(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッドの洗浄装置及び液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20220720BHJP
【FI】
B41J2/165 101
B41J2/165 303
B41J2/165 307
(21)【出願番号】P 2018015320
(22)【出願日】2018-01-31
【審査請求日】2020-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】大西 雅志
【審査官】小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-137266(JP,A)
【文献】特開2005-238611(JP,A)
【文献】特開2010-274533(JP,A)
【文献】特開2011-126130(JP,A)
【文献】特開2015-033790(JP,A)
【文献】特開2017-140755(JP,A)
【文献】特開2016-002721(JP,A)
【文献】特開2016-215448(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0081050(US,A1)
【文献】特開2013-215910(JP,A)
【文献】特開2007-223185(JP,A)
【文献】特開2018-16039(JP,A)
【文献】特開2018-149761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出ヘッドのノズル面に対して相対的に移動可能なキャップと、
洗浄液を含み、前記キャップの移動方向と交差する方向に移動可能な洗浄部材と、を有し、
前記洗浄部材は、前記キャップと離れた状態で、前記キャップの移動方向に移動可能であり、前記洗浄液を含んだ前記洗浄部材を前記ノズル面に押し当て
、
前記洗浄部材が前記キャップの移動方向において前記液体吐出ヘッドと前記キャップとの間にあるとき、前記キャップが前記ノズル面に向かって移動することを特徴とする液体吐出ヘッドの洗浄装置。
【請求項2】
前記洗浄部材が前記ノズル面及び前記キャップに当接したとき、前記洗浄部材に含まれた前記洗浄液が前記ノズル面に付着し、前記キャップに付着した汚れが前記洗浄部材に付着することを特徴とする請求項
1に記載の液体吐出ヘッドの洗浄装置。
【請求項3】
前記ノズル面を払拭する払拭部材を有し、
前記洗浄部材を前記ノズル面に押し当てた後、前記払拭部材によりノズル面を払拭することを特徴とする請求項
1に記載の液体吐出ヘッドの洗浄装置。
【請求項4】
前記払拭部材は、液体を吸収するインク吸収材又はブレード材により形成されていることを特徴とする請求項
3に記載の液体吐出ヘッドの洗浄装置。
【請求項5】
前記洗浄部材が着脱可能であることを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの洗浄装置。
【請求項6】
前記洗浄部材に洗浄液を供給する洗浄液供給機構を有することを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの洗浄装置。
【請求項7】
前記洗浄液供給機構は、前記洗浄部材のうち前記ノズル面に接する側の面に洗浄液を供給することを特徴とする請求項
6に記載の液体吐出ヘッドの洗浄装置。
【請求項8】
請求項1乃至
7のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドの洗浄装置を備えた液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッドの洗浄装置及び液体を吐出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットプリンタ等の液体を吐出する装置では、液体吐出ヘッドのメンテナンス性向上のために液体吐出ヘッドのノズル面に洗浄液を塗布する技術がある。また、ノズル面をキャッピングするキャップのニップ部に付着した汚れを払拭する技術も開示されている(特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら従来の構成では、ニップ部に付着したインクを吸収するために洗浄部材を設けつつ、ノズル面に洗浄液を塗布するために別の払拭部材を設ける必要があり、構造が複雑化したり、メンテナンスに時間がかかるという課題があった。
【0004】
