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特許7105247材料除去を決定する方法及びワークのビーム加工装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-13
(45)【発行日】2022-07-22
(54)【発明の名称】材料除去を決定する方法及びワークのビーム加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 15/00 20060101AFI20220714BHJP
   B23K 26/36 20140101ALI20220714BHJP
   H01L 21/302 20060101ALI20220714BHJP
   C03C 15/00 20060101ALI20220714BHJP
【FI】
B23K15/00 508
B23K26/36
B23K15/00 504D
H01L21/302 201B
C03C15/00 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019551941
(86)(22)【出願日】2018-02-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2018053178
(87)【国際公開番号】W WO2018171975
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-02-05
(31)【優先権主張番号】102017204861.1
(32)【優先日】2017-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100205833
【弁理士】
【氏名又は名称】宮谷 昂佑
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン ベツォルト
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ジクス
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-301032(JP,A)
【文献】特開2005-037315(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0029939(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0256262(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 15/00
B23K 26/00 - 26/70
H01L 21/302
C03C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象のワーク(2)と共にビーム加工装置(1)のハウジング(6)の加工室(5)内に配置されたテストワーク(7)に対するイオンビーム(3)による材料除去(Δd)を決定する方法であって、前記テストワーク(7)は、基板(8)及び該基板(8)に施された層(9)を有し、前記ビーム加工装置(1)は、前記テストワーク(7)及び結像光学ユニット(15)を保護する遮蔽材(18)をさらに備え、該方法は、
a)前記基板(8)に施された前記層(9)の層厚(d1)を光学的に求めるステップと、
b)前記イオンビーム(3)で前記テストワーク(7)の前記層(9)の材料を除去するステップと、
c)前記基板(8)に施された前記層(9)の層厚(d2)を光学的に求めるステップと、
d)前記ステップa)で求めた前記層厚(d1)と前記ステップc)で求めた前記層厚(d2)との比較により前記材料除去(Δd)を決定するステップと
を含み、該方法はさらに、
前記ワーク(2)を前記イオンビーム(3)で加工するステップであり、環状の前記遮蔽材(18)が前記ワーク(2)の加工時に前記結像光学ユニット(15)の入射側部及び前記テストワーク(7)を囲むステップ
