(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】フェノール製造工程における副産物の分解方法
(51)【国際特許分類】
C07C 37/74 20060101AFI20220713BHJP
C07C 39/04 20060101ALI20220713BHJP
C07C 45/82 20060101ALI20220713BHJP
C07C 49/78 20060101ALI20220713BHJP
C07C 7/04 20060101ALI20220713BHJP
B01D 3/14 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
C07C37/74
C07C39/04
C07C45/82
C07C49/78
C07C7/04
B01D3/14 A
(21)【出願番号】P 2019536539
(86)(22)【出願日】2018-08-17
(86)【国際出願番号】 KR2018009459
(87)【国際公開番号】W WO2019098501
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-08-25
(31)【優先権主張番号】10-2017-0154969
(32)【優先日】2017-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】カン、ミンソク
(72)【発明者】
【氏名】イ、サン-ポム
(72)【発明者】
【氏名】イ、ソン-ホ
(72)【発明者】
【氏名】シン、チュン-ホ
(72)【発明者】
【氏名】パク、チョル-ハン
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-123434(JP,A)
【文献】特公昭52-035656(JP,B2)
【文献】欧州特許出願公開第00168358(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール製造工程で生成されるフェノール副産物を分解する方法であって、
前記フェノール副産物を反応蒸留塔に供給して分解反応を実施するステップと、
前記反応蒸留塔の下部からタールを回収するステップと、
反応蒸留塔の側面の中間部からアセトフェノンを回収するステップと、
反応蒸留塔の上部から有効成分を回収するステップと、
前記回収されたアセトフェノンを前記タールと混合するステップとを含
み、
前記アセトフェノンを回収する反応蒸留塔の側面の中間部は、反応蒸留塔において総段数の50~90%の位置に具備されており、
前記フェノール副産物に含まれたアセトフェノンのうち99重量%以上が分離されている、フェノール副産物の分解方法。
【請求項2】
前記反応蒸留塔は50kPa~300kPa(0.5~3bar)で運転されるものである、請求項1に記載のフェノール副産物の分解方法。
【請求項3】
前記タール及びアセトフェノンの混合ストリームと前記反応蒸留塔に供給されるフェノール副産物を熱交換してフェノール副産物を加熱するステップをさらに含む、請求項1
又は2に記載のフェノール副産物の分解方法。
【請求項4】
前記有効成分はフェノール、α-メチルスチレン及びクメンを含むものである、請求項1~
3のいずれかに記載のフェノール副産物の分解方法。
【請求項5】
フェノール製造工程の副産物を反応蒸留塔に供給するためのフェノール副産物供給部と、
前記反応蒸留塔の下部に具備されたタール回収部と、
前記タール回収部から回収されたタールを移送するタール移送ラインと、
前記反応蒸留塔の側面の中間部に具備されたアセトフェノン回収ラインと、
前記アセトフェノン回収ラインから回収されたアセトフェノンを前記回収されたタールと混合するために前記タール移送ラインと連結されたアセトフェノン移送ラインと、
前記反応蒸留塔の上部に具備された有効成分回収部と、を含
み、
前記アセトフェノン回収ラインは反応蒸留塔において総段数の50~90%の位置に具備されており、
前記フェノール副産物に含まれたアセトフェノンのうち99重量%以上を分離する、フェノール副産物の分解装置。
【請求項6】
前記回収されたタール及びアセトフェノンの混合ストリームと前記フェノール副産物との間の熱交換のための熱交換器をさらに具備する、請求項