そこで本発明は、低コストでメンテナンス効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明は、液体吐出ヘッドのノズル面に対して相対的に移動可能なキャップと、洗浄液を含み、前記キャップの移動方向と交差する方向に移動可能な洗浄部材と、を有し、前記洗浄部材は、前記キャップと離れた状態で、前記キャップの移動方向に移動可能であり、前記洗浄液を含んだ前記洗浄部材を前記ノズル面に押し当て、前記洗浄部材が前記キャップの移動方向において前記液体吐出ヘッドと前記キャップとの間にあるとき、前記キャップが前記ノズル面に向かって移動することを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、低コストでメンテナンス効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】(A)は、液体吐出ヘッドとキャップとを示す説明図、同図(B)は、液体吐出ヘッドのノズル面の様子を示す説明図である。
【
図2】(A)~(E)は、キャップから液体吐出ヘッドのノズル面にインクが転写して固着堆積するメカニズムについて示す説明図である。
【
図3】液体吐出ヘッドのノズル面の様子を示す図である。
【
図4】(A)は、キャップに付着したインクの吸収動作を開始する前の様子を示す図、(B)は、洗浄部材を吸収待機位置に移動させた様子を示す図、(C)は、吸収待機位置に移動させた洗浄部材にキャップを押し当てた様子を示す図、(D)は、キャップを下降移動させた様子を示す図である。
【
図5】(A)は、液体吐出ヘッドのノズル面への洗浄液塗布動作を開始する前の様子を示す図、(B)は、その洗浄液塗布動作途中の様子を示す図、(C)は、洗浄液を液体吐出ヘッドのノズル面に塗布した様子を示す図、(D)は、キャップを下降移動させて洗浄部材から離間させた様子を示す図である。
【
図6】(A)は、液体吐出ヘッド10のノズル面への洗浄液の塗布動作を開始する前の様子を示す図、同図(B)は、洗浄部材を吸収待機位置に移動した様子を示す図である。また、同図(C)は、洗浄部材を液体塗布位置に移動しかつキャップを液体吸収位置に移動した様子を示す図、同図(D)は、洗浄部材とキャップを下降移動させた様子を示す図である。
【
図7】一例に係る払拭機構の概略構成を示す説明図である。
【
図8】他例に係る払拭機構の概略構成を示す説明図である。
【
図10】一実施形態に係る液体を吐出する装置の要部平面説明図である。
【
図11】同上の液体を吐出する装置の要部側面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明について図面を参照して説明する。
図1(A)は、液体吐出ヘッドとキャップとを示す説明図、同図(B)は、液体吐出ヘッドのノズル面の様子を示す説明図である。
【0009】
図1(A)、(B)において、符号10は液体吐出ヘッド、また、符号20は液体を吸引するためのキャップをそれぞれ示している。なお、本実施形態においては、「液体」として「インク」を例として説明するが、これに限るものではない。
同図(B)に示すように、上記液体吐出ヘッド10のノズル面10aには、インクを吐出するためのノズル11、11が互いに所要の間隔をおいて列設されている。
【0010】
キャップ20は、上記ノズル面10aのノズル11、11を囲繞する大きさに開口したニップ部20aを起立して連成され、かつ、そのニップ部20aの端部20bがノズル面10aに当接(接触)するように昇降自在に支持されている。換言すると、キャップ20は、液体吐出ヘッド10のノズル面10aに対して相対的に移動可能になっている。
【0011】
上記キャップ20には、液体吐出ヘッド10のノズル11、11からインクを吸引するための吸引用ポンプPが接続され、そのキャップ20の内部に貯留された所要量のインクを吸引排出するようになっている。
【0012】
一例に係る液体吐出ユニットAは、前述した液体吐出ヘッド10及びインクを貯留するための後述するヘッドタンク441を一体にして搭載したものである。
一実施形態に係る液体吐出ヘッドの洗浄装置Cは、上記したキャップ20と洗浄部材30を有するとともに、移動機構40及び洗浄液供給機構50を具備した構成となっている。
【0013】
液体吐出ヘッドの洗浄装置Cは、キャップ20が、洗浄液を含んだ洗浄部材30を上記ノズル面10aに押し当てる機能を有するものである。
【0014】
洗浄部材30は、本実施形態においてはインクを吸収する多孔質材からなり、上記ノズル面10aとほぼ同じ面積にした平板形に形成されている。そして、洗浄液を含み、上記キャップ20の移動方向と交差する方向に移動可能になっている。
【0015】
移動機構40は、洗浄部材30を吸収待機位置(ア)、洗浄液供給位置(イ)及び液体塗布位置(ウ)に適宜移動させるとともに、洗浄液を供給された洗浄部材30と液体吐出ヘッド10のノズル面10aとを相対的に押し当てる機能を有している。
【0016】
換言すると、液体吐出ヘッド10とキャップ20との間に洗浄部材30を移動可能にし、また、キャップ20の移動方向において、前記液体吐出ヘッド10と前記キャップ20との間にあるとき、前記キャップ20が前記ノズル面10aに向かって移動する。なお、洗浄部材30と液体吐出ヘッド10の移動を、それぞれ別の機構によって行わせてもよいことは勿論である。
【0017】