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記ステップa)及び前記ステップc)で前記層厚(d1、d2)を求めるために、前記テストワーク(7)に照明放射線(10)を照射する方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、前記テストワーク(7)の前記層(9)及び前記基板(8)は、前記照明放射線(10)に対して透明である方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の方法において、前記ステップa)及び前記ステップc)で前記層厚(d1、d2)を光学的に求めるために、前記テストワーク(7)で反射した照明放射線(10a)の干渉スペクトル(S)を記録する方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、前記干渉スペクトル(S)を記録するために、前記テストワーク(7)で反射した前記照明放射線(10a)を、導光体(13)により前記ハウジング(6)外に配置された分光計(16)へ導く方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、前記反射した照明放射線(10a)を、結像光学ユニット(15)により前記導光体(13)に結合する方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法において、前記層(9)は、前記加工室(5)内への前記テストワーク(7)の配置時に0.1μm~20μmの層厚(d1)を有する方法。
【請求項8】
特に請求項1~7のいずれか1項に記載の方法を実行するためにイオンビーム(3)によりワーク(2)をビーム加工する装置(1)であって、
前記イオンビーム(3)を生成する放射源(4)と、
前記ワーク(2)のビーム加工用の加工室(5)が形成されたハウジング(6)と、
該ハウジング(6)内に配置されて基板(8)及び該基板(8)に施された層(9)を含む少なくとも1つのテストワーク(7)と、
該テストワーク(7)を照明放射線(10)で照明する照明源(11)と、
前記テストワーク(7)で反射した照明放射線(10a)の干渉スペクトル(S)を記録するために前記ハウジング(6)外に配置されることが好ましい分光計(16)と
を備え、該装置はさらに、
前記加工室(5)内に配置された加工対象のワーク(2)と、
前記イオンビーム(3)での前記ワーク(2)の加工時に前記テストワーク(7)及び結像光学ユニット(15)を保護する遮蔽材(18)であり、環状の前記遮蔽材(18)は、前記結像光学ユニット(15)の入射側部及び前記テストワーク(7)を囲む遮蔽材(18)と
を備えた装置。
【請求項9】
請求項8に記載の装置において、前記イオンビーム(3)での前記層(9)の加工前後に前記基板(8)に施された前記層(9)の層厚(d1、d2)をそれぞれ求めるために前記干渉スペクトル(S)を評価する評価ユニット(17)をさらに備えた装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の装置において、前記テストワーク(7)で反射した照明放射線(10a)を前記ハウジング(6)外に配置された前記分光計(16)へ導く導光体(13)をさらに備えた装置。
【請求項11】
請求項10に記載の装置において、前記結像光学ユニット(15)は、前記反射した照明放射線(10a)を前記導光体(13)に結合するよう適合される装置。
【請求項12】
請求項8~11のいずれか1項に記載の装置において、前記基板(8)及び前記層(9)は前記照明放射線(10)に対して透明であり、前記基板(8)は両側が研磨されることが好ましい装置。
【請求項13】
請求項8~12のいずれか1項に記載の装置において、
前記加工対象のワーク(2)は、前記テストワーク(7)の前記層(9)の材料と同一の材料を含む装置。
【請求項14】
請求項8~13のいずれか1項に記載の装置において、前記遮蔽材(18)は、第1閉鎖位置と第2開放位置との間で可動である可動シャッタ(18a)を有する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の参照]
本願は、2017年3月23日に出願された独国特許出願第10 2017 204 861.1号の優先権を主張し、その全開示内容を参照により本願の内容に援用する。
【0002】
本発明は、テストワークに対する加工ビームの材料除去を決定する方法及びワークのビーム加工装置に関する。
【背景技術】
【0003】
高エネルギー加工ビームにより加工対象のワークから材料を除去する非接触加工法は、ワークの、特に光学素子の、例えばリソグラフィシステムのレンズ又はミラーの加工に用いられることが多い。表面形状の必要精度をワークの加工で達成するために、特にマイクロリソグラフィ用の光学素子の加工時に、加工において高い精度が必要である。
【0004】
ワークの所望の精密加工を加工ビームにより行うために、ビーム源の所定の設定において加工対象材料で生じる材料除去又は材料除去率を正確に決定する必要がある。この目的で、材料除去又は材料除去率をワークの加工前にテストワークで決定することが知られている。
