(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】生体信号解析装置、生体信号解析方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/02 20060101AFI20220720BHJP
【FI】
A61B5/02 310Z
(21)【出願番号】P 2017137302
(22)【出願日】2017-07-13
【審査請求日】2020-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】船橋 一樹
(72)【発明者】
【氏名】吉井 雅子
【審査官】山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-104488(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0035304(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0081088(US,A1)
【文献】特開2016-002119(JP,A)
【文献】特開2016-043191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期性を有し、かつ、周期に揺らぎのある脈波信号を解析する生体信号解析装置であって、
前記脈波信号を示す第1信号を生成する第1信号生成部と、
前記第1信号の周波数スペクトルを算出する算出部と、
算出した周波数スペクトルに基づいて、前記第1信号における生体起因の周期の揺らぎのうち、0.15Hz以下の第1周波数帯における揺らぎ成分である第1揺らぎ成分を、前記第1信号のピーク周波数帯域とともに抽出する
第1抽出部と、
前記第1揺らぎ成分が抽出された信号の脈拍間隔を該脈拍間隔の所定の固定値に合うように前記第1信号のサンプリング周期を補正することにより前記第1揺らぎ成分を平坦化することで0.15Hzより高く、0.40Hz以下の第2周波数帯における生体起因の周期の揺らぎ成分である第2揺らぎ成分を示す信号値を抽出し、前記第2揺らぎ成分に起因するピークが強調された第2信号を生成する第2信号生成部と、
前記第2信号が有する振幅のノイズ成分を除去するノイズ除去部と、
前記ノイズ除去部によりノイズ成分が除去された信号に対して、第2信号生成部で平坦化された第1揺らぎ成分を付与する非平坦化処理部と
、
前記非平坦化処理部により第1揺らぎ成分が付与された信号から、少なくとも前記第2揺らぎ成分を抽出する第2抽出部と、
を備える生体信号解析装置。
【請求項2】
生体を撮像した画像データに基づいて、前記第1信号生成部は、前記第1信号を生成することを特徴とする
請求項1に記載の生体信号解析装置。
【請求項3】
生体に対して非接触であることを特徴とする
請求項1又は2に記載の生体信号解析装置。
【請求項4】
前記ノイズ除去部は、
前記第2信号に含まれる周波数成分を解析して、設定周波数帯以外の周波数帯に含まれる成分を除去し、
前記設定周波数帯は、
前記第2信号の基本波及び前記第1信号における周期の揺らぎのうち、前記第2周波数帯における揺らぎ成分である第2揺らぎ成分に起因するピークを、
少なくとも含むことを特徴とする
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の生体信号解析装置。
【請求項5】
前記設定周波数帯は、
前記基本波より0.15Hz乃至0.40Hz低い周波数帯域から最も振幅が大きい第2波と、前記基本波を中心に前記第2波と対称となる周波数帯域から第3波を含むことを特徴とする
請求項4に記載の生体信号解析装置。
【請求項6】
前記設定周波数帯は、
高調波に起因するピークを含むことを特徴とする
請求項4又は5に記載の生体信号解析装置。
【請求項7】
周期性を有し、かつ、周期に揺らぎのある脈波信号を解析する生体信号解析装置が行う生体信号解析方法であって、
生体信号解析装置が、前記脈波信号を示す第1信号を生成する第1信号生成手順と、
生体信号解析装置が、前記第1信号の周波数スペクトルを算出する算出手順と、
生体信号解析装置が、算出した周波数スペクトルに基づいて、前記第1信号における生体起因の周期の揺らぎのうち、0.15Hz以下の第1周波数帯における揺らぎ成分である第1揺らぎ成分を、前記第1信号のピーク周波数帯域とともに抽出する
第1抽出手順と、
生体信号解析装置が、前記第1揺らぎ成分が抽出された信号の脈拍間隔を該脈拍間隔の所定の固定値に合うように前記第1信号のサンプリング周期を補正することにより前記第1揺らぎ成分を平坦化することで0.15Hzより高く、0.40Hz以下の第2周波数帯における生体起因の周期の揺らぎ成分である第2揺らぎ成分を示す信号値を抽出し、前記第2揺らぎ成分に起因するピークが強調された第2信号を生成する第2信号生成手順と、
生体信号解析装置が、前記第2信号が有する振幅のノイズ成分を除去するノイズ除去手順と、
生体信号解析装置が、ノイズ成分が除去された信号に対して、第2信号生成手順で平坦化された第1揺らぎ成分を付与する非平坦化処理手順と
、
前記非平坦化処理手順により第1揺らぎ成分が付与された信号から、少なくとも前記第2揺らぎ成分を抽出する第2抽出手順と、
を含む生体信号解析方法。
【請求項8】
周期性を有し、かつ、周期に揺らぎのある脈波信号を解析するコンピュータに生体信号解析方法を実行させるプログラムであって、
コンピュータが、前記脈波信号を示す第1信号を生成する第1信号生成手順と、
コンピュータが、前記第1信号の周波数スペクトルを算出する算出手順と、
コンピュータが、算出した周波数スペクトルに基づいて、前記第1信号における生体起因の周期の揺らぎのうち、0.15Hz以下の第1周波数帯における揺らぎ成分である第1揺らぎ成分を、前記第1信号のピーク周波数帯域とともに抽出する
第1抽出手順と、
コンピュータが、前記第1揺らぎ成分が抽出された信号の脈拍間隔を該脈拍間隔の所定の固定値に合うように前記第1信号のサンプリング周期を補正することにより前記第1揺らぎ成分を平坦化することで0.15Hzより高く、0.40Hz以下の第2周波数帯における生体起因の周期の揺らぎ成分である第2揺らぎ成分を示す信号値を抽出し、前記第2揺らぎ成分に起因するピークが強調された第2信号を生成する第2信号生成手順と、
コンピュータが、前記第2信号が有する振幅のノイズ成分を除去するノイズ除去手順と、
コンピュータが、ノイズ成分が除去された信号に対して、第2信号生成手順で平坦化された第1揺らぎ成分を付与する非平坦化処理手順と
、
前記非平坦化処理手順により第1揺らぎ成分が付与された信号から、少なくとも前記第2揺らぎ成分を抽出する第2抽出手順と、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体信号解析装置、生体信号解析方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、生体から取得できる脈波等を解析して、生体の様々な状態を示す指標を評価する技術が知られている。例えば、指標は、脈拍数又は脈拍変動指標等である。
【0003】
また、脈拍変動指標は、脈拍のピーク間隔の揺らぎを評価する指標である。具体的には、脈拍変動指標には、0.04Hz(ヘルツ)乃至0.15Hz程度となる低周波成分の揺らぎを示すLF(Low Frequency)値、0.15Hz乃至0.40Hz程度となる高周波成分の揺らぎを示すHF(High Frequency)値及びLF値とHF値の比であるLF/HF値等の指標がある。そして、脈拍変動指標は、生体の自律神経の働きと関連するため、脈拍変動指標から、生体の自律神経の状態が評価できる。例えば、生体の自律神経の状態から、生体の疲れ又は病気等が把握できる。
