(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-12
(45)【発行日】2022-07-21
(54)【発明の名称】ポリカーボネート樹脂組成物およびこれを含む光学成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 69/00 20060101AFI20220713BHJP
C08K 5/20 20060101ALI20220713BHJP
C08K 5/3432 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
C08L69/00
C08K5/20
C08K5/3432
(21)【出願番号】P 2021501010
(86)(22)【出願日】2019-08-19
(86)【国際出願番号】 KR2019010497
(87)【国際公開番号】W WO2020040504
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-01-13
(31)【優先権主張番号】10-2018-0096966
(32)【優先日】2018-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ビョンキュ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ヨン-イン
(72)【発明者】
【氏名】ファン、テヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ムホ
(72)【発明者】
【氏名】イ、キ-チェ
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ヨンウク
【審査官】工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-529475(JP,A)
【文献】国際公開第2015/186015(WO,A1)
【文献】特表2010-528143(JP,A)
【文献】特開2015-071679(JP,A)
【文献】特開平11-152404(JP,A)
【文献】特開2004-210763(JP,A)
【文献】特開2019-019300(JP,A)
【文献】国際公開第2018/096758(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 67/00-67/08
C08K 5/00- 5/59
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂;および
420nm以下の波長を有する紫外線A(UVA)を選択的に吸収するヒンダードアミン系紫外線吸収剤であって、[[4-(ジメチルアミノ)フェニル]メチレン]プロパンジオン酸のジメチルエステル([[4-(dimethylamino)phenyl]methylene] propanedioic acid dimethyl ester)を
含み、
前記ヒンダードアミン系紫外線吸収剤は、0.01乃至0.5重量%の含有量で含まれ、
前記ポリカーボネート樹脂は、80乃至99.99重量%の含有量で含まれる
ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリカーボネート樹脂は、下記化学式1で表される繰り返し単位を含む、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【化4】
(前記化学式1でaは1以上の整数である。)
【請求項3】
前記ポリカーボネート樹脂は、重量平均分子量が10,000g/mol乃至60,000g/molである、請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
酸化防止剤、熱安定剤、鎖延長剤、核剤、難燃剤、滑剤、衝撃補強剤、および蛍光増白剤からなる群より選択される1つ以上の添加剤をさらに含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
ASTM D1003に準拠した420nm波長の紫外線に対する透過率が30%以下であり、
下記一般式1で表される黄変指数変化値(ΔYI)が0.5以下である、
請求項1~4のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
[一般式1]
ΔYI=YI(340℃)-YI(285℃)
(YI(X℃)は当該温度X℃でASTM D1925に準拠して測定された黄変指数値を示し、前記285℃から340℃への昇温時間は20分である。)
【請求項6】
20℃で測定された黄変指数値(YI)が5乃至10である、
請求項5に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂組成物を含む光学成形品。
【請求項8】
前記光学成形品がレンズである、
請求項7に記載の光学成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2018年8月20日付韓国特許出願第10-2018-0096966号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み含まれる。
