(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】フェノール系副産物の分解方法およびその分解装置
(51)【国際特許分類】
C07C 37/74 20060101AFI20220713BHJP
C07C 39/16 20060101ALI20220713BHJP
C07C 45/82 20060101ALI20220713BHJP
C07C 49/78 20060101ALI20220713BHJP
C07C 7/04 20060101ALI20220713BHJP
B01D 3/14 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
C07C37/74
C07C39/16
C07C45/82
C07C49/78
C07C7/04
B01D3/14 A
(21)【出願番号】P 2020544664
(86)(22)【出願日】2019-10-15
(86)【国際出願番号】 KR2019013517
(87)【国際公開番号】W WO2020130314
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2020-08-24
(31)【優先権主張番号】10-2018-0166578
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】カン、ミン-ソク
(72)【発明者】
【氏名】イ、サン-ポム
(72)【発明者】
【氏名】シン、チュン-ホ
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-123434(JP,A)
【文献】国際公開第2017/111357(WO,A1)
【文献】特公昭52-035656(JP,B2)
【文献】欧州特許出願公開第00168358(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスフェノールAの製造工程で生成されるフェノール系副産物の分解方法であって、
前記フェノール系副産物を反応性多段蒸留カラムに供給するステップ(S10)と、
前記反応性多段蒸留カラムを介して前記フェノール系副産物を、有効成分が含まれた上部排出ストリームと、アセトフェノンが含まれた側面排出ストリームと、タールが含まれた下部排出ストリームとに分離するステップ(S20)と、
前記反応性多段蒸留カラムから排出される側面排出ストリームと、前記反応性多段蒸留カラムから排出される下部排出ストリームとを混合し、混合排出ストリームを形成するステップ(S30)とを
含み、
前記側面排出ストリームは、前記反応性多段蒸留カラムの総段数のうち上位50%~90%の範囲内の段数に備えられた側面排出口を介して排出され、
前記側面排出ストリームは、前記フェノール系副産物に含まれたアセトフェノンを99重量%以上含む、フェノール系副産物の分解方法。
【請求項2】
前記フェノール系副産物は、熱交換器を介して前記混合排出ストリームと熱交換され、前記反応性多段蒸留カラムに供給される、請求項1に記載のフェノール系副産物の分解方法。
【請求項3】
前記混合排出ストリームの粘度は、前記下部排出ストリームの粘度よりも低い、請求項1
または2に記載のフェノール系副産物の分解方法。
【請求項4】
前記反応性多段蒸留カラムの運転圧力は、10kPa(0.1bar)~300kPa(3.0bar)である、請求項1~
3のいずれかに記載のフェノール系副産物の分解方法。
【請求項5】
ビスフェノールAの製造工程で生成されるフェノール系副産物の分解装置であって、
前記フェノール系副産物を、有効成分が含まれた上部排出ストリームと、アセトフェノンが含まれた側面排出ストリームと、タールが含まれた下部排出ストリームとに分離する反応性多段蒸留カラムと、
前記側面排出ストリームが排出され移動する側面排出ストリーム移動ラインおよび前記下部排出ストリームが排出され移動する下部排出ストリーム移動ラインを含む移動ラインシステムとを含み、
前記側面排出ストリームと前記下部排出ストリームが交流して混合排出ストリームが形成されるように、前記側面排出ストリーム移動ラインと前記下部排出ストリーム移動ラインが連結されて
おり、
前記側面排出ストリームが排出される側面排出口が、前記反応性多段蒸留カラムの総段数のうち上位50%~90%の範囲内の段数に備えられており、
前記側面排出ストリームは、前記フェノール系副産物に含まれたアセトフェノンを99重量%以上含む、フェノール系副産物の分解装置。
