(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-14
(45)【発行日】2022-07-25
(54)【発明の名称】塩化ビニル系重合体重合用組成物及びこれを用いた塩化ビニル系重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 2/22 20060101AFI20220715BHJP
C08F 14/06 20060101ALI20220715BHJP
C08F 4/40 20060101ALI20220715BHJP
【FI】
C08F2/22
C08F14/06
C08F4/40
(21)【出願番号】P 2020564938
(86)(22)【出願日】2019-10-07
(86)【国際出願番号】 KR2019013091
(87)【国際公開番号】W WO2020076023
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2020-11-19
(31)【優先権主張番号】10-2018-0119879
(32)【優先日】2018-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ユク、キョン-ソク
(72)【発明者】
【氏名】ペ、フン-クォン
(72)【発明者】
【氏名】イ、チョン-レ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヒョン-ミン
(72)【発明者】
【氏名】イム、チュン-チョル
(72)【発明者】
【氏名】カン、ミン-チョン
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-051770(JP,A)
【文献】特開2009-057486(JP,A)
【文献】特開2000-204211(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0049974(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
C08F 2/00- 2/60
C08F 4/00- 4/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系第1シードと、
塩化ビニル系第2シードと、
水溶性開始剤及び油溶性開始剤を含む開始剤組成物と、
還元剤と、
塩化ビニル系単量体と、
を含み、
前記塩化ビニル系第2シードの粒径(D
50
)は、前記塩化ビニル系第1シードの粒径(D
50
)より大きく、
前記塩化ビニル系第1シード及び前記塩化ビニル系第2シードの重量比は、1:1から1:3であり、
金属触媒は含まないことを特徴とする、塩化ビニル系重合体重合用組成物。
【請求項2】
前記第1シードは、前記塩化ビニル系単量体100重量部に対し2.5から10重量部で含まれる、請求項1に記載の塩化ビニル系重合体重合用組成物。
【請求項3】
前記第2シードは、前記塩化ビニル系単量体100重量部に対し2.5から10重量部で含まれる、請求項1または2に記載の塩化ビニル系重合体重合用組成物。
【請求項4】
前記水溶性開始剤は、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム及び過酸化水素からなる群から選択される1つ以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の塩化ビニル系重合体重合用組成物。
【請求項5】
前記水溶性開始剤の含量は、前記塩化ビニル系単量体の重量基準で160から360ppmである、請求項1~4のいずれか一項に記載の塩化ビニル系重合体重合用組成物。
【請求項6】
前記油溶性開始剤は、ラウリルパーオキシド(LPO)、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシカーボネート(OPP)、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、及び2,2-アゾビスイソブチロニトリルからなる群から選択される1つ以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の塩化ビニル系重合体重合用組成物。
【請求項7】
前記油溶性開始剤の含量は、前記塩化ビニル系単量体の重量基準で500から1000ppmである、請求項1~6のいずれか一項に記載の塩化ビニル系重合体重合用組成物。
【請求項8】
前記還元剤は、アスコルビン酸、ピロ亜硫酸カリウム(Potassium Metabisulfite、PMBS)及びホルムアルデヒドスルホキシラートナトリウム(Sodium Formaldehyde Sulfoxylate、SFS)からなる群から選択される1つ以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載の塩化ビニル系重合体重合用組成物。
【請求項9】
前記還元剤の含量は、前記塩化ビニル系単量体の重量基準で60から100ppmである、請求項1~8のいずれか一項に記載の塩化ビニル系重合体重合用組成物。
【請求項10】
塩化ビニル系第1シード、塩化ビニル系第2シード、水溶性開始剤及び油溶性開始剤を含む開始剤組成物及び還元剤の存在下で、塩化ビニル系単量体を重合する段階を含み、
前記塩化ビニル系第2シードの粒径(D
50
)は、前記塩化ビニル系第1シードの粒径(D
50
)より大きく、
前記塩化ビニル系第1シード及び前記塩化ビニル系第2シードの重量比は、1:1から1:3であり、
金属触媒を用いないことを特徴とする、塩化ビニル系重合体の製造方法。
【請求項11】
前記重合はシード乳化重合である、請求項10に記載の塩化ビニル系重合体の製造方法。
【請求項12】
