(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】計測装置、搬送装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G01B 7/02 20060101AFI20220720BHJP
G01N 27/22 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
G01B7/02 J
G01N27/22 C
(21)【出願番号】P 2018099512
(22)【出願日】2018-05-24
【審査請求日】2021-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100110607
【氏名又は名称】間山 進也
(72)【発明者】
【氏名】近藤 友秀
(72)【発明者】
【氏名】櫛田 陽平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆一
(72)【発明者】
【氏名】井口 純宏
(72)【発明者】
【氏名】松村 恭平
(72)【発明者】
【氏名】上羽 涼太
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-73073(JP,A)
【文献】特開昭59-184801(JP,A)
【文献】特開2008-143638(JP,A)
【文献】国際公開第2015/029904(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00-7/34
G01B 21/00-21/30
B65H 7/00-7/20
43/00-43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送媒体のサイズを計測する計測装置であって、
搬送経路内で、前記被搬送媒体が通過する通路を形成し、前記被搬送媒体の搬送方向に対し垂直方向での両端が時間差をもって該通路に進入し、該通路から退出するように、前記搬送方向に対し所定角度を有して設けられた少なくとも1つの電極と、
前記被搬送媒体の搬送中の前記少なくとも1つの電極に関連した静電容量を測定する測定手段と、
前記所定角度、および、前記静電容量の経時変化に基づいて、前記被搬送媒体が前記通路への進入または前記通路からの退出を開始してから前記両端で完了させるまでの第1の時間を評価することで、前記被搬送媒体の第1のサイズを算出する第1の算出手段と
を含む、計測装置。
【請求項2】
前記被搬送媒体が前記通路への進入または前記通路からの退出を開始するタイミングは、前記静電容量が略一定値から上昇または下降し始めたことを検知したタイミングであり、前記被搬送媒体が前記通路への進入または前記通路からの退出を前記両端で完了させるタイミングは、前記静電容量が上昇または下降し終わり略一定値となったことを検知したタイミングである、請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記第1のサイズは、前記被搬送媒体の前記搬送方向に対し前記垂直方向のサイズであり、前記垂直方向のサイズXは、前記垂直方向と前記少なくとも1つの電極が延在する方向とがなす所定角度θと、前記被搬送媒体が前記通路への進入または前記通路からの退出を開始してから前記両端で完了させるまでの第1の時間ΔT
1と、前記被搬送媒体の搬送速度Vとを用いて、下記式(3)により算出される、請求項1または2に記載の計測装置。
【数1】
【請求項4】
前記計測装置は、前記被搬送媒体が前記通路への進入を開始または前記両端で完了させてから、前記通路からの退出を開始または前記両端で完了させるまでの第2の時間を評価することで、前記被搬送媒体の第2のサイズを算出する第2算出手段をさらに含み、前記第2のサイズは、前記被搬送媒体の前記搬送方向のサイズである、請求項1~3のいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項5】
前記被搬送媒体の前記搬送方向のサイズYは
、評価される前記第2の時間ΔT
2と、前記被搬送媒体の搬送速度Vとを用いて、下記式(7)により算出される、請求項4に記載の計測装置。
【数2】
【請求項6】
算出した前記被搬送媒体のサイズに基づいて、さらに記被搬送媒体の特性を表す特性値を算出する第3算出手段をさらに備える、請求項1~5のいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項7】
前記第3算出手段は、前記測定手段により測定された静電容量に基づいて、前記被搬送媒体の含水率を算出し、算出した前記被搬送媒体のサイズに基づいて、算出された含水率を補正することで、前記被搬送媒体の補正された含水率を前記特性値として算出する、請求項6に記載の計測装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの電極は、互いに対向する面で前記被搬送媒体が通過する前記通路を形成する1対の電極を含むか、または、前記計測装置が備える、または、前記計測装置を含む装置が備える筐体板金と対向し、該筐体板金とともに前記被搬送媒体が通過する前記通路を形成する1つの電極を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の計測装置。
【請求項9】
被搬送媒体を搬送する搬送装置であって、
被搬送媒体を搬送経路に沿って搬送する搬送機構と、
前記搬送経路内で、前記被搬送媒体が通過する通路を形成し、前記被搬送媒体の搬送方向に対し垂直方向での両端が時間差をもって該通路に進入し、該通路から退出するように、前記搬送方向に対し所定角度を有して設けられた少なくとも1つの電極と、
前記被搬送媒体の搬送中の前記少なくとも1つの電極に関連した静電容量を測定する測定手段と、
