(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】反射シートおよび発光装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20220713BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20220713BHJP
F21V 7/24 20180101ALI20220713BHJP
F21V 9/14 20060101ALI20220713BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20220713BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20220713BHJP
【FI】
G02B5/30
F21S2/00 481
F21V7/24
F21V9/14
G02B5/02 D
F21Y115:10 700
(21)【出願番号】P 2020558382
(86)(22)【出願日】2019-11-18
(86)【国際出願番号】 JP2019045102
(87)【国際公開番号】W WO2020110806
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2018224685
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】石黒 誠
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0164627(US,A1)
【文献】国際公開第2018/212070(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/194961(WO,A1)
【文献】特開2001-154021(JP,A)
【文献】特開2006-64758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02B 5/02
G02F 1/1335 - 1/13363
F21S 2/00
F21V 7/00 - 7/30
F21V 9/14
F21Y 101/00
F21Y 103/00
F21Y 115/10
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コレステリック液晶相を固定してなるコレステリック液晶層を、複数層、積層した構成を有し、
前記コレステリック液晶層は、走査型電子顕微鏡によって観察される前記コレステリック液晶層の断面において、前記コレステリック液晶相に由来する明部および暗部が、前記コレステリック液晶層の主面に対して傾斜しており、さらに、
選択的に反射する波長域が重複し、かつ、反射する円偏光の旋回方向が互いに異なる2層の前記コレステリック液晶層の組み合わせを、少なくとも1組、有し、
前記コレステリック液晶層の少なくとも1層は、前記コレステリック液晶相に由来する明部および暗部
の前記主面に対する傾斜方向が、それぞれ異なる2以上の領域を、面内にストライプ状に有
し、前記ストライプ状に有する前記2以上の領域が、ストライプの配列方向に繰り返し形成されていることを特徴とする反射シート。
【請求項2】
前記コレステリック液晶層の組み合わせを構成する2層のコレステリック液晶層は、前記コレステリック液晶相に由来する明部および暗部の前記主面に対する傾斜方向が、互いに逆である、請求項1に記載の反射シート。
【請求項3】
コレステリック液晶相を固定してなるコレステリック液晶層を有し、
前記コレステリック液晶層は、走査型電子顕微鏡によって観察される前記コレステリック液晶層の断面において、前記コレステリック液晶相に由来する明部および暗部が、前記コレステリック液晶層の主面に対して傾斜しており、さらに、
前記コレステリック液晶層は、前記コレステリック液晶相に由来する明部および暗部
の前記主面に対する傾斜方向が、それぞれ異なる2以上の領域を、面内にストライプ状に有
し、前記ストライプ状に有する前記2以上の領域が、ストライプの配列方向に繰り返し形成されていることを特徴とする反射シート。
【請求項4】
前記コレステリック液晶層の少なくとも1層は、厚さ方向で螺旋ピッチが変化している、請求項1~
3のいずれか1項に記載の反射シート。
【請求項5】
前記コレステリック液晶層における、前記コレステリック液晶相に由来する明部および暗部の、前記コレステリック液晶層の主面に対する角度が、3~40°である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の反射シート。
【請求項6】
さらに、λ/4層を有する、請求項1~
5のいずれか1項に記載の反射シート。
【請求項7】
さらに、拡散板を有する、請求項1~
6のいずれか1項に記載の反射シート。
【請求項8】
さらに、配光膜を有する、請求項1~
7のいずれか1項に記載の反射シート。
【請求項9】
前記コレステリック液晶層が、液晶化合物由来の光学軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンを有する、請求項1~
8のいずれか1項に記載の反射シート。
【請求項10】
表面に光反射面を有する基台と、前記基台に設けられる複数の光源と、請求項1~
9のいずれか1項に記載の反射シート、とを有する発光装置。
【請求項11】
前記複数の光源における光源の間隔が、前記基台と前記反射シートとの距離の5倍以上である、請求項
10に記載の発光装置。
【請求項12】
前記光源に青色発光ダイオードを含む、請求項
10または
11に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射によって光を均一化する反射シート、および、この反射シートを用いる発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置(LCD(Liquid Crystal Display))などのバックライトユニットを用いる表示装置のコントラストを向上、すなわち、HDR化(High Dynamic Range化)を図るために、直下型バックライトユニットの光源としてLED(Light Emitting Diode)を用いて、バックライトを部分制御(ローカルディミング)することが提案されている。
【0003】
光源としてLEDを用いる直下型のバックライトユニットでは、発光の輝度ムラが課題になる。
すなわち、LEDを光源とする直下型のバックライトユニットでは、面方向においてLEDが配置されている場所が高輝度になり、LEDから離間するにしたがって輝度が低下する。そのため、LEDを光源とする直下型のバックライトユニットでは、LCD等において、全面にわたって均一な輝度での画像表示ができない。
【0004】
そのため、光源としてLEDを用いる直下型のバックライトユニットでは、輝度の均一化を図るために、様々な提案がされている。
例えば、特許文献1には、光源としてLEDを用いる直下型のバックライトユニットにおいて、ハーフミラーを用いて輝度を均一化する発光装置が提案されている。
この発光装置は、表面に光反射面を有する基体と、基体の光反射面側に載置され、上面に反射層を有する複数のLED等の光源と、光源を挟んで基体と対向するように配置される、入射する光の一部を反射し一部を透過するハーフミラーとを備え、光源の発光波長に対するハーフミラーの反射率が、垂直入射よりも斜め入射の方が低い、構成を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方で、LCD等の表示装置には、薄型化が望まれている。そのためには、バックライトユニットを薄くする必要がある。
例えば、スマートフォン、タブレット端末およびノートPC(Personal Computer)等では、導光板の端部からLED等の光源の光を入射して、導光板の主面から光を出射するサイドエッジ型のバックライトユニットにおいて、厚さが0.3mm程度の導光板を用いることにより、バックライトユニットの薄型化を図っている。
【0007】
光源としてLED等を用いるバックライトユニットを薄型化するためには、光源と光出射面(拡散板)との距離を狭くする必要がある。
ところが、薄型の直下型のバックライトユニットにおいて、出射光の輝度均一化を図るためには、配列される光源間の間隔を狭くする必要がある。
上述した特許文献1に記載される発光装置など、従来のバックライトユニットは、ある程度の厚さであれば、好適に輝度の均一化を図れる。しかしながら、従来のバックライトユニットでは、バックライトユニットを薄くするにしたがって、輝度の均一化を図るために、光源の数を大幅に増加する必要がある。また、光源の数を増加することにより、バックライトユニットの組み立てにおける歩留まりも低下してしまう。
【0008】
本発明の目的は、このような従来技術の問題点を解決することにあり、バックライトユニット等の光源装置において、薄型化を図り、しかも、少ない光源数で輝度が均一な光を出射することを可能にする反射シート、および、この反射シートを用いる発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
[1] コレステリック液晶相を固定してなるコレステリック液晶層を、複数層、積層した構成を有し、
コレステリック液晶層は、走査型電子顕微鏡によって観察されるコレステリック液晶層の断面において、コレステリック液晶相に由来する明部および暗部が、コレステリック液晶層の主面に対して傾斜しており、さらに、
選択的に反射する波長域が重複し、かつ、反射する円偏光の旋回方向が互いに異なる2層のコレステリック液晶層の組み合わせを、少なくとも1組、有することを特徴とする反射シート。
[2] コレステリック液晶層の組み合わせを構成する2層のコレステリック液晶層は、コレステリック液晶相に由来する明部および暗部の主面に対する傾斜方向が、互いに逆である、[1]に記載の反射シート。
[3] コレステリック液晶層の少なくとも1層は、コレステリック液晶相に由来する明部および暗部の主面に対する傾斜方向が、互いに異なる領域を、面内に有する、[1]または[2]に記載の反射シート。
[4] コレステリック液晶層の少なくとも1層は、コレステリック液晶相に由来する明部および暗部の主面に対する傾斜方向が、互いに異なる領域を、面内にストライプ状に有する、[3]に記載の反射シート。
[5] コレステリック液晶相を固定してなるコレステリック液晶層を有し、
コレステリック液晶層は、走査型電子顕微鏡によって観察されるコレステリック液晶層の断面において、コレステリック液晶相に由来する明部および暗部が、コレステリック液晶層の主面に対して傾斜しており、さらに、
コレステリック液晶層は、コレステリック液晶相に由来する明部および暗部の主面に対する傾斜方向が、互いに異なる領域を、面内に有することを特徴とする反射シート。
[6] コレステリック液晶相に由来する明部および暗部の主面に対する傾斜方向が、互いに異なる領域を、面内にストライプ状に有する、[5]に記載の反射シート。
[7] コレステリック液晶層の少なくとも1層は、厚さ方向で螺旋ピッチが変化している、[1]~[6]のいずれかに記載の反射シート。
[8] コレステリック液晶層における、コレステリック液晶相に由来する明部および暗部の、コレステリック液晶層の主面に対する角度が、3~40°である、[1]~[7]のいずれかに記載の反射シート。
[9] さらに、λ/4層を有する、[1]~[8]のいずれかに記載の反射シート。
[10] さらに、拡散板を有する、[1]~[9]のいずれかに記載の反射シート。
[11] さらに、配光膜を有する、[1]~[10]のいずれかに記載の反射シート。
[12] コレステリック液晶層が、液晶化合物由来の光学軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンを有する、[1]~[11]のいずれかに記載の反射シート。
[13] 表面に光反射面を有する基台と、基台に設けられる複数の光源と、[1]~[12]のいずれかに記載の反射シート、とを有する発光装置。
[14] 複数の光源における光源の間隔が、基台と反射シートとの距離の5倍以上である、[13]に記載の発光装置。
[15] 光源に青色発光ダイオードを含む、[13]または[14]に記載の発光装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、例えばLCDなどバックライトに用いられる光源装置において、薄型で、かつ、少ない光源の数で輝度ムラの無い均一な光を照射できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の反射シートを用いる本発明の発光装置の一例を概念的に示す図である。
【
図2】
図2は、左円偏光反射層(コレステリック液晶層)を説明するための概念図である。
【
図3】
図3は、右円偏光反射層(コレステリック液晶層)の平面図である。
【
図4】
図4は、右円偏光反射層の作用を説明するための概念図である。
【
図5】
図5は、本発明の反射シートを説明するための概念図である。
【
図6】
図6は、本発明の反射シートの作用を説明するための概念図である。
【
図7】
図7は、本発明の反射シートの別の例を説明するための概念図である。
【
図8】
図8は、本発明の反射シートの別の例を説明するための概念図である。
【
図9】
図9は、本発明の反射シートの別の例を説明するための概念図である。
【
図10】
図10は、本発明の反射シートに用いる配向膜を露光する露光装置を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の反射シートおよび発光装置について、添付の図面に示される好適実施例を基に詳細に説明する。
【0013】
本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレートおよびメタクリレートのいずれか一方または双方」の意味で使用される。
【0014】
本明細書において、可視光は、電磁波のうち、ヒトの目で見える波長の光であり、380~780nmの波長域の光を示す。非可視光は、380nm未満の波長域および780nmを超える波長域の光である。
またこれに限定されるものではないが、可視光のうち、420~490nmの波長域の光は青色光であり、495~570nmの波長域の光は緑色光であり、620~750nmの波長域の光は赤色光である。
【0015】
図1に、本発明の反射シートを用いる本発明の発光装置の一例を概念的に示す。