【0004】
そして、まず、装置が、生体信号におけるピーク間隔の検出サンプル数を区間ごとにリサンプリングする。次に、装置が、リサンプリングされた信号を直交変換する。さらに、装置が、基本周波数成分及び高調波成分を抽出することで、ノイズとなる信号を確実に除去する方法が知られている(例えば、特許文献1等)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、高周波成分の揺らぎが精度良く抽出できない課題がある。
【0006】
本発明の1つの側面は、高周波成分の揺らぎを精度良く抽出することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様である、周期性を有し、かつ、周期に揺らぎのある脈波信号を解析する生体信号解析装置は、
前記脈波信号を示す第1信号を生成する第1信号生成部と、
前記第1信号の周波数スペクトルを算出する算出部と、
算出した周波数スペクトルに基づいて、前記第1信号における生体起因の周期の揺らぎのうち、0.15Hz以下の第1周波数帯における揺らぎ成分である第1の揺らぎ成分を、前記第1信号のピーク周波数帯域とともに抽出する第1抽出部と、
前記第1揺らぎ成分が抽出された信号の脈拍間隔を該脈拍間隔の所定の固定値に合うように前記第1信号のサンプリング周期を補正することにより前記第1の揺らぎ成分を平坦化することで0.15Hzより高く、0.40Hz以下の第2周波数帯における生体起因の周期の揺らぎ成分である第2の周期の揺らぎ成分を示す信号値を抽出し、前記第2揺らぎ成分に起因するピークが強調された第2信号を生成する第2信号生成部と、
前記第2信号が有する振幅のノイズ成分を除去するノイズ除去部と、
前記ノイズ除去部によりノイズ成分が除去された信号に対して、第2信号生成部で平坦化された第1揺らぎ成分を付与する非平坦化処理部と、
前記非平坦化処理部により第1揺らぎ成分が付与された信号から、少なくとも前記第2揺らぎ成分を抽出する第2抽出部と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
高周波成分の揺らぎが精度良く抽出できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る生体信号解析装置の一例を示す概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る生体信号解析装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る生体信号解析装置の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る生体信号解析装置による全体処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の一実施形態に係る生体信号解析装置による撮像例を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る生体信号解析装置による脈波信号の抽出例を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の一実施形態に係る脈波信号の一例を示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るSN比を計算する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の一実施形態に係るSN比の計算において算出されるパワースペクトルの一例を示す図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る閾値の設定例を示す図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る生体信号解析装置による制御の一例を示すタイミングチャートである。
【
図12】本発明の一実施形態に係る生体信号解析装置による脈波解析の一例を示すフローチャートである。
【
図13】本発明の一実施形態に係る生体信号解析装置による脈波変動指標の算出例を示すフローチャートである。
【
図14】本発明の一実施形態に係る生体信号解析装置による第1信号の周波数解析結果例を示す図である。
【
図15】本発明の一実施形態における高周波成分の揺らぎ及び低周波成分の揺らぎの例を示す図である。
【
図16】本発明の一実施形態に係る生体信号解析装置による脈拍間隔の検出例を示す図である。
【
図17】本発明の一実施形態に係る生体信号解析装置によるピーク時間の補正例を示す図である。
【
図18】本発明の一実施形態に係る平坦化の例を示す図である。
【
図19】本発明の一実施形態に係る第2信号の一例を示す図である。
【
図20】本発明の一実施形態に係る出力信号の一例を示す図である。
【
図21】本発明の一実施形態に係る効果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0011】
<生体信号解析装置例>
図1は、本発明の一実施形態に係る生体信号解析装置の一例を示す概略図である。
【0012】
本実施形態では、まず、生体信号解析装置の例である端末装置100は、カメラ等の撮像装置100H1を有する。そして、端末装置100は、撮像装置100H1によって、脈波等を測定する対象の生体1を撮像する。次に、撮像装置100H1が撮像した画像に基づいて、端末装置100は、生体1の脈波等を示す生体信号を取得する。
【0013】
<ハードウェア構成例>
図2は、本発明の一実施形態に係る生体信号解析装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図示するように、例えば、端末装置100は、撮像装置100H1と、CPU(Central Processing Unit)100H2と、記憶装置100H3と、入力装置100H4とを有する。さらに、端末装置100は、出力装置100H5と、I/F(interface)100H6とを有する。これらのハードウェアは、バス100H7によって接続される。
【0014】
撮像装置100H1は、例えば、カメラ、光センサ又はこれらの組み合わせである。以下、撮像装置100H1がカメラである例で説明する。また、この例では、カメラの色フィルタ構成は、例えば、R(Red)、G(Green)及びB(Blue)(以下「R」、「G」及び「B」で各色を示す場合がある。)の3チャンネルの色信号を出力できるベイヤ(Bayer)構成等である。なお、カメラの色フィルタ構成は、1チャンネル以上の色信号を出力できる構成であればよい。
【0015】
また、カメラは、脈拍に基づく輝度変化を取得できるチャンネルを有するのが望ましい。脈拍に基づく輝度変化は、例えば、「G」又は近赤外(NIR、Near-infrared)の光から取得しやすい。したがって、カメラは、近赤外のチャンネルを有してもよい。近赤外の光は、主に750nm(ナノメートル)乃至1.4μm(マイクロメートル)程度の波長である。
【0016】
なお、撮像装置100H1が有する撮像素子は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ等の光センサである。