前記所定角度、および、前記静電容量の経時変化に基づいて、前記被搬送媒体が前記通路への進入または前記通路からの退出を開始してから前記両端で完了させるまでの第1の時間を評価することで、前記被搬送媒体の第1のサイズを算出する第1の算出手段と
を含む搬送装置。
【請求項10】
搬送経路内で、被搬送媒体が通過する通路を形成し、前記被搬送媒体の搬送方向に対し垂直方向での両端が時間差をもって該通路に進入し、該通路から退出するように、前記搬送方向に対し所定角度を有して設けられた少なくとも1つの電極と、
前記被搬送媒体の搬送中の前記少なくとも1つの電極に関連した静電容量を測定する測定手段と、
前記所定角度、および、前記静電容量の経時変化に基づいて、前記被搬送媒体が前記通路への進入または前記通路からの退出を開始してから前記両端で完了させるまでの第1の時間を評価することで、前記被搬送媒体の第1のサイズを算出する第1の算出手段と、
前記第1の算出手段で算出された前記被搬送媒体の前記第1のサイズに基づき、前記被搬送媒体に画像を形成する画像形成手段と
を含む、画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、計測技術に関し、より詳細には、被搬送媒体のサイズを計測するための計測装置、搬送装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスを利用した複写機、プリンタ、ファクシミリおよびこれらを組み合わせた複合機では、標準規格となったサイズの用紙を印刷するほか、定形外の用紙への印刷もできるように構成されたものが知られている。定形外の用紙に印刷する場合、用紙の主走査方向(用紙の搬送方向に対し垂直な方向)の幅を検出する方法として、用紙搬送領域内に用紙の主走査方向にわたって用紙有無を検出するセンサを複数設置する方法が知られている。この方法では、用紙有りの状態を検出しているセンサの数によって主走査幅が検出される。
【0003】
しかしながら、従来の用紙搬送領域内に用紙の主走査方向に用紙有無を検出するセンサを複数設置する方法では、用紙の主走査幅を正確に検出するためには、より数多くのセンサが必要となる。
【0004】
用紙のサイズを計測する技術として、特開平08‐073073号公報(特許文献1)が知られている。特許文献1の従来技術は、用紙吸入部に用紙搬送方向に対して斜めに配置され、用紙が無いときと有るときとで状態が変化する一定の長さの電極対と、電極対が構成する静電容量を計測する手段と、用紙搬送路内の特定の位置に配置されて用紙の上端が通過するのを検出する手段とを含む、用紙幅検出装置を開示する。計測される複数回の計測時点と用紙の上端が特定の1点を通過する時点との相対的な時間を計測し、計測された各計測時点での静電容量と計測された時間とにより一定の変換式に従って用紙幅が計算して求められる。
【0005】
しかしながら、特許文献1の従来技術では、相対的な時間を計測するために、用紙搬送路内の特定の位置に配置されて用紙の上端が通過するのを検出する手段が必要であった。したがって、用紙などの被搬送媒体のサイズを求める際に複数のセンサを使用する必要があるという点で充分なものではなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、上記点に鑑みてなされたものであり、本開示は、より少ないセンサで、被搬送媒体のサイズを求めることが可能な計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示では、上記課題を解決するために、下記特徴を有する、被搬送媒体のサイズを計測する計測装置を提供する。計測装置は、搬送経路内で、被搬送媒体が通過する通路を形成し、被搬送媒体の搬送方向に対し垂直方向での両端が時間差をもって該通路に進入し、該通路から退出するように、搬送方向に対し所定角度を有して設けられた少なくとも1つの電極を含む。計測装置は、また、被搬送媒体の搬送中の少なくとも1つの電極に関連した静電容量を測定する測定手段を含む。計測装置は、さらに、所定角度、および、静電容量の経時変化に基づいて、被搬送媒体が通路への進入または通路からの退出を開始してから両端で完了させるまでの第1の時間を評価することで、被搬送媒体の第1のサイズを算出する第1の算出手段とを含む。
【発明の効果】
【0008】
上記構成によれば、少なくとも1つの電極に関連した静電容量を測定するだけで被搬送媒体のサイズを求めることができるので、より少ないセンサで済むことになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態による画像形成装置の構成例を示した図。
【
図2】本実施形態による静電容量センサの構成例を示した図。
【
図3】搬送中における各時点の用紙と電極対との位置関係を説明する図。
【
図4】搬送中における用紙と電極対との位置関係が
図3のように推移した場合の静電容量の出力値の経時変化を模式的に示すグラフ。
【
図5】本実施形態による静電容量センサが実行する用紙の主走査幅の算出処理を示すフローチャート。
【
図6】1または複数の実施形態において用紙の主走査幅の算出の仕方について説明する図。
【
図7】他の実施形態による静電容量センサが実行する用紙の主走査幅の算出処理を示すフローチャート。
【
図8】本実施形態による静電容量センサが実行する用紙の副走査幅の算出処理を示すフローチャート。
【
図9】1または複数の実施形態において用紙の副走査幅の算出の仕方について説明する図。
【
図10】静電容量値の経時変化の傾きSを算出する他の手順について説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態について説明するが、実施形態は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0011】
図1は、画像形成装置の構成例を示した図である。
