(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】位置推定方法、位置推定装置、および位置推定システム
(51)【国際特許分類】
G01S 5/14 20060101AFI20220719BHJP
G01S 1/68 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
G01S5/14
G01S1/68
(21)【出願番号】P 2021137634
(22)【出願日】2021-08-25
(62)【分割の表示】P 2017084041の分割
【原出願日】2017-04-20
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】森永 智也
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0213279(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0094820(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0164901(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0243011(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0160710(US,A1)
【文献】特開2009-264747(JP,A)
【文献】特開2017-067698(JP,A)
【文献】特開2016-142637(JP,A)
【文献】特開2001-051040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00 - G01S 5/14
G01S 1/68
H04W 4/02 - H04W 4/029
H04W 64/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信機から送信された電波の受信信号強度を取得するとともに取得した前記受信信号強度を送信する複数の受信機から送信された複数の前記受信信号強度を受信し、
複数の前記受信信号強度に基づいて前記送信機と前記複数の受信機の各々との距離を算出するとともに複数の前記距離を用いて前記送信機の位置を推定するに際し、複数の前記距離のなかに予め定められた前記距離の閾値よりも小さい距離が存在する場合、前記閾値よりも小さい距離に対応する受信機の位置を前記送信機の位置と推定する
処理を行い、
複数の前記距離のうち最短のものから3つの距離を用いて前記送信機の位置を推定するとともに前記3つの距離のうちの任意の2つの距離の和が各々の距離に対応する2つの受信機の距離に満たない場合には、前記2つの距離の和が前記2つの受信機の距離に満たない状況が連続して発生する第1の回数を計測し、前記第1の回数が予め定めた第1の閾値以上となった場合に、前記2つの距離を同じ倍率で延伸して交点を求め、前記交点を前記送信機の位置と推定する第1の補正処理を行う補正ありモードに移行する
位置推定方法。
【請求項2】
前記補正ありモードに移行した後、前記2つの距離の和が前記2つの受信機の距離以上となる状況が連続して発生する第2の回数を計測し、前記第2の回数が予め定めた第2の閾値以上となった場合、前記第1の補正処理を行わない補正なしモードに移行する
請求項1に記載の位置推定方法。
【請求項3】
第1の時刻において推定された第1の位置と、前記第1の時刻から予め定められた時間を経過した第2の時刻において推定された第2の位置との距離が予め定められた最大移動距離を越えた場合、前記第1の位置から前記最大移動距離だけ離れた位置を前記送信機の位置と推定する第
2の補正処理を行う
請求項1
または請求項2に記載の位置推定方法。
【請求項4】
前記第1の位置と前記第2の位置とを結ぶ直線上の、前記第1の位置から前記最大移動距離だけ離れた位置を前記送信機の位置と推定する
請求項
3に記載の位置推定方法。
【請求項5】
前記送信機が存在すると推定される予め定められた領域を示す情報と、2つの前記距離を用いて前記送信機の位置を推定する
請求項1
または請求項2に記載の位置推定方法。
【請求項6】
2つの
前記距離が複数の前記距離のうち最短のものから2つの距離であり、
前記最短のものから2つの距離を用いて算出される前記送信機の位置の2つの候補のうち前記予め定められた領域に含まれる方を前記送信機の位置と推定する
請求項
5に記載の位置推定方法。
【請求項7】
送信機から送信された電波の受信信号強度を取得するとともに取得した前記受信信号強度を送信する複数の受信機から送信された複数の前記受信信号強度を受信する受信部と、
複数の前記受信信号強度に基づいて前記送信機と前記複数の受信機の各々との距離を算出するとともに複数の前記距離を用いて前記送信機の位置を推定する推定部と、を備え、
前記推定部は、複数の前記距離のなかに予め定められた前記距離の閾値よりも小さい距離が存在する場合、前記閾値よりも小さい距離に対応する受信機の位置を前記送信機の位置と推定する
処理を行い、複数の前記距離のうち最短のものから3つの距離を用いて前記送信機の位置を推定するとともに前記3つの距離のうちの任意の2つの距離の和が各々の距離に対応する2つの受信機の距離に満たない場合には、前記2つの距離の和が前記2つの受信機の距離に満たない状況が連続して発生する第1の回数を計測して、前記第1の回数が予め定めた第1の閾値以上となった場合に、前記2つの距離を同じ倍率で延伸して交点を求め、前記交点を前記送信機の位置と推定する第1の補正処理を行う補正ありモードに移行する