5に記載のフェノール副産物の分解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年11月20日付の韓国特許出願第10-2017-0154969号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、フェノール製造工程時に発生する副産物の分解方法に関し、詳細にはフェノール製造工程において、工程上の熱効率及び有効成分の回収率が向上した副産物の分解方法に関する。
【背景技術】
【0003】
全世界で使用されるフェノールの約95%は、一般的に3ステップHock工程により生産される。3ステップHock工程は、(1)ベンゼンをプロピレンでアルキル化してクメンを形成するステップ、(2)クメンを酸素と結合させてクメンヒドロペルオキシド(CHP)に酸化させるステップ、(3)CHPを硫酸触媒の下でフェノールとアセトンに分解させるステップで構成される。クメンの酸化ステップでは、CHPの他にアセトフェノン(AP)、ジメチルベンジルアルコール(DMBA)、ジクミルペルオキシド(DCP)、ジクミル(DC)などの副産物が生成され、CHP分解ステップでは、ヒドロキシアセトン(HA)、2-メチルベンゾフラン(2MBF)、α-メチルスチレン(AMS)、メシチルオキシド(MO)、α-メチルスチレンダイマー(AMS dimmer)、クミルフェノール(CP)などが副産物として生成される。
【0004】
前記反応工程を通じて生成されたフェノールとアセトン及び多様な副産物が混合されたストリームのうち未反応クメン、アセトン、AMS、HAなどはアセトンカラムで塔上に分離され、フェノールと一部のAMS、2MBF、その他の不純物などは塔底に分離される。塔底に分離されたフェノール混合物はフェノールカラムに投入されて、DCP、CP、AMSダイマー、タール(tars)のような不純物が塔底に分離除去される。
【0005】
前記不純物のうちタールの回収ステップにおいて、不純物に含まれた有用な生成物の収率及び純度を増加させるための多くの研究が進められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、フェノール製造工程の副産物に含まれた有効成分の回収率を向上させると共に、副産物の分解反応に必要なエネルギを低下させることができるフェノール製造工程における副産物の分解方法を提供しようとすることである。
【0007】
本発明が解決しようとする他の課題は、フェノール製造工程の副産物を効果的に分解させることができる副産物の分解装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題を解決するために、
フェノール製造工程で生成されるフェノール副産物の分解工程において、
フェノール副産物を反応蒸留塔に供給して分解反応を実施するステップと、
前記反応蒸留塔の下部からタールを回収するステップと、
前記反応蒸留塔の側面の中間部からアセトフェノンを回収するステップと、
前記反応蒸留塔の上部から有効成分を回収するステップと、を含むフェノール副産物の分解方法を提供する。
【0009】
一実施例によれば、前記反応蒸留塔は50kPa~300kPa(0.5~3bar)の条件で運転されるものであってもよい。
【0010】
一実施例によれば、前記回収されたアセトフェノンを前記タールと混合するステップをさらに含むことができる。
【0011】
一実施例によれば、前記タール及び前記アセトフェノンの混合ストリームと前記蒸留塔に供給されるフェノール副産物を熱交換してフェノール副産物を加熱するステップをさらに含むことができる。
【0012】
一実施例によれば、前記有効成分はフェノール、α-メチルスチレン及びクメンを含むものであってもよい。
【0013】
一実施例によれば、前記反応蒸留塔の側面の中間部から分離されるアセトフェノンは、前記フェノール副産物に含まれたアセトフェノンのうち90重量%以上であり、前記反応蒸留塔の上部から回収された有効成分に含まれたアセトフェノンの含量が前記回収された全有効成分の含量のうち1重量%以下であってもよい。
【0014】
ここで百分率は、特に断らない限り重量%を意味するものとする。
【0015】
本発明の他の課題を解決するために、
フェノール製造工程の副産物を反応蒸留塔に供給するためのフェノール副産物供給部と、
前記反応蒸留塔の下部に具備されたタール回収部と、
