IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社荏原製作所の特許一覧

<>
  • 特許-ポンプシステム 図1
  • 特許-ポンプシステム 図2
  • 特許-ポンプシステム 図3
  • 特許-ポンプシステム 図4
  • 特許-ポンプシステム 図5
  • 特許-ポンプシステム 図6
  • 特許-ポンプシステム 図7
  • 特許-ポンプシステム 図8
  • 特許-ポンプシステム 図9
  • 特許-ポンプシステム 図10
  • 特許-ポンプシステム 図11
  • 特許-ポンプシステム 図12
  • 特許-ポンプシステム 図13
  • 特許-ポンプシステム 図14
  • 特許-ポンプシステム 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】ポンプシステム
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/04 20060101AFI20220713BHJP
   F04D 29/00 20060101ALI20220713BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20220713BHJP
   F16C 41/00 20060101ALI20220713BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20220713BHJP
【FI】
F04D29/04 U
F04D29/00 B
F16C17/02 Z
F16C41/00
G01M99/00 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018199150
(22)【出願日】2018-10-23
(65)【公開番号】P2020067011
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】水嶋 祐基
(72)【発明者】
【氏名】石渡 隆行
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 裕輔
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-075625(JP,A)
【文献】特開昭61-132806(JP,A)
【文献】特開昭60-242346(JP,A)
【文献】特開2018-155157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/04
F04D 29/00
F16C 17/02
F16C 41/00
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽根車と、
前記羽根車が固定された回転軸と、
前記回転軸を回転自在に支持する滑り軸受と、
前記羽根車、前記回転軸、及び前記滑り軸受を収容するケーシングと
前記滑り軸受を軸方向で挟んで取り付けられ、前記滑り軸受と前記回転軸との隙間に点検光を投光する投光部、及び、前記隙間を通過した前記点検光を受光する受光部と、
前記受光部が受光した前記点検光に係る情報を、前記ケーシングの外部へ伝送する有線と
前記受光部が受光した前記点検光の光量に基づいて、前記滑り軸受と前記回転軸との摩耗の発生を判定する制御装置と、を備えるポンプシステムであって、
前記回転軸の径方向における変位を計測する変位センサを有し、
前記制御装置は、さらに、前記変位センサの計測結果に基づいて、前記摩耗が全周摩耗か部分摩耗なのかを判定する、ことを特徴とするポンプシステム。
【請求項2】
前記有線は、前記滑り軸受を支持する支持部材に沿って固定されている、ことを特徴とする請求項1に記載のポンプシステム。
【請求項3】
前記滑り軸受は、水中軸受である、ことを特徴とする請求項1または2に記載のポンプシステム。
【請求項4】
前記投光部は、前記点検光を発する複数の発光部を有し、
前記複数の発光部は、前記滑り軸受の軸心と同心円上に配置されている、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のポンプシステム。
【請求項5】
前記受光部は、前記点検光を受ける複数の検出部を有し、
前記複数の検出部は、前記滑り軸受の軸心と同心円上に配置されている、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のポンプシステム。
【請求項6】
前記投光部は、前記隙間に対し、軸方向と交差する方向に前記点検光を投光する、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のポンプシステム。
【請求項7】
前記回転軸の回転角度を計測する回転角度センサを有し、
前記制御装置は、さらに、前記回転角度センサの計測結果に基づいて、前記摩耗が前記回転軸で発生したのか前記滑り軸受で発生したのかを判定する、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のポンプシステム。
【請求項8】
羽根車と、
前記羽根車が固定された回転軸と、
前記回転軸を回転自在に支持する滑り軸受と、
前記羽根車、前記回転軸、及び前記滑り軸受を収容するケーシングと、
前記滑り軸受を軸方向で挟んで取り付けられ、前記滑り軸受と前記回転軸との隙間に点検光を投光する投光部、及び、前記隙間を通過した前記点検光を受光する受光部と、
前記受光部が受光した前記点検光に係る情報を、前記ケーシングの外部へ伝送する有線と、
前記受光部が受光した前記点検光の光量に基づいて、前記滑り軸受と前記回転軸との摩耗の発生を判定する制御装置と、を備えるポンプシステムであって、
前記回転軸の回転角度を計測する回転角度センサを有し、
前記制御装置は、さらに、前記回転角度センサの計測結果に基づいて、前記摩耗が前記回転軸で発生したのか前記滑り軸受で発生したのかを判定する、ことを特徴とするポンプシステム。