図1に示す発光装置10は、例えばLCDにおける直下型のバックライトユニット等に用いられるものであり、筐体12と、光源13と、反射板14とを有する。
【0016】
筐体12は、LCDのバックライトユニット等において、光源等が配置される公知の筐体であって、例えば、一面が開放する直方体である。
筐体12は、内面が光反射面12aになっている。すなわち、筐体12の底板が、光源13が配置される、本発明における表面に光反射面を有する基台となる。
本発明において、光反射面12aには、制限はなく、白色板などの拡散反射面、および、金属板などの鏡面反射面等、LCDのバックライトユニット等において光反射面として利用される公知のものが、各種、利用可能である。また、光反射面としては、3M社製のESR(Enhanced Specular Reflector)反射フィルム等の市販品も、好適に利用可能である。
さらに、本発明においては、筐体12を金属材料および白色拡散反射板等で形成することにより、筐体12の内面を光反射面12aとしてもよい。
光の拡散効率を向上して、輝度の均一性を向上できる等の点で、光反射面12aは鏡面反射面であるのが好ましく、ESR反射フィルムは好適に利用される。
【0017】
筐体12の底面すなわち開放面と対向する面には、光源13が配置される。光源13は、筐体12の底面に二次元的に配列される。
光源13にも、制限はなく、LCDの直下型バックライトユニット等に用いられている公知の光源が、各種、利用可能である。
光源13としては、LED(発光ダイオード)、ハロゲンランプ、蛍光灯、および、レーザー等が例示される。中でも、LEDは、好適に利用される。
【0018】
光源13が照射する光の中心波長(発光の最大波長)にも、制限はない。従って、光源13は、中心波長を青色の波長域に有する青色光源でも、中心波長を青緑の波長域に有する緑色光源でも、中心波長を赤色の波長域に有する赤色光源でも、白色光源でもよい。
光源としては、中心波長を青色の波長域に有する青色LEDは、好適に利用される。図示例においては、光源13は、一例として、青色LEDである。
光源13の配光分布にも、制限はなく、例えば、ランバーシアン分布でも、バットウイング分布でもよい。
【0019】
光源13の配列にも、制限はなく、例えば正方格子状、および、ハニカム格子状等、直下型のバックライトユニットに用いられる配列が利用可能である。
光源13の間隔、すなわち、光源13と、この光源13に最も近接する光源との距離にも制限はなく、光源13の輝度および配向分布(発光のプロファイル)等に応じて、適宜、設定すればよい。なお、光源13の間隔とは、2つの光源13の中心の距離である。
本発明の発光装置10においては、光源13の間隔d1が、筐体12の底面すなわち光源13の配置面(基台)と反射シート(右円偏光反射層36)との距離d2の5倍以上であるのが好ましい。この点に関しては、後に詳述する。
【0020】
筐体12の開放面すなわち光源13が配置される面と対向する面は、反射板14によって閉塞される。
【0021】
反射板14は、図示していない拡散板を有することが好ましい。すなわち、本発明の反射シートは、拡散板を有することが好ましい。反射板14が拡散板を有する場合にも、反射板14は、本発明の反射シートと配向膜32とで形成してもよく、本発明の反射シートのみであってもよい。また、拡散板を支持体30として、反射板14を構成してもよい。また、拡散板と反射シートとが粘着剤および接着剤等で貼着されているのが好ましい。
反射板14(本発明の反射シート)が拡散板を有することにより、反射板から出射す光の輝度均一性を、より向上できる。
【0022】
拡散板には、制限はなく、白色拡散板、および、白色拡散シート等が例示される。
また、反射板14の上には、LCDのバックライトユニット等で利用される公知の拡散板およびバックライト部材が、配置されていてもよい。バックライト部材としては、プリズムシート、BEF(Brightness Enhancement Film、3M社製)、レンズシート、DBEF(Dual Brightness Enhancement Film、3M社製)といった輝度向上フィルム、量子ドットシート、蛍光シート、および、シャープカットフィルタなどの光学フィルタといった色調整フィルム、ならびに、これらの複数の積層体等が含まれる。
反射板14の上に公知の拡散板およびバックライト部材等を配置する場合は、例えば、反射板14に貼着してもよい。あるいは、冶具等で固定することで、反射板14の上に、これらの部材を配置してもよい。
【0023】
反射板14は、支持体30と、配向膜32と、左円偏光反射層34および右円偏光反射層36と、を有する。左円偏光反射層34および右円偏光反射層36で、本発明の反射シートが形成される。
なお、本発明の発光装置10において、反射板14は、支持体30および/または配向膜32を有さなくてもよい。すなわち、本発明の発光装置10において、反射板14は、本発明の反射シートと配向膜32とで形成してもよく、本発明の反射シートと支持体30とで形成してもよく、本発明の反射シートのみであってもよい。
以下の説明では、左円偏光反射層と右円偏光反射層とを区別する必要がない場合には、左円偏光反射層と右円偏光反射層とをまとめて『コレステリック液晶層』とも言う。
【0024】
<支持体>
反射板14において、支持体30は、配向膜32、左円偏光反射層34および右円偏光反射層36を支持するものである。
支持体30には、制限はなく、配向膜32、左円偏光反射層34および右円偏光反射層36を支持できるものであれば、各種のシート状物(フィルム、板状物)が利用可能である。
なお、支持体30は、対応する光に対する透過率が50%以上であるのが好ましく、70%以上であるのがより好ましく、85%以上であるのがさらに好ましい。
【0025】
支持体30の厚さには、制限はなく、反射板14の用途および支持体30の形成材料等に応じて、配向膜32、左円偏光反射層34および右円偏光反射層36を保持できる厚さを、適宜、設定すればよい。
支持体30の厚さは、1~1000μmが好ましく、3~250μmがより好ましく、5~150μmがさらに好ましい。
【0026】
支持体30は単層であっても、多層であってもよい。
単層である場合の支持体30としては、ガラス、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、アクリル、および、ポリオレフィン等からなる支持体30が例示される。多層である場合の支持体30の例としては、前述の単層の支持体のいずれかなどを基板として含み、この基板の表面に他の層を設けたもの等が例示される。
【0027】
<配向膜>
反射板14において、支持体30の表面には配向膜32が形成される。
配向膜32は、例えば、反射板14の左円偏光反射層34を形成する際に、液晶化合物40を所定の液晶配向パターンに配向するための配向膜32である。
後述するが、反射板14において、コレステリック液晶層は、好ましい態様として、液晶化合物40に由来する光学軸40A(図3参照)の向きが、面内の一方向(図示例では、図中矢印X方向)に沿って連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンを有する。従って、配向膜32は、コレステリック液晶層が、この液晶配向パターンを形成できるように、形成される。
以下の説明では、『光学軸40Aの向きが回転』を単に『光学軸40Aが回転』とも言う。
【0028】
配向膜32は、公知の各種のものが利用可能である。
例えば、ポリマーなどの有機化合物からなるラビング処理膜、無機化合物の斜方蒸着膜、マイクログルーブを有する膜、ω-トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライドおよびステアリル酸メチルなどの有機化合物のラングミュア・ブロジェット法によるLB(Langmuir-Blodgett:ラングミュア・ブロジェット)膜を累積させた膜、ならびに、液晶化合物からなる膜等が例示される。
【0029】
ラビング処理による配向膜32は、ポリマー層の表面を紙または布で一定方向に数回こすることにより形成できる。
配向膜32に使用する材料としては、ポリイミド、ポリビニルアルコール、特開平9-152509号公報に記載された重合性基を有するポリマー、特開2005-97377号公報、特開2005-99228号公報、および、特開2005-128503号公報記載の配向膜32等の形成に用いられる材料が好ましい。
【0030】
液晶化合物からなる配向膜として使用可能な材料としては、特に制限はなく、公知の化合物を使用できる。一例として、液晶化合物を含む液晶組成物が挙げられる。
液晶化合物は重合性液晶化合物であるのが好ましく、使用可能な液晶化合物としては、例えば、後述するコレステリック液晶層の形成に用いる材料が挙げられる。また、液晶化合物からなる配向膜の形成に用いる液晶組成物は、さらに、界面活性剤およびキラル剤を含んでいてもよい。
【0031】
本発明において、配向膜32としては、光配向性の素材に偏光または非偏光を照射して配向膜32とした、いわゆる光配向膜、および、上述した光配向膜またはラビング処理による配向膜上に、液晶組成物を塗布・形成して配向膜32とした、いわゆる液晶膜等が好適に例示される。すなわち、本発明の反射板14においては、配向膜32として、支持体30上に、光配向材料を塗布して形成した光配向膜、および、所定の配向を固定化した液晶膜等が、好適に利用される。
偏光の照射は、光配向膜に対して、垂直方向または斜め方向から行うことができ、非偏光の照射は、光配向膜に対して、斜め方向から行うことができる。
【0032】
本発明に利用可能な配向膜に用いられる光配向材料としては、例えば、特開2006-285197号公報、特開2007-76839号公報、特開2007-138138号公報、特開2007-94071号公報、特開2007-121721号公報、特開2007-140465号公報、特開2007-156439号公報、特開2007-133184号公報、特開2009-109831号公報、特許第3883848号公報および特許第4151746号公報に記載のアゾ化合物、特開2002-229039号公報に記載の芳香族エステル化合物、特開2002-265541号公報および特開2002-317013号公報に記載の光配向性単位を有するマレイミドおよび/またはアルケニル置換ナジイミド化合物、特許第4205195号および特許第4205198号に記載の光架橋性シラン誘導体、特表2003-520878号公報、特表2004-529220号公報および特許第4162850号に記載の光架橋性ポリイミド、光架橋性ポリアミドおよび光架橋性ポリエステル、ならびに、特開平9-118717号公報、特表平10-506420号公報、特表2003-505561号公報、国際公開第2010/150748号、特開2013-177561号公報および特開2014-12823号公報に記載の光二量化可能な化合物、特にシンナメート化合物、カルコン化合物およびクマリン化合物等が、好ましい例として例示される。
中でも、アゾ化合物、光架橋性ポリイミド、光架橋性ポリアミド、光架橋性ポリエステル、シンナメート化合物、および、カルコン化合物は、好適に利用される。
【0033】
配向膜32の厚さには制限はなく、配向膜32の形成材料に応じて、必要な配向機能を得られる厚さを、適宜、設定すればよい。
配向膜32の厚さは0.01~5μmが好ましく、0.05~2μmがより好ましい。
【0034】
配向膜32の形成方法には、制限はなく、配向膜32の形成材料に応じた公知の方法が、各種、利用可能である。
一例として、光配向膜を支持体30の表面に塗布して乾燥させた後、露光マスクを用い、偏光または非偏光の水銀ランプおよびメタルハライドランプ等でマスク露光する方法、ならびに、レーザ光で露光して、配向パターンを形成する方法等が、配向膜32の形成方法として例示される。また、ラビング処理した配向膜または光配向膜上に塗布して形成した液晶層も、配向膜32として利用可能である。一例として、光配向膜に、上述した方法で配向パターンを形成した後、さらに、液晶組成物を塗布することで所定の配向パターンを固定化した液晶膜を形成する方法が、配向膜32の形成方法として例示される。
配向膜32をレーザ光で露光して、配向パターンを形成する方法が例示される。
【0035】
図10に、配向膜32を露光して、配向パターンを形成する露光装置の一例を概念的に示す。
図10に示す露光装置60は、レーザ62を備えた光源64と、レーザ62が出射したレーザ光Mの偏光方向を変えるλ/2板65と、レーザ62が出射したレーザ光Mを光線MAおよびMBの2つに分離する偏光ビームスプリッター68と、分離された2つの光線MAおよびMBの光路上にそれぞれ配置されたミラー70Aおよび70Bと、λ/4板72Aおよび72Bと、を備える。
なお、光源64は直線偏光P
0を出射する。λ/4板72Aおよび72Bは、互いに平行な光学軸を備えている。λ/4板72Aは、直線偏光P
0(光線MA)を右円偏光P
Rに、λ/4板72Bは直線偏光P
0(光線MB)を左円偏光P
Lに、それぞれ変換する。
【0036】
配向パターンが形成される前の配向膜32を有する支持体30を露光部に配置し、2つの光線MAと光線MBとを配向膜32上において交差させて干渉させ、その干渉光を配向膜32に照射して露光する。
この際の干渉により、配向膜32に照射される光の偏光状態が干渉縞状に周期的に変化するものとなる。これにより、配向膜32において、配向状態が周期的に変化する配向パターンが得られる。
露光装置60においては、2つの光線MAおよびMBの交差角αを変化させることにより、配向パターンの周期を調節できる。すなわち、露光装置60においては、交差角αを調節することにより、液晶化合物40に由来する光学軸40Aが一方向に向かって連続的に回転する配向パターンにおいて、後述する、光学軸40Aが回転する1方向における、光学軸40Aが180°回転する1周期の長さ(1周期Λ)を調節できる。
このような配向状態が周期的に変化した配向パターンを有する配向膜32上に、コレステリック液晶層を形成することにより、後述する、液晶化合物40に由来する光学軸40Aが一方向に向かって連続的に回転する液晶配向パターンを有する、コレステリック液晶層を形成できる。
また、λ/4板72Aおよび72Bの光学軸を、それぞれ、90°回転することにより、一方向に向かう光学軸40Aの回転方向を逆にできる。
【0037】
上述のように、本発明において、配向膜32は、好ましい態様として設けられるものであり、必須の構成要件ではない。
