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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】発光装置、および蛍光体
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20220720BHJP
   C09K 11/62 20060101ALI20220720BHJP
   C01G 37/00 20060101ALI20220720BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20220720BHJP
   C09K 11/63 20060101ALI20220720BHJP
   C09K 11/64 20060101ALI20220720BHJP
   C09K 11/80 20060101ALI20220720BHJP
   C09K 11/66 20060101ALI20220720BHJP
   C09K 11/67 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
H01L33/50
C09K11/62
C01G37/00
G02B5/20
C09K11/63
C09K11/64
C09K11/80
C09K11/66
C09K11/67
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019517595
(86)(22)【出願日】2018-05-02
(86)【国際出願番号】 JP2018017535
(87)【国際公開番号】W WO2018207703
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2017094871
(32)【優先日】2017-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017210719
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】洪 炳哲
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/174236(WO,A1)
【文献】特開2016-060812(JP,A)
【文献】特開2016-092401(JP,A)
【文献】特表2008-517092(JP,A)
【文献】特表2009-533812(JP,A)
【文献】国際公開第2012/008325(WO,A1)
【文献】特開2014-189592(JP,A)
【文献】特開2013-057037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
C01G 25/00 - 47/00
C01G 49/10 - 99/00
C09K 11/00 - 11/89
G02B 5/20 - 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外光または可視光を発する半導体発光素子と、
該半導体発光素子から発せられた紫外光または可視光を吸収し赤外領域で発光する蛍光体とを含む発光装置であり、
前記赤外領域で発光する蛍光体が、下記式(1)で表され、
該赤外領域で発光する蛍光体の赤外領域における発光ピーク波長が波長750から1050nmまでの間であって、該発光ピークの波形の半値幅が50nmを超えることを特徴とする発光装置。
(M1 1-b M2 )(M3 1-d M4 12 19 ・・・(1)
ただし、
M1はMg以外のアルカリ土類金属元素の中から選ばれる一つ以上の金属元素を示し、
M2はSc以外の希土類金属元素の中から選ばれる一つ以上の金属元素を示し、
M3は少なくともGaを含み、かつMg、Zn、B、Al、In、Sc、Si、Ge、Ti、Sn、Zr、およびHfの中から選ばれる一つ以上の金属元素を含む、二つ以上の金属元素を示し、
M4はCr、Mn、Fe、Ni、およびCuの中から選ばれる一つ以上の金属元素を示し、
Oは酸素を示し、
0≦b≦1、0<d≦0.5である。
【請求項2】
前記赤外領域で発光する蛍光体が、発光ピーク強度が初期の発光ピーク強度の1/10となるまでの時間である残光時間が10ms以下である蛍光体のみからなる、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記赤外領域で発光する蛍光体が、波長700から850nmまでにおける反射率が80%以上である蛍光体のみからなる、請求項1または2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記赤外領域で発光する蛍光体が、波長700から850nmまでにおける反射率が、波長300から700nmまでにおける反射率よりも高く、その差が20%以上である、
請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記赤外領域で発光する蛍光体が、付活元素として、少なくともCrを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記赤外領域で発光する蛍光体が、付活元素として、少なくともEu2+またはSm2+を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記赤外領域で発光する蛍光体が、結晶相としてマグネットプランバイト構造を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項8】
下記式(2)で表される化学組成の結晶相を含有し、波長750nmから1050nmまでの間に発光ピーク波長を有することを特徴とする、蛍光体。
(A11-aA2)(A31-cA41219 ・・・(2)
ただし、
A1はMg以外のアルカリ土類金属元素の中から選ばれる一つ以上の金属元素を示し、
A2はSc以外の希土類金属元素の中から選ばれる一つ以上の金属元素を示し、
A3は少なくともAlを含む一つ以上の金属元素を示し、
A4はCr、Mn、Fe、Ni、およびCuの中から選ばれる一つ以上の金属元素を示し、
Oは酸素を示し、
0≦a≦1、0<c≦0.5である。
【請求項9】
前記式(2)中の金属元素A3が、さらに、Mg、Zn、B、Ga、In、Sc、Si、Ge、Ti、Sn、Zr、およびHfの中から選ばれる一つ以上の金属元素を含む、請求項に記載の蛍光体。
【請求項10】
前記式(2)中の金属元素A3が、AlおよびGaを含む、請求項またはに記載の蛍光体。
【請求項11】
前記式(2)において、0<a≦1である、請求項10のいずれか1項に記載の蛍光体。
【請求項12】
前記式(2)中の金属元素A2が、少なくともTmを含む、請求項11のいずれか1項に記載の蛍光体。
【請求項13】
前記式(2)中の金属元素A1が、少なくともCaまたはSrを含む、請求項12のいずれか1項に記載の蛍光体。
【請求項14】
前記式(2)中の金属元素A4が、少なくともCrを含む、請求項13のいずれか1項に記載の蛍光体。
【請求項15】
発光ピーク強度が初期の発光ピーク強度の1/10となるまでの時間である残光時間が10ms以下である、請求項14のいずれか1項に記載の蛍光体。
【請求項16】
前記発光ピークの波形の半値幅が50nmを超える、請求項15のいずれか1項に記載の蛍光体。
【請求項17】
紫外光または可視光を発する半導体発光素子と、
該半導体発光素子から発せられた紫外光または可視光を吸収し赤外領域で発光する蛍光
体とを含む発光装置であり、
該赤外領域で発光する蛍光体が、請求項16のいずれか1項に記載の蛍光体であることを特徴とする、発光装置。
【請求項18】
波長750から1050nmまでの間に分光感度をもつ半導体受光素子と、請求項1~および17のいずれか1項に記載の発光装置とを含むことを特徴とする、画像認識装置。
【請求項19】
波長750から1050nmまでの間に分光感度をもつ半導体受光素子と、請求項1~および17のいずれか1項に記載の発光装置とを含むことを特徴とする、血液および/または食品を分析する分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子と蛍光体を含む発光装置に関し、特に半導体発光素子と赤外発光蛍光体との組み合わせによる赤外発光装置に関する。また、本発明は、赤外発光装置を作製するために好適な赤外発光を呈する蛍光体にも関する。
【背景技術】
【0002】
赤外光を発する発光装置として、GaAs系化合物半導体を材料とした赤外線発光ダイオードが知られており、赤外線発光ダイオードはセンサ等の領域で広く利用されている。
しかし、GaAs系化合物半導体発光ダイオードは、温度特性が悪く、汎用性が低い等の問題があった。さらに、GaAs系化合物半導体を材料とした赤外線発光ダイオードは、製造条件の微妙な変化により製品間で発光波長の振れが生じ、所定の発光波長を得るためには、赤外線発光ダイオードの収率が下がり価格が高くなるという問題もあった。そのため、これらの問題を解決し得るより良い赤外発光装置が望まれていた。そこで、汎用性が高いGaN系化合物半導体発光ダイオード素子と赤外発光蛍光体とを組み合わせて赤外発光装置を作製する試みがなされている。
【0003】
特許文献1は、GaN系化合物半導体青色発光ダイオード素子と、青色光を吸収して黄色および赤外光を発するYAG:Ce,Er系蛍光体と、紫外光または可視光を通さないためのフィルタからなる発光装置が開示されている。
また、特許文献2には、特定の認証システムに用いられる発光化合物として、磁気特性と赤外発光特性を併せ持つ赤外発光材料YAG:Fe,Erに関する記載がある。
一方で、非特許文献1には、紫外光で励起され赤外光を発する発光材料として、CaAl1219:Pr3+,Cr3+およびSrAl1219:Pr3+,Crが開示されている。
非特許文献2には、広帯域の近赤外蛍光体としてSrGa1219:Crが開示されている。
また、特許文献3にはCr3+またはNi2+を付活元素とする赤外発光蛍光体を用いた赤外発光装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-233586号公報
【文献】特表2013-508809号公報
【文献】WO2016/174236
【非特許文献】
【0005】
【文献】Journal of Physics Condensed Matter,19 (2007) 076204
【文献】Chemistry An Asian journal, February 2014,1020-1025
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された赤外発光蛍光体であるYAG:Ce,Erでは、発光波長が1500nm付近であるため、検出器の受光素子であるSiが検出できる範囲より長波長過ぎて受光しても検出器で検知できないという課題があった。また、本蛍光体は青色でしか励起できないという課題があった。さらに、可視光を強く発する蛍光体を用いているため、赤外光のみが得られる発光装置を作製するためにはフィルタなどの手段を用いる必要があり、発光装置としての構造が複雑になるという問題が生じる。
【0007】
特許文献2で用いられた赤外線発光蛍光体材料では、Feといった磁気特性を併せ持つための元素がホスト格子に非常に多く含まれており、発光特性が著しく低下するという問題がある。また、Erの発光は1500nm付近であるため、前述したように検出器の検出範囲より長波長過ぎて検出器で検知できない課題があった。
【0008】
一方、非特許文献1には、CaAl1219:Cr3+およびSrAl1219:Cr3+が赤外光を発する発光材料として記載されているが、発光ピークの半値幅が狭い狭帯域での発光であり、該発光材料を用いた赤外発光装置では、検出器の検出範囲に制限が出るため適用可能な用途が限られるという課題がある。また、付活イオンとして記載されるPr3+がCr3+へエネルギー移動をさせる可能性が示唆されているが、これは上記の発光ピークの特徴を変化させることはないと考えられる。