【0002】
本発明は、優れた熱安定性および光学特性を示すポリカーボネート樹脂組成物およびこれを含む光学成形品に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリカーボネートは、優れた衝撃強度、数値的安定性、耐熱性および透明性などの物性により電気電子製品の外装材、自動車部品、建築素材、光学部品などの多様な分野に適用されている。
【0004】
このようなポリカーボネートは、最近、応用分野が拡大することに伴い、ポリカーボネート固有の物性は維持しながらも、熱安定性および光学特性が向上した新規なポリカーボネートの開発が要求されている。
【0005】
特に、光学用製品に適用される場合、高温の条件を経ても製品の変形なしに目的とする程度の光学特性(優れた遮蔽率または透過率)を維持することが鍵であるため、熱安定性と光学特性を同時に改善するための技術開発が必要である。
【0006】
これによって、互いに異なる構造の芳香族ジオールを共重合して構造が異なる単位体をポリカーボネートの主鎖に導入したり、追加添加剤を用いて所望する物性を得ようとする研究が試みられている。しかし、大部分の技術が生産単価が高く、耐薬品性や耐熱性などが増加すれば反対に光学特性が低下し、光学特性が向上すれば耐薬品性や耐熱性などが低下するなどの限界がある。
【0007】
また、適用される製品群により、ポリカーボネートが有する透明度を調節する必要があり、例えば、光学製品(例えば、レンズ)などに適用時、使用目的により特定の波長領域での透過率を低下させる必要があった。
【0008】
そこで、ポリカーボネートの適用製品により目的とする光学特性(特定の波長の光に対する優れた遮蔽率または透過率など)を満足しながらも、優れた耐熱性を有する新規なポリカーボネートに対する研究開発が依然として必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の目的は、優れた熱安定性および光学特性、より具体的に、優れた変色抑制特性と、420nm波長の光に対する透過制御特性を示すポリカーボネート樹脂組成物およびこれを含む光学成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ポリカーボネート樹脂;および
420nm以下の波長を有する紫外線A(UVA)を選択的に吸収するヒンダードアミン系紫外線吸収剤であって、[[4-(ジメチルアミノ)フェニル]メチレン]プロパンジオン酸のジメチルエステル([[4-(dimethylamino)phenyl]methylene] propanedioic acid dimethyl ester)を含むポリカーボネート樹脂組成物を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記本発明のポリカーボネート樹脂組成物を含む光学成形品を提供する。
【0012】
以下、発明の具体的な実施形態に係るポリカーボネート樹脂組成物およびこれを含む光学成形品などについて説明する。
【0013】
それに先立ち、本明細書で明示的な言及がない限り、専門用語は単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。
【0014】
本明細書で使用される単数の形態は、文言がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数の形態も含む。
【0015】
本明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるものではない。
【0016】
そして、本明細書で「第1」および「第2」のように序数を含む用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的で使用され、前記序数により限定されない。例えば、本発明の権利範囲内で第1構成要素は第2構成要素と命名されてもよく、類似するように第2構成要素は第1構成要素と命名されてもよい。
【0017】
発明の一実施形態によれば、ポリカーボネート樹脂;および420nm以下の波長を有する紫外線A(UVA)を選択的に吸収するヒンダードアミン系紫外線吸収剤であって、[[4-(ジメチルアミノ)フェニル]メチレン]プロパンジオン酸のジメチルエステルを含むポリカーボネート樹脂組成物が提供される。このような特定のヒンダードアミン系紫外線吸収剤は、下記化学式Aで表される構造を有することができる。
【0018】
【0019】
ポリカーボネート樹脂の場合、適用される製品群により、ポリカーボネートが有する透明度を調節する必要があり、例えば、光学製品(例えば、レンズ)などに適用時、使用目的により特定の波長領域での透過率を制御または低下させる必要があった。しかし、単に遮蔽率を高めるための目的で添加剤を用いる場合、高温の条件下で耐熱性が顕著に低下して、製造工程中に高分子変形や変色などが発生する問題があった。
【0020】
そこで、本発明者らは、ポリカーボネート樹脂組成物、特に、光学製品に使用可能な多様な添加剤、例えば、紫外線吸収剤に対して研究を継続した。このような継続的な研究結果、多様な紫外線吸収剤の中でも、例えば、前記化学式Aで表される特定の紫外線吸収剤を用いることによって、優れた物性を達成できることを見出して発明を完成した。
【0021】
