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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】脆性材料加工液組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 173/02 20060101AFI20220713BHJP
   C10M 145/34 20060101ALN20220713BHJP
   C10M 145/26 20060101ALN20220713BHJP
   C10N 20/00 20060101ALN20220713BHJP
   C10N 20/04 20060101ALN20220713BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20220713BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20220713BHJP
   C10N 30/18 20060101ALN20220713BHJP
   C10N 40/22 20060101ALN20220713BHJP
【FI】
C10M173/02
C10M145/34
C10M145/26
C10N20:00 Z
C10N20:04
C10N30:00 Z
C10N30:06
C10N30:18
C10N40:22
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018069862
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019178297
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(74)【代理人】
【識別番号】100153866
【弁理士】
【氏名又は名称】滝沢 喜夫
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(72)【発明者】
【氏名】北村 友彦
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-203967(JP,A)
【文献】特開2003-124159(JP,A)
【文献】特開2002-114970(JP,A)
【文献】特開2003-082269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00-177/00
C10N 10/00- 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水、及び(B)添加剤混合物を含み、
成分(B)が、
(B-1)炭素数10以上24以下のアルコールのアルキレンオキサイド付加物であって、HLB値が4以上11以下である非イオン界面活性剤、及び、
(B-2)ポリエチレングリコールユニットとポリプロピレングリコールユニットとを有するトリブロック共重合体
含み、
成分(B-2)の数平均分子量が500以上5,000以下であり、
成分(B-1)の含有量が、成分(B)の全量100質量%基準で0.9質量%以上88.0質量%以下であり、
成分(B-2)の含有量が、成分(B)の全量100質量%基準で0.9質量%以上96.0質量%以下であり、
成分(B-1)及び(B-2)の合計含有量が、成分(B)の全量100質量%基準で83.0質量%以上である、
脆性材料加工液組成物。
【請求項2】
成分(B-2)の数平均分子量が1,000以5,000以下である、請求項1に記載の脆性材料加工液組成物。
【請求項3】
成分(B-1)の0.1質量%水溶液の表面張力が31mN/m以下である、請求項1又は2に記載の脆性材料加工液組成物。
【請求項4】
成分(B-1)の含有量と成分(B-2)の含有量との比〔(B-1)/(B-2)〕が、質量比で0.015以上9.50以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の脆性材料加工液組成物。
【請求項5】
pHが3以上9以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の脆性材料加工液組成物。
【請求項6】
成分(B)100質量部に対し、成分(A)を900質量部以上999,900質量部以下で含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の脆性材料加工液組成物。
【請求項7】
ワイヤを用いて脆性材料からなる被加工材を加工する時に用いる、請求項1~6のいずれか一項に記載の脆性材料加工液組成物。
【請求項8】
前記ワイヤが、固定砥粒ワイヤである、請求項7に記載の脆性材料加工液組成物。
【請求項9】
前記脆性材料が、結晶シリコン、サファイア、炭化ケイ素、ネオジム磁石、水晶、又はガラスである、請求項7又は8に記載の脆性材料加工液組成物。
【請求項10】
少なくとも(A)水、及び(B)添加剤混合物を配合する、脆性材料加工液組成物の製造方法であって、
成分(B)が、
(B-1)炭素数10以上24以下のアルコールのアルキレンオキサイド付加物であって、HLB値が4以上11以下である非イオン界面活性剤、及び、
(B-2)ポリエチレングリコールユニットとポリプロピレングリコールユニットとを有するトリブロック共重合体
含み、
成分(B-2)の数平均分子量が500以上5,000以下であり、
成分(B-1)の含有量が、成分(B)の全量100質量%基準で0.9質量%以上88.0質量%以下であり、
成分(B-2)の含有量が、成分(B)の全量100質量%基準で0.9質量%以上96.0質量%以下であり、
成分(B-1)及び(B-2)の合計含有量が、成分(B)の全量100質量%基準で83.0質量%以上、となるように配合して脆性材料加工液組成物を得る、請求項1~9のいずれか一項に記載の脆性材料加工液組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脆性材料加工液組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製品の製造では脆性材料であるシリコンインゴットを精度よく切削加工することが重要であり、シリコンインゴットの切削加工では、加工精度及び生産性の観点から、一般にワイヤソー加工が利用されている。
また、ワイヤソー加工は、セラミックス、石英、サファイア、ガラス等の材料の加工でも利用されている。
一般に、ワイヤソーを用いた加工方法としては、ワイヤと被加工物との摺動部に遊離砥粒を供給しながら加工を行う遊離砥粒方式と、ワイヤの表面に予め砥粒が固定されたワイヤを用いて加工を行う固定砥粒方式とが挙げられる。
例えば、近年、前述のシリコンインゴットからシリコンウェハを生産する分野では、更なる生産性の向上が要求されており、遊離砥粒方式より短時間での切断が可能であり、また、より細いワイヤ工具を使用して歩留まりを向上できる等の理由から、固定砥粒方式がよく用いられるようになってきている。
【0003】
また、両方式のワイヤソー加工では、切削加工時の加工効率の向上、被加工材と被加工材を加工する工具との摩擦抑制、加工により発生する熱の除去(冷却)、工具の寿命延長効果、切り屑の除去等を目的として加工液(クーラント)が使用されている。
前述の用途等で用いられる加工液としては、鉱物油、動植物油、合成油などを主成分した油系の加工液組成物と、界面活性能を持つ化合物を配合して水溶性を付与した水系の加工液組成物とが含まれる。
近年、作業時の安全性や環境問題の観点から水溶性を付与したものが用いられるようになってきている。
【0004】
例えば、特許文献1には、希土類磁石以外の加工材料の切断に用いられる固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液組成物であって、グリコール類を含有することを特徴とする固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液組成物が開示されている。
また、特許文献2には、希土類磁石の切断に用いられる固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液組成物であって、グリコール類と、カルボン酸と、水に溶解して塩基性を示す化合物と、水とを、それぞれ特定の含有量で含有してなる(但し、これらの成分の合計は100重量部である)ことを特徴とする固定砥粒ワイヤソー用水溶性加工液組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-82334号公報
【文献】特開2003-82335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、前述した両方式のワイヤソー加工方法は、前述のシリコンインゴットから、複数のシリコンウェハを一度に切り出すため、マルチワイヤソー装置が用いられている。マルチワイヤソー装置では、一定間隔で複数の溝が彫られた2以上のガイドローラー上の各溝に1本ずつワイヤを巻きつけ、各ワイヤが一定の張力で平行に保持されている。そして、切断加工時には、各ガイドローラーを回転させ、ノズル等から吐出した加工液組成物をワイヤに付着させながら、該ワイヤを一方向又は双方向に走行させ、加工液組成物が付着したワイヤにシリコンインゴットを押し当てて切断を行っている。
