(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】加飾部材製造装置及び加飾部材製造方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20220719BHJP
【FI】
B41J2/01 123
B41J2/01 129
(21)【出願番号】P 2020548177
(86)(22)【出願日】2019-08-22
(86)【国際出願番号】 JP2019032858
(87)【国際公開番号】W WO2020066390
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2018181894
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】水野 知章
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0269983(US,A1)
【文献】特開2016-167996(JP,A)
【文献】特開2013-159056(JP,A)
【文献】特開2004-291268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に加飾層が形成された加飾部材を製造する加飾部材製造装置であって、
前記加飾層を形成するために、光を受けて硬化する流体を前記基材の表面の各部位に向けて吐出する吐出部と、
微粒子を前記各部位に着弾した前記流体に向けて散布する散布部と、
前記吐出部及び前記散布部を制御する制御部と、を有し、
前記加飾部材製造装置は、前記各部位に、複数のパターンのいずれか一つを割り当てて前記基材の表面に前記加飾層を形成し、
前記制御部は、前記吐出部及び前記散布部のうちの少なくとも一方を、前記加飾部材の触感に関する設定内容に応じて前記各部位と対応付けて
前記パターン別に設定された制御条件に従って制御することを特徴とする加飾部材製造装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記設定内容に応じて前記各部位と対応付けて設定された量の前記流体が前記各部位に着弾するように前記吐出部を制御する請求項1に記載の加飾部材製造装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記加飾層の凹凸度合いに関する前記設定内容に応じて前記各部位と対応付けて設定された量の前記流体が前記各部位に着弾するように、前記吐出部を制御する請求項2に記載の加飾部材製造装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記設定内容に応じて前記各部位と対応付けて設定された種類の前記流体が前記各部位に着弾するように、前記吐出部を制御する請求項1に記載の加飾部材製造装置。
【請求項5】
前記種類が異なる前記流体の間では、前記流体の硬化した状態での延伸率が異なり、
前記制御部は、前記加飾部材の曲げ易さ及び前記加飾層の凹凸度合いに関する前記設定内容に応じて前記各部位と対応付けて設定された種類及び量の前記流体が前記各部位に着弾するように、前記吐出部を制御する請求項4に記載の加飾部材製造装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記加飾層の表面における摩擦の大きさに関する前記設定内容に応じて前記各部位と対応付けて設定された量の前記微粒子が前記各部位に着弾した前記流体に付着するように、前記散布部を制御する請求項1に記載の加飾部材製造装置。
【請求項7】
前記各部位に着弾した前記流体に光を照射して前記流体を半硬化させる半硬化部を有し、
前記散布部は、前記各部位に着弾して半硬化した前記流体に向けて前記微粒子を散布し、
前記各部位における半硬化した前記流体の量が増えるほど、前記各部位における前記微粒子の量が増加し、
前記制御部は、前記各部位における半硬化した前記流体の量が、前記摩擦の大きさに関する前記設定内容に応じて前記各部位と対応付けて設定された量となるように、前記吐出部及び前記半硬化部を制御する請求項6に記載の加飾部材製造装置。
【請求項8】
前記各部位に着弾した前記流体に光を照射して前記流体を本硬化させる本硬化部と、
前記基材の表面が前記吐出部に対向する第一位置と、前記基材の表面が前記散布部に対向する第二位置との間で前記基材を移動させる移動機構と、を有し、
前記加飾層を形成するために、
前記基材が前記第一位置にある間に前記吐出部が前記基材の表面に向けて前記流体を吐出する吐出工程と、
前記移動機構が前記基材を前記第一位置から前記第二位置に移動させる第一移動工程と、
前記基材が前記第二位置にある間に前記散布部が前記微粒子を前記流体に向けて散布させる散布工程と、
前記基材が前記第二位置にある間に前記本硬化部が前記流体に光を照射して前記流体を本硬化させる本硬化工程と、
前記移動機構が前記基材を前記第二位置から前記第一位置まで戻す第二移動工程と、が複数回繰り返される請求項6に記載の加飾部材製造装置。
【請求項9】
前記制御部は、複数回の前記散布工程によって前記各部位に着弾した前記流体に付着する前記微粒子の量が、前記摩擦の大きさに関する前記設定内容に応じて前記各部位と対応付けて設定された量となるように、各回の前記散布工程において前記散布部に各回の前記散布工程別に決められた量の前記微粒子を散布させる請求項8に記載の加飾部材製造装置。
【請求項10】
前記制御部は、各回の前記散布工程において前記散布部に、前記摩擦の大きさに関する前記設定内容に応じて前記各部位と対応付けて設定された種類の前記微粒子を、前記各部位に着弾した前記流体に向けて散布させ、
前記種類が異なる前記微粒子の間では、前記微粒子の摩擦係数が異なる請求項8に記載の加飾部材製造装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記加飾層の温度に関する前記設定内容に応じて前記各部位と対応付けて設定された種類の前記微粒子が前記基材の表面に着弾した前記流体に付着するように前記散布部を制御し、
前記種類が異なる前記微粒子の間では、前記微粒子の熱伝導率が異なる請求項1に記載の加飾部材製造装置。
【請求項12】
基材の表面に加飾層が形成された加飾部材を製造するための加飾部材製造方法であって、
前記基材の表面の各部位に、複数のパターンのいずれか一つを割り当てるステップと、
前記加飾層を形成するために、吐出部により、光を受けて硬化する流体を前
記各部位に向けて吐出するステップと、
散布部により、微粒子を前記各部位に着弾した前記流体に向けて散布するステップと、
制御部により前記吐出部及び前記散布部のうちの少なくとも一方を制御する際の制御条件を、前記加飾部材の触感に関する設定内容に応じて前記各部位と対応付けて
前記パターン別に設定するステップと、を実施することを特徴とする加飾部材製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾部材製造装置及び加飾部材製造方法に係り、光を受けて硬化する流体、及び微粒子を用いて、基材の表面に加飾層を備えた加飾部材を製造する加飾部材製造装置及び加飾部材製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の印刷技術の発展に伴い、デジタル印刷技術を利用して製造される加飾部材の市場が拡大している。加飾部材は、表面に加飾層を有する。加飾層は、光学的に変化し、あるいは凹凸形状となって所定の質感を発現する。凹凸形状の加飾層を備える加飾部材を製造する装置としては、クリアインクのように光を受けて硬化する流体を基材の表面に着弾させた後に、着弾した流体に光を照射するインクジェットプリンタ等が知られている。このような装置では、使用する流体の量、種類及び着弾位置、並びに光の照射強度等を制御することにより、加飾層の質感を調整することができる。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の装置(具体的には、画像形成装置)は、走査方向において往復移動可能なキャリッジに搭載されて紫外線硬化型インクを吐出するヘッドと、ヘッドから吐出された紫外線硬化型インクに紫外線を照射する照射器と、ヘッド及び照射器を制御するコントローラとを備えている。そして、コントローラは、キャリッジの往路において、吐出量を変化させて紫外線硬化型インクをヘッドから穴あき状態で吐出させ、キャリッジの復路において、照射器から紫外線を照射させる。これにより、記録媒体上における紫外線硬化型インクの平滑度合いを場所により不均一とすることができ、換言すると、適度な凹凸を有する加飾層を形成することができる。
【0004】
また、凹凸形状の加飾層を備える加飾部材の中には、微粒子を含有した加飾層を備えるものがある。例えば、特許文献2に記載の加飾部材(具体的には、表面加飾用フィルム)は、表面加飾層を有し、この表面加飾層が、硬化性樹脂化合物の硬化物と、所定のカチオン系樹脂と、平均粒子径が所定範囲に調整された2種以上の無機系微粒子とを含有してなる。そして、表面加飾層は、表面粗さが所定の数値範囲内(例えば、0.40μm~2.0μm)に調整され、さらさら感に優れたものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5391494号
【文献】特許第5620613号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、加飾部材の付加価値を高める上では、最終的な加飾層の質感、特に摩擦、凹凸度合い及び曲げ易さ等の触感を、所望の触感となるように調整する必要がある。そのためには、加飾部材製造装置によって加飾層を形成する際に、所望の触感が得られるように装置各部の動作条件を制御する必要がある。また、加飾層各部の質感については、加飾層各部の位置に応じて像様(イメージワイズ)に調整できるのが好ましい。