位置推定装置。
【請求項8】
電波を送信する送信機と、
前記電波を受信して前記電波の受信信号強度を取得するとともに取得した前記受信信号強度を送信する複数の受信機と、
前記受信機から送信された複数の前記受信信号強度を受信する受信部、および複数の前記受信信号強度に基づいて前記送信機と前記複数の受信機の各々との距離を算出するとともに複数の前記距離を用いて前記送信機の位置を推定する推定部を備え、前記推定部が、複数の前記距離のなかに予め定められた前記距離の閾値よりも小さい距離が存在する場合、前記閾値よりも小さい距離に対応する受信機の位置を前記送信機の位置と推定する
処理を行い、複数の前記距離のうち最短のものから3つの距離を用いて前記送信機の位置を推定するとともに前記3つの距離のうちの任意の2つの距離の和が各々の距離に対応する2つの受信機の距離に満たない場合には、前記2つの距離の和が前記2つの受信機の距離に満たない状況が連続して発生する第1の回数を計測して、前記第1の回数が予め定めた第1の閾値以上となった場合に、前記2つの距離を同じ倍率で延伸して交点を求め、前記交点を前記送信機の位置と推定する第1の補正処理を行う補正ありモードに移行する位置推定装置と、
を含む位置推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置推定方法、位置推定装置、および位置推定システム、特にRSSI(Received Signal Strength Indicator:受信信号強度)値を用いた位置推定方法、位置推定装置、および位置推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特定の人物や動物等(以下、「探索対象」)の位置を推定するシステム(以下、「位置推定システム」)の実現が求められている。例えば、高齢化社会の到来に伴う要介護老人の徘徊の問題が挙げられる。すなわち、徘徊する老人の位置が推定可能なシステムが実現されれば、介護者の負担軽減に資する。また、牛等の家畜の放牧地における個々の家畜の位置の推定が挙げられる。例えば、家畜の位置がバイタルデータ(生体情報)とともに把握できれば、牧場主の管理上の負担軽減に資する。
【0003】
探索対象の位置を推定する方法として、GPS(Global Positioning System)を用いた方法がよく知られている。しかしながら、近代のIoT(Internet of Things)等の台頭に伴い、GPSに代わり、より低消費電力で、より低コストな位置推定方法が求められている。そのような位置推定方法の一例として、RSSI値を用いた方法が検討されており、中でも電波として到達距離が比較的長いサブギガヘルツ帯(以下、「サブG」。例えば920MHz帯)を用いた方法が精力的に検討されつつある。RSSI値を用いた位置推定システムは、一般に、電波を送信するとともに探索対象に付随して移動する送信機(例えば、「ビーコン」)と、送信機から送信された電波を受信し、そのRSSI値、すなわち受信信号強度から探索対象までの距離を推定する複数の受信機(例えば、「コンセントレータ」)を含んで構成される。
【0004】
RSSI値を用いた位置推定システムとして例えば特許文献1に開示されたものが知られている。特許文献1に開示された位置推定システムは、3台以上のアクセスポイントと、アクセスポイントが受け付けた携帯端末の電波の、強度に関する情報に基づいて携帯端末の位置を推定する位置推定装置と、を備え、位置推定装置は、決定部および推定部を有する。決定部は、複数の時間帯のそれぞれにおいて各アクセスポイントが受け付けた携帯端末の電波の、強度に関する、アクセスポイント別かつ時間帯別の電波強度情報に基づき、各時間帯について、1のアクセスポイントを最大強度電波受信機として決定する。推定部は、2以上の時間帯からなる判定対象時間帯における携帯端末の位置を、判定対象時間帯に含まれる時間帯の最大強度電波受信機の組合せに基づき推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、RSSI値を用いることにより、GPSを用いる場合と比較して、より消費電力が抑制され、コストも抑えられた位置推定システムが実現される可能性がある。しかしながら、RSSI値を用いた位置推定方法では、例えば受信機と送信機との距離が離れ、受信信号強度が弱くなると測定された距離、すなわち推定される位置(以下、「推定点」)の誤差が大きくなるという問題がある。つまり、推定点のブレが大きく、地図に描画した場合に推定点の位置、あるいは軌跡の特定が困難になる場合がある。また、RSSI値を用いた位置推定方法では一般に3箇所以上に配置された受信機における3点のRSSI値を用いて位置を推定するが、距離の誤差に起因して推定点が算出できない場合もある。つまり、常に適切な3点の測定値が取得できるとは限らず、また、測定値を3点取得できたとしても、それらの測定値が3点による位置の推定において適切な値とも限らない。
位置推定の精度を向上させるためには、このような観点からの検討も必要と考えられる。
【0007】
