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特許7106638多層液晶フィルム、偏光板および偏光板の製造方法
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  • 特許-多層液晶フィルム、偏光板および偏光板の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】多層液晶フィルム、偏光板および偏光板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20220719BHJP
【FI】
G02B5/30
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020522348
(86)(22)【出願日】2019-01-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 KR2019000897
(87)【国際公開番号】W WO2019146994
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-04-20
(31)【優先権主張番号】10-2018-0009456
(32)【優先日】2018-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ヨン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヨンジン・キム
(72)【発明者】
【氏名】キョン・ドゥ・パク
(72)【発明者】
【氏名】デ・ヒ・イ
【審査官】中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-043073(JP,A)
【文献】特開2017-097331(JP,A)
【文献】特表2013-538363(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0144590(KR,A)
【文献】特開2014-071190(JP,A)
【文献】特開2003-262727(JP,A)
【文献】特開2016-091022(JP,A)
【文献】特開2015-171788(JP,A)
【文献】特開2017-058659(JP,A)
【文献】特表2011-510345(JP,A)
【文献】特表2012-523581(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0078727(KR,A)
【文献】特表2017-527845(JP,A)
【文献】特開2004-029824(JP,A)
【文献】特表2019-509515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材上に備えられた第1配向膜と、該第1配向膜上に備えられた第1液晶フィルムと、該第1液晶フィルム上に備えられた第2配向膜と、該第2配向膜上に備えられる第2液晶フィルムとを含み、
前記第1配向膜は、配向物質として4-ベンジルオキシ-シンナメート-プロピル-アクリレートを含み、アクリレートとしてHDDA(1,6-hexanediol diacrylate)を含み、
前記配向物質と前記アクリレートとの重量比(配向物質:アクリレート)は、3:1~5:1であり、前記基材と前記第1配向膜との間の剥離力が0.5N以下である、多層液晶フィルム。
【請求項2】
前記第1配向膜は、水平配向膜であり、前記第1液晶フィルムは、水平配向液晶フィルムであり、前記第2配向膜は、垂直配向膜であり、前記第2液晶フィルムは、垂直配向液晶フィルムである、請求項1に記載の多層液晶フィルム。
【請求項3】
前記第1配向膜は、垂直配向膜であり、前記第1液晶フィルムは、垂直配向液晶フィルムであり、前記第2配向膜は、水平配向膜であり、前記第2液晶フィルムは、水平配向液晶フィルムである、請求項1に記載の多層液晶フィルム。
【請求項4】
前記第2配向膜は、多官能アクリレートを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層液晶フィルム。
【請求項5】
偏光子と、該偏光子の少なくとも一面に備えられた請求項1~4のいずれか1項に記載の多層液晶フィルムであって、前記第2液晶フィルムが前記偏光子に隣接して配置された多層液晶フィルムとを含む偏光板。
【請求項6】
基材上に、配向物質として4-ベンジルオキシ-シンナメート-プロピル-アクリレートを含み、アクリレートとしてHDDA(1,6-hexanediol diacrylate)を含み、前記配向物質と前記アクリレートとの重量比(配向物質:アクリレート)が3:1~5:1である第1配向組成物をコーティングして第1配向膜を形成するステップと、
前記第1配向膜上に第1液晶フィルムを形成するステップと、
前記第1液晶フィルム上に第2配向膜を形成するステップと、
前記第2配向膜上に第2液晶フィルムを形成するステップと、
前記第2液晶フィルムを偏光子に貼り合わせるステップと、
前記基材を剥離するステップとを含み、
前記基材と前記第1配向膜との間の剥離力が0.5N以下である、偏光板の製造方法。
【請求項7】
前記第2配向膜を形成するステップは、多官能アクリレートを含む第2配向組成物をコーティングして形成する、請求項6に記載の偏光板の製造方法。
【請求項8】
前記第2配向組成物は、多官能アクリレート2重量%~15重量%、光開始剤0.2重量%~2重量%、および溶媒83重量%~97.5重量%を含む、請求項7に記載の偏光板の製造方法。
【請求項9】
前記第1配向膜は、水平配向膜であり、前記第1液晶フィルムは、水平配向液晶フィルムであり、前記第2配向膜は、垂直配向膜であり、前記第2液晶フィルムは、垂直配向液晶フィルムである、請求項6~8のいずれか一項に記載の偏光板の製造方法。
【請求項10】
前記第1配向膜は、垂直配向膜であり、前記第1液晶フィルムは、垂直配向液晶フィルムであり、前記第2配向膜は、水平配向膜であり、前記第2液晶フィルムは、水平配向液晶フィルムである、請求項6~8のいずれか一項に記載の偏光板の製造方法。
【請求項11】
前記第1液晶フィルムと前記第2配向膜との間、または前記第2液晶フィルムと前記第2配向膜との間に粘着剤を形成しない、請求項6~10のいずれか一項に記載の偏光板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、2018年1月25日付で韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2018-0009456号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、多層液晶フィルム、偏光板および偏光板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