【請求項6】
前記上部排出ストリームが排出される上部排出口が、前記反応性多段蒸留カラムの上端に備えられている、請求項
5に記載のフェノール系副産物の分解装置。
【請求項7】
前記フェノール系副産物と前記混合排出ストリームを熱交換させる熱交換器をさらに含む、請求項
5または6に記載のフェノール系副産物の分解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年12月20日付けの韓国特許出願第10‐2018‐0166578号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、ビスフェノールAの製造工程で生成されるビスフェノール系副産物を分解する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
ビスフェノールA(bisphenol A)は、酸触媒の存在下で、フェノールとアセトンを縮合反応させた後、分離および精製する工程を経て製造される。かかるビスフェノールAの製造工程では、フェノール系副産物が生成され、この際、前記フェノール系副産物には、フェノール(phenol)、クメン(cumene)、α‐メチルスチレン(alpha‐methylstyrene)などの有効成分が含まれており、これを回収するためのフェノール系副産物の分解工程が実施されている。前記分解工程は、反応器と蒸留塔が分離されているか一体化した分解装置を用いて行われているが、これについて図面を参照して説明すると、以下のとおりである。
【0004】
図3は、反応器100と蒸留塔200が分離された分解装置を介して分解工程が行われることを図示しており、反応器100に投入された副産物は、熱分解され、副産物に含まれたタール(tar)が反応器100の下部に排出され、残りの成分は、反応器100の上部に排出されて、蒸留塔200に投入される。次に、蒸留塔200では、減圧蒸留が行われ、蒸留塔200の下部にはアセトフェノン(acetophenone)および残留副産物が排出され、蒸留塔200の上部には有効成分およびライト成分が排出されることで、有効成分を回収する。かかる分解工程は、有効成分の回収率を高めることができるが、設備の設置空間の確保が必要となり、別個に行われる分解および減圧蒸留過程によって熱エネルギー消費率が高いという問題がある。
【0005】
上記
図3に図示されている分解工程とは異なり、
図4は、蒸留塔が一体化した反応器300を含む分解装置を介して分解工程が行われることを図示しており、反応器300に投入された副産物は、熱分解および加圧蒸留されて、副産物に含まれたタール(tar)、アセトフェノン(acetophenone)および残留副産物が反応器300の下部に排出され、反応器300の上部には有効成分およびライト成分が排出されることで、有効成分を回収する。かかる分解工程は、設備の設置空間を減少させ、熱エネルギー消費率を低減することができるが、加圧蒸留の過程で、有効成分の高分子化現象(例えば、α‐メチルスチレン(alpha‐methylstyrene)の二量化反応(dimerization)、または重合反応(polymerization))が生じ、有効成分の回収率が低下するという問題がある。
【0006】
したがって、ビスフェノールAの製造工程で生成されたフェノール系副産物から有効成分を効率的に回収することができる分解工程および分解装置が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、上記発明の背景となる技術で言及した問題を解決するために、ビスフェノールAの製造工程で生成されたフェノール系副産物の分解工程を改善して、分解工程での熱エネルギー消費率を低減し、有効成分の回収率を高めることができるフェノール系副産物の分解方法および分解装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、ビスフェノールAの製造工程で生成されるフェノール系副産物の分解方法であって、前記フェノール系副産物を反応性多段蒸留カラムに供給するステップ(S10)と、前記反応性多段蒸留カラムを介して前記フェノール系副産物を、有効成分が含まれた上部排出ストリームと、アセトフェノンが含まれた側面排出ストリームと、タールが含まれた下部排出ストリームとに分離するステップ(S20)と、前記反応性多段蒸留カラムから排出される側面排出ストリームと、前記反応性多段蒸留カラムから排出される下部排出ストリームとを混合し、混合排出ストリームを形成するステップ(S30)とを含むフェノール系副産物の分解方法を提供する。