【0005】
加工ビームによる非接触除去加工法の場合、例えばイオンビームフィギュアリング(IBF)、電子ビーム加工、又はレーザ加工において、ビーム加工を実行できる加工室を含むビーム加工装置のハウジングにワークが組み込まれる。通常は、ハウジング又は加工室においてビーム加工のために真空を発生させる必要がある。
【0006】
テストワークを測定するために、当該テストワークをハウジングに導入し、テストワークを加工ビームで加工し、且つテストワークを干渉計測定ステーションで測定するためにハウジングから再度取り出す必要がある。ビームツール又はビームパラメータの設定変更の場合には、テストワークの複数の加工パスとその後にそこで生じる材料除去の干渉測定作業が必要なので、これは非常に時間がかかり得る。
【0007】
ビームツールでのワークの加工時に材料除去を決定する方法は、特許文献1から既知である。この方法の場合、ワークの材料でコーティングしたか又はワークの材料を含む振動結晶が準備され、ワークの材料がビームツールにより振動結晶から少なくとも部分的に除去され、材料除去による振動結晶の固有振動数の変化が求められる。振動結晶は、ビーム加工が行われるハウジング内の測定位置に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】独国特許出願公開第10 2015 215 851号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、材料除去の決定を迅速且つ確実に実行できる、材料除去を決定する方法及びビーム加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、ビーム加工装置のハウジングの加工室内に配置されたテストワークに対する加工ビームによる材料除去を決定する方法であって、テストワークは、基板及び基板に施された層を有し、当該方法は、a)基板に施された層の層厚を光学的に求めるステップと、b)加工ビームでテストワークの層の材料を除去するステップと、c)基板に施された層の層厚を光学的に求めるステップと、d)ステップa)で求めた層厚とステップc)で求めた層厚との比較により材料除去を決定するステップとを含む方法により達成される。
【0011】
本発明によれば、ビーム加工装置のハウジングの加工室内に配置されたテストワークの層の層厚を光学的に測定することにより、テストワークに対して材料除去を実行することが提案され、つまり、光学測定用のテストワークがハウジングの加工室から取り出されない。
【0012】
したがって、ここに記載する方法は、出し入れ手順が必要なく、テストワークの加工及び材料除去の測定をハウジングの加工室内の同じ場所で実行できるので、ハウジング外のテストワークの従来の干渉測定よりも実質的に高速であり複雑でない。さらに、実際のワークの加工の直前に加工室内で材料除去の決定を実行できるので、従来の干渉測定法に比べて高い精度を達成できる可能性がある。
【0013】
基板の層の層厚の光学測定は、例えば、Gerd Jakobによる論文「同軸干渉層厚測定」("Koaxiale interferometrische Schichtdickenmessung" ("Coaxial interferometric layer thickness measuring"))(Photonik 3/2000)に記載されているような(同軸)干渉層厚測定により実行することができる。この光学測定技術は、異なる屈折率を有する2つの媒体間の界面での、この場合は基板と層との間及び層と環境、すなわち通常は空気又は真空(屈折率n=1.0)との間の界面での放射線の反射に基づく。材料除去の決定のためには、単層が基板に施してあれば通常は十分だが、場合によっては、異なる材料の2つ以上の層を基板に施すこともでき、材料除去の決定は、上記2つ以上の層に対して実行することができる。
【0014】
本方法の一変形形態では、テストワークは、ステップa)及びステップc)で層厚を求めるために照明放射線を照射される。テストワークを照明する照明源が、ハウジング内又は加工室内に配置され得る。しかしながら、照明源をハウジング外に配置して、照明放射線を導光体により、例えばガラスファイバ及び(真空)導管によりハウジング内に導くことも可能である。いずれの場合も、結像光学ユニットが照明放射線をテストワークに集束させる役割を果たし得る。干渉層厚測定に関しては、照明放射線が広帯域であることが望ましい。照明放射線の波長域は、干渉スペクトルを記録する干渉計(下記参照)が検出できる波長域に適合され得る。干渉計は、例えば190nm~1050nmの波長域を検出することができるが、照明放射線が全波長域を含む必要はない。