吸収待機位置(ア)は、液体吐出ヘッド10のノズル面10aに対向し、かつ、そのノズル面10aから図示下方に離間した位置である。
洗浄液供給位置(イ)は、ノズル面10aから離間した一側方の位置であり、この位置において洗浄液供給機構50から洗浄液Wを供給されるようになっている。
液体塗布位置(ウ)は、上記供給された洗浄液Wを含む洗浄部材30をノズル面10aに押し当てる位置である。
【0018】
洗浄液供給機構50は、上記洗浄液供給位置(イ)に移動されている洗浄部材30に洗浄液を供給するためのものであり、洗浄部材30に洗浄液Wを滴下するための供給パイプ51を延設している。すなわち、洗浄部材30のうち前記ノズル面10aに接する側の面に洗浄液を供給している。
【0019】
図2(A)~(E)は、キャップ20からノズル面10aにインクが転写して固着堆積するメカニズムについて示す説明図である。なお、
図2(A)は、キャップ20を退避させている様子を示す図、同図(B)は、液体吐出ヘッド10にキャップ20を当接している様子を示す図である。また、同図(C)は、キャップ20のニップ部20aの端部20bにインクIaが付着している様子を示す図、同図(D)は、インクが付着したニップ部20aの端部20bを液体吐出ヘッド10に接触した状態を示す図である。そして、同図(E)は、ニップ部20aの端部20bに付着していたインクIaが液体吐出ヘッド10に転着した様子を示す図である。なお、
図3は、液体吐出ヘッドのノズル面10aの様子を示す図である。
【0020】
図2(A)に示すように、液体吐出ヘッド10のメンテナンスを行うときには、液体吐出ヘッド10のノズル面10aからキャップ20を離間させた退避位置(エ)から上昇移動してキャッピングを行う。
そして、同図(B)に示すように、液体吐出ヘッド10のノズル面10aにキャップ20の端部20bを当接させる。
インクの吸引後、同図(C)に示すように、キャップ20をノズル面10aから下降移動させて離間させ、その後、図示しない吸引用ポンプによってキャップ20内のインクIを吸引して排出する。
【0021】
上記キャッピングの際、ノズル面10aと接触するキャップ20の端部20bにはインクIaが付着してしまう。この付着状態のまま、同図(D)に示すように再度キャッピングを行うと、
図2(E)、
図3に示すように、ノズル面10aにノズル11を囲うようにインクIbが転写されて付着することになる。
【0022】
次に、
図4を参照してキャップ20に付着したインクの吸収動作について、また、
図5を参照して液体吐出ヘッド10のノズル面10aへの洗浄液の塗布動作についてそれぞれ説明する。なお、
図4、5には、上記した移動機構40と洗浄液供給機構50については図示していない。また、上記
図1等において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略している。
【0023】
図4(A)は、キャップ20に付着したインクの吸収動作を開始する前の様子を示す図、(B)は、洗浄部材30を吸収待機位置に移動させた様子を示す図、(C)は、吸収待機位置に移動させた洗浄部材30にキャップ20を押し当てた様子を示す図、(D)は、キャップ20を下降移動させた様子を示す図である。
【0024】
<キャップ20のインク吸収動作>
図4(A) に示すように、インクの吸収動作が要求されると、洗浄液供給位置(イ)に移動されている洗浄部材30に洗浄液W(
図1参照)を滴下供給する。
その後、同図(B) に示すように、洗浄液を供給された洗浄部材30をキャップ20上方の吸収待機位置(ア)に移動する。
【0025】
次に、同図(C)に示すように、キャップ20を上昇させ、ニップ部20aの端部20bを洗浄部材30の図示下面30aに押し当てる。これにより、ニップ部20aの端部20bに付着したインクIaを洗浄部材30に吸収させる。
そして、同図(D)に示すように、キャップ20を下降移動させて、洗浄部材30から離間させる。これにより、ニップ部20aの端部20bに付着していたインクが除去される。
【0026】
<液体吐出ヘッド10への第一の例に係る洗浄液塗布動作>
図5(A)は、液体吐出ヘッド10のノズル面10aへの洗浄液塗布動作を開始する前の様子を示す図、(B)は、その洗浄液塗布動作途中の様子を示す図、(C)は、洗浄液を液体吐出ヘッド10のノズル面10aに塗布した様子を示す図、(D)は、キャップを下降移動させて洗浄部材から離間させた様子を示す図である。
【0027】
洗浄液の塗布動作が要求されると、
図5(A) に示すように、洗浄液供給位置(イ)に移動されている洗浄部材30に洗浄液W(
図1参照)を滴下供給する。
次に、同図(B) に示すように、洗浄液を供給された洗浄部材30をキャップ20上方の吸収待機位置(ア)に移動する。
【0028】
そして、同図(C)に示すように、洗浄部材30を上昇移動させて、ノズル面10aに洗浄部材30の図示上面を押し当てる。