【0009】
また、本発明は、ビスフェノールAの製造工程で生成されるフェノール系副産物の分解装置であって、前記フェノール系副産物を、有効成分が含まれた上部排出ストリームと、アセトフェノンが含まれた側面排出ストリームと、タールが含まれた下部排出ストリームとに分離する反応性多段蒸留カラムと、前記側面排出ストリームが排出され移動する側面排出ストリーム移動ラインおよび前記下部排出ストリームが排出され移動する下部排出ストリーム移動ラインを含む移動ラインシステムとを含み、前記側面排出ストリームと前記下部排出ストリームが交流して混合排出ストリームが形成されるように、前記側面排出ストリーム移動ラインと前記下部排出ストリーム移動ラインが連結されているフェノール系副産物の分解装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、フェノール系副産物を分解する反応性多段蒸留カラムの運転が常圧範囲内で行われることから、有効成分の高分子化現象を防止することができ、これにより、有効成分の回収率を高めることができる。
【0011】
また、本発明は、側面排出ストリームが、タールを含む高粘度の下部排出ストリームと混合されることで下部排出ストリームの粘度が低くなることから、下部排出ストリームに含まれたタールの移動性および貯蔵性を高めることができる。
【0012】
また、本発明は、側面排出ストリームと下部排出ストリームが混合された混合排出ストリームとフェノール系副産物を熱交換させることから、フェノール系副産物の分解工程での熱エネルギー消費率を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態によるフェノール系副産物の分解方法および分解装置を説明するための参考図である。
【
図2】本発明の他の実施形態によるフェノール系副産物の分解方法および分解装置を説明するための参考図である。
【
図3】従来技術および本発明の比較例1によるフェノール系副産物の分解方法および分解装置を説明するための参考図である。
【
図4】従来技術および本発明の比較例2によるフェノール系副産物の分解方法および分解装置を説明するための参考図である。
【
図5】本発明の比較例3によるフェノール系副産物の分解方法および分解装置を説明するための参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の説明および請求の範囲で使用されている用語や単語は、通常的または辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0015】
本発明において、「ストリーム(stream)」という用語は、工程内の流体(fluid)の流れを意味するか、移動ライン(配管)内で流れる流体自体を意味し得る。また、前記流体は、各装置を移動する過程で、気体、液体、または流体の状態に解釈され得る。
【0016】
本明細書において、「上部」という用語は、各装置の長手方向または高さを垂直に二等分したときに、分けられた二つの領域のうち上側部分を意味し得、「下部」という用語は、各装置の長手方向または高さを垂直に二等分したときに、分けられた二つの領域のうち下側部分を意味し得る。また、「側面」という用語は、各装置の長手方向に沿って存在する側面(具体的には、長手方向による左側面、または右側面)を意味し得る。
【0017】
本明細書において、「移動ライン」という用語は、各装置を連結する配管または移送ラインを含む構造を意味し得、「移動ライン」という用語は、実質的に配管と同様の意味を有し得る。
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明は、ビスフェノールAの製造工程で生成されるフェノール系副産物の分解方法に関し、前記分解方法は、前記フェノール系副産物を反応性多段蒸留カラムに供給するステップ(S10)と、前記反応性多段蒸留カラムを介して前記フェノール系副産物を有効成分が含まれた上部排出ストリームと、アセトフェノンが含まれた側面排出ストリームと、タールが含まれた下部排出ストリームとに分離するステップ(S20)と、前記反応性多段蒸留カラムから排出される側面排出ストリームと、前記反応性多段蒸留カラムから排出される下部排出ストリームとを混合し、混合排出ストリームを形成するステップ(S30)とを含む。かかる本発明のフェノール系副産物の分解方法について図面を参照して具体的に説明すると、以下のとおりである。