【0007】
これに対して、特許文献1に記載の装置(画像形成装置)では、加飾層における紫外線硬化型インクの平滑度合いが場所により不均一となるものの、加飾層各部において質感をどう調整するかが決められておらず、そのために、最終的な質感が所望の触感になるかが不明である。
【0008】
また、特許文献2に記載の加飾部材(表面加飾用フィルム)では、表面加飾層がさらさら感に優れたものとなっているが、さらさら感がイメージワイズに調整されたものではない。また、特許文献2に記載の加飾部材(表面加飾用フィルム)を製造するにあたり、表面加飾層の表面粗さ等が所定の数値範囲内に調整されるが、そのような調整がどのような触感を実現させるために行われているかが不明である。
【0009】
なお、版とインキを用いて印刷するアナログ印刷においては、例えば、微粒子含有のインキを用いることで印刷物のマット感等を制御することができるが、インキ毎に版を準備することが必要となるため、コスト及び製造時間の面からイメージワイズな触感制御を行うことが困難である。
【0010】
そこで、本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、以下に示す目的を解決することを課題とする。
具体的には、本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、所望の触感となるように加飾層各部での触感をイメージワイズに調整することが可能な加飾部材製造装置及び加飾部材製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明の加飾部材製造装置は、基材の表面に加飾層が形成された加飾部材を製造する加飾部材製造装置であって、加飾層を形成するために、光を受けて硬化する流体を基材の表面の各部位に向けて吐出する吐出部と、微粒子を各部位に着弾した流体に向けて散布する散布部と、吐出部及び散布部を制御する制御部と、を有し、制御部は、吐出部及び散布部のうちの少なくとも一方を、加飾部材の触感に関する設定内容に応じて各部位と対応付けて設定された制御条件に従って制御することを特徴とする。
【0012】
上記のように構成された本発明の加飾部材製造装置では、吐出部及び散布部のうちの少なくとも一方を、加飾部材の触感に関する設定内容に応じて各部位と対応付けて設定された制御条件に従って制御する。これにより、所望の触感となるように加飾層各部での触感をイメージワイズに調整することが可能となる。
【0013】
また、上記の加飾部材製造装置に関し、制御部は、設定内容に応じて各部位と対応付けて設定された量の流体が各部位に着弾するように吐出部を制御すると、より好適である。
上記の構成であれば、基材表面の各部位における流体の着弾量を制御することにより、加飾層各部での触感を調整することが可能となる。
【0014】
また、上記の加飾部材製造装置に関し、制御部は、加飾層の凹凸度合いに関する設定内容に応じて各部位と対応付けて設定された量の流体が各部位に着弾するように、吐出部を制御してもよい。
上記の構成であれば、基材表面の各部位における流体の着弾量を制御することにより、加飾層各部での触感としての凹凸度合いを調整することが可能となる。
【0015】
また、上記の加飾部材製造装置に関し、制御部は、設定内容に応じて各部位と対応付けて設定された種類の流体が各部位に着弾するように、吐出部を制御すると、より好適である。
上記の構成であれば、基材表面の各部位に着弾させる流体の種類を制御することにより、加飾層各部での触感を調整することが可能となる。
【0016】
また、上記の加飾部材製造装置に関し、種類が異なる流体の間では、流体の硬化した状態での延伸率が異なり、制御部は、加飾部材の曲げ易さ及び加飾層の凹凸度合いに関する設定内容に応じて各部位と対応付けて設定された種類及び量の流体が各部位に着弾するように、吐出部を制御してもよい。
上記の構成であれば、基材表面の各部位に着弾させる流体の種類及び量を制御することにより、加飾層各部での触感としての曲げ易さ及び凹凸度合いを調整することが可能となる。
【0017】
また、上記の加飾部材製造装置に関し、制御部は、加飾層の表面における摩擦の大きさに関する設定内容に応じて各部位と対応付けて設定された量の微粒子が各部位に着弾した流体に付着するように、散布部を制御すると、より好適である。
上記の構成であれば、基材表面の各部位において流体に付着させる微粒子の量を制御することで、加飾層各部での触感としての摩擦の大きさを調整することが可能となる。
【0018】
また、上記の加飾部材製造装置に関し、各部位に着弾した流体に光を照射して流体を半硬化させる半硬化部を有し、散布部は、各部位に着弾して半硬化した流体に向けて微粒子を散布し、各部位における半硬化した流体の量が増えるほど、各部位における微粒子の量が増加し、制御部は、各部位における半硬化した流体の量が、摩擦の大きさに関する設定内容に応じて各部位と対応付けて設定された量となるように、吐出部及び半硬化部を制御してもよい。
上記の構成であれば、基材表面の各部位において半硬化した流体の量を制御することで、流体に付着する微粒子の量が制御されることになり、結果として、加飾層各部での触感としての摩擦の大きさを調整することが可能となる。
【0019】
また、上記の加飾部材製造装置に関し、各部位に着弾した流体に光を照射して流体を本硬化させる本硬化部と、基材の表面が吐出部に対向する第一位置と、基材の表面が散布部に対向する第二位置との間で基材を移動させる移動機構と、を有し、加飾層を形成するために、基材が第一位置にある間に吐出部が基材の表面に向けて流体を吐出する吐出工程と、移動機構が基材を第一位置から第二位置に移動させる第一移動工程と、基材が第二位置にある間に散布部が微粒子を流体に向けて散布させる散布工程と、基材が第二位置にある間に本硬化部が流体に光を照射して流体を本硬化させる本硬化工程と、移動機構が基材を第二位置から第一位置まで戻す第二移動工程と、が複数回繰り返されてもよい。
上記の構成であれば、流体の吐出、微粒子の散布、及び流体の本硬化を複数回繰り返すことで、加飾層が形成されるようになる。
【0020】
また、上記の加飾部材製造装置に関し、制御部は、複数回の散布工程によって各部位に着弾した流体に付着する微粒子の量が、摩擦の大きさに関する設定内容に応じて各部位と対応付けて設定された量となるように、各回の散布工程において散布部に各回の散布工程別に決められた量の微粒子を散布させてもよい。
上記の構成によれば、微粒子の散布を複数回繰り返して加飾層を形成する場合において、各回における微粒子の散布量を調整することで、加飾層各部での触感(具体的には、摩擦の大きさ)を調整することが可能となる。
【0021】
また、上記の加飾部材製造装置に関し、制御部は、各回の散布工程において散布部に、摩擦の大きさに関する設定内容に応じて各部位と対応付けて設定された種類の微粒子を、各部位に着弾した流体に向けて散布させ、種類が異なる微粒子の間では、微粒子の摩擦係数が異なっていてもよい。
上記の構成によれば、微粒子の散布を複数回繰り返して加飾層を形成する場合において、各回に散布する微粒子の種類を調整することで、加飾層各部での触感(具体的には、摩擦の大きさ)を調整することが可能となる。
【0022】
また、上記の加飾部材製造装置に関し、制御部は、加飾層の温度に関する設定内容に応じて各部位と対応付けて設定された種類の微粒子が基材の表面に着弾した流体に付着するように散布部を制御し、種類が異なる微粒子の間では、微粒子の熱伝導率が異なっていてもよい。
上記の構成によれば、基材表面の各部位において流体に付着させる微粒子の種類を制御することで、加飾層各部での触感としての温度(温かさ及び冷たさ)を調整することが可能となる。
【0023】
また、前述の課題を解決するために、本発明の加飾部材製造方法は、基材の表面に加飾層が形成された加飾部材を製造するための加飾部材製造方法であって、加飾層を形成するために、吐出部により、光を受けて硬化する流体を基材の表面の各部位に向けて吐出するステップと、散布部により、微粒子を各部位に着弾した流体に向けて散布するステップと、制御部により吐出部及び散布部のうちの少なくとも一方を制御する際の制御条件を、加飾部材の触感に関する設定内容に応じて各部位と対応付けて設定するステップと、を実施することを特徴とする。
上記の方法によれば、加飾層を表面に有する加飾部材を製造する際に、加飾層各部での触感を所望の触感となるように、且つイメージワイズに調整することが可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、所望の触感となるように加飾層各部での触感をイメージワイズに調整することが可能な加飾部材製造装置及び加飾部材製造方法が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係る加飾部材製造装置の構成を示す概念図である。
【
図2】インクジェットプリンタのメカ構成を示す模式図である。
【
図5】
図4に図示した加飾層の各パターンに対する触感の設定内容、及びパターン形成時の制御条件を示す図である。
【
図6】各パターンが形成される様子を示す模式的な断面図である(その1)。
【
図7】各パターンが形成される様子を示す模式的な断面図である(その2)。
【
図8】各パターンが形成される様子を示す模式的な断面図である(その3)。
【
図9】高延伸インクの割合と加飾部材の曲げ易さとの関係を示す図である。
【
図10】各パターンが形成される様子を示す模式的な断面図である(その4)。
【
図11】各パターンが形成される様子を示す模式的な断面図である(その5)。
