(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】有機半導体層形成用溶液、有機半導体層、および有機薄膜トランジスタ
(51)【国際特許分類】
H01L 51/40 20060101AFI20220713BHJP
H01L 51/05 20060101ALI20220713BHJP
H01L 51/30 20060101ALI20220713BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20220713BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
H01L29/28 310J
H01L29/28 100A
H01L29/28 250H
H01L29/78 618B
H01L29/78 618A
H01L21/368 L
(21)【出願番号】P 2018028148
(22)【出願日】2018-02-20
【審査請求日】2021-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2017030933
(32)【優先日】2017-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福田 貴
(72)【発明者】
【氏名】上田 さおり
(72)【発明者】
【氏名】山川 浩
(72)【発明者】
【氏名】奥 慎也
(72)【発明者】
【氏名】田靡 正雄
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 真人
【審査官】高柳 匡克
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-029019(JP,A)
【文献】国際公開第2016/009890(WO,A1)
【文献】特開2017-041557(JP,A)
【文献】特開2008-060116(JP,A)
【文献】国際公開第2016/039217(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/027685(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/40
H01L 51/05
H01L 51/30
H01L 29/786
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機半導体とポリマーを含み、
該有機半導体が下記一般式(3)で示される化合物であり、該ポリマーの表面エネルギーの極性項(γ
S
p)が、1.5mJ/m
2以上、6.5mJ/m
2以下であることを特徴とする有機半導体層形成用溶液。
【化1】
(ここで、Xは硫黄又は-CH=CH-を示し、Yは=CH-又は窒素を示す。
R
4
及びR
7
は、同一でも異なっていてもよく、炭素数1~20のアルキル基を示し、R
5
およびR
6
は、水素原子を示す。mは1又は2の整数、nは0~2の整数を示す。但し、Xが-CH=CH-の場合、Yは=CH-を示す。)
【請求項2】
ポリマーのガラス転移温度が105℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の有機半導体層形成用溶液。
【請求項3】
ポリマーの重量平均分子量が5,000~1,000,000であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の有機半導体層形成用溶液。
【請求項4】
ポリマーが極性基を有する極性環状ポリオレフィンであることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の有機半導体層形成用溶液。
【請求項5】
請求項1~請求項
4のいずれかに記載の有機半導体層形成用溶液により形成されることを特徴とする有機半導体層。
【請求項6】
請求項
5に記載の有機半導体層を用いて得られる有機薄膜トランジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体層形成用溶液、有機半導体層、および有機薄膜トランジスタに関するものであり、良好な電気特性を発現し長期の安定動作が可能な信頼性の高い有機半導体層を形成するのに適する特定のポリマーバインダーを含む有機半導体層形成用溶液、これを用いて形成した有機半導体層、及び有機薄膜トランジスタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機薄膜トランジスタに代表される有機半導体デバイスは、省エネルギー、低コストおよびフレキシブルといった無機半導体デバイスにはない特徴を有することから近年注目されている。この有機半導体デバイスは、有機半導体層、基板、絶縁層、電極等の数種類の材料から構成され、有機半導体デバイスの電気特性(キャリア移動度、オン電流及びオン・オフ比、閾値電圧、電流ヒステリシス等)および信頼性(耐熱性、バイアスストレス耐性等)は、デバイスを構成する材料の特性により左右されることから、高い電気特性および高い信頼性を与える材料ならびに製造方法の開発が所望されている。
【0003】
中でも電荷のキャリア移動を担う有機半導体層は該デバイスの中心的な役割を有している。有機半導体層を作製する方法としては、高温真空下、有機半導体材料を気化させて実施する真空蒸着法、有機半導体材料を適当な溶媒に溶解させその溶液を塗布する塗布法等の方法が一般的に知られている。塗布は高温高真空条件を用いることなく印刷技術を用いても実施することができるため、経済的に好ましいプロセスと考えられており、塗工性が高く、キャリア移動度に優れた塗布型有機半導体層が望まれている。
【0004】
一般的に印刷技術を用いて塗布型有機半導体層を形成するには溶液の成膜性を改善する必要があり、有機半導体材料にポリマーバインダーを添加した溶液を用いる方法が知られている。
【0005】
例えば、ポリスチレン等のポリマーバインダーと高分子半導体等の有機半導体とを含む溶液を用いて形成した有機半導体層を用いてなる有機薄膜トランジスタが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、ポリマーバインダーを用いることにより良好な性能特性を有するトランジスタを生産できることが開示されている。好ましいポリマーバインダーは低誘電率の材料であり、共役結合、特に二重結合及び/または芳香環を含有していることが好ましく、低誘電率の材料は永久双極子をほとんど有さない。さらに材料の誘電率は、周波数への依存度が小さいことが望ましく、これは無極性材料の特徴であると記載されている。低誘電率(低極性)ポリマーバインダーとしては、スチレン、αメチルスチレン、ブタジエンのコポリマーが好適に用いることができると記載されている。
【0006】
また、有機半導体材料にポリスチレン等のポリマーバインダーを添加した溶液を用いる別の方法として、特定のポリアセン化合物とポリマーバインダー(有機結合剤樹脂)を含む溶液を用いて有機半導体層を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2では、該方法を用いることで、有機半導体層を基板上の広い領域に均一に被覆でき、OFET(有機電界効果トランジスタ)の移動度及び均一性が改善されるとされている。好ましいポリマーバインダーは低い誘電率の材料であり、高い誘電率のポリマーバインダーは、移動度の減少、望ましくない電流ヒステリシスの増加をもたらすことが示されている。また、好ましいポリマーバインダーとしてはスチレン、αメチルスチレン、ブタジエンのコポリマーであると記載されている。しかしながら、特許文献1および特許文献2で得られるトランジスタは、耐熱性、バイアスストレス耐性等のデバイスの信頼性に課題があった。
【0007】
