(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】エチレンアミンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 209/16 20060101AFI20220715BHJP
C07C 211/10 20060101ALI20220715BHJP
C07C 211/14 20060101ALI20220715BHJP
C07C 213/02 20060101ALI20220715BHJP
C07C 215/08 20060101ALI20220715BHJP
B01J 37/16 20060101ALI20220715BHJP
B01J 37/03 20060101ALI20220715BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20220715BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20220715BHJP
B01J 23/89 20060101ALI20220715BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220715BHJP
【FI】
C07C209/16
C07C211/10
C07C211/14
C07C213/02
C07C215/08
B01J37/16
B01J37/03 B
B01J37/03 Z
B01J37/02 101Z
B01J37/02 101D
B01J37/08
B01J23/89 Z
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2019567575
(86)(22)【出願日】2018-05-24
(86)【国際出願番号】 EP2018063591
(87)【国際公開番号】W WO2018224316
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-05-24
(32)【優先日】2017-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ハイデマン
(72)【発明者】
【氏名】バーバラ ベッカー
(72)【発明者】
【氏名】エヴァ コッホ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン-ペーター メルダー
(72)【発明者】
【氏名】ヘアマン ルイケン
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-504358(JP,A)
【文献】特開平10-174875(JP,A)
【文献】特表2013-512871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
B01J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Co、RuおよびSnを含むアミノ化触媒の存在下でエチレングリコールおよび/またはモノエタノールアミンをアンモニアと反応させることにより、液相でアルカノールアミンおよび/またはエチレンアミンを製造する方法
であって、
前記アミノ化触媒が、触媒前駆体を還元することにより得られ、
前記触媒前駆体を、沈殿適用または共沈により製造し、更なる工程で浸漬することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記触媒前駆体が、
RuOとして計算される、Ruの触媒活性成分0.01~20重量%、
CoOとして計算される、Coの触媒活性成分1~50重量%および
SnOとして計算される、Snの触媒活性成分0.1~5重量%
を含むことを特徴とする、請求項
1記載の方法。
【請求項3】
前記触媒前駆体が、Cu、Ni、ZrおよびAlからなる群から選択される1つ以上の触媒添加元素を含むことを特徴とする、請求項
1または2記載の方法。
【請求項4】
前記触媒前駆体が、
(i)SnOとして計算される、Snの触媒活性成分0.2~5重量%、
(ii)CoOとして計算される、Coの触媒活性成分1~35重量%、
(iii)Al
2O
3および/またはZrO
2として計算される、Alおよび/またはZrの触媒活性成分10~80重量%、
(iv)CuOおよび/またはNiOとして計算される、Cuの触媒活性成分1~35重量%および/またはNiの触媒活性成分1~35重量%ならびに
(v)RuOとして計算される、Ruの触媒活性成分0.01~20重量%
を含むことを特徴とする、請求項
3記載の方法。
【請求項5】
前記触媒前駆体が担体材料を含むことを特徴とする、請求項1から
4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記担体材料が、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムまたはそれらの混合物であることを特徴とする、請求項
5記載の方法。
【請求項7】
前記担体材料の粒子のメジアン径d
50が1~500μmの範囲にあることを特徴とする、請求項
6記載の方法。
【請求項8】
前記活性金属Ru、CoおよびSnの一部のみを含む触媒前駆体を、共沈または沈殿適用により製造し、欠如している活性金属または欠如している活性金属の部分を、その後の浸漬工程で前記触媒前駆体に適用することを特徴とする、請求項
1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記活性金属CoおよびSnを含む触媒前駆体を最初に製造し、更なる浸漬工程で前記活性金属CoおよびRuと接触させることを特徴とする、請求項
8記載の方法。
【請求項10】
CoおよびSnの可溶性化合物の沈殿適用により触媒前駆体を担体材料上に製造し、このようにして得られた触媒前駆体を浸漬工程でRuの可溶性化合物およびCoの可溶性化合物と接触させることを特徴とする、請求項
9記載の方法。
【請求項11】
硝酸Snおよび硝酸Coを錯化剤の存在下で担体材料上に沈殿させ、このようにして得られた触媒前駆体を浸漬工程でRuの可溶性化合物およびCoの可溶性化合物と接触させることを特徴とする、請求項
10記載の方法。
【請求項12】
前記触媒前駆体を還元焼成することを特徴とする、請求項1から
11までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカノールアミンおよびエチレンアミン、特にエチレンジアミンの製造方法に関する。
【0002】
一般に、エチレンジアミン(EDA)の工業規模の製造には2つの方法が使用される。
【0003】
まず、EDAは、1,2-ジクロロエタンをアンモニアと反応させてHClの脱離下に製造することができる(EDC法)。EDAを製造するための更なる工業規模の方法は、アミノ化触媒の存在下でのモノエタノールアミン(MEA)とアンモニアとの反応である(MEA法)。
【0004】
これらの確立された方法の代替案として、EDAはモノエチレングリコール(MEG)とアンモニアとの反応によっても製造することができる。
【0005】
このような方法にはさまざまな利点がある。1つの利点は、MEAと比較してMEGの可用性が高いことである。
【0006】
MEAは、エチレンオキシド(EO)とアンモニアの反応により工業規模で製造される。一般に形成されるのは、MEAのほかに、ジエタノールアミン(DEOA)およびトリエタノールアミン(TEOA)などのより高級なエタノールアミンも含む反応混合物である。これらの副生成物は、別個の蒸留工程によりMEAから分離されなければならない。エチレンオキシドは可燃性の高いガスで、空気と爆発性の混合物を形成する可能性がある。EOの管理は、それに応じて複雑である。したがって、MEAの製造には、下流の精留を伴う技術的に複雑なEOプラントが必要である。
【0007】
対照的に、MEGは、石油化学原料をベースにしても、再生可能な原料をベースにしても製造することができる。石油化学的手段により、MEGは水との反応によりEOから同様に製造される。EOとアンモニアとの反応の場合と同様に、EOと水との反応の場合、すでに形成されたMEGがEOと反応してジエチレングリコールおよびトリエチレングリコールなどの副生成物を生成するのを防ぐことはできない。MEGの選択率は約90%であるため、一般に70~80%であるMEAの選択率よりも明らかに高い。しかしながら、Shellのオメガプロセスにより、MEGの選択率は約99%に再び明らかに向上させることができた。オメガプロセスでは、EOはCO2と反応して炭酸エチレンを生成し、これは2つ目の工程で選択的に加水分解されてMEGになる。
【0008】
MEGの製造は、たとえば、メタノールを酸化的カルボニル化してシュウ酸ジメチルを生成し、引き続きシュウ酸ジメチルを水素化することによる合成ガス経路を介して行うこともできる。したがって、MEGの製造のための更なる石油化学原料として、天然ガスまたは石炭も考慮に入れられる。
【0009】
あるいはMEGは、エタノールへの発酵、引き続くエテンへの脱水、その後の酸素との反応によるエチレンオキシドの生成により、トウモロコシまたはサトウキビなどの再生可能な原料からも製造することができる。
【0010】
多くの製造バリエーションがあるため、MEGの可用性は一般的に高く、一般に原料コストにプラスの効果がある。
【0011】
先行技術には、EDAを生成するためのMEGとアンモニアとの反応は、液相でも気相でも行えることが開示されている。
【0012】
気相でのMEGのアミノ化は、中国特許第102190588号明細書および中国特許第102233272号明細書の2つの中国出願に開示されている。
【0013】
たとえば、中国特許第102190588号明細書は、Cu含有触媒の存在下でのMEGとアンモニアとの一段階の反応について記載している。この記載によれば、反応圧力は3~30barの範囲にある。反応温度は150~350℃の範囲にある。
【0014】
中国特許第102233272号明細書の出願には、主成分としてCuおよびNiならびに副成分としてZr、Zn、Al、Ti、MnおよびCeを含む触媒上での気相でのMEGとアンモニアとの反応が開示されている。しかしながら、得られた反応混合物の組成は開示されていなかった。
【0015】
気相での反応の代替案として、MEGとアンモニアおよび水素との反応は液相でも行うことができる。しかしながら、気相および液相での触媒の反応挙動には、一般にかなりの違いがあるため、気相でのMEGの反応挙動から液相でのMEGの反応挙動を推論することは一般的に許容されない。
【0016】
