(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】樹脂ワニス、樹脂組成物、プリプレグ、積層板、多層プリント配線板及び樹脂ワニスの保存方法
(51)【国際特許分類】
C08L 71/12 20060101AFI20220720BHJP
C08G 65/48 20060101ALI20220720BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20220720BHJP
C08L 79/00 20060101ALI20220720BHJP
C08K 5/3415 20060101ALI20220720BHJP
C08L 53/02 20060101ALI20220720BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20220720BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20220720BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
C08L71/12
C08G65/48
C08L63/00 A
C08L79/00 Z
C08K5/3415
C08L53/02
C08J5/24
B32B15/08 J
H05K1/03 610H
(21)【出願番号】P 2017122376
(22)【出願日】2017-06-22
【審査請求日】2020-05-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【氏名又は名称】大谷 保
(72)【発明者】
【氏名】城野 啓太
(72)【発明者】
【氏名】谷川 隆雄
(72)【発明者】
【氏名】森田 高示
(72)【発明者】
【氏名】垣谷 稔
(72)【発明者】
【氏名】中野 正幸
(72)【発明者】
【氏名】鴨志田 真一
【審査官】平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-073460(JP,A)
【文献】特開2010-018791(JP,A)
【文献】国際公開第2016/175326(WO,A1)
【文献】特開2017-071689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00~101/14
C08K 3/00~ 13/08
C08G65/48
B29B11/16
15/08~ 15/14
C08J 5/04~ 5/10
5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒と1分子中にN-置換マレイミド構造含有基及び下記一般式
(I’)で表される構造単位を有するポリフェニレンエーテル誘導体(A)とを含有し、前記(A)成分の濃度が10~18質量%であり、前記有機溶媒が芳香族炭化水素系溶媒である樹脂ワニス。
【化1】
【請求項2】
前記N-置換マレイミド構造含有基が下記一般式(Z)で表される基である、請求項1に記載の樹脂ワニス。
【化2】
(式中、R
2は各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。yは0~4の整数である。A
1は、下記一般式(II)、(III)、(IV)又は(V)で表される基である。)
【化3】
(式中、R
3は各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。pは0~4の整数である。)
【化4】
(式中、R
4及びR
5は各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。A
2は炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボオキシ基、ケト基、単結合、又は下記一般式(III-1)で表される基である。q及びrは各々独立に0~4の整数である。)
【化5】
(式中、R
6及びR
7は各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。A
3は炭素数1~5のアルキレン基、イソプロピリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボオキシ基、ケト基又は単結合である。s及びtは各々独立に0~4の整数である。)
【化6】
(式中、nは0~10の整数である。)
【化7】
(式中、R
8及びR
9は各々独立に、水素原子又は炭素数1~5の脂肪族炭化水素基である。uは1~8の整数である。)
【請求項3】
前記一般式(Z)中のA
1が下記式のいずれかで表される基である、請求項2に記載の樹脂ワニス。
【化8】
【請求項4】
前記(A)成分の数平均分子量が5,000~12,000である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の樹脂ワニス。
【請求項5】
前記芳香族炭化水素系溶媒が、トルエンである、請求項1~
4のいずれか1項に記載の樹脂ワニス。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の樹脂ワニスと、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂及びマレイミド化合物からなる群から選ばれる1種以上の熱硬化性樹脂(B)と、を配合してなる樹脂組成物。
【請求項7】
前記(B)成分が、1分子中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するポリマレイミド化合物(a)、又は下記一般式(VI)で表されるポリアミノビスマレイミド化合物(c)である、請求項
6に記載の樹脂組成物。
【化9】
(式中、A
4は前記一般式(Z)中のA
1の定義と同じであり、A
5は下記一般式(VII)で表される基である。)
【化10】
(式中、R
17及びR
18は各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、炭素数1~5のアルコキシ基、水酸基又はハロゲン原子である。A
8は、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボオキシ基、ケト基、フルオレニレン基、単結合、又は下記一般式(VII-1)もしくは(VII-2)で表される基である。q’及びr’は各々独立に0~4の整数である。)
【化11】
(式中、R
19及びR
20は各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。A
9は炭素数1~5のアルキレン基、イソプロピリデン基、m-フェニレンジイソプロピリデン基、p-フェニレンジイソプロピリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボオキシ基、ケト基又は単結合である。s’及びt’は各々独立に0~4の整数である。)
【化12】
(式中、R
21は炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。A
10及びA
11は各々独立に、炭素数1~5のアルキレン基、イソプロピリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボオキシ基、ケト基又は単結合である。wは0~4の整数である。)
【請求項8】
前記(A)成分と前記(B)成分の合計量に対する(A)成分の含有量が、5~85質量%である、請求項
6又は7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
更に、スチレン系熱可塑性エラストマー(C)を配合してなる、請求項
6~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記(C)成分が、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の水素添加物、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の水素添加物及びスチレン-無水マレイン酸共重合体からなる群から選ばれる1種以上である、請求項
9に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記(C)成分の配合量が、(A)~(C)成分の総和100質量部に対して、5~60質量部である、請求項
9又は10に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
請求項
6~11のいずれか1項に記載の樹脂組成物とシート状繊維補強基材とを含有してなるプリプレグ。
【請求項13】
請求項
12に記載のプリプレグと金属箔とを含有してなる積層板。
【請求項14】
請求項
12に記載のプリプレグ又は請求項
13に記載の積層板を含有してなる多層プリント配線板。
【請求項15】
有機溶媒と1分子中にN-置換マレイミド構造含有基及び下記一般式
(I’)で表される構造単位を有するポリフェニレンエーテル誘導体(A)とを含有する樹脂ワニスの保存方法であって、前記有機溶媒が芳香族炭化水素系溶媒であり、前記樹脂ワニス中における前記(A)成分の濃度を10~18質量%とする樹脂ワニスの保存方法。
【化13】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂ワニス、樹脂組成物、プリプレグ、積層板、多層プリント配線板及び樹脂ワニスの保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に代表される移動体通信機器、その基地局装置、サーバー、ルーター等のネットワークインフラ機器、大型コンピュータなどで使用する信号の高速化及び大容量化が年々進んでいる。これに伴い、これらの電子機器に搭載されるプリント配線板には高周波化対応が必要となり、伝送損失の低減を可能とする高周波数帯での誘電特性(低誘電率及び低誘電正接;以下、「高周波特性」とも称する。)に優れる基板材料が求められている。近年、このような高周波信号を扱うアプリケーションとして、上述した電子機器の他に、ITS(Intelligent transportation systems)分野(自動車、交通システム関連)及び室内の近距離通信分野でも高周波無線信号を扱う新規システムの実用化及び実用計画が進んでおり、今後、これらの機器に搭載するプリント配線板に対しても、低伝送損失基板材料が更に要求されると予想される。
【0003】
従来、低伝送損失が要求されるプリント配線板には、高周波特性に優れる耐熱性熱可塑性ポリマーとしてポリフェニレンエーテル(PPE)系樹脂が使用されており、例えば、ポリフェニレンエーテルと熱硬化性樹脂とを併用する方法が提案されている。具体的には、ポリフェニレンエーテルとエポキシ樹脂とを含有する樹脂組成物(例えば、特許文献1参照)、ポリフェニレンエーテルと、熱硬化性樹脂の中でも誘電率が低いシアネート樹脂とを含有する樹脂組成物(例えば、特許文献2参照)等が開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の樹脂組成物は、GHz領域での高周波特性、導体との接着性、低熱膨張係数、難燃性が総合的に不十分であったり、ポリフェニレンエーテルと熱硬化性樹脂との相容性が低いことにより耐熱性が低下することがあった。さらには、近年のプリント配線板用基板材料には高周波化対応に加えて、高密度化、高信頼性、環境配慮への適合性への要求から、導体との高接着性、低熱膨張係数、高ガラス転移温度、高難燃性等の更なる向上が要求されている。
【0005】
例えば、導体との接着性としては、樹脂との接着面側の表面粗さが非常に小さいロープロファイル銅箔(Rz:1~2μm)使用時の銅箔引き剥がし強さで0.6kN/m以上が望まれている。
また、サーバー、ルーター等のネットワーク関連機器用途で使用されるプリント配線板用基板材料には、高密度化に伴い高多層化することも必要であり、高いリフロー耐熱性及びスルーホール信頼性が要求されており、それらの指針となるガラス転移温度は200℃以上であること、また、熱膨張係数(Z方向、Tg以下)は45ppm/℃以下、更には40ppm/℃以下であることが望まれている。しかも、高多層プリント配線板では回路充填性のための樹脂フロー性を確保するため、無機充填材の配合量が比較的少ない場合であっても上記要求値を確保することが望ましい。
【0006】
もちろん高周波特性としては、より高い周波数帯での優れた誘電特性が要求されており、一般的なEガラス基材を用いた場合の基板材料の誘電率は3.8以下、更には3.7以下、更には3.6以下であることが望まれており、誘電正接は0.007以下、更には0.006以下であることが望まれている。しかも、一般的に基板材料は周波数が高くなるほど誘電正接が高くなる傾向を示すが、従来の1~5GHzでの誘電特性値ではなく、10GHz帯以上で上記要求値を満たす必要性が高まってきている。
【0007】
このような問題を解決するため、本発明者等は、ポリフェニレンエーテルを特定の分子構造へ変性した、特定のポリフェニレンエーテル誘導体を適用することで、高周波特性、高耐熱性、導体との高接着性、低熱膨張特性、高難燃性等を発現できる樹脂組成物を提案した(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開昭58-069046号公報
【文献】特公昭61-018937号公報
【文献】特開2008-95061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、本発明者等の検討により、特許文献3に開示されるポリフェニレンエーテル誘導体は、樹脂ワニスとした場合のポットライフ(保存安定性)が短いという問題が新たに見出された。ポットライフが短いと調製直後に使用しなければならないため生産性及び取り扱い性が低下すると共に、得られる製品の品質安定性が低下する場合がある。
【0010】
