溶解後の残渣の粒度分布を測定した。相対密度は95.7%、パーティクル数は49個、王水溶解後の残渣のD90は4.62μm、1μm未満の微細粒子は20.83%であった。
【0058】
[実施例17]
Fe-25Pt-10Cu-30BN-10Cの組成となるように、平均粒子径7μmのFe粉末121.19g、平均粒子径1μmのPt粉末423.33g、平均粒子径3μmのCu粉末55.16g、平均粒子径4μmのBN粉末64.63g、平均粒子径3μmのC粉末10.43gを媒体撹拌ミル(媒体:ジルコニアボール)に投入し、150rpmで3時間混合して、混合粉末を得た以外は、実施例1と同様にして焼結体を製造し、相対密度を測定した後、焼結体をスパッタリングターゲットに加工してパーティクル数を測定し、スパッタリングターゲットから切り出した試料片を用いて、王水溶解後の残渣の粒度分布を測定した。相対密度は95.9%、パーティクル数は66個、王水溶解後の残渣のD90は4.63μm、1μm未満の微細粒子は21.38%であった。
【0059】
[実施例18]
Fe-25Pt-10Rh-30BN-10Cの組成となるように、平均粒子径7μmのFe粉末119.55g、平均粒子径1μmのPt粉末417.61g、平均粒子径10μmのRh粉末88.12g、平均粒子径4μmのBN粉末63.76g、平均粒子径3μmのC粉末10.28gを媒体撹拌ミル(媒体:ジルコニアボール)に投入し、150rpmで3時間混合して、混合粉末を得た以外は、実施例1と同様にして焼結体を製造し、相対密度を測定した後、焼結体をスパッタリングターゲットに加工してパーティクル数を測定し、スパッタリングターゲットから切り出した試料片を用いて、王水溶解後の残渣の粒度分布を測定した。相対密度は94.0%、パーティクル数は88個、王水溶解後の残渣のD90は4.77μm、1μm未満の微細粒子は20.14%であった。
【0060】
[実施例19]
Fe-25Pt-10Ge-30BN-10Cの組成となるように、平均粒子径7μmのFe粉末112.65g、平均粒子径1μmのPt粉末393.51g、平均粒子径10μmのGe粉末58.61g、平均粒子径4μmのBN粉末60.08g、平均粒子径3μmのC粉末9.69gを媒体撹拌ミル(媒体:ジルコニアボール)に投入し、150rpmで3時間混合して、混合粉末を得て、焼結温度を700℃に変えた以外は、実施例1と同様にして焼結体を製造し、相対密度を測定した後、焼結体をスパッタリングターゲットに加工してパーティクル数を測定し、スパッタリングターゲットから切り出した試料片を用いて、王水溶解後の残渣の粒度分布を測定した。相対密度は97.0%、パーティクル数は60個、王水溶解後の残渣のD90は4.29μm、1μm未満の微細粒子は19.43%であった。
【0061】
[比較例1]
Fe-30Pt-30BN-10Cの組成となるように、平均粒子径7μmのFe粉末143.73g、平均粒子径1μmのPt粉末502.08g、平均粒子径4μmのBN粉末63.88g、平均粒子径3μmのC粉末10.30gを媒体撹拌ミル(媒体:ジルコニアボール)に投入し、150rpmで30分間混合して、混合粉末を得た以外は、実施例1と同様にして焼結体を製造し、相対密度を測定した後、焼結体をスパッタリングターゲットに加工してパーティクル数を測定し、スパッタリングターゲットから切り出した試料片を用いて、王水溶解後の残渣の粒度分布を測定した。相対密度は95.4%、パーティクル数は563個、王水溶解後の残渣のD90は6.34μm、1μm未満の微細粒子は5.21%であった。
【0062】
[比較例2]
Fe-30Pt-30BN-10Cの組成となるように、平均粒子径7μmのFe粉末143.73g、平均粒子径1μmのPt粉末502.08g、平均粒子径4μmのBN粉末63.88g、平均粒子径3μmのC粉末10.30gを媒体撹拌ミル(媒体:ジルコニアボール)に投入し、150rpmで12時間混合して、混合粉末を得た以外は、実施例1と同様にして焼結体を製造し、相対密度を測定した。相対密度が87.4%と90%未満であったため、スパッタリングターゲットとしては実用化できず、パーティクル数は測定しなかった。焼結体を加工したスパッタリングターゲットから切り出した試料片を用いて、王水溶解後の残渣の粒度分布を測定したところ、D90は2.48μm、1μm未満の微細粒子は36.29%であった。
