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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-19
(45)【発行日】2022-07-27
(54)【発明の名称】樹脂製歯車
(51)【国際特許分類】
   F16H 55/14 20060101AFI20220720BHJP
   F16H 55/06 20060101ALI20220720BHJP
【FI】
F16H55/14
F16H55/06
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020525097
(86)(22)【出願日】2018-06-18
(86)【国際出願番号】 JP2018023153
(87)【国際公開番号】W WO2019244216
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2020-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100156395
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 寿王
(72)【発明者】
【氏名】森尾 洋一
(72)【発明者】
【氏名】青柳 達也
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-126656(JP,U)
【文献】実開昭58-175255(JP,U)
【文献】特開2017-89778(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0226304(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 55/14
F16H 55/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の金属製ブッシュと、
前記金属製ブッシュの周囲に設けられ、外周部に歯形が形成された環状の樹脂部材と、を備えた樹脂製歯車であって、
前記金属製ブッシュと前記樹脂部材とは、前記樹脂製歯車の回転方向に相対回転可能に配置され、
前記金属製ブッシュと前記樹脂部材との間には、前記金属製ブッシュの外周面及び前記樹脂部材の内周面に入り込む空間が、前記回転方向に沿って並ぶように複数形成され、
前記空間内には、弾性部材が配置され
前記空間及び前記弾性部材は、前記樹脂製歯車の軸方向から見て、前記樹脂製歯車の径方向を長手方向とし、且つ、互いに対応する長尺形状を呈し、
前記樹脂製歯車の軸方向から見て、長尺形状の前記弾性部材は、長尺形状の前記空間の内面に隙間なく接触している、樹脂製歯車。
【請求項2】
前記金属製ブッシュと前記樹脂部材とは、前記回転方向に摺動可能に当接している、請求項1に記載の樹脂製歯車。
【請求項3】
前記金属製ブッシュと前記樹脂部材とは、接着されていない、請求項1又は2に記載の樹脂製歯車。
【請求項4】
前記弾性部材は、前記空間の内面に接着されている、請求項1~3の何れか一項に記載の樹脂製歯車。
【請求項5】
前記空間は、前記樹脂製歯車の軸方向と交差する内面を有し、
前記弾性部材は、当該内面に係合する、請求項1~4の何れか一項に記載の樹脂製歯車。
【請求項6】
前記空間は、前記樹脂製歯車の軸方向に沿って貫通する孔である、請求項1~5の何れか一項に記載の樹脂製歯車。
【請求項7】
前記空間及び前記弾性部材は、前記樹脂製歯車の軸方向から見て、前記長手方向の両端部が拡大した形状を呈する、請求項1~6の何れか一項に記載の樹脂製歯車。
【請求項8】
前記空間及び前記弾性部材は、前記樹脂製歯車の軸方向から見て、瓢箪形状を呈する、請求項7に記載の樹脂製歯車。
【請求項9】
前記空間及び前記弾性部材は、前記樹脂製歯車の軸方向から見て、前記樹脂製歯車の径方向に延びる棒形状を呈する、請求項1~6の何れか一項に記載の樹脂製歯車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、樹脂製歯車に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製歯車は、軽量で且つ静粛性に優れており、例えば車両用又は産業用の歯車として広く用いられている。