液相でのMEGの金属触媒アミノ化の概要は、Carsten Wolfgang Ihmelsの卒業論文「Reaktionskinetische Untersuchungen zur metallkatalysierten Aminierung von Ethylenglykol in der fluessigen Phase」に示されている(“液相でのエチレングリコールの金属触媒アミノ化の反応速度論の研究”,Diplom thesis from the Carl von Ossietzky University of Oldenburg dated 03.17.2000).Ihmelsは、MEGのアミノ化に際して生じる可能性のある多数の後続反応および副反応、たとえば、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンの形成、不均化、ニトリル形成、カルボニル縮合およびフラグメンテーション反応について記載している。二価アルコールの場合の縮合および不均化は、最終的に、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)などのオリゴマーおよびポリマーの形成にもつながる可能性がある。更なる重要な副反応は環化である。たとえば、ジエタノールアミンまたはDETAはさらに反応してピペラジン(PIP)を生成する可能性がある。より高い温度では、環化に続く脱水素化が促進され、芳香族化合物が生成される。したがって、MEGとアンモニアとの反応により、幅広い生成物スペクトルが得られ、生成物スペクトルにおける一部の生成物は、他の生成物よりも商業的関心が高い。たとえば、EDA、DETAおよびTETAの商業的需要は、PIPまたはアミノエチルエタノールアミン(AEEA)の商業的需要よりも高い。したがって、MEGとアンモニアとの反応に関する多くの研究の目的は、有利な生成物スペクトルをもたらす触媒および反応条件を見つけ出すことであった。
【0017】
Ihmels自身は、コバルト/二酸化ケイ素担体触媒上でのMEGの反応を研究していた。所望の目的生成物であるMEAおよびEDAを得るためのアミノ化には成功しなかった。代わりに、高分子反応生成物が形成された。穏やかな条件下で、MEGの反応が不完全なままであるため、目的生成物であるMEAおよびEDAは低い収率で得られていた。主たる生成物はオリゴマー化合物であった。
【0018】
米国特許第4,111,840号明細書は、Ni/Re担持触媒上で500~5000psig(約34~340bar)の圧力でのMEGとアンモニアおよび水素との反応を開示している。60m2/gの表面積を有するシリカ/アルミナ担体触媒は、150m2/gの比表面積を有するシリカ/アルミナ担体触媒よりも優れた結果をもたらした。
【0019】
米国特許第3,137,730号明細書には、Cu/Ni触媒上で200~300℃の温度および1000psig(約69bar)を超える圧力にて液相でのMEGとアンモニアとの反応が開示されている。
【0020】
西独国特許第1172268号明細書は、Cu、Ag、Mn、Fe、NiおよびCoの金属の少なくとも1つを含む触媒上でのエチレングリコールの反応を開示している。1つの実施例では、MEGが、Co触媒上で水素の存在下に180℃および300barの圧力でアンモニアと反応させられていた。
【0021】
国際公開第2007/093514号には、EDAを製造するための二段階のプロセスが開示されており、1つ目のプロセス段階では、アミノ化は、最大40%のMEA変換率までヒドロアミノ化触媒上で実施され、2つ目のプロセス段階では、小さな幾何学的形状を有するRu/Co担持触媒成形体が用いられ、この2つ目の段階は、1つ目のプロセス段階よりも少なくとも10℃高い温度で実施される。
【0022】
国際公開第2013072289号は、Al、Cu、NiおよびCoのほかに元素Snを含む触媒上でのアルコールと窒素含有化合物との反応を開示している。好ましいアルコールとして、エチレングリコールおよびモノエタノールアミンが挙げられている。
【0023】
Snを含むアルコールのアミノ化用触媒が、同様に国際公開第2011067200号に開示されている。そこに記載されている触媒は、Snのほかに元素Co、Ni、AlおよびCuも含む。
【0024】
アルコールのアミノ化用の更なる触媒は、国際公開第200908051号、国際公開第2009080508号、国際公開第200006749号および国際公開第20008006750号に開示されている。これらの触媒は、ZrおよびNiのほかにCu、Sn、Coおよび/またはFeも含む。更なる構成成分は、V、Nb、S、O、La、B、W、Pb、Sb、BiおよびInなどの元素である。
【0025】
国際公開第9/38226号は、Re、Ni、Co、B、Cuおよび/またはRuを含むアルコールのアミノ化用触媒を開示している。1つの実施例では、SiO2からなる担体にNH4ReO4、硝酸Ni、H3BO3、硝酸Coおよび硝酸Cuの溶液が浸漬され、引き続き焼成される。更なる浸漬工程では、焼成および含浸された担体にRu塩化物が浸漬される。
【0026】
米国特許第4,855,505号明細書では、Niおよび/またはCoならびにRuを含む触媒の存在下でのMEGおよびMEAのアミノ化が行われる。この場合、Ni酸化物および/またはCo酸化物を含む触媒前駆体が、Ruハロゲン化物、たとえばRu塩化物と接触させられ、引き続き水素流中で還元される。
【0027】
欧州特許出願公開第0839575号明細書は、多孔質金属酸化物担体上にCo、Niおよびそれらの混合物ならびにRuを含む触媒を開示している。触媒の製造は、金属を担体に含浸し、含浸担体を乾燥および焼成し、水素流中で焼成担体を還元することにより行われる。さらに、担体に任意の順序で金属化合物を含浸してもよいことが開示されている。1つの実施例では、担体は硝酸Ni、硝酸Coおよび硝酸Cuの溶液で最初に含浸され、引き続き焼成され、硝酸Ru水溶液で後浸漬される。
【0028】
本発明の課題は、MEGをMEAおよび/またはEDAに変換する場合に十分な活性および選択性を示す、液相でのMEGのアミノ化用の不均一触媒を開発することであった。
【0029】
特に、有価生成物、すなわち、商業的に非常に重要なエタノールアミンまたはエチレンアミン、特にMEAおよびEDAの形成が促進され、環状エチレンアミン、特にPIP、およびより高級なエタノールアミン、特にAEEAの形成が低く抑えられるべきである。なぜなら、PIPまたはAEEAの商業的需要は、EDAおよびMEAよりも低いためである。
【0030】
特に、NMEDA、NEEDAおよびエチルアミン(EA)などの特定の望ましくない副生成物の濃度も減少されるべきである。NMEDAの揮発性はEDAとほとんど差がないため、両成分を分離するには必ず分離の手間が大いに生まれる。したがって、製造の時点で少量のNMEDAしか形成されなければ有利である。EDAの通常の製造仕様では、EDA中に存在するNMEDAは500ppm未満である必要がある。
【0031】
さらに、触媒は高い活性を有し、良好な空時収率を達成するために高いMEG変換も可能にすべきである。
【0032】
総じて、総選択性、選択性指数、および望ましくない副生成物の形成に関する良好な特性スペクトルが達成されるべきである。
【0033】
本発明の課題は、Co、RuおよびSnを含むアミノ化触媒の存在下でエチレングリコールおよび/またはモノエタノールアミンをアンモニアと反応させることにより、液相でアルカノールアミンおよび/またはエチレンアミンを製造する方法により解決された。
【0034】
驚くべきことに、Co、RuおよびSnの組合せを含むアミノ化触媒上でのMEGとNH3の反応は、高い選択性で進行し、望ましくない副生成物の形成が減少することが確かめられた。さらに、アミノ化触媒はCo、RuおよびSnを含み、MEGの変換に対して高い活性を有し、ひいては変換時に高い空時収率を可能にすることが確かめられた。
【0035】
以下の略語を上記および下記で使用する:
AEEA:アミノエチルエタノールアミン
AEP:アミノエチルピペラジン
DETA:ジエチレントリアミン
EA:エチルアミン
EDA:エチレンジアミン
EO:エチレンオキシド
HEP:ヒドロキシエチルピペラジン
NEEDA:N-エチルエチレンジアミン
NMEDA:N-メチルエチレンジアミン
MEA:モノエタノールアミン
MEG:モノエチレングリコール
PIP:ピペラジン
TEPA:テトラエチレンペンタミン
TETA:トリエチレンテトラミン
【0036】
アミノ化触媒
MEGおよび/またはMEAとNH3との反応によりアルカノールアミンおよびエチレンアミンを製造する本発明の方法は、Sn、CoおよびRuの組合せを含むアミノ化触媒の存在下で行われる。
【0037】
触媒前駆体
アミノ化触媒は、好ましくは触媒前駆体の還元により得られる。
【0038】
活性組成物
使用される触媒前駆体は、活性組成物を含む。
【0039】
触媒前駆体の活性組成物は、活性金属Co、RuおよびSnと、任意に1つ以上の触媒添加元素と、任意に1つ以上の担体材料とを含む。
【0040】
活性金属
本発明の方法で使用される触媒前駆体の活性組成物は、本発明によれば、活性金属Sn、CoおよびRuの組合せを含む。
【0041】
触媒添加元素
本発明の方法で使用される触媒前駆体の活性組成物は、任意に1つ以上の触媒添加元素を含んでもよい。
【0042】
触媒添加元素は、周期表の第1族~第7族、第8族(Ruを除く)、第9族(Coを除く)、第10族~第13族、第14族(Snを除く)および第15族~第17族、元素Pならびに希土類金属から選択される金属または半金属である。
【0043】
好ましい触媒添加元素は、Cu、Ni、Zr、Al、Fe、Pb、Bi、Ce、YおよびMnである。
【0044】
特に好ましい触媒添加元素は、Cu、Ni、Fe、Zr、Al、YおよびMnである。
【0045】
非常に好ましい触媒添加元素は、Cu、Ni、Fe、ZrおよびAlである。
【0046】
非常に好ましい触媒添加元素は、Cu、Ni、ZrおよびAlである。
【0047】
触媒活性成分
触媒前駆体において、活性金属および触媒添加元素は、一般的に、それらの酸素含有化合物の形態で、たとえば、触媒添加元素または活性金属の炭酸塩、酸化物、混合酸化物または水酸化物として存在する。
【0048】
活性金属および触媒添加元素の酸素含有化合物は、以降、触媒活性成分と呼ばれる。
【0049】
しかしながら、「触媒活性成分」という用語は、これらの化合物自体がすでに触媒活性であることを含意するものではない。触媒活性成分は、一般に、触媒前駆体の還元が行われた後に初めて、本発明の反応において触媒活性を有する。
【0050】
一般に、触媒活性成分は、活性金属もしくは触媒添加元素の可溶性化合物または活性金属もしくは触媒添加元素の沈殿析出物から焼成により触媒活性成分に変換され、この変換は、一般に脱水および/または分解により行われる。
【0051】
担体材料
触媒活性組成物は、1つ以上の担体材料をさらに含んでもよい。
【0052】
担体材料は、一般的に、触媒前駆体の製造において固体として用いられ、この固体上に活性金属および/もしくは触媒添加元素の可溶性化合物を沈殿させるか、または活性金属もしくは触媒添加元素の可溶性化合物を浸漬させる触媒添加元素である。一般に、担体材料は、大きい表面積を有する固体である。
【0053】
好ましくは、以下に記載される好ましい形状および幾何学的形状をすでに有する担体材料が使用される(「担体材料および触媒前駆体の形状および幾何学的形状」の項を参照)。
