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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-11
(45)【発行日】2022-07-20
(54)【発明の名称】光学式測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/12 20060101AFI20220712BHJP
【FI】
G01B11/12 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021088485
(22)【出願日】2021-05-26
(62)【分割の表示】P 2017140131の分割
【原出願日】2017-07-19
(65)【公開番号】P2021121817
(43)【公開日】2021-08-26
【審査請求日】2021-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100134511
【弁理士】
【氏名又は名称】八田 俊之
(72)【発明者】
【氏名】今泉 良一
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-110971(JP,A)
【文献】特開2017-116769(JP,A)
【文献】特開2008-157834(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0198389(US,A1)
【文献】特開平2-19704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有するとともに管形状を有して軸と直交する断面において内壁が円形を有する被測定対象に対し、前記軸に対する垂直断面内において光軸が平行に移動する走査光を照射し、前記被測定対象に対する第1の走査の際には第1の走査光を照射し、前記被測定対象に対する第2の走査の際には前記第1の走査光とは偏光方向が異なる第2の走査光を照射する照射装置と、
前記被測定対象を透過した前記走査光に対して光電変換を行う受光素子と、
前記第1の走査の際に前記受光素子が出力する電気信号の時間変化と、前記第2の走査の際に前記受光素子が出力する電気信号の時間変化との電圧差分から得られるピークに基づいて、前記被測定対象の内径を計算する演算部と、を備えることを特徴とする光学式測定装置。
【請求項2】
前記演算部は、前記電圧差分のピーク同士の距離に対応する、前記被測定対象における距離と、前記被測定対象の外径とから、前記内径を計算することを特徴とする請求項1記載の光学式測定装置。
【請求項3】
前記第1の走査光と前記第2の走査光とは、偏光方向が90度異なることを特徴とする請求項1または2に記載の光学式測定装置。
【請求項4】
前記照射装置は、光源からの光に対し、λ/2波長板を透過させる場合と、前記λ/2波長板を透過させない場合とを切り替えることで、前記第1の走査光および前記第2の走査光を照射することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の光学式測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、光学式測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学式測定装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この光学式測定装置では、回転ミラーにより回転走査されたレーザビームをコリメートレンズによりコリメート光とし、コリメートレンズと集光レンズとの間に被測定対象を配置することで、被測定対象の外径を測定することができる。また、被測定対象として透明管を用いた場合に、被測定対象の外径に加えて、内径も測定する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-228299号公報
【文献】特開平03-162606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、透明管の外径と内径との差が小さい場合(薄肉の場合)、高精度に内径を測定することは困難である。
【0005】