その後、同図(D)に示すように、洗浄部材30を下降移動させて、ノズル面10aから洗浄部材30を離間させる。これにより、ノズル面10a及びノズル面10aに固着しているインクIcに洗浄液Wを均等に塗布することができる。
【0029】
<液体吐出ヘッド10への第二の例に係る洗浄液塗布動作>
図6(A)は、液体吐出ヘッド10のノズル面10aへの洗浄液の塗布動作を開始する前の様子を示す図、同図(B)は、洗浄部材を吸収待機位置に移動した様子を示す図である。また、同図(C)は、洗浄部材を液体塗布位置に移動しかつキャップを液体吸収位置に移動した様子を示す図、同図(D)は、洗浄部材とキャップを下降移動させた様子を示す図である。
【0030】
図6(A) に示すように、洗浄液の塗布動作が要求されると、洗浄液供給位置(イ)に移動されている洗浄部材30に洗浄液Wを滴下供給する。
その後、同図(B) に示すように、洗浄液を供給された洗浄部材30をキャップ20上方の吸収待機位置(ア)に移動する。
【0031】
次に、同図(C)に示すように、洗浄部材30を上昇移動させて、ノズル面10aに洗浄部材30の上面を押し当てるのと同時に、その洗浄部材30の下面にキャップ20のニップ部20aを押し当てた液体吸収位置(オ)に移動する。このように、洗浄部材30とノズル面10a、その洗浄部材30とキャップ20を同時に押し当てることにより、メンテナンス時間を低減させることができる。
換言すると、押し当て機構である移動機構40によって、液体吐出ヘッド10のノズル面10aへの洗浄部材30の押し当てと、その洗浄部材30へのキャップ20の押し当てとを同時に行っているのである。
【0032】
そして、同図(D)に示すように、キャップ20と洗浄部材30を下降移動させて、ノズル面10a、洗浄部材30からそれぞれ離間させる。これにより、ノズル面10a及びノズル面10aに固着しているインクIcに洗浄液Wを均等に塗布させられるとともに、ニップ部20aの端部20bに付着したインクIaを洗浄部材30に吸収させて除去できる。
換言すると、洗浄部材30がノズル面10a及びキャップ20に当接したとき、洗浄部材30に含まれた洗浄液がノズル面10aに付着し、キャップ20に付着した汚れが洗浄部材30に付着する。
【0033】
図7は、一例に係る払拭機構の概略構成を示す説明図である。なお、
図7には、上記した洗浄部材30、キャップ20、移動機構40、洗浄液供給機構50等については図示していない。また、上記
図1等において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略している。
【0034】
一例に係る払拭機構B1は、所要の材質からなるブレード材によって形成した払拭部材60を有しており、その払拭部材60の一端部(図示上端部)60aをノズル面10aに当接させた傾斜姿勢にして、ノズル面10aに沿う矢印方向α2に移動させるようにしている。
本例においては、上記洗浄部材30を液体吐出ヘッド10のノズル面10aに押し当てた後、払拭部材60をノズル面10aに沿う矢印方向α2に移動させることにより、そのノズル面10aに固着したインクIcを払拭している。これにより、ノズル面10aに固着しているインクを除去できる。
【0035】
図8は、他例に係る払拭機構の概略を示す概略説明図、
図9は、その払拭機構の動作を示す説明図である。なお、
図8、9においても、上記した洗浄部材30、キャップ20、移動機構40、洗浄液供給機構50等については図示していない。また、上記
図1等において説明したものと同等のものについては、それらと同一の符号を付して説明を省略していることは
図7と同様である。
【0036】
他例に係る払拭機構B2は、ヘッドメンテナンス時に液体吐出ヘッド10のノズル面10aに固着したインクIcや異物等を払拭するものであり、次の構成からなる。
すなわち、払拭機構B2は、払拭部材である払拭シート70、供給ローラ80、巻取ローラ81、押当ローラ82及び押圧部材の一例である圧縮コイルバネ83を主要の構成としたものであり、これらを台座90に収容した構成のものである。
供給ローラ80は、ロール状に巻回された払拭シート70を繰り出して供給するものである。
上記払拭シート70は、インクを吸収するインク吸収材により形成されている。
【0037】
巻取ローラ81は、供給ローラ80から繰り出された払拭シート70を巻き取るものであり、供給ローラ80と所要の間隔をおいて並設されている。その巻取ローラ81には、図示しないロータリーエンコーダ等が取り付けられており、これらにより巻き取り距離をカウントされるようになっている。
【0038】
押当ローラ82は、上記供給ローラ80と巻取ローラ81との間であって、それら供給ローラ80、巻取ローラ81よりもやや上方に突出させた位置に配置されている。
上記押当ローラ82は、供給ローラ80と巻取ローラ81との間に張架された払拭シート70を、液体吐出ヘッド10のノズル面10aに一定の圧力で押し当てるように、台座90に圧縮コイルバネ83により連結されている。
【0039】
