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特許7106763ディップ成形用ラテックス組成物、その製造方法およびこれを用いて製造されたディップ成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-15
(45)【発行日】2022-07-26
(54)【発明の名称】ディップ成形用ラテックス組成物、その製造方法およびこれを用いて製造されたディップ成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/08 20060101AFI20220719BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20220719BHJP
   C08L 9/04 20060101ALI20220719BHJP
   C08F 236/04 20060101ALI20220719BHJP
   B29C 41/14 20060101ALI20220719BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20220719BHJP
【FI】
C08L101/08
C08L71/02
C08L9/04
C08F236/04
B29C41/14
C09K3/00 103G
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021531647
(86)(22)【出願日】2020-08-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 KR2020011186
(87)【国際公開番号】W WO2021071086
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2021-06-02
(31)【優先権主張番号】10-2019-0126402
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ハ、ト-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】クォン、ウォン-サン
(72)【発明者】
【氏名】ヨ、スン-ウク
(72)【発明者】
【氏名】ハン、チョン-ス
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-123015(JP,A)
【文献】国際公開第2007/004459(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/104057(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08F 6/00-246/00
B29C 41/00-41/52
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスおよび増粘剤を含み、
前記増粘剤は、下記化学式1で表される化合物である、ディップ成形用ラテックス組成物。
[化学式1]
1 ‐O‐[EO] n ‐O‐R 2
前記化学式1中、
EOは、エチレンオキシド基であり、
1 およびR 2 は、互いに独立して、炭素数6~13のアルキル基、アリール基またはアリールアルキル基であり、
nは、300~800の整数である。
【請求項2】
前記増粘剤は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス100重量部に対して、0.01重量部~10.00重量部含まれる、請求項1に記載のディップ成形用ラテックス組成物。
【請求項3】
前記増粘剤は、会合部を10重量%~25重量%含み、非会合部を75重量%~90重量%含む、請求項1または2に記載のディップ成形用ラテックス組成物。
【請求項4】
前記化学式1中、R1およびR2は、互いに独立して、炭素数6~13のアルキル基であり、nは、500~700の整数である、請求項1~3のいずれか一項に記載のディップ成形用ラテックス組成物。
【請求項5】
前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスは、共役ジエン単量体由来の繰り返し単位40重量%~89重量%、エチレン性不飽和ニトリル単量体由来の繰り返し単位10重量%~50重量%、およびエチレン性不飽和酸単量体由来の繰り返し単位0.1重量%~10重量%を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のディップ成形用ラテックス組成物。
【請求項6】
前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスは、共役ジエン単量体由来の繰り返し単位、エチレン性不飽和ニトリル単量体由来の繰り返し単位およびエチレン性不飽和酸単量体由来の繰り返し単位を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のディップ成形用ラテックス組成物。
【請求項7】
前記共役ジエン単量体は、1,3‐ブタジエン、2,3‐ジメチル‐1,3‐ブタジエン、2‐エチル‐1,3‐ブタジエン、1,3‐ペンタジエンおよびイソプレンからなる群から選択される1種以上である、請求項6に記載のディップ成形用ラテックス組成物。
【請求項8】
前記エチレン性不飽和ニトリル単量体は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α‐クロロニトリルおよびα‐シアノエチルアクリロニトリルからなる群から選択される1種以上である、請求項6または7に記載のディップ成形用ラテックス組成物。
【請求項9】
前記エチレン性不飽和酸単量体は、エチレン性不飽和酸カルボン酸単量体、ポリカルボン酸無水物、エチレン性不飽和スルホン酸単量体およびエチレン性不飽和ポリカルボン酸部分エステル単量体からなる群から選択される1種以上である、請求項6~8のいずれか一項に記載のディップ成形用ラテックス組成物。
【請求項10】
前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスは、エチレン性不飽和単量体をさらに含む、請求項6~9のいずれか一項に記載のディップ成形用ラテックス組成物。
【請求項11】
1000cPs以下の粘度を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載のディップ成形用ラテックス組成物。
【請求項12】
カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスと増粘剤を混合するステップを含み、
前記増粘剤は、下記化学式1で表される化合物である、ディップ成形用ラテックス組成物の製造方法。
[化学式1]
1 ‐O‐[EO] n ‐O‐R 2
前記化学式1中、
EOは、エチレンオキシド基であり、
1 およびR 2 は、互いに独立して、炭素数6~13のアルキル基、アリール基またはアリールアルキル基であり、
nは、300~800の整数である。
【請求項13】
前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスは、乳化剤の存在下で、共役ジエン単量体、エチレン性不飽和ニトリル単量体およびエチレン性不飽和酸単量体を乳化重合して製造される、請求項12に記載のディップ成形用ラテックス組成物の製造方法。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか一項に記載のディップ成形用ラテックス組成物由来層を含む、ディップ成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年10月11日付けの韓国特許出願第10‐2019‐0126402号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、フローマーク特性およびシネレシス特性に優れ、引張特性が優れた成形品を提供することができるディップ成形用ラテックス組成物、その製造方法およびこれを用いて製造されるディップ成形品に関する。
【背景技術】
【0003】
食品産業、電子産業、医療分野など、様々な技術分野をはじめ、家事など、日常生活で環境および安全に関する関心が大幅に増加するに伴い、手を保護するための手袋の需要が増加しており、これに伴い、ゴム手袋の市場も大幅に増加している。
【0004】
次第に激しくなっているゴム手袋の市場で、安価の汎用製品よりは手袋用途の多変化と環境配慮規制強化に対応するために、特殊性を強調した差別化製品に対するニーズが増加している。
【0005】
しかし、従来の天然ゴム(NR)手袋は、その用途が医療用に限定され、天然ゴム手袋が、天然ゴム内に含まれたタンパク質などのアレルギー(allergy)発生因子を含んでいることが知られて、天然ゴム手袋に比べて、様々な用途の品質の具現が可能であり、アレルギー発生因子も含んでいないニトリル手袋の需要が増加することになった。
【0006】
ニトリル手袋の場合、天然ゴム手袋に比べて、様々な品質具現が可能であることから、天然ゴム手袋の代わりに使用する柔らかい医療用手袋の他にも、薄い手袋用、産業用、環境配慮などに手袋用途が細分化され得る。
【0007】
しかし、かかる手袋用途の多変化に対応するために、強度、耐薬品性などの物性に優れた手袋用ラテックスが開発されているが、手袋の優れた物性と製造作業性は、トレード‐オフ(trade‐off)関係にあり、手袋の製造時にフローマーク特性およびシネレシス特性が低下し、作業性が良好でなく、生産企業などの生産性が低下するという問題が発生している。
【0008】
そのため、手袋の作製時の作業性およびこれより製造された手袋の物性をすべて満たすことができる技術開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、上記発明の背景技術で言及している問題を解決するために、フローマーク特性およびシネレシス特性に優れたディップ成形時に、作業性を改善し、これより製造された手袋などのディップ成形品の引張特性などの物性を改善することである。
【0010】
すなわち、本発明は、上記発明の背景技術の問題点を解決するために導き出されたものであって、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを含むディップ成形用ラテックス組成物において、疎水性に改質されたエトキシ化エマルジョン増粘剤を含むことで、フローマーク特性およびシネレシス特性に優れた作業性が改善し、これより製造されたディップ成形品の引張特性を改善することができるディップ成形用ラテックス組成物、その製造方法およびこれより製造されたディップ成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するための本発明の一実施形態によると、本発明は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスおよび増粘剤を含み、前記増粘剤は、会合部と非会合部とを含み、前記会合部は、炭素数6~13のアルキル基、アリール基およびアリールアルキル基からなる群から選択される1種以上の疎水基を含み、前記非会合部は、炭素数1000以下の直鎖状エーテル基を含むディップ成形用ラテックス組成物を提供する。
【0012】
また、本発明は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスと増粘剤を混合するステップを含み、前記増粘剤は、会合部と非会合部とを含み、前記会合部は、炭素数6~13のアルキル基、アリール基およびアリールアルキル基からなる群から選択される1種以上の疎水基を含み、前記非会合部は、炭素数1000以下の直鎖状エーテル基を含むディップ成形用ラテックス組成物の製造方法を提供する。
【0013】
なお、本発明は、前記ディップ成形用ラテックス組成物を用いて製造されるディップ成形品を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるディップ成形用ラテックス組成物は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを含み、疎水基で改質されたエトキシ化エマルジョン増粘剤を含むことで、フローマーク特性およびシネレシス特性に優れ、これにより、前記ディップ成形用ラテックス組成物を用いて製造されたディップ成形品の引張特性に優れるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の説明および請求の範囲で使用されている用語や単語は、通常的または辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義し得るという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0016】
以下、本発明に関する理解を容易にするために、本発明をより詳細に説明する。
【0017】
本発明において、「単量体由来の繰り返し単位」という用語は、単量体から起因した成分、構造またはその物質自体を指し得、重合体の重合時に、投入される単量体が重合反応に参加し、重合体内でなす繰り返し単位を意味し得る。