また、非特許文献2や特許文献3にはCr3+を付活元素とする赤外発光蛍光体が開示されているが、一般的にCr3+を付活元素とする蛍光体は、発光波長が赤外領域の中では比較的短波長であり、残光時間が長い傾向があり発光装置として実用的に用いるのには問題がある。
【0009】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、可視光の範囲で発光する半導体発光素子と組み合わせることで検出器の感度が高い波長域において広帯域で発光する赤外発光蛍光体およびそれを用いた赤外発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、Si検出器の感度が高い波長域で赤外発光する赤外発光蛍光体であり、青色、緑色、赤色のいずれの半導体発光素子の発光によっても励起される赤外発光蛍光体を発見し、これを用いることにより上記課題を解決しうることを見出して本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は以下の[1]~[20]に存する。
【0011】
〔1〕紫外光または可視光を発する半導体発光素子と、
該半導体発光素子から発せられた紫外光または可視光を吸収し赤外領域で発光する蛍光体とを含む発光装置であり、
該赤外領域で発光する蛍光体の赤外領域における発光ピーク波長が波長750から1050nmまでの間であって、該発光ピークの波形の半値幅が50nmを超えることを特徴とする発光装置。
〔2〕前記赤外領域で発光する蛍光体が、発光ピーク強度が初期の発光ピーク強度の1/10となるまでの時間である残光時間が10ms以下である蛍光体のみからなる、〔1〕に記載の発光装置。
〔3〕前記赤外領域で発光する蛍光体が、波長700から850nmまでにおける反射率が80%以上である蛍光体のみからなる、〔1〕または〔2〕に記載の発光装置。
〔4〕前記赤外領域で発光する蛍光体が、波長700から850nmまでにおける反射率が、波長300から700nmまでにおける反射率よりも高く、その差が20%以上である、〔3〕に記載の発光装置。
〔5〕前記赤外領域で発光する蛍光体が、付活元素として、少なくともCrを含む、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の発光装置。
〔6〕前記赤外領域で発光する蛍光体が、付活元素として、少なくともEu2+またはSm2+を含む、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の発光装置。
〔7〕前記赤外領域で発光する蛍光体が、結晶相としてマグネットプランバイト構造を有する、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の発光装置。
〔8〕前記赤外領域で発光する蛍光体が、下記式(1)で表される、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の発光装置。
(M11-bM2)(M31-dM41219 ・・・(1)
ただし、
M1はMg以外のアルカリ土類金属元素の中から選ばれる一つ以上の金属元素を示し、
M2はSc以外の希土類金属元素の中から選ばれる一つ以上の金属元素を示し、
M3は少なくともGaを含み、かつMg、Zn、B、Al、In、Sc、Si、Ge、Ti、Sn、Zr、およびHfの中から選ばれる一つ以上の金属元素を含む、二つ以上の金属元素を示し、
M4はCr、Mn、Fe、Ni、およびCuの中から選ばれる一つ以上の金属元素を示し、
Oは酸素を示し、
0≦b≦1、0<d≦0.5である。
〔9〕下記式(2)で表される化学組成の結晶相を含有し、波長750nmから1050nmまでの間に発光ピーク波長を有することを特徴とする、蛍光体。
(A11-aA2)(A31-cA41219 ・・・(2)
ただし、
A1はMg以外のアルカリ土類金属元素の中から選ばれる一つ以上の金属元素を示し、
A2はSc以外の希土類金属元素の中から選ばれる一つ以上の金属元素を示し、
A3は少なくともAlを含む一つ以上の金属元素を示し、
A4はCr、Mn、Fe、Ni、およびCuの中から選ばれる一つ以上の金属元素を示し、
Oは酸素を示し、
0≦a≦1、0<c≦0.5である。
〔10〕前記式(2)中の金属元素A3が、さらに、Mg、Zn、B、Ga、In、Sc、Si、Ge、Ti、Sn、Zr、およびHfの中から選ばれる一つ以上の金属元素を含む、〔9〕に記載の蛍光体。
〔11〕前記式(2)中の金属元素A3が、AlおよびGaを含む、〔9〕または〔10〕に記載の蛍光体。
〔12〕前記式(2)において、0<a≦1である、〔9〕~〔11〕のいずれかに記載の蛍光体。
〔13〕前記式(2)中の金属元素A2が、少なくともTmを含む、〔9〕~〔12〕のいずれかに記載の蛍光体。
〔14〕前記式(2)中の金属元素A1が、少なくともCaまたはSrを含む、〔9〕~〔13〕のいずれかに記載の蛍光体。
〔15〕前記式(2)中の金属元素A4が、少なくともCrを含む、〔9〕~〔14〕のいずれかに記載の蛍光体。
〔16〕発光ピーク強度が初期の発光ピーク強度の1/10となるまでの時間である残光時間が10ms以下である、〔9〕~〔15〕のいずれかに記載の蛍光体。
〔17〕前記発光ピークの波形の半値幅が50nmを超える、〔9〕~〔16〕のいずれかに記載の蛍光体。
〔18〕紫外光または可視光を発する半導体発光素子と、
該半導体発光素子から発せられた紫外光または可視光を吸収し赤外領域で発光する蛍光体とを含む発光装置であり、
該赤外領域で発光する蛍光体が、〔9〕~〔17〕のいずれかに記載の蛍光体であることを特徴とする、発光装置。
〔19〕波長750から1050nmまでの間に分光感度をもつ半導体受光素子と、〔1〕~〔8〕および〔18〕のいずれかに記載の発光装置とを含むことを特徴とする、画像認識装置。
〔20〕波長750から1050nmまでの間に分光感度をもつ半導体受光素子と、〔1〕~〔8〕および〔18〕のいずれかに記載の発光装置とを含むことを特徴とする、血液および/または食品を分析する分析装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、Si検出器の検出感度が高い750~1050nmで、広帯域に発光する赤外発光装置を提供しうる。また、フィルタなどの複雑な構成をとらずとも所望の赤外発光のみが得られる発光装置を提供することができる。
また、本発明によれば、Si検出器の検出感度が高い750~1050nmで発光する赤外発光蛍光体を提供しうる。当該蛍光体は、所望の赤外波長を発光し、それ以外の波長の発光が極めて少ない蛍光体であるため、発光効率の高い蛍光体である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1の蛍光体の励起・発光スペクトルを示す。
図2】実施例1の蛍光体のXRDパターンを示す。
図3】実施例2の蛍光体の励起・発光スペクトルを示す。
図4】実施例2の蛍光体のXRDパターンを示す。
図5】実施例3の蛍光体の励起・発光スペクトルを示す。
図6】実施例3の蛍光体のXRDパターンを示す。
図7】実施例4の蛍光体の励起・発光スペクトルを示す。
図8】実施例4の蛍光体のXRDパターンを示す。
図9】実施例5の蛍光体の励起・発光スペクトルを示す。
図10】実施例5の蛍光体のXRDパターンを示す。
図11】実施例6の蛍光体の励起・発光スペクトルを示す。
図12】実施例6の蛍光体のXRDパターンを示す。
図13】実施例7の蛍光体の励起・発光スペクトルを示す。
図14】実施例7の蛍光体のXRDパターンを示す。
図15】実施例8の蛍光体の励起・発光スペクトルを示す。
図16】実施例8の蛍光体のXRDパターンを示す。
図17】実施例9の蛍光体の励起・発光スペクトルを示す。
図18】実施例9の蛍光体のXRDパターンを示す。
図19】実施例10の蛍光体の励起・発光スペクトルを示す。
図20】実施例10の蛍光体のXRDパターンを示す。
図21】実施例11の蛍光体の励起・発光スペクトルを示す。
図22】実施例11の蛍光体のXRDパターンを示す。
図23】実施例12の蛍光体の励起・発光スペクトルを示す。
図24】実施例12の蛍光体のXRDパターンを示す。
図25】実施例1の蛍光体の反射率スペクトルを示す。
図26】実施例2の蛍光体の反射率スペクトルを示す。
図27】実施例13の蛍光体の励起・発光スペクトルを示す。
図28】実施例13の蛍光体のXRDパターンを示す。
図29】実施例14の蛍光体の励起・発光スペクトルを示す。
図30】実施例14の蛍光体のXRDパターンを示す。
図31】実施例15の蛍光体の励起・発光スペクトルを示す。
図32】実施例15の蛍光体のXRDパターンを示す。
図33】実施例16の蛍光体の励起・発光スペクトルを示す。
図34】実施例16の蛍光体のXRDパターンを示す。
図35】実施例17の蛍光体の励起・発光スペクトルを示す。
図36】実施例17の蛍光体のXRDパターンを示す。
図37】実施例18の蛍光体のXRDパターンを示す。
図38】実施例18の蛍光体の励起・発光スペクトルを示す。
図39】実施例19の蛍光体の発光スペクトルを示す。
図40】実施例19の蛍光体のXRDパターンを示す。
図41】実施例20の蛍光体の発光スペクトルを示す。
図42】実施例20の蛍光体のXRDパターンを示す。
図43】実施例21の発光装置の発光スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書中の蛍光体の組成式において、各組成式の区切りは読点(、)で区切って表わす。また、カンマ(,)で区切って複数の元素を列記する場合には、列記された元素のうち一種又は二種以上を任意の組み合わせ及び組成で含有していてもよいことを示している。
【0015】
<1.発光装置>
本発明の第一の発明に係る発光装置は、紫外光または可視光を発する半導体発光素子と、該半導体発光素子から発せられた紫外光または可視光を吸収し赤外領域で発光する蛍光体(以下、「赤外蛍光体」と称する場合がある)とを含み、該赤外領域で発光する蛍光体の赤外領域における発光ピーク波長が波長750から1050nmまでの間であって、該発光ピークの波形の半値幅が50nmを超えることを特徴とする。
ここで、本明細書において紫外光とは、波長400nm未満の光を意味し、可視光とは、波長400nm~700nmの光を意味する。
【0016】
{半導体発光素子}
本発明の第一の発明に係る発光装置で用いられる半導体発光素子は、紫外光または可視光を発し、励起光源として機能するものであれば特に限定されない。半導体発光素子として汎用的に用いられているため価格が安く入手が容易であることから、半導体発光素子からの発光ピーク波長が、波長300から700nmまでの間にあることが好ましい。より好ましくは、発光ピークの波長が350~680nm、さらに好ましくは420~480nmまたは600~650nmである。いわゆる、青色発光素子または赤色発光素子を好ましく用いることができる。
ここで、発光ピーク波長とは、波長300から700nmの間における発光ピークのうち最も大きいピークを意味する。
【0017】
{赤外蛍光体}
本発明の第一の発明に係る発光装置で用いられる蛍光体は、半導体発光素子から発せられた紫外光または可視光を吸収し赤外領域で発光する赤外蛍光体であり、赤外領域における発光ピーク波長が波長750から1050nmまでの間であって、該発光ピークの波形の半値幅が50nmを超えることを特徴とする。
ここで、赤外蛍光体の赤外領域における発光ピークとは、単一種の蛍光体において、波長750から1050nmまでの間に存在する一又は複数の発光ピークを意味する。好ましくは、波長750から1050nmまでの間における発光ピークのうち最も大きい発光ピークを意味する。よって、赤外領域における発光ピーク波長とは、波長750から1050nmまでの間に存在する一又は複数の発光ピークを生ずる一又は複数の波長を意味し、好ましくは、波長750から1050nmまでの間における発光ピークのうち最も大きい発光ピークを生ずる波長を意味する。