本発明は、このような現状に鑑み、ポットライフに優れるポリフェニレンエーテル誘導体を含有する樹脂ワニス及びその保存方法を提供すること、並びに上記樹脂ワニスを用いて、相容性が良好で、かつ高周波数帯での誘電特性(低誘電率及び低誘電正接)、導体との高接着性、優れた耐熱性、高ガラス転移温度、低熱膨張係数及び高難燃性を有する樹脂組成物、該樹脂組成物を用いたプリプレグ、積層板及び多層プリント配線板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定構造のポリフェニレンエーテル誘導体を含有する樹脂ワニスにおいて、上記ポリフェニレンエーテル誘導体の濃度を特定の範囲に調整することにより、ポットライフに優れるポリフェニレンエーテル誘導体を含有する樹脂ワニスが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記[1]~[16]に関するものである。
[1]有機溶媒と1分子中にN-置換マレイミド構造含有基及び下記一般式(I)で表される構造単位を有するポリフェニレンエーテル誘導体(A)とを含有し、前記(A)成分の濃度が10~25質量%である樹脂ワニス。
【化1】
(式中、R
1は各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。xは0~4の整数である。)
[2]前記N-置換マレイミド構造含有基が下記一般式(Z)で表される基である、上記[1]に記載の樹脂ワニス。
【化2】
(式中、R
2は各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。yは0~4の整数である。A
1は、下記一般式(II)、(III)、(IV)又は(V)で表される基である。)
【化3】
(式中、R
3は各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。pは0~4の整数である。)
【化4】
(式中、R
4及びR
5は各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。A
2は炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボオキシ基、ケト基、単結合、又は下記一般式(III-1)で表される基である。q及びrは各々独立に0~4の整数である。)
【化5】
(式中、R
6及びR
7は各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。A
3は炭素数1~5のアルキレン基、イソプロピリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボオキシ基、ケト基又は単結合である。s及びtは各々独立に0~4の整数である。)
【化6】
(式中、nは0~10の整数である。)
【化7】
(式中、R
8及びR
9は各々独立に、水素原子又は炭素数1~5の脂肪族炭化水素基である。uは1~8の整数である。)
[3]前記一般式(Z)中のA
1が下記式のいずれかで表される基である、上記[2]に記載の樹脂ワニス。
【化8】
[4]前記一般式(I)で表される構造単位が、下記式(I’)で表される構造単位である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂ワニス。
【化9】
[5]前記(A)成分の数平均分子量が5,000~12,000である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂ワニス。
[6]前記有機溶媒が、トルエン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルからなる群から選ばれる1種以上である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂ワニス。
[7]上記[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂ワニスと、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂及びマレイミド化合物からなる群から選ばれる1種以上の熱硬化性樹脂(B)と、を配合してなる樹脂組成物。
[8]前記(B)成分が、1分子中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するポリマレイミド化合物(a)、又は下記一般式(VI)で表されるポリアミノビスマレイミド化合物(c)である、上記[7]に記載の樹脂組成物。
【化10】
(式中、A
4は前記一般式(Z)中のA
1の定義と同じであり、A
5は下記一般式(VII)で表される基である。)
【化11】
(式中、R
17及びR
18は各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、炭素数1~5のアルコキシ基、水酸基又はハロゲン原子である。A
8は、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボオキシ基、ケト基、フルオレニレン基、単結合、又は下記一般式(VII-1)もしくは(VII-2)で表される基である。q’及びr’は各々独立に0~4の整数である。)
【化12】
(式中、R
19及びR
20は各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。A
9は炭素数1~5のアルキレン基、イソプロピリデン基、m-フェニレンジイソプロピリデン基、p-フェニレンジイソプロピリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボオキシ基、ケト基又は単結合である。s’及びt’は各々独立に0~4の整数である。)
【化13】
(式中、R
21は炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。A
10及びA
11は各々独立に、炭素数1~5のアルキレン基、イソプロピリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボオキシ基、ケト基又は単結合である。wは0~4の整数である。)
[9]前記(A)成分と前記(B)成分の合計量に対する(A)成分の含有量が、5~85質量%である、上記[7]又は[8]に記載の樹脂組成物。
[10]更に、スチレン系熱可塑性エラストマー(C)を配合してなる、上記[7]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[11]前記(C)成分が、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の水素添加物、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の水素添加物及びスチレン-無水マレイン酸共重合体からなる群から選ばれる1種以上である、上記[10]に記載の樹脂組成物。
[12]前記(C)成分の配合量が、(A)~(C)成分の総和100質量部に対して、5~60質量部である、上記[10]又は[11]に記載の樹脂組成物。
[13]上記[7]~[12]のいずれかに記載の樹脂組成物とシート状繊維補強基材とを含有してなるプリプレグ。
[14]上記[13]に記載のプリプレグと金属箔とを含有してなる積層板。
[15]上記[13]に記載のプリプレグ又は[14]に記載の積層板を含有してなる多層プリント配線板。
[16]有機溶媒と1分子中にN-置換マレイミド構造含有基及び下記一般式(I)で表される構造単位を有するポリフェニレンエーテル誘導体(A)とを含有する樹脂ワニスの保存方法であって、前記(A)成分の濃度を10~25質量%とする樹脂ワニスの保存方法。
【化14】
(式中、R
1は各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。xは0~4の整数である。)
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、ポットライフに優れるポリフェニレンエーテル誘導体を含有する樹脂ワニス及びその保存方法を提供すること、並びに上記樹脂ワニスを用いて、相容性が良好で、かつ高周波数帯での誘電特性(低誘電率及び低誘電正接)、導体との高接着性、優れた耐熱性、高ガラス転移温度、低熱膨張係数及び高難燃性を有する樹脂組成物、該樹脂組成物を用いたプリプレグ、積層板及び多層プリント配線板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[樹脂ワニス及びその保存方法]
本発明の樹脂ワニスは、有機溶媒と1分子中にN-置換マレイミド構造含有基及び下記一般式(I)で表される構造単位を有するポリフェニレンエーテル誘導体(A)(以下、単に「ポリフェニレンエーテル誘導体(A)」又は「(A)成分」とも称する。)とを含有し、上記(A)成分の濃度が10~25質量%である樹脂ワニスである。
【0014】
【化15】
(式中、R
1は各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。xは0~4の整数である。)
【0015】
<ポリフェニレンエーテル誘導体(A)>
ポリフェニレンエーテル誘導体(A)は、1分子中にN-置換マレイミド構造含有基及び上記一般式(I)で表される構造単位を有するものである。(A)成分が1分子中に少なくとも1個のN-置換マレイミド構造含有基を有することにより、これを用いて得られる樹脂組成物は、優れた高周波特性、導体との高接着性、優れた耐熱性、高ガラス転移温度、低熱膨張係数及び高難燃性を有するものとなる。なお、本発明でいう熱膨張係数は、線膨張係数とも呼ばれる値である。
(A)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
上記一般式(I)中のR1は各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。該脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。該脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~3の脂肪族炭化水素基が好ましく、メチル基がより好ましい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
以上の中でも、R1としては、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基が好ましい。
xは0~4の整数であり、0~2の整数が好ましく、2がより好ましい。なお、xが1又は2である場合、R1はベンゼン環上のオルト位(但し、酸素原子の置換位置を基準とする。)に置換していてもよい。
上記一般式(I)で表される構造単位は、下記一般式(I')で表される構造単位であることが好ましい。
【0017】
【0018】
ポリフェニレンエーテル誘導体(A)が有するN-置換マレイミド構造含有基としては、高周波特性、導体との接着性、耐熱性、ガラス転移温度、熱膨張係数及び難燃性の観点から、2つのマレイミド基の窒素原子同士が有機基を介して結合しているビスマレイミド構造を含有する基が好ましく、下記一般式(Z)で表される基がより好ましい。
【0019】
【化17】
(式中、R
2は各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。yは0~4の整数である。A
1は、下記一般式(II)、(III)、(IV)又は(V)で表される基である。)
【0020】
R2が表す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子としては、R1の場合と同様に説明される。yは0~4の整数であり、0~2の整数が好ましく、0がより好ましい。
A1が表す一般式(II)、(III)、(IV)又は(V)で表される基は、以下のとおりである。
【0021】
【化18】
(式中、R
3は各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。pは0~4の整数である。)
【0022】
R3が表す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子としては、R1の場合と同様に説明される。
pは0~4の整数であり、入手容易性の観点から、0~2の整数が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0023】
【化19】
(式中、R
4及びR
5は各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。A
2は炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボオキシ基、ケト基、単結合、又は下記一般式(III-1)で表される基である。q及びrは各々独立に0~4の整数である。)
【0024】
R4及びR5が表す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子としては、R1の場合と同じものが挙げられる。該脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~3の脂肪族炭化水素基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましく、エチル基がさらに好ましい。
A2が表す炭素数1~5のアルキレン基としては、メチレン基、1,2-ジメチレン基、1,3-トリメチレン基、1,4-テトラメチレン基、1,5-ペンタメチレン基等が挙げられる。該アルキレン基としては、高周波特性、導体との接着性、耐熱性、ガラス転移温度、熱膨張係数及び難燃性の観点から、炭素数1~3のアルキレン基が好ましく、メチレン基がより好ましい。