例えば、支持体30をラビング処理する方法、支持体30をレーザ光などで加工する方法等によって、支持体30に配向パターンを形成してもよい。この支持体30の配向パターンにより、コレステリック液晶層が、液晶化合物40に由来する光学軸40Aの向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンを有する構成とすることも、可能である。すなわち、本発明においては、支持体30を配向膜として作用させてもよい。
【0038】
<左円偏光反射層および右円偏光反射層(コレステリック液晶層)>
反射板14において、配向膜32の表面には、左円偏光反射層34が形成される。さらに、反射板14において、左円偏光反射層34の表面には、右円偏光反射層36が形成される。左円偏光反射層34および右円偏光反射層36は、共に、コレステリック液晶相を固定してなるものであり、一例として、青色光を選択的に反射する。
なお、左円偏光反射層34および右円偏光反射層36の積層順は、図示例とは逆でもよい。すなわち、後述する実施例のように、配向膜32の表面に右円偏光反射層36を形成し、右円偏光反射層36の表面に左円偏光反射層34を形成した構成でもよい。この点に関しては、左円偏光反射層および右円偏光反射層が、緑色光を選択的に反射する場合でも、赤色光を選択的に反射する場合でも、同様である。
【0039】
なお、
図1においては、図面を簡略化して反射板14の構成を明確に示すために、左円偏光反射層34および右円偏光反射層36は、配向膜32の表面および左円偏光反射層34の液晶化合物40(液晶化合物分子)のみを概念的に示している。
しかしながら、左円偏光反射層34および右円偏光反射層36は、
図2に左円偏光反射層34を例示して概念的に示すように、通常のコレステリック液晶相を固定してなるコレステリック液晶層と同様に、液晶化合物40が螺旋状に旋回して積み重ねられた螺旋構造を有し、液晶化合物40が螺旋状に1回転(360°回転)して積み重ねられた構成を螺旋1ピッチ(ピッチP)として、螺旋状に旋回する液晶化合物40が、複数ピッチ、積層された構造を有する。
【0040】
周知のように、コレステリック液晶相を固定してなるコレステリック液晶層は、波長選択反射性を有する。後に詳述するが、コレステリック液晶層の選択的な反射波長域は、上述した螺旋1ピッチの厚さ方向の長さに依存する。螺旋1ピッチの厚さ方向の長さは、
図2に示すピッチPである。
また、コレステリック液晶層は、選択的な反射波長域において、右円偏光または左円偏光のみを選択的に反射する。後に詳述するが、選択的な円偏光の反射は、コレステリック液晶相を形成する液晶化合物40の螺旋の捩れ方向(センス)に依存する。図示例において、左円偏光反射層34は、選択的な反射波長域において、左円偏光を選択的に反射し、右円偏光反射層36は、選択的な反射波長域において、左円偏光を選択的に反射する。
【0041】
左円偏光反射層34および右円偏光反射層36は、コレステリック液晶相を固定してなるものである。
すなわち、左円偏光反射層34および右円偏光反射層36は、共に、コレステリック構造を有する液晶化合物40(液晶材料)からなる層である。
【0042】
<<コレステリック液晶相>>
コレステリック液晶相は、特定の波長において選択反射性を示すことが知られている。
一般的なコレステリック液晶相において、選択反射の中心波長(選択反射中心波長)λは、コレステリック液晶相における螺旋のピッチPに依存し、コレステリック液晶相の平均屈折率nとλ=n×Pの関係に従う。そのため、この螺旋ピッチを調節することによって、選択反射中心波長を調節することができる。
コレステリック液晶相の選択反射中心波長は、ピッチPが長いほど、長波長になる。
なお、螺旋のピッチPとは、コレステリック液晶相の螺旋構造1ピッチ分(螺旋の周期)である。言い換えれば、螺旋のピッチPとは、螺旋の巻き数1回分であり、すなわち、コレステリック液晶相を構成する液晶化合物のダイレクターが360°回転する螺旋軸方向の長さである。液晶化合物のダイレクターは、例えば棒状液晶であれば長軸方向と一致する。
【0043】
コレステリック液晶相の螺旋ピッチは、コレステリック液晶層を形成する際に、液晶化合物と共に用いるキラル剤の種類、および、キラル剤の添加濃度に依存する。従って、これらを調節することによって、所望の螺旋ピッチを得ることができる。
なお、ピッチの調節については富士フイルム研究報告No.50(2005年)p.60-63に詳細な記載がある。螺旋のセンスおよびピッチの測定法については「液晶化学実験入門」日本液晶学会編 シグマ出版2007年出版、46頁、および、「液晶便覧」液晶便覧編集委員会 丸善 196頁に記載される方法を用いることができる。
【0044】
コレステリック液晶相は、特定の波長において左右いずれかの円偏光に対して選択反射性を示す。反射光が右円偏光であるか左円偏光であるかは、コレステリック液晶相の螺旋の捩れ方向(センス)による。
コレステリック液晶相による円偏光の選択反射は、コレステリック液晶層の螺旋の捩れ方向が右の場合は右円偏光を反射し、螺旋の捩れ方向が左の場合は左円偏光を反射する。上述したように、図示例においては、左円偏光反射層34は左円偏光を選択的に反射し、右円偏光反射層36は右円偏光を選択的に反射する。
なお、コレステリック液晶相の旋回の方向は、コレステリック液晶層を形成する液晶化合物の種類および/または添加されるキラル剤の種類によって調節できる。
【0045】
選択反射を示す選択反射波長域(円偏光反射波長域)の半値幅Δλ(nm)は、コレステリック液晶相のΔnと螺旋のピッチPとに依存し、Δλ=Δn×Pの関係に従う。そのため、選択反射波長域(選択的な反射波長域)の幅の制御は、Δnを調節して行うことができる。Δnは、コレステリック液晶相を形成する液晶化合物の種類およびその混合比率、ならびに、配向固定時の温度により調節できる。
また、コレステリック液晶層の膜厚方向において、螺旋ピッチの分布を形成することで、選択反射波長域(円偏光反射波長域)の半値幅Δλ(nm)を大きくできる。
反射波長域の半値幅は、反射板(反射シート)の用途に応じて調節され、例えば10~500nmであればよく、好ましくは20~300nmであり、より好ましくは30~100nmである。
【0046】
図示例においては、一例として、左円偏光反射層34および右円偏光反射層36は、共に、青色光の波長域に選択反射中心波長を有するものであり、左円偏光反射層34は、青色光の左円偏光を選択的に反射し、右円偏光反射層36は、青色光の右円偏光を選択的に反射する。
【0047】
<<コレステリック液晶層の形成方法>>
コレステリック液晶層(左円偏光反射層34および右円偏光反射層36)は、コレステリック液晶相を層状に固定して形成できる。
コレステリック液晶相を固定した構造は、コレステリック液晶相となっている液晶化合物の配向が保持されている構造であればよく、典型的には、重合性液晶化合物をコレステリック液晶相の配向状態としたうえで、紫外線照射、加熱等によって重合、硬化し、流動性が無い層を形成して、同時に、外場または外力によって配向形態に変化を生じさせることない状態に変化した構造が好ましい。
なお、コレステリック液晶相を固定した構造においては、コレステリック液晶相の光学的性質が保持されていれば十分であり、コレステリック液晶層において、液晶化合物40は液晶性を示さなくてもよい。例えば、重合性液晶化合物は、硬化反応により高分子量化して、液晶性を失っていてもよい。
【0048】
コレステリック液晶相を固定してなるコレステリック液晶層の形成に用いる材料としては、一例として、液晶化合物を含む液晶組成物が挙げられる。液晶化合物は重合性液晶化合物であるのが好ましい。
また、コレステリック液晶層の形成に用いる液晶組成物は、さらに界面活性剤およびキラル剤を含んでいてもよい。
【0049】
--重合性液晶化合物--
重合性液晶化合物は、棒状液晶化合物であっても、円盤状液晶化合物であってもよい。
コレステリック液晶相を形成する棒状の重合性液晶化合物の例としては、棒状ネマチック液晶化合物が挙げられる。棒状ネマチック液晶化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類、および、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類等が好ましく用いられる。低分子液晶化合物だけではなく、高分子液晶化合物も用いることができる。
【0050】
重合性液晶化合物は、重合性基を液晶化合物に導入することで得られる。重合性基の例には、不飽和重合性基、エポキシ基、およびアジリジニル基が含まれ、不飽和重合性基が好ましく、エチレン性不飽和重合性基がより好ましい。重合性基は種々の方法で、液晶化合物の分子中に導入できる。重合性液晶化合物が有する重合性基の個数は、好ましくは1~6個、より好ましくは1~3個である。
重合性液晶化合物の例は、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、米国特許第5622648号明細書、米国特許第5770107号明細書、国際公開第95/22586号、国際公開第95/24455号、国際公開第97/00600号、国際公開第98/23580号、国際公開第98/52905号、特開平1-272551号公報、特開平6-16616号公報、特開平7-110469号公報、特開平11-80081号公報、および、特開2001-328973号公報等に記載の化合物が含まれる。2種類以上の重合性液晶化合物を併用してもよい。2種類以上の重合性液晶化合物を併用すると、配向温度を低下させることができる。
【0051】
また、上記以外の重合性液晶化合物としては、特開昭57-165480号公報に開示されているようなコレステリック相を有する環式オルガノポリシロキサン化合物等を用いることができる。さらに、前述の高分子液晶化合物としては、液晶を呈するメソゲン基を主鎖、側鎖、あるいは主鎖および側鎖の両方の位置に導入した高分子、コレステリル基を側鎖に導入した高分子コレステリック液晶、特開平9-133810号公報に開示されているような液晶性高分子、および、特開平11-293252号公報に開示されているような液晶性高分子等を用いることができる。
【0052】
--円盤状液晶化合物--
円盤状液晶化合物としては、例えば、特開2007-108732号公報や特開2010-244038号公報に記載のものを好ましく用いることができる。
【0053】
また、液晶組成物中の重合性液晶化合物の添加量は、液晶組成物の固形分質量(溶媒を除いた質量)に対して、75~99.9質量%であるのが好ましく、80~99質量%であるのがより好ましく、85~90質量%であるのがさらに好ましい。
【0054】
--界面活性剤--
コレステリック液晶層を形成する際に用いる液晶組成物は、界面活性剤を含有してもよい。
界面活性剤は、安定的にまたは迅速にプレーナー配向のコレステリック液晶相とするために寄与する配向制御剤として機能できる化合物が好ましい。界面活性剤としては、例えば、シリコ-ン系界面活性剤およびフッ素系界面活性剤が挙げられ、フッ素系界面活性剤が好ましく例示される。
【0055】
界面活性剤の具体例としては、特開2014-119605号公報の段落[0082]~[0090]に記載の化合物、特開2012-203237号公報の段落[0031]~[0034]に記載の化合物、特開2005-99248号公報の段落[0092]および[0093]中に例示されている化合物、特開2002-129162号公報の段落[0076]~[0078]および段落[0082]~[0085]中に例示されている化合物、ならびに、特開2007-272185号公報の段落[0018]~[0043]等に記載のフッ素(メタ)アクリレート系ポリマー、などが挙げられる。
なお、界面活性剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
フッ素系界面活性剤として、特開2014-119605号公報の段落[0082]~[0090]に記載の化合物が好ましい。
【0056】
液晶組成物中における、界面活性剤の添加量は、液晶化合物の全質量に対して0.01~10質量%が好ましく、0.01~5質量%がより好ましく、0.02~1質量%がさらに好ましい。
【0057】
--キラル剤--
キラル剤(カイラル剤)はコレステリック液晶相の螺旋構造を誘起する機能を有する。キラル剤は、化合物によって誘起する螺旋の捩れ方向または螺旋ピッチが異なるため、目的に応じて選択すればよい。
キラル剤としては、特に制限はなく、公知の化合物(例えば、液晶デバイスハンドブック、第3章4-3項、TN(twisted nematic)、STN(Super Twisted Nematic)用キラル剤、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989に記載)、イソソルビド、および、イソマンニド誘導体等を用いることができる。
キラル剤は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物または面性不斉化合物もキラル剤として用いることができる。軸性不斉化合物または面性不斉化合物の例には、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファン、および、これらの誘導体が含まれる。キラル剤は、重合性基を有していてもよい。キラル剤と液晶化合物とがいずれも重合性基を有する場合は、重合性キラル剤と重合性液晶化合物との重合反応により、重合性液晶化合物から誘導される繰り返し単位と、キラル剤から誘導される繰り返し単位とを有するポリマーを形成することができる。この態様では、重合性キラル剤が有する重合性基は、重合性液晶化合物が有する重合性基と、同種の基であるのが好ましい。従って、キラル剤の重合性基も、不飽和重合性基、エポキシ基またはアジリジニル基であるのが好ましく、不飽和重合性基であるのがより好ましく、エチレン性不飽和重合性基であるのがさらに好ましい。
また、キラル剤は、液晶化合物であってもよい。
【0058】
キラル剤が光異性化基を有する場合には、塗布、配向後に活性光線などのフォトマスク照射によって、発光波長に対応した所望の反射波長のパターンを形成することができるので好ましい。光異性化基としては、フォトクロッミック性を示す化合物の異性化部位、アゾ基、アゾキシ基、または、シンナモイル基が好ましい。具体的な化合物として、特開2002-80478号公報、特開2002-80851号公報、特開2002-179668号公報、特開2002-179669号公報、特開2002-179670号公報、特開2002-179681号公報、特開2002-179682号公報、特開2002-338575号公報、特開2002-338668号公報、特開2003-313189号公報、および、特開2003-313292号公報等に記載の化合物を用いることができる。
