(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】撮像システムにおける高速可変焦点距離可変音響式屈折率分布型レンズの動作の安定化
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20220714BHJP
【FI】
G01B11/00 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018157445
(22)【出願日】2018-08-24
【審査請求日】2021-07-07
(32)【優先日】2017-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】アイゼア フェアクセン
(72)【発明者】
【氏名】ポール ジェラード グラドニック
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-118006(JP,A)
【文献】米国特許第9736355(US,B1)
【文献】特開2017-49249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変音響式屈折率分布型(TAG)レンズ、TAGレンズ制御部、カメラ、露光時間制御部を備える撮像システムを操作し、前記TAGレンズを所望の撮像動作状態に確立又は維持する方法であって、
複数の撮像駆動モード期間中に標準撮像駆動制御設定を用いて前記TAGレンズを制御することと、
前記撮像駆動モード期間とは異なる複数の調整適応駆動モード期間中に調整適応駆動制御設定を用いて前記TAGレンズを制御することとを含み、
前記撮像駆動モード期間の各インスタンスでは、前記標準撮像駆動制御設定に従って前記TAGレンズを操作する間に取得された画像データが提供され、
前記標準撮像駆動制御設定は、標準撮像駆動電圧と標準撮像駆動持続時間を含み、前記TAGレンズの標準撮像状態を成立させるように構成され、
前記調整適応駆動制御設定は、前記TAGレンズの前記標準撮像状態と前記TAGレンズの現在の動作状態との差分を示すTAGレンズ監視信号に基づき、異なるそれぞれの調整適応駆動モード期間に対して、異なるそれぞれのTAGレンズ調整駆動電圧と異なるそれぞれのTAGレンズ調整駆動持続時間のうちの少なくとも一つを決定するように構成される方法。
【請求項2】
前記撮像駆動モード期間と前記調整適応駆動モード期間は、所定のシーケンスで点在している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所定のシーケンスは、前記撮像駆動モード期間と前記調整適応駆動モード期間とを交互に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記監視信号は、前記TAGレンズの動作共振周波数を監視する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記監視信号は、前記TAGレンズの動作温度を監視する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記TAGレンズの前記標準撮像状態は、前記TAGレンズの最大指定環境動作温度、又は前記撮像システムの最大指定環境動作温度よりも高い前記TAGレンズの動作温度を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記TAGレンズは環境への放熱を低減するために絶縁されている、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記調整適応駆動制御設定は、それぞれの調整適応駆動モード期間の少なくとも一部に対して、前記標準撮像駆動電圧より大きいそれぞれのTAGレンズ調整駆動電圧を決定するように構成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記TAGレンズは、前記TAGレンズに熱エネルギー量を入力するヒータを含み、前記熱エネルギー量は、前記複数の調整適応駆動モード期間の少なくとも一部の間ほぼ固定されている、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記熱エネルギー量は、動作の全ての時間において名目上一定である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記撮像システムは、前記TAGレンズの標準撮像共振周波数の周期内のそれぞれの位相タイミングにそれぞれのZ高さ(合焦距離)を関連付けるZ高さ(合焦距離)較正データを含み、前記較正データは、前記標準撮像駆動制御設定による前記TAGレンズの動作に対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、
前記調整適応駆動モード期間中に観察画像を取得し、取得した前記観察画像を前記撮像システムのユーザインターフェースに表示することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記方法は、
前記調整適応駆動モード期間中に画像を取得しないこと、又は、
前記調整適応駆動モード期間中に取得された画像の出力を抑制することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記方法は、
前記TAGレンズの前記標準撮像状態と、前記TAGレンズの前記現在の動作状態との差分が閾値を超える場合に、前記標準撮像駆動制御設定を用いた前記TAGレンズの制御から前記調整適応駆動制御設定を用いた前記TAGレンズの制御へ移行することと、
前記差分が前記閾値を超えない場合に、前記標準撮像駆動制御設定を用いた前記TAGレンズの制御を続けることと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
撮像システムであって、
カメラと、
前記カメラによる画像データの取得を制御するように構成された露光時間制御部と、
可変音響式屈折率分布型(TAG)レンズと、
TAGレンズ制御部と、を含み、
前記TAGレンズ制御部は、動作中に、
複数の撮像駆動モード期間中に標準撮像駆動制御設定を用いて前記TAGレンズを制御し、
前記撮像駆動モード期間とは異なる複数の調整適応駆動モード期間中に調整適応駆動制御設定を用いて前記TAGレンズを制御し、
前記撮像駆動モード期間の各インスタンスでは、前記標準撮像駆動制御設定に従って前記TAGレンズを操作する間に取得された画像データが提供され、
前記標準撮像駆動制御設定は、標準撮像駆動電圧と標準撮像駆動持続時間を含み、前記TAGレンズの標準撮像状態を成立させるように構成され、
前記調整適応駆動制御設定は、前記TAGレンズの前記標準撮像状態と前記TAGレンズの現在の動作状態との差分を示すTAGレンズ監視信号に基づき、異なるそれぞれの調整適応駆動モード期間に対して、異なるそれぞれのTAGレンズ調整駆動電圧と異なるそれぞれのTAGレンズ調整駆動持続時間のうちの少なくとも一つを決定するように構成される、撮像システム。
【請求項16】
前記露光時間制御部は、前記撮像システムのストロボ光源を制御してそれぞれの制御された時間にストロボを行う回路を含む、請求項15に記載の撮像システム。
【請求項17】
前記撮像システムは、前記TAGレンズの標準撮像共振周波数の周期内のそれぞれの位相タイミングにそれぞれのZ高さ(合焦距離)を関連付けるZ高さ(合焦距離)較正データをさらに含み、前記較正データは、前記標準撮像駆動制御設定による前記TAGレンズの動作に対応し、
前記露光時間制御部は、前記撮像システムの前記ストロボ光源を制御し、前記標準撮像共振周波数の周期内のそれぞれの位相タイミングに対応するそれぞれの制御された時間にストロボを行う、請求項16に記載の撮像システム。
【請求項18】
前記露光時間制御部は、カメラシャッタを制御して、それぞれの制御された時間に画像信号を取得する回路を含む、請求項15に記載の撮像システム。
【請求項19】
前記TAGレンズに熱エネルギー量を入力するヒータを含み、前記熱エネルギー量は、前記複数の調整適応駆動モード期間の少なくとも一部の間ほぼ固定されている、請求項15に記載の撮像システム。
【請求項20】
前記露光時間制御部は、前記調整適応駆動モード期間中の画像露光を防止し、又は、
前記撮像システムは、前記調整適応駆動モード期間中に前記カメラにより取得された画像データの画像表示を抑制する、請求項15に記載の撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、(例えば、マシンビジョン検査システムにおける)高速可変焦点距離レンズを使用する精密計測に関し、より詳細には、撮像システムにおける高速可変焦点距離レンズの動作の監視及び安定化に関する。
【背景技術】
【0002】