一方、有機半導体層と接する絶縁層の特性も有機半導体デバイスの性能上重要であることが知られており、有機半導体材料にポリマーバインダーが添加された溶液を用いるとき、絶縁層とポリマーバインダー(該溶液を用いて有機半導体層を形成する際に、有機半導体材料とポリマーバインダーとが分離してそれぞれ個別の領域を形成)とは、デバイスにおいて類似の誘電的振る舞いをすることが知られている。
【0008】
絶縁層としては、デバイスの電気特性および信頼性の向上のため、低極性のポリマーを用いる方法が知られている(例えば、非特許文献1および2参照)。
【0009】
非特許文献1では、絶縁層として高極性なポリマーより低極性なポリマーの方が、キャリア移動度、オン電流及び電流オン・オフ比の増大、ヒステリシスの減少、閾値電圧の改善等、電気物性全般が良好になることが開示されている。しかしながら、非特許文献1に記載の低極性ポリマーを用いて絶縁層を形成するとき、キャリア移動度、オン・オフ比等の電気特性が十分ではないものであった。
【0010】
非特許文献2では、絶縁層として低極性ポリマーを使用することで信頼性の一つであるバイアスストレス効果を低減できることが開示されている。バイアスストレス効果とは、トランジスタ素子に一定の電圧を印可し続けることで閾値電圧の値が徐々にシフトしていく現象であり、該現象は注入されたキャリアが何らかの要因でトラップされるために生じるものと考えられている。シフト量が大きいとトランジスタ素子の動作が不安定となるため、シフト量の低減が求められており、非特許文献2では、低極性の絶縁膜材料を使用することでキャリアのトラップを低減し、閾値電圧のシフト量を低減することが開示されている。しかし、該シフト量の低減は実用的には十分ではない。また、有機半導体材料にポリマーバインダーを添加する場合において、該シフト量を低減させるポリマーバインダーは知られていないのが実情であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】WO2002-045184号公報
【文献】WO2005-055248号公報
【非特許文献】
【0012】
【文献】ケミストリィー オブ マテリアルズ、2004年、16巻、4543~4555頁
【文献】アドバンスト マテリアルズ、2009年、21巻、3859~3873頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、良好な電気特性を発現し、長期の安定動作が可能な信頼性の高い有機半導体層の作製に好適な有機半導体層形成用溶液、該有機半導体層形成溶液を用いて形成される有機半導体層、および該有機半導体層を用いた有機薄膜トランジスタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討の結果、特定のポリマーバインダーを含む有機半導体層形成用溶液、該溶液を用いて形成される有機半導体層、該有機半導体層を用いてなる有機薄膜トランジスタが良好な電気特性(高いキャリア移動度、高いオン電流、低いオフ電流および高いオン・オフ比、閾値電圧の低減)と高い信頼性(耐熱性、バイアスストレス効果の低減)を発現することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち、本発明は、有機半導体とポリマーを含み、該ポリマーの表面エネルギーの極性項(γS
p)が、1.5mJ/m2以上、6.5mJ/m2以下である有機半導体層形成用溶液に関するものである。
【0016】
以下に、本発明をより詳細に説明する。
【0017】
本発明の有機半導体層形成用溶液は、該有機半導体層形成用溶液に含まれるポリマーの表面エネルギーの極性項が、1.5mJ/m2以上、6.5mJ/m2以下であることを特徴とする。そして、本発明は、ポリマーが添加された有機半導体材料の溶液を用いる場合において、該表面エネルギーの極性項を該特定の範囲とすることで、得られる有機薄膜トランジスタ(得られる有機半導体層)が良好な電気特性を発現し、長期の安定動作が可能な高い信頼性を確保できることを見出したものである。
【0018】
本発明のポリマーの表面エネルギーの極性項(γS
p)は、下記計算式(1)及び(2)から求めることができる。
γL(1+cosθ)=2(γS
dγL
d)1/2+2(γS
pγL
p)1/2 (1)
γL=γL
d+γL
p (2)
(式中、γLは液体の表面エネルギー、θは接触角、γS
dはポリマーの表面エネルギーの分散項、γS
pはポリマーの表面エネルギーの極性項、γL
dは液体の表面エネルギーの分散項、γL
pは液体の表面エネルギーの極性項を示す。)
ここで、ポリマーの表面エネルギーの極性項(γS
p)は、γL
dとγL
pが既知な2つ以上の液体の接触角(θ)を測定することによって与えられる。
【0019】
本発明において、ポリマーの表面エネルギーの極性項が1.5mJ/m2未満であるとき、バイアスストレスをかけた時チャネル間にキャリアが蓄積され(低極性であるため蓄積されたキャリアが残るため)、閾値電圧がシフトする結果となる。また、本発明において、ポリマーの表面エネルギーの極性項が6.5mJ/m2を超えるとき、バイアスストレスをかけた時チャネル間に多くのキャリアが残留し(高極性であるため過大量のキャリアが発生し、一部が残るため)、閾値電圧がシフトする結果となる。
【0020】
本発明において、ポリマーの表面エネルギーの極性項は、1.5mJ/m2以上、6.5mJ/m2以下であり、バイアスストレス効果の低減により好適であるため、2.0mJ/m2以上、6.5mJ/m2以下であることが好ましく、3.0mJ/m2以上、6.5mJ/m2以下であることがさらに好ましい。
【0021】
本発明では、有機半導体を用いた電子デバイス製造時のプロセス温度への対応により好適であることから(製造時のプロセス加熱によって有機トランジスタ性能が低下しない)、該ポリマーのガラス転移温度(Tg)が105℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがさらに好ましく、150℃以上であることが特に好ましい。
【0022】
また、本発明において、ポリマーの分子量は、よりキャリア移動度の大きい有機薄膜トランジスタを得るのに好適であるため、5,000~1,000,000であることが好ましく、10,000~500,000がさらに好ましく、20,000~100,000が特に好ましい。なお、本発明において、ポリマーの分子量はポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)をいうものである。
【0023】
本発明において、有機半導体層形成用溶液におけるポリマーは、一般的なポリマーバインダーとしての効果を有し、得られる有機半導体層の成膜性を向上させるものである。さらに、絶縁層としての効果が期待できることから、非導電性ポリマー(半導体性ポリマーまたは絶縁性ポリマー)であることが好ましく、絶縁性ポリマーであることがさらに好ましい。
【0024】
本発明で用いることが可能なポリマーの具体的な例としては、例えば、極性環状ポリオレフィン類、ポリスルホン類、アクリロニトリル-スチレン共重合体、メチルメタクリレート-スチレン共重合体類等を挙げることができ、より良好な電気物性および高耐熱性が得られることから極性環状ポリオレフィン類、ポリスルホン類が好ましい。
【0025】
本発明で用いられる極性環状ポリオレフィン類は極性基を含有する環状ポリオレフィン構造を有していれば特に制限がなく、高耐熱性であることからリジッドなビシクロ構造の環状オレフィンのメタセシス開環重合体及び水素化で得られるポリマーであることが好ましい。該極性基としては、ハロゲン原子、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基等のカルボニル基を有する基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などを挙げることができ、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基等のカルボニル基を有する基、シアノ基、アルコキシ基などの非プロトン性の極性基が好ましい。