前記重合は190から335分間行う、請求項10または11に記載の塩化ビニル系重合体の製造方法。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか一項に記載の塩化ビニル系重合体重合用組成物から由来した塩化ビニル系重合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年10月8日付韓国特許出願第10-2018-0119879号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、塩化ビニル系重合体重合用組成物及びこれを用いた塩化ビニル系重合体の製造方法に関し、具体的には、発泡物性が改善された塩化ビニル系重合体を重合することに用いられ得る組成物、及びこれを用いた塩化ビニル系重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
塩化ビニル系重合体は、塩化ビニル単量体(Vinyl Chloride Monomer、VCM)から由来した繰り返し単位を50重量%以上含む重合体であって、価格が低廉で、硬度の調節が容易であり、大部分の加工機器に適用可能であるため応用分野が多様である。さらに、物理的・化学的性質、例えば、機械的強度、耐候性、耐薬品性等に優れた成形体を提供でき、様々な分野で幅広く用いられている。
【0004】
このような塩化ビニル系重合体は、用途により異なる形態で製造される。例えば、押出工程、カレンダー工程、射出工程等のストレート加工用塩化ビニル系重合体は一般的に懸濁重合によって製造され、ディッピング、スプレーイング、コーティング等のペースト加工用塩化ビニル系重合体は乳化重合によって製造される。
【0005】
前記ペースト加工は、一般的に乳化重合によって得られたペースト加工用塩化ビニル系重合体ラテックスを噴霧乾燥する方法で乾燥して最終樹脂粒子を形成し、前記粒子は、溶媒や可塑剤に分散させてコーティング(リバースロールコーティング(reverse roll-coating)、ナイフコーティング(knife coating)、スクリーンコーティング(screen coating)、スプレーコーティング(spray coating))、グラビア及びスクリーンプリンティング(gravure and screen printing)、回転キャスティング(rototion casting)、シェルキャスティング及びディッピング(shell casting and dipping)のような工程を介して床材、壁紙、タポリン、レインコート、手袋、自動車アンダーボディーコーティング、シーラント、カーペットタイル等の製品に適用される。
【0006】
このようなペースト加工用塩化ビニル系重合体は、単独では加工性が低いため適用が難しく、通常可塑剤とともに熱安定剤等の様々な添加剤で構成されるプラスチゾルの形態に加工され用いられている。
【0007】
プラスチゾルで製品をコーティングする際、プラスチゾルの粘度が低い水準に維持されてこそ加工が容易であるため、このために粘度低下剤を用いるところ、粘度低下剤は、脂肪族炭化水素である希釈剤成分とカルボン酸エステルである湿潤剤成分であり、加工時に希釈剤成分が揮発性有機化合物(TVOC:Total volatile organic carbon)に変化されて環境及び人体に有害という問題がある。
【0008】
また、前記粘度低下剤が発泡加工用製品において発泡白色度、発泡セルの緻密性、発泡復元力等の発泡物性を低下させるという問題点がある。よって、発泡加工用製品に適用時に発泡物性が改善された塩化ビニル系重合体及びこの製造方法に対する研究が継続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】JP 2970659 B2(1999.08.27)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、既存の塩化ビニル系重合体が有する発泡色相、発泡セルの緻密性等の発泡物性において限界点を補完した塩化ビニル系重合体の製造に用いられ得る塩化ビニル系重合体重合用組成物を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、前記塩化ビニル系重合体重合用組成物を用いた塩化ビニル系重合体の製造方法であって、重合時間が短縮され経済的な塩化ビニル系重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一具現例は、塩化ビニル系第1シードと、塩化ビニル系第2シードと、水溶性開始剤及び油溶性開始剤を含む開始剤組成物と、還元剤と、塩化ビニル系単量体とを含み、金属触媒は含まないことを特徴とする塩化ビニル系重合体重合用組成物を提供する。
【0013】
本発明の他の具現例は、塩化ビニル系第1シード、塩化ビニル系第2シード、水溶性開始剤及び油溶性開始剤を含む開始剤組成物及び還元剤の存在下で、塩化ビニル系単量体を重合する段階を含み、金属触媒を用いない塩化ビニル系重合体の製造方法を提供する。
【0014】
本発明のまた他の具現例は、前記製造方法によって製造され、平均粒径0.6μm以下の小口径粒子を重合体全重量に対し50重量%以上含む塩化ビニル系重合体、及びこれを含むプラスチゾルを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の塩化ビニル系重合体重合用組成物を用いて発泡色相、発泡セルの緻密性及び発泡復元力等の発泡物性に優れた塩化ビニル系重合体を製造できる。
【0016】
また、本発明の塩化ビニル系重合体重合用組成物を用いた製造方法によれば、重合時間が短縮されて経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施例2と比較例1による発泡体の貯蔵損失係数(Tan delta、@170℃、G’’/G’)グラフ結果を示した図である。
【
図2】本発明の実施例1から4による発泡体のSEM分析結果を示した図である。
【
図3】本発明の実施例5から8による発泡体のSEM分析結果を示した図である。
【