【0054】
触媒活性成分は、たとえば、以下に記載するように、活性金属もしくは触媒添加元素をそれらの難溶性化合物、たとえば、炭酸塩、炭酸水素塩もしくは水酸化物の形態で沈殿適用することによるか、または担体材料を活性金属もしくは触媒添加元素の可溶性化合物に浸漬することにより、担体材料に適用することができる。
【0055】
担体材料として、触媒添加元素の炭素が、たとえば、グラファイト、カーボンブラックおよび/または活性炭の形態で使用され得る。
【0056】
好ましい担体材料は、触媒添加元素のAl、Ti、Zn、ZrおよびSiまたはそれらの混合物の酸化物、たとえば、酸化アルミニウム(ガンマ、デルタ、シータ、アルファ、カッパ、カイまたはそれらの混合物)、二酸化チタン(アナターゼ、ルチル、ブルッカイトまたはそれらの混合物)、酸化亜鉛、二酸化ジルコニウム、二酸化ケイ素(たとえばシリカ、ヒュームドシリカ、シリカゲルまたはケイ酸塩)、アルミノケイ酸塩、鉱物、たとえばハイドロタルサイト、クリソタイルおよびセピオライトである。
【0057】
特に好ましい担体材料は、酸化アルミニウムまたは酸化ジルコニウムまたはそれらの混合物である。
【0058】
特に好ましい実施形態では、担体材料は、50~2000μm、好ましくは100~1000μm、特に好ましくは300~700μmの範囲の粒子のメジアン径d50を有する酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムまたはそれらの混合物である。特に好ましい実施形態では、粒子のメジアン径d50は、1~500μm、好ましくは3~400μm、特に好ましくは5~300μmの範囲にある。好ましい実施例では、粒径の標準偏差は、一般に、メジアン径d50の5~200%、好ましくは10~100%、特に好ましくは20~80%の範囲にある。
【0059】
触媒前駆体の製造
触媒前駆体は、既知の方法、たとえば、沈殿反応(たとえば共沈もしくは沈殿適用)または浸漬により製造することができる。
【0060】
沈殿反応-共沈
触媒前駆体は、活性金属または触媒添加元素の可溶性化合物と沈殿剤との同時沈殿(共沈)により製造することができる。
【0061】
このために、一般に、液体中での対応する活性金属の1つ以上の可溶性化合物と、場合により触媒添加元素の1つ以上の可溶性化合物とが、沈殿完了まで、加熱および撹拌しながら沈殿剤と混合される。
【0062】
一般に、液体として水が使用される。
【0063】
活性金属の可溶性化合物として、通常、対応する金属塩、たとえば、前述の金属の硝酸塩またはニトロシル硝酸塩、酢酸塩、塩化物、硫酸塩、カルボン酸塩、特に酢酸塩または硝酸塩またはニトロシル硝酸塩、特に好ましくは硝酸塩またはニトロシル硝酸塩が考慮に入れられる。
【0064】
触媒添加元素の可溶性化合物として、一般に、触媒添加元素の水溶性化合物、たとえば、水溶性硝酸塩またはニトロシル硝酸塩、塩化物、硫酸塩、カルボン酸塩、特に酢酸塩または硝酸塩またはニトロシル硝酸塩、有利には硝酸塩またはニトロシル硝酸塩が使用される。
【0065】
沈殿反応-沈殿適用
触媒前駆体はさらに、沈殿適用により製造することができる。
【0066】
沈殿適用とは、1つ以上の担体材料を液体に懸濁し、その後に活性金属の可溶性化合物、たとえば活性金属の可溶性金属塩と、任意に触媒添加元素の可溶性化合物とを添加し、次いでこれらを沈殿剤の添加により懸濁担体材料に沈殿させる製造方法を意味する(たとえば、欧州特許出願公開第1106600号明細書、第4頁、およびA.B.Stiles,Catalyst Manufacture,Marcel Dekker,Inc.,1983,第15頁に記載)。
【0067】
活性金属または触媒添加元素の可溶性化合物として、一般に、活性金属または触媒添加元素の水溶性化合物、たとえば、水溶性硝酸塩またはニトロシル硝酸塩、酢酸塩、塩化物、硫酸塩、カルボン酸塩、特に酢酸塩または硝酸塩またはニトロシル硝酸塩、好ましくは硝酸塩またはニトロシル硝酸塩が使用される。
【0068】
沈殿適用で使用される担体材料は、たとえば、細片、粉末または成形体、たとえばストランド、タブレット、球体もしくはリングの形態で用いてもよい。好ましくは、以下に記載される好ましい形状および幾何学的形状をすでに有する担体材料が使用される(「担体材料および触媒前駆体の形状および幾何学的形状」の項を参照)。
【0069】
担体材料が懸濁される液体として、通常、水が使用される。
【0070】
沈殿反応-一般
通常、沈殿反応において、活性金属または触媒添加元素の可溶性化合物は、沈殿剤の添加により難溶性または不溶性の塩基性塩として沈殿させられる。
【0071】
沈殿剤として、好ましくはアルカリ液、特に無機塩基、たとえばアルカリ金属塩基が使用される。沈殿剤の例は、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウムまたは水酸化カリウムである。
【0072】
沈殿剤として、アンモニウム塩、たとえば、ハロゲン化アンモニウム、炭酸アンモニウム、水酸化アンモニウムまたはカルボン酸アンモニウムを用いてもよい。
【0073】
沈殿反応は、たとえば、20~100℃、特に30~90℃、特に50~70℃の温度で実施することができる。
【0074】
沈殿反応で得られる析出物は、一般的に化学的に不均一であり、一般に、使用される金属または半金属の酸化物、酸化物水和物、水酸化物、炭酸塩および/または炭酸水素塩の混合物を含む。析出物の濾過性に関しては、析出物を熟成すると、すなわち、場合により高温条件下または空気を通過させて、沈殿後に一定時間放置すると有利であることが判明し得る。
【0075】
浸漬
触媒前駆体は、担体材料を活性金属または触媒添加元素の可溶性化合物に浸漬することにより製造することもできる(含浸または浸漬)。
【0076】
浸漬に使用される担体材料は、たとえば、細片、粉末または成形体、たとえばストランド、タブレット、球体もしくはリングの形態で用いてもよい。好ましくは、以下に記載される成形体の好ましい形状および幾何学的形状をすでに有する担体材料が使用される(「担体材料および触媒前駆体の形状および幾何学的形状」の項を参照)。
【0077】
上記の担体材料は、たとえば、活性金属または触媒添加元素の塩を1つ以上の浸漬段階に適用することにより、通常の方法(A.B.Stiles,Catalyst Manufacture-Laboratory and Commercial Preparations,Marcel Dekker,New York,1983)に従って浸漬することができる。
【0078】
活性金属または触媒添加元素の塩として、一般に、対応する活性金属または触媒添加元素の水溶性塩、たとえば炭酸塩、硝酸塩またはニトロシル硝酸塩、酢酸塩、カルボン酸塩、特に硝酸塩またはニトロシル硝酸塩、酢酸塩、および好ましくは硝酸塩またはニトロシル硝酸塩が考慮に入れられ、これらは一般に焼成条件下で、対応する酸化物または混合酸化物に少なくとも部分的に変換される。
【0079】
浸漬は、いわゆる「初期湿潤法」に従って行うこともでき、この方法では、担体材料がその吸水能力に応じて浸漬溶液で最大飽和まで湿潤させられるか、または担体材料に浸漬溶液が噴霧される。あるいは上澄み溶液で浸漬を行ってもよい。
【0080】
多段階浸漬プロセスの場合、個々の浸漬工程間で乾燥させ、場合により焼成することが適切である。多段階浸漬が有利に使用されるのは、担体材料を比較的多量の塩と接触させる場合である。
【0081】
複数の活性金属および/または触媒添加元素および/または塩基性元素を担体材料に適用するために、浸漬は、すべての塩と同時に、または連続して個々の塩の任意の順序で行うことができる。
【0082】
さまざまな触媒前駆体製造方法の組合せ
触媒前駆体の製造では、触媒前駆体のさまざまな製造方法を互いに組み合わせることも可能である。
【0083】
そのため、触媒前駆体は、たとえば、共沈または沈殿適用により製造され、更なる工程で浸漬され得る。
【0084】
好ましい実施形態では、活性金属Ru、CoおよびSnの一部のみを含む触媒前駆体は、共沈または沈殿適用により製造され、欠如している活性金属または欠如している活性金属の部分は、その後の浸漬工程で触媒前駆体に適用され得る。
【0085】
触媒製造方法と後浸漬との組合せ
特に好ましい実施形態では、活性金属CoおよびSnを含む触媒前駆体が最初に製造され、これは更なる浸漬工程で活性金属CoおよびRuと接触させられる。
【0086】
特に好ましくは、CoおよびSnの可溶性化合物を担体材料上に沈殿適用または共沈させることにより触媒前駆体が最初に製造され、このようにして得られた触媒前駆体は更なる工程でRuの可溶性化合物およびCoの可溶性化合物と接触させられる。
【0087】
触媒前駆体が接触させられる溶液のRu含有量は、通常、0.1~50重量%、好ましくは1~40重量%、特に好ましくは2~15重量%の範囲にある。
【0088】
触媒前駆体が接触させられる溶液のCo含有量は、通常、0.1~20重量%、好ましくは0.1~5重量%、特に好ましくは0.15~2重量%の範囲にある。
【0089】
触媒前駆体と可溶性Ru化合物または可溶性Co化合物との接触は、一般に、触媒前駆体の酸化焼成または不活性焼成、有利には酸化焼成に続けて、または成形工程が行われる場合には、成形工程後の熱処理に続けて、かつ触媒前駆体の還元前に行われる。
【0090】
触媒前駆体は、同時にまたは連続して可溶性Ru化合物および可溶性Co化合物と接触させてよい。
【0091】
好ましい実施形態では、触媒前駆体は、Ruの可溶性化合物とCoの可溶性化合物の両方を含む溶液と接触させられる。
【0092】
更なる好ましい実施形態では、触媒前駆体は、第1段階でRuの可溶性化合物を含む溶液と接触させられ、その後に第2段階でCoの可溶性化合物を含む溶液と接触させられる。
【0093】
更なる好ましい実施形態では、触媒前駆体は、第1段階でCoの可溶性化合物を含む溶液と接触させられ、その後に第2段階でRuの可溶性化合物を含む溶液と接触させられる。
【0094】
多段階浸漬プロセスの場合、個々の浸漬工程の間で、触媒前駆体は、以下に記載されるように浸漬溶液から分離され、乾燥され、場合により焼成され得る。
【0095】
2回以上の浸漬工程で可溶性Ru化合物と可溶性Co化合物との接触が行われる場合、1回目と2回目の浸漬の間に乾燥工程後の焼成を行わずに、1回目の浸漬工程の乾燥工程の直後に、2回目の浸漬を行うことが好ましい。
【0096】
最後の乾燥工程に続けて、触媒前駆体は一般に焼成され、この場合、特に好ましい実施形態では、焼成は還元焼成として実行され、還元焼成された触媒前駆体は、それに続けて、以下に記載されるように不動態化される。
【0097】
沈殿適用と後浸漬との組合せ
特に好ましい実施形態では、活性金属CoおよびSnを含む触媒前駆体は、担体材料への沈殿適用により製造され、更なる含浸工程では、同時にまたは連続してCoおよびRuと接触させられる。
【0098】
非常に好ましくは、CoおよびSnの可溶性化合物は、微細に分散された担体材料上に沈殿適用され、この場合、可溶性化合物は硝酸Snであり、沈殿適用は錯化剤の存在下で行われる。