樹脂製歯車としては、金属製ブッシュと、金属製ブッシュの周囲に設けられ外周部に歯形が形成された樹脂部材と、金属製ブッシュと樹脂部材との間に設けられた弾性部材と、を備えた樹脂製歯車が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような樹脂製歯車では、他の歯車との噛み合いで衝撃が加わった場合、弾性部材の弾性変形によって当該衝撃が吸収されて減衰される、すなわち、弾性部材のダンパ効果(減衰機能)が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-151000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような樹脂製歯車では、弾性部材は、金属製ブッシュの外周面及び樹脂部材の内周面に対して接着剤で接着されている。この場合、例えば接着剤の付着具合によっては、弾性部材のダンパ効果が十分に得られない可能性がある。
【0005】
本発明の一側面は、弾性部材のダンパ効果を十分に得ることが可能な樹脂製歯車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る樹脂製歯車は、環状の金属製ブッシュと、金属製ブッシュの周囲に設けられ、外周部に歯形が形成された環状の樹脂部材と、を備えた樹脂製歯車であって、金属製ブッシュと樹脂部材とは、樹脂製歯車の回転方向に相対回転可能に配置され、金属製ブッシュと樹脂部材との間には、金属製ブッシュの外周面及び樹脂部材の内周面に入り込む空間が、回転方向に沿って並ぶように複数形成され、空間内には、弾性部材が配置されている。
【0007】
この樹脂製歯車では、他の歯車との噛み合いで衝撃が加わった場合、樹脂部材が金属製ブッシュに対して樹脂製歯車の回転方向に相対回転(以下、単に「相対回転」ともいう)しようとする。このとき、空間内に配置された弾性部材の樹脂部材側と金属製ブッシュ側とには互いに反対向きの一対の力(せん断力)が生じ、弾性部材が弾性変形し、弾性部材が当該相対回転の回り止めとなるように働く。よって、他の歯車との噛み合いで衝撃が加わった場合、このような弾性変形によって当該衝撃が十分に吸収されて減衰されることとなる。したがって、弾性部材のダンパ効果を十分に得ることが可能となる。
【0008】
本発明の一側面に係る樹脂製歯車では、金属製ブッシュと樹脂部材とは、回転方向に摺動可能に当接していてもよい。これにより、金属製ブッシュと樹脂部材とを相対回転可能に配置する構成を実現できる。
【0009】
本発明の一側面に係る樹脂製歯車において、金属製ブッシュと樹脂部材とは、接着されていなくてもよい。これにより、金属製ブッシュと樹脂部材とを相対回転可能に配置する構成を実現できる。
【0010】
本発明の一側面に係る樹脂製歯車では、弾性部材は、空間の内面に接着されていてもよい。この場合、弾性部材が空間から外れにくくなり、弾性部材を大きく弾性変形させ得ることから、大きい衝撃が加わった場合にも対応できる。ひいては、高負荷に対応できる樹脂製歯車を実現することが可能となる。
【0011】
本発明の一側面に係る樹脂製歯車では、空間は、樹脂製歯車の軸方向と交差する内面を有し、弾性部材は、当該内面に係合していてもよい。これにより、樹脂製歯車の軸方向(以下、単に「軸方向」という)において弾性部材が空間から外れることを防止できる。
【0012】
本発明の一側面に係る樹脂製歯車では、空間は、樹脂製歯車の軸方向に沿って貫通する孔であってもよい。この場合、射出成形を利用して、金属製ブッシュと樹脂部材との間に弾性部材を容易に設けることができる。
【0013】
本発明の一側面に係る樹脂製歯車では、空間及び弾性部材は、樹脂製歯車の軸方向を高さ方向とする円柱形状を呈していてもよい。この場合、空間及び樹脂部材を容易に設けることができる。
【0014】
本発明の一側面に係る樹脂製歯車では、空間及び弾性部材は、樹脂製歯車の軸方向から見て、樹脂製歯車の径方向を長手方向とする長尺形状を呈していてもよい。この場合、樹脂部材と金属製ブッシュとの相対回転に際して、弾性部材が空間から外れにくくなり、弾性部材を大きく弾性変形させ得ることから、大きい衝撃が加わった場合にも対応できる。ひいては、高負荷に対応できる樹脂製歯車を実現することが可能となる。
【0015】
本発明の一側面に係る樹脂製歯車では、空間及び弾性部材は、樹脂製歯車の軸方向から見て、長手方向の両端部が拡大した形状を呈していてもよい。この場合、樹脂部材と金属製ブッシュとの相対回転に際して、弾性部材が空間から一層外れにくくなり、弾性部材をより大きく弾性変形させ得ることから、より大きい衝撃が加わった場合にも対応できる。ひいては、より高い高負荷に対応できる樹脂製歯車を実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一側面によれば、弾性部材のダンパ効果を十分に得ることが可能な樹脂製歯車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、一実施形態に係る樹脂製歯車の正面図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿った断面図である。