【0018】
本発明において、「ラテックス」という用語は、重合によって重合された重合体または共重合体が水に分散した形態で存在するものを意味し得、具体的な例として、乳化重合によって重合されたゴム状の重合体またはゴム状の共重合体の微粒子がコロイド状で水に分散した形態で存在するものを意味し得る。
【0019】
本発明において「疎水性に改質されたエトキシ化エマルジョン増粘剤」という用語は、疎水基(hydrophobic group)を有する水溶性または水分酸性の高分子化合物を意味し得る。具体的な例として、直鎖状エーテル基を含有する「非会合性」と称される化合物、およびアルキル基、アリール基またはアリールアルキル基を含有する「会合性」と称される単量体または縮合物の間の合成で生成された共重合体を意味し得、疎水性に改質されたエトキシ化増粘剤内の特定の疎水性部分が、水性系内で自分および他の疎水性物質と相互凝集作用をして増粘効果を発揮するものであり得る。
【0020】
本発明において、「由来層」という用語は、重合体または共重合体から形成された層を指し得、具体的な例として、ディップ成形品の製造時に、ディップ成形用ラテックス組成物内の重合体または共重合体がディップ成形型上で付着、固定、および/または重合され、重合体または共重合体から形成された層を意味し得る。
【0021】
本発明は、フローマーク特性およびシネレシスに優れ、これより製造されたディップ成形品の引張特性を改善することができるディップ成形用ラテックス組成物を提供する。
【0022】
本発明の一実施形態による前記ディップ成形用ラテックス組成物は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスおよび増粘剤を含み、前記増粘剤は、会合部と非会合部とを含み、前記会合部は、炭素数6~13のアルキル基、アリール基およびアリールアルキル基からなる群から選択される1種以上の疎水基を含み、前記非会合部は、炭素数1000以下の直鎖状エーテル基を含むことを特徴とする。
【0023】
カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを含むディップ成形用ラテックス組成物は、従来、天然ゴム手袋のアレルギー発生および用途限界を改善したゴム手袋産業に原料として用いられるもので、柔らかい医療用手袋の他にも薄い手袋用、産業用、環境配慮などの様々な分野に適用されている。しかし、かかる様々な分野に適用するためには、優れた強度、耐薬品性などがなければならないが、優れた物性と製造作業性はトレード‐オフ(trade‐off)関係にあり、手袋の製造時にフローマーク特性およびシネレシス特性が低下し、作業性が良好でなく、生産会社の生産性が低下するという問題がある。しかし、本発明の一実施形態による前記ディップ成形用ラテックス組成物は、炭素数6~13の疎水基と直鎖状エーテル基を含む、すなわち、会合性部と非会合性部を含む増粘剤を含むことで、フローマーク特性およびシネレシス特性が改善し、作業性に優れ、これより製造された手袋などのディップ成形品の引張特性および触感などの物性に優れることができる。
【0024】
本発明の一実施形態において、前記増粘剤は、会合部と非会合部を含むものであり、具体的には、前記増粘剤は、会合部と非会合部とを含み、前記会合部は、炭素数6~13のアルキル基、アリール基およびアリールアルキル基からなる群から選択される1種以上の疎水基を含み、前記非会合部は、炭素数1000以下の直鎖状エーテル基を含むことができる。
【0025】
ディップ成形用ラテックス組成物において、増粘効果のために増粘剤が使用され、この際、増粘剤は、非会合性増粘剤または会合性増粘剤に分けることができる。前記非会合性増粘剤は、アルカリ溶解性増粘剤(ASE)であり、ディップ成形用ラテックス組成物内のpH上昇に伴い、非会合性増粘剤が膨潤(swelling)し、膨潤した非会合性増粘剤と高分子ラテックス粒子との距離を縮めて、ディップ成形用ラテックス組成物を増粘させる。
【0026】
しかし、一般的に使用される非会合性増粘剤は、膨潤によって増粘現象を示すため、せん断(shear)のような外部圧力による粘度低下が少ないという利点があるが、増粘させようとする高分子ラテックス溶液の全固形分含量(TSC)、pH、温度などに大きく影響を受けるようになるという欠点がある。
【0027】
一方、会合性増粘剤は、主鎖の両末端に疎水基を有しているもので、ディップ成形用ラテックス組成物内で水相に分散している疎水性を示すカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス粒子と疎水性結合を形成し、ディップ成形用ラテックス組成物を増粘させるものであるが、主鎖の両末端に疎水基を含んでおり、全固形分含量(TSC)、pH、温度などに対する影響が少ないという利点があるが、せん断(shear)のような外部圧力に影響を受けるという欠点がある。
【0028】
しかし、本発明の一実施形態による前記増粘剤は、疎水性に改質されたエトキシ化エマルジョン増粘剤であり、主鎖の両末端に疎水基を含み、中心部位に直鎖状エーテル基を含むことで、会合性増粘剤と非会合性増粘剤と類似した化学的構造を同時に含み、固形分含量(TSC)、pH、温度およびせん断のような外部圧力による影響が少なく、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス内の粒子との疎水性結合が容易であり、ディップ成形品の製造時に密度に優れたディップ成形品が形成され、作業性が改善するという効果がある。
【0029】
前記増粘剤は、炭素数6~13のアルキル基、アリール基およびアリールアルキル基からなる群から選択される1種以上の疎水基を含む会合部と、炭素数1000以下の直鎖状エーテル基を含む非会合部とを含んでもよく、具体的には、前記増粘剤は、会合部を10重量%~25重量%、また、非会合部を75重量%~90重量%含んでもよく、この範囲内で前記増粘剤を含むディップ成形用ラテックス組成物内で、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの疎水性物質と疎水性結合して相互作用することで、増粘効果に優れ、シネレシス時間の向上幅が大きく、これにより、ディップ成形品のフローマーク特性に優れるという効果がある。
【0030】
具体的には、本発明によるディップ成形用ラテックス組成物は、増粘剤をカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス100重量部(固形分基準)に対して、0.01重量部~10重量部、または0.03重量部~5重量部含んでもよく、この範囲内で、増粘効果に優れることができ、これにより、シネレシス時間の向上幅が大きく、ディップ成形品のフローマーク特性に優れるという効果がある。