【0099】
Coの可溶性化合物は、有利には硝酸Coである。
【0100】
沈殿適用は、さらに好ましくは、触媒添加元素の少なくとも1つの更なる可溶性化合物、有利にはCuおよび/またはNiの可溶性化合物の存在下で行われる。さらに好ましくは、触媒添加元素は、同様にそれらの硝酸塩またはニトロシル硝酸塩の形態でも使用される。
【0101】
錯化剤は、好ましくは、グリコール酸、乳酸、ヒドロアクリル酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、リンゴ酸、マンデル酸、クエン酸、糖酸、タルトロン酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、グリシン、馬尿酸、EDTA、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンからなる群から選択される。
【0102】
担体材料は、好ましくは、酸化アルミニウムまたは酸化ジルコニウムまたはそれらの混合物である。
【0103】
使用される担体材料の粒子のメジアン径d50は、好ましくは、1~500μm、好ましくは3~400μm、特に好ましくは5~300μmの範囲にある。
【0104】
粒径の標準偏差は、一般に、メジアン径d50の5~200%、好ましくは10~100%、特に好ましくは20~80%の範囲にある。
【0105】
沈殿適用に続けて、触媒前駆体は、一般に、以下に記載されるように、沈殿適用が行われた溶液から触媒前駆体を分離し、洗浄し、乾燥させ、焼成し、場合により成形工程で所望の形状に変えることにより後処理される。
【0106】
好ましくは、焼成後に、触媒前駆体を加工して成形体、特にタブレットを得る成形工程が行われる。
【0107】
タブレットの高さは、好ましくは1~10mmの範囲にあり、特に好ましくは1.5~3mmの範囲にある。タブレットの高さh:タブレットの直径Dの比は、好ましくは1:1~1:5、特に好ましくは1:1~2.5、非常に好ましくは1:1~1:2である。
【0108】
成形工程に続けて、上記のように、触媒前駆体とRuの可溶性化合物およびCoの可溶性化合物との接触が行われる。
【0109】
しかしながら、焼成後に成形工程を行わず、沈殿適用後に得られた触媒前駆体を、上記のように、成形工程なしでRuの可溶性化合物およびCoの可溶性化合物と接触させることも可能である。
【0110】
RuおよびCoとの接触後、触媒前駆体は、好ましくは上記のように分離および乾燥される。
【0111】
特に好ましくは、乾燥に続けて、好ましくは上記のように実施される還元焼成が行われる。
【0112】
触媒前駆体の後処理
これらの浸漬プロセスに従って得られた浸漬触媒前駆体または沈殿プロセスに従って得られた析出物は、通常、浸漬または沈殿が実施された液体からそれらを分離し、洗浄し、乾燥させ、焼成し、場合によりコンディショニングし、成形プロセスに供することにより加工される。
【0113】
分離および洗浄
浸漬触媒前駆体または沈殿プロセスに従って得られた析出物は、一般に、触媒前駆体の製造が行われた液体から分離および洗浄される。
【0114】
触媒前駆体を分離および洗浄する方法は、たとえば、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry(DOI:10.1002/14356007.o05_o02)の記事「Heterogenous Catalysis and Solid Catalysts,2.Development and Types of Solid Catalysts」から知られている。
【0115】
洗浄液として、一般に、分離された触媒前駆体は難溶性を示すが、触媒に付着する不純物、たとえば沈殿剤に対しては良好な溶媒である液体が使用される。好ましい洗浄液は水である。
【0116】
バッチ製造では、一般に、分離はフレームフィルタープレスで行われる。この場合、洗浄液を濾過方向とは逆方向に流すことにより、洗浄液によるフィルター残留物の洗浄を行うことができる。
【0117】
連続的な製造では、一般に、回転ドラム真空フィルターで分離が行われる。フィルター残留物の洗浄は、通常、フィルター残留物に洗浄液を噴霧することにより行われる。
【0118】
触媒前駆体は、遠心分離により分離することもできる。一般に、ここでの洗浄は、遠心分離時に洗浄液を添加することにより行われる。
【0119】
乾燥
分離された触媒前駆体は、一般に乾燥される。
【0120】
触媒前駆体の乾燥方法は、たとえば、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry(DOI:10.1002/14356007.o05_o02)の記事「Heterogenous Catalysis and Solid Catalysts,2.Development and Types of Solid Catalysts」から知られている。
【0121】
この場合、乾燥は、好ましくは60~200℃、特に80~160℃、特に好ましくは100~140℃の範囲の温度で行われ、この場合、乾燥時間は、好ましくは6時間以上、たとえば6~24時間の範囲にある。しかしながら、乾燥すべき材料の含水量に応じて、より短い乾燥時間、たとえば約1、2、3、4または5時間なども可能である。
【0122】
分離および洗浄された触媒前駆体は、たとえば、チャンバーオーブン、ドラム乾燥機、回転炉またはベルト乾燥機で乾燥させることができる。
【0123】
触媒前駆体の乾燥は、触媒前駆体の懸濁液を噴霧乾燥することにより行うこともできる。
【0124】
焼成
一般に、触媒前駆体は乾燥に続けて焼成される。焼成中に、活性金属または触媒添加元素の熱不安定な化合物、たとえば炭酸塩、炭酸水素塩、硝酸塩またはニトロシル硝酸塩、塩化物、カルボン酸塩、酸化物水和物または水酸化物が、対応する酸化物および/または混合酸化物に少なくとも部分的に変換される。
【0125】
焼成は、一般に250~1200℃、好ましくは300~1100℃、特に500~1000℃の範囲の温度で行われる。
【0126】
焼成は、任意の適切なガス雰囲気下で行うことができる。
【0127】
好ましい実施形態では、焼成は、いわゆる不活性焼成として実施される。不活性焼成では、酸化性ガス、特に酸素が実質的に存在せず、還元性ガス、特に水素が実質的に存在しない状態で、不活性ガスの存在下に焼成が行われる。好ましい不活性ガスは、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、二酸化炭素またはそれらの混合物、特に窒素またはアルゴンである。
【0128】
好ましい実施形態では、焼成は、酸化性ガスの存在下で、いわゆる酸化焼成として行われる。酸化性ガスとして、有利には酸素が用いられ、この場合、特に空気または空気混合物、たとえば希薄空気が好ましい。
【0129】
好ましい実施形態では、空気が窒素と一緒に用いられ、この場合、空気の体積割合は、好ましくは20~100体積%、特に好ましくは35~90体積%、特に好ましくは30~70体積%の範囲である。
【0130】
非常に好ましい実施形態では、焼成は、いわゆる還元焼成として行われる。この場合、焼成は、還元性ガス、特に水素の存在下で実施される。
【0131】
さらに、還元焼成は、不活性ガス、有利には窒素、ヘリウムまたはアルゴンの存在下で実施することができ、この場合、不活性ガスとの混合物中の還元性ガス、特に水素の体積割合は、有利には20~100重量%の範囲、特に好ましくは35~90重量%の範囲、非常に好ましくは30~70重量%の範囲にある。
【0132】
さらに、不活性ガスとの混合物中の水素の割合を、たとえば0体積%の水素から50体積%の水素まで漸進的または段階的に高めることが好ましい。たとえば、加熱時に、水素の体積割合は0体積%であってよく、焼成温度に達した後、1つ以上の段階で、または漸進的に50体積%まで高めてよい。
【0133】
還元焼成時の温度は、有利には100~400℃、特に好ましくは150~350℃、さらに好ましくは200~300℃である。
【0134】
還元焼成に続けて、一般に、たとえば以下に記載されるような不動態化が行われる。
【0135】
焼成は、一般に、マッフル炉、回転炉および/またはベルト焼成炉で実施され、この場合、焼成時間は、好ましくは1時間以上、特に好ましくは1~24時間の範囲、非常に好ましくは2~12時間の範囲にある。
【0136】
担体材料または触媒前駆体の形状および幾何学的形状
触媒前駆体または担体材料は、好ましくは、粉末もしくは細片の形態で、または成形体の形態で使用される。
【0137】
触媒前駆体が粉末または細片の形態で使用される場合、粒子のメジアン径d50は、一般に50~2000μm、好ましくは100~1000μm、特に好ましくは300~700μmの範囲にある。粒径の標準偏差は、一般に、メジアン径d50の5~200%、好ましくは10~100%、特に好ましくは20~80%の範囲にある。
【0138】
特に好ましい実施形態では、使用される粉末または細片の粒子のメジアン径d50は、1~500μm、好ましくは3~400μm、特に好ましくは5~300μmの範囲にある。粒径の標準偏差は、一般に、メジアン径d50の5~200%、好ましくは10~100%、特に好ましくは20~80%の範囲にある。
【0139】
しかしながら、担体材料または触媒前駆体は、好ましくは、本発明の方法において成形体の形態でも使用される。
【0140】
成形体として、任意の幾何学的形状または形状を有する成形体が適している。好ましい形状は、タブレット、リング、シリンダー、星形押出物、車輪または球体であり、タブレット、リング、シリンダー、球体または星形押出物が特に好ましい。シリンダー形状が非常に好ましい。
【0141】
球体の場合、球体形状の直径は、好ましくは20mm以下、特に好ましくは10mm以下、非常に好ましくは5mm以下、特に好ましくは3mm以下である。
【0142】
好ましい実施形態では、球体の場合、球体形状の直径は、好ましくは0.1~20mm、特に好ましくは0.5~10mm、非常に好ましくは1~5mm、特に好ましくは1.5~3mmの範囲にある。
【0143】
ストランドまたはシリンダーの場合、長さ:直径の比は、好ましくは1:1~20:1、特に好ましくは1:1~14:1、非常に好ましくは1:1~10:1、特に好ましくは1:2~6:1の範囲にある。
【0144】
ストランドまたはシリンダーの直径は、好ましくは20mm以下、特に好ましくは15mm以下、非常に好ましくは10mm以下、特に好ましくは3mm以下である。
【0145】
好ましい実施形態では、ストランドまたはシリンダーの直径は、有利には0.5~20mmの範囲、特に好ましくは1~15mmの範囲、非常に好ましくは1.5~10mmの範囲にある。
【0146】
タブレットの場合、タブレットの高さhは、有利には20mm以下、特に好ましくは10mm以下、非常に好ましくは5mm以下、特に好ましくは3mm以下である。
【0147】