この点、特許文献1に係る位置推定システムは、時間帯を複数の判定対象時間帯に区切り、該判定対象時間帯内で3回の受信強度の測定を行い、受信強度が最大となるアクセスポイントの組み合わせによって探索対象の位置を推定している。つまり、適切な測定値を3つ用いることを前提とし、しかも、測定値の組み合わせ自体の適否について配慮したものではない。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、多様な測定値の特性に応じてより精度の高い位置の推定が可能となるアルゴリズムを備えた位置推定方法、位置推定装置、および位置推定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る位置推定方法は、送信機から送信された電波の受信信号強度を取得するとともに取得した前記受信信号強度を送信する複数の受信機から送信された複数の前記受信信号強度を受信し、複数の前記受信信号強度に基づいて前記送信機と前記複数の受信機の各々との距離を算出するとともに複数の前記距離を用いて前記送信機の位置を推定するに際し、複数の前記距離のなかに予め定められた前記距離の閾値よりも小さい距離が存在する場合、前記閾値よりも小さい距離に対応する受信機の位置を前記送信機の位置と推定する処理を行い、複数の前記距離のうち最短のものから3つの距離を用いて前記送信機の位置を推定するとともに前記3つの距離のうちの任意の2つの距離の和が各々の距離に対応する2つの受信機の距離に満たない場合には、前記2つの距離の和が前記2つの受信機の距離に満たない状況が連続して発生する第1の回数を計測し、前記第1の回数が予め定めた第1の閾値以上となった場合に、前記2つの距離を同じ倍率で延伸して交点を求め、前記交点を前記送信機の位置と推定する第1の補正処理を行う補正ありモードに移行するものである。
【0010】
本発明に係る位置推定装置は、送信機から送信された電波の受信信号強度を取得するとともに取得した前記受信信号強度を送信する複数の受信機から送信された複数の前記受信信号強度を受信する受信部と、複数の前記受信信号強度に基づいて前記送信機と前記複数の受信機の各々との距離を算出するとともに複数の前記距離を用いて前記送信機の位置を推定する推定部と、を備え、前記推定部は、複数の前記距離のなかに予め定められた前記距離の閾値よりも小さい距離が存在する場合、前記閾値よりも小さい距離に対応する受信機の位置を前記送信機の位置と推定する処理を行い、複数の前記距離のうち最短のものから3つの距離を用いて前記送信機の位置を推定するとともに前記3つの距離のうちの任意の2つの距離の和が各々の距離に対応する2つの受信機の距離に満たない場合には、前記2つの距離の和が前記2つの受信機の距離に満たない状況が連続して発生する第1の回数を計測して、前記第1の回数が予め定めた第1の閾値以上となった場合に、前記2つの距離を同じ倍率で延伸して交点を求め、前記交点を前記送信機の位置と推定する第1の補正処理を行う補正ありモードに移行するものである。
【0011】
本発明に係る位置推定システムは、電波を送信する送信機と、前記電波を受信して前記電波の受信信号強度を取得するとともに取得した前記受信信号強度を送信する複数の受信機と、前記受信機から送信された複数の前記受信信号強度を受信する受信部、および複数の前記受信信号強度に基づいて前記送信機と前記複数の受信機の各々との距離を算出するとともに複数の前記距離を用いて前記送信機の位置を推定する推定部を備え、前記推定部が、複数の前記距離のなかに予め定められた前記距離の閾値よりも小さい距離が存在する場合、前記閾値よりも小さい距離に対応する受信機の位置を前記送信機の位置と推定する処理を行い、複数の前記距離のうち最短のものから3つの距離を用いて前記送信機の位置を推定するとともに前記3つの距離のうちの任意の2つの距離の和が各々の距離に対応する2つの受信機の距離に満たない場合には、前記2つの距離の和が前記2つの受信機の距離に満たない状況が連続して発生する第1の回数を計測して、前記第1の回数が予め定めた第1の閾値以上となった場合に、前記2つの距離を同じ倍率で延伸して交点を求め、前記交点を前記送信機の位置と推定する第1の補正処理を行う補正ありモードに移行する位置推定装置と、を含むものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、多様な測定値の特性に応じてより精度の高い位置の推定が可能となるアルゴリズムを備えた位置推定方法、位置推定装置、および位置推定システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施の形態に係る位置推定システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態に係る基本推定処理を説明する図である。
【
図3】第1の実施の形態に係る、(a)は1点推定処理、(b)は推定点2点補正処理、(c)は最大移動距離制限処理を説明する図である。
【
図4】第1の実施の形態に係る位置推定処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】推定点2点補正処理の他の形態を説明する図である。
【
図6】第2の実施の形態に係る位置推定システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図7】第2の実施の形態に係る位置推定方法を説明する図である。
【
図8】第2の実施の形態に係る位置推定処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0015】
[第1の実施の形態]
図1から