【0017】
さらに、撮像装置100H1は、カメラ等に限られない。例えば、撮像装置は、光を測定する光センサ等でもよい。すなわち、光センサは、生体から反射する光を測定できるセンサ等である。
【0018】
以下、撮像装置100H1がカメラであって、RGB画像を出力する例で説明する。
【0019】
CPU100H2は、中央処理装置である。すなわち、CPU100H2は、処理を実現するための演算及びデータの加工等を行う演算装置並びにハードウェアを制御する制御装置である。また、CPU100H2は、記憶装置100H3等が記憶するプログラム等に基づいて、処理を実行する。
【0020】
記憶装置100H3は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read-Only Memory)、ハードディスク又はこれらの組み合わせである。すなわち、記憶装置100H3は、主記憶装置及び補助記憶装置等である。
【0021】
入力装置100H4は、ユーザによる操作を入力する装置である。例えば、入力装置100H4は、キーボード、マウス又はこれらの組み合わせ等である。
【0022】
出力装置100H5は、ユーザに対して画像、各種処理結果又はこれらの組み合わせ等を表示する装置である。例えば、出力装置100H5は、液晶ディスプレイ等である。
【0023】
なお、入力装置100H4及び出力装置100H5は、一体となっているタッチパネル等でもよい。
【0024】
I/F100H6は、外部装置と接続するためのインタフェースである。例えば、I/F100H6は、USB(Universal Serial Bus)等である。また、I/F100H6は、画像データ等を外部装置と入出力する。さらに、I/F100H6は、ネットワーク等を介して外部装置と通信を行って、データを送受信してもよい。
【0025】
また、I/F100H6は、記録媒体200等からプログラム等を入力する。
【0026】
このように、端末装置100は、スマートフォン又はPC(Personal Computer)等の情報処理装置であり、コンピュータである。なお、端末装置100は、情報処理装置と、情報処理装置に接続される撮像装置との組み合わせ等でもよい。
【0027】
<機能構成例>
図3は、本発明の一実施形態に係る生体信号解析装置の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。図示するように、端末装置100は、第1信号生成部100F1と、抽出部100F2と、第2信号生成部100F3と、ノイズ除去部100F4とを備える。
【0028】
第1信号生成部100F1は、撮像装置等の測定装置により取得される生体1の画像データ等のデータに基づいて、生体信号を示す第1信号を生成する第1信号生成手順を行う。
【0029】
抽出部100F2は、第1信号生成部100F1が生成する第1信号が有する低周波揺らぎ成分を抽出する抽出手順を行う。
【0030】
第2信号生成部100F3は、抽出部100F2が抽出する低周波揺らぎ成分を平坦化させて第2信号を生成する第2信号生成手順を行う。
【0031】
ノイズ除去部100F4は、第2信号生成部100F3が生成する第2信号が有するノイズ成分を除去するノイズ除去手順を行う。
【0032】
例えば、第1信号生成部100F1と、抽出部100F2と、第2信号生成部100F3と、ノイズ除去部100F4とは、CPU100H2等によって実現される。
【0033】
なお、端末装置100は、更に指標を計算する機能等を備えてもよい。
【0034】
<全体処理例>
図4は、本発明の一実施形態に係る生体信号解析装置による全体処理の一例を示すフローチャートである。図示するように、端末装置は、第1信号を生成するのに、ステップS03乃至ステップS05のように、撮像条件を調整して生体信号等を精度良く抽出できるようにするのが望ましい。以下、図示するように、撮像条件の変更等を行う場合を例に説明する。なお、図示するステップS01乃至ステップS02は、第1信号の生成例であり、第1信号は、図示する以外の処理によって生成されてもよい。
【0035】
<生体の撮像例>(ステップS01)
ステップS01では、端末装置は、生体を撮像する。例えば、ステップS01では、端末装置は、生体を撮像し、生体を示す画像データを生成する。例えば、端末装置は、30fps(フレーム毎秒)程度で撮像を行い、動画データを生成する。
【0036】
図5は、本発明の一実施形態に係る生体信号解析装置による撮像例を示す図である。端末装置は、生体1の部位のうち、図示する領域11が中心となるように撮像するのが望ましい。具体的には、領域11は、生体1の鼻及び頬を含む領域である。
【0037】
この領域11は、脈拍によって画素値が変化しやすい領域である。そのため、領域11を含む画像に基づいて指標が計算されると、脈波変動指標等が精度良く計算できる。
【0038】
さらに、領域11は、髪又は衣服等によって肌が隠れる場合が少ない領域である。したがって、領域11を含む画像に基づいて指標が計算されると、脈波変動指標等が精度良く計算できる。
【0039】
なお、端末装置は、脈拍による画素値の変化が観察できる領域であれば、領域11以外の領域を撮像してもよい。例えば、端末装置は、額又は指先等の部位を撮像してもよい。
【0040】
また、端末装置は、生体に対して非接触であるのが望ましい。
【0041】
<脈波信号の抽出例>(ステップS02)
図4に戻り、ステップS02では、端末装置は、脈波信号を抽出する。
【0042】
図6は、本発明の一実施形態に係る生体信号解析装置による脈波信号の抽出例を示すフローチャートである。図示する処理は、例えば、動画では、フレームごとに行われる。
【0043】
<顔における特徴点座標の算出例>(ステップS21)
ステップS21では、端末装置は、顔における特徴点座標を算出する。具体的には、まず、端末装置は、撮像された画像から、目、口及び鼻等の特徴点の座標を検出する。なお、各部位の検出は、例えば、公知の顔認証技術等によって実現できる。
【0044】
<脈波信号の抽出に用いる画素の領域の設定例>(ステップS22)
ステップS22では、端末装置は、脈波信号の抽出に用いる画素の領域を設定する。すなわち、端末装置は、領域11から脈波信号が抽出できるように、設定を行う。具体的には、端末装置は、ステップS21による算出結果に基づいて、生体の鼻及び頬を含む領域を設定する。また、この場合において、設定される領域は、目及び口が領域内に入らない程度に設定される。なお、領域の設定は、顔認証等に基づいて行われるに限られない。例えば、ユーザによる操作によって、領域の始点位置、幅及び高さ等が入力され、設定が行われてもよい。また、領域は、複数に分割されて設定されてもよい。例えば、領域は、鼻を含む領域と、左頬を含む領域と、右頬を含む領域とに分割されて設定されてもよい。
【0045】
<領域内の画素値の平均化例>(ステップS23)
ステップS23では、端末装置は、領域内の画素値を平均化する。具体的には、ステップS23では、端末装置は、ステップS22で設定される領域から生成される画像が有するR、G及びB等の画素値を平均化して、それぞれの平均値を計算する。
【0046】
生体の脈拍に起因する画素値の変化は、微小な変化である。そのため、1画素単位では、ノイズの影響が大きい。そこで、複数の画素が示すそれぞれの画素値を平均化すると、脈波信号に対するノイズの影響が低減できる。
【0047】
<脈波信号の生成例>(ステップS24)