当該ワイヤソー加工に使用される加工液組成物は、ワイヤソー装置が備えるタンクに投入され、当該タンクからワイヤソー装置が備えるポンプによって加工室ノズルに供給され、当該ノズルから吐出される。ノズルから吐出された加工液組成物は、加工間隙(ワイヤとシリコンインゴットとの間隙)を狙って供給されて、加工間隙の潤滑等に使用された後、再び前記タンクに戻る。このようにシリコンインゴットの切断中、加工液組成物はワイヤソー装置内を循環している。
当該切断加工時、ワイヤ高線速化に伴うガイドローラーの高速回転などにより加工液組成物が激しく飛散する場合があり、加工液組成物の泡立ちに繋がる。また、当該切断加工時、加工液組成物がワイヤソー装置下部にあるタンクに流れ落ちることによって、タンク内の加工液組成物が激しく泡立ち、タンクからオーバーフローする場合がある。更に、当該切断加工中に発生する微細な切粉が加工液組成物の泡立ちを助長してしまう問題、並びにワイヤソー及び切断したウェハ等が当該切粉により著しく汚染され、それらを洗浄するための負荷が大きくなるといった問題があった。
また、前述のとおり、使用後の加工液は廃液処理により無害化することが要求されている。
【0007】
このように、脆性材料加工液組成物には、潤滑性という従来からの要求に加え、加工液組成物を用いた際の泡立ちを抑制し、切粉の清浄性を向上することができれば、より安定した生産や加工精度の向上にも繋がる。また、より廃液処理性に優れた加工液組成物、例えば、加工液組成物中の有機物化学的酸素要求量(Chemical Oxygen Demand:COD)の値がより低い加工液組成物であれば、環境に対する安全性の向上、作業時の安全性の向上、廃液処理に伴う負荷の低減による経済性の向上にも繋がる。
前述のとおり、近年、水溶性を付与した加工液組成物が要求されている。そして、水溶性の加工液組成物は、通常、加工液組成物の原液を水で希釈して使用している。そして、前述した廃液処理性の観点から、より水分含有量が多い状態で使用する場合にも、優れた潤滑性と、加工時の泡立ちを抑制する効果(以下、単に「消泡性」ともいう。)が得られる加工液組成物が求められている。すなわち、潤滑性、消泡性、及び廃液処理性のバランスに優れる加工液組成物が求められている。
【0008】
本発明は、以上の問題点を鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、潤滑性、消泡性、及び廃液処理性に優れる脆性材料加工液組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、水と、特定の化合物を含む添加剤混合物とを含有し、当該添加剤化合物中の各成分の含有量が特定の範囲を満たす脆性材料加工液組成物が、前記課題を解決し得ることを見出した。本発明の各実施形態はかかる知見に基づいて完成したものである。すなわち、本発明の各実施形態によれば、以下の[1]~[10]が提供される。
[1] (A)水、及び(B)添加剤混合物を含み、
成分(B)が、
(B-1)炭素数10以上24以下のアルコールのアルキレンオキサイド付加物であって、HLB値が4以上11以下である非イオン界面活性剤、及び、
(B-2)エチレンオキサイドとエチレンオキサイド以外のアルキレンオキサイドとの共重合体
を含み、
成分(B-1)の含有量が、成分(B)の全量100質量%基準で0.9質量%以上88.0質量%以下であり、
成分(B-2)の含有量が、成分(B)の全量100質量%基準で0.9質量%以上96.0質量%以下であり、
成分(B-1)及び(B-2)の合計含有量が、成分(B)の全量100質量%基準で83.0質量%以上である、
脆性材料加工液組成物。
[2] 成分(B-2)の数平均分子量が500以上6,000以下である、前記[1]に記載の脆性材料加工液組成物。
[3] 成分(B-1)の0.1質量%水溶液の表面張力が31mN/m以下である、前記[1]又は[2]に記載の脆性材料加工液組成物。
[4] 成分(B-1)の含有量と成分(B-2)の含有量との比〔(B-1)/(B-2)〕が、質量比で0.015以上9.50以下である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の脆性材料加工液組成物。
[5] pHが3以上9以下である、前記[1]~[4]のいずれかに記載の脆性材料加工液組成物。
[6] 成分(B)100質量部に対し、成分(A)を900質量部以上999,900質量部以下で含有する、前記[1]~[5]のいずれかに記載の脆性材料加工液組成物。
[7] ワイヤを用いて脆性材料からなる被加工材を加工する時に用いる、前記[1]~[6]のいずれかに記載の脆性材料加工液組成物。
[8] 前記ワイヤが、固定砥粒ワイヤである、前記[7]に記載の脆性材料加工液組成物。
[9] 前記脆性材料が、結晶シリコン、サファイア、炭化ケイ素、ネオジム磁石、水晶、又はガラスである、前記[7]又は[6]に記載の脆性材料加工液組成物。
[10] 少なくとも(A)水、及び(B)添加剤混合物を配合する、脆性材料加工液組成物の製造方法であって、
成分(B)が、
(B-1)炭素数10以上24以下のアルコールのアルキレンオキサイド付加物であって、HLB値が4以上11以下である非イオン界面活性剤、及び、
(B-2)エチレンオキサイドとエチレンオキサイド以外のアルキレンオキサイドとの共重合体
を含み、
成分(B-1)の含有量が、成分(B)の全量100質量%基準で0.9質量%以上88.0質量%以下であり、
成分(B-2)の含有量が、成分(B)の全量100質量%基準で0.9質量%以上96.0質量%以下であり、
成分(B-1)及び(B-2)の合計含有量が、成分(B)の全量100質量%基準で83.0質量%以上、となるように配合して脆性材料加工液組成物を得る、前記[1]~[9]のいずれかに記載の脆性材料加工液組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、潤滑性、消泡性、及び廃液処理性に優れる脆性材料加工液組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[脆性材料加工液組成物]
本発明の一実施形態に係る脆性材料加工液組成物(以下、単に「加工液」ともいう。)は、(A)水、及び(B)添加剤混合物を含み、成分(B)が、(B-1)炭素数10以上24以下のアルコールのアルキレンオキサイド付加物であって、HLB値が4以上11以下である非イオン界面活性剤、及び、(B-2)エチレンオキサイドとエチレンオキサイド以外のアルキレンオキサイドとの共重合体
を含み、成分(B-1)の含有量が、成分(B)の全量100質量%基準で0.9質量%以上88.0質量%以下であり、成分(B-2)の含有量が、成分(B)の全量100質量%基準で0.9質量%以上96.0質量%以下であり、
成分(B-1)及び(B-2)の合計含有量が、成分(B)の全量100質量%基準で83.0質量%以上である。
前述した全ての要件を満たす加工液は、潤滑性、消泡性、及び廃液処理性のバランスに優れる。
【0012】
なお、本明細書中、特に言及しない限り、「アルキレンオキサイド(以下、単に「AO」ともいう。)付加物」とは、単体のアルキレンオキサイドが付加した化合物だけでなく、複数のアルキレンオキサイド、すなわち、ポリアルキレンオキサイドが付加した化合物も含む。以下、「エチレンオキサイド(以下、単に「EO」ともいう。)付加物」、「プロピレンオキサイド(以下、単に「PO」ともいう。)付加物」も同様である。
また、本明細書中で用いる「HLB値」は、グリフィン法により算出されるHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance)の値を意味する。
なお、本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、含有量等の範囲)について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、該当する数値範囲について「好ましくは10以上、より好ましくは20以上、更に好ましくは30以上」という下限値の記載と、「好ましくは90以下、より好ましくは80以下、更に好ましくは60以下」という記載から、「好ましい下限値(10)」と「更に好ましい上限値(60)」とを組み合わせて、好適範囲を「10以上、60以下」とすることもできる。同様に、「更に好ましい下限値(30)」と「好ましい上限値(90)」とを組み合わせて好適範囲を「30以上、90以下」とすることもできる。
同様に、例えば、「好ましくは10~90、より好ましくは20~80、更に好ましくは30~60」という記載から、「10~60」、とすることもできる。
なお、特に言及しない限り、好ましい数値範囲として単に「10~90」と記載する場合、10以上90以下の範囲を表す。
以下、当該加工液に含有される各成分について説明する。
【0013】
<成分(A)>
成分(A)である水は、特に限定されず、蒸留水、イオン交換水(脱イオン水)等の精製水;水道水;工業用水;等を用いることができ、好ましくは精製水、より好ましくはイオン交換水(脱イオン水)である。
【0014】
成分(A)の含有量は、前記加工液を用いる状況によって、適宜、調整することができる。
