IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー・ケム・リミテッドの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/12 20060101AFI20220719BHJP
   C08F 210/10 20060101ALI20220719BHJP
   C08F 265/06 20060101ALI20220719BHJP
   C08L 33/06 20060101ALI20220719BHJP
   C08L 51/04 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
C08L25/12
C08F210/10
C08F265/06
C08L33/06
C08L51/04
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020561065
(86)(22)【出願日】2019-10-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 KR2019014348
(87)【国際公開番号】W WO2020091370
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2020-10-30
(31)【優先権主張番号】10-2018-0132194
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0133947
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ダ・ウン・スン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ヨン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】チュン・ホ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ヒ・アン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ミン・ジャン
【審査官】吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0023492(KR,A)
【文献】特表2014-533763(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0005288(KR,A)
【文献】特表2019-512584(JP,A)
【文献】特表2004-521995(JP,A)
【文献】特表2018-507927(JP,A)
【文献】特開2013-057084(JP,A)
【文献】特表2014-527570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
C08C 19/00 - 19/44
C08F 6/00 - 297/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
からC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位、スチレン系単量体単位、及びビニルシアン系単量体単位を含むグラフト共重合体と、
からCのアルキル置換されたスチレン系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位を含む第1スチレン系共重合体と、
非置換スチレン系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位を含む第2スチレン系共重合体と、を含
前記第1スチレン系共重合体及び第2スチレン系共重合体を5:95から32:68の重量比で含み、
前記グラフト共重合体、第1スチレン系共重合体及び第2スチレン系共重合体の和100重量部に対して、
前記グラフト共重合体5から45重量部と、
前記第1スチレン系共重合体2から25重量部と、
前記第2スチレン系共重合体50から80重量部と、で含む、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記グラフト共重合体は、コアの平均粒径が異なる2種のグラフト共重合体を含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記グラフト共重合体は、コアの平均粒径が300から500nmである第1グラフト共重合体、及びコアの平均粒径が50から150nmである第2グラフト共重合体を含む、請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記グラフト共重合体は、ブチルアクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体、ブチルアクリレート-α-メチルスチレン-アクリロニトリル共重合体、及びブチルアクリレート-スチレン-α-メチルスチレン-アクリロニトリル共重合体からなる群から選択される1種以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記第1スチレン系共重合体は、α-メチルスチレン-アクリロニトリル共重合体、及びα-メチルスチレン-スチレン-アクリロニトリル共重合体からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記第2スチレン系共重合体は、スチレン-アクリロニトリル共重合体である、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記第1グラフト共重合体、第2グラフト共重合体、第1スチレン系共重合体及び第2スチレン系共重合体の和100重量部に対して、
前記第1グラフト共重合体5から30重量部と、
前記第2グラフト共重合体0.1から15重量部と、
前記第1スチレン系共重合体2から25重量部と、
前記第2スチレン系共重合体50から80重量部と、を含む、請求項3~6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
からCのアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位を含むオレフィン系共重合体をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
前記オレフィン系共重合体は、CからCのオレフィン系単量体単位及びCからCのアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位を85:15から65:35の重量比で含む、請求項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