また、発光ピークの波形の半値幅とは、通常には波長750から1050nmまでの間における発光ピークの半値になる波長2点間を意味する。尚、発光ピークが重なっている場合は、重なっている発光ピークのうち最も大きい発光ピークの半値になる波長2点間を意味する。たとえば、図9に示される実施例の蛍光体の発光スペクトルにおいては、773nmと793nmにそれぞれ発光ピークを有し、波形が一部重なっているが、最大発光ピークは793nmにあり、該最大発光ピークの半値となる波長の756nmと848nmとの2点間を測定して半値幅として算出した。
また、赤外蛍光体の発光ピークの半値幅が50nmを超えるとは、波長750から1050nmまでの間における発光ピークのうち一つ以上の発光ピークの半値幅が50nmを超えることを意味する。
【0018】
[発光スペクトル]
本発明の第一の発明に係る発光装置で用いられる赤外蛍光体は、ピーク波長300nm以上、700nm以下の光で励起して発光スペクトルを測定した場合に、以下の特徴を有することが好ましい。
上述の発光スペクトルにおける発光ピーク波長λp(nm)が、通常750nm以上、より好ましくは770nm以上、更に好ましくは780nm以上、また通常1050nm以下、より好ましくは1000nm以下、さらに好ましくは950nm以下である。
上記範囲内であると、好適な赤外発光を有する点で好ましい。
【0019】
また本発明の第一の発明に係る発光装置で用いられる赤外蛍光体は、上述の発光スペクトルにおける発光ピーク波長の半値幅が、通常50nmを超え、好ましくは60nm以上、より好ましくは70nm以上、それより好ましくは100nm以上、さらに好ましくは150nm以上であって、また通常500nm以下の範囲である。
【0020】
発光スペクトルにおける発光ピーク波長の半値幅が、上記範囲内であると、本発明の第一の発明に係る発光装置が広い波長範囲の赤外光源として使いやすい傾向にあるため好ましい。通常、赤外発光装置からの発光は、その用途に応じて種々の検出器で検出されるため、検出器の検出波長に対応する発光が強いことが好ましい。
一方で、検出器の検出波長は種々使い分けられているため、これらの多岐にわたる検出波長に対応する赤外発光装置を作製することが、製品効率の観点から求められている。従来は、異なる発光ピーク波長を有する種々の赤外蛍光体を組み合わせて、広帯域での発光を有する発光装置が開発されてきた。しかし、そのような発光装置の発光波長はムラが生じ、種々の検出波長に対応する赤外光源としては、実用的ではなかった。
【0021】
本発明者らの検討に拠れば、より広帯域な発光ピーク波長を有する蛍光体を用いて発光装置を作製することにより、赤外領域においてムラなく、広い波長範囲の赤外発光を得ることができことを見出した。また、安定性や残光時間等の、発光波長以外の点で性能に劣る蛍光体を併用せずに済むため、発光装置としての特性に優れ得る。このような赤外発光装置は、多数の用途の赤外光源に適用できるため好ましい。
【0022】
なお、上記の赤外蛍光体をピーク波長300nm以上、700nm以下の光で励起するには、例えば、キセノン光源を用いることができる。また、蛍光体の発光スペクトルの測定は、例えば、蛍光分光光度計F-4500やF-7000(日立製作所製)等を用いて行うことができる。発光ピーク波長および発光ピークの波形の半値幅は、得られる発光スペクトルから算出することができる。
【0023】
[励起スペクトル]
本発明の第一の発明に係る発光装置で用いられる赤外蛍光体は、通常300nm以上、好ましくは350nm以上、より好ましくは400nm以上、また、通常700nm以下、好ましくは650nm以下、より好ましくは600nm以下の波長範囲に励起ピークを有する。即ち、近紫外から深赤色領域の光で励起される。
【0024】
[残光時間]
本発明の第一の発明に係る発光装置で用いられる赤外蛍光体は、発光ピーク強度が初期の発光ピーク強度の1/10となるまでの時間である残光時間が10ms以下であることが好ましい。より好ましくは8ms以下、更に好ましくは6ms以下であって、通常1ns以上である。残光時間が短い場合、発光装置に使用する蛍光体の使用量を減らすことができる傾向にある。更に画像表示する際、動作が速い画像が表示されやすくなる傾向にあるため好ましい。また、上記発光ピーク強度は、赤外領域における発光ピーク強度であることが好ましい。
なお、残光時間は通常の蛍光分光光度計で測定することができる。例えば、以下の方法で測定できる。
蛍光分光光度計F-7000(日立製作所製)を用い、室温(25℃)で波長455nmの励起光を一度照射して、照射を止めた後の発光ピークの強度変化を測定する。初期強度を1.0とし、初期強度の1/10となる時間を残光時間とする。
本発明の第一の発明に係る発光装置では、複数の赤外蛍光体を組み合わせて用いることができるが、いずれの赤外蛍光体も、残光時間が上記の範囲にあることが好ましい。すなわち、本発明の第一の発明に係る発光装置で用いられる赤外蛍光体は、発光ピーク強度が初期の発光ピーク強度の1/10となるまでの時間である残光時間が10ms以下である蛍光体のみからなることが好ましい。それにより、得られる発光装置自体の残光時間を10ms以下の範囲に調整することができる。
【0025】
[反射率]
本発明の第一の発明に係る発光装置で用いられる赤外蛍光体は、発光波長領域における反射率が高いことが好ましい。このような蛍光体を選択することにより、本発明の第一の発明に係る発光装置の発光効率を高くすることができる。
具体的には、本発明の発光装置で用いられる赤外蛍光体は、波長700から850nmまでにおける反射率が80%以上である蛍光体のみからなることが好ましく、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。
また、本発明の第一の発明に係る発光装置で用いられる赤外蛍光体は、波長700から850nmまでにおける反射率(R1)が、波長300から700nmまでにおける反射率(R2)よりも高く、その差が20%以上であることが好ましく、より好ましくは25%以上、さらに好ましくは30%以上である。
[安定性]
本発明の第一の発明に係る発光装置で用いられる赤外蛍光体は、耐水性、耐熱性が高く安定であることが好ましい。
このような蛍光体を選択することにより、本発明の第一の発明に係る発光装置の耐久性が向上し長時間使用を可能にすることができる。
【0026】
[量子効率・吸収効率]
本発明の第一の発明に係る発光装置で用いられる赤外蛍光体における外部量子効率(η)は、通常25%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上である。外部量子効率は高いほど蛍光体の発光効率が高くなるため好ましい。
本発明の第一の発明に係る発光装置で用いられる赤外蛍光体における内部量子効率(η)は、通常30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上である。内部量子効率は、赤外蛍光体が吸収した励起光の光子数に対する発光した光子数の比率を意味する。このため内部量子効率が高いほど赤外蛍光体の発光効率や発光強度が高くなるため好ましい。
本発明の第一の発明に係る発光装置で用いられる赤外蛍光体における吸収効率は、通常30%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは60%以上である。吸収効率が高いほど、蛍光体の発光効率が高く、赤外蛍光体の使用量が少なくなるため好ましい。
【0027】
[組成]
本発明の第一の発明に係る発光装置で用いられる赤外蛍光体は、所望の発光ピーク波長を有していれば、特にその組成や結晶構造は限定されない。特に、赤外領域における発光ピーク波長が波長750から1050nmまでの間とするためには、付活元素として、Cr、Eu2+、及びSm2+からなる群から選択される1以上の元素を含むことが好ましい。Crを含むことにより所望の波長での発光を得やすくなる。また、Eu2+またはSm2+を含むことにより、広い励起帯と高い吸収強度を得ることができ、発光装置に使用する赤外蛍光体の使用量が少なくなる傾向にある。
また、半導体発光素子からの励起光を吸収し増感する増感剤または赤外発光する付活元素として、希土類金属元素およびCr以外の遷移金属元素を含んでいてもよい。希土類金属元素およびCr以外の遷移金属元素としては、Mn、Cuなどがあげられる。
【0028】
また、得られる発光ピーク波長λp(nm)を変更させたい場合にも、付活元素としてCr以外の元素を併用することが好ましい。例えば、希土類金属元素を併用した場合には、Crからの発光に希土類金属元素からの発光が加わるので、より広い発光波長範囲とすることができる。
なお、赤外蛍光体の組成は、一般的に知られる手法で確認することができる。例えば、X線回折(XRD)、蛍光X線分析(XRF)、走査型電子顕微鏡とエネルギー分散型X線分光器による組成分析(SEM-EDX)、電子マイクロアナライザー(EPMA)、誘導結合プラズマ発光分析(ICP―OES)、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)、原子吸光分析(AAS)、イオンクロマトグラフ(IC)により測定することができる。
【0029】
本発明の第一の発明に係る発光装置で用いられる赤外蛍光体は、結晶相として、種々の結晶構造を有することができ、例えば、ぺロブスカイト、ガーネット、マグネットプランバイト構造等が挙げられる。
本発明の第一の発明に係る発光装置で用いられる赤外蛍光体として、具体的には、例えば、下記式(1)で表される蛍光体が挙げられる。
(M11-bM2)(M31-dM41219 ・・・(1)
ただし、
M1はMg以外のアルカリ土類金属元素の中から選ばれる一つ以上の金属元素を示し、
M2はSc以外の希土類金属元素の中から選ばれる一つ以上の金属元素を示し、
M3は少なくともGaを含み、かつMg、Zn、B、Al、In、Sc、Si、Ge、Ti、Sn、Zr、およびHfの中から選ばれる一つ以上の金属元素を含む、二つ以上の金属元素を示し、
M4はCr、Mn、Fe、Ni、およびCuの中から選ばれる一つ以上の金属元素を示し、
Oは酸素を示し、
0≦b≦1、0<d≦0.5である。
【0030】
M1はマグネシウム(Mg)以外のアルカリ土類金属元素の中から選ばれる一つ以上の金属元素を表す。このような金属元素としては、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)が挙げられる。
尚、M1は、本発明の第一の発明に係る発光装置で用いられる赤外蛍光体としての効果を損なわない範囲で他の元素で一部置換されていてもよい。他の元素としては、例えば、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)などが挙げられる。
【0031】
M2はスカンジウム(Sc)以外の希土類金属元素の中から選ばれる一つ以上の金属元素を表す。このような金属元素としては、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホロミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)が挙げられる。なかでも、好ましくはLa、Nd、Tm、Ybが挙げられる。
【0032】
M3は少なくともガリウム(Ga)を含み、かつマグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、スカンジウム(Sc)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、チタン(Ti)、スズ(Sn)、ジルコニウム(Zr)、およびハフニウム(Hf)の中から選ばれる一つ以上の金属元素を含む、二つ以上の金属元素を示す。M3がGaのみからなる場合に比べて、Ga以外の金属元素を含んでいると、蛍光体の耐水性、耐熱性が高く、安定した蛍光体となるため好ましい。特に、赤外発光装置として用いる場合に、発光装置自体の安定性を高めることとなり好ましい。
【0033】
M3は、付活元素を付活しやすい理由から少なくともGaおよびAlを含むことが好ましく、M3の10モル%以上がAlおよび/またはGaであることがより好ましく、M3の50モル%以上がAlおよび/またはGaであることがさらに好ましく、AlおよびGaであることがよりさらに好ましい。
また、M3におけるGa以外の金属元素の比率は、10モル%以上であることが好ましく、より好ましくは20モル%以上、さらに好ましくは30モル%以上である。
