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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】有機発光素子用インク組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/328 20140101AFI20220719BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
C09D11/328
C09B67/20 F
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020565413
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-09
(86)【国際出願番号】 KR2019012638
(87)【国際公開番号】W WO2020067800
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2020-11-20
(31)【優先権主張番号】10-2018-0116458
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ヨン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ミ・キョン・キム
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/159933(WO,A1)
【文献】特開2009-059846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00-13/00
C09K 11/00-11/89
H01L 51/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)下記化学式1で表される化合物、
2)沸点が260~400℃であり、下記化学式2-1または2-2で表される芳香族エステル類の第1溶媒、および
3)沸点が200~400℃の脂肪族エーテル類、または脂肪族エステル類の第2溶媒を含み、
前記第1溶媒の沸点が前記第2溶媒の沸点より高く、
前記第1溶媒と第2溶媒の重量比は、10:90~50:50である、有機発光素子用インク組成物:
【化1】
上記化学式1中、
LおよびL~Lはそれぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~60のアルキレン;または置換または非置換の炭素数6~60のアリーレンであり、
ArおよびArはそれぞれ独立して、置換または非置換の炭素数6~60のアリール;または置換または非置換のN、OおよびSで構成される群から選択されるいずれか一つ以上のヘテロ原子を含む炭素数2~60のヘテロアリールであり、
~Rはそれぞれ独立して、水素、重水素、置換または非置換の炭素数1~60のアルキル、置換または非置換の炭素数1~60のアルコキシ、置換または非置換の炭素数6~60のアリール、またはN、OおよびSで構成される群から選択されるいずれか一つ以上のヘテロ原子を含む炭素数2~60のヘテロアリールであり、
~Yはそれぞれ独立して、水素、または-X-Aであり、ただし、Y~Yのうちの2以上が-X-Aであり、
Xは、単結合、O、またはSであり、
Aは、熱または光によって架橋可能な官能基であり、
n1およびn4は、それぞれ0~4の整数であり、
n2およびn3は、それぞれ0~3の整数であり、
【化2】
上記化学式2-1および2-2中、
X’は単結合、炭素数1~15のアルキレン、または-O-(炭素数1~15のアルキレン)であり、
R’ は水素、炭素数1~15のアルキル、炭素数1~15のアルコキシであり、
R’ は炭素数1~15のアルキルである。
【請求項2】
Aは、下記で構成される群から選択されるいずれか一つである、請求項1に記載のインク組成物:
【化3】
上記式中、
は水素;または置換または非置換の炭素数1~6のアルキルであり、
~Tはそれぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~6のアルキルである。
【請求項3】
Lは、下記で構成される群から選択されるいずれか一つである、請求項1又は2に記載のインク組成物:
【化4】
上記式中、
Rはそれぞれ独立して、水素、または炭素数1~10のアルキルである。
【請求項4】
~Lはそれぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン、または下記化学式1-Aまたは1-Bである、請求項1~3のいずれか一項に記載のインク組成物:
【化5】
上記化学式1-Aおよび1-B中、
11~R13はそれぞれ独立して、水素、重水素、置換または非置換の炭素数1~60のアルキル、置換または非置換の炭素数1~60のアルコキシ、置換または非置換の炭素数6~60のアリール、またはN、OおよびSで構成される群から選択されるいずれか一つ以上のヘテロ原子を含む炭素数2~60のヘテロアリールであり、
m1~m3は、それぞれ0~4の整数である。
【請求項5】
ArおよびArは互いに同一であり、フェニル、ビフェニリル、ナフチル、フェナントレニル、ジメチルフルオレニル、またはジフェニルフルオレニルである、請求項1~4のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項6】
前記化学式1で表される化合物は、下記で構成される群から選択されるいずれか一つである、請求項1に記載のインク組成物:
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
【化40】
【化41】
【化42】
【化43】
【化44】
【化45】
【化46】
【化47】
【化48】
【化49】
【化50】
【化51】
【化52】