【請求項9】
前記投光部は、前記回転軸が回転しているときに、前記点検光を投光する、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のポンプシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からポンプ装置として、例えば、下記特許文献1に記載されているような立軸ポンプが知られている。この立軸ポンプは、大雨等に湛水防除の目的で稼働するポンプ機場に設置されている。ポンプ機場では、洪水時において確実な稼働が必要とされる。立軸ポンプは、羽根車や水中軸受(滑り軸受)が水中に浸漬された状態で運転され、使用時間の経過とともに徐々に腐食、摩耗する。このため点検作業を定期的に行い、水中軸受の摩耗状態を確認する必要がある。水中軸受の摩耗はポンプの異常振動に直結するため、水中軸受の点検は重要項目の1つである。
【0003】
下記特許文献1に記載の立軸ポンプは、回転軸に固定された羽根車と、前記回転軸を回転自在に支持する軸受と、前記羽根車を収容するポンプケーシングと、画像取得手段(ファイバースコープなど)を前記ポンプケーシング外部から前記ポンプケーシング内部の所定の点検箇所まで案内する導管と、液体を前記所定の点検箇所まで導く液体導入管とを備えたことを特徴としている。この立軸ポンプによれば、液体導入管から排出される透明な液体により、ポンプケーシングの内部の透明度が増すため、水中軸受の摩耗状態などを点検し易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-41503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来技術では、ポンプ停止中に、ファイバースコープを導管に挿入し、水中軸受を直接観察して、その摩耗状態を点検している。しかしながら、ファイバースコープには、点検箇所を照らす光源が設けられているが、この光源が照らせるのは一方向からのみであり、上記従来技術で点検できるのは水中軸受の局所的な部分に限られていた。そのため、水中軸受を全面的に観察して、どのような向きに、どのような特徴のある摩耗の仕方をしているのかを把握することは困難であった。
また、人が目視で観察するため定量的に計測ができなかった。
また、ポンプ運転中には、吐出圧側にある水中軸受の水圧が大気圧より高い圧力であり、ポンプ内から導管を伝って外部に揚水が噴出することを避けるため、導管を閉止する必要があるので、ファイバースコープを導管に挿入したまま水中軸受を運転時も継続して観察することはできなかった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ポンプ運転中停止中を問わず、継続的に滑り軸受を直接観察して、その摩耗状態を全体的、全周的且つ定量的に評価点検できるポンプシステムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の一態様に係るポンプ装置は、羽根車と、前記羽根車が固定された回転軸と、前記回転軸を回転自在に支持する滑り軸受と、前記羽根車、前記回転軸、及び前記滑り軸受を収容するケーシングと、を備えるポンプ装置であって、前記滑り軸受を軸方向で挟んで取り付けられ、前記滑り軸受と前記回転軸との隙間に点検光を投光する投光部、及び、前記隙間を通過した前記点検光を受光する受光部と、前記受光部が受光した前記点検光に係る情報を、前記ケーシングの外部へ伝送する有線と、を備える。
【0008】
(2)上記(1)に記載されたポンプ装置であって、前記有線は、前記滑り軸受を支持する支持部材に沿って固定されていてもよい。
(3)上記(2)に記載されたポンプ装置であって、前記滑り軸受は、水中軸受であってもよい。
(4)上記(1)~(3)に記載されたポンプ装置であって、前記投光部は、前記点検光を発する複数の発光部を有し、前記複数の発光部は、は、前記滑り軸受の軸心と同心円上に配置されていてもよい。
(5)上記(1)~(4)に記載されたポンプ装置であって、前記受光部は、前記点検光を受ける複数の検出部を有し、前記複数の検出部は、前記滑り軸受の軸心と同心円上に配置されていてもよい。
(6)上記(1)~(5)に記載されたポンプ装置であって、前記投光部は、前記隙間に対し、軸方向と交差する方向に前記点検光を投光してもよい。
【0009】
(7)本発明の一態様に係るポンプシステムは、上記(1)~(6)に記載されたポンプ装置と、前記受光部が受光した前記点検光の光量に基づいて、前記回転軸と前記滑り軸受との摩耗の発生を判定する制御装置と、を有する。
【0010】
(8)上記(7)に記載されたポンプシステムであって、前記回転軸の径方向における変位を計測する変位センサを有し、前記制御装置は、さらに、前記変位センサの計測結果に基づいて、前記摩耗が全周摩耗か部分摩耗なのかを判定してもよい。
(9)上記(7)または(8)に記載されたポンプシステムであって、前記回転軸の回転角度を計測する回転角度センサを有し、前記制御装置は、さらに、前記回転角度センサの計測結果に基づいて、前記摩耗が前記回転軸で発生したのか前記滑り軸受で発生したのかを判定してもよい。
(10)上記(7)~(9)に記載されたポンプシステムであって、前記投光部は、前記回転軸が回転しているときに、前記点検光を投光してもよい。
【0011】
(11)本発明の一態様に係るポンプ装置における滑り軸受の点検方法は、羽根車と、前記羽根車が固定された回転軸と、前記回転軸を回転自在に支持する滑り軸受と、を備えるポンプ装置における滑り軸受の点検方法であって、前記滑り軸受を軸方向で挟んだ一方側から、前記滑り軸受と前記回転軸との隙間に点検光を投光すると共に、前記滑り軸受を軸方向で挟んだ他方側において、前記隙間を通過した前記点検光を受光し、当該受光した前記点検光の光量に基づいて、前記回転軸と前記滑り軸受との摩耗の発生を判定する。
【発明の効果】
【0012】