図5を参照して、本実施の形態に係る位置推定方法、位置推定装置、および位置推定システムについて説明する。本発明において、位置推定の対象(探索対象)、あるいは本システムを適用するフィールド(領域)等特に限定されないが、本実施の形態では、一例として探索対象を牛等の家畜、適用フィールドを放牧地とした形態を例示して説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態に係る位置推定システム10は、送信機(ビーコン)12、受信機(コンセントレータ)14-1、14-2、14-3(以下、総称する場合は「受信機14」)、ゲートウエイ16、およびクラウド18を含んで構成されている。
ゲートウエイ16が本発明に係る「位置推定装置」を構成する。また、ゲートウエイ16の機能のうち、以下で説明する機能を半導体装置で実現する場合もあり、この場合は当該半導体装置が「位置推定装置」を構成する。
【0017】
送信機12は、図示しない送信アンテナを介して予め定められた周波数帯の電波を送信するビーコンであり、例えばタグのような形態で家畜に固着されている。送信機12が送信する電波には、固有のID(IDentification)による識別情報等を重畳させてもよい。送信機12から送信される電波は連続して送信されてもよいし、間欠的(定期的)に送信されてもよい。また、本実施の形態では1つの送信機12を例示して説明するが、むろんこれに限られず、送信機12は家畜等の数に応じて必要な数量だけ配置される。すなわち、本実施の形態において送信機12の数は1つまたは複数である。
【0018】
受信機14は、送信機12が送信する電波を図示しない受信アンテナを介して受信し、受信した電波のRSSI値を図示しない送信アンテナを介してゲートウエイ16に送る。
本実施の形態では、受信機14を3台配置させる形態を例示して説明するが、位置推定の形態等に応じて何台配置させてもよい。
【0019】
ゲートウエイ16は、各受信機14から送信された電波を図示しない受信アンテナを介して受信する。ゲートウエイ16は各受信機から受信した電波に含まれるRSSI値から、各々の受信機14と送信機12との距離を算出し、後述する本実施の形態に係る位置推定処理を実行して送信機12の位置(家畜の位置)を推定、収集する。推定、収集された各家畜の位置の情報は、インターネットを介してクラウド18等の上位の処理系に送信する場合もある。クラウド18内で位置推定処理を行う場合は、ゲートウエイ16が各RSSI値を集約してクラウド18に送信し、クラウド18内の処理系が受け取ったRSSI値に基づいて位置を推定する。また、クラウド18を利用する形態では、例えばゲートウエイ16からインターネット-経由でクラウド18にRSSI値を格納し、PC(Personal Computer)からクラウド18にアクセスして該RSSI値を取得し、以下で説明する位置推定処理を行うようにしてもよい。
【0020】
本発明において、送信機12と受信機14との間における通信の方式、受信機14とゲートウエイ16との間における通信の方式は特に限定されないが、本実施の形態では、一例として、Wi-SUN(Wireless Smart Utility Network)を用いている。Wi-SUNとは、最大1km弱程度の距離で相互通信を行う省電力無線通信規格であり、電波として900MHz前後のサブGの電波を用いている。
【0021】
次に、
図9を参照して、送信機(ビーコン)を用いた探索対象の位置推定の基本的な方法について説明する。
図9は、子供あるいは高齢者を探索対象とする基本位置推定システムを示している。
図9に示す基本位置推定システムは、A、B、C、Dで示される受信機が道路に沿って配置され、定期的に電波を送信する送信機を携帯した子供あるいは高齢者(探索対象)がこの道路に沿って移動する場合の例である。
【0022】
また、
図9に示す基本位置推定システムはRSSI値を用いず、また位置推定に用いる受信機が1台の場合を含む位置推定システムの例である。すなわち、受信機A~Dは送信機からの電波を受信しているか否かのみの情報を図示しないゲートウエイに送る。ゲートウエイは、各受信機における電波の受信情報に基づいて探索対象の位置を推定する。各々の受信機は、送信機からの電波を受信することが可能な予め定められた範囲(
図9で点線円で示された範囲)を有している。
図9では、受信機A、B、C、Dの受信可能範囲を各々エリアA、エリアB、エリアC、エリアDと表記している。
【0023】
図9に示す基本位置推定システムでは、受信機A~Dの各々における送信機からの電波の受信情報に応じて、以下のように位置を推定することが可能である。
(ケース1)特定の送信機からの電波を1つの受信機が受信しているケース。
例えば、ゲートウエイが、受信機Aが特定の送信機からの電波を受信しているとの情報を受け取った場合、ゲートウエイによって探索対象はエリアAにいると推定される。
(ケース2)特定の送信機からの電波を複数の受信機が受信しているケース。
例えば、ゲートウエイが、受信機C、Dが特定の送信機からの電波を受信しているとの情報を受け取った場合、ゲートウエイによって探索対象はエリアCとDが重なった領域(
図9に示すエリアCD)にいると推定される。この際、RSSI値を比較すれば、エリアCD内の推定位置を更に局所化することが可能となる。
(ケース3)特定の送信機からの電波をいずれの受信機も受信していないケース。
この場合、過去にいた位置の履歴に基づいて現在の位置を推定することができる。すなわち、現在はいずれの受信機においても特定の送信機からの電波の受信が確認されないが、最後(直近の過去)において受信機Bが受信していたとすると、探索対象はいずれの受信機の受信可能範囲も存在しないエリアBとCの間(