1つの側面では、本発明は、高精度に内径を測定することができる光学式測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様では、本発明に係る光学式測定装置は、光透過性を有するとともに管形状を有して軸と直交する断面において内壁が円形を有する被測定対象に対し、前記軸に対する垂直断面内において光軸が平行に移動する走査光を照射し、前記被測定対象に対する第1の走査の際には第1の走査光を照射し、前記被測定対象に対する第2の走査の際には前記第1の走査光とは偏光方向が異なる第2の走査光を照射する照射装置と、前記被測定対象を透過した前記走査光に対して光電変換を行う受光素子と、前記第1の走査の際に前記受光素子が出力する電気信号の時間変化と、前記第2の走査の際に前記受光素子が出力する電気信号の時間変化との電圧差分から得られるピークに基づいて、前記被測定対象の内径を計算する演算部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記光学式測定装置において、前記演算部は、前記電圧差分のピーク同士の距離に対応する、前記被測定対象における距離と、前記被測定対象の外径とから、前記内径を計算してもよい。
【0008】
上記光学式測定装置において、前記第1の走査光と前記第2の走査光とは、偏光方向が90度異なっていてもよい。
【0009】
上記光学式測定装置において、前記照射装置は、光源からの光に対し、λ/2波長板を透過させる場合と、前記λ/2波長板を透過させない場合とを切り替えることで、前記第1の走査光および前記第2の走査光を照射してもよい。
【発明の効果】
【0010】
高精度に内径を測定することができる光学式測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る光学式測定装置の斜視図である。
図2】光学式測定装置の構成を例示する概略図である。
図3】透明管の被測定対象を透過する平行走査光の軌道変化を例示する図である。
図4】(a)および(b)は同じ外径に対して内径が異なる場合に受光素子から出力される電気信号のイメージ図である。
図5】実施形態に係る内径測定を例示する図である。
図6】実施形態に係る内径測定を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、実施形態に係る光学式測定装置100の斜視図である。図2は、光学式測定装置100の構成を例示する概略図である。光学式測定装置100は、レーザ光を一次元走査して被測定対象の寸法を測定するレーザ・スキャン・マイクロメータ(LSM)であり、例えば、電子部品や機械部品の寸法測定、金属丸棒や光ファイバーの寸法測定などに利用される。以下の説明において、被測定対象Wに対するレーザ光の出射方向をZ方向とし、被測定対象Wの軸方向をX方向とし、Z方向及びX方向に直交する方向をY方向とする。Y方向は、レーザ光の走査方向と一致する。図1および図2で例示するように、光学式測定装置100は、発光部10、走査部20、直線偏光板30、受光部40、演算部50などを備える。
【0014】
発光部10は、レーザ光源11、レーザ制御回路12、偏光装置13等を備えている。レーザ光源11は、半導体レーザ素子等により構成され、波長が例えば650nmで、断面形状がほぼ円形若しくは楕円形の光束(レーザ光)を射出する。レーザ光源11は、レーザ制御回路12によって制御され、高速(例えば数MHz~数十MHz)でオンオフされる。偏光装置13は、レーザ光源11が射出したレーザ光を90°偏光させる装置である。例えば、偏光装置13は、レーザ制御回路12の指示に従って、レーザ光にλ/2波長板を通過させない場合と、レーザ光にλ/2波長板を通過させる場合と、を切り替える。
【0015】
走査部20は、反射ミラー21、回転ミラー22、モータ23、モータ駆動回路24、F-θレンズ25、同期用受光素子26等を備えている。反射ミラー21は、レーザ光源11から射出されたレーザ光を反射して回転ミラー22に入射する。回転ミラー22は、回転ミラー22と同軸に配置されたモータ23により回転し、反射ミラー21を介して入射されたレーザ光を回転走査光に変換してF-θレンズ25に入射する。具体的には、回転ミラー22は、多角柱(図2では8角柱)の各側面がそれぞれ反射面を構成する回転多面鏡であり、モータ23によって例えば5000~20000回転/分の速度で回転駆動される。回転ミラー22は、自身の回転によって反射面に入射するレーザ光の反射角度を変化させ、これによりレーザ光を主走査方向(スキャン方向)に偏向走査させる。
【0016】
モータ駆動回路24は、後述するモータ同期回路54の出力に基づきモータ23に対して電力を供給する。F-θレンズ25は、回転ミラー22で変換された回転走査光を等速度の平行走査光に変換する。具体的には、F-θレンズ25は、2枚のレンズ面の曲率を変えることにより、レンズ周辺部と中心部で走査速度が一定になるように設計されている。したがって、F-θレンズ25を用いて、被測定対象Wを透過する平行走査光の透過強度の時間変化を測定することで、被測定対象Wの寸法を求めることができる。F-θレンズ25により平行走査光に変換されたレーザ光は、回転ミラー22の回転に伴い被測定対象Wを含む測定領域を走査するように照射されることになる。
