(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】画像形成方法、及び、印刷物
(51)【国際特許分類】
B41M 5/00 20060101AFI20220714BHJP
C09D 11/32 20140101ALI20220714BHJP
C09D 11/322 20140101ALI20220714BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
B41M5/00 100
C09D11/32
C09D11/322
B41J2/01 501
B41M5/00 120
B41M5/00 132
(21)【出願番号】P 2018139768
(22)【出願日】2018-07-25
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【氏名又は名称】酒井 正己
(72)【発明者】
【氏名】加幡 利幸
(72)【発明者】
【氏名】玉井 崇詞
(72)【発明者】
【氏名】横濱 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】亀井 未亜
(72)【発明者】
【氏名】塩野入 桃子
【審査官】中山 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-218467(JP,A)
【文献】特開2009-091528(JP,A)
【文献】特開2013-060565(JP,A)
【文献】特開2014-073672(JP,A)
【文献】特開2014-131855(JP,A)
【文献】特開2012-162655(JP,A)
【文献】特開2005-187726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00-5/52
C09D 11/00-11/54
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光を発することが可能な有機顔料
を含有した
水系インクを用いて、被印刷物に画像を形成する画像形成方法であって、
前記被印刷物の表面に、処理剤を溶解してなる水系前処理液を付与する水系前処理液付与工程と、
前記被印刷物の表面に付与された前記水系前処理液を、加熱して液体成分を蒸発させる加熱工程と、
前記加熱工程によって前記水系前処理液が完全に乾燥する前に、前記水系前処理液が付与された表面に前記水系インクを付与する工程と、
を有し、
前記被印刷物が塗工紙であり、
前記処理剤は前記水系インクを凝集させる機能を有し、
画像を共焦点蛍光顕微鏡により測定した蛍光強度F(Xi,Yj,Zk)
(但しi=1~n1、j=1~n2、k=1~n3、k=1は画像底面のZ方向の位置、k=n3は画像上面のZ方向の位置を表す。)
から下記式により求められるF’(Xi,Yj)、F’aveにおいて、
【数1】
F’(Xi,Yj)≦0.75×F’ave
となるF’(Xi,Yj)が、全F’(Xi,Yj)の0.05~9.00%である画像を形成する画像形成方法。
【請求項2】
前記
有機顔料が、マゼンタ用顔料、またはイエロー用顔料である請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記画像形成方法が、前記
水系インクを吐出して画像を形成する方法である請求項1
又は2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
被印刷物に画像を有する印刷物であって、
前記被印刷物が塗工紙であり、
前記印刷物に含まれる顔料が蛍光を発することが可能な有機顔料であり、
前記画像を共焦点蛍光顕微鏡により測定した蛍光強度F(Xi,Yj,Zk)
(但しi=1~n1、j=1~n2、k=1~n3、k=1は画像底面のZ方向の位置、k=n3は画像上面のZ方向の位置を表す。)
から下記式により求められるF’(Xi,Yj)、F’aveにおいて、
【数1】
F’(Xi,Yj)≦0.75×F’ave
となるF’(Xi,Yj)が、全F’(Xi,Yj)の0.05~9.00%である印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成方法、印刷物、および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、オフセット印刷のように版画が不要なオンデマンド方式であり、記録媒体を比較的選ばない優れた記録方法として知られており、種々の作動原理によりインクの微小液滴を飛翔させて記録媒体に付着させ、文字、イメージ等をプリントするプリント方式である。この方式は複雑な装置を必要とせず、小型で高速、低騒音、カラー化が容易、ランニングコストが低い、記録パターンの融通性が大きい記録装置として、コンシューマ用としてだけではなく、産業用にも広く利用されている。
【0003】
記録媒体がインク吸水性の高い普通紙の場合、印刷した画像の滲み(フェザリング)や光学的濃度(OD)が低いことが課題になる。ODが低いと、効率的に濃度を出すことができず、多量のインクを消費し、大きなランニングコストになる。
【0004】
一方、コート紙や光沢紙等の塗工紙は、着色剤が表面近傍に留まりやすいようにすることで、上記の課題であるフェザリングの抑制、高いODを目指している。フェザリングを抑制し、高いODを得るには、着弾した直後のインクの塗工紙表面の水平方向への広がりと、塗工紙への浸透を抑制することが重要になる。但し、過度に着色剤が表面近傍に留まりやすいようすると、指や衣服、消しゴム、マーキングペン等による擦過の剥がれ(擦過性)が課題になる。特に、最近では、高面積のインクジェット画像の需要が高まり、画像を丸めて、輸送することが多いが、その際に画像表面が用紙と擦れ、画像の一部が剥がれてしまうことがある。インクジェット画像は、カラーで画像面積の大きな画像形成を要求されることが多いため、例え僅かであっても、画像の剥がれは画像品質を大きく低下させてしまう。
【0005】
インク画像の滲みは、インクの滲みを防止する所謂、処理剤をコートした記録紙(例えば、特許文献1、特許文献2参照)を用いた場合や、インクの滲みを防止する処理液を記録紙に塗布し、インクジェットによる画像形成を行うこと(特許文献3参照)で抑制することができる。しかし、擦過性は滲みと相反するものであり、滲みを完全に抑制しようとすると、擦過性が低下してしまうことが多かった。
【0006】
処理剤を用いない場合、インクの液体成分(溶剤)の多くは用紙に速やかに浸透し、その際、色材(染料あるいは顔料)の一部も、用紙に移行してしまうため、滲みとなる。しかし、溶剤成分が少なくなり、ほぼ均一な固形分が画像となるため、画像自体は均一で機械的強度が高く、耐擦過性に優れる。一方、表面に処理剤を多量に保持した用紙の上に、インクを載せた場合、インクの用紙への浸透はなくなるが、インク画像の組成が用紙の方面と表面で異なるため、画像を擦った際に、画像表面が剥がれていくことが多かった。特に、マゼンタの顔料であるキナクリドン類は、顔料化の過程で粒子が過剰成長しやすく、そのため、マゼンタのインクで作成した画像は耐擦過性に劣ることが多かった。
【0007】
耐擦過性には、インクジェット画像中の成分の分布が重要であり、特に色材が顔料の場合、顔料の分布が非常に重要となる。
インクジェット画像の解析は、例えば、最も古くからある簡易的な分析方法として、一般的な光学顕微鏡で印字試料の断面を観察する方法がある。しかしこの分析方法は、空間分解能が低いため断面のマクロ的な観察に限られ、評価に値するような空間分解能での画像層の形状を観察するには至らない。さらに、得られる情報も三次元情報ではなく、二次元情報に限られる。
【0008】
例えば、印字試料の深さ方向とその周辺の情報を得る分析方法として、2次イオン質量分析装置(SIMS)やオージェ電子分光装置(AES)、X線光電子分光法(XPS)などがある。これらの分析方法は、イオンや電子、X線などのビームを用い、印字試料をスパッタリングしながら測定することによって、印字試料の深さ方向と周辺の情報を得ている。しかしながら、これらの分析方法は印字試料の深さ情報がスパッタリング速度の影響を受けるため、測定効率が非常に悪い。さらに、高真空中で印字試料をスパッタリングしなければならないため、印字試料の加工や真空排気など前準備に多くの時間と手間が必要であり、スパッタリング時間も膨大な時間を要する。
【0009】
また例えば、精度の高い印字試料の断面を作製して情報を得るとして、特許文献4では、集束イオンビーム装置(FIB)を用いる方法が提示されている。作製した印字試料断面を走査型電子顕微鏡(SEM)および光学顕微鏡により撮像し、さらに波長分散型X線分析装置(EPMA)で炭素元素の量も取得することで、紙に浸透したインクの分布状態を解析する。