図9に示すエリア
BC)にいると、ゲートウエイによって推定される。探索対象は道路に沿って移動していると考えられるからである。
【0024】
本実施の形態に係る位置推定システム10でも、むろん上記の基本位置推定システムのアルゴリズムに従って動作させることが可能であるが、以下ではRSSI値を用いた位置推定システムを適用した形態について説明する。本実施の形態に係る位置推定システム10では、位置推定における精度を向上させるために、さまざまなRSSI値(測定値)の組み合わせに応じて予め定められた補正処理を行っているが、まず本実施の形態における基本的な位置推定方法について説明する。
【0025】
本実施の形態に係る位置推定システム10では、3箇所の受信機におけるRSSI値から求めた最短の3つの距離によって探索対象の位置を推定する方法(以下、「基本推定処理」)を基本としている。
図2を参照して、本実施の形態に係る基本推定処理について説明する。
【0026】
基本推定処理では、まず探索対象までの距離が短い順に3台の受信機14を特定するが、
図2に示すように、各々のRSSI値に基づいて、位置A、B、Cに配置された受信機14(以下、位置A、B、Cに配置された受信機14を各々、「受信機A」、「受信機B」、「受信機C」という)が選定されたとする。この際、RSSI値から算出された受信機Aと送信機12との間の距離をLa、受信機Bと送信機12との距離をLb、受信機Cと送信機12との距離をLcとし、La<Lb<Lcとする。
【0027】
まず、受信機A、受信機Bのみに着目して演算すると、位置P(以下、「推定点P」)、または位置P’(以下、「推定点P’」)が送信機12の位置の候補と推定される。次に、推定点Pと受信機Cとの距離Lc1と、推定点P’と受信機Cとの距離Lc2を算出し、算出した各々の距離とLcとの差分、Δ1=|Lc-Lc1|、Δ2=|Lc-Lc2|を求める。そして、推定点PとP’のうち、差分Δ1、Δ2のうち小さい方に対応する位置を送信機12の位置として推定する。すなわち、Δ1>Δ2とすれば、送信機12の位置、すなわち探索対象の位置はP’であると推定される。なお、本実施の形態では、最短の3つの距離が算出される受信機14を選定して送信機12の位置を推定する形態を例示して説明するが、これに限られず、得られた距離の信頼性等を考慮し、最短の3つ以外の距離が算出された受信機14を含むように受信機14を選定してもよい。
【0028】
次に、
図3を参照して、本実施の形態に係る補正処理について説明する。本補正処理は、本実施の形態に係る位置推定処理において、RSSI値から取得された距離情報自体の性質、組み合わせ等に基づいて実行される基本推定処理以外の推定処理をいう。本実施の形態に係る位置推定処理は、この補正処理を実行することにより、基本推定処理のみを実行する場合と比較して位置の推定精度を高めている。本実施の形態に係る位置推定処理では、基本的な補正処理として3種類の補正処理を実行することとしている。
図3(a)は補正処理のうちの「1点推定処理」(「第1の補正処理」)を、
図3(b)は「推定点2点補正処理」(「第2の補正処理」)を、
図3(c)は「最大移動距離制限処理」(第3の補正処理)を、各々示している。
【0029】
<1点推定処理(第1の補正処理)>
図3(a)を参照して、1点推定処理について説明する。本補正処理は、RSSI値から算出された複数の距離のうち特定の受信機14からの距離が突出して小さい場合に実行する。このような場合、基本推定処理を実行すると他の2つの受信機14からの距離が長いことにより計算誤差が大きくなり推定点のブレ(不確定範囲)が大きくなる。
【0030】
そこで、受信機14からの距離に閾値Lmaxを設け、
図3(a)に示すように、2点以上の距離を算出した場合に、最短距離が閾値Lmaxより小さい場合は、その最短距離に対応する受信機14の位置を推定位置(推定点P)とする。
図3(a)では、受信機A、B、Cにより3つの距離が取得されたが、受信機Aからの距離が閾値Lmaxより小さかったため、受信機Aの位置が推定点Pとされている。
【0031】
<推定点2点補正処理(第2の補正処理)>
図3(b)を参照して、推定点2点補正処理について説明する。
図3(b)では、受信機Aで測定された距離がL
A0、受信機Bで測定された距離がL
B0であり、距離L
A0、L
B0は、受信機14で測定された距離のうち短い順の2つの距離(以下、「最短距離2点」という場合がある)であるとする。
図3(b)は、各々の距離を加算した値(L
A0+L
B0)が受信機AとBとの距離に満たない場合、換言すれば、送信機12の位置を推定するための三角形が作図できない場合の例を示している。なお、以下の説明において用いる距離についても同様に最短距離が必要な数だけ選定されているものとする。
【0032】
図3(b)に示すような場合、
図2における推定点P、P’を算出することができない。このような事象は、RSSI値から変換した距離の値が小さめである場合に発生する可能性がある。この場合、距離L
A0、L
B0の値が小さいことから推定点は受信機AとBとを結ぶ直線上にある可能性が高いので、受信機AとBとの距離を距離L
A0、L
B0で按分(比例配分)した位置を推定点Pとする。すなわち、受信機Aと推定点Pとの距離をL
A1、受信機Bと推定点Pとの距離をL
B1とすると、L
A1:L
B1=L
A0
:L
B0とする。