M3において、GaとGa以外の金属元素とが含まれることによって、励起波長および発光波長の調整が可能になり、目的の発光装置に適した赤外蛍光体を提供しやすくなる傾向にある。
【0034】
M4はクロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、および銅(Cu)の中から選ばれる一つ以上の金属元素を示す。紫外光、可視光を吸収しやすい理由から少なくともCrまたはMnを含むことが好ましく、M4の10モル%以上がCrおよび/またはMnであることが好ましく、CrまたはMnであることがさらに好ましい。また、Feなどの磁気特性を有する金属元素が50モル%以下であることが好ましい。
【0035】
Oは酸素を示し、本発明の第一の発明に係る発光装置で用いられる赤外蛍光体の効果を損なわない範囲で他の元素で一部置換されていてもよい。他の元素としては、例えば、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、硫黄(S)、窒素(N)などが挙げられる。
【0036】
1-bは、M1の含有量を表し、その範囲は、通常0≦1-b≦1であり、下限値は、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.7以上、また上限値は、好ましくは0.99以下、より好ましくは0.90以下である。
bは、M2の含有量を表し、その範囲は、通常0≦b≦1であり、下限値は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、また上限値は、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下である。
1-dは、M3の含有量を示し、その範囲は、通常0.5≦1-d<1であり、下限値は、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上、また上限値は、好ましくは0.999以下、より好ましくは0.990以下である。
dは、M4の含有量を示し、その範囲は、通常0<d≦0.5であり、下限値は、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、特に好ましくは0.01以上、また上限値は、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.2以下、特に好ましくは0.015以下である。
【0037】
本発明の第一の発明に係る発光装置で用いられる赤外蛍光体として、特に好ましい具体例としては、後述するCr3+付活酸化物蛍光体が挙げられる。また、上記式(1)で表される蛍光体は、後述するCr3+付活酸化物蛍光体の製造方法に準じて作製することができる。
【0038】
{発光装置}
本発明の第一の発明に係る発光装置は、第1の発光体(励起光源)として上述の半導体発光素子と、当該第1の発光体から発せられた紫外光または可視光を吸収し赤外光を発する第2の発光体として上述の赤外蛍光体とを含む発光装置である。ここで、該赤外蛍光体としては、何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。発光装置として後述する発光スペクトルが得られるように、2種以上の赤外蛍光体を任意に組み合わせて用いることが好ましい。より具体的には、少なくとも波長750から900nmまでの間に発光ピークを有する赤外蛍光体を一つ以上と、波長900から1050nmまでの間に発光ピークを有する赤外蛍光体を一つ以上とを含むことが好ましい。
【0039】
[発光装置の構成]
発光装置は、第1の発光体(励起光源)を有し、且つ、第2の発光体として少なくとも上述の赤外蛍光体を使用している他は、その構成は制限されず、公知の装置構成を任意にとることが可能である。
装置構成および発光装置の実施形態としては、例えば、特開2007-291352号公報に記載のものが挙げられる。
その他、発光装置の形態としては、砲弾型、カップ型、チップオンボード、リモートフォスファー等が挙げられる。
【0040】
[発光装置の発光スペクトル]
本発明の第一の発明に係る発光装置は、発光スペクトルを測定した場合に、以下の特徴を有することが好ましい。発光装置に用いられる赤外蛍光体が1種の場合には、発光装置の発光スペクトルは、用いる赤外蛍光体の発光スペクトルに対応すると考えられるが、複数の赤外蛍光体を用いる場合には、以下の特徴を備えるように赤外蛍光体を選択することが好ましい。
発光スペクトルにおける発光ピークが、通常750から1050nmまでの間により多く存在することが好ましい。また、発光装置の用途に拠るが、その下限は、好ましくは770nm以上、更に好ましくは780nm以上であり、一方で上限は1050nm以下が好ましい。
【0041】
さらに、複数の赤外蛍光体を用いる場合には、赤外蛍光体の組み合わせによる発光装置の発光スペクトルにおいて、発光ピークの強度(P1)に対する、該発光ピークに隣接する発光ピークとの間にある谷の発光強度(P2)の発光強度比(P2/P1)が小さいことが好ましい。P2/P1は、通常0.01以上、好ましくは0.02以上、さらに好ましくは0.03以上、特に好ましくは0.05以上であって、また通常0.5以下、好ましくは、0.4以下、さらに好ましくは、0.3以下、特に好ましくは0.2以下である。
【0042】
また、本発明の第一の発明に係る発光装置の発光スペクトルにおいて、各発光ピークの波形の半値幅が、通常50nmを超え、好ましくは60nm以上、より好ましくは70nm以上、それより好ましくは100nm以上、さらに好ましくは150nm以上であって、また通常500nm以下、好ましくは475nm以下、より好ましくは450nm以下、それより好ましくは400nm以下、さらに好ましくは350nm以下である。
なお、発光装置の発光スペクトルにおける発光ピークの波形の半値幅とは、通常には波長750から1050nmまでの間における発光ピークの半値になる波長2点間を意味する。尚、複数種の赤外蛍光体を用いる場合には複数の発光ピークが重なっている場合がある。その場合には、重なっている発光ピークのうち最も大きい発光ピークの半値になる波長2点間を半値幅と考えればよい。
【0043】
[残光時間]
本発明の第一の発明に係る発光装置は、発光ピーク強度が初期の発光ピーク強度の1/10となるまでの時間である残光時間が10ms以下であることが好ましい。より好ましくは8ms以下、更に好ましくは6ms以下であって、通常1ns以上である。残光時間が短い場合、パルス光源として用いる場合や、発光波長の切り替えを伴うような用途の光源として用いる場合に残光の影響を低減できるため好ましい。また、上記発光ピーク強度は、赤外領域における発光ピーク強度であることが好ましい。
なお、発光装置の残光時間は、通常のLED発光装置の測定装置で測定することができる。
【0044】
{発光装置の用途}
発光装置の用途は特に制限されず、通常の赤外発光装置が用いられる各種の分野に使用することが可能である。例えば、赤外監視装置の光源、赤外センサーの光源、医療用診断装置の赤外光源、光電スイッチやテレビゲーム・ジョイスティックのような送信エレメントの光源なども用いることができる。
具体的には、波長750から1050nmまでの間に分光感度をもつ半導体受光素子と当該発光装置とを含む画像認識装置や、波長750から1050nmまでの間に分光感度をもつ半導体受光素子と当該発光装置とを含む、血液および/または食品を分析する分析装置等とすることができる。
【0045】
<2.蛍光体1>
本発明の第二の発明は、下記式(2)で表される化学組成を有する結晶相を含有し、波長750から1050nmまでの間に発光ピーク波長を有することを特徴とする、蛍光体である。
(A11-aA2)(A31-cA41219 ・・・(2)
ただし、
A1はMg以外のアルカリ土類金属元素の中から選ばれる一つ以上の金属元素を示し、
A2はSc以外の希土類金属元素の中から選ばれる一つ以上の金属元素を示し、
A3は少なくともAlを含む一つ以上の金属元素を示し、
A4はCr、Mn、Fe、Ni、およびCuの中から選ばれる一つ以上の金属元素を示し、
Oは酸素を示し、
0≦a≦1、0<c≦0.5である。
【0046】
[組成]
A1はマグネシウム(Mg)以外のアルカリ土類金属元素の中から選ばれる一つ以上の金属元素を表す。このような金属元素としては、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)が挙げられる。中でも、少なくともCaまたはSrを含むことが好ましく、より好ましくはCaまたはSrが50モル%以上、それより好ましくは80モル%以上、さらに好ましくはCaまたはSrである。後述のA3において、Al以外の金属元素の割合を多くする場合には、蛍光体の安定性が高くなることからSrを含むことが好ましい。
尚、A1は、赤外蛍光体としての効果を損なわない範囲で他の元素で一部置換されていてもよい。他の元素としては、例えば、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)などが挙げられる。これらの元素は、A1の一部がA2に置換される場合の電荷補償のために用いられることが好ましい。
【0047】
A2はスカンジウム(Sc)以外の希土類金属元素の中から選ばれる一つ以上の金属元素を表す。このような金属元素としては、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホロミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)が挙げられる。なかでも、好ましくはLa、Nd、Tm、Ybが挙げられ、少なくともTmを含むことが好ましい。Tmは50モル%以上がより好ましく、それより好ましくは80モル%以上、さらに好ましくはTmである。
【0048】
A3は少なくともアルミニウム(Al)を含む一つ以上の金属元素を表す。A3は、さらにAl以外の2種以上の金属元素を含んでもよい。ここで、Al以外の金属元素は、A1、A2、およびA4と異なる金属元素であれば特に限定されない。前述のA1、A2、およびA4と異なる金属元素を含まない場合には、A3の20モル%以上がAlであることが好ましく、より好ましくは50モル%以上がAlであり、それより好ましくは80モル%以上がAlであり、さらに好ましくはA3がAlである。
A3としては、Alに加えて、さらに、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、スカンジウム(Sc)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、チタン(Ti)、スズ(Sn)、ジルコニウム(Zr)、およびハフニウム(Hf)の中から選ばれる一つ以上の金属元素を含むことが好ましい。特に、AlおよびGaを含むことが好ましく、A3におけるAlとGaの比率はAl/(Al+Ga)が10モル%以上であることが好ましい。A3がAlのみからなる場合に比べて、Al以外の金属元素を含むことによって、蛍光体の励起波長と発光波長を制御しやすくなるため好ましい。特に、赤外発光装置として用いる場合に、発光装置自体の発光波長を制御しやすくなるため、好ましい。これは、後述する通り、蛍光体の結晶構造において、Alに置換して導入される付活元素と配位している酸素との結合距離が大きくなる方に変化する、または結合角が変化するため、発光波長が長波長側に調整されやすくなる傾向があるためであると考えられる。
【0049】
付活元素を付活しやすい理由から、A3は少なくともAlおよびGaを含むことが好ましく、A3の10モル%以上がAlおよびGaであることがより好ましく、より好ましくは50モル%以上がAlおよびGaであって、A3はAlおよびGaであることがさらに好ましい。
また、A3におけるAl以外の金属元素の比率は、10モル%以上であることが好ましく、より好ましくは20モル%以上、さらに好ましくは30モル%以上である。また、上限値は特に限定されないが、Gaの場合には、該Gaは80モル%以下であることが好ましく、より好ましくは70モル%以下、さらに好ましくは60モル%以下である。Al以外の金属元素の比率が高過ぎると、蛍光体の安定性が下がる傾向にあるので好ましくない。