【0010】
また、特許文献5および特許文献6では、印字試料表面から内部に向けて切刃によって所定の角度でテーパ状に切削し、フーリエ変換赤外分光(FTIR)又は赤外全反射減衰分光(ATR)にて切削面および切削片におけるZ軸方向、X軸方向及びY軸方向の情報を得る方法が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、従来の分析方法は、多くの時間と手間を要したり、得られる情報が、二次元情報、または擬似的な三次元情報であり、実際の画像層の三次元形状を取得できていない。
このように、インクジェット画像の分析は非常に難しく、どのような画像形成方法であれば、耐擦過性に優れるか全く分からなかった。
本発明は、耐擦過性に優れる画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の画像形成方法は、以下の通りである。
(1)蛍光物質を含有したインクを用いて、被印刷物に画像を形成する画像形成方法であって、
該画像を共焦点蛍光顕微鏡により測定した蛍光強度F(Xi,Yj,Zk)
(但しi=1~n1、j=1~n2、k=1~n3、k=1は画像底面のZ方向の位置、k=n3は画像上面のZ方向の位置を表す。)
から下記式により求められるF’(Xi,Yj)、F’aveにおいて、
【数1】
F’(Xi,Yj)≦0.75×F’ave
となるF’(Xi,Yj)が、全F’(Xi,Yj)の0.05~9.00%である画像を形成する画像形成方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、耐擦過性に優れる画像形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)は、一般的な全視野蛍光顕微鏡の構成の概略図であり、(b)は、共焦点蛍光顕微鏡の構成の概略図である。
【
図2】本発明の記録装置の一例を示す斜視説明図である。
【
図4】実施例1で得られた画像の、共焦点蛍光顕微鏡により測定した各F(X,Y)のZ方向のデータを重ね合わせ(蛍光強度の平均)を行った結果を示す図である。
【
図5】
図4で、蛍光強度の平均値(F’ave)の75%以下となる箇所を抜き出した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
画像の耐擦過性は、色材の分布状態が重要と考え、様々な分析手法の検討を行った結果、画像の色材が蛍光物質であれば、共焦点蛍光顕微鏡により、色材の分布状態が三次元で得られることが分かり、様々な画像について分析を行い、耐擦過性との関係を調べたところ、驚くべき事実を発見した。
【0016】
共焦点蛍光顕微鏡で得られるマゼンタの画像の三次元蛍光像は、マゼンタ顔料の分布を示しているのであるが、耐擦過性が特に優れる画像では、マゼンタ顔料の分布は均一ではなく、むしろ若干のムラがある方が良いことが分かった。そのムラを詳細に調べたところ、マゼンタ顔料がインク層にほぼ均一に存在しているのであるが、インク層自体に、微細な割れ(画像の中にできた空乏)等が存在していることにより、顔料の分布に若干のムラが生じていることが分かった。通常、このような割れが生じると、インク層の機械的強度が低下するため、耐擦過性が大きく低下する。確かに、割れが大きくなると、耐擦過性は低下する。しかし、ある程度の微細な割れがある方が、耐擦過性は大幅に向上することが分かった。この微細な割れは、非常に微小であり、インク層表面にも存在しているが、インク層の中にも存在することもあることが分かった。
【0017】
本発明者らは、この微細な割れがいかにして生じるのか、インクの滲みを抑制するため、処理剤が塗布された用紙(被印刷物)への画像形成について、解析を行ったところ、用紙に付着したインクは、処理剤により凝集して流動性がなくなるのであるが、インク層に微細な割れを生じる画像のインクは、用紙に付着したとほぼ同時に凝集し、固形分はそのまま固定されることが分かった。そして、乾燥によりインク中の溶剤が蒸発する過程でインク層の収縮が起き、収縮に耐えられなかった部分が微細な割れとなることが分かった。微細な割れは生じるが、インク層中の固形分の組成は、一定であるため、インク層表面の機械的強度は維持されることが分かった。一方、インク層に微細な割れのない画像は、用紙にインクが付着し、処理剤がインクの溶剤に溶け込むことで凝集が部分的(通常は底面)に起こり、徐々にインク層全体が凝集するため、レベリングにより、インク画像の割れは生じないものの、インク画像の表面付近の固形分の成分が異なり、耐擦過性が低下することが分かった。
【0018】
インク層中の微細な割れは、インク層が厚いほど多く、インク層が薄いと少なくなる。一般のインク層の厚みは1.3~2.5μmであるが、耐擦過性が特に優れるインク層には、微細な割れが必ず生じている。
【0019】
本発明者らは、次にインク層中の微細な割れ部分が、どのような状態であれば、耐擦過性の優れるインク画像となるか、検討を行ったところ、インク画像表面からインク画像底面に向かう亀裂となっていることが多いことが分かった。
【0020】
本発明者らは、インク画像の微細な割れが、主にインク画像表面からインク画像底面に向かう亀裂であることから、共焦点蛍光顕微鏡で取得した三次元像をインク画像表面から観察した際、インク画像の微細な割れは、蛍光強度が低い部分として検出できることを見出し、蛍光強度が低い部分の面積率を規定すれば、擦過性の優れるインク画像が得られることを見出し、本発明に至った。即ち、本発明は、
(1)蛍光物質を含有したインクを用いて、被印刷物に画像を形成する画像形成方法であって、
該画像を共焦点蛍光顕微鏡により測定した蛍光強度F(Xi,Yj,Zk)
(但しi=1~n1、j=1~n2、k=1~n3、k=1は画像底面のZ方向の位置、k=n3は画像上面のZ方向の位置を表す。)
から下記式により求められるF’(Xi,Yj)、F’aveにおいて、
【数1】
F’(Xi,Yj)≦0.75×F’ave
となるF’(Xi,Yj)が、全F’(Xi,Yj)の0.05~9.00%である画像を形成する画像形成方法である。
【0021】
本発明は、上記(1)の画像形成方法に係るものであるが、次の(2)~(7)をも実施の形態として含む。
(2)前記蛍光物質が、マゼンタ用顔料、またはイエロー用顔料である前記(1)に記載の画像形成方法。
(3)前記被印刷物として、塗工紙を用いる前記(1)または(2)に記載の画像形成方法。
(4)被印刷物に、処理剤を溶解してなる前処理液を塗布する工程を有する前記(1)~(3)の何れかに記載の画像形成方法。
(5)前記画像形成方法が、前記インクを吐出して画像を形成する方法である前記(1)~(4)の何れかに記載の画像形成方法。
(6)被印刷物に画像を有する印刷物であって、
該画像を共焦点蛍光顕微鏡により測定した蛍光強度F(Xi,Yj,Zk)
(但しi=1~n1、j=1~n2、k=1~n3、k=1は画像底面のZ方向の位置、k=n3は画像上面のZ方向の位置を表す。)
から下記式により求められるF’(Xi,Yj)、F’aveにおいて、
【数1】
F’(Xi,Yj)≦0.75×F’ave
となるF’(Xi,Yj)が、全F’(Xi,Yj)の0.05~9.00%である印刷物。
(7)インク、インクを吐出する吐出手段を有する画像形成装置であって、
該インクは、蛍光物質を含有するインクであり、
画像を共焦点蛍光顕微鏡により測定した蛍光強度F(Xi,Yj,Zk)
(但しi=1~n1、j=1~n2、k=1~n3、k=1は画像底面のZ方向の位置、k=n3は画像上面のZ方向の位置を表す。)
から下記式により求められるF’(Xi,Yj)、F’aveにおいて、
【数1】
F’(Xi,Yj)≦0.75×F’ave
となるF’(Xi,Yj)が、全F’(Xi,Yj)の0.05~9.00%である画像を形成する画像形成装置。
【0022】
図1(a)は、一般的な全視野蛍光顕微鏡の構成の概略図である。光源のランプ1から照射された光は、照明レンズ2を介してダイクロイックミラー4で反射され、対物レンズ3を通過して試料9に入射する。入射した光で励起された蛍光および反射光は対物レンズ3を通過し、ダイクロイックミラー4で蛍光のみが通過する。この通過した蛍光を検出器8で検出する。検出器8の結像位置には、焦点面7で焦点が合っていない蛍光も混在して検出される。
【0023】
一方、