【
図12】各パターンが形成される様子を示す模式的な断面図である(その6)。
【
図13】各パターンが形成される様子を示す模式的な断面図である(その7)。
【
図14】各パターンが形成される様子を示す模式的な断面図である(その8)。
【
図15】クリアインクの着弾量と加飾層の表面における摩擦の大きさとの関係を示す図である。
【
図16】基材の種類と加飾層との組み合わせによる触感制御についての説明図である(その1)。
【
図17】基材の種類と加飾層との組み合わせによる触感制御についての説明図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、本発明の一実施形態(本実施形態)に係る加飾部材製造装置及び加飾部材製造方法について、添付の図面に示す好適な実施形態を参照しながら詳細に説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするために挙げた一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、以下に説明する実施形態から変更又は改良され得る。また、当然ながら、本発明には、その等価物が含まれる。
【0027】
また、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、含有率及び使用量を表す「%」及び「部」は、特記しない限り質量基準である。
また、本明細書において、「部位」は、「領域(単位領域)」よりも広い概念であり、具体的に説明すると、一つの部位は、複数の領域(単位領域)が所定形状(例えば、矩形又は方形)をなすように並べて構成される。
【0028】
[加飾部材製造装置]
本実施形態の加飾部材製造装置10は、基材の表面に加飾層が形成された加飾部材を製造する加飾部材製造装置であって、カラーインク、流体としてのクリアインク、及び後述する微粒子を用いて加飾部材を製造する装置である。加飾部材は、カラーインク及びクリアインクによって構成される加飾層を基材の表面に形成することで製造され、加飾層によって所定の質感(触感)が付与されている。
【0029】
本実施形態において、加飾部材の触感とは、加飾部材の品質のうち、人の触感(例えば、手及び指)にて感じられる性質である。具体的な加飾部材の触感としては、加飾部材の曲げ易さ(換言すれば、硬さ又は延伸性)、加飾層の凹凸度合い、加飾層の表面における摩擦の大きさ、及び、加飾層の温度(換言すれば、温かさ及び冷たさ)等が挙げられる。ただし、上記の触感は、あくまでも一例であり、加飾部材の触感として上記以外の触感が含まれてもよい。
【0030】
加飾層は、基材の表面にカラーインクによって印刷されたカラーインク像の上に、クリアインクによって形成されたクリアインク像を重ね、さらにクリアインク像の表面に微粒子を付着させることで形成される。
【0031】
基材としては、コート紙及びノンコート紙等の印刷用紙、情報用紙、包装用紙、及び板紙等の紙類;樹脂製のフィルム(例えば、プラスチックフィルム)及びシート;木製、ガラス製、セラミック製、金属製又は樹脂製のボード及びパネルが利用可能である。なお、紙類、フィルム及びシートについては、単票状にカットされた状態で供給されてもよく、あるいは、ロール状に巻かれた状態で供給されてもよい。
【0032】
加飾層の形成手順について付言しておくと、カラーインク像の上にクリアインク像を重ねる場合に限定されず、クリアインク像を先に形成してから、クリアインク像の上にカラーインク像を記録(印刷)してもよい。また、カラーインク像及びクリアインク像の各々を別々に形成する代わりに、有色の紫外線硬化型インク等を用いて、カラーインク像及びクリアインク像を一体的に(同時に)形成してもよい。
【0033】
本実施形態の加飾部材製造装置10の構成について説明すると、加飾部材製造装置10は、
図1に示すように、インクジェットプリンタ20とホストコンピュータ30とを主な構成機器として有する。
図1は、本実施形態の加飾部材製造装置10の構成を示す概念図である。インクジェットプリンタ20及びホストコンピュータ30の各々について、以下に説明する。
【0034】
<インクジェットプリンタ>
インクジェットプリンタ20は、基材表面に加飾層を形成する装置である。具体的に説明すると、インクジェットプリンタ20は、カラーインク及びクリアインクを基材表面に向けて吐出し、基材表面に着弾したクリアインクを硬化させ、且つ、硬化したクリアインクに向けて微粒子を散布する。
【0035】
インクジェットプリンタ20は、
図1及び
図2に示すように、移動機構21と吐出部22と半硬化部23と散布部24と本硬化部25と制御部26とを有する。
図2は、インクジェットプリンタ20のメカ構成を示す図である。
【0036】
移動機構21は、インクジェットプリンタ20内における移動経路に沿って基材(以下、基材B)を移動させるものである。移動機構21は、
図2に示すように駆動ローラによって構成されてもよく、あるいは駆動ベルトによって構成されてもよい。
【0037】
また、基材Bの移動経路の途中位置には、
図2に図示したように、2つのプラテン27A、27Bが配置されている。一方のプラテン27Aは、基材Bの移動経路においてより上流側(インクジェットプリンタ20における基材Bの供給口により近い側)に配置されている。このプラテン27Aの上に基材Bが載置された状態では、基材Bの表面(厳密には、加飾層の形成面)が吐出部22の下面(ノズル面)に対向する。つまり、基材Bがプラテン27Aに載置される位置(
図2中、実線にて描かれた基材Bの位置)は、基材Bの表面が吐出部22に対向する位置に該当し、以下では第一位置と呼ぶ。
【0038】
もう一方のプラテン27Bは、基材Bの移動経路においてより下流側(インクジェットプリンタ20における基材Bの排出口により近い側)に配置されている。このプラテン27Bの上に基材Bが載置された状態では、基材Bの表面(すなわち、カラーインク及びクリアインクが着弾した面)が散布部24に対向する。つまり、基材Bがプラテン27Bに載置される位置(
図2中、二点鎖線にて描かれた基材Bの位置)は、基材Bの表面が散布部24に対向する位置に該当し、以下では第二位置と呼ぶ。
【0039】
また、本実施形態では、移動機構21による基材Bの移動工程が間欠的に(断続的に)実施される。すなわち、基材Bが所定距離だけ移動する度に基材Bの移動が中断し、一定時間の経過後、基材Bが再び所定距離だけ移動し、以降、同様の動作が繰り返される。
【0040】
吐出部22は、加飾層を基材Bに形成するために、基材Bが第一位置にある間に基材表面に向けてカラーインク及びクリアインクを吐出する。カラーインクは、顔料又は染料を含有する有色インクであり、カラー印刷等に用いられる一般的なインクである。クリアインクは、光(具体的には、紫外線)を受けることで硬化する紫外線硬化型の流体である。なお、本発明において加飾層を形成するために用いられる流体は、光の照射により硬化可能な流体であればよい。また、照射光としては、紫外線、赤外線、及び可視光線等が挙げられる。また、本発明の流体は、主成分として、少なくとも重合性化合物と光開始剤を含む組成物であり、例えば、カチオン重合系インク組成物、ラジカル重合系インク組成物、及び水性インク組成物等である。
【0041】
吐出部22から吐出されたカラーインクは、基材表面の単位領域に着弾してドットを形成する。ここで、単位領域とは、基材表面における画像形成領域を構成する単位であり、印刷対象となる画像の画素に相当する方形型の領域である。基材表面に着弾した各色のカラーインクのドットは、網点画像を形成し、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)及びK(ブラック)のそれぞれの網点画像が形成されることで、4色フルカラーのカラーインク像(例えば、
図6等に図示のカラーインク像C)が基材表面に印刷される。
【0042】
吐出部22から吐出されたクリアインクは、基材表面の各部位においてカラーインク像の上に着弾してドットを形成する。着弾したクリアインクのドットは、その後に紫外線を受けて硬化する。そして、硬化したクリアインクのドットによってクリアインク像(例えば、
図6等に図示のクリアインク像D)が、カラーインク像に重ねて形成される。
【0043】
本実施形態において、吐出部22は、ピエゾ素子の駆動によって各インクを吐出する記録ヘッドによって構成されており、シャトルスキャン方式にて基材表面にカラーインク像及びクリアインク像を形成する。より具体的に説明すると、吐出部22の下面(ノズル面)には、
図3に示すように、基材Bの移動方向に沿って列状に並んだ複数のノズルがインクの種類別に設けられている。
図3は、吐出部22のノズル面を示す図である。
【0044】
より具体的に説明すると、ノズル面には、吐出部22の走査方向に沿って一端側から順に、イエローインクノズルNyの列、マゼンタインクノズルNmの列、シアンインクノズルNcの列、ブラックインクのノズルNkの列が配置されている。更に、走査方向の他端側には、2つのクリアインクノズルNg、Nhの列が配置されている。
【0045】
本実施形態において、2つのクリアインクノズルNg、Nhの列の各々は、互いに異なる種類のクリアインクが吐出される。種類が異なるクリアインクの間では、クリアインクの硬化した状態での延伸率が異なる。一方のクリアインクノズルNgからは、より延伸率が高いクリアインク(高延伸インク)が吐出される。他方のクリアインクノズルNhからは、より延伸率が低いクリアインク(低延伸インク)が吐出される。なお、高延伸インクとしては、例えば、富士フイルム製の高延伸インク(商品名:Uvijet KVインク)が利用可能であり、低延伸インクとしては、通常インクとして販売されている公知のクリアインクが利用可能である。