図4】比較例1から4による発泡体のSEM分析結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に対する理解を深めるために本発明をさらに詳しく説明する。
【0019】
本発明の説明及び特許請求の範囲において用いられた用語や単語は、通常的又は辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最善の方法によって説明するために、用語の概念を適宜定義することができるという原則に即し、本発明の技術的思想に適合する意味と概念として解釈されなければならない。
【0020】
本明細書で用いられる用語の「組成物」は、当該組成物の材料から形成された反応生成物及び分解生成物だけでなく、当該組成物を含む材料の混合物を含む。
【0021】
本明細書で用いられる用語の「塩化ビニル系重合体重合用組成物」は、重合反応が始まる直前、すなわち重合転換率が0%以前の時点であって、当該時点まで反応器に投入される反応物の混合物を意味してよい。
【0022】
本明細書で用いられる用語の「塩化ビニル系重合体」は、塩化ビニル系単量体を重合して生成された化合物を包括して示すもので、塩化ビニル系単量体から誘導された重合体鎖を意味するものであってよい。
【0023】
本明細書で用いられる用語の「プラスチゾル(plastisol)」は、加熱によって成形、鋳型若しくは連続フィルム状に加工できるように樹脂と可塑剤を混合した混合物を示すもので、例えば、塩化ビニル系重合体と可塑剤を混合したペースト状を示すものであってよい。
【0024】
本明細書で用いられる用語の「可塑剤(plasticizer)」は、熱可塑性樹脂に添加して熱可塑性を増大させることで前記樹脂の高温での成形加工性を進める役目をする有機添加剤物質を示すものであってよい。
【0025】
本明細書において、平均粒径(D50)は、粒子の粒径分布曲線における累積粒子数の50%に該当する粒径として定義してよい。前記平均粒径(D50)は、例えば、レーザ回折法(laser diffraction method)を用いて測定してよい。前記レーザ回折法は、一般的にサブミクロン(submicron)領域から数mm程度の粒径測定が可能であり、高再現性及び高分解性の結果を得ることができる。
【0026】
1.塩化ビニル系重合体の重合用組成物及びこの製造方法
本発明の一実施形態によれば、塩化ビニル系第1シードと、塩化ビニル系第2シードと、水溶性開始剤及び油溶性開始剤を含む開始剤組成物と、還元剤と、塩化ビニル系単量体と、を含み、金属触媒は含まないことを特徴とする塩化ビニル系重合体重合用組成物が提供される。
【0027】
以下、本発明の塩化ビニル系重合体重合用組成物を成す各成分を具体的に説明する。
【0028】
[水溶性開始剤及び油溶性開始剤を含む開始剤組成物]
本発明の一実施形態によれば、前記重合用組成物は開始剤組成物を含み、前記開始剤組成物は水溶性開始剤及び油溶性開始剤を含むが、金属触媒は含まないことを特徴とする。
【0029】
一般的に、シード乳化重合の場合、水溶性開始剤を用いて水溶液上で分解された開始剤がラジカルを生成し、水相の単量体を反応開始させるか、単量体が含まれたミセル内に拡散して開始反応を起こすことで重合反応が行われる。しかし、この方法は、臨界ミセル濃度の制御が難しくてミセル内への開始剤拡散が円滑でないため、反応速度が遅く、よって重合反応時間が長くなり生産性が非常に低いという問題がある。
【0030】
このため、反応性改善のために、酸化還元システムの活用により金属触媒及び還元剤を投入することで、金属触媒の金属が還元剤から電子を受け取り、受け取った電子を再び油溶性開始剤に伝達することによって反応開始を起こす重合反応を適用できる。これは、反応性を改善し、泡の形成が抑制されて除熱も容易であり、製造された塩化ビニル系重合体の発泡物性もまた優秀であるという特徴がある。しかし、金属触媒を投入する酸化還元開始システムを適用する場合、最終重合体内の金属が残留することで製品の品質を低下させ、色相や環境汚染の問題をもたらすという短所がある。
【0031】
しかし、本発明の一実施形態による塩化ビニル系重合体重合用組成物は、金属触媒を含まないことを特徴とするとともに、酸化還元システムと類似の重合反応が行われ得る。すなわち、金属触媒を投入しなくとも、還元剤から水溶性開始剤及び油溶性開始剤を同時に投入し、開始剤が直接電子を受け取って反応が開始され得る。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、前記重合用組成物は、水溶性開始剤と共に油溶性開始剤を同時に含むことを特徴とする。すなわち、還元剤によって水溶性開始剤と油溶性開始剤が直接的に開始反応を起こし得、金属触媒を経由する開始反応ではないため反応性が大きく改善されるという効果が見られる。また、金属触媒が含まれないことで、最終重合体内に残留金属がないため、これによる問題点も改善できる。
【0033】
却って本発明による開始剤システム、すなわち、水溶性開始剤及び油溶性開始剤を用いながら金属触媒及び還元剤を用いる既存の酸化還元開始システムを同時に適用する場合は、反応の制御が不可能であるため反応が暴走する危険性が大きく、金属触媒だけ用いる場合は、反応性には何らの効果もなく残留金属だけ残すようになり、本発明による開始システムに障害物として作用し反応を遅延させる虞もある。
【0034】
前記水溶性開始剤は、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム及び過酸化水素からなる群から選択される1種以上であってよい。
【0035】
前記水溶性開始剤の含量は、塩化ビニル系重合体重合用組成物内の塩化ビニル系単量体の重量基準に360ppm以下、又は340ppm以下、又は320ppm以下であってよく、160ppm以上、又は180ppm以上、又は220ppm以上であってよい。
【0036】
本発明で水溶性開始剤が前記含量の範囲を満たす場合、本発明の塩化ビニル系重合体重合用組成物を用いて製造された塩化ビニル系重合体の発泡時に白色度及び発泡セルの緻密性が改善されるという効果がある。