位相差フィルム(retardation film)は多様な用途に使用できる。位相差フィルムは、例えば、表示装置の視野角特性を向上させるために液晶セルの一側または両側に配置される。位相差フィルムはさらに、反射型LCDやOLED(Organic Light Emitting Device)などにおいて反射防止および視認性の確保などのために使用されたりする。
【0004】
位相差フィルムは、例えば、液晶物質により製造できる。液晶物質を位相差フィルムに使用するためには、所望の位相差を示すようにするために液晶物質を適切に配向させることが必要な場合がある。例えば、配向された液晶フィルムが2枚以上積層された多層液晶フィルムを製造するためには、一般的にそれぞれ配向された液晶フィルムを粘着剤を介して積層する方法がある。しかし、このような方法は、工程が煩わしく、時間および費用が多くかかり、最終素子の厚さが厚くなる問題点がある。
【0005】
粘着剤を使用せずに多層液晶フィルムを製造する方法に関する特許文献1は、ラビング処理された基材上に水平配向液晶をコーティングした後、水平配向液晶フィルムの硬化度を調節して垂直配向液晶物質をコーティングする技術を開示している。しかし、特許文献1の製造方法は、垂直配向液晶の配向を向上させると、液晶フィルム間の接着力が低下し、液晶コーティング性が低下する問題点があり、液晶コーティング性を向上させると、垂直配向液晶の配向性が低下する問題点がある。
【0006】
また、偏光板を薄型化するために製造された多層液晶フィルムを偏光子に転写した後、多層液晶フィルムの基材を剥離する工程が用いられているが、基材と基材が付着していた層との剥離力が高い基材を用いる場合、剥離後、ヘイズ(Haze)値が増加して偏光板の光学特性が低下し、追加の転写工程を進行させる場合に転写されない問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国特許出願公開第2004-0002793号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願は、薄型化された多層液晶フィルム、および基材と第1配向膜との間の剥離力が低く、剥離工程の後、低いヘイズ(Haze)値を有する偏光板を得ることができる偏光板の製造方法とこのような工程を用いて製造された偏光板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施態様は、基材と、該基材上に備えられた第1配向膜と、該第1配向膜上に備えられた第1液晶フィルムと、該第1液晶フィルム上に備えられた第2配向膜と、該第2配向膜上に備えられる第2液晶フィルムとを含み、
前記第1配向膜は、配向物質とアクリレートとを含み、
前記配向物質と前記アクリレートとの重量比(配向物質:アクリレート)は、3:1~5:1である多層液晶フィルムを提供する。
【0010】
本発明のもう一つの実施態様は、偏光子と、該偏光子の少なくとも一面に備えられた前述した多層液晶フィルムであって、前記第2液晶フィルムが前記偏光子に隣接して配置された多層液晶フィルムとを含む偏光板を提供する。
【0011】
本発明のさらに他の実施態様は、偏光子と、該偏光子の少なくとも一面に備えられた第1配向膜と、該第1配向膜上に備えられた第1液晶フィルムと、該第1液晶フィルム上に備えられた第2配向膜と、第2配向膜上に備えられる第2液晶フィルムとを含み、前記第1配向膜は、配向物質とアクリレートとを含み、前記配向物質と前記アクリレートとの重量比(配向物質:アクリレート)は、3:1~5:1である偏光板を提供する。
【0012】
最後に、本発明の一実施態様は、基材上に配向物質およびアクリレートを含み、前記配向物質と前記アクリレートとの重量比(配向物質:アクリレート)が3:1~5:1である第1配向組成物をコーティングして第1配向膜を形成するステップと、前記第1配向膜上に第1液晶フィルムを形成するステップと、前記第1液晶フィルム上に第2配向膜を形成するステップと、前記第2配向膜上に第2液晶フィルムを形成するステップとを含む偏光板の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の多層液晶フィルムは、液晶フィルムと配向膜との間に粘着剤を形成しないことにより、液晶フィルムの薄型化を実現するだけでなく、液晶のコーティング性を向上させることができる。
【0014】
また、本発明は、多層液晶フィルムを偏光子に貼り合わせた後、基材を剥離することにより、偏光板の薄型化を実現することができ、第1配向膜に上記配向物質およびアクリレートの重量比(配向物質:アクリレート)を3:1~5:1で含むことにより、基材と第1配向膜との間の剥離力が0.5N以下に調節され、上記多層液晶フィルムを偏光子に貼り合わせた後、基材を剥離する場合、低いヘイズ(Haze)値を有する偏光板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施態様に係る多層液晶フィルムの積層構造を示す図である。
図2】本発明の一実施態様に係る偏光板の製造工程の模式図である。
図3】本発明の一実施態様に係る偏光板の製造工程の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施態様についてより詳細に説明する。
【0017】
本出願の一実施態様に係る多層液晶フィルムは、基材と、該基材上に備えられた第1配向膜と、該第1配向膜上に備えられた第1液晶フィルムと、該第1液晶フィルム上に備えられた第2配向膜と、該第2配向膜上に備えられる第2液晶フィルムとを含み、上記第1配向膜は、配向物質とアクリレートとを含み、上記配向物質とアクリレートとの重量比(配向物質:アクリレート)は、3:1~5:1である。
【0018】
上記多層液晶フィルムにおける基材を除いた厚さは、0.1μm~5μmであってもよい。
【0019】
上記水平配向液晶フィルムは、水平配向液晶物質を含むことができる。上記垂直配向液晶フィルムは、垂直配向液晶物質を含むことができる。
【0020】
本明細書において、液晶物質は、液晶性を示す物質を意味することができる。上記液晶物質は、液晶性を示し得る部位、例えば、メソゲン(mesogen)骨格を含むことができる。
【0021】
本明細書において、水平配向液晶物質は、水平配向可能な液晶物質を意味することができ、垂直配向液晶物質は、垂直配向可能な液晶物質を意味することができる。
【0022】
本明細書において、水平配向は、液晶物質の方向子(director)が液晶フィルムの平面に対して約0゜~5゜の傾斜角を有する状態で整列された配向状態を意味することができる。
【0023】
本明細書において、垂直配向は、液晶物質の方向子(director)が液晶フィルムの平面に対して約90゜~85゜の傾斜角を有する状態で整列された配向状態を意味することができる。