前記タール回収部から回収されたタールを移送するタール移送ラインと、
前記反応蒸留塔の側面の中間部に具備されたアセトフェノン回収部と、
前記アセトフェノン回収部から回収されたアセトフェノンを前記回収されたタールと混合するために前記タール移送ラインと連結されたアセトフェノン移送ラインと、
前記反応蒸留塔の上部に具備された有効成分回収部と、を含むフェノール副産物の分解装置を提供する。
【0016】
一具現例によれば、前記アセトフェノン回収ラインは、反応蒸留塔において総段数の25~90%の位置に具備されることができる。
【0017】
一具現例によれば、前記分解装置は、前記回収されたタール及びアセトフェノンの混合ストリームと前記フェノール副産物との間の熱交換のための熱交換器をさらに具備することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、反応器と蒸留塔が一体となったタイプの分解装置(反応蒸留塔)を用いたフェノール副産物の分解工程において、フェノール副産物に含まれたアセトフェノンを常圧で分離して反応蒸留塔の低部へ回収されるタールと共に混合して移送させることにより、タールの粘度を低下させて常温でタールの移送を可能とするだけでなく、常圧でアセトフェノンを分離することにより、加圧工程に比べて蒸留塔の運転エネルギを下げることができる。また、蒸留塔において総段数の25~90%の位置にアセトフェノン回収部を別途に具備して効果的にアセトフェノンを有効成分と分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】反応器と蒸留塔が分離された形態の従来のフェノール副産物の分解装置(比較例1)を簡略に示した図である。
【
図2】反応器と蒸留塔が一体化した形態の従来のフェノール副産物の分解装置(比較例2)を簡略に示した図である。
【
図3】本発明の一実施例による反応蒸留塔の形態(実施例1)を簡略に示した図である。
【
図4】本発明の他の実施例による熱交換器を含む反応蒸留塔の形態(実施例2)を簡略に示した図である。
【
図5】反応器と蒸留塔が一体化した形態の従来のフェノール副産物の分解装置において、有効成分のみをカラムの側面から分離する形態(比較例3)を簡略に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は多様な変換を加えることができ、様々な実施例を有することができるところ、特定の実施例を図面に例示し、詳細な説明において詳細に説明しようとする。しかしながら、これは、本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変換、均等物ないし代替物を含むものとして理解されるべきである。本発明の説明において、関連した公知技術に対する具体的な説明が、本発明の要旨を不明にすると判断される場合には、その詳細な説明を省略する。
【0021】
一般的にフェノール副産物の分解は、フェノール副産物を反応器及び蒸留塔に投入して有効成分(Alpha methyl styrene、Phenol、Cumeneなど)、アセトフェノン(AP)及びタールに分離して回収される。
【0022】
例えば、
図1に示されたように、反応器と蒸留塔が分離されたタイプでは、反応器において1次的に反応器の底部へタールが回収され、有効成分及びAP(アセトフェノン)を含む成分は反応器の上部へ回収された後、蒸留塔を経て有効成分とAPに分離される。
【0023】
または、
図2のように反応器と蒸留塔が一体となったタイプの反応蒸留塔の場合には、反応蒸留塔の底部からタールが回収され、反応蒸留塔の内部に圧力を加えてAPの沸点を高めた後、有効成分とAPを分離して回収する方法を使用してきた。しかしながら、前記のように加圧してAPを分離する場合、有効成分に含まれたAMS(Alpha methyl styrene)のdimerization及びpolymerizationが発生する可能性が増加することができ、生成されたdimerization及びpolymerizationされたAMS(Alpha methyl styrene)は沸点が高く、タールに含まれて排出され得る。
【0024】
このような従来の問題を解決するために本発明は、
フェノール製造工程で生成されるフェノール副産物の分解工程において、
フェノール副産物を反応蒸留塔に供給して分解反応を実施するステップと、