特に、このような特定の紫外線吸収剤をポリカーボネート樹脂と組み合わせて用いることによって、420nmの特定の波長を有する紫外線の透過度を非常に効果的に制御および減少させることができると共に、高温下での変色や分性などが抑制されて優れた耐熱性を達成できることが確認された。
【0022】
その結果、前述した一実施形態のポリカーボネート樹脂組成物を用いて製品を製造する場合、製造工程中の高温の射出成形条件でも高分子の変性や色の変化の程度が顕著に小さい。また、製品が実際使用されて高温の環境下でも変形なしに優れた物性を示すことができる。特に、レンズなどの光学成形品で使用される場合、特定の波長の紫外線領域で優れた遮蔽率を示すことができ、一般用、産業用、スポーツ用、特殊用などの広範囲な範囲に適用することができる。
【0023】
以下、一実施形態のポリカーボネート樹脂組成物を各成分別により具体的に説明する。
【0024】
[ポリカーボネート樹脂]
本明細書で使用する用語「ポリカーボネート」とは、ジフェノール系化合物、ホスゲン、炭酸エステルまたはこれらの組み合わせを反応させて製造される高分子を意味する。ポリカーボネート樹脂は、耐熱性、耐衝撃性、機械的強度および/または透明性などに非常に優れ、コンパクトディスク、透明シート、包装材、自動車バンパー、紫外線遮断フィルム、光学レンズなどの製造に広範囲に使用されている。
【0025】
前記ジフェノール系化合物としては、ヒドロキノン、レゾルシノール、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(「ビスフェノール-A」ともいう)、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテルなどが挙げられる。好ましくは4,4’-ジヒドロキシジフェニル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンを用いることができ、この場合、前記ポリカーボネート樹脂の構造は、下記化学式1で表される繰り返し単位を含むことができる。
【0026】
【0027】
前記化学式1でaは1以上の整数である。
【0028】
前記ポリカーボネート樹脂は、2種以上のジフェノール類から製造された共重合体または混合物の形態になることもできる。また前記ポリカーボネートは、線状ポリカーボネート、分枝状(branched)ポリカーボネートまたはポリエステルカーボネート共重合体樹脂などの形態を有することもできる。
【0029】
前記線状ポリカーボネートとしては、ビスフェノール-Aから製造されるポリカーボネートなどが挙げられる。前記分枝状ポリカーボネートとしては、トリメリット酸無水物、トリメリット酸などのような多官能性芳香族化合物をジフェノール類およびカーボネートと反応させて製造したものが挙げられる。前記多官能性芳香族化合物は、分枝状ポリカーボネート総量に対して0.05モル%乃至2モル%で含まれてもよい。前記ポリエステルカーボネート共重合体樹脂としては、二官能性カルボン酸をジフェノール類およびカーボネートと反応させて製造したものが挙げられる。前記カーボネートとしては、ジフェニルカーボネートなどのようなジアリールカーボネート、エチレンカーボネートなどを用いることができる。
【0030】
一実施形態のポリカーボネート組成物で、前記ポリカーボネート樹脂は、 ASTM D1238に準拠したメルトフローレート(MFR、Melt flow rate)が5乃至15g/10minである特性を充足することができる。前記範囲のメルトフローレートを有するポリカーボネート樹脂を用いる場合、前述した他の成分との組み合わせ使用により製品に適用時に優れた物性を実現することができ、一実施形態のポリカーボネート樹脂組成物が優れた加工性を示すことができる。
【0031】
前記メルトフローレートは、ASTM D1238に準拠して300℃で1.2kgの荷重条件で測定され得る。
【0032】
前記メルトフローレートが5g/min未満である場合、加工性が低下して生産性低下の問題が発生することがあり、15g/min超過である場合、当該加工条件で樹脂流れが超過となり、成形製品に表面不良を発生させる問題が発生することがある。また、前記メルトフローレートは、より適切には6乃至13g/10min、あるいは7乃至10g/10minを満足することができ、この場合、一実施形態の樹脂組成物がより優れた加工性および機械的物性などを示すことができる。
【0033】
また、前記ポリカーボネート樹脂は、重量平均分子量が10,000g/mol乃至60,000g/mol、あるいは47,000g/mol乃至60,000g/mol、あるいは50,000g/mol乃至60,000g/mol、あるいは50,000g/mol乃至58,000g/molになることができる。このような樹脂の重量平均分子量は、例えば、ASTM D5296の方法により、ポリスチレンを標準物質として用いて測定することができる。前記ポリカーボネート樹脂が前記重量平均分子量範囲を充足することによって、一実施形態の樹脂組成物およびこれを含む光学成形品などは、優れた機械的物性および光学特性を示すことができる。
【0034】
前述したポリカーボネート樹脂は、一実施形態の樹脂組成物を主成分として、全体樹脂組成物中80乃至99.99重量%、あるいは90乃至99.9重量%、あるいは95乃至99.5重量%の含有量で含まれてもよい。したがって、一実施形態の樹脂組成物がポリカーボネート樹脂特有の耐熱性、耐衝撃性、機械的強度および/または透明性を示すことができる。