【0046】
なお、延伸率については、例えば国際公開第2013/027672号に記載された下記の測定方法によって測定される。
(延伸率の測定方法)
ポリカーボネート板(厚さ0.5mm)に、インク組成物を#12のバーコーターにより塗工し、厚さ20μmの塗工膜を形成する。この塗工膜に、ヘレウス社製UVランプ(Z-8ランプ)から120W/cm×23m/min、距離10cm(1パスあたりの積算光量は60mJ/cm2)の照射条件で紫外線を照射し、塗工膜が完全に硬化するまで硬化させる。硬化後、硬化塗膜を2cm×10cmのサイズに切り出して測定試料片を作製し、その測定試料片を、引張試験機により、180℃の環境下で引張速度50mm/minで延伸し、硬化塗膜がひび割れずに延伸できる長さにより延伸率を測定する。具体的には、測定試料片の中心を挟むように記した中心部の黒点と黒点との距離が、延伸前の1cmから延伸によりXcmになった場合に、延伸率を下記式により求める。
延伸率={(X-1)/1}×100
【0047】
なお、クリアインクの種類数については、特に限定されず、任意の数に設定することが可能である。また、
図3に図示のケースでは、各種類のクリアインクに対してノズル列が1つずつ設けられているが、これに限定されるものではなく、各種類のクリアインクに対してノズル列が複数設けられていてもよい。
また、吐出部22からインクを吐出する方式としては、ピエゾ素子を用いる方式に限定されず、ヒーター等の発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用することができる。
また、本実施形態では、吐出部22がシリアルタイプのヘッドによって構成されていてシャトルスキャン方式にて印刷するものであるが、これに限定されるものではない。例えば、吐出部22が、フルラインタイプのヘッドによって構成されたものであり、シングルパス方式にて印刷するものであってもよい。
また、本実施形態では、同一のノズル面にカラーインクのノズルとクリアインクのノズルの両方が形成されているが、これに限定されるものではない。例えば、吐出部22が、基材Bの移動方向において互いに離れた位置に配置された2つの記録ヘッドを有しており、より上流の記録ヘッドの下面にカラーインクノズルが形成されており、より下流側の記録ヘッドの下面にクリアインクのノズルが形成されていてもよい。さらに、カラーインクノズルが形成された記録ヘッドは、インク色毎に分かれて設けられてもよい。
【0048】
半硬化部23は、基材Bが第一位置にある間に、基材表面の各部位に着弾したクリアインクのドットに光、厳密には紫外線を照射してクリアインクのドットを半硬化させる。つまり、半硬化部23は、クリアインクのドットを半硬化させるレベルの照射強度にて紫外線を照射する。半硬化とは、クリアインクを完全には硬化させず、ドット形状を保持できる程度(つまり、流れ広がらない程度)に硬化した状態である。半硬化部23としては、メタルハイランドランプ、高圧水銀ランプ、及び紫外線LED(Light Emitting Diode)等を用いることができる。
【0049】
また、本実施形態において、半硬化部23は、吐出部22の側方に取り付けられている。具体的に説明すると、半硬化部23は、走査方向においてクリアインクノズルNg、Nhよりも他端側(クリアインクノズルから見てカラーインクノズルが配置されている側とは反対側)で吐出部22に固定されている。つまり、半硬化部23は、吐出部22と共に走査方向に移動する。そして、吐出部22の一回のスキャン(走査)動作において、クリアインクノズルNg、Nhからクリアインクが吐出された直後に、半硬化部23が基材表面に向けて紫外線を照射する。これにより、基材表面上に着弾したクリアインクのドットは、直ちに紫外線を受けて半硬化する。
【0050】
なお、半硬化部23が吐出部22に固定されて吐出部22と一体化している場合に限定されず、半硬化部23が吐出部22と分離していてもよい。また、半硬化部23の配置位置については、特に限定されるものではなく、例えば、半硬化部23がプラテン27Aの側端部に配置され、基材Bの側方から紫外線を照射してもよい。
【0051】
散布部24は、加飾層を基材Bに形成するために、基材Bが第二位置にある間に、基材表面の各部位に着弾したクリアインクのドットに向けて微粒子を散布する。ここで、基材Bが第二位置にあるとき、クリアインクのドットは、半硬化部23から照射された紫外線を受けて半硬化している。したがって、散布部24は、基材表面の各部位に着弾して半硬化したクリアインクのドットに向けて微粒子を散布する。半硬化状態にあるときのクリアインクのドットの表面は、粘着性を有しており、散布された微粒子は、クリアインクのドットの表面に付着する。
【0052】
散布部24は、その下面に複数の孔(不図示)を備えている。各孔からは、圧縮空気と共に微粒子が噴射される。つまり、散布部24は、基材表面のうち、孔の下方に位置する部分にあるクリアインクのドットに向けて噴射する。なお、微粒子は、樹脂剤からなる溶媒に混入された状態で混合物として噴射されてもよい。
【0053】
また、本実施形態において、散布部24は、複数種類の微粒子を噴射することができる。さらに、本実施形態において、各孔から噴射される微粒子の種類は、各孔別に設定することができる。つまり、本実施形態では、基材表面の各部位においてクリアインクのドットに付着させる微粒子の種類を、基材表面の部位に応じて変えることができる。
【0054】
ここで、種類が異なる微粒子の間では、微粒子の摩擦係数が異なる。具体的に説明すると、本実施形態において散布部24が噴出する微粒子には、摩擦係数がより小さいポリエチレン系粒子、及び、摩擦係数がより大きいアクリル系粒子が含まれる。
【0055】
ポリエチレン系粒子は、ポリエチレン系樹脂の微粒子であり、その摩擦係数は、0.08~0.18である。ポリエチレン系樹脂とは、エチレン単独重合体、またはエチレン単量体を主成分とし、エチレン単量体と共重合可能な他の単量体成分との共重合体を意味する。また、エチレン単量体を主成分とするとは、エチレン単量体が全単量体成分100質量部中に50質量部以上を占めることを意味する。さらに、エチレン単独重合体とは、エチレン単量体が全単量体成分100質量部中に92質量部以上を占めることを意味する。
【0056】
ポリエチレン系樹脂としては、例えば、分枝鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体、及び、エチレン-酢酸ビニル共重合体のようなポリエチレン系樹脂等を挙げることができる。所望の物性をより容易に得るため、ポリエチレン系樹脂として直鎖状低密度ポリエチレン及びエチレン-酢酸ビニル共重合体が好ましい。また、所望の物性に影響を与えない限り、ポリエチレン系樹脂を単独で使用してもよく、あるいは2種以上を併用してもよい。また、ポリエチレン系樹脂として共重合体を使用する場合、共重合体はランダム共重合体であってよく、あるいはブロック共重合体であってもよい。
【0057】
アクリル系粒子は、アクリル系化合物から得られる微粒子であり、その摩擦係数は、約0.38である。アクリル系化合物とは、30重量%以上がアクリル酸及びその塩、並びにメタクリル酸及びその塩などの単量体で構成されればよく、このとき1種のみの単独重合体、また2種以上の単量体からなる共重合体のいずれであってもよい。アクリル酸単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸クロロエチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸ヘプタデカフルオロオクチルエチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、及び(メタ)アクリル酸アダマンチル及び(メタ)アクリル酸トリシクロデシニル等が挙げられる。
【0058】
また、上記アクリル系化合物には共重合成分を導入することが可能であり、例えば、スチレン系単量体などを用いることができる。このとき、共重合量としては70モル%以下の任意の量をとることができる。
また、アクリル系化合物として共重合のものを用いる場合、その形式はブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、あるいはこれらの組み合わせによるいずれの共重合体であってもよい。
【0059】
なお、摩擦係数については、例えば特許文献2(特許第5620613号)に記載された下記の測定方法によって測定される。
(摩擦係数の測定方法)
カトーテック(株)製の摩擦感テスター(KES-SE)を用いて、摩擦係数(表面摩擦係数)を測定する。測定条件は、標準摩擦子のバーを使用し、摩擦子にカトーテック(株)製のシリコンセンサー(10mm×10mm×3mm)を用い、摩擦時の荷重0.245N/cm2(25gf/cm2)、測定感度H(感度20g/V)とする。摩擦距離、摩擦速度、及びその他の条件については、装置仕様通りである(具体的には、摩擦距離30mm、解析距離20mm、及び、試料移動速度1mm/sec等)。そして、摩擦感テスターにデータロガー(キーエンス社製マルチ入力データ収集システム)を繋ぎ、測定時に得られる荷重の電圧値を取得し、摩擦子が動き出した時点の電圧値を摩擦係数とする。なお、測定は、20℃及び65%RH(Relative Humidity)の環境下で行い、5回測定の平均値を採用するとよい。
【0060】
本硬化部25は、基材Bが第二位置にある間に、半硬化状態のクリアインクのドットに紫外線光を照射してクリアインクのドットを本硬化させる。本硬化部25は、