【0020】
図1を参照して、本発明の一実施形態によると、前記(S10)ステップは、フェノール系副産物を反応性多段蒸留カラム10に供給する過程で行われる。前記フェノール系副産物は、ビスフェノールAの製造過程で生成されるものであり、フェノール(Phenol)、α‐メチルスチレン(Alpha‐methylstyrene)、クメン(Cumene)、アセトフェノン(Acetophenone)、クミルフェノール(Cumylphenol)、α‐メチルスチレンダイマー(Dimers of alpha‐methylstyrene)、ビスフェノールA(BPA)およびその他の残留副産物からなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0021】
本発明の一実施形態によると、前記(S20)ステップは、熱分解により前記フェノール系副産物を分離(分解)する過程で行われる。すなわち、前記反応性多段蒸留カラム10に投入されたフェノール系副産物を熱分解することで、フェノール系副産物を、有効成分が含まれた上部排出ストリームと、アセトフェノンが含まれた側面排出ストリームと、タールが含まれた下部排出ストリームとに分離する。
【0022】
本発明の一実施形態によると、前記フェノール系副産物を熱分解するために、前記反応性多段蒸留カラム10の運転は、10kPa(0.1bar)~300kPa(3.0bar)、10kPa(0.1bar)~200kPa(2.0bar)、または10kPa(0.1bar)~100kPa(1.0bar)で行われ得る。前記反応性多段蒸留カラム10の運転が前記圧力範囲内で行われることで、反応性多段蒸留カラム10内で有効成分の高分子化現象(例えば、α‐メチルスチレン(alpha‐methylstyrene)の二量化反応(dimerization)、または重合反応(polymerization))が最小化し、有効成分の取得率を高めることができる。また、加圧条件で熱分解しなくても、フェノール系副産物からアセトフェノンを含む側面排出ストリームの分離が可能であり、熱分解の時に消費する熱エネルギーの消費率を低減することができる。
【0023】
前記反応性多段蒸留カラム10が前記圧力範囲内で運転されることで、熱分解の際、反応性多段蒸留カラム10の運転は、260℃~370℃、290℃~370℃、または300℃~350℃で行われ得る。前記温度範囲内で熱分解が行われることにより、有効成分の取得率を高めることができ、フェノール系副産物に含まれたアセトフェノンを側面排出ストリームにスムーズに排出させることができる。すなわち、上部排出ストリーム内で不純物として作用するアセトフェノンの含有量を最小化し、有効成分の純度および取得率を高めることができる。
【0024】
本発明の一実施形態によると、前記フェノール系副産物の熱分解により分離された上部排出ストリームは、反応性多段蒸留カラム10の上部に排出されるもので、有効成分を含む。かかる上部排出ストリームには、有効成分とともにライト(light)成分が含まれていてもよい。これにより、前記上部排出ストリームは、有効成分を回収するための精製工程を経ることができる。前記有効成分は、フェノール(Phenol)、α‐メチルスチレン(Alpha‐methylstyrene)およびクメン(Cumene)からなる群から選択される1種以上であってもよい。かかる有効成分は、各成分がそのまま生成物として取得されるか、ビスフェノールAの製造過程でリサイクルされ得る。また、前記ライト成分は、前記熱分解過程で生成されるもので、有効成分よりも沸点が低いトルエン、スチレンなどであってもよい。
【0025】
前記有効成分は、ライト成分とともに反応性多段蒸留カラム10の上部(具体的には上端)から排出されるもので、これにより、フェノール系副産物からの有効成分の回収率を高めることができる。すなわち、前記有効成分が前記ライト成分とは別個に前記反応性多段蒸留カラム10の上部から排出される場合(例えば、ライト成分は、反応性多段蒸留カラム10の上部に排出され、有効成分は、反応性多段蒸留カラム10の側面に排出される場合)、前記有効成分の一部が、上部から排出されるライト成分に含まれた状態で、反応性多段蒸留カラム10の上部を介してともに排出され、有効成分の回収率が低下するという問題がある。しかし、本発明は、有効成分とライト成分がともに反応性多段蒸留カラム10の上部に排出されることで、有効成分の損失が最小化し、有効成分の回収率を高めることができる。