精密マシンビジョン検査システム(又は略して「ビジョンシステム」)のような精密非接触計測システムは、物体の精密な寸法測定値を取得すると共に他の様々な物体の特徴を検査するために使用でき、コンピュータと、カメラと、光学システムと、ワークピースの走査(traversal)及び検査を可能とするために移動する精密ステージと、を含み得る。例示的な従来技術のシステムは、イリノイ州オーロラに位置するMitutoyo America Corporation(MAC)から入手可能なQUICK VISION(登録商標)シリーズのPCベースのビジョンシステム及びQVPAK(登録商標)ソフトウェアである。QUICK VISION(登録商標)シリーズのビジョンシステム及びQVPAK(登録商標)ソフトウェアの機能及び動作については、概ね、例えば2003年1月に発表されたQVPAK 3D CNC画像測定機ユーザガイド、及び、1996年9月に発表されたQVPAK 3D CNC画像測定機動作ガイドに記載されている。このタイプのシステムは、顕微鏡型の光学システムを利用し、小型又は比較的大型のワークピースの検査画像を提供するようにステージを移動させる。
【0003】
汎用の精密マシンビジョン検査システムは一般に、自動ビデオ検査を行うようにプログラム可能である。このようなシステムは通常、「非専門家」のオペレータが動作及びプログラミングを実行できるように、GUI機能及び既定の画像解析「ビデオツール」を含む。例えば米国特許第6,542,180号は、様々なビデオツールの使用を含む自動ビデオ検査を利用したビジョンシステムを教示している。
【0004】
マルチレンズ可変焦点距離(VFL)光学システムは、表面高さの観察や精密測定に用いられる撮像システムに採用されてもよい。撮像システムは、例えば、米国特許第9143674号に開示される、顕微鏡システム及び/又は精密マシンビジョン検査システムに含まれていてもよい。簡単に言えば、VFLレンズは、複数の焦点距離で、それぞれ複数の画像を取得することができる。VFLレンズの一つとして、可変音響式屈折率分布型(「TAG」)レンズが知られている。TAGレンズは流体媒質中の音波を用いてレンズ作用を作り出す高速VFLレンズである。音波は、流体媒質を取り囲む圧電チューブに共振周波数の電界を印加して生成してもよい。音波は、レンズの屈折力、及び焦点距離又は合焦位置を変調するレンズの流体において、密度と屈折率プロファイルの経時変化を作り出す。TAGレンズは、最大数百kHzの共振周波数で、つまり高速で、ある範囲の焦点距離を周期的に掃引することができる。レンズの詳細に関しては、「High speed varifocal imaging with a tunable acoustic gradient index of refraction lens」(Optics Letters、Vol. 33、No. 18、2008年9月15日)という記事の教示を参照してもよい。可変音響式屈折率分布型レンズと、それに関連する制御型信号発生器は、例えば、ニュージャージー州プリンストンのTAG Optics, Inc.により市販されている。例えば、モデルTL2.B.xxxシリーズのレンズは、約600kHzまでの変調が可能である。
【0005】
本発明の様々な実施形態は、TAGレンズをVFLレンズとして組み込んだ撮像システムの動作の改善に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
下記の概要では、後述の「詳細な説明」においてさらに詳しく説明する概念を選別し、簡略化した形で紹介する。概要は、請求項に記載された主題の重要な特徴を特定し、あるいは請求項に記載された主題の範囲を規定することを目的として作成されたものではない。
【0007】
TAGレンズを使用する撮像システムは、例えば、特定の共振周波数で特定の駆動振幅を使用しながら、較正用の既知の動作条件を使用して、共振サイクル中の位相タイミングに応じ、レンズの焦点距離又は位置に対して較正を行うことができる。較正中、安定した環境条件を提供することで、較正データ取得中に所望の動作条件を確実に安定化してもよい。較正後、特定の位相タイミングを用いて露光したとき、最良合焦画像を生成する表面に対して、較正データを使用して撮像システムに対する表面の焦点位置を示し、表面の位置や高さの測定を可能にしてもよい。しかしながら、動作中において、TAGレンズの動作条件は、様々な要因により不整合を起こし、較正に用いられる動作条件と正確に一致しない可能性がある。これにより生じ得る測定誤差は小さいが、無視できるほどのものではない。TAGレンズの共振周波数は、例えば、レンズ温度に応じて僅かに変化することが知られている。これは、駆動信号に対するレンズの電気機械的応答性の変化を反映している。さらに、レンズ流体の温度変化により、基準屈折率が変化することも知られている。レンズの電気機械的応答性及び/又は流体特性の変化は、必然的に駆動信号に対するレンズの屈折力(又は焦点距離)応答性を変化させ、前述の測定誤差をもたらす。つまり、TAGレンズの動作(例えば、レンズの動作温度を含む)の安定化を促進し、引いてはTAGレンズを含む撮像システムの動作を安定化し、前述の測定誤差の抑制や防止を可能にする必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
例示の実施形態によると、可変音響式屈折率分布型(TAG)レンズ、TAGレンズ制御部、カメラ、露光時間制御部を含む撮像システムを操作し、TAGレンズを所望(標準)の撮像動作状態に確立又は維持する方法が提供される。方法は、一般的に二つのステップを含む。第1のステップにおいて、TAGレンズは、複数の撮像駆動モード期間中に標準撮像駆動制御設定を用いて制御される。撮像駆動モード期間の各インスタンスでは、標準撮像駆動制御設定に従ってTAGレンズを操作する間に取得された画像データが提供される。標準撮像駆動制御設定は、標準撮像駆動電圧と標準撮像駆動持続時間とを含み、TAGレンズの標準撮像状態(例えば、較正データの基準として用いられる条件に対応する状態)を成立させるように構成される。第2のステップにおいて、TAGレンズは、撮像駆動モード期間とは異なる複数の調整適応駆動モード期間中に調整適応駆動制御設定を用いて制御される。調整適応駆動制御設定は、TAGレンズの標準撮像状態と、TAGレンズの現在の動作状態との差分を示すTAGレンズ監視信号に基づき、それぞれ異なる調整適応駆動モード期間に対して、それぞれ異なるTAGレンズ調整駆動電圧とそれぞれ異なるTAGレンズ調整駆動持続時間のうちの少なくとも一つを決定するように構成される。
【0009】
さらなる実施例によると、カメラと、カメラによる画像データ取得を制御するように構成された露光時間制御部と、可変音響式屈折率分布型(TAG)レンズと、TAGレンズ制御部とを含む撮像システムが提供される。TAGレンズ制御部は、前述したように、複数の撮像駆動モード期間中に標準撮像駆動制御設定を用いてTAGレンズを制御し、撮像駆動モード期間とは異なる複数の調整適応駆動モード期間中に調整適応駆動制御設定を用いてTAGレンズを制御するように構成される。
【0010】
従って、様々な実施形態による方法及び撮像システムは、現在進行中の動作において、TAGレンズの動作の監視及び安定化を行い、引いては、TAGレンズを組み込んだ撮像システムの動作を安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】汎用精密マシンビジョン検査システムの様々な典型的な構成要素を示す図である。
【
図2】本明細書の開示する特徴を含む、
図1と類似するマシンビジョン検査システムの制御システム部及びビジョン構成要素部を示すブロック図である。
【
図3】マシンビジョン検査システムなどの精密非接触計測システムに適合され、本明細書の開示する原理に従って動作し得る撮像システムの概略図である。
【
図4】様々な動作温度におけるVFL(TAG)レンズの共振周波数を示すグラフである。
【
図5】TAGレンズを含む撮像システムの動作の一例を説明するタイミングチャートである。
【
図6】TAGレンズを含む撮像システムの動作ルーチンの実施の一例を説明するフロー図である。
【
図7】TAGレンズを含む撮像システムの動作ルーチンの実施の他の例を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本明細書に記載の方法に従い、撮像システムとして使用可能である例示的なマシンビジョン検査システム10を示すブロック図である。マシンビジョン検査システム10は、データや制御信号のやりとりを行う画像測定機12を含み、制御コンピュータシステム14に操作可能に接続される。制御コンピュータシステム14はさらに、モニタ又はディスプレイ16、プリンタ18、ジョイスティック22、キーボード24、及びマウス26に操作可能に接続され、データや制御信号のやりとりを行う。モニタ又はディスプレイ16は、マシンビジョン検査システム10の動作に対する制御及び/又はプログラミングに適するユーザインターフェースを表示してもよい。さらなる実施例において、タッチスクリーンタブレットなどを、コンピュータシステム14、ディスプレイ16、ジョイスティック22、キーボード24、マウス26のうちのいずれか又は全ての機能の代替として、及び/又はこれらの機能を冗長的に提供するものとして活用してもよい。
【0013】