A2が表す炭素数2~5のアルキリデン基としては、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、ペンチリデン基、イソペンチリデン基等が挙げられる。これらの中でも、高周波特性、導体との接着性、耐熱性、ガラス転移温度、熱膨張係数及び難燃性の観点から、イソプロピリデン基が好ましい。
A2としては、上記選択肢の中でも、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基が好ましい。
q及びrは各々独立に0~4の整数であり、入手容易性の観点から、いずれも、0~2の整数が好ましく、0又は2がより好ましい。
A2が表す一般式(III-1)で表される基は以下のとおりである。
【0025】
【化20】
(式中、R
6及びR
7は各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。A
3は炭素数1~5のアルキレン基、イソプロピリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボオキシ基、ケト基又は単結合である。s及びtは各々独立に0~4の整数である。)
【0026】
R6及びR7が表す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子としては、R4及びR5の場合と同様に説明される。
A3が表す炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基としては、A2が表す炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基と同じものが挙げられる。これらの中でも、炭素数2~5のアルキリデン基が好ましい。
s及びtは0~4の整数であり、入手容易性の観点から、いずれも、0~2の整数が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0027】
【0028】
nは、入手容易性の観点から、0~5の整数が好ましく、0~3の整数がより好ましい。
【0029】
【化22】
(式中、R
8及びR
9は各々独立に、水素原子又は炭素数1~5の脂肪族炭化水素基である。uは1~8の整数である。)
【0030】
R8及びR9が表す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子としては、R1の場合と同様に説明される。
uは1~8の整数であり、1~3の整数が好ましく、1がより好ましい。
【0031】
一般式(Z)で表される基の中のA1としては、高周波特性、導体との接着性、耐熱性、ガラス転移温度、熱膨張係数及び難燃性の観点から、下記式のいずれかで表される基が好ましい。
【0032】
【0033】
ポリフェニレンエーテル誘導体(A)は、下記一般式(A’)で表されるポリフェニレンエーテル誘導体であることが好ましく、下記式(A’-1)~(A’-4)のいずれかで表されるポリフェニレンエーテル誘導体であることがより好ましい。
【0034】
【化24】
(式中、A
1、R
1、R
2、x及びyは上記定義のとおりである。mは1以上の整数である。)
mは、1~300の整数が好ましく、10~300の整数がより好ましく、30~200の整数がさらに好ましく、50~150の整数が特に好ましい。
【0035】
【化25】
(式中、mは上記一般式(A’)中のmと同じである。)
【0036】
以上のポリフェニレンエーテル誘導体(A)の中でも、原材料が安価であるという観点からは、上記式(A'-1)で表されるものが好ましく、誘電特性に優れ、低吸水性であるという観点からは、上記式(A'-2)で表されるものが好ましく、導体との接着性及び機械特性(伸び、破断強度等)に優れるという観点からは、上記式(A'-3)で表されるものが好ましく、誘電特性に優れ、低吸水性であるという観点からは、上記式(A'-4)で表されるものが好ましい。
【0037】
ポリフェニレンエーテル誘導体(A)の数平均分子量は、5,000~12,000が好ましく、5,000~11,000がより好ましく、7,000~11,000がさらに好ましく、7,000~10,000が特に好ましい。数平均分子量が5,000以上であると、(A)成分を含有する樹脂組成物、それを用いたプリプレグ及び積層板において、より良好なガラス転移温度が得られる傾向にあり、12,000以下であると、(A)成分を含有する樹脂組成物を積層板に用いた際に、より良好な成形性が得られる傾向にある。
なお、本明細書において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレンを用いた検量線から換算した値であり、より詳細には実施例に記載の数平均分子量の測定方法により求めた値である。
【0038】
(ポリフェニレンエーテル誘導体(A)の製造方法)
ポリフェニレンエーテル誘導体(A)は、例えば、以下の製造方法によって得ることができる。
まず、下記一般式(VIII)で表されるアミノフェノール化合物(以下、「アミノフェノール化合物(VIII)」とも称する。)と、例えば、数平均分子量15,000~25,000のポリフェニレンエーテルを有機溶媒中で、公知の再分配反応をさせることにより、ポリフェニレンエーテルの低分子量化を伴いながら、1分子中に第一級アミノ基を有するポリフェニレンエーテル化合物(A'')(以下、単に、「ポリフェニレンエーテル化合物(A'')」とも称する。)を製造する。次いで、ポリフェニレンエーテル化合物(A'')と一般式(IX)で表されるビスマレイミド化合物(以下、「ビスマレイミド化合物(IX)」とも称する。)をマイケル付加反応させることによって、ポリフェニレンエーテル誘導体(A)を製造することができる。
【0039】
【化26】
(式中、R
2及びyは、上記一般式(I)中のものと同じである。)
【0040】
【化27】
(式中、A
1は、上記一般式(I)中のものと同じである。)
【0041】
アミノフェノール化合物(VIII)としては、o-アミノフェノール、m-アミノフェノール、p-アミノフェノール等が挙げられる。これらの中でも、ポリフェニレンエーテル化合物(A’’)を製造する際の反応収率、並びに得られる樹脂組成物、プリプレグ及び積層板の耐熱性の観点から、m-アミノフェノール、p-アミノフェノールが好ましく、p-アミノフェノールがより好ましい。
【0042】
ポリフェニレンエーテル化合物(A’’)の分子量は、アミノフェノール化合物(VIII)の使用量によって制御でき、アミノフェノール化合物(VIII)の使用量が多いほどポリフェニレンエーテル化合物(A’’)は低分子量化される。つまり、最終的に製造されるポリフェニレンエーテル誘導体(A)の数平均分子量が好適な範囲となるようにアミノフェノール化合物(VIII)の使用量を適宜調整すればよい。
アミノフェノール化合物(VIII)の使用量は、例えば、アミノフェノール化合物(VIII)と反応させる上記ポリフェニレンエーテルの数平均分子量が15,000~25,000であれば、該ポリフェニレンエーテル100質量部に対して0.5~6質量部の範囲で使用することにより、数平均分子量が5,000~12,000であるポリフェニレンエーテル誘導体(A)が得られる。
【0043】
ポリフェニレンエーテル化合物(A’’)の製造工程で使用される有機溶媒としては、メタノール、エタノール、ブタノール、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶媒;メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、ブトキシエチルアセテート、酢酸エチル等のエステル系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等の含窒素化合物系溶媒などが挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、溶解性の観点から、トルエン、キシレン、メシチレンが好ましい。
【0044】
ポリフェニレンエーテル化合物(A’’)の製造工程において、必要に応じて反応触媒を使用してもよい。反応触媒としては、再分配反応時における反応触媒を適用できる。例えば、再現性良く安定した数平均分子量のポリフェニレンエーテル化合物(A’’)を得る観点から、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート等の有機過酸化物とナフテン酸マンガン等のカルボン酸金属塩とを併用してもよい。
反応触媒の使用量は、反応性に応じて適宜決定すればよいが、反応速度及びゲル化抑制の観点から、アミノフェノール化合物(VIII)と反応させる上記ポリフェニレンエーテル100質量部に対して、有機過酸化物を0.5~5質量部、カルボン酸金属塩を0.05~0.5質量部とすることが好ましい。
【0045】
アミノフェノール化合物(VIII)、ポリフェニレンエーテル、有機溶媒及び必要により反応触媒を反応器に所定量仕込み、加熱、保温及び撹拌しながら反応させることによりポリフェニレンエーテル化合物(A’’)が得られる。
この工程での反応温度及び反応時間は、公知の再分配反応時における反応条件を適用することができるが、作業性及びゲル化抑制の観点、並びにポリフェニレンエーテル化合物(A’’)の分子量を制御できる等の観点から、例えば、反応温度を70~110℃、反応時間を1~8時間とすることができる。
【0046】
以上のようにして製造されたポリフェニレンエーテル化合物(A’’)の溶液は、そのまま連続的に次工程のポリフェニレンエーテル誘導体(A)の製造工程に供給されてもよい。この際、ポリフェニレンエーテル化合物(A’’)の溶液を冷却してもよく、又は次工程の反応温度に調整してもよい。また、この溶液は後述のように必要に応じて濃縮して有機溶媒の一部を除去しても、有機溶媒を追加して希釈してもよい。
【0047】
ポリフェニレンエーテル誘導体(A)を製造する際に用いられるビスマレイミド化合物(IX)としては、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、ビス(4-マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4-マレイミドフェニル)ケトン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ビフェニル、1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
これらの中でも、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサンが好ましい。また、上記式(A'-1)で表されるポリフェニレンエーテル誘導体が得られ、安価であるという観点からは、ビス(4-マレイミドフェニル)メタンが好ましい。上記式(A'-2)で表されるポリフェニレンエーテル誘導体が得られ、誘電特性に優れ、低吸水性であるという観点からは、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミドが好ましい。上記式(A'-3)を含むポリフェニレンエーテル誘導体が得られ、導体との高接着性及び機械特性(伸び、破断強度等)に優れるという観点からは、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンが好ましい。上記式(A’-4)で表されるポリフェニレンエーテル誘導体が得られ、誘電特性に優れ、低吸水性であるという観点からは、1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサンが好ましい。
【0048】
ビスマレイミド化合物(IX)の使用量は、アミノフェノール化合物(VIII)の使用量によって決定される。該アミノフェノール化合物(VIII)の-NH2基当量(Ta1)と、ビスマレイミド化合物(IX)のマレイミド基当量(Tb1)との当量比(Tb1/Ta1)は、2~6が好ましく、2~4がより好ましい。当量比が上記範囲内であると、(A)成分を用いた樹脂組成物、プリプレグ及び積層板において、より優れた耐熱性、高ガラス転移温度及び高難燃性が得られる傾向にある。
【0049】
ポリフェニレンエーテル誘導体(A)を製造する際のマイケル付加反応には、必要に応じて反応触媒を使用してもよい。反応触媒としては、p-トルエンスルホン酸等の酸性触媒;トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン等のアミン;メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール等のイミダゾール化合物;トリフェニルホスフィン等のリン系触媒などが挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。また反応触媒の使用量は、例えば、ポリフェニレンエーテル化合物(A'')100質量部に対して、0.01~5質量部である。
【0050】
ビスマレイミド化合物(IX)及び必要により反応触媒等を、ポリフェニレンエーテル化合物(A’’)溶液中に所定量の仕込み、加熱、保温及び撹拌しながらマイケル付加反応させることによりポリフェニレンエーテル誘導体(A)が得られる。この工程での反応条件は、作業性及びゲル化抑制の観点から、例えば、反応温度は50~160℃、反応時間は1~10時間であってもよい。また、この工程では前述のように有機溶媒を追加、又は濃縮して反応濃度(固形分濃度)、溶液粘度を調整してもよい。追加で使用される有機溶媒としては、ポリフェニレンエーテル化合物(A’’)の製造工程で例示した有機溶媒が適用でき、これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、溶解性の観点から、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドが好ましい。
【0051】