【化53】
【請求項7】
前記第1溶媒は、エチル4-メトキシベンゾエート、エチル4-エトキシベンゾエート、p-トリルn-オクタノエート、2-エチルヘキシルベンゾエート2-フェノキシエチルイソブチレート、4-(2-アセトキシエトキシ)トルエン、2-エトキシエチルベンゾエート、または2-フェノキシ酢酸エチルである、請求項1~6のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項8】
前記第2溶媒は、下記化学式3-1、3-2または3-3で表される化合物である、請求項1~7のいずれか一項に記載のインク組成物:
【化54】
上記化学式3-1、3-2および3-3中、
nは1~10の整数であり、
R’’は水素、または炭素数1~15のアルキルであり、
R’’は水素、または炭素数1~15のアルキルであり、
X’’は炭素数1~10のアルキレンである。
【請求項9】
前記第2溶媒は、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールn-ブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール、ジエチレングリコール、アミルn-オクタノエート、エチルn-オクタノエート、イソプロピルn-オクタノエート、プロピルn-オクタノエート、ブチルn-オクタノエート、メチルウンデカノエート、メチルラウレート、メチルトリデカノエート、ジブチルマロネート、ジブチルオキサレート、コハク酸ジエチル、エチルラウレート、メチルミリストレート、ジエチルアジペート、ジイソプロピルアジペート、ジブチルアジペートドデシルアセテート、イソアミルn-オクタノエート、またはコハク酸ジブチルである、請求項に記載のインク組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年9月28日付の韓国特許出願第10-2018-0116458号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、インクジェット工程に適用可能な有機発光素子用インク組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
一般的に、有機発光現象とは、有機物質を利用して電気エネルギーを光エネルギーに転換させる現象をいう。有機発光現象を利用する有機発光素子は、広い視野角、優れたコントラスト、速い応答時間を有し、輝度、駆動電圧および応答速度特性に優れており、多くの研究が進められている。
【0004】
有機発光素子は、一般的に正極と負極および前記正極と負極との間に有機物層を含む構造を有する。前記有機物層は、有機発光素子の効率と安全性を高めるために、それぞれ異なる物質から構成された多層の構造からなる場合が多く、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などからなる。このような有機発光素子の構造において、2つの電極の間に電圧をかけると、正極からは正孔が、負極からは電子が有機物層に注入され、注入された正孔と電子が接した時、エキシトン(exciton)が形成され、このエキシトンが再び底状態に落ちる時、光が出る。
【0005】
一方、最近では工程費用の削減のため、既存の蒸着工程の代わりに溶液工程、特にインクジェット工程を用いた有機発光素子が開発されている。草創期にはすべての有機発光素子層を溶液工程でコーティングして有機発光素子を開発しようとしたが、現在の技術では限界があり、正構造の形態でHIL、HTL、EMLのみを溶液工程で行い、以後の工程は既存の蒸着工程を活用するハイブリッド(hybrid)工程が研究中である。
【0006】
インクジェット工程を用いて有機発光素子の機能層を形成する場合、精度のためにインクがヘッドのノズルから安定して吐き出されなければならないし、塗布された後乾燥する過程で均一でかつ平坦な膜を形成しなければならない。例えば、隔壁で囲まれた機能層の形成領域にインクを塗布した後乾燥させれば、インク膜が不均一に固化する場合には膜の平坦性を確保し難いが、特に中心部の膜厚が隔壁側より厚くなるか(凸形状)、中心部より隔壁側の膜厚が厚くなる現象(凹形状)が発生する場合が多い。
【0007】
したがって、インクジェット工程を適用するにあたり、上記の問題を解決できる有機発光素子用インク組成物の開発が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国特許公開第10-2000-0051826号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、インクジェット工程に適用可能な有機発光素子用インク組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、1)下記化学式1で表される化合物、2)沸点が260~400℃の芳香族エステル類の第1溶媒、および3)沸点が200~400℃の脂肪族エーテル類、または脂肪族エステル類の第2溶媒を含み、前記第1溶媒の沸点が前記第2溶媒の沸点より高い、有機発光素子用インク組成物を提供する:
【化1】
【0011】
上記化学式1中、
LおよびL~Lはそれぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~60のアルキレン;または置換または非置換の炭素数6~60のアリーレンであり、
ArおよびArはそれぞれ独立して、置換または非置換の炭素数6~60のアリール;または置換または非置換のN、OおよびSで構成される群から選択されるいずれか一つ以上のヘテロ原子を含む炭素数2~60のヘテロアリールであり、
~Rはそれぞれ独立して、水素、重水素、置換または非置換の炭素数1~60のアルキル、置換または非置換の炭素数1~60のアルコキシ、置換または非置換の炭素数6~60のアリール、またはN、OおよびSで構成される群から選択されるいずれか一つ以上のヘテロ原子を含む炭素数2~60のヘテロアリールであり、