なお、ノイズ等の影響で一時的に不正なRSSI値を受信する可能性を考慮し、本事象、すなわち推定点Pを算出することができない事象が一定回数以上発生した場合に本推定点2点補正処理を実行するようにしてもよい。
【0033】
<最大移動距離制限処理(第3の補正処理)>
図3(c)を参照して、最大移動距離制限処理について説明する。本補正処理は、探索対象の移動速度を加味した移動距離に着目した補正処理である。すなわち、ある時刻t1において推定された位置が推定点P
t1で、時刻t
1から一定時間経過した時刻t2において推定された位置が推定点P
t2であった場合に、時刻t
1からt
2にかけての探索対象(送信機12)の移動距離d=|P
t1-P
t2|に制限を設ける補正処理である。
【0034】
例えばノイズ等の影響を受けたことによってRSSI値に大きな誤差が発生し、RSSI値から算出した移動距離dをそのまま用いると、推定点が大きく揺れる場合がある。一方、探索対象は何であるかは予め分かっているので、その移動速度も予め予測がつく。そこで、RSSI値を取得する時間差(上記(t2-t1))と探索対象の移動速度に基づいて、推定点の最大移動距離を制限する。ここでは、この制限値を「最大移動距離制限値dmax」という。
【0035】
図3(c)では、時刻t
1で推定点P
t1が推定された後、時刻t
2において推定点P
t2が推定され、推定点P
t1とP
t2との距離がdmaxを越えている場合を示している。この場合、推定点P
t2を採用せず、推定点を推定点P
t1から最大移動距離制限値dmaxの推定点Qと推定する。この場合の推定点Qの位置は、推定点P
t1と
P
t2とを結ぶ直線上に配置するのが合理的である。しかしながら、これに限られず、例えば障害物等を考慮して、推定点P
t1から半径dmaxのいずれの位置と推定してもよい。
【0036】
次に、
図4を参照して、本実施の形態に係る位置推定処理について説明する。
図4は、ゲートウエイ16で実行される位置推定処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。本位置推定処理プログラムは、ゲートウエイ16の図示を省略するCPU(Central Processing Unit)が、ROM(Read Only Memory)等の記憶手段に格納された本位置推定処理プログラムを読み出し、RAM(Random Access Memory)等のワークエリアに展開して実行される。
【0037】
図4に示すように、ステップS100で、ゲートウエイ16は各受信機14からRSSI値を取得する。この場合、例えば予め取得期間Taを設定し、この取得期間Ta内で取得されたRSSI値を以下の処理で用いるようにしてもよい。この取得期間Taは周期的にまたは非周期的に繰り返される。また、以下では、特定の1つの送信機12から送信された電波を想定して説明するが、送信機12が複数の場合は、以下の処理を各々の送信機12について行う。
【0038】
次のステップS102では、RSSI/距離変換処理を行う。すなわち、各RSSI値に基づいて各受信機14から送信機12までの距離を算出する。
【0039】
次のステップS104では、1点推定処理(第1の補正処理)の条件を充足するか否か、すなわち算出された各距離が閾値Lmax以下であるか否か判定する。当該判定が肯定判定となった場合にはステップS126に移行し、1点推定処理を実行する。すなわち、
図3(a)に示す推定点Pを送信機12の位置として推定する。その後、ステップS128に移行する。一方、ステップS104における判定が否定判定となった場合にはステップS106に移行する。
【0040】
ステップS106では、RSSI値から距離への変換が行われた受信機14の台数(以下、「ポイント数」という)を確認する。
【0041】
次のステップS108では、ポイント数が3以上であるか否か判定する。当該判定が否定判定となった場合にはステップS100に戻り、次の取得期間TaにおけるRSSI値の取得から繰り返す。一方、当該判定が肯定判定となった場合には、ステップS110に移行する。
【0042】
ステップS110ではソート処理を実行する。本実施の形態に係る「ソート処理」とは、各受信機14からの距離を小さい順に並べ替えることをいう。
【0043】
次のステップS112では、ステップS110でソートされた距離の中から、最短距離3点を抽出する(
図2に示す位置A、B、C)。
【0044】
次のステップS114では、ステップS112で抽出された3点からさらに最短距離2点を抽出する(
図2に示す位置A、B)。
【0045】
次のステップS116では、推定点2点算出処理を実行する。本実施の形態に係る推定点2点算出処理とは、最短距離2点からの距離の交点として2つの推定点候補(
図2のP、P’)を算出することをいう。
【0046】
次のステップS118では、推定点2点補正処理の条件を充足するか否か判定する。当該判定が肯定判定となった場合にはステップS122に移行するとともに、否定判定となった場合にはステップS120に移行する。
【0047】
ステップS122では推定点2点補正処理(第2の補正処理)を実行し、ステップS124で、実行した結果取得された推定点P(
図3(b)参照)を送信機12の位置として推定する処理を行う。
【0048】
ステップS120では、基本推定処理を実行し、推定点(
図2に示す推定点PまたはP’)を決定する。
【0049】
ステップS128では、最大移動距離制限処理(第3の補正処理)の条件を充足するか否か判定する。当該判定が否定判定となった場合にはステップS134に移行する一方、肯定判定となった場合にはステップS130に移行する。