【0026】
かかる上部排出ストリームは、必要に応じて、有効成分とライト成分とを分離する精製工程をさらに経てもよい。
【0027】
本発明の一実施形態によると、前記フェノール系副産物の熱分解により分離された側面排出ストリームは、反応性多段蒸留カラム10の側面に排出されるもので、アセトフェノンを含む。前記アセトフェノンは、有効成分として求められない不純物として作用するため、フェノール系副産物に含まれたアセトフェノンのほとんどは、側面排出ストリームに含まれ、反応性多段蒸留カラム10の側面に排出される。具体的には、前記側面排出ストリームには、前記フェノール系副産物から由来したアセトフェノンの99重量%以上、99.5重量%以上、または99.6重量%~100重量%に相当するアセトフェノンが含まれ得る。例えば、フェノール系副産物に含まれたアセトフェノン100重量%に対して、99重量%以上のアセトフェノンが側面排出ストリームに含まれる。かかる範囲でアセトフェノンが側面排出ストリームに含まれることで、有効成分内のアセトフェノンの含有量が最小化し、有効成分の取得率を高めることができる。また、前記範囲でアセトフェノンが側面排出ストリームに含まれることで、下部排出ストリームの粘度を下げることにも寄与することができ、これについては後述する。
【0028】
また、前記側面排出ストリームは、フェノール系副産物から由来したアセトフェノンの他に、熱分解過程で生成されたイソプロピルフェノールおよびその他の副産物を含むことができる。例えば、前記側面排出ストリームは、側面排出ストリーム100重量%に対して、アセトフェノン40重量%~50重量%、イソプロピルフェノール20重量%~30重量%およびその他の副産物(Others)25重量%~35重量%を含んでいてもよい。
【0029】
本発明の一実施形態によると、前記側面排出ストリームは、前記反応性多段蒸留カラム10の総段数のうち上位50%~90%、50%~85%、または50%~80%の範囲内の段数に備えられた側面排出口を介して排出され得る。例えば、反応性多段蒸留カラム10の総段数が100段の場合、前記側面排出口は、上位50番目~90番目に相当する段に位置する。具体的には、反応性多段蒸留カラム10の総段数が30段の場合、前記側面排出口は、15段に位置することができる。前記側面排出ストリームが前記範囲内の段数に備えられた側面排出口を介して排出されることで、アセトフェノンの分離が効率的に行われ、有効成分の回収率および純度を高めることができる。
【0030】
本発明の一実施形態によると、前記フェノール系副産物の熱分解により分離された下部排出ストリームは、反応性多段蒸留カラム10の下部に排出されるもので、タールを含む。前記タールは、黒色または褐色の粘稠性油状物質であり、後ほど回収され、燃料などとして活用され得る。
【0031】
本発明の一実施形態によると、前記(S30)ステップは、前記反応性多段蒸留カラム10から排出される側面排出ストリームと、前記反応性多段蒸留カラム10から排出される下部排出ストリームとを混合し、混合排出ストリームを形成する過程からなる。
【0032】
かかる(S30)ステップによって前記混合排出ストリームの粘度は、前記下部排出ストリームの粘度よりも低くなり、これにより、粘度の高いタールの移動性および貯蔵性を高めることができる。すなわち、粘度の高いタールは、常温での移送および貯蔵が容易でないが、本発明は、側面排出ストリームを下部排出ストリームと混合することで下部排出ストリームの粘度を下げることから、下部排出ストリームに含まれたタールの移動性および貯蔵性を高めることができる。
【0033】
本発明の一実施形態によると、前記フェノール系副産物と前記混合排出ストリームは、熱交換が行われ得る(
図2参照)。すなわち、前記フェノール系副産物は、熱交換器30を介して前記混合排出ストリームと熱交換された後、前記反応性多段蒸留カラム10に供給され得る。前記熱交換によりフェノール系副産物が高温の状態で反応性多段蒸留カラム10に投入されることから、反応性多段蒸留カラム10のヒータを運転させるために消費するエネルギーが節減され、フェノール系副産物の熱分解の時に消費する熱エネルギーの消費率を低減することができる。
【0034】
一方、本発明は、ビスフェノールAの製造工程で生成されるフェノール系副産物の分解装置に関し、前記分解装置は、反応性多段蒸留カラム10と、移動ラインシステム20とを含む。
【0035】