~Yはそれぞれ独立して、水素、または-X-Aであり、ただし、Y~Yのうちの2以上が-X-Aであり、
Xは、単結合、O、またはSであり、
Aは、熱または光によって架橋可能な官能基であり、
n1およびn4は、それぞれ0~4の整数であり、
n2およびn3は、それぞれ0~3の整数である。
【発明の効果】
【0012】
図1】本発明の実験例により膜平坦度を測定する方法を図式的に示す図である。
図2】本発明の実験例により膜イメージがN.Gと評価されたものの例を示す図である。
図3】本発明の実験例により膜イメージがO.Kと評価されたものの例を示す図である。
図4】本発明の実験例による膜平坦度の測定方法を図式的に示す図である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実験例により膜平坦度を測定する方法を図式的に示す図である。
図2】本発明の実験例により膜イメージがO.Kと評価されたものの例を示す図である。
図3】本発明の実験例により膜イメージがN.Gと評価されたものの例を示す図である。
図4】本発明の実験例による膜平坦度の測定方法を図式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の理解を助けるためにより詳しく説明する。
用語の定義
本明細書において、
【化2】
は、他の置換基に連結される結合を意味する。
【0015】
本明細書において、「置換または非置換の」という用語は、重水素;ハロゲン基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;カルボニル基;エステル基;イミド基;アミノ基;ホスフィンオキシド基;アルコキシ基;アリールオキシ基;アルキルチオキシ基;アリールチオキシ基;アルキルスルホキシ基;アリールスルホキシ基;シリル基;ホウ素基;アルキル基;シクロアルキル基;アルケニル基;アリール基;アラルキル基;アラルケニル基;アルキルアリール基;アルキルアミン基;アラルキルアミン基;ヘテロアリールアミン基;アリールアミン基;アリールホスフィン基;またはN、OおよびS原子のうちの1個以上を含むヘテロ環基からなる群から選択される1個以上の置換基で置換されているかまたは非置換であり、あるいは前記例示された置換基のうちの2以上の置換基が連結された置換基で置換されているかまたは非置換であることを意味する。例えば、「2以上の置換基が連結された置換基」は、ビフェニル基であってもよい。すなわち、ビフェニル基は、アリール基であってもよく、2個のフェニル基が連結された置換基と解釈されてもよい。
【0016】
本明細書において、カルボニル基の炭素数は特に限定されないが、炭素数1~40であることが好ましい。具体的には、下記のような構造の化合物であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0017】
【化3】
【0018】
本明細書において、エステル基は、エステル基の酸素が、炭素数1~25の直鎖、分枝鎖もしくは環鎖アルキル基、または炭素数6~25のアリール基で置換されていてもよい。具体的には、下記構造式の化合物であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0019】
【化4】
【0020】
本明細書において、イミド基の炭素数は特に限定されないが、炭素数1~25であることが好ましい。具体的には、下記のような構造の化合物であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【化5】
【0021】
本明細書において、シリル基は、具体的には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルシリル基、フェニルシリル基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
本明細書において、ホウ素基は、具体的には、トリメチルホウ素基、トリエチルホウ素基、t-ブチルジメチルホウ素基、トリフェニルホウ素基、フェニルホウ素基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
本明細書において、ハロゲン基の例としては、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素がある。
【0024】
本明細書において、前記アルキル基は、直鎖もしくは分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、1~40であることが好ましい。一実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~20である。また一つの実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~10である。また一つの実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~6である。アルキル基の具体的な例としては、メチル、エチル、プロピル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチルブチル、1-エチルブチル、ペンチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、オクチル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、1-エチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、イソヘキシル、2-メチルペンチル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシルなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