【0050】
A4はクロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、および銅(Cu)の中から選ばれる一つ以上の金属元素を示し、紫外光、可視光を吸収しやすい理由から少なくともCrを含むことが好ましく、A4の10モル%以上がCrであることがより好ましく、それより好ましくは50モル%以上がCrであり、A4がCrであることがさらに好ましい。Crは、紫外光または可視光における吸収が強く、赤外領域で広い範囲で発光することが可能である。
また、Feなどの磁気特性を有する金属元素が50モル%以下であることが好ましい。
【0051】
Oは酸素を示し、本発明の第二の発明に係る蛍光体の効果を損なわない範囲で他の元素で一部置換されていてもよい。他の元素としては、例えば、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、硫黄(S)、窒素(N)などが挙げられる。
【0052】
式(2)において、1-aは、A1の含有量を表し、その範囲は、通常0≦1-a≦1であり、下限値は、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.7以上、また上限値は、好ましくは0.99以下、より好ましくは0.90以下である。
【0053】
式(2)において、aは、A2の含有量を表し、その範囲は、通常0≦a≦1であり、好ましくは0<a≦1である。下限値は、より好ましくは0.01以上、それより好ましくは0.05以上、また上限値は、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下である。
0<a≦1の場合には、付活元素が2種以上含まれる蛍光体となる。2種以上の付活元素は、それぞれ増感イオンと発光イオンとして機能することができ、所望の発光波長の調整が容易となるため好ましい。
【0054】
式(2)において、1-cは、A3の含有量を示し、その範囲は、通常0.5≦1-c<1であり、下限値は、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上、また上限値は、好ましくは0.999以下、より好ましくは0.990以下である。
【0055】
式(2)において、cは、A4の含有量を示し、その範囲は、通常0<c≦0.5であり、下限値は、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、特に好ましくは0.01以上、また上限値は、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.2以下、特に好ましくは0.015以下である。
【0056】
[結晶構造]
本発明の第二の発明に係る蛍光体は、マグネットプランバイト構造である結晶相を有することが好ましい。
本発明の第二の発明に係る蛍光体は、蛍光体の結晶相の格子体積が585.8Å以上、661.10Å未満の範囲にあることが好ましい。格子体積を上記範囲に調整することによって、発光波長の範囲を750nm以上に調整することが容易になる。特に、従来、主発光ピークが700nm以下の発光を示すことが知られている、Crを付活元素として用いた蛍光体においても、驚くべきことに、本発明者らの検討により750nm以上の波長範囲で発光する蛍光体とすることが可能となった。
格子体積を上記範囲にするための達成手段としては、特に限定されないが、式(2)中のA3においてAlより大きい元素、たとえばGaを一部置換する、または、式(2)中のA1において、アルカリ土類金属元素であってCaより大きい元素、たとえばSrまたはBaを一部置換する、または、高温焼成による欠陥を導入しその結果、格子体積を目的の範囲内にすることなどが挙げられる。
【0057】
本発明の第二の発明に係る蛍光体の特性(発光スペクトル、励起スペクトル、残光時間、安定性、量子効率・吸収効率)の説明としては、第一の発明における「赤外蛍光体」の説明を援用する。
【0058】
本発明の第二の発明に係る蛍光体は、紫外光または可視光を発する半導体発光素子と組み合わせて発光装置とすることができる。
すなわち、紫外光または可視光を発する半導体発光素子と、該半導体発光素子から発せられた紫外光または可視光を吸収し赤外領域で発光する蛍光体とを含む発光装置であり、該赤外領域で発光する蛍光体は、前記式(2)で表される化学組成の結晶相を含有し、波長750nmから1050nmまでの間に発光ピーク波長を有することを特徴とする蛍光体である、発光装置を構成することができる。当該発光装置の特性の説明としては、第一の発明における「発光装置」の説明を援用する。
【0059】
<3.蛍光体2>
本発明の第三の発明は、後述する式(1’)で表される化学組成であって、マグネットプランバイト構造を有する結晶相を含有し、波長750から1050nmまでの間に発光ピーク波長を有し、該発光ピークの波形の半値幅が50nm以上であることを特徴とする、Cr3+付活酸化物蛍光体である。
(M11-bM2)(M31-dM41219 ・・・(1’)
ただし、
M1はMg以外のアルカリ土類金属元素の中から選ばれる一つ以上の金属元素を示し、
M2はSc以外の希土類金属元素の中から選ばれる一つ以上の金属元素を示し、
M3は少なくともGaを含み、かつMg、Zn、B、Al、In、Sc、Si、Ge、Ti、Sn、Zr、およびHfの中から選ばれる一つ以上の金属元素を含む、二つ以上の金属元素を示し、
M4はCr、Mn、Fe、Ni、およびCuの中から選ばれる一つ以上の金属元素を示し、
Oは酸素を示し、
0≦b≦1、0<d≦0.5である。
【0060】
M1はMg以外のアルカリ土類金属元素の中から選ばれる一つ以上の金属元素を表す。具体例および好ましい範囲などは前述の式(1)におけるM1と同様である。
M2はSc以外の希土類金属元素の中から選ばれる一つ以上の金属元素を示す。具体例および好ましい範囲などは前述の式(1)におけるM2と同様である。
M3は少なくともGaを含み、かつMg、Zn、B、Al、In、Sc、Si、Ge、Ti、Sn、Zr、およびHfの中から選ばれる一つ以上の金属元素を含む、二つ以上の金属元素を示す。具体例および好ましい範囲などは前述の式(1)におけるM3と同様である。特に、AlおよびGaを含むことが好ましく、M3におけるAlとGaの比率はAl/(Al+Ga)が10モル%以上であることが好ましい。
【0061】
M4はCr、Mn、Fe、Ni、およびCuの中から選ばれる一つ以上の金属元素を示す。M4の10モル%以上がCrであることがより好ましく、M4がCrであることがさらに好ましい。Crは、紫外光または可視光における吸収が強く、赤外領域で広い範囲で発光することが可能である。具体例および好ましい範囲などは前述の式(1)におけるM4と同様である。
【0062】
Oは酸素を示し、本発明の第三の発明に係る蛍光体の効果を損なわない範囲で他の元素で一部置換されていてもよい。他の元素としては、例えば、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、硫黄(S)、窒素(N)などが挙げられる。
【0063】
式(1’)中の1-b、b、1-d、dはそれぞれの元素の含有量を表すが、規定される数値範囲および好ましい範囲は、上記式(1)で詳述した範囲と同様に考えられる。
【0064】
本発明の第三の発明に係る蛍光体の特性(発光スペクトル、励起スペクトル、残光時間、安定性、量子効率・吸収効率)の説明としては、第一の発明における「赤外蛍光体」の説明を援用する。
【0065】
<4.蛍光体の製造方法>
以下では、本発明の第一の発明で用いられる蛍光体、ならびに第二の発明および第三の発明に係る蛍光体をまとめて、「本発明の蛍光体」や「本発明に係る蛍光体」などと称することがある。
本発明の蛍光体の製造方法は、それぞれの元素の塩化物、フッ化物、酸化物、炭酸塩、硝酸塩などの原料を混合する工程、焼成する工程、解砕する工程、洗浄・分級する工程を含むことができる。
【0066】
[蛍光体原料]
本発明の蛍光体の製造方法において使用される蛍光体原料としては、本発明の効果を損なわない限り公知のものを用いることができる。M1源、M2源、M3源、及びM4源の具体例を下記に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、M1源、M2源、M3源、及びM4源は、本発明の第二の発明においては、それぞれ、A1源、A2源、A3源、及びA4源と読み替えることができる。
M1源としては、M1元素を含む酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、塩化物、フッ化物、臭化物、ヨウ化物およびそれらの水和物を用いることができる。
M2源としては、M2元素を含む酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、塩化物、フッ化物、臭化物、ヨウ化物およびそれらの水和物を用いることができる。
M3源としては、M3元素を含む酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、塩化物、フッ化物、臭化物、ヨウ化物およびそれらの水和物を用いることができる。
M4源としては、M4元素を含む酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、塩化物、フッ化物、臭化物、ヨウ化物およびそれらの水和物を用いることができる。
【0067】
[混合工程]
目的組成が得られるように蛍光体原料を秤量し、ボールミル等を用いて十分混合したのち、容器に充填し、所定温度、雰囲気下で焼成し、焼成物を粉砕、洗浄すればよい。
具体的には、上記M1源、M2源、M3源、及びM4源を、M1~M4元素のモル比が、目的の組成式におけるモル比と一致するように秤量して、混合すればよい。
【0068】
上記混合手法としては、特に限定はされず、乾式混合法や湿式混合法のいずれであってもよい。
乾式混合法としては、例えば、ボールミルなどが挙げられる。
湿式混合法としては、例えば、前述の蛍光体原料に溶媒又は分散媒を加え、乳鉢と乳棒、を用いて混合し、溶液又はスラリーの状態とした上で、噴霧乾燥、加熱乾燥、又は自然乾燥等により乾燥させる方法である。
【0069】
[焼成工程]
得られた混合物を、各蛍光体原料と反応性の低い材料からなる容器に充填する。このような焼成時に用いる容器の材質としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はないが、例えば、アルミナ製の容器が挙げられる。
焼成温度は、圧力など、その他の条件によっても異なるが、通常300℃以上、2000℃以下の温度範囲で焼成を行なうことができる。焼成工程における最高到達温度としては、通常300℃以上、好ましくは1000℃以上、より好ましくは1300℃以上、また、通常2000℃以下、好ましくは1700℃以下である。
【0070】
焼成温度が高すぎると蛍光体の原子欠損により結晶構造内に欠陥が誘発されたりして発光特性が著しく低下する傾向にあり、低すぎると固相反応の進行が遅くなる傾向にあり、目的相の生成や粒成長が進みにくくなる場合がある。
焼成工程時の圧力は、焼成温度等によっても異なるが、通常0.01MPa以上、好ましくは0.05MPa以上であり、また、通常200MPa以下、好ましくは190MPa以下である。
【0071】
焼成工程における焼成雰囲気は、所望の蛍光体が得られる限り任意であるが、具体的には、大気雰囲気、窒素雰囲気、水素または炭素を含む還元雰囲気等が挙げられ、中でも還元雰囲気が好ましい。焼成回数は、所望の蛍光体が得られる限り任意であるが、一度、焼成した後に、得られる焼成体を解砕した後に、再び焼成しても良く、焼成回数に特に制限は無い。また、複数回焼成する際において、各焼成の雰囲気が異なっても良い。
【0072】
焼成時間は、焼成時の温度や圧力等によっても異なるが、通常1分間以上、好ましくは30分間以上、また、通常72時間以下、好ましくは12時間以下である。焼成時間が短すぎると粒子が成長しないため、特性のよい蛍光体を得ることができず、焼成時間が長すぎると構成している元素の揮発が促されるため、原子欠損により結晶構造内に欠陥が誘発され特性のよい蛍光体を得ることができない。