好ましい実施形態では、タブレットの高さhは、好ましくは0.1~20mmの範囲、特に好ましくは0.5~15mmの範囲、非常に好ましくは1~10mmの範囲、特に好ましくは1.5~3mmの範囲にある。
【0148】
タブレットの高さh(または厚さ):タブレットの直径Dの比は、好ましくは1:1~1:5、特に好ましくは1:1~1:2.5、非常に好ましくは1:1~1:2である。
【0149】
使用される成形体は、好ましくは、0.1~3kg/l、好ましくは1.0~2.5kg/l、特に好ましくは1.2~1.8kg/lの範囲の嵩密度(EN ISO 6に準拠)を有する。
【0150】
成形
浸漬または沈殿適用による触媒前駆体の製造では、好ましくは、上記の好ましい形状および幾何学的形状をすでに有する担体材料が使用される。
【0151】
上記の好ましい形状を有しない担体材料または触媒前駆体は、成形工程に供することができる。
【0152】
成形の過程で、担体材料または触媒前駆体は、一般に、それらを粉砕により特定の粒子サイズに調整することによりコンディショニングされる。
【0153】
粉砕後、コンディショニングされた担体材料またはコンディショニングされた触媒前駆体は、成形助剤、たとえばグラファイト、バインダー、細孔形成剤およびペースト剤などの更なる添加剤と混合し、さらに加工して成形体を得ることができる。有利には、触媒前駆体は、成形助剤としてグラファイトのみと混合され、成形時に更なる添加剤は添加されない。
【0154】
成形の標準的なプロセスは、たとえば、Ullmann[Ullmann’s Encyclopedia Electronic Release 2000,chapter:“Catalysis and Catalysts”,第28頁~第32頁]、およびErtl et al.[Ertl,Knoezinger,Weitkamp,Handbook of Heterogeneous Catalysis,VCH Weinheim,1997,第98頁以降]に記載されている。
【0155】
成形の標準的なプロセスは、たとえば、押出、タブレット化、すなわち機械的プレス、またはペレット化、すなわち円形および/または回転運動による圧縮である。
【0156】
成形プロセスにより、上記の幾何学的形状を有する成形体を得ることができる。
【0157】
あるいは成形は、触媒前駆体の懸濁液を噴霧乾燥することにより行うこともできる。
【0158】
一般に、コンディショニングまたは成形後に熱処理が行われる。熱処理時の温度は、通常、焼成時の温度に対応する。
【0159】
触媒前駆体の組成
活性組成物の割合
方法で使用される触媒前駆体は、触媒前駆体が成形体として使用される場合、触媒活性組成物と、場合により成形助剤(たとえばグラファイトまたはステアリン酸など)とのみからなる触媒前駆体の形態で使用されることが好ましい。
【0160】
触媒前駆体の総質量に基づく触媒活性組成物の割合は、通常、70~100重量%、好ましくは80~100重量%、さらに好ましくは90~100重量%、さらに一層好ましくは95~100重量%、特に好ましくは97重量%~100重量%である。
【0161】
触媒前駆体の組成の測定
触媒前駆体の組成は、元素分析の既知の方法、たとえば原子吸光分析(AAS)、原子発光分析(AES)、蛍光X線分析(XFA)またはICP-OES(誘導結合プラズマ発光分析)によって測定することができる。
【0162】
本発明の文脈における触媒活性成分の濃度値(重量%)は、対応する酸化物として報告される。
【0163】
第1族(アルカリ金属)の触媒添加元素は、M2O、たとえばNa2Oとして計算される。
【0164】
第2族(アルカリ土類金属)の触媒添加元素は、MO、たとえばMgOまたはCaOとして計算される。
【0165】
第13族(ホウ素族)の触媒添加元素は、M2O3、たとえばB2O3またはAl2O3として計算される。
【0166】
炭素族(第14族)では、SiはSiO2として、GeはGeOとして、SnはSnOとして、PbはPbOとして計算される。
【0167】
窒素族(第15族)では、PはH3PO4として、AsはAs2O3として、SbはSb2O3として、BiはBi2O3として計算される。
【0168】
カルコゲン族(第16族)では、SeはSeO2として、TeはTeO2として計算される。
【0169】
スカンジウム族(第3族)では、ScはSc2O3として、YはY2O3として、LaはLa2O3として計算される。
【0170】
チタン族(第4族)では、TiはTiO2として、ZrはZrO2として、HfはHfO2として計算される。
【0171】
バナジウム族(第5族)では、VはV2O5として、NbはNb2O5として、TaはTa2O5として計算される。
【0172】
クロム族(第6族)では、CrはCrO2として、MoはMoO3として、WはWO2として計算される。
【0173】
マンガン族(第7族)では、MnはMnO2として、ReはRe2O7として計算される。
【0174】
鉄族(第8族)では、FeはFe2O3として、RuはRuO2として、OsはOsO4として計算される。
【0175】
コバルト族(第9族)では、CoはCoOとして、RhはRhO2として、IrはIrO2として計算される。
【0176】
ニッケル族(第10族)では、NiはNiOとして、PdはPdOとして、PtはPtOとして計算される。
【0177】
銅族(第11族)では、CuはCuOとして、AgはAgOとして、AuはAu2O3として計算される。
【0178】
亜鉛族(第12族)では、ZnはZnOとして、CdはCdOとして、HgはHgOとして計算される。
【0179】
触媒前駆体の触媒活性成分の濃度値(重量%)は、特に明記しない限り、触媒前駆体の最後の焼成後または還元焼成として最後の焼成が実行されたときの、還元焼成前の最後の乾燥工程後の触媒前駆体の総質量にそれぞれ基づいている。
【0180】
製造方法に応じた触媒前駆体の組成
触媒前駆体の組成は、一般的に、以下に記載される製造方法(共沈もしくは沈殿適用または浸漬)に依存する。
【0181】
共沈により製造される触媒前駆体は、担体材料を一切含まない。以下に記載されるように、沈殿が担体材料の存在下で行われる場合、沈殿は、本発明の文脈では沈殿適用と呼ばれる。
【0182】
共沈により製造される触媒前駆体は、活性組成物中に活性金属Ru、CoおよびSnを含む。
【0183】
共沈により製造される触媒前駆体の場合、活性金属の触媒活性成分の質量は、触媒前駆体の総質量に基づいて、好ましくは1~70重量%、特に好ましくは5~60重量%、非常に好ましくは10~50重量%の範囲にあり、触媒活性成分は酸化物として計算される。
【0184】
共沈により製造される触媒前駆体は、好ましくは1~5つ、特に好ましくは1~4つ、特に好ましくは1~3つの異なる触媒添加元素を含む。
【0185】
活性組成物中に存在する触媒添加元素の数に関係なく、共沈により製造される触媒前駆体の場合、触媒添加元素の触媒活性成分の質量は、触媒前駆体の総質量に基づいて、好ましくは1~95重量%、特に好ましくは10~90重量%、非常に好ましくは20~85重量%、特に好ましくは40~80重量%の範囲にあり、触媒活性成分は酸化物として計算される。
【0186】
沈殿適用により製造される触媒前駆体は、一般に5~95重量%、好ましくは10~75重量%、特に好ましくは15~50重量%の担体材料を含む。
【0187】
共沈により製造される触媒前駆体は、活性組成物中に活性金属Ru、CoおよびSnを含む。
【0188】
沈殿適用により製造される触媒前駆体の場合、活性金属の触媒活性成分の質量は、触媒前駆体の総質量に基づいて、好ましくは1~80重量%、特に好ましくは5~70重量%、非常に好ましくは10~60重量%の範囲にあり、触媒活性成分は酸化物として計算される。
【0189】
沈殿適用により製造される触媒前駆体は、好ましくは1~5つ、特に好ましくは1~4つ、特に好ましくは1~3つの異なる触媒添加元素を含む。
【0190】
活性組成物中に存在する触媒添加元素の数に関係なく、沈殿適用により製造される触媒前駆体の場合、触媒添加元素の触媒活性成分の質量は、触媒前駆体の総質量に基づいて、好ましくは1~80重量%、特に好ましくは5~70重量%、非常に好ましくは10~60重量%の範囲にあり、触媒活性成分は酸化物として計算される。
【0191】
浸漬により製造される触媒前駆体は、一般に50~99重量%、好ましくは60~98重量%、特に好ましくは70~97重量%の担体材料を含む。
【0192】
浸漬により製造される触媒前駆体は、活性組成物中に活性金属Ru、CoおよびSnを含む。
【0193】
浸漬により製造される触媒前駆体の場合、活性金属の触媒活性成分の質量は、触媒前駆体の総質量に基づいて、好ましくは1~50重量%、特に好ましくは2~40重量%、非常に好ましくは3~30重量%の範囲にあり、触媒活性成分は酸化物として計算される。
【0194】
浸漬により製造される触媒前駆体は、好ましくは1~5つ、特に好ましくは1~4つ、特に好ましくは1~3つの異なる触媒添加元素を含む。
【0195】
活性組成物中に存在する触媒添加元素の数に関係なく、浸漬により製造される触媒前駆体の場合、触媒添加元素の触媒活性成分の質量は、触媒前駆体の総質量に基づいて、好ましくは1~50重量%、特に好ましくは2~40重量%、非常に好ましくは3~30重量%の範囲にあり、触媒活性成分は酸化物として計算される。
【0196】
好ましい触媒前駆体組成物
好ましい実施形態では、触媒前駆体は、
RuOとして計算される、Ruの触媒活性成分0.01~20重量%、特に好ましくは0.1~15重量%、特に好ましくは1~10重量%、
CoOとして計算される、Coの触媒活性成分1~50重量%、特に好ましくは10~45重量%、特に好ましくは20~40重量%および
SnOとして計算される、Snの触媒活性成分0.1~5重量%、特に好ましくは0.2~4重量%、特に好ましくは1~3重量%
を含む。
【0197】
特に好ましい実施形態では、触媒前駆体は、
(i)SnOとして計算される、Snの触媒活性成分0.2~5重量%、
(ii)CoOとして計算される、Coの触媒活性成分1~35重量%、
(iii)Al2O3および/またはZrO2としてそれぞれ計算される、Alおよび/またはZrの触媒活性成分10~80重量%、
(iv)CuOおよび/またはNiOとして計算される、Cuの触媒活性成分1~35重量%および/またはNiの触媒活性成分1~35重量%ならびに
(v)RuOとして計算される、Ruの触媒活性成分0.01~20重量%
を含む。
【0198】
特に好ましい実施形態では、触媒前駆体は、
(i)SnOとして計算される、Snの触媒活性成分0.2~5重量%、
(ii)CoOとして計算される、Coの触媒活性成分5~35重量%、
(iii)Al2O3および/またはZrO2としてそれぞれ計算される、Alおよび/またはZrの触媒活性成分15~80重量%、
(iv)CuOとして計算される、Cuの触媒活性成分1~20重量%、
(v)NiOとして計算される、Niの触媒活性成分の5~35重量%ならびに
(vi)RuOとして計算される、Ruの触媒活性成分0.1~20重量%
を含む。
【0199】