上記本発明の態様によれば、ポンプ運転中停止中を問わず、継続的に滑り軸受を直接観察して、その摩耗状態を全体的、全周的且つ定量的に評価点検できる。すなわち、どのような向きに、どのような特徴のある摩耗の仕方をしているのかを把握することができるポンプシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係る立軸ポンプを含むポンプシステムの全体構成図である。
図2】一実施形態に係る中間軸受の構成図である。
図3図2に示す中間軸受の要部模式図である。
図4】一実施形態に係る投光部の(a)平面図、(b)矢視A-A断面図である。
図5】一実施形態に係る投光部及び受光部の構成模式図である。
図6】一実施形態に係る下部軸受の構成図である。
図7】一実施形態に係る変位センサの模式平面図である。
図8】一実施形態に係る点検光の光量に基づく、滑り軸受の摩耗量の算出方法を説明する説明図である。
図9】一実施形態に係る滑り軸受の摩耗状態を示すイメージ図である。
図10】一実施形態に係る回転軸と滑り軸受との(a)摩耗が発生していない状態、(b)摩耗が発生している状態を示すイメージ図である。
図11】一実施形態に係る滑り軸受に部分的に摩耗が生じた場合のイメージ図である。
図12】一実施形態に係る回転軸及び滑り軸受に摩耗が生じた場合のイメージ図である。
図13】一実施形態に係る制御装置による傾向管理手法の一例を示す図である。
図14】一実施形態に係る給水ポンプの全体構成図である。
図15】一実施形態の変形例に係る下部軸受の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態のポンプ装置、ポンプシステム及びポンプ装置における滑り軸受の点検方法について図面を参照して説明する。以下の説明では、本発明の適用例として、大雨等に湛水防除の目的で稼働するポンプ機場に設けられた立軸ポンプを例示する。
【0015】
図1は、一実施形態に係る立軸ポンプ1を含むポンプシステム1Aの全体構成図である。
立軸ポンプ1(ポンプ装置)は、羽根車2及び羽根車2が固定された回転軸3を含む回転部1Bと、回転部1Bのうち回転軸3を支持する滑り軸受4(軸受)及び滑り軸受4と回転部1Bを収容するポンプケーシング10(ケーシング)を含む静止部1Cと、を備える。なお、回転軸3は、鉛直方向に延び、その上端部はポンプケーシング10を貫通して上方に延びている。
【0016】
ポンプケーシング10は、インペラケーシング11と、吊下管12と、吐出曲管13と、を備える。インペラケーシング11は、吸込ベルマウス11a及びポンプボウル11bを組み合わせて形成されている。吊下管12は、インペラケーシング11の上端部に接続され、インペラケーシング11を吸込水槽14内に吊り下げている。吐出曲管13は、吊下管12の上端部に接続され、水平方向に延びる吐出配管15に連通している。
【0017】
吊下管12は、吸込水槽14の上部のポンプ据付床16に形成された挿通孔16aを通して下方に延び、吊下管12の上端部に設けられた据付用ベース17を介してポンプ据付床16に固定されている。吊下管12の下端部には、ポンプボウル11bが固定されている。ポンプボウル11bの内周面には、ガイドベーン18が設けられている。ガイドベーン18は、ボウルブッシュ19を支持している。
【0018】
ポンプボウル11bは、ポンプ外部と内部を仕切る外筒と、外筒より内側に内筒(ボウルブッシュ19)を備え、外筒と内筒の間には羽根車2の回転により生じた旋回流を軸方向に整流する案内羽根(ガイドベーン18)が設けられ、内筒の内部には、滑り軸受4が設けられている。以下、この滑り軸受4を、下部軸受41と称する。下部軸受41は、回転軸3を鉛直方向に延びる軸回りに回転自在に支持している。下部軸受41よりも下方に延びる回転軸3の下端部には、羽根車2が固定されている。羽根車2の周囲には、吸込ベルマウス11aが配置されている。吸込ベルマウス11aは、ポンプボウル11bの下端部に固定され、羽根車2よりも下方に延在している。
【0019】
回転軸3は、ボウルブッシュ19よりも上方の吊下管12内で、もう一つの滑り軸受4に支持されている。以下、この滑り軸受4を中間軸受42と称する。中間軸受42は、回転軸3を鉛直方向に延びる軸回りに回転自在に支持している。中間軸受42は、吊下管12の内周面から、吊下管12の中央に向かって径方向内側に向かって延びる複数の支持部材12aに支持されている。
【0020】
回転軸3は、吐出曲管13から上方に突出して、駆動源20に連結されている。駆動源20は、電動機やディーゼルエンジンなどである。駆動源20の駆動軸21は、軸連結部22を介して回転軸3と連結されている。駆動源20により回転軸3を介して羽根車2を回転させると、吸込水槽14内の水(取扱液)が吸込ベルマウス11aから吸い込まれ、羽根車2により加圧され、ポンプボウル11b、吊下管12、吐出曲管13を通って吐出配管15に移送される。すなわちポンプ運転時には、羽根車2の回転により水(取扱液)が加圧され、大気圧よりも高い圧力となっており、羽根車2により上方の位置にある下部軸受41や中間軸受42は、大気圧よりも高い圧力の雰囲気に置かれる。
【0021】
回転軸3は、吐出曲管13の外側において外軸受23によって支持されている。吐出曲管13の外面には、軸受ケーシング24が固定されており、外軸受23はこの軸受ケーシング24内に設けられている。軸受ケーシング24には、窓部24aが形成されている。立軸ポンプ1は、窓部24aを介して回転軸3の径方向における変位を計測する変位センサ25を有する。また、立軸ポンプ1は、軸連結部22における図示しないキーの回転角度を検出することで、回転軸3の回転角度を検出する回転角度センサ26を有する。
【0022】
図2は、一実施形態に係る中間軸受42の構成図である。なお、図2においては、中間軸受42の一部を部分的に拡大して示している。図3は、図2に示す中間軸受42の要部模式図である。