当業者であれば、制御コンピュータシステム14を、一般的に、任意の演算システム又は演算デバイスにより構成してもよいことを理解するであろう。適切な演算システムや演算デバイスとしては、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ、上記のいずれかを含む分散コンピューティング環境などが挙げられる。演算システム又は演算デバイスは、ソフトウェアを実行して本明細書に記載の機能を実施する一つ以上のプロセッサを含んでいてもよい。プロセッサは、汎用又は特殊目的のプログラマブル・マイクロプロセッサ、プログラマブル・コントローラ、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブル・ロジックデバイス(PLD)、又は上記のデバイスの組み合わせを含む。ソフトウェアは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、フラッシュメモリなど、又はこのようなコンポーネントの組み合わせのメモリに格納されてもよい。ソフトウェアは、光学系ディスク、フラッシュメモリデバイス、又はその他任意の種類のデータ格納用の不揮発性記憶媒体など、一つ以上の記憶デバイスに格納されてもよい。ソフトウェアは、特定のタスクを実行するか、又は特定の抽象データ型を実装するルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造等を含む一つ以上のプログラムモジュールを含んでいてもよい。分散コンピューティング環境では、複数の演算システム又は演算デバイスに渡ってプログラムモジュールの機能を結合又は分散することができ、機能には、有線構成又は無線構成のサービスコールを介してアクセスすることができる。
【0014】
画像測定機12は、移動型ワークピースステージ32と、光学撮像システム34とを含み、光学撮像システム34はズームレンズ又は交換レンズを備えてもよい。ズームレンズ又は交換レンズは、一般的に、光学撮像システム34により提供される画像に対して様々な倍率を付与する。マシンビジョン検査システム10については、同出願人の米国特許第7454053号、第7324682号、第8111905号、第8111938号にも記載されている。
【0015】
図2は、本明細書に記載の特徴を含む、
図1のマシンビジョン検査システムと類似するマシンビジョン検査システム100の制御システム部120及びビジョン構成要素部200を示すブロック図である。下記に詳細に説明するが、制御システム部120は、ビジョン構成要素部200の制御に用いられる。ビジョン構成要素部200は、光学アセンブリ部205、光源220、230、240、及び、中央透明部212を有するワークピースステージ210を含む。ワークピースステージ210は、ワークピース20が位置決めされ得るステージの表面と略平行な平面内のx軸及びy軸に沿って制御可能に移動する。
【0016】
光学アセンブリ部205は、カメラシステム260、交換対物レンズ250、各種の例示的実施形態ではTAGレンズである可変焦点距離(VFL)レンズ270を含み、さらには、レンズ286、288を有するターレットレンズアセンブリ281を含んでいてもよい。あるいは、ターレットレンズアセンブリの代わりに、固定式又は手動式の交換変倍レンズ、又はズームレンズ構成などが含まれていてもよい。さらなる実施例において、各種のレンズが、光学アセンブリ部205の変倍レンズ部の一部として含まれていてもよい。さらなる実施例において、交換対物レンズ250は、変倍レンズ部の一部として含まれる固定倍率対物レンズ組(例えば、0.5倍、1倍、2倍又は2.5倍、5倍、10倍、20倍又は25倍、50倍、100倍などの倍率に対応する対物レンズ組)から選ばれてもよい。
【0017】
光学アセンブリ部205は、制御可能モータ294を用いて、x軸及びy軸と略直交するz軸に沿って制御可能に移動し、モータ294は、アクチュエータを駆動して光学アセンブリ部205をz軸に沿って移動させ、ワークピース20の画像の焦点を変える。制御可能モータ294は、信号線296を介して入出力インターフェース130に接続される。下記により詳しく説明するが、VFL(TAG)レンズ270は、レンズ制御インターフェース134により信号線334'を介して制御されることで、レンズの合焦位置を周期的に変調してもよい。レンズ制御インターフェース134は、下記により詳しく説明するが、本明細書の開示する各種の原理によるレンズ駆動モード管理部180を含んでいてもよい。マシンビジョン検査システム100を用いて撮像されるワークピース20、又は複数のワークピース20を保持するトレイ又は固定具は、ワークピースステージ210上に載置される。ワークピースステージ210は、光学アセンブリ部205に対して移動するように制御され、それにより、交換対物レンズ250はワークピース20上の位置の間、及び/又は複数のワークピース20の間で移動する。
【0018】
透過照明光源220、落射照明光源230、斜め照明光源240(例えばリングライト)のうちの一つ以上は、それぞれ光源光222、232、及び/又は242を放射し、ワークピース20を照明してもよい。落射照明光源230は、ミラー290を含む経路に沿って光源光232を放射してもよい。光源光は、ワークピース光255として反射又は透過される。撮像に用いられるワークピース光は交換対物レンズ250、ターレットレンズアセンブリ281、VFLレンズ270を通過し、カメラシステム260により集光される。ワークピース20の画像は、カメラシステム260に捕捉され、信号線262を介して制御システム部120に出力される。光源220、230、240はそれぞれ、信号線又はバス221、231、241を介して制御システム部120に接続されてもよい。制御システム部120は、軸284に沿ってターレットレンズアセンブリ281を回転させ、信号線又はバス281'を介してターレットレンズを選択し、画像の倍率を変更してもよい。
【0019】
図2に示されているように、例示の実施例において、制御システム部120は、制御部125、入出力インターフェース130、メモリ140、ワークピースプログラム発生器及び実行器170、及び電源部190を含む。それぞれの構成要素、並びに後述する追加構成要素は、一つ以上のデータ/制御バス、及び/又はアプリケーション・プログラミング・インターフェースにより、又は素子間の直接接続により、相互に接続されていてもよい。入出力インターフェース130は、撮像制御インターフェース131、移動制御インターフェース132、照明制御インターフェース133、レンズ制御インターフェース134を含む。
図3に示されているルーチン及び/又は回路を備えるレンズ制御部334を参照して以降で詳細に説明する通り、レンズ制御インターフェース134は、本明細書に開示の原理に従ったTAGレンズ270の駆動モードを制御するレンズ動作回路及び/又はルーチンを含むレンズ駆動モード管理部180を含んでいてもよい。一部の実施形態では、レンズ制御インターフェース134とレンズ制御部334は、統合されていてもよく、及び/又は、区別できなくともよい。移動制御インターフェース132は、位置制御素子132aと速度/加速度制御素子132bを含んでいてもよいが、素子は、統合されていてもよく、及び/又は、区別できなくともよい。照明制御インターフェース133は、該当する場合には、マシンビジョン検査システム100における対応の様々な光源に対して、例えば選択、パワー、オン/オフ切り替え、ストロボパルスタイミングを制御する照明制御素子133a、133n、及び133flを含んでいてもよい。ストロボパルスタイミングを制御する照明制御素子は、一般的に、
図3に示されている露光(ストロボ)時間制御部393に対応するが、詳細に関しては後述する。
【0020】
メモリ140は、画像ファイルメモリ部141と、エッジ検出メモリ部140edと、一つ以上のパートプログラムなどを含んでいてもよいワークピースプログラムメモリ部142と、ビデオツール部143とを備えていてもよい。ビデオツール部143は、対応のビデオツールのそれぞれについてGUI、画像処理操作などを決定するビデオツール部143aと、他のビデオツール部(例えば、143n)とを含み、さらには、ビデオツール部143に含まれる各種のビデオツールにより操作可能な複数の関心領域(ROI)を画定する自動、半自動、及び/又は手動操作をサポートする関心領域発生器143roiを含む。ビデオツール部はまた、合焦高さの測定操作に用いられるGUIや画像処理操作などを決定する自動合焦ビデオツール143afを備える。さらなる実施例において、自動合焦ビデオツール143afは、米国特許第9143674号により詳しく記載されている通り、
図3に記載のハードウェアを用いて高速で合焦高さを測定することができる高速合焦高さツールを追加的に含んでいてもよい。さらなる実施例において、高速合焦高さツールは、自動合焦ビデオツールに用いられる従来の方法に従って動作し得る、自動合焦ビデオツール143afの特殊モードであってもよく、又は、自動合焦ビデオツール143afの動作に、高速合焦高さツールの動作が含まれているだけであってもよい。
【0021】