好ましくは、上記の組成物は、上記の特に好ましい実施形態に従って、酸化アルミニウムおよび/または酸化ジルコニウムを含む担体材料への沈殿適用により活性金属CoおよびSnを含む触媒前駆体を最初に製造し、この触媒前駆体を、その後の浸漬工程でCoおよびRuの可溶性化合物と接触させることにより得られる。
【0200】
還元
本発明によれば、MEGおよび/またはMEAとアンモニアの反応は、還元された触媒前駆体上で行われる。
【0201】
一般に、触媒前駆体は還元によりその触媒的に活性な形態に変換される。
【0202】
好ましい実施形態では、還元は、最後の焼成工程を上記のように還元焼成として実行することにより行うことができる。還元焼成に続けて、好ましくは、触媒をより管理しやすくするために、還元焼成された触媒の不動態化が行われる。MEGおよび/またはMEAとアンモニアの接触前に、不動態化された触媒は、有利には、以下に記載されるように活性化される。
【0203】
最後の焼成工程が不活性焼成または酸化焼成として構成された場合、更なる好ましい実施形態では、最後の焼成工程に続けて、触媒前駆体の別個の還元が行われる。
【0204】
還元剤として、通常、水素または水素含有ガスが使用される。
【0205】
水素は、一般的に技術グレードの純度で使用される。水素は、水素含有ガスの形態でも、すなわち、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴンまたは二酸化炭素などの他の不活性ガスを追加して使用することもできる。好ましい実施形態では、水素は窒素と一緒に用いられ、この場合、水素の体積割合は、好ましくは1~50体積%、特に好ましくは2.5~30体積%、特に好ましくは5~25体積%の範囲である。水素流は、循環ガスとして、場合により新しい水素と混合し、場合により凝縮により水を除去した後に、還元に返送することもできる。
【0206】
還元は、好ましくは、可動式または非可動式の還元炉で実施される。
【0207】
触媒前駆体は、特に好ましくは、触媒前駆体が固定床の形態で配置されている反応器内で還元される。特に好ましくは、触媒前駆体は、その後のMEGおよび/またはMEAとNH3との反応が行われる同じ反応器内で還元される。さらに、流動床反応器内の流動床で触媒前駆体を還元することができる。
【0208】
触媒前駆体は、一般に50~600℃、特に100~500℃、特に好ましくは150~450℃の還元温度で還元される。
【0209】
水素分圧は、一般に1~300bar、特に1~200bar、特に好ましくは1~100barであり、ここと以下での圧力値は、絶対値で測定された圧力に基づいている。
【0210】
還元の継続時間は、一般的に反応器のサイズと形状に依存し、一般に反応器内での著しい温度上昇を回避するのに十分な速度でのみ実施される。これは、反応器の形状とサイズに応じて、数時間~数週間かかることを意味する。
【0211】
還元中、形成された反応の水を除去するために、かつ/または、たとえば反応器をより迅速に加熱できるようにするために、かつ/または還元中に熱をより良好に除去できるようにするために、溶媒を供給してもよい。この場合、溶媒は超臨界形態で供給してもよい。
【0212】
適切な溶媒は、上記の溶媒であり得る。好ましい溶媒は、水;エーテル、たとえばメチルtert-ブチルエーテル、エチルtert-ブチルエーテル、ジオキサンまたはテトラヒドロフランである。水またはテトラヒドロフランが特に好ましい。適切な溶媒として、同様に適切な混合物も考慮に入れられる。
【0213】
このようにして得られた触媒は、還元後に不活性条件下で管理することができる。触媒は、好ましくは、窒素などの不活性ガス下、または不活性液体、たとえばアルコール、水、もしくは触媒が使用される個々の反応の生成物下で管理され、保管され得る。その場合、実際の反応の開始前に、触媒から不活性液体を除去しなければならないことがある。
【0214】
不活性物質下での触媒の保管は、触媒の簡単で安全な管理と保管を可能にする。
【0215】
不動態化
触媒は、還元または還元焼成後、好ましくは、酸素含有ガス流、たとえば空気または空気と窒素との混合物と接触させられる。
【0216】
これにより、不動態化された触媒が得られる。不動態化された触媒は、一般的に保護酸化物層を有する。この保護酸化物層により、たとえば、不動態化された触媒の反応器内への設置が単純化されるように、触媒の管理と保管が簡素化される。
【0217】
不動態化のために、還元焼成または還元工程に続けて、還元された触媒は、酸素含有ガス、好ましくは空気と接触させられる。酸素含有ガスは、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴンまたは二酸化炭素などの不活性ガスを追加して使用することができる。好ましい実施形態では、空気が窒素と一緒に用いられ、この場合、空気の体積割合は、好ましくは1~80体積%、特に好ましくは20~70体積%、特に好ましくは30~60体積%の範囲である。好ましい実施形態では、窒素との混合物中の空気の体積割合は0~約50体積%に徐々に高められる。
【0218】
不動態化は、好ましくは50℃まで、好ましくは45℃まで、非常に好ましくは35℃までの温度で行われる。
【0219】
活性化
不動態化された触媒は、好ましくは、反応物との接触前に、不動態化された触媒を水素または水素含有ガスで処理することにより還元される。活性化の条件は、一般的に、酸化焼成または不活性焼成により得られた触媒前駆体の還元に使用される反応条件に対応する。一般に、活性化により保護不動態化層が除去される。
【0220】
反応物
還元された触媒または活性化アミノ化触媒の存在下でのエチレングリコール(EG)および/またはモノエタノールアミン(MEA)とアンモニア(NH3)との本発明の反応は、本発明によれば液相で行われる。
【0221】
エチレングリコール
エチレングリコールとして、少なくとも98%の純度を有する工業用エチレングリコールが好ましく、少なくとも99%、非常に好ましくは少なくとも99.5%の純度を有するエチレングリコールが非常に好ましい。
【0222】
この方法で使用されるエチレングリコールは、石油化学プロセスから得られるエチレンから製造することができる。たとえば、一般に、エテンが最初の段階でエチレンオキシドに酸化され、その後にエチレンオキシドは水と反応してエチレングリコールを生成する。あるいは得られたエチレンオキシドを、いわゆるオメガプロセスで二酸化炭素と反応させて炭酸エチレンを生成し、炭酸エチレンを引き続き水で加水分解してエチレングリコールを生成することもできる。オメガプロセスは、ジエチレングリコールおよびトリエチレングリコールなどの副生成物がより少ないため、エチレングリコールに対する選択性がより高くなるという点で優れている。
【0223】
あるいはエテンは再生可能な原料から製造することもできる。たとえば、エテンはバイオエタノールからの脱水により形成することができる。
【0224】
エチレングリコールは、合成ガス経路を介して、たとえば、メタノールの酸化的カルボニル化によるシュウ酸ジメチルの生成およびシュウ酸ジメチルの引き続く水素化により製造することもできる。したがって、MEGの製造のための更なる石油化学原料として天然ガスまたは石炭も考慮に入れられる。
【0225】
MEA
本発明の方法では、MEAも用いることができる。
【0226】
上記のように、MEAはエチレンオキシドをアンモニアと反応させることにより製造できる。
【0227】
有利には、MEAは、MEGをアンモニアと反応させることにより、たとえば、MEGをアンモニアと最初に反応させ、EDAのほかに形成されたMEAをEDAから分離し、場合により未変換MEGと一緒に分離されたMEAを本発明の製造方法に返送する本発明の方法により製造することができる。
【0228】
MEAがMEGなしで本発明の方法で使用される場合、MEAは、好ましくは少なくとも97%の純度で、非常に好ましくは少なくとも98%、非常に好ましくは少なくとも99%の純度で使用される。
【0229】
MEAがMEGと一緒に本発明の方法で使用される場合、MEAおよびMEGの質量に基づくMEAの重量割合は、好ましくは0~60重量%、特に好ましくは10~50重量%、非常に好ましくは20~40重量%の範囲にある。
【0230】
アンモニア
本発明によれば、エチレングリコールおよび/またはモノエタノールアミンとアンモニアとの反応が行われる。
【0231】
アンモニアとして、従来の市販のアンモニア、たとえば、98重量%を超えるアンモニア、好ましくは99重量%を超えるアンモニア、好ましくは99.5重量%を超える、特に99.8重量%を超えるアンモニア含有率を有するアンモニアを用いてよい。
【0232】
水素
本発明の方法は、好ましくは水素の存在下で行われる。
【0233】
水素は一般的に技術グレードの純度で使用される。水素は、水素含有ガスの形態でも、すなわち、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴンまたは二酸化炭素などの他の不活性ガスを追加して使用することもできる。水素含有ガスとして、使用される触媒にとっての触媒毒、たとえばCOなどを含まない限り、たとえば改質器オフガス、精製ガスなどを使用することができる。しかしながら、純粋な水素または本質的に純粋な水素、たとえば、99重量%を超える水素含有率、好ましくは99.9重量%を超える水素含有率、特に好ましくは99.99重量%を超える水素含有率、特に99.999重量%を超える水素含有率を有する水素を用いることが好ましい。
【0234】
液相での反応
本発明によれば、エチレングリコールおよび/またはモノエタノールアミンとアンモニアおよびアミノ化触媒との反応は液相で行われる。
【0235】
本発明の文脈において、液相での反応とは、エチレングリコールとモノエタノールアミンの両方が液相に存在し、アミノ化触媒の周りを液体で流れるように、圧力および温度などの反応条件が調整されることを意味する。
【0236】
MEGおよび/またはMEAとアンモニアとの反応は、連続的または不連続的に実施することができる。連続反応が好ましい。
【0237】
反応器
液相での反応に適した反応器は、一般的に管状反応器である。触媒は、管状反応器内の流動床または固定床として配置されていてよい。
【0238】
特に好ましくは、アミノ化触媒が固定床として配置されている管状反応器内でエチレングリコールおよび/またはモノエタノールアミンとNH3との反応が行われる。
【0239】
触媒が固定床として配置されている場合、反応の選択性のために、反応器内の触媒を不活性の不規則充填物と混合し、それらをいわば「希釈」することが有利であり得る。そのような触媒製造物中の不規則充填物の割合は、20~80体積割合、好ましくは30~60体積割合、特に好ましくは40~50体積割合であってよい。
【0240】
あるいは反応は、管束型反応器または単流式プラント内で有利に行われる。単流式プラントの場合、反応が行われる管状反応器は、複数(たとえば2つまたは3つ)の個々の管状反応器の直列接続からなり得る。ここで可能かつ有利な選択肢が、フィード(反応物および/またはアンモニアおよび/またはH2を含む)および/または循環ガスおよび/または下流反応器からの反応器排出部の中間導入である。
