(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】液体材料気化供給装置及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B01J 7/02 20060101AFI20220715BHJP
B01J 4/02 20060101ALI20220715BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20220715BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20220715BHJP
G05D 7/01 20060101ALI20220715BHJP
C23C 16/448 20060101ALI20220715BHJP
F17C 13/00 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
B01J7/02 Z
B01J4/02 A
H01L21/31 B
H01L21/205
G05D7/01 Z
C23C16/448
F17C13/00 301A
(21)【出願番号】P 2019517522
(86)(22)【出願日】2018-04-13
(86)【国際出願番号】 JP2018015588
(87)【国際公開番号】W WO2018207553
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-03-16
(31)【優先権主張番号】P 2017094775
(32)【優先日】2017-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【氏名又は名称】上村 喜永
(72)【発明者】
【氏名】宮本 英顕
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-141192(JP,A)
【文献】特開昭54-162295(JP,A)
【文献】特開昭60-244332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 7/00 - 7/02
B01J 4/00 - 4/02
H01L 21/205
H01L 21/31
C23C 16/448
G05D 7/01 - 7/06
F17C 13/00
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体材料を気化して材料ガスを生成する第1タンクと、
前記第1タンクに接続され、前記第1タンクで生成された前記材料ガスが所定圧力で収容される第2タンクと、
前記第2タンク内の圧力を検知する圧力センサと、
前記第2タンクから前記材料ガスを導出する導出路と、
前記導出路に設けられ、その導出路を開閉する流体制御バルブと、
前記第2タンクに所定圧力で収容された前記材料ガスを前記導出路から導出する場合に、前記圧力センサによって検知される検知圧力の低下に基づいて、前記流体制御バルブの開度を制御して前記導出路から導出される前記材料ガスの流量を制御する流量制御部と、を具備
し、
前記第1タンクから前記第2タンクに導入される前記材料ガスを所定圧力に制御する圧力制御機構をさらに具備し、
前記圧力制御機構が、
前記第1タンクから前記第2タンクに導入される前記材料ガスの流量を調節する開閉バルブと、
前記開閉バルブを開閉し、前記第1タンクと前記第2タンクとの間の差圧によって、前記第2タンクに導入される前記材料ガスの圧力を制御する圧力制御部と、を備える液体材料気化供給装置。
【請求項2】
前記流量制御部が、
前記圧力センサで検知される検知圧力の単位時間当たりの低下量に基づいて、その単位時間内に前記第2タンクから導出される前記材料ガスの流量を算出する流量算出部と、
前記流量算出部で算出された算出流量と予め設定された設定流量との偏差に基づいて、前記流体制御バルブの開度を制御するバルブ制御部と、を備える請求項1記載の液体材料気化供給装置。
【請求項3】
前記導出路から導出される前記材料ガスの流量を検知する流量センサをさらに具備し、
前記流量制御部が、
前記流量センサによって検知される検知流量と予め設定された設定流量との偏差に基づいて、前記流体制御バルブの開度を制御するバルブ制御部と、
前記圧力センサで検知される検知圧力の単位時間当たりの低下量に基づいて、その単位時間内に前記
第2タンクから導出される前記材料ガスの流量を算出する流量算出部と、
前記流量算出部で算出された算出流量と前記設定流量との偏差に基づいて、前記設定流量を補正する設定流量補正部と、を備える請求項1記載の液体材料気化供給装置。
【請求項4】
前記流量制御部が、
前記設定流量に基づいて、前記単位時間を変更し、前記設定流量が小さいほど前記単位時間を長く変更する単位時間変更部をさらに備える請求項2記載の液体材料気化供給装置。
【請求項5】
前記流量制御部が、
前記圧力センサによって所定タイミングで検知される検知圧力と前記所定タイミングから所定時間経過後に検知される検知圧力との間の低下量に基づいて、その所定時間内に前記第2タンクから導出される前記材料ガスの流量を算出する流量算出部と、
前記第2タンクから前記材料ガスが予め設定された設定流量に従って導出された場合を仮定し、その仮定下において前記所定時間内に導出される前記材料ガスの流量を算出する仮定流量算出部と、
前記流量算出部で算出される算出流量と前記仮定流量算出部で算出される仮定流量との偏差に基づいて、前記流体制御バルブの開度を制御するバルブ制御部と、を備える請求項1記載の液体材料気化供給装置。
【請求項6】
前記流量算出部が、