【0050】
ステップS130では、最大移動距離制限処理を実行し、
図3(c)に示す推定点Qを算出し、ステップS132で推定点Qを送信機12の位置として推定する処理を実行する。すなわち、これまでに決定された推定点PまたはP’を推定点Qに変更する。
【0051】
一方、ステップS134では、ステップS120で決定された推定点PまたはP’を最終的に送信機12の位置として推定する処理を実行する。その後、本位置推定処理プログラムを終了する。
【0052】
<推定点2点補正処理の他の形態>
図5を参照して、推定点2点補正処理(第2の補正処理)の他の形態について説明する。本補正処理では、受信機Aと受信機Bとの間を距離L
A0とL
B0で按分する代わりに、
図5に示すように、距離L
A0とL
B0の各々を同じ倍率(等倍)で延長する処理を行う。
そして、延長したL
A0とL
B0との交点Pを推定点Pとし、三角形ABPを作図する。そして、三角形ABPの辺APの長さL
A1を受信機Aと推定点Pとの距離とし、三角形ABPの辺BPの長さL
B1を受信機Bと推定点Pとの距離とする。
【0053】
ただし、全ての距離の集合に対してこの補正処理を適用すると推定点Pの誤差が大きくなるため、等倍の値に上限となる閾値を設け、閾値を越えても三角形が作図できない場合には本補正処理を行わないようにしてもよい。また、推定点が算出できない場所はフィールドの条件等により局所的に発生する場合が多いと推定されるため、推定点が算出できないと推定される場所があまり多くない場合は、本補正処理を実行しない方が推定点のバラツキが小さくなる点に留意する。
【0054】
なお、上述の推定点2点補正処理(第2の補正処理)は、距離LA0とLB0の各々を同じ倍率で延長する処理を行った結果、交点が受信機AとBとを結ぶ直線上に配置されたと考えることもでき、この意味において、上述の推定点2点補正処理(第2の補正処理)は、本推定点2点補正処理の他の形態の特別な場合と考えることもできる。
【0055】
(推定点2点補正処理におけるモードの設定)
推定点2点補正処理(第2の補正処理)は、例えば
図3(b)に示す受信機AとBとの距離に対し距離L
A0、L
B0が極端に小さい場合等への適用が連続すると、推定点Pの誤差が累積して位置の不確定性が増大する場合も想定される。すなわち、上記の他の形態も含め、3つの補正処理の中でも誤差が累積される可能性が高い場合があると推定される。
そこで、推定点2点補正処理に、当該補正処理を実行する「補正ありモード」と、実行しない「補正なしモード」を設け、当該補正処理が必要となる回数と、当該補正処理が不要である回数を各々計数し、これらの計数値に基づいてモードを切り替えるようにしてもよい。
【0056】
すなわち、
図3(b)に示すように推定点が算出できない場合(
図4のステップS118で肯定判定となった場合)が連続して発生した回数をカウントし、このカウント値をN1とする。このカウンタは、例えば
図4のステップS118とS122との間に挿入すればよい。一方、基本推定処理で推定点が算出できる場合(
図4のステップS118で否定判定となった場合)が連続して発生した回数をカウントし、このカウント値をN2とする。このカウンタは、例えば
図4のステップS118とS120との間に挿入すればよい。
そして、カウント値N1に対する閾値N1th、およびカウント値N2に対する閾値N2thを設定する。
【0057】
初期モードは例えば補正なしモードとする。そして補正なしモードの動作中に、N1≧N1thとなった場合には補正ありモードに遷移させる。一方、補正ありモードで動作中にN2≧N2thとなった場合には補正なしモードに遷移させる。以上のように推定点2点補正処理におけるモード遷移を設定することにより、誤差の累積を抑制し、さらに位置の推定精度が向上する。
【0058】
以上詳述したように、本実施の形態に係る位置推定方法、位置推定装置、および位置推定システムによれば、多様な測定値の特性に応じてより精度の高い位置の推定が可能となるアルゴリズムを備えた位置推定方法、位置推定装置、および位置推定システムが実現される。
【0059】
[第2の実施の形態]
図6から
図8を参照して、本実施の形態に係る位置推定方法、位置推定装置、および位置推定システムについて説明する。本実施の形態は、
図1に示す上記実施の形態に係る位置推定システム10において、受信機14の数を3台以上から2台にした形態である。従って、
図1と共通する構成には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0060】
図6に示すように、本実施の形態に係る位置推定システム10Aは、送信機12、受信機14-1、14-2、ゲートウエイ16、およびクラウド18を含んで構成されている。
【0061】
受信機14の設置状況によっては、3点のRSSI値を得られない場合がある。この場合は、基本的に上記の位置推定システム10における基本推定処理を用いることができない。本実施の形態では、以下2点のRSSI値が取得された場合を例示して説明する。
【0062】
上記のような場合でも、2点のRSSI値に加えて、受信機14の設置フィールド(対象エリア、すなわち、送信機12が存在すると推定される領域)の情報を付加的に用いることにより、推定点の特定が可能となる場合がある。対象エリアの情報としては、例えば対象エリアの外形を示す座標群等を用いることができる。
【0063】