前記反応蒸留塔の下部からタールを回収するステップと、
前記反応蒸留塔の側面の中間部からアセトフェノンを回収するステップと、
前記反応蒸留塔の上部から有効成分を回収するステップと、を含むフェノール副産物の分解方法を提供する。
【0025】
好ましい実施例によれば、前記回収されたアセトフェノンを前記タールと混合するステップをさらに含むことができる。
【0026】
ここで、前記「反応蒸留塔」は、反応器と蒸留器が一体化した形態の蒸留塔を意味する。また「フェノール副産物」は、フェノール製造工程で生成される副産物を指す。
【0027】
本発明において、前記タールは反応後、有効成分の回収部から分離される成分を除いたその他の副産物をさらに含むものであってもよく、前記上部から回収される有効成分は、フェノール副産物が分解されながら得られる生成物のうちフェノール、AMS及びクメンを含むものであってもよい。
【0028】
反応器-蒸留塔の一体型分離装置を用いてアセトフェノンを有効成分から分離させるためには二つの方法が使用され得るが、第一は、加圧によってアセトフェノンの沸点を高めて特定の温度で凝縮させることにより、アセトフェノンをタールと共に下部へ排出させる方法がある(
図2)。加圧すると、アセトフェノンの沸点が高くなり、アセトフェノンの分離ラインが別途に必要ではなく、タールと共に分離され得るというメリットがあるが、カラム内部の運転温度が高くなるため、Heat dutyが多く消耗され、AMSのdimerizationの可能性が相対的に大きくなる恐れがあり、フェノールの場合、アセトフェノンと共沸(azeotrope)を形成するため、アセトフェノンの分離時、フェノールの損失が多く発生して有効成分の回収率が低くなる。
【0029】
一方、本発明は、反応器-蒸留塔の一体型分離装置でアセトフェノンを分離する方法において、分離型のように常圧の条件で分離されることにより、前記のような加圧方式における問題を解決することができる。本発明は、アセトフェノンの分離ラインを反応蒸留塔の中間部位置の側面に別途に具備して、アセトフェノンを常圧の条件で効果的に有効成分との分離が可能とした。
【0030】
一実施例によれば、前記反応蒸留塔は50kPa~300kPa(0.5~3bar)で運転されることができ、好ましくは50kPa~200kPa(0.5~2bar)、より好ましくは50kPa~150kPa(0.5~1.5bar)、最も好ましくは常圧で運転されることができる。これにより、加圧運転に比べて反応蒸留塔の運転温度が低くなるため、AMS(Alpha methyl styrene)のdimerization及びpolymerizationが抑制されることができる。
【0031】
また、前記運転温度が低くなることにより、前記有効成分とアセトフェノンの分離工程に必要なヒータの熱負荷(Heat duty)が既存の方法に比べて著しく減少することができる。
【0032】
本発明は、前記フェノール副産物の分解工程をより効率よく行うために、
図3に示されたような分解装置を提供する。具体的に、
フェノール製造工程の副産物を反応蒸留塔に供給するためのフェノール副産物供給部と、
前記反応蒸留塔の下部に具備されたタール回収部と、
前記タール回収部から回収されたタールを移送するタール移送ラインと、
前記反応蒸留塔
の側面
の中間部に具備されたアセトフェノン回収ラインと、
前記アセトフェノン回収ラインから回収されたアセトフェノンを前記回収されたタールと混合するために前記タール移送ラインと連結されたアセトフェノン移送ラインと、
前記反応蒸留塔の上部に具備された有効成分回収部と、を含むフェノール副産物の分解装置を提供する。
【0033】
この時、前記アセトフェノン回収ラインは、反応蒸留塔において総段数の25~90%、好ましくは45~90%、より好ましくは50~90%の位置に具備されることが好ましい。ここで、総段数は反応蒸留塔の頂上からの位置を意味する。
【0034】
本発明はまた、分解工程時に必要な熱エネルギをより効率よく使用するために、前記タール及びアセトフェノンの混合ストリームを前記蒸留塔に供給されるフェノール副産物を熱交換してフェノール副産物が蒸留塔に供給される前に予熱するステップを含むことができる。
【0035】
例えば、前記分解装置は
図4に示されたように、フェノール副産物供給部と前記回収されたタール及びアセトフェノン移送ラインとの間に熱交換器をさらに具備することにより、タール及びアセトフェノンの混合物とフェノール副産物との間に熱交換が生じるようにすることができる。