ポリフェニレンエーテル誘導体(A)及びポリフェニレンエーテル化合物(A’’)の製造工程における反応濃度(固形分濃度)は、上記いずれの製造工程も、得られる樹脂ワニスのポットライフ、作業性及び反応速度の観点から、10~60質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましい。反応濃度が10質量%以上であると、反応速度が遅くなりすぎず、製造コストの面で有利であり、60質量%以下であると、ゲル化することが少なくなり作業性の面で有利である。更に、反応濃度が40質量%以下であると、より良好な溶解性が得られる傾向にある。
【0052】
上記製造工程におけるポリフェニレンエーテル化合物(A’’)及びポリフェニレンエーテル誘導体(A)の生成は、それぞれの工程終了後に少量の試料を取り出し、GPC測定とIR測定により確認できる。
ポリフェニレンエーテル化合物(A’’)は、GPC測定から数平均分子量15,000~25,000のポリフェニレンエーテルよりも分子量が低下し、かつ原材料のアミノフェノール化合物(VIII)のピークが消失していること、またIR測定から、3,300~3,500cm-1の第一級アミノ基の出現により所望のポリフェニレンエーテル化合物(A’’)が製造されていることを確認できる。次いでポリフェニレンエーテル誘導体(A)は、再沈殿により精製後、IR測定から3,300~3,500cm-1の第一級アミノ基のピークの消失と、1,700~1,730cm-1のマレイミドのカルボニル基のピークの出現を確認することにより、所望のポリフェニレンエーテル誘導体(A)が製造されていることを確認できる。
【0053】
<有機溶媒>
本発明の樹脂ワニスは、(A)成分に加え、有機溶媒を含有するものである。
ポリフェニレンエーテル誘導体(A)及び(A’’)を反応溶液として得る場合、ポリフェニレンエーテル誘導体(A)及び(A’’)の製造に用いた反応溶媒をそのまま、樹脂ワニスの有機溶媒とすることができる。その場合、本発明の樹脂ワニスが含有する有機溶媒の好ましい態様は、ポリフェニレンエーテル誘導体(A)及び(A’’)の製造にした反応溶媒の好ましい態様と同じである。
また、ポリフェニレンエーテル誘導体(A)及び(A’’)を単離若しくは濃縮して得る場合、又は(A)成分の濃度が25質量%を超える反応溶液として得る場合は、後述するポリフェニレンエーテル誘導体(A)の濃度となるように、有機溶媒を添加してもよい。その際の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、ブタノール、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶媒;メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、ブトキシエチルアセテート、酢酸エチル等のエステル系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等の含窒素化合物系溶媒などが挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、溶解性の観点から、トルエン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、N,N-ジメチルホルムアミド及びプロピレングリコールモノメチルエーテルからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、トルエンがより好ましい。
【0054】
<ポリフェニレンエーテル誘導体(A)の濃度>
本発明の樹脂ワニス中におけるポリフェニレンエーテル誘導体(A)の濃度は、樹脂ワニスのポットライフ及び作業性の観点から、10~25質量%であり、11~22質量%が好ましく、12~20質量%がより好ましく、13~18質量%がさらに好ましい。
樹脂ワニス中の(A)成分の濃度が10質量%以上であると、本発明の樹脂ワニスを樹脂組成物に適用する際に、樹脂組成物中の有機溶媒量を調整し易いため作業性及び生産性に優れ、製造コストの面で有利である。一方、樹脂ワニス中の(A)成分の濃度が25質量%以下であると、樹脂ワニスのポットライフが優れる傾向にある。
【0055】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、本発明の樹脂ワニスと、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂及びマレイミド化合物からなる群から選ばれる1種以上の熱硬化性樹脂(B)(以下、単に「熱硬化性樹脂(B)」又は「(B)成分」とも称する。)と、を配合してなる樹脂組成物である。
本発明の樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル化合物(A'')と後述する(B)成分とを含有させた樹脂組成物よりも、導体との接着性、耐熱性、熱膨張係数、難燃性、加工性(ドリル加工、切削)がより優れている傾向にある。
【0056】
<熱硬化性樹脂(B)>
熱硬化性樹脂(B)は、エポキシ樹脂、シアネート樹脂及びマレイミド化合物からなる群から選ばれる1種以上の熱硬化性樹脂であり、エポキシ樹脂及びマレイミド化合物からなる群から選ばれる1種以上の熱硬化性樹脂であることが好ましい。なお、熱硬化性樹脂(B)であるマレイミド化合物は、ポリフェニレンエーテル誘導体(A)を包含しない。
熱硬化性樹脂(B)は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0057】
(B)成分であるエポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂が挙げられ、グリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂、グリシジルアミンタイプのエポキシ樹脂、グリシジルエステルタイプのエポキシ樹脂等に分類される。これらの中でも、グリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂は、主骨格の違いによっても種々のエポキシ樹脂に分類分けされ、上記それぞれのタイプのエポキシ樹脂において、更に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;脂肪族鎖状エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;フェノールアラルキル型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のナフタレン骨格含有型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂;キシリレン型エポキシ樹脂;ジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂などに分類される。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、高周波特性、耐熱性、ガラス移転温度、熱膨張係数及び難燃性の観点から、ナフタレン骨格含有型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂が好ましい。
【0058】
(B)成分としてエポキシ樹脂を用いる場合、必要に応じて、エポキシ樹脂の硬化剤を併用してもよい。硬化剤としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルメタン、m-フェニレンジアミン、ジシアンジアミド等のポリアミン化合物;ビスフェノールA、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂等のフェノール樹脂;無水フタル酸、無水ピロメリット酸等の酸無水物;カルボン酸化合物;活性エステル化合物などが挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、耐熱性、ガラス転移温度、熱膨張係数、保存安定性及び絶縁信頼性の観点から、フェノール樹脂、活性エステル系化合物が好ましい。硬化剤の配合量は、目的に応じて適宜調整すればよい。
【0059】
(B)成分であるシアネート樹脂としては、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン、ビス(4-シアナトフェニル)エタン、ビス(3,5-ジメチル-4-シアナトフェニル)メタン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、α,α’-ビス(4-シアナトフェニル)-m-ジイソプロピルベンゼン、フェノール付加ジシクロペンタジエン重合体のシアネートエステル化合物、フェノールノボラック型シアネートエステル化合物、クレゾールノボラック型シアネートエステル化合物等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、製造コスト、高周波特性及びその他特性の総合バランスの観点から、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパンが好ましい。
【0060】
(B)成分としてシアネート樹脂を用いる場合、必要に応じて、シアネート樹脂の硬化剤、硬化助剤等を併用してもよい。硬化剤及び硬化助剤としては、モノフェノール化合物、ポリフェノール化合物、アミン化合物、アルコール化合物、酸無水物、カルボン酸化合物等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、高周波特性、耐熱性、耐吸湿性及び保存安定性の観点から、モノフェノール化合物が好ましい。硬化剤及び硬化助剤の配合量は、目的に応じて適宜調整すればよい。
シアネート樹脂にモノフェノール化合物を併用する場合、有機溶媒への溶解性の観点から、予備反応させてフェノール変性シアネートプレポリマーとして用いてもよい。モノフェノール化合物はプレポリマー化時に規定量全てを配合してもよく、プレポリマー化前後で規定量を分けて配合してもよいが、保存安定性の観点から、分けて配合する方法が好ましい。
【0061】
(B)成分であるマレイミド化合物としては、1分子中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するポリマレイミド化合物(a)(以下、「ポリマレイミド化合物(a)」又は「(a)成分」とも称する。)、及びポリアミノビスマレイミド化合物(c)(以下、「(c)成分」とも称する。)からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、有機溶媒への溶解性、高周波特性、導体との接着性及びプリプレグの成形性の観点から、ポリアミノビスマレイミド化合物(c)がより好ましく、下記一般式(VI)で表されるポリアミノビスマレイミド化合物(c)がさらに好ましい。
ポリアミノビスマレイミド化合物(c)は、例えば、(a)成分と1分子中に2個の第一級アミノ基を有する芳香族ジアミン化合物(b)(以下、「ジアミン化合物(b)」又は「(b)成分」とも称する。)とを有機溶媒中でマイケル付加反応させることにより得られる。
【0062】
【化28】
(式中、A
4は上記一般式(Z)中のA
1の定義と同じであり、A
5は下記一般式(VII)で表される基である。)
【0063】
【化29】
(式中、R
17及びR
18は各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、炭素数1~5のアルコキシ基、水酸基又はハロゲン原子である。A
8は、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボオキシ基、ケト基、フルオレニレン基、単結合、又は下記一般式(VII-1)もしくは(VII-2)で表される基である。q’及びr’は各々独立に0~4の整数である。)
【0064】
【化30】
(式中、R
19及びR
20は各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。A
9は炭素数1~5のアルキレン基、イソプロピリデン基、m-フェニレンジイソプロピリデン基、p-フェニレンジイソプロピリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボオキシ基、ケト基又は単結合である。s’及びt’は各々独立に0~4の整数である。)
【0065】
【化31】
(式中、R
21は炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。A
10及びA
11は各々独立に、炭素数1~5のアルキレン基、イソプロピリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボオキシ基、ケト基又は単結合である。wは0~4の整数である。)
【0066】
上記一般式(VII)、(VII-1)又は(VII-2)中のR17、R18、R19、R20及びR21が表す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子としては、一般式(I)中のR1と同じものが挙げられる。該脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~3の脂肪族炭化水素基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
上記一般式(VI)中のA4は上記一般式(Z)中のA1の定義と同じである。
上記一般式(VII)、(VII-1)又は(VII-2)中のA8及びA9が表す炭素数1~5のアルキレン基、並びにA8が表す炭素数2~5のアルキリデン基としては、上記一般式(III)中のA2の場合と同様に説明される。また、上記一般式(VII-2)中のA10及びA11が表す炭素数1~5のアルキレン基は、上記一般式(III)中のA2の場合と同様に説明される。
q’及びr’は0~4の整数であり、入手容易性の観点から、いずれも、0~2の整数が好ましく、0又は2がより好ましい。s’及びt’は0~4の整数であり、入手容易性の観点から、いずれも、0~2の整数が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。wは0~4の整数であり、入手容易性の観点から、0~2の整数が好ましく、0がより好ましい。