【0241】
反応条件
液相で作業する場合、MEGおよび/またはMEAに加えてアンモニアが、一般的に5~30MPa(50~300bar)、好ましくは5~25MPa、特に好ましくは20または15~25MPaの圧力、および一般的に80~350℃、特に100~300℃、好ましくは120~270℃、特に好ましくは130~250℃、特に160~230℃の温度で、通常好ましくは外部から加熱される固定床反応器内にある触媒上に、水素を含めた液相で同時に誘導される。
【0242】
水素分圧は、有利には0.25~20MPa(2.5~200bar)、特に好ましくは0.5~15MPa(5~150bar)、非常に好ましくは1~10MPa(10~100bar)、特に好ましくは2~5MPa(20~50bar)である。
【0243】
送入物
MEおよび/またはMEAとアンモニアは、好ましくは液体形態で反応器に供給され、液体形態でアミノ化触媒と接触させられる。
【0244】
この場合、ダウンフローモードとアップフローモードの両方が可能である。
【0245】
反応容器に供給する前の時点で、反応物を、好ましくは反応温度に加熱することが有利である。
【0246】
アンモニアは、各場合に使用されるMEGおよび/またはMEAに基づいて、0.90~100倍のモル量、特に1.0~20倍のモル量で使用されることが好ましい。
【0247】
触媒負荷量は、一般的に、触媒1kgおよび1時間当たり0.05~5kg、好ましくは0.1~2kg、特に好ましくは0.2~0.6kg(MEG+MEA)の範囲にある。
【0248】
記載されている触媒負荷量の場合、MEGおよび/またはMEAの変換率は、一般に20~75%の範囲、好ましくは30~60%の範囲、非常に好ましくは35~55%の範囲にある。
【0249】
反応の過程で形成された反応の水(各場合に変換されたアルコール基1モル当たり1モル)は、一般的に、変換の程度、反応速度、選択性および触媒寿命に悪影響を及ぼさず、したがって、反応生成物が後処理された時点で、反応生成物から、たとえば蒸留により適切に除去される。
【0250】
排出物
アミノ化反応器からの排出物は、アミノ化反応の生成物、エチレングリコールおよびアンモニアなどの未変換の反応物、ならびに水素および水を含む。
【0251】
アミノ化反応の生成物として、アミノ化反応器からの排出物はさらに、MEGに基づく対応するエタノールアミンおよび/またはエチレンアミンを含む。
【0252】
アミノ化反応器からの排出物は、好ましくはMEAおよび/またはEDAを含む。
【0253】
アミノ化反応の生成物として、反応排出物はさらに、好ましくは、一般式
R-CH2-CH2-NH2
[式中、Rは、式-(NH-CH2-CH2)X-NH2の基であり、xは1~4、好ましくは1~3、非常に好ましくは1~2の範囲の整数である]のより高級な線状エチレンアミンを含む。好ましくは、反応排出物は、DETA、TETAおよびTEPA、非常に好ましくはDETAおよびTETA、特に好ましくはDETAを含む。
【0254】
アミノ化反応の生成物として、アミノ化反応器からの排出物は、式
R-CH2-CH2-OH
[式中、Rは、式-(NH-CH2-CH2)X-NH2の基であり、xは1~4、好ましくは1~3、非常に好ましくは1~2の範囲の整数である]のより高級な線状エタノールアミンも含み得る。
【0255】
より高級な線状エタノールアミンの一例は、AEEAである。
【0256】
アミノ化反応の生成物として、反応排出物は、式
【化1】
[式中、R
1は、式-(CH
2-CH
2-NH)
X-CH
2-CH
2-OHの基であり、xは0~4、好ましくは0~3、特に好ましくは1~2の範囲の整数であり、R
2は、独立してもしくは同時に、Hまたは式-(CH
2-CH
2-NH)
X-CH
2-CH
2-OHの基であり、xは0~4、好ましくは0~3、特に好ましくは1~2の範囲の整数であるか、または式-(CH
2-CH
2-NH)
X-CH
2-CH
2-NH
2の基であり、xは0~4、好ましくは0~3、特に好ましくは1~2の範囲の整数である]の環状エタノールアミンも含み得る。環状エタノールアミンの一例は、ヒドロキシエチルピペラジン(HEP)である。
【0257】
アミノ化反応の生成物として、反応排出物は、一般式
【化2】
[式中、R
1およびR
2は、独立してもしくは同時に、Hまたは式-(CH
2-CH
2-NH)
X-CH
2-CH
2-NH
2の基であってよく、xは0~4、好ましくは0~4、特に好ましくは1~2の範囲の整数である]の環状エチレンアミンも含み得る。
【0258】
反応排出物中に含まれる環状エチレンアミンの例は、ピペラジンおよびAEPIPである。
【0259】
好ましくは、排出物は、1~60重量%のMEA、1~90重量%のEDA、0.1~30重量%のより高級な環状エチレンアミン、たとえばPIPおよびAEPIP、0.1~30重量%のより高級な線状エチレンアミン、たとえばDETA、TETAおよびTEPAを含む。
【0260】
特に好ましくは、排出物は、10~50重量%のMEA、25~85重量%のEDA、0.25~10重量%の環状エチレンアミン、たとえばPIPおよびAEPIP、1~30重量%のより高級な線状エチレンアミン、たとえばDETA、TETAおよびTEPAを含む。
【0261】
非常に好ましくは、排出物は、15~45重量%のMEA、30~70重量%のEDA、0.5~5重量%の環状エチレンアミン、たとえばPIPおよびAEPIP、5~25重量%のより高級な線状エチレンアミン、たとえばDETA、TETAおよびTEPAを含む。
【0262】
本発明の方法により、1.5以上、好ましくは2以上、特に好ましくは4以上の選択性指数SQを達成することができる。これは、本発明の方法により、所望の線状エチレンアミンならびにエタノールアミン、たとえばMEAおよびEDAと、望ましくない環状エチレンアミンならびにより高級な望ましくないエタノールアミン、たとえばPIPおよびAEEAとの生成物比を増加できることを意味する。
【0263】
排出物は、一般に、異なる成分が互いに分離されるように後処理される。
【0264】
このために、反応排出物は適切に減圧される。
【0265】
減圧後、水素および不活性ガスなどのガス状の形態で存在する成分は、一般に、気液分離器で液体成分から分離される。ガス状の成分は、個々に(更なる後処理工程の後)または一緒にアミノ化反応器に返送することができる。
【0266】
水素および/または不活性ガスの分離後、アミノ化反応器からの排出物は、場合によりアンモニア、未変換のエチレングリコールおよび/またはモノエタノールアミン、水ならびにアミノ化生成物を含む。
【0267】
好ましくは、アミノ化反応器からの排出物は2つの分離シーケンスに分離され、各分離シーケンスは多段蒸留を含む。そのような後処理は、たとえば欧州特許第198699号明細書に記載されている。それに応じて、1つ目の分離シーケンスでは、水とアンモニアが最初に分離され、2つ目の分離シーケンスでは、未変換のMEGと、MEA、EDA、PIP、DETA、AEEAおよびより高級なエチレンアミンとへの分離が行われる。この場合、MEGとDETAの共沸混合物に比べて低沸点成分と高沸点成分が最初に分離され、引き続き、MEGとDETAで濃縮された混合物が、選択的溶媒としてトリエチレングリコール(TEG)を用いた抽出蒸留により、MEGとDETAを含む流に分離される。
【0268】
MEAは、場合により、未変換のMEGと一緒にまたは別々に、部分的にまたは完全に本発明の方法に返送することができる。
【0269】
利点
本発明の方法では、線状アミノ化生成物DETAおよびEDAに対する高い選択性でMEGおよび/またはMEAを変換することが可能であり、環状アミノ化生成物PIPおよびより高級なエタノールアミンAEEAに対する選択性は低い。
【0270】
この効果の尺度は、MEAとEDAに対する選択性の合計とPIPとAEEAに対する選択性の合計との商として定義される選択性指数SQである(SQ=(S(DETA)+S(EDA))/(S(PIP)+S(AEEA))。
【0271】
高い選択性指数SQを達成することは、線状アミノ化生成物MEAおよびEDA、ならびにそれらの線状同族体、たとえばDETAやTETAに対する市場の需要が、PIPまたはAEEAに対する需要よりも高いため、工業的に有利である。
【0272】
さらに、本発明の方法により、望ましくない副生成物の形成はより少なくなる。望ましくない副生成物は、たとえば、ガス状の分解生成物、またはMEAおよびEDAに基づく不溶性もしくは難溶性のオリゴマーおよびポリマーである。そのような副生成物の形成は、炭素収支の低下、ひいては方法の経済的実行可能性の低下をもたらす。難溶性または不溶性の副生成物の形成は、アミノ化触媒への堆積をもたらす可能性があり、これがアミノ化触媒の活性を低下させる。
【0273】
本発明の方法は、同様にN-メチルエチレンジアミン(NMEDA)の量の減少をもたらす。NMEDAは望ましくない副生成物である。多くの工業用途では、NMEDAの割合が500重量ppm未満であるEDAの純度が指定されている。
【0274】
さらに、本発明の方法で使用される触媒前駆体は、方法において高い活性を有し、そのため好ましい空時収率を達成できることが確かめられた。
【0275】
総じて、本発明の方法により、総選択性、選択性指数、活性、および望ましくない副生成物の形成に関する有利な特性スペクトルを達成することができる。
【0276】
本発明を以下の実施例により説明する:
触媒前駆体の製造
比較例1:
硝酸コバルト六水和物85.62gを約80mlの熱脱塩水に溶解し、硝酸ニトロシルRu溶液269.75g(16重量%のRu)を添加した。このようにして得られた溶液に脱塩水を入れて合計371mlにした。
【0277】
このようにして得られた金属塩溶液を噴霧容器に移した。
【0278】
Al2O3担体500g(1~2mmの細片)を900℃の空気雰囲気下で焼成した。続けて、担体の最大吸水量を測定した。これは0.78mL/gであった。
【0279】
細片を、事前に製造した金属塩溶液に浸漬した。溶液の量は、細片の最大吸水量の95%に相当する。
【0280】
引き続き、金属塩溶液に浸漬した細片を、空気循環乾燥キャビネット内で120℃にて12時間乾燥させた。
【0281】
乾燥に続けて、触媒前駆体を表1に列挙された条件下で還元焼成した。
【0282】
【0283】
還元焼成に続けて、室温で触媒の周りに98Nl/hのN2および2Nl/hの空気のガス流を流すことにより、触媒を不動態化した。20Nl/hのN2および18Nl/hの空気に達するまで、空気量はゆっくりと増加させ、N2量はゆっくりと減少させた。空気量の増加は、触媒温度が35℃を超えないように実施した。
【0284】
比較例2
硝酸コバルト六水和物8.73g(20.25重量%のCo)および硝酸ニッケル六水和物1.85g(19重量%のNi)を初期装入した。
【0285】