図2に示すように、回転軸3には、円筒状の軸スリーブ31が固定されている。中間軸受42は、軸スリーブ31の外周面と対向する円筒状の軸受本体42aと、軸受本体42aを支持する軸受ベース42bと、を備える。
【0023】
軸スリーブ31は、金属材料から形成されており、軸受本体42aは、摺動性の良い樹脂材料ないしセラミックス材料から形成されている。軸スリーブ31は、軸受本体42aにすべり接触し、軸受本体42aは、軸スリーブ31及び回転軸3を回転自在に支持するすべり軸受として機能する。特に本実施形態に係る立軸ポンプ1は、ドライ状態での起動、所定時間の運転、停止といった運転条件を想定しているため、軸受本体42aの材料は、ドライ状態でも過度に発熱して溶融することなく、また通常の揚水時にはすべり軸受として機能する樹脂材料が好ましい。
【0024】
軸受本体42aは、軸受本体42aを保持する軸受保持部材、及び、回転軸3から軸受本体42aが受ける衝撃を吸収する緩衝部材を介して軸受ベース42bに支持されている。軸受ベース42bは、上述した支持部材12aに支持されている。この軸受本体42aの内径は、軸スリーブ31の外径より僅かに大きく形成されている。このため、軸スリーブ31の外周面と軸受本体42aの内周面との間(回転部1Bと静止部1Cとが近接して対向する箇所:点検箇所)には、隙間Sが形成されている。ここでいう点検箇所となり得る隙間Sとは、例えば、回転部1Bと静止部1Cとの近接距離が0.01mmから2mmのものをいう。
【0025】
上記構成の中間軸受42には、投光部50及び受光部60が固定されている。投光部50及び受光部60は、中間軸受42を軸方向で挟んで、円筒状の軸受ベース42bの上下面にネジ止めなどで取り付けられている。投光部50は、図3に示すように、中間軸受42と回転軸3との隙間Sに点検光Lを投光するものであり、中間軸受42の下側に配置されている。受光部60は、図3に示すように、隙間Sを通過した点検光Lを受光するものであり、中間軸受42の上側に配置されている。なお、投光部50及び受光部60は、上下逆の配置にしてもよい。
【0026】
図4は、一実施形態に係る投光部50の(a)平面図、(b)矢視A-A断面図である。なお、受光部60も、図4に示す投光部50と同様の構成になっているため、図示は割愛する。図5は、一実施形態に係る投光部50及び受光部60の構成模式図である。
投光部50には、図5に示すように、複数の光ファイバー51(光ファイバーアレイ)の端部51bが接続されている。なお、図5に示す複数の光ファイバー51は、部分的に束ねられているが、束ねられていなくてもよい。
【0027】
複数の光ファイバー51の投光部50に接続されない別の端部51aは、LD(Laser Diode)やLED(Light Emitting Diode)などの光源53と接続されている。これにより、端部51aから光源53の点検光Lが導入され、端部51bから外部に点検光Lが発せられる。なお、投光部50と光源53との間には、光ファイバー51の中継コネクターや、光ファイバー51の中継ケーブルが介在していてもよい。
【0028】
投光部50は、図4(a)に示すように、周方向に間隔をあけて複数個所から点検光L(図3参照)を投光可能なリング状に形成されている。投光部50には、点検光Lを照射する複数の光ファイバー51の端部51b(発光部)が、リング部材52によって、中間軸受42の軸心と同心円上に配置されている。リング部材52は、投光部50の固定治具として用いられ、中間軸受42に固定されている。
【0029】
リング部材52は、一つの部品、あるいは複数の部品の組立てにより形成するとよい。このリング部材52の中に複数の光ファイバー51の一部を配置する手法としては、例えば、リング部材52が樹脂材料であれば埋設、あるいは、リング部材52が複数の部品であれば、それらにより挟持してもよい。
【0030】
リング部材52には、図4(b)に示すように、リング内側にテーパー面52aが形成されている。テーパー面52aには、複数の光ファイバー51の端部51bが露出している。このため、投光部50は、図3に示すように、隙間Sに向けて、軸方向と交差する方向(例えば斜め45度方向)に点検光Lを投光することができる。
【0031】
初期設定として、回転軸3と中間軸受42の間の隙間Sを軸方向に通る点検光Lの距離は、可能な限り等距離が良いので、複数の光ファイバー51の端部51bは中間軸受42の径と同等以上の円周上に、回転軸3に対し径方向に任意の間隔をもって配置されるのが好ましい。このようにすることで、端部51bと回転軸3との径方向における距離が均等に初期設定できる。
【0032】
また、中間軸受42の全周方向を均等に評価するため、複数の光ファイバー51の端部51bの周方向における間隔は均等であることが望ましい。このようにすることで、点検光Lが中間軸受42の全周のどの方向にも均等に投光されるように初期設定できる。
【0033】
一方、受光部60は、図3に示すように、投光部50と上下対称の角度で点検光Lを受光する。なお、受光部60の光ファイバー61(有線)及びリング部材62の構成は、投光部50の光ファイバー61及びリング部材62の構成と上下対称であり、物としては同じ物であってもよい。
【0034】
受光部60は、図5に示すように、複数の光ファイバー61(光ファイバーアレイ)の端部61bが接続されている。複数の光ファイバー61は、受光部60に接続された端部61bから隙間Sを通過した点検光Lを受光し、受光部60に接続されない別の端部61aがPD(Photodiode)やCCD(Charge Coupled Device)などの光電変換装置63と接続されている。受光部60は、投光部50と同じように、周方向に間隔をあけて複数個所から点検光Lを受光可能なリング状に形成されている。
【0035】