【0073】
[洗浄工程]
焼成して得られた蛍光体を分散・分級前に洗浄する工程(洗浄工程)を有しても良い。
蛍光体を合成する際に用いた、未反応の残留分を主とする不純物や原料の未反応分が蛍光体中に残留したり、副反応分などが蛍光体スラリー中に生成する傾向にある。
特性向上のためには、未反応の残留分や焼成時に生成した不純物をできる限り除去する必要がある。不純物を除去することができれば洗浄方法に特に制限はない。例えば塩酸、フッ化水素酸、硝酸、酢酸、硫酸などの酸類;水溶性の有機溶剤;アルカリ性溶液;およびそれらの混合溶液など、生成した蛍光体を任意の液で洗浄することができる。発光特性を著しく低下させない範囲内で、洗浄液に過酸化水素などの還元剤を含ませたり、洗浄液を加熱、冷却してもよい。
【0074】
洗浄液に蛍光体を浸漬する時間は、攪拌条件等によっても異なるが、通常10分以上、好ましくは1時間以上であり、また、通常72時間以下、好ましくは48時間以下である。また複数回洗浄を行ってもよいし、洗浄する液の種類や濃度を変えてもよい。
洗浄工程において、蛍光体を浸漬して洗浄する作業を行った後に、ろ過を行い、乾燥させることによって蛍光体を製造することができる。また、エタノールあるいはアセトン、メタノールなどを用いた洗浄を中間に入れてもよい。
【0075】
<5.蛍光体含有組成物>
本発明の蛍光体は、液体媒体と混合して用いることもできる。特に、本発明の蛍光体を発光装置等の用途に使用する場合には、これを液体媒体中に分散させた形態で用いることが好ましい。
【0076】
[蛍光体]
蛍光体含有組成物における蛍光体の種類に制限は無く、本発明の蛍光体から任意に選択することができる。また、該蛍光体は、1種のみであってもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。更に、該組成物には、本発明の蛍光体の効果を著しく損なわない限り、本発明の蛍光体以外の蛍光体を含有させてもよい。
【0077】
[液体媒体]
該組成物に使用される液体媒体としては、該蛍光体の性能を目的の範囲で損なわない限りにおいて特に限定されない。例えば、所望の使用条件下において液状の性質を示し、本発明の蛍光体を好適に分散させるとともに、好ましくない反応を生じないものであれば、任意の無機系材料および/又は有機系材料が使用でき、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミドシリコーン樹脂などが挙げられる。
【0078】
[液体媒体および蛍光体の含有率]
該組成物中の蛍光体および液体媒体の含有率は、本発明の蛍光体の効果を著しく損なわない限り任意であるが、液体媒体については、該組成物全体に対して、通常30重量%以上、好ましくは50重量%以上であり、通常99重量%以下、好ましくは95重量%以下である。
【0079】
[その他の成分]
なお、該組成物には、本発明の蛍光体の効果を著しく損なわない限り、蛍光体および液体媒体以外に、その他の成分を含有させてもよい。また、その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
【実施例
【0080】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
なお、下記の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限または下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は、前記上限または下限の値と下記実施例の値または実施例同士の値との組合せで規定される範囲であってもよい。
【0081】
{測定方法}
[発光スペクトル]
発光スペクトルは、蛍光分光光度計F-7000(日立製作所製)を用いて測定した。より具体的には、室温(25℃)で波長455nmの励起光を照射して500nm以上900nm以下の波長範囲内の発光スペクトルを得た。また、発光ピーク波長(以下、「ピーク波長」と称することがある。)は、得られた発光スペクトルから読み取った。
【0082】
[励起スペクトル]
励起スペクトルは、蛍光分光光度計F-7000(日立製作所製)を用いて測定した。より具体的には、室温(25℃)で発光ピークをモニターし、300nm以上750nm以下の波長範囲内の励起スペクトルを得た。
【0083】
[粉末X線回折測定]
粉末X線回折は、粉末X線回折装置D8 ADVANCE ECO(BRUKER社製)にて精密測定した。測定条件は以下の通りである。
CuKα管球使用
X線出力=40kV、25mA
発散スリット=自動
検出器=半導体アレイ検出器 LYNXEYE、Cuフィルター使用
走査範囲 2θ=5~65度
読み込み幅=0.025度
【0084】
[残光時間]
蛍光分光光度計F-7000(日立製作所製)を用い、室温(25℃)で波長455nmの励起光を一度照射して、照射を止めた後の発光ピークの強度変化を測定した。初期強度を1.0とし、初期強度の1/10となる時間を残光時間とした。
【0085】
[反射率]
反射率の測定は、分光光度計U-3310(日立製作所社製)を用いて行った。より具体的には、BaSO粒子と実施例の蛍光体粒子とを、それぞれ石英セルに敷き詰めた。BaSO粒子を基準試料とし、300nm以上900nm以下の波長範囲で、BaSO粒子の反射率に対する相対値として実施例の蛍光体粒子の反射率を測定した。
【0086】
{蛍光体の製造}
(実施例1)
原料として、市販のCaCO粉末(白辰化学社製8071073)、Al粉末(住友化学AKP-20)、Ga粉末(三井金属鉱業社製90402)、Cr粉末(キシダ化学社製B58840N)を用いて、合成後に得られる蛍光体がCa1.0Ga6.0Al5.88Cr0.1219となるように秤量した。
【0087】
これら原料をアルミナ製乳鉢の中でエタノールを添加してから湿式混合し、エタノールを自然乾燥してからアルミナ製の容器に入れ、混合原料を入れた容器を小型電気炉(モトヤマ社製 スーパーバーン)に設置し、大気下1500℃で8時間加熱することで、焼成体を得た。焼成体をアルミナ乳鉢内で大きい塊がなくなるまで解砕し、実施例1の蛍光体を得た。
【0088】
実施例1の蛍光体の励起・発光スペクトルを図1に示す。実施例1の蛍光体の発光ピーク波長は773nmで、発光ピーク波長の半値幅は170nmであった。図1において実線は波長455nmの励起光を照射した際の発光スペクトルを示し、点線は発光ピーク波長773nmに対する励起スペクトル示す。以上のことから実施例1の蛍光体は、可視光の励起によって広い範囲の赤外領域で発光することがわかる。実施例1の蛍光体に波長455nmの励起光を一度照射して、照射を止めた後、発光ピーク波長773nmにおける発光強度変化を測定した結果、初期強度の1/10になるまでの残光時間は4msであった。
また、実施例1の蛍光体について粉末X線回折測定を行って得られたXRDパターンを図2に示す。実施例1の蛍光体が単相Ca(Al,Ga)1219から成ることが判る。
【0089】
(実施例2)
原料として、市販のCaCO粉末(白辰化学社製8071073)、KCO粉末(和光純薬工業社製STE4006)、Tm粉末(信越化学工業社製 TM-04-001)、Al粉末(住友化学AKP-20)、Ga粉末(三井金属鉱業社製90402)、Cr粉末(キシダ化学社製B58840N)を用いて、合成後に得られる蛍光体がCa0.98Tm0.010.01Ga6.0Al5.88Cr0.1219となるように秤量した。
【0090】
これら原料をアルミナ製乳鉢の中でエタノールを添加してから湿式混合し、エタノールを自然乾燥してからアルミナ製の容器に入れ、混合原料を入れた容器を小型電気炉(モトヤマ社製 スーパーバーン)に設置し、大気下1500℃で8時間加熱することで、焼成体を得た。焼成体をアルミナ乳鉢内で大きい塊がなくなるまで解砕し、アルミナ製の容器に入れ、小型電気炉に設置し再び大気下1500℃で10時間加熱することで、焼成体を得た。焼成体をアルミナ乳鉢内で大きい塊がなくなるまで解砕し、実施例2の蛍光体を得た。
【0091】
実施例2の蛍光体の励起・発光スペクトルを図3に示す。実施例2の蛍光体の発光ピーク波長は803nmで、発光ピーク波長の半値幅は89nmであった。図3において実線は波長455nmの励起光を照射した際の発光スペクトルを示し、点線は発光ピーク波長803nmに対する励起スペクトルを示す。以上のことから可視光の広い範囲で励起できることがわかる。
【0092】
実施例2の蛍光体に波長455nmの励起光を一度照射して、照射を止めた後、発光ピーク波長803nmの発光強度変化を測定した結果、初期強度の1/10になるまでの残光時間は4msであった。
また、実施例2の蛍光体について粉末X線回折測定を行って得られたXRDパターンを図4に示す。実施例2の蛍光体が単相Ca(Al,Ga)1219から成ることが判る。
【0093】
(実施例3)
原料として、市販のSrCO粉末(白辰化学社製307134)、Al粉末(住友化学AKP-20)、Ga粉末(三井金属鉱業社製90402)、Cr粉末(キシダ化学社製B58840N)を用いて、合成後に得られる蛍光体がSr1.0Ga9.0Al2.88Cr0.1219となるように秤量した。
【0094】
これら原料をアルミナ製乳鉢の中でエタノールを添加してから湿式混合し、エタノールを自然乾燥してからアルミナ製の容器に入れ、混合原料を入れた容器を小型電気炉(モトヤマ社製 スーパーバーン)に設置し、大気下1450℃で8時間加熱することで、焼成体を得た。焼成体をアルミナ乳鉢内で大きい塊がなくなるまで解砕し、実施例3の蛍光体を得た。
【0095】
実施例3の蛍光体の励起・発光スペクトルを図5に示す。実施例3の蛍光体の発光ピーク波長は772nmで、発光ピーク波長の半値幅は94nmであった。図5において実線は波長455nmの励起光を照射した際の発光スペクトルを示し、点線は発光ピーク波長772nmに対する励起スペクトルを示す。以上のことから可視光の広い範囲で励起できることがわかる。
また、実施例3の蛍光体について粉末X線回折測定を行って得られたXRDパターンを図6に示す。実施例3の蛍光体が単相SrGaAl19から成ることが判る。
【0096】
(実施例4)
合成後に得られる蛍光体組成がSr1.0Ga6.0Al5.88Cr0.1219となるようにした以外は、実施例3と同様にして、実施例4の蛍光体を得た。
実施例4の蛍光体の励起・発光スペクトルを図7に示す。実施例4の蛍光体の発光ピーク波長は774nmで、発光ピーク波長の半値幅は100nmであった。図7において実線は波長455nmの励起光を照射した際の発光スペクトルを示し、点線は発光ピーク波長774nmに対する励起スペクトルを示す。以上のことから可視光の広い範囲で励起できることがわかる。
【0097】
実施例4の蛍光体に波長455nmの励起光を一度照射して、照射を止めた後、発光ピーク波長774nmの発光強度変化を測定した結果、初期強度の1/10になるまでの残光時間は4msであった。
また、実施例4の蛍光体について粉末X線回折測定を行って得られたXRDパターンを図8に示す。実施例4の蛍光体が単相SrGaAl19から成ることが判る。
【0098】
(実施例5)
原料として、市販のSrCO粉末(レアメタリック社製20820-61H-S)、Al粉末(住友化学AKP-20)、Ga粉末(三井金属鉱業社製90402)、Cr粉末(キシダ化学社製B58840N)を用いて、合成後に得られる蛍光体がSr1.0Ga1.0Al10.88Cr0.1219となるように秤量し、結晶成長を促すためにHBO(和光純薬工業社製WAQ3766)を外付けで0.5wt%添加した。
【0099】
これら原料をアルミナ製乳鉢の中でエタノールを添加してから湿式混合し、エタノールを自然乾燥してからアルミナ製の容器に入れ、混合原料を入れた容器を小型電気炉(モトヤマ社製 スーパーバーン)に設置し、大気下1500℃で8時間加熱することで、焼成体を得た。焼成体をアルミナ乳鉢内で大きい塊がなくなるまで解砕し、実施例5の蛍光体を得た。
【0100】