本明細書において、前記アルケニル基は、直鎖もしくは分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、2~40であることが好ましい。一実施形態によれば、前記アルケニル基の炭素数は2~20である。また一つの実施形態によれば、前記アルケニル基の炭素数は2~10である。また一つの実施形態によれば、前記アルケニル基の炭素数は2~6である。具体的な例としては、ビニル、1-プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、3-メチル-1-ブテニル、1,3-ブタジエニル、アリル、1-フェニルビニル-1-イル、2-フェニルビニル-1-イル、2,2-ジフェニルビニル-1-イル、2-フェニル-2-(ナフチル-1-イル)ビニル-1-イル、2,2-ビス(ジフェニル-1-イル)ビニル-1-イル、スチルベニル基、スチレニル基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
本明細書において、シクロアルキル基は特に限定されないが、炭素数3~60であることが好ましく、一実施形態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~30である。また一つの実施形態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~20である。また一つの実施形態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~6である。具体的には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、3-メチルシクロペンチル、2,3-ジメチルシクロペンチル、シクロヘキシル、3-メチルシクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、2,3-ジメチルシクロヘキシル、3,4,5-トリメチルシクロヘキシル、4-tert-ブチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
本明細書において、アリール基は特に限定されないが、炭素数6~60であることが好ましく、単環式アリール基または多環式アリール基であってもよい。一実施形態によれば、前記アリール基の炭素数は6~30である。一実施形態によれば、前記アリール基の炭素数は6~20である。前記単環式アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などであってもよいが、これらに限定されるものではない。前記多環式アリール基としては、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、クリセニル基、フルオレニル基などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0028】
本明細書において、フルオレニル基は置換されていてもよく、置換基2個が互いに結合してスピロ構造を形成してもよい。前記フルオレニル基が置換される場合、
【化6】
などであってもよい。ただし、これらに限定されるものではない。
【0029】
本明細書において、ヘテロ環基は、異種元素としてO、N、SiおよびSのうちの1個以上を含むヘテロ環基であって、炭素数は特に限定されないが、炭素数2~60であることが好ましい。ヘテロ環基の例としては、チオフェン基、フラニル基、ピロール基、イミダゾール基、チアゾール基、オキサゾール基、オキサジアゾール基、トリアゾール基、ピリジル基、ビピリジル基、ピリミジル基、トリアジニル基、アクリジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、キノリニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、フタラジニル基、ピリドピリミジニル基、ピリドピラジニル基、ピラジノピラジニル基、イソキノリル基、インドール基、カルバゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾイミダゾール基、ベンゾチアゾール基、ベンゾカルバゾール基、ベンゾチオフェン基、ジベンゾチオフェン基、ベンゾフラニル基、フェナントロリン基(phenanthroline)、イソオキサゾリル基、チアジアゾリル基、フェノチアジニル基、およびジベンゾフラニル基などがあるが、これらにのみ限定されるものではない。
【0030】
本明細書において、アラルキル基、アラルケニル基、アルキルアリール基、アリールアミン基中のアリール基は、上述したアリール基に関する説明が適用可能である。本明細書において、アラルキル基、アルキルアリール基、アルキルアミン基中のアルキル基は、上述したアルキル基に関する説明が適用可能である。本明細書において、ヘテロアリールアミン中のヘテロアリールは、上述したヘテロ環基に関する説明が適用可能である。本明細書において、アラルケニル基中のアルケニル基は、上述したアルケニル基に関する説明が適用可能である。本明細書において、アリーレンは、2価の基であることを除けば、上述したアリール基に関する説明が適用可能である。本明細書において、ヘテロアリーレンは、2価の基であることを除けば、上述したヘテロ環基に関する説明が適用可能である。本明細書において、炭化水素環は1価の基ではなく、2個の置換基が結合して形成したことを除けば、上述したアリール基またはシクロアルキル基に関する説明が適用可能である。本明細書において、ヘテロ環は1価の基ではなく、2個の置換基が結合して形成したことを除けば、上述したヘテロ環基に関する説明が適用可能である。
【0031】
化学式1で表される化合物