受光部60には、点検光Lを受ける複数の光ファイバー61の端部61b(検出部)が、中間軸受42の軸心と同心円上に配置されている。好ましくは、複数の光ファイバー61の端部61bは、中間軸受42の径と同等以上の円周上に且つ周方向の間隔は均等に配置され、中間軸受42に指定された座標位置と関連付けられているとよい。なお、投光部50における端部51b(光ファイバー51)の数、周方向の間隔、及び傾斜角度(投光角度)と、受光部60における端部61b(光ファイバー51)の数、周方向の間隔、及び傾斜角度(受光角度)は、一致していなくてもよい。
【0036】
光電変換装置63は、図1に示す制御装置70(後述)に接続されており、中間軸受42と関連付けられた座標位置ごとに各端部61bの点検光Lの光量、(より詳しくは照度(ルクス)を、あるいはそれらの総光量を計測し、その結果を制御装置70に出力する。
この構成によれば、中間軸受42と関連付けられた座標位置で受光した点検光Lの光量を測定することで、中間軸受42が全面的に観察して、どのような向きに、どのような特徴のある摩耗のしかたをしているのかを把握することが可能となる。
【0037】
なお、図2に示すように、投光部50及び受光部60に接続される光ファイバー51,61は、支持部材12aに沿って、または、支持部材12aの内部を通して固定するとよい。これにより、立軸ポンプ1が運転中でも、光ファイバー51,61が揚液の影響を受け難くなる。さらに、ポンプケーシング10(吊下管12)に、ポンプケーシング10の内部からポンプケーシング10の外部に光ファイバー51,61を中継する中継コネクター54,64を備えている。この中継コネクター54,64は、ポンプケーシング10内の水をポンプ外部に漏らさないように耐圧シール仕様である。
【0038】
この構成によれば、ポンプ運転中に、ポンプケーシング10内の吐出圧の揚水がポンプケーシング10外に漏洩することを防止する一方で、光ファイバー51,61により、中間軸受42の摩耗の状況を、ポンプ運転中停止中を問わず、継続的に中間軸受42の摩耗状態を全体的・全周的に直接観察して点検できる、すなわち、どのような向きに、どのような特徴のある摩耗の仕方をしているのかを把握することが可能となる。
【0039】
図6は、一実施形態に係る下部軸受41の構成図である。
図6に示すように、下部軸受41においても、上述した中間軸受42と同様に、投光部50及び受光部60が取り付けられている。すなわち、下部軸受41は、回転軸3に固定された軸スリーブの外周面と対向する軸受本体と、当該軸受本体を支持する軸受ベースと、を備え、当該軸受ベースの上下面に投光部50及び受光部60が取り付けられている。これら投光部50及び受光部60に接続される光ファイバー51,61は、ポンプケーシング10の外部の図示しないLDやLEDなどの光源53、および同じく図示しないPDやCCDなどの光電変換装置63と接続している。これら光ファイバー51,61は、ガイドベーン18に沿って、または、ガイドベーン18の内部を通して配設してもよい。
【0040】
さらに、ポンプケーシング10(ポンプボウル11bの外筒)に、ポンプケーシング10の内部からポンプケーシング10の外部に光ファイバー51,61を中継する中継コネクター54,64を備えている。この中継コネクター54,64は、ポンプケーシング10内の水をポンプ外部に漏らさないように耐圧シール仕様である。
【0041】
この構成によれば、ポンプ運転中に、ポンプケーシング10内の吐出圧の揚水がポンプケーシング10外に漏洩することを防止する一方で、光ファイバー51,61により、下部軸受41の摩耗の状況を、ポンプ運転中停止中を問わず、継続的に下部軸受41の摩耗状態を全体的・全周的に直接観察して点検できる、すなわち、どのような向きに、どのような特徴のある摩耗の仕方をしているのかを把握することが可能となる。
【0042】
図1に戻り、ポンプシステム1Aは、上述した立軸ポンプ1と、制御装置70と、を備える。制御装置70は、図示しないCPU等の演算部、RAM,ROM,ハードディスクドライブ(HDD),ソリッドステートドライブ(SSD)等の記憶部、上述した各構成機器とデータのやり取りする入出力インターフェース等が、図示しないバスで接続されたものである。入出力インターフェースには、上述した各構成機器以外にも、図示しないディスプレイ等の表示装置、マウス、キーボード等の入力装置が接続されている。
【0043】
記憶部には、演算部が読み出して実行するためのプログラムが格納されており、制御装置70はそのプログラムに従って、以下説明する回転軸3と滑り軸受4との摩耗の発生を判定することができるようになっている。具体的に、制御装置70は、受光部60が受光した点検光Lの光量に基づいて、回転軸3と滑り軸受4との摩耗の発生を判定する。本実施形態の制御装置70は、さらに、変位センサ25や回転角度センサ26の計測結果に基づいて、摩耗の状態を判定する。
【0044】
図7は、一実施形態に係る変位センサ25の模式平面図である。図8は、一実施形態に係る点検光Lの光量に基づく、滑り軸受4の摩耗量の算出方法を説明する説明図である。図9は、一実施形態に係る滑り軸受4の摩耗状態を示すイメージ図である。
図7に示すように、変位センサ25は、平面視において互いに直交するように2つ配置されている。すなわち、2つの変位センサ25のうちの一方は、回転軸3のX方向の変位を計測し、他方は回転軸3のY方向の変位を計測する。これら2つの変位センサ25は、例えば、非接触型の変位測定器である。
【0045】
変位センサ25は、制御装置70に接続されており、変位センサ25の計測結果(すなわち回転軸3の径方向の変位)は制御装置70に出力されるようになっている。制御装置70は、変位センサ25の測定結果に基づいて、回転軸3の径方向の変位を監視する。すなわち、立軸ポンプ1の運転中は、回転軸3が振れ回る場合があるため、この回転軸3の径方向の変位を、後述する図8に示す滑り軸受4の摩耗量(軸受隙間)に反映させることにより、摩耗状態をより正確に判定することができる。なお、回転軸3の径方向の変位は、X方向およびY方向の変位を合成することで得られるリサジュー図形としてパターン化し、記憶部に記憶するとよい。
【0046】