例えば、前記加工液が濃縮状態(以下、「原液」ともいう。)であって、当該原液の保管及び運搬を行う場合、成分(A)の含有量は、成分(B)100質量部に対し、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは5.0質量部以上、更に好ましくは10.0質量部以上、より更に好ましくは25.0質量部以上である。一方、成分(A)の含有量は、成分(B)100質量部に対し、好ましくは1,800質量部以下、より好ましくは900質量部未満、更に好ましくは550質量部以下、より更に好ましくは200質量部以下である。
【0015】
また、例えば、前記加工液を脆性材料の加工に使用する場合、前述の原液を、更に、成分(A)で希釈し、前記加工液を希釈状態(以下、「希釈液」ともいう。)で使用することが好ましく、例えば、成分(A)の含有量は、加工液を低粘度化してハンドリング性を向上させて、本願発明の効果をより効果的に得る観点から、成分(B)100質量部に対し、好ましくは900質量部以上、より好ましくは1,900質量部以上、更に好ましくは9,900質量部以上、より更に好ましくは12,000質量部以上、より更に好ましくは15,000質量部以上である。一方、成分(A)の含有量は、加工液中の有効成分量を確保する観点から、成分(B)100質量部に対し、好ましくは999,900質量部以下、より好ましくは199,900質量部以下、更に好ましくは99,900質量部以下、より更に好ましくは66,500質量部以下、より更に好ましくは49,900質量部以下である。
ここで、本明細書中、「有効成分」とは、加工液から成分(A)を除いた全成分を指す。
【0016】
また、前記加工液を脆性材料の加工に使用する場合、前記希釈液のpHは、加工液の用途の欄で後述する各ワイヤや加工装置等の腐食を抑制できる観点から、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは5以上である。一方、前記希釈液のpHは、例えば、シリコン等を加工する際に切粉から水素が大量に発生することを抑制できる観点から、好ましくは9以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは7以下である。
【0017】
<成分(B)>
成分(B)は、添加剤混合物であり、以下で詳述する(B-1)炭素数10以上24以下のアルコールのアルキレンオキサイド付加物であって、HLB値が4以上10以下である非イオン界面活性剤、及び、(B-2)エチレンオキサイドとアルキレンオキサイドとの共重合体を、それぞれ、特定量で含む。各成分の含有量及び合計含有量については、各成分の説明欄で後述する。
成分(B)が、成分(B-1)及び成分(B-2)を共に含有することで、加工液組成物の良好な潤滑性と、良好な消泡性、特に、前述した切断加工中に発生する微細な切粉が加工液に含有している際の消泡性とのバランスに優れる加工液となる。
以下、当該添加剤混合物に含有される各成分について説明する。
【0018】
〔成分(B-1)〕
成分(B-1)は、炭素数10以上24以下のアルコールのアルキレンオキサイド付加物であって、HLB値が4以上11以下である非イオン界面活性剤である。
成分(B-1)のHLB値が、4以上であると、成分(B-1)の成分(A)への溶解性が向上する。また、成分(B-1)のHLB値が、11以下であると、加工液の消泡性が向上する。
成分(B-1)のHLB値は、加工液の潤滑性を向上させる観点から、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは8超である。一方、成分(B-1)のHLB値は、加工液の消泡性を向上させる観点から、好ましくは10以下、より好ましくは9以下である。
【0019】
また、成分(B-1)の0.1質量%水溶液の表面張力は、好ましくは31mN/m以下、より好ましくは30mN/m以下、更に好ましくは29mN/m以下、より更に好ましくは28mN/m未満である。一方、成分(B-1)の0.1質量%水溶液の表面張力は、好ましくは1mN/m以上、より好ましくは5mN/m以上、更に好ましくは10mN/m以上である。
【0020】
前記炭素数10以上24以下のアルコールとしては、例えば、炭素数10以上24以下の脂肪族アルコールが挙げられる。
炭素数10以上24以下のアルコールの炭素数は、好ましくは11以上、より好ましくは12以上である。一方、炭素数10以上24以下のアルコールの炭素数は、好ましくは20以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは16以下である。
【0021】
前記脂肪族アルコールとしては、好ましくは1級アルコール又は2級アルコール、より好ましくは1級アルコールである。また、直鎖状でもよく、分岐状でもよく、環状であってもよい。
また、前記脂肪族アルコールとしては、好ましくは1価のアルコールである。
当該脂肪族アルコールとしては、例えば、デカノール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、イソトリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、パルミチルアルコール、ヘプタデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコサノール等の飽和脂肪族アルコール;デセニルアルコール、ドデセニルアルコール、トリデセニルアルコール、テトラデセニルアルコール、パルミトレイルアルコール、オレイルアルコール、ガドレイルアルコール、リノレイルアルコール等の不飽和脂肪族アルコール;オクチルシクロヘキシルアルコール、ノニルシクロヘキシルアルコール、アダマンチルアルコール等の環状脂肪族アルコールが挙げられる。
【0022】
前記アルキレンオキサイド(AO)としては、例えば、炭素数2~4のアルキレンオキサイドが挙げられ、エチレンオキサイド(EO)、1,2-プロピレンオキサイド、1,3-プロピレンオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、2,3-ブチレンオキサイド、1,3-ブチレンオキサイド、テトラヒドロフランが挙げられる。
成分(B-1)としては、好ましくは前記炭素数10以上24以下のアルコールに少なくともEOが付加した化合物であり、より好ましくは前記炭素数10以上24以下のアルコールにEO及びEO以外のAOが付加した化合物である。
成分(B-1)としては、更に好ましくはポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテルから選ばれる少なくとも1種である。
なお、成分(B-1)は、前記炭素数10以上24以下のアルコールにEO及び/又はEO以外のAOを付加して合成することができる。前記炭素数10以上24以下のアルコールへのEO及び/又はEO以外のAOの付加は、公知の方法で行うことができ、無触媒又は触媒の存在下、常圧又は加圧下、1段階又は多段階で行ってもよい。
なお、成分(B-1)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
成分(B-1)の含有量は、成分(B)の全量100質量%基準で0.9質量%以上88.0質量%以下である。
成分(B-1)の含有量が、前記下限値以上であると、加工液の潤滑性に優れる。また、成分(B-1)の含有量が、前記上限値以下であると、加工液の廃液処理性に優れる。
成分(B-1)の含有量は、加工液の潤滑性を向上させる観点から、成分(B)の全量100質量%基準で、好ましくは2.5質量%以上、より好ましくは3.5質量%以上、更に好ましくは8.0質量%以上、より更に好ましくは15.0質量%以上、より更に好ましくは30.0質量%以上である。一方、成分(B-1)の含有量は、廃液処理性を向上させる観点から、成分(B)の全量100質量%基準で、好ましくは84.0質量%以下、より好ましくは82.0質量%以下、更に好ましくは80.0質量%以下、より更に好ましくは78.0質量%以下である。
【0024】
〔成分(B-2)〕
成分(B-2)は、エチレンオキサイドとエチレンオキサイド以外のアルキレンオキサイドとの共重合体である。
EOとEO以外のAOとの共重合体としては、EOと後述するEO以外のAOとの共重合体であり、当該EOとEO以外のAOとの付加の態様は、ランダム付加又はブロック付加のいずれでもよく、ランダム付加とブロック付加とが混在していてもよいが、好ましくはブロック付加した共重合体であり、より好ましくはプルロニック型の共重合体である。
前記EO以外のAOとしては、例えば、炭素数3又は4のアルキレンオキサイドが挙げられ、プロピレンオキサイド(PO)、オキセタン、1,2-ブチレンオキサイド、2,3-ブチレンオキサイド、1,3-ブチレンオキサイド、テトラヒドロフランが挙げられる。
EOとEO以外のAOとの共重合体としては、より好ましくはEOとPOとの共重合体であり、更に好ましくはEOとPOとのブロック共重合体(「ポリエチレングリコールユニットとポリプロピレングリコールユニットとを有するブロック共重合体」ともいう。)であり、より更に好ましくはEOとPOとのトリブロック共重合体(「ポリエチレングリコールユニットとポリプロピレングリコールユニットとを有するトリブロック共重合体」ともいう。)であり、より更に好ましくはポリプロピレングリコールにエチレンオキサイドを付加したプルロニック型共重合体である。
【0025】
成分(B-2)の数平均分子量(Mn)は、好ましくは500以上、より好ましくは1,000以上、より更に好ましくは1,500以上である。一方、成分(B-2)の数平均分子量(Mn)は、好ましくは6,000以下、より好ましくは5,000以下、より更に好ましくは3,000以下である。