前記オレフィン系共重合体は、CからCのオレフィン系単量体単位及びCからCのアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位を80:20から70:30の重量比で含む、請求項又はに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項11】
前記オレフィン系共重合体は、重量平均分子量が50,000から200,000g/molである、請求項~1のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項12】
前記オレフィン系共重合体は、エチレン-メチルアクリレート共重合体である、請求項~1のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項13】
前記グラフト共重合体、第1スチレン系共重合体及び第2スチレン系共重合体の和100重量部に対して、
前記オレフィン系共重合体を0.01から2重量部で含む、請求項~1のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本発明は、2018年10月31日付で出願された韓国特許出願第10-2018-0132194号及び2019年10月25日付で出願された韓国特許出願第10-2019-0133947号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容を本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物に関し、耐熱性、耐化学性及び外観特性に優れた熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
一般的にアクリル系ゴム質重合体に芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体がグラフト重合されたアクリル系グラフト共重合体は、耐候性及び耐老化性に優れる。このようなアクリル系グラフト共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物は、自動車、船舶、レジャー用品、建築材料、園芸用等の多方面に用いられ、その使用量が急激に増加している。
【0004】
一方、感性品質への使用者の要求の水準が高くなるにつれ、PVC、鉄板等の基材を熱可塑性樹脂組成物で仕上げ処理して高級な外観、優れた着色性及び耐候性を具現しようとする研究が行われている。
【0005】
アクリル系グラフト共重合体を含むデコシートは、既存のPVCやPPに比べて加工安定性に優れ、重金属成分を含まないため、環境に優しい素材として注目を浴びている。しかし、保管の過程で押し跡が発生するか、加工の過程でシートの寸法が変形(延びるか縮む)されるという問題が発生している。また、基材との接着のために接着剤を使用する時、耐化学性が劣ることにより溶ける問題も発生する。
【0006】
したがって、外観品質及び耐化学性が改善された熱可塑性樹脂組成物の開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、加工性、硬度、機械的特性等の基本物性を維持しつつ、耐熱性、耐化学性及び外観特性が改善された熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、CからC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位、スチレン系単量体単位、及びビニルシアン系単量体単位を含むグラフト共重合体と、CからCのアルキル置換されたスチレン系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位を含む第1スチレン系共重合体と、非置換スチレン系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位を含む第2スチレン系共重合体と、を含む熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明による熱可塑性樹脂組成物は、優れた加工性、硬度、着色性、機械的特性、耐熱性、耐化学性及び外観特性を具現できる。詳細には、本発明による熱可塑性樹脂組成物は、CからCのアルキルスチレン系単量体単位、ビニルシアン系単量体単位を含む第1スチレン系共重合体を用いることで、優れた耐熱性及び外観特性を具現できる。また、非置換スチレン系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位を含む第2スチレン系共重合体を共に用いることで、優れた耐化学性を具現できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の理解を深めるために本発明をより詳しく説明する。
【0011】
本明細書及び特許請求の範囲において用いられた用語や単語は、通常的又は辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最善の方法によって説明するために、用語の概念を適宜定義することができるという原則に即し、本発明の技術的思想に適合する意味と概念として解釈されなければならない。
【0012】
本発明において、グラフト共重合体のシェルの重量平均分子量は、コアにグラフトされたスチレン系単量体単位とビニルシアン系単量体単位を含む共重合体の重量平均分子量を意味してよい。
【0013】
ここで、スチレン系単量体単位は、CからCのアルキル置換されたスチレン系単量体単位及び非置換されたスチレン系単量体単位からなる群から選択される1種以上であってよい。
【0014】
本発明において、グラフト共重合体のシェルの重量平均分子量は、グラフト共重合体をアセトンに溶解させて遠心分離してから、アセトンに溶解された部分(sol)をテトラヒドロフランに溶解させた後、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC、waters breeze)を用いて標準PS(ポリスチレン標準;standard polystyrene)試料に対する相対値で測定することができる。
【0015】
本発明において、グラフト共重合体のグラフト率は下記式に基づいて算出できる。
グラフト率(%):グラフトされた単量体の重量(g)/ゴム質重合体の重量(g)×100
グラフトされた単量体の重量(g):グラフト共重合体粉末をアセトンに溶解させて遠心分離した後の不溶性物質(gel)の重量
ゴム質重合体の重量(g):グラフト共重合体粉末の製造工程中に理論上投入されたCからC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体の重量
【0016】