【0036】
アセトフェノンと混合されたタールは常温でも移送可能であるため、反応器の底部へ回収されるタールから供給される熱エネルギは、反応蒸留塔に供給されるフェノール副産物と熱交換により伝達されることができ、これにより反応のためのヒータの運転コストが著しく節減されることができる。
【0037】
一実施例によれば、前記反応蒸留塔の側面の中間(総段数の25~90%)から分離されるアセトフェノンは、前記フェノール副産物に含まれたアセトフェノンのうち90重量%以上が分離されることができ、前記分離されたアセトフェノンをタールと混合させる場合、タールの粘度が著しく低くなることにより、常温で移送及び貯蔵が可能である。
【0038】
従来のフェノール副産物の分離工程において、前記反応器の下部へ分離されたタールの場合、温度が低くなると、粘度が著しく高くなって円滑な移送及び貯蔵が難しいという問題があった。
【0039】
一般的に、移送パイプ内の流動可能な流体の粘性度は80℃で約60Pa.sであってもよく、常温でのタールの粘性は約1000Pa.s水準であってもよい。したがって、一般的な工程で使用される移送パイプを用いてタールを移送するためには、タールの粘度を60Pa.s以下に下げなければならない。一般にタールを移送するためには、温度を高めるか、又は特定の物質との混合が必要である。
【0040】
本発明は、フェノール副産物内に存在しているアセトフェノンをタールと混合してタールの粘度を下げることができるということを利用して、常温でのタールの移送及び貯蔵問題を解決するために、前記反応器から分離されたアセトフェノンをタールと共に混合してタールの粘度を著しく下げることにより、常温の条件でもタールの移送及び貯蔵を円滑にすることができ、工程上において必要なエネルギを減少させることができる。
【0041】
本発明は、前記有効成分とアセトフェノンの分離において、有効成分に含まれたフェノールの場合、アセトフェノンと共沸(azeotrope)を形成するという特徴により、前記有効成分からアセトフェノンを100重量%分離することは難しいため、少量のアセトフェノンは有効成分回収部に含まれることができるが、反応器と蒸留塔が一体化したタイプの反応蒸留塔を用いたフェノール副産物の分解工程において、アセトフェノンを反応蒸留塔の側面の中間部から分離して、蒸留塔の底部から回収されるタールと共に混合して移送させることにより、タールの粘度を著しく低下させることにより、常温移送が可能である。また、常圧でアセトフェノンを分離することができ、加圧条件でアセトフェノンを回収する既存の方法に比べて有効成分の回収率を著しく向上させることができ、反応蒸留塔の運転温度が低く、工程に必要なエネルギも著しく節減することができる。
【0042】
一実施例によれば、前記タールとアセトフェノンの混合ストリームは25℃以上の温度で移送に円滑な粘度を保持することができ、温度が増加するにつれて、その粘度が次第に減少することができる。
【0043】
前記タールとアセトフェノンの混合ストリームの粘度は25℃で30Pa.s以下であってもよく、好ましくは20Pa.s以下であってもよく、より好ましくは10Pa.s以下であってもよく、タールとアセトフェノンの混合比率及び運転温度に応じて1Pa.s以下、または0.5Pa.s以下であってもよく、0.3Pa.s以下まで著しく粘度が低下することができる。したがって、本発明は、タールとアセトフェノンを混合して移送させることにより、温度を高くせずにタールを常温の温度条件でも円滑に移送させることができる。また、前記粘度は、温度が上昇するにつれて粘度が10倍以上減少することができる。
【0044】
また、前記タールとアセトフェノンの混合比率は任意に選定することができ、フェノール副産物の組成(既存のフェノール副産物内のAP含有量)または蒸留塔において有効成分からのAP分離の程度に応じて異なることができ、例えば、10:1~1:10の重量比で混合されることができ、アセトフェノンの混合比が増加するにつれて混合ストリームの粘度が減少することができ、常温での十分な流動性を示すために、タールとアセトフェノンの混合比率は重量比で1:0.3以上、または1:0.4以上であってもよく、1:0.9以下、または1:0.8以下の比率で混合されることが好ましい。