【0026】
極性環状ポリオレフィン類はより具体的には下記一般式(1)
【0027】
【0028】
(ここで、置換基R1からR3は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数2~20のアルキルオキシカルボニル基、炭素数7~20のアリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、又は炭素数1~20のアルキルアミノ基を示し、置換基Xは、ハロゲン原子、炭素数2~20のアルキルオキシカルボニル基、炭素数7~20のアリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、又は炭素数1~20のアルキルアミノ基を示す。pは20~5,000の整数を示し、q及びrはそれぞれ独立して0~2の整数を示す。実線と点線からなる結合は、単結合又は2重結合を示す。)で示されるポリマーがさらに好ましい。
【0029】
一般式(1)における置換基R1からR3は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数2~20のアルキルオキシカルボニル基、炭素数7~20のアリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、又は炭素数1~20のアルキルアミノ基を示し、高耐熱性のため、水素原子、炭素数1~20のアルキル基が好ましい。
【0030】
置換基R1からR3における炭素数1~20のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基等の直鎖又は分岐アルキル基が挙げられる。炭素数6~20のアリール基は、例えば、フェニル基、p-トリル基、p-(n-ヘキシル)フェニル基、p-(n-オクチル)フェニル基、p-(2-エチルヘキシル)フェニル基等が挙げられる。そして、その中でも高耐熱性のため、置換基R1はメチル基、エチル基、n-プロピル基であることが好ましく、置換基R2及びR3は水素原子であることが好ましい。
【0031】
一般式(1)における置換基Xは、ハロゲン原子、炭素数2~20のアルキルオキシカルボニル基、炭素数7~20のアリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、又は炭素数1~20のアルキルアミノ基を示す。
【0032】
置換基Xにおける炭素数2~20のアルキルオキシカルボニル基は、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、n-ヘキシロキシカルボニル基、シクロヘキシロキシカルボニル基等が挙げられ、炭素数7~20のアリールオキシカルボニル基は、例えば、フェノキシカルボニル基、4-メチルフェノキシカルボニル基、2,4-ジメチルフェニキシカルボニル基、4-エチルフェノキシカルボニル基等が挙げられる。高溶解性及び高耐熱性のため、炭素数2~20のアルキルオキシカルボニル基であることが好ましい。
【0033】
pは20~5,000の整数を示し、よりキャリア移動度の大きい有機薄膜トランジスタを得るのに好適であるため、好ましくは40~2,000である。qは0~2の整数を示し、好ましくは1である。rは0~2の整数を示し、好ましくは0または1である。さらに好ましくは0である。
【0034】
実線と点線からなる結合は単結合又は2重結合を示し、熱的安定性のため、好ましくは単結合である。
【0035】
本発明で用いられるポリスルホン類はポリスルホン構造を有していれば特に制限がなく、より具体的には下記ポリスルホン1~5で示されるポリスルホン類が挙げられる。
【0036】
【0037】
(ここで、置換基R32~R35は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基を示し、sは10~20,000の整数を示す。)
置換基R32~R35における炭素数1~20のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-テトラデシル基、n-オクタデシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘプチル基、3-エチルデシル基、2-ヘキシルデシル基等の直鎖又は分岐アルキル基が挙げられる。
【0038】
sは10~20,000の整数を示し、好ましくは10~10,000の整数である。
【0039】
本発明で用いられるアクリロニトリル-スチレン共重合体は、アクリロニトリルとスチレンの任意の比率の共重合体であり、良好な電気特性を示し、バイアスストレスをかけた時の閾値電圧の変化がより小さいものになるなど信頼性が向上することから、アクリロニトリルとスチレン重量比で10:90~50:50の比率であることが好ましく、20:80~40:60であることがさらに好ましい。
【0040】
本発明で用いられるメチルメタクリレート-スチレン共重合体は、メチルメタクリレートとスチレンの任意の比率の共重合体であり、良好な電気特性を示し、バイアスストレスをかけた時の閾値電圧の変化がより小さいものになるなど信頼性が向上することから、メチルメタクリレートとスチレンのモル比で1:99~90:10であることが好ましく、1:99~70:30であることがさらに好ましい。
【0041】
本発明で用いられるポリマーは、表面処理剤により表面エネルギーを調整したものを用いることができる。表面処理剤としては、シランカップリング剤を用いることができ、その具体例としては、例えば、1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン、フェニルトリメトキシシラン、オクチルトリクロロシラン、β-フェネチルトリクロロシラン、β-フェネチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。なお、本発明で用いるポリマーは、1種類のポリマーを単独で使用、または2種類以上のポリマーの混合物として使用することが可能である。更に、異なる分子量のポリマーを混合して使用することも可能である。
【0042】
本発明で用いられる有機半導体は、半導体特性を有するものであれば特に制限はなく、低分子半導体、高分子半導体のいずれも使用することができる。
【0043】
本発明では、有機半導体が低分子半導体の場合、例えば、下記一般式(2)で示される化合物が挙げられる。
【0044】
【0045】
(ここで、環構造Ar1及びAr5は、それぞれ独立してチオフェン環、チアゾール環、又はベンゼン環を示し、環構造Ar2及びAr4は、それぞれ独立してチオフェン環、ベンゼン環、又はシクロブテン環を示し、環構造Ar3はベンゼン環、チオフェン環、又はシクロブテン環を示す。R4及びR7は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数4~20のアリール基、炭素数2~20のアルケニル基、又は炭素数2~20のアルキニル基を示し、R5およびR6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、又はトリアルキルシリルエチニル基を示す。mは1又は2の整数、nは0~2の整数、oは0又は1の整数を示す。但し、環構造Ar3がチオフェン環又はシクロブテン環の場合、oは0である。)
該有機半導体の環構造Ar1及びAr5は、それぞれ独立してチオフェン環、チアゾール環、又はベンゼン環を示し、高移動度のためチオフェン環、チアゾール環が好ましい。
【0046】
環構造Ar2及びAr4は、それぞれ独立してチオフェン環、ベンゼン環、又はシクロブテン環を示し、高い耐酸化性のため、チオフェン環が好ましい。
【0047】
環構造Ar3はベンゼン環、チオフェン環、又はシクロブテン環を示し、高い耐熱性のためベンゼン環が好ましい。
【0048】