【0015】
一改良形態では、テストワークの層及び基板は照明放射線に対して透明である。層の透明度は、干渉層厚測定に必要である。基板の透明度は、テストワークの照明が後側から、すなわち基板のうち層に面しない側から行われる場合の干渉層厚測定に必要である。加工ビームでのテストワークの加工が基板の前側で実行されるので、基板の後側からのテストワークの照明が望ましい。したがって、結像光学ユニットは、ハウジング内又は加工室内で固定であるよう配置され得る。基板の前側に結像光学ユニットが配置される場合、層を加工ビームで加工するために放射源もそこに配置しなければならないので、これは不可能な可能性がある。テストワークを結像光学ユニットに対して調整しなければならないので、結像光学ユニットはハウジング内で固定である陽に配置されることが有利である。
【0016】
さらに別の一改良形態では、ステップa)及びステップc)で層厚を光学的に決定するために、テストワークで反射した照明放射線の干渉スペクトルが記録される。前述したように、照明放射線は、層と基板との間及び空気と層との間の界面で反射され、照明放射線のうち各界面で反射する部分の経路は異なり、すなわち2つのサブビーム間で位相シフトが起こる。多色照明放射線が層に当たった場合、位相シフトは波長の関数として変化し、すなわち極大及び極小が交互にスペクトルに表示され、すなわち干渉スペクトルが生成される。上記で引用した論文により詳細に記載されるように、層の層厚は、干渉スペクトルにより、例えばフーリエ解析により求められ、上記論文の全体を参照により本願の内容に援用する。
【0017】
さらに別の変形形態では、干渉スペクトルを記録するために、テストワークで反射した照明放射線は、導光体によりハウジング外に配置された干渉計へ導かれる。設置空間及び汚染回避の理由から、干渉計をビーム加工装置のハウジングに組み込むことは通常は不可能であり、上記ハウジングは通常は排気される。したがって、例えばガラスファイバケーブル等のように構成された複数の部分を有し得る導光体により、真空導管を介して、反射照明放射線がハウジング外へ導かれることが望ましい。分光計は、回折格子と、回折格子で回折した照明放射線を検出する空間分解検出器とを通常は有する。必須ではないが、照明放射線が導光体によりハウジング内及びテストワークへも導かれることが望ましい。照明源からの照明放射線を導光体に結合するために、当該導光体は分割又は接合(split or spliced)され得る。照明源は、分光計に組み込んでもよく、又は分光計とは別個に配置してもよい。
【0018】
一改良形態では、反射照明放射線は、結像光学ユニットにより導光体に結合される。例えばレンズの様式のこのような結像光学ユニットは、反射照明放射線を導光体に結合するために通常は必要である。照明放射線が導光体を介してテストワークへ導かれるときに、結像光学ユニットを同時に用いて照明放射線をテストワークに集束させることができる。
【0019】
さらに別の実施形態では、加工室内への配置時の(すなわち加工ビームでの材料除去前の)テストワークは、0.1μm~20μmの層厚を有する。このタイプの層厚を有する層の場合(但し層厚がそれよりも大きいか又は小さい可能性もある)、干渉層厚測定を用いて層厚を求めることができる。材料除去を繰り返し決定することがそのためにテストワークを交換する必要なくできるように、テストワークの層の初期層厚が大きいことが望ましい。
【0020】
さらに別の一改良形態では、加工ビームは、イオンビーム、電子ビーム、及びレーザビームを含む群から選択される。原理上、ここに記載する材料除去を決定する方法は、任意の非接触アブレーションビーム加工(ablative beam machining)法の場合に実行することができ、すなわち上記方法は前述のタイプの加工ビームに限定されない。
【0021】
本発明のさらに別の態様は、特に前述の方法を実行するために加工ビームによりワークをビーム加工する装置であって、加工ビームを生成する放射源と、ワークのビーム加工用の加工室が形成されたハウジングと、ハウジング内に配置されて基板及び基板に施された層を含む少なくとも1つのテストワークと、テストワークを照明放射線で照明する照明源と、テストワークで反射した照明放射線の干渉スペクトルを記録するためにハウジング外に配置されることが好ましい分光計とを備えた装置において実施される。
【0022】
本発明による装置は、ハウジングの加工室内に配置されたテストワークの層に対して干渉層厚測定を実行するよう構成される。光学層厚測定による層の材料除去は、本方法に関連して前述したように決定され得る。照明源は、多色照明放射線を生成するよう構成され、すなわち上記照明源は、複数の波長の照明放射線を生成し、且つ例えば白色光源として構成され得るか又は1つ又は複数のフィラメントランプを含み得る。