【0017】
同期用受光素子26は、F-θレンズ25の外側であって、レーザ光がF-θレンズ25を通過する範囲の1回の走査が開始される前、または終了した後に、レーザ光を受光する位置に配置されている。同期用受光素子26は、レーザ光による1走査の開始または終了を検出してパルス状のタイミング基準信号(以下、基準信号と称する)を出力する。したがって、レーザ光の1回の走査が開始される毎に、または終了する毎に基準信号が1回出力されることとなる。
【0018】
直線偏光板(偏光板)30は、偏光子の向きが、レーザ光の出射方向(Z方向)および被測定対象Wの軸方向(X方向)に直交する方向、即ち、被測定対象Wの反射面(XZ平面)に対して垂直方向(Y方向)となるように形成されている。即ち、F-θレンズ25により平行走査光に変換されたレーザ光は、直線偏光板1を通過する際、被測定対象Wの反射面に対して水平方向(X方向)の振動成分が遮断され、反射面に対して垂直方向(Y方向)の成分のみが通過することとなる。被測定対象Wは円筒形状を有しているため、回転ミラー22の回転に伴い、直線偏光板30を通過する平行走査光は、被測定対象Wの円筒形状の軸に対する垂直断面内において光軸が平行に移動する。
【0019】
受光部40は、集光レンズ41、受光素子42、アンプ43、等を備えている。集光レンズ41は、被測定対象Wを通過した平行走査光を集光して受光素子42に入射する。受光素子42は、集光レンズ41により集光された平行走査光に対して光電変換を行う。具体的には、受光素子42は、受光強度に応じた電圧を有する電気信号を出力する。受光素子42は、受光強度が大きいほど電圧が大きい電気信号を出力し、受光強度が小さいほど電圧が小さい電気信号を出力する。電気信号の電圧の強弱を測定することで、被測定対象Wの走査面内における走査方向の寸法を測定することができる。なお、こうした寸法算出処理は、演算部50にて行われる。アンプ43は、受光素子42より出力された電気信号を増幅し、演算部50に出力する。
【0020】
演算部50は、電圧検出回路51、差分検出回路52、クロック回路53、モータ同期回路54、入出力回路55、キーボード56、CPU(中央演算装置)57、RAM(ランダムアクセスメモリ)58、記憶部59、等を備えている。電圧検出回路51は、アンプ43から出力された電気信号の電圧値の時間変化を検出する。それにより、受光素子42で受光される走査光の受光強度の時間変化を検出することができる。差分検出回路52は、電圧検出回路51が検出する電圧値の時間変化の、走査ごとの差分を検出する。
【0021】
モータ同期回路54は、クロック回路53から入力されたクロック信号に同期した駆動信号をモータ駆動回路24に対して出力する。なお、モータ駆動回路24は、モータ同期回路54の出力に基づいてモータ23に電力を供給する。したがって、回転ミラー22は、クロック信号に対して所定の関係を持った速度で回転することとなる。
【0022】
入出力回路55は、算出された値(被測定対象Wの寸法)等を表示装置や印刷装置などの外部出力装置(図示省略)に出力する。キーボード56は、各種の操作キー群を備えて構成されている。ユーザによりキーボード56の所定のキーの押下操作が行われると、この押下操作に応じた操作信号がCPU57に出力される。CPU57は、例えば、記憶部59に記憶されている各種処理プログラムに従って、各種の制御処理を行う。
【0023】
RAM58は、CPU57により演算処理されたデータを格納するワークメモリエリアを形成している。記憶部59は、例えば、CPU57によって実行可能なシステムプログラムや、そのシステムプログラムで実行可能な各種処理プログラム、これら各種処理プログラムを実行する際に使用されるデータ、CPU57によって演算処理された各種処理結果のデータなどを記憶する。なお、プログラムは、コンピュータが読み取り可能なプログラムコードの形で記憶部59に記憶されている。
【0024】
CPU57は、電圧検出回路51が検出した電圧の時間変化および差分検出回路52が検出した電圧差分を用いて、被測定対象Wの内径を計算する。以下、被測定対象Wの内径の測定の詳細について説明する。
【0025】
図3は、透明管(例えば、屈折率が1.5のガラス)の被測定対象Wを透過する平行走査光の軌道変化を例示する図である。図3で例示するように、Y方向における被測定対象Wの端点4よりも外側および端点5よりも外側においては、平行走査光が被測定対象Wにより遮られないため、受光素子42における受光強度が第1閾値以上となる。