【0031】
また、本発明の一実施形態によるディップ成形用ラテックス組成物は、前記のような含量で前記増粘剤を含むことで、1000cPs以下、具体的には100~1000cPsの粘度を有することができる。この範囲内で、フローマーク特性およびシネレシス特性に優れ、これより製造される成形品の引張特性に優れることができる。
【0032】
この際、粘度(cPs)はBrookfield viscometerを用いて、spindle #63、rpm60の条件で、常温(23±3℃)で測定したものである。
【0033】
より具体的には、本発明の一実施形態による前記増粘剤は、下記化学式1で表される化合物であり得る。
【0034】
【化1】
【0035】
前記化学式1中、
EOは、エチレンオキシド基であり、
1およびR2は、互いに独立して、炭素数6~13のアルキル基、アリール基またはアリールアルキル基であり、
nは、300~800の整数である。
【0036】
さらに具体的には、前記化学式1中、R1およびR2は、互いに独立して、炭素数6~13のアルキル基であり、nは500~700の整数であってもよい。
【0037】
また、前記増粘剤の重量平均分子量が2,000g/mol~1,000,000g/molであってもよく、この範囲内で、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの安定性を低下させず、これより製造されたディップ成形用ラテックス組成物でディップ成形品を成形時に、シネレシス時間の向上幅が大きく、ディップ成形品のフローマーク特性に優れるという効果がある。
【0038】
また、前記増粘剤は、一般的に、固形分含量(濃度)が21%以下である水溶液状態であり、23℃での粘度が4500mPa・s以下であり、この範囲内で、増粘剤が凝集されず、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの安定性が低下することなく、これより製造されたディップ成形用ラテックス組成物でディップ成形品の成形時に、シネレシス時間の向上幅が大きく、ディップ成形品のフローマーク特性に優れるという効果がある。
【0039】
一方、本発明の一実施形態において、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスは、共役ジエン単量体由来の繰り返し単位、エチレン性不飽和ニトリル単量体由来の繰り返し単位およびエチレン性不飽和酸単量体由来の繰り返し単位を含むことができる。
【0040】
前記共役ジエン単量体由来の繰り返し単位は、共役ジエン単量体が重合して形成されたものであり、前記共役ジエン単量体は、1,3‐ブタジエン、2,3‐ジメチル‐1,3‐ブタジエン、2‐エチル‐1,3‐ブタジエン、1,3‐ペンタジエンおよびイソプレンからなる群から選択される1種以上であってもよく、具体的な例として、1,3‐ブタジエンまたはイソプレンであってもよく、より具体的な例として、1,3‐ブタジエンであってもよい。
【0041】
また、前記共役ジエン単量体由来の繰り返し単位は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスに、40重量%~89重量%、具体的には、45重量%~80重量%、または50重量%~78重量%含まれてもよく、この範囲内で、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを含むディップ成形用ラテックス組成物から成形されたディップ成形品が柔軟であり、着用感に優れるとともに、耐油性および引張強度に優れるという効果がある。
【0042】
また、前記エチレン性不飽和ニトリル単量体由来の繰り返し単位は、エチレン性不飽和ニトリル単量体が重合して形成されたものであり、前記エチレン性不飽和ニトリル単量体は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α‐クロロニトリルおよびα‐シアノエチルアクリロニトリルからなる群から選択される1種以上であってもよく、具体的な例として、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルであってもよく、より具体的な例として、アクリロニトリルであってもよい。
【0043】
一方、前記エチレン性不飽和ニトリル単量体由来の繰り返し単位は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスに、10重量%~50重量%、具体的には、15重量%~45重量%または20重量%~40重量%含まれてもよく、この範囲内で、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを含むディップ成形用ラテックス組成物から成形されたディップ成形品が柔軟であり、着用感に優れるとともに、耐油性および引張強度に優れるという効果がある。
【0044】
また、前記エチレン性不飽和酸単量体由来の繰り返し単位は、エチレン性不飽和酸単量体が重合して形成されたものであり、前記エチレン性不飽和酸単量体は、カルボキシル基、スルホン酸基、酸無水物基のような酸性基を含有するエチレン性不飽和単量体であってもよく、具体的な例として、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸およびフマル酸などのエチレン性不飽和酸単量体;無水マレイン酸および無水シトラコン酸などのポリカルボン酸無水物;スチレンスルホン酸のようなエチレン性不飽和スルホン酸単量体;フマル酸モノブチル、マレイン酸モノブチルおよびマレイン酸モノ‐2‐ヒドロキシプロピルなどのエチレン性不飽和ポリカルボン酸部分エステル(partial ester)単量体からなる群から選択される1種以上であってもよく、より具体的な例として、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸およびフマル酸からなる群から選択される1種以上であってもよく、さらに具体的な例として、メタクリル酸であってもよい。前記エチレン性不飽和酸単量体は、重合時に、アルカリ金属塩またはアンモニウム塩などの塩の形態で使用され得る。
【0045】
一方、前記エチレン性不飽和酸単量体由来の繰り返し単位は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスに、0.1重量%~10重量%、具体的には0.5重量%~9重量%または1重量%~8重量%含まれてもよく、この範囲内で、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体を含むディップ成形用ラテックス組成物から成形されたディップ成形品が柔軟であり、着用感に優れるとともに、引張強度に優れるという効果がある。