【0023】
一実施形態では、本装置は、加工ビームでの層の加工前後に基板に施された層の層厚をそれぞれ求めるために干渉スペクトルを評価する評価ユニットを備える。本方法に関連して前述したように、材料除去は、加工ビームでの加工前後の層の層厚の比較により決定することができ、材料除去は、加工ビームでの加工前の層厚と加工ビームでの加工後の層厚との間の差に通常は対応する。
【0024】
さらに別の一実施形態では、本装置は、テストワークで反射した照明放射線をハウジング外に配置された分光計へ導く導光体を備える。本方法に関連して前述したように、分光計は、加工室が形成された通常は排気されたハウジングの外部に通常は配置される。後方反射した照明放射線は、導光体により真空導管を介してハウジング外へ導かれ、干渉スペクトルの記録のために分光計に供給され得る。
【0025】
一改良形態では、本装置は、反射照明放射線を導光体に結合する結像光学ユニットを有する。導光体は、例えば(マルチモード)ガラスファイバであり得る。前述したように、特に照明源がハウジング外に配置される場合、照明放射線を導光体によりテストワークへ導き、結像光学ユニットを用いてテストワークに集束させることもできる。しかしながら、照明源は、通常は排気したハウジング内に配置することもでき、それにより1つ又は複数の導光体を短縮することができると共に光損失を減らすことができる。また、テストワークのより均一な照明をハウジング内に配置された照明源により生成できる可能性がある。
【0026】
さらに別の一実施形態では、基板及び層は照明放射線に対して透明であり、基板は両側が研磨されることが好ましい。基板の材料及び層の材料は、これらの材料が照明放射線の波長に対して、又は少なくとも層厚測定の実行に十分な照明放射線の波長域に関して透明である限り変わり得る。前述したように、基板は、テストワークが後側から照明される場合にのみ照明放射線に対して透明であることが必須である。この場合、研磨していない粗い基板の表面での散乱による光損失を回避するために、基板の両側すなわち前側及び後側を研磨することが望ましい。
【0027】
さらに別の一実施形態では、本装置は、加工室内に配置されてテストワークの層の材料と同一の材料を含むことが好ましい加工対象のワークをさらに備える。加工対象のワークの(形状付与のためのアブレーション加工の場合)又はワークに施された層の(コーティング剥離のためのアブレーション加工の場合)材料と同一であることが好ましい材料が、テストワークの層に用いられることが好ましい。
【0028】
一実施形態では、本装置は、加工ビームでのワークの加工時にテストワーク及び/又は結像光学ユニットを保護する遮蔽材をさらに備える。ワークの材料の直接スパッタリング(アトマイジング)又は加工室内に取り付けられたコンポーネントの間接的なスパッタリングが、加工ビームでのワークの加工時に起こり得る。テストワーク、結像光学ユニット、及び場合によっては導光体を除去粒子から保護するために、例えば、環状の遮蔽材を加工室内に配置することができ、その中にテストワークが配置される。
【0029】
遮蔽材は、テストワークを実質的に環状に囲むことができ、遮蔽材とテストワークとの間には中間空間が全く又は僅かにしか残らない。このように、結像光学ユニット及び導光体を保護するために、テストワークは「窓」として、すなわち遮蔽材の一部として働き得る。遮蔽材の使用により、テストワークのうち加工ビームによる加工対象の層のみ(すなわち、測定領域)が加工室に露出されることが理想的である。
【0030】
一改良形態では、遮蔽材は、第1閉鎖位置と第2開放位置との間で可動である可動シャッタを有する。シャッタは、第1閉鎖位置ではテストワークを完全に覆うか又は隠し、すなわちテストワークを有する遮蔽材の内部空間は通常は加工室に対して完全に閉じている。したがって、加工ビームでのワークの加工は、通常はシャッタの第1位置で実行される。第2開放位置では、遮蔽材の内部空間又はテストワークのうち少なくとも材料が除去される層は、加工室にアクセス可能である。シャッタの2つの位置間の切り替えは、駆動装置を用いて行うことができる。代替として又は追加として、例えばイオン源の形態の(可動)放射源は、放射源がシャッタに押し当たって当該シャッタを2つの位置間で変位させるように加工空間内で上記放射源を動かすことで、スイッチオフ状態でシャッタの機械的変位を可能にすることができる。
【0031】
さらに別の一実施形態では、加工ビームを生成する放射源は、イオンビーム源、電子ビーム源、及びレーザ源の群から選択される。前述したように、非接触材料除去を可能にする加工ビームを生成する全ての放射源を装置において原理上は用いることができる。