前記圧力センサによって前記所定タイミングから単位時間毎に検知される検知圧力の単位時間当たりの低下量に基づいて、各単位時間内に前記第2タンクから導出される前記材料ガスの流量を算出し、その各算出流量に基づいて前記所定時間内に前記第2タンクから導出される前記材料ガスの流量を算出する請求項5記載の液体材料気化供給装置。
【請求項7】
前記流量制御部が、
前記第2タンクから前記材料ガスが予め設定された設定流量に従って導出された場合を仮定し、その仮定下において前記材料ガスが導出され始めてから所定時間経過後の前記第2タンク内の仮定圧力を算出する仮定圧力算出部と、
前記第2タンクから前記材料ガスが導出され始めてから前記所定時間経過後に前記圧力センサによって検出される検知圧力と前記仮定圧力算出部で算出される仮定圧力との偏差に基づいて、前記流体制御バルブの開度を制御するバルブ制御部と、を備える請求項1記載の液体材料気化供給装置。
【請求項8】
前記第2タンク内の温度を検知する温度センサをさらに具備し、
前記流量制御部が、
前記温度センサによって検知される検知温度に基づいて、前記圧力センサによって検知される検知圧力を補正する検知圧力補正部をさらに備える請求項1記載の液体材料気化供給装置。
【請求項9】
前記圧力制御部が、
前記第1タンクを加熱するヒータの温度を調節し、前記第1タンクと前記第2タンクとの間の差圧を制御する請求項
1記載の液体材料気化供給装置。
【請求項10】
前記圧力制御部が、
前記圧力センサによって検知される検知圧力が所定圧力になった場合に、前記第2タンクに対する前記材料ガスの導入を停止する請求項
1記載の液体材料気化供給装置。
【請求項11】
前記第2タンクが、前記第1タンクに対して複数接続されており、
前記設定流量に基づいて、前記材料ガスを導入する前記第2タンクの数を調節する導入タンク数調節部をさらに具備する請求項2記載の液体材料気化供給装置。
【請求項12】
液体材料を気化して材料ガスを生成する第1タンクから前記材料ガスが所定圧力で収容される第2タンク内の圧力を検知する圧力センサと、前記第2タンクから前記材料ガスを導出する導出路を開閉する流体制御バルブと、前記流体制御バルブの開度を制御する流量制御部と、
前記第1タンクから前記第2タンクに導入される前記材料ガスを所定圧力に制御する圧力制御機構とを具備し、前記圧力制御機構が、前記第1タンクから前記第2タンクに導入される前記材料ガスの流量を調節する開閉バルブと、前記開閉バルブを開閉し、前記第1タンクと前記第2タンクとの間の差圧によって、前記第2タンクに導入される前記材料ガスの圧力を制御する圧力制御部と、を備える液体材料気化供給装置の制御プログラムであって、
前記流量制御部が、前記第2タンクに所定圧力で収容された前記材料ガスを前記導出路から導出する場合に、前記圧力センサによって検知される検知圧力の低下に基づいて、前記流体制御バルブの開度を制御して前記導出路から導出される前記材料ガスの流量を制御する機能を発揮できるようにする制御プログラム。
【請求項13】
液体材料を気化して材料ガスを生成する第1タンクと、
前記第1タンクに接続され、前記第1タンクで生成された前記材料ガスが所定圧力で収容される第2タンクと、
前記第2タンク内の圧力を検知する圧力センサと、
前記第2タンク内の前記材料ガスの温度を検知する温度センサと、
前記第2タンクから前記材料ガスを導出する導出路と、
前記導出路に設けられ、その導出路を開閉する流体制御バルブと、
前記第2タンクに所定圧力で収容された前記材料ガスを前記導出路から導出する場合に、前記圧力センサによって検知される検知圧力の低下に基づいて、前記流体制御バルブの開度を制御して前記導出路から導出される前記材料ガスの流量を制御する流量制御部と、を具備する液体材料気化供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体材料気化供給装置及び制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスに使用される液体材料気化供給装置としては、特許文献1に開示されるように、液体材料を気化して材料ガスを生成する気化タンクと、気化タンク内の圧力を検知する圧力センサと、気化タンクから材料ガスを導出する導出路と、導出路に設けられ、その導出路を流れる材料ガスの流量を制御する流量制御装置(所謂、マスフローコントローラ)と、を具備するものがある。
【0003】
しかし、前記特許文献1に開示される従来の液体材料気化供給装置においては、流量制御装置に内蔵される流量センサの感度が材料ガスの種類によって異なるため、材料ガスの種類に応じて校正を実施する必要があり、このため、校正データのない材料ガスについては、正確に流量を制御できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、材料ガスの種類によって校正を実施する必要がなく、校正データがない材料ガスであっても正確に流量を制御できるようにすることを主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明に係る液体材料気化供給装置は、液体材料を気化して材料ガスを生成する第1タンクと、前記第1タンクに接続され、前記第1タンクで生成された前記材料ガスが所定圧力で収容される第2タンクと、前記第2タンク内の圧力を検知する圧力センサと、前記第2タンクから前記材料ガスを導出する導出路と、前記導出路に設けられ、その導出路を開閉する流体制御バルブと、前記第2タンクに所定圧力で収容された前記材料ガスを前記導出路から導出する場合に、前記圧力センサによって検知される検知圧力の低下に基づいて、前記流体制御バルブの開度を制御して前記導出路から導出される前記材料ガスの流量を制御する流量制御部と、を具備することを特徴とするものである。
【0007】