本発明の一実施形態によると、前記反応性多段蒸留カラム10は、前記フェノール系副産物を、有効成分が含まれた上部排出ストリームと、アセトフェノンが含まれた側面排出ストリームと、タールが含まれた下部排出ストリームとに分離する。かかる反応性多段蒸留カラム10としては、反応器と多段の蒸留塔が一体化した装置が使用可能である。
【0036】
ここで、本発明の一実施形態によると、前記側面排出ストリームが排出される側面排出口は、前記反応性多段蒸留カラム10の総段数のうち上位50%~90%、50%~85%、または50%~80%の範囲内の段数に備えられ得る。例えば、反応性多段蒸留カラム10の総段数が100個の場合、前記側面排出口は、上位50番目~90番目に相当する段に位置する。前記側面排出口が前記範囲内の段数に備えられることで、アセトフェノンの分離が効率的に行われ、有効成分の回収率および純度を高めることができる。
【0037】
また、本発明の一実施形態によると、前記上部排出ストリームが排出される上部排出口は、前記反応性多段蒸留カラム10の上端に備えられ得る。前記上部排出口が反応性多段蒸留カラム10の上端に備えられることで、上部排出ストリームに含まれた有効成分の回収率を高めることができる。
【0038】
本発明の一実施形態によると、前記移動ラインシステム20は、各ストリームが各装置に移動するように各装置を連結する移動配管または移動ラインを含む。特に、前記移動ラインシステムは、前記側面排出ストリームが排出され移動する側面排出ストリーム移動ライン21と、前記下部排出ストリームが排出され移動する下部排出ストリーム移動ライン22とを含む。ここで、前記側面排出ストリームと前記下部排出ストリームが交流するように、前記側面排出ストリーム移動ライン21と前記下部排出ストリーム移動ライン22が互いに連結されている。
【0039】
前記側面排出ストリーム移動ライン21と前記下部排出ストリーム移動ライン22の連結によって前記側面排出ストリームと前記下部排出ストリームが交流するが、この際、前記交流により、前記側面排出ストリームと前記下部排出ストリームとの混合が行われ、混合排出ストリームが形成されるか、別の混合装置(例えば、ドラム)に集まって交流による混合が行われることで、混合排出ストリームが形成され得る。
【0040】
一方、本発明の一実施形態によると、前記フェノール系副産物の分解装置は、前記フェノール系副産物と前記混合排出ストリームとを熱交換させる熱交換器30をさらに含んでもよい。かかる熱交換器30としては、シェル‐チューブ型熱交換器、螺旋型熱交換器、またはプレート型熱交換器などが使用され得る。
【0041】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明する。しかし、下記の実施例は、本発明を例示するためのものであって、本発明の範疇および技術思想の範囲内で様々な変更および修正が可能であることは、通常の技術者にとって明白なことであり、これらにのみ本発明の範囲が限定されるものではない。
【0042】
[実施例1]
図1に図示されている分解装置および分解工程の流れでフェノール系副産物の分解を実施した。具体的には、下記の表1の組成を有するフェノール系副産物を総段数が30段である反応性多段蒸留カラム10の側面に備えられた流入口に供給し、フェノール系副産物(流量:1000kg/hr)の熱分解(熱分解温度:330℃、熱分解圧力:常圧)を実施した。
【0043】
前記熱分解によりフェノール系副産物を有効成分が含まれた上部排出ストリームと、アセトフェノンが含まれた側面排出ストリームと、タールが含まれた下部排出ストリームとにそれぞれ分離した後、反応性多段蒸留カラム10からそれぞれ排出させる工程を連続して行った。前記熱分解により、フェノール系副産物に含まれたアセトフェノンの約99重量%が側面排出ストリームに分離され、フィード(feed)重量の約30重量%に相当するタールが下部排出ストリームに排出された。
【0044】
一方、前記側面排出ストリームは、段数が15段である位置に備えられた側面排出口および側面排出ストリーム移動ライン21を介して排出および移動して下部排出ストリームと交流および混合され、混合排出ストリームを形成した。また、上部排出ストリームは、反応性多段蒸留カラム10の上端に備えられた上部排出口を介して排出された。
【0045】
[実施例2]
図2に図示されている分解装置および分解工程の流れでフェノール系副産物の分解を実施した。具体的には、下記の表1の組成を有するフェノール系副産物を総段数が30段である反応性多段蒸留カラム10の側面に備えられた流入口に供給し、フェノール系副産物(流量:1000kg/hr)の熱分解(熱分解温度:330℃、熱分解圧力:常圧)を実施した。