図8に示すように、回転軸3と滑り軸受4との隙間Sの大きさと、受光部60が受光する点検光Lの光量は、比例関数にある。すなわち、隙間Sが大きくなると、隙間Sを通過できる点検光Lが増える。制御装置70は、図8に示すデータを予め記憶しており、当該データと受光部60の計測結果を対比して、隙間Sの大きさを算出する。なお、図8に示すデータは、工場での試験記録、もしくは実機場で試運転したときの試運転記録などの実測データから作成するとよい。
【0047】
制御装置70は、受光部60が受光した点検光Lの光量(=隙間Sの大きさ)が、所定の閾値以上の場合、回転軸3と滑り軸受4との間に摩耗が発生したと判定する。さらに、制御装置70は、受光部60が受光した点検光Lの光量が、周方向全体に亘って当該閾値以上であった場合、回転軸3と滑り軸受4との間に全周摩耗が発生したと判定する。図9(a)は、滑り軸受4が全周摩耗した状態を示すイメージ図である。また、制御装置70は、受光部60が受光した点検光Lの光量が、周方向において部分的に当該閾値以上であった場合、回転軸3と滑り軸受4との間に部分摩耗が発生したと判定する。図9(b)は、滑り軸受4が部分摩耗した状態を示すイメージ図である。
【0048】
次に、上記のように構成された立軸ポンプ1における滑り軸受4の点検方法、具体的には、回転軸3と滑り軸受4との摩耗を判定する制御装置70の制御フローについて詳しく説明する。
【0049】
図9は、一実施形態に係る制御装置70による制御フローである。
制御装置70は、図3に示すように、滑り軸受4の軸方向一方側に配置された投光部50から隙間Sに向かって点検光Lを投光し、滑り軸受4の軸方向他方側に配置された受光部60によって隙間Sを通過した点検光Lを受光し、その受光量を検出する(ステップS1)。この受光量の検出は、回転軸3が回転しているときに行うとよい。すなわち、回転軸3の静止状態では、回転軸3が偏心して滑り軸受4に寄っているケースがあるためである。
【0050】
回転軸3が回転しているときには、揚液された液体が、回転軸3と滑り軸受4との隙間Sを満たした状態となる。そして、回転軸3と滑り軸受4との間には、全周に亘って環状の隙間Sが形成される。投光部50は、このように回転軸3が回転しているときに、当該隙間Sに点検光Lを投光する。点検光Lは、LD光やLED光であり、通常の照明光に比べて指向性に優れ、対象物を明確に照らせる利点がある。投光部50は、隙間Sに対し、軸方向と交差する方向に点検光Lを投光する。これにより、点検光Lが角度をもって投光され、回転軸3の外周面と滑り軸受4の内周面との間で反射するため、対象物の反射特性を反映させた受光量の検出が可能となる。
【0051】
次に、制御装置70は、受光部60が受光した点検光Lの光量が所定の閾値未満であるか否かを判定する(ステップS2)。ここで、図1に示す吸込水槽14は、建屋地下に位置しており、暗渠の空間である。また、ポンプケーシング10は、下部が水没していることから通常、その内部は真暗な空間を形成することになる。このため、ポンプケーシング10の内部は、点検光L以外の光が存在しない。そうすると、受光部60の受光量の増加は、回転軸3と滑り軸受4との隙間Sの増加以外にあり得ない。よって、受光部60の受光量の増加を判定することで、回転軸3と滑り軸受4との摩耗の発生を判定することが可能となる。また、点検光Lを用いた光信号は、温度や電気、磁気的な外乱に対し極めて安定であり、ケーブル長による減衰も無視できるため、再現性が非常に高いという利点がある。
【0052】
図10は、一実施形態に係る回転軸3と滑り軸受4との(a)摩耗が発生していない状態、(b)摩耗が発生している状態を示すイメージ図である。
制御装置70は、受光部60の受光量が閾値未満の場合(ステップS2が「YES」の場合)、回転軸3と滑り軸受4との間に摩耗が発生していない(図10(a)参照)と判定し、図示しないディスプレイなどへの警告表示をOFFにする(ステップS3)。一方、制御装置70は、受光部60の受光量が閾値以上の場合(ステップS2が「NO」の場合)、回転軸3と滑り軸受4との間に摩耗が発生している(図10(b)参照)と判定し、図示しないディスプレイなどへの警告表示をONにする(ステップS4)。
【0053】
ここで、本実施形態の投光部50は、図4(a)に示すように、隙間Sに対し、周方向に間隔をあけて複数個所から点検光Lを投光可能なリング状に形成され、受光部60もまた、隙間Sを通過した点検光Lを、周方向に間隔をあけて複数箇所で受光可能なリング状に形成されている。この構成によれば、隙間Sの全周に亘る受光量の分布を把握することができる。このため、図10(b)に示すように、滑り軸受4の一部に摩耗が発生していたとしても、その摩耗を検出することができる。
【0054】
次に、制御装置70は、キー位置または軸変位信号により回転軸3の位相を検出する(ステップS5)。キー位置は、図1に示す回転角度センサ26(ギャップセンサなど)によって検出する。また、軸変位は、同図に示す変位センサ25によって検出する。
そして、制御装置70は、キー位置または軸変位信号に基づいて、回転軸3と滑り軸受4との摩耗の状況を、図示しないディスプレイなどに出力する。
【0055】
図11は、一実施形態に係る滑り軸受4に部分的に摩耗Sが生じた場合のイメージ図である。
制御装置70は、変位センサ25の計測結果に基づいて、摩耗Sが全周摩耗か部分摩耗なのかを判定する。すなわち、変位センサ25によって回転軸3と滑り軸受4との相対位置を把握し、光量との関係を明らかにすることで部分的な摩耗なのか、全周的な摩耗なのかを評価することができる。例えば、隙間Sの周方向における光量の分布と、回転軸3の径方向における上述したリサジュー図形が略一致していれば、それは全周摩耗と判定することができる。また、隙間Sの周方向における光量の分布と、回転軸3の径方向におけるリサジュー図形が略一致していなければ、それは部分摩耗と判定することができる。
【0056】
図12は、一実施形態に係る回転軸3及び滑り軸受4に摩耗が生じた場合のイメージ図である。