【0046】
本発明の一実施形態によると、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス内のカルボン酸変性ニトリル系共重合体は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位、エチレン性不飽和ニトリル系単量体由来の繰り返し単位およびエチレン性不飽和酸単量体由来の繰り返し単位の他に、エチレン性不飽和単量体由来の繰り返し単位を選択的にさらに含むことができる。
【0047】
前記エチレン性不飽和単量体由来の繰り返し単位を形成する前記エチレン性不飽和単量体は、炭素数1~炭素数4のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート単量体;スチレン、アルキルスチレン、およびビニルナフタレンからなる群から選択されるビニル芳香族単量体;フルオロ(fluoro)エチルビニルエーテルなどのフルオロアルキルビニルエーテル;(メタ)アクリルアミド、N‐メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N‐ジメチロール(メタ)アクリルアミド、N‐メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、およびN‐プロポキシメチル(メタ)アクリルアミドからなる群から選択されるエチレン性不飽和アミド単量体;ビニルピリジン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4‐ヘキサジエンなどの非共役ジエン単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸‐2‐エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸テトラフルオロプロピル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジブチル、マレイン酸ジエチル、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸シアノメチル、(メタ)アクリル酸2‐シアノエチル、(メタ)アクリル酸1‐シアノプロピル、(メタ)アクリル酸2‐エチル‐6‐シアノヘキシル、(メタ)アクリル酸3‐シアノプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、グリシジル(メタ)アクリレート、およびジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートからなる群から選択されるエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体からなる群から選択される1種以上であってもよく、より具体的な例として、炭素数1~炭素数4のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート単量体からなる群から選択される1種以上であってもよく、さらに具体的な例として、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート単量体であってもよい。
【0048】
前記エチレン性不飽和単量体由来の繰り返し単位含量は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体の全含量に対して、20重量%以内、0.2重量%~10重量%、または0.5重量%~5重量%であってもよく、この範囲内で、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体を含むディップ成形用ラテックス組成物から成形されたディップ成形品が柔軟であり、着用感に優れるとともに、引張強度に優れるという効果がある。
【0049】
本発明の一実施形態によると、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスは、ガラス転移温度が-55℃~-15℃、-50℃~-15℃または-50℃~-20℃であってもよく、この範囲内で、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを含むディップ成形用ラテックス組成物からディップ成形された成形品の引張強度などの引張特性の低下および亀裂の発生を防止し、且つべたつきが少なくて、着用感に優れるという効果がある。前記ガラス転移温度は、示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimetry)を用いて測定され得る。
【0050】
また、本発明の一実施形態によると、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス内のカルボン酸変性ニトリル系共重合体粒子の平均粒径は、90nm~200nm、95nm~195nmまたは100nm~190nmであってもよく、この範囲内で、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを高濃度で製造することができ、これを含むディップ成形用ラテックス組成物からディップ成形された成形品の引張強度などの引張特性に優れるという効果がある。前記平均粒径は、レーザ分散分析装置(Laser Sacttering Analyzer、Nicomp)を用いて測定され得る。
【0051】
また、本発明の一実施形態によると、前記ディップ成形用ラテックス組成物は、一例として、固形分含量(濃度)が、8重量%~40重量%、8重量%~35重量%、または10重量%~35重量%であってもよく、この範囲内で、ラテックス移送の効率に優れ、ラテックス粘度の上昇を防止し、貯蔵安定性に優れるという効果がある。
【0052】
他の例として、前記ディップ成形用ラテックス組成物は、pHが8~12、9~11、または9.0~11.5であってもよく、この範囲内で、ディップ成形品の製造時に加工性および生産性に優れるという効果がある。前記ディップ成形用ラテックス組成物のpHは、下述のpH調節剤の投入により調節され得る。前記pH調節剤は、一例として、1重量%~5重量%濃度の水酸化カリウム水溶液、または1重量%~10重量%濃度のアンモニア水であってもよい。
【0053】
また、本発明の一実施形態によると、前記ディップ成形用ラテックス組成物は、必要に応じて、加硫剤、イオン性架橋剤、顔料、加硫促進剤、充填剤、pH調節剤などの添加剤をさらに含むことができる。