本開示の文脈において、また、当業者にとっては既知であるように、「ビデオツール」という用語は、一般的に、ビデオツールに含まれる動作の段階シーケンスを作成せず、あるいは、一般化テキストによるプログラミング言語に依存する必要もなく、マシンビジョンのユーザが比較的に単純なユーザインターフェース(例えばグラフィカル・ユーザ・インターフェース、編集可能なパラメータウィンドウ、メニューなど)を介して実装できる、比較的複雑な自動操作、又はプログラムされた操作のセットを指す。例えば、ビデオツールは、画像処理操作及び演算を左右する少数の変数やパラメータを調整することで特定のインスタンスに適用されカスタマイズされる、事前にプログラムされた操作及び演算の複合セットを含んでいてもよい。基本的な操作及び演算に加えて、ビデオツールは、ビデオツールの特定のインスタンスに対してユーザがそのパラメータを調整できるユーザインターフェースを備える。例えば、多くのマシンビジョンビデオツールを使用して、ユーザは、マウスを用いた簡単な「ハンドルのドラッグ」操作によりグラフィカル関心領域(ROI)指標を構成して、ビデオツールの特定のインスタンスにおける画像処理操作による分析対象となる、画像のサブセットの位置パラメータを定義することができる。可視のユーザインターフェース機能は、時にビデオツールと呼ばれ、基本的な操作は暗黙的に含まれていることに留意されたい。
【0022】
一つ以上のディスプレイデバイス136(例えば、
図1のディスプレイ16)と、一つ以上の入力デバイス138(例えば、
図1のジョイスティック22、キーボード24、マウス26)が、入出力インターフェース130に接続されていてもよい。ディスプレイデバイス136と入力デバイス138は、検査動作の実行、及び/又はパートプログラムの作成及び/又は変更に使用できる各種のグラフィカル・ユーザ・インターフェース(GUI)機能を含むユーザインターフェースを表示して、カメラシステム260に捕捉された画像を示し、及び/又は、ビジョンシステム構成要素部200に対して直接制御を行うために使用されてもよい。ディスプレイデバイス136は、ユーザインターフェース機能を(例えば、自動合焦ビデオツール143afなどと関連付けて)表示してもよい。
【0023】
例示の実施例において、ユーザがマシンビジョン検査システム100を用いてワークピース20用のパートプログラムを作成する場合、ユーザは、マシンビジョン検査システム100を学習モードで操作してパートプログラム命令を生成し、所望の画像取得トレーニングシーケンスを得る。例えば、トレーニングシーケンスには、視野(FOV)内の代表ワークピースの特定のワークピース要素の位置決め、照明レベルの設定、合焦又は自動合焦、画像の取得、及び、(例えば、ワークピース要素に対するビデオツールのうちの一つのインスタンスを用いて)画像に適用する検査トレーニングシーケンスの提供が含まれていてもよい。学習モードは、シーケンスを取得又は記録し、対応するパートプログラム命令に変換するものである。命令によると、パートプログラムが実行されるとき、マシンビジョン検査システムはトレーニング済みの画像取得を再現し、パートプログラム作成の際に用いた代表ワークピースと一致する実行モード中のワークピース上における特定のワークピース要素(つまり、対応する位置の対応する特徴)を、検査動作により自動的に検査する。
【0024】
図3は、TAGレンズ370を含み、ビジョンシステムに適用され本明細書の開示する原理に従って動作してもよいVFLレンズシステム300(撮像システム300とも言う)の概略図である。
図3の特定の番号付けの構成要素3XXは、下記に別途の記載がない限り、
図2における同様の番号付けの構成要素2XXに対応するか、及び/又は類似の動作を行い得ることが理解されよう。
図3に示されているように、VFLレンズシステム300は、光源330、対物レンズ350、チューブレンズ351、リレーレンズ352、VFL(TAG)レンズ370、リレーレンズ356、レンズ制御部334、カメラ/検出器360、Z高さ(合焦距離)較正部373、合焦信号処理部375(オプション)、光学合焦監視部376(オプション)を含む。さらなる実施例において、様々な構成要素は、直接接続により、あるいは一つ以上のデータ/制御バス(例えばシステム信号制御バス395)及び/又はアプリケーション・プログラミング・インターフェースにより相互に接続されていてもよい。
【0025】
図3に示されている実施例では、動作中、光源330は、ビームスプリッタ390を含む経路に沿い、対物レンズ350を介して、ワークピース320の表面へ光源光332を(例えば、ストロボ照明又は連続照明で)放射するように構成された「落射照明」光源又は他の光源であってもよく、対物レンズ350は、ワークピース320に近接する合焦位置FPに焦点を合わせたワークピース光355を受光し、ワークピース光355をチューブレンズ351に出力する。チューブレンズ351は、ワークピース光355を受光し、リレーレンズ352に出力する。他の実施例において、類似の光源を使用し、非同軸方式で視野を照明してもよい。例えば、リング光源で視野を照明してもよい。さらなる実施例において、対物レンズ350は交換対物レンズであってもよく、チューブレンズ351は、ターレットレンズアセンブリの一部として含まれていてもよい(例えば、
図2の交換対物レンズ250とターレットレンズアセンブリ281と同様のものであってもよい)。さらなる実施例において、本明細書に記載される他のレンズのうちのいずれかは、個別レンズ、複合レンズなどから形成されてもよく、あるいは、それらと組み合わせて動作してもよい。
【0026】
リレーレンズ352は、ワークピース光355を受光し、VFL(TAG)レンズ370に出力する。VFL(TAG)レンズ370は、ワークピース光355を受光し、リレーレンズ356に出力する。リレーレンズ356は、ワークピース光355を受光し、カメラ/検出器360に出力する。さらなる実施例において、カメラ/検出器360は、画像露光期間中にワークピース320の画像を捕捉してもよく、対応する画像データを制御システム部に提供してもよい。
【0027】
図3の例では、リレーレンズ352、356、及びVFL(TAG)レンズ370は、4f光学構成に含まれるように、リレーレンズ352とチューブレンズ351とは、ケプラー式(Keplerian)望遠鏡の構成に含まれるように、そして、チューブレンズ351と対物レンズ350とは、顕微鏡の構成に含まれるように設計される。図示された構成は全て、例示に過ぎず、本開示の内容を限定するものではないことが理解されよう。さらなる実施例において、図示の4f光学構成では、対物レンズ350のフーリエ面にVFL(TAG)レンズ370(例えば、低開口数(NA)デバイスであってもよい)を配置する。この構成は、ワークピース320におけるテレセントリシティを維持し、倍率変化や画像歪みを最小化することができる(例えば、ワークピース320及び/又は合焦位置FPの各Z高さに対して一定の倍率を提供する)。ケプラー式望遠鏡の構成(例えば、チューブレンズ351とリレーレンズ352とを含む)は、顕微鏡構成と4f光学構成との間に位置してもよく、VFL(TAG)レンズ370の位置において所望の投影サイズを得られるように対物レンズ有効径(clear aperture)を設計し、像収差等を最小化してもよい。
【0028】
さらなる実施例において、レンズ制御部334は、駆動信号発生器部335を含んでいてもよい。駆動信号発生器部335は(例えば、タイミングクロック335'と連携して)動作し、高速VFL(TAG)レンズ370に信号線334'を介して周期駆動信号を提供してもよい。さらなる実施例において、駆動信号発生器は、ピーク共振周波数の変化を自動的に発見、又は追従する既知の回路を含んでいてもよい。そのような実施例では、既知の回路(例えば、周期駆動信号ゼロ交差によりゲート化されたクロック計数回路)は、およそリアルタイムで、一部の実施例ではTAGレンズモニタ信号として用いられ得る、TAGレンズの実際の共振周波数を示す度数を出力してもよい。詳細に関しては後述する。
【0029】
さらなる実施例において、レンズ制御部334は、TAGレンズ370の動作状態を監視し、監視信号に基づいてTAGレンズ370の動作を安定化させる。概要のセクションにおいて前述しているように、TAGレンズを組み込んだ撮像システムは、通常、所望の標準動作条件でレンズの動作パラメータを一定にし、安定した条件下で較正される。従って、望ましくは、標準以外の動作条件で生じ得る測定誤差を最小化するために、通常の動作中にこれらのパラメータを同じ所望(標準)値に確立及び維持することにより、TAGレンズの動作を安定化する。より具体的には、一部の実施例において、望ましくは、レンズの動作パラメータ、例えばレンズの共振周波数及び/又はレンズの動作温度をレンズの動作中に安定化する。TAGレンズの動作パラメータのいずれかを監視し、安定化することにより、本発明の様々な実施形態では、初期較正に応じて、TAGレンズを組み込んだ撮像システムの適切な動作を保証する。
【0030】
監視され安定化されるTAGレンズの動作パラメータは、例えば、TAGレンズ370の共振周波数、TAGレンズ370自体の動作温度やTAGレンズ370に近接する構成要素の温度など、TAGレンズ370に関連する温度、又は、その他TAGレンズ370の任意の有意な動作属性であってよい。動作パラメータのうち、TAGレンズの共振周波数は、一般的に、