図7を参照して、2点のRSSI値と対象エリアの情報を用いた、本実施の形態に係る位置推定方法について説明する。
図7では、受信機AおよびBによるRSSI値が取得され、基本推定処理の前段階としての推定点候補P、P’が算出されている。さらに、
図7では矩形の対象エリアSが設定されている。対象エリアSは、例えば矩形の4つの頂点の座標で設定される。むろんこの対象エリアは矩形に限られず、円系、多角形等実際のフィールドに合わせて任意の形状としてよい。
【0064】
図7に示すような場合には、本実施の形態に係る「エリア除外処理」を実行する。すなわち、推定点候補P、P’の位置と対象エリアSとを比較し、推定点候補P、P’のうち対象エリアSに含まれない方を推定点から除外する処理を実行する。換言すれば、推定点候補P、P’のうち対象エリアSに含まれる方を推定点とする処理を実行する。
図7に示す例では、推定点候補P’を除外し、推定点候補Pを推定点として決定する。
【0065】
図8を参照して、本実施の形態に係る位置推定処理について説明する。
図8は、ゲートウエイ16で実行される本実施の形態に係る位置推定処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【0066】
図8に示すステップS200~S206、S216は、各々
図4に示すステップS100~S106、S126と同じ処理なので、詳細な説明を省略する。
【0067】
ステップS208では、ポイント数が2であるか否か判定する。当該判定が肯定判定となった場合にはステップS210に移行する一方、否定判定となった場合には本位置推定処理プログラムを終了する。
【0068】
ステップS210では、上述したエリア除外処理を実行し、ステップS212で当該エリア除外処理が成功したか否か判定する。当該判定が否定判定となった場合には本位置推定処理プログラムを終了する一方、肯定判定となった場合にはステップS214に移行する。なお、エリア除外処理が失敗した場合とは、
図7において推定点候補P、P’のいずれかも推定点として決定できない場合である。すなわち、
図7では推定点候補Pが対象エリアSの内部に含まれる例を示しているが、対象エリアSの形状が推定点候補Pも含まないような形状になっている場合である。
【0069】
ステップS214では、位置推定処理、すなわち、
図7に示す推定点候補P、P’のうちの一方を推定点として決定する。
【0070】
ステップS218~S224の最大移動距離制限処理は、
図4に示すステップ128~S134と同様なので説明を省略する。ステップS218~S224で示す最大移動距離制限処理を実行した後本位置推定処理プログラムを終了する。
【0071】
以上詳述したように、本実施の形態に係る位置推定方法、位置推定装置、および位置推定システムによれば、対象エリアの情報を用いることにより、2台の受信機14からのRSSI値しか得られない場合であっても、推定点1点を特定することが可能となる。
【0072】
ここで、本実施の形態では、ステップS212でエリア除外処理が失敗した場合には本位置推定処理プログラムを終了させる形態を例示して説明したが、これに限られない。例えば、さらにステップS218以降の最大移動距離制限処理を実行した結果、推定点が対象エリアS内に入る可能性もある。このようなケースを処理するために、ステップS212で否定判定となった場合には、ステップS218に移行するようにしてもよい。
【0073】
なお、上記各実施の形態では、サブGを用いた無線通信システムを用いた形態を例示して説明したが、他の周波数帯、他の無線通信方式を用いた形態としてもよいし、また、有線通信方式を用いた形態としてもよい。さらに、上記各実施の形態では、送信機と受信機との間の距離の測定手段としてRSSIを用いた形態を例示して説明したが、これに限られず、他の距離を算出可能な信号を用いた形態としてもよい。
【0074】
また、上記各実施の形態では、各受信機からのRSSI値を用いてゲートウエイが位置を推定する形態を例示して説明したが、これに限られず、ゲートウエイが各RSSI値を集約してクラウドに送信し、クラウド内の処理系が受け取ったRSSI値に基づいて位置を推定する形態としてもよい。また、例えばゲートウエイからインターネット-経由でクラウドにRSSI値を格納し、PCからクラウドにアクセスして該RSSI値を取得し、位置を推定する形態としてもよい。
【0075】
また、上記においては、第1の実施の形態と第2の実施の形態を独立の形態として説明したが、これに限られず、各々の形態を組み合わせた形態としてもよい。例えば、
図8に示す例では、ステップS208でポイント数が2でない場合は位置推定処理プログラムを終了させる形態を例示して説明しているが、さらに3以上であるか否か判定し、
図4のステップS108以降の処理を実行するような形態としてもよい。
【0076】
また、上記各実施の形態に係る位置推定処理では、各々
図4および
図8にプログラムのフローチャートを示しているが、処理の流れはこれに限られず、一部を入れ替えたり、削除したりしてもよい。例えば、第1の補正処理、第2の補正処理、第3の補正処理をこの順に実行しているが、これを入れ替え、第2の補正処理、第3の補正処理、第1の補正処理の順とし、最後の確認として1点推定処理を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0077】
10、10A 位置推定システム、12 送信機
14、14-1~14-3 受信機
16 ゲートウエイ、18 クラウド、P、P’ 推定点、S 対象エリア