【0054】
前記加硫促進剤は、ディップ成形に使用されるものであれば、特に限定するものではないが、例えば、2‐メルカプトベンゾチアゾール(2‐mercaptobenzothiazole、MBT)、2,2‐ジチオビスベンゾチアゾール‐2‐スルフェンアミド(2,2‐dithiobisbenzothiazole‐2‐sulfenamide、MBTS)、N‐シクロヘキシルベンゾチアゾール‐2‐スルフェンアミド(N‐cyclehexylbenzothiazole‐2‐sulfenamide、CBS)、2‐モルホリノチオベンゾチアゾール(2‐morpholinothiobenzothiazole、MBS)、テトラメチルチウラムモノスルフィド(tetramethylthiuram monosulfide、TMTM)、テトラメチルチウラムジスルフィド(tetramethylthiuram disulfide、TMTD)、ジンクジエチルジチオカルバメート(zinc diethyldithiocarbamate、ZDEC)、ジンクジブチルジチオカルバメート(zinc dibutyldithiocarbamate、ZDBC)、ジフェニルグアニジン(diphenylguanidine、DPG)、ジ‐オルト‐トリルグアニジン(di‐o‐tolylguanidine、DOTG)などであってもよい。この際、加硫促進剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができ、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス固形分100重量部に対して、0.1重量部~10重量部、または0.5重量部~5重量部使用することができる。
【0055】
また、本発明は、前記ディップ成形用ラテックス組成物の製造方法を提供する。
【0056】
本発明の一実施形態による前記製造方法は、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスと増粘剤を混合するステップを含んでもよく、この際、増粘剤は、上述のとおりである。
【0057】
一方、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスは、乳化剤の存在下で、共役ジエン単量体、エチレン性不飽和ニトリル単量体およびエチレン性不飽和酸単量体を乳化重合して製造されてもよく、この際、単量体および単量体の含量は、上述のとおりであり、各単量体は、重合の前に反応器に同時に投入されるか、分割投入してもよく、分割投入する場合、各単量体別の反応速度の差による単量体の分布を均一化することができ、これにより、カルボン酸変性ニトリル系共重合体を用いて製造されたディップ成形品の物性間のバランスを向上させるという効果がある。
【0058】
具体的には、前記カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスは、乳化剤、重合開始剤、活性化剤および分子量調節剤などの存在下で、乳化重合して製造され得る。
【0059】
前記乳化剤は、一例として、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤および両性界面活性剤からなる群から選択される1種以上であってもよく、具体的な例として、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、α‐オレフィンスルホン酸塩およびアルキルエーテル硫酸エステル塩からなる群から選択される1種以上の陰イオン界面活性剤であってもよい。また、前記乳化剤は、単量体の全含量100重量部に対して、0.3重量部~10重量部、0.8重量部~8重量部、または1.5重量部~6重量部投入されてもよく、この範囲内で、重合安定性に優れ、泡発生量が少なく、成形品の製造が容易であるという効果がある。
【0060】
また、前記重合開始剤は、一例として、ラジカル開始剤であってもよく、具体的な例として、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素などの無機過酸化物;t‐ブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、p‐メンタンヒドロペルオキシド、ジ‐t‐ブチルペルオキシド、t‐ブチルクミルペルオキシド、アセチルペルオキシド、イソブチルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、3,5,5‐トリメチルヘキサノールペルオキシド、およびt‐ブチルペルオキシイソブチレートなどの有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス‐2,4‐ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、およびアゾビスイソ酪産(ブタン酸)メチルなどの窒素化合物からなる群から選択される1種以上であってもよく、具体的な例として、無機過酸化物であってもよく、より具体的な例として、過硫酸塩であってもよい。また、前記重合開始剤は、単量体の全含量100重量部に対して、0.01重量部~2重量部、0.01重量部~1.5重量部または0.02重量部~1.5重量部で投入されてもよく、この範囲内で、重合速度を適正水準に維持することができるという効果がある。
【0061】
また、前記活性化剤は、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、ナトリウムエチレンジアミンテトラアセテート、硫酸第一鉄、デキストロース、ピロリン酸ナトリウムおよび亜硫酸ナトリウムからなる群から選択される1種以上であってもよい。また、前記活性化剤は、単量体の全含量100重量部に対して、0.01重量部~5重量部、0.05重量部~3重量部、または0.1重量部~1重量部で投入されてもよく、この範囲内で、重合速度を適正水準に維持することができるという効果がある。
【0062】
また、前記乳化重合が、分子量調節剤を含んで実施される場合、前記分子量調節剤は、一例として、α‐メチルスチレンダイマー、t‐ドデシルメルカプタン、n‐ドデシルメルカプタン、およびオクチルメルカプタンなどのメルカプタン類;四塩化炭素、塩化メチレン、および臭素化メチレンなどのハロゲン化炭化水素;テトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、およびジイソプロピルキサントゲンジスルフィドなどの硫黄含有化合物からなる群から選択される1種または2種以上であってもよく、具体的な例として、メルカプタン類であり、より具体的な例として、t‐ドデシルメルカプタンであってもよい。また、前記分子量調節剤は、単量体の全含量100重量部に対して、0.1重量部~2重量部、0.2重量部~1.5重量部、または0.3重量部~1.0重量部投入されてもよく、この範囲内で、重合安定性に優れ、重合後、成形品の製造時に、成形品の物性に優れるという効果がある。