移動方向α1、α2と直交する払拭シート70の幅は、液体吐出ヘッド10のノズル面10aを1度に払拭できるように設定してある。
台座90は、上記した供給ローラ80等を収容する大きさにし、かつ、底壁91の両側に側壁92、92を起立形成したものであり、上記した押当ローラ82は、側壁92、92よりもやや上方に突出した高さに位置させられるように支持されている。
上述した構成からなる払拭機構B2には、これを移動方向α1、α2に往復移動するとともに、この払拭機構B2を含む本装置の各部を制御するための図示しない制御部が接続されている。
【0040】
次に、払拭機構B2を用いた払拭動作について、
図9を参照して説明する。
図9には、払拭動作を開始する様子を示している。
払拭動作が要求されると、押当ローラ82の上部が払拭しようとする液体吐出ヘッド10のノズル面10aよりもやや上方に位置するようになる。
このときの押当ローラ82の上部の位置と、液体吐出ヘッド10のノズル面10aの位置との鉛直方向の距離が、ノズル面10aを払拭するときの押当ローラ82と台座90とを連結する圧縮コイルバネ83の縮み量に等しくなる。
そして、液体吐出ヘッド10と払拭機構Bをα2方向に相対的に移動させることによって、液体吐出ヘッド10のノズル面10aを払拭する。
【0041】
次に、上述した液体吐出ユニットを搭載した液体を吐出する装置について、
図10、11を参照して説明する。
図10は、一実施形態に係る液体を吐出する装置の要部平面説明図、
図11は、その一実施形態に係る液体を吐出する装置の要部側面説明図である。
【0042】
一実施形態に係る液体を吐出する装置Gはシリアル型のものであり、主走査移動機構493によって、キャリッジ403(
図11参照)は主走査方向に往復移動するようになっている。
主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408等を含む。ガイド部材401は、左右の側板491A、491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して、キャリッジ403は主走査方向に往復移動される。
【0043】
このキャリッジ403には、前述した液体吐出ヘッド10及びインクを貯留するためのヘッドタンク441を一体にした前記した液体吐出ユニットAを搭載している。
上記した液体吐出ヘッド10は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体(インク)を吐出するようになっている。また、液体吐出ヘッド10は、前述した複数のノズル11からなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している(
図1、3参照)。
【0044】
供給機構494は、液体カートリッジ450に貯留されているインク(液体)を液体吐出ヘッド10に供給するためのものである。
供給機構494は、液体カートリッジ450を装着する充填部であるカートリッジホルダ451、チューブ456、送液ポンプを含む送液ユニット452等で構成されている。
液体カートリッジ450は、カートリッジホルダ451に着脱可能に装着されている。上記したヘッドタンク441には、送液ユニット452によって、液体カートリッジ450からチューブ456を介してインク(液体)が送液される。
【0045】
液体を吐出する装置Gは、用紙410を吸着して液体吐出ヘッド10に対向する位置にするための搬送機構495を有している。この搬送機構495は、無端状にした搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を有してなる。用紙410の吸着は、例えば静電吸着やエアー吸引等で行うことができる。
【0046】
搬送ベルト412は、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されており、副走査モータ416によってタイミングベルト417及びタイミングプーリ418を介して回転駆動されることによって副走査方向に周回移動する。
【0047】
上記キャリッジ403の主走査方向の一方側には、搬送ベルト412の側方に液体吐出ヘッド10のノズル面10aの払拭を行うための上記した液体吐出ヘッドの洗浄装置Cが配置されている。なお、液体吐出ヘッドの洗浄装置Cについての詳細は、前記
図1~9において詳細に説明したので、ここではそれらの説明を省略する。
上述した主走査移動機構493、供給機構494、液体吐出ヘッドの洗浄装置C、搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
【0048】
上記の構成にした液体を吐出する装置Gにおいては、用紙410が搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド10を駆動することにより、停止している用紙410に液体(インク)を吐出して画像を形成する。すなわち、液体吐出ヘッド10を備えているので、高画質画像を安定して形成することができる。