本発明に係る液体材料気化供給装置によれば、圧力センサによって検知される第2タンク内の圧力の低下に基づいて、第2タンクから導出される材料ガスの流量を制御するため、材料ガスの種類に関係なく、材料ガスの流量を正確に制御することができる。これにより、校正データがない材料ガスであっても流量を正確に制御することができる。また、前記従来の液体材料気化供給装置に使用される流量制御装置は、耐熱性が低いため、本発明の第1タンクに対応する気化タンクの加熱温度の上限を低く設定せざるを得ず、これに伴って気化タンク内の蒸気圧の上限も低くなり、材料ガスの最大流量が制限されるという問題があったが、本発明に係る液体材料気化供給装置によれば、耐熱性の高い、圧力センサや流体制御バルブによって材料ガスの流量を制御することができため、液体材料を気化させる加熱温度の上限を高く設定することができ、これに伴って第1タンクから第2タンクに収容される材料ガスの蒸気圧が高くなり、結果として、材料ガスの最大流量を上昇させることができる。さらに、前記従来の液体材料気化供給装置に使用される流量制御装置固有の問題として、応答速度が遅いという問題もあったが、本発明に係る液体材料気化供給装置によれば、圧力センサによって検知される検知圧力に基づいて、流体制御バルブの開度を制御することができるため、応答速度が速くなる。
【0008】
また、前記液体材料気化供給装置の流量制御部としては、前記圧力センサで検知される検知圧力の単位時間当たりの低下量に基づいて、その単位時間内に前記第2タンクから導出される前記材料ガスの流量を算出する流量算出部と、前記流量算出部で算出された算出流量と予め設定された設定流量との偏差に基づいて、前記流体制御バルブの開度を制御するバルブ制御部と、を備えるものであってもよい。
【0009】
また、前記液体材料気化供給装置の流量制御部としては、前記導出路から導出される前記材料ガスの流量を検知する流量センサをさらに具備し、前記流量制御部が、前記流量センサによって検知される検知流量と予め設定された設定流量との偏差に基づいて、前記流体制御バルブの開度を制御するバルブ制御部と、前記圧力センサで検知される検知圧力の単位時間当たりの低下量に基づいて、その単位時間内に前記第2タンクから導出される前記材料ガスの流量を算出する流量算出部と、前記流量算出部で算出された算出流量と前記設定流量との偏差に基づいて、前記設定流量を補正する設定流量補正部と、を備えるものであってもよい。
【0010】
このようなものであれば、従来の液体材料気化供給装置と同様に、流量センサによって検知される検知流量に基づいて材料ガスの流量を制御しているが、その制御が、圧力センサによって検知される検知圧力の低下を参照して補正した設定流量に基づくものであるため、材料ガスの種類に関係なく、材料ガスの流量を正確に制御することができる。なお、この場合、圧力センサによって検知圧力を検知するタイミング間に導出路から導出される材料ガスの流量を検知流量に基づいて制御しているため、そのタイミング間に生じる外乱等に伴うノイズによる影響を抑制することができる。また、設定流量を変更しない(予めメモリに記憶されている基準となる設定流量を設定し直さない)のであれば、補正による設定流量の変動幅に制限を設けることにより、圧力センサによって検知される検知圧力によるノイズの変動が大きい場合における過敏な流量変化を抑制できる。但し、流量センサを用いるため、応答速度が遅くなり、また、耐熱性が低くなる。
【0011】
また、前記いずれかの流量制御部が、前記設定流量に基づいて、前記単位時間を変更し、前記設定流量が小さいほど前記単位時間を長く変更する単位時間変更部をさらに備えるものであってもよい。
【0012】
単位時間当たりの圧力の低下量が小さいと、圧力センサによって検知される検知圧力の誤差の影響を受け易くなる。そこで、前記流量制御部のように、設定流量が小さいほど単位時間を長く変更すれば、単位時間当たりの圧力の低下量が大きくなり、圧力センサによって検知される検知圧力の誤差の影響を抑制できる。
【0013】
また、前記液体材料気化供給装置の流量制御部として、前記圧力センサによって所定タイミングで検知される検知圧力と前記所定タイミングから所定時間経過後に検知される検知圧力との間の低下量に基づいて、その所定時間内に前記第2タンクから導出される前記材料ガスの流量を算出する流量算出部と、前記第2タンクから前記材料ガスが予め設定された設定流量に従って導出された場合を仮定し、その仮定下において前記所定時間内に導出される前記材料ガスの流量を算出する仮定流量算出部と、前記流量算出部で算出される算出流量と前記仮定流量算出部で算出される仮定流量との偏差に基づいて、前記流体制御バルブの開度を制御するバルブ制御部と、を備えるものであってもよく、この場合、前記流量算出部が、前記圧力センサによって前記所定タイミングから単位時間毎に検知される検知圧力の単位時間当たりの低下量に基づいて、各単位時間内に前記第2タンクから導出される前記材料ガスの流量を算出し、その各算出流量に基づいて前記所定時間内に前記第2タンクから導出される前記材料ガスの流量を算出するものであってもよい。
【0014】
このようなものであれば、第2タンクから材料ガスの導出が進むほど、所定タイミングからの経過時間が長くなるため、その経過時間における圧力の低下量が大きくなり、圧力センサによって検知される圧力の誤差の影響を抑制できる。
【0015】
ここで、前記流量算出部で算出される算出流量は、ある時間(前記単位時間、前記所定時間)内に導出路から導出される材料ガスの平均流量であるが、外乱等によって圧力センサによる検知にノイズが生じることもあり、この場合、厳密な意味での平均流量にならない。従って、算出流量は、略平均流量であるとも言える。
【0016】