【0063】
また、本発明の一実施形態によると、前記乳化重合は、媒質として、水、具体的な例として、脱イオン水で実施され得、重合容易性の確保のために、必要に応じて、キレート剤、分散剤、pH調節剤、脱酸素剤、粒径調節剤、老化防止剤および酸素捕捉剤などの添加剤をさらに含んで実施され得る。
【0064】
本発明の一実施形態によると、前記乳化剤、重合開始剤、分子量調節剤、添加剤などは、前記単量体混合物のように、重合反応器に一括投入、または分割投入されてもよく、各投入時に連続して投入されてもよい。
【0065】
また、本発明の一実施形態によると、前記乳化重合は、10℃~90℃、20℃~80℃、または25℃~75℃の重合温度で実施され得、この範囲内で、ラテックス安定性に優れるという効果がある。
【0066】
一方、本発明の一実施形態によると、前記製造方法は、乳化重合を終了し、カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを取得するステップを含むことができる。前記乳化重合反応の終了は、重合転化率が90%以上、91%以上または93%以上である時点で実施され得、重合停止剤、pH調節剤および酸化防止剤の添加によって実施され得る。また、前記乳化重合の終了後、脱臭濃縮工程による未反応の単量体の除去ステップをさらに実施することができる。
【0067】
なお、本発明は前記ディップ成形用ラテックス組成物を用いて製造されたディップ成形品を提供する。
【0068】
本発明の一実施形態による前記ディップ成形品は、前記のディップ成形用ラテックス組成物由来層を含むことができる。
【0069】
前記成形品は、前記ディップ成形用ラテックス組成物をディップ成形して製造されたディップ成形品であってもよく、ディップ成形によってディップ成形用ラテックス組成物から形成されたディップ成形用ラテックス組成物由来層を含む成形品であってもよい。前記成形品を成形するための成形品の製造方法は、前記ディップ成形用ラテックス組成物を直接浸漬法、アノード(anode)凝着浸漬法、ティーグ(Teague)凝着浸漬法などにより浸漬するステップを含むことができ、具体的な例として、アノード凝着浸漬法によって実施され得、この場合、均一な厚さのディップ成形品を取得できるという利点がある。
【0070】
具体的な例として、前記成形品の製造方法は、ディップ成形型に凝固剤を付着させるステップ(S100)と、前記凝固剤が付着されたディップ成形型にディップ成形用ラテックス組成物を浸漬し、ディップ成形用ラテックス組成物由来層、すなわち、ディップ成形層を形成させるステップ(S200)と、前記ディップ成形層を加熱し、前記ディップ成形用ラテックス組成物を架橋させるステップ(S300)とを含むことができる。
【0071】
前記(S100)ステップは、ディップ成形型に凝固剤を形成させるために、ディップ成形型を凝固剤溶液に浸漬してディップ成形型の表面に凝固剤を付着させるステップであり、前記凝固剤溶液は、凝固剤を、水、アルコールまたはこれらの混合物に溶解させた溶液であり、凝固剤溶液内の凝固剤の含量は、凝固剤溶液の全含量に対して、5重量%~50重量%、7重量%~45重量%、または10重量%~40重量%であってもよい。前記凝固剤は、一例として、バリウムクロライド、カルシウムクロライド、マグネシウムクロライド、亜鉛クロライドおよびアルミニウムクロライドなどの金属ハライド;バリウムナイトレート、カルシウムナイトレートおよび亜鉛ナイトレートなどの硝酸塩;バリウムアセテート、カルシウムアセテートおよび亜鉛アセテートなどの酢酸塩;およびカルシウムサルフェート、マグネシウムサルフェートおよびアルミニウムサルフェートなどの硫酸塩からなる群から選択される1種以上であってもよく、具体的な例として、カルシウムクロライドまたはカルシウムナイトレートであってもよい。
【0072】
また、前記(S200)ステップは、ディップ成形層を形成させるために凝固剤を付着させたディップ成形型を、本発明によるディップ成形用ラテックス組成物に浸漬し、取り出して、ディップ成形型にディップ成形層を形成させるステップであり得る。
【0073】
また、前記(S300)ステップは、ディップ成形品を取得するために、ディップ成形型に形成されたディップ成形層を加熱し、前記ディップ成形用ラテックス組成物を架橋させて硬化を行うステップであり得る。
【0074】
以降、加熱処理によって架橋されたディップ成形層をディップ成形型から取り出し、ディップ成形品を取得することができる。
【0075】
本発明の一実施形態によると、前記成形品は、手術用手袋、検査用手袋、産業用手袋および家庭用手袋などの手袋、コンドーム、カテーテル、または健康管理用品であってもよい。
【0076】
以下、実施例により、本発明をより詳細に説明する。しかし、下記の実施例は、本発明を例示するためのものであって、本発明の範疇および技術思想の範囲内で様々な変更および修正が可能であることは、通常の技術者にとって明白であり、これらにのみ本発明の範囲が限定されるものではない。
【0077】
実施例
[実施例1]
<カルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの製造>
重合反応器に、アクリロニトリル28重量%、1,3‐ブタジエン63.0重量%およびメタクリル酸5.5重量%で構成された単量体混合物100重量部、t‐ドデシルメルカプタン0.5重量部、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム3.0重量部、水140重量部を投入し、40℃の温度で重合を開始した。次いで、重合転化率が65%である時点で60℃に温度を上げて重合を行い、重合転化率が94%である時点でナトリウムジメチルジチオカルバメート0.1重量部を添加し、重合を停止した。次いで、脱臭工程により、一定量の未反応の単量体を除去し、アンモニア水0.5重量部、水酸化カリウム0.5重量部、酸化防止剤0.5重量部および消泡剤0.3重量部を添加し、固形分濃度45重量%、pH8.0のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを取得した。
【0078】
<ディップ成形用ラテックス組成物の製造>