図1に示す画像形成装置は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、スキャナの機能を搭載した複合機であるが、画像形成装置は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、スキャナ等であってもよい。
【0012】
画像形成装置は、複数の装置やユニットから構成される。画像形成装置は、自動原稿送り装置(ADF)10、画像読み取り装置11、画像形成手段としてのプリンタユニット12、給紙ユニット13、手差しユニット14、排紙ユニット15、操作パネル16、計測装置としての静電容量センサ17を含む。これは一例であるため、ADF10や手差しユニット14等がない構成であってもよいし、その他の装置やユニットを含む構成であってもよい。
【0013】
ADF10は、原稿を載せる原稿台と、原稿台上の原稿を搬送する搬送機構と、搬送した原稿を排出する排出トレイとを含み、原稿を、画像読み取り装置11のコンタクトガラス上へ移動させる。画像読み取り装置11は、光源と、複数のミラーと、結像レンズと、撮像素子とを含み、光源からの光をコンタクトクトガラス上の原稿に照射し、反射した光を、複数のミラー、結像レンズを介して撮像素子へ入射させる。撮像素子は、CCD(Charged Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary metal oxide semiconductor)イメージセンサ等を用いることができ、入射された光を電気信号に変換し、画像データとして出力する。
【0014】
プリンタユニット12は、書き込みユニット20と、感光体ドラム21と、現像装置22と、搬送ベルト23と、定着装置24とを含む。書き込みユニット20は、画像形成装置を制御するコントローラからの指示を受けて、感光体ドラム21に光を照射し、感光体ドラム21の表面に潜像を形成する。現像装置22は、トナーが充填され、感光体ドラム21にトナーを吐出し、感光体ドラム21の表面に形成された潜像を顕像化する。搬送ベルト23は、用紙を搬送し、顕像化により現像された画像を用紙に転写する。定着装置24は、画像が転写され、搬送ベルト23により搬送された用紙に、熱と圧力を加えて用紙に画像を定着させる。
【0015】
給紙ユニット13は、用紙が収納される給紙トレイ25と、給紙トレイ25に収納された用紙を1枚ずつ給紙する給紙ローラ26とを含み、コントローラからの指示を受けて、用紙を供給する。手差しユニット14は、用紙を載せる手差しトレイと、手差しトレイ上の用紙を1枚ずつ給紙する給紙ローラとを含み、コントローラからの指示を受けて、用紙を供給する。排紙ユニット15は、定着装置24により画像が定着した用紙を排紙する排紙トレイを含む。
【0016】
操作パネル16は、ユーザの操作を受け付け、コントローラに対して原稿の読み取りや印刷等の実行を指示する。また、操作パネル16は、ユーザの操作を受け付けるための機能を選択するためのボタンや印刷等の実行開始ボタン等の表示、その実行状況やエラー等の表示を行う。
【0017】
計測装置としての静電容量センサ17は、給紙ユニット13や手差しユニット14から給紙される用紙を搬送する搬送経路内に設けられ、搬送されてきた用紙が、静電容量センサ17を構成する電極対18の間を通過するように構成されている。電極対18は、それぞれ、導電性を有し、互いに対向する面を有し、平行に設けられた2枚の電極板を含み構成され、2枚の電極板は、限定されるものではないが、典型的には、同じ形状、大きさ、厚さとされる。各電極板は、金属板を用いることができ、金属板としては、例えばステンレス板、銅板、アルミニウム板等を用いることができる。
【0018】
電極対18の取り付け位置は、搬送装置としての、給紙ユニット13内、手差しユニット14内、給紙ユニット13および手差しユニット14と感光体ドラム21との間の搬送機構27内いずれの箇所であってもよいし、他の場所であってもよい。画像形成装置には、一般的には、接地のために複数の筐体板金が配置されているところ、電極対18のうちの片側の電極板は、接地GNDでもよい。このため、
図1中で静電容量センサ17’として示すように、画像形成装置が備える1つの筐体板金19を片方の電極板として利用することができる。
【0019】
図2は、静電容量センサ17の構成例を示した図である。静電容量センサ17は、電極対18と、電流発生装置31と、静電容量測定装置32と、コントローラ33とを備える。電極対18は、平行に離間して配置された2枚の電極板から構成され、2枚の電極板の間には、被搬送媒体としての用紙34が進入し、通過する空間(以下、通路と参照する。)35が形成されている。
【0020】
電流発生装置31は、電極対18の電極板間に電流を発生させる。電極対18は、コンデンサとして機能し、電圧が印加されると、電極板間に電荷が蓄えられる。単位電圧あたり電荷が蓄えられる量は、静電容量と呼ばれ、静電容量C[F]は、電極板の面積s[m2]、電極対18を構成する2枚の電極板の間隔d[m]、誘電率ε[Fm-1]とすると、下記式(1)により計算することができる。
【0021】
【0022】
誘電率εは、電極板間に存在する絶縁体によって変化する。このため、電極板間の絶縁体が、空気のみの場合と、用紙が通過する際の用紙を含む場合とでは、誘電率εは変化する。また、誘電率εは、水が電気を通すことから、乾燥した用紙と、湿気(水分)を含む用紙とでは異なり、用紙の含水率によって変化し得る。1枚の用紙においても含水率が一様ではないため、誘電率εは、含水率が分布している場合、用紙上の位置によっても変化し得る。
【0023】