また、前記液体材料気化供給装置の流量制御部として、前記第2タンクから前記材料ガスが予め設定された設定流量に従って導出された場合を仮定し、その仮定下において前記材料ガスが導出され始めてから所定時間経過後の前記第2タンク内の仮定圧力を算出する仮定圧力算出部と、前記第2タンクから前記材料ガスが導出され始めてから前記所定時間経過後に前記圧力センサによって検出される検知圧力と前記仮定圧力算出部で算出される仮定圧力との偏差に基づいて、前記流体制御バルブの開度を制御するバルブ制御部と、を備えるものであってもよい。
【0017】
また、前記いずれかの液体材料気化供給装置が、前記第2タンク内の温度を検知する温度センサをさらに具備し、前記流量制御部が、前記温度センサによって検知される検知温度に基づいて、前記圧力センサによって検知される検知圧力を補正する検知圧力補正部をさらに備えるものであってもよい。この場合、前記検知圧力補正部が、前記圧力センサによって検知圧力が検知された時に前記温度センサによって検知される検知温度に基づいて、その検知圧力を補正するものであってもよく、また、前記検知圧力補正部が、前記気化タンクから前記充填タンクに前記材料ガスが充填される場合に、前記温度センサによって検知される充填開始から充填終了後前記充填タンク内の温度が安定するまでの間の温度の上昇量を予め取得し、その温度の上昇量に基づいて、前記充填タンクから前記材料ガスが導出される場合に、前記圧力センサによって検知される検知圧力を補正するものであってもよい。
【0018】
第2タンクから材料ガスの導出が進むと、第2タンク内の圧力が低下し、第2タンクが膨張する。これに伴って第2タンク内の温度が低下し、これが原因となって圧力センサによって検知される検知圧力に誤差が生じる。そこで、前記のように検知圧力補正部において、温度センサによって検知される検知温度に基づいて、圧力センサによって検知される検知圧力を補正すれば、圧力センサによって検知される検知圧力の誤差を抑制できる。
【0019】
また、前記いずれかの液体材料気化供給装置において、前記第1タンクから前記第2タンクに導入される前記材料ガスを所定圧力に制御する圧力制御機構をさらに具備するものであってもよい。
【0020】
第2タンクに収容される材料ガスの圧力が増すと、これに伴って圧力センサによって検知される検知圧力も高くなり、誤差が生じ易くなる。そこで、前記のように圧力制御機構によって、第2タンクに収容される材料ガスの圧力を制御し、第2タンクに収容される材料ガスの圧力をある程度低く保てば、圧力センサによって検知される検知圧力も低くなって誤差を抑制できる。
【0021】
なお、前記圧力制御機構の具体例としては、前記圧力制御機構が、前記第1タンクから前記第2タンクに導入される前記材料ガスの流量を調節する開閉バルブと、前記開閉バルブを開閉し、前記第1タンクと前記第2タンクとの間の差圧によって、前記第2タンクに導入される前記材料ガスの圧力を制御する圧力制御部と、を備えるものが挙げられる。この場合、前記圧力制御部が、前記第1タンクを加熱するヒータの温度を調節し、前記第1タンクと前記第2タンクとの間の差圧を制御するものであってもよい。
【0022】
また、前記圧力制御機構の具体例としては、前記第1タンクから前記第2タンクに前記材料ガスを強制的に導入するポンプと、前記ポンプを駆動停止し、前記第2タンクに導入される前記材料ガスの圧力を制御する圧力制御部と、を備えるものも挙げられる。このようなものであれば、液体材料の加熱温度を上昇させることなく、第2タンクに導入される材料ガスの圧力を上昇させることができ、これにより、液体材料を長時間高温に晒す必要がなくなり、液体材料の変性・分解等のリスクを低減できる。
【0023】
また、前記いずれかの圧力制御機構において、前記圧力制御部が、前記圧力センサによって検知される検知圧力が所定圧力になった場合に、前記第2タンクに対する前記材料ガスの導入を停止するものであってよい。
【0024】
このようなものであっても、第2タンクに導入される材料ガスの圧力を制御し、第2タンクに導入される材料ガスの圧力をある程度低く保つことができ、圧力センサによって検知される検知圧力が低くなって誤差を抑制できる。
【0025】
また、前記いずれかの液体材料気化供給装置において、前記第2タンクが、前記第1タンクに対して複数接続されており、前記設定流量に基づいて、前記材料ガスを導入する前記第2タンクの数を調節する導入タンク数調節部をさらに具備するものであってもよい。
【0026】
このようなものであれば、設定流量が大きい場合には、材料ガスを収容する第2タンクの数を増やし、第2タンクから導出される材料ガスの総量を確保でき、一方、設定流量が小さい場合には、材料ガスを収容する第2タンクの数を減らし、圧力センサによって検知される検知圧力の低下量を大きくして誤差を抑制できる。
【0027】
また、本発明に係る制御プログラムは、液体材料を気化して材料ガスを生成する第1タンクから前記材料ガスが一時的に所定圧力で収容される第2タンク内の圧力を検知する圧力センサと、前記第2タンクから前記材料ガスを導出する導出路を開閉する流体制御バルブと、前記流体制御バルブの開度を制御する流量制御部と、を具備する液体材料気化供給装置の制御プログラムであって、前記流量制御部が、前記第2タンクに所定圧力で収容された前記材料ガスを前記導出路から導出する場合に、前記圧力センサによって検知される検知圧力の低下に基づいて、前記流体制御バルブの開度を制御して前記導出路から導出される前記材料ガスの流量を制御する機能を発揮できるようにすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0028】
このように構成した本発明によれば、材料ガスの種類によって校正を実施する必要がなく、校正データがない材料ガスであっても正確に流量を制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】実施形態1における液体材料気化供給装置を示す模式図である。