【0067】
ポリマレイミド化合物(a)しては、ビスマレイミド化合物(IX)と同じものを適用してもよく、例えば、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、ビス(4-マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4-マレイミドフェニル)ケトン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ビフェニル、1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、ビスマレイミド化合物が好ましく、安価であるという観点からは、ビス(4-マレイミドフェニル)メタンがより好ましく、誘電特性に優れ、低吸水性であるという観点からは、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミドがより好ましく、導体との高接着性及び機械特性(伸び、破断強度等)に優れるという観点からは、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンがより好ましい。
【0068】
ジアミン化合物(b)としては、例えば、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチル-ジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチル-ジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルケトン、4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、1,3-ビス(1-4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)-1-メチルエチル)ベンゼン、1,4-ビス(1-4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)-1-メチルエチル)ベンゼン、4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、3,3’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
また、これらの中でも、有機溶媒への溶解性が高く、合成時の反応率が高く、かつ耐熱性を高くできるという観点から、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチル-ジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチル-ジフェニルメタン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリンが好ましく、溶解性、反応率及び耐熱性が優れることに加えて、安価であるという観点からは、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチル-ジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチル-ジフェニルメタンがより好ましく、溶解性、反応率及び耐熱性に優れることに加えて、導体との高接着性を発現できるという観点からは、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリンがより好ましく、溶解性、反応率、耐熱性及び導体との接着性に優れることに加えて、高周波特性及び耐吸湿性に優れるという観点からは、4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリンがより好ましい。
【0069】
ポリアミノビスマレイミド化合物(c)を製造する際に使用される有機溶媒としては、例えば、上記のポリフェニレンエーテル化合物(A’’)の製造工程で例示した有機溶媒が適用できる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、溶解性の観点から、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドが好ましい。
【0070】
(c)成分を製造する際の(a)成分と(b)成分の使用量は、(b)成分の-NH2基当量(Ta2)と、(a)成分のマレイミド基当量(Tb2)との当量比(Tb2/Ta2)が1~10となる範囲が好ましく、2~10となる範囲がより好ましい。当量比(Tb2/Ta2)が上記範囲内であると、(A)成分を含有する樹脂組成物、プリプレグ及び積層板において、優れた高周波特性、導体との高接着性、優れた耐熱性、高ガラス転移温度及び高難燃性が得られる。
【0071】
ポリアミノビスマレイミド化合物(c)を製造する際のマイケル付加反応には反応触媒を使用しなくてもよいが、必要に応じて使用することもできる。反応触媒としては、例えば、上記のポリフェニレンエーテル誘導体(A)製造時のマイケル付加反応に使用できる反応触媒を適用することができる。反応触媒の配合量は、特に制限されるものではなく、適宜調整すればよい。
【0072】
また、(B)成分としてマレイミド化合物を用いる場合、マレイミド化合物の硬化剤、架橋剤、硬化助剤等を併用することができる。これらは、特に制限されるものではないが、スチレンモノマー、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル等のビニル化合物;(メタ)アクリレート化合物;トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等のアリル化合物;ジアミノジフェニルメタン等のポリアミン化合物などが挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、高周波特性及び耐熱性の観点から、ビニル化合物、ポリアミン化合物が好ましい。これらの配合量も特に制限されるものではなく、目的に応じて、適宜調整すればよい。
【0073】
(a)成分、(b)成分、有機溶媒及び必要により反応触媒等を反応器に所定量仕込み、加熱、保温及び撹拌しながらマイケル付加反応させることによりポリアミノビスマレイミド化合物(c)が得られる。この工程での反応条件は、例えば、上述したポリフェニレンエーテル誘導体(A)の製造時のマイケル付加反応時における反応条件を適用できる。
反応濃度(固形分濃度)は、例えば、10~90質量%であり、20~80質量%が好ましい。反応濃度が10質量%以上であると、十分な反応速度が得られ、製造コストの面でより有利な傾向にあり、90質量%以下であると、より良好な溶解性が得られる傾向にある。また、溶液粘度が低いので撹拌効率がよく、ゲル化することも少ない。なお、ポリアミノビスマレイミド化合物(c)の製造後は、ポリフェニレンエーテル誘導体(A)の製造時と同様に、目的に合わせて有機溶媒の一部又は全部を除去(濃縮)したり、有機溶媒を追加して希釈してもよい。
【0074】
((A)成分と(B)成分の含有量)
本発明の樹脂組成物中における(A)成分の含有量は、高周波特性の観点から、樹脂成分の固形分総量100質量部に対して、3~50質量部が好ましく、10~60質量部がより好ましく、15~50質量部がさらに好ましい。
本発明の樹脂組成物中における(B)成分の含有量は、高周波特性及び成形性の観点から、樹脂成分の固形分総量100質量部に対して、5~90質量部が好ましく、10~80質量部がより好ましく、20~70質量部がさらに好ましい。
なお、本発明における樹脂成分の固形分とは、不揮発性の樹脂成分を意味し、25℃付近の室温で液状、水飴状又はワックス状のものも含み、必ずしも固体であることを意味するものではない
【0075】
本発明樹脂組成物中の(A)成分と(B)成分の合計量に対する(A)成分の含有量は、5~85質量%が好ましく、10~80質量%がより好ましく、20~75質量%がさらに好ましく、30~70質量%が特に好ましい。(A)成分の含有量が5質量%以上であると、より優れた高周波特性及び低吸湿性が得られる傾向にあり、85質量%以下であると、より優れた耐熱性、より優れた成形性及びより優れた加工性が得られる傾向にある。
【0076】
<スチレン系熱可塑性エラストマー(C)>
本発明の樹脂組成物は、さらにスチレン系熱可塑性エラストマー(C)(以下、「(C)成分」とも称する。)を配合してなるものが好ましい。
本発明の樹脂組成物に(C)成分を配合することにより、成形性、高周波特性、導体との接着性、はんだ耐熱性、ガラス転移温度、熱膨張係数及び難燃性がより良好となり、これらの特性のバランスが更に優れたものとなる。
(C)成分は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0077】
(C)成分としては、スチレン系化合物由来の構造単位を含有する熱可塑性エラストマーであれば特に制限はなく、下記一般式(C-1)で表されるスチレン系化合物由来の構造単位を含有する熱可塑性エラストマーが好ましく、スチレン由来の構造単位(一般式(C-1)においてRC1が水素原子であり、かつkが0である化合物)を有する熱可塑性エラストマーがより好ましい。
【0078】
【化32】
(上記式中、R
C1は水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であり、R
C2は、各々独立に、炭素数1~5のアルキル基である。kは、0~5の整数である。)
【0079】
RC1及びRC2が表す炭素数1~5のアルキル基としては、炭素数1~3のアルキル基が好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基等が挙げられ、これらの中でも、メチル基がより好ましい。
RC1としては、水素原子であることが好ましい。
kは、0~2の整数が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
【0080】
(C)成分は、スチレン系化合物由来の構造単位以外の構造単位を含有していてもよい。スチレン系化合物由来の構造単位以外の構造単位としては、ブタジエン由来の構造単位、イソプレン由来の構造単位、マレイン酸由来の構造単位、無水マレイン酸由来の構造単位等が挙げられる。上記ブタジエン由来の構造単位及び上記イソプレン由来の構造単位は、水素添加されていてもよい。水素添加されている場合、ブタジエン由来の構造単位はエチレン単位とブチレン単位とが混合した構造単位となり、イソプレン由来の構造単位はエチレン単位とプロピレン単位とが混合した構造単位となる。
【0081】
スチレン系熱可塑性エラストマー(C)としては、高周波特性、導体との接着性、耐熱性、ガラス転移温度及び熱膨張係数の観点から、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の水素添加物(以下、「SEBS」、「SBBS」とも称する。)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の水素添加物(以下、「SEPS」とも称する。)及びスチレン-無水マレイン酸共重合体(以下、「SMA」とも称する。)からなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
【0082】
スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の水素添加物としては、炭素-炭素二重結合の水素添加率が通常90%以上(95%以上であってもよい。)であるSEBSと、ブタジエンブロック中の1,2-結合部位の炭素-炭素二重結合が部分的に水素添加されたSBBS(全体の炭素-炭素二重結合に対する水素添加率はおよそ60~85%)とがある。なお、ブタジエンブロック中の1,2-結合部位の炭素-炭素二重結合は、下記式(C-2)で表され、1,4-結合部位の炭素-炭素二重結合は、下記式(C-3)で表される。
【0083】
【0084】
上記SEBSにおいて、スチレン由来の構造単位の含有率(以下、「スチレン含有率」とも称する。)は、高周波特性、導体との接着性、耐熱性、ガラス転移温度及び熱膨張係数の観点から、5~80質量%が好ましく、5~70質量%がより好ましく、10~70質量%がさらに好ましく、10~50質量%が特に好ましい。SEBSのメルトフローレート(MFR)は、230℃、荷重2.16kgf(21.2N)の測定条件では、0.1~20g/10minが好ましく、0.5~15g/10minがより好ましい。
SEBSの市販品としては、旭化成ケミカルズ株式会社製のタフテック(登録商標)Hシリーズ、Mシリーズ、株式会社クラレ製のセプトン(登録商標)シリーズ、クレイトンポリマージャパン株式会社製のクレイトン(登録商標)Gポリマーシリーズ等が挙げられる。
【0085】
上記SBBSにおいて、スチレン含有率は、高周波特性、導体との接着性、耐熱性、ガラス転移温度及び熱膨張係数の観点から、40~80質量%が好ましく、50~75質量%がより好ましく、55~75質量%がさらに好ましい。SBBSのメルトフローレート(MFR)は、190℃、荷重2.16kgf(21.2N)の測定条件では、0.1~10g/10minが好ましく、0.5~10g/10minがより好ましく、1~6g/10minがさらに好ましい。
SBBSの市販品としては、旭化成ケミカルズ株式会社製のタフテック(登録商標)Pシリーズ等が挙げられる。
【0086】
スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の水素添加物(SEPS)の水素添加率は、90%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。SEPSにおいて、スチレン含有率は、高周波特性、導体との接着性、耐熱性、ガラス転移温度及び熱膨張係数の観点から、5~60質量%が好ましく、5~50質量%がより好ましく、10~40質量%がさらに好ましい。