静電容量測定装置32は、被搬送媒体としての用紙34の搬送中の電極対18の静電容量を測定する。静電容量測定装置32は、例えば測定対象となる電極対18に交流電流を流した場合に、電圧、電流の振幅比や位相差を検出し、検出した振幅比や位相差からインピーダンスRを計算し、インピーダンスRと交流の周波数からインダクタンスL、静電容量Cを計算するLCRメータを用いることができる。ここでは、静電容量測定装置32一例としてLCRメータを挙げたが、これに限られるものではなく、静電容量Cを測定することができるものであればいかなる装置を用いてもよい。
【0024】
コントローラ33は、電流発生装置31および静電容量測定装置32を制御し、静電容量測定装置32により測定された静電容量Cに基づいて用紙34のサイズを算出する処理を行う。コントローラ33は、さらに、用紙34の含水率などの特性値を計算するように構成してもよい。
【0025】
コントローラ33は、電流発生装置31や静電容量測定装置32の制御や用紙34のサイズの算出、含水率などの特性値の算出といった処理を実行するために、制御プログラムや変換プログラム等を記憶する記憶装置としてのROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリを備えることができる。また、コントローラ33は、その記憶装置からプログラムを読み出し実行するCPU(Central Processing Unit)、CPUに対して作業領域を提供するRAM(Random Access Memory)等を備えることができる。あるいは、コントローラ33は、上述した処理を実行するための回路を備える特定用途向け集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)として構成されてもよいし、上述した処理を実行するための構成データを記憶する記憶装置および構成データに基づいて動作する複数の回路素子を備えるFPGA(Field-Programmable Gate Array)などのようなプログラマブルデバイスとして構成されてもよい。
【0026】
なお、コントローラ33は、画像形成装置の部品としての静電容量センサ17に専用のものであってもよいし、画像形成装置の部品としての搬送装置(例えば、給紙ユニット13、手差しユニット14、給紙ユニット13および手差しユニット14と搬送機構27)のコントローラで兼用されてもよいし、画像形成装置の全体を統括するコントローラで兼用されてもよい。
【0027】
本実施形態による静電容量センサ17においては、電極対18は、被搬送媒体としての用紙34の副走査方向(搬送方向)に対し所定角度を有するように設けられる。より具体的には、電極対18は、その延在する方向と用紙34の主走査方向(搬送方向に対し垂直方向)とが角度θをなすように設けられる。これにより、用紙34が搬送経路に沿って搬送される場合に、用紙34の主走査方向での両端34L,34Rが時間差をもって電極対18の電極間の通路35に進入し、かつ、該通路35から退出するように構成される。
【0028】
なお、
図2では、電極対18は、主走査方向に対し角度θを有して延在した長尺な矩形形状を有するものを例示しているが、電極対18の形状は、これに限定されるものではない。用紙34の両端34L,34Rが電極対18間の通路35に進入したタイミングを精度高く検知する観点からは、
図2に示すような、角度θで延在する長尺な矩形形状を採用することができる。しかしながら、平均として所定角度θを有するような階段形状とされて、用紙34の主走査方向での両端34L,34R間の複数の中間点が時間差をもって通路35に進入し、かつ、退出するように構成されることを排除するものではない。
【0029】
なお、
図2は、静電容量センサ17が、互いに対向する面で用紙34が通過する通路35を形成する1対の電極板を備える場合の構成を例示する。しかしながら、静電容量センサ17の電極の構成は、これに限定されるものではない。電極の構成としては、1対に限定されず、複数対の電極板を有していてもよい。また、上述したように、電極対18のうちの一方の電極板として、画像形成装置が備える筐体板金を用いることができるので、静電容量センサ17としては、少なくとの1つの電極を備えればよいということになる。
【0030】
以下、
図3~
図10を参照しながら、静電容量センサ17を用いて用紙34のサイズを計測する機能について、より詳細に説明する。
【0031】
図3は、搬送中における各時点の用紙34と電極対18との位置関係を説明する図である。
図3には、用紙34が電極対18間の通路35に進入する前の状態(状態A)、用紙34が電極対18間の通路35に進入し、用紙34の主走査幅の一部が電極板と重なった状態(状態B)、用紙34が電極対18間の通路35に進入し、用紙34の主走査幅全体が電極板と重なった状態(状態C)、用紙34が電極対18間の通路35から退出し始めて再び用紙34の主走査幅の一部が電極板と重なった状態(状態D)、および、用紙34が電極対18間の通路35から退出し、用紙34と電極板が重ならなくなった状態(状態E)が示されている。
【0032】
図3には、さらに、上述した複数の状態A、B,C,D,Eのうちの2状態の境界となるタイミングでの用紙34と電極対18との位置関係も併せて示されている。より具体的には、用紙34が電極対18間の通路35への進入を開始した状態(状態A→状態B)、用紙34が電極対18間の通路35への進入を両端で完了、つまり主走査幅にわたり完了させた状態(状態B→状態C)、用紙34が電極対18間の通路35からの退出を開始した状態(状態C→状態D)、用紙34が電極対18間の通路35からの退出を両端で完了、つまり主走査幅にわたり完了させた状態(状態D→状態E)が示されている。
【0033】
図4は、搬送中における用紙34と電極対18との位置関係が
図3のように推移した場合の静電容量の出力値の経時変化を模式的に示すグラフである。上述したように、電極対18の電極板間に用紙34が存在するか否かによって誘電率εが変化するため、その静電容量Cも、電極板間に用紙34が存在するか否か、および、重なる程度によって変化する。