【0045】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な異なる形態で具現されることができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0046】
<比較例1>
熱分解のための反応器と蒸留塔が分離された形態の分解装置(
図1参照)を用いてフェノール副産物を分解した。
【0047】
<比較例2>
反応器と蒸留塔が一体となった形態の分解装置(
図2参照)を用いてフェノール副産物を分解した。
【0048】
<実施例1>
反応器と蒸留塔が一体となった形態の反応蒸留塔であって、反応蒸留塔の下部のタール移送ラインと連結されたアセトフェノン回収ラインを反応蒸留塔の側面の中間部(総段数の50%)に具備した形態(
図3参照)の分解装置を用いてフェノール副産物を分解した。
【0049】
<実施例2>
実施例1のように、反応器と蒸留塔が一体となった形態の反応蒸留塔であって、反応蒸留塔の下部のタール移送ラインと連結され、反応蒸留塔の側面の中間部(総段数の50%)に位置したアセトフェノン回収ラインを具備し、アセトフェノン-タールの混合物移送ラインとフェノール副産物の供給ラインとの間に熱交換器が具備された形態の分解装置(
図4参照)を用いてフェノール副産物を分解した。
【0050】
<比較例3>
反応器と蒸留塔が一体となった形態の反応蒸留塔であって、反応蒸留塔の下部のタール移送ラインと連結されたアセトフェノン回収ラインを反応蒸留塔の側面の中間部(総段数の50%)に具備し、有効成分を反応蒸留塔の側面(総段数の20%)から別途に分離する形態(
図5参照)でフェノール副産物を分解した。
【0051】
前記比較例1~3及び実施例1、2の分解装置から分離回収された有効成分の構成及び回収率と、分解工程に適用された圧力条件及び運転エネルギを下記の表1に示した。
【0052】
【0053】
実施例1、2及び比較例1~3の分解装置において、フェノール副産物を熱分解して約20重量%のタールが生成された。
【0054】
前記表1に示したように、実施例1、2及び比較例1~3の分解方法においてアセトフェノンは、前記フェノール副産物に含まれたアセトフェノンのうち約99重量%以上が分離されており、実施例1及び2のように前記アセトフェノンがタールと混合される場合、粘性度が大幅に低下して常温の運転条件でも移送及び貯蔵問題を解決することができる。
【0055】
また、実施例1、2及び比較例1~3の何れもフェノール副産物内のアセトフェノンが約99重量%以上分離された条件であるにもかかわらず、実施例1、2から有効成分の回収率がさらに高くなっていることが分かり、これは前記アセトフェノン回収ラインが反応蒸留塔において総段数の25~90%の位置に具備されることにより、効果的にアセトフェノンを分離することができ、またアセトフェノンが低い温度で分離されることによって蒸留塔の運転温度が低くなり、AMSのdimerization及びpolymerizationの発生が抑制されるからであると考えられる。
【0056】
また、比較例1の場合、反応器と蒸留塔の分離設置による空間問題の発生及びHeaterの追加によるHeat dutyが最も高く測定されており、比較例2の場合、加圧条件による反応器の運転温度の向上によりHeat dutyが高く測定される。
【0057】
一方、実施例2は、フェノール副産物とタール移送ラインとの間に熱交換器をさらに具備することにより、Heat dutyが最も少なくなっており、このような結果から、ヒータの運用コストをより節減可能な分解装置を提供することができる。
【0058】
他方、比較例3の場合には、有効成分のみを反応蒸留塔の側面から分離する場合、Heat duty面では有利であるが、有効成分の回収率が低下することを確認した。
【0059】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳細に述べたところ、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者にとって、かかる具体的記述は単なる好ましい実施形態に過ぎず、これにより、本発明の範囲が制限されるものではないことは明らかである。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とそれらの等価物により定義されると言える。