本発明において、シード、コア、及びグラフト共重合体の平均粒径は、動的光散乱(dynamic light scattering)法を用いて測定してよく、詳細には、Nicomp 380装置(製品名、製造社:PSS)を用いて測定してよい。
【0017】
本明細書において、平均粒径は、動的光散乱法によって測定される粒度分布における算術平均粒径、具体的には散乱強度平均粒径を意味してよい。
【0018】
本発明において、重量平均分子量は、溶出液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用い、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー;Gel Permeation Chromatography、waters breeze)を介して標準PS(ポリスチレン標準;standard polystyrene)試料に対する相対値で測定することができる。
【0019】
1.熱可塑性樹脂組成物
本発明の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物は、A)CからC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位、スチレン系単量体単位、及びビニルシアン系単量体単位を含むグラフト共重合体と、B-1)CからCのアルキル置換されたスチレン系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位を含む第1スチレン系共重合体と、B-2)非置換スチレン系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位を含む第2スチレン系共重合体とを含む。
【0020】
本発明の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物は、C)CからCのアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位を含むオレフィン系共重合体をさらに含んでよい。
【0021】
以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物の各構成要素を具体的に説明する。
【0022】
A)グラフト共重合体
グラフト共重合体は、CからC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位、スチレン系単量体単位、及びビニルシアン系単量体単位を含む。
【0023】
前記グラフト共重合体は、熱可塑性樹脂組成物に優れた耐候性及び機械的特性を付与することができる。詳細には、前記CからC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位は、熱可塑性樹脂組成物に優れた耐候性を付与することができ、前記グラフト共重合体のコアは熱可塑性樹脂組成物に優れた機械的特性を付与することができる。
【0024】
前記グラフト共重合体は、CからC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位、スチレン系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位からなる群から選択される1種以上を含む架橋重合体からなるコアと、前記コアにグラフトされたスチレン系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位を含むシェルと、を含むコア-シェル構造であってよい。
【0025】
前記CからC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位は、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート及びデシル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上の単量体由来の単位であってよく、このうちブチルアクリレート由来の単位が好ましい。
【0026】
前記CからC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位は、前記グラフト共重合体の全重量に対して、40から60重量%又は45から55重量%で含まれてよく、このうち45から55重量%で含まれるのが好ましい。前述した範囲を満たせば、前記第1グラフト共重合体の耐衝撃性等の機械的特性がより改善され得る。
【0027】
前記スチレン系単量体単位は、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン及び2,4-ジメチルスチレンからなる群から選択される1種以上の単量体由来の単位であってよく、このうちスチレン及びα-メチルスチレンからなる群から選択される1種以上の単量体由来の単位であってよい。
【0028】
前記スチレン系単量体単位は、前記グラフト共重合体の全重量に対して、25から50重量%又は30から45重量%で含まれてよく、このうち30から45重量%で含まれるのが好ましい。前述した範囲を満たせば、前記グラフト共重合体の重合がより容易である。また、前記グラフト共重合体と前記第1及び第2スチレン系共重合体との相溶性が改善されるだけでなく、熱可塑性樹脂組成物の加工性がより改善され得る。
【0029】
前記ビニルシアン系単量体単位は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル及びエタクリルロニトリルからなる群から選択される1種以上由来の単位であってよく、このうちアクリロニトリル由来の単位が好ましい。
【0030】
前記ビニルシアン系単量体単位は、前記グラフト共重合体の全重量に対して、3から20重量%又は6から17重量%で含まれてよく、このうち6から17重量%で含まれるのが好ましい。前述した範囲を満たせば、前記グラフト共重合体の耐化学性がより改善され得る。
【0031】
前記グラフト共重合体は、ブチルアクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体、ブチルアクリレート-α-メチルスチレン-アクリロニトリル共重合体及びブチルアクリレート-スチレン-α-メチルスチレン-アクリロニトリル共重合体からなる群から選択されてよく、このうちブチルアクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体が好ましい。
【0032】
前記グラフト共重合体は、前記グラフト共重合体、第1スチレン系共重合体及び第2スチレン系共重合体の和100重量部に対して、5から45重量部又は10から35重量部で含まれてよく、このうち10から35重量部で含まれるのが好ましい。前述した範囲を満たせば、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性等の機械的特性を著しく改善させることができる。