また、SEPSのメルトフローレート(MFR)は、230℃、荷重2.16kgf(21.2N)の測定条件では、0.1~130g/10minが好ましく、10~100g/10minがより好ましく、50~90g/10minがさらに好ましい。
SEPSの市販品としては、株式会社クラレ製のセプトン(登録商標)シリーズ、クレイトンポリマージャパン株式会社製のクレイトンGポリマーシリーズ等が挙げられる。
【0087】
スチレン-無水マレイン酸共重合体(SMA)において、スチレン含有率は、高周波特性、導体との接着性、耐熱性、ガラス転移温度及び熱膨張係数の観点から、20~90質量%が好ましく、40~90質量%がより好ましく、60~90質量%がさらに好ましく、70~90質量%が特に好ましい。
SMAは、無水マレイン酸由来の構造単位がエステル化されたものであってもよい。
SMAの市販品としては、クレイバレーテクノロジーUSA社製のSMA(登録商標)レジン等が挙げられる。
【0088】
本発明の樹脂組成物中における(C)成分の含有量は、高周波特性、導体との接着性、耐熱性、ガラス転移温度及び熱膨張係数の観点から、(A)~(C)成分の総和100質量部に対して、5~60質量部が好ましく、10~60質量部がより好ましく、15~60質量部がさらに好ましく、15~50質量部が特に好ましく、15~40質量部が最も好ましい。(C)成分の含有量が5質部以上であると、高周波特性及び耐吸湿性がより良好となる傾向にあり、60質量部以下であると、耐熱性、成形性、加工性及び難燃性がより良好となる傾向にある。
【0089】
<その他の成分>
本発明の樹脂組成物は、任意に必要に応じて、無機充填材(D)(以下、「(D)成分」とも称する。)、硬化促進剤(E)(以下、「(E)成分」とも称する。)及び難燃剤(F)(以下、「(F)成分」とも称する。)からなる群から選ばれる1種以上を配合してなるものであってもよい。これらを配合することにより、積層板とした際の諸特性を更に向上させることができる。
例えば、本発明の樹脂組成物に任意に適切な無機充填材(D)を配合することで、低熱膨張係数、高弾性率性、耐熱性及び難燃性をより向上させることができる。また、適切な硬化促進剤(E)を配合することで、樹脂組成物の硬化性を向上させ、高周波特性、耐熱性、導体との接着性、弾性率及びガラス転移温度をより向上させるができる。更に、難燃剤(F)及び必要に応じて難燃助剤を配合することで、樹脂組成物の難燃性をより向上させることができる。
【0090】
(無機充填材(D))
(D)成分としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、マイカ、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、クレー(焼成クレー等)、タルク、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、熱膨張係数、弾性率、耐熱性及び難燃性の観点から、シリカ、アルミナ、マイカ、タルクが好ましく、シリカがより好ましい。シリカとしては、湿式法で製造され含水率の高い沈降シリカと、乾式法で製造され結合水等をほとんど含まない乾式法シリカ等が挙げられ、乾式法シリカは、更に製造法の違いにより破砕シリカ、フュームドシリカ、溶融シリカ(溶融球状シリカ)等に分類される。
無機充填材(D)の形状及び粒径は特に制限はなく、粒径は、0.01~20μmが好ましく、0.1~10μmがより好ましい。ここで、粒径とは、平均粒子径を指し、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めたとき、体積50%に相当する点の粒子径のことである。レーザ回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。
【0091】
(D)成分を用いる場合、(D)成分の分散性及び(D)成分と樹脂組成物中の有機成分との密着性を向上させる目的で、必要に応じて、カップリング剤を併用してもよい。カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。カップリング剤の使用量は、(D)成分100質量部に対して、0.1~5質量部が好ましく、0.5~3質量部がより好ましい。カップリング剤の使用量が上記範囲内であると、諸特性の低下を抑制しつつ、(D)成分の特長を効果的に発現できる傾向にある。
なお、カップリング剤を用いる場合、樹脂組成物中に(D)成分を配合した後、カップリング剤を添加する、いわゆるインテグラルブレンド処理方式であってもよいが、予め無機充填材にカップリング剤を乾式又は湿式で表面処理した無機充填材を使用する方式が好ましい。
【0092】
(D)成分は、樹脂組成物への分散性を向上させる目的で、必要に応じて、有機溶媒中に分散させたスラリーとして用いることができる。(D)成分のスラリーに使用される有機溶媒としては、例えば、上述したポリフェニレンエーテル化合物(A'')の製造工程で例示した有機溶媒が適用でき、分散性の観点から、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが好ましい。スラリーの固形分濃度は、無機充填材(D)の沈降性及び分散性の観点から、50~80質量%が好ましく、60~80質量%がより好ましい。
【0093】
本発明の樹脂組成物に(D)成分を配合する場合、本発明の樹脂組成物中における(D)成分の含有量は、熱膨張係数、弾性率、耐熱性及び難燃性の観点から、3~65体積%が好ましく、5~60体積%がより好ましく、15~55体積%がさらに好ましい。(D)成分の含有量が上記範囲内であると、より良好な硬化性、成形性及び耐薬品性が得られる傾向にある。
【0094】
(硬化促進剤(E))
本発明の樹脂組成物に(E)成分を配合する場合、(E)成分の種類は、使用する(B)成分の種類に合わせて適宜好適なものを選択すればよい。
(B)成分としてエポキシ樹脂を用いる場合の(E)成分としては、イミダゾール化合物及びその誘導体;第3級アミン化合物;第4級アンモニウム化合物;トリフェニルホスフィン等のリン系化合物などが挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、耐熱性、ガラス転移温度及び保存安定性の観点から、イミダゾール化合物及びその誘導体又はリン系化合物が好ましい。イミダゾール化合物としては、メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール、イソシアネートマスクイミダゾール(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート樹脂と2-エチル-4-メチルイミダゾールの付加反応物等)等が挙げられ、これらの中でも、イソシアネートマスクイミダゾールが好ましい。
【0095】
(B)成分としてシアネート樹脂を用いる場合の(E)成分としては、イミダゾール化合物及びその誘導体;マンガン、コバルト、亜鉛等のカルボン酸塩;マンガン、コバルト、亜鉛等の遷移金属のアセチルアセトン錯体等の有機金属化合物などが挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、耐熱性、ガラス転移温度及び保存安定性の観点から、有機金属化合物が好ましい。
【0096】
(B)成分としてマレイミド化合物を用いる場合の(E)成分としては、p-トルエンスルホン酸等の酸性触媒;トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン等のアミン化合物;メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール、イソシアネートマスクイミダゾール(ヘキサメチレンジイソシアネート樹脂と2-エチル-4-メチルイミダゾールの付加反応物等)等のイミダゾール化合物;第3級アミン化合物;第4級アンモニウム化合物;トリフェニルホスフィン等のリン系化合物;ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3,2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン等の有機過酸化物;マンガン、コバルト、亜鉛等のカルボン酸塩などが挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、耐熱性、ガラス転移温度及び保存安定性の観点から、イミダゾール化合物、有機過酸化物、カルボン酸塩が好ましく、耐熱性、ガラス転移温度、弾性率及び熱膨張係数の観点から、イミダゾール化合物と、有機過酸化物又はカルボン酸塩とを併用することがより好ましい。また、有機過酸化物の中では、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼンが好ましく、カルボン酸塩の中では、ナフテン酸マンガンが好ましい。
【0097】
本発明の樹脂組成物に(E)成分を配合する場合、本発明の樹脂組成物中における(E)成分の含有量は、(A)成分と(B)成分の総和(固形分換算)100質量部に対して、0.01~10質量部が好ましく、0.01~5質量部がより好ましい。(E)成分の含有量が上記範囲内であると、より良好な耐熱性及び保存安定性が得られる傾向にある。
【0098】
(難燃剤(F))
(F)成分としては、リン系難燃剤、金属水和物、ハロゲン系難燃剤等が挙げられ、環境問題の観点から、リン系難燃剤及び金属水和物が好ましい。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0099】
-リン系難燃剤-
リン系難燃剤としては、一般的に難燃剤として使用されるもののうち、リン原子を含有するものであれば特に制限はなく、無機系のリン系難燃剤であってもよいし、有機系のリン系難燃剤であってもよい。なお、環境問題の観点からは、ハロゲン原子を含有しないものが好ましく、高周波特性、導体との接着性、耐熱性、ガラス転移温度、熱膨張係数及び難燃性の観点からは、有機系のリン系難燃剤が好ましい。
無機系のリン系難燃剤としては、赤リン;リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム;リン酸アミド等の無機系含窒素リン化合物;リン酸;ホスフィンオキシドなどが挙げられる。
有機系のリン系難燃剤としては、芳香族リン酸エステル、1置換ホスホン酸ジエステル、2置換ホスフィン酸エステル、2置換ホスフィン酸の金属塩、有機系含窒素リン化合物、環状有機リン化合物等が挙げられる。これらの中でも、芳香族リン酸エステル化合物、2置換ホスフィン酸の金属塩が好ましい。ここで、金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、チタン塩、亜鉛塩等が挙げられ、アルミニウム塩が好ましい。
【0100】
芳香族リン酸エステルとしては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジルジ-2,6-キシレニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、1,3-フェニレンビス(ジ-2,6-キシレニルホスフェート)、ビスフェノールA-ビス(ジフェニルホスフェート)、1,3-フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)等が挙げられる。
1置換ホスホン酸ジエステルとしては、フェニルホスホン酸ジビニル、フェニルホスホン酸ジアリル、フェニルホスホン酸ビス(1-ブテニル)等が挙げられる。
2置換ホスフィン酸エステルとしては、ジフェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィン酸メチル等が挙げられる。
2置換ホスフィン酸の金属塩としては、ジアルキルホスフィン酸の金属塩、ジアリルホスフィン酸の金属塩、ジビニルホスフィン酸の金属塩、ジアリールホスフィン酸の金属塩等が挙げられる。これらの中でも、ジアルキルホスフィン酸の金属塩が好ましく、ジアルキルホスフィン酸のアルミニウム塩がより好ましい。
有機系含窒素リン化合物としては、ビス(2-アリルフェノキシ)ホスファゼン、ジクレジルホスファゼン等のホスファゼン化合物;リン酸メラミン;ピロリン酸メラミン;ポリリン酸メラミン;ポリリン酸メラムなどが挙げられる。
環状有機リン化合物としては、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド等が挙げられる。これらの中でも、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシドが好ましい。
以上の有機系のリン系難燃剤の中でも、芳香族リン酸エステル、2置換ホスフィン酸の金属塩及び環状有機リン化合物から選択される1種以上が好ましく、2置換ホスフィン酸の金属塩及び環状有機リン化合物から選択される1種以上がより好ましく、2置換ホスフィン酸の金属塩及び環状有機リン化合物の併用がさらに好ましい。
なお、2置換ホスフィン酸の金属塩及び環状有機リン化合物を併用する場合、環状有機リン化合物に対する2置換ホスフィン酸の金属塩の配合比率[2置換ホスフィン酸の金属塩/環状有機リン化合物]は、質量比で、0.6~2.5が好ましく、0.9~2がより好ましく、1~2がさらに好ましく、1.2~2が特に好ましい。
【0101】
芳香族リン酸エステルは、下記一般式(F-1)又は(F-2)で表される芳香族リン酸エステルが好ましく、上記2置換ホスフィン酸の金属塩は、下記一般式(F-3)で表される2置換ホスフィン酸の金属塩が好ましい。
【0102】
【化34】
(式中、R
F1~R
F5は各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。e及びfは各々独立に0~5の整数であり、g、h及びiは各々独立に0~4の整数である。R
F6及びR