【0035】
[紫外線吸収剤]
一実施形態の樹脂組成物は、前述したポリカーボネート樹脂と共に、420nm以下の波長を有する紫外線A(UVA)を選択的に吸収するヒンダードアミン系紫外線吸収剤、特に、下記化学式Aで表される[[4-(ジメチルアミノ)フェニル]メチレン]プロパンジオン酸のジメチルエステルを含む。
【0036】
【0037】
本発明者らの継続的な実験結果、紫外線Aに対する吸収特性を示す多様な紫外線吸収剤の中でも、前記特定の紫外線吸収剤を含むことによって、一実施形態のポリカーボネート樹脂組成物が420nmの特定の波長を有する紫外線の透過度を非常に効果的に制御および減少させることができ、高温下での変色や分性などが抑制されて優れた耐熱性を示すことができることが確認された。
【0038】
前記特定の紫外線吸収剤は、X-GUARD EV-290などの商品名で商業的に知られた成分として、このような紫外線吸収剤を商業的に入手して用いたり、当業者によく知られた方法で合成して用いることもできることはもちろんである。
【0039】
前記紫外線吸収剤は、全体樹脂組成物中0.01乃至0.5重量%、あるいは0.015乃至0.1重量%、あるいは0.015乃至0.05重量%の含有量で含まれてもよい。したがって、一実施形態の樹脂組成物が420nm波長の光に対する優れた透過度制御性能および高温での低い変色特性を示すことができると共に、ポリカーボネート樹脂の優れた機械的物性などを阻害させないことができる。
【0040】
一方、一実施形態の樹脂組成物は、前述したポリカーボネート樹脂および紫外線吸収剤以外に、必要に応じて前記樹脂組成物は当業界で通常使用される酸化防止剤、熱安定剤、鎖延長剤、核剤、難燃剤、滑剤、衝撃補強剤、および蛍光増白剤からなる群より1種以上選択される添加剤をさらに含むこともできる。
【0041】
一方、前述した一実施形態の樹脂組成物は、ASTM D1003に準拠した420nm波長の紫外線に対する透過率が30%以下、あるいは5乃至30%、あるいは10乃至30%、あるいは20乃至30%である特性を示すことができる。このような透過率は、例えば、前記一実施形態の樹脂組成物を3mmの厚さおよび30*50mmの平面スケールを有する長方形試片形態(3T射出試片形態)で射出成形した状態で、例えば、Hunter Lab装備を用い、透過条件350~1050nmで420nmに対する透過率を測定する方法で測定/算出することができる。
【0042】
一実施形態の樹脂組成物が前記透過率範囲を充足することによって、420nm以下の波長を有する紫外線を効果的に遮蔽し、その透過を適切に制御および減少させることができるため、一般用、産業用、スポーツ用、特殊用などの多様な光学成形品に適用できるようになる。
【0043】
また、一実施形態の樹脂組成物は、下記一般式1で表される黄変指数変化値(ΔYI)が0.5以下、あるいは0.1乃至0.4、あるいは0.2乃至0.35である特性を示すことができる。
【0044】
[一般式1]
ΔYI=YI(340℃)-YI(285℃)
YI(X℃)は当該温度X℃でASTM D1925に準拠して測定された黄変指数値を示し、前記285℃から340℃への昇温時間は20分である。
【0045】
前記黄変指数変化値を測定するに当たっては、まず、285℃での黄変指数値(YI(285℃))を測定することができる。このようなYI(285℃)は、例えば、前記一実施形態の樹脂組成物を3mmの厚さおよび30*50mmの平面スケールを有する長方形試片形態(3T射出試片形態)で射出成形した状態で、ASTM D1925に準拠して、Hunter Lab装備を用い、透過条件350~1050nmの条件下で測定することができる。その後、一実施形態の組成物を285℃から340℃へ20分間昇温して熱処理した後、前記YI(285℃)と同様な方法でYI(340℃)を測定し、これらの測定値から前記黄変指数変化値を測定/算出することができる。
【0046】
一実施形態の樹脂組成物が前記黄変指数変化値を充足することによって、一実施形態の組成物は、より優れた耐熱性および耐熱変色性を示し、高温下でも優れた光学特性を維持することができる。これによって、前記一実施形態の樹脂組成物で光学成形品などを製造する場合、製造工程中の高温の射出成形条件でも高分子の変性や色の変化の程度が小さく維持され得る。また、光学成形品などが実際使用されて高温の環境下でも変形なしに優れた物性を示すことができる。
【0047】
また、前述した一実施形態の樹脂組成物は、20℃で測定された黄変指数値(YI)が5乃至10、あるいは7乃至9になることができる。このような黄変指数値は、測定温度を除いては、前記YI(285℃)などと同様な方法および条件で測定され得る。一実施形態の樹脂組成物が常温でもこのような黄変指数値を充足することによって、光学成形品に適した優れた光学特性を示すことができる。
【0048】
以下の実施例および比較例でも裏付けられるように、本発明者らの実験結果、前述した諸般物性、例えば、透過率範囲、黄変指数変化値および黄変指数値は、ポリカーボネート樹脂と、特定の紫外線吸収剤を含む一実施形態の樹脂組成物により達成可能であることが確認された。したがって、一実施形態の組成物およびこれを含む光学成形品は、前述した各物性を充足して、耐熱性と優れた光学特性(420nmでの遮蔽性)を実現することができ、多様な分野のレンズなど光学成形品に非常に好適に適用され得る。