【0037】
前記油溶性開始剤は、ラウリルパーオキシド(LPO)、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシカーボネート(OPP)、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、及び2,2-アゾビスイソブチロニトリルからなる群から選択される1種以上であってよい。
【0038】
前記油溶性開始剤の含量は、塩化ビニル系重合体重合用組成物内の塩化ビニル系単量体の重量基準に1000ppm以下、又は900ppm以下、又は850ppm以下であってよく、500ppm以上、又は600ppm以上、又は700ppm以上であってよい。
【0039】
本発明で油溶性開始剤が前記含量の範囲を満たす場合、本発明の塩化ビニル系重合体重合用組成物を用いて製造された塩化ビニル系重合体の発泡白色度及び発泡セルの緻密性が改善されるという効果がある。
【0040】
[還元剤]
本発明の一実施形態による塩化ビニル系重合体重合用組成物は還元剤を含む。前記還元剤は、アスコルビン酸、ピロ亜硫酸カリウム(Potassium Metabisulfite、PMBS)、ホルムアルデヒドスルホキシラートナトリウム(Sodium Formaldehyde Sulfoxylate、SFS)からなる群から選択される1種以上であってよい。
【0041】
前記還元剤の含量は、塩化ビニル系重合体重合用組成物内の塩化ビニル系単量体の重量基準に100ppm以下、又は95ppm以下、又は90ppm以下であってよく、60ppm以上、又は70ppm以上、又は80ppm以上であってよい。
【0042】
本発明で還元剤が前記数値の範囲を満たす場合、本発明の塩化ビニル系重合体重合用組成物を用いて製造された塩化ビニル系重合体の発泡白色度及び発泡セルの緻密性が改善されるという効果がある。
【0043】
前記還元剤は、水溶性開始剤及び油溶性開始剤と共に含まれ、油溶性開始剤が水溶性開始剤の開始反応を促進し、水溶性開始剤が油溶性開始剤の開始反応を促進する相互作用を連結する機能ができる。
【0044】
[塩化ビニル系第1シード及び第2シードを含むシード混合物]
本発明の一実施形態による塩化ビニル系重合体重合用組成物は、シード乳化重合に適用される組成物であってよい。これにより、前記組成物は平均粒径が互いに異なる第1シード及び第2シードを含むことで塩化ビニル系重合体の粒度分布をバイモーダル(bimodal)で付与できる。バイモーダルの粒度分布を有する塩化ビニル系重合体は、プラスチゾルにせん断薄化(Shear thinning)特性を付与して流変物性を改善し、小口径粒子及び大口径粒子の適切な比率調節を介して発泡特性と流変物性との間の調整を容易にすることができる。
【0045】
前記塩化ビニル系重合体重合用組成物内の前記第1シード及び第2シードは、1:1から1:3の重量比であってよい。
【0046】
本発明で塩化ビニル系第1シードの含量は、塩化ビニル系重合体重合用組成物内の塩化ビニル系単量体100重量部に対し10重量部以下、又は8重量部以下、又は6重量部以下、又は5重量部以下であってよく、2.5重量部以上、又は3重量部以上、又は3.5重量部以上であってよい。前記第1シードが前記範囲を満たす場合、本発明の重合用組成物を用いて製造された塩化ビニル系重合体の機械的物性、粒度特性等を改善でき、さらに、発泡色相、発泡セルの緻密性等において優れた効果を具現できる。
【0047】
また、前記第1シードは、下記の方法を介して製造されたものであってよい:
a)第1乳化剤が充填された反応器に塩化ビニル系単量体100重量部を投入して30℃から70℃の温度で重合を開始する段階と、
b)前記重合中に第2乳化剤を連続的に投入して4時間から10時間乳化重合を行う段階。
【0048】
前記段階a)の第1乳化剤が充填された反応器は、前記第1乳化剤を含む乳化液が入っている反応器を示し、前記乳化液は第1乳化剤外に重合水、重合開始剤等を含んでよい。
【0049】
第1シードの製造に用いられる塩化ビニル系単量体は、塩化ビニル単量体単独を意味するものであるか、又は塩化ビニル単量体及びこれと共重合可能なビニル系単量体の混合物を意味するものであってよい。言い換えれば、前記塩化ビニル系重合体は、塩化ビニル単独重合体であるか、塩化ビニル単量体及びこれと共重合可能なビニル系単量体の共重合体であってよい。もし前記塩化ビニル系重合体が前記共重合体の場合には、塩化ビニルが50%以上含まれているものであってよい。
【0050】
前記塩化ビニル系単量体と共重合体可能なビニル系単量体は、特に制限されるものではないが、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン(olefin)化合物、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等のビニルエステル(vinyl ester)類、アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルオクチルエーテル、ビニルラウリルエーテル等のビニルアルキルエーテル類、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン(vinylidene)類、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和脂肪酸及びこれら脂肪酸の無水物、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ブチルベンジル等の不飽和脂肪酸エステル(ester)類、ジアリルフタレート等の架橋性単量体等であってよく、前記ビニル系単量体は単独又は2種以上の組み合わせであってよい。
【0051】