【0034】
図3および
図4を合わせて参照すると理解されるように、静電容量Cは、用紙34が、電極対18間の通路35に未だ進入する前は略一定値となっており(状態A)、通路35への進入を開始すると上昇を始め(状態B)、通路35への進入を両端で完了させて、用紙34の用紙主走査幅すべてが電極板と重なると飽和し、略一定値となる(状態C)。静電容量Cは、さらに、用紙34が、電極対18間の通路35からの退出を開始すると下降し始め(状態D)、通路35からの退出を両端で完了させて、用紙34の主走査幅が電極板と重ならなくなると、進入前と同様の略一定値に戻る(状態E)。
【0035】
図4には、用紙34が電極対18間の通路35への進入を開始した状態(状態A→状態B)となった時刻(タイミング)T
1、用紙34が通路35への進入を主走査幅にわたり完了させた状態(状態B→状態C)となった時刻T
2、用紙34が通路35からの退出を開始した状態(状態C→状態D)となった時刻T
3、用紙34が電極対18間の通路35からの退出を主走査幅にわたり完了させた状態(状態D→状態E)となった時刻T
4が併せて示されている。
【0036】
図2に示したコントローラ33は、搬送中における各時点での用紙34と電極対18との重なり状態およびその際の静電容量Cの関係を利用して、静電容量Cの経時変化に基づいて上述した各タイミングT
1,T
2、T
3、T
4を検出する。コントローラ33は、算出されたタイミングT
1,T
2、T
3、T
4に基づいて、用紙34のサイズ(主走査方向および副走査方向のサイズ)を算出する。この際には、適宜、上述した電極対18の延在方向と主走査方向とがなす角度θおよび用紙34の搬送速度Vが参照される。
【0037】
以下、
図5~
図10を参照して、静電容量センサ17が実行する静電容量の経時変化に基づいて用紙のサイズを計測する処理について、より詳細に説明する。
【0038】
図5は、本実施形態による静電容量センサ17が実行する用紙の主走査幅の算出処理を示すフローチャートである。
図5に示す処理は、例えば、静電容量センサ17のコントローラ33が実行する。
【0039】
図5に示す処理は、用紙の主走査幅の算出要求に応答して、ステップ100から開始される。用紙主走査幅算出要求は、例えば、ユーザからの印刷開始の指示に応答して、用紙への印刷出力を開始する際に、画像形成エンジンから発行される。
【0040】
ステップS101では、コントローラ33は、電流発生装置31および静電容量測定装置32を制御し、用紙搬送前の電極対18の静電容量値C1を測定する。ステップS102では、コントローラ33は、搬送速度Vにて用紙34の搬送を開始する。
【0041】
搬送開始後、ステップS103では、コントローラ33は、電流発生装置31および静電容量測定装置32を制御し、再び電極対18の静電容量値C2を測定する。ステップS104では、コントローラ33は、搬送開始後に測定した静電容量値C2が、用紙搬送前の静電容量値C1に所定値αを加えた値よりも大きいか否かを判定する。ステップS104では、静電容量値C2が加算後の値(C1+α)を超えるまで(NOの間)、ステップS103へのループを繰り返し、静電容量値C2を繰り返し取得する。ここで、所定値αは、静電容量値C1の有意な変化を検知するための正の値となる。
【0042】
ステップS104で、搬送開始後の静電容量値C
2が、比較値(C
1+α)よりも大きくなったと判定された場合(YES)は、ステップS105へ制御が進められる。この場合は、状態Aから状態Bへ移行したものと考えられるので、ステップS105では、コントローラ33は、C
2>C
1+αとなった時刻をT
1として例えばメモリに記録する。ここで、時刻T
1は、
図3および
図4に示すT
1に該当する時刻となる。用紙34が電極対18間の通路35に進入するにつれ、電極対18の静電容量が上昇することから、静電容量が搬送前の略一定値から上昇し始めたこと(C
2>C
1+α)を検知した時刻T
1が、用紙34が通路35に進入を開始したタイミングとして検知される。
【0043】
ステップS106では、コントローラ33は、電流発生装置31および静電容量測定装置32を制御し、さらに、電極対18の静電容量値C3を測定する。コントローラ33は、ステップS107で、所定時間tだけ待ち、ステップS108で、再び、電極対18の静電容量値C4を測定し、ステップS109で、所定時間tの前後で測定した静電容量値C3,C4に基づいて、静電容量値の経時変化の傾きSを算出する。静電容量値の経時変化の傾きSは、下記式(2)により算出することができる。
【0044】
【0045】
静電容量値の経時変化の傾きSは、静電容量が上昇している間は、正の値となり、静電容量が飽和し変化しなくなると、略ゼロとなる。ステップS110では、静電容量値の経時変化の傾きSが、所定の閾値S
THよりも小さくなったか否かを判定する。ステップS110で、大きいと判定されている間(NOの間)は、静電容量が上昇中であるので、ステップS106へ戻り、静電容量値C
3,C
4の測定および傾きSの算出を繰り返し、監視を継続する。なお、閾値S
THは、静電容量が変化しなくなったことを検出するための小さな正の値となる。なお、
図5では、ステップS110でNOの場合、ステップS106へ戻すように示されているが、現在の静電容量値C
4を次の静電容量値C
3として、ステップS107へ戻すこともできる。
【0046】
ステップS110で、静電容量値の経時変化の傾きSが、所定の閾値S
THよりも小さくなったと判定された場合(YES)は、ステップS111へ制御が進められる。この場合は、状態Bから状態Cへ移行したものと考えられるので、ステップS111では、コントローラ33は、S<S
THとなった時刻をT
2として例えばメモリに記録する。ここで、時刻T
2は、
図3および
図4に示すT