【0024】
本明細書において、方向子は、液晶物質の光軸を意味することができる。本明細書において、光軸は、液晶物質の遅相軸(Slow axis)を意味することができる。一つの例として、液晶物質が棒(Rod)状の場合、光軸は、液晶物質の長軸を意味することができ、他の例として、液晶物質が円盤(Discotic)状の場合、円盤の法線方向の軸を意味することができる。
【0025】
本明細書において、水平配向は、平面配向、ツイスト配向、またはコレステリック配向を含むことができる。
【0026】
本明細書において、平面配向は、液晶フィルム内の液晶物質が水平配向され、上記液晶物質の方向子が互いに平行な状態で層をなす配向状態を意味することができる。平面配向は、均一な水平配向を有すると称することができる。
【0027】
本明細書において、ツイスト配向またはコレステリック配向は、液晶フィルム内の液晶物質が水平配向され、液晶物質の方向子が螺旋軸に沿ってねじれながら層をなして配向した螺旋状の配向状態を意味することができる。
【0028】
上記液晶物質の方向子が360゜回転を完成するまでの距離をピッチ(Pitch)とする時に、ツイスト配向は、液晶フィルムの厚さが上記ピッチ未満であってもよい。すなわち、ツイスト配向を有する液晶フィルムにおいて、液晶物質の方向子は360゜回転していなくてもよい。コレステリック配向を有する液晶フィルムでは、液晶物質の方向子が360゜回転していてもよい。コレステリック配向は、液晶化合物の方向子が螺旋軸に沿ってねじれながら層をなして配向する螺旋状の構造を有し、ピッチで液晶化合物が360゜回転していてもよい。
【0029】
上記水平配向液晶物質および/または上記垂直配向液晶物質は、重合性液晶物質であってもよい。すなわち、上記水平配向液晶物質および/または上記垂直配向液晶物質は、メソゲン骨格および1つ以上の重合性官能基を含むことができる。上記重合性液晶物質は、例えば、上記官能基を1個、2個、3個、または4個以上含むことができる。上記重合性官能基は、アルケニル基、エポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、またはメタクリロイルオキシ基であってもよい。
【0030】
上記水平配向液晶フィルムは、上記水平配向液晶物質を重合された状態で含むことができる。上記垂直配向液晶フィルムは、上記垂直配向液晶物質を重合された状態で含むことができる。本明細書において、液晶物質が重合された状態で含まれているというのは、上記液晶物質が重合されて液晶フィルム内で液晶高分子の主鎖または側鎖のような骨格を形成している状態を意味することができる。
【0031】
上記水平配向液晶物質または垂直配向液晶物質は、当業界で主に使用される重合性液晶物質を制限なく使用することが可能である。
【0032】
一つの例において、上記重合性液晶物質は、下記化学式1で表される化合物であってもよい。
【0033】
[化学式1]
【化1】
【0034】
上記化学式1において、Aは、単結合、-COO-、または-OCO-であり、R~R10は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、-U-Q-P、または下記化学式2の置換基であるか、R~Rのうち隣接する2個の置換基またはR~R10のうち隣接する2個の置換基は、互いに連結されて-U-Q-Pで置換されたベンゼンを形成するが、R~R10のうちの少なくとも1つは、-U-Q-Pでまたは下記化学式2の置換基であるか、R~Rのうち隣接する2個の置換基またはR~R10のうち隣接する2個の置換基のうちの少なくとも1つの対は、互いに連結されて-U-Q-Pで置換されたベンゼンを形成し、上記において、Uは、-O-、-COO-、または-OCO-であり、Qは、アルキレン基またはアルキリデン基であり、Pは、アルケニル基、エポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、またはメタクリロイルオキシ基である。
【0035】
[化学式2]
【化2】
【0036】
上記化学式2において、Bは、単結合、-COO-、または-OCO-であり、R11~R15は、互いに同一または異なり、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、または-U-Q-Pであるが、R11~R15のうちの少なくとも1つは、-U-Q-Pであり、上記Uは、-O-、-COO-、または-OCO-であり、Qは、アルキレン基またはアルキリデン基であり、Pは、アルケニル基、エポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、またはメタクリロイルオキシ基である。
【0037】
上記化学式2において、「
【化3】
」は、その部位が親化合物(mother compound)に連結されることを意味することができる。例えば、上記化学式2において、Bの左側における
【化4】
は、Bが化学式1のベンゼンに直接連結されることを意味することができる。
【0038】
上記単結合は、当該部位に別途の原子または原子団が存在しないことを意味することができる。例えば、上記化学式1および2において、AまたはBで表される部分に別途の原子が存在しない場合を意味する。より具体的には、化学式1において、Aが単結合の場合、Aの両側にベンゼンが直接連結されてビフェニル(biphenyl)構造を形成することができる。
【0039】
上記アルキレン基またはアルキリデン基の炭素数は1~20であってもよく、一例によれば、炭素数1~16であってもよいし、他の例によれば、炭素数1~12、炭素数1~8、炭素数1~4、炭素数4~10、または炭素数6~9のアルキレン基またはアルキリデン基が例示される。上記アルキレン基またはアルキリデン基は、直鎖、分枝鎖、または環状であってもよい。
【0040】
上記アルキレン基またはアルキリデン基は、任意的に1つ以上の置換基によって置換されていてもよい。
【0041】
上記アルケニル基は、炭素数2~20であってもよく、一例によれば、炭素数2~16であってもよいし、他の例によれば、炭素数2~12、炭素数2~8、炭素数2~4、炭素数4~10、または炭素数6~9のアルケニル基が例示される。上記アルケニル基は、直鎖、分枝鎖、または環状であってもよい。
【0042】
上記アルケニル基の例としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、またはオクテニル基などが例示され、追加の置換基によって置換されていてもよい。
【0043】
本明細書において、任意の化合物または置換基に置換されていてもよい置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、エポキシ基、シアノ基、カルボキシル基、イソシアネート基、メルカプト基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、またはアリール基などが例示されるが、これに制限されるわけではない。