前記第1乳化剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸、アルファ-オレフィンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルエトキシ化硫酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム及び直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩からなる群から選択された1種以上のものであってよい。
【0052】
また、第1乳化剤は、前記塩化ビニル系単量体100重量部に対して0.01重量部から1重量部、又は0.05から0.5重量部で用いられてよく、前記第1乳化剤の使用量によって最終生成される第1シードの平均粒径が調節され得る。例えば、前記第1乳化剤の使用量が増加することによって最終生成される第1シードの平均粒径が増加し得る。
【0053】
前記第1シードの平均粒径(D50)は、0.1μmから0.4μm、好ましくは0.1μmから0.3μm、より好ましくは0.15μmから0.25μmであってよい。
【0054】
前記重合開始剤は、水溶性開始剤であることが好ましく、具体的には過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム及び過酸化水素からなる群から選択された1種以上のものであってよい。
【0055】
また、前記重合水は、塩化ビニル系単量体100重量部に対し70重量部から130重量部で用いるものであってよく、前記重合水は脱イオン水であってよい。
【0056】
前記段階b)の第2乳化剤は、前述した第1乳化剤と同一のものか含まれるものであってよく、本発明で用いられる前記第1乳化剤及び第2乳化剤は、種類が異なる物質を意味するものであってよく、単に投入する手順を意味するものであってもよい。よって、前記第1乳化剤及び第2乳化剤は、互いに同一の物質であるか、又は互いに異なる物質であってよい。
【0057】
また、第2乳化剤は、乳化重合中に連続的に前記反応器内に投入され、前記塩化ビニル系単量体100重量部に対して0.01重量部から9重量部、又は2から6重量部で用いられてよい。
【0058】
前記塩化ビニル系第2シードの含量は、塩化ビニル系重合体重合用組成物内の塩化ビニル系単量体100重量部に対し10重量部以下、又は8重量部以下、又は6重量部以下、又は5重量部以下であってよく、2.5重量部以上、又は3重量部以上、又は3.5重量部以上であってよい。前記第2シードが前記範囲を満たす場合、本発明の重合用組成物を用いて製造された塩化ビニル系重合体の機械的物性、粒度特性を改善でき、発泡色相、発泡セルの緻密性等において優れた効果を具現できる。
【0059】
前記第2シードは、重合開始剤が充填された反応器に塩化ビニル系単量体100重量部と第3乳化剤0.1重量部から15重量部、又は0.5から12重量部を投入して均質化した後、30℃から70℃の温度で乳化重合して製造されたものであってよい。
【0060】
前記重合開始剤が充填された反応器は、重合開始剤を含む混合溶液が入っている反応器を示すものであってよく、前記混合溶液は、重合開始剤外に重合水、別途の乳化剤、反応抑制剤及び分散剤等をさらに含んでよいが、これに制限されるのではない。
【0061】
第2シードの製造に用いられる塩化ビニル系単量体は、第1シードの製造に用いられた塩化ビニル系単量体と同一の物質であってよく、これは前述した通り塩化ビニル単量体であるか、塩化ビニル単量体及びこれと共重合可能なビニル系単量体の組み合わせであってよい。具体的な内容は前述した通りである。
【0062】
前記重合開始剤は、前記塩化ビニル系単量体100重量部に対して0.01重量部から2.5重量部、又は0.5から2重量部で用いられるのが好ましく、前記重合開始剤の使用量によって最終生成される第2シードの平均粒径が調節され得る。例えば、前記重合開始剤の使用量が増加するほど最終生成される第2シードの平均粒径は減少し得る。
【0063】
前記第2シードは、平均粒径(D50)が0.1μmから1.0μm、好ましくは0.2μmから0.8μm、より好ましくは0.4μmから0.8μmであってよい。
【0064】
前記重合開始剤は、特に制限されず水溶性開始剤及び油溶性開始剤のうち何れか一つ以上を用いてよく、例えば、パーオキシカーボネート類、パーオキシエステル類及びアゾ系化合物からなる群から選択された1種以上のものであってよい。具体的に、前記重合開始剤は、ラウリルパーオキシド(LPO)、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシカーボネート(OPP)、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、及び2,2-アゾビスイソブチロニトリルからなる群から選択される1種以上であってよい。
【0065】
前記第3乳化剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸、アルファ-オレフィンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルエトキシ化硫酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム及び直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩からなる群から選択された1種以上であってよく、前記別途の乳化剤は、第3乳化剤と同一のものか、含まれるものであってよい。
【0066】
前記反応抑制剤は、特に制限されたものではないが、例えば、パラキノン(paraquinone)、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキシトルエン、モノメチルエーテルヒドロキノン、4次ブチルカテコール、ジフェニルアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン等を用いてよい。
【0067】