2に該当する時刻となる。電極対18が搬送方向に対して傾斜して配置されている場合、主走査方向の用紙幅全体が電極対18の通路35に進入を完了させたとき、用紙34と電極対18との重なる面積が一定(最大)となるため、それ以上静電容量が上昇しなくなる。このことから、静電容量値の経時変化の傾きSが、所定の閾値S
THよりも小さくなったこと(S<S
TH)を検知した時刻T
2が、用紙34が通路35への進入を両端で完了させたタイミングとして検知される。
【0047】
ステップS112では、コントローラ33は、記録された時刻T1,T2を用いて、用紙主走査幅(主走査方向のサイズ)を算出し、ステップS113で、当該用紙主走査幅算出処理は、終了する。
【0048】
図6は、1または複数の実施形態において用紙の主走査幅の算出の仕方を説明する図である。
図6(A)は、一例を示す。
図6(A)に示すように、用紙34の主走査幅Xは、電極対18の延在方向と主走査方向とがなす角度θ、搬送速度V、静電容量Cの経時変化に基づいて、下記式(3)により算出することができる。
【0049】
【0050】
上記式(3)中、ΔT1は、静電容量Cの経時変化に基づいて評価される、用紙34が通路35への進入を開始してから進入を両端で完了させるまでの第1の時間であり、ΔT1[sec]=T2[sec]-[sec]T1で計算される。
【0051】
図7は、他の実施形態による静電容量センサが実行する用紙の主走査幅の算出処理を示すフローチャートである。
図7に示す処理は、用紙主走査幅の算出要求に応答して、ステップ200から開始される。
【0052】
ステップS201では、コントローラ33は、搬送速度Vで用紙の搬送を開始する。用紙搬送開始後、ステップS202では、コントローラ33は、電流発生装置31および静電容量測定装置32を制御し、電極対18の静電容量値C1を測定する。コントローラ33は、ステップS203で、所定時間tだけ待ち、ステップS204で、電極対18の静電容量値C2を再び測定し、ステップS205で、所定時間tの前後で測定した静電容量値C1,C2に基づいて、静電容量値の経時変化の傾きS1を算出する。静電容量値の経時変化の傾きS1は、下記式(4)により算出することができる。
【0053】
【0054】
傾きS1は、静電容量が略一定値にある間は、略ゼロであり、上昇を開始すると、正の値となる。ステップS206では、静電容量値の経時変化の傾きS1が、所定の閾値STH1よりも大きくなったか否かを判定する。ステップS206で、小さいと判定されている間(NOの間)は、静電容量が略一定値に留まっているということなので、ステップS202へ戻り、静電容量値C1,C2の測定および傾きS1の算出を繰り返し、監視を継続する。なお、閾値STH1は、有意に静電容量が上昇し始めたことを検出するための小さな正の値となる。また、ステップS206でNOの場合、現在の静電容量値C2を次の静電容量値C1として、ステップS203へ戻すこともできる。
【0055】
ステップS206で、静電容量値の経時変化の傾きS1が、所定の閾値STH1よりも大きくなったと判定された場合(YES)は、ステップS207へ制御が進められる。この場合は、状態Aから状態Bへ移行したものと考えられるので、ステップS207では、コントローラ33は、S>STH1となった時刻をT1として例えばメモリに記録する。
【0056】
ステップS208~ステップS215は、
図5に示したステップS106~ステップS113の処理と同様であり、傾きSおよび傾きに対する閾値S
THをそれぞれ、傾きS
2および傾きに対する閾値S
TH2で読み替えればよく、このため、詳細な説明は割愛する。
図5に示す処理では、搬送後の静電容量値が搬送前の値に所定値αを加算した値を超えるか否かで時刻T
1を検出していたが、
図7に示す他の処理は、時刻T
2の検出の際と同様に、静電容量値の経時変化の傾きS
1に基づいて時刻T
1を検出するものである。
【0057】
図8は、本実施形態による静電容量センサ17が実行する用紙の副走査幅の算出処理を示すフローチャートである。
図5に示す処理は、静電容量センサ17のコントローラ33が実行する。
【0058】
図8に示す処理は、用紙副走査幅の算出要求に応答して、ステップ300から開始される。ステップS301では、
図5または
図7に示した用紙主走査幅算出処理が実行され、時刻T
1,T
2が測定される。
図5に示したステップS102または
図7に示したステップS201により、搬送速度Vでの用紙34の搬送が開始される。
【0059】
ステップS302では、コントローラ33は、電流発生装置31および静電容量測定装置32を制御し、電極対18の静電容量値C5を測定する。コントローラ33は、ステップS303で、所定時間tだけ待ち、ステップS304で、再び電極対18の静電容量値C6を測定し、ステップS305で、所定時間tの前後で測定した静電容量値C5,C6に基づいて、同様にして、静電容量値の経時変化の傾きS3を算出する。静電容量値の経時変化の傾きS3は、下記式(5)により算出することができる。
【0060】
【0061】
図5または
図7に示した処理で時刻T
1,T
2が測定された後は、
図4に状態Cで示すように静電容量値は、大きな略一定値となっている。経時変化の傾きS
3は、静電容量が略一定値となっている間は、略ゼロであり、下降を開始すると、負の値となる。ステップS306では、静電容量値の経時変化の傾きS
3が、所定の閾値S
TH3よりも小さくなったか否かを判定する。ステップS306で大きいと判定されている間(NOの間)は、静電容量が略一定値に留まっているということなので、ステップS302へ戻り、静電容量値C
5,C
6の測定および傾きS
3の算出を繰り返し、監視を継続する。なお、閾値S
TH3は、有意に静電容量が下降し始めたことを検出するための絶対値の小さな負の値となる。また、ステップS306でNOの場合、現在の静電容量値C
6を次の静電容量値C