F7は各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~14の芳香族炭化水素基である。Mは、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子、カルシウム原子、マグネシウム原子、アルミニウム原子、チタン原子、亜鉛原子である。m1は、1~4の整数である。)
【0103】
RF1~RF5が表す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基及びハロゲン原子としては、上記一般式(I)中のR1の場合と同じものが挙げられる。
e及びfは、0~2の整数が好ましく、2がより好ましい。g、h及びiは、0~2の整数が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
RF6及びRF7が表す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基としては、上記一般式(I)中のR1の場合と同じものが挙げられ、炭素数1~3の脂肪族炭化水素基が好ましく、エチル基がより好ましい。
RF6及びRF7が表す炭素数6~14の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アントリル基等が挙げられ、炭素数6~10の芳香族炭化水素基が好ましい。
m1は金属イオンの価数であり、Mの種類に対応して1~4の範囲内で変化する。
Mは、アルミニウム原子が好ましく、その場合、m1は3となる。
【0104】
-リン系難燃剤以外の難燃剤-
リン系難燃剤以外の難燃剤としては、水酸化アルミニウムの水和物、水酸化マグネシウムの水和物等の金属水和物;塩素系難燃剤、臭素系難燃剤等のハロゲン系難燃剤などが挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0105】
本発明の樹脂組成物にリン系難燃剤を配合する場合、固形分換算の樹脂組成物(上記(D)成分を除くその他成分の総和)中のリン原子の含有量は、0.2~5質量%が好ましく、0.3~3質量%がより好ましい。リン原子の含有量が0.2質量%以上であると、より良好な難燃性が得られる傾向にあり、5質量%以下であると、より良好な成形性、導体との高接着性、優れた耐熱性及び高ガラス転移温度が得られる傾向にある。
一方、本発明の樹脂組成物にハロゲン系難燃剤を配合する場合、その含有量は、環境問題及び耐薬品性の観点から、樹脂成分の固形分総量100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、5質量部以下がさらに好ましい。
【0106】
(難燃助剤)
本発明の樹脂組成物には、更に、三酸化アンチモン、モリブデン酸亜鉛等の無機系難燃助剤を配合させてもよい。
【0107】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、上記各成分以外の熱可塑性樹脂、エラストマー等の樹脂材料、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、滑剤等を配合させてもよい。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。また、これらの使用量は特に限定されるものではない。
【0108】
(有機溶剤)
本発明の樹脂組成物は、希釈することによって取り扱いを容易にするという観点及び後述するプリプレグを製造し易くする観点から、有機溶剤を含有させてもよい。
該有機溶剤としては、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の窒素原子含有溶剤;ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶剤;γ-ブチロラクトン等のエステル系溶剤などが挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、溶解性の観点から、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、窒素原子含有溶剤が好ましく、ケトン系溶剤がより好ましく、メチルエチルケトンがさらに好ましい。
【0109】
本発明の樹脂組成物が有機溶剤を含有する場合、本発明の樹脂組成物の固形分濃度は、30~90質量%が好ましく、40~70質量%がより好ましく、40~60質量%がさらに好ましい。固形分濃度が上記範囲内であると、取り扱い性、基材への含浸性、得られるプリプレグの外観が良好となると共に、プリプレグ中の樹脂の固形分濃度の調整が容易となり、所望の厚みとなるプリプレグの製造がより容易となる傾向にある。
【0110】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物は、上記各成分を適宜選択して、公知の方法で混合することで製造することができる。この際、撹拌しながら各成分を溶解又は分散させてもよい。混合順序、温度、時間等の条件は、特に限定されず任意に設定することができる。
【0111】
本発明の樹脂組成物から積層板を作製したとき、そのガラス転移温度(Tg)は、良好なはんだ耐熱性及びスルーホール接続信頼性、並びに電子部品等を製造する際の優れた加工性の観点から、200℃以上が好ましく、205℃以上がより好ましく、210℃以上がさらに好ましい。ガラス転移温度は高い程好ましいが、他の物性とのバランスを考慮して、1000℃以下であってもよく、500℃以下であってもよく、300℃以下であってもよい。
本発明の樹脂組成物から積層板を作製したとき、その熱膨張係数(Z方向、Tg以下)は、積層板のそりを抑制する観点から、45ppm/℃以下が好ましく、43ppm/℃以下がより好ましく、40ppm/℃以下がさらに好ましい。熱膨張係数は小さい程好ましいが、他の物性とのバランスを考慮して、20ppm/℃以上であってもよく、25ppm/℃以上であってもよい。
なお、ガラス転移温度及び熱膨張係数の測定方法は、実施例に記載のとおりIPC規格に準じて測定した値であり、積層板の作製方法は、実施例に記載の通りである。
【0112】
本発明の樹脂組成物から積層板を作製したとき、その10GHzでの誘電率は、3.85以下が好ましく、3.75以下がより好ましく、3.65以下がさらに好ましい。誘電率は小さいほど好ましいが、他の物性とのバランスを考慮して、0.5以上であってもよく、1以上であってもよく、3以上であってもよい。
本発明の樹脂組成物から積層板を作製したとき、その10GHzでの誘電正接は、0.007以下が好ましく、0.006以下がより好ましく、0.005以下がさらに好ましい。誘電正接は小さいほど好ましいが、他の物性とのバランスを考慮して、0.0001以上であってもよく、0.002以上であってもよく、0.004以上であってもよい。
なお、誘電率及び誘電正接は実施例に記載するように、JPCA-TM001(トリプレート共振器法)に準拠した値であり、積層板の作製方法は、実施例に記載の通りである。
【0113】
[プリプレグ]
本発明のプリプレグは、本発明の樹脂組成物とシート状繊維補強基材(以下、単に「基材」とも称する。)とを含有してなるものである。
本発明のプリプレグは、例えば、本発明の樹脂組成物を、基材に含浸又は塗工し、乾燥させて製造することができる。乾燥は、例えば、乾燥炉中、80~200℃の温度で、1~30分間加熱して、樹脂組成物を半硬化(Bステージ化)させればよい。乾燥後のプリプレグ中の樹脂組成物由来の固形分濃度は、30~90質量%が好ましい。固形分濃度が上記範囲内であると、積層板とした際、より良好な成形性が得られる傾向にある。
【0114】
基材としては、各種の電気絶縁材料用積層板用として公知のものが用いられる。基材の材質としては、Eガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラス等の無機物繊維;ポリイミド、ポリエステル、テトラフルオロエチレン等の有機繊維;これらの混合物などが挙げられる。基材の形状としては、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット、サーフェシングマット等が挙げられる。基材の厚さは、例えば、0.02~0.5mmである。樹脂組成物の含浸性、積層板とした際の耐熱性、耐吸湿性及び加工性の観点から、カップリング剤等で表面処理した基材、機械的に開繊処理を施した基材を使用してもよい。
【0115】
樹脂組成物を基材に含浸又は塗工させる方法としては、例えば、ホットメルト法、ソルベント法等を採用できる。ホットメルト法は、樹脂組成物に有機溶剤を含有させず、(1)該組成物との剥離性の良い塗工紙に一旦コーティングし、それを基材にラミネートする方法、又は(2)ダイコーターにより基材に直接塗工する方法である。一方、ソルベント法は、樹脂組成物に有機溶剤を含有させ、得られた樹脂組成物に基材を浸漬して、樹脂組成物を基材に含浸させ、その後、乾燥させる方法である。
【0116】
[積層板]
本発明の積層板は、本発明のプリプレグと金属箔とを含有してなるものである。本発明の積層板は、本発明のプリプレグと金属箔とを用いて製造することができる。より具体的には、例えば、本発明のプリプレグ1枚の片面もしくは両面に金属箔を配置するか、又は本発明のプリプレグを2枚以上重ねて得られるプリプレグの積層体の片面もしくは両面に金属箔を配置し、次いで加熱加圧成形することによって得ることができる。
金属箔としては、電気絶縁材料用途で用いられるものであれば特に制限されず、導電性の観点から、銅、金、銀、ニッケル、白金、モリブデン、ルテニウム、アルミニウム、タングステン、鉄、チタン、クロム、又はこれらの金属元素のうちの少なくとも1種を含む合金が好ましく、銅、アルミニウムがより好ましく、銅がさらに好ましい。
加熱加圧成形の条件は、例えば、温度が100℃~300℃、圧力が0.2~10.0MPa、時間が0.1~5時間の範囲とすることができる。また、加熱加圧成形は、真空プレス等を用いて真空状態を0.5~5時間保持する方法を採用してもよい。
【0117】
[多層プリント配線板]
本発明の多層プリント配線板は、本発明のプリプレグ又は積層板を含有してなるものである。本発明の多層プリント配線板は、本発明のプリプレグ又は積層板に対して、公知の方法によって、穴明け加工、金属めっき加工、金属箔のエッチング等による回路形成加工、多層化接着加工などを施すことによって製造することができる。
【0118】
本発明の樹脂組成物、樹脂フィルム、プリプレグ、金属張積層板及び多層プリント配線板は、1GHz以上の高周波信号を扱う電子機器に好適に用いることができ、特に10GHz以上の高周波信号を扱う電子機器に好適に用いることができる。
【0119】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、これらは本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態とは異なる種々の態様で実施することができる。
【実施例】
【0120】
以下、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0121】
[製造例A-1:ポリフェニレンエーテル誘導体(A-1)の製造]
温度計、還流冷却管、撹拌装置を備えた加熱及び冷却可能な容積2Lのガラス製フラスコ容器に、トルエン、数平均分子量が約16,000のポリフェニレンエーテル、及びp-アミノフェノールを投入し、90℃で撹拌しながら溶解した。
溶解したことを目視で確認後、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート及びナフテン酸マンガンを添加し、溶液温度90℃で4時間反応させた後、70℃に冷却して分子末端に第一級アミノ基を有するポリフェニレンエーテル化合物(A’)を得た。この反応溶液を少量取り出し、GPC測定(ポリスチレン換算、溶離液:テトラヒドロフラン)を行ったところ、p-アミノフェノールに由来するピークが消失し、かつポリフェニレンエーテル化合物の数平均分子量は約9,200であった。また少量取り出した反応溶液をメタノール/ベンゼン混合溶媒(混合質量比=1:1)に滴下し、再沈殿させて精製した固形分のFT-IR測定を行ったところ、3,400cm-1付近の第一級アミノ基由来のピークの出現が確認された。
【0122】
ここで、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレンを用いた検量線から換算した。検量線は、標準ポリスチレン:TSKstandard POLYSTYRENE(Type;A-2500、A-5000、F-1、F-2、F-4、F-10、F-20、F-40)[東ソー株式会社製、商品名])を用いて3次式で近似した。GPCの測定条件を、以下に示す。
装置:
ポンプ:L-6200型[株式会社日立ハイテクノロジーズ製]
検出器:L-3300型RI[株式会社日立ハイテクノロジーズ製]
カラムオーブン:L-655A-52[株式会社日立ハイテクノロジーズ製]
カラム:ガードカラム;TSK Guardcolumn HHR-L+カラム;TSKgel G4000HHR+TSKgel G2000HHR(すべて東ソー株式会社製、商品名)
カラムサイズ:6.0×40mm(ガードカラム)、7.8×300mm(カラム)
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:30mg/5mL
注入量:20μL
流量:1.00mL/分
測定温度:40℃
【0123】
次に、上記反応溶液に、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド及びプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて、撹拌しながら液温を昇温し、120℃で保温しながら4時間反応させた後、冷却及び200メッシュフィルターを通して濾過することにより、ポリフェニレンエーテル誘導体(A-1)の溶液((A)成分の濃度:35質量%)を製造した。この反応溶液を少量取り出し、上記同様に再沈殿、精製した固形物のFT-IR測定を行い、3,500cm-1付近の第一級アミノ基由来ピークの消失と、1,700~1,730cm-1のカルボニル基の出現が確認された。またこの固形物のGPC(上記と同条件)を測定したところ、数平均分子量は約9,400であった。