図3図3(a)は、樹脂製歯車の弾性部材の弾性変形を説明するための図2のIII-III線に沿った断面図である。図3(b)は、樹脂製歯車の弾性部材の弾性変形を説明するための図2のIII-III線に沿った他の断面図である。
図4図4(a)は、樹脂製歯車の製造方法を示す図である。図4(b)は、図4(a)の続きを示す図である。図4(c)は、図4(b)の続きを示す図である。
図5図5(a)は、第1変形例に係る樹脂製歯車の一部を拡大して示す正面図である。図5(b)は、図5(a)のV-V線に沿った断面図である。
図6図6は、第2変形例に係る樹脂製歯車の断面図である。
図7図7(a)は、第3変形例に係る樹脂製歯車の一部を拡大して示す正面図である。図7(b)は、第4変形例に係る樹脂製歯車の一部を拡大して示す正面図である。
図8図8(a)は、第5変形例に係る樹脂製歯車の一部を拡大して示す正面図である。図8(b)は、第6変形例に係る樹脂製歯車の一部を拡大して示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、実施形態について詳細に説明する。図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0019】
図1及び図2に示されるように、樹脂製歯車1は、いわゆる高強度樹脂ギヤであって、車両用又は産業用の歯車として用いられる。例えば樹脂製歯車1は、エンジン内のバランスシャフトギヤ及びカムシャフトギヤ等に使用できる。樹脂製歯車1は、金属製ブッシュ3と、樹脂部材7と、を備える。樹脂製歯車1は、平歯車である。
【0020】
金属製ブッシュ3は、例えば回転軸(図示省略)に取り付けられる部材である。金属製ブッシュ3は、円環状である。金属製ブッシュ3は、例えば、ステンレス鋼等の金属で形成されている。金属製ブッシュ3には、回転軸が挿入される貫通孔3hが設けられている。
【0021】
樹脂部材7は、他の歯車と噛み合う部材である。樹脂部材7は、環状である。樹脂部材7は、樹脂で形成されている。樹脂部材7は、金属製ブッシュ3の周囲に設けられている。樹脂部材7の外周部には、歯形7aが形成されている。歯形7aは、樹脂部材7の周方向において、所定の間隔をあけて複数形成されている。なお、弾性部材5の周囲に設けられることには、弾性部材5の周りに直接接するように設けられることだけでなく、弾性部材5の周りに他の部材を介して設けられることを含む。
【0022】
金属製ブッシュ3と樹脂部材7とは、樹脂製歯車1の回転方向(以下、単に「回転方向」ともいう)に相対回転可能に配置されている。具体的には、金属製ブッシュ3と樹脂部材7とは、回転方向に摺動可能に当接している。より具体的には、金属製ブッシュ3の外径と樹脂部材7の内径とは等しく、金属製ブッシュ3の外周面3oと樹脂部材7の内周面7iとは接着されておらず、外周面3oと内周面7iとは相対的に回転可能な状態で互いに接触している。
【0023】
本実施形態の樹脂製歯車1では、金属製ブッシュ3と樹脂部材7との間には、金属製ブッシュの外周面3o及び樹脂部材7の内周面7iに入り込む空間K1が、回転方向に沿って並ぶように複数形成されている。空間K1は、樹脂製歯車1の軸方向(以下、単に「軸方向」ともいう)に沿って貫通する孔である。空間K1は、軸方向から見て、等間隔で回転方向に沿って配列されている。空間K1は、軸方向を高さ方向とする円柱形状を呈する。空間K1は、外周面3oに形成されたU溝と樹脂部材7の内周面7iに形成されたU溝とにより画成されている。樹脂製歯車1の径方向(以下、単に「径方向」ともいう)において、空間K1の内側半分は金属製ブッシュ3側に入り込み、空間K1の外側半分は樹脂部材7側に入り込む。
【0024】
空間K1内には、弾性部材5が配置されている。弾性部材5は、空間K1の形状に対応する形状を呈する。具体的には、弾性部材5は、軸方向を高さ方向とし、空間K1と同軸且つ同径の円柱形状を呈する。弾性部材5の外周面は、空間K1の内面に当接されている。弾性部材5の少なくとも一部は、空間K1の内面に接着されている。弾性部材5は、空間K1の内面に接着剤を介して接するように設けられている。
【0025】