前記化学式1で表される化合物は、有機発光素子内の機能層を構成する物質である。また、溶媒との親和性が高くて溶媒選択性(orthogonality)を有し、前記化合物を含む有機物層以外の他の層を溶液工程で形成するときに使用する溶媒に対して耐性を有し、他の層への移動を防止することができる。また、これを含む有機発光素子は低い駆動電圧、高い発光効率および高い寿命特性を有し得る。
【0032】
好ましくは、Aは、下記で構成される群から選択されるいずれか一つである:
【化7】
【0033】
上記式中、
は、水素;または置換または非置換の炭素数1~6のアルキルであり、
~Tはそれぞれ独立して、置換または非置換の炭素数1~6のアルキルである。
好ましくは、Lは、下記で構成される群から選択されるいずれか一つである:
【化8】
【0034】
上記式中、
Rはそれぞれ独立して、水素、または炭素数1~10のアルキルである。
好ましくは、L~Lはそれぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン、または下記化学式1-Aまたは1-Bである:
【化9】
【0035】
上記化学式1-Aおよび1-B中、
11~R13はそれぞれ独立して、水素、重水素、置換または非置換の炭素数1~60のアルキル、置換または非置換の炭素数1~60のアルコキシ、置換または非置換の炭素数6~60のアリール、またはN、OおよびSで構成される群から選択されるいずれか一つ以上のヘテロ原子を含む炭素数2~60のヘテロアリールであり、
m1~m3は、それぞれ0~4の整数である。
【0036】
好ましくは、ArおよびArは互いに同一であり、フェニル、ビフェニリル、ナフチル、フェナントレニル、ジメチルフルオレニル、またはジフェニルフルオレニルである。
【0037】
前記化学式1で表される化合物の代表的な例は下記の通りである:
【0038】
【化10】
【0039】
【化11】
【0040】
【化12】
【0041】
【化13】
【0042】
【化14】
【0043】
【化15】
【0044】
【化16】
【0045】
【化17】
【0046】
【化18】
【0047】
【化19】
【0048】
【化20】
【0049】
【化21】
【0050】
【化22】
【0051】
【化23】
【0052】
【化24】
【0053】
【化25】
【0054】
【化26】
【0055】
【化27】
【0056】
【化28】
【0057】
【化29】
【0058】
【化30】
【0059】
【化31】
【0060】
【化32】
【0061】
【化33】
【0062】
【化34】
【0063】
【化35】
【0064】
【化36】
【0065】
【化37】
【0066】
【化38】
【0067】
【化39】
【0068】
【化40】
【0069】
【化41】
【0070】
【化42】
【0071】
【化43】
【0072】
【化44】
【0073】
【化45】
【0074】
【化46】
【0075】
【化47】
【0076】
【化48】
【0077】
【化49】
【0078】
【化50】
【0079】
【化51】
【0080】
【化52】
【0081】
【化53】
【0082】
【化54】
【0083】
【化55】
【0084】
【化56】
【0085】
【化57】
【0086】
一方、前記化学式1で表される化合物は、下記反応式1のような方法で製造することができる。
【0087】
【化58】
【0088】
上記反応式1中のY’を除いた残りの定義は先に定義した通りであり、Y’はハロゲンであり、好ましくはブロモ、またはクロロである。上記反応式1はアミン置換反応で、パラジウム触媒と塩基の存在下で行うことが好ましく、アミン置換反応のための反応基は当業界で公知のものによって変更可能である。前記製造方法は、後述する製造例でより具体化される。
【0089】
好ましくは、本発明に係るインク組成物で、前記化学式1で表される化合物は0.1~10wt%で含まれ、より好ましくは0.1~5wt%、0.1~2wt%で含まれる。
【0090】
一方、本発明に係るインク組成物は、前記化学式1で表される化合物以外にp型ドーピング物質をさらに含む。前記p型ドーピング物質とは、ホスト物質をp型半導体特性を有するようにする物質を意味する。p型半導体特性とは、HOMO(highest occupied molecular orbital)エネルギー準位に正孔を注入または輸送する特性、すなわち正孔の伝導度が大きい物質の特性を意味する。
【0091】
好ましくは、前記p型ドーピング物質は、下記化学式A~Fのうちのいずれか一つで表される。
【0092】
【化59】
【0093】
【化60】
【0094】
好ましくは、前記p型ドーピング物質の含有量は、前記化学式1で表される化合物に対して0重量%~50重量%である。
【0095】
第1溶媒および第2溶媒
前記化学式1で表される化合物を用いて溶液工程で機能層を形成することができるが、最近では溶液工程の中でもインクジェットプリント(inkjet printing)工程が最も多く検討されている。インクジェットプリント工程は、微細なドロップ(drop)を吐き出すため、材料の消費量を最小化できるだけでなく、精密パターンが可能となるという利点がある。
【0096】
溶液工程で平坦な機能層を製造するためには、基本的にインクの工程性と膜表面イメージ、膜平坦性を同時に確保しなければならない。インク組成物は殆どが溶媒からなり(最小90%、最大99.9%)、溶媒によってインク物性が決まるので、溶媒の選択が何よりも重要である。
【0097】