制御装置70は、回転角度センサ26の計測結果に基づいて、摩耗Sないし摩耗Sが回転軸3で発生したのか滑り軸受4で発生したのかを判定する。すなわち、制御装置70は、軸連結部22のキー80を回転角度センサ26によって検出し、回転軸3の回転角度を把握し、回転軸3の回転角度の変化に伴い、隙間Sの周方向における光量の分布が変化したか否かで、摩耗が回転軸3で発生したのか滑り軸受4で発生したのかを評価する。
【0057】
例えば、図4(a)~図4(b)に示すように、回転軸3の回転角度が変化したときに、常に所定の閾値以上の光量が検出されている部分が移動しない場合、それは滑り軸受4の摩耗Sであると判定することができる。また、例えば、図4(a)~図4(b)に示すように、回転軸3の回転角度が変化したときに、所定の閾値以上の光量が検出されている部分が移動(変化)した場合、それは回転軸3の摩耗Sであると判定することができる。
以上のような判定を出力したら滑り軸受4の点検が終了する。なお、上記判定は、下部軸受41及び中間軸受42のそれぞれで行う。
【0058】
このように、上述した本実施形態によれば、羽根車2と、羽根車2が固定された回転軸3と、回転軸3を回転自在に支持する滑り軸受4と、を備える立軸ポンプ1であって、滑り軸受4を軸方向で挟んで取り付けられ、滑り軸受4と回転軸3との隙間Sに点検光Lを投光する投光部50、及び、隙間Sを通過した点検光Lを受光する受光部60と、受光部60が受光した点検光Lの光量に基づいて、回転軸3と滑り軸受4との摩耗の発生を判定する制御装置70と、を有する、という構成を採用することによって、滑り軸受4の摩耗状態を全体的且つ定量的に点検できる。また、投光部50及び受光部60は、滑り軸受4を軸方向で挟んで取り付けられているため、滑り軸受4との相対位置が変わらず、隙間Sの大きさを精度良く、高い再現性をもって計測することができる。
【0059】
また、光源53と光電変換装置63がポンプ外に配置でき、浸水やポンプの水流による破損を回避できる。また、ポンプ内に光源53が配置されるのに比べて、光源53の照度の調整が容易となるため、様々な水質や環境下で使用できる。
【0060】
また、図2に示すように、支持部材12aに沿って光ファイバー51,61を固定すれば、光ファイバー51,61によりポンプの水流に影響を与えないので、ポンプの揚水性能が低下することがない。また、支持部材12aの水流の当たる面の反対側に光ファイバー51,61を固定すれば、水流に混ざった砂礫等の異物の光ファイバー51,61への衝突を回避することができ、光ファイバー51,61が断線するというトラブルを回避できる。このため、ポンプ運転中停止中を問わず、継続的に立軸ポンプ1内の所定の点検個所である隙間Sを直接観察できる。
【0061】
さらに、立軸ポンプ1の運転中における定量的な滑り軸受4の点検が実現できるため、点検作業計画で時間保全を選択しなくても済む。加えて、立軸ポンプ1を引き上げることなく、且つ容易に滑り軸受4の摩耗状態を全体的に点検することが可能となる。
また、上記構成によれば、同一条件を再現し易いため、以下説明するような傾向管理も容易である。
【0062】
図13は、一実施形態に係る制御装置70による傾向管理手法の一例を示す図である。
制御装置70は、図13に示すように、定期的に滑り軸受4の点検を行い、受光部60の受光量の変化に基づいて滑り軸受4の傾向管理(例えば部品交換時期などの予測)をすることができる。具体的には、制御装置70は、定期的な点検(例えば1カ月ごとの点検)で計測される光量の変化を記憶部に蓄積し、現在の計測値と前回の計測値とを結ぶ直線と、前回の計測値と前々回の計測値とを結ぶ直線との角度の差θが、所定の角度以上であれば、異常の予兆(摩耗の発生の予兆)を検知したと判定する。異常の予兆を検知したら、図示しないディスプレイなどに、滑り軸受4の部品交換時期を表示するとよい。なお、この判定は、上述した摩耗の発生の有無を判定する閾値未満で行うとよい。すなわち、摩耗が発生していない基準光量に対し、例えば上下に閾値を設定し、その許容範囲内で行うとよい。
【0063】
以上、本発明の好ましい実施形態を記載し説明してきたが、これらは本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、およびその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではなく、特許請求の範囲によって制限されている。
【0064】
例えば、上記実施形態では、本発明を立軸ポンプ1に適用した場合を例示したが、本発明の適用は立軸ポンプ1に限られない。例えば、本発明は、図14に示す給水ポンプ100(横軸ポンプの一例)にも適用できる。
【0065】
図14は、一実施形態に係る給水ポンプ100の全体構成図である。
図14に示す給水ポンプ100(ポンプ装置)は、火力発電などで使用される超臨界圧向け二重胴バレル型の給水ポンプである。バレル型の外ケーシング101(ケーシング,静止部)の内部には、上下二つ割りの内ケーシング102(ケーシング,静止部)が収められ、外ケーシング101の端部は、カバー103(ケーシング,静止部)で覆われている。その内ケーシング102の内部には、ポンプ軸120(回転軸,回転部)に固定された複数の羽根車121(回転部)が収められている。このポンプ軸120の一端は、内ケーシング102に取付けられたブラケット122(ケーシング,静止部)に、ベアリング124(滑り軸受,静止部)を介して回転自在に支持され、メカニカルシール125により内ケーシング102との間がシールされている。
【0066】
また、ポンプ軸120の他端は、カバー103に取付けられたブラケット123(ケーシング,静止部)にベアリング124(滑り軸受)及びスラストベアリング126を介して回転自在に支持され、メカニカルシール125によりカバー103との間がシールされている。この給水ポンプ100においては、吸込口117Aから吸い込まれた液体は、内ケーシング102の内部で複数の羽根車121によって多段昇圧され、吐出口117Bから吐出されるようになっている。