【0049】
そこで、発明の他の実施形態によれば、前記一実施形態の樹脂組成物を含む光学成形品が提供される。好ましくは、前記光学成形品は、レンズであり、照明用レンズや眼鏡レンズに用いるのに適する。
【0050】
このような光学成形品は、一実施形態の組成物を用いることを除いては、当業界で通常使用する方法で製造され得る。例えば、前述した各成分を混合して一実施形態の樹脂組成物を得た後、これを溶融混練してペレットで製造し、試片を目的とする形態で射出成形することができる。
【0051】
前記溶融混練は、当業界で通常使用される方法、例えばリボンブレンダー、ヘンシェルミキサ、バンバリーミキサー、ドラムタンブラー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、コニーダー、多軸スクリュー押出機などを用いる方法により実施することができる。前記溶融混練の温度は、必要に応じて適切に調節することができる。
【0052】
次に、前記一実施形態の樹脂組成物の溶融混練物またはペレットを原料にして射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、真空成形法、ブロー成形法、プレス成形法、圧空成形法、発泡成形法、熱曲げ成形法、圧縮成形法、カレンダー成形法および回転成形法などの成形法を適用することができる。
【0053】
射出成形法を利用する場合、200乃至400℃の高温の条件下に置かれるようになるが、一実施形態の樹脂組成物は、耐熱性に優れているため、前述した溶融混練工程や射出工程で高分子変性や黄変発生が殆どないため好ましい。
【0054】
成形品の大きさ、厚さなどは使用目的により適切に調節することができ、導光板の形状も使用目的により平板または曲面の形態を有することができる。
【発明の効果】
【0055】
本発明によれば、優れた熱安定性(耐熱性)、耐熱変色性および光学特性を示すポリカーボネート樹脂組成物および光学成形品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、発明の理解のために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は発明を例示するためのものに過ぎず、発明をこれらだけに限定するのではない。
【0057】
実施例および比較例:ポリカーボネート樹脂組成物の製造
実施例1および2、比較例1乃至7
ポリカーボネート樹脂組成物100重量部を基準に下記表1に記載された含有量でそれぞれの添加剤成分を混合してポリカーボネート樹脂組成物を製造した。
【0058】
【0059】
前記表1で用いた各成分に対する具体的な事項は次のとおりである。
【0060】
PC樹脂:Mw 32,000、LG化学社製MFR(300℃、1.2kg)が8g/10minであるビスフェノールA型線状ポリカーボネート;
PET樹脂:Mw 32,000、Hitach Chemical社製ESPEL 9940 E-37;
酸化防止剤:ADEKA社製PEP36;
EV290:Chempia社製X-GUARD EV-290(紫外線吸収剤)
Uvinul3049:BASF社製Uvinul3049(紫外線吸収剤)
T326:BASF社製T326(紫外線吸収剤)
T360:BASF社製T360(紫外線吸収剤)
LA-F70:ADEKA社製LA-F70(紫外線吸収剤)
UNINUL A PLUS:BASF社製UNINUL A PLUS(紫外線吸収剤)
鎖延長剤:BASF社製ADR4370F(4468)
滑剤:NOF社製PETS
実験例
実施例および比較例により製造された樹脂組成物に対して、二軸押出機(L/D=36、Φ=45、バレル温度240℃)に時間当たり55kg速度でペレットサンプルを製造し、製造された試片に対して、下記の方法で特性を測定した。このような物性測定用試片は、3mmの厚さおよび30*50mmの平面スケールを有する長方形試片形態(3T射出試片形態)を有するものであった。
【0061】
(1)透過率(%)
ASTM D1003に準拠して、Hunter Lab装備を用い、透過条件350~1050nmで420nmでの透過率を測定し、その結果を下記表2に記載した。
【0062】
(3)黄変指数値および黄変指数変化値(ΔYI)
ASTM D1925に準拠して、Hunter Lab装備を用い、透過条件350~1050nmで黄変指数を測定した。まず、20℃で測定した黄変指数値を下記表2に示した。
【0063】
また、285℃での黄変指数値(YI(285℃))を測定した後、各試片を285℃から340℃へ20分間昇温して熱処理した後、前記YI(285℃)と同様な方法でYI(340℃)を測定した。このような測定値から下記一般式1による黄変指数変化値を計算し、その結果を下記表2に記載した。
[一般式1]
ΔYI=YI(340℃)-YI(285℃)
【0064】
【0065】
前記表2から確認できるように、実施例1および2は、優れた耐熱性および光学特性を示すことが確認された。
【0066】
これに比べて、比較例の場合、高温の条件下で耐熱性が落ちて黄変度変化値が顕著に上昇したり、420nmで透過率が増加して、光学用成形品、特にレンズに使用が適しないことが確認された。