インクの工程性は、インクジェット装置のノズルからインクの乾燥現象なしに安定的に吐き出される特性であり、このため、蒸気圧が十分に低い高沸点特性を有する溶媒を選択しなければならない。インク膜イメージは、機能層の製造過程で乾燥過程を経るとき、析出/相分離せず表面が均一な膜イメージを形成する特性であり、このため、機能層の材料を十分に溶解できる高い溶解度特性と真空乾燥に適した乾燥特性を有する溶媒を選択しなければならない。また、膜イメージと同時に要求される特性は膜平坦性である。機能層は、いくつかの積層構造で形成されるため、各機能層を平坦に形成しなければならないし、完成した有機発光素子で安定した発光特性を示すことができる。したがって、インク組成物でインク工程性、膜イメージ、および膜平坦性を同時に確保できる溶媒の選択が重要である。そこで、本発明では上述した第1溶媒と第2溶媒を同時に含むインク組成物を使用することによって、前記の特性を実現することができる。
【0098】
理論に拘束されるわけではないが、第1溶媒は芳香族エステル類であって、芳香族分子構造と機能層の形成材料である前記化学式1で表される化合物間の相互作用が良好で溶解効果を高めることができる。また、第1溶媒は、第2溶媒より高い沸点を有するので、インクが乾く間に最終まで残留して析出がなく表面が均一な膜イメージを得ることができる。前記第2溶媒は脂肪族エステル類、脂肪族エーテル類、または芳香族エーテル類であって、平坦な機能層を形成する役割を果たす。一方、本明細書で意味する沸点は、常圧(1 atm)で測定した沸点を意味する。
【0099】
好ましくは、前記第1溶媒は、下記化学式2-1、または2-2で表される化合物である:
【化61】
【0100】
前記第1溶媒の代表的な例としては、エチル4-メトキシベンゾエート、エチル4-エトキシベンゾエート、p-トリルn-オクタノエート、2-エチルヘキシルベンゾエート、ジエチルフタレート、ジメチルフタレート、2-フェノキシエチルイソブチレート、4-(2-アセトキシエトキシ)トルエン、2-エトキシエチルベンゾエート2-フェノキシ酢酸エチルが挙げられる。
【0101】
前記第1溶媒の代表的な例としては、エチル4-メトキシベンゾエート、エチル4-エトキシベンゾエート、p-トリルn-オクタノエート、2-エチルヘキシルベンゾエート、ジエチルフタレート、ジメチルフタレート、2-フェノキシエチルイソブチレート、4-(2-アセトキシエトキシ)トルエン、2-エトキシエチルベンゾエート、2-イソプロポキシベンゾエート、2-フェノキシ酢酸エチルが挙げられる。
【0102】
好ましくは、前記第2溶媒は、下記化学式3-1、3-2または3-3で表される化合物である:
【化62】
【0103】
上記化学式3-1、3-2および3-3中、
nは1~10の整数であり、
R’’は水素、または炭素数1~15のアルキルであり、
R’’は水素、または炭素数1~15のアルキルであり、
X’’は炭素数1~10のアルキレンである。
【0104】
好ましくは、前記第2溶媒は、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールn-ブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール、ジエチレングリコール、アミルn-オクタノエート、エチルn-オクタノエート、イソプロピルn-オクタノエート、プロピルn-オクタノエート、ブチルn-オクタノエート、メチルウンデカノエート、メチルラウレート、メチルトリデカノエート、ジブチルマロネート、ジブチルオキサレート、コハク酸ジエチル、エチルラウレート、メチルミリストレート、ジエチルアジペート、ジイソプロピルアジペート、ジブチルアジペート、またはドデシルアセテートである。
【0105】
好ましくは、前記第1溶媒と第2溶媒の重量比は1:99~50:50である。より好ましくは、前記重量比は10:90~40:60である。
【0106】
インク組成物
上述した本発明に係るインク組成物は、有機発光素子の機能層の製造に使用することができる。前記インク組成物を用いて溶液工程で有機発光素子の機能層の製造に使用することができ、特にインクジェット工程を適用することができる。
【0107】
前記インクジェット工程は、上述した本発明に係るインク組成物を使用することを除いては、当業界で使用される方法が用いられる。一例として、前記インク組成物を吐き出してインク膜を形成する段階と、前記インク膜を乾燥する段階とを含むことができる。また、前記化学式1で表される化合物は、熱または光によって架橋可能な官能基を含んでいるため、前記段階以後に熱処理または光処理する段階をさらに含むことができる。
【0108】
一方、前記インク組成物で形成可能な機能層は、有機発光素子の正孔注入層、正孔輸送層および発光層である。また、前記機能層を除いては、当業界で用いられる有機発光素子の構成および製造方法を適用できるので、本明細書では詳細な説明を省略する。
【0109】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は本発明をより容易に理解するために提供されているに過ぎず、これによって本発明の内容が限定されるものではない。
【実施例
【0110】
[製造例]
製造例1:化合物3の製造
【化63】
【0111】
前記化合物3-1(1.58g、3.74mmol)、N4,N4’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(572mg、1.7mmol)、およびナトリウムt-ブトキシド(980mg、10.2mmol)が入ったフラスコにトルエンを入れた。90℃のオイルバス中にフラスコを浸漬した後、Pd(PtBu(43mg、0.085mmol)を入れて1時間反応させた。水を入れて反応を止め、ジクロロメタンで抽出した後、MgSOで有機層を乾燥させた。有機溶媒を真空回転濃縮機を用いて除去した後、残余物をカラムクロマトグラフィーで精製して、前記化合物3(収率55%)を得た。
MS[M+H]=1022
【0112】
製造例2:化合物1の製造
【化64】
【0113】
化合物3-1の代わりに化合物1-1を使用し、N4,N4’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミンの代わりにN4,N4’-ジ(ビフェニル-4-イル)ビフェニル-4,4’-ジアミンを使用したことを除いては、前記製造例1と同様の方法で、化合物1を製造した。