【0032】
本発明のさらに他の特徴及び利点は、本発明に関する詳細を示す図面を用いた下記の本発明の例示的な実施形態の説明と、特許請求の範囲とから得ることができる。個々の特徴は、いずれも個別に単独で、又は本発明の変形形態において任意の所望の組み合わせで複数として実現することができる。
【0033】
例示的な実施形態を概略図に示し、下記で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】イオンビームでワークをビーム加工する装置の概略図を示す。
図2a】イオンビームでのビーム加工前のテストワークの概略図を示す。
図2b】イオンビームでのビーム加工後のテストワークの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図面の以下の説明において、同一又は機能的に同一のコンポーネントには同一の参照符号を用いる。
【0036】
図1は、イオン源の形態の放射源4により生成されたイオンビーム3の形態の加工ビームによりワーク2をビーム加工する装置1を示す。ワーク2は、ハウジング6内に形成された加工室5内に配置される。ハウジング6、より詳細には加工室5は、真空ポンプ(図示せず)を用いて排気され、すなわちハウジング6内は真空環境となる。
【0037】
できる限り精密なワーク2の加工を可能にするために、上記ワーク2は図示の例の場合は石英ガラスブランクだが、(単位時間当たりの)ワーク2におけるイオンビーム3の材料除去をできる限り正確に決定することが望ましい。この目的で、図示の例ではZerodurから入手した基板8と基板8に施された石英ガラス製の層9とから形成されたテストワーク7が、加工室5に組み込まれる。したがって、層9の材料はワーク2の材料と同一である。
【0038】
所定の照射時間でのテストワーク7の層9に対するイオンビーム3の材料除去を決定するために、干渉層厚測定がテストワーク7の層9に対して実行される。この目的で、テストワーク7の後側、すなわち層9に面しない側に照明放射線10が照射され、照明放射線10は、ハウジング6外に配置された照明源11により生成される。図示の例の照明源11は、190nm~150nmの波長の照明放射線11を生成する2つのランプを含む。照明源11が広いスペクトル域の、例えば190nm~1050nmの照明放射線10を生成する場合、単一のランプの発光スペクトルはこの場合は所望の全スペクトル域に対応しないので、2つ以上のランプを有する照明源11の使用が望ましいことが分かっている。照明放射線10の広いスペクトル域の使用は、非常に薄い層9の層厚測定に特に有利である。
【0039】
照明放射線10は、ファイバ部分12によりガラスファイバの形態の導光体13に結合され、当該導光体は、ハウジング6の真空導管14により加工室5へ導かれる。導光体13は、端部側が結像光学ユニット15(レンズ)のハウジングに接続され、結像光学ユニット15は、照明放射線10をテストワーク7に集束させる役割を果たす。図1に示す例の場合、照明放射線10は、基板8又は層9の厚さ方向とほぼ平行になるように送られる。
【0040】
テストワーク7の基板8及び層9は、照明放射線10に対して透明な材料から形成され、すなわち照明放射線10はテストワーク7を実質的に透過する。基板8と層9との間の界面及び層9と加工室5内の真空環境との間の界面における屈折率の差により、ごく一部の照明放射線10が反射される。したがって、テストワーク7で反射した照明放射線10aは、図1に2方向の矢印(double arrow)でそれぞれ示すように、異なる光路長を進んだ2つの放射線部分を有し、そのため位相差が生じる。
【0041】
テストワーク7で反射した照明放射線10aは、導光体13及び真空導管14によりハウジング6から導出されて分光計16に入り、分光計16は、反射照明放射線10aの干渉スペクトルSを記録する。分光計16、図示の例ではCarl Zeiss spectroscopy companyのModel MCS 601-c(UV-NIR)における反射照明放射線10aは、回折格子に当たりそのスペクトル部分に分割される。回折格子で回折した照明放射線10aは、空間分解検出器へ指向される。層9の層厚は、分光計16により得られた干渉スペクトルSから、例えばフーリエ解析により求めることができ、これは冒頭で引用したGerd Jakobによる論文「同軸干渉層厚測定」(Photonik 3/2000)に記載されている。層9の層厚を求めるための分光計16は、評価ユニット17に接続される。
【0042】