【0044】
上記アリール基は、ベンゼン環を有するか、2個以上のベンゼン環が縮合された構造を含む化合物またはその誘導体に由来する1価の残基を意味することができる。また、アラルキル基(aralkyl group)などを含む概念であり得る。上記アリール基の炭素数は6~22であってもよいし、一例によれば、6~16であってもよい。
【0045】
上記アリール基の例としては、フェニル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基(xylyl group)、またはナフチル基などが例示され、追加の置換基によって置換されていてもよい。
【0046】
本発明の一実施態様によれば、上記化学式1および2において、Pは、それぞれ独立に、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、またはメタクリロイルオキシ基であってもよい。他の例において、上記化学式1および2のPは、それぞれ独立に、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基であってもよい。
【0047】
上記化学式1および2において、少なくとも1つ以上存在してもよい-U-Q-Pまたは化学式2は、R、RおよびR13のうちの1以上の位置に結合できる。
【0048】
本発明の一実施態様によれば、上記化学式1および化学式2において、-U-Q-Pまたは化学式2で置換されない置換基は、水素、ハロゲン、炭素数1~4の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基、炭素数4~12のシクロアルキル基、シアノ基、炭素数1~4のアルコキシ基、またはニトロ基であってもよい。
【0049】
もう一つの一実施態様において、上記化学式1および化学式2において、-U-Q-Pまたは化学式2で置換されない置換基は、塩素、炭素数1~4の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基、炭素数4~12のシクロアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、またはシアノ基であってもよい。
【0050】
一つの例において、水平配向物質としては、両末端における極性の差が少ないか同一の化合物を使用することができる。一例によれば、水平配向液晶化合物としては、上記化学式1において、R~Rのうちのいずれか1つおよびR~Rのうちのいずれか1つに極性の差が少ないかまたは同一の官能基を有する化合物を使用することができる。具体的には、R~Rのうちのいずれか1つとR~Rのうちのいずれか1つは、-U-Q-Pまたは化学式2であってもよいか、R~Rのうち隣接する2個の置換基およびR~Rのうち隣接する2個の置換基は、互いに連結されて-U-Q-Pで置換されたベンゼンを形成する化合物であってもよい。
【0051】
上記Uは、-O-、-COO-、または-OCO-であり、Qは、アルキレン基またはアルキリデン基であり、Pは、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、またはメタクリロイルオキシ基であってもよい。
【0052】
また、水平配向液晶物質として、化学式1のR~Rのうちのいずれか1つおよびR~Rのうちのいずれか1つが上記のように選択された場合、その他の置換基は、水素または炭素数1~6のアルキル基であってもよい。しかし、水平配向液晶物質はこれに限定されるものではなく、本発明の用途に応じて適宜選択可能である。
【0053】
また、垂直配向液晶物質としては、両末端における極性が異なる化合物を使用することができる。一例によれば、垂直配向液晶物質としては、上記化学式1において、R~Rのうちのいずれか1つが-U-Q-Pまたは化学式2であるか、R~Rのうち隣接する2個の置換基は、互いに連結されて-U-Q-Pで置換されたベンゼンを形成する化合物であってもよい。
【0054】
上記Uは、-O-、-COO-、または-OCO-であり、Qは、アルキレン基またはアルキリデン基であり、Pは、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、またはメタクリロイルオキシ基であってもよい。
【0055】
また、垂直配向液晶物質として、化学式1のR~Rのうちのいずれか1つが上記のように選択された場合、その他の置換基は、水素またはアルキル基であってもよい。しかし、垂直配向液晶物質はこれに限定されるものではなく、両末端の極性が異なる液晶化合物であれば制限なく選択可能である。
【0056】
上記水平配向液晶フィルムは、正常波長分散特性(normal wavelength dispersion)、フラット波長分散特性(flat wavelength dispersion)、または逆波長分散特性(reverse wavelength dispersion)を有することができる。本明細書において、正常波長分散特性は、下記数式1を満足する特性を意味することができ、フラット波長分散特性は、下記数式2を満足する特性を意味することができ、逆波長分散特性は、下記数式3を満足する特性を意味することができる。本発明の一例によれば、上記水平配向液晶フィルムの波長分散性は、R(450)/R(550)の値は0.8~1.2であってもよい。
【0057】
[数式1]
R(450)/R(550)>1
[数式2]
R(450)/R(550)≒1
[数式3]
R(450)/R(550)<1
【0058】
上記数式1~3中、R(λ)は、λnmの波長の光に対する液晶フィルムの面上位相差を意味することができる。上記面上位相差は、(Nx-Ny)×dで計算される数値である。上記において、Nxは、液晶フィルムのx軸方向の屈折率であり、Nyは、液晶フィルムのy軸方向の屈折率であり、dは、液晶フィルムの厚さである。上記において、x軸は、液晶フィルムの面上のいずれか一方向を意味し、y軸は、上記x軸に垂直な面上の方向を意味する。一つの例において、上記x軸は、液晶フィルムの遅相軸(slow axis)と平行な方向であり、y軸は、液晶フィルムの進相軸(fast axis)と平行な方向であってもよい。一例によれば、上記遅相軸は、下記の液晶物質の方向子と平行であり得る。
【0059】
上記水平配向液晶フィルムは、水平配向膜が形成された基材上に上記水平配向液晶物質を含む組成物を塗布し、重合することにより製造することができる。
【0060】
本明細書において、A上にBを塗布またはコーティングすることについて述べる時、特別な言及がない限り、Aに適切な表面処理を行い、Bを塗布またはコーティングすることを意味することができる。上記表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理などを例示することができる。上記表面処理は、A構成とB構成の付着力を向上させることができる。