ステップS24では、端末装置は、脈波信号を生成する。例えば、端末装置は、ステップS23で計算される平均値に基づいて、下記(1)式を計算して、脈波信号の値を生成する。
p0(n)=ar×r(n)+ag×g(n)+ab×b(n) (1)
上記(1)式では、「n」は、フレーム番号を示す値である。また、「r(n)」は、「n」フレーム目の画像が示すRの画素値である。同様に、「g(n)」は、「n」フレーム目の画像が示すGの画素値である。さらに、「b(n)」は、「n」フレーム目の画像が示すBの画素値である。
【0048】
また、上記(1)式では、「ar」は、Rに対する重みとなる係数である。同様に、「ag」は、Gに対する重みとなる係数である。さらに、「ab」は、Bに対する重みとなる係数である。
【0049】
例えば、「ar」、「ag」及び「ab」は、あらかじめ「ar=0」、「ag=1」、「ab=0」と設定されると、端末装置は、Gの成分だけを抽出した脈波信号を生成できる。生体の脈拍に起因する画素値の変化は、Gの成分から観察できる。したがって、上記のような設定とすると、端末装置は、生体の脈拍に起因する画素値の変化を観察しやすい脈波信号を生成できる。
【0050】
他にも、「ar」、「ag」及び「ab」は、あらかじめ「ar=-k」、「ag=1」、「ab=0」等と設定されてもよい。このような設定であると、脈波信号は、Gの成分から、「k」で補正されたRの成分を引いた値で生成される。このようにすると、端末装置は、Gの成分に含まれる体動等を起因とするノイズを低減させることができる。なお、ノイズは、例えば、周辺の光量の変化又は光源のちらつき等の周辺環境の変化が起因する場合もある。
【0051】
したがって、「k」は、ノイズとなる成分が少なくなるように設定される。なお、「k」は、正の値である。また、「k」は、例えば、フレームごとに設定されてもよい。
【0052】
また、領域が複数設定される場合がある。このような場合には、端末装置は、まず、領域ごとに、それぞれの脈波信号を生成する。そして、端末装置は、複数の脈波信号を合成して1つの脈波信号としてもよい。具体的には、端末装置は、加算平均等によって、複数の脈波信号を合成する。すなわち、端末装置は、領域ごとの脈波信号を平均して、合成してもよい。他にも、端末装置は、領域ごとの脈波信号に重み付けをして合成してもよい。
【0053】
図7は、本発明の一実施形態に係る脈波信号の一例を示す図である。図では、横軸は、経過時間である。一方で、縦軸は、信号値である。
【0054】
ステップS01、すなわち、
図6に示す処理が行われると、端末装置は、図示するような脈波信号を抽出できる。図示するように、脈波信号は、脈拍に応じて信号値が周期的に変化する時系列データである。
【0055】
なお、1フレームが「Δt」で一定、すなわち、「Δt」ごとに撮像が行われるとすると、時間は、「Δt×n」となる。「n」は、フレーム番号を示す値である。
【0056】
<SN比の計算例>(ステップS03)
図4に戻り、ステップS03では、端末装置は、SN比を計算する。
【0057】
例えば、端末装置は、脈波信号のパワースペクトルに基づいて、まず、信号成分となる「Vs」と、ノイズ成分となる「Vn」とを計算する。そして、「Vs」と、「Vn」との比を計算すると、端末装置は、SN比を計算できる。
【0058】
また、「Vs」は、例えば、信号成分となる周波数帯域を決定し、脈波信号のパワースペクトルにおいて、信号成分となる周波数帯域に出力されるパワーの平均値を計算すると特定できる。同様に、「Vn」は、例えば、ノイズ成分となる周波数帯域を決定し、脈波信号のパワースペクトルにおいて、ノイズ成分となる周波数帯域に出力されるパワーの平均値を計算すると特定できる。なお、SN比は、上記以外の方法によって計算されてもよい。
【0059】
図8は、本発明の一実施形態に係るSN比を計算する処理の一例を示すフローチャートである。
【0060】
<パワースペクトルの算出例>(ステップS31)
ステップS31では、端末装置は、パワースペクトルを算出する。具体的には、ステップS31では、まず、端末装置は、データ数が2の累乗となるように調整する。次に、端末装置は、調整されたデータに対して、高速フーリエ変換(FFT、Fast Fourier Transform)を行う。続いて、端末装置は、各周波数におけるパワーをそれぞれ算出する。
【0061】
図9は、本発明の一実施形態に係るSN比の計算において算出されるパワースペクトルの一例を示す図である。例えば、図示するグラフがステップS31によって生成される。なお、
図9では、縦軸は、パワーを示し、一方で、横軸は、周波数を示す。
【0062】
<脈波周波数の検出例>(ステップS32)
図8に戻り、ステップS32では、端末装置は、脈波周波数を検出する。以下、
図9に示すパワースペクトルがステップS31によって算出された例で説明する。この例では、脈波周波数Fpは、図示するように検出される。
【0063】
生体が安静状態であると、脈拍数は、1分当たり30乃至120回程度であることが多い。したがって、パワースペクトルでは、この脈拍数に応じた周期で、強いピークの基本波が検出される。すなわち、周波数が0.5乃至2.0Hzとなる帯域で、端末装置は、パワースペクトルにおいて、最もパワーが大きくなる周波数を検出する。このようにすると、端末装置は、脈波周波数Fpを図示するように検出できる。具体的には、
図9に示す例では、周波数が1.0Hz程度となる周波数で、強いピークが検出される。したがって、この例では、周波数が1.0Hz程度となる周波数が脈波周波数Fpと検出される。
【0064】
<信号及びノイズのそれぞれの周波数帯域の決定例>(ステップS33)
図8に戻り、ステップS33では、端末装置は、信号及びノイズのそれぞれの周波数帯域を決定する。例えば、信号成分の周波数帯域は、ステップS32で検出される脈波周波数を中心として決定される。具体的には、
図9では、信号成分の周波数帯域Fsは、「Fp-ΔF」乃至「Fp+ΔF」の帯域と決定される例である。なお、
図9では、「ΔF」は、0.2Hzと設定された例である。また、「ΔF」は、あらかじめ設定される値である。例えば、「ΔF」は、パワースペクトルのピーク形状等を考慮して設定される。また、信号成分の周波数帯域Fsには、脈波周波数Fpの整数倍の周波数に現れる高調波のピークを含む周波数帯域が含まれてもよい。
【0065】
一方で、ステップS33では、端末装置は、信号成分の周波数帯域Fs以外の周波数帯域をノイズ成分の周波数帯域Fnと決定する。ただし、脈波周波数Fpより低周波のパワーは、計測される際の生体の体動等によって影響を受ける。したがって、端末装置は、
図9に示すように、信号成分の周波数帯域Fsより高周波となる周波数帯域をノイズ成分の周波数帯域Fnと決定してよい。なお、ノイズ成分の周波数帯域Fnには、信号成分の周波数帯域Fsより低周波の周波数帯域が含まれてもよい。また、ノイズ成分の周波数帯域Fnの上限となる周波数は、(サンプリング周波数/2)である。すなわち、例えば、カメラのフレームレートが「30fps(フレーム/秒)」とすると、ノイズ成分の周波数帯域Fnの上限となる周波数は、「30Hz/2=15Hz」である。
【0066】
<SN比の計算例>(ステップS34)
ステップS34では、端末装置は、SN比を計算する。具体的には、ステップS34では、まず、端末装置は、ステップS33で決定される信号成分の周波数帯域と、ノイズ成分の周波数帯域とに基づいて、「Vs」及び「Vn」のパワーのそれぞれの平均値を計算する。次に、端末装置は、計算される「Vs」及び「Vn」の比を計算して、SN比を計算する。