【0059】
液晶組成物における、キラル剤の含有量は、液晶化合物の含有モル量に対して0.01~200モル%が好ましく、1~30モル%がより好ましい。
【0060】
--重合開始剤--
液晶組成物が重合性化合物を含む場合は、重合開始剤を含有しているのが好ましい。紫外線照射により重合反応を進行させる態様では、使用する重合開始剤は、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤であるのが好ましい。
光重合開始剤の例には、α-カルボニル化合物(米国特許第2367661号、米国特許第2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、米国特許第2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60-105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)、ならびに、オキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)等が挙げられる。
液晶組成物中の光重合開始剤の含有量は、液晶化合物の含有量に対して0.1~20質量%であるのが好ましく、0.5~12質量%であるのがさらに好ましい。
【0061】
--架橋剤--
液晶組成物は、硬化後の膜強度向上、耐久性向上のため、任意に架橋剤を含有していてもよい。架橋剤としては、紫外線、熱、および、湿気等で硬化するものが好適に使用できる。
架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートおよびペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の多官能アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレートおよびエチレングリコールジグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;2,2-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]および4,4-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等のアジリジン化合物;ヘキサメチレンジイソシアネートおよびビウレット型イソシアネート等のイソシアネート化合物;オキサゾリン基を側鎖に有するポリオキサゾリン化合物;ならびに、ビニルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物などが挙げられる。また、架橋剤の反応性に応じて公知の触媒を用いることができ、膜強度および耐久性向上に加えて生産性を向上させることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
架橋剤の含有量は、液晶組成物の固形分質量に対して、3~20質量%が好ましく、5~15質量%がより好ましい。架橋剤の含有量が上記範囲内であれば、架橋密度向上の効果が得られやすく、コレステリック液晶相の安定性がより向上する。
【0062】
--その他の添加剤--
液晶組成物中には、必要に応じて、さらに重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、色材、および、金属酸化物微粒子等を、光学的性能等を低下させない範囲で添加することができる。
【0063】
液晶組成物は、コレステリック液晶層(左円偏光反射層34および右円偏光反射層36)を形成する際には、液体として用いられるのが好ましい。
液晶組成物は溶媒を含んでいてもよい。溶媒には、制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、有機溶媒が好ましい。
有機溶媒には、制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ケトン類、アルキルハライド類、アミド類、スルホキシド類、ヘテロ環化合物、炭化水素類、エステル類、および、エーテル類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、環境への負荷を考慮した場合にはケトン類が好ましい。
【0064】
コレステリック液晶層を形成する際には、コレステリック液晶層の形成面に液晶組成物を塗布して、液晶化合物をコレステリック液晶相の状態に配向した後、液晶化合物を硬化して、コレステリック液晶層とするのが好ましい。
すなわち、配向膜32上にコレステリック液晶層を形成する場合には、配向膜32に液晶組成物を塗布して、液晶化合物をコレステリック液晶相の状態に配向した後、液晶化合物を硬化して、コレステリック液晶相を固定してなるコレステリック液晶層を形成するのが好ましい。
液晶組成物の塗布は、インクジェットおよびスクロール印刷等の印刷法、ならびに、スピンコート、バーコートおよびスプレー塗布等のシート状物に液体を一様に塗布できる公知の方法が全て利用可能である。
【0065】
塗布された液晶組成物は、必要に応じて乾燥および/または加熱され、その後、硬化され、コレステリック液晶層を形成する。この乾燥および/または加熱の工程で、液晶組成物中の液晶化合物がコレステリック液晶相に配向すればよい。加熱を行う場合、加熱温度は、200℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましい。
【0066】
配向させた液晶化合物は、必要に応じて、さらに重合される。重合は、熱重合、および、光照射による光重合のいずれでもよいが、光重合が好ましい。光照射は、紫外線を用いるのが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2~50J/cm2が好ましく、50~1500mJ/cm2がより好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下または窒素雰囲気下で光照射を実施してもよい。照射する紫外線の波長は250~430nmが好ましい。
【0067】
なお、このような塗布法によって、コレステリック液晶層の上にコレステリック液晶層を形成すると、上層のコレステリック液晶層は、下層すなわち形成面となるコレステリック液晶層の液晶配向パターンに追従(踏襲)する。
従って、図示例の反射板14では、所定の配向パターンを有する配向膜32の表面に、塗布法によって左円偏光反射層34を形成し、この左円偏光反射層34の表面に、塗布法によって右円偏光反射層36を形成することで、左円偏光反射層34と右円偏光反射層36とは、後述する
図3に示すような、コレステリック液晶相を形成する液晶化合物40に由来する光学軸40Aの向きが、コレステリック液晶層の面内において、一方向に連続的に回転しながら変化する、同じ液晶配向パターンとなる。
【0068】
コレステリック液晶層の厚さには、制限はなく、選択反射中心波長、選択的な反射波長域の広さ、コレステリック液晶層に要求される光の反射率(透過率)、反射板14(反射シート)の用途、および、コレステリック液晶層の形成材料等に応じて、必要な光の反射特性が得られる厚さを、適宜、設定すればよい。
なお、本発明の反射シートにおいては、左円偏光反射層34および右円偏光反射層36は、照射光の輝度均一性を向上するために、選択的な反射波長域の特定の円偏光を全反射するのではなく、一部を透過する、ハーフミラーのような反射層であるのが好ましい。
【0069】
<<コレステリック液晶層の液晶配向パターン>>
前述のように、本発明の反射板14において、コレステリック液晶層(左円偏光反射層34および右円偏光反射層36)は、好ましい態様として、コレステリック液晶相を形成する液晶化合物40に由来する光学軸40Aの向きが、コレステリック液晶層の面内において、一方向に連続的に回転しながら変化する液晶配向パターンを有する。
なお、液晶化合物40に由来する光学軸40Aとは、液晶化合物40において屈折率が最も高くなる軸、いわゆる遅相軸である。例えば、液晶化合物40が棒状液晶化合物である場合には、光学軸40Aは、棒形状の長軸方向に沿っている。
以下の説明では、液晶化合物40に由来する光学軸40Aを、『液晶化合物40の光学軸40A』または『光学軸40A』ともいう。
【0070】
図3に、右円偏光反射層36の平面図を概念的に示す。
なお、平面図とは、
図1において、反射板14を光源13側から見た図であり、すなわち、反射板14を厚さ方向(=各層(膜)の積層方向)から見た図である。
また、
図3では、本発明の反射板14の構成を明確に示すために、
図1と同様、液晶化合物40は左円偏光反射層34の表面の液晶化合物40のみを示している。
【0071】
なお、
図3および後述する
図4では、右円偏光反射層36を代表例として説明するが、左円偏光反射層34も、反射する円偏光の旋回方向が逆、すなわち、液晶化合物40の捩れ方向(センス)が逆である以外は、基本的に、右円偏光反射層36と同様の構成を有し、同様の作用効果を発現する。
【0072】
図3に示すように、左円偏光反射層34の表面において、右円偏光反射層36を構成する液晶化合物40は、下層の左円偏光反射層34(すなわち配向膜32)に形成された配向パターンに応じて、矢印Xで示す所定の一方向、および、この一方向(矢印X方向)と直交する方向に、二次元的に配列された状態になっている。また、例えば、
図1、
図2および後述する
図4では、液晶化合物40が、配向膜に対して平行となるように図示されているが、配向膜に形成した配向パターンに応じて液晶化合物40が配向する場合は、液晶化合物40が配向膜に対して傾斜する場合もある。本発明の反射シートにおいては、コレステリック液晶層を形成する液晶化合物40は、配向膜に対して、平行であってもよいし、傾斜していてもよい。
以下の説明では、矢印X方向と直交する方向を、便宜的にY方向とする。すなわち、
図1、
図2および後述する
図4では、Y方向は、紙面に直交する方向となる。
また、右円偏光反射層36を形成する液晶化合物40は、好ましい態様として、右円偏光反射層36の面内において、矢印X方向に沿って、光学軸40Aの向きが、連続的に回転しながら変化する、液晶配向パターンを有する。図示例においては、液晶化合物40の光学軸40Aが、矢印X方向に沿って時計方向に連続的に回転しながら変化する、液晶配向パターンを有する。
上述したように、コレステリック液晶層の上に、塗布法によってコレステリック液晶層を形成すると、上層のコレステリック液晶層の液晶配向パターンは、形成面となる下層のコレステリック液晶層の表面における液晶配向パターンに追従する。従って、右円偏光反射層36の形成面となる左円偏光反射層34は、好ましい態様として、右円偏光反射層36と同じ液晶配向パターンを有する。
【0073】
液晶化合物40の光学軸40Aの向きが矢印X方向(所定の一方向)に連続的に回転しながら変化しているとは、具体的には、矢印X方向に沿って配列されている液晶化合物40の光学軸40Aと、矢印X方向とが成す角度が、矢印X方向の位置によって異なっており、矢印X方向に沿って、光学軸40Aと矢印X方向とが成す角度がθからθ+180°あるいはθ-180°まで、順次、変化していることを意味する。
なお、矢印X方向に互いに隣接する液晶化合物40の光学軸40Aの角度の差は、45°以下であるのが好ましく、15°以下であるのがより好ましく、15°より小さい角度であるのがさらに好ましい。
【0074】
一方、右円偏光反射層36を形成する液晶化合物40は、矢印X方向と直交するY方向では、光学軸40Aの向きが等しい。矢印X方向と直交するY方向とは、すなわち、光学軸40Aが連続的に回転する一方向と直交する方向である。
言い換えれば、右円偏光反射層36を形成する液晶化合物40は、Y方向では、液晶化合物40の光学軸40Aと矢印X方向とが成す角度が等しい。
【0075】
本発明の反射板14においては、このような液晶化合物40の液晶配向パターンにおいて、面内で光学軸40Aが連続的に回転して変化する矢印X方向において、液晶化合物40の光学軸40Aが180°回転する長さ(距離)を、液晶配向パターンにおける1周期の長さΛとする。
すなわち、矢印X方向に対する角度が等しい2つの液晶化合物40の、矢印X方向の中心間の距離を、1周期の長さΛとする。具体的には、
図3(
図4)に示すように、矢印X方向と光学軸40Aの方向とが一致する2つの液晶化合物40の、矢印X方向の中心間の距離を、1周期の長さΛとする。以下の説明では、この1周期の長さΛを『1周期Λ』とも言う。
本発明の反射板14において、コレステリック液晶層の液晶配向パターンは、この1周期Λを、矢印X方向すなわち光学軸40Aの向きが連続的に回転して変化する一方向に繰り返す。
【0076】
コレステリック液晶相を固定してなるコレステリック液晶層は、通常、入射した光(円偏光)を鏡面反射する。
これに対して、右円偏光反射層36は、入射した光を、入射光に対して矢印X方向に角度を有した方向に反射する。右円偏光反射層36は、面内において、矢印X方向(所定の一方向)に沿って光学軸40Aが連続的に回転しながら変化する、液晶配向パターンを有するものである。以下、
図4を参照して説明する。
【0077】
上述のように、右円偏光反射層36は、青色光の右円偏光BRを選択的に反射するコレステリック液晶層である。従って、右円偏光反射層36に光が入射すると、右円偏光反射層36は、青色光の右円偏光BRのみを反射し、それ以外の光を透過する。
【0078】
右円偏光反射層36に入射した青色光の右円偏光B
Rは、右円偏光反射層36(コレステリック液晶層)によって反射される際に、各液晶化合物40の光学軸40Aの向きに応じて絶対位相が変化する。
ここで、右円偏光反射層36では、液晶化合物40の光学軸40Aが矢印X方向(一方向)に沿って回転しながら変化している。そのため、光学軸40Aの向きによって、入射した青色光の右円偏光B
Rの絶対位相の変化量が異なる。
さらに、右円偏光反射層36に形成された液晶配向パターンは、矢印X方向に周期的なパターンである。そのため、右円偏光反射層36に入射した青色光の右円偏光B
Rには、
図4に概念的に示すように、それぞれの光学軸40Aの向きに対応した矢印X方向に周期的な絶対位相Qが与えられる。
また、液晶化合物40の光学軸40Aの矢印X方向に対する向きは、矢印X方向と直交するY方向の液晶化合物40の配列では、均一である。
これにより右円偏光反射層36では、青色光の右円偏光B
Rに対して、XY面に対して矢印X方向に傾いた等位相面Eが形成される。
そのため、青色光の右円偏光B