5として、ステップS303へ戻すこともできる。
【0062】
ステップS306で、静電容量値の経時変化の傾きS
3が、所定の閾値S
TH3よりも小さく(より負に)なったと判定された場合(YES)は、ステップS307へ制御が進められる。この場合は、状態Cから状態Dへ移行したものと考えられるので、ステップS307では、コントローラ33は、S
3<S
TH3となった時刻をT
3として例えばメモリに記録する。ここで、時刻T
3は、
図3および
図4に示すT
3に該当する時刻となる。用紙34が電極対18間の通路35から退出し始めると、電極対18の静電容量が下降し始めることから、電容量値の経時変化の傾きS
3が、所定の閾値S
TH3よりも負になったこと(S
3<S
TH3)を検知した時刻T
3が、用紙34が通路35からの退出を開始したタイミングとして検知される。
【0063】
ステップS308では、コントローラ33は、電流発生装置31および静電容量測定装置32を制御し、電極対18の静電容量値C7を測定する。コントローラ33は、ステップS309で、所定時間tだけ待ち、ステップS310で、電極対18の静電容量値C8を再度測定し、ステップS311で、所定時間tの前後で測定した静電容量値C7,C8に基づいて、同様にして、静電容量値の経時変化の傾きS4を算出する。静電容量値の経時変化の傾きS4は、下記式(6)により算出することができる。
【0064】
【0065】
経時変化の傾きS4は、静電容量が下降している間は、負の値となり、静電容量が変化しなくなると、略ゼロとなる。ステップS312では、静電容量値の経時変化の傾きS4が、所定の閾値STH4よりも大きくなったか否かを判定する。ステップS312で小さい(より負である)と判定去られている間(NOの間)は、ステップS308へ戻り、静電容量値C7,C8の測定および傾きS4の算出を繰り返し、監視を続ける。なお、閾値STH4は、静電容量が搬送前の状態に戻り、有意に静電容量が変化しなくなったことを検出するための絶対値の小さな負の値となる。また、ステップS312でNOの場合、現在の静電容量値C8を次の静電容量値C7として、ステップS309へ戻すこともできる。
【0066】
ステップS312で、静電容量値の経時変化の傾きS
4が、所定の閾値S
TH4よりも大きくなったと判定された場合(YES)は、ステップS313へ制御が進められる。この場合は、状態Dから状態Eへ移行したものと考えられるので、ステップS313では、コントローラ33は、S
4>S
TH4となった時刻をT
4として例えばメモリに記録する。ここで、時刻T
4は、
図3および
図4に示すT
4に該当する時刻となる。電極対18が搬送方向に対して傾斜して配置されている場合、用紙34が通路35からの退出を両端で完了させると、電極対18は、用紙34と重ならなくなり、それ以上電極対18の静電容量が下降しなくなる。このことから、静電容量値の経時変化の傾きS
4が、所定の閾値S
TH4よりも大きくなったこと(S
4>S
TH4)を検知した時刻T
4が、用紙34が通路35からの退出を両端で完了させたタイミングとして検知される。
【0067】
ステップS314は、コントローラ33は、保存された時刻T2,T4を用いて、用紙副走査幅を算出し、ステップS315で、コントローラ33は、当該用紙副走査幅算出処理を終了する。
【0068】
図9は、1または複数の実施形態において用紙の副走査幅の算出の仕方を説明する図である。
図9(A)は、一例を示す。
図9(A)に示すように、用紙34の副走査幅Yは、電極対18の延在方向と主走査方向とがなす角度θ、搬送速度V、静電容量Cの経時変化に基づいて、下記式(7)により算出することができる。
【0069】
【0070】
上記式(7)中、ΔT2は、静電容量Cの経時変化に基づいて評価される、用紙34が通路35への進入を両端で完了させてから通路35からの退出を両端で完了させるまでの第2の時間であり、ΔT2[sec]=T4[sec]-T2[sec]で計算される。
【0071】
なお、
図8に示す処理において、ステップS307で、T
3を記録するものとして説明したが、説明する実施形態では、時刻T
3は、使用しないため、省略してもよい。時刻T
3は、以下に説明する他の実施形態で使用され得る。
【0072】
以下、さらに、
図6(B)および
図9(B)を参照しながら、用紙主走査幅および用紙副走査幅を算出する処理について他の例を説明する。
【0073】
図6(B)は、用紙の主走査幅を算出する方法の他の例を示す。
図6(A)を参照して説明した実施形態では、静電容量が略一定値から上昇し始めたことを検知したタイミングT
1を、用紙34が通路35への進入を開始したタイミングとし、静電容量が上昇し終わり略一定値となったことを検知したタイミングT
2を、用紙34が通路35への進入を両端で完了させたタイミングとし、そして、これらの時刻T
1、T
2を用いて主走査用紙幅を算出するものであった。一方、主走査用紙幅の算出方法は、
図6(A)に示す方法の他、
図6(B)に示す方法も想定される。
【0074】
図6(B)に示す方法では、
図4に示す静電容量の上昇側のスロープではなく、下降側のスロープで求めるものである。
図6(B)に示す方法の場合、静電容量が略一定値から下降し始めたことを検知したタイミングT
3を、用紙34が通路35からの退出を開始したタイミングとし、静電容量が下降し終わり略一定値となったことを検知したタイミングT
4を、用紙34が通路35からの退出を両端で完了させたタイミングとし、時刻T
3、T
4を用いて主走査用紙幅を算出する。この場合、ΔT
1’=T
4-T
3で計算することができる。
【0075】
図9(B)は、用紙の副走査幅を算出する方法の他の例を示す。
図9(A)を参照して説明した実施形態では、静電容量が上昇をし終わり略一定値となったことを検知したタイミングT