【0049】
上述した液体を吐出する装置は一実施形態を示すものであり、これに限るものではないことは勿論であり、次のような構成にすることができる。
すなわち、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置のことである。また、液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0050】
この「液体を吐出する装置」には、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置等も含むことができる。
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0051】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するもの等を意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布等の被記録媒体、電子基板、圧電素子等の電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セル等の媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0052】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等液体が一時的でも付着可能であればよい。
また、「液体」は、インク、処理液、DNA試料、レジスト、パターン材料、結着剤、造形液、又は、アミノ酸、たんぱく質、カルシウムを含む溶液及び分散液等も含まれる。
【0053】
さらに、「液体を吐出する装置」としては、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置、例えば液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置等が含まれる。
【0054】
さらにまた、「液体を吐出する装置」としては、用紙の表面を改質する等の目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置等を含む。
【0055】
ところで、
図4を参照して液体吐出ユニットについて例示したが、それらは液体吐出ユニットの構成を限定する趣旨のものではないことは勿論であり、次のような構成とすることができる。
例えば、液体吐出ユニットとして、
図10、11に示すような液体吐出ヘッドとヘッドタンクを一体化したものやチューブ等で互いに接続して液体吐出ヘッドとヘッドタンクを一体化したものとしてもよい。さらには、それらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0056】
液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジを一体化したものとしてもよい。液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構を一体化したものとしてもよい。また、
図10に示すように、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構を一体化したものとしてもよい。
【0057】
さらに、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップを固定して、液体吐出ヘッドとキャリッジとワイピング機構を一体化したものとしてもよい。
【0058】
またさらに、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取り付けられた液体吐出ヘッドにチューブを接続して、液体吐出ヘッドと供給機構を一体化したものとしてもよい。なお、主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0059】
なお、前記した洗浄部材は、他の部材に固定した構成にする他、着脱可能に装着した構成にしてもよい。着脱可能に装着した構成にすることにより、洗浄部材をユーザが交換できるようになり、ダウンタイムの低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0060】
10 液体吐出ヘッド
10a ノズル面
11 ノズル
20 キャップ
20b 端部
30 洗浄部材
40 移動機構(押し当て機構)
50 洗浄液供給機構
60 払拭部材
70 払拭シート(払拭部材)
81 巻取ローラ
82 押当ローラ
83 圧縮コイルバネ
90 台座
92 側壁
A 液体吐出ユニット
B1 払拭機構
B2 払拭機構
C 液体吐出ヘッドの洗浄装置
G 液体を吐出する装置
Ia インク
Ib インク
Ic インク
W 洗浄液
【先行技術文献】
【特許文献】
【0061】