R4及びR7は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数4~20のアリール基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基からなる群から選ばれ、溶解性の観点から炭素数1~20のアルキル基であることが好ましい。
【0049】
R4及びR7における炭素数1~20のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-テトラデシル基、n-オクタデシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘプチル基、3-エチルデシル、2-ヘキシルデシル基等の直鎖又は分岐アルキル基が挙げられる。そして、その中でも特に高移動度及び高溶解性を示すことから、炭素数3~12のアルキル基が好ましく、n-プロピル、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基がさらに好ましい。
【0050】
R4及びR7における炭素数4~20のアリール基は、例えば、フェニル基、p-トリル基、p-(n-ヘキシル)フェニル基、p-(n-オクチル)フェニル基、p-(2-エチルヘキシル)フェニル基等のアルキル置換フェニル基;2-フリル基;2-チエニル基;5-フルオロ-2-フリル基、5-メチル-2-フリル基、5-エチル-2-フリル基、5-(n-プロピル)-2-フリル基、5-(n-ブチル)-2-フリル基、5-(n-ペンチル)-2-フリル基、5-(n-ヘキシル)-2-フリル基、5-(n-オクチル)-2-フリル基、5-(2-エチルヘキシル)-2-フリル基、5-フルオロ-2-チエニル基、5-メチル-2-チエニル基、5-エチル-2-チエニル基、5-(n-プロピル)-2-チエニル基、5-(n-ブチル)-2-チエニル基、5-(n-ペンチル)-2-チエニル基、5-(n-ヘキシル)-2-チエニル基、5-(n-オクチル)-2-チエニル基、5-(2-エチルヘキシル)-2-チエニル基等のアルキル置換カルコゲノフェン基を挙げることができる。
【0051】
R4及びR7における炭素数2~20のアルケニル基は、例えば、エテニル基、n-プロペニル基、n-ブテニル基、n-ペンテニル基、n-ヘキセニル基、n-ヘプテニル基、n-オクテニル基、n-ノネル基、n-デセニル基、n-ドデセニル基等が挙げられる。
【0052】
R4及びR7における炭素数2~20のアルキニル基は、例えば、エチニル基、n-プロピニル基、n-ブチニル基、n-ペンチニル基、n-ヘキシニル基、n-ヘプチニル基、n-オクチニル基、n-ノニニル基、n-デシニル基、n-ドデシニル基等が挙げられる。
【0053】
R5及びR6は、それぞれ独立して水素原子、トリアルキルシリルエチニル基、炭素数1~20のアルキル基又は炭素数1~20のアルコキシ基を示し、高移動度のため水素原子であることが好ましい。
【0054】
R5及びR6におけるトリアルキルシリルエチニル基は、例えば、トリメチルシリルエチニル基、トリエチルシリルエチニル基、トリイソプロピルシリルエチニル基等が挙げられる。
【0055】
R5及びR6における炭素数1~20のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-テトラデシル基、n-オクタデシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘプチル基、3-エチルデシル、2-ヘキシルデシル基等の直鎖又は分岐アルキル基が挙げられる。そして、その中でも特に高移動度及び高溶解性を示すことから、炭素数1~8のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基がさらに好ましい。
【0056】
R5及びR6における炭素数1~20のアルコキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、n-ペンチロキシ基、n-ヘキシリキシ基、イソヘキシロキシ基、n-ヘプチロキシ基、n-オクチロオキシ基、n-ノニロキシ基、n-デシロキシ基、n-ドデシロキシ基、n-テトラデシロキシ基、2-エチルヘキシロキシ基、3-エチルヘプチロキシ基、2-ヘキシルデシロキシ基等の直鎖又は分岐アルキル基が挙げられる。そして、その中でも特に高移動度及び高溶解性を示すことから、炭素数1~8のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、n-ペンチロキシ基、n-ヘキシロキシ基、イソヘキシロキシ基、n-ヘプチロキシ基、n-オクチロキシ基がさらに好ましい。
【0057】
mは1又は2の整数であるが、高溶解性のため、1であることが好ましい。
【0058】
nは0~2の整数を示し、πスタッキングが強固なため、1であることが好ましい。
【0059】
oは0又は1の整数を示し、高い耐熱性のため、0であることが好ましい。なお、環構造Ar3がチオフェン環又はシクロブテン環の場合、oは0である。
【0060】
本発明で用いられる有機半導体は高融点のため、5個以上の縮合環数を持つ構造が好ましい。
【0061】
本発明で用いられる有機半導体は、対称性が高く高移動度となるため、下記一般式(3)で示される化合物であることがさらに好ましい。
【0062】
【0063】
(ここで、Xは硫黄又は-CH=CH-を示し、Yは=CH-又は窒素を示す。R4及びR7は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数4~20のアリール基、炭素数2~20のアルケニル基、又は炭素数2~20のアルキニル基を示し、R5及びR6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、又はトリアルキルシリルエチニル基を示す。mは1又は2の整数、nは0~2の整数を示す。但し、Xが-CH=CH-の場合、Yは=CH-を示す。)
さらに本発明で用いられる有機半導体は、高溶解性であることから、下記一般式(4)で示される化合物であることが特に好ましい。
【0064】
【0065】
(ここで、R4及びR7は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数4~20のアリール基、炭素数2~20のアルケニル基、又は炭素数2~20のアルキニル基を示す。)
本発明で用いられる有機半導体の具体的例示としては、以下の構造のものを挙げることができる。
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
本発明では、有機半導体が高分子半導体の場合、該高分子半導体としては、例えば、下記(A)~(I)で示される構造の繰り返し単位のいずれかを含む高分子半導体が挙げられる。
【0071】
【0072】
(ここで、置換基R8~R31は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1~20のアルキル基を示し、lは1~4の整数を示す。)
R8~R31は、それぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1~20のアルキル基を示す。
【0073】
R8~R31における炭素数1~20のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-テトラデシル基、n-オクタデシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘプチル基、3-エチルデシル基、2-ヘキシルデシル基等の直鎖又は分岐アルキル基が挙げられる。
【0074】
lは1~4の整数である。
【0075】
該高分子半導体の分子量は、高分子半導体とポリマーが分離しやすく高移動度となることから、2,000~1,000,000であることが好ましく、10,000~1,000,000がさらに好ましく、20,000~500,000が特に好ましい。ここで、該高分子半導体の分子量は、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)をいうものである。