【0067】
<SN比が閾値以上であるか否かの判断例>(ステップS04)
図4に戻り、ステップS04では、端末装置は、SN比が閾値以上であるか否かを判断する。すなわち、端末装置は、SN比と、あらかじめ設定される閾値とを比較して、SN比が閾値以上であるか否かを判断する。
【0068】
SN比が閾値以上である脈波信号であると、端末装置は、脈波信号に基づいて精度良く指標を計算できる。したがって、SN比が閾値未満となる小さい値である場合には、端末装置は、撮像条件の変更等の調整を行う。
【0069】
次に、SN比が閾値以上であると判断されると(ステップS04でYES)、端末装置は、ステップS06に進む。一方で、SN比が閾値以上ではないと判断されると(ステップS04でNO)、端末装置は、ステップS05に進む。なお、SN比が閾値以上でないと判断された場合には、端末装置は、アラーム等を表示して、処理を中止してからステップS05に進んでもよい。
【0070】
図10は、本発明の一実施形態に係る閾値の設定例を示す図である。なお、
図10は、SN比と、ピーク検出誤差との関係の一例を示す図である。
【0071】
図では、横軸は、SN比を示す。一方で、縦軸は、端末装置による解析によって検出されるピーク間隔と、接触式等の脈波を計測する装置によって検出されるピーク間隔、すなわち、真のピーク間隔との誤差を示す。
【0072】
図示するように、SN比が小さい値であると、ピーク検出誤差は、増大する関係となる。したがって、まず、端末装置は、ピーク検出誤差と、SN比との関係を示す関係式FRを算出する。なお、関係式FRは、例えば、各点に基づいて最小二乗法等によって算出される。
【0073】
次に、端末装置は、後段に行われる解析の目的等に合わせて、許容できるピーク検出誤差、すなわち、縦軸の値を決定する。続いて、端末装置は、関係式FRに基づいて、決定される縦軸の値に対する値を閾値THと決定する。このようにして、端末装置は、閾値THを設定する。また、この決定によって定まる閾値THがあらかじめ端末装置に設定され、ステップS04が行われる。
【0074】
<撮像条件の変更例>(ステップS05)
図4に戻り、ステップS05では、端末装置は、撮像条件を変更する。すなわち、端末装置は、SN比が改善するように、撮像条件を変更する。
【0075】
撮像条件は、例えば、照明の明るさ、撮像装置と生体の距離、露光時間等のカメラパラメータ又はこれらの組み合わせである。したがって、端末装置は、例えば、照明の明るさが不足していることを知らせるメッセージを表示する等によって、ユーザに撮像条件を変更させる操作を行わせる。他にも、例えば、端末装置は、露光時間を変更する制御を行う。
【0076】
図11は、本発明の一実施形態に係る生体信号解析装置による制御の一例を示すタイミングチャートである。以下、シャッタスピードの初期設定等によって定まる露光時間が
図11(A)に示す露光時間(以下「第1露光時間ET1」という。)である例で説明する。
【0077】
まず、初期設定等では、フレームレートが設定される。そして、フレームレートが定まると、サンプリング周期が定まる。以下、
図11(A)に示すサンプリング周期(以下「第1サンプリング周期ST1」という。)であるとする。なお、露光時間は、カメラのシャッタが切られ、光が取り込まれている時間、すなわち、露光が行われている時間である。
【0078】
次に、SN比が所定の閾値以上でないと判断されると、端末装置は、例えば、露光時間を
図11(B)に示す露光時間(以下「第2露光時間ET2」という。)に変更するように制御する。具体的には、端末装置は、シャッタスピードの設定値等を変更して露光時間が第2露光時間ET2となるように制御する。
【0079】
図示するように、第2露光時間ET2は、第1露光時間ET1と比較すると、長い時間である。このように、露光時間が長くなると、1フレームにおける受光量が増加するため、パワースペクトルにおいて信号成分が強くなる場合が多い。すなわち、露光時間が長くなると、SN比を大きい値にすることができる。また、SN比と、ピーク検出誤差との関係は、
図10に示す関係にあることが多いため、SN比を大きい値にすると、ピーク検出誤差を減少させることができる。したがって、端末装置は、露光時間を変更してSN比を大きい値にし、ピーク検出誤差を減少させることができる。
【0080】
また、端末装置は、脈波信号をサンプリングする周期の例であるフレームレートによって定まる周期を遅くしてもよい。
図11に示す例では、端末装置は、第1サンプリング周期ST1を
図11(B)に示すサンプリング周期(以下「第2サンプリング周期ST2」という。)に変更する制御を行う。露光時間は、1周期において、フレームレートによって定まる周期より、長く設定できない場合が多い。そこで、端末装置は、
図11(B)に示す第2サンプリング周期ST2のように、サンプリングする周期が長くなるようにフレームレート等を変更する制御を行う。例えば、変更前、すなわち、
図11(A)では、フレームレートが「60fps」であるとすると、端末装置は、フレームレートを「30fps」とする。このように、フレームレートを遅くすると、1周期において、第1露光時間ET1を第2露光時間ET2とするように、端末装置は、露光時間を長くできる。
【0081】
<脈波解析例>(ステップS06)
図4に戻り、ステップS06では、端末装置は、脈波を解析する。
【0082】
図12は、本発明の一実施形態に係る生体信号解析装置による脈波解析の一例を示すフローチャートである。
【0083】
<周波数スペクトルの算出例>(ステップS61)
ステップS61では、端末装置は、第1信号の周波数スペクトルを算出する。例えば、端末装置は、第1信号の例である脈波信号の時系列データに対して、種々のスペクトル解析手法を適用すると、周波数スペクトルを算出できる。
【0084】
具体的には、FFTを用いると、端末装置は、振幅の周波数分布を示す振幅スペクトル、位相の周波数分布を示す位相スペクトル又はパワーの周波数分布を示すパワースペクトル等の周波数スペクトルを算出できる。
【0085】
<脈拍間隔の低周波揺らぎ成分の抽出例>(ステップS62)
ステップS62では、端末装置は、ステップS61による周波数スペクトルの算出結果に基づいて、第1周波数帯における揺らぎ成分の例である脈拍間隔の低周波揺らぎ成分(以下「LF揺らぎ成分」という。)を抽出する。
【0086】
LF揺らぎ成分とは、脈拍間隔の時系列データからパワースペクトルを算出すると、所定の周波数以下の周波数帯に含まれる成分である。所定の周波数は、例えば、0.15Hzである。
【0087】
また、LF揺らぎ成分は、例えば、振幅スペクトル又はパワースペクトルに対して所定の周波数帯のみを通すバンドパスフィルタを適用すると、抽出できる。なお、バンドパスフィルタが通す周波数帯は、脈波ピークの周波数帯を中心として幅が「±Δf」となる範囲等に設定される。具体的には、「±Δf」は、LF揺らぎ成分を確実に抽出するため、所定の周波数(例えば、0.15Hzである。)以上の値が設定されるのが望ましい。LF揺らぎ成分による影響は、脈波ピークの幅の広がりとして現れる。したがって、脈波ピークの周波数帯を中心として幅が「±Δf」となる範囲に設定されたバンドパスフィルタを振幅スペクトル又はパワースペクトルに対して適用すると、端末装置は、LF揺らぎ成分を抽出できる。
【0088】
また、周波数スペクトルに白色ノイズによるオフセット成分等が含まれる場合には、端末装置は、スペクトルサブトラクション法(spectral subtraction method)等のノイズ除去法を組み合わせてもよい。