図1(b)は、共焦点蛍光顕微鏡の構成の概略図である。点光源5から照射され励起された蛍光の中で、焦点面7で焦点を結ぶ蛍光のみ検出器8の結像面に到達するように設計されている。これをZ軸方向に連続的に取得し、その像を重ね合わせることで、三次元形状を非接触で構築することができる。
【0024】
本発明の画像形成方法に用いる共焦点蛍光顕微鏡は、蛍光像の結像位置にピンホールを備えた従来公知の共焦点蛍光顕微鏡が可能である。
共焦点蛍光顕微鏡としては、画像層の三次元形状をより高精細に取得するため、空間分解能が高い構成が好ましい。光源にはコヒーレンスの高いレーザ光が好ましい。また、対物レンズには開口数(NA)が高い液浸レンズが好ましく、より好ましくはさらにNAが高い油浸レンズが好ましい。対物レンズに使用する油は共焦点蛍光顕微鏡のメーカー専用の物を使用するのが一般的であるが、塗工紙に直接浸す液は塗工紙の屈折率により近いほうが好ましい。
【0025】
本発明者らは、塗工紙に直接浸す液として、画像の屈折率により近いサラダ油を選択した。一方、対物レンズを浸す液にはメーカー専用の油を使用し、観察時はメーカー専用の油とサラダ油の間にカバーガラスを挟む構成で観察した。
サラダ油を用いることにより、サラダ油の屈折率は画像の屈折率と近いので、光学的な凹凸はなくなり、解像度が高くなる。サラダ油を用いないと、空気と画像の屈折率差が大きいため、画像に凹凸があると空気/画像界面で屈折が起き、解像度が悪くなる。
【0026】
本発明者らは、共焦点蛍光顕微鏡として倒立型のTCS SP8(Leica製)を用いた。光源にはレーザ光を用いており、検出器にはPTMまたはHyD検出器を用いた。また、ダイクロイックミラーの代わりとして、音響光学偏光素子AOBSを用いた。対物レンズはNA1.4の油浸レンズHC PLAPO CS2を用いた。
【0027】
観察視野径に特に制約はないが、高画像品質(滲み抑制)、高発色(高いOD)、耐擦過性との関係を評価するには、XY面は100~2500μm2が好ましい。2500μm2より広いと、高画像品質(滲み抑制)、高発色(高いOD)、擦過性と関係がない画像全体の大きな歪みを反映しやすく、高画像品質(滲み抑制)、高発色(高いOD)、耐擦過性と関係のある画像層の底面の粗さの算出が困難になる。また、100μm2以下では視野が狭すぎるため、局所的な情報に制限されるため、高画像品質(滲み抑制)、高発色(高いOD)、擦過性と関係のある画像層の底面の粗さの算出が困難になる。
【0028】
共焦点蛍光顕微鏡では、Z方向の位置を変化させながらそのZ方向の位置でのXY面各箇所の蛍光強度を測定していく。Z方向の測定範囲は、インク画像の底面と表面が入っていなければならない。インク画像の底面、表面の界面が不明瞭な場合は、インク画像の底面よりも十分低く、インク画像の表面よりも十分高い範囲で測定すると良い。インク画像のない場所は、蛍光強度がないため、インク画像の欠陥部の割合を算出する際の障害にはならない。
【0029】
Z方向の分解能は、インク画像の厚みが1~3μmであることを考えれば細かいほど良い。蛍光顕微鏡の性能の関係から、本発明者らは、Z方向の測定位置間隔Zstepは、小さいほど良いが、Zstep=0.1545μmで測定を行えば、良好な測定結果が得られることを見出した。
【0030】
本発明の画像形成方法における画像の規定方法について説明する。
画像を共焦点蛍光顕微鏡により測定した蛍光強度F(Xi,Yj,Zk)
(但しi=1~n1、j=1~n2、k=1~n3、k=1は画像底面のZ方向の位置、k=n3は画像上面のZ方向の位置を表す。)
から、Z方向の蛍光強度を平均化し、二次元の蛍光強度F’(Xi,Yj)を作成し、F’(Xi,Yj)の平均値F’aveを算出する。
【数1】
前記(Xi,Yj,Zk)は、画像の3Dでの座標を表す。Zは、Z軸方向(深さ方向)、であり、X、Yは、X、Y軸方向(縦横方向)を表す。即ち、蛍光強度F(Xi,Yj,Zk)は、座標(Xi,Yj,Zk)での蛍光強度であり、F’(Xi,Yj)は、X,Y方向の位置が(Xi,Yj)での、蛍光強度のZ方向の平均である。測定は、どの方向も等間隔で測定した。
例えば、X,Y方向は18.45μm×18.45μmの領域を、512×512に分割して測定する場合、n1=512,n2=512となる。
Z方向は、0.1545μm間隔で測定した。Z方向は、画像底面の被印刷物に凹凸がある、画像表面及び底面に凹凸がある、画像を完全に水平に固定することが難しい、こと等を考慮し、k=1の位置及び、n3は余裕をもって画像の膜厚よりも大きな範囲で、画像の膜厚が十分に含まれる範囲で測定することが好ましい。k=1の位置は、基本的には測定領域内での画像底面の最も低い位置を設定するが、測定領域内の画像が全て入るよう、k=1の位置が画像底面の最も低い位置よりも低くなってもかまわない。また、n3も同様に、余裕をもって画像の膜厚よりも大きな範囲で、画像の膜厚が十分に含まれる範囲で測定することが好ましい。本発明の実施例ではn3=86で測定した。F’(Xi,Yj)の値は、k=1の位置及びn3をどこまでとるかによって変わり、k=1の位置が画像底面の位置から離れるほど、及びn3が大きくなるほど、F’(Xi,Yj)の値は小さくなっていく。ただ、全ての箇所のF’(Xi,Yj)の値も小さくなるため、平均値のF’aveも同じように小さくなり、(F’(Xi,Yj)≦0.75×F’aveの算出には影響を与えない。
【0031】
二次元の蛍光強度F’(Xi,Yj)が、F’aveの75%以下となる箇所が、全F’(Xi,Yj)の0.05~9.00%となるような画像であれば、耐擦過性は非常に優れたものとなる。
二次元の蛍光強度F’(Xi,Yj)が、F’aveの75%以下となる箇所(F’(Xi,Yj)≦0.75×F’ave)は、画像の微細な割れ部分となる。微細な割れ部分が、Z方向に真っ直ぐ存在していれば、微細な割れ部分のF’(Xi,Yj)はF’aveの0%となるのであるが、微細な割れ部分は曲がっていることが多く、かつ、内部にのみ存在していることもある。また、F’aveにかける係数を大きくしすぎると、画像の底面あるいは表面の凹凸をひろってしまう。F’aveの75%以下とすれば、全ての微細な割れ部分を的確に検出することができる。
【0032】
本発明におけるF’(Xi,Yj)≦0.75×F’aveとなる箇所の割合は、0.05~9.00%、好ましくは0.07~7.00%、さらに好ましくは0.10~6.00%である。F’(Xi,Yj)≦0.75×F’aveとなる箇所の割合が0.05%より少ないと、擦過性は著しく低下する。F’(Xi,Yj)≦0.75×F’aveとなる箇所の割合が9.00%より大きいと、欠陥部の存在による画像の色ムラが生じ、画像品質を低下させてしまうとともに、画像の機械的強度が低下し、耐擦過性が低下してしまう。
通常、インク層の厚みが一定で微細な割れ部分がなければ、顔料が画像の底面と表面に偏差があったとしても、F’(Xi,Yj)は同じ値になるため、F’(Xi,Yj)≦0.75×F’aveとなる箇所は、ほとんどない。
【0033】
二次元の蛍光強度F’(Xi,Yj)が、F’aveの75%以下となる箇所が、全F’(Xi,Yj)の0.05~9.00%となるためには、顔料と処理剤との反応性及び、顔料と処理剤との混ざり方が影響していると思われる。顔料と処理剤との反応性は、個々の材料によるものであるが、混ざり方も大きな影響を及ぼす。処理剤を紙に保持させた場合は、処理剤は一度インクの溶剤に溶けないとインクの顔料と接触できないため、処理剤を溶解した処理液でインクと接触する方が、顔料と処理剤の混ざりが極めて早く、インクを瞬時に凝集させることができる。従って、処理剤を用い、処理剤を乾燥させずにインクと接触させることが好ましい。
【0034】
<塗工紙>
本発明の画像形成方法は、普通紙上の画像であっても可能である。ただし、普通紙表面は平坦部が全く無く、インクの浸透が深いため、画像の底面を特定することが難しい。そのため、本発明の画像形成方法は、塗工紙上の画像に対して極めて有効である。
塗工紙は、表面に塗料を塗布し、白色度や平滑性を高めた紙のことである。塗工紙として、微塗工紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙等が挙げられる。塗料は、白色顔料(タルク、パイロフィライト、クレー(カオリン)、酸化チタン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等)と、デンプンやラテックスなどの接着剤を混合して作る。
【0035】