【0076】
本発明で使用される高分子半導体は高キャリア移動度の有機薄膜トランジスタが得られるため、(A)の構造を持つものがさらに好ましい。
【0077】
また、本発明では、有機半導体層を形成する際の塗布方法として好ましい塗布方法であるスピンコート、インクジェットを採用するとき、特に優れたキャリア移動度を発現することから、表面エネルギーの極性項(γsp)が1.5mJ/m2以上、6.5mJ/m2以下であるポリマーと有機半導体との組み合わせとして、該ポリマーが下記一般式(1)
【0078】
【0079】
(ここで、置換基R1からR3は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数2~20のアルキルオキシカルボニル基、炭素数7~20のアリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、又は炭素数1~20のアルキルアミノ基を示し、置換基Xは、ハロゲン原子、炭素数2~20のアルキルオキシカルボニル基、炭素数7~20のアリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、又は炭素数1~20のアルキルアミノ基を示す。pは20~5,000の整数を示し、q及びrはそれぞれ独立して0~2の整数を示す。実線と点線からなる結合は、単結合又は2重結合を示す。)で示されるポリマーであり、かつ、該有機半導体が下記一般式(4)
【0080】
【0081】
(ここで、R4及びR7は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数4~20のアリール基、炭素数2~20のアルケニル基、又は炭素数2~20のアルキニル基を示す。)で示される化合物であることが好ましい。
【0082】
本発明の有機半導体層形成用溶液の構成成分として用いる有機溶媒としては、有機半導体および本発明に係るポリマーを溶解することが可能な有機溶媒であれば如何なる有機溶媒を使用してもよく、有機半導体層を形成する際、有機溶媒の乾燥速度をより適したものとすることができ、有機半導体とポリマーの密着性が向上するため、常圧での沸点が130℃以上である有機溶媒が好ましく、200℃以上であることがさらに好ましい。
【0083】
本発明で用いることが可能な有機溶媒として、特に制限はなく、例えば、テトラリン、インダン、メシチレン、o-キシレン、イソプロピルベンゼン、ペンチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、トルエン、アニソール、2-メチルアニソール、3-メチルアニソール、2,3-ジメチルアニソール、3,4-ジメチルアニソール、2,6-ジメチルアニソール、ベンゾチアゾール、エチルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、1,2-メチレンジオキシベンゼン、1,2-エチレンジオキシベンゼン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン等の芳香族化合物;シクロヘキサノン、イソホロン、メチルエチルケトン等のケトン類;オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、デカリン等の飽和脂肪族化合物;フェニルアセテート、シクロヘキシルアセテート等のエステル類;ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,4-ブタンジオールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のグリコール類;トリアセチレンなどを挙げられることができ、その中でも高溶解性のため芳香族化合物が好ましく、適度な乾燥速度を持つことから、テトラリン、メシチレン、o-キシレン、1,2,4-トリメチルベンゼン、アニソール、2-メチルアニソール、3-メチルアニソール、2,3-ジメチルアニソール、3,4-ジメチルアニソール、2,6-ジメチルアニソール、ベンゾチアゾール、1,2-メチレンジオキシベンゼン、1,2-エチレンジオキシベンゼン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼンがさらに好ましい。
【0084】
なお、本発明で用いる有機溶媒は、1種類の有機溶媒を単独で使用、または沸点、極性、溶解度パラメーターなど性質の異なる有機溶媒を2種類以上混合して使用することが可能である。
【0085】
本発明の有機半導体層形成用溶液は、有機半導体、本発明に係るポリマー、および有機溶媒を混合、溶解することで調製することができる。
【0086】
有機半導体層形成用溶液を調製する方法については特に制限はなく、有機半導体とポリマーを有機溶媒に溶解することが可能な方法であれば、如何なる方法を用いてもよい。例えば、有機半導体とポリマーの混合物を同時に有機溶媒に溶解して有機半導体層形成用溶液を調製する方法、有機半導体の有機溶媒溶液にポリマーを溶解して有機半導体層形成用溶液を調製する方法、ポリマーの有機溶媒溶液に有機半導体を溶解する方法などを挙げることができる。
【0087】
有機半導体とポリマーを有機溶媒に混合溶解する際の温度について特に制限はないが、溶解を促進させる目的のため、10~150℃の温度範囲で行うことが好ましい。
【0088】
また、有機半導体とポリマーを有機溶媒に溶解混合する時間は、均一溶液を得るため、1分~1日間で溶解することが好ましい。
【0089】
有機半導体とポリマーの混合組成比に特に制限はないが、有機半導体とポリマーとの合計100重量部に対して、有機半導体の含有量が、10.0~99.9重量部の範囲であることが好ましく、50.0~99.9重量部の範囲であることがさらに好ましく、85.00~99.9重量部の範囲が特に好ましい。
【0090】
本発明の有機半導体層形成用溶液における有機半導体の濃度に特に制限はないが、0.001~50.0重量%の範囲であると、取り扱いがより容易になり、有機半導体層を形成する際の効率により優れるものとなる。また、有機半導体層形成用溶液の粘度が0.3~100mPa・sの範囲であると、より好適な塗工性を発現するものとなる。
【0091】
本発明の有機半導体層形成用溶液を用いて有機半導体層を形成する際の塗布方法としては、有機半導体層を形成可能な方法であれば特に制限はなく、例えば、スピンコート、ドロップキャスト、ディップコート、キャストコート等の簡易塗工法;ディスペンサー、インクジェット、スリットコート、ブレードコート、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷等の印刷法を挙げることができ、中でも容易に効率よく有機半導体層とすることが可能となることから、スピンコート、インクジェットであることがさらに好ましい。また、その際の有機半導体層の膜厚については特に制限はなく、例えば、1nm~1,000nmが挙げられ、膜厚の制御のし易さのため10nm~300nmが好ましく、20nm~100nmがさらに好ましい。
【0092】
本発明の有機半導体層形成用溶液を塗布後、有機溶媒を乾燥除去することにより有機半導体層を形成することが可能である。
【0093】
塗布した有機半導体層から有機溶媒を乾燥除去する際、乾燥する条件に特に制限はなく、例えば、常圧下、又は減圧下で有機溶媒の乾燥除去を行うことが可能である。
【0094】
塗布した有機半導体層から有機溶媒を乾燥除去する温度に特に制限はないが、効率よく塗布した有機半導体層から有機溶媒を乾燥除去することができ、有機半導体層を形成することが可能であるため、10~150℃の温度範囲で行うことが好ましい。
【0095】
塗布した有機半導体層から有機溶媒を乾燥除去する際、除去する有機溶媒の気化速度を調節することで、有機半導体の結晶成長を制御することが可能である。
【0096】