Rは、等位相面Eの法線方向に反射され、反射された青色光の右円偏光B
Rは、XY面に対して矢印X方向に傾いた方向に反射される。XY面とは、コレステリック液晶層の主面である。主面とは、シート状物(フィルム、板状物、層)の最大面である。
【0079】
コレステリック液晶層においては、この1周期Λが短いほど、上述した入射光に対する反射光の傾斜角度が大きくなる。すなわち、1周期Λが短いほど、反射光を大きく傾けて反射できる。
従って、コレステリック液晶層では、1周期Λを調節することで、入射した光の反射光の反射角度を調節できる。
【0080】
また、矢印X方向に向かう液晶化合物40の光学軸40Aの回転方向を逆にすることで、青色光の右円偏光B
Rの反射方向を逆にできる。すなわち、
図1~
図4においては、矢印X方向に向かう光学軸40Aの回転方向は時計回りで、青色光の右円偏光B
Rは矢印X方向に傾けて反射されるが、これを反時計回りとすることで、青色光の右円偏光B
Rは矢印X方向と逆方向に傾けて反射される。
【0081】
図示例の反射板14(反射シート)において、右円偏光反射層36の下層(形成面)は、左円偏光反射層34である。なお、光源13側から見た場合には、左円偏光反射層34は、右円偏光反射層36の上層となる。
上述したように、左円偏光反射層34と右円偏光反射層36とは、面方向には同じ液晶配向パターンを有する。
ここで、左円偏光反射層34は、青色光の左円偏光を選択的に反射するものであり、液晶化合物40の螺旋の捩れ方向が逆になる。従って、左円偏光反射層34では、
図4における等位相面Eの傾斜方向が逆になる。そのため、左円偏光反射層34による左円偏光の反射方向は、右円偏光反射層36とは逆の矢印X方向と逆方向になる。
【0082】
周知のように、コレステリック液晶相を固定してなるコレステリック液晶層では、主面に垂直な方向の断面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)で観察した際に、コレステリック液晶相に由来する明部(明線)と暗部(暗線)との縞模様が観察される。すなわち、コレステリック液晶層の断面では、厚さ方向に明部と暗部とを交互に積層した層状構造が観察される。
コレステリック液晶層では、明部と暗部の繰り返し2回分が、螺旋ピッチに相当する。このことから、コレステリック液晶層すなわち反射層の螺旋ピッチは、SEM断面図から測定することができる。明部と暗部の繰り返し2回分とは、すなわち、明部3つ、および、暗部2つ分、または、明部2つ、および、暗部3つ分である。
【0083】
通常のコレステリック液晶層においては、明部および暗部の縞模様(層状構造)は、コレステリック液晶層の主面(形成面)と平行に形成される。
これに対して、上述したように、液晶化合物40の光学軸40Aが、矢印X方向に沿って時計方向に連続的に回転しながら変化する、液晶配向パターンを有するコレステリック液晶層(左円偏光反射層34および右円偏光反射層36)では、
図5に概念的に示すように、明部(明線)および暗部(暗線)は、主面に対して、矢印X方向または逆方向に傾斜する。
この明部および暗部の傾斜は、上述した等位相面Eと一致する。従って、左円偏光反射層34と右円偏光反射層36とでは、
図5に示すように、明部と暗部の傾斜方向が逆であり、対応する円偏光の反射方向も逆方向になる。
本発明の反射シートおよび発光装置は、このような構成を有することにより、LCDのバックライトユニット等において、薄型化を図り、しかも、少ない光源数で輝度が均一な光を出射することを可能にしている。
以下、
図6の概念図を参照して、詳細に説明する。
【0084】
図6において、光源13は青色LEDであり、右円偏光反射層36は、青色光の右円偏光を選択的に反射し、左円偏光反射層34は、青色光の左円偏光を選択的に反射する。
図6では、左円偏光反射層34および右円偏光反射層36からなる反射シートにおける、光源13の直上の位置に入射した光(光源13の光軸上の光)を例に説明する。
光源13から照射された青色光は、反射シートにおいて、まず、右円偏光反射層36に入射する。
図6に示すように、光源13から照射された青色光のうち、破線で示す右円偏光の成分は、右円偏光反射層36に入射すると、一部は右円偏光反射層36を透過して左円偏光反射層34も透過して出射し、多くは右円偏光反射層36によって反射される。ここで、右円偏光反射層36による右円偏光の反射は、上述したように、鏡面反射ではなく、入射方向に対して矢印X方向に傾いた方向となる。
右円偏光反射層36によって矢印X方向に傾いて反射された青色光の右円偏光は、筐体12の底面の光反射面12aよって、さらに矢印X方向に傾いた方向に反射され、再度、右円偏光反射層36に入射する。
右円偏光反射層36に再入射した光は、同様に、一部は透過して同様に出射し、多くは右円偏光反射層36によって、さらに矢印X方向に傾いた方向に反射される。右円偏光反射層36に矢印X方向に傾いて反射された青色光の右円偏光は、筐体12の底面の光反射面12aよって、さらに矢印X方向に傾いた方向に反射され、再度、右円偏光反射層36に入射することを、繰り返す。
【0085】
他方、光源13から出射され、反射シートの光源13の直上の位置に入射した青色光のうち、左円偏光の成分(実線)は、右円偏光反射層36を透過して、左円偏光反射層34に入射する。
左円偏光反射層34に入射した青色光の左円偏光は、一部は透過して出射し、多くは左円偏光反射層34によって反射される。ここで、左円偏光反射層34による反射は、上述したように、鏡面反射ではなく、矢印X方向とは逆方向に傾いた方向に反射される。
左円偏光反射層34によって矢印X方向とは逆方向に傾いて反射された青色光の左円偏光は、筐体12の底面の光反射面12aよって、さらに矢印X方向とは逆方向に傾いた方向に反射され、再度、同様に左円偏光反射層34に入射する。
左円偏光反射層34に再入射した光は、同様に、一部は透過して、多くは左円偏光反射層34によって、さらに矢印X方向とは逆に傾いた方向に反射される。左円偏光反射層34に矢印X方向とは逆に傾いて反射された青色光の左円偏光は、筐体12の底面の光反射面12aよって、さらに矢印X方向とは逆に傾いた方向に反射され、再度、左円偏光反射層34に入射することを、繰り返す。
【0086】
以上の説明より明らかなように、左円偏光反射層34および右円偏光反射層36を有する本発明の反射シートおよび発光装置10によれば、光源13が照射した光を、矢印X方向および矢印X方向とは逆方向に傾けて反射して、矢印X方向および矢印X方向と逆方向に伝番するようにして、広く拡散できる。しかも、上述したように、本発明では、コレステリック液晶層の液晶配向パターンの1周期Λを調節することで、反射の角度を調節することが可能である。例えば、本発明では、液晶配向パターンの1周期Λを短くすることで、光を大きく傾けて反射し、光の拡散を拡大することも可能になる。
そのため、本発明によれば、バックライトユニット等の光源装置において、薄型化を図り、しかも、少ない光源数で輝度が均一な光を出射することができる。
【0087】
上述したように、本発明によれば、光源13が出射した光を広く拡散することができるので、発光装置10を薄くすると共に、光源13の間隔を広げて光源13の数を低減することができる。
本発明の発光装置10においては、光源13と隣の光源13との間隔d1が、筐体12の底面すなわち光源13の配置面と反射シート(右円偏光反射層36)との距離d2の5倍以上であるのが好ましく、8倍以上であるのが好ましく、12倍以上であるのがより好ましい。
光源13と隣の光源13との間隔d1を、光源13の配置面と反射シートとの距離d2の5倍以上とすることにより、十分に薄く、かつ、光源数の少ない発光装置10が得られる、発光装置自体の価格抑制および製造歩留まりを向上できる等の点で好ましい。
【0088】
右円偏光反射層36および左円偏光反射層34において、主面と、暗部および明部とが成す角度θには、制限はなく、要求される拡散反射性、光源13と隣の光源との間隔d1、および、光源13の配置面と反射シートとの距離d2等に応じて、適宜、設定すればよい。
ここで、主面と、暗部および明部とが成す角度θは、3~40°が好ましく、8~35°がより好ましく、10~30°がさらに好ましい。
主面と暗部および明部とが成す角度θを3°以上とすることにより、入射光に対する反射光の反射角度を大きくできる、多重反射によって光の広がりを確保できる等の点で好ましい。
主面と暗部および明部とが成す角度θを40°以下とすることにより、反射率を適度に保てる、光源間隔が広くてもバックライトの光を均一化できる、コレステリック液晶層内での全反射成分低減によって高輝度が得られる等の点で好ましい。
また、暗部および明部は、少なくとも一部が、周期的な波状の凹凸を成す、波打ち構造を形成していてもよい。すなわち、暗部および明部は、直線状のみで形成されていてもよく、直線状と波状が混在していてもよく、波状のみで形成されていてもよい。特に、各層の界面近傍の明部および暗部が波状を形成していると、光をより広げやすくなる場合がある。暗部および明部が波状の領域を有する場合、主面と暗部および明部とが成す角度θは、各領域の平均値として考えることができる。
【0089】
反射板14(本発明の反射シート)は、右円偏光反射層36および左円偏光反射層34に加え、
図1に破線で示すように、反射シートよりも光源13側に、λ/4層38を有するのが好ましい。図示例では、右円偏光反射層36よりも光源13側に、λ/4層38を有するのが好ましい。
【0090】
右円偏光を例に説明すると、右円偏光反射層36で反射された右円偏光は、筐体12内面の光反射面12aで反射されると、旋回方向が逆になって、左円偏光になる。この左円偏光は右円編光反射層36を透過して、左円偏光反射層34に入射するが、左円偏光反射層34は、右円偏光反射層36とは明部および暗部の傾斜角度が異なるため、反射率が大幅に低下してしまう可能性がある。
光反射面12aが、白色反射板のような拡散反射板である場合には、光反射面12aによる拡散反射によって、偏光が解消されるので、この問題は少ない。すなわち、光反射面12aが拡散反射板である場合には、λ/4層38を設けなくても、問題が発生する場合は少ない。
これに対して、光反射面12aが、金属反射面および上述したESR反射シートのように鏡面反射面である場合には、光反射面12aで反射されることで、円偏光のセンスが逆転する。例えば、右円偏光反射層36で反射した右円偏光は、光反射面12aで反射すると左円偏光となる。よって、再度、右円偏光反射層36に入射しても、反射せずに透過するので、光源13の輝度ムラを解消することができない。
【0091】
また、右円偏光反射層36よりも光源13側に、λ/4層38を有することにより、λ/4層38によって、再度、右円偏光反射層36に入射する光を右円偏光に変換できるため、右円偏光反射層36での再反射が可能となる。従って、光源13の輝度ムラを解消することができる。
【0092】
λ/4層38には、制限はなく、公知のλ/4層が、各種、利用可能である。
一例として、延伸による位相差フィルム(光学的に略一軸性または略二軸性)、ネマチック液晶層またはスメクチック液晶層を形成する液晶モノマーを重合して形成した液晶化合物(円盤状液晶、棒状液晶化合物など)の少なくともひとつを含む1層以上の位相差フィルム、重合性液晶化合物を用いて形成されたλ/4フィルム等が例示される。
延伸による位相差フィルムは、フィルム製造時の搬送方向への延伸または搬送方向と垂直方向への延伸、および、搬送方向に対し45°±10°延伸した位相差フィルムが例示される。環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)などを45°±10°延伸した位相差フィルム、または、透明フィルム上を配向処理し、処理表面に、フィルムの製造時搬送方向に対し、液晶化合物を45°±10°方位に配向させた層を有するフィルムが好ましい。
【0093】
なお、図示例の発光装置10は、好ましい態様として、反射シートを構成する右円偏光反射層36と左円偏光反射層34とで、コレステリック液晶層に起因する明部と暗部との傾斜方向が逆であるが、本発明は、これに制限はされない。
すなわち、本発明は、反射シートを構成する右円偏光反射層36と左円偏光反射層34とで、コレステリック液晶層に起因する明部と暗部との傾斜方向が一致していてもよい。しかしながら、この構成では、右円偏光反射層36と左円偏光反射層34とで、入射光を傾けて反射する方向が同じ方向になるので、光源13が照射した光の拡散性の点で、不利である。
なお、右円偏光反射層36と左円偏光反射層34とで、コレステリック液晶層に起因する明部と暗部との傾斜方向が一致する反射シートは、上述のように、左円偏光反射層34の上に、直接、塗布法によって右円偏光反射層36を形成するのではなく、左円偏光反射層34の上に、矢印X方向に向かう光学軸40Aの回転方向が逆になる配向膜を形成し、この配向膜の上に、塗布法によって右円偏光反射層36を形成することで、作製できる。
【0094】
ここで、右円偏光反射層36および左円偏光反射層34による光の拡散方向(光の伝搬方向)は、液晶化合物40の光学軸40Aが連続的に回転して変化する方向のみである。すなわち、右円偏光反射層36および左円偏光反射層34による光の拡散方向は、矢印X方向または矢印X方向とは逆方向のみであり、例えば、矢印Y方向には、光を拡散することができない。
そのため、発光装置10の用途、光源13の種類および配向分布、光源13の配列、ならびに、光源13の間隔等によっては、十分に光を拡散できない場合もある。
【0095】
これに対応して、本発明の反射シートは、好ましくは、右円偏光反射層および左偏光反射層の一方、好ましくは両方が、面内に、液晶配向パターンにおける液晶化合物40の光学軸40Aの向きが連続的に回転しながら変化する面内の方向が、互いに異なる領域を有するのが好ましい。このような構成を有することにより、好ましい態様として、コレステリック液晶相に由来する明部および暗部の主面に対する傾斜方向が、互いに異なる領域を有するコレステリック液晶層を形成できる。
以下の説明では、『液晶配向パターンにおける液晶化合物40の光学軸40Aの向きが連続的に回転しながら変化する面内の方向』を、単に、『光学軸40Aの向きが変化する方向』ともいう。
【0096】
図7に、その一例を示す。
図7に示す本発明の反射シートは、左円偏光反射層50と右円偏光反射層52とを有する。なお、
図7に示す本発明の反射シートは、各円偏光反射層が、面内に、光学軸40Aの向きが変化する方向が、互いに異なる領域を有する以外は、基本的に、上述した右円偏光反射層36および左円偏光反射層34と同様の構成を有する。