【0089】
<時系列データに逆変換する例>(ステップS63)
ステップS63では、端末装置は、ステップS62で抽出したLF揺らぎ成分の振幅スペクトルを時系列データに逆変換する。例えば、時系列データは、逆フーリエ変換(IFFT(Inverse FFT))等によって算出できる。この場合には、位相には、ステップS61におけるFFTで算出した位相が用いられるとよい。
【0090】
<脈拍間隔の検出例>(ステップS64)
ステップS64では、端末装置は、ステップS63で算出される脈波信号の時系列データから、脈拍間隔の時系列データを生成する。脈拍信号から検出した「m」番目の脈拍のピーク時間を「Tm」とし、ピーク時間「Tm」における脈拍間隔を「I(Tm)」とすると、脈拍間隔「I(Tm)」は、下記(2)式のように計算できる。
I(Tm)=Tm-Tm-1 (2)
また、上記(2)式におけるピーク時間「Tm」は、例えば、極大点LMが発生する時間である。例えば、端末装置は、信号値が極小となる時点と、次に信号値が極小となる時点との間において、信号値が最大となる時点を特定すると、極大点LMを特定できる。
【0091】
また、前の極大点LMが発生する時間である「Tm-1」からピーク時間「Tm」までが脈拍の1周期に相当する。さらに、極大点LMとなる時点は、光電式容積脈波計(PPG)で計測すると観察できる容積脈波の立ち上がり開始時点に相当する。
【0092】
なお、ピーク時間「Tm」は、極大点LMに基づいて計算されるに限られず、例えば、極小点に基づいて計算されてもよい。脈波信号が極小となる時点は、光電式容積脈波計で計測できる容積脈波の振幅が最大となる時点に相当する。
【0093】
また、脈拍のピーク時間は、補正されてもよい。補正例は、後述する。
【0094】
<脈拍間隔の低周波ゆらぎ成分を平坦化した第2信号の生成例>(ステップS65)
ステップS65では、端末装置は、抽出された脈波信号「p0(n)」と、ステップS64で算出した脈拍間隔の時系列データに基づいて、脈拍間隔の低周波ゆらぎ成分を平坦化して第2信号を生成する。第2信号を「p1(tn)」とし、第1信号を「p0(n)=p0(nΔt)」とすると、第2信号は、例えば、下記(3)式のように生成される。
p1(tn)=p0(nΔt)
tn=tn-1+Δtn=tn-1+Δt×(Iave/I(nΔt)) (3)
上記(3)式において、「Iave」は、脈拍間隔の平均値である。なお、「Iave」は、脈拍間隔の平均値に限られず、別の固定値でもよい。また、上記(3)式において、「I(nΔt)」は、経過時間「t=nΔt」における脈拍間隔である。例えば、「t=nΔt」が区間[Tm-1,Tm]に含まれる場合には、「I(Tm)」に「I(nΔt)」の値が用いられる。
【0095】
また、上記(3)式において、「p1(tn)」は、不等間隔「Δtn」でサンプリングされた信号である。したがって、「Δt」でリサンプリングすると、端末装置は、「p1(n)=p1(nΔt)」が得られる。なお、リサンプリングを実現する方法は、公知の方法等が用いられる。
【0096】
なお、LF揺らぎ成分を平坦化する方法は、上記の方法に限られず、他の方法でもよい。
【0097】
<周波数スペクトルの算出例>(ステップS66) ステップS66では、端末装置は、ステップS65で生成される第2信号「p1(t)」の周波数スペクトルを算出する。例えば、算出方法は、ステップS61と同様である。
【0098】
<ノイズ成分の除去例>(ステップS67)
ステップS67では、端末装置は、ステップS66で算出される振幅スペクトルから、脈波成分及びノイズ成分の周波数成分の違いを利用してノイズ成分を除去する。
【0099】
LF揺らぎ成分が平坦化されて生成される第2信号の振幅スペクトルを用いるため、脈波成分に起因するピークがはっきりと観測できる。そのため、従来ではノイズ成分と判別が難しい、第2周波数帯における揺らぎ成分の例である脈拍間隔の高周波揺らぎ成分(以下「HF揺らぎ成分」という。)のピークが、精度良く抽出できる。なお、HF揺らぎ成分とは、脈拍間隔の時系列データからパワースペクトルを算出すると、所定の周波数帯に含まれる成分である。所定の周波数帯は、例えば、0.15Hz乃至0.40Hzである。
【0100】
ノイズ成分を除去するには、例えば、所定の周波数帯の成分のみを通す周波数フィルタを適用する。また、周波数フィルタは、脈波信号の基本波及び高調波に起因するピークと、HF揺らぎ成分に起因するピークとを抽出できるように設計される。このような設計の周波数フィルタを振幅スペクトルに対して適用すると、HF揺らぎ成分を含む脈波成分を抽出し、ノイズ成分を除去できる。
【0101】
各ピークの周波数は、例えば、以下のような方法で計算される。
【0102】
脈波信号の基本波L1に起因するピークの周波数をf(L1)とすると、f(L1)は、所定の周波数帯において振幅が最大となる周波数である。この場合では、所定の周波数帯は、生体が取り得る脈拍の平均周波数に基づいて設定されるのが望ましい。例えば、生体が安静状態であると、所定の周波数帯は、0.5Hz乃至2.0Hzとなる。
【0103】
脈波信号の高調波は、L2、L3、・・・・とあり、各高調波のピークの周波数f(L2)、f(L3)、・・・・は、f(L1)を整数倍した周波数の近傍の周波数帯で振幅が最大となる周波数から特定できる。例えば、2次高調波L2に起因するピークの周波数f(L2)は、f(L1)×2Hzの近傍の周波数帯で振幅が最大となる周波数から特定できる。
【0104】
HF揺らぎ成分に起因するピークH1aの周波数f(H1a)は、(f(L1)-0.40)Hz乃至(f(L1)-0.15)Hzの周波数帯において振幅が最大となる周波数から特定できる。HF揺らぎ成分は、呼吸に起因する揺らぎ成分である。そして、揺らぎ成分の周波数Fhは、一般的に0.15Hz乃至0.40Hzの周波数帯に含まれる。さらに、HF揺らぎ成分に起因するピークは、基本波L1に起因するピークの周波数f(L1)を中心に低周波側と、高周波側とに、それぞれ揺らぎ成分の周波数Fh分離れた周波数付近に現れる。また、基本波L1に起因するピークの周波数f(L1)と、HF揺らぎ成分に起因するピークH1aの周波数f(H1a)との周波数差Δfrを特定すると、HF揺らぎ成分に起因するピークH1bの周波数f(H1b)は、f(L1)+Δfrと特定できる。
【0105】
各ピークを抽出できる周波数フィルタは、例えば、下記(4)式のようになる。
【0106】
【数1】
上記(4)式において、「s」は、次数を示す値である。また、「Δf'」は、HF揺らぎ成分に起因するピークの幅を考慮して、「Δf」を補正する値である。「Δf'」及び「Δf」は、「Δf'≧Δf」という関係になる。上記のようなフィルタを用いると、端末装置は、第2信号に含まれるノイズ成分を除去できる。なお、端末装置は、上記(4)式に示す以外のフィルタによってノイズを除去してもよい。例えば、周波数に応じて、上記(4)式における「1」及び「0」は、他の値でもよい。さらに、「Δf'」は、「s」の値、すなわち、高調波の次数によって変更されてもよい。
【0107】
<時系列データに逆変換する例>(ステップS68)
ステップS68では、端末装置は、ステップS67で抽出される脈波成分の振幅スペクトルを時系列データに逆変換する。例えば、変換方法は、ステップS63と同様である。
【0108】
<脈拍間隔の低周波ゆらぎ成分を非平坦化した脈波信号の生成例>(ステップS69)