【0033】
一方、前記グラフト共重合体は、1)CからC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体、スチレン系単量体及びビニルシアン系単量体からなる群から選択される1種以上を重合してコアを製造する段階と、2)前記コアの存在下でスチレン系単量体及びビニルシアン系単量体を重合してシェルを製造する段階とを含む製造方法で製造されてよい。
【0034】
前記コアを製造する段階は、CからC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体、スチレン系単量体及びビニルシアン系単量体からなる群から選択される1種以上を重合してシードを製造する段階と、前記シードの存在下でCからC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体を重合してコアを製造する段階とを含んでよい。
【0035】
前記CからC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体、スチレン系単量体及びビニルシアン系単量体の種類は前述した通りである。
【0036】
前記重合は、乳化重合であってよく、50から85℃又は60から80℃で行われてよく、このうち60から80℃で行われるのが好ましい。前述した範囲を満たせば、乳化重合が安定的に行われ得る。
【0037】
前記シード及びコアを製造する段階は、乳化剤、開始剤、架橋剤、グラフト剤、電解質及び水からなる群から選択される1種以上の存在下で行われてよい。
【0038】
前記乳化剤は、C12からC18であるアルキルスルホコハク酸の金属塩誘導体及びC12からC20であるアルキル硫酸エステルの金属塩誘導体からなる群から選択される1種以上であってよい。
【0039】
前記C12からC18であるアルキルスルホコハク酸の金属塩誘導体は、ジシクロヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸カリウム及びジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸リチウムからなる群から選択される1種以上であってよい。
【0040】
前記C12からC20であるアルキル硫酸エステルの金属塩誘導体は、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、オレイン硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸カリウム及びオクタデシル硫酸カリウムからなる群から選択される1種以上であってよい。
【0041】
前記開始剤は、無機過酸化物又は有機過酸化物であってよい。前記無機過酸化物は、水溶性開始剤であって、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム及び過硫酸アンモニウムからなる群から選択される1種以上であってよい。前記有機過酸化物は、脂溶性開始剤であって、クメンヒドロペルオキシド及びベンゾイルペルオキシドからなる群から選択される1種以上であってよい。
【0042】
前記架橋剤は、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート及びトリメチロールメタントリアクリレートからなる群から選択される1種以上であってよい。
【0043】
前記グラフト剤は、アリルメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルアミン及びジアリルアミンからなる群から選択される1種以上であってよい。
【0044】
前記電解質は、KCl、NaCl、KHCO、NaHCO、KCO、NaCO、KHSO、NaHSO、Na、K、KPO、NaPO又はNaHPO、KOH及びNaOHからなる群から選択される1種以上のものであって、このうちKOHが好ましい。
【0045】
前記水は、乳化重合時に媒質の役割を担い、イオン交換水であってよい。
【0046】
一方、前記シェルを製造する段階において、スチレン系単量体とビニルシアン系単量体は一定の速度で連続投入されながら重合されてよく、前述した方法で投入されると、重合時に除熱及び過多過熱による暴走を容易に抑制できる。
【0047】
前記重合は、乳化重合であってよく、50から85℃又は60から80℃で行われてよく、このうち60から80℃で行われるのが好ましい。前述した範囲を満たせば、乳化重合が安定的に行われ得る。
【0048】
前記シェルを製造する段階は、乳化剤、開始剤、及び水からなる群から選択される1種以上の存在下で行われてよい。
【0049】
前記乳化剤、開始剤及び水は、前記スチレン系単量体及びビニルシアン系単量体とともに連続投入しながら、重合されるのが好ましい。前述した条件を満たせば、pHが一定に維持されてグラフト重合が容易であり、グラフト共重合体粒子の安定性に優れるだけでなく、粒子の内部が均一に製造され得る。
【0050】
前記乳化剤は、カルボン酸金属塩誘導体であってよく、前記カルボン酸金属塩誘導体は、C12からC20の脂肪酸金属塩及びロジン酸金属塩からなる群から選択される1種以上であってよい。
【0051】
前記C12からC20の脂肪酸金属塩は、脂肪酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム及びオレイン酸カリウムからなる群から選択される1種以上であってよい。
【0052】
前記ロジン酸金属塩は、ロジン酸ナトリウム塩及びロジン酸カリウム塩からなる群から選択される1種以上であってよい。
【0053】
前記開始剤の種類は、前述した通りであり、このうち有機過酸化物が好ましく、t-ブチルペルオキシエチルヘキシルカーボネートがより好ましい。
【0054】
一方、前述した製造方法で製造されたグラフト共重合体は、ラテックス形態であってよい。
【0055】
前記ラテックス形態のグラフト共重合体は、凝集、熟成、洗浄、脱水及び乾燥を行って粉末状に製造されてよい。
【0056】
一方、前記グラフト共重合体は、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、耐候性、着色性、表面光沢特性及び外観特性を改善させるために、コアの平均粒径が異なる2種のグラフト共重合体、すなわち、第1グラフト共重合体及び第2グラフト共重合体を含んでよい。
【0057】
前記第1グラフト共重合体は、コアの平均粒径が300から500nm又は350から450nmであってよく、このうち350から450nmが好ましい。前述した範囲を満たせば、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性等の機械的特性が改善され得る。
【0058】