従って、左円偏光反射層50および右円偏光反射層52は、同じ液晶配向パターンを有する。
【0097】
左円偏光反射層50を代表例に説明すると、左円偏光反射層50は、図中横方向にストライプ状に分割されており、光学軸40Aの向きが変化する方向が矢印Xa方向である領域50aと、光学軸40Aの向きが変化する方向が矢印Xb方向である領域50bとが、交互に設けられている。
矢印Xa方向と矢印Xb方向とは、互いに直交している。すなわち、矢印Xa方向は図中横方向に対して45°傾斜しており、矢印Xb方向は図中横方向に対して-45°傾斜している。従って、本例では、領域50aと領域50bとによって、コレステリック液晶相に由来する明部および暗部の主面に対する傾斜方向が直交する領域が、ストライプ状に形成される。
【0098】
液晶化合物40の光学軸40Aが連続的に回転して変化する液晶配向パターンを有するコレステリック液晶層は、光の入射方向に対して、光学軸40Aの向きが変化する方向、または逆方向に向かって、入射した円偏光を傾斜して反射する。
従って、図中破線で示す、左円偏光反射層50の領域50aに入射した左円偏光は、入射方向に対して矢印Xa方向に傾けて反射される。他方、図中実線で示す、左円偏光反射層50の領域50bに入射した左円偏光は、入射方向に対して、矢印Xa方向と直交する矢印Xb方向に傾けて反射される。
すなわち、左円偏光反射層50に入射した左円偏光は、入射した領域に応じて、入射方向に対して傾斜する反射方向が、90°異なる方向となる。
左円偏光反射層50および右円偏光反射層52は、同じ液晶配向パターンを有する。従って、右円偏光反射層52も、同様のストライプ状の領域を有している。すなわち、右円偏光反射層52において、領域52aは左円偏光反射層50の領域50aと同様の液晶配向パターンを有し、領域52bは左円偏光反射層50の領域50bと同様の液晶配向パターンを有する。従って、右円偏光反射層52に入射した右円偏光も、同様に、入射した領域に応じて、入射方向に対して傾斜する反射方向が、90°異なる方向となる。
【0099】
従って、本発明の反射シートは、面内に、光学軸40Aの向きが変化する方向が、互いに異なる領域を有するコレステリック液晶層(右円偏光反射層および左偏光反射層)を有することにより、円偏光が入射した領域に応じて、異なる方向に傾けて円偏光を反射できる。そのため、この構成によれば、光の拡散方向(伝搬方向)を二次元的にして、より好適に光を拡散して、照射する光の輝度の均一化を図れる。
【0100】
光学軸40Aの向きが変化する方向が、互いに異なる領域を有する右円偏光反射層および左偏光反射層(コレステリック液晶層)は、
図7に示すように、互いに直交する方向に光学軸40Aの向きが回転する構成に制限はされない。
一般的に、光学軸40Aの向きが変化する方向が異なる領域の種類が多いほど、好適に円偏光を拡散できる。
【0101】
好適な一例として、
図8に示す構成が例示される。
図8に示すコレステリック液晶層(右円偏光反射層または左偏光反射層)も、ストライプ状に分割された領域を有する。
図8に示す例においては、図中左側の光学軸40Aの向きが変化する方向が図中横方向(X1方向)である領域aを基準(0°)として、ストライプの配列方向に隣接して、図中右方向に向かって、光学軸40Aの向きが変化する方向がX1方向に対して45°傾いた矢印X2方向である領域b、光学軸40Aの向きが変化する方向がX1方向に対して90°傾いた矢印X3方向である領域c、および、光学軸40Aの向きが変化する方向がX1方向に対して135°傾いた矢印X4方向である領域dが、繰り返し形成される。すなわち、この例では、コレステリック液晶相に由来する明部および暗部の主面に対する傾斜方向が、X1方向~X4方向となる領域が、ストライプ状に形成される。
このような構成によれば、より光の拡散方向(伝搬方向)を様々な方向にして、より好適に光を二次元的に拡散して、照射する光の輝度の均一化を図れる。
【0102】
このような光学軸40Aの向きが変化する方向が異なる領域を有するコレステリック液晶層は、
図10に示す露光装置60を用いる配向膜32の露光において、マスキングを行って、配向膜32(支持体30)の角度(向き)を変更した露光を行うことにより、作製できる。
例えば、
図8に示すコレステリック液晶層であれば、まず、領域aに対応する位置以外をマスキングして、光学軸40Aの向きが変化する方向が矢印X1方向(0°)になるようにして、露光装置60で配向膜32の露光を行う。
次いで、領域bに対応する位置以外をマスキングして、配向膜32(または露光装置60)を面方向に45°回転して、光学軸40Aの向きが変化する方向が矢印X2方向(45°)になるようにして、露光装置60で配向膜32の露光を行う。
次いで、領域cに対応する位置以外をマスキングして、配向膜32を面方向に45°回転して、光学軸40Aの向きが変化する方向が矢印X3方向(90°)になるようにして、露光装置60で配向膜32の露光を行う。
最後に、領域dに対応する位置以外をマスキングして、配向膜32を面方向に45°回転して、光学軸40Aの向きが変化する方向が矢印X4方向(135°)になるようにして、露光装置60で配向膜32の露光を行う。
これにより、光学軸40Aの向きが変化する方向が矢印X1方向~矢印X4方向である、領域a~領域dを有するコレステリック液晶層を作製できる。
【0103】
図7および
図8に示す例では、好ましい態様として、光学軸40Aの向きが変化する方向が互いに異なる領域、すなわち、コレステリック液晶相に由来する明部および暗部の主面に対する傾斜方向が互いに異なる領域を、ストライプ状に有しているが、本発明は、これに制限はされない。
例えば、円偏光反射層(コレステリック液晶層)を面方向に半分に分割して、光学軸40Aの向きが変化する方向が異なる領域を有する構成、および、直交する直線で円偏光反射層を面方向に4分割して、光学軸40Aの向きが変化する方向が異なる領域を有する構成等であってもよい。
【0104】
なお、本発明において、面内に、液晶配向パターンにおける液晶化合物40の光学軸40Aの向きが連続的に回転しながら変化する面内の方向が、互いに異なる領域を有する円偏光反射層(コレステリック液晶層)を有する場合には、本発明の反射シートは、必ずしも、右円偏光反射層と、左円偏光反射層との、両方を有する構成に制限はされない。
すなわち、本発明の反射シートの第2の態様は、コレステリック液晶層を、1層のみ、有するものであり、例えば、左円偏光反射層50のみを有するものでも、右円偏光反射層52のみを有するものでもよい。
【0105】
上述した発光装置10は、青色光を出射する青色LEDを光源13として用い、右円偏光反射層36および左円偏光反射層34が、青色光を選択的に反射する、青色光を照射する発光装置であるが、本発明は、これに制限はされない。
例えば、赤色光を出射する赤色LEDを光源として用い、右円偏光反射層および左円偏光反射層が、赤色光を選択的に反射する、赤色光を照射する発光装置であってもよく、緑色光を出射する緑色LEDを光源として用い、右円偏光反射層および左円偏光反射層が、緑色光を選択的に反射する、緑色光を照射する発光装置であってもよい。
さらに、本発明の発光装置は、光源として、青色LED、緑色LEDおよび赤色LEDを用い、青色光を選択的に反射する右円偏光反射層および左円偏光反射層との組み合わせ、緑色光を選択的に反射する右円偏光反射層および左円偏光反射層との組み合わせ、ならびに、赤色光を選択的に反射する右円偏光反射層および左円偏光反射層との組み合わせの、3組の円偏光反射層(コレステリック液晶層)の組み合わせを積層した、白色光を照射する発光装置でもよい。
また、本発明の発光装置は、青色、緑色および赤色から、適宜、選択した2色に対応する光を照射する発光装置でもよい。
【0106】
また、本発明の反射シートは、左円偏光反射層34および右円偏光反射層36(コレステリック液晶層)の少なくとも1層、好ましくは両方が、厚さ方向でコレステリック液晶相の螺旋ピッチが変化するものでもよい。以下の説明では、厚さ方向でコレステリック液晶相の螺旋ピッチが変化する構造を、便宜的に『ピッチグラジエント構造』とも言う。
【0107】
上述のように、コレステリック液晶相の選択反射中心波長(選択的な反射波長域)は、コレステリック液晶相の螺旋のピッチPに依存する。すなわち、コレステリック液晶相の選択反射中心波長は、ピッチPが長いほど、長波長になる。
従って、コレステリック液晶層がピッチグラジエント構造を有することにより、厚さ方向の位置に応じて、選択中心反射波長を変えることができ、広い波長域に対応して、右円偏光または左円偏光を選択的に反射することができる。
【0108】
コレステリック液晶層におけるピッチグラジエント構造には、制限はなく、厚さ方向でピッチPが変化していれば、各種の構成が利用可能である。
一例として、光源13側から支持体30側に向かって、漸次、ピッチPが短くなる構成、および、光源13側から支持体30側に向かって、漸次、ピッチPが長くなる構成が例示される。この際においては、部分的に、ピッチPが一定の領域を有してもよい。
例えば、光源13側から支持体30側に向かって、漸次、ピッチPが短くなるコレステリック液晶層では、光源13側から支持体30側に向かって、選択反射中心波長すなわち選択的に反射する光の波長帯域が、漸次、短波長になる。
【0109】
ピッチグラジエント構造を有するコレステリック液晶層は、光の照射によって、戻り異性化、二量化、ならびに、異性化および二量化等を生じて、螺旋誘起力(HTP:Helical Twisting Power)が変化するキラル剤を用い、コレステリック液晶層を形成する液晶組成物の硬化前、または、液晶組成物の硬化時、キラル剤のHTPを変化させる波長の光を照射することで、形成できる。
光の照射によってHTPが変化するキラル剤としては、例えば、シンナモイル基を有するキラル剤が例示される。
【0110】
例えば、光の照射によってHTPが小さくなるキラル剤を用いることにより、光の照射によってキラル剤のHTPが低下する。
ここで、キラル剤のHTPを変化させる波長の光の吸光度を、コレステリック液晶層の形成材料で調節することで、コレステリック液晶層の膜厚方向でのHTP分布を調整することができる。従って、例えば、表面(支持体30と逆側)から光を照射した場合には、光の照射量は、表面から支持体30に向かって、漸次、少なくなる。すなわち、キラル剤のHTPの低下量は、表面から支持体30に向かって、漸次、小さくなる。そのため、HTPが大きく低下した表面側では、螺旋の誘起が小さいので螺旋ピッチが長くなる。これに対して、HTPの低下が小さい支持体30側では、キラル剤が、本来、有するHTPで螺旋が誘起されるので、螺旋ピッチが短くなる。
すなわち、この場合には、コレステリック液晶層(右円偏光反射層36および左円偏光反射層34)は、光源13側では長波長の光を選択的に反射し、支持体30側では、光源13側に比して短波長の光を選択的に反射する。従って、厚さ方向で螺旋ピッチが変化するピッチグラジエント構造のコレステリック液晶層を用いることにより、広い波長帯域の光を選択的に反射できる。
【0111】
上述のように、面内の一方向に沿って液晶化合物40の光学軸40Aが連続的に回転しながら変化する液晶配向パターンを有するコレステリック液晶層では、
図5に概念的に示すように、SEMで観察した断面において、明部および暗部が、主面に対して傾斜する。
ピッチグラジエント構造を有するコレステリック液晶層では、螺旋のピッチPが長くなる領域で、主面に対する明部および暗部の角度θが、大きくなる。従って、例えば、光源13側から支持体30側に向かって、ピッチPが、漸次、小さくなるコレステリック液晶層であれば、明部および暗部は、光源13側から支持体30側に向かって、漸次、
接線の角度θが小さくなる曲線状となる。
【0112】
以上の例は、コレステリック液晶層(右円偏光反射層36および左円偏光反射層34)が、液晶化合物40に由来する光学軸40Aの向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンを有することにより、コレステリック液晶層が、SEMによって観察される断面において、コレステリック液晶相に由来する明部および暗部が、主面に対して傾斜する構成を実現している。
しかしながら、本発明は、これに制限はされず、コレステリック液晶層が、SEMによって観察される断面において、コレステリック液晶相に由来する明部および暗部が、主面に対して傾斜する構成であれば、各種の態様が利用可能である。
一例として、コレステリック液晶層の形成において、光の照射により螺旋誘起力(HTP)が変化するキラル剤Xを用いることで、SEMによって観察される断面において、コレステリック液晶相に由来する明部および暗部が、主面に対して傾斜するコレステリック液晶層を形成する方法が例示される。
【0113】
(キラル剤Xを含む液晶組成物によるコレステリック液晶層の形成)
以下に、キラル剤Xを含む液晶組成物を使用することによって、SEMで観察される断面において、コレステリック液晶相に由来する明部および暗部が主面に対して傾斜するコレステリック液晶層を形成する方法を説明する。
まず、以下に示す工程1-1および工程1-2を行う。
工程1-1:円盤状液晶化合物を含む組成物(液晶層形成用組成物)を用いて、プレチルト角を有するラビング配向膜を表面に配置した基板上に組成物層を形成する工程
工程1-2:組成物層中の円盤状化合物を配向させる工程
【0114】
キラル剤Xを含む液晶組成物を使用してコレステリック液晶層を形成する場合、下記の工程2-1において条件1または条件2を満たす組成物層を形成した後、工程2-2において、組成物層に光照射処理を施すことにより、組成物層中の液晶化合物をコレステリック配向させる。つまり、工程2-2では、光照射処理によって、組成物層中のキラル剤Xの螺旋誘起力を変化させることにより、組成物層中の液晶化合物をコレステリック配向させている。
工程2-1:
工程1-1および工程1-2で形成した液晶層上に、下記条件1または下記条件2を満たす組成物層を形成する工程
条件1:組成物層中の液晶化合物の少なくとも一部が、組成物層表面に対して、傾斜配向している
条件2:組成物層中の液晶化合物のチルト角が厚み方向に沿って連続的に変化するように、液晶化合物が配向している
工程2-2:
組成物層中の液晶化合物をコレステリック配向させる処理を実施して、コレステリック液晶層を形成する工程。
以下に、工程2-1および工程2-2について説明する。
【0115】
<工程2-1の作用機序>
まず、
図9に、工程2-1により得られる条件1を満たす組成物層の断面模式図を示す。なお、
図9に示す液晶化合物40は、棒状液晶化合物である。
【0116】