【
図2】実施形態2における液体材料気化供給装置を示す模式図である。
【
図3】実施形態5における液体材料気化供給装置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0030】
100 液体材料気化供給装置
10 第1タンク
20 第2タンク
30 第1開閉バルブ
40 第2開閉バルブ
50 流体制御バルブ
L1 接続路
L2 導入路
L3 導出路
H ヒータ
PS 圧力センサ
FS 流量センサ
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明に係る液体材料気化供給装置について図面を参照して説明する。
【0032】
本実施形態に係る液体材料気化供給装置は、例えば、半導体製造プロセスにおいて、チャンバ(供給先)に対して材料ガスを安定した流量で供給するために用いられる。なお、液体材料気化供給装置は、半導体制御プロセス以外の用途にも用いることができる。
【0033】
<実施形態1>
本実施形態に係る液体材料気化供給装置100は、
図1に示すように、液体材料を気化して材料ガスを生成する第1タンク10と、第1タンク10で生成された材料ガスが一時的に所定圧力で収容される第2タンク20と、第1タンク10及び第2タンク20を接続する接続路L1と、第1タンク10に液体材料を導入する導入路L2と、第2タンク20から材料ガスを導出する導出路L3と、を具備している。なお、接続路L1は、第1タンク10に接続される一端がその第1タンク10内の気相空間に接続されている。また、導入路L2は、第1タンク10に接続される一端とは反対側の他端が図示しない液体材料供給装置に接続されており、導出路L3は、第2タンク20に接続される一端とは反対側の他端が図示しないチャンバに接続されている。
【0034】
そして、接続路L1には、その流路を開閉するための第1開閉バルブ30が設置されており、導入路L2には、その流路を開閉するための第2開閉バルブ40が設置されており、導出路L3には、第2タンク20から導出される材料ガスの流量を制御するための流体制御バルブ50が設置されている。また、第2タンク20には、その内部の圧力を検知するための圧力センサPSが設置されている。なお、第1開閉バルブ30が、請求項における開閉バルブに対応している。また、流体制御バルブ50としては、流体を制御できるものであればよく、流量を制御するもの以外にも、圧力を制御するもの等も含まれる。
【0035】
なお、導入路L2の他端側及び導出路L3の他端側を除く前記各部材(第1タンク10、第2タンク20、各バルブ30,40,50、圧力センサ等)は、いずれも恒温領域TR内に収容されており、これにより、各部材が所定温度(高温)に保たれる。これにより、液体材料の再液化が防止され、第2タンク20に収容される材料ガスの量を一定に保つことができる。また、第1タンク10には、液体材料を加熱して気化させるためのヒータHが設けられている。
【0036】
液体材料気化供給装置100は、図示しない制御装置を具備しており、制御装置は、圧力センサPS及び各バルブ30,40,50に接続されている。なお、制御装置は、CPU、メモリ、A/D・D/Aコンバータ、入出力手段等を備えたいわゆるコンピュータによって構成してあり、前記メモリに格納されているプログラムが実行され、各種機器が協働することによってその機能が実現されるようにしてある。具体的には、第2タンク20から導出される材料ガスの流量を制御する流量制御部や、第1タンク10から第2タンク20に導入される材料ガスを圧力に制御する圧力制御部としての機能を発揮する。なお、本実施形態における第1開閉バルブ30と圧力制御部との備える機構が請求項における圧力制御機構に対応する。
【0037】
流量制御部は、圧力センサPSで検知される検知圧力の単位時間当たりの低下量に基づいて、その単位時間内に第2タンク20から導出される材料ガスの流量を算出する流量算出部と、流量算出部で算出された算出流量と予め設定された設定流量との偏差に基づいて、算出流量が設定流量に近づくように、流体制御バルブ50の開度を制御するバルブ制御部と、を備えている。
【0038】
なお、流量算出部は、具体的には、先ず、気体の状態方程式である式(1)に、圧力センサPSによって検知される検知圧力の単位時間Δt当たりの低下量ΔPを代入して得られる式(2)から、単位時間Δtに第2タンク20から導出される材料ガスの総量Δnを算出する。
PV=nRT 式(1)
ΔP=Δn×(RT/V) 式(2)
ここで、Pは、第2タンク20内の圧力、Vは、第2タンク20の容積、nは、第2タンク20内に収容される材料ガスの物理量、Rは、第2タンク20内に収容された材料ガスのモル気体定数、Tは、第2タンク内の材料ガスの温度、である。因みに、第2タンク20内の温度は一定に保たれる。
そして、第2タンク20から導出される材料ガスの単位時間内における算出流量Qを、式(3)によって算出する。
Q=A×(ΔP/Δt) 式(3)
ここで、Aは、係数であり、材料ガスの種類、温度T、圧力Pに基づいて補正される値である。なお、Aの補正値は、無視できる程度に小さい値になる場合もある。なお、前記各式におけるΔtは、単位時間に限定されず、任意の時間間隔であってもよい。
【0039】
圧力制御部は、具体的には、各バルブ30,40,50の順次開閉し、第1タンク10と第2タンク20との間の差圧によって、第1タンク10から第2タンク20に導入される材料ガスの圧力を制御する機能を有している。また、第1タンク10に設けられたヒータHの加熱温度を調整し、第1タンク10内の圧力の上昇値を制限することにより、第1タンク10と第2タンク20との間の差圧の大きさを制御する機能も有している。