図2に示すように、基材Bの移動方向において散布部24よりも幾分下流側に位置し、半硬化したクリアインクのドットを本硬化させるレベルの照射強度にて紫外線を照射する。これにより、微粒子が付着した状態のクリアインクのドットは、その表面に微粒子を担持したまま本硬化する。
なお、本硬化部25としては、メタルハイランドランプ、高圧水銀ランプ、及び紫外線LED(Light Emitting Diode)等を用いることができる。
【0061】
また、本硬化部25の配置位置については、特に限定されるものではなく、例えば、本硬化部25がプラテン27Bの側端部に配置され、基材Bの側方から紫外線を照射してもよい。
【0062】
制御部26は、インクジェットプリンタ20に内蔵されたコントローラであり、駆動回路を介して移動機構21、吐出部22、半硬化部23、散布部24及び本硬化部25の各々を制御する。具体的に説明すると、制御部26は、ホストコンピュータ30から送られてくる加飾部材製造の指示を受信すると、インクジェットプリンタ20の所定位置にセットされた基材Bを移動方向に沿って間欠的に移動させるように、移動機構21を制御する。
【0063】
また、制御部26は、基材Bが第一位置にある間に、印刷データ及び制御データに従って吐出部22を制御し、吐出部22から各種のインクを吐出させる。印刷データは、加飾部材製造の指示と共にホストコンピュータ30から送られてくるデータであり、カラーインクの吐出量(換言すれば、カラーインクドットのサイズ)及び基材表面における着弾位置(ドット形成位置)等を規定している。
【0064】
制御データは、加飾部材製造の指示と共にホストコンピュータ30から送られてくるデータであり、クリアインクの種類及び吐出量等を基材表面の各部位別に規定している。また、制御データは、上述した微粒子の種類、散布量、及び噴射タイミング等を基材表面の各部位別に規定している。
なお、制御データについては、後に詳しく説明する。
【0065】
吐出部22は、走査方向に移動しながら、制御部26による制御の下で各色のカラーインクをノズルNy、Nm、Nc、Nkから基材表面に向けて吐出する。これにより、基材表面中、ノズルNy、Nm、Nc、Nkと対向する部位に各色のカラーインクドットが形成される。この結果、基材表面に4色フルカラーのカラーインク像が形成される。
【0066】
また、吐出部22は、1回のインクの吐出工程においてカラーインクを吐出した後に、クリアインクノズルNg、Nhからクリアインクを吐出する。このとき、制御部26が制御データに従って吐出部22を制御する。かかる制御の下で、吐出部22が、基材表面の各部位に向けて、当該各部位と対応する種類及び吐出量のクリアインクを吐出する。すなわち、本実施形態では、制御部26が制御データに従って吐出部22を制御することにより、クリアインクの種類及び吐出量を基材表面の各部位に応じて像様(イメージワイズ)に制御することが可能である。
【0067】
また、制御部26は、吐出部22にクリアインクを吐出させた直後に、半硬化部23を制御して半硬化部23から紫外線を照射させる。これにより、基材表面に着弾したクリアインクのドットは、直ちに半硬化する。
【0068】
その後、移動機構21が基材Bを更に移動させることにより基材Bが第二位置に至ると、制御部26が制御データに従って散布部24を制御する。かかる制御の下で、散布部24が、基材表面の各部位に着弾したクリアインクのドットに向けて、当該各部位と対応する種類及び散布量の微粒子を散布する。より詳しく説明すると、散布部24の下面のうち、基材表面の各部位の直上位置にある部分に形成された孔から、当該各部位と対応する種類及び量の微粒子が噴射される。すなわち、本実施形態では、制御部26が制御データに従って散布部24を制御することにより、微粒子の種類及び散布量(換言すれば、付着量)を基材表面の各部位に応じて像様(イメージワイズ)に制御することが可能である。
【0069】
また、基材Bが第二位置にある期間中であって、且つ、散布部24が微粒子を散布した後には、制御部26が本硬化部25を制御して本硬化部25から紫外線を照射させる。これにより、それまで半硬化状態であったクリアインクのドットが本硬化する。
【0070】
以上までに説明してきたように、インクジェットプリンタ20各部の動作、すなわち、移動機構21による基材Bの移動工程、吐出部22によるカラーインク及びクリアインクの吐出工程、半硬化部23によるクリアインクの半硬化工程、散布部24による微粒子の散布工程、並びに本硬化部25によるクリアインクの本硬化工程は、それぞれ、制御部26の制御の下で実施される。これにより、基材表面に加飾層が形成されて加飾部材が完成する。完成した加飾部材は、移動機構21によってインクジェットプリンタ20の排出口まで移動し、最終的に排出口から排出される。
【0071】
<ホストコンピュータ>
ホストコンピュータ30は、インクジェットプリンタ20と通信可能に接続されており、加飾部材製造用のアプリケーションプログラム及びプリンタドライバ等のプログラムを実行する。プリンタドライバは、加飾部材製造用のアプリケーションプログラムによって生成された画像のデータ(画像データ)を前述の印刷データに変換する。
【0072】
また、プリンタドライバは、上記の画像データ、及び、加飾部材製造用のアプリケーションプログラムの実行時にユーザ(加飾部材の製造者)によって設定された触感の内容に応じて前述の制御データを生成する。触感の設定内容とは、最終製品としての加飾部材の触感(質感)に関してユーザが設定する内容であり、本実施形態では、例えば、予め設定された複数の候補の中から一つの候補を選択することで決められる。
なお、プリンタドライバは、光ディスク等のホストコンピュータ30が読み取り可能な記録媒体に記録されていたり、インターネット等の通信網を通じてホストコンピュータ30にダウンロード可能であったりする。
【0073】
ホストコンピュータ30は、
図1に示すように、印刷データ生成部31と、制御データ生成部32と、データ送信部33とを有する。
【0074】
印刷データ生成部31は、加飾部材製造用のアプリケーションプログラムから画像データを受け取り、画像データから印刷データを生成する。画像データは、基材表面に形成されるカラーインク像Cの元画像を示すカラー画像データである。印刷データ生成部31は、受け取った画像データに対して解像度変換処理、色変換処理、ハーフトーン処理及びラスタライズ処理を実行する。
【0075】
解像度変換処理は、画像データを、インクジェットプリンタ20によって再現可能な解像度に変換する処理であり、具体的には赤(R)、緑(G)及び青(B)の各々の階調値(具体的には、0~255の値)を示すデータに変換する。色変換処理は、解像度変換された画像データが示す色(すなわち、RGB3色)を、不図示の色変換ルックアップテーブルを参照して、インクジェットプリンタ20が吐出可能なインクの色(すなわち、YMCK4色)に変換する処理である。ハーフトーン処理は、色変換処理によってYMCK各色の階調値に変換された画像データを、各画素に形成されるカラーインクのドットのサイズデータに変換する処理である。ラスタライズ処理は、ハーフトーン処理された画像データを画素単位に分割し、インクジェットプリンタ20に転送すべき順に並べ直す処理である。
【0076】
制御データ生成部32は、加飾部材製造用のアプリケーションプログラムから画像データと触感に関する設定内容を受け取り、これらに基づいて制御データを生成する。制御データは、前述したように、基材表面の各部位に向けて吐出するクリアインクの種類及び吐出量、並びに基材表面の各部位に向けて散布する微粒子の種類及び散布量を、基材表面の各部位と対応付けて制御するためのデータである。かかる点において、制御データは、加飾部材の触感を基材表面の各部位に応じて像様(イメージワイズ)に制御するためのデータであると言える。
データ送信部33は、印刷データ生成部31により生成された印刷データ、及び制御データ生成部32により生成された制御データを、加飾部材の製造指示と共にインクジェットプリンタ20に向けて送信する。
【0077】
[制御データの生成手順について]
以下では、制御データの生成手順について詳しく説明するが、説明を分かり易くする目的から、
図4に示す加飾部材(以下、加飾部材Wd)を製造するケースを例に挙げて説明することとする。
図4は、加飾部材の一例である加飾部材Wdを示す平面図である。
【0078】
加飾部材Wdについて説明しておくと、加飾部材Wdにおいて、基材Bの表面には
図4に図示の加飾層Aが形成されている。この加飾層Aは、8種類の矩形状のパターンP1乃至P8が升目状に配置されることで構成されている。つまり、
図4の加飾層Aは、複数の矩形状の部位に分割され、それぞれの部位に対して8種類のパターンP1乃至P8のいずれかを割り当てることで構成されている。
なお、加飾層Aを構成するパターンの種類及びパターンの形状等については、特に限定されるものではなく、任意に決めることができる。
【0079】
各パターンP1乃至P8の形状及びサイズは、パターン間で均一となっている。一方で、各パターンP1乃至P8の触感がパターン間で相違している。具体的に説明すると、加飾部材Wdの曲げ易さ(以下、単に「曲げ易さ」と言う。)、加飾層Aの凹凸度合い(以下、単に「凹凸度合い」と言う。)、及び加飾層Aの表面における摩擦の大きさ(以下、単に「摩擦の大きさ」と言う。)の組み合わせが、パターン間で異なっている。
【0080】
以上の加飾層Aを基材表面に形成するための制御データを生成するためには、先ず、ユーザが加飾部材製造用のアプリケーションプログラムを起動し、同プログラムにおいて、8種類のパターンP1乃至P8のそれぞれに対して触感を設定する。具体的には、
図5に示すように、各パターンP1乃至P8に対して曲げ易さ、凹凸度合い、及び摩擦の大きさを設定する。