実施例5の蛍光体の励起・発光スペクトルを図9に示す。実施例5の蛍光体の発光ピーク波長は793nmで、発光ピーク波長の半値幅は92nmであった。図9において実線は波長455nmの励起光を照射した際の発光スペクトルを示し、点線は発光ピーク波長793nmに対する励起スペクトルを示す。以上のことから可視光の広い範囲で励起できることがわかる。
また、実施例5の蛍光体について粉末X線回折測定を行って得られたXRDパターンを図10に示す。実施例5の蛍光体が単相SrGaAl1119から成ることが判る。
【0101】
(実施例6)
原料として、市販のSrCO粉末(白辰化学社製307134)、Al粉末(住友化学AKP-20)、Ga粉末(三井金属鉱業社製90402)、Cr粉末(キシダ化学社製B58840N)を用いて、合成後に得られる蛍光体がSr1.0Ga2.0Al9.88Cr0.1219となるように秤量し、結晶成長を促すためにHBO(和光純薬工業社製WAQ3766)を外付けで5wt%添加した。
【0102】
これら原料をアルミナ製乳鉢の中でエタノールを添加してから湿式混合し、エタノールを自然乾燥してからアルミナ製の容器に入れ、混合原料を入れた容器を小型電気炉(モトヤマ社製 スーパーバーン)に設置し、大気下1450℃で8時間加熱することで、焼成体を得た。焼成体をアルミナ乳鉢内で大きい塊がなくなるまで解砕し、実施例6の蛍光体を得た。
【0103】
実施例6の蛍光体の励起・発光スペクトルを図11に示す。実施例6の蛍光体の発光ピーク波長は774nmで、発光ピーク波長の半値幅は96nmであった。図11において実線は波長455nmの励起光を照射した際の発光スペクトルを示し、点線は発光ピーク波長774nmに対する励起スペクトルを示す。以上のことから可視光の広い範囲で励起できることがわかる。
【0104】
実施例6の蛍光体に波長455nmの励起光を一度照射して、照射を止めた後、発光ピーク波長774nmの発光強度変化を測定した結果、初期強度の1/10になるまでの残光時間は5msであった。
また、実施例6の蛍光体について粉末X線回折測定を行って得られたXRDパターンを図12に示す。実施例6の蛍光体が、主相としてSrGaAl1019から成ることが判る。
【0105】
(実施例7)
原料として、市販のSrCO粉末(白辰化学社製307134)、Al粉末(住友化学AKP-20)、Ga粉末(三井金属鉱業社製90402)、Cr粉末(キシダ化学社製B58840N)、KCO粉末(和光純薬工業社製STE4006)、Tm粉末(信越化学工業社製 TM-04-001)を用いて、合成後に得られる蛍光体がSr0.98Tm0.010.01Ga2.0Al9.88Cr0.1219となるようにした以外は、実施例6と同様にして、実施例7の蛍光体を得た。
【0106】
実施例7の蛍光体の励起・発光スペクトルを図13に示す。実施例7の蛍光体の発光ピーク波長は810nmで、発光ピーク波長の半値幅は79nmであった。図13において実線は波長455nmの励起光を照射した際の発光スペクトルを示し、点線は発光ピーク波長810nmに対する励起スペクトルを示す。以上のことから可視光の広い範囲で励起できることがわかる。
また、実施例7の蛍光体について粉末X線回折測定を行って得られたXRDパターンを図14に示す。実施例7の蛍光体が、主相としてSrGaAl1019から成ることが判る。
【0107】
(実施例8)
合成後に得られる蛍光体がSr0.90Tm0.050.05Ga2.0Al9.88Cr0.1219となるようにした以外は、実施例7と同様にして、実施例8の蛍光体を得た。
実施例8の蛍光体の励起・発光スペクトルを図15に示す。実施例8の蛍光体の発光ピーク波長は810nmで、発光ピーク波長の半値幅は64nmであった。図15において実線は波長455nmの励起光を照射した際の発光スペクトルを示し、点線は発光ピーク波長810nmに対する励起スペクトルを示す。以上のことから可視光の広い範囲で励起できることがわかる。
【0108】
実施例8の蛍光体に波長455nmの励起光を一度照射して、照射を止めた後、発光ピーク波長810nmの発光強度変化を測定した結果、初期強度の1/10になるまでの残光時間は4msであった。
また、実施例8の蛍光体について粉末X線回折測定を行って得られたXRDパターンを図16に示す。実施例8の蛍光体が、主相としてSrGaAl1019から成ることが判る。
【0109】
(実施例9)
原料として、市販のCaCO粉末(白辰化学社製8071073)、MgO粉末(和光純薬工業社製LKG5947)、Tm粉末(信越化学工業社製 TM-04-001)、Al粉末(住友化学AKP-20)、Cr粉末(キシダ化学社製B58840N)を用いて、合成後に得られる蛍光体がCa0.99Tm0.01Mg0.01Al11.87Cr0.1219となるように秤量し、結晶成長を促すためにHBO(和光純薬工業社製WAQ3766)を外付けで5wt%添加した。
【0110】
これら原料をアルミナ製乳鉢の中でエタノールを添加してから湿式混合し、エタノールを自然乾燥してからアルミナ製の容器に入れ、混合原料を入れた容器を小型電気炉(モトヤマ社製 スーパーバーン)に設置し、大気下1500℃で8時間加熱することで、焼成体を得た。焼成体をアルミナ乳鉢内で大きい塊がなくなるまで解砕し、実施例9の蛍光体を得た。
【0111】
実施例9の蛍光体の励起・発光スペクトルを図17に示す。実施例9の蛍光体の発光ピーク波長は812nmで、発光ピーク波長の半値幅は74nmであった。図17において実線は波長455nmの励起光を照射した際の発光スペクトルを示し、点線は発光ピーク波長812nmに対する励起スペクトルを示す。以上のことから可視光の広い範囲で励起できることがわかる。
【0112】
実施例9の蛍光体に波長455nmの励起光を一度照射して、照射を止めた後、発光ピーク波長812nmの発光強度変化を測定した結果、初期強度の1/10になるまでの残光時間は5msであった。
また、実施例9の蛍光体について粉末X線回折測定を行って得られたXRDパターンを図18に示す。実施例9の蛍光体が、主相としてCaAl1219から成ることが判る。
【0113】
(実施例10)
市販のSrCO粉末(レアメタリック社製20820-61H-S)、KCO粉末(和光純薬工業社製STE4006)、Tm粉末(信越化学工業社製 TM-04-001)、Al粉末(住友化学AKP-20)、Cr粉末(キシダ化学社製B58840N)を用いて、合成後に得られる蛍光体がSr0.98Tm0.010.01Al11.88Cr0.1219となるように秤量し、結晶成長を促すためにHBO(和光純薬工業社製WAQ3766)を外付けで5wt%添加した。
【0114】
これら原料をアルミナ製乳鉢の中でエタノールを添加してから湿式混合し、エタノールを自然乾燥してからアルミナ製の容器に入れ、混合原料を入れた容器を小型電気炉(モトヤマ社製 スーパーバーン)に設置し、大気下1500℃で8時間加熱することで、焼成体を得た。焼成体をアルミナ乳鉢内で大きい塊がなくなるまで解砕し、実施例10の蛍光体を得た。
【0115】
実施例10の蛍光体の励起・発光スペクトルを図19に示す。実施例10の蛍光体の発光ピーク波長は810nmで、発光ピーク波長の半値幅は83nmであった。図19において実線は波長455nmの励起光を照射した際の発光スペクトルを示し、点線は発光ピーク波長810nmに対する励起スペクトルを示す。以上のことから可視光の広い範囲で励起できることがわかる。
【0116】
実施例10の蛍光体に波長455nmの励起光を一度照射して、照射を止めた後、発光ピーク波長812nmの発光強度変化を測定した結果、初期強度の1/10になるまでの残光時間は5msであった。
また、実施例10の蛍光体について粉末X線回折測定を行って得られたXRDパターンを図20に示す。実施例10の蛍光体が、主相としてSrAl1219から成ることが判る。
【0117】
(実施例11)
原料として、市販のCaCO粉末(白辰化学社製8071073)、Al粉末(住友化学AKP-20)、Cr粉末(キシダ化学社製B58840N)を用いて、合成後に得られる蛍光体がCaAl11.88Cr0.1219となるように秤量し、結晶成長を促すためにHBO(和光純薬工業社製WAQ3766)を外付けで1wt%添加した。
【0118】
これら原料をアルミナ製乳鉢の中でエタノールを添加してから湿式混合し、エタノールを自然乾燥してからアルミナ製の容器に入れ、混合原料を入れた容器を小型電気炉(モトヤマ社製 スーパーバーン)に設置し、大気下1500℃で8時間加熱することで、焼成体を得た。焼成体をアルミナ乳鉢内で大きい塊がなくなるまで解砕し、実施例11の蛍光体を得た。
【0119】
実施例11の蛍光体の励起・発光スペクトルを図21に示す。実施例11の蛍光体の発光ピーク波長は786nmで、発光ピーク波長の半値幅は81nmであった。図21において実線は波長455nmの励起光を照射した際の発光スペクトルを示し、点線は発光ピーク波長786nmに対する励起スペクトルを示す。以上のことから可視光の広い範囲で励起できることがわかる。
【0120】
実施例11の蛍光体に波長455nmの励起光を一度照射して、照射を止めた後、発光ピーク波長786nmの発光強度変化を測定した結果、初期強度の1/10になるまでの残光時間は5msであった。
また、実施例11の蛍光体について粉末X線回折測定を行って得られたXRDパターンを図22に示す。実施例11の蛍光体が、主相としてCaAl1219から成ることが判る。
【0121】
(実施例12)
市販のSrCO粉末(白辰307134)、Al粉末(高純度化学研究所社製γアルミナ)、Cr粉末(キシダ化学社製B58840N)を用いて、合成後に得られる蛍光体がSrAl11.88Cr0.1219となるように秤量し、結晶成長を促すためにHBO(和光純薬工業社製WAQ3766)を外付けで1wt%添加した。
【0122】
これら原料をアルミナ製乳鉢の中でエタノールを添加してから湿式混合し、エタノールを自然乾燥してからアルミナ製の容器に入れ、混合原料を入れた容器を小型電気炉(モトヤマ社製 スーパーバーン)に設置し、大気下1650℃で8時間加熱することで、焼成体を得た。焼成体をアルミナ乳鉢内で大きい塊がなくなるまで解砕し、実施例12の蛍光体を得た。
【0123】
実施例12の蛍光体の励起・発光スペクトルを図23に示す。実施例12の蛍光体の発光ピーク波長は771nmで、発光ピーク波長の半値幅は87nmであった。図23において実線は波長455nmの励起光を照射した際の発光スペクトルを示し、点線は発光ピーク波長771nmに対する励起スペクトルを示す。以上のことから可視光の広い範囲で励起できることがわかる。
【0124】
実施例12の蛍光体に波長455nmの励起光を一度照射して、照射を止めた後、発光ピーク波長771nmの発光強度変化を測定した結果、初期強度の1/10になるまでの残光時間は5msであった。
また、実施例12の蛍光体について粉末X線回折測定を行って得られたXRDパターンを図24に示す。実施例12の蛍光体が、主相としてSrAl1219から成ることが判る。
【0125】
実施例1から実施例10までの蛍光体について、波長範囲300~850nmにおける反射率の測定を行い、波長範囲700~850nmにおける反射率の最小値R1と、波長範囲300~700nmにおける反射率の最小値R2と、反射率の最小値の差R1-R2とを表1に示す。表1から、各実施例の蛍光体は、発光波長範囲である700~850nmにおける反射率が高く、可視光が含まれる波長範囲300~700nmにおける反射率が低いことから、効率的に可視光を吸収しているが、発光波長範囲においては吸収が少ないことがわかる。
また、実施例1と実施例2の蛍光体の反射率スペクトルをそれぞれ図25図26に示す。発光波長範囲である700~850nmにおける反射率が高く、可視光が含まれる波長範囲300~700nmにおける反射率が低いことがわかる。
【0126】
【表1】
【0127】
(実施例13)
市販のCaCO粉末(白辰化学5122136)、La(OH)粉末(高純度化学研究所社製4510551)、MgO粉末(和光純薬工業社製LKG5947)、Al粉末(住友化学AKP-20)、Cr粉末(フルウチ化学社製60211K2)を用いて、合成後に得られる蛍光体がLa0.5Ca0.5Mg0.5Al11.38Cr0.1219となるように秤量し、結晶成長を促すためにHBO(和光純薬工業社製WAQ3766)を外付けで5wt%添加した。