また、前記数平均分子量(Mn)の値は、後述する実施例に記載の方法を用いて測定される値である。
また、当該EOとEO以外のAOとの共重合体中、EO以外のAOに由来する構造部分の数平均分子量(Mn)は、好ましくは500以上、より好ましくは1,000以上、更に好ましくは1,500以上である。一方、前記AOに由来する構造部分の数平均分子量(Mn)は、好ましくは5,000以下、より好ましくは3,000以下、更に好ましくは2,000以下である。
なお、成分(B-2)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
成分(B-2)の含有量は、成分(B)の全量100質量%基準で0.9質量%以上96.0質量%以下である。
成分(B-2)の含有量が、前記下限値以上であると、加工液の消泡性、特に、前述した切断加工中に発生する微細な切粉が加工液に含有している際の消泡性に優れる。また、成分(B-2)の含有量が、前記上限値以下であると、加工液の廃液処理性に優れる。
成分(B-2)の含有量は、加工液組成物の消泡性、特に、前述した切断加工中に発生する微細な切粉が加工液に含有している際の消泡性を向上させる観点から、加工液組成物成分(B)の全量100質量%基準で、好ましくは1.8質量%以上、より好ましくは5.0質量%以上、更に好ましくは7.0質量%以上、より更に好ましくは16.0質量%以上、より更に好ましくは18.0質量%以上である。一方、成分(B-2)の含有量は、廃液処理性を向上させる観点から、成分(B)の全量100質量%基準で、好ましくは94.0質量%以下、より好ましくは92.0質量%以下、更に好ましくは91.0質量%以下、より更に好ましくは85.0質量%以下、より更に好ましくは70.0質量%以下である。
【0027】
また、成分(B)中、成分(B-1)及び成分(B-2)の合計含有量は、成分(B)の全量100質量%基準で、83.0質量%以上である。
成分(B-1)及び成分(B-2)の合計含有量が、前記下限値以上であると、潤滑性、消泡性、及び廃液処理性のバランスに優れる加工液となる。
本願発明の効果をより効果的に得る観点から、前記合計含有量は、成分(B)の全量100質量%基準で、好ましくは85.0質量%以上、より好ましくは88.0質量%以上、更に好ましくは90.0質量%以上、より更に好ましくは94.0質量%以上である。一方、当該成分(B-1)及び成分(B-2)の合計含有量は、同様の観点から、成分(B)の全量100質量%基準で、好ましくは99.9質量%以下、より好ましくは99.0量%以下、更に好ましくは98.0質量%以下、より更に好ましくは97.0質量%以下、より更に好ましくは96.0質量%以下である。
【0028】
また、成分(B-1)の含有量と成分(B-2)の含有量との比〔(B-1)/(B-2)〕は、潤滑性と、廃液処理性と、消泡性、特に、前述した切断加工中に発生する微細な切粉が加工液に含有している際の消泡性とのバランスに優れた加工液とする観点から、質量比で、好ましくは0.015以上、より好ましくは0.020以上、更に好ましくは0.050以上、より更に好ましくは0.10以上、より更に好ましくは0.50以上、より更に好ましくは1.00以上、より更に好ましくは2.00以上、より更に好ましくは3.00以上である。一方、当該比〔(B-1)/(B-2)〕は、同様の観点から、質量比で、好ましくは9.50以下、より好ましくは8.00以下、更に好ましくは7.00以下、より更に好ましくは6.00以下、より更に好ましくは5.00以下である。
【0029】
〔その他添加剤〕
成分(B)は、本発明の目的を阻害しない範囲で、前述の成分(B-1)、及び成分(B-2)に加えて、更に、その他添加剤を含有していてもよい。
その他添加剤としては、成分(B-1)及び(B-2)以外の界面活性剤、pH調整剤、保水性向上剤、消泡剤、金属不活性化剤、殺菌剤・防腐剤、防錆剤、酸化防止剤等が挙げられる。これらの添加剤は、単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの添加剤の中では、成分(B-1)及び(B-2)以外の界面活性剤並びにpH調整剤からなる群より選ばれる1種以上が好ましい。
なお、これらのその他添加剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
成分(B-1)及び(B-2)以外の界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、成分(B-1)及び(B-2)以外の非イオン界面活性剤、及び両性界面活性剤等が挙げられる。
アニオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩等が挙げられる。カチオン界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩などの四級アンモニウム塩等が挙げられる。
成分(B-1)及び(B-2)以外の非イオン界面活性剤としては、例えば、炭素数10未満24超である非イオン界面活性剤、HLB値が4未満11超えである非イオン界面活性剤(脂肪酸アルカノールアミドのようなアミド等)が挙げられる。
両性界面活性剤としては、ベタイン系としてアルキルベタインなどが挙げられる。
界面活性剤の中では、好ましくは成分(B-1)及び(B-2)以外のエーテル等の非イオン界面活性剤が挙げられる。
【0031】
pH調整剤は、主に加工液のpHを調整するために用いられる。当該pH調整剤としては、各種酸成分や塩基成分が挙げられ、これら成分の含有量比を調整することで、適宜、加工液のpHを調整することができる。
なお、当該酸成分と塩基成分は互いに反応して塩を形成し得る。
そのため、pH調整剤として酸成分及び塩基成分を用いる場合、前記加工液中に当該酸成分と塩基成分との反応物が存在する場合、前述のとおり、当該酸成分及び塩基成分の反応物の含有量から算出される当該反応に寄与した当該酸成分及び塩基成分の各含有量を算出することもできる。また、その場合、当該反応物に代えて、反応前の当該酸成分及び塩基成分を含有しているものとみなすことができる。
【0032】
pH調整剤として用いられる酸成分としては、例えば、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ネオデカン酸、イソノナン酸、カプリン酸、イソステアリン酸等の各種脂肪酸;酢酸、リンゴ酸、クエン酸等のカルボン酸;ポリアクリル酸等の高分子酸及びその塩;リン酸等の無機酸;が挙げられる。これらの中では、脂肪酸が好ましく、ネオデカン酸、イソノナン酸、カプリン酸、ドデカン二酸等の炭素数12以下の脂肪酸がより好ましく、ネオデカン酸、イソノナン酸、カプリン酸、及びドデカン二酸からなる群より選ばれる1種以上が更に好ましい。
【0033】
pH調整剤として用いられる塩基成分としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリ-n-プロパノールアミン、トリ-n-ブタノールアミン、トリイソブタノールアミン、トリ-tert-ブタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-ブチルエタノールアミン、N-シクロヘキシルエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-シクロヘキシルジエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン等のアルカノールアミン;メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン等のアルキルアミン;アンモニアが挙げられる。これらの中では、3級アミンが好ましく、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、及びN-シクロヘキシルジエタノールアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0034】
保水性向上剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、これらのエステル誘導体、これらのエーテル誘導体;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。これらの中では、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、これらのエステル誘導体及びこれらのエーテル誘導体からなる群より選ばれる1種以上が好ましく、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、これらのエステル誘導体及びこれらのエーテル誘導体からなる群より選ばれる1種以上がより好ましく、ジエチレングリコール、グリセリン、これらのエステル誘導体、及びこれらのエーテル誘導体からなる群より選ばれる1種以上が更に好ましい。
【0035】
消泡剤としては、例えば、シリコーン油、フルオロシリコーン油、ポリエーテルポリシロキサン及びフルオロアルキルエーテルが挙げられる。これらの中では、ポリエーテルポリシロキサンが好ましい。
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、チアジアゾール及びベンゾトリアゾールが挙げられる。