微塗工紙は塗工量が12g/m2以下の紙のことで、非塗工紙の上質紙もしくは中質紙の両面に、塗料をロールコーターで薄くコーティングした紙である。雑誌の本文、チラシなどによく使われる。アート紙は塗工量が40g/m2程度の紙のことで、写真印刷などの仕上がりが重視されるものに使われる。コート紙は塗工量が20g/m2~15g/m2程度の紙のことで、コート紙は雑誌のカラーページやパンフレットに使われる。キャストコート紙はアート紙やコート紙を塗料が乾く前に金属面に押し付けて乾燥させた紙のことで、非常に光沢が高く、カレンダーや雑誌の表紙などによく使われる。
【0036】
塗工紙は市販のものをそのまま用いても良いが、処理剤を含有する処理液を塗工紙上に塗布し、乾燥させて用いても良い。
処理剤として、無機酸化物分散系処理剤について記す。無機酸化物分散系処理剤の機能は主に裏抜け防止、画像の鮮明性に寄与する。カチオン系の場合はアニオン系着色剤の耐水性改良にも寄与する。また、ある程度粒径の大きなものは表面画像が透けて見えるのを防止する。材料としてはカチオン系、あるいはアニオン系の酸化チタン、酸化ケイ素、酸化ジルコニウムなどの金属酸化物を使用でき、これらの微粒子で粒子系は0.6μm以下のものである。市販のアルミナ、シリカコロイドゾルも使用できる。
【0037】
これらは、蒸発乾燥防止のため湿潤剤を添加してもよい。また、特に添加しなくても使用可能である。また、その他の各種添加剤(浸透剤、界面活性剤、防腐カビ剤等)も、着色インクで述べたものが使用可能である。これらは各種分散剤、水溶性樹脂と混合して使用してもよい。
【0038】
前記金属酸化物の処理液中の含有量は0.5~30質量%が好ましい。あまり少ないと効果がなく、多いと噴射安定性に劣る。
【0039】
処理液のpHは3~10に調整される。カチオン性コロイドは比較的酸性で、アニオン性のものは比較的塩基性で使用される。
【0040】
これら無機酸化物を含有する処理液と記録液が接触する場合は画像の鮮明性、定着性などにも寄与する。
【0041】
カチオン性基を有する処理剤は主に染料、顔料の定着機能として用いられる。この機能が発揮するのは付与した処理液が記録面側の着色インクと接触する場合に限られる。なお、カチオン性基を有する化合物は溶液中で塩素イオンなど対アニオンと塩を形成した状態でもいいし、また対アニオンのない所謂フリーの状態でもよい。
【0042】
【化1】
(上記式中、R
1,R
2,R
3は水素又は低級アルキル基、低級アルカノール基を表わす。Xはナトリウム、カリウム等のアルカリ金属を表す。)
これらはpH調整で変化するが、フリーの状態はpHが高くアニオン染料への定着性は比較的弱いが使用可能である。
【0043】
この有機カチオン性化合物における代表例としては(A)第一級、第二級、第三級及び第四級の窒素(アミン又はアンモニウム)、リン(ホスホニウム)を分子鎖中あるいはペンダント鎖として有する高分子化合物、(B)低分子量のカチオン性有機化合物がある。前記(A)の具体例としては次のようなものが挙げられる。
【0044】
【化2】
(mは0~3の整数、R
1,R
2,R
3は水素又は低級アルキル基、低級アルカノール基を表わす。)
これらは塩素など対アニオンと塩を形成したものでもよいしフリーの状態でもよい。これらの高分子カチオン性化合物は塩酸塩、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩等の任意の酸との化合物として用いることができる。
【0045】
上記の高分子カチオン性有機化合物の商品名としては、サンフィックス414、414-C555、555US、70、PRO-100(以上、三洋化成社製)、プロテックス200、フィックスK、H、SK、MCL、FM(以上、里田加工社製)、モーリンフィックスコンク3M(モーリン化学社製)、アミゲン(第一薬品工業社製)、エポミンP100(日本触媒社製)、フィックスオイルR737、E50(以上明成化学社製)、エオフィックスRS(日華化学社製)、ポリアミンスルホン、ポリアリルアミン(日東紡績社製)、ポリフィックス601(昭和高分子社製)、ニカフィックスD100(日本カーバイド社製)、レボゲンB(バイエル社製)、カイメン557(ディック・ハーキュレス社製)等が挙げられる。なお、これらの高分子カチオン性化合物はあまり分子量が大きいと溶解性が悪くなり、溶液の粘度が高くなり過ぎるという問題が生じるから、本発明では好ましくは分子量10万以下のものが用いられる。特に好ましくは前記のカチオン性基を1分子中に5~200個含む分子量20000以下の化合物である。
【0046】
前記(B)の具体例としては次のものが挙げられる。エチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン、ピペラジン、1-(2′-アミノエチル)ピペリジン、1-(2′-アミノエチル)アジリジン、1-(2′-アミノエチル)ピロリジン、1-(2′-アミノエチル)ヘキサメチレンイミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、N、N′-ビス-(3-アミノプロピル)プトレッシン、N-(3-アミノプロピル)プトレッシン、1,4-ジアザシクロヘプタン、1,5-ジアザシクロオクタン、1,4,11,14-テトラアザシクロエイコサン、1,10-ジアザシクロオクタデカン、1,2-ジアミノプロパン-3-オール、1-アミノ-2,2-ビス(アミノメチル)プロパン-1-オール、1,3-ジアミノプロパン-2-オール、N-(2-オキシプロピル)エチレンジアミン、ヘプタエチレンオクタミン、ノナエチレンデカミン、1,3-ビス(2′-アミノエチルアミノ)プロパン、トリエチレン-ビス(トリメチレン)ヘキサミン、1,2-ビス〔3′-(2″-アミノエチルアミノ)プロピルアミノ〕エタン、ビス(3-アミノエチル)アミン、1,3-ビス(3′-アミノプロピルアミノ)プロパン、sym-ホモスペルミジン等の脂肪族又は脂環式の多価アミン類であり、これらの中でも1分子中に3個以上の窒素原子を有する化合物が本発明では特に好ましく用いられる。これは2個以下の窒素原子しかない化合物では染料と反応して不溶性の結合体を形成しにくいためである。また、フェニレンジアミン、トリアミノベンゼン、テトラアミノベンゼン、ペンタアミノベンゼン、ヘキサアミノベンゼン、2,6-又は2,5-ジアミノ-p-ベンゾキノンジイミン、2,3,7,8-テトラアミノフェナジン等の芳香族多価アミノ酸を用いてもよい。
【0047】
これら化合物の合成法については、BARTON,OLLIS“COMPREHENSIVE ORGANIC CHEMISTRY”Peryamon Press等に記載されている。こうした有機カチオン性化合物の無色又は淡色の液体中の含有量に特に制限はない。
【0048】
有機カチオン性化合物含有溶液は、これが記録媒体に付与された後には速かに乾燥することが、特に高速で印字をする場合に要求される。また、印字されたインクも速かに浸透することが要求される。この要求を満足させるために処理液(有機カチオン性化合物含有溶液)自体および/又はインクの記録媒体への浸透性を高めるための化合物を有機カチオン性化合物含有溶液に添加することが望ましい。
【0049】
一方、特開平1-69381号公報に記載されているような、炭素数が4以上のアルキル基、アルケニル基およびアリール基よりなる群から選ばれた1種以上の基を分子中に有する第四級アンモニウム塩又はアミン塩もカチオン性基を有する化合物も本発明の処理剤として使用可能である。浸透剤は着色インク用に使用したものが使用可能である。その他、着色インクで使用した湿潤剤、その他各種の添加剤が使用可能である。
【0050】
次に、多価金属塩を含有する処理液について記す。これは特開昭63-299970号公報に記載されたものが使用可能である。多価金属塩を有する処理液は画像鮮明性、裏抜け防止、フェザリング防止の他、定着機能も有する。この多価金属塩における陽イオンの例としては、アルミニウムAl(III)、カルシウムCa(II)、マグネシウムMg(II)、銅Cu(II)、鉄Fe(II)及びFe(III)、亜鉛Zn(II)、スズSn(II)及びSn(IV)、ストロンチウムSr(II)、ニッケルNi(II)、コバルトCo(II)、バリウムBa(II)、鉛Pb(II)、ジルコニウムZr(IV)、チタンTi(IV)、アンチモンSb(III)、ビスマスBi(III)、タンタルTa(V)、砒素As(III)、セリウムCe(III)、ランタンLa(III)、イットリウムY(III)、水銀Hg(II)、ベリリウムBe(II)などが挙げられ、中でも色調(無色に近いもの)、コスト、安全性などを考慮するとAl(III)、Ca(II)、Mg(II)、Zn(II)、Fe(II)、Fe(III)、Sn(II)、Sn(IV)が特に好ましい。これらの多価金属イオンの他、アルカリ金属、アンモニウム、水素などの一価の陽イオンを含む複塩を使用することもできる。