【0040】
次に、本実施形態における第1タンク10から第2タンク20に材料ガスを導入する動作を説明する。
【0041】
先ず、圧力制御部に、入力手段から導入指示信号が入力されると、圧力制御部は、第1開閉バルブ30及び第2開閉バルブ40を閉じ、流体制御バルブ50を開く。次に、圧力制御部は、第1タンク10に設けられたヒータHの加熱温度を調節し、第1タンク10内の液体材料を気化させて材料ガスを生成し、第1タンク10内の圧力を所定蒸気圧まで上昇させる。この時、並行して第2タンク20は、導出路L3の下流側に設けられた真空ポンプ(図示せず)によって略真空状態にまで減圧される。次に、圧力制御部は、流体制御バルブ50を閉じ、第2タンク20内を略真空状態に保ちながら、第1開閉バルブ30を開く。これにより、第1タンク10内で気化された材料ガスが、第1タンク10と第2タンク20との間の差圧によって、第2タンク20内の圧力が前記所定蒸気圧に達するまで、第2タンク20内に材料ガスが導入される。最後に、圧力制御部は、第1開閉バルブ30を閉じて導入作業を完了する。これにより、第2タンク20内に所定圧力(所定蒸気圧)で材料ガスが収容された状態となる。
【0042】
なお、第1タンク10内の液体材料を気化させる場合に、第1タンク10内の圧力(蒸気圧)が所定値まで上昇したか否かは、ヒータHの加熱温度毎に第1タンク10の加熱時間に伴う圧力上昇の関係を関連付けした気化データを予め取得し、その気化データをメモリに記憶しておき、気化データを参照して判断すればよい。また、第1タンク10内の圧力を検知する圧力センサを別途設け、その圧力センサによって第1タンク10内の圧力を実測して判断してもよい。
【0043】
次に、本実施形態における第2タンク20から供給先に材料ガスを供給する動作を説明する。
【0044】
先ず、流量制御部に、入力手段から供給指示信号が入力されると、流量制御部は、流体制御バルブ50を予め設定された初期開度まで開く。これにより、第2タンク20から導出路L3に材料ガスが流れ出す。次に、流量算出部は、第2タンク20内の圧力を圧力センサPSによって検知し、単位時間Δt当たりの圧力低下量ΔPtを取得し、前記式(3)に代入し、第2タンク20内から前記単位時間Δt内に導出される材料ガスの算出流量QCを算出する。次に、バルブ制御部は、流量算出部で算出された算出流量QCが、予め設定された設定流量QSに近づくように、流体制御バルブ50の開度を制御する。そして、流量算出部が単位時間毎に算出流量の算出を繰り返し、その算出結果に基づいてバルブ制御部が流体制御バルブ50の開度制御を繰り返すことにより、第2タンク20から材料ガスが設定流量QS近傍の流量で制御される。
【0045】
なお、このような構成では、第2タンク20の容積に応じた量の材料ガスを供給先に供給した後、再び第2タンク20に材料ガスを導入する必要があり、供給先に対して連続的に材料ガスを供給し続けることができないが、近年、半導体制御プロセスの成膜技術の一つとしてパルス的に材料ガスを供給するALD(Atomic Layer Deposition)なる技術が確立しており、この成膜技術に対する活用が非常に有効である。
【0046】
<実施形態2>
本実施形態の液体材料気化供給装置は、前記実施形態1の変形例であり、
図2に示すように、前記実施形態1における導出路L3の流体制御バルブ50の下流側に流量センサFSが設置されている。また、本実施形態における流量制御部は、流量センサFSによって検知される検知流量が予め設定された設定流量に近づくように、流体制御バルブ50の開度を制御するバルブ制御部と、圧力センサPSで検知される検知圧力の単位時間当たりの低下量に基づいて、その単位時間内に第2タンク20から導出される材料ガスの流量を算出する流量算出部と、流量算出部で算出された算出流量と設定流量との偏差に基づいて、設定流量を補正する設定流量補正部と、を備える。なお、その他の構成は、前記実施形態1と同様である。
【0047】
次に、本実施形態における第2タンク20から供給先へ材料ガスを供給する動作を説明する。
【0048】
先ず、流量制御部に、入力手段から供給指示信号が入力されると、流量制御部は、流体制御バルブ50を予め設定された初期開度まで開く。これにより、第2タンク20から導出路L3に材料ガスが流れ出す。そして、バルブ制御部が、流量センサFSによって検知される検知流量Qmが予め設定された設定流量QSに近づくように、流体制御バルブ50の開度を制御するフィードバック制御を開始する。また、流量算出部は、第2タンク20内の圧力を圧力センサPSによって検知し、単位時間Δt当たりの圧力低下量ΔPtを算出し、前記式(3)に代入し、第2タンク20内から前記単位時間Δt中に導出される材料ガスの算出流量QCを算出する。そして、設定流量補正部が、流量算出部で算出された算出流量QCと設定流量QSとの偏差に基づいて、その設定流量QSを補正する。そして、設定流量補正部によって設定流量QSを単位時間Δt毎に補正しながら、バルブ制御部がフィードバック制御を繰り返すことにより、第2タンク20から材料ガスが設定流量QS近傍の流量で制御される。
【0049】
また、本実施形態において、設定流量補正部によって補正される設定流量QSの変動幅に制限を設けることにより、圧力センサによって検知される検知圧力のノイズや変動が大きい場合の過敏な流量変化を抑制できる。
【0050】
<実施形態3>