弾性部材5は、ゴムにより形成されている。ゴムは、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロロヒドリンゴム又はシリコーンゴム等である。ゴムは、耐久性及び耐熱性の観点から、フッ素ゴム又はシリコーンゴムであることが好ましい。弾性部材5は、複数の部材(ゴム層)が積層されることにより構成されていてもよい。
【0026】
弾性部材5は、樹脂製歯車1が他の歯車と噛み合うことで発生する衝撃を、その弾性変形によって吸収して減衰する。具体的には、樹脂製歯車1に他の歯車との噛み合いで衝撃が加わった場合、樹脂部材7が金属製ブッシュ3に対して回転方向に相対回転しようとする。このとき、空間K1内に配置された弾性部材5における樹脂部材7側と金属製ブッシュ3側とには互いに反対向きの一対の力(せん断力)が生じ、図3(a)に示される状態から図3(b)に示される状態へ弾性部材5が弾性変形し、弾性部材5が当該相対回転の回り止めとなるように働く。よって、他の歯車との噛み合いで衝撃が加わった場合、このような弾性変形によって当該衝撃が十分に吸収されて減衰されることとなる。したがって、弾性部材5のダンパ効果を十分に得ることが可能となる。
【0027】
以上に説明した樹脂製歯車1を製造する場合、まず、公知の手法を用いて、図4(a)に示される金属製ブッシュ3及び樹脂部材7を備えた中間体10を形成する。図4(b)に示されるように、切削具を用いた加工(図中では、ドリルDを用いて孔加工)を中間体10に施し、空間K1を中間体10に複数形成する。空間K1の内面に接着剤を予め塗布した後、図4(c)に示されるように、空間K1内にピンゲートPを介してゴムを射出して充填し、空間K1内に弾性部材5を成形する。その後、必要な処理を施した結果、樹脂製歯車1が製造される。なお、樹脂製歯車1の製造方法としては、特に限定されず、種々の手法を用いることができる。
【0028】
以上、樹脂製歯車1によれば、他の歯車との噛み合いで衝撃が加わった場合、弾性部材5が弾性変形して回り止めとなるように作用し、当該衝撃が十分に吸収されて減衰される。これにより、弾性部材5のダンパ効果を十分に得ることが可能となる。高いギヤ強度のゴムダンパ内蔵ギヤとして樹脂製歯車1を提供することが可能となる。
【0029】
樹脂製歯車1では、金属製ブッシュ3と樹脂部材7とが、回転方向に摺動可能に当接している。これにより、金属製ブッシュ3と樹脂部材7とを相対回転可能に配置する構成を実現できる。
【0030】
樹脂製歯車1では、金属製ブッシュ3と樹脂部材7とは、接着されていない。これにより、金属製ブッシュ3と樹脂部材7とを相対回転可能に配置する構成を実現できる。
【0031】
樹脂製歯車1では、弾性部材5は、空間K1の内面に接着されている。この場合、弾性部材5が空間から外れにくくなり、弾性部材5を大きく弾性変形させ得る。よって、樹脂製歯車1に大きい衝撃が加わった場合にも対応でき、ひいては、高負荷に対応できる樹脂製歯車1を実現することが可能となる。なお、弾性部材5は空間K1の内面に接着されていなくてもよく、この場合には、樹脂製歯車1のコストを低減できる。
【0032】
樹脂製歯車1では、空間K1は、軸方向に沿って貫通する孔である。この場合、射出成形を利用して、金属製ブッシュ3と樹脂部材7との間に弾性部材5を容易に設けることができる。
【0033】
樹脂製歯車1では、空間K1及び弾性部材5は円柱形状を呈する。これにより、空間K1及び弾性部材5を容易に設けることができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0035】
上記実施形態では、金属製ブッシュ3と樹脂部材7との間の空間K1に弾性部材5が設けられているが、これに限定されない。図5(a)及び図5(b)に示される樹脂製歯車1Bのように、空間K1に代えて空間K2が形成され、弾性部材5に代えて弾性部材5Bが設けられていてもよい。
【0036】
空間K2は、軸方向の両端部がそれ以外の部分よりも縮径された段付き円柱形状を呈する。空間K2は、軸方向と直交(交差)する内面9Bを有する。弾性部材5Bは、空間K2と同じ段付き円柱形状を呈し、空間K2内に配置されている。弾性部材5Bは、空間K2の内面に当接する。弾性部材5Bは、軸方向と直交する内面9Bに係合する。このように樹脂製歯車1Bによれば、弾性部材5Bが軸方向と直交する内面9Bに係合することから、軸方向において弾性部材5Bが空間K2から外れることを防止できる。
【0037】
上記実施形態において、空間K1及び弾性部材5が回転方向に沿って並ぶ数及びその間隔は、特に限定されない。空間K1及び弾性部材5は、回転方向に沿って並ぶように複数(2以上)形成されていればよい。空間K1及び弾性部材5が回転方向に沿って並ぶ数及びその間隔は、仕様等に応じて適宜変更してもよい。