殺菌剤・防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル類(パラベン類)の他、安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、デヒドロ酢酸、p-トルエンスルホン酸及びそれらの塩類、並びにフェノキシエタノールが挙げられる。
防錆剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルフォネート、ジノニルナフタレンスルフォネート、アルケニルコハク酸エステル、多価アルコールエステルが挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤が挙げられる。
【0036】
成分(B)がその他添加剤を含有する場合、その他添加剤の含有量は、成分(B)の全量100質量%基準で、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは2.0質量%以上、より更に好ましくは3.0質量%以上、より更に好ましくは4.0質量%以上である。一方、当該その他添加剤の含有量は、成分(B)の全量100質量%基準で、好ましくは17.0質量%以下、より好ましくは15.0質量%以下、更に好ましくは12.0質量%以下、より更に好ましくは10.0質量%以下、より更に好ましくは6.0質量%以下である。
【0037】
成分(B)がその他添加剤を含有する場合、成分(B)中、その他添加剤の配合量と成分(B-1)及び(B-2)の合計含有量との比〔(その他添加剤)/(B-1+B-2)〕は、質量比で好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上、より更に好ましくは0.02以上、より更に好ましくは0.03以上である。一方、当該比〔(その他添加剤)/(B-1+B-2)〕は、質量比で好ましくは0.20以下、より好ましくは0.18以下、更に好ましくは0.14以下、より更に好ましくは0.11以下、より更に好ましくは0.06以下である。
【0038】
また、本願発明の効果をより効果的に得る観点から、成分(B)がその他添加剤を含有する場合、成分(B)中、成分(B-1)、成分(B-2)及びその他添加剤の合計含有量は、成分(B)の全量100質量%基準で、好ましくは100質量%である。
また、本願発明の効果をより効果的に得る観点から、成分(A)及び成分(B)の合計含有量は、加工液の全量100質量%基準で、好ましくは100質量%である。
【0039】
[脆性材料加工液組成物の製造方法]
前記脆性材料加工液組成物の製造方法は、
少なくとも(A)水、及び(B)添加剤混合物を配合する、脆性材料加工液組成物の製造方法であって、
成分(B)が、
(B-1)炭素数10以上24以下のアルコールのアルキレンオキサイド付加物であって、HLB値が4以上11以下である非イオン界面活性剤、及び、
(B-2)エチレンオキサイドとエチレンオキサイド以外のアルキレンオキサイドとの共重合体
を含み、
成分(B-1)の含有量が、成分(B)の全量100質量%基準で0.9質量%以上88.0質量%以下であり、
成分(B-2)の含有量が、成分(B)の全量100質量%基準で0.9質量%以上96.0質量%以下であり、
成分(B-1)及び(B-2)の合計含有量が、成分(B)の全量100質量%基準で83.0質量%以上、となるように配合して脆性材料加工液組成物を得る製造方法である。
【0040】
成分(A)、成分(B-1)及び成分(B-2)を配合する順序は特に制限はなく、成分(A)に対して、成分(B-1)及び成分(B-2)を逐次又は同時に配合してもよく、予め成分(B-1)と成分(B-2)とを配合して、その混合物を成分(A)に配合してもよい。
また、当該製造方法では、成分(A)、成分(B-1)及び成分(B-2)を配合し、更に必要に応じてその他添加剤を配合してもよく、その場合、配合する各成分の配合順、配合方法等は特に限定されない。
ただし、前記脆性材料加工液組成物を脆性材料の加工に使用する場合には、前述した脆性材料加工液組成物の原液を予め調製した後、当該原液に対して、更に成分(A)を配合して希釈し、脆性材料加工液組成物の希釈液を調製して使用することが好ましい。
例えば、脆性材料加工液組成物の希釈液としては、希釈液の用途によって、適宜、調整することができるが、脆性材料加工液組成物の原液を、成分(A)を用いて、当該原液の全量(体積)換算で、好ましくは2倍以上、より好ましくは5倍以上、更に好ましくは10倍以上、より更に好ましくは100倍以上となるように希釈して調製することができる。一方、脆性材料加工液組成物の希釈液としては、希釈液の用途によって、適宜、調整することができるが、脆性材料加工液組成物の原液を、成分(A)を用いて、当該原液の全量(体積)換算で、好ましくは1,000倍以下、より好ましくは900倍以下、更に好ましくは800倍以下、より更に好ましくは700倍以下となるように希釈して調製することができる。
【0041】
なお、成分(A)、成分(B-1)、成分(B-2)、及びその他添加剤は、それぞれ、脆性材料加工液組成物の欄で前述したものと同様であり、その好適な態様も同様であるため、その詳細な説明は省略する。また、成分(A)、成分(B-1)、成分(B-2)、及びその他添加剤の好適な配合量及び各成分間の好適な配合量比についても、それぞれ、脆性材料加工液組成物の欄で前述した前記脆性材料加工液組成物中の各含有量及び各含有量比と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
また、前述の濃縮状態の脆性材料加工液組成物(原液)の好適な態様、及び、希釈状態の脆性材料加工液組成物(希釈液)の好適な態様の成分(A)、成分(B-1)、成分(B-2)、及びその他添加剤の好適な配合量及び各成分間の好適な配合量比についても、それぞれ、後述する各含有量及び各含有量比と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0042】
[脆性材料加工液組成物の用途]
前記脆性材料加工液組成物は、前述したワイヤソー、好ましくは固定砥粒ワイヤソーを用いてシリコンインゴット等の脆性材料からなる被加工材をワイヤソー加工する際に好適に用いることができる。すなわち、前記加工液は、ワイヤを用いて脆性材料からなる被加工材を加工する時に好適に用いることができる。
当該脆性材料としては、例えば、結晶シリコン、サファイア、窒化ガリウム、炭化ケイ素、ネオジム磁石、ジルコニア、グラファイト、ニオブ酸、タンタル酸、水晶及びガラスが挙げられる。前記加工液は、汚染抑制効果の観点から、結晶シリコン、サファイア、炭化ケイ素、ネオジム磁石、水晶、又はガラスを加工する際により好適に用いることができ、結晶シリコン、サファイア、又は炭化ケイ素を加工する際に更に好適に用いることができる。
【0043】
[脆性材料の加工方法]
本発明の一実施形態に係る脆性材料の加工方法は、前記脆性材料加工液組成物を用いてシリコンインゴット等の前記脆性材料からなる被加工材を加工する方法である。
ここで、前記加工液は、当該加工液を被加工材に供給して、被加工材に接触させて使用するものである。加工液は、前記被加工材と前記ワイヤソー等の加工具との間を潤滑する。更には、切り屑(切粉)の除去、被加工材の錆止め、工具及び被加工材の冷却等のためにも使用される。
前記加工液を使用して行う脆性材料の加工は、具体的には、切削加工、研削加工、打抜き加工、研摩、絞り加工、抽伸加工、圧延加工などの各種の加工が挙げられるが、これらの中では、切削加工、研削加工が好ましく、切削加工がより好ましい。
被加工材としての脆性材料は、前述した材料が挙げられる。
なお、前述のとおり、前記加工液は、シリコンインゴットの切断加工に用いるものとして好適に使用されるものである。
【0044】
ここで、より具体的には、前述したように遊離砥粒方式と固定砥粒方式という両方式のワイヤソー加工方法は、前述のシリコンインゴットから、複数のシリコンウェハを一度に切り出すため、マルチワイヤソー装置が用いられている。マルチワイヤソー装置では、一定間隔で複数の溝が彫られた2以上のガイドローラー上の各溝に1本ずつワイヤを巻きつけ、各ワイヤが一定の張力で平行に保持されている。そして、切断加工時には、各ガイドローラーを回転させ、ノズル等から吐出した加工液をワイヤに付着させながら、該ワイヤを一方向又は双方向に走行させ、加工液が付着したワイヤにシリコンインゴットを押し当てて切断を行っている。また、必要に応じてシリコンインゴット等の被加工物自体に加工液をかけながら加工を行うこともある。
加工に使用される加工液は、タンク等に貯蔵され、そこから配管等で前述の加工室ノズルまで運ばれる。また、切断時に使用された加工液は、切断装置下部の使用済み加工液受けタンク等で回収される。また、場合によっては、装置内を循環させて再利用されることもある。
したがって、前記加工液は、このような脆性材料の加工方法で用いる加工液としてより好適に使用され、このうち、固定砥粒ワイヤにより、シリコンインゴットからシリコンウェハを切り出す加工方法に用いる加工液として更に好適に使用され、固定砥粒ワイヤソーを用いたマルチワイヤー装置を用いて、シリコンインゴットからシリコンウェハを切り出す加工方法により更に好適に使用される。
【0045】
[加工装置]
本発明の一実施形態に係る脆性材料の加工装置は、前記本発明の一実施形態である脆性材料加工液組成物を用いる加工装置であり、好ましくはマルチワイヤー切断加工装置であり、より好ましくは固定砥粒ワイヤソーを備えたマルチワイヤー切断加工装置であり、更に好ましくはシリコンインゴット切断用の固定砥粒ワイヤソーを備えたマルチワイヤー切断加工装置である。