本発明で得られる有機半導体層は、密着性の高い積層構造を有することを特徴とする。
【0097】
本発明で得られる有機半導体層の構成としては本発明にかかる有機半導体層が得られる限り特に制限はなく、例えば、以下の(a)~(d)が挙げられる。
(a)上層に有機半導体からなる層が形成され、下層にポリマーからなる層が形成される層の構成。
(b)上層にポリマーからなる層が形成され、下層に有機半導体からなる層が形成された層の構成。
(c)上層に有機半導体層からなる層が形成され、中間層にポリマーからなる層を有し、再度下層に有機半導体からなる層が形成される層の構成。
(d)上層にポリマーからなる層が形成され、中間層に有機半導体からなる層を有し、再度、下層にポリマーからなる層が形成される層の構成。
【0098】
本発明で得られる有機半導体層は、該有機半導体層を形成後、高耐熱性のため、90℃以上で加熱処理を行うことができる。
【0099】
本発明の有機半導体層形成用溶液より形成される有機半導体層は、有機半導体デバイス、特に有機薄膜トランジスタの有機半導体層として使用することが可能である。
【0100】
有機薄膜トランジスタは、基板上に、ソース電極およびドレイン電極を付設した有機半導体層とゲート電極とを絶縁層を介し積層することにより得ることができ、該有機半導体層に本発明の有機半導体層形成用溶液により形成した有機半導体層を用いることにより、優れた半導体・電気特性を発現する有機薄膜トランジスタとすることが可能である。
【0101】
図1に一般的な有機薄膜トランジスタの断面形状による構造を示す。ここで、(A)は、ボトムゲート-トップコンタクト型、(B)は、ボトムゲート-ボトムコンタクト型、(C)は、トップゲート-トップコンタクト型、(D)は、トップゲート-ボトムコンタクト型の有機薄膜トランジスタであり、1は有機半導体層、2は基板、3はゲート電極、4はゲート絶縁層、5はソース電極、6はドレイン電極を示し、本発明の有機半導体層形成用溶液より形成される有機半導体層は、いずれの有機薄膜トランジスタにも適用することが可能である。
【0102】
基板の具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、環状ポリオレフィン、ハロゲン化環状ポリオレフィン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ポリ(ジイソプロピルフマレート)、ポリ(ジエチルフマレート)、ポリ(ジイソプロピルマレエート)、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、セルローストリアセテート等のプラスチック基板;ガラス、石英、酸化アルミニウム、シリコン、ハイドープシリコン、酸化シリコン、二酸化タンタル、五酸化タンタル、インジウム錫酸化物等の無機材料基板;金、銅、クロム、チタン、アルミニウム等の金属基板等を挙げることができる。なお、ハイドープシリコンを基板に用いた場合、その基板はゲート電極を兼ねることができる。
【0103】
本発明に係るゲート電極としては特に制限はなく、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、ハイドープシリコン、スズ酸化物、酸化インジウム、インジウムスズ酸化物、クロム、チタン、タンタル、グラフェン、カーボンナノチューブ等の無機材料;ドープされた導電性高分子(例えばPEDOT-PSS)等の有機材料を挙げることができる。
【0104】
また、上記の無機材料は、金属のナノ粒子インクとしても差し支えなく使用することができる。この場合の溶媒は、適度の分散性のため、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等の極性溶媒;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン等の炭素数6~14の脂肪族炭化水素溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、オクチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン、インダン、アニソール、1,2-ジメトキシベンゼン、1,3-ジメトキシベンゼン、1,2-ジメチルアニソール、2,3-ジメチルアニソール、3,4-ジメチルアニソール等の炭素数7~14の芳香族炭化水素溶媒であることが好ましい。該ナノ粒子インクを塗布後、導電性向上のため、80℃~200℃の温度範囲でアニール処理することが好ましい。
【0105】
本発明に係るゲート絶縁層としては特に制限はなく、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、二酸化タンタル、五酸化タンタル、インジウム錫酸化物、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウム、チタン酸ビスマス等の無機材料;ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ポリ(ジイソプロピルフマレート)、ポリ(ジエチルフマレート)、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリけい皮酸エチル、ポリけい皮酸メチル、ポリクロトン酸エチル、ポリエーテルスルホン、ポリプロピレン-コ-1-ブテン、ポリイソブチレン、ポリプロピレン、ポリシクロペンタン、ポリシクロヘキサン、ポリシクロヘキサン-エチレン共重合体、ポリハロゲン化シクロペンタン、ポリハロゲン化シクロヘキサン、ポリハロゲン化シクロヘキサン-エチレン共重合体、ハロゲン化環状ポリオレフィン、BCB樹脂(商品名:サイクロテン、ダウ・ケミカル社製)、Cytop(商標)、Teflon(商標)、パリレンC等のパリレン(商標)類のポリマー絶縁材料を挙げることができる。
【0106】
また、これらのゲート絶縁層の表面は、例えば、オクタデシルトリクロロシラン、デシルトリクロロシラン、デシルトリメトキシシラン、オクチルトリクロロシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、β-フェネチルトリクロロシラン、β-フェネチルトリメトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のシラン類;ヘキサメチルジシラザン等のシリルアミン類で修飾処理したものであっても使用することができる。
【0107】
ソース電極およびドレイン電極の材料としては、ゲート電極と同様の材料を用いることができ、ゲート電極の材料と同じであっても異なっていてもよく、異種材料を積層してもよい。また、キャリアの注入効率を上げるために、これらの電極材料に表面処理を実施することもできる。表面処理に用いる表面処理剤としては、例えば、ベンゼンチオール、ペンタフルオロベンゼンチオール、4-フルオロベンゼンチオール、4-メトキシベンゼンチオール等を挙げることができる。
【0108】
本発明の有機半導体層形成用溶液を用いて得られる有機薄膜トランジスタは、速い動作性のため、キャリア移動度が、0.5cm2/V・s以上であることが好ましい。
【0109】
本発明の有機半導体層形成用溶液を用いて得られる有機薄膜トランジスタは、バイアスストレス耐性に優れ閾値電圧のシフトが小さいことで、1.0×10-10A以下の低いオフ電流値を有するものであり、低エネルギー消費という特徴がある。
本発明の有機半導体層形成用溶液を用いて得られる有機薄膜トランジスタは、ポリマーが適度の極性を有するため、電流オン・オフ比が5.0×106以上の高いスイッチ特性を有することが好ましい。
【0110】
本発明の有機半導体層形成用溶液およびそれより形成される有機半導体層は、電子ペーパー、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ、ICタグ(RFIDタグ)、メモリー、センサー用等の有機薄膜トランジスタ用途;有機ELディスプレイ材料;有機半導体レーザー材料;有機薄膜太陽電池材料;フォトニック結晶材料等の電子材料に利用することができ、有機半導体が結晶性の薄膜となるため、有機薄膜トランジスタの半導体層用途として用いられることが好ましい。