図5は、各パターンP1乃至P8に対する触感の設定内容及びパターン形成時の制御条件を示す図である。
【0081】
具体的な触感の設定方法について説明すると、曲げ易さは、所定の力を加えたときの変形度合い(変形量)によって表され、変形量が大きいほど曲げ易さが大きいことになる。そこで、本実施形態では、例えば、曲げ易さを設定する際に「大」及び「小」のいずれかを選択する。
凹凸度合いは、凹凸の出現頻度によって表され、凹凸が頻繁に出現するほど凹凸度合いが大きいことになる。そこで、本実施形態では、例えば、凹凸度合いを設定する際に「大」及び「小」のいずれかを選択する。
摩擦の大きさは、表面の滑り難さであり、滑り難いほど摩擦の大きさが大きいことになる。そこで、本実施形態では、例えば、摩擦の大きさを設定する際に「大」、「中」及び「小」のいずれかを選択する。
図5に図示のケースを例に挙げて具体的に説明すると、例えば、パターンP1に対して、曲げ易さを「大」に、凹凸度合いを「大」に、摩擦の大きさを「大」に設定している。また、パターンP6に対しては、曲げ易さを「小」に、凹凸度合いを「大」に、摩擦の大きさを「中」に設定している。
ちなみに、各触感の設定方法については、上述した方法に限定されるものではなく、例えば、具体的な数値を入力することで設定してもよい。
【0082】
ユーザは、各パターンP1乃至P8の触感を設定した後、加飾層Aを構成する複数の部位の各々について、8種類のパターンP1乃至P8のいずれか一つを割り当てる。これにより、加飾層Aの各部位での触感が設定されることになる。
【0083】
次に、ホストコンピュータ30の制御データ生成部32は、ユーザにより設定された各パターンP1乃至P8の触感の内容に応じて、各パターンP1乃至P8を形成するための条件を決定する。具体的に説明すると、制御データ生成部32は、不図示の触感変換ルックアップテーブルを参照して、各パターンP1乃至P8に対する触感の設定内容に応じた制御条件を、パターン別に(換言すれば、基材表面の各部位と対応付けて)設定する。
【0084】
ここで、制御条件は、各パターンP1乃至P8を形成するために制御部26が吐出部22及び散布部24の各々を制御する際の制御条件である。具体的には、吐出部22に吐出させるクリアインクの種類及び吐出量等、並びに、散布部24に散布させる微粒子の種類及び散布量等が制御条件に該当する。例えば、パターンP1を形成するための制御条件としては、パターンP1に対する触感の設定内容(すなわち、曲げ易さ、凹凸度合い及び摩擦の大きさが、いずれも「大」)を実現するためのクリアインクの種類及び吐出量、並びに微粒子の種類及び散布量が決められる。具体的には、
図5に示すように、高延伸インクの吐出量を9とし、低延伸インクの吐出量を1とし、ポリエチレン系粒子の散布量を1とし、且つ、アクリル系粒子の散布量を0とする。ここで、吐出量及び散布量を示す数値としての「1」、「9」及び「0」は、それぞれ規定量に対する倍数を表している。
【0085】
そして、8種類のパターンP1乃至P8の各々に対して制御条件が設定された後、制御データ生成部32は、加飾層Aの各部位に割り当てられたパターンの種類、及び、設定されたパターン別の制御条件に基づいて制御データを生成する。このようにして得られた制御データは、前述したように、加飾部材Wdの触感を加飾層Aの各部位に応じて像様(イメージワイズ)に制御するためのデータとなる。つまり、制御データを生成するために実施される上述した一連の処理は、制御条件を、触感に関する設定内容に応じて基材表面の各部位と対応付けて設定するステップに相当する。
【0086】
ところで、制御条件は、上述の触感変換ルックアップテーブルに規定されたルールに則って設定される。このルールは、クリアインク及び微粒子が触感に及ぼす影響を反映して決められている。つまり、制御条件は、クリアインク及び微粒子が触感に及ぼす影響を踏まえて設定されることになる。
【0087】
より詳しく説明すると、凹凸度合いは、クリアインクの着弾数(厳密には、クリアインクのドットの形成数)に応じて変わり、着弾数が多くなるほど、凹凸度合いが大きくなる。したがって、凹凸度合いが「大」に設定されたパターン(例えば、パターンP1及びP5等)を形成するための制御条件としては、
図5から分かるように、クリアインクをより多く吐出するような条件が設定される。反対に、凹凸度合いが「小」に設定されたパターン(例えば、パターンP3及びP7等)を形成するための制御条件としては、クリアインクをより少なく吐出するような条件が設定される。
【0088】
以上の内容を加飾層Aの形成過程の視点から説明すると、加飾層Aを形成するにあたり、カラーインク像Cの上にクリアインク像Dが重ねて形成されることになっている。このクリアインク像Dのうち、凹凸度合いが「大」に設定されたパターンに相当する部分では、
図6及び
図7に示すように、高延伸インクIxのドット及び低延伸インクIyのドットがより多く形成される。反対に、凹凸度合いが「小」に設定されたパターンに相当する部分では、
図8に示すように、各クリアインクのドットがより少なく形成される。
なお、
図6乃至
図8は、各パターンが形成される様子を示す模式的な断面図である。詳しくは、
図6は、パターンP1を構成するクリアインクのドットを示し、
図7は、パターンP5を構成するクリアインクのドットを示し、
図8は、パターンP3を構成するクリアインクのドットを示している。
【0089】
次に、曲げ易さに関して述べると、曲げ易さは、高延伸インクIx及び低延伸インクIyのそれぞれの着弾量に応じて変わり、
図9に示すように、高延伸インクIxの割合(比率)がより大きくなるほど、曲げ易さが大きくなる。したがって、曲げ易さが「大」に設定されたパターン(例えば、パターンP1等)を形成するための制御条件としては、
図5から分かるように、高延伸インクIxを低延伸インクIyよりも多く吐出するような条件が設定される。反対に、凹凸度合いが「小」に設定されたパターン(例えば、パターンP5等)を形成するための制御条件としては、低延伸インクIyを高延伸インクIxよりも多く吐出するような条件が設定される。
なお、
図9は、高延伸インクの割合と加飾部材の曲げ易さとの関係を示す図である。
【0090】
以上の内容を加飾層Aの形成過程の視点から説明すると、クリアインク像Dのうち、曲げ易さが「大」に設定されたパターンに相当する部分では、
図6に示すように、高延伸インクIxのドットが低延伸インクIyのドットよりも多く形成される。反対に、曲げ易さが「小」に設定されたパターンに相当する部分では、
図7に示すように、低延伸インクIyのドットが高延伸インクIxのドットよりも多く形成される。
【0091】
また、曲げ易さに応じてパターンを形成する別の例を説明すると、
図10及び
図11に示すように、高延伸インクIxの層及び低延伸インクIyの層を積層させてクリアインク像Dを構成することがある。この場合、クリアインク像Dのうち、曲げ易さが「大」に設定されたパターンに相当する部分では、
図10に示すように、高延伸インクIxの層が低延伸インクIyの層よりも厚くなる。反対に、曲げ易さが「小」に設定されたパターンに相当する部分では、
図11に示すように、低延伸インクIyの層が高延伸インクIxの層よりも厚くなる。
なお、
図10及び
図11は、各パターンが形成される様子を示す模式的な断面図である。詳しくは、
図10は、パターンP1を構成するクリアインクの層を示し、
図11は、パターンP5を構成するクリアインクの層を示している。
【0092】
次に、摩擦の大きさに関して述べると、摩擦の大きさは、クリアインクに付着する微粒子の種類及び付着量に応じて変わる。具体的には、微粒子の付着量が少ないほど、クリアインクの表面における露出部分が広くなるので、摩擦の大きさが大きくなる。また、付着した微粒子のうち、摩擦係数がより低いポリエチレン系粒子の比率が大きくなるほど、摩擦の大きさが小さくなり、反対に、摩擦係数がより高いアクリル系粒子の比率が大きくなるほど、摩擦の大きさが大きくなる。以上のことを踏まえて、摩擦の大きさが「大」に設定されたパターン(例えば、パターンP1等)を形成するための制御条件としては、
図5から分かるように、ポリエチレン系粒子及びアクリル系粒子の各々の散布量を比較的に少なくした条件が設定される。
【0093】
また、摩擦の大きさが「小」に設定されたパターン(例えば、パターンP2等)を形成するための制御条件としては、微粒子の散布量を比較的に多くし、且つ、ポリエチレン系粒子の比率が大きくなるような条件が設定される。さらに、摩擦の大きさが「中」に設定されたパターン(例えば、パターンP6等)を形成するための制御条件としては、微粒子の散布量を比較的に多くし、且つ、アクリル系粒子の比率が大きくなるような条件が設定される。
【0094】
以上の内容を加飾層Aの形成過程の視点から説明すると、加飾層Aを形成するにあたり、クリアインク像Dに微粒子が付着される。クリアインク像Dのうち、摩擦の大きさが「大」に設定されたパターンに相当する部分では、
図12に示すように、ポリエチレン系粒子Qs及びアクリル系粒子Qtの各々の付着量が比較的少ない。また、摩擦の大きさが「小」に設定されたパターンに相当する部分では、
図13に示すように、微粒子の付着量が比較的多く、且つ、ポリエチレン系粒子Qsの比率がアクリル系粒子Qtの比率よりも大きい。また、摩擦の大きさが「中」に設定されたパターンに相当する部分では、
図14に示すように、微粒子の付着量が比較的多く、且つ、アクリル系粒子Qtの比率がポリエチレン系粒子Qsの比率よりも大きい。
なお、
図12乃至
図14は、各パターンが形成される様子を示す模式的な断面図である。詳しくは、
図12は、パターンP1においてクリアインクに付着する微粒子を示し、
図13は、パターンP2においてクリアインクに付着する微粒子を示し、
図14は、パターンP6においてクリアインクに付着する微粒子を示している。