層9に対するイオンビーム3の材料除去Δdを求める手順は、以下に記載する通りである。最初に、テストワーク7を加工室5に組み込んで結像光学ユニット15に対して調整する。すなわち、結像光学ユニット15に対するテストワーク7の間隔及びアライメントが適切に設定される。続いて、分光計16及び評価ユニット17を用いてテストワーク7の層厚d1を測定し(図2a参照)、図示の例ではd1=3μmが得られる。(元の)層厚d1を求めたら、図2bで分かるようにテストワーク7をイオンビーム3で加工して層9の材料を除去し、より小さな層厚d2が得られる。図2bに示すように、層9に対する材料除去は局所的に実行され得るが、層9の材料を層9全体で均一に除去することも可能である。均一な材料除去の場合の層厚d2を求めた結果は、イオンビーム3及び結像光学ユニット15の位置決め誤差に対してより安定しているので、層9の材料の均一な除去が望ましいことが分かっている。
【0043】
イオンビーム3での層9の加工後に、層厚d2を分光計16で又は評価ユニット17により再度求め、図2bに示す1μmの層厚d2を測定する。材料除去Δdは、イオンビーム3での加工前の層9の層厚d1とイオンビーム3での加工後の層厚d2との比較から得られ、上記材料除去Δdは、2つの層厚d1、d2間の差Δd=d1-d2に相当する。
【0044】
層9に対する材料除去Δdの決定は、場合によっては前述のようにして複数回実行することができ、ワーク2をできる限り精密に加工できるようにイオンビーム3、例えばイオンエネルギーのパラメータがいずれの場合も変えられる。特にこの場合は、テストワーク7の層9の初期厚をできる限り大きく、例えばd1=約20μmにすることが望ましい。
【0045】
材料除去Δdの決定が完了するとすぐに、イオンビーム3でのワーク2の加工を実行することができる。この目的で、イオン源4を測定位置から図1に破線で示す加工位置に移動させ、そこでイオンビーム3でのワーク2の加工を実行する。
【0046】
ワーク2の加工がワーク2の材料のスパッタリング(後枚ジング)につながり、上記材料がテストワーク7及び結像光学ユニット15に堆積する可能性があるので、結像光学ユニット15の入射側部及びテストワーク7は環状の遮蔽材18により囲まれる。図1に示す例では、遮蔽材18に収容されたテストワーク7は、「窓」として、したがって結像光学ユニット15の保護として働く。テストワーク7自体は、スパッタリングで形成される堆積物から場合によっては保護されない。ワーク2の加工で生じる堆積物をテストワーク7から除去するために、イオンビーム3を用いてテストワーク7の簡単な現場洗浄ステップを実行することができる。
【0047】
代替として又は追加として、遮蔽材18は、図1に破線で示す第1閉鎖位置と図1に実線で示す固定第2位置との間で可動であるシャッタ18aを有し得る。シャッタ18aは、イオンビーム3でのワーク2の加工中には通常は閉鎖位置にあり、イオンビーム3でのテストワーク7からの材料除去時には開放位置に移動させられる。シャッタ18aは、イオン源4がシャッタ18aに押し当たるように上記イオン源4を加工室5内で適切に変位させることで閉鎖位置から開放位置及びその逆に移動させることができる。シャッタ18aを加工室で移動させるための駆動装置又はアクチュエータも、加工室5内に設けることができる。シャッタ18aは、第1位置と第2位置との間で強制的に変位させなくてもよく、別のタイプの移動、例えば回転運動を実行することができることを理解されたい。
【0048】
材料除去Δdの決定は、非接触材料除去を可能にする別のタイプの加工ビーム、例えば電子ビーム又はレーザビームにより実行することもできることを理解されたい。図1の図とは異なり、照明放射線10でのテストワーク7のより均一な照明を達成するために、照明源11をハウジング6の排気された加工室5に組み込むことができる。
【0049】
テストワーク7を交換しなければならず、そのために上記テストワーク7をハウジング6の換気及び開放により取り出してさらに別のテストワーク7で置き換えなければならないことがあまり頻繁にないように、複数のテストワーク7を場合によっては加工室5のマガジンに配置することができ、上記複数のテストワーク7の1つのみがいずれの場合も測定され且つ加工室5の図1に示す測定位置に配置される。マガジンは、例えば冒頭で引用し参照により本願に援用される特許文献1に記載のように、回転板状に構成され得る。
【0050】
ハウジング6に対するテストワーク7の出し入れに真空ロックを用いることができ、当該真空ロックは、テストワーク7の交換時にワーク2の加工の停止を回避するために、ワーク2の出し入れ用の真空ロックとは異なるものである。
図1
図2a-2b】