図9に示すように、組成物層100は、円盤状液晶化合物を用いて形成された液晶層102上に形成される。液晶層102は、組成物層100と接する側の表面において、円盤状液晶化合物の分子軸が、液晶層102の表面に対して傾斜している傾斜配向面102aを有する。
図9に示すように、液晶層102の傾斜配向面102a上に配置される組成物層100中、液晶化合物40は、傾斜配向面102aによって緩く配向規制されることで、傾斜配向面102aに対して傾斜するように配向する。言い換えると、組成物層100中において、液晶化合物40は、液晶化合物40の分子軸L
1が組成物層100の表面に対して所定の角度θ
10となるように一定の方向(一軸方向)に配向している。
【0117】
なお、
図9では、組成物層100の厚み方向R
1の全域に渡って、液晶化合物40が、傾斜配向面102aに対して分子軸L
1が所定の角度θ
10となるように配向している実施形態を示した。しかしながら、工程2-1により得られる条件1を満たす組成物層としては、液晶化合物40の一部が傾斜配向していればよく、組成物層100の傾斜配向面102a側表面(
図9中の領域Aに該当)、および、組成物層100の傾斜配向面102a側とは反対側の表面(
図9中の領域Bに該当)の少なくとも一方において、液晶化合物40が組成物層100の表面に対して分子軸L
1が所定の角度θ
10となるように配向していることが好ましく、傾斜配向面102a側表面において、液晶化合物40が、組成物層100の表面に対して分子軸L
1が所定の角度θ
10となるように傾斜配向していることがより好ましい。
なお、領域Aおよび領域Bのいずれか少なくとも一方において、液晶化合物40が組成物層100の表面に対して分子軸L
1が所定の角度θ
10となるように配向していれば、続く工程2-2において液晶化合物40をコレステリック液晶相の状態とした際に、領域Aおよび/または領域B中の配向された液晶化合物40に基づく配向規制力により、他の領域の液晶化合物40のコレステリック配向を誘起させることができる。
【0118】
また、図示はしないが、条件2を満たす組成物層は、液晶化合物40が、組成物層100の表面に対してハイブリッド配向したものに相当する。つまり、角度θ
10が厚さ方向で連続的に変化する態様に相当する。
なお、工程2-1により得られる条件2を満たす組成物層としては、液晶化合物40の一部がハイブリッド配向していればよく、組成物層100の傾斜配向面102a側表面(
図9中の領域Aに該当)、および、組成物層100の傾斜配向面102a側とは反対側の表面(
図9中の領域Bに該当)の少なくとも一方において、液晶化合物40が傾斜配向面102aに対してハイブリッド配向していることが好ましく、傾斜配向面102a側表面において液晶化合物40が組成物層100の表面に対してハイブリッド配向していることがより好ましい。
【0119】
角度θ10は、組成物層全体において0°でなければ特に制限されない。なお、角度θ10が組成物層全体において0°である場合、液晶化合物40の分子軸L1は、液晶化合物40が棒状液晶化合物であるときは傾斜配向面102aに対して平行となる。言い換えると、組成物層の一部の領域において角度θ10が0°であることを妨げるものではない。
角度θ10としては、例えば0~90°である。なかでも、角度θ10は、0~50°であることが好ましく、0~30°であることがより好ましい。
【0120】
なお、コレステリック液晶層の反射異方性がより優れる点で、工程2-1により得られる組成物層は、条件2を満たす組成物層が好ましい。
【0121】
<工程2-2の作用機序>
工程2-1により条件1または条件2を満たす組成物層を得た後、工程2-2において組成物層中の液晶化合物をコレステリック配向させて、コレステリック液晶層を形成する。なお、液晶化合物をコレステリック配向させるとは、言い換えると、液晶化合物をコレステリック液晶相とすることである。
この結果として、SEMによって観察される断面において、コレステリック液晶相に由来する明部および暗部が、主面に対して傾斜するコレステリック液晶層を形成できる。
【0122】
本実施形態のコレステリック液晶層の製造方法においては、例えば、組成物層中に光照射によって螺旋誘起力が変化するキラル剤X、および、光照射によって螺旋誘起力が変化せず、キラル剤Xと逆方向の螺旋誘起力を有するキラル剤Yを含ませると、工程2-1の際に、組成物層中のキラル剤Xはその螺旋誘起力が略ゼロに相殺されることによって、組成物層中の液晶化合物を配向させて、傾斜配向、または、ハイブリッド配向とすることができる。
次いで、工程2-2の光照射処理を契機として、キラル剤Xの螺旋誘起力を変化させて、組成物層中のキラル剤の螺旋誘起力を右方向(+)および左方向(-)のいずれかの方向に増大させることで、SEMで観察される断面において、コレステリック液晶相に由来する明部および暗部が、主面に対して傾斜するコレステリック液晶層を形成できる。
【0123】
なお、キラル剤Xを用いるコレステリック液晶層の形成において、
図7および
図8に示されるような、コレステリック液晶相に由来する明部および暗部の傾斜方向が異なる領域を有するコレステリック液晶層を形成する際には、後述する実施例に示すように、領域毎に、明部および暗部の傾斜方向に応じて、配向膜の配向方向を調節すればよい。
また、キラル剤Xを用いるコレステリック液晶層において、ピッチグラジエント構造を形成する際には、ピッチグラジエント構成を得るために照射する異性化光量の調節によって、膜厚方向の到達光量分布を形成することで、ピッチグラジエント構造が得られる。
【0124】
以上、本発明の反射シートおよび発光装置について詳細に説明したが、本発明は上述の例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのは、もちろんである。
【実施例】
【0125】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、使用量、物質量、割合、処理内容、および、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0126】
(反射シート1の作製)
特開2017-92021号公報の実施例1に記載されたハーフミラー(誘電体多層膜)を、膜厚50μmのポリカーボネートフィルム上に形成し、反射シート1とした。
【0127】
(反射シート2の作製)
<配向膜2の作製>
厚さ80μmのTACフィルム(富士フイルム社製、TD80UL)を支持体として用意した。
支持体上に、下記の配向膜形成用塗布液を#2のワイヤーバーで連続的に塗布した。この配向膜形成用塗布液の塗膜が形成された支持体を60℃のホットプレート上で60秒間乾燥し、塗布膜を形成した。
【0128】
配向膜形成用塗布液
―――――――――――――――――――――――――――――――――
光配向用素材A 1.00質量部
水 16.00質量部
ブトキシエタノール 42.00質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 42.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0129】
【0130】
形成した塗布膜に、空気下にて160W/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス社製)をUV(ultraviolet(紫外線))ランプとして用い、マスク(露光マスク)とワイヤーグリッド偏光子とを介して、以下に示す4回の紫外線照射を行うことで、配向膜2を作製した。なお、反射シートの番号と配向膜の番号とを一致させるために、本実施例においては、配向膜1は、抜け番号としている。
マスクは、ストライプ幅50μmの透過部と、ストライプ幅170μmの遮蔽部とが交互に配置されたストライプマスクを用いた。ストライプ幅とは、ストライプの短手方向の長さである。
1回目の露光は、マスクの周期方向(ストライプの配列方向 以下、方向Aとする)とワイヤーグリッド偏光子の透過軸が一致する状態で実施し、UVランプを傾けて、フィルム法線方向から方向Aに少し傾いた向きからUV光を照射した。
2回目の露光は、1回目の露光時からマスクを方向Aに55μmずらすとともに、ワイヤーグリッド偏光子の透過軸を時計回りに45°ずらした状態で実施し、1回目の露光の向きから、フィルム法線方向に対して時計回りに45°回転した向きからUV光を照射した。
3回目の露光は、1回目の露光時からマスクを方向Aに110μmずらすとともに、ワイヤーグリッド偏光子の透過軸を時計回りに90°ずらした状態で実施し、1回目の露光の向きから、フィルム法線方向に対して時計回りに90°回転した向きからUV光を照射した。
4回目の露光は、1回目の露光時から露光マスクを方向Aに165μmずらすとともに、ワイヤーグリッド偏光子の透過軸を時計回りに135°ずらした状態で実施し、1回目の露光の向きから、フィルム法線方向に対して時計回りに135°回転した向きからUV光を照射した。
紫外線の照度は、UV-A領域(波長380nm~320nmの積算)において100mW/cm2、照射量はUV-A領域において、50mJ/cm2とした。
【0131】
<キラル剤>
下記のキラル剤Aおよびキラル剤Bを用意した。なお、Buはブチル基を表す。
【0132】
【0133】
【0134】
キラル剤Aは、右巻きの螺旋を形成するキラル剤である。また、キラル剤Bは、左巻きの螺旋を形成するキラル剤である。
【0135】
<右円偏光反射層の形成>
【0136】
下記に示す組成物を、25℃に保温された容器中にて、攪拌、溶解させ、反射層用塗布液Ch-Aを調製した。
【0137】
反射層用塗布液Ch-A
―――――――――――――――――――――――――――――――――
メチルエチルケトン 144.9質量部
下記の棒状液晶化合物の混合物 100.0質量部
光重合開始剤A 1.5質量部
光重合開始剤B 0.5質量部
キラル剤A 6.5質量部
下記の界面活性剤 F1 0.027質量部
下記の界面活性剤 F2 0.067質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0138】
棒状液晶化合物の混合物
【化4】
上記混合物において、数値は質量%である。また、Rは酸素原子で結合する基である。上記の棒状液晶化合物の波長300~400nmにおける平均モル吸光係数は、140/mol・cmであった。
【0139】
光重合開始剤A; IRGACURE 907 (チバガイギー社製)
光重合開始剤B; カヤキュアーDETX(日本化薬社製)
【0140】
【0141】
【0142】
作製した配向膜2を有する支持体の表面に、調製した反射層用塗布液Ch-Aを#10.5のワイヤーバーコーターで塗布し、105℃で60秒乾燥した。
その後、低酸素雰囲気下(100ppm以下)にて、40℃で、照射量60mJのメタルハライドランプの光を、光学フィルタSH0350(朝日分光社製)越しに照射し、さらに、100℃で照射量500mJのメタルハライドランプの光を照射することで、コレステリック液晶層である膜厚6.4μmの右円偏光反射層を作製した。
【0143】
<左円偏光反射層の形成>
下記に示す組成物を、25℃に保温された容器中にて、攪拌、溶解させ、反射層用塗布液Ch-Bを調製した。
【0144】
反射層用塗布液Ch-B
―――――――――――――――――――――――――――――――――
メチルエチルケトン 150.6質量部
上記の棒状液晶化合物の混合物 100.0質量部
光重合開始剤B 1.5質量部
キラル剤B 10.3質量部
上記の界面活性剤 F1 0.027質量部
上記の界面活性剤 F2 0.067質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0145】
上記作製した右円偏光反射層の表面に、調製した反射層用塗布液Ch-Bを、#10.5のワイヤーバーコーターで塗布し、105℃で60秒乾燥した。
その後、低酸素雰囲気下(100ppm以下)にて、75℃で、照射量60mJのメタルハライドランプの光を、光学フィルタSH0350(朝日分光社製)を通して照射し、さらに、100℃で、照射量500mJのメタルハライドランプの光を照射することで、コレステリック液晶層である膜厚6.4μmの左円偏光反射層を形成した。このような手順で、右円偏光反射層の上に左円偏光反射層を形成して、反射シート2を作製した。
【0146】
(反射シート3~6の作製)
図10に示す、波長(325nm)のレーザ光を出射する露光装置を用意した。
上述した配向膜2の作製において、マスク(ストライプマスク)およびワイヤーグリッド偏光子を介した紫外線照射の代わりに、
図10に示す露光装置を用い、以下に示す、同じマスクを介した4回のレーザー光露光を行うことで、配向膜3~6を作製した。
2つのレーザ光の干渉により形成される配向パターンの周期方向を方向Bとすると、1回目の露光は、マスクの方向Aと方向Bとが一致する状態で実施した。なお、マスクの方向Aとは、上述のようにマスクの周期方向(ストライプの配列方向)である。
2回目の露光は、1回目の露光時からマスクを方向Aに55μmずらすとともに、マスクの方向Aから時計回りに45°となる方向が方向Bとなる状態で実施した。
3回目の露光は、1回目の露光時からマスクを方向Aに110μmずらすとともに、マスクの方向Aから時計回りに90°となる方向が方向Bとなる状態で実施した。
4回目の露光は、1回目の露光時からマスクを方向Aに165μmずらすとともに、マスクの方向Aから時計回りに135°となる方向が方向Bとなる状態で実施した。
露光量はいずれも300mJ/cm
2とした。
なお、2つのレーザ光および
その干渉により形成される配向パターンの1周期(液晶化合物由来の光学軸が180°回転する長さ)は、2つの光の交差角(交差角α)を変化させることによって制御した。これにより、反射シート3~6の配向膜3~6を作製した。
【0147】
さらに、反射シート2の右円偏光反射層および左円偏光反射層の形成において、光重合開始剤の量とキラル剤の種類および量を、適宜、変更した以外は、同様の方法で、膜厚6.4μmの右円偏光反射層および左円偏光反射層を形成して、反射シート3~6を作製した。
具体的には、反射シート3の右円偏光反射層および左円偏光反射層は、反射シート2の右円偏光反射層および左円偏光反射層と同じ処方であるが、配向膜が異なるために、反射層(コレステリック液晶層)の断面の明部および暗部の傾斜がある点で、反射シート2と異なる。
反射シート4は、配向膜3とは異なる入射角で露光して配向膜4を形成する点と、反射シート3における右円偏光反射層および左円偏光反射層を形成する塗布液中の光重合開始剤を減量した点、ならびに、キラル剤を増量した点が、反射シート3と異なる。キラル剤の増量により、膜厚方向の到達光量に差が出るので、ピッチグラジエント構造が形成される。