前記第1グラフト共重合体は、グラフト率が20から100%、40から80%又は45から60%であってよく、このうち40から60%が好ましい。前述した範囲を満たせば、前記第1及び第2スチレン系共重合体との相溶性が改善され、熱可塑性樹脂組成物内でグラフト共重合体が均一に分散され得る。また、熱可塑性樹脂組成物の機械的特性が著しく改善され得る。
【0059】
前記第1グラフト共重合体は、シェルの重量平均分子量が100,000から300,000g/mol又は150,000から250,000g/molであってよく、このうち150,000から250,000g/molが好ましい。前述した範囲を満たせば、前記第1及び第2スチレン系共重合体との相溶性が改善され、熱可塑性樹脂組成物内でグラフト共重合体が均一に分散され得る。また、熱可塑性樹脂組成物の機械的特性が著しく改善され得る。
【0060】
前記第1グラフト共重合体は、前記第1グラフト共重合体、第2グラフト共重合体、第1スチレン系共重合体及び第2スチレン系共重合体の和100重量部に対して、5から30重量部又は10から25重量部で含まれてよく、このうち10から25重量部で含まれるのが好ましい。前述した範囲を満たせば、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性等の機械的特性を著しく改善させることができる。
【0061】
一方、前記第2グラフト共重合体は、コアの平均粒径が50から150nm又は75から125nmであってよく、このうち75から125nmであるのがより好ましい。前述した範囲を満たせば、コアの比表面積が増加して熱可塑性樹脂組成物の耐候性が著しく改善され得る。また、可視光線がコアで散乱されずに通過できるため、着色性も改善できる。また、表面光沢特性及び外観特性も改善できる。
【0062】
前記第2グラフト共重合体は、グラフト率が20から80%又は25から60%であってよく、このうち25から60%が好ましい。前述した範囲を満たせば、前記第1及び第2スチレン系共重合体との相溶性が改善され、熱可塑性樹脂組成物内でグラフト共重合体が均一に分散され得る。また、熱可塑性樹脂組成物の着色性、表面光沢性が著しく改善され得る。
【0063】
前記第2グラフト共重合体は、シェルの重量平均分子量が50,000から200,000g/mol又は70,000から170,000g/molであってよく、このうち70,000から170,000g/molが好ましい。前述した範囲を満たせば、前記第1及び第2スチレン系共重合体との相溶性がより改善され、熱可塑性樹脂組成物の機械的特性がより改善され得る。
【0064】
前記第2グラフト共重合体は、前記第1グラフト共重合体、第2グラフト共重合体、第1スチレン系共重合体及び第2スチレン系共重合体の和100重量部に対して、0.1から15重量部又は1から10重量部で含まれてよく、このうち1から10重量部で含まれるのが好ましい。前述した範囲を満たせば、熱可塑性樹脂組成物の耐候性、着色性、及び表面光沢特性を著しく改善させることができる。
【0065】
前記グラフト共重合体は、前記第1グラフト共重合体及び前記第2グラフト共重合体を50:50から99:1又は60:40から95:5の重量比で含んでよく、このうち60:40から95:5の重量比で含むのが好ましい。前述した範囲を満たせば、熱可塑性樹脂組成物が優れた機械的特性、耐候性、着色性及び表面光沢特性を具現できる。
【0066】
B-1)第1スチレン系共重合体
第1スチレン系共重合体は、マトリックス共重合体であって、CからCのアルキルスチレン系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位を含む。
【0067】
前記第1スチレン系共重合体は、熱可塑性樹脂組成物に優れた耐熱性及び外観特性を付与することができる。詳細には、優れた耐熱性によって、熱可塑性樹脂組成物で製造された成型品の寸法安定性を改善でき、押し跡を最小化できる。
【0068】
前記CからCのアルキルスチレン系単量体単位は、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン及び2,4-ジ-メチルスチレンからなる群から選択される1種以上由来の単位であってよく、このうちα-メチルスチレン由来の単位が好ましい。
【0069】
前記ビニルシアン系単量体単位の種類は、前述した通りである。
【0070】
前記第1スチレン系共重合体は、CからCのアルキルスチレン系単量体及びビニルシアン系単量体を含む単量体混合物の共重合物であってよい。
【0071】
前記単量体混合物は、前記CからCのアルキルスチレン系単量体及びビニルシアン系単量体を60:40から90:10又は65:35から85:15の重量比で含んでよく、このうち65:35から85:15の重量比で含むのが好ましい。前述した範囲を満たせば、耐熱性がより改善され得る。
【0072】
前記第1スチレン系共重合体は、重合を容易に行うために、非置換スチレン系単量体単位をさらに含んでよい。すなわち、前記第1スチレン系共重合体は、CからCのアルキルスチレン系単量体、ビニルシアン系単量体及び非置換スチレン系単量体を含む単量体混合物の共重合物であってよい。前記非置換スチレン系単量体単位は、スチレン由来の単位であってよい。
【0073】
この場合、前記単量体混合物は、前記CからCのアルキルスチレン系単量体55から75重量%、前記ビニルシアン系単量体20から40重量%、前記非置換スチレン系単量体0.1から15重量%で含んでよい。好ましくは、前記単量体混合物は、前記単量体混合物の全重量に対して、前記CからCのアルキルスチレン系単量体60から70重量%、前記ビニルシアン系単量体25から35重量%、前記非置換スチレン系単量体1から10重量%で含んでよい。前述した範囲を満たせば、第1スチレン系共重合体の重合がより容易に行われ得る。
【0074】
前記第1スチレン系共重合体は、重量平均分子量が50,000から150,000g/mol又は70,000から130,000g/molであってよく、このうち70,000から130,000g/molが好ましい。前述した範囲を満たせば、優れた耐化学性及び機械的特性を具現できる。
【0075】
前記第1スチレン系共重合体は、α-メチルスチレン-アクリロニトリル共重合体及びα-メチルスチレン-スチレン-アクリロニトリル共重合体からなる群から選択されてよく、このうちα-メチルスチレン-アクリロニトリル共重合体が好ましい。
【0076】
前記第1スチレン系共重合体は、前記グラフト共重合体、第1スチレン系共重合体及び第2スチレン系共重合体の和100重量部に対して、2から25重量部又は7から20重量部で含まれてよく、このうち7から20重量部で含まれるのが好ましい。前述した範囲を満たせば、熱可塑性樹脂組成物の耐熱性及び加工性がより改善され、熱可塑性樹脂成型品の外観特性がより改善され得る。
【0077】