【0026】
次に、被測定対象Wを透過する平行走査光の軌道は、被測定対象Wとの反射・屈折により様々な軌道に変化する。被測定対象Wの透過によって軌道が変化すると、受光素子42における受光強度が低下するため、受光素子42から出力される電気信号の電圧が小さくなる。一方、被測定対象Wを透過した場合に軌道が変化しなければ、受光素子42における受光強度が大きくなる。それにより、受光素子42から出力される電気信号の電圧が大きくなる。被測定対象Wを透過した場合に軌道が変化せずに十分な受光強度が得られる(電気信号の電圧値が第1閾値未満で第2閾値(<第1閾値)以上となる)入射位置は3箇所存在する。当該3箇所に入射した平行走査光は、被測定対象Wを透過した後に十分な光強度を有しつつZ方向に進む。
【0027】
1箇所目の入射位置は、被測定対象Wの軸を通過する入射位置1である。入射位置1は、被測定対象Wの外周に対する法線方向に平行走査光が入射される位置である。入射位置1を含む極小範囲に平行走査光が入射する期間においては、受光素子42から出力される電気信号の電圧が大きくなる。当該極小範囲外では、受光素子42から出力される電気信号の電圧が小さくなる。したがって、当該極小範囲において、受光素子42が出力する電気信号の電圧に、第1閾値未満で第2閾値以上のピークが現れる。
【0028】
2箇所目および3箇所目の入射位置は、端点4付近の入射位置2、および端点5付近の入射位置3である。入射位置2および入射位置3においては、平行走査光は、被測定対象Wの外周と大気との境界で反射して被測定対象Wの内方に進み、被測定対象Wの軸を通るY方向と被測定対象Wの内周との交点において被測定対象Wの内周と大気との境界で反射して被測定対象Wの外方に進み、被測定対象Wの外周と大気との境界で反射してZ方向に進む。したがって、見かけ上、入射位置2,3に入射した平行走査光の軌道は変化しない。入射位置2,3を含む極小範囲に平行走査光が入射する期間においては、受光素子42から出力される電気信号の電圧が大きくなる。当該極小範囲外では、受光素子42から出力される電気信号の電圧が小さくなる。したがって、当該極小範囲において、受光素子42が出力する電気信号の電圧に、第1閾値未満で第2閾値以上のピークが現れる。
【0029】
以上のことから、入射1~3のそれぞれに対応する3つのピークが現れる。入射位置2,3に対応する2つのピークは、入射位置1に対応する1つのピークを挟む。
【0030】
特許文献2によれば、Y方向上側の入射位置2とY方向下側の入射位置3との距離Dを測定することができれば、被測定対象Wの外径と屈折率とから、被測定対象Wの内径を幾何学的に算出することができる。しかしながら、被測定対象Wの肉厚によっては、距離Dの測定精度が低下する。
【0031】
図4(a)および図4(b)は、同じ外径に対して内径が異なる場合の、受光素子42から出力される電気信号のイメージ図である。図4(a)は、外径に対して内径の比率が小さい(厚肉)の被測定対象Wを測定した場合である。図4(b)は、外径に対して内径の比率が大きい(薄肉)の被測定対象Wを測定した場合である。
【0032】
図4(a)のように、被測定対象Wが肉厚の場合、Y方向における入射位置2と被測定対象Wの端点4との距離dが大きくなる。この場合、入射位置2に対応する電気信号のピークと、端点4よりも外側で被測定対象Wに遮られずに直進する平行走査光に対する電気信号とが十分に離れる。この場合においては、入射位置2の検出精度が高くなる。それにより、距離Dの測定精度が高くなる。
【0033】
一方、図4(b)のように、被測定対象Wが薄肉の場合、Y方向における入射位置2と被測定対象Wの端点4との距離dが小さくなる。この場合、入射位置2に対応する電気信号のピークが、端点4よりも外側で被測定対象Wに遮られずに直進する平行走査光に対する電気信号に埋もれてしまう。この場合においては、入射位置2の検出精度が低くなる。それにより、距離Dの測定精度が低くなる。
【0034】
そこで、本実施形態においては、図5で例示するように、レーザ光の偏光方向による反射率の違いに着目する。まず、第1の走査において、ある偏光方向(例えばP偏光)を有するレーザ光を用いて、被測定対象Wを透過する平行走査光に対して受光素子42が出力した電気信号の時間変化を得る。次に、第2の走査において、レーザの偏光方向を90°変えてS偏光とし、同様に電気信号の時間変化を得る。偏光方向を変えるときは、偏光装置13を用いる。このとき、偏光方向に対する反射率の違いから、入射位置2,3に対応する電気信号の電圧に差異が発生する。
【0035】