反射シート5は、配向膜3とは異なる入射角で露光して配向膜5を形成する点と、反射シート3における右円偏光反射層および左円偏光反射層を形成する塗布液中の光重合開始剤を減量した点、ならびに、キラル剤を増量した点が、反射シート3と異なる。
反射シート6は、配向膜4とは異なる入射角で露光し、配向パターンの1周期を短くして配向膜6を形成した点で異なる。配向パターンの1周期を短くすることで、円偏光を反射する際の入射方向に対する反射の傾斜が大きくなる。本例では、右円偏光反射層および左円偏光反射層は、反射シート4と同じである。
なお、コレステリック液晶層(右円偏光反射層およびは左円偏光反射層)に配向不良が発生する場合は、調製した塗布液を多層塗布することで、膜厚6.4μmの右円偏光反射層および左円偏光反射層を形成した。多層塗布とは、液晶塗布液を塗布、乾燥後に紫外線硬化を行って液晶固定化層を作製した後、2層目以降はその液晶固定化層に重ね塗り塗布を行い、同様に乾燥後に紫外線硬化を行うステップを繰り返すことを指す。多層塗布で形成することにより、コレステリック液晶層の総厚が厚くなった時でも配向膜の配向方向が液晶層の下面から上面にわたって反映され、配向不良を抑制できる。また、多層塗布でピッチグラジエント構造を形成する場合は、積層数が増すほど、塗布液に含まれるキラル剤を減量した塗布液を用いて多層塗布を実施した。
【0148】
反射シートの断面をSEMで確認し、反射層のコレステリック液晶層における液晶の配向状態由来の周期構造を確認した。
反射シート3~6のコレステリック液晶層は、配向膜の面内1ドメインにおいて、一様に傾斜配向していること、反射層の境界部に対して、右円偏光反射層と左円偏光反射層とで傾斜角度が逆向きであることを確認した。反射シート4~6のコレステリック液晶層は、各反射層内において、膜厚方向で螺旋ピッチが変化するピッチグラジエント構造であることを確認した。
【0149】
(反射シート7の作製)
下記に示す組成物を、25℃に保温された容器中で、攪拌、溶解させ、円盤状液晶塗布用組成物を調製した。
調製した円盤状液晶塗布液を、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、塗布液として用いた。上述のように作製した配向膜2を有する支持体の表面に、塗布液を#2.4のワイヤーバーコーターで塗布し、120℃で60秒乾燥した。続いて、30℃、窒素雰囲気下で500mJ/cm2の照射量でUV(紫外線)を照射することにより上記塗膜を硬化し、配向膜7を作製した。
作製した配向膜7は、配向膜2の配向パターンに基づき、面内に液晶配向のパターンを有していた。
【0150】
円盤状液晶塗布用組成物
――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記円盤状液晶化合物D-1 100質量部
開始剤Irg-907(BASF製) 3.0質量部
溶剤(メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=90/10(質量比))
溶質濃度が30質量%となる量
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【0151】
【0152】
下記に示す組成物を、25℃に保温された容器中にて、攪拌、溶解させ、反射層用塗布液Ch-Cを調製した。
【0153】
反射層用塗布液Ch-C
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上記の棒状液晶化合物の混合物 化5 100.0質量部
光重合開始剤B 0.2質量部
キラル剤CD-1 6.7質量部
キラル剤CD-2 6.7質量部
上記の界面活性剤 F1 0.01質量部
溶剤(メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=90/10(質量比))
溶質濃度が30質量%となる量
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【0154】
【化8】
【化9】
なお、CD-1は左巻きの螺旋を形成するキラル剤、CD-2は光により異性化し、右巻きの螺旋を形成するキラル剤である。
【0155】
作製した配向膜7の表面に、調製した反射層用塗布液Ch-Cを#15のワイヤーバーコーターで塗布し、105℃で60秒乾燥した。
続いて、30℃にて光源(UVP社製、2UV・トランスイルミネーター)より波長365nmの光を2mW/cm2の照射強度で70秒間紫外線を照射した。その後、低酸素雰囲気下(100ppm以下)にて、50℃で、照射量120mJのメタルハライドランプの光を、光学フィルタSH0350(朝日分光社製)越しに照射し、さらに、100℃で照射量500mJのメタルハライドランプの光を照射することで、コレステリック液晶層である膜厚6.4μmの左円偏光反射層を形成した。
このような手順で、配向膜7上に、左円偏光反射層を形成した。
【0156】
光重合開始剤Aを0.01質量部に、光重合開始剤Bを0.3質量部に変更した以外は反射層用塗布液Ch-Aと同じ組成物を、25℃に保温された容器中にて、攪拌、溶解させ、反射層用塗布液Ch-Dを調製した。
【0157】
作製した左円偏光反射層の表面に、調製した反射層用塗布液Ch-Dを、#10.5のワイヤーバーコーターで塗布し、105℃で60秒乾燥した。
その後、低酸素雰囲気下(100ppm以下)にて、40℃で、照射量100mJのメタルハライドランプの光を、光学フィルタSH0350(朝日分光社製)を通して照射し、さらに、100℃で、照射量500mJのメタルハライドランプの光を照射することで、コレステリック液晶層である膜厚6.4μmの右円偏光反射層を形成した。このような手順で、左円偏光反射層上に、右円偏光反射層を形成して、反射シート7を作製した。
【0158】
(反射シート8の作製)
<配向膜8の形成>
厚さ80μmのTACフィルム(富士フイルム社製、TD80UL)を用意した。
このTACフィルム上に、下記の組成の配向層塗布液Y1を#16のワイヤーバーコーターで塗布した。その後、60℃で60秒、さらに90℃で150秒乾燥した。
次いで、塗布面側を、ラビングロールで搬送方向に平行な方向にクリアランス1.0mm、1000回転/分で回転させてラビング処理を行うことで、配向層8を作製した。
【0159】
配向層塗布液Y1
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下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 370質量部
メタノール 120質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 0.5質量部
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【0160】
【0161】
<λ/4層の作製>
下記の光学異方性層用組成物を調製した。
調製した光学異方性層用組成物を、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、塗布液として用いた。
形成した配向層8上に塗布液を塗布して、膜面温度105℃で2分間乾燥して液晶相状態とした後、75℃まで冷却して、空気下にて160W/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス社製)を用いて紫外線を照射して、その配向状態を固定化して、配向層8上に光学異方性層(λ/4層)を有するフィルムAを作製した。
光学異方性層の膜厚は1.33μm、波長550nmにおけるReは135nmであった。
【0162】
光学異方性層用組成物
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下記の棒状液晶(LC242、BASF社製) 100質量部
下記の水平配向剤A 0.3質量部
光重合開始剤A 3.3質量部
光重合開始剤B 1.1質量部
メチルエチルケトン 300質量部
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【0163】
【0164】
<反射シート8の作製>
反射シート5のTACフィルムを剥離した後、剥離面にフィルムAのλ/4層を粘着剤によって貼合することで、反射シート8を作製した。
【0165】
<評価>
作製した反射シートについて、以下の確認および評価を行った。
【0166】
[反射層のピッチグラジエント構造、および、明部および暗部の傾斜角度の確認]
作製した反射シートの断面をSEMで観察して、SEM画像から、右円偏光反射層および左円偏光反射層が、ピッチグラジエント構造(PG構造)を有しているか否か、および、明部および暗部の傾斜角度を確認した。
傾斜角度は、下記の基準で表記する。
W: 傾斜角度が40°よりも大きい。
X: 傾斜角度が30°よりも大きく、40°以下。
Y: 傾斜角度が3°以上、30°以下。
Z: 傾斜していない、または、傾斜角度が3°未満。
【0167】
[積分反射率の測定]
分光光度計(日本分光社製、V-550)に大型積分球装置(日本分光社製、ILV-471)を取り付けたものを用いて、光トラップを用いず、正反射光を含むようにして、反射シートの波長450nmにおける積分反射スペクトルを測定した。
ここで、反射シート1では、誘電体多層膜側から光が入射するように測定した。反射シート2~8では、測定試料として、ガラスに、各反射シートの円偏光反射層側を粘着剤で貼合し、続けて、TACフィルムを剥離したものを用意し、剥離面測から光が入射するように測定した。
【0168】
[バックライト(BL)の光均一性の評価]
LCD(VISIO社製、RS65-B2)のバックライトユニットを用意した。
バックライトユニットには、光源として波長445~455nmに発光の中心波長を有する青色LED(青LED)が使用されている。また、青色LEDが配置されている基台は白色シートである。さらに、液晶セル側には、拡散板、輝度向上フィルム(3M社製、BEF)、3M社製のDBEF、および、量子ドットシートが使われている。
このバックライトユニットについて、青色LEDの間隔を調整して、光均一性の評価をおこなった。
なお、このバックライトユニットの青色LEDには、上部にレンズが搭載されている。レンズの有無により、青色LED(光源)の配光分布を調節した。青色LED上に搭載されていたレンズを外した場合の光源の配光分布はランバーシアン分布であり、青色LED上にレンズが搭載されている状態の光源の配光分布はバットウイング分布である。ここで、バットウイング分布とは、広義には、LED直上(バックライト面の法線方向)を0°として、0°よりも配光角の絶対値の大きい角度(斜め方向)で光量が多い発光強度分布で定義される。狭義では、45°~90°付近において、発光強度が最も強くなる発光強度分布で定義される。つまり、バットウイング分布では、中心部が外周部よりも暗い。
反射シート8を用いた実施例6については、白色シート(白色板)の代わりに、ESR反射フィルム(3M社製)を使用した。
別途用意した拡散板と、LCD(VISIO社製、RS65-B2)に使用されていたBEF、DBEF、および、量子ドットシートを使用して、表1の構成で評価した。なお、表1では省略したが、拡散板から液晶セルに向かって、量子ドットシート、BEF、BEF、および、DBEFをこの順で配置した状態で評価した。2枚のBEFは、稜線を直交した状態で評価に用いた。
反射シート1は、反射シート1の支持体側を粘着剤で拡散板に貼合して評価に用いた。反射シート2~8は、各反射シートの円偏光反射層側を粘着剤で拡散板に貼合し、続けて、TACフィルムを剥離したものを評価に用いた。
青色LEDの間隔d1と、青色LEDと反射シートの間の距離d2との比から、アスペクト比(アスペクト比=d1/d2)を求め、下記観点でBLの光均一性を評価した。
A:BLに輝度ムラが視認されない。
B:BLに輝度ムラが視認される。
結果を下記の表に示す。
【0169】
【0170】
比較例1に示されるように、反射シートに誘電体多層膜を用いた場合には、光の拡散性が低く、バックライト(BL)の均一性が悪い。また、コレステリック液晶層からなる右円偏光反射層および左円偏光反射層を有する比較例2も、コレステリック液晶相に由来する断面の明部および暗部が傾斜していないので、光の拡散性が低く、バックライトの均一性が悪い。
これに対して、比較例2と実施例1との比較より、コレステリック液晶相に由来する断面の明部および暗部が傾斜していることにより、良好な拡散反射性が得られ、良好なバックライトの光均一性が得られる。
実施例2、および、その他の実施例に示されるように、本発明によれば、光源の配光分布がランバーシアン配光でもバットウイング配光でも、良好なバックライトの光均一性が得られる。
実施例3に示されるように、本発明によれば、アスペクト比を高くしても、すなわち、光源の数を低減しても、良好なバックライトの均一性が得られる。この結果は、光源の数が同じあれば、バックライトを薄くしても、良好なバックライトの光均一性が得られることも、同時に示している。
なお、反射シート6を用いる実施例4は、コレステリック液晶相の明部および暗部の傾斜角度が40°を超えているため、アスペクト比が5超の場合に、製品品質上は問題にならない輝度ムラが散見された。
さらに、実施例6に示されるように、光源側の光反射面にESR反射シートのように、反射率の高い鏡面反射面を用いることで、反射率を高めることができる。また、λ/4層を設けることで、光反射面による鏡面反射および円偏光の旋回方向(センス)が逆転することによる反射率の低下を低減できる。
以上の結果より、本発明の効果は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0171】
LCDのバックライトユニット等に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0172】
10 発光装置
12 筐体
12a 光反射面
13 光源
14 反射板
30 支持体
32 配向膜
34 左円偏光反射層
36 右円偏光反射層
38 λ/4層
40 液晶化合物
40A 光学軸
60 露光装置
62 レーザ
64 光源
65 λ/2板
68 偏光ビームスプリッター
70A,70B ミラー
72A,72B λ/4板
BR 青色光の右円偏光
M レーザ光
MA,MB 光線
PO 直線偏光
Q 絶対位相
E 等位相面