上記構成の給水ポンプ100においても、ベアリング124を軸方向で挟んで投光部50及び受光部60を取り付けることにより、上記実施形態と同様にベアリング124における摩耗状態を全体的かつ定量的に点検することができる。すなわち、投光部50及び受光部60は、ブラケット122,123の内部に配置され、その内部は真暗な空間であるため、受光部60の受光量の増加は、ベアリング124における摩耗の増加以外にあり得ないからである。
【0067】
また、例えば、図5に示す光電変換装置63(PD/CCD)の前に、偏光板を設置し、隙間Sを通過した点検光Lの偏向成分を抽出してもよい。例えば、回転軸3と滑り軸受4との間で焼き付きなどが生じた場合、部材の表面が荒れたり、一方の部材の材料が他方の部材に付着することがあり、それらが点検光Lの偏向成分から検出できる場合がある。
【0068】
また、例えば、上述した受光部60の受光量に、水中軸受(滑り軸受4)以外の他の軸受(例えば外軸受23)の温度、振動値(軸受振動)もデータとして記憶してもよい。
さらに、当該記憶データにて閾値(異常値)が出た際に警報を発する装置を付加してもよい。
また、当該記憶データと共に回転軸3の主軸位置を把握することで摩耗位置を判定してもよい。
【0069】
また、図15に示す形態を採用してもよい。
図15は、一実施形態の変形例に係る下部軸受41の構成図である。
図15に示すように、下部軸受41においても、上述した中間軸受42と同様に、投光部50及び受光部60が取り付けられている。すなわち、下部軸受41は、回転軸3に固定された軸スリーブの外周面と対向する軸受本体と、当該軸受本体を支持する軸受ベースと、を備え、当該軸受ベースの上下面に投光部50及び受光部60が取り付けられている。
【0070】
ここで、LDやLEDなどの光源53及び光源53に電力を供給する電源90は、防水されてポンプボウル11bの内筒に固定されている。電源90と光源53は、電気ケーブル55により接続され、光源53と投光部50は、光ファイバー51により接続される。
なお、図15において、回転軸3よりも紙面左側において二点鎖線で示すように、電源90が投光部50に電気ケーブル55により直接接続されていてもよい。この場合、投光部50には、LDやLEDなどの複数の発光素子が組み込まれ、電源90は、これら発光素子を点灯させる電力を供給する。LDやLED(発光部)は通常の照明に比べて指向性に優れているので、観察対象の特定した範囲に照射できる。すなわち、無駄な光にエネルギーを割くことがない。また、これらは低電力で必要とする光量を発光するので、電源90のようなバッテリーにより長時間の使用が可能である。
【0071】
受光部60には、光検出器として防水されたフォトダイオードやフォトトランジスタなどが組み込まれている。フォトダイオードやフォトトランジスタ(検出部)などで、受光した光量に応じて変換生成される電流は、防水した電気ケーブル65によりポンプケーシング10の外部の図示しない増幅器などと接続させてもよい。なお、電気ケーブル65は、ガイドベーン18に沿って、または、ガイドベーン18の内部を通して配設してもよい。
なお、受光部60には、上述の実施形態で説明した光ファイバー61を接続して、ポンプケーシング10の外部の図示しないPDやCCDなどの光電変換装置63と接続させてもよい。
【0072】
ポンプケーシング10(ポンプボウル11bの外筒)には、ポンプケーシング10の内部からポンプケーシング10の外部に電気ケーブル65を中継する中継コネクター66が設けられている。この中継コネクター66は、ポンプケーシング10内の水をポンプ外部に漏らさないように耐圧シール仕様である。
【0073】
この構成によれば、ポンプケーシング10の内外に配線される有線(電気ケーブルや光ファイバー)を減らすことができるので、ポンプの揚水の流れの抵抗やポンプ効率低下に影響することが少なくなる。
そして、上述の実施形態と同様に、ポンプ運転中に、ポンプケーシング10内の吐出圧の揚水がポンプケーシング10外に漏洩することを防止する一方で、電源ケーブル65や光ファイバー61により、下部軸受41の摩耗の状況を、ポンプ運転中停止中を問わず、継続的に、下部軸受41の摩耗状態を全体的・全周的に直接観察して点検できる。すなわち、どのような向きに、どのような特徴のある摩耗の仕方をしているのかを把握することが可能となる。
【0074】
なお、図15に示す変形例では、LDやLEDなどの光源53に電流を供給する機器として電源90が用いたが、回転軸3に永久磁石を備え、ポンプボウル11bの外筒などの静止部側に永久磁石を囲繞するコイルを設けることで発電装置ができる。この発電装置により生成される電流を整流する整流器から、LDやLEDなどの光源53に整流された必要な電流を供給することは可能である。勿論、この場合も発電装置や整流器等には必要な防水措置が為され、整流器はポンプボウル11bの外筒などの静止部側に設けられる。
【符号の説明】
【0075】
1 立軸ポンプ(ポンプ装置)
1A ポンプシステム
1B 回転部
1C 静止部
2 羽根車
3 回転軸
4 滑り軸受(水中軸受)
10 ポンプケーシング(ケーシング)
25 変位センサ
26 回転角度センサ
31 軸スリーブ
41 下部軸受
42 中間軸受
42a 軸受本体
42b 軸受ベース
50 投光部
51 光ファイバー
51b 端部(発光部)
52 リング部材
52a テーパー面
53 光源
54 中継コネクター
60 受光部
61 光ファイバー(有線)
61b 端部(検出部)
62 リング部材
63 光電変換装置
64 中継コネクター
70 制御装置
80 キー
100 給水ポンプ(ポンプ装置)
122 ブラケット(ケーシング)
123 ブラケット(ケーシング)
124 ベアリング(滑り軸受,静止部)
L 点検光
S 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15