図4に示されているようにTAGレンズの動作温度と相関し、TAGレンズの動作温度の高感度指標でもある。
図4は、様々な動作温度におけるTAGレンズの共振周波数を示すグラフ400を含む。グラフ400は、温度(摂氏)の関数としてのTAGレンズの測定共振周波数410(単位:kHz)のセットを、フィッティング直線420で表したものである。フィッティング直線420は、約-130Hz/℃の傾きを有する。よって、TAGレンズの動作温度の監視及び安定化は、TAGレンズの共振周波数の安定化を促進し、逆もまた成り立つ。
【0031】
図3を再度参照すると、さらなる実施例において、レンズ制御部334は、回路及び/又はルーチンを備え、本明細書の開示する原理に従って動作するレンズ駆動モード管理部380を含んでいてもよい。一部の実施形態では、レンズ制御部334とレンズ駆動モード管理部380は、統合されていてもよく、及び/又は、区別できずともよい。さらなる実施例において、VFLレンズシステム(又は撮像システム)300は、レンズ制御部334と連携して動作し、信号線334'を介してVFL(TAG)レンズ370を駆動することによりVFL(TAG)レンズ370を制御してレンズの合焦位置を周期的に変調するように構成可能な、制御システム(例えば
図2の制御システム部120)を含んでいてもよい。さらなる実施例において、レンズ制御部334は、VFL(TAG)レンズ370を二つのモードで駆動してもよい。つまり、レンズ制御部334が標準撮像駆動電圧と標準撮像駆動持続時間を含む標準撮像駆動制御設定を用いてVFL(TAG)レンズ370を駆動する標準撮像駆動モード(又は「撮像駆動モード」)と、レンズ制御部334が異なる(調整済み)TAGレンズ調整駆動電圧と異なる(調整済み)TAGレンズ調整駆動持続時間のうちの少なくとも一つを決定するように構成された調整適応駆動制御設定を用いて、VFL(TAG)レンズ370を駆動する調整適応駆動モードである。詳細に関しては後述する。
【0032】
標準撮像駆動制御設定は、複数の撮像駆動モード期間中に用いられる。撮像駆動モード期間の各インスタンスでは、TAGレンズの標準撮像状態を成立させる標準撮像駆動制御設定(例えば、較正中に用いられる撮像駆動制御設定と同じもの)に従ってTAGレンズ370を操作する間に取得された画像データが提供される。一方、調整適応駆動制御設定は、撮像駆動モード期間とは異なる複数の調整適応駆動モード期間中に用いられる。調整適応駆動制御設定は、それぞれ異なる調整適応駆動モード期間に対して、それぞれ異なるTAGレンズ調整駆動電圧とそれぞれ異なるTAGレンズ調整駆動持続時間のうちの少なくとも一つを決定し、その結果、それぞれ異なる調整適応駆動モード期間に対してTAGレンズの電力消費率、又は加熱率は、それぞれ異なることになる。
【0033】
調整適応駆動制御設定は、TAGレンズ370の標準撮像状態と、TAGレンズ370の現在の動作状態との差分を示すTAGレンズ監視信号に基づくものである。例えば、TAGレンズ監視信号は、TAGレンズ370と関連付けられた温度センサ336により生成され、TAGレンズ370の動作温度の監視を行ってもよい。別の例として、TAGレンズ監視信号は、駆動信号発生器部335、又はTAGレンズ370の動作共振周波数を監視する任意の適切な検知回路(例えば、前述の概要を参照すること)により生成されてもよい。さらなる実施例において、調整適応駆動制御設定は、監視信号が示す、TAGレンズ370の標準撮像状態と現在の動作状態との差分を補償、低減、又は除去するように構成される。
【0034】
例えば、TAGレンズ370の動作温度が規定(標準)温度値より低いことをTAGレンズ監視信号が示す場合、調整適応駆動制御設定は、それぞれの調整適応駆動モード期間のうちの少なくとも一部に対して標準撮像駆動電圧より高いTAGレンズ調整駆動電圧をそれぞれ決定するように構成されてもよい。あるいは、又はそれに加えて、調整適応駆動制御設定は、それぞれの調整適応駆動モード期間のうちの少なくとも一部に対して、標準撮像駆動持続時間より長いTAGレンズ調整駆動持続時間をそれぞれ決定するように構成されてもよい。
図4によると、TAGレンズ370の動作共振周波数が規定(標準)共振周波数より高いという旨をTAGレンズ監視信号が示す場合、調整適応駆動制御設定は、TAGレンズ370の動作温度を上昇させ、TAGレンズ370の動作共振周波数が、それに応じて、TAGレンズ370の規定(標準)共振周波数の近傍まで低下するように構成されてもよい。例えば、調整適応駆動制御設定は、レンズへの加熱を増やしてTAGレンズ370の温度上昇と動作共振周波数の低下を引き出すために、それぞれの調整適応駆動モード期間のうちの少なくとも一部に対して、標準撮像駆動電圧より大きいTAGレンズ調整駆動電圧、及び/又は、標準撮像駆動持続時間より長いTAGレンズ調整駆動持続時間をそれぞれ決定してもよい。
【0035】
冷却システムがなければ、TAGレンズ370の温度は一般的に周囲温度と共に変動し、動作期間後の周囲温度より低くなることはないと理解できる。従って、指定条件全てに適用する単一の標準動作温度を選択する場合は、最大許容環境温度範囲、又は指定環境温度範囲より高い温度を選択しなければならない。ゆえに、さらなる実施例において、TAGレンズ370の標準動作温度は、TAGレンズ370、又は撮像システム300の最大指定環境(周囲)動作温度より高い温度に設定される。標準温度を成立させるためには、周囲温度が比較的低いとき、レンズの内部、又は周囲に比較的高い熱が発生しなければならない。逆に、周囲温度が比較的高いときは、レンズの内部、又は周囲に発生する熱を抑えなければならない。
【0036】
例えば、TAGレンズ370又は撮像システム300の指定環境動作温度が15~30℃の範囲にある場合、TAGレンズ370の標準動作温度を、最大指定環境動作温度(例えば、30℃)より高い高温(例えば、35℃)に設定することにより、調整適応駆動制御設定により印加される熱エネルギーは、常にレンズの動作温度を補正(増加)して標準動作温度に合わせることができるようになる。
【0037】
さらなる実施例によると、TAGレンズ370を絶縁して、TAGレンズ370と環境との間で行われる熱伝達を低減してもよい。例えば、TAGレンズ370から環境への放熱を低減するために、TAGレンズ370を形成する流体媒質の容器を、適切な断熱材料から製作するか、あるいは該材料で覆ってもよい。
【0038】
図3に示されているように、撮像システム300は、オプションとして、TAGレンズ370と関連付けられたレンズヒータ337を備えてもよい。レンズヒータ337は、一部の実施例及び/又は動作条件に従って、TAGレンズ370に熱エネルギー量を入力し、TAGレンズ370の加熱を促進するように構成される。ヒータ337が供給する熱エネルギー量は、少なくとも周囲温度及び/又はレンズ温度が長期間に渡って低いときは、ほぼ固定されてもよい。例えば、温度閾値(例えば、指定周囲温度範囲の中央値より下)より低いときにヒータに電源を入れ、温度閾値より高くなるとヒータの電源を切ってもよい。一部の実施例において、ヒータ337が供給する熱エネルギーは、動作の全ての時間において名目上一定であってもよい。ヒータを設ける目的は、単純に、調整適応駆動モード期間中にレンズに供給され、放熱されなければならない熱エネルギー量を減少させることである。ヒータの効果については、さらなる実施例において、応答時間が迅速である必要も、閉ループ制御を施す必要もない。この場合、簡単且つ低費用の加熱構造が可能となる。一部の実施例において、周囲温度を感知し、ヒータ337を周囲温度に応じた線形制御プロファイルに従って駆動し、最大指定周囲温度より低い周囲温度における低下を名目上補ってもよい。これにより、調整適応駆動制御設定は、周囲温度に関わらず、基本的に(TAGレンズ370に散逸すべきエネルギーに対する)一定の補償範囲で稼働することが可能となる。
【0039】
前述の通り、さらなる実施例において、TAGレンズ370の標準動作温度は、TAGレンズ370又は撮像システム300の最大指定環境(周囲)動作温度より高い温度に設定される。TAGレンズ370の温度が、標準温度に比べて比較的低い場合(及び/又はTAGレンズ370の動作共振周波数が標準周波数より比較的高い場合)、所望する安定化状況を成立させるために、対応する調整適応駆動モード期間中にレンズ内に比較的高い熱が発生しなければならない。この目標は、例えば、比較的高い駆動電圧、及び/又は比較的長い駆動持続時間により、達成することができる。逆に、TAGレンズ370の温度が、標準温度に比べて比較的高い場合(及び/又はTAGレンズ370の動作共振周波数が標準周波数より比較的低い場合)、所望する安定化状況を成立させるために、対応する調整適応駆動モード期間中にレンズ内に熱が比較的少なく発生しなければならない。この目標は、比較的低い駆動電圧、及び/又は比較的短い駆動持続時間により、達成することができる。例えば、一部の条件下で調整適応駆動制御設定は、それぞれの調整適応駆動モード期間のうちの少なくとも一部に対して、標準撮像駆動電圧より低いTAGレンズ調整駆動電圧、及び/又は標準撮像駆動持続時間より短いTAGレンズ調整駆動持続時間をそれぞれ決定してもよい。その他の条件下で、例えば、TAGレンズ370の温度が標準温度に十分近接しているか、あるいは超えている場合(及び/又はTAGレンズ370の動作共振周波数が標準周波数に近接しているか、あるいはそれ未満の場合)、調整適応駆動モード期間中の電圧及び/又は駆動持続時間は0に設定されてもよい(つまり、この条件下では、エネルギー散逸は生じない)。