【0051】
陰イオンの例としては、フッ素F、塩素Cl、臭素Br、沃素Iなどのハロゲン元素の陰イオン;硝酸イオンNO3
-、硫酸イオンSO4
2-;蟻酸、酢酸、乳酸、マロン酸、蓚酸、マレイン酸、安息香酸など有機カルボン酸の陰イオン;ベンゼンスルフォン酸、ナフトールスルフォン酸、アルキルベンゼンスルフォン酸などの有機スルフォン酸の陰イオン;チオシアンイオンSCN-、チオ硫酸イオンS2O3
2-、リン酸イオンPO4
3-、亜硝酸イオンNO2
-等が挙げられる。
【0052】
多価金属塩含有溶液をインクジェット法により記録媒体に付着せしめるには、ノズルの目詰り、保存性などを配慮して、多価金属の塩を水及び/又は有機溶媒(メタノール、エタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類など)によく溶解したものを用いるのが有利である。
【0053】
各溶液に対する溶解性は陰イオンの効果が大きく、Br-、I-、NO3
-および有機酸のイオンが上記の陰イオンの中で特に溶解性に優れ、好ましい例である。
【0054】
多価金属含有処理液は、媒体中に速やかに吸収される必要があり、そのために浸透剤を添加する方が好ましい。この他に、多価金属塩含有溶液に添加しうるものとしては、通常のインクジェット記録方法に用いられるインクに従来より添加されるものが同様に使用できる。例えば、粘度調整剤、防腐剤(防腐防黴剤を含む)、pH調整剤、紫外線吸収剤などがある。
【0055】
本発明の画像形成方法は上記全ての塗工紙に適用できるが、インク中の自家蛍光物質の蛍光検出の妨げにならないよう、塗料中に蛍光物質を含まない塗工紙が好ましい。塗工紙が自家蛍光物質を含有する場合、前記塗工紙が含有する自家蛍光物質の蛍光波長が、前記自家蛍光物質の蛍光波長と異なる塗工紙がより好ましい。一般に紙の白色度を上げるために使用される蛍光増白剤は、紫外光の照射により蛍光は発する物質であるため、本発明で用いられる有機顔料等の自家蛍光物質とは蛍光波長は異なる。
【0056】
<有機顔料>
本発明の画像形成方法はインク中に自家蛍光物質を含んでいれば、原理的には染料インク、顔料インクともに分析することができる。しかし、前述のように高精細な分析を行うため、オイルを使用すると、染料の多くはオイルに溶けてしまうので、高精細の分析を行うことが難しい。それに対して、顔料インクの多くは、色材である顔料はオイルに溶けないため、高精細の分析を行うことができる。
前記蛍光物質が、マゼンタ用顔料、またはイエロー用顔料であることが好ましい。蛍光物質が、マゼンタ用顔料、またはイエロー用顔料であれば、好ましいインク層を共焦点蛍光顕微鏡により、明確に規定することができる。
本発明の画像形成方法は、蛍光物質として、有機顔料ピグメントイエロー185またはピグメントイエロー74を含むイエローインク(励起波長:476nm)、有機顔料ピグメントレッド269またはピグメントレッド122を含むマゼンタインク(励起波長:488nm)で印刷した画像の画像層に適用することが好ましい。上記の有機顔料はいずれも水性インクに用いられる代表的な有機顔料であり、可視光の照射により蛍光を発する物質である。
【0057】
次に、本発明の画像形成方法に用いるインクジェット画像を作成する記録装置、記録方法について説明する。
本発明に用いるインクジェット画像は、インクジェット記録方式による各種記録装置、例えば、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機で画像形成される。
【0058】
記録装置、記録方法とは、記録媒体に対してインクや各種処理液等を吐出することが可能な装置、当該装置を用いて記録を行う方法である。記録媒体とは、インクや各種処理液が一時的にでも付着可能なものを意味する。
この記録装置には、インクを吐出するヘッド部分だけでなく、記録媒体の給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
【0059】
記録装置、記録方法は、加熱工程に用いる加熱手段、乾燥工程に用いる乾燥手段を有しても良い。加熱手段、乾燥手段には、例えば、記録媒体の印字面や裏面を加熱、乾燥する手段が含まれる。加熱手段、乾燥手段としては、特に限定されないが、例えば、温風ヒーター、赤外線ヒーターを用いることができる。加熱、乾燥は、印字前、印字中、印字後などに行うことができる。
記録装置、記録方法は、インクによって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、幾何学模様などのパターン等を形成するものも含まれる。
記録装置には、特に限定しない限り、吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。
更に、この記録装置には、卓上型だけでなく、A0サイズの記録媒体への印刷も可能とする広幅の記録装置や、例えばロール状に巻き取られた連続用紙を記録媒体として用いることが可能な連帳プリンタも含まれる。
【0060】
記録装置の一例について
図2乃至
図3を参照して説明する。
図2は同装置の斜視説明図である。
図3はメインタンクの斜視説明図である。記録装置の一例としての画像形成装置400は、シリアル型画像形成装置である。画像形成装置400の外装401内に機構部420が設けられている。ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク410(410k、410c、410m、410y)の各インク収容部411は、例えばアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。インク収容部411は、例えば、プラスチックス製の収容容器ケース414内に収容される。これによりメインタンク410は、各色のインクカートリッジとして用いられる。
【0061】
一方、装置本体のカバー401cを開いたときの開口の奥側にはカートリッジホルダ404が設けられている。カートリッジホルダ404には、メインタンク410が着脱自在に装着される。これにより、各色用の供給チューブ436を介して、メインタンク410の各インク排出口413と各色用の吐出ヘッド434とが連通し、吐出ヘッド434から記録媒体へインクを吐出可能となる。
【0062】
記録装置には、インクを吐出する部分だけでなく、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
塗工紙に処理剤が塗布されていれば、原理的には前処理装置は不要であるが、しかしインクが塗工紙に付着してできるだけ速く処理剤によりインクを凝集させるためには、処理剤は溶解した状態でインクと接触させることが好ましい。そのため、前述のように前処理装置を設け、処理剤を溶解させた処理液が乾燥する前に、インクと接触させることが好ましい。塗工紙の上に処理液が完全に乾燥する前にインクを接触させると、インクは瞬時に凝結させることができ、画像の擦過性を向上させることができ、特にマゼンタ画像において、その効果が高い。その際、処理剤が塗布された塗工紙を用いると、擦過性は著しく向上する。
【0063】
前処理装置、後処理装置の一態様として、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)などのインクの場合と同様に、前処理液や、後処理液を有する液体収容部と液体吐出ヘッドを追加し、前処理液や、後処理液をインクジェット記録方式で吐出する態様がある。
前処理装置、後処理装置の他の態様として、インクジェット記録方式以外の、例えば、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法による前処理装置、後処理装置を設ける態様がある。
【0064】
<前処理液>
前処理液は、前述の処理剤、有機溶剤、水を含有し、必要に応じて界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤等を含有しても良い。
有機溶剤、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤は、インクに用いる材料と同様の材料を使用でき、その他、公知の処理液に用いられる材料を使用できる。
【0065】
<後処理液>
後処理液は、透明な層を形成することが可能であれば、特に限定されない。後処理液は、有機溶剤、水、樹脂、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤等、必要に応じて選択し、混合して得られる。また、後処理液は、記録媒体に形成された記録領域の全域に塗布しても良いし、インク像が形成された領域のみに塗布しても良い。