【0061】
上記基材としては、ガラスフィルム、結晶性または非結晶性シリコンフィルム、石英フィルム、またはITO(Indium Tin Oxide)フィルムなどの無機系フィルムまたはプラスチックフィルムなどを使用することができる。上記基材としては、光学的に等方性の基材や、位相差層のように光学的に異方性の基材などを用いることができる。
【0062】
上記プラスチックフィルムとしては、TAC(triacetyl cellulose);ノルボルネン誘導体などのCOP(cyclo olefin copolymer);PMMA(poly(methyl methacrylate));PC(polycarbonate);PE(polyethylene);PP(polypropylene);PVA(polyvinylalcohol);DAC(diacetyl cellulose);PAC(polyacrylate);PES(polyethersulfone);PEEK(polystheretherketon);PPS(polyphenylsulfone);PEI(polytherimide);PEN(polyethylenenaphthalate);PET(polyehtyleneterephtalate);PI(polyimide);PSF(polysulfone);PAR(polyarylate)または非晶質フッ素樹脂などを含む基材層を用いることができるが、これに制限されるわけではない。
【0063】
上記基材上に備えられる第1配向膜は、配向物質とアクリレートとを含み、上記配向物質とアクリレートとの重量比(配向物質:アクリレート)は、3:1~5:1である。一例によれば、上記配向物質とアクリレートとの重量比(配向物質:アクリレート)は、3:1~4:1であってもよい。第1配向膜内に配向物質とアクリレートとが上記重量比範囲に含まれない場合、基材と第1配向膜との剥離時、ヘイズ(Haze)値が高くて偏光板の光学特性が低下する問題がある。
【0064】
上記偏光板のヘイズ(Haze)値は、0.1%~1.0%であってもよいし、一例によれば、0.1%~0.5%であってもよい。ヘイズ(Haze)値が上記範囲を外れる場合には、偏光板の透過度が下がって光学特性が低下し、上記範囲を満足する場合、偏光板の透過度が下がらないので、光学特性が低下しないという利点がある。
【0065】
上記基材の厚さは、40μm~100μmであってもよい。
【0066】
上記第1配向膜は、水平配向膜または垂直配向膜であってもよいし、上記第1配向膜は、前述したように、配向物質とアクリレートとを含む。本明細書において、配向物質は、光照射、具体的には、偏光紫外線、より具体的には、直線偏光紫外線の照射により液晶配向性を示す物質を意味することができる。上記第1配向膜は、上記基材上に上記配向物質およびアクリレートを含む第1配向組成物を塗布し、偏光紫外線、具体的には、直線偏光紫外線を照射することにより形成することができる。上記配向物質は、ポリシンナメート、ポリアミド、ポリイミド、ポリビニルアルコール、およびポリアミック酸のうちの少なくとも1以上を含むことができ、これに限定されない。より具体的には、4-ベンジルオキシ-シンナメート-プロピル-アクリレートであってもよい。
【0067】
上記第1配向膜に含まれるアクリレートは、多官能アクリレートであってもよいし、上記多官能アクリレートは、2個以上のアクリレート基を有する物質を意味することができる。上記多官能アクリレートとしては、PETA(Pentaerythritol triacrylate)、DCP-A(Dimethylol tricycle decane dimethacrylate)、TMPTA(Trimethylolpropane triacrylate)、DPHA(Dipentaerythritol penta-/hexa-acrylate)、HDDA(1,6-Hexanediol diacrylate)などが例示されるが、これに限定されない。
【0068】
上記第1配向組成物は、溶媒をさらに含んでもよい。
【0069】
上記第1配向組成物の重合は、紫外線を照射することにより行われる。上記紫外線照射は、常温または40℃以下の温度で行われ、200mJ~1500mJの光量で1秒~10秒間紫外線を照射することにより行われる。
【0070】
上記第1配向膜の厚さは、0.1μm~3μmであってもよい。
【0071】
上記第1配向膜上に備えられる第1液晶フィルムは、水平または垂直配向液晶フィルムであってもよいし、第1配向膜上に水平または垂直配向液晶物質を含む第1液晶組成物を塗布し、紫外線を照射することにより形成することができる。上記第1配向膜上に第1液晶組成物を塗布することは、通常のコーティング方法により行われる。上記コーティング方法は、ロールコーティング、バーコーティング、コンマコーティング、インクジェットコーティング、またはスピンコーティングなどを例示することができ、これに限定されない。
【0072】
上記第1液晶組成物は、溶媒をさらに含んでもよい。
【0073】
上記第1液晶組成物に含まれる液晶物質の重合は、紫外線を照射することにより行われる。上記紫外線照射は、常温または40℃以下の温度で行われ、200mJ~1000mJの光量で1秒~10秒間紫外線を照射することにより行われる。
【0074】
上記第1液晶フィルム上に備えられる第2配向膜は、垂直配向膜または水平配向膜であってもよいし、多官能アクリレートを含む。上記多官能アクリレートは、2個以上のアクリレート基を有する物質を意味することができる。上記多官能アクリレートとしては、PETA(Pentaerythritol triacrylate)、DCP-A(Dimethylol tricycle decane dimethacrylate)、TMPTA(Trimethylolpropane triacrylate)、DPHA(Dipentaerythritol penta-/hexa-acrylate)などを使用することができる。
【0075】
上記第2配向膜が多官能アクリレートを含む場合、ヘイズ(Haze)値が低い偏光板を製造することができ、多層液晶フィルムの表面にシミが発生しないという利点がある。
【0076】
上記第2配向膜は、上記第1液晶フィルム上に多官能アクリレートを含む第2配向組成物を塗布し、重合することにより製造できる。
【0077】
上記第2配向組成物は、光開始剤をさらに含んでもよい。
【0078】
上記第2配向組成物は、溶媒をさらに含んでもよい。
【0079】
また、上記第2配向組成物は、多官能アクリレート2重量%~15重量%、光開始剤0.2重量%~2重量%、および溶媒83重量%~97.5重量%を含むことができる。第2配向膜組成物内に多官能アクリレートの含有量が2重量%未満の場合、膜強度が減少して、追加のコーティング時にスクラッチが発生し、15重量%より多い場合には、液晶の配向性を低下させることがある。