【0040】
撮像駆動モード及び調整適応駆動モードでTAGレンズ370を駆動するレンズ駆動モード管理部380は、撮像駆動モード中、TAGレンズ駆動信号の生成、及び信号線334'を介するTAGレンズ370への送信を制御するように構成された標準撮像駆動モード回路/ルーチン382と、調整適応駆動モード中、TAGレンズ駆動信号の生成、及び信号線334'を介するTAGレンズ370への送信を制御するように構成された調整適応駆動モード回路/ルーチン383とを備える。例示の実施形態では、レンズ制御部334は、規定のスケジュールに従い、あるいは所定のシーケンスで、撮像モードと調整適応駆動モードとを切り替える。例えば、下記に詳細に説明される
図5に示されているように、撮像駆動モード期間と調整適応駆動モード期間を、所定のシーケンスで点在させてもよい。ある特定の例では、所定のシーケンスは、やはり
図5に示されているように、撮像駆動モード期間と調整適応駆動モード期間とを交互に含む。
【0041】
調整適応駆動モード回路/ルーチン383は、調整適応回路/ルーチン384と、調整監視回路/ルーチン385を含んでいてもよい。一部の実施例において、調整適応回路/ルーチン384は、前述の通り、調整適応駆動モード期間中、所定のシーケンスやスケジュールに従って、TAGレンズ駆動信号の生成、及び信号線334'を介するTAGレンズ370への送信を制御するように構成される。これらの実施例において、レンズ駆動モード管理部380は、所定のシーケンスやスケジュールに従って、撮像駆動モードに入る標準撮像駆動モード回路/ルーチン382のトリガと、調整適応駆動モードに入る調整適応回路/ルーチン384のトリガとの切り替えを制御してもよい。
【0042】
図6は、所定のシーケンスやスケジュールに従って撮像システム300を操作して撮像駆動モードと調整適応駆動モードとを切り替えるルーチン600の実施の一例を説明するフロー図である。ステップ610において、ルーチン600は、複数の撮像駆動モード期間中に標準撮像駆動制御設定を用いて、撮像駆動モードでTAGレンズ370を制御する。撮像駆動モード期間の各インスタンスでは、標準撮像駆動制御設定に従ってTAGレンズ370を操作する間に取得された画像データが提供される。標準撮像駆動制御設定は、標準撮像駆動電圧と標準撮像駆動持続時間を含み、TAGレンズ370の標準撮像状態(例えば、標準撮像共振周波数及び振幅)を成立させるように構成される。ステップ620において、ルーチン600は、撮像駆動モード期間とは異なる複数の調整適応駆動モード期間中に調整適応駆動制御設定を用いて、調整適応駆動モードでTAGレンズ370を制御する。調整適応駆動制御設定は、TAGレンズ370の標準撮像状態と、TAGレンズ370の現在の動作状態との差分を示すTAGレンズ監視信号に基づき、それぞれ異なる調整適応駆動モード期間に対して、それぞれ異なるTAGレンズ調整駆動電圧とそれぞれ異なるTAGレンズ調整駆動持続時間のうちの少なくとも一つを決定するように構成される。ステップ620において、TAGレンズ監視信号は、TAGレンズ370を駆動する(異なる調整駆動電圧及び/又は異なる調整駆動持続時間を含む)調整適応駆動制御設定の規定に用いられるが、TAGレンズ監視信号は、調整適応駆動モードに入るか否かの根拠としても用いられることに留意されたい。ルーチン600は、所定のシーケンスやスケジュールに従って、撮像駆動モード(ステップ610)への進入と、調整適応駆動モード(ステップ620)への進入とを切り替える。
【0043】
図7は、閾値と合致する、あるいは閾値を超えるTAGレンズ監視信号に基づいて、レンズ駆動モード管理部380が撮像駆動モードと調整適応駆動モードとの切り替えを制御する、別の実施例を示す。例えば、レンズ駆動モード管理部380は、TAGレンズ370の標準撮像状態とTAGレンズ370の現在の動作状態との差分(例えば、レンズの動作温度又は動作共振周波数の偏差/不整合)が(例えば、TAGレンズ監視信号値が示すように)閾値未満、あるいは閾値範囲内にある限り、TAGレンズ370を標準撮像駆動モードで駆動する。しかしながら、差分が閾値、あるいは閾値範囲に合致するか又は超えると、レンズ駆動モード管理部380は、調整監視回路/ルーチン385をトリガし、調整適応駆動モード期間に対して異なるTAGレンズ調整駆動電圧と異なるTAGレンズ調整駆動持続時間のうちの少なくとも一つを含む調整適応駆動制御設定を用いる調整適応駆動モードに入る。
【0044】
例えば、
図7のステップ710において、ルーチン700は、TAGレンズ監視信号の現在値(例えば、TAGレンズの動作共振周波数)と、TAGレンズの標準撮像状態、又は所望の撮像状態に対応する値(例えば、レンズの標準共振周波数)との差分を判定する。ステップ720において、ルーチン700が、差分が有意ではない(例えば、閾値を超えていない)と判定した場合、続いてステップ740において、ルーチン700は標準撮像駆動モードに留まり、撮像駆動モード期間中、標準撮像駆動制御設定を用いてTAGレンズ370を制御し、標準撮像駆動制御設定に従ってTAGレンズ370を操作する間に取得された画像データを提供する。取得すべき画像がさらにある場合(ステップ750)、ルーチン700は、ステップ710及び720に戻り、TAGレンズ監視信号の現在値と、TAGレンズ370の標準撮像状態に対応する値との差分が有意であるかを再度判定する。
【0045】
ルーチン700が、差分が有意である(例えば、閾値を超えた)と判定した場合、続くステップ730において、ルーチン700は調整適応駆動モードに入り、調整適応駆動モード期間中、調整適応駆動制御設定を用いてTAGレンズを制御する。調整適応駆動制御設定は、TAGレンズ監視信号の現在値と、TAGレンズ370の標準撮像状態、又は所望の撮像状態に対応する値との差分に基づき、調整適応駆動モード期間に対して異なるTAGレンズ調整駆動電圧と異なるTAGレンズ調整駆動持続時間のうちの少なくとも一つを決定するように構成される。従って、
図7のルーチン700において、差分は2回用いられる。1回目は、ステップ720において、撮像駆動モードを維持するか(ステップ740)、調整適応駆動モードに移行するか(ステップ730)を判定するときであり、2回目は、ステップ730において、差分を補償又は補正する調整適応駆動制御設定(TAGレンズ調整駆動電圧とTAGレンズ調整駆動持続時間を含む)を規定するときである。
【0046】
ステップ730から、ルーチン700は、ステップ710及び720に戻り、TAGレンズ監視信号の現在値と、TAGレンズ370の標準撮像状態に対応する値との差分が有意であるかを再度判定し、続きは前述の通りである。場合によっては、TAGレンズの動作状態が比較的安定し、所望の標準撮像状態に十分近接している場合、ステップ740の動作は、ステップ730の動作により中断されず、数回行われることになる。一部の実施例において、撮像駆動モード期間を、所望の画像取得率の範囲内の比率(例えば、1秒当たり16~70回)で撮像駆動モード期間が確実に発生するようにタイミングを計られたタイミング信号によりさらに制御してもよい。
【0047】
図3を再度参照すると、前述のさらなる実施例において、TAGレンズ370は、迅速且つ周期的に合焦位置を調整又は変調して、250kHz、70kHz、30kHzなどの周期変調(つまり、TAGレンズの共振周波数での変調)が可能な高速VFLレンズを成立させることができる。
図3に示されているように、TAGレンズ370を駆動する信号の周期変調を用いることにより、撮像システム300の合焦位置FPは、合焦位置FP1と合焦位置FP2により定められた範囲R
acc(例えば、自動合焦検索範囲)内で(迅速に)移動する。
【0048】
一実施例において、オプションの合焦信号処理部375(オプション)は、カメラ/検出器360からのデータを入力してもよく、(例えば、ワークピース320の)撮像表面領域が合焦位置に位置するときを判定するのに用いられるデータや信号(合焦監視信号、又はFMS)を提供してもよい。例えば、カメラ/検出器360がカメラを含む実施例において、カメラにより取得された一つ以上の画像(例えば、画像スタック)を、既知の「最大コントラスト」分析にかけ、ワークピース320の撮像表面領域が合焦位置に位置するときを判定してもよい。別の実施例において、光学合焦監視部376(オプション)は、VFL(TAG)レンズ370を通過し、ビームスプリッタ346'から光学合焦監視部376へ偏向された画像光345から派生した合焦監視信号(FMS)、例えば光検出器からの信号を提供してもよい。一実施形態では、光学合焦監視部376は、共焦点光学検出器構成を備えてもよい。しかしながら、より一般的には、他の適切且つ既知の合焦検出構成を用いてもよい。