本実施形態の液体材料気化供給装置は、前記実施形態1の変形例であり、前記実施形態1と流量制御部の構成が異なる他は同様の構成である。本実施形態における流量制御部は、圧力センサPSによって所定タイミングで検知される検知圧力と前記所定タイミングから所定時間経過後に検知される検知圧力との間の圧力低下量に基づいて、その所定時間内に第2タンク20から導出される材料ガスの流量を算出する流量算出部と、第2タンク20から材料ガスが予め設定された設定流量に従って導出された場合を仮定し、その仮定下において前記所定時間内に導出される材料ガスの流量を算出する仮定流量算出部と、流量算出部で算出される算出流量と仮定流量算出部で算出される仮定流量との偏差に基づいて、算出流量が仮定流量に近づくように、流体制御バルブの開度を制御するバルブ制御部と、を備える。
【0051】
次に、本実施形態における第2タンク20から供給先へ材料ガスを供給する動作を説明する。
【0052】
先ず、流量制御部に、入力手段から供給指示信号が入力されると、流量制御部は、流体制御バルブ50を予め設定された初期開度まで開く。これにより、第2タンク20から導出路L3に材料ガスが流れ出す。次に、流量算出部が、圧力センサPSによって所定タイミングで検知される検知圧力Pmと前記所定タイミングから所定時間Δt´経過後に検知される検知圧力Pm´とを検知し、前記所定時間Δt´における圧力低下量ΔPt´を算出し、前記式(3)に代入し、第2タンク20内から前記所定時間Δt´中に導出される材料ガスの算出流量QCを算出する。また、仮定流量算出部が、第2タンク20から材料ガスが予め設定された設定流量QSに従って導出された場合を仮定し、その仮定下において前記所定時間Δt´中に導出される材料ガスの仮定流量QAを算出する。次に、バルブ制御部が、流量算出部で算出される算出流量QCと仮定流量算出部で算出される仮定流量QAとの偏差に基づいて、算出流量QCが仮定流量QAに近づくように、流体制御バルブ50の開度を制御する。そして、流量算出部及び仮定流量算出部が所定タイミングからの経過時間毎に算出を繰り返し、その算出結果に基づいてバルブ制御部が流体制御バルブ50の開度制御を繰り返すことにより、第2タンク20から材料ガスが設定流量QS近傍の流量で制御される。
【0053】
このようなものであれば、所定タイミングからの経過時間が短い場合に、圧力センサによって検知される検知圧力に大きな誤差が出たとしても、その後に経過時間が長くなるほど誤差が小さくなり、トータルで見れば、誤差の影響が大幅に抑制される。
【0054】
なお、本実施形態においては、次のようにして算出流量QCを算出してもよい。すなわち、先ず、圧力センサPSによって単位時間Δt毎に検知される検知圧力の単位時間Δt当たりの低下量に基づいて、各単位時間Δt内に第2タンクから導出される材料ガスの流量を算出する。続いて、所定タイミングから所定時間ΔTの間に含まれる各単位時間Δtの算出流量を積算した積算値をその単位数で除算する。これにより、前記所定時間ΔT内に第2タンクから導出される材料ガスの算出流量QCを算出する。
【0055】
<実施形態4>
本実施形態の液体材料気化供給装置は、前記実施形態1の変形例であり、前記実施形態1と流量制御部の構成が異なる他は同様の構成である。本実施形態における流量制御部は、第2タンク20から材料ガスが予め設定された設定流量に従って導出された場合を仮定し、その仮定下において材料ガスが導出され始めてから所定時間経過後の第2タンク20内の仮定圧力を算出する仮定圧力算出部と、第2タンク20から材料ガスが導出され始めてから前記所定時間経過後に圧力センサPSによって検出される検知圧力と仮定圧力との偏差に基づいて、検知圧力が仮定圧力に近づくように、流体制御バルブ50の開度を制御するバルブ制御部と、を備える。
【0056】
次に、本実施形態における第2タンク20から供給先へ材料ガスを供給する動作を説明する。
【0057】
先ず、流量制御部に、入力手段から供給指示信号が入力されると、流量制御部は、流体制御バルブ50を予め設定された初期開度まで開く。これにより、第2タンク20から導出路L3に材料ガスが流れ出す。次に、仮定圧力算出部が、第2タンク20から材料ガスが予め設定された設定流量QSに従って導出された場合を仮定し、その仮定下において材料ガスが導出され始めてから所定時間ΔT経過後の第2タンク20内の仮定圧力PAを算出する。なお、この場合、予め第2タンク20から導出される材料ガスの流量が設定流量QSになるために必要となる仮定圧力PAを、前記式(3)によって逆算する。すなわち、設定流量QS及び所定時間ΔTが既知であることから、前記式(3)によって所定時間ΔT当たりの圧力低下量ΔPtを算出することができ、この圧力低下量ΔPtと所定時間ΔTとから仮定圧力PAを算出する。次に、バルブ制御部が、第2タンク20から材料ガスが導出され始めてから所定時間ΔT経過後に圧力センサPSによって検出される検知圧力Pmと仮定圧力PAとをとの偏差に基づいて、検知圧力Pmが仮定圧力PAに近づくように、流体制御バルブ50の開度を制御する。そして、仮定圧力算出部が第2タンク20から材料ガスが導出され始めてからの経過時間毎に算出を繰り返し、その算出結果に基づいてバルブ制御部が流体制御バルブ50の開度制御を繰り返すことにより、第2タンク20から材料ガスが設定流量QS近傍の流量で制御される。
【0058】
<実施形態5>
本実施形態の液体材料気化供給装置は、前記実施形態1の変形例であり、
図3に示すように、前記実施形態1の第1タンク10に対して二つの第2タンク20a,20bが接続されており、また、設定流量に基づいて、第1タンク10から材料ガスを導入する第2タンク20a,20bの数を調節する導入タンク数調節部(図示せず)を制御装置に備えている。なお、二つの第2タンク20a,20bは、同じ容積を有している。そして、第1タンク10から伸びる接続路L1の下流側が分岐して各第2タンク20a,20bに接続されており、その接続路L1の分岐点に対して下流側にそれぞれ第1開閉バルブ30a,30bが設置されている。また、圧力センサPSから伸びる接続管の先端側が分岐して各第2タンク20a,20bに接続されており、その接続管の一方の第2タンク20aに接続される先端側に第3開閉バルブ60が設置されている。また、各第2タンク20a,20bから伸びる導出路L3の下流側が合流しており、一方の第2タンク20aから伸びる導出路L3の合流点に対して上流側に第4開閉バルブ70が設置されており、その導出路L3の合流点に対して下流側に流体制御バルブ50が設置されている。