【0080】
上記光開始剤は、本発明の技術分野で広く知られた光開始剤を制限なく使用することができ、例えば、アルファアミノケトン類、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3-ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、ロフィンダイマー類、オニウム塩類、ボレート塩類、活性エステル類、活性ハロゲン類、無機錯体、クマリン類などが挙げられる。
【0081】
上記第1液晶フィルム上に第2配向膜を塗布することは、通常のコーティング方法により行われる。上記コーティング方法は、ロールコーティング、バーコーティング、コンマコーティング、インクジェットコーティング、またはスピンコーティングなどを例示することができ、これに限定されない。
【0082】
上記第2配向組成物の重合は、紫外線を照射することにより行われる。上記紫外線照射は、常温または40℃以下の温度で行われ、200mJ~1500mJの光量で1秒~10秒間紫外線を照射することにより行われる。
【0083】
上記第2配向膜の厚さは、0.1μm~5μmであってもよい。
【0084】
上記第2液晶フィルムは、第2配向膜に垂直または水平配向液晶物質を含む第2液晶組成物を塗布し、紫外線を照射して重合することにより形成することができる。上記第2配向膜上に第2液晶物質を塗布することは、通常のコーティング方法により行われる。上記コーティング方法は、ロールコーティング、バーコーティング、コンマコーティング、インクジェットコーティング、またはスピンコーティングなどを例示することができ、これに限定されない。
【0085】
上記第2液晶組成物は、溶媒をさらに含んでもよい。
【0086】
上記溶媒は、トルエン、キシレン、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどであってもよいが、これに限定されない。
【0087】
上記第2配向膜組成物に含まれる液晶物質の重合は、紫外線を照射することにより行われる。上記紫外線照射は、常温または50℃以下の温度で行われ、300mJ~1500mJの光量で1秒~10秒間紫外線を照射することにより行われる。
【0088】
上記第1液晶フィルムまたは第2液晶フィルムの厚さは、多層液晶フィルムの用途に応じて適宜調節することができる。一実施例によれば、上記第1液晶フィルムおよび第2液晶フィルムの厚さはそれぞれ、1μm~10μm、他の例によれば、1μm~5μmの厚さを有することができるが、これに制限されるわけではない。
【0089】
本発明の多層液晶フィルムは、第1液晶フィルムと第2配向膜との間、または第2液晶フィルムと第2配向膜との間に粘着剤を形成しなくてよい。上記多層液晶フィルムは、粘着剤を介在して積層された多層液晶フィルムに比べて厚さを薄型化できるという利点がある。
【0090】
本発明の一実施態様によれば、上記多層液晶フィルムは、基材1、第1配向膜2、第1液晶フィルム3、第2配向膜4、および第2液晶フィルム5の順に積層され、本発明の一例による多層液晶フィルムの構造を図1に示した。
【0091】
本発明の一実施態様に係る多層液晶フィルムは、第1配向膜が垂直配向膜であり、第1液晶フィルムは、垂直配向液晶フィルムであり、第2配向膜は、水平配向膜であり、第2液晶フィルムは、水平配向液晶フィルムであってもよい。
【0092】
本発明の一実施態様に係る多層液晶フィルムは、第1配向膜が水平配向膜であり、第1液晶フィルムは、水平配向液晶フィルムであり、第2配向膜は、垂直配向膜であり、第2液晶フィルムは、垂直配向液晶フィルムであってもよい。
【0093】
本発明の一実施態様に係る偏光板は、偏光子と、該偏光子の少なくとも一面に備えられた前述した多層液晶フィルムであって、上記第2液晶フィルムが偏光子に隣接して配置された多層液晶フィルムとを含む。
【0094】
他の実施態様に係る偏光板は、偏光子と、該偏光子の少なくとも一面に備えられた第1配向膜と、該第1配向膜上に備えられた第1液晶フィルムと、該第1液晶フィルム上に備えられた第2配向膜と、該第2配向膜上に備えられる第2液晶フィルムとを含み、上記第1配向膜は、配向物質とアクリレートとを含み、上記配向物質とアクリレートとの重量比(配向物質:アクリレート)は、3:1~5:1である。
【0095】
上記第1配向膜、第1液晶フィルム、第2配向膜、および第2液晶フィルムは、特別な言及がない限り、上記多層液晶フィルムで述べた内容が同一に適用可能である。このような偏光板は、前述した偏光子と、該偏光子の少なくとも一面に前述した多層液晶フィルムの第2液晶フィルムが偏光子に隣接して配置された偏光板から、基材を剥離することにより製造できる。
【0096】
本発明の一実施態様によれば、上記基材1上に配向物質およびアクリレートを含み、配向物質とアクリレートとの重量比(配向物質:アクリレート)が3:1~5:1である第1配向組成物をコーティングして第1配向膜2を形成するステップと、上記第1配向膜2上に第1液晶フィルム3を形成するステップと、上記第1液晶フィルム3上に第2配向膜4を形成するステップと、上記第2配向膜上に第2液晶フィルム5を形成するステップとを含む偏光板の製造方法を提供する。
【0097】
本発明の一実施態様によれば、上記基材1上に配向物質およびアクリレートを含み、配向物質とアクリレートとの重量比(配向物質:アクリレート)が3:1~5:1である第1配向組成物をコーティングして第1配向膜2を形成するステップと、上記第1配向膜2上に第1液晶フィルム3を形成するステップと、上記第1液晶フィルム3上に第2配向膜4を形成するステップと、上記第2配向膜上に第2液晶フィルム5を形成するステップと、上記第2液晶フィルム5を偏光子6に貼り合わせるステップと、上記基材1を剥離するステップとを含む偏光板の製造方法を提供する。上記基材1、第1配向膜2、第1液晶フィルム3、第2配向膜4、および第2液晶フィルム5は、特別な言及がない限り、上記多層液晶フィルムで述べた内容が同一に適用可能である。
【0098】
上記偏光板の製造方法において、基材1を剥離するステップを含むことにより、偏光板の薄型化を実現することができる。
【0099】
上記基材と第1配向膜との間の剥離力は、0.5N以下であってもよい。
【0100】
また、上記偏光板の製造方法において、第1配向膜に配向物質とアクリレートとを重量比(配向物質:アクリレート)3:1~5:1で含むことにより、基材と第1配向膜との間の剥離力が0.5N以下に調節され、基材1を剥離する場合にも、低いヘイズ(Haze)値を有して偏光板の光学特性が低下せず、後の転写工程時に転写されない問題点が発生しないという利点がある。
【0101】