【0049】
いずれにしても、合焦信号処理部375、又は光学合焦監視部376は、VFL(TAG)レンズ370の合焦位置の周期変調(多合焦位置の掃引)中に画像光を入力し、対応する合焦監視信号(FMS)をZ高さ(合焦距離)較正部373に出力してもよい。Z高さ較正部373は、それぞれのZ高さ(合焦距離)を、焦点の合った画像を示すFMS値のそれぞれに関連付けた、Z高さ(合焦距離)対FMS値特性を提供してもよい。Z高さ較正部373はさらに、それぞれのZ高さ(合焦距離)を、TAGレンズ370の標準撮像共振周波数の周期におけるそれぞれの位相タイミングに関連付けたZ高さ(合焦距離)較正データを提供してもよく、較正データは、標準撮像駆動制御設定に従ったTAGレンズ370の操作に対応する。TAGレンズの標準撮像共振周波数の周期における位相タイミングがFMS値又はタイミングと相関させられるので、それぞれのZ高さをそれぞれの位相タイミングに関連付けたZ高さ較正データは、合焦信号処理部375又は光学合焦監視部376から受け取ったZ高さ対FMS値特性から導出することができる。あるいは、Z高さ較正データを別途の方法で規定し、Z高さ較正部373に格納してもよい。一般的に、Z高さ較正部373は、記録されたZ高さ較正データを含む。従って、
図3の代表例において別途の要素として表したのは、ただ概略的な表現に過ぎず、保護の範囲を限定するものではない。関連付けと記録が行われたZ高さ較正データは、さらなる実施例において、レンズ制御部334、あるいは合焦信号処理部375又は光学合焦監視部376、あるいはシステム信号制御バス395に接続されているホストコンピュータシステムと、統合されていてもよく、及び/又は、区別できずともよい。
【0050】
露光(ストロボ)時間制御部393は、撮像システム300の画像露光時間を(例えば、周期変調合焦位置の位相タイミングに対して)制御し、カメラ/検出器360と統合されていてもよく、又は、区別できずともよい。より具体的には、露光(ストロボ)時間制御部393は、Z高さ較正部373から入手したZ高さ較正データを用いて、ストロボ光源を含む光源330を制御し、それぞれ制御された時間にストロボを行ってもよい。例えば、露光(ストロボ)時間制御部393は、ストロボ光源を制御して、TAGレンズ370の標準撮像共振周波数の周期におけるそれぞれの位相タイミングにストロボを行い、TAGレンズ370の掃引(周期変調)範囲内で最良合焦画像を取得してもよい。他の実施例において、露光時間制御部393は、カメラ/検出器360の高速電子カメラシャッタを制御し、それぞれ制御された時間に画像信号を取得してもよい。例えば、露光時間制御部393は、TAGレンズ370の標準撮像共振周波数の周期におけるそれぞれの位相タイミングにカメラシャッタを制御し、TAGレンズ370の掃引(周期変調)範囲内で最良合焦画像を取得してもよい。
【0051】
一般的に、露光時間制御部393は、カメラ/検出器360がワークピース320の画像を捕捉する画像露光周期を制御することで、画像データの取得を制御する。従って、露光時間制御部393は、画像取得を制御し、ワークピース320の高精度検査画像を期待できる撮像駆動モード中にのみ画像データの取得を許容し、TAGレンズ370の駆動信号の調整のため、画質において何かと劣化が予測される調整適応駆動モード中には、画像データの取得を禁じてもよい。つまり、露光時間制御部393は、調整適応駆動モード中の画像露光を防止し、それによって、調整適応駆動モード中の画像取得を防止してもよい。例えば、撮像駆動モード中には、ワークピース320の画像データを取得して撮像システム300のユーザインターフェースに表示する(
図2、ディスプレイデバイス136を参照)が、調整適応駆動モード中には、画像データを取得しないこととしてもよい。一部の実施例において、画像データは、調整適応駆動モード中にもカメラ/検出器360により取得されるが、データが撮像システム300により出力されなくともよい。
【0052】
他の実施例において、画像データを調整適応駆動モード中に取得してもよい。例えば、調整適応駆動モード中に取得された画像データは、画質及び/又は測定精度が標準を下回るとしても、操作者にとっては撮像駆動モードと調整適応駆動モードのワークピース320を連続的に観察する「観察画像」として十分であるものを提供することができる。このような場合、調整適応駆動モード中に取得された画像データも、撮像システム300のユーザインターフェースに表示されてよい。
【0053】
図5は、TAGレンズを含む撮像システムの動作の一例を説明するタイミングチャートである。
図5は、カメラ/検出器360により画像データが取得され得る「カメラ露光タイミング」500と、露光(ストロボ)時間制御部393が画像露光に用いられる照明をオン/オフする「画像照明」タイミング502と、TAGレンズ370の標準撮像状態と現在の動作状態との差分を示す「監視信号の差分」503と、TAGレンズ370の駆動に用いられる「駆動モード(Vpzt)」設定504との関係を説明する。高速応答時間(<50μs)を有する高速TAGレンズにより、二つの動作モード(撮像駆動モードと調整適応駆動モード)間の切り替えや変調を、通常のカメラ/検出器360のフレーム時間(例えば、16~32フレーム/秒)内で、例えばフレーム時間のおよそ半分(例えば、1秒当たり32~64回)で行うことができる。
【0054】
図5は、
図6のフローチャートに記載されているように、所定のシーケンスに従って二つのモードを切り替えるタイミングチャートの例示である。この例示では、複数の撮像駆動モード期間504Aと複数の調整適応駆動モード期間504Bが、時間軸に沿って交互に点在している。各撮像駆動モード期間504Aの前に、ウォームアップ期間(t1-t2、t6-t7、t12-t13、t15-t16)を置いてもよい。ウォームアップ期間は、画像データを取得する前に、TAGレンズ370が安定した光学的動作を確立し、再確立する(つまり、標準撮像状態を成立させる)時間を与えるためのものである。例えば、ウォームアップ期間は、共振周波数70kHzで動作するTAGレンズの3サイクルに相当してもよい。
【0055】
撮像駆動モード期間504Aにおいて、標準撮像駆動制御設定を使用し、それによって撮像駆動モード期間504Aの各インスタンスでは、標準撮像駆動制御設定に従ってTAGレンズ370を操作する間に取得された画像データが提供される。この例示では、標準撮像駆動制御設定は、標準撮像駆動電圧(例えば、30V又は30Vptz)と標準撮像駆動持続時間(例えば、t2-t3、t7(t2)-t8(t3)、t13(t2)-t14(t3)、t16(t2)-t17(t3))を含み、TAGレンズ370の標準撮像状態を成立させるように構成される。標準撮像駆動持続時間は、一部の実施例では、1秒当たり16~70回の頻度で周期的に生じてもよい(但し、この範囲は説明のみを目的としており、保護の範囲を限定するものではない)。露出(ストロボ)時間制御部393は、撮像駆動モード期間504Aと同期する複数の照明露光期間502A中に、撮像システム300の画像露光照明(例えば、ストロボ照明)をオンにする。照明露光期間502Aと撮像駆動モード期間504Aと同期する複数の画像合成期間500A中に、カメラ/検出器360により画像データを取得し、合成する。さらなる実施例において、取得された画像データは、撮像システム300のユーザインターフェースに表示される。
【0056】
調整適応駆動モード期間504Bにおいて、調整適応駆動制御設定を用いて、TAGレンズ370の標準撮像状態と現在の動作状態との差分を示すTAGレンズ監視信号に基づき、それぞれ異なる調整適応駆動モード期間504Bに対して、それぞれ異なるTAGレンズ調整駆動電圧とそれぞれ異なるTAGレンズ調整駆動持続時間のうちの少なくとも一つを決定する。例えば、レンズ制御部334は、TAGレンズ370の動作共振周波数及び/又は動作温度を監視するTAGレンズ監視信号を用いる。TAGレンズ監視信号は、TAGレンズ370の現在の動作状態を示すので、現在の調整適応駆動モード期間504Bより前に、あるいはそれに応じて取得してもよい。例えば、t3とt6の間の調整適応駆動モード期間504Bに適用された調整適応駆動制御設定は、t3より前に、例えばt2とt3の間、t1とt2の間などに得たTAGレンズ監視信号に基づいていてよい。
【0057】
この例示では、t3とt6の間における、第1の調整適応駆動モード期間504B中に、TAGレンズ調整駆動電圧dA1(例えば、40V)はt3とt4の間で用いられ、dA1より低いTAGレンズ調整駆動電圧dA2(例えば、30V)はt4とt5の間で用いられ、dA2より低いTAGレンズ調整駆動電圧dA3(例えば、20V)はt5とt6の間で用いられる。t3とt4の間、t4とt5の間、t5とt6の間は、それぞれ調整適応駆動モード期間を構成するものとして見なしてもよく、t3とt6の間の調整適応駆動モード期間504Bを総じて構成するものとして見なしてもよい。t3とt6の間における第1の調整適応駆動モード期間504Bに適用された調整適応駆動制御設定は、