各成分の使用量を表1に示す。
【0124】
[製造例A-2~A-6:ポリフェニレンエーテル誘導体(A-2)~(A-6)の製造]
製造例A-1において、配合組成を表1に示す通りに変更した以外は、製造例A-1と同様にして、ポリフェニレンエーテル誘導体(A-2)~(A-6)を製造した。
【0125】
【0126】
表1における各材料の略号は、以下のとおりである。
(1)ポリフェニレンエーテル
・PPO640:ポリフェニレンエーテル(SABICイノベーティブプラスチックス社製)、数平均分子量=約16,000、商品名)
(2)アミノフェノール化合物(VIII)
・p-アミノフェノール:イハラケミカル工業株式会社製
・m-アミノフェノール:関東化学株式会社製
(3)ビスマレイミド化合物(IX)
・BMI-5100:3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、商品名(大和化成工業株式会社製)
・BMI-4000:2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、商品名(大和化成工業株式会社製)
・BMI-TMH:1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、商品名(大和化成工業株式会社製)
(4)反応触媒
・パーブチル(登録商標)I:t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート(日油株式会社製)
・ナフテン酸マンガン(和光純薬工業株式会社製)
(5)有機溶媒
・トルエン(関東化学株式会社製)
・プロピレングリコールモノメチルエーテル(関東化学株式会社製)
【0127】
[製造例B-1:ポリアミノビスマレイミド化合物(B-1)の製造]
温度計、還流冷却管、撹拌装置を備えた加熱及び冷却可能な容積1Lのガラス製フラスコ容器に、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルを投入し、液温を120℃に保ち、撹拌しながら3時間反応させた後、冷却及び200メッシュフィルターを通して濾過することにより、ポリアミノビスマレイミド化合物(B-1)の溶液を製造した。各成分の使用量を表2に示す。
【0128】
[製造例B-2~B-4:ポリアミノビスマレイミド化合物(B-2)~(B-4)の製造]
製造例B-1において、配合組成を表2に示す通りに変更した以外は、製造例B-1と同様にして、ポリアミノビスマレイミド化合物(B-2)~(B-4)を製造した。
【0129】
【0130】
表2における各材料の略号は、以下のとおりである。
(1)ポリマレイミド化合物(a)
・BMI-5100:3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、商品名(大和化成工業株式会社製)
・BMI-4000:2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、商品名(大和化成工業株式会社製)
(2)芳香族ジアミン化合物(b)
・BAPP:2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、商品名(和歌山精化工業株式会社製)
・ビスアニリン-P:4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、商品名(三井化学株式会社製)
・ビスアニリン-M:4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、商品名(三井化学株式会社製)
(3)シアネート樹脂
・BADCy:Primaset(登録商標)BADCy、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン(ロンザ社製)
(4)モノフェノール化合物
・p-(α-クミル)フェノール(三井化学ファイン株式会社製)
(5)反応触媒
・ナフテン酸マンガン(和光純薬工業株式会社製)
【0131】
[実施例1~8、比較例1~7:樹脂ワニスの調製]
各製造例で得られたポリフェニレンエーテル誘導体(A)の溶液に対して、ポリフェニレンエーテル誘導体(A)の濃度が表3に示す濃度になるよう、有機溶媒として、トルエンを所定量加えて混合し、樹脂ワニス1~15を得た。
【0132】
(ポリフェニレンエーテル誘導体(A)の析出性評価)
各例で得たポリフェニレンエーテル誘導体(A)の樹脂ワニスを25℃で静置し、溶液が濁るまで観察し、濁り始めるまでの時間を測定した。評価結果を表3に示す。
【0133】
【0134】
表3に示した結果から明らかなように、本発明の実施例で得られた樹脂ワニスは、ポリフェニレンエーテル誘導体(A)のポットライフ(析出性)が比較例よりも優れていることが分かる。
【0135】
次に、樹脂ワニス1~15を用いて樹脂組成物を調製し、これを評価した。
【0136】
[実施例9~53、比較例8~20:樹脂組成物の調製]
表4~8に記載の各成分を表4~8に記載の配合量(単位:質量部)に従って室温又は50~80℃で加熱しながら撹拌、混合して、固形分(不揮発分)濃度40~60質量%の樹脂組成物を調製した。ただし、樹脂ワニス1~15は1日保管後のものを使用した。
なお、無機充填材の配合量は、通常、樹脂組成物(無機充填材を除く)の密度が1.20~1.25g/cm3であり、用いた無機充填材の密度が2.2~3.01g/cm3であることから、これらの値を用いて体積濃度(体積%)に換算することができる。例えば、無機充填材を樹脂組成物(無機充填材を除く)100質量部に対して80質量部配合した場合、30~34体積%程度となる。
【0137】
<評価・測定方法>
各例で得られた樹脂組成物を用いて、下記方法に従って各測定及び評価を行った。結果を表4~8に示す。
【0138】
(1.樹脂組成物の相容性評価)
各例で得た樹脂組成物を調製当日及び25℃で5日間静置した後、160℃で10分間乾燥して有機溶媒を揮発させた後の外観をSEMで観察して、それぞれの相容性(巨視的(マクロ)な相分離及びムラの有無)を以下の基準に従い評価した。
A:巨視的(マクロ)な相分離及びムラがない。
C:巨視的(マクロ)な相分離又はムラがある。
【0139】
(2.プリプレグ及び銅張積層板の作製)
各例で得た樹脂組成物を、厚さ0.1mmのガラス布(Eガラス、日東紡績株式会社製)に塗工した後、160℃で7分間加熱乾燥して、樹脂組成物の含有量が約54質量%のプリプレグを作製した。これらのプリプレグ6枚を重ね、その上下に、厚さ18μmのロープロファイル銅箔(FV-WS、M面Rz:1.5μm、古河電気工業株式会社製)をM面が接するように配置し、温度230℃(ただし、比較例5~6は200℃)、圧力3.9MPa、時間180分間の条件で加熱加圧成形して、両面銅張積層板(厚さ:0.8mm)を作製した。
(2-1.プリプレグの外観評価)
上記で得られたプリプレグの外観を観察した。外観は目視により評価し、以下の基準に従い評価した。
A:外観上の異常がない。
C:プリプレグ表面に多少なりともムラ、スジ、発泡、相分離等があり、表面平滑性に欠ける。
(2-2.銅張積層板の特性評価)
上記で得られた銅張積層板について、以下に示す各評価を実施した。銅張積層板の特性評価方法は、以下のとおりである。
【0140】
(2-2-1)成形性
両面の銅箔をエッチングした積層板の外観を観察して成形性を評価した。成形性は目視により評価し、以下の基準に従い評価した。
A:外観上の異常がない。
C:多少なりともムラ、スジ、カスレ、ボイド等があり、表面平滑性に欠ける。
【0141】
(2-2-2)誘電特性(誘電率及び誘電正接)
銅張積層板を銅エッチング液である過硫酸アンモニウム(三菱ガス化学株式会社製)10質量%溶液に浸漬することにより銅箔を取り除いた評価基板から、2mm×85mmの評価基板を作製した。
該評価基板をJPCA-TM001(トリプレート共振器法)に準拠して、10GHz帯で測定した。
【0142】
(2-2-3)銅箔引きはがし強さ
銅箔引きはがし強さは、JIS C6481(1996年)に準拠して測定し、導体との接着性を測定した。
【0143】
(2-2-4)はんだ耐熱性
はんだ耐熱性は、両面の銅箔をエッチングした50mm角の試験片を用いて、常態及びプレッシャークッカーテスト(PCT)用装置(条件:121℃、2.2気圧)中に所定時間(1時間、3時間及び5時間)処理した後のものを、288℃の溶融はんだ中に20秒間浸漬した後の試験片の外観を目視観察した。なお、表中の数字は、はんだ浸漬後の試験片3枚のうち、積層板内に膨れ、ミーズリングの発生等の異常が認められなかったものの枚数を意味する。
【0144】
(2-2-5)ガラス転移温度(Tg)及び熱膨張係数
ガラス転移温度(Tg)と熱膨張係数(板厚方向、温度範囲:30~150℃)は、両面の銅箔をエッチングした5mm角の試験片を用いて、熱機械測定装置(TMA)[ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、Q400(型番)]により、IPC(The Institute for Interconnecting and Packaging Electronic Circuits)規格に準拠して、ガラス転移温度と熱膨張係数(線膨張係数)を測定した。
【0145】
(2-2-6)難燃性
銅張積層板を銅エッチング液である過硫酸アンモニウム(三菱ガス化学株式会社製)10質量%溶液に浸漬することにより銅箔を取り除いた評価基板から、長さ127mm及び幅12.7mmの試験片を切り出し、該試験片を用いて、UL94の試験法(V法)に準じて難燃性を試験及び評価した。
つまり、垂直に保持した試験片の下端に20mm炎による10秒間の接炎を2回行った。評価は、UL94のV法の基準に従って行った。
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
なお、表4~8における各材料の略号等は、以下のとおりである。
(1)熱硬化性樹脂(B)
・BMI-4000:2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(大和化成工業株式会社製、商品名)
・NC-3000H:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、商品名)
・NC-7000L:ナフトールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、商品名)
(2)スチレン系熱可塑性エラストマー(C)
・タフテック(登録商標)H1043:SEBS、スチレン含有率=67質量%(旭化成ケミカルズ株式会社製)
・タフテック(登録商標)H1051:SEBS、スチレン含有率=42質量%(旭化成ケミカルズ株式会社製)
・タフテック(登録商標)H1053:SEBS、スチレン含有率=29質量%(旭化成ケミカルズ株式会社製)
・タフテック(登録商標)H1052:SEBS、スチレン含有率=20質量%(旭化成ケミカルズ株式会社製)
・タフテック(登録商標)H1221:SEBS、スチレン含有率=12質量%(旭化成ケミカルズ株式会社製)
・タフテック(登録商標)M1911:SEBS、スチレン含有率=30質量%(旭化成ケミカルズ株式会社製)
・タフテック(登録商標)M1943:SEBS、スチレン含有率=20質量%(旭化成ケミカルズ株式会社製)
・タフテック(登録商標)P2000:SBBS、スチレン含有率=67質量%(旭化成ケミカルズ株式会社製)
・セプトン(登録商標)2002:SEPS、スチレン含有率=30質量%(株式会社クラレ製)
・セプトン(登録商標)2005:SEPS、スチレン含有率=20質量%(株式会社クラレ製)
・SMA(登録商標)EF-40(クレイバレーテクノロジーUSA社製)(スチレン含有率=80質量%)
・SMA(登録商標)EF-80(クレイバレーテクノロジーUSA社製)(スチレン含有率=89質量%)
なお、上記スチレン含有率は、製造会社のカタログ又はホームページに記載の値である。
(3)無機充填材(D)
・SC-2050 KNK:球状溶融シリカ、平均粒子径=0.5μm、表面処理:ビニルシランカップリング剤(1質量%/固形分)、分散媒:メチルイソブチルケトン、固形分濃度70質量%、密度2.2g/cm3(株式会社アドマテックス製、商品名)
(4)硬化促進剤(E)
・パーブチル(登録商標)P:α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(日油株式会社製、商品名)
・G-8009L:イソシアネートマスクイミダゾール(ヘキサメチレンジイソシアネート樹脂と2-エチル-4-メチルイミダゾールの付加反応物)(第一工業製薬株式会社製、商品名)
・ナフテン酸マンガン(和光純薬工業株式会社製)
(5)難燃剤(F)
・OP-935:ジアルキルホスフィン酸アルミニウム塩、2置換ホスフィン酸の金属塩、リン含有量:23.5質量%(クラリアント社製、商品名)
・HCA-HQ:10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、環状有機リン化合物、リン含有量:9.6質量%(三光株式会社製、商品名)
【0152】
表4~7から明らかなように、本発明の実施例に係る樹脂組成物は、相容性及びプリプレグの外観に優れ、これらを用いて作製した銅張積層板は、成形性、高周波特性(誘電特性)、導体との接着性、はんだ耐熱性、ガラス転移温度、熱膨張係数及び難燃性の全てにおいて良好であり、諸特性のバランスに優れている。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明の樹脂組成物は、原材料コスト及び基板材料の製造コストを低く抑えられ、更に作業環境性にも優れるため、この樹脂組成物を用いて提供されるプリプレグ及び積層板は、多層プリント配線板等の電子部品用途に好適に使用することができる。