【発明の効果】
【0111】
本発明の特定のポリマーバインダーを含む有機半導体層形成用溶液を用いることで、良好な電気特性を発現し、長期の安定動作が可能な信頼性の高い有機半導体層および該有機半導体層を用いてなる有機薄膜トランジスタを提供することが可能となる。
【実施例】
【0112】
以下実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0113】
実施例1~3中、有機半導体層形成用溶液の評価で作製した有機トランジスタの構造は、ボトムゲート-ボトムコンタクト型であり、各構成部材の材質及び成膜方法を表1に示した。
【0114】
【0115】
実施例中、電気物性については、半導体パラメータアナライザー(ケースレー社製4200SCS)を用い、ドレイン電圧(Vd=-20V)、ゲート電圧(Vg)を+5~-20Vまで1V刻みで走査し、伝達特性(Id-Vg)の評価を行った。
【0116】
実施例1
(有機半導体層形成用溶液の調製)
空気下、10mlサンプル管に、o-キシレン(沸点144℃)1.5g、2,7-ジ(n-ヘキシル)ジチエノベンゾジチオフェン(化合物1)15mg、極性環状ポリオレフィン1(GPCによるMw=44,000、表面エネルギーの極性項(γS
P)が3.57mJ/m2)1.5mgを加え、50℃に加熱して溶解させることで、有機半導体層形成用溶液の調製を行った。
【0117】
極性環状ポリオレフィン1の構造を下記に示した。
【0118】
【0119】
(有機半導体層及び有機薄膜トランジスタの作製)
空気下、上記表1で示した順に作製した電極のチャネル間に、上述の方法で調製した有機半導体層形成用溶液0.5mlをシリンジに充填し、0.2μmのフィルターを通した溶液を室温下(25℃)でディスペンサー塗工した。室温下(25℃)で自然乾燥し、膜厚58nmの有機半導体層の薄膜を作製した。
(バイアスストレス試験前の電気物性の測定)
上述の方法で作製した有機薄膜トランジスタ(チャネル長/チャネル幅=10μm/980μm)の伝達特性から、キャリア移動度は0.94cm2/V・s(p型)、電流オン・オフ比は2.4×107であった。また、ゲート電圧0Vでの電流値は2.1×10-12Aであった。
【0120】
バイアスストレス試験前の電気物性の測定結果を表2に示す。
【0121】
【0122】
バイアスストレス試験前の電気物性の測定結果から、得られた有機薄膜トランジスタは、良好な電気物性を発現することがわかった。
(バイアスストレス試験後の電気物性の測定)
上述の方法で作製した有機薄膜トランジスタに-30Vのゲート電圧を大気下で1時間印加(バイアスストレス試験)後、伝達特性を測定した。その結果、伝達特性からキャリア移動度は0.94cm2/V・s(p型)、電流オン・オフ比は2.3×107、ゲート電圧0Vでの電流値は1.9×10-12Aであった。
【0123】
バイアスストレス試験後の電気物性の測定結果を表2に合わせて示す。
【0124】
バイアスストレス試験後の電気物性の測定結果から、得られた有機薄膜トランジスタは、バイアスストレス耐性に優れていることがわかった。
(熱加熱後の電気物性の測定)
上記の有機薄膜トランジスタ(バイアスストレス試験後、チャネル長/チャネル幅=10μm/980μm)を大気下、110℃で20分間加熱した後、伝達特性の評価を行った。その結果、キャリア移動度は0.95cm2/V・s(p型)、電流オン・オフ比は2.6×107であった。
【0125】
また、120℃で20分間加熱後の伝達特性の評価を行い、キャリア移動度は1.00cm2/V・s(p型)、電流オン・オフ比は2.5×107であった
熱加熱後の電気物性の測定結果を表3に示す。
【0126】
【0127】
熱加熱後の電気物性の測定結果から、得られた有機薄膜トランジスタは、耐熱性に優れていることがわかった。
【0128】
実施例2
(有機半導体層形成用溶液の調製)
ポリマーとして極性環状ポリオレフィン2(GPCによるMw=57,000、表面エネルギーの極性項(γS
P)が4.32mJ/m2)を用いた以外は実施例1と同様の方法により、有機半導体層形成用溶液の調製を行った。
【0129】
極性環状ポリオレフィン2の構造を下記に示した。
【0130】
【0131】
(有機半導体層及び有機薄膜トランジスタの作製、並びにバイアスストレス試験前の電気物性の測定)
実施例1と同様の方法により、有機薄膜トランジスタを作製し、バイアスストレス試験前の電気物性の測定を行った。
【0132】
バイアスストレス試験前の電気物性の測定結果を表2に合わせて示す。
【0133】
バイアスストレス試験前の電気物性の測定結果から、得られた有機薄膜トランジスタは、良好な電気物性を発現することがわかった。
(バイアスストレス試験後の電気物性の測定)
実施例1と同様の方法により、バイアスストレス試験を行った。
【0134】
バイアスストレス試験後の電気物性の測定結果を表2に合わせて示す。
【0135】
バイアスストレス試験後の電気物性の測定結果から、得られた有機薄膜トランジスタは、バイアスストレス耐性に優れていることがわかった。
(熱加熱後の電気物性の測定)
また、実施例1と同様に熱加熱後、電気物性の測定を行った。熱加熱後の電気物性の測定結果を表3に合わせて示す。
【0136】
熱加熱後の電気物性の測定結果から、得られた有機薄膜トランジスタは、耐熱性に優れていることがわかった。
【0137】
実施例3
(有機半導体層形成用溶液の調製)
ポリマーとしてポリスルホン1(PSU)(R31=R32=メチル基、シグマアルドリッチ社製)(GPCによるMw=49,000、表面エネルギーの極性項(γS
P)が3.42mJ/m2)を用い、溶媒としてクロロベンゼンを用いた以外は実施例1と同様の方法により、有機半導体層形成用溶液の調製を行った。
(有機半導体層及び有機薄膜トランジスタの作製、並びにバイアスストレス試験前の電気物性の測定)
実施例1と同様の方法により、有機薄膜トランジスタを作製し、バイアスストレス試験前の電気物性の測定を行った。
【0138】
バイアスストレス試験前の電気物性の測定の結果を表2に合わせて示す。
【0139】
バイアスストレス試験前の電気物性の測定結果から、得られた有機薄膜トランジスタは、良好な電気物性を発現することがわかった。
(バイアスストレス試験後の電気物性の測定)
実施例1と同様の方法により、バイアスストレス試験を行った。
【0140】
バイアスストレス試験後の電気物性の測定結果を表2に合わせて示す。
【0141】
バイアスストレス試験後の電気物性の測定結果から、得られた有機薄膜トランジスタは、バイアスストレス耐性に優れていることがわかった。
(熱加熱後の電気物性の測定)
また、実施例1と同様に熱加熱後、電気物性の測定を行った。
【0142】
熱加熱後の電気物性の測定結果を表3に合わせて示す。
【0143】
熱加熱後の電気物性の測定結果から、得られた有機薄膜トランジスタは、耐熱性に優れていることがわかった。
【0144】
実施例4
(有機半導体層形成用溶液の調製)
空気下、10mlサンプル管に、テトラリン(沸点204℃)1.5g、2,7-ジ(n-ヘキシル)ジチエノベンゾジチオフェン(化合物1)12mg、極性環状ポリオレフィン2(GPCによるMw=57,000、表面エネルギーの極性項(γS
P)が4.32mJ/m2)1.5mgを加え、50℃に加熱して溶解させることで、有機半導体層形成用溶液の調製を行った。
(有機半導体層及びトップゲートボトムコンタクト型有機薄膜トランジスタの作製)
ガラス基板上(イーグルXG、コーニング社製)にジクロロ-ジ-p-キシリレン(商品名:DPX-C,SCS社製)200mgをラボコーター(日本パリレン合同会社製、PDS2010)を用いて、真空蒸着し膜厚150nmのポリ(クロロ-p-パラキシリレン)の下地層を形成した。
【0145】