【0046】
また、本発明の一実施形態に関連する脆性材料加工液組成物としては、更に、以下の[2-1]~[2-18]の各実施形態を挙げることができる。
なお、下記[2-1]~[2-18]に記載の実施形態に含まれる態様の一部は、前述した原液に係る態様の例としても挙げることができる。
[2-1] 下記成分(A)、成分(B-1)及び成分(B-2)を含む、脆性材料加工液組成物であって、
成分(B-1)の含有量が、脆性材料加工液組成物の全量100質量%基準で0.500質量%超90.0質量%以下であり、
成分(B-2)の含有量が、脆性材料加工液組成物の全量100質量%基準で0.500質量%超90.0質量%以下であり、
成分(B-1)及び成分(B-2)の合計含有量が、脆性材料加工液組成物の全量100質量%基準で、1.00質量%超98.0質量%以下である、
脆性材料加工液組成物。
成分(A):水
成分(B-1):炭素数10以上24以下のアルコールのアルキレンオキサイド付加物であって、HLB値が4以上11以下である非イオン界面活性剤
成分(B-2)エチレンオキサイドとエチレンオキサイド以外のアルキレンオキサイドとの共重合体
[2-2] 成分(B-2)の数平均分子量が好ましくは500以上、より好ましくは1,000以上、更に好ましくは1,500以上であり、そして、好ましくは6,000以下、より好ましくは5,000以下、更に好ましくは3,000以下である、前記[2-1]に記載の脆性材料加工液組成物。
[2-3] 成分(A)の含有量が、脆性材料加工液組成物の全量100質量%基準で、好ましくは1.00質量%以上、より好ましくは2.00質量%以上、更に好ましくは5.00質量%以上、より更に好ましくは10.0質量%以上、より更に好ましくは20.0質量%以上であり、そして、好ましくは90.0質量%以下、より好ましくは85.0質量%以下、更に好ましくは80.0質量%以下、より更に好ましくは70.0質量%以下である、前記[2-1]又は[2-2]に記載の脆性材料加工液組成物。
[2-4] 成分(B-1)の0.1質量%水溶液の表面張力が好ましくは31mN/m以下、より好ましくは30mN/m以下、更に好ましくは29mN/m以下、より更に好ましくは28mN/m未満であり、そして、好ましくは1mN/m以上、より好ましくは5mN/m以上、更に好ましくは10mN/m以上である、前記[2-1]~[2-3]のいずれかに記載の脆性材料加工液組成物。
[2-5] 成分(B-1)の含有量が、脆性材料加工液組成物の全量100質量%基準で、好ましくは0.800質量%以上、より好ましくは1.00質量%以上、更に好ましくは1.50質量%以上であり、そして、好ましくは90.0質量%以下、より好ましくは80.0質量%以下、更に好ましくは70.0質量%以下である、前記[2-1]~[2-4]のいずれかに記載の脆性材料加工液組成物。
[2-6] 成分(B-2)の含有量が、脆性材料加工液組成物の全量100質量%基準で、脆性材料加工液組成物の全量100質量%基準で、好ましくは1.00質量%以上、より好ましくは5.00質量%以上、更に好ましくは10.0質量%以上であり、そして、好ましくは80.0質量%以下、より好ましくは70.0質量%以下、更に好ましくは60.0質量%以下である、前記[2-1]~[2-5]のいずれかに記載の脆性材料加工液組成物。
[2-7] 成分(B-1)の含有量と成分(B-2)の含有量との比〔(B-1)/(B-2)〕が、質量比で、好ましくは0.015以上、より好ましくは0.020以上、更に好ましくは0.050以上、より更に好ましくは0.10以上、より更に好ましくは0.50以上、より更に好ましくは1.00以上、より更に好ましくは2.00以上、より更に好ましくは3.00以上であり、そして、好ましくは9.50以下、より好ましくは8.00以下、更に好ましくは7.00以下、より更に好ましくは6.00以下、より更に好ましくは5.00以下である、前記[2-1]~[2-6]に記載の脆性材料加工液組成物。
[2-8] 成分(B-1)及び成分(B-2)の合計含有量が、脆性材料加工液組成物の全量100質量%基準で、好ましくは5.00質量%以上、より好ましくは10.0質量%以上、更に好ましくは20.0質量%以上、より更に好ましくは25.0質量%以上であり、そして、好ましくは95.0質量%以下、より好ましくは90.0質量%以下、更に好ましくは80.0質量%以下、より更に好ましくは70.0質量%以下である、前記[2-1]~[2-7]のいずれかに記載の脆性材料加工液組成物。
[2-9] 更に、その他添加剤を含み、その他添加剤の合計含有量が、脆性材料加工液組成物の全量100質量%基準で、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上、更に好ましくは1.00質量%以上、より更に好ましくは2.00質量%以上であり、そして、好ましくは10.00質量%以下、より好ましくは8.00質量%以下、更に好ましくは7.00質量%以下、より更に好ましくは6.00質量%以下である、前記[2-1]~[2-8]のいずれかに記載の脆性材料加工液組成物。
[2-10] 成分(A)、成分(B-1)及び成分(B-2)の合計含有量が、脆性材料加工液組成物の全量100質量%基準で、好ましくは90.00質量%以上、より好ましくは92.00質量%以上、更に好ましくは93.00質量%以下、より更に好ましくは94.00質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下、より好ましくは99.99質量%以下、更に好ましくは99.90質量%以下、より更に好ましくは99.00質量%以下、より更に好ましくは98.00質量%以下である、前記[2-1]~[2-9]のいずれかに記載の脆性材料加工液組成物。
[2-11] 成分(A)と、成分(B-1)と、成分(B-2)と、必要に応じて添加されるその他添加剤との合計含有量が、脆性材料加工液組成物の全量100質量%基準で、100質量%である、前記[2-9]又は[2-10]に記載の脆性材料加工液組成物。
[2-12] ワイヤを用いて脆性材料からなる被加工材を加工する時に用いる、前記[2-1]~[2-11]のいずれかに記載の脆性材料加工液組成物。
[2-13] 前記ワイヤが、固定砥粒ワイヤである、前記[2-12]に記載の脆性材料加工液組成物。
[2-14] 前記脆性材料が、結晶シリコン、サファイア、炭化ケイ素、ネオジム磁石、水晶、又はガラスである、前記[2-12]又は[2-13]に記載の脆性材料加工液組成物。
[2-15] 少なくとも下記成分(A)、成分(B-1)及び成分(B-2)を配合する、前記[2-1]~[2-14]のいずれかに記載の脆性材料加工液組成物の製造方法。
成分(A):水
成分(B-1):炭素数10以上24以下のアルコールのアルキレンオキサイド付加物であって、HLB値が4以上11以下である非イオン界面活性剤
成分(B-2):エチレンオキサイドとエチレンオキサイド以外のアルキレンオキサイドとの共重合体
[2-16] 前記[2-10]~[2-14]のいずれかに記載の脆性材料加工液組成物を、当該脆性材料加工液組成物の全量(体積)換算で、好ましくは2倍以上、より好ましくは5倍以上、更に好ましくは10倍以上、より更に好ましくは100倍以上、そして、好ましくは1,000倍以下、より好ましくは900倍以下、更に好ましくは800倍以下、より更に好ましくは700倍以下となるように、更に成分(A)で希釈して、脆性材料の加工に用いる、脆性材料加工液組成物の使用。
[2-17] 前記[2-10]~[2-14]のいずれかに記載の脆性材料加工液組成物を、pHが好ましくは3以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは5以上であり、そして、好ましくは9以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは7以下でとなるように、更に成分(A)で希釈して、脆性材料の加工に用いる、脆性材料加工液組成物の使用。
[2-18] 前記[2-10]~[2-14]のいずれかに記載の脆性材料加工液組成物を、JIS K 0102:2016の17.に記載の試験方法に準拠して測定される100℃における過マンガン酸カリウムによる酸素消費量(CODMn)が、好ましくは100mg/L以上、より好ましくは500mg/L以上、更に好ましくは1,000mg/L以上であり、そして、好ましくは10,000mg/L未満、より好ましくは8,000mg/L以下、更に好ましくは7,000mg/L以下となるように、更に成分(A)で希釈して、脆性材料の加工に用いる、脆性材料加工液組成物の使用。
【0047】
また、本発明の一実施形態に関連する脆性材料加工液組成物としては、更に、以下の[3-1]~[3-17]の各実施形態を挙げることができる。
なお、下記[3-1]~[3-17]に記載の実施形態に含まれる態様の一部は、前述した希釈液に係る態様の例としても挙げることができる。
【0048】
[3-1] 下記成分(A)、成分(B-1)及び成分(B-2)を含む、脆性材料加工液組成物であって、
成分(B-1)の含有量が、脆性材料加工液組成物の全量100質量%基準で0.005質量%以上0.500質量%以下であり、
成分(B-2)の含有量が、脆性材料加工液組成物の全量100質量%基準で0.005質量%以上0.500質量%以下であり、
成分(B-1)及び成分(B-2)の合計含有量が、脆性材料加工液組成物の全量100質量%基準で、0.108質量%以上1.000質量%以下である、