ステップS69では、端末装置は、ステップS68で算出された脈波成分の時系列データ「p1'(n)」に対して、ステップS65で平坦化によって除去したLF揺らぎ成分を付与する非平坦化処理を行う。
【0109】
非平坦化した脈波信号を「Δt」の間隔でサンプリングした時系列データを「p2(n)」とすると、「p2(n)」は、下記(5)式のようになる。
p2(n)=p2(nΔt)=p1'(tn) (5)
なお、経過時間「t=tn」における信号値は、例えば、補間によって求まる。補間の方法は、例えば、線形補間又はスプライン補間等である。
【0110】
<指標の計算例>(ステップS07)
図4に戻り、ステップS07では、端末装置は、ステップS06でノイズ成分が除去された脈波信号を用いて脈波指標を計算する。
【0111】
図13は、本発明の一実施形態に係る生体信号解析装置による脈波変動指標の算出例を示すフローチャートである。
【0112】
<脈拍間隔の検出例>(ステップS71)
ステップS71では、端末装置は、ステップS06でノイズ成分が除去された脈波信号から脈拍間隔を検出する。例えば、検出方法は、ステップS64と同様である。
【0113】
<リサンプリング例>(ステップS72)
ステップS72では、端末装置は、脈拍間隔の時系列データにおいて、時間間隔が等間隔となるようにリサンプリングを行う。リサンプリングの時間間隔は、例えば、0.25秒とする。また、リサンプリングする経過時間における信号値は、例えば、補間によって求められる。補間方法は、例えば、線形補間又はスプライン補間等である。
【0114】
<パワースペクトルの算出例>(ステップS73)
ステップS73では、端末装置は、ステップS72で算出した脈拍間隔の時系列データからパワースペクトルを算出する。例えば、パワースペクトルの算出方法は、既知の周波数解析手法等である。具体的には、最大エントロピー法によって、指定の周波数におけるパワーが算出できる。なお、ラグ等のパラメータは、あらかじめ設定される。
【0115】
<脈拍変動指標の算出例>(ステップS74)
ステップS74では、端末装置は、ステップS73で算出したパワースペクトルに基づいて、脈拍変動指標を算出する。例えば、脈拍変動指標は、既知の方法で算出される。具体的には、端末装置は、0.04Hz乃至0.15Hzの周波数帯におけるパワー積分値をLF値、0.15Hz乃至0.40Hzの周波数帯におけるパワー積分値をHF値とし、これらの比を計算してLF/HF値を算出する。
【0116】
<処理結果例>
まず、
図7に示すような脈波信号が、脈波解析の対象となる。そして、周波数スペクトルの算出が行われると(ステップS61)、例えば、以下のような結果が得られる。
【0117】
図14は、本発明の一実施形態に係る生体信号解析装置による第1信号の周波数解析結果例を示す図である。図は、脈波信号に対してFFTを行った結果である。図では、横軸は、周波数であり、縦軸は、各周波数の振幅スペクトルである。
【0118】
脈波信号は、生体が取り得る脈拍の周波数帯に、ピークが発生する。例えば、生体が安静状態であると、脈拍の平均周波数は、0.5Hz乃至2.0Hzであるため、この範囲にピークが発生しやすい。図示する例は、1.0Hz付近に最も強いピークが発生した例である。なお、ピークは、図示するように、1.0Hz付近に限られず、例えば、生体の状態等によって、ピークが発生する周波数帯は異なる。
【0119】
以下、脈波によるピークが含まれる成分を「脈波ピーク成分PK1」という。一方で、脈波信号には、ノイズ成分NZが含まれる場合が多い。
【0120】
図15は、本発明の一実施形態における脈拍間隔の高周波の揺らぎ成分及び低周波の揺らぎ成分の例を示す図である。例えば、
図15(A)に示すような脈波信号には、
図15(B)に示すようなLF揺らぎ成分と、
図15(C)に示すようなHF揺らぎ成分とが含まれる。
【0121】
図示するように、脈波信号の脈拍間隔には、
図15(B)に示すようなLF揺らぎ成分FKLが発生する場合がある。したがって、LF揺らぎ成分FKLによって、ピーク間隔は、時間の経過において、長くなったり、短くなったりする。
【0122】
同様に、脈波信号の脈拍間隔には、
図15(C)に示すようなHF揺らぎ成分FKHが発生する場合がある。したがって、HF揺らぎ成分FKHによって、ピーク間隔は、時間の経過において、長くなったり、短くなったりする。
【0123】
LF揺らぎ成分FKLは、脈拍間隔の時系列データのパワースペクトルを算出すると、所定の周波数以下の周波数帯域に含まれる成分である。
【0124】
LF揺らぎ成分FKLは、脈波ピーク成分PK1の近傍の周波数に現れる。すなわち、揺らぎがあると、ピーク間隔が広くなったり、狭くなったりするため、ピークが現れる周波数がばらついて幅が生じる。
【0125】
図16は、本発明の一実施形態に係る生体信号解析装置による脈拍間隔の検出例を示す図である。まず、上記の通り、逆フーリエ変換等が行われると(ステップS63)、図示するような時系列データが得られる。
【0126】
また、脈拍間隔は、揺らぎがあると、図示するように、一定でなく、変動する。具体的には、揺らぎによって、例えば、脈拍間隔「I(Tm+1)」のように、間隔が長くなったり、脈拍間隔「I(Tm)」のように、間隔が短くなったりする。
【0127】
LF揺らぎ成分は、ピーク間隔の揺らぎの周期が例えば10秒程度の周期になる。そして、脈拍間隔は、LF揺らぎ成分の影響により変動する。また、HF揺らぎ成分は、ピーク間隔の揺らぎの周期が例えば3乃至4秒程度の周期になる。そして、脈拍間隔は、HF揺らぎ成分の影響により変動する。なお、これらの値は、個人差がある。
【0128】
なお、端末装置は、ステップS64及びステップS71において脈拍間隔を検出するとき、脈拍信号のピーク時間を補正してもよい。
【0129】
図17は、本発明の一実施形態に係る生体信号解析装置によるピーク時間の補正例を示す図である。図示する補正は、いわゆる折れ線近似である。以下、補正によるピーク間隔の補正量をピーク補正量「ΔT」とする。また、計測される信号値のうち、ピークとなる時点の信号値を第1信号値「P
i」とする。さらに、第1信号値P
iより1つ前のピークとなる信号値を第2信号値「P
i-1」とする。同様に、第1信号値P
iより1つ後のピークとなる信号値を第3信号値「P
i+1」とする。この場合には、ピーク補正量「ΔT」は、図示する式等によって計算される。
【0130】
図示する式によって、ピーク補正量「ΔT」が計算されると、ピーク補正量「ΔT」は、信号値が計測される間隔「Δt」より短い値にできるため、端末装置は、信号の時間分解能を高くできる。すなわち、ピーク時間を補正して、補正ピーク時間「T'm」を用いると、端末装置は、ピーク時間を精度良く検出できる。そのため、端末装置は、時間分解能が低い信号からでも、補正ピーク時間「T'm」を用いることで、脈拍間隔を精度良く算出できる。
【0131】
なお、算出した脈拍間隔に高周波成分が含まれる場合には、端末装置は、フィルタリングによって高周波成分を除去するのが望ましい。
【0132】
図18は、本発明の一実施形態に係る平坦化の例を示す図である。図は、低周波成分のみを示す図である。上記のように、平坦化が行われると、例えば、図示するようにLF揺らぎ成分FKLがほぼない状態が得られる。このような平坦化が行われると、
図15(B)に示すようなLF揺らぎ成分FKLが平坦化され、一方で、
図15(C)に示すようなHF揺らぎ成分FKHは、そのままとなる。
【0133】
図19は、本発明の一実施形態に係る第2信号の一例を示す図である。まず、第2信号は、例えば、図示するような周波数特性となる信号である。