また、分散剤は、特に制限されるものではないが、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチックアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール類又はラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸を用いてよい。
【0068】
また、前記重合水は、塩化ビニル系単量体100重量部に対し70重量部から120重量部で用いるものであってよく、前記重合水は脱イオン水であってよい。
【0069】
前記均質化は、特に制限されるのではないが、20℃以下の温度、好ましくは5℃から15℃の温度で均質機を用いて1時間から3時間均質化して行うものであってよい。このとき、前記均質機は、特に制限されず、当業界に知られた通常のものを用いてよく、例えばrotor-statorタイプの均質機を用いてよく、均質化工程中の均質機の全体圧力は1000psiから2000psiであってよい。また、必要に応じて均質機の前端と後端に重合混合物を分配して均質化を行ってよい。
【0070】
前記第2シード製造のための乳化重合は、前述の通り30℃から70℃の温度で行われるものであってよく、具体的には、前記均質化遂行温度から40℃から50℃を昇温して乳化重合を開始し、5時間から15時間乳化重合を進行して行われるものであってよい。
【0071】
[その他添加剤]
本発明の一実施形態によれば、前記塩化ビニル系重合体重合用組成物は、乳化剤、重合水、反応抑制剤及び分散剤等をさらに含んでよい。
【0072】
前記重合用組成物は、乳化剤をさらに含んでよく、1種以上の乳化剤をさらに含んでよく、以下では、例として2種の乳化剤を含む場合、便宜上これを第4乳化剤及び第5乳化剤と称する。
【0073】
前記第4乳化剤は、前記塩化ビニル系単量体を反応器内に投入する前に投入されるものであってよく、前記第5乳化剤は、重合開始後、連続的に投入されてよい。
【0074】
重合段階で前記第4乳化剤及び第5乳化剤は互いに異なる物質であるか同一の物質であってよく、前記第4乳化剤及び第5乳化剤が互いに同一の物質である場合、前記第4及び第5の表現は乳化剤の投入手順を区分するためのものであってよい。
【0075】
具体的に、前記第4乳化剤及び第5乳化剤は、それぞれラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸、アルファ-オレフィンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルエトキシ化硫酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム及び直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩からなる群から選択された1種以上であってよい。
【0076】
前記第4乳化剤は、塩化ビニル系単量体100重量部に対し0.01重量部から0.5重量部で用いられてよい。
【0077】
前記第5乳化剤は、塩化ビニル系単量体100重量部に対し1重量部から10重量部、又は1重量部から3重量部で用いられてよい。
【0078】
また、前記重合水は、塩化ビニル系単量体100重量部に対し70重量部から130重量部で用いるものであってよく、前記重合水は脱イオン水であってよい。
【0079】
また、前記重合段階で反応抑制剤及び分散剤は、前記第2シードの製造に用いられた反応抑制剤及び分散剤と同一の物質であってよい。
【0080】
[塩化ビニル系単量体等]
本発明の重合段階で塩化ビニル系単量体は、前記第1シード及び/又は第2シードの製造に用いられた塩化ビニル系単量体と同一の物質であってよく、これは、前述した通り塩化ビニル単量体であるか、塩化ビニル単量体及びこれと共重合可能なビニル系単量体の組み合わせであってよい。具体的な内容は前述した通りであるため、その記載を省略する。
【0081】
このように、本発明による塩化ビニル系重合体の重合用組成物を適用する場合、製造される塩化ビニル系重合体は機械的物性と粒度特性に優れ、金属触媒を用いないため保管時に金属成分による重合体の変性も防止でき、相対的に短時間内に優れた物性を有する重合体を製造できるため経済性に役立ち、発泡時の色相や発泡セルの緻密度等において相当な改善効果が見られる。
【0082】
本発明の一実施形態による塩化ビニル系重合体の製造方法は、塩化ビニル系第1シード、塩化ビニル系第2シード、水溶性開始剤及び油溶性開始剤を含む開始剤組成物及び還元剤の存在下で塩化ビニル系単量体を重合する段階を含み、金属触媒を用いないことを特徴とする。
【0083】
以下、塩化ビニル系重合体の製造方法の各段階を具体的に説明する。
【0084】
[重合段階]
本発明の塩化ビニル系重合体の製造方法で前記重合は、水相を媒質にする乳化重合として純粋乳化重合、シード乳化重合、又は微細懸濁重合に適切な方法であってよい。本発明による開始システムによる効果は、前記乳化重合に分類され得る重合法に適用されてよく、特にバイモーダル粒度分布を有するようにすることができるシード乳化重合を介して適用するのが好ましい。
【0085】
本発明で前記重合は、本発明による開始システムを適用することによって、190から335分、又は220から290分間行われ得る長所があるため生産性を極大化することができる。そうであるとしても、重合時間が190分未満の場合、十分な重合が行われないため正常な製品化が不可能であり、335分を超過する場合、転換率上昇がこれ以上起こらずに設備の汚染度だけ増加する虞があるためコストの経済的な側面で不利である。
【0086】
本発明による塩化ビニル系重合体の重合用組成物を用いる場合には、金属触媒を用いないにもかかわらず前記のように短時間内に重合を完了でき、既存に比べ機械的物性や粒度特性に対して同等以上の水準を確保でき、追加で発泡する時にセルの形状や緻密度、色相等において改善効果を期待できる。
【0087】
[後処理段階]