前記グラフト共重合体が第1グラフト共重合体と第2グラフト共重合体を全て含む場合にも、前記第1スチレン系共重合体は、前述した含量で熱可塑性樹脂組成物に含まれてよい。
【0078】
前記第1スチレン系共重合体は、CからCのアルキルスチレン系単量体とビニルシアン系単量体を含む単量体混合物を懸濁又は塊状重合で製造した共重合物であってよく、このうち高純度の重合体を製造できる塊状重合で製造した共重合物であるのが好ましい。
【0079】
B-2)第2スチレン系共重合体
第2スチレン系共重合体は、マトリックス共重合体であって、非置換スチレン系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位を含む。
【0080】
前記第2スチレン系共重合体は、熱可塑性樹脂組成物に優れた加工性、耐化学性及び機械的特性を付与することができる。
【0081】
前記非置換スチレン系単量体とビニルシアン系単量体の種類は、前述した通りである。
【0082】
前記第2スチレン系共重合体は、非置換スチレン系単量体及びビニルシアン系単量体を含む単量体混合物の共重合物であってよい。
【0083】
前記単量体混合物は、前記非置換スチレン系単量体及びビニルシアン系単量体を60:40から90:10又は65:35から85:15の重量比で含んでよく、このうち65:35から85:15の重量比で含むのが好ましい。前述した範囲を満たせば、加工性及び耐化学性がより改善され得る。
【0084】
前記第2スチレン系共重合体は、重量平均分子量が100,000から250,000g/mol又は130,000から220,000g/molであってよく、このうち130,000から220,000g/molが好ましい。前述した範囲を満たせば、優れた耐化学性及び機械的特性を具現できる。
【0085】
前記第2スチレン共重合体は、スチレン-アクリロニトリル共重合体であるのが好ましい。
【0086】
前記第2スチレン系共重合体は、前記グラフト共重合体、第1スチレン系共重合体及び第2スチレン系共重合体の和100重量部に対して、50から80重量部又は55から75重量部で含まれてよく、このうち55から75重量部で含まれるのが好ましい。前述した範囲を満たせば、熱可塑性樹脂組成物の加工性、耐化学性及び機械的特性がより改善され得る。
【0087】
前記グラフト共重合体が第1グラフト共重合体と第2グラフト共重合体を全て含む場合にも、前記第2スチレン系共重合体は前述した含量で熱可塑性樹脂組成物に含まれてよい。
【0088】
一方、前記第1スチレン系共重合体と前記第2スチレン系共重合体は、5:95から32:68、9:91から25:75、又は10:90から20:80の重量比で熱可塑性樹脂組成物に含まれてよく、このうち10:90から20:80の重量比で熱可塑性樹脂組成物に含まれるのが好ましい。前述した範囲を満たせば、基本物性である硬度、機械的特性及び耐熱性の低下は最小化するとともに、外観特性及び耐化学性がより改善され得る。
【0089】
前記第2スチレン系共重合体は、非置換スチレン系単量体とビニルシアン系単量体を含む単量体混合物を懸濁又は塊状重合して製造した共重合物であってよく、このうち高純度の共重合体を製造できる塊状重合で製造した共重合物であるのが好ましい。
【0090】
C)オレフィン系共重合体
オレフィン系共重合体は、添加剤であって、CからCのアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位を含んでよい。
【0091】
前記オレフィン系共重合体は、熱可塑性樹脂組成物に優れた耐化学性を付与することができる。
【0092】
前記オレフィン系共重合体は、CからCのオレフィン系単量体及びCからCのアルキル(メタ)アクリレート系単量体を含む単量体混合物の共重合物であってよい。前記CからCのオレフィン系単量体は、エチレン、プロピレン及びブテンからなる群から選択される1種以上であってよく、このうちエチレンが好ましい。前記CからCのアルキル(メタ)アクリレート系単量体は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート及びプロピル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上であってよく、このうちメチルアクリレートが好ましい。
【0093】
前記オレフィン系共重合体は、CからCのオレフィン系単量体単位及びCからCのアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位を85:15から65:35又は80:20から70:30の重量比で含んでよく、このうち80:20から70:30の重量比で含むのが好ましい。前述した範囲を満たせば、前記オレフィン系共重合体の耐化学性がより改善され得る。具体的には、前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位の含量が過度に少なければ、前記グラフト共重合体、第1スチレン系共重合体及び第2スチレン系共重合体との相溶性が低下し、熱可塑性樹脂組成物内に均一に分散できないため、耐化学性を改善する効果が微々であり得る。前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位の含量が過度に多ければ、前記グラフト共重合体、第1スチレン系共重合体及び第2スチレン系共重合体との相溶性は改善されるが、オレフィン系単量体単位の含量が減少して耐化学性を改善する効果が微々であり得る。
【0094】
前記オレフィン系共重合体は、重量平均分子量が50,000から200,000g/mol、70,000から150,000g/mol又は90,000から120,000g/molであってよく、このうち90,000から120,000g/molが好ましい。前述した範囲を満たせば、前記グラフト共重合体、第1スチレン系共重合体及び第2スチレン系共重合体との相溶性に優れ、機械的特性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供できる。具体的には、前述した範囲未満であれば、機械的特性が低下し、前述した範囲を超過すれば、前記グラフト共重合体、第1スチレン系共重合体及び第2スチレン系共重合体との相溶性が低下し、熱可塑性樹脂組成物内に均一に分散できないため、耐化学性を改善する効果が低下し得る。
【0095】
前記オレフィン系共重合体は、エチレン-メチルアクリレート共重合体であるのが好ましい。
【0096】
前記オレフィン系共重合体は、前記グラフト共重合体、第1スチレン系共重合体及び第2スチレン系共重合体の和100重量部に対して、0.01から2重量部又は0.5から1重量部で含まれてよく、このうち0.5から1重量部で含まれるのが好ましい。前述した範囲を満たせば、熱可塑性樹脂組成物の硬度、機械的特性及び耐熱性に影響を与えることなく耐化学性がより改善され得る。
【0097】