本発明の偏光板の製造方法を図2および図3に示しており、図2は、基材1上に配向物質とアクリレートとの重量比(配向物質:アクリレート)が3:1~5:1である第1配向組成物をコーティングして第1配向膜2を形成するステップと、上記第1配向膜2上に第1液晶フィルム3を形成するステップと、上記第1液晶フィルム3上に第2配向膜4を形成するステップと、上記第2配向膜上に第2液晶フィルム5を形成するステップとを示し、図3は、上記第2液晶フィルム5を偏光子6に貼り合わせるステップと、上記基材1を剥離するステップとを示した。
【0102】
本発明の偏光板の製造方法において、第1液晶フィルムと第2配向膜との間、または第2液晶フィルムと第2配向膜との間に粘着剤を形成しなくてよい。このように製造された多層液晶フィルムは、粘着剤を介在して積層された多層液晶フィルムに比べて厚さを薄型化できるという利点がある。
【0103】
上記偏光子としては、当技術分野で知られているものが使用できる。例えば、ポリビニルアルコール系(以下、PVAという)ポリマーフィルムにヨウ素または二色性染料を吸着配向させた偏光子が使用できる。
【0104】
上記偏光子と上記第2液晶フィルムは、接着または粘着剤を用いて貼り合わされる。上記接着または粘着剤としては、当技術分野で知られたものが使用できる。例えば、減圧接着剤(PSA)またはUV接着剤(UVA)を使用することができる。
【0105】
上記偏光子の一面に配向物質およびアクリレートを含み、配向物質とアクリレートとの重量比(配向物質:アクリレート)が3:1~5:1である第1配向膜と、該第1配向膜上に備えられた第1液晶フィルムと、該第1液晶フィルム上に備えられた第2配向膜と、該第2配向膜上に備えられる第2液晶フィルムの順に積層された多層液晶フィルムが形成される場合、偏光子の他面に追加のフィルムが備えられる。
【0106】
上記追加のフィルムとしては、当技術分野で知られたものを使用することができ、例えば、トリアセテートセルロース(TAC)フィルム、アクリル系フィルム開環メタセシス重合(ring opening metathesis polymerization;ROMP)で製造されたポリノルボルネン系フィルム、開環重合された環状オレフィン系重合体を再び水素添加して得られたROMP(ring opening metathesis polymerization followed by hydrogenation)重合体フィルム、ポリエステルフィルム、または付加重合(addition polymerization)で製造されたポリノルボルネン系フィルムなどが使用できる。その他にも、透明な高分子材料で製造されたフィルムが保護フィルムなどに使用できるが、これらのみに限定されるものではない。
【0107】
本発明の一実施態様によれば、前述した偏光板を含む液晶ディスプレイ装置を提供する。液晶ディスプレイ装置は、前述した偏光板の偏光子または多層液晶フィルムが液晶パネルに近く配置される。多層液晶フィルムの基材は、前述した偏光子が液晶パネルに付着した後、または付着する前に剥離される。上記偏光板は、液晶パネルに減圧接着剤(PSA)を介して付着することができ、上記減圧接着剤としては、当技術分野で知られたものが使用できる。
【0108】
上記液晶ディスプレイ装置は、バックライトユニットを含むことができる。バックライトユニットは、光源、導光板、集光フィルムや輝度向上フィルムのような光学フィルムを含むことができ、当技術分野で知られた構成を有することができる。また、上記液晶ディスプレイ装置は、前述した偏光板を上部偏光板または下部偏光板に使用できる。
【実施例
【0109】
以下、実施例を通じて本出願の実施態様を例示する。以下の実施例は本出願発明を例示するためのものであり、実施例によって本発明が限定されることを意図したものではない。
【0110】
<製造例>
製造例1.
プラスチック基材(Normal TAC)(厚さ40μm)の表面にコロナ処理後、配向物質(4-benzyloxy-cinnamate-propyl-acrylate)とHDDA(1,6-hexanediol diacrylate)とを重量比3:1(配向物質:HDDA(1,6-Hexanediol diacrylate))で混合した混合液を塗布し、紫外線を照射することにより垂直配向膜を形成した。上記垂直配向膜の表面にコロナ処理後、垂直配向液晶組成物(垂直配向液晶物質(RMM460、Merck社)をトルエンとジエチレングリコールジメチルエーテル溶媒に23%濃度に希釈)を塗布し、紫外線は1000mJの光量で照射することで、厚さ1.5μmの垂直配向液晶フィルムを形成することにより液晶フィルムを製造した。
【0111】
上記垂直配向液晶フィルムの表面にコロナ処理後、水平配向膜組成物(多官能アクリレートPETA(pentaerythritol triacrylate)5重量%、光開始剤0.5重量%、Irg184、Ciba社)、および残部の溶媒を含む)を塗布し、紫外線を照射することにより水平配向膜を形成した。上記水平配向膜の表面にコロナ処理後、水平配向液晶組成物(水平配向液晶物質(RMM1290、Merck社)をトルエンとブチルセロソルブ溶媒に25重量%濃度に希釈)を塗布し、紫外線を700mJの光量で照射して重合することにより、厚さ1.5μmの水平配向液晶フィルムを形成した。液晶フィルムの総厚さは43μmである。
【0112】
製造例2.
プラスチック基材(Normal TAC)(厚さ40μm)の表面にコロナ処理後、配向物質(4-benzyloxy-cinnamate-propyl-acrylate)とHDDA(1,6-hexanediol diacrylate)とを重量比6:1(配向物質:HDDA)で混合した混合液を塗布し、紫外線を照射することにより垂直配向膜を形成した。上記製造した垂直配向膜を用いたことを除けば、製造例1と同様の方式で液晶フィルムを製造した。
【0113】
製造例3.
プラスチック基材(Normal TAC)(厚さ40μm)の表面にコロナ処理後、配向物質(4-benzyloxy-cinnamate-propyl-acrylate)とHDDA(1,6-hexanediol diacrylate)とを重量比2.5:1(配向物質:HDDA)で混合した混合液を塗布し、紫外線を照射することにより垂直配向膜を形成した。上記製造した垂直配向膜を用いたことを除けば、製造例1と同様の方式で液晶フィルムを製造した。
【0114】
製造例4.
プラスチック基材(Normal TAC)(厚さ40μm)の表面にコロナ処理後、配向物質(4-benzyloxy-cinnamate-propyl-acrylate)とHDDA(1,6-hexanediol diacrylate)とを重量比2:1(配向物質:HDDA)で混合した混合液を塗布し、紫外線を照射することにより垂直配向膜を形成した。上記製造した垂直配向膜を用いたことを除けば、製造例1と同様の方式で液晶フィルムを製造した。
【0115】
製造例5.