【0046】
前記熱分解によりフェノール系副産物を有効成分が含まれた上部排出ストリームと、アセトフェノンが含まれた側面排出ストリームと、タールが含まれた下部排出ストリームとにそれぞれ分離した後、反応性多段蒸留カラム10からそれぞれ排出させる工程を連続して行った。前記熱分解により、フェノール系副産物に含まれたアセトフェノンの約99重量%が側面排出ストリームに分離され、フィード(feed)重量の約30重量%に相当するタールが下部排出ストリームに排出された。
【0047】
一方、前記側面排出ストリームは、段数が15段である位置に備えられた側面排出口および側面排出ストリーム移動ライン21を介して排出および移動して下部排出ストリームと交流および混合され、混合排出ストリームを形成した。前記形成された混合排出ストリームは、フェノール系副産物と熱交換され、熱交換されたフェノール系副産物は、反応性多段蒸留カラム10の側面に備えられた流入口を介して反応性多段蒸留カラム10に供給された。その他に、上部排出ストリームは、反応性多段蒸留カラム10の上端に備えられた上部排出口を介して排出された。
【0048】
[比較例1]
図3に図示されている分解装置および分解工程の流れでフェノール系副産物の分解を実施した。具体的には、下記の表1の組成を有するフェノール系副産物を反応器100に供給し、フェノール系副産物(流量:1000kg/hr)の熱分解(熱分解温度:330℃、熱分解圧力:常圧)を実施した。前記熱分解により、タールを含むストリームは反応器100の下部に、有効成分とアセトフェノンを含むストリームは反応器100の上部に排出された。この際、前記熱分解により、フェノール系副産物に含まれたアセトフェノンの約99重量%が反応器100の上部に分離され、フィード(feed)重量の約30重量%に相当するタールが生成された。
【0049】
次に、前記反応器100の上部に排出された有効成分とアセトフェノンを含むストリームは、蒸留塔200に投入され、減圧蒸留工程を経た。前記減圧蒸留工程を経て、有効成分を含むストリームは蒸留塔200の上部に、アセトフェノンを含むストリームは蒸留塔200の下部に排出された。
【0050】
[比較例2]
図4に図示されている分解装置および分解工程の流れでフェノール系副産物の分解を実施した。具体的には、下記の表1の組成を有するフェノール系副産物を反応性多段蒸留カラム300に供給し、フェノール系副産物(流量:1000kg/hr)の熱分解(熱分解温度:330℃、熱分解圧力:加圧)を実施した。前記熱分解により、アセトフェノンとタールを含むストリームは反応器300の下部に、有効成分を含むストリームは反応器300の上部に排出された。この際、前記熱分解により、フェノール系副産物に含まれたアセトフェノンの約99重量%が反応器300の下部に分離され、フィード(feed)重量の約30重量%に相当するタールが生成された。
【0051】
[比較例3]
図5に図示されている分解装置および分解工程の流れでフェノール系副産物の分解を実施し、有効成分を反応器400の側面から分離し、ライト成分を反応器400の上部から分離すること(有効成分とライト成分を別個に分離)以外は、前記実施例1と同じ過程でフェノール系副産物の分解を実施した。
【0052】
【0053】
[実験例]
前記実施例および比較例により得られた有効成分の組成および熱分解過程で消費した熱エネルギー(heaterの運転に消耗したエネルギー)を確認し、その結果を下記表2に示した。
【0054】
【0055】
前記表2を参照すると、本発明による分解方法でフェノール系副産物を分解する場合、有効成分の回収率が高く、分解工程で消費される熱エネルギーが低いことを確認することができる。
【0056】
一方、反応器と蒸留塔が分離された比較例1の場合には、分解工程で消費する熱エネルギーが非常に高いことを確認することができる。また、反応器と蒸留塔が分離されているため、設置空間の確保および設置費の増加が必要になることが予想される。
【0057】
また、加圧条件で熱分解が実施された比較例2の場合には、α‐メチルスチレン(Alpha‐methylstyrene)の割合が少ないことから、有効成分の高分子化が行われた見なされ、これにより、有効成分の回収率が非常に低いことを確認することができる。
【0058】
また、有効成分のみを反応性多段蒸留カラムの側面から分離した比較例3の場合には、有効成分の回収率が低下することを確認することができる。