前記グラフト共重合体が第1グラフト共重合体と第2グラフト共重合体を全て含む場合にも、前記オレフィン系共重合体は、前述した含量で熱可塑性樹脂組成物に含まれてよい。
【0098】
前記オレフィン系共重合体は、市販の物質を用いるか、直接製造して用いてよい。
【0099】
前記オレフィン系共重合体を直接製造する場合、溶液重合、スラリー重合、気相重合及び高圧重合からなる群から選択される1種以上の重合法で製造してよい。
【0100】
一方、本発明の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物は、滴下防止剤、難燃剤、抗菌剤、帯電防止剤、安定剤、離型剤、熱安定剤、紫外線安定剤、無機物添加剤、滑剤、酸化防止剤、光安定剤、顔料、染料及び無機充填剤からなる群から選択される1種以上の添加剤をさらに含んでよい。
【0101】
本発明の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物は、滑剤、酸化防止剤及び紫外線安定剤からなる群から選択される1種以上を含むのが好ましい。
【0102】
本発明の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物で製造された成形品はシートであってよく、好ましくは家具用デコシートであってよい。
【0103】
以下、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるよう、本発明の実施形態に対して詳しく説明する。しかし、本発明は、色々と異なる形態に具現されてよく、ここで説明する実施形態に限定されない。
【実施例
【0104】
製造例1
<シードの製造>
窒素置換された反応器にスチレン3重量部、アクリロニトリル3重量部、乳化剤としてドデシル硫酸ナトリウム0.1重量部、架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレート0.03重量部、グラフト剤としてアリルメタクリレート0.02重量部、電解質としてKOH0.025重量部及び蒸留水53.32重量部を一括投入し、70℃まで昇温した後、開始剤として過硫酸カリウム0.03重量部を一括投入して重合を開始した。その後2時間重合してから終了し、シード(平均粒径:200nm)を収得した。
【0105】
前記シードの平均粒径は、Nicomp 380装置(製品名、製造社:PSS)を用いて動的光散乱法で測定した。
【0106】
<コアの製造>
前記シードが収得された反応器に、ブチルアクリレート50重量部、乳化剤としてドデシル硫酸ナトリウム0.6重量部、架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレート0.1重量部、グラフト剤としてアリルメタクリレート0.04重量部、蒸留水30重量部、及び開始剤として過硫酸カリウム0.05重量部を混合した混合物を、70℃で4時間一定の速度で連続投入しながら重合し、投入が終了した後1時間さらに重合してから終了し、コア(平均粒径:400nm)を収得した。
【0107】
前記コアの平均粒径は、Nicomp 380装置(製品名、製造社:PSS)を用いて動的光散乱法で測定した。
【0108】
<シェルの製造>
前記コアが収得された反応器に、スチレン35重量部、アクリロニトリル9重量部、蒸留水39重量部を投入し、乳化剤としてロジン酸カリウム塩1.9重量部、及び開始剤としてt-ブチルペルオキシエチルヘキシルカーボネート0.19重量部を含む第1混合物と、活性化剤としてピロリン酸ナトリウム0.16重量部、デキストロース0.24重量部、硫酸第一鉄0.004重量部を含む第2混合物とを、それぞれ75℃で3時間一定の速度で連続投入しながら重合した。連続投入が完了した後、75℃で1時間さらに反応させ、60℃まで冷却して重合反応を終了し、シェルを含むグラフト共重合体ラテックス(平均粒径:500nm)を製造した。
【0109】
前記グラフト共重合体ラテックスの平均粒径はNicomp 380装置(製品名、製造社:PSS)を用いて動的光散乱法で測定した。
【0110】
<グラフト共重合体粉末の製造>
前記グラフト共重合体ラテックスに塩化カルシウム水溶液(濃度:23重量%)0.8重量部を投入して70℃で7分間常圧凝集した後、93℃で7分間熟成し、脱水及び洗浄してから90℃の熱風で30分間乾燥した後、グラフト共重合体粉末を製造した。
【0111】
製造例2
<シードの製造>
窒素置換された反応器に、ブチルアクリレート6重量部、乳化剤としてドデシル硫酸ナトリウム0.5重量部、架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレート0.03重量部、グラフト剤としてアリルメタクリレート0.02重量部、電解質としてKOH0.025重量部及び蒸留水53.32重量部を一括投入し、70℃まで昇温した後、開始剤として過硫酸カリウム0.03重量部を一括投入して重合を開始した。その後2時間重合してから終了し、シード(平均粒径:54nm)を収得した。
【0112】
前記シードの平均粒径は、Nicomp 380装置(製品名、製造社:PSS)を用いて動的光散乱法で測定した。
【0113】
<コアの製造>
前記シードが収得された反応器に、ブチルアクリレート43重量部、乳化剤としてドデシル硫酸ナトリウム0.5重量部、架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレート0.1重量部、グラフト剤としてアリルメタクリレート0.1重量部、蒸留水30重量部、及び開始剤として過硫酸カリウム0.05重量部を混合した混合物を、70℃で2.5時間一定の速度で連続投入しながら重合し、投入が終了した後1時間さらに重合してから終了し、コア(平均粒径:101nm)を収得した。
【0114】
前記コアの平均粒径は、Nicomp 380装置(製品名、製造社:PSS)を用いて動的光散乱法で測定した。
【0115】
<シェルの製造>
前記コアが収得された反応器に、スチレン36重量部、アクリロニトリル15重量部、蒸留水39重量部を投入し、乳化剤としてロジン酸カリウム塩1.5重量部、分子量調節剤としてt-ドデシルメルカプタン0.1重量部、及び開始剤としてt-ブチルペルオキシエチルヘキシルカーボネート0.04重量部を含む第1混合物と、活性化剤としてピロリン酸ナトリウム0.1重量部、デキストロース0.12重量部、硫酸第一鉄0.002重量部を含む第2混合物とを、それぞれ75℃で2.5時間一定の速度で連続投入しながら重合した。連続投入が完了した後、75℃で1時間さらに反応させ、60℃まで冷却して重合反応を終了し、シェルを含むグラフト共重合体ラテックス(平均粒径:130nm)を製造した。
【0116】
前記グラフト共重合体ラテックスの平均粒径は、Nicomp 380装置(製品名、製造社:PSS)を用いて動的光散乱法で測定した。
【0117】
<グラフト共重合体粉末の製造>
製造例1と同一の方法でグラフト共重合体粉末を製造した。