なお、平行走査光が被測定対象Wにおいて反射しない場合には、偏光方向が90°変化しても、反射率の影響を受けない。したがって、入射位置1や、端点4,5よりも外側では、受光素子42が出力する電気信号の電圧に差異が生じない。
【0036】
本実施形態においては、差分検出回路52は、第1の走査の際に受光素子42が出力する電気信号の時間変化と、第2の走査の際に前記受光素子が出力する電気信号の時間変化との電圧差分を検出する。CPU57は、検出された電圧差分に基づいて、被測定対象Wの内径を計算する。
【0037】
まず、図6で例示するように、CPU57は、差分検出回路52が検出した電圧差分のピーク位置から入射位置2および入射位置3を検出することで、入射位置2と入射位置3との距離Dを計算する。なお、図6では、被測定対象Wの軸よりも端点5側の半分について図示してある。次に、CPU57は、入射位置2,3における被測定対象Wの外周面の法線をLとし、検出した距離Dと、被測定対象Wの外径ODとから、入射位置2,3における法線Lに対する平行走査光の入射角度i=sin-1(D/OD)を計算する。なお、外径ODは、図3で説明した第1閾値を用いて、受光素子42が出力する電気信号の電圧値が第1閾値未満から第1閾値以上となる立ち上がりエッジと、第1閾値以上から第1閾値未満となる立ち下がりエッジとから計算することができる。次に、CPU57は、入射角度iと、被測定対象Wの屈折率nとから、入射位置2,3に入射した光の法線Lに対する屈折角度r=sin-1(sini/n)を計算する。次に、CPU57は、被測定対象Wの軸線に垂直で端点4と端点5とを結ぶ線と、入射位置2,3に入射した光の屈折光の進む方向とが成す角度βを計算する。CPU57は、これらの屈折角度rおよび角度βから、正弦定理に基づき内径ID=OD(sinr/sinβ)を計算する。
【0038】
本実施形態によれば、光透過性の円筒形状の被測定対象Wに対し、円筒形状の軸に対する垂直断面内において光軸が平行に移動する平行走査光が照射され、被測定対象Wに対する第1の走査の際には第1の走査光が照射され、被測定対象Wに対する第2の走査の際には第1の走査光とは偏光方向が90°異なる第2の走査光が照射される。第1の走査の際に受光素子42が出力する電気信号の時間変化と、第2の走査の際に受光素子42が出力する電気信号の時間変化との電圧差分を検出することで、入射位置2,3に対応する電気信号以外の電気信号は相殺される。それにより、高精度に入射位置2,3に対応する電気信号の電圧差分を検出することができる。この電圧差分のピークから被測定対象Wの内径を計算することで、高精度に被測定対象Wの内径を測定することができる。この手法では、外径に対して内径の比率が大きい(薄肉の)場合でも、高精度に被測定対象Wの内径を測定することができる。
【0039】
なお、上記実施形態では、第1の走査光と第2の走査光とは、偏光方向が90°異なっているが、それに限られない。第1走査光と第2の走査光との偏光方向が異なっていれば、反射率に差が生じるため、入射位置2,3に対応する電気信号の電圧に差異を生じさせることができる。ただし、偏光方向が90°異なっていれば、電圧差分が最大になるため、電圧差分のピークの検出精度が向上する。
【0040】
なお、受光素子42が出力する電気信号の時間変化の電圧差分にノイズなどが重畳する場合には、閾値以上の電圧差分を検出するようにすれば、高精度に入射位置2,3に対応する電気信号の電圧差分を検出することができる。
【0041】
上記実施形態において、発光部10および走査部20が、光透過性の円筒形状の被測定対象に対し、前記円筒形状の軸に対する垂直断面内において光軸が平行に移動する走査光を照射し、前記被測定対象に対する第1の走査の際には第1の走査光を照射し、前記被測定対象に対する第2の走査の際には前記第1の走査光とは偏光方向が異なる第2の走査光を照射する照射装置の一例である。受光素子42が、前記被測定対象を透過した前記走査光に対して光電変換を行う受光素子の一例である。演算部50が、前記第1の走査の際に前記受光素子が出力する電気信号の時間変化と、前記第2の走査の際に前記受光素子が出力する電気信号の時間変化との電圧差分から得られるピークに基づいて、前記被測定対象の内径を計算する演算部の一例である。
【0042】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0043】
10 発光部
11 レーザ光源
13 偏光装置
22 回転ミラー
51 電圧検出回路
52 差分検出回路
20 走査部
40 受光部
50 演算部
100 光学式測定装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6