【0066】
<インク>
以下、インクに用いる有機溶剤、水、色材、樹脂、添加剤等について説明する。
【0067】
<有機溶剤>
本発明に使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0068】
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物も好適に使用される。炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。
グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
【0069】
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物は、記録媒体として紙を用いた場合に、インクの浸透性を向上させることができる。
【0070】
有機溶剤のインク中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0071】
<水>
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%~60質量%がより好ましい。
【0072】
<色材>
前述のように本発明の画像形成方法は、蛍光物質を含有したインクを用い、蛍光物質としては、マゼンタ用顔料、イエロー顔料が挙げられる。本発明の画像形成方法は、蛍光物質を含有したインクと、蛍光物質を含有しないインクとを併用しても良く、蛍光物資を含有しないインクの色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、混晶を使用しても良い。
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
【0073】
インク中の色材の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0074】
顔料を分散してインクを得るためには、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。
竹本油脂社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0075】
<顔料分散体>
顔料に、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを得ることが可能である。また、顔料と、その他水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
前記顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を混合、分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いると良い。
顔料分散体における顔料の粒径については特に制限はないが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上500nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
前記顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
前記顔料分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
【0076】
<樹脂>
インク中に含有する樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。
これらの樹脂からなる樹脂粒子を用いても良い。樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。また、これらは、1種を単独で用いても、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0078】
樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着性、インクの保存安定性の点から、インク全量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0079】
インク中の固形分の粒径については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、吐出安定性、画像濃度などの画像品質を高くする点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上1000nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。固形分は樹脂粒子や顔料の粒子等が含まれる。粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0080】
<添加剤>
インクには、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えても良い。
【0081】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH4、NH3CH2CH2OH、NH2(CH2CH2OH)2、NH(CH2CH2OH)3等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0082】
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S-1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
【化3】
(但し、一般式(S-1)式中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表わし、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(信越化学工業株式会社)、EMALEX-SS-5602、SS-1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ-2105、FZ-2118、FZ-2154、FZ-2161、FZ-2162、FZ-2163、FZ-2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK-33、BYK-387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社)などが挙げられる。
【0083】
前記フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4~16である化合物がより好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に一般式(F-1)及び一般式(F-2)で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
【化4】
上記一般式(F-1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0~10の整数が好ましく、nは0~40の整数が好ましい。
一般式(F-2)
C
nF
2n+1-CH
2CH(OH)CH
2-O-(CH
2CH
2O)
a-Y
上記一般式(F-2)で表される化合物において、YはH、又はC
mF
2m+1でmは1~6の整数、又はCH
2CH(OH)CH
2-C
mF
2m+1でmは4~6の整数、又はC
pH
2p+1でpは1~19の整数である。nは1~6の整数である。aは4~14の整数である。
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。この市販品としては、例えば、サーフロンS-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF-470、F-1405、F-474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR、キャプストーンFS-30、FS-31、FS-3100、FS-34、FS-35(いずれも、Chemours社製);FT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF-136A,PF-156A、PF-151N、PF-154、PF-159(オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、Chemours社製のFS-3100、FS-34、FS-300、株式会社ネオス製のFT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF-151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403Nが特に好ましい。