【0118】
製造例3
125mlの高圧反応器を真空状態にしてから窒素を充填した後、トルエン30mlを投入した。その後、前記反応器を適当な恒温槽に入れて塩化アルミニウム(III)31mmolを投入した後、メチルアクリレート31mmol(約2.67g)を投入して反応温度が安定化されるまで30分間待った。その後、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル;Azobisisobutyronitrile)0.0031mmolをクロロベンゼン5mlに溶かして前記反応器に注入した。次いで、エチレンを35barで反応器に充填し、反応温度を70℃に昇温して20時間重合を実施した。重合反応が完了してから反応温度を常温に下げた後、非溶媒であるエタノールを投入して製造された共重合体を固体相に沈殿させた。この固体相を沈めて上澄み液を除去し、再びエタノールを添加して固体相を洗ってから沈ませ上澄み液を除去し、残っている固体相に、粒子を堅固にするために水を添加して撹拌した後、これを濾過して共重合体だけ回収した。このように得られた共重合体を60℃の真空オーブンで一日間乾燥した。
【0119】
一方、収得された共重合体の重量平均分子量は104,000g/molであり、エチレン単位76重量%及びメチルアクリレート単位24重量%を含んだ。
【0120】
収得された共重合体の重量平均分子量は、溶出液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用い、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー;Gel Permeation Chromatography、waters breeze)を介して標準PS(ポリスチレン標準;standard polystyrene)試料に対する相対値で測定した。
【0121】
実施例及び比較例
下記実施例及び比較例で用いられた成分の仕様は次の通りである。
【0122】
(A-1)第1グラフト共重合体:前記製造例1で製造されたグラフト共重合体粉末を用いた。
【0123】
(A-2)第2グラフト共重合体:前記製造例2で製造されたグラフト共重合体粉末を用いた。
【0124】
(B-1)第1スチレン系共重合体:LG化学社の98UHM(α-メチルスチレン及びアクリロニトリルの共重合物、重量平均分子量:100,000g/mol)を用いた。
【0125】
重量平均分子量は、溶出液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用い、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー;Gel Permeation Chromatography、waters breeze)を介して標準PS(ポリスチレン標準;standard polystyrene)試料に対する相対値で測定した。
【0126】
(B-2)第2スチレン系共重合体:LG化学社の97HC(スチレン及びアクリロニトリルの共重合物、重量平均分子量:170,000g/mol)を用いた。
【0127】
重量平均分子量は、溶出液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用い、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー;Gel Permeation Chromatography、waters breeze)を介して標準PS(ポリスチレン標準;standard polystyrene)試料に対する相対値で測定した。
【0128】
(C)オレフィン系共重合体:前記製造例3で製造された共重合体を用いた。
【0129】
前述した成分を下記[表1]から[表3]に記載された含量の通り混合して撹拌し、熱可塑性樹脂組成物を製造した。
【0130】
実験例1
実施例及び比較例の熱可塑性樹脂組成物を、230℃に設定された二軸混練押出機に投入し、ペレットを製造した。前記ペレットを下記に記載の方法で物性を評価し、下記[表1]から[表3]に記載した。
【0131】
(1)流動指数(Melt Flow Index、g/10分):ASTM D1238に基づいて、220℃で測定した。
【0132】
実験例2
実験例1で製造されたペレットを射出して試料を製造し、前記試料を下記に記載の方法で物性を評価し、その結果を下記[表1]から[表3]に記載した。
【0133】
(2)硬度:ASTM785に基づいて測定した。
【0134】
(3)アイゾット衝撃強度(kg・cm/cm):ASTM256に基づいて測定した。
【0135】
(4)熱変形温度(heat deflection temperature、℃):ASTM D648に基づいて測定した。
【0136】
実験例3
実験例1で製造されたペレットを用いてフィルム押出器で0.3mmのフィルムを製造し、前記フィルムを下記に記載の方法で物性を評価し、その結果を下記[表1]から[表3]に記載した。
【0137】
(5)フィルム外観:フィルムの押し跡及び突起を目視で評価した。
×:フィルム変形、○:良い、◎:非常に良い
【0138】
(6)耐化学性:メチルエチルケトンを入れたビーカーに、フィルムを2分間浸漬した。フィルムが溶け始める時間に従って耐化学性を評価した。
×:20秒以下、○:40超過、100秒未満、◎:100秒以上
【0139】
【表1】
【0140】
【表2】
【0141】
【表3】
【0142】
表1から表3を参照すれば、第1グラフト共重合体、第2グラフト共重合体、第1スチレン系共重合体及び第2スチレン系共重合体を含む実施例1は、硬度、衝撃強度、熱変形温度、フィルム外観、及び耐化学性にいずれも優れることが確認できた。そして、実施例1に比べてオレフィン系共重合体をさらに含む実施例2から実施例4は、実施例1に比べて耐化学性がより改善されたことが確認できた。そして、実施例2から実施例4を比べると、オレフィン系共重合体が少量で含まれている実施例2が、硬度、衝撃強度及び熱変形温度の低下は最小化するとともに、耐化学性が改善されたことが確認できた。
【0143】
第1スチレン系共重合体と第2スチレン系共重合体の重量比を多様化した比較例2、実施例2、実施例5から実施例10及び比較例3を比べると、第1スチレン系共重合体の含量が増加するほど熱変形温度が改善され、第2スチレン系共重合体の含量が増加するほど硬度が増加することが確認できた。そして、第1スチレン系共重合体と第2スチレン系共重合体の重量比が約10:90から約32:68である実施例2、実施例7及び実施例8が、硬度及び衝撃強度の低下が最小化されるとともに、フィルム外観及び耐化学性は改善されたことが確認できた。第1スチレン系共重合体を含まない比較例1及び比較例2は、衝撃強度及びフィルム外観が著しく低下し、第2スチレン系共重合体を含まない比較例3は、耐化学性が著しく低下することが確認できた。