脆性材料加工液組成物。
成分(A):水
成分(B-1):炭素数10以上24以下のアルコールのアルキレンオキサイド付加物であって、HLB値が4以上11以下である非イオン界面活性剤
成分(B-2)エチレンオキサイドとエチレンオキサイド以外のアルキレンオキサイドとの共重合体
[3-2] 成分(B-2)の数平均分子量が好ましくは500以上、より好ましくは1,000以上、更に好ましくは1,500以上であり、そして、好ましくは6,000以下、より好ましくは5,000以下、更に好ましくは3,000以下である、前記[3-1]に記載の脆性材料加工液組成物。
[3-3] 成分(A)の含有量が、脆性材料加工液組成物の全量100質量%基準で、好ましくは90.00質量%以上、より好ましくは95.00質量%以上、更に好ましくは99.00質量%以上、より更に好ましくは99.20質量%以上、より更に好ましくは99.40質量%以上であり、そして、好ましくは99.99質量%以下、より好ましくは99.95質量%以下、更に好ましくは99.90質量%以下、より更に好ましくは99.85質量%以下、より更に好ましくは99.80質量%以下である、前記[3-1]又は[3-2]に記載の脆性材料加工液組成物。
[3-4] 成分(B-1)の0.1質量%水溶液の表面張力が好ましくは31mN/m以下、より好ましくは30mN/m以下、更に好ましくは29mN/m以下、より更に好ましくは28mN/m未満であり、そして、好ましくは1mN/m以上、より好ましくは5mN/m以上、更に好ましくは10mN/m以上である、前記[3-1]~[3-3]のいずれかに記載の脆性材料加工液組成物。
[3-5] pHが好ましくは3以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは5以上であり、そして、好ましくは9以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは7以下である、前記[3-1]~[3-4]のいずれかに記載の脆性材料加工液組成物。
[3-6] 成分(B-1)の含有量が、脆性材料加工液組成物の全量100質量%基準で、好ましくは0.007質量%以上、より好ましくは0.010質量%以上、更に好ましくは0.020質量%以上、より更に好ましくは0.050質量%以上、より更に好ましくは0.080質量%以上、より更に好ましくは0.150質量%以上であり、そして、好ましくは0.480質量%以下、より好ましくは0.460質量%以下、更に好ましくは0.450質量%以下、より更に好ましくは0.440質量%以下、より更に好ましくは0.430質量%以下である、前記[3-1]~[3-5]のいずれかに記載の脆性材料加工液組成物。
[3-7] 成分(B-2)の含有量が、脆性材料加工液組成物の全量100質量%基準で、脆性材料加工液組成物の全量100質量%基準で、好ましくは0.010質量%以上、より好ましくは0.020質量%以上、更に好ましくは0.030質量%以上、より更に好ましくは0.040質量%以上、より更に好ましくは0.060質量%以上、より更に好ましくは0.080質量%以上であり、そして、好ましくは0.480質量%以下、より好ましくは0.450質量%以下、更に好ましくは0.400質量%以下、より更に好ましくは0.350質量%以下、より更に好ましくは0.300質量%以下、より更に好ましくは0.200質量%以下である、前記[3-1]~[3-6]のいずれかに記載の脆性材料加工液組成物。
[3-8] 成分(B-1)の含有量と成分(B-2)の含有量との比〔(B-1)/(B-2)〕が、質量比で、好ましくは0.015以上、より好ましくは0.020以上、更に好ましくは0.050以上、より更に好ましくは0.10以上、より更に好ましくは0.50以上、より更に好ましくは1.00以上、より更に好ましくは2.00以上、より更に好ましくは3.00以上であり、そして、好ましくは9.50以下、より好ましくは8.00以下、更に好ましくは7.00以下、より更に好ましくは6.00以下、より更に好ましくは5.00以下である、前記[3-1]~[3-7]に記載の脆性材料加工液組成物。
[3-9] 成分(B-1)及び成分(B-2)の合計含有量が、脆性材料加工液組成物の全量100質量%基準で、好ましくは0.110質量%以上、より好ましくは0.150質量%以上、更に好ましくは0.200質量%以上、より更に好ましくは0.300質量%以上、より更に好ましくは0.400質量%以上であり、そして、好ましくは0.900質量%以下、更に好ましくは0.800質量%以下、より更に好ましくは0.700質量%以下、より更に好ましくは0.600質量%以下である、前記[3-1]~[3-8]のいずれかに記載の脆性材料加工液組成物。
[3-10] 更に、その他添加剤を含み、その他添加剤の合計含有量が、脆性材料加工液組成物の全量100質量%基準で、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上、更に好ましくは0.005質量%以上、より更に好ましくは0.010質量%以上、より更に好ましくは0.015質量%以上であり、そして、好ましくは0.200質量%以下、より好ましくは0.150質量%以下、更に好ましくは0.100質量%以下、より更に好ましくは0.050質量%以下である、前記[3-1]~[3-9]のいずれかに記載の脆性材料加工液組成物。
[3-11] 成分(A)、成分(B-1)及び成分(B-2)の合計含有量が、脆性材料加工液組成物の全量100質量%基準で、好ましくは95.000質量%以上、より好ましくは98.000質量%以上、更に好ましくは99.800質量%以上、より更に好ましくは99.900質量%以上、より更に好ましくは99.950質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下、より好ましくは99.9999質量%以下、更に好ましくは99.999質量%以下、より更に好ましくは99.995質量%以下、より更に好ましくは99.990質量%以下、より更に好ましくは99.985質量%以下である、前記[3-1]~[3-10]のいずれかに記載の脆性材料加工液組成物。
[3-12] 成分(A)と、成分(B-1)と、成分(B-2)と、必要に応じて添加されるその他添加剤との合計含有量が、脆性材料加工液組成物の全量100質量%基準で、100質量%である、前記[3-10]又は[3-11]に記載の脆性材料加工液組成物。
[3-13] JIS K 0102:2016の17.に記載の試験方法に準拠して測定される100℃における過マンガン酸カリウムによる酸素消費量(CODMn)が、好ましくは100mg/L以上、より好ましくは500mg/L以上、更に好ましくは1,000mg/L以上であり、そして、好ましくは10,000mg/L未満、より好ましくは8,000mg/L以下、更に好ましくは7,000mg/L以下である、前記[3-1]~[3-12]のいずれかに記載の脆性材料加工液組成物。
[3-14] ワイヤを用いて脆性材料からなる被加工材を加工する時に用いる、前記[3-1]~[3-13]のいずれかに記載の脆性材料加工液組成物。
[3-15] 前記ワイヤが、固定砥粒ワイヤである、前記[3-14]に記載の脆性材料加工液組成物。
[3-16] 前記脆性材料が、結晶シリコン、サファイア、炭化ケイ素、ネオジム磁石、水晶、又はガラスである、前記[3-14]又は[3-15]に記載の脆性材料加工液組成物。
[3-17] 少なくとも下記成分(A)、成分(B-1)及び成分(B-2)を配合する、前記[3-1]~[3-16]のいずれかに記載の脆性材料加工液組成物の製造方法。
成分(A):水
成分(B-1):炭素数10以上24以下のアルコールのアルキレンオキサイド付加物であって、HLB値が4以上11以下である非イオン界面活性剤
成分(B-2):エチレンオキサイドとエチレンオキサイド以外のアルキレンオキサイドとの共重合体
【0049】
なお、前記[2-1]~[2-18]及び[3-1]~[3-17]に記載の、成分(A)、成分(B-1)、成分(B-2)、及びその他添加剤は、それぞれ、本発明の一実施形態である前記[1]に係る前記脆性材料加工液組成物の欄で前述した、対応する各成分と同様であり、その好適な態様も同様であるため、詳細な説明は省略する。
また、前記[2-1]~[2-18]及び[3-1]~[3-17]に記載の態様中、各含有量及び質量比の好適範囲の設定理由も、それぞれ、本発明の一実施形態である前記[1]に係る前記脆性材料加工液組成物の欄で前述した、対応する各成分の含有量の設定理由と同様であるため、詳細な説明は省略する。
また、前記[2-1]~[2-18]及び[3-1]~[3-17]に記載の態様中、その他添加剤の配合量と成分(B-1)及び(B-2)の合計含有量との比〔(その他添加剤)/(B-1+B-2)〕(質量比)の好適な範囲も、それぞれ、本発明の一実施形態である前記[1]に係る前記脆性材料加工液組成物の欄で前述した範囲と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0050】
また、前記[2-15]に記載の脆性材料加工液組成物の製造方法について、成分(A)、成分(B-1)及び成分(B-2)を配合する順序は特に制限はなく、成分(A)に対して、成分(B-1)及び成分(B-2)を逐次又は同時に配合してもよく、予め成分(B-1)と成分(B-2)とを配合して、その混合物を成分(A)に配合してもよい。