2を、用紙34が電極対18間の通路35への進入を完了させたタイミングとし、静電容量が定常値から下降し始めて、さらに、下降し終わり略一定値となったことを検知したタイミングT
4を、用紙34が電極対18間の通路35からの退出を完了させたタイミングとし、そして、時刻T
2、T
4を用いて副走査方向の用紙幅を算出するものであった。一方、用紙副走査幅の算出方法は、
図9(A)に示す方法の他、
図9(B)に示す方法も想定される。
【0076】
図9(B)に示す方法では、静電容量が略一定値から上昇し始めたことを検知したタイミングT
1を、用紙34が電極対18間の通路35への進入を開始したタイミングとし、静電容量が上昇し終わり略一定値となった後に、下降し始めたことを検知したタイミングT
3を、用紙34が電極対18間の通路35からの退出を開始したタイミングとし、時刻T
1、T
3を用いて副走査方向の用紙幅を算出する。この場合、ΔT
2’=T
3-T
1で計算することができる。
【0077】
以下、
図10を参照しながら、
図5のステップS106~ステップS109、
図7のステップS202~ステップS205、
図7のステップS208~ステップS211、
図8のステップS302~ステップS305および
図8のステップS308~ステップS311で静電容量値の経時変化の傾きS(S
2,),S
1,S
3,S
4を算出する他の手順について説明する。上述した実施形態では、上記式(2)、(4)、(5)および(6)に従って、所定時間tの前後で測定した2つの静電容量値に基づいて傾きS(S
2,),S
1,S
3,S
4が算出されていた。
【0078】
これに対し、
図10に示す実施形態では、t時間経過毎に静電容量Cnをn回取得し、下記式(8)に示した最小二乗法による回帰直線の回帰係数の計算方法に従って、
図10に示す近似曲線の傾きSを求めることにより、静電容量値の経時変化の傾きS(S,S
1,S
2,S
3,S
4)を求めることができる。
【数8】
【0079】
以下、上述した処理によって求められた用紙34のサイズ情報(主走査幅や副走査幅)の利用方法について説明する。電子写真プロセスでは、トナーを付着させる用紙に含まれる含水率が画像品質に影響を与えるため、静電容量センサを用いて用紙含水率を検知し、画像形成制御に反映することが好ましい。ここで、用紙のサイズと静電容量センサの出力値には相関があるため、静電容量センサを用いて用紙含水率を算出する際には、あらかじめ用紙のサイズを計測することが好ましい。そこで、特定の実施形態においては、上述までで求めた用紙34のサイズ(主走査幅や副走査幅)を、用紙の特性値としての含水率の算出の際に使用することができる。
【0080】
コントローラ33は、静電容量測定装置32により測定された静電容量と、検知された用紙34のサイズとを用い、用紙34の特性を表す特性値としての含水率を算出することができる。含水率は、一般に、テーブルや変換式等を使用し、測定された静電容量から算出することができる。含水率は、用紙34が電極対18の電極間を通過する際に、静電容量を測定し、測定された静電容量に基づいて算出することができる。そして、算出された用紙34の含水率や用紙34における各領域の含水率から用紙34の含水率分布を得ることができる。特定の実施形態では、算出した用紙34のサイズに基づいて、算出された含水率(用紙全体としての値または分布)を補正することで、補正された用紙含水率を特性値として算出する。これにより、用紙のより正確な含水率を算出することが可能となる。
【0081】
以上説明した実施形態によれば、より少ないセンサで、被搬送媒体のサイズを求めることが可能な計測装置、搬送装置および画像形成装置を提供することが可能となる。
【0082】
上記実施形態では、被搬送媒体である用紙34の搬送時の静電容量値の経時変化特性から、搬送方向に対して斜めに配置した電極対18と用紙34の位置関係を得ることができる。そして、この得られた位置関係に基づいて、被搬送媒体のサイズを計測することができる。
【0083】
従来の静電容量センサを用いた用紙含水率検知技術では、静電容量センサの他に用紙サイズを検知するためのセンサ・機構が必要であった。上述した実施形態では、含水率を求めるために用いられる静電容量センサ17を用いて、被搬送媒体である用紙34のサイズを計測しているため、従来技術で必要であった用紙サイズを検知するための追加のセンサ・機構が不要となり、簡素な構造とすることができ、計装コストも削減することができる。特許文献1の従来技術で必要であった、用紙上端が用紙搬送経路の特定の一点を通過することを検出するセンサも必要としない。
【0084】
なお、上述した実施形態では、被搬送媒体として用紙を一例として説明したが、紙に限定されず、透明シートなどの他の材質の記録媒体、織物や樹脂板、金属板などの他の媒体であってもよく、空気と誘電率に有意な差がある種々の材料の媒体に対して適用することができる。また、画像形成装置の用紙搬送経路上に設けられる構成に限定されるものでもなく、織物や樹脂板、金属板などを被搬送媒体として、被搬送媒体のサイズを計測するいかなる用途の計測装置、装置の部品として用いることが可能である。
【0085】
これまで本発明の実施形態について説明してきたが、本発明の実施形態は上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0086】
10…ADF、11…画像読み取り装置、12…プリンタユニット、13…給紙ユニット、14…手差しユニット、15…排紙ユニット、16…操作パネル、17…静電容量センサ、18…電極対、19…筐体板金、20…書き込みユニット、21…感光体ドラム、22…現像装置、23…搬送ベルト、24…定着装置、25…給紙トレイ、26…給紙ローラ、27…搬送機構、31…電流発生装置、32…静電容量測定装置、33…コントローラ、34…用紙、34L、34R…端部、35…通路
【先行技術文献】
【特許文献】
【0087】