この混合物に、硝酸ニトロシルRu溶液56.85g(16重量%のRu)を添加した。このようにして得られた溶液に脱塩水を入れて合計74mLにした。
【0286】
このようにして得られた金属塩溶液を噴霧容器に移した。
【0287】
Al2O3担体150g(1~2mmの細片)を900℃の空気雰囲気下で焼成した。続けて、最大吸水量を測定した。これは0.55mL/gであった。
【0288】
ターンテーブル上の細片に適切な量の金属塩溶液を噴霧することにより、予め製造した金属塩溶液で吸水量の90%まで触媒担体をターンテーブル上で浸漬した。
【0289】
引き続き、金属塩溶液に浸漬した細片を空気循環乾燥キャビネット内で120℃にて16時間乾燥させた。
【0290】
乾燥に続けて、触媒前駆体を、表1、比較例1に挙げた条件下で還元焼成した。
【0291】
還元焼成に続けて、室温で触媒の周りに50Nl/hのN2および0Nl/hの空気のガス流を流すことにより、触媒を不動態化した。20Nl/hのN2および20Nl/hの空気に達するまで、空気量はゆっくりと増加させ、N2量はゆっくりと減少させた。空気量の増加は、触媒温度が35℃を超えないように実施した
比較例3:
硝酸コバルト六水和物8.73g(20.25重量%のCo)および1.45gの硝酸銅水和物(26.3重量%のCu)を初期装入した。
【0292】
この混合物に、硝酸ニトロシルRu溶液56.85g(16重量%のRu)を添加した。このようにして得られた溶液に脱塩水を入れて合計74mLにした。
【0293】
このようにして得られた金属塩溶液を噴霧容器に移した。
【0294】
Al2O3担体150g(1~2mmの細片)を900℃の空気雰囲気下で焼成した。続けて、最大吸水量を測定した。これは0.55mL/gであった。
【0295】
ターンテーブル上の細片に金属塩溶液を噴霧することにより、予め製造した金属塩溶液で吸水量の90%まで触媒担体をターンテーブル上で浸漬した。
【0296】
引き続き、金属塩溶液に浸漬した細片を空気循環乾燥キャビネット内で120℃にて16時間乾燥させた。
【0297】
乾燥に続けて、比較例2のように、触媒前駆体を還元焼成し、不動態化した。
【0298】
比較例4:
製造は、比較例1の製造と同じように行った。
【0299】
ただし、以下の条件に従って、還元焼成はより高い温度(200℃の代わりに240℃)で実施するという点で比較例1とは異なっていた(表2を参照)。
【0300】
【0301】
実施例1:
触媒前駆体を、国際公開第2013/072289号の実施例B3に従って製造した。このようにして得られたタブレット(3×3mm)を1~2mmの細片に微粉砕した。細片の最大吸水能力は0.30mL/gであった。
【0302】
金属塩溶液を製造した。このために、硝酸コバルト六水和物20.25g(20.25重量%のCo)を熱水に溶解し、硝酸ニトロシルRu溶液37.91gを添加した。このようにして得られた溶液に脱塩水を入れて71mLにし、噴霧容器に移した。
【0303】
細片に、細片の最大吸水量の95%に相当する量を浸漬装置内で噴霧した。浸漬溶液の均一な吸収を保証するために、細片をさらに30分間、後回転させた。
【0304】
続けて、触媒の細片を空気循環乾燥キャビネット内で120℃にて16時間乾燥させた。
【0305】
このようにして得られた触媒前駆体を、比較例1に記載されているように還元焼成し、不動態化した。
【0306】
実施例2:
触媒前駆体を、国際公開第2013/072289号の実施例B3に従って製造した。このようにして得られたタブレット(3×3mm)を1~2mmの細片に微粉砕した。細片の吸水能力は0.30mL/gであった。
【0307】
金属塩溶液を製造した。このために、硝酸コバルト六水和物20.25g(20.25重量%のCo)を熱水に溶解し、硝酸ニトロシルRu溶液37.91gを添加した。このようにして得られた溶液に脱塩水を入れて71mLにし、噴霧容器に移した。
【0308】
細片に、細片の最大吸水量の95%に相当する量を浸漬装置内で噴霧した。浸漬溶液の均一な吸収を保証するために、細片をさらに30分間、後回転させた。
【0309】
続けて、触媒の細片を空気循環乾燥キャビネット内で120℃にて16時間乾燥させた。
【0310】
このようにして得られた触媒前駆体を、比較例4に記載されているように還元焼成し、不動態化した。
【0311】
実施例3:
触媒前駆体を、国際公開第2013/072289号の実施例B3に従って製造した。Al2O3の代わりにZrO2を用いた。
【0312】
このようにして得られたタブレット(3×3mm)を1~2mmの細片に微粉砕した。細片の吸水能力は0.20mL/gであった。
【0313】
金属塩溶液を製造した。このために、硝酸コバルト六水和物20.25g(20.25重量%のCo)を熱水に溶解し、硝酸ニトロシルRu溶液37.91gを添加した。このようにして得られた溶液に脱塩水を入れて71mLにし、噴霧容器に移した。
【0314】
細片に、細片の最大吸水量の95%に相当する量を浸漬装置内で噴霧した。浸漬溶液の均一な吸収を保証するために、細片をさらに30分間、後回転させた。
【0315】
続けて、触媒の細片を空気循環乾燥キャビネット内で120℃にて16時間乾燥させた。
【0316】
このようにして得られた触媒前駆体を、比較例4に記載されているように還元焼成し、不動態化した。
【0317】
実施例4:
触媒前駆体を、国際公開第2013/072289号の実施例B3に従って製造した。ただし、Al2O3担体の50%をZrO2に置き換えた。
【0318】
このようにして得られたタブレット(3×3mm)を1~2mmの細片に微粉砕した。細片の吸水能力は0.24mL/gであった。
【0319】
金属塩溶液を製造した。このために、硝酸コバルト六水和物20.25g(20.25重量%のCo)を熱水に溶解し、硝酸ニトロシルRu溶液37.91gを添加した。このようにして得られた溶液に脱塩水を入れて71mLにし、噴霧容器に移した。
【0320】
細片に、細片の最大吸水量の95%に相当する量を浸漬装置内で噴霧した。浸漬溶液の均一な吸収を保証するために、細片をさらに30分間、後回転させた。
【0321】
続けて、触媒の細片を空気循環乾燥キャビネット内で120℃にて16時間乾燥させた。
【0322】
このようにして得られた触媒前駆体を、比較例4に記載されているように還元焼成し、不動態化した。
【0323】
実施例5:
触媒前駆体を、国際公開第2013/072289号の実施例B3に従って製造した。ただし、Al2O32.4kgの代わりにAl2O30.9kgを用いた。
【0324】
このようにして得られたタブレット(3×3mm)を1~2mmの細片に微粉砕した。細片の吸水能力は0.31mL/gであった。
【0325】
金属塩溶液を製造した。このために、硝酸コバルト六水和物20.25g(20.25重量%のCo)を熱水に溶解し、硝酸ニトロシルRu溶液37.91gを添加した。このようにして得られた溶液に脱塩水を入れて71mLにし、噴霧容器に移した。
【0326】
細片に、細片の最大吸水量の95%に相当する量を浸漬装置内で噴霧した。浸漬溶液の均一な吸収を保証するために、細片をさらに30分間、後回転させた。
【0327】
続けて、触媒の細片を空気循環乾燥キャビネット内で120℃にて16時間乾燥させた。
【0328】
このようにして得られた触媒前駆体を、比較例4に記載されているように還元焼成し、不動態化した。
【0329】
実施例6:
触媒前駆体を、国際公開第2013/072289号の実施例B3に従って製造した。このようにして得られたタブレット(3×3mm)を1~2mmの細片に微粉砕した。細片の吸水能力は0.25mL/gであった。
【0330】
金属塩溶液を製造した。このために、硝酸コバルト六水和物7.52g(20.25重量%のCo)を熱水に溶解した。このようにして得られた溶液に脱塩水を入れて28mlにした。硝酸ニトロシルRu溶液19.66gに脱塩水を入れて28mlにした。
【0331】
細片に、細片の最大吸水量の70%に相当する量を浸漬装置内で噴霧した。最初にRu溶液を細片に加えた。
【0332】
その後、これを空気循環乾燥キャビネット内で120℃にて16時間乾燥させた。その後、Co溶液を細片に加えた。続けて、触媒細片を空気循環乾燥キャビネット内で120℃にて16時間再び乾燥させた。
【0333】
このようにして得られた触媒前駆体を、比較例4に記載されているように還元焼成し、不動態化した。
【0334】
触媒試験:
触媒の試験は、パイロットプラント規模で連続運転されるマルチプラントにおいて試験した。プラントの反応部は8つの個別の反応器で構成され、そのうちそれぞれ4つが1つの反応器ブロック(加熱ブロック)に統合されている。各個別の反応器は、内径8mmで長さ1.5mのステンレス鋼管である。これらの管は、Al-Mg合金からなる電気加熱式反応器ブロックに取り付けられている。
【0335】
触媒を細片の形態(1.5mm~2mm)で反応器に導入し、サイズ3mmのガラスビーズからなる長さ約33cmの不活性床に担持させた。触媒床の上にはさらに、サイズ3mmのガラスビーズからなる長さ15cmの隣接する不活性床がある。
【0336】
触媒と不活性床は、長さ1cmの布線で反応器に固定した。
【0337】
各反応器は直線パスで運転し、下から流入させた。
【0338】
液体反応物は、HPLCポンプを使用してリザーバーから供給した。水素、窒素およびアンモニアは別個の管路から供給した。
【0339】
液体反応器排出物のサンプルは、反応器出口を越えて分離器から採取した。反応器排出物をガスクロマトグラフィーで分析した。
【0340】
反応前に、水素と窒素の50:50混合物中で18時間かけて200℃および170barで触媒を活性化した。
【0341】
すべての触媒の試験は、次の条件下で行った:
・温度:165℃
・圧力:170bar
・H2:5Nl/h
・N2:10Nl/h
・NH3:MEGのモル比=10:1
・触媒負荷量:0.3kg/L/h~0.5kg/L/h
・触媒容積:50mL
正確な条件は、以下の表3にまとめている。
【0342】
【0343】
比較例1は、RuおよびCoのみを含む触媒前駆体は高い活性を示すが、低い選択性を有し、さらに、NMEDAなどの望ましくない副生成物が大量に形成されることを示している。
【0344】
比較例2および3は、RuおよびCoに加えて、Ni(比較例2)またはCu(比較例3)を含む触媒前駆体(ただしSnを含まない)は良好な選択性を示すが、低い活性しか示さないことを示している。
【0345】
Ru、CoおよびSnの本発明の組合せを含む触媒前駆体(実施例1)のみが、高い活性と高い選択性の両方を示す。さらに、NMEDAなどの望ましくない副生成物が形成される量はより少ない。
【0346】
これらの観察結果は、比較例4と実施例2~6との比較により確認される。比較例4と比較すると、実施例2~6の触媒前駆体は、CoおよびRuのほかに、さらにSnを含む。CoおよびRuのほかに、さらにSnを含む触媒前駆体のみが、高い選択性、高い活性、およびNMEDAなどの望ましくない化合物の少ない割合の特性の望ましい組合せを有している。