前記取得されたカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス100重量部(固形分基準)に、二次蒸留水に固形分濃度を5%に希釈した炭素数C6~C13の疎水性アルキル基を有する疎水性に改質されたエトキシ化エマルジョン増粘剤溶液1重量部、硫黄1重量部、ジンクジブチルジチオカルバメート(ZDBC)0.7重量部、酸化亜鉛1.5重量部、酸化チタン1.0重量部、水酸化カリウム溶液2.0重量部および二次蒸留水を投入し、固形分濃度16重量%、pH10のディップ成形用ラテックス組成物を取得した。ここで、前記エトキシ化エマルジョン増粘剤は、前記化学式1において、R1およびR2がドデシル基であり、nは500である増粘剤であった。
【0079】
<ディップ成形品の製造>
カルシウムナイトレート18重量%、水81.5重量%、湿潤剤(Teric 320、Huntsman Corporation、Australia)0.5重量%を混合し、凝固剤溶液を製造した。前記製造された凝固剤溶液に手形状のセラミックモルドを10秒間浸漬し、取り出した後、80℃で3分間乾燥し、凝固剤を手形状のモルドに塗布させた。
【0080】
その後、凝固剤が塗布されたモルドを前記取得したディップ成形用ラテックス組成物に1分間浸漬し、取り出した後、80℃で3分間乾燥した。次いで、水に3分間浸漬してリーチング(leaching)し、また、モルドを70℃で3分間乾燥した後、125℃で20分間架橋させた。架橋されたディップ成形層を手形状のモルドから取り出し、手袋状のディップ成形品を取得した。
【0081】
[実施例2]
前記実施例1で、ディップ成形用ラテックス組成物の製造時に、疎水性に改質されたエトキシ化エマルジョン増粘剤を1重量部の代わりに0.1重量部投入した以外は、前記実施例1と同じ方法で実施した。
【0082】
[実施例3]
前記実施例1で、ディップ成形用ラテックス組成物の製造時に、疎水性に改質されたエトキシ化エマルジョン増粘剤を1重量部の代わりに6重量部投入した以外は、前記実施例1と同じ方法で実施した。
【0083】
[比較例1]
前記実施例1で、ディップ成形用ラテックス組成物の製造時に、疎水性に改質されたエトキシ化エマルジョンを投入しない以外は、前記実施例1と同じ方法で実施した。
【0084】
[比較例2]
前記実施例1で、ディップ成形用ラテックス組成物の製造時に、二次蒸留水に固形分濃度を5%に希釈した炭素数C6~C13の疎水性アルキル基を有する疎水性に改質されたエトキシ化エマルジョン増粘剤の代わりに、二次蒸留水に5%に希釈した炭素数C14の疎水性アルキル基を有する疎水性に改質されたエトキシ化ウレタンエマルジョン増粘剤溶液1重量部を投入した以外は、前記実施例1と同じ方法で実施した。ここで、前記エトキシ化エマルジョン増粘剤は、前記化学式1において、R1およびR2がテトラデカン基であり、nは500である増粘剤であった。
【0085】
[比較例3]
前記実施例1で、ディップ成形用ラテックス組成物の製造時に、二次蒸留水に固形分濃度を5%に希釈した炭素数C6~C13の疎水性アルキル基を有する疎水性に改質されたエトキシ化エマルジョン増粘剤の代わりに、二次蒸留水にR‐(CH2‐CH210‐(C2OOH)60‐R(ここで、Rは、メチル基)である増粘剤溶液1重量部を投入した以外は、前記実施例1と同じ方法で実施した。
【0086】
[比較例4]
前記実施例1で、ディップ成形用ラテックス組成物の製造時に、二次蒸留水に固形分濃度を5%に希釈した炭素数C6~C13の疎水性アルキル基を有する疎水性に改質されたエトキシ化エマルジョン増粘剤の代わりに、二次蒸留水に5%に希釈した増粘剤に溶液6重量部を投入した以外は、前記実施例1と同じ方法で実施した。ここで、前記エトキシ化エマルジョン増粘剤は、前記化学式1において、R1およびR2が炭素数22であるアルキル基であり、nは500である増粘剤であった。
【0087】
[実験例1]
前記実施例3、比較例1および比較例4で製造された各ディップ成形用ラテックス組成物の粘度を測定し、下記表1に示した。
【0088】
粘度(cPs)は、Brookfield viscometerを用いて、spindle #63、rpm 60の条件で常温で測定した。
【0089】
【表1】
【0090】
前記表1 により、実施例3のディップ成形用ラテックス組成物は、比較例1に比べて粘度増加効果に優れることを確認した。
【0091】
[実験例2]
前記実施例および比較例で製造された各ディップ成形品ラテックス組成物のシネレシス特性およびフローマーク特性、また、各ディップ成形品の引張特性を測定し、下記表2に示した。
【0092】
1)フローマーク
凝固剤が塗布されたモルドを実施例および比較例で製造された各ディップ成形用ラテックス組成物に1分間浸漬し、前記モルドを一定の長さで引き上げた後、また、ディップ成形用組成物に浸漬してから、すぐ引き上げて、フローマークの生成有無と程度を肉眼で確認した。前記フローマークの生成程度を10点法で区分して示した。フローマークが多いほど1点に近く、フローマークが少ないほど10点に近く区分した。
【0093】
2)シネレシス
シネレシス時間を確認するために、凝固剤が塗布されたモルドを前記実施例および比較例の各ディップ成形用ラテックス組成物に1分間浸漬した後、引き上げて、120℃の温度で4分間乾燥した時に水滴が落ちる時間を確認した。シネレシス時間が増加するほど、シネレシス特性に優れることを示す。
【0094】
3)引張強度(MPa)、伸び率(%)
実施例および比較例各ディップ成形品をASTM D638方法に準じて、測定器機U.T.M(Instron社製、4466モデル)を用いて、500mm/minのクロスヘッドスピードで引っ張った後、試験片が切断する点を測定し、下記数学式1および数学式2にしたがって計算した。
【0095】
【数1】
【0096】
【表2】
【0097】
前記表2に示したように、本発明で提示する増粘剤を含む実施例1~3のディップ成形用ラテックス組成物およびディップ成形品が、比較例1~4に比べて優れたフローマーク特性およびシネレシス特性を示し、且つ優れた引張特性を示すことを確認した。
【0098】
具体的には、実施例1~3は、増粘剤を含んでいない比較例1と比較して同等水準の引張特性を示し、且つシネレシス特性が2倍以上大きく増加しており、増粘剤を含むものの本発明で提示する増粘剤ではなく、アルカリ溶解性エマルジョン増粘剤または炭素数14以上の疎水性アルキル基を有する疎水性に改質されたエトキシ化ウレタンエマルジョン増粘剤を使用した比較例3および4に比べ、フローマーク特性および引張特性が大きく改善した。一方、比較例4の場合、粘度が1000cPsを超えて大幅に増加し、これにより、作業性が大きく低下し、これは、前記表2でフローマーク特性が著しく低下したことからも確認することができる。