上述の下地層を形成した基板を真空蒸着装置に設置し、装置内の真空度が3.0×10-4Pa以下になるまで排気し、抵抗加熱蒸着法によって厚み50nmの金を形成した。その後、フォトリソグラフィおよびエッチング処理によりチャネル長10μm、チャネル幅100μmのソース・ドレイン電極を形成した。
【0146】
上記の基板をペンタフルオロベンゼンチオールのイソプロピルアルコール溶液に、5分間浸漬することにより、基板上に形成した金電極の表面を修飾した。次に、上述の方法で調製した有機半導体層形成用溶液をシリンジに充填し、0.2μmのフィルターを通した溶液を室温下(25℃)で、上記表面処理した基板上にスピンコート法(1500rpm、20秒)で成膜し、ホットプレート上90℃、20分間加熱することで半導体層を形成した。
【0147】
次にこの半導体層の上にサイトップ(旭硝子社製)の絶縁膜をスピンコートにより厚さ450nmの厚さになるように成膜し、ホットプレート上で80℃、10分間加熱することで絶縁層を形成した。
【0148】
次に、この絶縁層の上にシャドウマスクを取り付け真空蒸着装置内に設置し、装置内の真空度が3.0×10-4Pa以下になるまで排気し、抵抗加熱蒸着法によって50nmの厚みのアルミニウム電極、すなわちゲート電極を形成することでトップゲートボトムゲート型有機薄膜トランジスタを作製した。
(バイアスストレス試験前の電気物性の測定)
実施例1と同様の方法により、有機薄膜トランジスタを作製し、バイアスストレス試験前の電気物性の測定を行った。
【0149】
バイアスストレス試験前の電気物性の測定の結果を表2に合わせて示す。
【0150】
バイアスストレス試験前の電気物性の測定結果から、得られた有機薄膜トランジスタは、良好な電気物性を発現することがわかった。
(バイアスストレス試験後の電気物性の測定)
実施例1と同様の方法により、バイアスストレス試験を行った。
【0151】
バイアスストレス試験後の電気物性の測定結果を表2に合わせて示す。
【0152】
バイアスストレス試験後の電気物性の測定結果から、得られた有機薄膜トランジスタは、バイアスストレス耐性に優れていることがわかった。
(熱加熱後の電気物性の測定)
また、実施例1と同様に熱加熱後、電気物性の測定を行った。熱加熱後の電気物性の測定結果を表3に合わせて示す。
【0153】
熱加熱後の電気物性の測定結果から、得られた有機薄膜トランジスタは、耐熱性に優れているこがわかった。
【0154】
比較例1
(有機半導体層形成用溶液の調製)
ポリマーを用いなかった以外は実施例1と同様の方法により、有機半導体層形成用溶液の調製を行った。
(有機半導体層及び有機薄膜トランジスタの作製、並びにバイアスストレス試験前の電気物性の測定)
実施例1と同様の方法により、有機薄膜トランジスタを作製し、バイアスストレス試験前の電気物性の測定を行った。
【0155】
バイアスストレス試験前の電気物性の測定結果を表2に合わせて示す。
【0156】
バイアスストレス試験前の電気物性の測定結果から、得られた有機薄膜トランジスタは、良好な電気物性を発現するものではなかった。
(バイアスストレス試験後の電気物性の測定)
実施例1と同様の方法により、バイアスストレス試験を行った。
【0157】
バイアスストレス試験後の電気物性の測定結果を表2に合わせて示す。
【0158】
バイアスストレス試験後の電気物性の測定結果から、得られた有機薄膜トランジスタは、バイアスストレス後に、移動度等の電気物性が低下するという問題が生じるものであった。
(熱加熱後の電気物性の測定)
また、実施例1と同様に熱加熱後、電気物性の測定を行った。
【0159】
熱加熱後の電気物性の測定結果を表3に合わせて示す。
【0160】
熱加熱後の電気物性の測定結果から、得られた有機薄膜トランジスタは、熱加熱後にキャリア移動度が低くなるものであった。
【0161】
比較例2
(有機半導体層形成用溶液の調製)
ポリマーとしてポリスチレン(PS)(シグマアルドリッチ社製)(GPCによるMw=280,000、表面エネルギーの極性項(γS
P)が1.44mJ/m2)を用いた以外は実施例1と同様の方法により、有機半導体層形成用溶液の調製を行った。
(有機半導体層及び有機薄膜トランジスタの作製、並びにバイアスストレス試験前の電気物性の測定)
実施例1と同様の方法により、有機薄膜トランジスタを作製し、バイアスストレス試験前の電気物性の測定を行った。
【0162】
バイアスストレス試験前の電気物性の測定結果を表2に合わせて示す。
【0163】
バイアスストレス試験前の電気物性の測定結果から、得られた有機薄膜トランジスタは、良好な電気物性を発現するものではなかった。
(バイアスストレス試験後の電気物性の測定)
実施例1と同様の方法により、バイアスストレス試験を行った。
【0164】
バイアスストレス試験後の電気物性の測定結果を表2に合わせて示す。
【0165】
バイアスストレス試験後の電気物性の測定結果から、得られた有機薄膜トランジスタは、バイアスストレス後に、移動度等の電気物性が低下するという問題が生じるものであった。
(熱加熱後の電気物性の測定)
また、実施例1と同様に熱加熱後、電気物性の測定を行った。
【0166】
熱加熱後の電気物性の測定結果を表3に合わせて示す。
【0167】
熱加熱後の電気物性の測定結果から、得られた有機薄膜トランジスタは、熱加熱後にキャリア移動度が低くなるものであった。
【0168】
比較例3
(有機半導体層形成用溶液の調製)
ポリマーとしてポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)(シグマアルドリッチ社製)(GPCによるMw=350,000、表面エネルギーの極性項(γS
P)が10.2mJ/m2)を用いた以外は実施例1と同様の方法により、有機半導体層形成用溶液の調製を行った。
(有機半導体層及び有機薄膜トランジスタの作製、並びにバイアスストレス試験前の電気物性の測定)
実施例1と同様の方法により、有機薄膜トランジスタを作製し、バイアスストレス試験前の電気物性の測定を行った。
【0169】
バイアスストレス試験前の電気物性の測定結果を表2に合わせて示す。
【0170】
バイアスストレス試験前の電気物性の測定結果から、得られた有機薄膜トランジスタは、良好な電気物性を発現するものではなかった。
(バイアスストレス試験後の電気物性の測定)
実施例1と同様の方法により、バイアスストレス試験を行った。
【0171】
バイアスストレス試験後の電気物性の測定結果を表2に合わせて示す。
【0172】
バイアスストレス試験後の電気物性の測定結果から、得られた有機薄膜トランジスタは、バイアスストレス後に、移動度等の電気物性が低下するという問題が生じるものであった。
(熱加熱後の電気物性の測定)
また、実施例1と同様に熱加熱後、電気物性の測定を行った。
【0173】
熱加熱後の電気物性の測定結果を表3に合わせて示す。
【0174】
熱加熱後の電気物性の測定結果から、得られた有機薄膜トランジスタは、熱加熱後にキャリア移動度が低くなるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0175】
本発明の有機半導体層形成用溶液を用いることで、良好な電気特性を発現し、長期の安定動作が可能な信頼性の高い有機半導体層および該有機半導体層を有する有機薄膜トランジスタを作製することができるため、半導体デバイス材料としての適用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【
図1】;有機薄膜トランジスタの断面形状による構造を示す図である。
【符号の説明】
【0177】
(A):ボトムゲート-トップコンタクト型有機薄膜トランジスタ
(B):ボトムゲート-ボトムコンタクト型有機薄膜トランジスタ
(C):トップゲート-トップコンタクト型有機薄膜トランジスタ
(D):トップゲート-ボトムコンタクト型有機薄膜トランジスタ
1:有機半導体層
2:基板
3:ゲート電極
4:ゲート絶縁層
5:ソース電極
6:ドレイン電極