【0128】
これら原料をアルミナ製乳鉢の中でエタノールを添加してから湿式混合し、エタノールを自然乾燥してからアルミナ製の容器に入れ、混合原料を入れた容器を小型電気炉(モトヤマ社製 スーパーバーン)に設置し、大気下1500℃で8時間加熱することで、焼成体を得た。焼成体をアルミナ乳鉢内で大きい塊がなくなるまで解砕し、実施例13の蛍光体を得た。
【0129】
実施例13の蛍光体の励起・発光スペクトルを図27に示す。実施例13の蛍光体の発光ピーク波長は755nmで、発光ピーク波長の半値幅は107nmであった。図27において実線は波長455nmの励起光を照射した際の発光スペクトルを示し、点線は発光ピーク波長755nmに対する励起スペクトルを示す。以上のことから可視光の広い範囲で励起できることがわかる。
また、実施例13の蛍光体について粉末X線回折測定を行って得られたXRDパターンを図28に示す。
【0130】
(実施例14)
市販のCaCO粉末(白辰化学5122136)、La(OH)粉末(高純度化学研究所社製4510551)、Tm粉末(信越化学工業社製 TM-04-001)、MgO粉末(和光純薬工業社製LKG5947)、Al粉末(住友化学AKP-20)、Cr粉末(フルウチ化学社製60211K2)を用いて、合成後に得られる蛍光体がLa0.49Tm0.01Ca0.5Mg0.5Al11.38Cr0.1219となるように秤量し、結晶成長を促すためにHBO(和光純薬工業社製WAQ3766)を外付けで5wt%添加した。
【0131】
これら原料をアルミナ製乳鉢の中でエタノールを添加してから湿式混合し、エタノールを自然乾燥してからアルミナ製の容器に入れ、混合原料を入れた容器を小型電気炉(モトヤマ社製 スーパーバーン)に設置し、大気下1500℃で8時間加熱することで、焼成体を得た。焼成体をアルミナ乳鉢内で大きい塊がなくなるまで解砕し、実施例14の蛍光体を得た。
【0132】
実施例14の蛍光体の励起・発光スペクトルを図29に示す。実施例14の蛍光体の発光ピーク波長は803nmで、発光ピーク波長の半値幅は121nmであった。図29において実線は波長455nmの励起光を照射した際の発光スペクトルを示し、点線は発光ピーク波長803nmに対する励起スペクトルを示す。以上のことから可視光の広い範囲で励起できることがわかる。
また、実施例14の蛍光体について粉末X線回折測定を行って得られたXRDパターンを図30に示す。
【0133】
(実施例15)
市販のSrCO粉末(白辰化学506149)、La(OH)粉末(高純度化学研究所社製4510551)、MgO粉末(和光純薬工業社製LKG5947)、Al粉末(住友化学AKP-20)、Cr粉末(フルウチ化学社製60211K2)を用いて、合成後に得られる蛍光体がLa0.5Sr0.5Mg0.5Al11.38Cr0.1219となるように秤量し、結晶成長を促すためにHBO(和光純薬工業社製WAQ3766)を外付けで5wt%添加した。
【0134】
これら原料をアルミナ製乳鉢の中でエタノールを添加してから湿式混合し、エタノールを自然乾燥してからアルミナ製の容器に入れ、混合原料を入れた容器を小型電気炉(モトヤマ社製 スーパーバーン)に設置し、大気下1500℃で8時間加熱することで、焼成体を得た。焼成体をアルミナ乳鉢内で大きい塊がなくなるまで解砕し、実施例15の蛍光体を得た。
【0135】
実施例15の蛍光体の励起・発光スペクトルを図31に示す。実施例15の蛍光体の発光ピーク波長は760nmで、発光ピーク波長の半値幅は108nmであった。図31において実線は波長455nmの励起光を照射した際の発光スペクトルを示し、点線は発光ピーク波長760nmに対する励起スペクトルを示す。以上のことから可視光の広い範囲で励起できることがわかる。
また、実施例15の蛍光体について粉末X線回折測定を行って得られたXRDパターンを図32に示す。
【0136】
(実施例16)
市販のSrCO粉末(白辰化学506149)、La(OH)粉末(高純度化学研究所社製4510551)、Tm粉末(信越化学工業社製 TM-04-001)、MgO粉末(和光純薬工業社製LKG5947)、Al粉末(住友化学AKP-20)、Cr粉末(フルウチ化学社製60211K2)を用いて、合成後に得られる蛍光体がLa0.49Tm0.01Sr0.5Mg0.5Al11.38Cr0.1219となるように秤量し、結晶成長を促すためにHBO(和光純薬工業社製WAQ3766)を外付けで5wt%添加した。
【0137】
これら原料をアルミナ製乳鉢の中でエタノールを添加してから湿式混合し、エタノールを自然乾燥してからアルミナ製の容器に入れ、混合原料を入れた容器を小型電気炉(モトヤマ社製 スーパーバーン)に設置し、大気下1500℃で8時間加熱することで、焼成体を得た。焼成体をアルミナ乳鉢内で大きい塊がなくなるまで解砕し、実施例16の蛍光体を得た。
【0138】
実施例16の蛍光体の励起・発光スペクトルを図33に示す。実施例16の蛍光体の発光ピーク波長は803nmで、発光ピーク波長の半値幅は119nmであった。図33において実線は波長455nmの励起光を照射した際の発光スペクトルを示し、点線は発光ピーク波長803nmに対する励起スペクトルを示す。以上のことから可視光の広い範囲で励起できることがわかる。
また、実施例16の蛍光体について粉末X線回折測定を行って得られたXRDパターンを図34に示す。
【0139】
(実施例17)
原料として、市販のBaCO粉末(高純度化学研究所社製168713)、SrCO粉末(レアメタリック社製20820-61H-S)、MgO粉末(和光純薬工業社製LKG5947)、Al粉末(住友化学AKP-20)、Sm粉末(三津和社製44208)を用いて、合成後に得られる蛍光体がBa0.4Sr0.5Sm0.1MgAl1017となるように秤量し、結晶成長を促すためにHBO(和光純薬工業社製WAQ3766)を外付けで1wt%添加した。
【0140】
これら原料をアルミナ製乳鉢の中でエタノールを添加してから湿式混合し、エタノールを自然乾燥してからアルミナ製の容器に入れ、混合原料を入れた容器を小型電気炉(モトヤマ社製 スーパーバーン)に設置し、大気下1600℃で8時間加熱することで、焼成体を得た。焼成体をアルミナ乳鉢内で大きい塊がなくなるまで解砕し、アルミナ製の容器に入れた後、管状炉に入れて、カーボンの存在下で窒素Nガスを流しながら1500℃で4h加熱することで焼成体を得た。焼成体をアルミナ乳鉢内で大きい塊がなくなるまで解砕することで実施例17の蛍光体を得た。
【0141】
実施例17の蛍光体の励起・発光スペクトルを図35に示す。実施例17の蛍光体の発光ピーク波長は804nmで、発光ピーク波長の半値幅は137nmであった。図35において実線は波長455nmの励起光を照射した際の発光スペクトルを示し、点線は発光ピーク波長804nmに対する励起スペクトルを示す。以上のことから可視光の広い範囲で励起できることがわかる。
また、実施例17の蛍光体について粉末X線回折測定を行って得られたXRDパターンを図36に示す。実施例17の蛍光体が、主相として(Ba、Sr)MgAl1017から成ることが判る。
【0142】
(実施例18)
原料として、市販のCaCO粉末(白辰化学社製8071073)、Sc粉末(信越化学社製RSC-04-2801)、Eu粉末(レアメタリック社製21211-13)を用いて、合成後に得られる蛍光体がCa0.995Eu0.005Scとなるように秤量した。
【0143】
これら原料をアルミナ製乳鉢の中でエタノールを添加してから湿式混合し、エタノールを自然乾燥してからアルミナ製の容器に入れ、混合原料を入れた容器を管状炉に設置し、NとHの混合ガス(Hは4%)を流しながら、1450℃で8時間加熱することで、焼成体を得た。焼成体をアルミナ乳鉢内で大きい塊がなくなるまで解砕し、粉末X線回折測定を行って得られたXRDパターンを図37に示す。主相としてCaScから成ることが判る。解砕した粉末をBN製の容器に入れた後、管状炉に入れて、カーボンの存在下で窒素Nガスを流しながら1500℃で4時間加熱することで焼成体を得た。焼成体をアルミナ乳鉢内で大きい塊がなくなるまで解砕することで実施例18の蛍光体を得た。
【0144】
実施例18の蛍光体の励起・発光スペクトルを図38に示す。実施例18の蛍光体の発光ピーク波長は756nmで、発光ピーク波長の半値幅は132nmであった。図38において実線は波長455nmの励起光を照射した際の発光スペクトルを示し、点線は発光ピーク波長756nmに対する励起スペクトルを示す。以上のことから可視光の広い範囲で励起できることがわかる。
【0145】
(実施例19)
原料として、市販のLa(OH)粉末(高純度化学研究所社製4401411)、Al粉末(住友化学AKP-20)、Ga粉末(三井金属鉱業社製90402)、GeO(高純度化学研究所社製313826)、Cr粉末(キシダ化学社製B58840N)を用いて、合成後に得られる蛍光体がLa3.0Ga2.45Al2.50Cr0.05GeO14となるように秤量し、結晶成長を促すためにHBO(和光純薬工業社製WAQ3766)を外付けで1wt%添加した。
【0146】
これら原料をアルミナ製乳鉢の中でエタノールを添加してから湿式混合し、エタノールを自然乾燥してからアルミナ製の容器に入れ、混合原料を入れた容器を小型電気炉(モトヤマ社製 スーパーバーン)に設置し、大気下1300℃で8時間加熱することで、焼成体を得た。焼成体をアルミナ乳鉢内で大きい塊がなくなるまで解砕し、実施例19の蛍光体を得た。
【0147】
実施例19の蛍光体の発光スペクトルを図39に示す。実施例19の発光スペクトルは、蛍光体に発光波長450nmの半導体レーザーを照射し、発光スペクトルを分光器と近赤外用光電子増倍管(HAMAMATSU社製R5509-43)とを用いることで測定した。実施例19の蛍光体の発光ピーク波長は922nmで、発光ピーク波長の半値幅は256nmであった。
また、実施例19の蛍光体について粉末X線回折測定を行って得られたXRDパターンを図40に示す。実施例19の蛍光体がLa(Al,Ga)GeO14から成ることが判る。
【0148】
(実施例20)
原料として、市販のLa(OH)粉末(高純度化学研究所社製4401411)、Sc粉末(信越化学社製RSC-04-2801)、Cr粉末(キシダ化学社製B58840N)、HBO(和光純薬工業社製WAQ3766)を用いて、焼成中にBが蒸発して減少するのを補うために、HBOを5%過剰にし、合成後に得られる蛍光体がLaSc2.91Cr0.0912となるように秤量した。
【0149】
これら原料をアルミナ製乳鉢の中で乾式混合し、白金箔に入れ、混合原料を入れた容器を小型電気炉(モトヤマ社製 スーパーバーン)に設置し、大気下1300℃で12時間加熱することで、焼成体を得た。焼成体をアルミナ乳鉢内で大きい塊がなくなるまで解砕し、実施例20の蛍光体を得た。
【0150】
実施例20の蛍光体の発光スペクトルを図41に示す。実施例20の発光スペクトルは、蛍光体に発光波長450nmの半導体レーザーを照射し、発光スペクトルを分光器と近赤外用光電子増倍管(HAMAMATSU社製R5509-43)とを用いることで測定した。実施例20の蛍光体の発光ピーク波長は884nmで、発光ピーク波長の半値幅は202nmであった。
また、実施例20の蛍光体について粉末X線回折測定を行って得られたXRDパターンを図42に示す。実施例20の蛍光体が単相LaSc12から成ることが判る。
【0151】
{発光装置の製造}
(実施例21)
実施例2の蛍光体と青色LEDとを組み合わせて赤外発光装置を作製した。
原料として実施例2で得られた蛍光体および、熱硬化性シリコーン樹脂を用いた。各原料を、重量比で蛍光体:熱硬化性シリコーン樹脂=15:85となるように秤量した。これら原料をEME社製V-mini300を使って混合し、市販の青LED(昭和電工社製)を搭載したパッケージに塗布し硬化させる事で、発光装置を得た。
発光装置の発光スペクトルを図43に示す。発光装置が、およそ800nmに赤外発光ピークを持ち、幅広い赤外発光を呈することがわかる。
図1
図2
図3
図4
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