また、当該製造方法では、成分(A)、成分(B-1)及び成分(B-2)を配合し、更に必要に応じてその他添加剤を配合してもよく、その場合、配合する各成分の配合順、配合方法等は特に限定されない。
また、前記[3-17]に記載の脆性材料加工液組成物の製造方法の場合も同様である。ただし、前記[3-17]に記載の脆性材料加工液組成物の製造方法の場合、前記[2-15]に記載の製造方法を用いて脆性材料加工液組成物の原液を予め調製する工程と、当該原液に対して、更に成分(A)を配合して希釈し、脆性材料加工液組成物を調製する工程とを有することが好ましい。前記原液を成分(A)で希釈する際の希釈倍率の好適な範囲は、本発明の一実施形態である前記[1]に係る前記脆性材料加工液組成物の欄で前述した範囲と同様である。
【0051】
また、前記[2-1]~[2-18]及び[3-1]~[3-17]に記載の脆性材料加工液組成物の用途、当該脆性加工液組成物を用いる脆性材料の加工方法、及び加工装置についても、それぞれ、本発明の一実施形態である前記[1]に係る脆性材料加工液組成物の欄の対応する項目で説明した内容と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【実施例
【0052】
以下に、本発明を、実施例により、更に具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各成分及び脆性材料加工液組成物に関する各物性は、以下に示す要領に従って評価した。
【0053】
[HLB値]
グリフィン法により算出される値を用いた。
【0054】
[0.1質量%水溶液の表面張力]
JIS K 2241:2017に記載のウィルヘルミー表面張力計による試験方法に準拠して測定される値を用いた。
【0055】
[分子量]
重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定した。GPCは、カラムとして東ソー株式会社製TSKgel SuperMultiporeHZ-M2本を用い、テトラヒドロフランを溶離液として、検出器に屈折率検出器を用いて測定を行い、ポリスチレンを標準試料として重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を求めた。
【0056】
[pH値]
実施例及び比較例で得られた各脆性材料加工液組成物のpHを、東亜ディーケーケー株式会社製のガラス電極式水素イオン濃度示指計、型式:HM-25Rを用いて評価した。
【0057】
[シリコン(Si)摩擦係数]
実施例及び比較例で得られた各脆性材料加工液組成物を用いて、次の試験条件に従って往復動摩擦試験を行い摩擦係数を測定した。
試験機:株式会社オリエンテック製「F-2100」
球:3/16インチSUJ2
試験温度:室温
試験板:多結晶シリコン
摺動速度:20mm/秒
摺動距離:2cm
荷重:200g
【0058】
[消泡性評価]
実施例及び比較例で得られた各脆性材料加工液組成物を用いて、次の手順に従って評価した。
(液面高さ:微粉なし)
液循環装置を備えた容量2Lのメスシリンダー(全高:460mm、内径φ85mm)中に、加工液200mLを注入し、メスシリンダー底部から循環装置で加工液を抜き出して循環させ、該2Lメスシリンダーの底面からの高さが400mmとなる位置から、抜き出した加工液を内径φ5mmのノズルを用いて該2Lメスシリンダー内に吐出させた。この時の加工液の流量が1.3L/分となるように循環量を調整した。
循環開始から5分経過後の液面高さを計測した。
なお、液面高さは、メスシリンダーの目盛りを利用して、単位「mL」で対比している。
この時、泡立ちが発生すると当該液面高さが高くなる、すなわち、「mL」の値が大きくなることから、当該液面高さの値「mL」が小さいほど、消泡性に優れる。
得られた結果を下記表1及び2に示す。
(液面高さ:微粉あり)
前記加工液に対して、微粉(「グラファイト粉末」、和光純薬工業株式会社製、特級)を評価液中の濃度13質量%となるように配合したものを評価液として準備した。
当該評価液を用いること以外は、「微粉なし」での液面高さの計測方法と同様の方法で液面高さを計測し、微粉混入時の加工液の消泡性を評価した。
【0059】
[廃液処理性の評価]
実施例及び比較例で得られた各脆性材料加工液組成物の100℃における過マンガン酸カリウムによる酸素消費量(CODMn)を、JIS K 0102:2016の17.に記載の試験方法に準拠して測定した。CODMnの数値から、以下の基準により実施例及び比較例で得られた各脆性材料加工液組成物の廃液処理性を評価した。

A:CODMnが10,000mg/L未満
F:CODMnが10,000mg/L以上

なお、廃液処理性に優れる加工液であるということは、前述のとおり、加工液として要求される潤滑性や消泡性といった性能を、より少ない有効成分濃度でも十分に発揮できる加工液であるということも表す。
本発明における廃液処理性も同様に、前記指標による評価は、実際に特定の水分含有量を満たす加工液であることを規定するためのものではなく、少ない有効成分濃度でも十分な性能を発揮できる加工液であるか否かを判断するための指標としても用いられるものである。
【0060】
[実施例1~5、比較例1~7]
下記の表1及び2に示す組成となるように各成分を配合し、脆性材料加工液組成物を調製した。前記評価方法に従って、各実施例及び比較例の脆性材料加工液組成物を評価した。得られた結果を下記表1及び2に示す。
【0061】
なお、下記表1及び2に示す各成分は、それぞれ以下の化合物を表す。
成分(A)
・イオン交換水
成分(A)以外の添加剤(表1中の成分(B)又は表2中の有効成分の原料)
・界面活性剤1:炭素数12のアルコールのEO付加物(主成分:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)、HLB=7.9、0.1質量%水溶液の表面張力=27.9mN/m
・界面活性剤2:炭素数12のアルコールのEO付加物(主成分:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)、HLB=6.3、0.1質量%水溶液の表面張力=26.6mN/m
・界面活性剤3:炭素数12のアルコールのEO付加物(主成分:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)、HLB=8.9、0.1質量%水溶液の表面張力=27.6mN/m
・界面活性剤4:炭素数12のアルコールのEO付加物(主成分:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)、HLB=12.1、0.1質量%水溶液の表面張力=28.3mN/m
・界面活性剤5:エチレンオキサイド(EO)とプロピレンオキサイド(PO)とのブロック共重合体(プルロニック型界面活性剤)、数平均分子量(Mn)=2,950、ポリオキシプロピレン鎖部分の数平均分子量(Mn)=1,750、EO付加モル数=27、HLB=8
・消泡剤:ポリエーテルポリシロキサン
・pH調整剤1:イソノナン酸
・pH調整剤2:トリイソプロパノールアミン
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
表1に示すとおり、実施例1~5の脆性材料加工液組成物は、成分(A)及び成分(B)を含み、成分(B)が成分(B-1)及び成分(B-2)を、それぞれ、所定の含有量で含み、かつ、成分(B)中の成分(B-1)及び成分(B-2)の合計含有量が83.0質量%以上であるため、いずれも、CODMnの数値が低くても潤滑性、消泡性が優れており、潤滑性、消泡性及び廃液処理性のバランスに優れていることが確認された。
一方で、表2に示すとおり、比較例1~7の脆性材料加工液組成物は、成分(A)及び成分(B)を含み、成分(B)が成分(B-1)及び成分(B-2)を、それぞれ、所定の含有量で含み、かつ、成分(B)中の成分(B-1)及び成分(B-2)の合計含有量が83.0質量%以上であるという要件の全てを満たしていないため、潤滑性、消泡性、又は廃液処理性のいずれかの特性に劣ることが確認された。
なお、実施例1に記載の脆性材料加工液組成物を用い、固定砥粒方式のマルチワイヤソー装置を用いて、シリコンインゴットを切断加工した結果、加工時に当該脆性材料加工液組成物の泡立ちが少なく、消泡性に優れていることが確認された。また、当該脆性材料加工液組成物の廃液処理性が優れていることも確認された。
【産業上の利用可能性】
【0065】
前記本発明の一実施形態である脆性材料加工液組成物は、潤滑性、消泡性、廃液処理性のバランスに優れる。そのため、例えば、シリコンインゴット等の脆性材料からなる被加工材を切断加工する際に、当該加工液の泡立ちを抑制することができ、泡立ちが原因で当該加工液を受けるタンクから当該加工液が溢れだす(オーバーフローの発生)不具合、又は泡立ちが原因で発生する加工精度の低下等の悪影響を防止することができる。
また、前記本発明の一実施形態である脆性材料加工液組成物は廃液処理性に優れるため、環境に対する安全性の向上、作業時の安全性の向上、廃液処理に伴う負荷の低減による経済性の向上にも繋がる。
そして、前述のとおり、前記本発明の一実施形態である脆性材料加工液組成物は、シリコンインゴット等の脆性材料の切断加工に用いるものとして好適に使用されるものであり、より好適には、固定砥粒ワイヤを用いて、シリコンインゴットからシリコンウェハを切り出す加工のクーラントとして使用されるものである。