【0134】
図示するように、まず、所定の周波数帯において最も振幅が大きい周波数成分を特定すると、端末装置は、基本波L1を特定できる。なお、所定の周波数帯は、生体が取り得る脈拍の平均周波数に基づき設定すればよい。例えば、生体が安静状態の場合は、0.5Hz乃至2.0Hzを所定の周波数帯として用いることができる。
【0135】
一方で、第2波の例であるHF揺らぎ成分に起因するピークH1a及び第3波の例であるHF揺らぎ成分に起因するピークH1b、すなわち、HF揺らぎ成分FKHによる周波数成分は、基本波L1より振幅が小さい周波数成分である。特に、HF揺らぎ成分に起因するピークH1bは、図示するように、ノイズ成分等と切り分けが難しい程度の振幅であることが多い。
【0136】
そこで、まず、図示するように、端末装置は、HF揺らぎ成分に起因するピークH1aを特定する。具体的には、端末装置は、例えば、(基本波の周波数f(L1)-0.40Hz)乃至(基本波の周波数f(L1)-0.15Hz)の周波数帯域において、最も振幅が大きい周波数成分を特定すると、端末装置は、HF揺らぎ成分に起因するピークH1aを特定できる。
【0137】
そして、HF揺らぎ成分に起因するピークH1bは、基本波L1を中心にHF揺らぎ成分に起因するピークH1aと対称となる周波数帯域に発生する性質がある。そこで、あらかじめ特定されるHF揺らぎ成分に起因するピークH1bと基本波L1を中心に対称となる周波数帯域を特定すると、端末装置は、HF揺らぎ成分に起因するピークH1bを特定しやすい。
【0138】
具体的には、基本波L1と、HF揺らぎ成分に起因するピークH1aとの周波数差を「Δfr」とすると、端末装置は、基本波L1より高い周波数帯域において、「Δfr」分の周波数差がある周波数帯域、すなわち、「基本波の周波数f(L1)+Δfr」となる周波数帯域を特定すると、HF揺らぎ成分に起因するピークH1bを特定できる。
【0139】
また、基本波L1の整数倍となる周波数成分を含む周波数帯域にも、同様の周波数成分が発生することが多い。例えば、整数倍となる周波数成分を含む周波数帯域は、2次高調波L2及び3次高調波L3等である。
【0140】
したがって、端末装置は、基本波L1、HF揺らぎ成分に起因するピークH1a、HF揺らぎ成分に起因するピークH1b、2次高調波L2及び3次高調波L3の周波数帯域以外の周波数帯域を少なくともフィルタリングすると、ノイズ成分を除去できる。
【0141】
なお、2次高調波L2及び3次高調波L3を特定し、「Δfr」に基づいて、図示するように、2次高調波L2及び3次高調波L3等でも、HF揺らぎ成分に起因するピークが特定されてもよい。図示する例では、2次高調波L2及び3次高調波L3の周波数から、高周波側及び低周波側に、「Δfr」分の周波数差がある周波数帯域に所定値以上の振幅がある場合には、2次高調波L2及び3次高調波L3等にも、HF揺らぎ成分に起因するピークがあるとする。なお、所定値は、あらかじめ設定される値である。このような場合には、2次高調波L2及び3次高調波L3に対するHF揺らぎ成分に起因するピークが含まれる周波数帯は、フィルタリングの対象外とする。
【0142】
したがって、図示する例では、端末装置は、設定周波数帯以外の周波数帯の例であるフィルタリング領域FLTをフィルタリングしてノイズ成分を減衰させる。
【0143】
図20は、本発明の一実施形態に係る出力信号の一例を示す図である。例えば、
図7に示すような第1信号に対して、
図12に示すような処理が行われると、端末装置は、図示するような出力信号を生成できる。すなわち、端末装置は、第2信号に含まれるノイズ成分を除去すると、図示するような出力信号を生成できる。
【0144】
<効果例>
図21は、本発明の一実施形態に係る効果の一例を示す図である。まず、仮に、LF揺らぎ成分FKLがなく、かつ、HF揺らぎ成分FKHがないとすると、脈波信号は、
図21(A)のような周波数特性となる。図示するように、脈波信号は、脈拍の一定な動作による周波数(以下「基本周波数BF」という。)が主な成分となる信号となる。
【0145】
一方で、実際には、脈波信号には、LF揺らぎ成分FKLがある。したがって、LF揺らぎ成分FKLによって、
図21(B)のような周波数特性となる場合が多い。図示するように、脈拍間隔の低周波成分は、基本周波数BFのピークの広がりとして現れる。
【0146】
さらに、HF揺らぎ成分FKHがある。したがって、脈波信号は、例えば、
図21(C)のような周波数特性となる信号である。
図21(B)と比較すると、HF揺らぎ成分FKHの成分が加わる点が異なる。図示するように、HF揺らぎ成分FKHが加わる場合は、基本周波数BFの前後となる周波数帯域にピークが発生しやすく、基本周波数BFにおける振幅と比較すると、ピークにおける振幅が弱い場合が多い。このときの脈波信号の振幅スペクトルの例が
図14である。図示するように、脈波信号にノイズ成分があると、HF揺らぎ成分FKHの成分は、ノイズ成分との判別が困難になる場合が多い。
【0147】
そこで、端末装置は、HF揺らぎ成分FKHを正確に検出するために、LF揺らぎ成分FKLを平坦化し、HF揺らぎ成分FKHが保存された第2信号を生成する。第2信号は、例えば、
図19に示すような周波数特性となる。図示するように、LF揺らぎ成分FKLの平坦化によって、HF揺らぎ成分FKHに起因するピークが強調されて現れる。したがって、出力信号では、HF揺らぎ成分FKHの成分がノイズ成分に埋もれにくい。ゆえに、端末装置は、出力信号から、HF揺らぎ成分FKHの成分を精度良く抽出することができる。
【0148】
<その他の実施形態>
また、本発明に係る実施形態は、生体を撮像した画像データ以外のデータに基づいて第1信号が生成されてもよい。例えば、生体の一部に対して光を照射して、透過した光又は反射した光によって脈波を測定する装置等のような非接触式の測定装置が生成するデータが用いられてもよい。さらに、パッド等を生体に取り付けることで脈波を測定する装置等のような接触式の測定装置が生成するデータが用いられてもよい。
【0149】
また、本発明に係る実施形態は、周期性を有する信号であればどのような生体信号に対しても適用可能である。例えば、接触式の測定装置によって取得された心電信号に対して適用することができる。
【0150】
また、本発明に係る実施形態は、本発明の一実施形態に係る処理が、プログラムに基づいて情報処理装置又は情報処理システムによって実行されることで実現されてもよい。すなわち、本発明に係る実施形態は、生体信号解析方法をコンピュータに実行させるためのプログラム等によって実現されてもよい。なお、プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体等に記憶されてコンピュータにインストールされる。
【0151】
さらに、本発明に係る実施形態は、1以上の情報処理装置を有する生体信号解析システムによって実現されてもよい。
【0152】
なお、生体信号解析システムは、処理を冗長、分散又は並列して行ってもよい。
【0153】
以上、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形又は変更が可能である。
【符号の説明】
【0154】
1 生体
100 端末装置
100H1 撮像装置
NZ ノイズ成分
FKL LF揺らぎ成分
FKH HF揺らぎ成分
L1 基本波
L2 2次高調波
L3 3次高調波
【先行技術文献】
【特許文献】
【0155】