【0095】
摩擦の大きさに応じて設定される制御条件について付言しておくと、上述のように微粒子の種類及び散布量を制御条件として設定する以外に、摩擦の大きさに応じてクリアインク量の吐出量を制御条件として設定してもよい。具体的に説明すると、
図15に示すように、基材表面の各部位における半硬化したクリアインクの量が増えるほど、その部位における微粒子の付着量が増加する傾向にある。このことを踏まえて、摩擦の大きさが設定された大きさとなるようにパターンを形成するための制御条件としては、クリアインクの着弾量(厳密には、半硬化状態のクリアインクの量)が摩擦の大きさの設定値に応じた量となるような条件を設定することができる。
なお、
図15は、クリアインクの着弾量と加飾層の表面における摩擦の大きさとの関係を示す図である。
【0096】
[加飾部材製造装置の動作例]
次に、以上のように構成された加飾部材製造装置10の動作例として、加飾部材の製造フローについて説明する。なお、以下では、
図4に図示した加飾層A(すなわち、8種類のパターンP1乃至P8によって構成された加飾層A)を有する加飾部材Wdを製造する流れを例に挙げて説明する。
【0097】
加飾部材の製造フローを開始するにあたり、ユーザが加飾部材製造用のアプリケーションプログラムを起動する。ユーザは、上記のプログラムにおいて、8種類のパターンP1乃至P8のそれぞれに対して触感を設定する。また、ユーザは、各パターンP1乃至P8の触感を設定した後、加飾層Aを構成する複数の部位(矩形状の部位)の各々について、8種類のパターンP1乃至P8のいずれか一つを割り当てる。
【0098】
その後、ホストコンピュータ30の印刷データ生成部31及び制御データ生成部32が上述の手順に従って印刷データ及び制御データを生成する。このとき、制御データ生成部32は、加飾層Aの各パターンP1乃至P8を設定されたパターン別の制御条件に基づいて形成するための制御データを生成する。つまり、制御データ生成部32は、各パターンP1乃至P8の触感に関する設定内容に応じて各パターンP1乃至P8の制御条件を設定し、触感をパターンに応じて像様(イメージワイズ)に制御するような制御データを生成する。
【0099】
印刷データ及び制御データの生成が終了すると、ホストコンピュータ30のデータ送信部33が印刷データ及び制御データを、加飾部材製造の指示と共にインクジェットプリンタ20に向けて送信する。インクジェットプリンタ20の制御部26は、各種のデータをホストコンピュータ30から受信すると、インクジェットプリンタ20各部を制御する。具体的には、移動機構21が基材Bを移動方向に沿って移動させ、基材Bが第一位置に到達すると、制御部26が印刷データ及び制御データに従って吐出部22による各種インクの吐出工程を実施する。この吐出工程では、印刷データに基づいてカラーインクが基材表面の各部位に向けて吐出されることにより、基材表面にカラーインク像Cが形成される。
【0100】
また、吐出工程では、制御データに基づいてクリアインクが基材表面の各部位に向けて吐出されることにより、カラーインク像Cの上にクリアインク像Dが重ねて形成される。このとき、制御部26は、各パターンP1乃至P8の触感に関する設定内容に応じた設定された制御条件に従って各パターンP1乃至P8を形成するように、吐出部22を制御する。具体的に説明すると、制御部26は、触感に関する設定内容に応じてパターン別に設定された種類及び量のクリアインクが基材表面の各部位に着弾するように吐出部22を制御する。
【0101】
より詳しく説明すると、制御部26は、曲げ易さ及び凹凸度合いに関する設定内容に応じてパターン別に設定された量にて高延伸インク及び低延伸インクの各々が基材表面の各部位に着弾するように、吐出部22を制御する。すなわち、基材表面に着弾するクリアインクの種類及び量が、基材表面の各部位に応じてイメージワイズに制御される。これにより、クリアインク像Dの各部分が曲げ易さ及び凹凸度合いに関する設定内容を満たすように、クリアインクが基材表面の各部位に着弾してクリアインク像Dを形成する。
【0102】
クリアインクの吐出後、制御部26は、半硬化部23を制御して半硬化部23から紫外線を照射させる。これにより、基材表面の各部位に着弾したクリアインクのドットが半硬化状態となる。
【0103】
基材Bの更なる移動によって基材Bが第二位置に到達すると、制御部26は、制御データに従って散布部24による微粒子の散布工程を実施する。この散布工程では、基材表面の各部位に向けて微粒子が散布(厳密には噴射)され、当該各部位にて半硬化状態で存在するクリアインクのドットに微粒子が付着する。このとき、制御部26は、触感に関する設定内容に応じてパターン別に設定された種類及び量の微粒子が、基材表面の各部位にて半硬化したクリアインクのドットに付着するように散布部24を制御する。
【0104】
より詳しく説明すると、制御部26は、摩擦の大きさに関する設定内容に応じてパターン別に設定された量にてポリエチレン系粒子及びアクリル系粒子の各々が基材表面の各部位にてクリアインクのドットに付着するように、散布部24を制御する。すなわち、クリアインクのドットに付着する微粒子の種類及び量が、基材表面の各部位に応じてイメージワイズに制御される。これにより、加飾層Aの各パターンP1乃至P8が摩擦の大きさに関する設定内容を満たすように、各種の微粒子が基材表面の各部位にてクリアインクのドットに付着する。
【0105】
なお、本製造フローでは、摩擦の大きさが設定内容を満たすように微粒子の種類及び散布量を制御することとしたが、これに限定されるものではない。具体的に説明すると、摩擦の大きさは、微粒子の付着量に応じて変化し、微粒子の付着量は、前述の
図15で示したように、基材表面の各部位における半硬化状態のクリアインクの量が増えるほど増加する。このことを踏まえて、基材表面の各部位における半硬化状態のクリアインクの量が、摩擦の大きさに関する設定内容に応じて基材表面の各部位と対応付けて設定された量となるように、制御部26が吐出部22及び半硬化部23を制御してもよい。より具体的には、摩擦の大きさが大きい部位であるほど、その部位における半硬化状態のクリアインクの量が増えるように、吐出部22及び半硬化部23を制御すればよい。
【0106】
微粒子の散布後、制御部26は、本硬化部25を制御して本硬化部25から紫外線を照射させる。これにより、微粒子が付着したクリアインクのドットが本硬化状態まで硬化する。この時点で、基材表面の各部位には、その部位に割り当てられた種類のパターンが形成される。
【0107】
以上までの一連の工程を経て、基材表面に加飾層Aが形成されて加飾部材Wdが完成する。完成した加飾部材Wdは、移動機構21によってインクジェットプリンタ20の排出口まで移動した後に排出口から排出される。
【0108】
完成した加飾部材Wdでは、加飾層Aの各パターンP1乃至P8の触感(具体的には、曲げ易さ、凹凸度合い、及び摩擦の大きさ)がパターン別に相違している。すなわち、上述の製造フローにより、加飾部材Wdの各部における触感を当該各部の位置に応じてイメージワイズに調整することが可能となる。
【0109】
以上までに説明してきたように、本発明の加飾部材製造装置及び加飾部材製造方法によれば、加飾層各部での触感が所望の触感となるようにイメージワイズに調整することが可能である。特に、上述した実施形態では、触感としての曲げ易さ、凹凸度合い及び摩擦の大きさを同時に調整することが可能である。以上の点において、本発明の加飾部材製造装置及び加飾部材製造方法は、特許文献1及び2に記載された技術を含む従来技術と比較して有利なものである。
【0110】
より具体的に説明すると、『発明が解決しようとする課題』の項で説明したように、特許文献1に記載の画像形成装置では、加飾層各部での質感をどう調整するかが決められてなく、そのために、最終的な質感がどのような触感になるかが不明である。また、特許文献2に記載の表面加飾用フィルムでは、表面加飾層の表面粗さ等を所定の数値範囲内に調整しているが、イメージワイズに調整するものではない。また、表面粗さの調整によって最終的にどのような触感が実現されるかが不明である。
【0111】
これに対して、本発明の加飾部材製造装置及び加飾部材製造方法では、加飾部材の触感に関する設定が基材表面の各部位に対して行われ、その設定内容に応じた制御条件が基材表面の各部位と対応付けて設定される。そして、制御部26は、上記の制御条件に従って吐出部22及び散布部24を制御する。これにより、加飾部材各部での触感が、それぞれ所望の触感(具体的には、予め設定された触感)となるように、基材表面の各部位と対応付けてイメージワイズに調整される。
【0112】
以上のように、本発明の加飾部材製造装置及び加飾部材製造方法は、加飾部材の触感に関する設定内容を満たし、且つ、触感をイメージワイズに調整することができ、かかる点において特許文献1及び特許文献2に記載の技術と比較して有利なものである。
【0113】
また、本発明の加飾部材製造装置及び加飾部材製造方法であれば、アナログ印刷のようにインキ毎に版を準備する必要がないので、比較的簡単且つ安価にイメージワイズな触感制御を行うことが可能である。
【0114】
[加飾部材製造装置の第一変形例]
上記の実施形態では、加飾部材を製造する際に、インクジェットプリンタ20の内部では基材Bが移動方向に沿って上流側から下流側に向かって一方向に移動することとした。ただし、これに限定されるものではなく、基材Bが移動経路において第一位置と第二位置との間を往復移動する構成(以下、「第一変形例」と言う。)も考えられる。以下、第一変形例に係る加飾部材製造装置について説明する。なお、以下では、第一変形例のうち、上記の実施形態と異なる点を主として説明する。
【0115】