【0059】
なお、導入タンク数調節部は、設定流量が大きい場合には、両第2タンク20a,20bに材料ガスを収容した状態から、第3開閉バルブ60及び第4開閉バルブ70を開き、両第2タンク20a,20bの材料ガスを導出させる。これにより、供給先に供給される材料ガスの総量を増加させることができる。一方、設定流量が小さい場合には、両第2タンク20a,20bに材料ガスを収容した状態から、第3開閉バルブ60及び第4開閉バルブ70を閉じ、他方の第2タンク20bの材料ガスのみを導出させる。これにより、圧力センサPSによって検知される検知圧力の単位時間当たりの圧力低下量が増し、圧力センサPSによる誤差を抑制できる。また、導入タンク数調節部が、各第2タンク20a,20bの材料ガスを交互に導出するように制御することにより、連続的に供給先へ材料ガスを供給することもできる。具体的には、一方の第2タンク20aに収容された材料ガスを導出している間に、他方の第2タンク20bに材料ガスを収容し、また、他方の第2タンク20bに収容された材料ガスを導出している間に、一方の第2タンク20aに材料ガスを収容する。そして、この動作を繰り返すことにより、連続的に供給先へ材料ガスを供給することができる。なお、本実施形態においては、第2タンクを二つ設置したが、三つ以上設置してもよく、各タンクの容積は、同一でなくてもよい。
【0060】
<その他の実施形態>
その他の実施形態としては、前記実施形態1及び2において、流量制御部に、設定流量に基づいて、単位時間の間隔を変更し、設定流量が小さいほど単位時間を長く変更する単位時間変更部を設けてもよい。
【0061】
通常、設定流量が小さい場合には、単位時間当たりの圧力低下量が小さくなり、これに伴って圧力センサPSによる検知誤差が大きくなる。そこで、前記構成を採用することにより、設定流量に応じて単位時間の間隔を変更し、設定流量が小さい場合には、単位時間の間隔を長くし、単位時間当たりの圧力低下量が増加させることにより、圧力センサPSによる検知誤差の影響を抑制できる。
【0062】
また、その他の実施形態としては、前記各実施形態において、第2タンクPS内の温度を検知する温度センサTSを設置し、流量制御部に、温度センサTSによって検知される検知温度に基づいて、圧力センサPSによって検知される検知圧力を補正する検知圧力補正部を設けてもよい。
【0063】
第2タンク20から材料ガスが導出され、第2タンク20内の圧力が低下すると、これに伴って断熱膨張が生じ、第2タンク20内の温度が低下する。これが原因となって、圧力センサPSによる圧力の検知に誤差が生じる。そこで、前記構成を採用することにより、温度センサTSによって第2タンク20内の温度を検知し、その検知温度に基づいて圧力センサPSによって検知される検知圧力を補正することより、誤差が抑制される。
【0064】
具体的には、圧力センサPSによる検知圧力の検知時に、温度センサTSによって温度を検知し、その検知温度によって検知圧力を補正すればよい。また、第1タンク10から第2タンク20に材料ガスを導入する場合に、温度センサTSによって、その導入開始から導入終了後第2タンク20内の温度が安定するまでの間の温度の上昇量を予め測定しておき、その温度の上昇量に基づいて、第2タンク20から材料ガスを導出する場合に、圧力センサPSによって検知される検知圧力を補正すればよい。
【0065】
なお、第2タンク20の熱伝導面積を広げることにより、第2タンク20内の圧力の低下に伴う温度の低下を抑制することもできる。
【0066】
その他の実施形態としては、前記各実施形態において、接続路L1に設置される第1開閉バルブ30に代えて、第1タンク10から第2タンク20へ強制的に材料ガスを供給するポンプを設置し、圧力制御部で、ポンプの駆動停止を制御し、第1タンク10から第2タンク20に材料ガスを導入するようにしてもよい。この場合、第1タンク10から第2タンク20に材料ガスを導入する動作において、第2タンク20内の圧力を圧力センサPSによって監視し、第2タンク20内が所定圧力になると、圧力制御部が、ポンプの駆動を停止するようにすればよい。なお、本実施形態におけるポンプと圧力制御部とを含む機構が請求項における圧力制御機構に対応する。
【0067】
このようなものであれば、液体材料を高温で加熱して蒸気圧を上昇させなくても、第2タンク20に収容される材料ガスの圧力を確保できるため、これにより、液体材料を長時間高温に晒す必要がなくなり、液体材料の変性・分解等のリスクを低減できる。また、第2タンク20に対する材料ガスの圧力を、第1タンク10と第2タンク20との差圧でなく、圧力センサPSによる検知圧力に基づいて設定するため、第2タンク20内の圧力を意図的に下げることができ、これにより、圧力センサPSによる検知誤差を抑制することができる。なお、前記実施形態1のように、第1タンク10と第2タンク20との差圧を利用して、第2タンク20に材料ガスを導入する場合にも、第2タンク20内の圧力を圧力センサPSによる検知圧力に基づき、第1開閉バルブ30を閉じて設定することもでき、第2タンク20内の圧力を蒸気圧よりも意図的に下げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明によれば、材料ガスの種類によって校正を実施する必要がなく、校正データがない材料ガスであっても正確に流量を制御できる。