【0084】
インク中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0085】
<消泡剤>
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0086】
<防腐防黴剤>
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0087】
<防錆剤>
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0088】
<pH調整剤>
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
【0089】
インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
インクの表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
【0090】
また、本発明の用語における、画像形成、記録、印字、印刷等は、いずれも同義語とする。
【0091】
記録媒体、メディア、被印刷物は、いずれも同義語とする。
【実施例】
【0092】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これら実施例に何ら限定されるものではない。また、表中の数値は「質量%」を示す。
【0093】
<顔料分散体1の調製>
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管及び滴下ロートを備えた1Lのフラスコ内を充分に窒素ガスで置換した後、スチレン11.2g、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート4.0g、スチレンマクロマー4.0g及びメルカプトエタノール0.4gを混合し、65℃まで昇温した。次に、スチレン100.8g、アクリル酸25.2g、ラウリルメタクリレート108.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート36.0g、ヒドロキシルエチルメタクリレート60.0g、スチレンマクロマー36.0g、メルカプトエタノール3.6g、アゾビスメチルバレロニトリル2.4g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を2.5時間かけて、フラスコ内に滴下した後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を0.5時間かけて、フラスコ内に滴下し、65℃で1時間熟成した。さらに、アゾビスメチルバレロニトリル0.8gを添加し、1時間熟成した後、フラスコ内にメチルエチルケトン364gを添加し、50質量%のポリマー溶液を800g得た。
ポリマー溶液28g、マゼンタ用顔料(C.I.ピグメントレッド122/トナーマゼンタEO02、クラリアント社製)42g、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液13.6g、メチルエチルケトン20g及びイオン交換水13.6gを十分に攪拌した後、ロールミルを用いて混練し、ペーストを得た。次に、ペーストを純水200gに投入し、充分に攪拌した後、エバポレータ用いて、メチルエチルケトン及び水を留去した。さらに、平均孔径が5.0μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターを用いて加圧濾過し、顔料の含有量が15質量%、固形分が20質量%のマゼンタ顔料分散液1を得た。
【0094】
<顔料分散体2の調製>
(共重合体の合成)
-モノマーM-a1の合成-
62.0g(525mmol)の1,6-ヘキサンジオール(東京化成工業株式会社製)を700mLの塩化メチレンに溶解し、20.7g(262mmol)のピリジンを加えた。
この溶液に、50.0g(262mmol)の2-ナフタレンカルボニルクロリド(東京化成工業株式会社製)を100mLの塩化メチレンに溶解した溶液を、2時間かけて攪拌しながら滴下した後、室温で6時間攪拌した。得られた反応溶液を水洗した後、有機相を単離し、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。残留物を、溶離液として塩化メチレン/メタノール(体積比98/2)混合溶媒を用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、52.5gの下記構造式(I-1)の反応中間体を得た。
【化5】
【0095】
次に、41.0g(151mmol)の前記構造式(I-1)の反応中間体を250mLの塩化メチレンに溶解させ、20.0g(198mmol)のトリエチルアミン(東京化成工業株式会社製)を加えた。この溶液を氷浴下で冷却し、20.0g(191mmol)のメタクリル酸クロリド(東京化成工業株式会社製)を、30分間かけて滴下した後、氷浴下で1時間撹拌、室温で3時間撹拌した。沈殿物をろ別し、ろ液を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗った後、有機相を単離し、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。残留物を、溶離液としてn-ヘキサン/酢酸エチル(体積比6/1)混合溶媒を用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、39.4gのモノマーM-a1を得た。
【化6】
【0096】
-共重合体CP-1の合成-
20.3g(282mmol)のアクリル酸(東京化成工業株式会社製)、79.7g(234mmol)のモノマーM-a1を、500mLの乾燥メチルエチルケトンに溶解してモノマー溶液を調製した。モノマー溶液の10質量%をアルゴン気流下で75℃まで加熱した後、残りのモノマー溶液に5.0gの2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN、東京化成工業株式会社製)を溶解した溶液を2時間かけて滴下し、75℃で6時間撹拌した。室温まで冷却し、得られた反応溶液をヘキサンに投下した。析出物した共重合体をろ別し、減圧乾燥して、95.7gの[共重合体CP-1](重量平均分子量(Mw):22,500)を得た。
【0097】
(顔料分散体2の調製)
4.0質量部の共重合体CP-1を、pHが8.0となるように、80.0質量部のテトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に溶解した。得られた共重合体水溶液84.0質量部に対し、16.0質量部のマゼンタ用顔料(C.I.ピグメントレッド122/トナーマゼンタEO02、クラリアント社製)を加えて12時間攪拌した。
得られた混合物をディスクタイプのビーズミル(シンマルエンタープライゼス社製、KDL型、メディア:直径0.1mmのジルコニアボール使用)を用いて、周速10m/sで1時間循環分散した後、平均孔径1.2μmのメンブレンフィルターでろ過し、調整量のイオン交換水を加えて、97.0質量部の[顔料分散体2](顔料固形分濃度:16質量%)を得た。
【0098】
(インクの製造例)
下記表1の各欄に示す材料をビーカー中で混合、攪拌してインク1~4を製造した。
【表1】
【0099】
表1に示す、界面活性剤、アクリル樹脂エマルジョン、ウレタン樹脂エマルジョンは、以下のとおりである。
界面活性剤:
BYK-348;ビックケミー製、ポリエーテル系ポリシロキサン界面活性剤
FZ-2146;東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製、
ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤
Tego wet-270;エボニック社製、
ポリエーテル変性ポリシロキサン界面活性剤
アクリル樹脂エマルジョン:ポリゾールROY6312、昭和高分子社製、