MS[M+H]=1374
【0114】
製造例3:化合物2の製造
【化65】
【0115】
化合物3-1の代わりに化合物2-1を使用し、N4,N4’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミンの代わりにN4,N4’-ジ(ビフェニル-4-イル)ビフェニル-4,4’-ジアミンを使用したことを除いては、前記製造例1と同様の方法で、化合物2を製造した。
MS[M+H]=1342
【0116】
製造例4:化合物4の製造
1)中間体4-1の製造
【化66】
【0117】
500ml丸いフラスコに、2-ブロモ-9-フェニル-9H-フルオレン-9-オル(50g、148.3mmol、1.0eq)とフェノール(41.8g、444.9mmol、3.0eq)を入れて、メタンスルホン酸(200ml、0.74M)に溶かした。還流下で一晩攪拌した。その後、飽和NaHCO水溶液で反応を止め、酢酸エチルで有機層を抽出した。硫酸マグネシウムで有機層を乾燥させた後、溶媒を除去しカラムクロマトグラフィーで精製して、中間体化合物4-1を得た。
【0118】
2)中間体4-2の製造
【化67】
【0119】
500ml丸いフラスコに、中間体4-1(30g、63.9mmol、1.0eq)と炭酸セシウム(41.6g、127.8mmol、2.0eq)をDMF(120ml、0.5M)に溶かした後、50℃に昇温して攪拌した。その後、4-ビニルベンジルクロリド(9.15ml、9.75g、1.0eq)を入れて60℃で攪拌した。常温まで冷却した後、水を入れて反応を止めた後、酢酸エチルを用いて有機層を抽出した。有機層を分離して硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を除去しカラムクロマトグラフィーで精製して、中間体化合物4-2を得た。
【0120】
3)化合物4の製造
【化68】
【0121】
250ml丸いフラスコに、中間体4-2(12.0g、20.49mmol、2.05eq)、N4,N4’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(3.36g、10.0mmol、1.0eq)、NaOtBu(3.36g、34.99mmol、3.5eq)、Pd(PtBu(255mg、0.5mmol、0.05eq)をトルエン(100ml)に溶かした後、窒素雰囲気下で攪拌して反応させた。その後、反応が完了したら、水と酢酸エチルで後処理し、有機層を分離して乾燥させた後、ろ過した。その後、溶媒を回転減圧蒸発器で除去した。得られた未精製物質をカラムクロマトグラフィーで精製し溶媒を除去して、化合物4(白い固体)を得た。
MS[M+H]=1234
【0122】
製造例5:化合物5の製造
1)中間体5-1の製造
【化69】
【0123】
500ml丸いフラスコに、4-(2-ブロモ-9-(4-(tert-ブチル)フェニル)-9H-フルオレン-9-イル)フェノール(50g、106.50mmol、1.0eq)、4-ブロモベンズアルデヒド(23.6g、127.8mmol、1.2eq)、炭酸カリウム(44.2g、319.50mmol、3.0eq)を入れて、ドライピリジン(200ml、0.5M)に溶かした。その後、酸化銅(II)(17.0g、213.0mmol、2eq)をゆっくりと添加し、120℃に昇温して還流下で反応を進行させた。反応が終わったら飽和NaHCO水溶液で反応を止め、酢酸エチルで有機層を抽出した。硫酸マグネシウムで有機層を乾燥させた後、溶媒を除去して得られた粗生成物をジクロロメタンに溶かしてエタノール沈殿によって、固体の中間体化合物5-1を得た。
【0124】
2)中間体5-2の製造
【化70】
【0125】
メチルトリフェニルホスホニウムブロミド(12.46g、34.87mmol、2.0eq)が入った丸いフラスコに、無水テトラヒドロフラン(50ml、0.2M)を入れて、アイスバス中に丸いフラスコを浸漬した。カリウムtert-ブトキシド(3.9g、34.87mmol、2.0eq)を一度に入れて、アイスバス中で20分間攪拌した。中間体化合物5-1(10.0g、17.44mmol、1.0eq)をテトラヒドロフラン(30ml)に溶かした後、滴下漏斗を用いて漸次混合物に添加した。その後、テトラヒドロフラン(10ml)で丸いフラスコと漏斗を洗い、これも入れた。水(50ml)を入れて反応を終了し、酢酸エチルで有機層を抽出した。硫酸マグネシウムで有機層を乾燥させた後、溶媒を除去しカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物5-2を得た。
【0126】
3)化合物5の製造
【化71】
【0127】
250ml丸いフラスコに、中間体化合物5-2(10.0g、17.50mmol、2.05eq)、N4,N4’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(2.87g、8.53mmol、1.0eq)、NaOtBu(2.87g、29.86mmol、3.5eq)、Pd(PtBu(218.0mg、0.43mmol、0.05eq)をトルエン(90ml)に溶かした後、窒素雰囲気下で攪拌して反応させた。その後、反応が完了したら水と酢酸エチルで後処理し、有機層を分離して乾燥させた後、ろ過した。その後、溶媒を回転減圧蒸発器で除去した。得られた未精製物質をカラムクロマトグラフィーで精製し溶媒を除去して、化合物5(白い固体)を得た。
MS[M+H]=1318
【0128】