【0038】
上記実施形態では、金属製ブッシュ3の外周面3o及び樹脂部材7の内周面7iが軸方向に真っ直ぐ延びているが、これに限定されない。図6に示される樹脂製歯車1Cのように、外周面3oに凸部31が形成され、凸部31に対応する凹部71が内周面7iに形成され、凹部71に凸部31が回転方向に摺動可能に嵌められていてもよい。これにより、金属製ブッシュ3と樹脂部材7とを軸方向に係合させ、これらの一方から他方が外れることを防止することができる。また、金属製ブッシュ3と樹脂部材7との回転方向への摺動時(相対回転)において、当該摺動をガイドするレールとして凸部31を機能させることができる。なお、図6は、図2とは異なり、弾性部材5が示されない断面位置での断面図を示している。
【0039】
本発明の一態様における空間及び弾性部材の形状は、上記実施形態の空間K1及び弾性部材5の形状に限定されず、種々の形状を採用することができる。本発明の一態様における空間及び弾性部材の形状は、例えば以下の形状であってもよい。
【0040】
例えば図7(a)に示される樹脂製歯車1Dでは、金属製ブッシュ3と樹脂部材7との間の空間K4に弾性部材5Dが設けられている。空間K4及び弾性部材5Dは、軸方向から見て、径方向を長手方向とする長尺形状を呈する。空間K4及び弾性部材5Dは、軸方向から見て、長手方向の両端部が拡大した形状を呈する。空間K4及び弾性部材5Dは、軸方向から見て、滑らかに曲がる曲線状の縁を有する。空間K4及び弾性部材5Dは、軸方向から見て、瓢箪形状を呈する。
【0041】
例えば図7(b)に示される樹脂製歯車1Eでは、金属製ブッシュ3と樹脂部材7との間の空間K5に弾性部材5Eが設けられている。空間K5及び弾性部材5Eは、軸方向から見て、径方向を長手方向とする長尺形状を呈する。空間K5及び弾性部材5Eは、軸方向から見て、長手方向の両端部が拡大した形状を呈する。空間K5及び弾性部材5Eは、軸方向から見て、長手方向の両端部が丸いダンベル形状を呈する。
【0042】
例えば図8(a)に示される樹脂製歯車1Fでは、金属製ブッシュ3と樹脂部材7との間の空間K6に弾性部材5Fが設けられている。空間K6及び弾性部材5Fは、軸方向から見て、径方向を長手方向とする長尺形状を呈する。空間K6及び弾性部材5Fは、軸方向から見て、径方向に延びる棒形状を呈する。
【0043】
例えば図8(b)に示される樹脂製歯車1Gでは、金属製ブッシュ3と樹脂部材7との間の空間K7に弾性部材5Gが設けられている。空間K7及び弾性部材5Gは、軸方向から見て、径方向を長手方向とする長尺形状を呈する。空間K7及び弾性部材5Gは、軸方向から見て、長手方向の両端部が拡大した形状を呈する。空間K7及び弾性部材5Gは、軸方向から見て、長手方向の両端部が径方向外側に行くに従って拡がるダンベル形状を呈する。
【0044】
このような樹脂製歯車1D~1Gによれば、空間K4~K7及び弾性部材5D~5Gが径方向を長手方向とする長尺形状であることから、樹脂部材7と金属製ブッシュ3との相対回転に際して、弾性部材5D~5Gが空間K4~K7から外れにくくなり、弾性部材5D~5Gを大きく弾性変形させ得る。大きい衝撃が加わった場合にも対応でき、ひいては、高負荷に対応できる樹脂製歯車1D~1Gを実現できる。
【0045】
特に、空間K4,K5,K7及び弾性部材5D,5E,5Gは、長手方向の両端部が拡大した形状である。このことから、樹脂部材7と金属製ブッシュ3との相対回転に際して、弾性部材5D,5E,5Gが空間K4,K5,K7から一層外れにくくなり、弾性部材5D,5E,5Gをより大きく弾性変形させ得る。より大きい衝撃が加わった場合にも対応でき、ひいては、より高い高負荷に対応できる樹脂製歯車1D,1E,1Gを実現できる。
【0046】
上記実施形態では、樹脂製歯車1が平歯車である形態を一例に説明したが、樹脂製歯車1は、はすば歯車等であってもよい。上記実施形態では、金属製ブッシュ3と樹脂部材7とが一定量相対回転可能であれば、金属製ブッシュ3と樹脂部材7の間に接着剤が介在していてもよい。
【0047】
本発明では、上記実施形態及び上記変形例の各構成を適宜組み合わせてもよい。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0048】
1,1B,1C,1D,1E,1F,1G…樹脂製歯車、3…金属製ブッシュ、3o…外周面、5,5B,5D,5E,5F,5G…弾性部材、7…樹脂部材、7a…歯形、7i…内周面、9B…軸方向と交差する内面、K1,K2,K4,K5,K6,K7…空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8