最低造膜温度(MFT)が20℃のアクリル-シリコーン樹脂エマルジョン
ウレタン樹脂エマルジョン:W5661、三井化学ポリウレタン株式会社製、
ポリウレタン系樹脂エマルジョン
【0100】
(処理液の製造例)
下記表2の各欄に示す材料をビーカー中で混合、攪拌して処理液1~6を調製した。
【表2】
【0101】
表2中、「ハイマックスSC-506」、「LS-106」は以下の通りである。
LS-106:エマルゲンLS-106
(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、花王社製)
ハイマックスSC-506:カチオン性樹脂
(商品名:ハイマックスSC-506、ハイモ社製、カチオン当量5.0meq/g)
【0102】
実施例1
OK金藤+104.7GMS(王子製紙製)の塗工面に、処理液2をローラー塗布法により0.9g/m2付着させた後、90℃の恒温槽中に30秒間乾燥させた。
23℃、50%RH環境下で、インクジェットプリンター(株式会社リコー製、IPSiO GX5000改造機(処理液を塗布する前処理機を設置))にインク3、処理液1を充填し、水性インクジェット記録法により、処理液1及びインク3を、シングルパス 600dpi(120m/分)で吐出してべた画像を形成した。
インク層の厚みは、2.0μmであった。
【0103】
<定着性の評価>
上述の手順で得たベタ画像を、印刷後100℃の定温乾燥機(アズワン社製OF-300B)で180秒乾燥させた。クロックメーター(大栄科学精器製作所製)を利用して、用紙(Lumi Art Gross(90gms))で、印刷したベタ部を擦って10往復させ、用紙への顔料の転写具合を目視観察したところ、用紙への転写は見られなかった。
【0104】
<共焦点蛍光顕微鏡による観察>
上記の印字した画像の一部を鋏で切り出し、スライドガラス上に両面テープで固定した。その上からサラダ油(日清サラダ油、日清オイリオ製)を適量滴下し、さらにその上にカバーガラスを載せた。これを倒立型の共焦点蛍光顕微鏡TCS SP8(Leica製)で観察し、インクジェット画像層の三次元形状を可視化した。測定条件は以下のとおりである。
・光源 アルゴンレーザ488nm
・受光波長 500~620nm
・対物レンズ 油浸レンズHC PLAPO CS2(NA1.4)
・検出器 HyDのPhoton Countingモード
・ピンホール径 32.2μm
・視野径 X×Y=18.45μm×18.45μm
・Zstep 0.1545μm
・画素数 X×Y×Z=512×512×86
(n1=512,n2=512、n3=86)
・スキャンスピード 400Hz
・ズーム 10倍
測定後、Maximum projection機能により各F(X,Y)のZ方向のデータを重ね合わせ(蛍光強度の平均)を行い、F’(Xi,Yj)を求めた。
図4に結果を示す。図中の明るさは蛍光強度を表し、明るいほど蛍光強度は強く、暗いほど蛍光強度は弱い。
図4で、F’(Xi,Yj)が、全F’(Xi,Yj)(512×512=262144個)の蛍光強度の平均値(F’ave)の75%以下となる箇所を抜き出したところ、
図5のようになり、その割合は3.54%であった。
【0105】
実施例2
実施例1において、インク3をインク4へ、処理液1を処理液2とする以外は実施例1と同様にべた画像を作成し、実施例1と同様に定着性の評価を行ったところ、用紙への転写は見られなかった。また、共焦点蛍光顕微鏡による観察を行い、蛍光強度の平均値(F’ave)の75%以下となる箇所の割合を調べたところ、2.18%であった。
【0106】
比較例1
実施例1において、インク3をインク1へ、処理液1を処理液2とする以外は実施例1と同様にべた画像を作成し、実施例1と同様に定着性の評価を行ったところ、用紙への著しい転写が見られた。また、共焦点蛍光顕微鏡による観察を行い、蛍光強度の平均値(F’ave)の75%以下となる箇所の割合を調べたところ、0.03%であった。
【0107】
実施例3
実施例2において、処理液2を塗布したOK金藤+104.7GMS(王子製紙製)をLumi Art Gross(90gms)とする以外は実施例2と同様にべた画像を作成し、定着性の評価を行ったところ、用紙への転写は見られなかった。また、共焦点蛍光顕微鏡による観察を行い、蛍光強度の平均値(F’ave)の75%以下となる箇所の割合を調べたところ、3.71%であった。
【0108】
実施例4
実施例3において、処理液2を処理液5とする以外は実施例3と同様にして同様にべた画像を作成し、定着性の評価を行ったところ、用紙への転写がわずかに見られるものの、許容レベルであった。また、共焦点蛍光顕微鏡による観察を行い、蛍光強度の平均値(F’ave)の75%以下となる箇所の割合を調べたところ、8.55%であった。
【0109】
比較例2
実施例3において、処理液2を処理液6とする以外は実施例3と同様にして同様にべた画像を作成し、定着性の評価を行ったところ、用紙への転写見られ、許容できないレベルであった。また、共焦点蛍光顕微鏡による観察を行い、蛍光強度の平均値(F’ave)の75%以下となる箇所の割合を調べたところ、9.37%であった。
【0110】
実施例5
Lumi Art Gross(90gms)の塗工面に、処理液2をローラー塗布法により1.8g/m2付着させた後、90℃の恒温槽中に30秒間乾燥させた。
実施例1において、処理液2を塗布したOK金藤+104.7GMS(王子製紙製)に変えて上記用紙を用いる以外は実施例1と同様にべた画像を作成し、定着性の評価を行ったところ、用紙への転写はわずかに見られるが、許容できるレベルであった。また、共焦点蛍光顕微鏡による観察を行い、蛍光強度の平均値(F’ave)の75%以下となる箇所の割合を調べたところ、0.08%であった。
【0111】
実施例6
Lumi Art Gross(90gms)の塗工面に、処理液1をローラー塗布法により1.8g/m2付着させた後、90℃の恒温槽中に30秒間乾燥させた。
実施例5において、用紙として上記用紙を用いる以外は実施例5と同様にべた画像を作成し、定着性の評価を行ったところ、用紙への転写は見られなかった。また、共焦点蛍光顕微鏡による観察を行い、蛍光強度の平均値(F’ave)の75%以下となる箇所の割合を調べたところ、0.12%であった。
【0112】
実施例7
実施例2において、用紙としてOK金藤+104.7GMS(王子製紙製)のみを用いる以外は実施例2と同様にべた画像を作成し、定着性の評価を行ったところ、用紙への転写は見られなかった。また、共焦点蛍光顕微鏡による観察を行い、蛍光強度の平均値(F’ave)の75%以下となる箇所の割合を調べたところ、2.68%であった。
【0113】
実施例8
実施例7において、処理液に処理液3を用いる以外は実施例7と同様にべた画像を作成し、定着性の評価を行ったところ、用紙への転写は見られなかった。また、共焦点蛍光顕微鏡による観察を行い、蛍光強度の平均値(F’ave)の75%以下となる箇所の割合を調べたところ、1.19%であった。
【0114】
比較例3
実施例8において、インクをインク2とする以外は実施例8と同様にべた画像を作成し、定着性の評価を行ったところ、用紙への著しい転写が見られた。また、共焦点蛍光顕微鏡による観察を行い、蛍光強度の平均値(F’ave)の75%以下となる箇所の割合を調べたところ、0.02%であった。
【符号の説明】
【0115】
(
図1について)
1 ランプ
2 照明レンズ
3 対物レンズ
4 ダイクロイックミラー
5 点光源
7 焦点面
8 検出器
9 試料
【0116】
(
図2、
図3について)
400 画像形成装置
401 画像形成装置の外装
401c 装置本体のカバー
404 カートリッジホルダ
410 メインタンク
410k、410c、410m、410y ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク
411 インク収容部
413 インク排出口
414 収容容器ケース
420 機構部
434 吐出ヘッド
436 供給チューブ
【0117】
(
図4について)
21 供給ロール
22 被記録媒体
23a、23b、23c、23d 印刷ユニット
24a、24b、24c、24d 光源
25 加工ユニット
26 印刷物巻取りロール
【先行技術文献】
【特許文献】
【0118】
【文献】特開昭56-86789号公報
【文献】特開昭55-150396号公報
【文献】特開2003-182203号公報
【文献】特開2002-310956号公報
【文献】特開2006-322881号公報
【文献】特開2005-127938号公報