プラスチック基材(Normal TAC)(厚さ40μm)の表面にコロナ処理後、トリアクリレートとブチルアクリレートとの混合液を塗布し、紫外線を照射することにより垂直配向膜を形成した。上記製造した垂直配向膜を用いたことを除けば、製造例1と同様の方式で液晶フィルムを製造した。
【0116】
製造例6.
プラスチック基材(Normal TAC)(厚さ40μm)の表面にコロナ処理後、PMMA(Poly(methyl methacrylate))とPETA(pentaerythritol triacrylate)との混合液を塗布し、紫外線を照射することにより垂直配向膜を形成した。上記製造した垂直配向膜を用いたことを除けば、製造例1と同様の方式で液晶フィルムを製造した。
【0117】
製造例7.
プラスチック基材(Normal TAC)(厚さ40μm)の表面にコロナ処理後、PETA(pentaerythritol triacrylate)混合液を塗布し、紫外線を照射することにより垂直配向膜を形成した。上記製造した垂直配向膜を用いたことを除けば、製造例1と同様の方式で液晶フィルムを製造した。
【0118】
製造例8.
プラスチック基材(Normal TAC)(厚さ40μm)の表面にコロナ処理後、配向物質(4-benzyloxy-cinnamate-propyl-acrylate)混合液を塗布し、紫外線を照射することにより垂直配向膜を形成した。上記製造した垂直配向膜を用いたことを除けば、製造例1と同様の方式で液晶フィルムを製造した。
【0119】
<実験例1>
比較例1-1.
上記製造例1において水平配向膜を形成せず、垂直配向液晶フィルム上に水平配向液晶フィルムを直に形成したことを除けば、製造例1と同様の方式で多層液晶フィルムを製造した。
【0120】
コーティング性評価
偏光板を互いに直交後、偏光板の間において大面積でコーティング性を比較し、偏光顕微鏡(NIKON 社、ECLIPSE LV100 POL)を用いてディウェッティング(dewetting)の大きさを評価した。コーティング性の評価結果、製造例1が、比較例1-1に比べてディウェッティングが減少するので、コーティング性が向上することを確認することができる。
【0121】
<実験例2>
実施例1.
上記製造例1で製造された液晶フィルムの水平配向液晶フィルム(第2液晶フィルム)をコロナ処理後、アクリレート系粘着剤を用いて偏光板に貼り合わせた。貼り合わせ後、液晶フィルムのプラスチック基材を剥離した。
【0122】
比較例1.
上記実施例1で用いた製造例1で製造された液晶フィルムの代わりに、製造例2で製造された液晶フィルムを用いたことを除けば、実施例1と同様の方式で偏光板を製造した。
【0123】
比較例2.
上記実施例1で用いた製造例1で製造された液晶フィルムの代わりに、製造例3で製造された液晶フィルムを用いたことを除けば、実施例1と同様の方式で偏光板を製造した。
【0124】
比較例3.
上記実施例1で用いた製造例1で製造された液晶フィルムの代わりに、製造例4で製造された液晶フィルムを用いたことを除けば、実施例1と同様の方式で偏光板を製造した。
【0125】
比較例4.
上記実施例1で用いた製造例1で製造された液晶フィルムの代わりに、製造例5で製造された液晶フィルムを用いたことを除けば、実施例1と同様の方式で偏光板を製造した。
【0126】
比較例5.
上記実施例1で用いた製造例1で製造された液晶フィルムの代わりに、製造例6で製造された液晶フィルムを用いたことを除けば、実施例1と同様の方式で偏光板を製造した。
【0127】
比較例6.
上記実施例1で用いた製造例1で製造された液晶フィルムの代わりに、製造例7で製造された液晶フィルムを用いたことを除けば、実施例1と同様の方式で偏光板を製造した。
【0128】
比較例7.
上記実施例1で用いた製造例1で製造された液晶フィルムの代わりに、製造例8で製造された液晶フィルムを用いたことを除けば、実施例1と同様の方式で偏光板を製造した。
【0129】
剥離力の測定
上記製造された液晶フィルムの基材フィルムと液晶層との間を万能物性分析機(Texture analyzer、Stable Micro System社のTA-XTplus)を用いて界面の剥離力を測定した。この時、ASTM D 6862による試験方法を利用した。
【0130】
ヘイズ(Haze)値の測定
上記製造された多層液晶フィルムをヘイズメーター(Haze meter、Murakami color Research Laboratory社のHM-150)で測定した。
【0131】
Ts(%)の測定、Tc(%)の測定、DOP(%)の測定
上記実施例および比較例により製造された偏光板を40mm×40mmの大きさに切断して、この試験片を測定ホルダに固定させた後、紫外可視光線分光計(V-7100、JASCO社製)を用いて初期光学物性、すなわち、単体透過度(Ts)、直交透過度(Tc)および偏光度(DOP、%)を測定した。上記、単体透過度(Ts)は、偏光板1枚に対する測定値であり、直交透過度(Tc)は、裁断された偏光板2枚を吸収軸が90゜となるように互いに直交させた後、測定して表1に示した。偏光度(DOP、%)は、2枚の偏光板を吸収軸が平行な状態で配置した場合に得られる平行透過度(Tp)と、吸収軸が90゜となるように互いに直交させた後に得られる直交透過度(Tc)とによって、下記数式で定義される。
偏光度=[(Tp-Tc)/(Tp+Tc)]×1/2
【0132】
上記実施例1と比較例1~7のヘイズ、Ts、TcおよびDOPを測定して、その結果を下記表1に示した。
【0133】
【表1】
【0134】
上記表1から、本願の実施例1は、比較例2~5に比べてヘイズ値が低く、偏光板の光学物性に優れていることを確認することができ、比較例1および7は、基材の剥離時にスクラッチが発生して偏光板のヘイズ値が非常に高くなり、光学物性が低下することを確認することができる。また、比較例6は、基材との剥離がなされないので、薄型の偏光板が得られないことを確認することができる。
【符号の説明】
【0135】
1:基材
2:第1配向膜
3:第1液晶フィルム
4:第2配向膜
5:第2液晶フィルム
6:偏光子
図1
図2
図3