250ml丸いフラスコに、4-(2-ブロモ-9-(p-トリル)-9H-フルオレン-9-イル)フェノール(15g、35.1mmol、1.0eq)、炭酸カリウム(14.6g、105.3mmol、3eq)、ヨウ化銅(I)(334.3mg、1.76mmol、0.05eq)、4-ブロモ-1,2-ジヒドロシクロブタベンゼン6.4g、35.1mmol、1.0eq)を入れて、トルエン(175ml)に溶かした。還流装置を設けた後、120℃で加熱し攪拌して反応を進行させた。反応が完了したら飽和NaHCO水溶液で反応を止め、水と酢酸エチルで後処理した。有機層を分離してMgSOを用いて乾燥させた後、ろ過した。その後、溶媒を回転減圧蒸発器で除去し、得られた未精製物質をカラムクロマトグラフィーで精製して、中間体化合物6-1を得た。
【0129】
250ml丸いフラスコに、4-(2-ブロモ-9-(p-トリル)-9H-フルオレン-9-イル)フェノール(15g、35.1mmol、1.0eq)、炭酸カリウム(14.6g、105.3mmol、3eq)、ヨウ化銅(I)(334.3mg、1.76mmol、0.05eq)、1-ブチルイミダゾール(4.4g、35.1mmol、1.0eq)を入れて、トルエン(175ml)に溶かした。還流装置を設けた後、120℃で加熱し攪拌して反応を進行させた。反応が完了したら飽和NaHCO水溶液で反応を止め、水と酢酸エチルで後処理した。有機層を分離してMgSOを用いて乾燥させた後、ろ過した。その後、溶媒を回転減圧蒸発器で除去し、得られた未精製物質をカラムクロマトグラフィーで精製して、中間体化合物6-1を得た。
【0130】
2)化合物6の製造
【化73】
【0131】
250ml丸いフラスコに、中間体化合物6-1(10.0g、18.89mmol、2.05eq)、N4,N4’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(3.10g、9.21mmol、1.0eq)、NaOtBu(3.10g、32.24mmol、3.5eq)、Pd(PtBu(235.1mg、0.46mmol、0.05eq)をトルエン(120ml)に溶かした後、窒素雰囲気下で攪拌して反応させた。その後、反応が完了したら水と酢酸エチルで後処理し、有機層を分離して乾燥させた後、ろ過した。その後、溶媒を回転減圧蒸発器で除去した。得られた未精製物質をカラムクロマトグラフィーで精製し溶媒を除去して、化合物6(白い固体)を得た。
MS[M+H]=1234
【0132】
[実施例]
使用溶媒
以下、実施例および比較例で使用した溶媒は下記表1の通りであり、各沸点は、下記表1に記載の通りである。下記沸点は、常圧(1 atm)で測定した沸点を意味する。
【0133】
【表1】
【0134】
実施例1-1
第1溶媒としてジメチルフタレートと、第2溶媒としてテトラエチレングリコールジメチルエーテルを1:99、10:90、20:80、30:70、40:60および50:50の重量比で混合した混合溶液をそれぞれ準備した。前記混合溶液それぞれに、上記で製造した化合物1が1.6wt%、下記化学式2で表される化合物Aが0.4wt%となるように添加してインク組成物を製造した。
【化74】
【0135】
実施例1-2~6-23
前記実施例1-1と同様の方法で製造し、それぞれの添加物質を下記表2~7の通り変更したことを除いては、同様の方法でインク組成物を製造した。下記表2~7で、ドーピング材料は下記の通りである。
【化75】
【化76】
【0136】
【表2A】
【表2B】
【0137】
【表3A】
【表3B】
【0138】
【表4A】
【表4B】
【0139】
【表5A】
【表5B】
【0140】
【表6A】
【表6B】
【0141】
【表7A】
【表7B】
【0142】
比較例1~7
前記実施例1-1と同様の方法で製造し、第2溶媒のみを使用して下記表8の通り変更したことを除いては、同様の方法でインク組成物を製造した。
【0143】
【表8】
【0144】
[実験例]
前記実施例および比較例で製造したインク組成物に対し、以下の実験によりその特性を評価した。
【0145】
(1)インク安定性の評価
実施例および比較例で製造したインク組成物を25℃、大気圧、一般大気条件下で密閉されたカートリッジ中に1ヶ月間保管し、インク状態を肉眼で確認した時、下記基準の通り評価した。
-O:非常に安定
-X:固形分析出、相分離
【0146】
(2)吐出安定性の評価
実施例および比較例で製造したインク組成物をDimatix Materials Cartridge(Fujifilm社製)のheadに注入し、10pLの液滴を吐き出させ、カメラ装備により肉眼で観察された吐出イメージを下記基準の通り評価した。
-液滴が揺れずに20分以上安定して直進性があるように吐出:O
-液滴の直進性が多少低下:△
-液滴が吐き出されない:X
【0147】
(3)膜イメージの評価
実施例および比較例で製造したインク組成物をDimatix Materials Cartridge(Fujifilm社製)のheadに注入し、各ピクセルに9滴ずつインクの水滴を吐出した(図1参照)。次に、真空乾燥および熱処理して溶媒を除去し、最終的にインク膜を形成した。製造されたインク膜に対して膜イメージ(Optical microscopeで確認)、およびprofile(optical profilerで確認、Zygo社製を使用)を観察して、以下の通り評価した。
X:ピクセル内に粒などの異物やキラキラしたものや白い点などが観察される場合(図2参照)
O:上記の場合が観察されない場合(図3参照)
【0148】
(4)膜平坦度の評価
図4に示すように、pixel部位に実施例および比較例で製造したインク組成物を吐出し、真空乾燥および熱処理して溶媒を除去した後、インク膜のprofileを観察(optical profilerで確認、Zygo社製を使用)し、この時、インクは20nm~150nmの厚さに形成した。次に、(Hmax-Hmin)/Hcenterの値で以下の通り評価した。
-0.3未満:O
-0.3以上0.5未満:△
-0.5以上:X
【0149】
上記の結果を下記表9~表15に示す。
【0150】
【表9】
【0151】
【表10】
【0152】
【表11】
【0153】
【表12】
【0154】
【表13】
【0155】
【表14】
【0156】
【表15】
図1
図2
図3
図4