【0063】
[比較例3]
Fe-30Pt-30BN-10Cの組成となるように、平均粒子径7μmのFe粉末143.73g、平均粒子径1μmのPt粉末502.08g、平均粒子径4μmのBN粉末63.88g、平均粒子径3μmのC粉末10.30gを媒体撹拌ミル(媒体:ジルコニアボール)に投入し、300rpmで30分間混合して、混合粉末を得た以外は、実施例1と同様にして焼結体を製造し、相対密度を測定した後、焼結体をスパッタリングターゲットに加工してパーティクル数を測定し、スパッタリングターゲットから切り出した試料片を用いて、王水溶解後の残渣の粒度分布を測定した。相対密度は91.4%、パーティクル数は713個、王水溶解後の残渣のD90は5.72μm、1μm未満の微細粒子は21.85%であった。また、焼結体の組織の金属顕微鏡観察写真(1000倍)を
図2に示す。
【0064】
[比較例4]
Fe-30Pt-30BN-10Cの組成となるように、平均粒子径7μmのFe粉末143.73g、平均粒子径1μmのPt粉末502.08g、平均粒子径4μmのBN粉末63.88g、平均粒子径3μmのC粉末10.30gを媒体撹拌ミル(媒体:ジルコニアボール)に投入し、300rpmで2時間混合して、混合粉末を得た以外は、実施例1と同様にして焼結体を製造し、相対密度を測定した。相対密度が86.5%と90%未満であったため、スパッタリングターゲットとしては実用化できず、パーティクル数は測定しなかった。焼結体を加工したスパッタリングターゲットから切り出した試料片を用いて、王水溶解後の残渣の粒度分布を測定したところ、D90は4.57μm、1μm未満の微細粒子は36.58%であった。
【0065】
[比較例5]
Fe-30Pt-30BN-10Cの組成となるように、平均粒子径7μmのFe粉末143.73g、平均粒子径1μmのPt粉末502.08g、平均粒子径4μmのBN粉末63.88g、平均粒子径3μmのC粉末10.30gを媒体撹拌ミル(媒体:ジルコニアボール)に投入し、460rpmで6時間混合して、混合粉末を得た以外は、実施例1と同様にして焼結体を製造し、相対密度を測定した。相対密度が79.2%と90%未満であったため、スパッタリングターゲットとしては実用化できず、パーティクル数は測定しなかった。焼結体を加工したスパッタリングターゲットから切り出した試料片を用いて、王水溶解後の残渣の粒度分布を測定したところ、D90は2.35μm、1μm未満の微細粒子は40.16%であった。
【0066】
以上の結果から、体積基準の90パーセント径(D90)が5.5μm以下でかつ1μm未満の微粒子が35%以下である残渣の粒度分布を示す実施例1~19は相対密度が90%以上であって、かつパーティクル数が100個未満であり、高い相対密度と低いパーティクル数の両条件を満たし、粒度分布が上記要件を満たさない比較例1~5は、相対密度またはパーティクル数のいずれかの条件を満たさないことがわかる。たとえば、相対密度が約95%とほぼ同等の実施例4と比較例1を対比すると、実施例4はパーティクル数が50個未満であるが、比較例1はパーティクル数が560個以上であり、本発明によれば約1/10にパーティクル数を減少できることがわかる。
【0067】
同じ組成(Fe-30Pt-30BN-10C)の焼結体の組織を比較すると、
図1に示す実施例2の組織は、黒色(BN及びC)が白色(金属成分:Fe、Pt)中に均質に分散しており、黒色(BN及びC)の大きさはほぼ均等であるが、
図2に示す比較例3の組織は、比較的大きな偏平形状の黒色(BN及びC)が白色(金属成分:Fe、Pt)中に紐状に偏在しており、黒色の大きさも不均等であることがわかる。
【0068】