図5に図示されているように、エネルギー散逸レベル「A」を有する。調整適応駆動制御設定は、t3とt6の間の現在調整適応駆動モード期間504Bより前に、あるいはそれに応じて取得したもので、TAGレンズ370の標準撮像状態と現在の動作状態との差分503を示す、TAGレンズ監視信号に基づく。
【0058】
t8(t3)とt12(t6)の間における、「第2の」調整適応駆動モード期間504B中に、TAGレンズ調整駆動電圧dB1(例えば、40V)はt8(t3)とt9の間で用いられ、dB1より低いTAGレンズ調整駆動電圧dB2(例えば、30V)はt9とt10の間で用いられ、dB2より低いTAGレンズ調整駆動電圧dB3(例えば、20V)はt10とt11の間で用いられる。t11とt12(t6)の間には、電圧の印加は行われない(V=0)。t8(t3)とt9の間、t9とt10の間、t10とt11の間、t11とt12(t6)の間は、それぞれ調整適応駆動モード期間を構成するものとして見なしてもよく、t8(t3)とt12(t6)の間の調整適応駆動モード期間504Bを総じて構成するものとして見なしてもよい。t8(t3)とt12(t6)の間の第2の調整適応駆動モード期間504Bに適用された調整適応駆動制御設定は、
図5に図示されているように、エネルギー散逸レベル「B」を有する。調整適応駆動制御設定は、t8(t3)とt12(t6)の間の現在調整適応駆動モード期間504Bより前に、あるいはそれに応じて取得したもので、TAGレンズ370の標準撮像状態と現在の動作状態との差分503を示す、TAGレンズ監視信号に基づく。図示の実施形態では、t8(t3)とt12(t6)の間の現在調整適応駆動モード期間504Bのエネルギー散逸レベル「B」は、t3とt6の間における以前の(第1の)調整適応駆動モード期間504Bのエネルギー散逸レベル「A」とは異なるか、「A」とは異なるように調整されている。
【0059】
t14(t3)とt15(t6)の間における、「第3の」調整適応駆動モード期間504B中に、例示においてTAGレンズ370の駆動に用いられる最も高い電圧に当たる、TAGレンズ調整駆動電圧dC1(例えば、40V)が印加される。t14(t3)とt15(t6)の間の現在調整適応駆動モード期間504Bに適用された調整適応駆動制御設定は、
図5に図示されているように、エネルギー散逸レベル「C」を有する。調整適応駆動制御設定は、t14(t3)とt15(t6)の間の現在調整適応駆動モード期間504Bより前に、あるいはそれに応じて取得したもので、TAGレンズ370の標準撮像状態と現在の動作状態との差分503を示す、TAGレンズ監視信号に基づく。例示では、差分503は、503'の参照付号を与えられた、TAGレンズ370の動作共振周波数の急増、あるいは、それに応じるTAGレンズ370の動作温度及び/又は環境(周囲)温度の急降下を意味する。従って、t14(t3)とt15(t6)の間に適用された調整適応駆動制御設定のエネルギー散逸レベル「C」は、t3とt6の間、t8(t3)とt12(t6)の間における以前の調整適応駆動モード期間504Bに適用されたエネルギー散逸レベルの「A」や「B」より高い熱エネルギーをTAGレンズ370に入力し、突然の変化を補償するように構成される。
【0060】
t17(t3)とt18(t6)の間(図示せず)における、「第4の」調整適応駆動モード期間504B中に、電圧dD1の印加は行われない(=0V)。t17(t3)とt18(t6)の間の現在調整適応駆動モード期間504Bに適用された調整適応駆動制御設定は、
図5に図示されているように、エネルギー散逸レベル「D」を有する。調整適応駆動制御設定は、t17(t3)とt18(t6)の間の現在調整適応駆動モード期間504Bより前に、あるいはそれに応じて取得したもので、TAGレンズ370の標準撮像状態と現在の動作状態との差分503を示す、TAGレンズ監視信号に基づく。例示では、t14(t3)とt15(t6)の間における以前の調整適応駆動モード期間504Bに適用された調整適応駆動制御設定は、
図5に示されているように、(TAGレンズ370の動作温度の増加による)差分503の低減/減少に役立っている。従って、t17(t3)とt18(t6)の間に適用された調整適応駆動制御設定のエネルギー散逸レベル「D」は、TAGレンズ370に追加の熱エネルギーを入力「しない」ように構成されており、その点、t3とt6の間、t8(t3)とt12(t6)の間、t14(t3)とt15(t6)の間における以前の調整適応駆動モード期間504Bに適用されたエネルギー散逸レベルの「A」、「B」、「C」とは異なる。
【0061】
調整適応駆動制御設定は、それぞれ異なる調整適応駆動モード期間504Bに対してそれぞれ異なるTAGレンズ調整駆動電圧とそれぞれ異なるTAGレンズ調整駆動持続時間のうちの少なくとも一つを決定し、TAGレンズ370を標準撮像状態(例えば、標準動作共振周波数又は標準動作温度)に確立、あるいは維持する。さらなる実施例において、露光(ストロボ)時間制御部393は、調整適応駆動モード期間504Bと同期する複数の照明露光期間502B中に、撮像システム300の画像露光照明(例えば、ストロボ照明)をオフにしてもよい。一部の実施例において、照明露光期間502Bと調整適応駆動モード期間504Bと同期する複数の画像合成期間500B中に、カメラ/検出器360により画像データを取得し、合成してもよい。取得されたデータは、撮像システム300のユーザインターフェースに観察画像として提示されてもよい。他の実施例において、画像データは、複数の画像合成期間500B中に取得及び合成されず、あるいは、画像データが取得されたとしても、複数の画像合成期間500B中には出力を禁じられてもよい。
【0062】
本開示の好ましい実施例を図示し説明したが、当業者であれば、本開示に基づいて、図示及び説明した特徴の構成や動作シーケンスに対して変形や変更を加えてもよいことを理解するであろう。種々の代替的な形態を用いて、本明細書に開示の原理を実施してもよく、上記の様々な実施例を組み合わせて、さらなる実施例を提供してもよい。これらの様々な特許及び出願の概念を採用して他の実施例を提供するために必要な場合は、上述の実施例の態様を変更することもできる。
【0063】
前述の記載に照らして、実施例に対してこれら及び他の変更を行うことができる。一般に、下記の特許請求の範囲において、用いる用語は本明細書と特許請求の範囲に開示されている特定の実施例に特許請求の範囲を限定するものとして解釈されず、そのような特許請求の範囲が権利を与えられている等価物の範囲全てと共に、可能な実施例を全て網羅するものとして解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0064】
10…マシンビジョン検査システム、12…画像測定機、14…制御コンピュータシステム、16…ディスプレイ、18…プリンタ、20…ワークピース、22…ジョイスティック、24…キーボード、26…マウス、32…移動型ワークピースステージ、34…光学撮像システム、100…マシンビジョン検査システム、120…制御システム部、125…制御部、130…入出力インターフェース、131…撮像制御インターフェース、132…移動制御インターフェース、132a…位置制御素子、132b…加速度制御素子、133…照明制御インターフェース、133a…照明制御素子、133n…照明制御素子、134…レンズ制御インターフェース、136…ディスプレイデバイス、138…入力デバイス、140…メモリ、140ed…エッジ検出メモリ部、141…画像ファイルメモリ部、142…ワークピースプログラムメモリ部、143…ビデオツール部、143a…ビデオツール、143af…自動合焦ビデオツール、143roi…ROI発生器、170…実行器、180…レンズ駆動モード管理部、190…電源部、200…ビジョン構成要素部、205…光学アセンブリ部、210…ワークピースステージ、212…中央透明部、220…透過照明光源、221…バス、222…光源光、230…落射照明光源、231…バス、232…光源光、240…照明光源、241…バス、250…交換対物レンズ、255…ワークピース光、260…カメラシステム、262…信号線、270…TAGレンズ、281…ターレットレンズアセンブリ、281’ …バス、286…レンズ、288…レンズ、290…ミラー、294…制御可能モータ、294…モータ、296…信号線、300…撮像システム、320…ワークピース、330…光源、332…光源光、334…レンズ制御部、334’ …信号線、335…駆動信号発生器部、335’ …タイミングクロック、336…温度センサ、337…レンズヒータ、345…画像光、346’ …ビームスプリッタ、350…対物レンズ、351…チューブレンズ、352…リレーレンズ、355…ワークピース光、356…リレーレンズ、360…検出器、370…TAGレンズ、373…較正部、375…合焦信号処理部、376…光学合焦監視部、380…レンズ駆動モード管理部、390…ビームスプリッタ、393…露光時間制御部、395…システム信号制御バス、400…グラ、410…測定共振周波数、420…フィッティング直線、504A…撮像駆動モード期間、504B…調整適応駆動モード期間