第一変形例では、移動機構21が基材Bを第一位置と第二位置との間で往復移動させる。また、変形例では、吐出部22による各種インクの吐出工程と、半硬化部23によるクリアインクの半硬化工程と、移動機構21が基材Bを第一位置から第二位置に移動させる第一移動工程と、散布部24による微粒子の散布工程と、本硬化部25によるクリアインクの本硬化工程と、移動機構21が基材Bを第二位置から第一位置に戻す第二移動工程と、が複数回繰り返される。ここで、吐出工程及び半硬化工程は、基材Bが第一位置にある間に実施され、第一移動工程は、各回における吐出工程及び半硬化工程の終了後に実施される。散布工程及び本硬化工程は、基材Bが第二位置にある間に実施され、第二移動工程は、各回における散布工程及び本硬化工程の終了後に実施される。なお、本硬化工程については、基材Bが第一位置にある間に実施されてもよい。
【0116】
つまり、第一変形例では、クリアインクを吐出して半硬化させるステップと、クリアインクに微粒子を付着させて本硬化させるステップと、が交互に複数回繰り返される。換言すると、第一変形例では、基材表面中のある部位にクリアインクを着弾させて、そのクリアインクのドットに微粒子を付着させた後に、基材表面中の他の部位にクリアインクを着弾させ、そのクリアインクのドットに微粒子を付着させることになる。
【0117】
また、第一変形例において、制御部26は、複数回の散布工程の各回において散布部24に各回の散布工程別に決められた種類及び量の微粒子を散布させる。より詳しく説明すると、制御部26は、複数回の散布工程にて基材表面の各部位のクリアインクのドットに付着する微粒子の種類及び量が、摩擦の大きさに関する設定内容に応じて基材表面の各部位と対応付けて設定された種類及び量となるように、散布部24を制御する。これにより、各回の散布工程では、各回の散布工程別に決められた種類及び量の微粒子が、基材表面の各部位に着弾したクリアインクに向けて散布される。
図4に図示の加飾部材Wdを製造する場合を例に挙げて説明すると、加飾層AのパターンP4に相当する部分に対しては、例えば、1回目の散布工程においてポリエチレン系粒子を「9」だけ散布し、2回目の散布工程においてアクリル系粒子を「1」だけ散布する。
【0118】
以上により、第一変形例においても、加飾部材の触感(具体的には、摩擦の大きさ)を所望の触感となるようにイメージワイズに調整することが可能となる。
【0119】
[加飾部材製造装置の第二変形例]
上述の実施形態では、加飾部材の触感として曲げ易さ、凹凸度合い及び摩擦の大きさを調整することとしたが、上記の項目に加えて、更に加飾層の温度を調整することができてもよい。つまり、加飾層の温度をその設定内容に応じてイメージワイズに調整する構成(以下、「第二変形例」と言う。)が考えられる。以下、第二変形例に係る加飾部材製造装置について説明する。なお、以下では、第二変形例のうち、上記の実施形態と異なる点を主として説明する。
【0120】
第二変形例では、制御条件の設定に際して、加飾層の各部の温度を設定し、具体的には加飾層の各部の温度について「高」及び「低」のいずれかを選択する。ここで、加飾層の各部の温度は、加飾層の各部の表面を触ったときの温かさ及び冷たさである。また、加飾層の温度は、クリアインクに付着する微粒子の種類に応じて変化する。
【0121】
また、第二変形例において、散布部24は、互いに熱伝導率が異なる複数種類の微粒子を散布する。散布部24が散布する微粒子には、熱伝導率がより高いアクリル系粒子と、熱伝導率がより低いポリプロピレン系粒子と、が含まれる。アクリル系粒子の熱伝導率は、0.3(W/mK)である。
【0122】
ポリプロピレン系粒子は、ポリプロピレン系樹脂の微粒子であり、その熱伝導率は、0.12(W/mK)である。ポリプロピレン系樹脂とは、プロピレンに由来する構造単位を主成分とするポリオレフィンを意味する。具体的には、プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体、プロピレン-エチレン-α-オレフィン共重合体、プロピレンを主成分とする共重合体ブロック、並びに、エチレン及びα-オレフィンの共重合体ブロックのうちの少なくとも一つとプロピレンとからなるプロピレン系ブロック共重合体等が挙げられる。また、ポリプロピレン系樹脂が共重合体である場合、その共重合体中の全構造単位に対するプロピレン由来の構造単位の含有量は、通常、70~99.9重量%である。また、ポリプロピレン系樹脂は、1種単独であってもよく、あるいは2種以上をブレンドして使用することができる。
【0123】
なお、熱伝導率については、例えば特開2013-028501号公報に記載された下記の測定方法によって測定される。
(熱伝導率の測定方法)
縦30cm、横30cm及び厚み5cmの発泡スチロールの中心部を、縦24cm且つ横24cmの正方形状にくりぬき、発泡スチロールの枠を形成する。枠の一方に縦30cm、且つ横30cmのアルミ箔を貼り付けて凹部を形成し、試料台とする。なお、アルミ箔で覆った面を試料台の底面とし、発泡スチロールの厚み方向に対するもう一方の面を天井面とする。微粒子を凹部へ充填した後、天井面に縦30cm且つ横30cmのアルミ箔を載せたものを測定試料とする。測定試料を用いて、30℃での熱伝導率を、ヒートフローメーター HFM 436 Lambda(商品名、NETZSCH社製)を使用して熱伝導率を測定する。
【0124】
そして、第二変形例では、加飾層の温度に関する設定内容に応じた制御条件が、基材表面の各部位と対応付けて設定される。具体的に説明すると、クリアインクに付着した微粒子のうち、熱伝導率がより高いアクリル系粒子の比率が大きくなるほど、加飾層の温度が低くなり、反対に、熱伝導率がより低いポリプロピレン系粒子の比率が大きくなるほど、加飾層の温度が高くなる。このことを踏まえて、制御条件が設定される。
図4に図示の加飾層Aを形成するケースを例に挙げて具体的に説明すると、パターンP1での温度が「低」に設定された場合、パターンP1を形成するための制御条件としては、パターンP1にてクリアインクのドットに付着させる微粒子のうち、アクリル系粒子の比率がポリプロピレン系粒子の比率よりも小さくなるような条件が設定される。
【0125】
その後、制御部26が、上記のごとく設定された制御条件に従って散布部24を制御する。これにより、基材表面の各部位に着弾したクリアインクのドットには、加飾層の温度に関する設定内容に応じて基材表面の各部位と対応付けて設定された種類の微粒子が付着するようになる。
以上のような構成により、第二変形例では、加飾層各部での温度が所望の温度となるように、加飾層各部での温度をイメージワイズに調整することができる。
【0126】
[その他の実施形態]
以上までに本発明の加飾部材製造装置及び加飾部材製造方法について一例を挙げて説明してきたが、上述の実施形態は、あくまでも一例に過ぎず、他の例も考えられる。
【0127】
例えば、上記の実施形態では、加飾部材Wdの各部における触感を当該各部の位置に応じてイメージワイズに調整するために、制御部26が吐出部22及び散布部24の双方を制御する。ただし、これに限定されるものではなく、吐出部22及び散布部24のうちのいずれか一方を、触感に関する設定内容に応じて基材表面の各部位と対応付けて設定された制御条件に従って制御してもよい。例えば、触感として凹凸度合いのみを調整するのであれば、吐出部22を凹凸度合いの設定内容に応じて制御し、散布部24に対しては、通常の制御(触感の設定内容には影響されない制御)を行ってもよい。
【0128】
また、上記の実施形態では、加飾部材の触感を調整するために加飾層の構成を制御することとし、具体的には、基材表面に着弾させるクリアインクの種類及び量、並びに、クリアインクに付着させる微粒子の種類及び量を制御する。このような制御に加えて更に例えば、加飾部材の製造に用いる基材Bの種類を変えれば、加飾部材の触感を、基材Bの種類と加飾層の構成との組み合わせに応じて変えることが可能となる。例えば、
図16及び
図17に示すように、弾性が異なる複数種類の基材Bの中から一つを選び、選んだ基材Bの表面上に
図4の図示の加飾層Aを形成すれば、加飾部材各部の触感が、基材Bの種類及び加飾層Aの組み合わせに応じて調整されることになる。
なお、
図16及び
図17は、基材Bの種類と加飾層Aとの組み合わせによる触感制御についての説明図である。詳しくは、
図16が低弾性基材Biを用いたときのケースを示しており、
図17は、高弾性基材Bjを用いたときのケースを示している。
【0129】
基材Bの種類と加飾層Aとの組み合わせによる触感制御について具体的に説明すると、
図16に示すように、低弾性基材Biの上に曲げ易さがより大きいパターン(例えば、パターンP1)を形成すれば、それによって弾性が向上し、曲げ易さがより小さいパターン(例えば、パターンP5)を形成すれば、弾性がより一層低くなる。反対に、
図17に示すように、高弾性基材Bjの上に曲げ易さがより大きいパターンP1を形成すれば、弾性が一段と向上し、曲げ易さがより小さいパターンP5を形成すれば、その分だけ弾性を意図的に低下させることができる。
【符号の説明】
【0130】
10 加飾部材製造装置
20 インクジェットプリンタ
21 移動機構
22 吐出部
23 半硬化部
24 散布部
25 本硬化部
26 制御部
27A,27B プラテン
30 ホストコンピュータ
31 印刷データ生成部
32 制御データ生成部
33 データ送信部
A 加飾層
B 基材
Bi 低弾性基材
Bj 高弾性基材
C カラーインク像
D クリアインク像
Ix 高延伸インク
Iy 低延伸インク
Qs ポリエチレン系粒子
Qt アクリル系粒子
Ny,Nm,Nc,Nk,Ng,Nh ノズル
P1,P2,P3,P4,P5,P6,P7,P8 パターン
Wd 加飾部材