本発明の塩化ビニル系重合体の製造方法は、前記重合段階以後に洗浄、凝集及び乾燥のうち少なくとも一つ以上の段階をさらに含んでよい。前記乾燥は、特に制限されず当業界に通常公知された方法によって行われてよい。
【0088】
2.塩化ビニル系重合体
本発明の他の具現例は、前記製造方法によって製造され、平均粒径0.6μm以下の小口径粒子を重合体の全重量に対し50重量%以上含む塩化ビニル系重合体を提供する。
【0089】
具体的に、前記小口径粒子は、平均粒径が0.55μm以下、又は0.5μm以下、又は0.45μm以下であってよく、0.05μm以上、又は0.1μm以上、又は0.15μm以上であってよい。
【0090】
また、本発明の塩化ビニル系重合体は、前記小口径粒子を重合体の全重量に対し85重量%以下、又は80重量%以下、又は75重量%以下含んでよく、51重量%以上、又は52重量%以上、又は55重量%以上、又は60重量%以上含んでよい。
【0091】
前記小口径粒子の含量が重合体の全重量に対し50重量%未満の場合、発泡区間及び温度で高分子溶融特性のうち弾性率が低くなって(すなわち、貯蔵損失係数値が高くなって)発泡されるガスを捕集できないため、発泡セルがオープンセルになるにつれて隣接したセルと結合して大きくなる現象が発生し得る。よって、発泡セルの緻密性が低く、耐熱性の低下で発泡白色度もまた低くなり得る。
【0092】
また、前記塩化ビニル系重合体は、前述した通り、バイモーダル粒度分布を有するものであってよく、大口径粒子の含量は前記小口径粒子の含量を除いた全部であってよく、その大きさは0.5μm以上であってよく、好ましくは1.0μm以上であってよい。このように小口径粒子の含量が50重量%以上であり、同時に大口径粒子の大きさが特に1.0μm以上の場合は、発泡セルの緻密性が優秀であり、白色度もまた相当水準に具現できる。
【0093】
また、前記塩化ビニル系重合体は、残留金属の含量が5ppm以下のものであってよい。実質的に本発明の一実施形態による重合用組成物を適用する場合には、残留金属含量が実質的に0であってよく、その他別の要因による金属残留量を考慮した時、10ppm以下、好ましくは5ppm以下であってよく、より最適には2ppm以下であってよく、実質的に0ppmであってよい。
【0094】
3.プラスチゾル
本発明の一実施形態による前記プラスチゾルは、小口径粒子を特定含量で含む前記塩化ビニル系重合体を含むことで、貯蔵損失係数及び発泡色相等に優れた発泡物性を示し得る。
【0095】
具体的に、本発明のプラスチゾルは、前記塩化ビニル系重合体を含み、白色度(White index)が50から70であり、貯蔵損失係数(Tan delta、@170℃、G’’/G’)が1.20以下であってよい。ここで、前記貯蔵損失係数(Tan delta)は損失弾性率(Loss modulus)/貯蔵弾性率(Storage modulus)を意味する。
【0096】
また、本発明の塩化ビニル系重合体は、白色度(White index)が68以下、又は66以下、又は64以下であってよく、52以上、又は54以上、又は56以上であってよい。
【0097】
前記白色度が50未満の場合、耐熱性が劣悪で、発泡色相が暗いため発泡体の活用性が低下する。白色度が70超過の場合、このような発泡体の活用度に比べて製造時に高いコストがかかるため好ましくない。
【0098】
また、本発明の塩化ビニル系重合体は、貯蔵損失係数(Tan delta、@170℃、G’’/G’)が1.21以下、又は1.18以下、又は1.15以下、又は1.12以下であってよく、0.5以上、又は0.7以上、又は0.9以上であってよい。
【0099】
前記貯蔵損失係数が1.20を超過する場合、発泡区間及び温度で高分子溶融特性のうち弾性率が低くて発泡されるガスを捕集できないため、発泡セルがオープンセルになるにつれて隣接したセルと結合して大きくなる現象が発生し得る。よって、発泡セルの緻密性が低く、耐熱性の低下で発泡白色度もまた低くなり得る。
【0100】
例えば、前記プラスチゾルは、塩化ビニル系重合体100重量部に対し40重量部から180重量部、好ましくは80重量部から160重量部、より好ましくは100から140重量部の可塑剤をさらに含んでよく、必要に応じて分散希釈剤、熱安定剤、粘度調節剤及び発泡剤等の添加剤をさらに含んでよい。
【0101】
前記可塑剤及び添加剤は、当業界に通常知られているものを用いてよい。
【0102】
<実施例>
[製造例1:塩化ビニル系第1シード]
500Lの高圧反応器に重合水230kg、1次乳化剤としてラウリル硫酸ナトリウム(Sodium Lauryl Sulfate、SLS)184g、水溶性開始剤として過硫酸カリウム(Potassium persulfate、KPS)110gを投入した後、撹拌しながら反応器に真空をかけた。真空状態の反応器に塩化ビニル単量体185kgを投入した後、反応器の温度を56℃に昇温して重合を実施した。前記重合反応が始まると2次乳化剤としてラウリル硫酸ナトリウム(SLS)11.1kgを5時間連続的に反応器に投入した。そして、反応器の圧力が4kg/cm2に到達すると反応を終結し、未反応塩化ビニル単量体を回収して除去し0.2μmの塩化ビニル系第1シードを製造した。
【0103】
[製造例2:塩化ビニル系第2シード]
200Lの高圧反応器に脱イオン水73kg、ラウリルパーオキシド(Laruyl peroxide、LPO)1.21kg、パラキノン(Paraquinone)0.9gを投入し、反応器に-730mmHgに真空をかけた。真空状態の反応器に、塩化ビニルモノマー66kgと乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(Sodium Dodecyl Benzene Sulfonate)7.8kgを投入した後、15分間撹拌した。反応器の内部温度を20℃以下に下げ、rotor-statorタイプの均質機を用いて2時間均質化した。均質化が完了すると反応器の内部温度を42℃に合わせて重合を実施した。その結果、558分後反応器の圧力が3.5kg/cm2に到達して反応を終結し、未反応塩化ビニル単量体を回収して除去した後、平均粒径が0.6μmの第2シードラテックスを得た。
【0104】
[実施例1]
500Lの高圧反応器に重合水191kg、水溶性開始剤として過硫酸カリウム(KPS)544g(4.5%濃度)、油溶性開始剤としてラウリルパーオキシド(LPO)125g、還元剤としてアスコルビン酸(Ascorbic acid)2000g(0.66%濃度)、第1シード17.69kg(39%濃度)、第2シード18.22kg(38%濃度)を投入した後、反応器に真空を実施する。真空状態の反応器に塩化ビニル単量体153kgを投入した後、反応器の温度を58℃に昇温して重合を実施した。前記重合反応が始まると乳化剤としてラウリル硫酸ナトリウム(SLS)10.7(28%濃度)を3時間連続的に反応器に投入した。そして、276分後反応器の圧力が3.5kg/cm2に到達した後に反応を終結し、未反応塩化ビニル単量体を回収して塩化ビニル系重合体を製造した。
【0105】
[実施例2から8及び比較例1から6]
前記実施例1で各成分の含量及び重合時間を下記表1に示した通り異にしたことを除いては、前記実施例1と同一の方式で、塩化ビニル系重合体を収得した。
【0106】
【0107】
[実験例1]
前記実施例及び比較例の塩化ビニル系重合体を製造する時間として重合時間を測定し、平均粒径が0から0.6μmの小口径粒子の含量を測定して下記表2に示した。
【0108】
1)重合時間:真空状態の反応器を昇温して設定温度(58℃)に到達した時点を開始時間とし、重合が終了され反応器の圧力が3.5kg/cm2に到達した時点を終了時点として重合時間を測定した。
【0109】
2)小口径粒子の含量:塩化ビニル系重合体を脱イオン水に1重量%で希釈して試料を製造した後、粒度測定器(DCS24000UHR、CPS Instruments,Inc.)で粒度分布を測定し、0から0.6μmの小口径粒子の重量%を算出した。
【0110】
【0111】
前記表2において、本発明の実施例により塩化ビニル系重合体を製造する時、比較例に比べて重合時間が大きく改善されたことが確認できる。また、本発明による塩化ビニル系重合体は、比較例に比べて0.6μm以下の小口径粒子の含量が多いことを確認した。
【0112】
[実験例2]
前記実施例及び比較例によって製造された各塩化ビニル系重合体の発泡物性を比較分析するために、各塩化ビニル系重合体を含むプラスチゾルを製造した後、発泡体の貯蔵損失係数、発泡色相(白色度)及び発泡体の断面を分析した。結果を下記表3及び
図1から
図3に示した。
【0113】
プラスチゾルの製造は、前記各塩化ビニル系重合体100gとジイソノニルフタレート(DINP)60g、TiO2(KA100、コスモ化学製)10g、CaCO3(S500H、REXM)50g、発泡剤としてアゾジカルボンアミド(ADCA)(AC7000、錦洋化学製)4g、K、Zn金属複合安定剤(KK42、BAERLOCHER)3g、粘度調節剤(BYK1148、BYK CHEMI)1g、ヒドロカーボン類溶媒(Dsol200、梨樹化学製)5gを、Werke mixer(EUROSTAR IKA)を用いて800rpmで10分間撹拌して各プラスチゾルを製造し、製造されたプラスチゾルの発泡物性を以下のような方法で評価した。
【0114】
1)貯蔵損失係数(Tan delta、@170℃、G’’/G’): 貯蔵損失係数の測定のために回転型rheometerであるAR2000EX(TA instrument)を用いた。製造されたプラスチゾルの試料を下板に一定量塗布し、25mm厚さの上板のギャップを1000μmに合わせた後、25~180℃(10℃/min)に昇温しながら変形振幅5%のせん断変形で1Hz周波数で正弦波振動入力を加えた時にplateに現れる出力回答特性を測定し、高分子の溶融特性のうち損失弾性率(Loss modulus)と貯蔵弾性率(Storage modulus)を測定した。前記損失弾性率を貯蔵弾性率で割って貯蔵損失係数を求めた。
【0115】
2)白色度(White index):各プラスチゾルを離型紙に塗布して0.5mmの棒でコーティングした後、Mathis ovenを用いて150℃で45秒間乾燥することで予備ゲル化されたシート(pregelling sheet)を製造し、200℃で105秒間加熱した。ASTM E313-73に基づき、測色計(Spectophotometer、コニカミノルタ、CM-700D)を用いて色相を測定した。
【0116】
3)発泡体断面特性:前記白色度測定の条件と同様に予備ゲル化されたシート(pregelling sheet)を製造して200℃で100秒間加熱した。発泡セルをカッティングし光学顕微鏡(NIKON SMZ1500)を用いて発泡体の断面を測定した。
【0117】
【0118】
実施例の塩化ビニル系重合体を用いたプラスチゾルの場合、比較例に比べて貯蔵損失係数が低く現れるので、発泡セルの緻密性が高いことが分かる。
【0119】
具体的に、
図1には、本発明の実施例2と比較例1による貯蔵損失係数(Tan delta、@170℃、G’’/G’)グラフの結果を示す。前記グラフにおいて150℃以上の温度範囲で温度が増加するほど、実施例2の貯蔵損失係数値が比較例1に比べて徐々に低い数値を示すことが確認できる。このように低い貯蔵損失係数値は、弾性率が大きいため加熱時に発泡剤によって発生する気泡を良く捕集し、よって発泡セルが緻密な構造を示すことを意味する。
【0120】
また、前記表3で本発明の実施例によるプラスチゾルの場合、発泡白色度が大体高く現れるので、耐熱性に優れることが確認できる。
【0121】
また、
図2には、本発明の実施例1から4による発泡体のSEM分析の結果を示し、
図3には、実施例5から8による発泡体のSEM分析の結果を示し、
図4には、比較例1から4による発泡体のSEM分析の結果を示す。これにより、本発明の実施例の場合、比較例に比べて小さな気孔が均一に分布され、構造が緻密であり、白色度(耐熱性)に優れることをまた確認できる。